JP2011006589A - エチレン重合用触媒 - Google Patents

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Abstract

【課題】成形性、耐久性に優れ、且つ耐衝撃性および剛性のバランスに優れるポリエチレン系樹脂、特に中空プラスチック成形品に適した、耐環境応力亀裂(ESCR)と耐衝撃性が共に高く、両特性のバランスに優れたエチレン系重合体を効率よく製造する触媒を提供する。
【解決手段】無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、少なくとも一部のクロム原子を6価としたクロム触媒であって、かつ、有機アルミニウム化合物(c)が無機酸化物担体(a)の表面に集中して存在していることを特徴とするエチレン重合用触媒など。
【選択図】なし

Description

本発明はエチレン系重合体を製造する触媒に関し、さらに詳しくは、クロム触媒に有機アルミニウム化合物を担持した触媒に関する。本発明の触媒によって得られるエチレン系重合体は、耐環境応力亀裂(以下、ESCRと略記することがある)と耐衝撃性が共に優れ、中空プラスチック製品に適している。
液体物質の貯蔵または輸送に用いられる中空プラスチック成形品は、日常生活、産業分野で広く用いられている。特に自動車部品において、燃料タンクとして使用される中空プラスチック成形品は、従来の金属材料製の燃料タンクに取って代わりつつある。さらに、現在では、プラスチックが可燃性の液体、有害な物質等の燃料缶およびプラスチックボトル等の運搬容器の製造に最も多く使用されている材料である。プラスチック製の容器およびタンクは、金属材料製の場合に比べて、重量/体積比が低いので軽量化が可能であり、錆びなどの腐食が起こりにくく、耐衝撃性が良好であるという特長を有しており、ますます広い用途を獲得しつつある。
中空プラスチック成形品は、多くの場合に主として高密度ポリエチレン(HDPE)からブロー成形により得られている。また、ポリエチレンより得られるプラスチック自動車用燃料タンクにおいて、特に課題となる要件について注意を払う必要がある。プラスチック燃料タンクは、自動車の安全性を確保するための重要な保安部品として分類されるので、機械的強度、耐久性、耐衝撃性に関して、特に高いレベルが要求されており、これらを十分高いレベルに向上させるための材料開発が望まれる。
ポリエチレンについて、トリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を用い、水素を共存させながら重合を行うことにより、ブロー成形品、特に大型ブロー成形品に適したポリエチレンを製造する方法が提案されている(特許文献1参照。)。また、該文献1には、ジアルキルアルミニウムアルコキシド化合物担持クロム触媒を用いてポリエチレンを製造する方法も開示されている(比較例13)。
しかしながら、中空プラスチック成形品、特に自動車用燃料タンクに適したポリエチレンについては、開示されておらず、耐久性が十分なレベルの自動車用燃料タンクが製造できるとは言い難い。
また、助触媒として有機アルミニウム化合物を重合反応器に添加し、クロム触媒を用いてポリエチレンを製造する方法が提案されている(特許文献2参照。)。しかし、有機アルミニウム化合物を重合反応器に添加して重合を行ったとき、その重合活性は低い。また、そこで得られるポリエチレンの物性は、耐久性を満足するものではない。また、該文献2には、トリアルキルアルミニウムおよび/またはジアルキルアルミニウムアルコキシド化合物担持クロム触媒を用いてポリエチレンを製造する方法も、開示されている(実施例No.2〜No.6)。
しかしながら、中空プラスチック成形品、特に自動車用燃料タンクに適したESCR及び耐衝撃性がともに優れたポリエチレンについては、開示されていない。さらに、該文献2には、Cr触媒の賦活前にシリカ上にチタンテトライソプロポキシドを含浸させて、焼成活性化を行ったチタニア含有クロム触媒を使ってポリエチレンを製造する方法も提案されているが、このとき得られるポリエチレンは、その衝撃強度が低い傾向にある。
また、トリアルキルアルミニウムおよび/またはジアルキルアルミニウムアルコキシド化合物担持クロム触媒を用いてポリエチレンを製造する方法が提案されている(特許文献3参照。)。
しかしながら、特許文献3には、担体の具体的性状の開示がなく、また、中空プラスチック成形品、特に自動車用燃料タンクに適したポリエチレンについては、開示されていない。
また、非還元性雰囲気で焼成活性化することにより、少なくとも一部のクロム原子が6価となるクロム化合物を無機酸化物担体に担持してなる固体クロム触媒成分、ジアルキルアルミニウム官能基含有アルコキシド、トリアルキルアルミニウムからなるエチレン系重合用触媒が提案されており(特許文献4参照。)、該文献4には、また、耐クリープ性及びESCRに優れた、HLMFRが1〜100g/10分、密度が0.935〜0.955g/cmのブロー成形品用のエチレン系重合体が開示されている。また、該文献4には、トリアルキルアルミニウムおよび/またはジアルキルアルミニウムアルコキシド化合物担持クロム触媒を用いてポリエチレンを製造する方法も、開示されている(比較例3、13)。
しかしながら、トリアルキルアルミニウム化合物を用いた場合、副生物として1−ヘキセンを生じやすくなるため、ESCR及び耐衝撃性がともに優れたポリエチレンの製造法として好適ではなく、また、該文献4には、中空プラスチック成形品、特に耐衝撃性に優れた自動車用燃料タンクに適したポリエチレンについて、何ら示唆も、開示もされていない。
また、クロム化合物を無機酸化物担体に担持させ、非還元性雰囲気で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子を6価としたクロム化合物担持無機酸化物担体に、不活性炭化水素溶媒中で特定の有機アルミニウム化合物(アルコキシド、シロキシド、フェノキシド等)を担持させたクロム触媒を用いるエチレン系重合体の製造方法が提案され(特許文献5参照。)、耐環境応力亀裂(ESCR)と剛性のバランスに優れたエチレン系重合体が開示されている。
また、クロム化合物を無機酸化物担体に担持し、非還元性雰囲気で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子を6価としたクロム触媒及び特定の有機アルミニウム化合物(アルコキシド、シロキシド等)からなることを特徴とするエチレン系重合体製造触媒が提案され(特許文献6参照。)、ESCRまたは耐クリープ性に優れたエチレン系重合体が開示されている。
さらに、クロム化合物を無機酸化物担体に担持し非還元性雰囲気で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子を6価としたクロム触媒を用い、直列に連結した複数の重合反応器により連続的にエチレン単独またはエチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンの共重合を多段で行うに際し、特定の有機アルミニウム化合物(アルコキシド、シロキシド等)をいずれか一つまたは全ての重合反応器に導入することを特徴とするエチレン系重合体製造方法が提案され(特許文献7参照。)、耐環境応力亀裂(ESCR)、耐クリープ性に優れたエチレン系重合体が開示されている。
しかしながら、該文献7には、分子量分布(Mw/Mn)が20.9(実施例)のエチレン系重合体が開示されているものの、中空プラスチック成形品、特に自動車用燃料タンクに適した耐衝撃性に優れたポリエチレンについて、何ら示唆も開示もされていない。
また、フッ素処理をした無機酸化物担持クロム触媒を用いて、エチレン系重合体から得られる中空プラスチック製品が開示されている(特許文献8参照。)。
しかしながら、該文献8には、自動車用燃料タンクに適した耐衝撃性に優れたポリエチレンについて、何ら示唆も開示もされていない。
さらに、非還元性雰囲気で賦活することにより、少なくとも一部のクロム原子が6価となるフッ素化クロム化合物に、特定の有機ホウ素化合物を担持させたエチレン系重合用触媒が提案され(特許文献9参照。)、該文献9には、トリアルキルアルミニウムおよび/またはジアルキルアルミニウムアルコキシド化合物担持クロム触媒を用いてポリエチレンを製造する方法も開示されている(比較例6、8)。
しかしながら、該文献9には、中空プラスチック成形品、特に自動車用燃料タンクに適したポリエチレンについて、何ら示唆も開示もされていない。
上記のほか、自動車用燃料タンクに用いられる市販ポリエチレンとして、例えば、日本ポリエチレン社製高密度ポリエチレン「HB111R」、Basell社製高密度ポリエチレン「4261AG」などが知られている。
これらは、自動車メーカーの厳しい要求に応え、市場での評価を得た材料であるが、耐久性と剛性のバランス、耐衝撃性、成形性のレベルが必ずしも十分に高いレベルであるとは言えない。
こうした状況下に、これまでのポリエチレンの問題点を解消し、成形性、耐久性に優れ、且つ耐衝撃性及び剛性のバランスに優れ、特に優れた高剛性化を達成できるポリエチレン及び中空プラスチック成形品、特に高性能の燃料タンクに適したポリエチレン及びその製造方法が望まれている。
特開2002−080521号公報 特表2006−512454号公報 WO94/13708国際公開パンフレット 特開2002−020412号公報 特開2003−096127号公報 特開2003−183287号公報 特開2003−313225号公報 特表2004−504416号公報 特開2006−182917号公報
本発明の目的は、成形性、耐久性に優れ、且つ耐衝撃性および剛性のバランスに優れるポリエチレン系樹脂、特に中空プラスチック成形品に適した、耐環境応力亀裂(ESCR)と耐衝撃性が共に高く、両特性のバランスに優れたエチレン系重合体を効率よく製造する触媒を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた結果、焼成活性化したクロム触媒に不活性炭化水素溶媒中で有機アルミニウム化合物を担持し、さらに、溶媒を除去・乾燥して得た触媒を用いることにより、成形性、耐久性に優れ、且つ耐衝撃性および剛性のバランスに優れたエチレン系重合体が得られることを見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、少なくとも一部のクロム原子を6価としたクロム触媒であって、かつ、有機アルミニウム化合物(c)が無機酸化物担体(a)の表面に集中して存在していることを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、電子プローブマイクロアナライザーを用いて、触媒粒子の断面におけるアルミニウム原子含量を測定した際に、触媒粒子の表面のアルミニウム原子検出量が該触媒粒子の内部に存在するアルミニウム原子より多いことを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、無機酸化物担体(a)の表面に有機アルミニウム化合物(c)が存在することにより、少なくとも一部の6価のクロム原子が3価に還元されていることを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、前記エチレン重合用触媒は、無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、先ず、非還元性雰囲気において、焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子を6価とした後、さらに、有機アルミニウム化合物(c)を不活性炭化水素溶媒中で担持させ、次いで、該不活性炭化水素溶媒を除去・乾燥して、得られたものであることを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、有機アルミニウム化合物(c)は、ジアルキルアルミニウムアルコキシド、アルキルアルミニウムジアルコキシドまたはトリアルキルアルミニウムの少なくとも一種であることを特徴とするエチレン重合用触媒が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明に係るエチレン重合用触媒を用いて、エチレン単独重合またはエチレンとα−オレフィンとの共重合を行うことを特徴とするエチレン系重合体の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第6の発明において、前記α−オレフィンは、炭素数が3〜8であることを特徴とするエチレン系重合体の製造方法が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第6又は7の発明に係るエチレン系重合体の製造方法により得られ、かつ温度190℃、荷重21.6kgにおけるハイロードメルトフローレート(HLMFR)が1〜100g/10分、密度が0.935〜0.960g/cmであることを特徴とするブロー成形製品用エチレン系重合体が提供される。
さらに、本発明の第9の発明によれば、第6又は7の発明に係るエチレン系重合体の製造方法により得られ、かつHLMFRが1〜15g/10分、密度が0.940〜0.955g/cmであることを特徴とする大型ブロー成形製品用エチレン系重合体が提供される。
本発明は、上記の如くエチレン重合用触媒などに係るものであるが、その好ましい態様としては、次のものが包含される。
(1)第4の発明において、焼成活性化は、450〜950℃、好ましくは450〜550℃の温度で行うことを特徴とするエチレン重合用触媒。
(2)第4の発明において、有機アルミニウム化合物(c)の担持量は、クロム原子に対する有機アルミニウム化合物のモル比が0.1〜20、好ましくは0.3〜15、更に好ましくは0.5〜10であることを特徴とするエチレン重合用触媒。
(3)第5の発明において、有機アルミニウム化合物(c)は、ジアルキルアルミニウムアルコキシドであることを特徴とするエチレン重合用触媒。
本発明のエチレン重合用触媒を用いることにより、成形性、耐久性に優れ、且つ耐衝撃性および剛性のバランスに優れたエチレン系重合体が得られ、特に中空プラスチック成形品に適した、耐環境応力亀裂(ESCR)と耐衝撃性が共に高く、両特性のバランスに優れたエチレン系重合体を効率よく製造することができる。そして、そのエチレン系重合体は、中空プラスチック製品に適し、その中空プラスチック製品は、成形性、耐久性、バリアー性に優れ、且つ耐衝撃性および剛性のバランスに優れ、燃料タンク、特に自動車用燃料タンク等に好適に用いることができる。
本発明のエチレン重合用触媒が「擬似二元系触媒」であることを説明する模式図である。 伸長粘度のストレインハードニングパラメーター(λmax)の測定方法の説明図である。 本発明のエチレン重合用触媒に係るEPMA分析の例を示す写真である。 本発明のエチレン重合用触媒に係る拡散反射UV−VISによる触媒分析の例を示す図である。
本発明のエチレン重合用触媒は、無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、少なくとも一部のクロム原子を6価としたクロム触媒であって、かつ、有機アルミニウム化合物(c)が無機酸化物担体(a)の表面に集中して存在していることを特徴とするものである。
以下、本発明を、項目毎に具体的に説明する。
I.エチレン重合用触媒(有機アルミニウム化合物担持クロム触媒)の調製
クロム化合物(b)を無機酸化物担体(a)に担持し、非還元性雰囲気で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子が6価となるクロム触媒は、一般にフィリップス触媒として知られており、公知である。
この触媒の概要は、(i)M.P.McDaniel著,Advances in Catalysis,Volume 33,47頁,1985年,Academic Press Inc.、(ii)M.P.McDaniel著,Handbook of Heterogeneous Catalysis,2400頁,1997年,VCH、(iii)M.B.Welchら著,Handbook of Polyolefins:Synthesis and Properties,21頁,1993年,Marcel Dekker等の文献に記載されている。
1.無機酸化物担体(a)
無機酸化物担体としては、周期律表第2、4、13または14族の金属の酸化物を用いることができる。具体的には、マグネシア、チタニア、ジルコニア、アルミナ、シリカ、トリア、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、シリカ−アルミナまたはこれらの混合物が挙げられる。
ESCR及び耐衝撃性が共に優れた自動車用燃料タンク用途には、無機酸化物担体として、シリカのみのほうが好ましい。シリカ以外のものを担体として用いたとき、重合活性が低下し、ポリエチレン系重合体の低分子量成分の増加が原因であると考えられるが、耐衝撃性が低下する傾向にある。
これらのクロム触媒に適する担体の製法、物理的性質および特徴は、(i)C.E.Marsden著,Preparation of Catalysts,Volume V,215頁,1991年,Elsevier Science Publishers、(ii)C.E.Marsden著,Plastics,Rubber and Composites Processing and Applications,Volume 21,193頁,1994年等の文献に記載されている。
本発明においては、クロム触媒の担体の比表面積が250〜800m/g、好ましくは300〜700m/g、さらに好ましくは450〜600m/gと、なるように担体を選択することが好ましい。比表面積が250m/g未満の場合は、分子量分布が狭くかつ長鎖分岐が多くなることと関係すると考えられるが、耐久性、耐衝撃性がともに低下する。また、比表面積が800m/gを超える担体は、製造が難しくなる。
担体の細孔体積としては、一般的なクロム触媒に用いられる担体の場合と同様に、0.5〜3.0cm/g、好ましくは1.0〜2.0cm/g、さらに好ましくは1.2〜1.8cm/gの範囲のものが用いられる。細孔体積が0.5未満の場合は、重合時に重合ポリマーによって細孔が小さくなり、モノマーが拡散できなくなってしまい活性が低下する。細孔体積が3.0cm/gを超える担体は、製造が難しくなる。
また、担体の平均粒径としては、10〜200μm、好ましくは20〜150μm、さらに好ましくは30〜100μmの範囲のものが用いられる。上記範囲を外れると、ESCR及び耐衝撃性のバランスがとりにくくなる。
2.クロム化合物(b)
上記無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持させる。クロム化合物としては、担持後に非還元性雰囲気で焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子が6価となる化合物であればよく、酸化クロム、クロムのハロゲン化物、オキシハロゲン化物、クロム酸塩、重クロム酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、クロム−1,3−ジケト化合物、クロム酸エステル等が挙げられる。
具体的には、三酸化クロム、三塩化クロム、塩化クロミル、クロム酸カリウム、クロム酸アンモニウム、重クロム酸カリウム、硝酸クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、トリス(2−エチルヘキサノエート)クロム、クロムアセチルアセトネート、ビス(tert−ブチル)クロメート等が挙げられる。なかでも三酸化クロム、酢酸クロム、クロムアセチルアセトネートが好ましい。酢酸クロム、クロムアセチルアセトネートのような有機基を有するクロム化合物を用いた場合でも、後に述べる非還元性雰囲気での焼成活性化によって有機基部分は燃焼し、最終的には三酸化クロムを用いた場合と同様に、無機酸化物担体表面の水酸基と反応し、少なくとも一部のクロム原子は6価となってクロム酸エステルの構造で固定化されることが知られている((i)V.J.Ruddickら著,J.Phys.Chem.,Volume 100,11062頁,1996年、(ii)S.M.Augustineら著,J.Catal.,Volume 161,641頁,1996年)。
無機酸化物担体へのクロム化合物の担持は、含浸、溶媒留去、昇華等の公知の方法によって行うことができ、使用するクロム化合物の種類によって適当な方法を用いればよい。担持するクロム化合物の量は、クロム原子として担体に対して、0.2〜2.0重量%、好ましくは0.3〜1.7重量%、さらに好ましくは0.5〜1.5重量%である。
本発明では、無機酸化物担体にクロム化合物が担持されたクロム触媒に、さらにフッ素化合物を含有させることがある。
フッ素化合物の含有方法(フッ素化)は、溶媒中でフッ素化合物溶液を含浸させた後、溶媒を留去する方法、あるいは溶媒を用いずにフッ素化合物を昇華させる方法など、公知の方法によって行うことができ、使用するクロム化合物の種類によって、適宜好適な方法を用いればよい。無機酸化物担体にクロム化合物を担持してからフッ素化合物を含有させてもよいし、フッ素化合物を含有させてからクロム化合物を担持してもよいが、クロム化合物を担持してからフッ素化合物を含有させる方が好ましい。
フッ素化合物の含有量は、フッ素原子の含有量として、0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜8重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%である。
フッ素化合物としては、フッ化水素HF、フッ化アンモニウムNHF、ケイフッ化アンモニウム(NHSiF、ホウフッ化アンモニウムNHBF、一水素二フッ化アンモニウム(NH)HF、ヘキサフルオロリン酸アンモニウムNHPF、テトラフルオロホウ酸HBFのようなフッ素含有塩類が用いられ、なかでも、ケイフッ化アンモニウム、一水素二フッ化アンモニウムが好ましい。
これらを、水又はアルコールなどの有機溶媒に溶解させた後、クロム触媒に含浸させるのが均一性の観点から好ましいが、固体のままクロム触媒と混合するだけでもよい。溶解して含浸させる場合は、表面張力による細孔体積の縮小(shrinkage)を抑えるために、アルコールなどの有機溶媒を用いるのがより好ましい。また、溶媒を用いた場合は、風乾、真空乾燥、スプレードライなど、既知の方法によって、溶媒を飛ばして乾燥させる。
後述する非還元性雰囲気での賦活により、これらのフッ素化合物は、熱分解することによって、無機酸化物担体をフッ素化する。例えば、無機酸化物担体としてシリカを用い、フッ素化合物としてケイフッ化アンモニウムを用いた場合は、ケイフッ化アンモニウムが以下のように熱分解して、フッ化水素HF及びフッ化ケイ素SiFを発生する。
(NHSiF → 2NH + 2HF + SiF
さらに、HF及びSiFがシリカ表面のシラノ−ル基と反応してフッ素化することが知られている(B.Rebenstorf;Journal of Molecular Catalysis Vol.66 p.59(1991)、A.Noshay etal.「Transition Metal Catalyzed Polymerizations−Ziegler・Natta and Metathesis Polymerizations」p.396(1988) Cambridge University Pressを参照。)。
Si−OH + HF → Si−F + H
Si−OH + SIF → Si−O−SiF + HF
2Si−OH + SiF → (Si−O)SiF + 2HF
したがって、フッ素含有塩類のようなフッ素化合物の固体とクロム触媒を混合しただけの場合でも、結局はフッ素化合物が熱分解するので、同様の反応が起こってクロム触媒はフッ素化される。あるいは、賦活工程の間にフッ素化合物を投入する方法でもよい。ただし、の場合、フッ素化合物の固体をガス中で流動化させるので、均一性の観点からできるだけ微細な粒子状のフッ素化合物固体を用いることが好ましい。
3.焼成活性化方法
クロム化合物の担持後、場合によっては、さらにフッ素化合物を担持した後、焼成して活性化処理を行う。
焼成活性化は、通常450〜950℃の温度で行う。焼成活性化は、水分を実質的に含まない非還元性雰囲気、例えば、酸素または空気下で行うことができる。この際、不活性ガスを共存させてもよい。焼成活性化を450℃未満で行うと、重合活性が低下する。好ましくは、モレキュラーシーブス等を流通させ十分に乾燥した空気を用い、流動状態下で行うこの焼成活性化により無機酸化物担体に担持されたクロム化合物のクロム原子が少なくとも一部は6価に酸化されて担体上に化学的に固定される。
自動車用燃料タンクに適したポリエチレンを得るためには、焼成活性化は、450〜550℃、好ましくは470〜530℃、さらに好ましくは490〜510℃の温度にて、30分〜48時間、好ましくは1時間〜24時間、さらに好ましくは2時間〜12時間行う方法が推奨される。550℃を超える温度で行うと、分子量分布が狭くなって、耐衝撃性は向上するものの耐久性が低下し、自動車用燃料タンク用途には適さなくなる。
以上により、本発明で使用するクロム触媒が得られるが、本発明に係るポリエチレン系樹脂の製造に際しては、クロム化合物担持前、またはクロム化合物担持後の焼成活性化前に、チタンテトライソプロポキシドのようなチタンアルコキシド類、ジルコニウムテトラブトキシドのようなジルコニウムアルコキシド類、アルミニウムトリブトキシドのようなアルミニウムアルコキシド類、トリアルキルアルミニウムのような有機アルミニウム類、ジアルキルマグネシウムのような有機マグネシウム類などに代表される金属アルコキシド類もしくは有機金属化合物やケイフッ化アンモニウムのようなフッ素含有塩類等を添加して、エチレン重合活性、α−オレフィンとの共重合性や得られるエチレン系重合体の分子量、分子量分布を調節する公知の方法を併用してもよい。
これらの金属アルコキシド類または有機金属化合物は、非還元性雰囲気での焼成活性化によって有機基部分は、燃焼し、チタニア、ジルコニア、アルミナまたはマグネシアのような金属酸化物に酸化されて触媒中に含まれる。また、フッ素含有塩類の場合は、無機酸化物担体がフッ素化される。
これらの方法は、(i)C.E.Marsden著,Plastics,Rubber and Composites Processing and Applications,Volume 21,193頁,1994年、(ii)T.Pullukatら著,J.Polym.Sci.,Polym.Chem.Ed.,Volume 18, 2857頁,1980年、(iii)M.P.McDanielら著,J.Catal.,Volume 82,118頁,1983年等の文献に記載されている。
本発明において、ESCR及び耐衝撃性が共に優れた自動車用燃料タンク用途には、無機酸化物であるシリカ担体のみであるほうが好ましい。これらの金属アルコキシド類もしくは有機金属化合物を無機酸化物に加えると、ポリエチレン重合体の低分子量成分の増加あるいは分子量分布の狭窄化が起きる傾向にある。
4.有機アルミニウム化合物(c)
本発明においては、焼成活性化したクロム触媒に、不活性炭化水素溶媒中で有機アルミニウム化合物(c)を担持し、さらに溶媒を除去・乾燥することにより、有機アルミニウム化合物担持クロム触媒が得られる。
用いられる有機アルミニウム化合物(c)としては、トリアルキルアルミニウムおよび/またはジアルキルアルミニウムアルコキシド化合物が好ましい。
上記トリアルキルアルミニウムは、下記一般式(1)で示される化合物である。
Figure 2011006589
(式中、R、R,Rは、炭素原子数1〜18のアルキル基であり、同一であっても異なっていてもよい。)
トリアルキルアルミニウムの具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−プロピルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−ヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等が挙げられ、なかでもトリエチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−ヘキシルアルミニウムが好ましい。
ジアルキルアルミニウムアルコキシドは、下記一般式(2)で示される化合物である。
Figure 2011006589
(式中、R、R、Rは、同一であっても異なってもよく、各々アルキル基を表す。ここで、R、R、Rのアルキル基は、シクロアルキル基も含む。)
一般式(2)の化合物の中でも、下記一般式(3)で示されるジアルキルアルミニウムアルコキシドが好ましい。
Figure 2011006589
(式中、R、Rは、同一であっても異なってもよく、各々炭素原子数1〜18のアルキル基を表す。R、Rは、同一であっても異なってもよく、各々水素原子またはアルキル基を表すが、少なくともいずれかの1つはアルキル基である。ここで、R、R、R、Rのアルキル基は、シクロアルキル基も含む。また、R、Rは連結して、環を形成してもよい。)
さらに、触媒の活性において、一般式(3)の化合物の中でも最も好ましいのは、下記一般式(4)で示されるジアルキルアルミニウムアルコキシドである。
Figure 2011006589
(式中、R、R、R10は同一であっても異なってもよく、各々アルキル基を表す。ここで、R、R、R10のアルキル基はシクロアルキル基も含む。)
一般式(2)で示されるジアルキルアルミニウムアルコキシドにおいて、R、Rの具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、n−デシル、n−ドデシル、シクロヘキシルなどが挙げられるが、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチルが好ましく、なかでもメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチルが特に好ましい。
また、Rの具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘプチル、n−ノニル、n−ウンデシル、シクロヘキシルなどが挙げられるが、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘプチルが好ましく、なかでもメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピルが特に好ましい。
一般式(2)で示されるジアルキルアルミニウムアルコキシドの具体例としては、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジn−ブチルアルミニウムメトキシド、ジi−ブチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジn−ブチルアルミニウムエトキシド、ジi−ブチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムn−プロポキシド、ジエチルアルミニウムn−プロポキシド、ジn−ブチルアルミニウムn−プロポキシド、ジi−ブチルアルミニウムn−プロポキシド、ジメチルアルミニウムi−プロポキシド、ジエチルアルミニウムi−プロポキシド、ジn−ブチルアルミニウムi−プロポキシド、ジi−ブチルアルミニウムi−プロポキシド、ジメチルアルミニウムn−ブトキシド、ジエチルアルミニウムn−ブトキシド、ジn−ブチルアルミニウムn−ブトキシド、ジi−ブチルアルミニウムn−ブトキシド、ジメチルアルミニウムi−ブトキシド、ジエチルアルミニウムi−ブトキシド、ジn−ブチルアルミニウムi−ブトキシド、ジi−ブチルアルミニウムi−ブトキシド、ジメチルアルミニウムt−ブトキシド、ジエチルアルミニウムt−ブトキシド、ジn−ブチルアルミニウムt−ブトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(ジシクロプロピル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(ジシクロプロピル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(ジシクロプロピル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(ジシクロプロピル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(ジシクロブチル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(ジシクロブチル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(ジシクロブチル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(ジシクロブチル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(ジシクロペンチル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(ジシクロペンチル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(ジシクロペンチル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(ジシクロペンチル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(ジシクロヘキシル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(ジシクロヘキシル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(ジシクロヘキシル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(ジシクロヘキシル)メトキシド、ジメチルアルミニウムシクロプロポキシド、ジエチルアルミニウムシクロプロポキシド、ジn−ブチルアルミニウムシクロプロポキシド、ジi−ブチルアルミニウムシクロプロポキシド、ジメチルアルミニウムシクロブトキシド、ジエチルアルミニウムシクロブトキシド、ジn−ブチルアルミニウムシクロブトキシド、ジi−ブチルアルミニウムシクロブトキシド、ジメチルアルミニウムシクロペントキシド、ジエチルアルミニウムシクロペントキシド、ジn−ブチルアルミニウムシクロペントキシド、ジi−ブチルアルミニウムシクロペントキシド、ジメチルアルミニウムシクロへキソキシド、ジエチルアルミニウムシクロへキソキシド、ジn−ブチルアルミニウムシクロへキソキシド、ジi−ブチルアルミニウムシクロへキソキシドが挙げられる。
これらの中でも、一般式(3)で示されるアルコキシド部分の酸素に直接結合する炭素が一級又は二級炭素であるものが、触媒活性およびその他の触媒性能を考慮すると好ましい。
その具体例としては、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジn−ブチルアルミニウムメトキシド、ジi−ブチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジn−ブチルアルミニウムエトキシド、ジi−ブチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムn−プロポキシド、ジエチルアルミニウムn−プロポキシド、ジn−ブチルアルミニウムn−プロポキシド、ジi−ブチルアルミニウムn−プロポキシド、ジメチルアルミニウムi−プロポキシド、ジエチルアルミニウムi−プロポキシド、ジn−ブチルアルミニウムi−プロポキシド、ジi−ブチルアルミニウムi−プロポキシド、ジメチルアルミニウムn−ブトキシド、ジエチルアルミニウムn−ブトキシド、ジn−ブチルアルミニウムn−ブトキシド、ジi−ブチルアルミニウムn−ブトキシド、ジメチルアルミニウムi−ブトキシド、ジエチルアルミニウムi−ブトキシド、ジn−ブチルアルミニウムi−ブトキシド、ジi−ブチルアルミニウムi−ブトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(ジシクロプロピル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(ジシクロプロピル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(ジシクロプロピル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(ジシクロプロピル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(ジシクロブチル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(ジシクロブチル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(ジシクロブチル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(ジシクロブチル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(ジシクロペンチル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(ジシクロペンチル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(ジシクロペンチル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(ジシクロペンチル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(ジシクロヘキシル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(ジシクロヘキシル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(ジシクロヘキシル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(ジシクロヘキシル)メトキシド、ジメチルアルミニウムシクロプロポキシド、ジエチルアルミニウムシクロプロポキシド、ジn−ブチルアルミニウムシクロプロポキシド、ジi−ブチルアルミニウムシクロプロポキシド、ジメチルアルミニウムシクロブトキシド、ジエチルアルミニウムシクロブトキシド、ジn−ブチルアルミニウムシクロブトキシド、ジi−ブチルアルミニウムシクロブトキシド、ジメチルアルミニウムシクロペントキシド、ジエチルアルミニウムシクロペントキシド、ジn−ブチルアルミニウムシクロペントキシド、ジi−ブチルアルミニウムシクロペントキシド、ジメチルアルミニウムシクロへキソキシド、ジエチルアルミニウムシクロへキソキシド、ジn−ブチルアルミニウムシクロへキソキシド、ジi−ブチルアルミニウムシクロへキソキシドが挙げられる。
さらに、これらの中でも、一般式(4)で示されるアルコキシド部分の酸素に直接結合する炭素が一級炭素であるものが、触媒活性およびその他の触媒性能を考慮すると好ましい。
その具体例としては、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジn−ブチルアルミニウムメトキシド、ジi−ブチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジn−ブチルアルミニウムエトキシド、ジi−ブチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムn−プロポキシド、ジエチルアルミニウムn−プロポキシド、ジn−ブチルアルミニウムn−プロポキシド、ジi−ブチルアルミニウムn−プロポキシド、ジメチルアルミニウムn−ブトキシド、ジエチルアルミニウムn−ブトキシド、ジn−ブチルアルミニウムn−ブトキシド、ジi−ブチルアルミニウムn−ブトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロプロピル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロブチル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロペンチル)メトキシド、ジメチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジエチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジn−ブチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシド、ジi−ブチルアルミニウム(シクロヘキシル)メトキシドが挙げられる。
さらに、これらの中でも、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムn−ブトキシド、ジn−ブチルアルミニウムエトキシド、ジn−ブチルアルミニウムn−ブトキシド、ジエチルアルミニウムi−ブトキシド、ジi−ブチルアルミニウムエトキシド、ジi−ブチルアルミニウムi−ブトキシドが好適である。
ジアルキルアルミニウムアルコキシドは、(i)トリアルキルアルミニウムとアルコールを反応させる方法、(ii)ジアルキルアルミニウムハライドと金属アルコキシドを反応させる方法により、簡単に合成することができる。
すなわち、一般式(2)で示されるジアルキルアルミニウムアルコキシドを合成するには、以下の式に示すようにトリアルキルアルミニウムとアルコールを1:1のモル比で反応させる方法、
Figure 2011006589
(式中、R’、R11,R12,R13は、同一でも異なってもよく、各々アルキル基を表す。)
または以下の式に示すように、ジアルキルアルミニウムハライドと金属アルコキシドを1:1のモル比で反応させる方法が好ましく用いられる。
Figure 2011006589
(式中、R14,R15,R16は、同一でも異なってもよく、各々アルキル基を表す。ジアルキルアルミニウムハライド:R1415AlXにおけるXは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、特に塩素が好ましく用いられる。また、金属アルコキシド:R16OMにおけるMは、アルカリ金属であり、特にリチウム、ナトリウム、カリウムが好ましい。)
副生成物:R’−Hは、不活性なアルカンであり、沸点が低い場合は反応過程で系外に揮発していくか、沸点が高い場合は溶液中に残るが、たとえ系中に残存しても、以後の反応には不活性である。また、副生成物:M−Xは、ハロゲン化アルカリ金属であり、沈殿するので、濾過またはデカンテーションにより簡単に除去できる。
これらの反応は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの不活性炭化水素中で行うことが好ましい。反応温度は、反応が進行するならば任意の温度でよいが、好ましくは0℃以上、さらに好ましくは20℃以上で行う。使用した溶媒の沸点以上で加熱し、溶媒の還流下で反応を行わせることは、反応を完結させる上でよい方法である。反応時間は任意でよいが、好ましくは1時間以上、さらに好ましくは2時間以上行うのがよい。反応終了後は、そのまま冷却し、溶液のままクロム触媒との反応に供してもよいし、溶媒を除去して、反応生成物を単離してもよいが、溶液のまま用いるのが簡便で好ましい。
ジアルキルアルミニウムアルコキシドの合成方法および物理的・化学的性質については、T.Moleら著,Organoaluminum Compounds,3rd.ed.,1972年,Elsevier,第8章等に詳しく書かれている。
有機アルミニウム化合物(c)の担持量は、クロム原子に対する有機アルミニウム化合物のモル比が0.1〜20であり、好ましくは0.3〜15、更に好ましくは0.5〜10である。
自動車燃料タンクに適したポリエチレンを得るためには、クロム原子に対する有機アルミニウム化合物のモル比は、0.5〜2.0、好ましくは0.7〜1.8、更に好ましくは1.0〜1.5である。このモル比を0.5〜2.0とすることにより、例えば、アルキルアルミニウムアルコキシド化合物を担持しない場合に比べて、エチレン重合活性が大幅に向上する。また、水素を共存させる重合条件下では、耐久性が向上する。このモル比が0.5未満では、水素を共存させる重合条件下でも、アルキルアルミニウムアルコキシド化合物を担持した効果が十分には発現されず、エチレン重合活性、耐久性はアルキルアルミニウムアルコキシド化合物を担持しない場合とさほど変わらない。一方、このモル比が2.0を超えると、エチレン重合活性がアルキルアルミニウムアルコキシド化合物を担持しない場合よりも、低下するとともに、分子量分布が広くなり、耐久性は向上するものの耐衝撃性は低下してしまう。この活性低下の理由は不明であるが、過剰のアルキルアルミニウムアルコキシド化合物がクロム活性点と結合してエチレン重合反応を阻害しているためと考えられる。
有機アルミニウム化合物を担持する方法としては、焼成活性化後のクロム触媒を不活性炭化水素中の液相で接触させる方法ならば、特に限定されない。例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの不活性炭化水素溶媒に焼成活性化後のクロム触媒を混合して、スラリー状態とし、これに有機アルミニウム化合物を添加する方法が好ましい。添加する有機アルミニウム化合物は、上記不活性炭化水素溶媒で希釈してもよいし、希釈せずに添加してもよい。希釈用溶媒と担持用の溶媒は同じでも異なってもよい。
不活性炭化水素溶媒の使用量は、触媒の調製時に少なくともスラリー状態で攪拌を行えるに十分な量であることが好ましい。このような量であれば、溶媒の使用量は、特に限定されないが、例えば焼成活性化後のクロム触媒1g当たり溶媒2〜20gを使用することができる。
本発明において、不活性炭化水素溶媒中でクロム触媒を有機アルミニウム化合物により処理する際に、溶媒への有機アルミニウム化合物とクロム触媒の添加順序は、任意である。
具体的には、不活性炭化水素溶媒にクロム触媒を懸濁させ、有機アルミニウム化合物を添加してこれを攪拌する担持反応の操作が好ましい。
また、担持反応の温度は、0〜150℃、好ましくは10〜100℃、さらに好ましくは20〜80℃、担持反応の時間は、5分〜8時間、好ましくは30分〜6時間、さらに好ましくは1〜4時間である。
攪拌を停止して担持操作を終了した後は、速やかに溶媒を除去することが必要である。この溶媒の除去は、減圧乾燥により行うが、この際濾過を併用することもできる。この減圧乾燥では、有機アルミニウム化合物担持クロム触媒が自由流動性の粉末として得られるように乾燥させる。触媒を溶媒と分離せずに長時間保管すると、触媒が経時劣化し、エチレン重合活性が低下する。その上、分子量分布が広くなるため、耐久性は向上するものの耐衝撃性は低下し、耐久性と耐衝撃性のバランスが悪化するので好ましくない。
したがって、担持反応の際の溶媒との接触時間をも含めて、溶媒との接触時間を極力短縮し、速やかに溶媒を分離・除去することが好ましい。速やかな溶媒の分離・除去によって、重合活性および耐久性と耐衝撃性のバランスが向上したポリエチレン系樹脂が得られるという効果を記載した技術文献は、見当たらず、担持反応後に溶媒を速やかに分離することは、本発明の最も重要な特徴点の一つである。
従って、重合活性や得られる重合体の衝撃強度が実質的に低下しないよう、たとえ低下してもその低下の程度が最小限となるよう、担持反応における溶媒接触の時間も合算して溶媒との接触時間を可能な限り短くなるようにする。すなわち、溶媒との接触時間である担持反応時間も、可能な限り短縮し、担持後は速やかに溶媒を分離し、過還元反応が進行しないようにする必要がある。
担持反応終了後、溶媒を分離し乾燥終了するのに要する時間は、20時間以内が好ましく、さらに15時間以内が好ましく、特に10時間以内が好ましい。担持開始から溶媒除去・乾燥完了となるまでの合計の時間は、5分〜28時間、好ましくは30分〜24時間、さらに好ましくは1〜20時間である。
II.エチレン重合用触媒の機能、メカニズム
クロム化合物(b)として酢酸クロムを用いて、焼成活性化した時、シリカ表面で起きる反応を下記に示した。
シリカ表面のシラノール基と酢酸クロムが反応し、カルボキシル基は燃焼してしまい、クロム酸エステル構造となる。この焼成活性化したクロム触媒によるエチレン重合では、重合時にクロム酸エステル構造がエチレンによって還元される。この還元に要する時間を誘導時間という。エチレンによる還元反応によって、反応に示したようにクロム部分が重合活性前駆体構造になることで、エチレンの重合が開始される。
Figure 2011006589
一方、焼成活性化したクロム酸エステル構造をとるクロム触媒に対して、有機アルミニウム化合物処理をすることにより、6価であったクロム原子の少なくとも一部分は、低原子価のクロム原子に還元される。この現象は、焼成活性化後のクロム触媒が6価のクロム原子特有のオレンジ色であるのに対して、例えば、有機アルミニウム化合物のジアルキルアルミニウムアルコキシド化合物による担持操作をされたクロム触媒が緑色もしくは青緑色であることから確認できる。
この反応を下記に示す。この活性点は、すでに還元されている状態であるので、エチレン重合時において先にあったような誘導時間を必要としない。
Figure 2011006589
また、拡散反射UV−VIS測定の結果から、有機アルミニウム化合物処理をする前は、クロム3価のピークがなかったのに対して、有機アルミニウム化合物を加えた触媒では、6価のピーク強度が減り、3価のピークが現れている。この結果からも、有機アルミニウム化合物によって、少なくともクロム原子の一部が3価に還元されていることが示される。
ここで加えている有機アルミニウム量は、シリカゲルの量に比べて極めて少ないため、加えた有機アルミニウム化合物は、シリカ粒子の表面に集中して存在し、反応しているものと考えられる。
この加えた有機アルミニウム化合物が表面に集中して存在していることは、EPMAの結果からも支持されている。つまり、この有機アルミニウム化合物担持クロム触媒は、一つのシリカ粒子の中で有機アルミニウム化合物が存在していない内側部分(部分A)と、有機アルミニウムによって少なくとも一部のクロム原子が還元されている表面部分(部分B)を有しており、その意味でこの触媒は、「擬似二元系触媒」と呼ぶことができる(図1参照。)。アルミニウム原子は、担体表面に多く存在しているということから、模擬的に図示すると、図1のようになる。
この擬似二元化触媒に、エチレンを導入した時、予め有機アルミニウム化合物によって還元されているCr活性点から生じるポリエチレンと、エチレンを導入することによって還元されるCr活性点から生じるポリエチレンとでは、異なった特徴をもっていてもなんらおかしくはない。
実際、加える有機アルミニウム化合物の量を増やしていくと、生成ポリエチレンのHLMFR(ハイロードメルトフローレート、温度190℃、荷重21.6kg)が大きくなる、すなわち平均分子量が小さくなっていくということが確かめられている。有機アルミニウム化合物と全く反応していない部分A(内側部分)から生成する重合ポリマーよりも低分子量成分の山をもったポリマーが、少なくとも一部分は有機アルミニウム化合物によって還元されている部分B(表面部分)からは生成しているのではないかと考えられる。
つまり、ひとつの触媒で二種類の異なった性質をもつ分子量分布を掛け持ちしたポリエチレンが作られるのである。結果として、有機アルミニウム化合物を加えていないクロム触媒から得られるポリエチレンと比べると、擬似二元系触媒である本発明の触媒からは広い分子量分布を持つポリエチレンが得られる。
また、この触媒系の特徴のひとつとして、次のことが考察できる。
すなわち、ジエチルアルミニウムエトキシドに代表される、ジアルキルアルコキシド類をクロム触媒に加えることにより、加える前に比べて、触媒の共重合性が低下することは知られている。このことを「擬似二元系触媒」の考え方に照らし合わせて考えると、部分Aの共重合性は変わっていないが、部分Bの共重合性が低下することにより、全体の触媒として共重合性が低下したといえる。つまり、ジアルキルアルコキシド担持クロム触媒は、アルミニウム非担持クロム触媒と比べて、低分子量成分に分岐鎖が多く含まれていないポリエチレンを生成させる。
一般的にクロム触媒の欠点として、低分子量成分に比べて、高分子量成分に分岐が組み込まれにくいことが知られている。しかしながら、ジアルキルアルコキシド担持クロム触媒を使うことにより、低分子量成分の共重合性を低くし、全体に占める相対的な高分子量成分の分岐数を多くすることができるのである。
電子線プローブマイクロアナライザー(Electron Probe Micro Analyzer ;以下、EPMAと略する。)は、以下のような原理を持った装置である。
直径1μm以下に絞り加速させた電子線を試料表面にあて、そこから出てくる特性X線を、X線分光器で測定する。特性X線は、各元素の原子核を取り巻く内殻電子の遷移によって発生するX線で、元素に固有な幾つかの波長(エネルギー)としてあらわれる。よって特性X線の波長から元素の種類が、その強度から元素の含有量がわかる。
本発明における触媒粒子をある断面でカットして、その断面についてのアルミニウム原子含量について、EPMAを用いて測定すると、図3における粒子の表面部分は、アルミニウム原子が、通常0.25〜3.5wt%、好ましくは0.25〜2.5wt%、さらに好ましくは0.25〜1.5wt%である。また、図3の粒子の内部は、アルミニウム原子が、図3の粒子の表面部分のアルミニウム原子に比べて、通常1wt%以下、好ましくは1.5wt%以下、さらに好ましくは2.0wt%以下である。
また、本発明における触媒粒子をある断面でカットして、その断面についてのアルミニウム原子含量について、EPMAを用いて測定すると、粒子の表面に存在するアルミニウム原子が0.25wt%である領域の層の厚さとしては、通常5〜50μm、好ましくは5〜40μm、さらに好ましくは5〜25μmである粒子を含む触媒であることが望ましい。
III.エチレン系重合体
1.エチレン系重合体の重合方法
本発明に係る重合方法によれば、有機アルミニウム化合物を予めクロム触媒に担持し、クロム原子に対する有機アルミニウム化合物のモル比が常に一定の触媒を反応器中に供給するので、同一規格の成形品を安定的に連続生産することができる。
従って、本発明のエチレン系重合体の重合方法は、一定品質のポリエチレン系樹脂を連続生産するのに好適な優れた方法である。
一方、本発明のように担持反応の際の溶媒を速やかに分離・除去した触媒を用いる方法ではなく、クロム触媒と有機アルミニウム化合物とを反応器に希釈溶媒の存在下または不存在下に直接または別々にフィードする方法と、クロム触媒と有機アルミニウム化合物を一旦溶媒中で予備混合または接触させ、この混合スラリーを反応器にフィードする方法では、エチレン重合活性が低下する。その上、分子量分布が広くなるため、耐久性は向上するものの耐衝撃性は低下し、耐久性と耐衝撃性のバランスは悪化するので好ましくない。
上記の有機アルミニウム化合物担持クロム触媒を用いて、エチレン系重合体の製造を行うに際しては、スラリー重合、溶液重合のような液相重合法あるいは気相重合法など、いずれの方法を採用することができる。
液相重合法は、通常炭化水素溶媒中で行う。炭化水素溶媒としては、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの不活性炭化水素の単独または混合物が用いられる。
また、気相重合法は、不活性ガス共存下にて、流動床、撹拌床等の通常知られる重合法を採用でき、場合により重合熱除去の媒体を共存させる、いわゆるコンデンシングモードを採用することもできる。
液相または気相重合法における重合温度は、一般的には0〜300℃であり、実用的には20〜200℃、好ましくは50〜180℃、さらに好ましくは70〜150℃である。反応器中の触媒濃度およびエチレン濃度は、重合を進行させるのに十分な任意の濃度でよい。例えば、触媒濃度は、液相重合の場合、反応器内容物の質量を基準にして、約0.0001〜約5質量%の範囲とすることができる。同様にエチレン濃度は、気相重合の場合、全圧として0.1〜10MPaの範囲とすることができる。
本発明において、目的とするESCRと耐衝撃性のバランスに優れたエチレン系重合体、特にブロー成形製品に適し、なかんずく大型ブロー成形製品に適したエチレン系重合体を製造するためには、水素をエチレンと共存させて、重合を行うことが必須である。具体的には、水素とエチレンを特定の比率とした条件下で重合させることが必要である。水素は、一般的には分子量を調節するためのいわゆる連鎖移動剤としての働きを有するといわれているが、水素のほかエチレンも考慮し、水素とエチレンを特定の比率として重合させることにより、ESCRと耐衝撃性のバランスを向上させる効果を奏することを明確に示した従来技術は、見当たらない。水素とエチレンを特定の比率とした条件下で重合させることにより、ESCRと耐衝撃性とをバランス良く向上させることは、本発明の重要な特徴点の一つである。
エチレン系重合体のHLMFR(ハイロードメルトフローレート、温度190℃、荷重21.6kg)を上げるために、特に水素を共存させて重合することがある。水素の共存させることによって、重合温度を下げて、より一層分子量分布を広げることができる。その結果、分子量分布を広げ、ESCRを向上させる可能性があるというのが、水素を共存させる時のポイントである。
エチレンの重合が液相重合法の場合には、その液相中の水素濃度(質量%)(Hcと略記する。)と液相中のエチレン濃度(質量%)(ETcと略記する。)との比が、1.0×10−4≦Hc/ETc≦7.0×10−3、好ましくは3.0×10−4≦Hc/ETc≦7.0×10−3、さらに好ましくは3.0×10−4≦Hc/ETc≦5.0×10−3の関係を満たす条件で重合を行う。
また、気相重合法の場合には、反応器中の水素分圧(MPa)(Hpと略記する。)と反応器中のエチレン分圧(MPa)(ETpと略記する。)との比が、1.0×10−4≦Hp/ETp≦1.0、好ましくは3.0×10−4≦Hp/ETp≦8.0×10−1、さらに好ましくは5.0×10−4≦Hp/ETp≦5.0×10−1の関係を満たす条件で重合を行う。
エチレンと共存させる水素とエチレンの濃度比または分圧比は、水素とエチレンの濃度または分圧を変えることによって、容易に調整することができる。前述したように、水素は、連鎖移動剤としての働きも有するので、Hc/ETcまたはHp/ETpを変えた場合、同一HLMFRの製品を得るためには、重合温度も変えなければならない。すなわち、Hc/ETcまたはHp/ETpを上げた場合には、重合温度を下げ、Hc/ETcまたはHp/ETpを下げた場合には、重合温度を上げなければならない。ただし、水素濃度または分圧の絶対値によるので同一HLMFRの製品を得るためには、必ず重合温度を変える必要があるわけではない。
本発明の方法により、エチレンの重合を行うに際し、コモノマーとして、α−オレフィンを共重合することが好ましい。α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンなどを単独または2種類以上反応器に導入して共重合を行う。好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、さらに好ましくは1−ヘキセンがコモノマーとして好適に用いられる。得られるポリエチレン系樹脂中のα−オレフィン含量は、15mol%以下、好ましくは10mol%以下が望ましい。
2.エチレン系重合体の物性と用途
本発明の方法により、HLMFRが0.1〜1000g/10分、好ましくは0.5〜500g/10分、密度が0.900〜0.980g/cm、好ましくは0.920〜0.970g/cmのエチレン系重合体が得られる。
得られるエチレン系重合体は、ESCRと耐衝撃性が高くバランスに優れるので、特にブロー成形製品、なかんずく大型ブロー成形製品で大きな効果を発揮する。ブロー成形製品用のエチレン系重合体のHLMFRは、1〜100g/10分、特に大型ブロー成形製品用のエチレン系重合体は、1〜15g/10分である。ブロー成形製品用のエチレン系重合体の密度は、0.935〜0.960g/cm、特に大型ブロー成形製品用のエチレン系重合体の密度は、0.940〜0.955g/cmである。
重合方法としては、反応器を一つ用いてエチレン系重合体を製造する単段重合だけでなく、分子量分布を広げるために少なくとも二つの反応器を連結させて多段重合を行うこともできる。多段重合の場合、二つの反応器を連結させ、第一段の反応器で重合して得られた反応混合物を続いて第二段の反応器に連続して供給する二段重合が好ましい。第一段の反応器から第二段の反応器への移送は、差圧により連結管を通して、第一段反応器からの重合反応混合物の連続的排出により行われる。
第一段反応器で高分子量成分、第二段反応器で低分子量成分を、または第一段反応器で低分子量成分、第二段反応器で高分子量成分を、それぞれ製造するいずれの方法でもよいが、第一段反応器で高分子量成分、第二段反応器で低分子量成分を製造する方が、第一段から第二段への移行にあたり中間の水素のフラッシュタンクを必要としないため、生産性の面でより好ましい。
第一段においては、エチレン単独または必要に応じてα−オレフィンとの共重合を、水素濃度のエチレン濃度に対する質量比または分圧比(Hc/ETcまたはHp/ETp)、重合温度または両者により分子量を調節しながら、またα−オレフィン濃度のエチレン濃度に対する質量比または分圧比により密度を調節しながら、重合反応を行う。
第二段においては、第一段から流れ込む反応混合物中の水素および同じく流れ込むα―オレフィンがあるが、必要に応じて、それぞれ新たな水素、α―オレフィンを加えることができる。したがって、第二段においても、水素濃度のエチレン濃度に対する質量比もしくは分圧比(Hc/ETcもしくはHp/ETp)、重合温度または両者により分子量を調節しながら、またα−オレフィン濃度のエチレン濃度に対する質量比または分圧比により密度を調節しながら重合反応を行うことができる。触媒や有機アルミニウム化合物のような有機金属化合物についても、第一段から流れ込む触媒により二段目で引き続き重合反応を行うだけでなく、第二段で新たに触媒、有機アルミニウム化合物のような有機金属化合物またはその両者を供給してもよい。
二段重合によって製造する場合の高分子量成分と低分子量成分の比率としては、高分子量成分が10〜90質量部、低分子量成分が90〜10質量部、好ましくは高分子量成分が20〜80質量部、低分子量成分が80〜20質量部、さらに好ましくは高分子量成分が30〜70質量部、低分子量成分が70〜30質量部である。
また、高分子量成分のHLMFRは、0.01〜100g/10分、好ましくは0.01〜50g/10分であり、一方、低分子量成分のMFR(JIS K7210(1996年版)の表1、条件4に従い、温度190℃、荷重21.18Nにおける測定値)は、10〜1000g/10分、好ましくは10〜500g/10分である。
二段重合で得られるエチレン系重合体のHLMFRは、0.1〜1000g/10分、好ましくは0.5〜500g/10分であるが、ブロー成形製品用樹脂としては1〜100g/10分、特に大型ブロー成形製品用樹脂としては1〜15g/10分である。二段重合で得られるエチレン系重合体の密度は、0.900〜0.980g/cm、好ましくは0.920〜0.970g/cmであるがブロー成形製品用樹脂としては0.935〜0.960g/cm、特に大型ブロー成形製品用樹脂としては0.940〜0.955g/cmである。得られたエチレン系重合体は、混練することが好ましい。混練は単軸または二軸の押出機または連続式混練機を用いて行うことができる。また得られるエチレン系共重合体は、常法によりブロー成形することができる。
単段重合、多段重合いずれの重合方法により得られるエチレン系重合体は、次の要件が満たされることが好ましい。
(1)伸長粘度のストレインハードニングパラメーター(λmax)、すなわち、伸長粘度の測定における歪硬化度(λmax)は、1.05〜2.0である。
(2)全周ノッチ式引張クリープ試験の破断時間と密度は、次式を満足する。
log(破断時間) ≧ −355×(密度) + 337.6
(3)シャルピー衝撃強度が8kJ/m以上である。
本発明で得られるエチレン系重合体の用途としては、燃料タンク、灯油缶、ドラム缶、薬品用容器、農薬用容器、溶剤用容器、またはプラスチックボトルといった中空プラスチック成形品である。
アルミニウム化合物担持クロム触媒を用いて、本発明に係るポリエチレン系樹脂を得る際、それぞれのアルミニウム化合物を用いた場合の特徴および耐クリープ性に代表される耐久性を向上させるための重合条件との関係を記す。
ポリエチレン系樹脂の耐クリープ性を向上させるには、分子量分布を広くすることが重要である。すなわち、耐クリープ性を向上するには、分子量をなるべく高くするのが好ましいが、分子量が高過ぎると樹脂の成形ができなくなってしまうので、流れ性を付与するために、低分子量領域のポリエチレンも必要で、結果として分子量分布を広くする必要がある(J.Scheirs,W.Kaminsky編,Metallocene−based Polyolefins,Volume2,365頁,2000年,John Wiley & Sons参照。)。
一般的なクロム触媒でポリエチレン系樹脂を得る場合、分子量分布を広くするには、賦活温度および/または重合温度を下げるのが通常の手段である(例えば、松浦一雄・三上尚孝編著、「ポリエチレン技術読本」、134頁、2001年、工業調査会参照。)。
しかし、賦活温度および/または重合温度を下げると、活性が低下するのが一般的であり、また同時にHLMFRも低下してしまうので(前出「ポリエチレン技術読本」、134頁参照。)、所定のHLMFRのポリエチレン系樹脂を得るための経済的に製造可能な重合条件が設定できないことが多い。
一般的なクロム触媒の場合、賦活温度が450℃を下回ると、重合活性が激減してしまうこと、重合温度を低下させて分子量分布を広げても、所定のHLMFR範囲を下回ってしまうことから、このレベルの広い分子量分布を実用的に製造可能とするのは困難である。
しかし、例えば、本発明のジアルキルアルミニウムアルコキシド化合物担持クロム触媒では、これが達成できる。すなわち、ジアルキルアルミニウムアルコキシド化合物を担持することにより、同一重合条件でのHLMFRがトリアルキルアルミニウム化合物を担持する場合に比べて、Mw/Mn=20〜30(トリアルキルアルミニウム化合物担持の場合の分子量分布)を保ったまま分子量が大きく向上し、重合温度を下げて、より一層分子量分布を広げることができるのが、ポイントである。
その結果、所定のHLMFR範囲の中でMw/Mn>30とすることができ、しかも重合活性は、実用的に製造可能なレベルを保つことができる。また、ジアルキルアルミニウムアルコキシド化合物担持の場合にも、より高分子量領域に短鎖分岐が導入できる効果はあると考えられ、併せてより分子量分布を広げられることにより、一層の耐クリープ性向上を達成できたと、考えられる。
以下においては、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明し、本発明の卓越性と本発明の構成における優位性を実証するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(I)各種測定方法
実施例および比較例において、使用した測定方法は以下の通りである。
1.オートクレーブ中における液相中の水素濃度およびエチレン濃度の定量:
JIS K2301(2004年版)に従い、触媒を導入しない状態で予め各実施例、比較例条件の重合温度、水素分圧、エチレン分圧での水素濃度およびエチレン濃度をガスクロマトグラフ法で分析し定量した。オートクレーブ内の溶液を少量抜き出して気化させ、島津製作所製ガスクロマトグラフGC−14Aを用い、前記JISの10頁、表2、カラム組合せBの分析条件にて、熱伝導度検出器により水素濃度およびエチレン濃度を定量した。
2.オートクレーブ重合で得られたポリエチレン系樹脂の物性評価:
(i)物性測定のためのポリマー前処理:
添加剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の酸化防止剤とリン系安定剤のブレンド物である「IRGANOX B225」を0.2重量%添加し、単軸押出機にて混練し、ペレタイズした。
(ii)ハイロードメルトフローレート(HLMFR):
JIS K7210(2004年版)の附属書A表1―条件Gに従い、試験温度190℃、公称荷重21.60kgおける測定値をHLMFRとして示した。
(iii)密度:
JIS K7112(2004年版)に従い、測定した。
(iv)分子量分布(Mw/Mn):
生成エチレン系重合体について、下記の条件でゲル透過クロマトグラフ(GPC)を行ない、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めて、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
[ゲル透過クロマトグラフ測定条件]:
装置:Waters 150Cモデル、
カラム:Shodex−HT806M、
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン、
温度:135℃、
単分散ポリスチレンフラクションを用いてユニバーサル評定。
MwのMnに対する比率(Mw/Mn)で示される分子量分布(Mw/Mnが大きいほど分子量分布が広い)については、「サイズ排除クロマトグラフィー(高分子の高速液体クロマトグラフィー)」(森定雄著,共立出版,96頁)に記載された分子量と検出器感度の式にn−アルカンおよびMw/Mn≦1.2の分別直鎖ポリエチレンのデータを当てはめて、次式で示される分子量Mの感度を求め、サンプル実測値の補正を行った。
分子量Mの感度=a+b/M
(a、bは定数で、a=1.032、b=189.2である。)
(v)伸長粘度のストレインハードニングパラメーター(λmax):
インテスコ社製キャピラリーレオメーターを使用し、温度190℃にて3mmφ×15mmLのキャピラリーを使用し、ピストン速度20mm/分で試験片を作製した。
東洋精機製作所製メルテンレオメーターを使用し、予熱時間15分とし、温度170℃、歪み速度0.1/sで伸長粘度を測定した。時間tと伸長粘度ηの両対数グラフにおいて得られた粘度成長曲線には、ストレインハードニング(歪み硬化)が生じる場合、線形部と非線形部がある。非線形部の最大伸長粘度ηE,maxと、ηE,maxを与える時間での線形部での推測粘度ηL,maxとの比をλmaxとし、伸長粘度における非線形性の大きさを表す指標とした。
λmax=ηE,max/ηL,max
なお、図2においてこの指標の測定方法を模式的に示した。
(vi)耐クリープ性(破断時間):
JIS K6992−2(2004年版)に準拠し、厚さ5.9mmのシートを圧縮成形した後、JIS K6774(2004年版)附属書5(規定)図1に示された区分「呼び50」の形状と寸法の試験片を作製し、80℃の純粋中で全周ノッチ式引張クリープ試験(FNCT)を行った。引張荷重は88N、98N、108Nとし、試験点数は各荷重で2点とした。得られた両対数スケールにおける破断時間と公称応力の6点のプロットから最小二乗法により公称応力6MPaにおける破断時間を耐クリープ性の指標とした。
(vii)シャルピー衝撃強度:
JIS K7111(2004年版)に従ってタイプ1の試験片を作製し、打撃方向はエッジワイズ、ノッチのタイプはタイプA(0.25mm)として、ドライアイス/アルコール中−40℃で測定した。
(viii)曲げ剛性:
JIS K7106(2004年版)に準拠し、東洋精機(株)製のスティフネスメーターにて、スパン間30mm、つかみ部30mm、全曲げモーメントが6kgf・cmの条件で60℃/分で片持ち曲げ応力を測定した。
なお試験片は、ペレットを温度160℃の熱圧縮成形機により溶融後25℃/分の速度で降温し、厚み2mmのシートに成形した。このシートを温度23℃の室内で48時間状態調節した後、長さ85mm、幅15mmになるようにダンベル刃型で打ち抜いて試験片とした。
(II)オートクレーブでのポリエチレン系樹脂の製造と評価
[実施例1]
(1)クロム触媒の調製
クロム原子担持量が1.1重量%、比表面積が500m/g、細孔体積が1.5cm/gを有する触媒−1(シリカに酢酸クロムを担持させた触媒)を15g用意し、多孔板目皿付き、管径5cmの石英ガラス管に入れ、円筒状焼成用電気炉にセットし、モレキュラーシーブスを通した空気にて流動化させ、線速6cm/sにて500℃で18時間焼成活性化を行った。6価のクロム原子を含有することを示すオレンジ色のクロム触媒が得られた。
(2)ジエチルアルミニウムエトキシド化合物担持クロム触媒
予め窒素置換した100mlのフラスコに、上記(1)で得られたクロム触媒2gを入れ、蒸留精製したヘキサン30mlを加えスラリーとした。東ソー・ファインケム社製ジエチルアルミニウムエトキシドの0.1mol/L−ヘキサン溶液を5.9ml(Al/Crモル比=1.4)添加し、40℃で2時間攪拌した。攪拌終了後直ちに減圧下で30分かけて溶媒を除去し、さらさらの自由流動性(free flowing)のジエチルアルミニウムエトキシド化合物担持クロム触媒を得た。触媒は緑色であり、6価のクロムが還元されていることを示す。
(3)重合
充分に窒素置換した2.0Lのオートクレーブに上記(2)で得られたジエチルアルミニウムエトキシド化合物担持クロム触媒50mgおよびイソブタン0.8Lを仕込み、内温を96℃まで昇温した。水素を0.1MPa導入した後、1−ヘキセン7.0gをエチレンで加圧導入し、エチレン分圧を1.0MPa(Hc/ETc=1.1×10−3)となるように保ちながら、触媒生産性が3000g−ポリマー/g−触媒となるように重合を行った。ついで内容ガスを系外に放出することにより重合を終結した。
触媒1g当たり、重合時間1時間当たりの重合活性は1500g−ポリマー/g−触媒/hであった。物性として、HLMFR、密度、分子量(Mn、Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、λmax、破断時間、シャルピー衝撃強度、曲げ剛性の測定結果等を表1、2に示した。
[実施例2]
(1)ジエチルアルミニウムn−ブトキシドの合成
充分に窒素置換した200mLのフラスコに蒸留精製したヘキサン98mLを入れ、東ソー・ファインケム社製トリエチルアルミニウム1.37mL(10mmol)を加えて溶解させた。次いで、Aldrich社製n−ブタノール0.92mL(10mmol)を添加した。油浴によりフラスコを加熱し、2時間ヘキサンを還流して、反応を完結させた。そのまま室温にまで冷却し、ジエチルアルミニウムn−ブトキシドの0.1mol/L−ヘキサン溶液が得られた。
(2)クロム触媒の調製、重合
ジエチルアルミニウムエトキシドの代わりに、上記(1)で合成したジエチルアルミニウムn−ブトキシドの0.1mol/L−ヘキサン溶液を5.9ml(Al/Crモル比=1.4)添加した以外は、全て実施例1(2)と同様に行い、ジアルキルアルミニウムアルコキシド化合物担持クロム触媒を調製した。
この触媒を用い、重合温度を96℃、エチレン分圧を1.0MPa(Hc/ETc=1.1×10−3)、1−ヘキセン添加量を8.5gとした以外は、全て実施例1(3)と同様に、重合を行った。
重合活性は1600g−ポリマー/g−触媒/hであった。物性測定結果等を表1、2に示した。
[実施例3]
(1)ジイソブチルアルミニウムエトキシドの合成
充分に窒素置換した200mLのフラスコに蒸留精製したヘキサン97mLを入れ、東ソー・ファインケム社製トリイソブチルアルミニウム2.54mL(10mmol)を加えて溶解させた。次いで、Aldrich社製エタノール0.58mL(10mmol)を添加した。油浴によりフラスコを加熱し、2時間ヘキサンを還流して反応を完結させた。そのまま室温にまで冷却し、ジイソブチルアルミニウムエトキシドの0.1mol/L−ヘキサン溶液が得られた。
(2)クロム触媒の調製、重合
ジエチルアルミニウムエトキシドの代わりに、上記(1)で合成したジイソブチルアルミニウムエトキシドの0.1mol/L−ヘキサン溶液を5.9ml(Al/Crモル比=1.4)添加した以外は、全て実施例1(2)と同様に行い、ジアルキルアルミニウムアルコキシド化合物担持クロム触媒を調製した。
この触媒を用い、重合温度を96℃、エチレン分圧を1.0MPa(Hc/ETc=1.1×10−3)、1−ヘキセン添加量を8.5gとした以外は、全て実施例1(3)と同様に、重合を行った。
重合活性は1500g−ポリマー/g−触媒/hであった。物性測定結果等を表1、2に示した。
[実施例4]
東ソー・ファインケム社製ジエチルアルミニウムエトキシドの0.1mol/L−ヘキサン溶液を4.6ml(Al/Crモル比=1.1)添加した以外は、全て実施例1(2)と同様に行い、ジエチルアルミニウムエトキシド担持クロム触媒を調製した。
この触媒を用い、重合温度を99℃、1−ヘキセン添加量を6.0gとした以外は、全て実施例1(3)と同様に、重合を行った。
重合活性は1600g−ポリマー/g−触媒/hであった。物性測定結果等を表1、2に示した。
[実施例5]
クロム触媒の賦活温度を500℃から700℃に変えた以外は、全て実施例1と同様に、ジエチルアルミニウムエトキシド化合物担持クロム触媒を調製し、重合を行った。
重合活性は1800g−ポリマー/g−触媒/hであった。物性測定結果等を表1、2に示した。分子量分布が狭くなり、破断時間は実施例1に比べて低下した。
[実施例6]
ジエチルアルミニウムエトキシドの代わりに、東ソー・ファインケム社製トリn−ブチルアルミニウムの0.1mol/L−ヘキサン溶液を4.2ml(Al/Crモル比=1.0)添加した以外は、全て実施例1(2)と同様に行い、トリn−ブチルアルミニウム化合物担持クロム触媒を調製した。
この触媒を用い、重合温度を100℃、エチレン分圧を1.4MPa(Hc/ETc=8.1×10−4)、1−ヘキセン添加量を4.0gとした以外は、全て実施例1(3)と同様に、重合を行った。
重合活性は4100g−ポリマー/g−触媒/hであった。物性測定結果等を表1、2に示した。
[実施例7]
ジエチルアルミニウムエトキシドの代わりに、東ソー・ファインケム社製トリエチルアルミニウムの0.1mol/L−ヘキサン溶液を4.2ml(Al/Crモル比=1)添加した以外は、全て実施例1と同様に、トリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を調製し、重合を行った。
重合活性は3700g−ポリマー/g−触媒/hであった。物性測定結果等を表1、2に示した。
[実施例8]
ジエチルアルミニウムエトキシドの代わりに、東ソー・ファインケム社製トリイソブチルアルミニウムの0.1mol/L−ヘキサン溶液を4.2ml(Al/Crモル比=1)添加した以外は、全て実施例1と同様に、トリアルキルアルミニウム化合物担持クロム触媒を調製し、重合を行った。
重合活性は4000g−ポリマー/g−触媒/hであった。物性測定結果等を表1、2に示した。
[実施例9]
クロム触媒の賦活温度を500℃から600℃に変え、1−ヘキセン添加量を4.0gから2.0gに変えた以外は、全て実施例6と同様に、トリn−ブチルアルミニウム化合物担持クロム触媒を調製し、重合を行った。
重合活性は4900g−ポリマー/g−触媒/hであった。物性測定結果等を表1、2に示した。
[実施例10]
クロム原子担持量が1.1重量%、比表面積が500m/g、細孔体積が1.5cm/g、フッ素原子担持量が1.7重量%を有する触媒−2を、実施例1(1)と同様の方法で、500℃にて焼成活性化を行った。この焼成した触媒に対して、東ソー・ファインケム社製ジエチルアルミニウムエトキシドの0.1mol/L−ヘキサン溶液を5.1ml(Al/Crモル比=1.2)添加した以外は、全て実施例1(2)と同様に行い、ジアルキルアルミニウムアルコキシド化合物フッ素担持クロム触媒を調製した。
この触媒を用い、重合温度を89℃、1−ヘキセン添加量を8.0gとした以外は、全て実施例1(3)と同様に、重合を行った。
重合活性は1900g−ポリマー/g−触媒/hであった。物性測定結果等を表1、2に示した。
[比較例1]
充分に窒素置換した2.0Lのオートクレーブに、実施例1(1)で得られたクロム触媒50mgおよびイソブタン0.8Lを仕込み、内温を101℃まで昇温した。水素を0.1MPa導入した後、1−ヘキセン4.0gをエチレンで加圧導入し、エチレン分圧を1.0MPa(Hc/ETc=1.1×10−3)となるように保ちながら、触媒生産性=3000g−ポリマー/g−触媒となるように重合を行った。ついで、内容ガスを系外に放出することにより重合を終結した。
重合活性は1400g−ポリマー/g−触媒/hであった。物性測定結果等を表1、2に示した。分子量分布が狭くなり、破断時間は実施例1に比べて大きく低下した。
[実施例11]
東ソー・ファインケム社製ジエチルアルミニウムエトキシドの0.1mol/L−ヘキサン溶液を21ml(Al/Crモル比=5.0)添加した以外は、全て実施例1(2)と同様に行い、ジエチルアルミニウムエトキシド担持クロム触媒を調製した。
この触媒を用いて、水素を導入しなかったこと以外は、全て実施例1(3)と同様に重合を行った。
重合活性は1500g−ポリマー/g−触媒/hであった。物性測定結果等を表1、2に示した。
[比較例2]
東ソー・ファインケム社製ジエチルアルミニウムエトキシドの0.1mol/L−ヘキサン溶液を105ml(Al/Crモル比=25)添加した以外は、全て実施例1(2)と同様に行い、ジエチルアルミニウムエトキシド担持クロム触媒を調製した。
この触媒を用いて、全て実施例1(3)と同様に、重合を行った。
物性測定結果等を表1、2に示した。重合活性は、実施例1と比べて、著しく低くなった。
[実施例12]
実施例1(1)のクロム触媒の賦活温度を500℃から400℃に変えた以外は、実施例1(1)(2)と全く同様の操作を行うことにより、ジアルキルアルミニウムアルコキシド化合物担持クロム触媒を調製した。
この触媒を用い、全て実施例1(3)と同様に、重合を行った。
重合活性は20g−ポリマー/g−触媒/hであった。物性測定結果等を表1、2に示した。
[実施例13]
(1)ジエチルアルミニウムt−ブトキシドの合成
充分に窒素置換した200mLのフラスコに、蒸留精製したヘキサン98mLを入れ、東ソー・ファインケム社製トリエチルアルミニウム1.37mL(10mmol)を加えて溶解させた。次いでAldrich社製t−ブタノール0.96mL(10mmol)を添加した。油浴によりフラスコを加熱し、6時間ヘキサンを還流して反応を完結させた。そのまま室温にまで冷却し、ジエチルアルミニウムt−ブトキシドの0.1mol/L−ヘキサン溶液が得られた。
(2)クロム触媒の調製、重合
ジエチルアルミニウムエトキシドの代わりに、上記(1)で合成したジエチルアルミニウムt−ブトキシドの0.1mol/L−ヘキサン溶液を5.9ml(Al/Crモル比=1.4)添加した以外は、全て実施例1(2)と同様に行い、ジアルキルアルミニウムアルコキシド化合物担持クロム触媒を調製した。
この触媒を用いた以外は、全て実施例1(3)と同様に重合を行った。
重合活性は50g−ポリマー/g−触媒/hであった。物性測定結果等を表1、2に示した。
[比較例3]
実施例1(1)の活性化した触媒を用いて、重合時に1−ヘキセンと同時に、東ソー・ファインケム社製ジエチルアルミニウムエトキシドの0.1mol/L−ヘキサン溶液を5.9ml(Al/Crモル比=1.4)添加し、全て実施例1(3)と同様に、重合を行った。
重合活性は800g−ポリマー/g−触媒/hであった。物性測定結果等を表1、2に示した。重合活性は、実施例1に比べて大きく低下している。また、HLMFRも実施例1に比べて低下している。
[比較例4]
実施例1(1)の活性化した触媒を用いて、重合時に1−ヘキセンと同時に、東ソー・ファインケム社製ジエチルアルミニウムエトキシドの0.1mol/L−ヘキサン溶液を5.9ml(Al/Crモル比=1.4)添加し、重合温度を96℃から103℃に変えた以外は、全て実施例1(3)と同様に、重合を行った。
重合活性は800g−ポリマー/g−触媒/hであった。物性測定結果等を表1、2に示した。重合活性は、実施例1に比べて大きく低下している。また、HLMFRを本発明のポリエチレン系樹脂の範囲にするために重合温度を上げた結果、分子量分布が狭くなり、耐久性が大きく低下したことが分かる。
[比較例5]
クロム原子担持量が1.1重量%、比表面積が500m/g、細孔体積が1.5cm/gを有する触媒−1(比表面積が500m/g、細孔体積が1.5cm/gのシリカに三酸化クロムを担持させた触媒)を20g用意し、フラスコ中にて2時間、200℃で真空乾燥を行った。この真空乾燥を行った触媒に対し、蒸留精製したヘキサン150mlを加えスラリーとし、関東化学社製ジエチルアルミニウムエトキシドの1.0mol/L−ヘキサン溶液を16ml添加し、40℃で2時間攪拌した。攪拌終了後直ちに減圧下で3時間かけて溶媒を除去し、ジエチルアルミニウムエトキシド化合物担持クロム触媒を得た。
このジエチルアルミニウムエトキシド化合物担持クロム触媒を用いて、実施例1(1)(2)と全く同様の操作を行うことにより、担体表面に酸化アルミニウムを有する(Al=4wt%)触媒−2を調製した。
この触媒を用い、全て実施例1(3)と同様に、重合を行った。
重合活性は300g−ポリマー/g−触媒/hであった。物性測定結果等を表1、2に示した。
[比較例6]
クロム原子担持量が1.1重量%、比表面積が500m/g、細孔体積が1.5cm/g、フッ素原子担持量が1.7重量%を有する触媒−3を用意し、実施例1(1)と同様の方法で、500℃にて焼成活性化を行った。
この触媒を用い、重合温度を103℃、1−ヘキセン添加量を1.5gとした以外は、全て実施例1(3)と同様に、重合を行った。
重合活性は2000g−ポリマー/g−触媒/hであった。物性測定結果等を表1、2に示した。HLMFRが大きく上がっていることが分かる。HLMFRを本発明のポリエチレン系樹脂の範囲にするために重合温度を上げた結果、分子量分布が狭くなり、耐久性が大きく低下したことが分かる。
(III)触媒構造の分析
(1)電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)による触媒分析:
以下のようにして、電子プローブマイクロアナライザーによって触媒分析を行った結果を図3に示す。
[実施例14(EPMA分析における実施例1)]
上記実施例1で調製したジエチルアルミニウムエトキシド化合物担持クロム触媒を分析評価した。
上記触媒の試料を樹脂包埋後、研磨紙(粒度#1500〜#4000)を用いて研磨した。その後、ダイヤモンド懸濁液(粒度1μm)で更に研磨した。Au蒸着(約300Å)後、島津製作所(株)社製EPMA−1600でマッピング分析を行った。
マッピング条件
加速電圧(ACC.V):15kV
ビーム電流:50nA
ビーム径:1μm
測定時間:50msec
測定面積:512*512μm
分光結晶:Al;RAP(酸性フタル酸ルビジウム)C(COOH)(COORb)
Si;PET(ペンタ・エリスリトール)C(CHOH)
Cr;LiF(フッ化リチウム)
ICP発光分析を行い、その結果を元に、アルミニウム含量と電子プローブマイクロアナライザーによる強度との関係の検量線を作成した。その結果を元に、断面におけるアルミニウム含量を定量した。実施例14のEMPAの写真において、外側にアルミニウム原子が集中している。
(2)拡散反射UV−VISによる触媒分析
以下のようにして、拡散反射UV−VISによって、触媒分析を行った結果を図4に示す。
なお、拡散反射UV−VISによる触媒分析は、次に挙げる実施例15(UV−VISにおける実施例1)、実施例16(UV−VISにおける実施例2)、比較例7(先の実施例1(1)の有機アルミニウム未処理触媒、UV−VISにおける比較例1)の触媒について行った。
[実施例15(UV−VIS分析における実施例1)]
東ソー・ファインケム社製ジエチルアルミニウムエトキシドの0.1mol/L−ヘキサン溶液を2.1ml(Al/Crモル比=0.5)添加した以外は、全て実施例1(2)と同様に行い、ジエチルアルミニウムエトキシド担持クロム触媒を調製した。この調製したジエチルアルミニウムエトキシド化合物担持クロム触媒を分析評価した。
[実施例16(UV−VIS分析における実施例2)]
東ソー・ファインケム社製ジエチルアルミニウムエトキシドの0.1mol/L−ヘキサン溶液を42ml(Al/Crモル比=10)添加した以外は、全て実施例1(2)と同様に行い、ジエチルアルミニウムエトキシド担持クロム触媒を調製した。この調製したジエチルアルミニウムエトキシド化合物担持クロム触媒を分析評価した。
[比較例7(UV−VIS分析における比較例1)]
上記実施例1(1)で調製した有機アルミニウム化合物未処理クロム触媒を分析評価した。
(i)サンプリング方法・環境:
窒素雰囲気下のグローブボックス内で試料を光路長5mmの密閉式UVセル内に充填したのち、拡散反射UV−VISスペクトルの測定を行った。リファレンスには、和光純薬製一級硫酸バリウムを用いた。
(ii)測定方法・測定条件:
測定装置は、島津製作所製拡散反射ユニット付UV−VIS計(UV2400)を用い、検出器は、エンドオンフォトマルを用いた。スリット幅は5nmとし、スキャン速度は低速で、波長190nm〜800nmの吸光スペクトルを取り込んだ。ベースラインの作成は硫酸バリウムを用いた。
図4から、賦活温度が500℃の時、加える有機アルミニウム化合物の量がAl/Crモル比で増えるにしたがって、6価のCr原子に特有の370nm付近の吸収が小さくなっていることがわかる。
また、それに伴い3価に特有の600nm付近の吸収が大きくなっている。このことから、Cr原子の還元反応が有機アルミニウム試薬を加えることにより起こっていることがわかる。アルミニウムの分布は、担体内部より表面に集中して分布するというEPMAの結果を踏まえると、ひとつの担体粒子において、担体内部と外部を比較した時、担体外部において3価のクロムが多く分布していると、いえる。
Figure 2011006589
Figure 2011006589
表1、2より、本発明の触媒を用いて得られた、実施例のポリエチレン系樹脂は、成形性、耐久性に優れ、且つ耐衝撃性および剛性のバランスに優れているのに対し、比較例のポリエチレン系樹脂は、これらの特性の少なくとも一つにおいて劣っていることが分かる。
本発明で提供される触媒によって得られるポリエチレン系樹脂は、それを用いた中空プラスチック成形品とすることにより、成形性、耐久性、バリアー性に優れ、且つ耐衝撃性および剛性のバランスに優れたものとすることができ、中でも燃料タンク、特に自動車用燃料タンク等に好適に用いられる。本発明の触媒は、その意味で産業上の意義が高い。

Claims (9)

  1. 無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、少なくとも一部のクロム原子を6価としたクロム触媒であって、かつ、有機アルミニウム化合物(c)が無機酸化物担体(a)の表面に集中して存在していることを特徴とするエチレン重合用触媒。
  2. 電子プローブマイクロアナライザーを用いて、触媒粒子の断面におけるアルミニウム原子含量を測定した際に、触媒粒子の表面のアルミニウム原子検出量が該触媒粒子の内部に存在するアルミニウム原子より多いことを特徴とする請求項1に記載のエチレン重合用触媒。
  3. 無機酸化物担体(a)の表面に有機アルミニウム化合物(c)が存在することにより、少なくとも一部の6価のクロム原子が3価に還元されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエチレン重合用触媒。
  4. 前記エチレン重合用触媒は、無機酸化物担体(a)にクロム化合物(b)を担持し、先ず、非還元性雰囲気において、焼成活性化することにより少なくとも一部のクロム原子を6価とした後、さらに、有機アルミニウム化合物(c)を不活性炭化水素溶媒中で担持させ、次いで、該不活性炭化水素溶媒を除去・乾燥して、得られたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエチレン重合用触媒。
  5. 有機アルミニウム化合物(c)は、ジアルキルアルミニウムアルコキシド、アルキルアルミニウムジアルコキシドまたはトリアルキルアルミニウムの少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエチレン重合用触媒。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のエチレン重合用触媒を用いて、エチレン単独重合またはエチレンとα−オレフィンとの共重合を行うことを特徴とするエチレン系重合体の製造方法。
  7. 前記α−オレフィンは、炭素数が3〜8であることを特徴とする請求項6に記載のエチレン系重合体の製造方法。
  8. 請求項6又は7に記載のエチレン系重合体の製造方法により得られ、かつ温度190℃、荷重21.6kgにおけるハイロードメルトフローレート(HLMFR)が1〜100g/10分、密度が0.935〜0.960g/cmであることを特徴とするブロー成形製品用エチレン系重合体。
  9. 請求項6又は7に記載のエチレン系重合体の製造方法により得られ、かつHLMFRが1〜15g/10分、密度が0.940〜0.955g/cmであることを特徴とする大型ブロー成形製品用エチレン系重合体。
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