JP2011006571A - 接着剤、及びラミネートフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】環境対応型であって、安全性が高く、且つラミネートフィルム用接着剤として十分な性能を有する接着剤、及び硬化した該接着剤を介して2層のプラスチックフィルム層が積層して得られるラミネートフィルムを提供すること。
【解決手段】キトサン、又は特定の官能基を有するキトサン誘導体又はその塩を含む接着剤、該接着剤の硬化物を介して2層のプラスチックフィルム層が積層して得られるラミネートフィルム、該ラミネートフィルムを用いてなる食品用包装材又は医療用包装材を提供することにより上記課題を解決する。
【選択図】なし

Description

本発明は、キトサン誘導体を含むことを特徴する接着剤、及び硬化した該接着剤を介してプラスチックフィルム層を用いて形成されるラミネートフィルムに関する。
ラミネートフィルムに対する環境ニーズは近年益々高まってきており、特にラミネートフィルムにおいて使用される接着剤に対して環境対応型製品への要望が強い。
これまで、ラミネートフィルムにおいて使用される接着剤に対して、水性化或いは無溶媒化等の対応が試みられているが、十分な効果が得られているとは言い難い。
(非特許文献1)には、水性型ラミネート接着剤について記載されており、水を溶媒としているため、溶剤型と比較して基材への濡れ性や乾燥性の点で劣ることが記載されている。具体的には、ウレタン/エポキシ、ウレタン/イソシアネート、アクリル/イソシアネート配合の接着剤が記載されているが、ウレタン系接着剤は、多かれ少なかれイソシアネートモノマーが含まれており、当該モノマーの蒸発、拡散した場合の人体への影響等周辺環境への影響も無視できず、問題となっている。
また、同非特許文献には無溶媒型ラミネート接着剤についても記載されており、具体的には、ポリエーテル系芳香族、ポリエステル系脂肪族、ポリエステル系芳香族配合の接着剤が記載されているが、本接着剤では、溶媒を用いないメリットを有するものの、塗工時のラミネート外観が悪くなったり、接着剤の分子量が小さいためにラミネート直後の接着剤層の凝集力が小さくなる等の問題点がある。
一方、本発明に係るキトサン誘導体としては、例えば、(特許文献1)に、アミノ基に炭素数4〜26のアシル基で置換されたアシルグルコサミンを構成単位とするキトサン誘導体についての記載がある。本文献には、アシル基となりうる不飽和脂肪酸として、リノール酸、オレイン酸の記載はあるが、本願に係るアシル基は記載されていない。また、用途も抗菌剤及び化粧品添加剤としての記載はあるが、接着剤としての具体的な記載はない。
(特許文献2)には、アミノ基に飽和又は不飽和の炭素数3〜24の飽和又は不飽和の脂肪族アシル基で置換されたオリゴ糖を構成単位として有する新規なキトサン誘導体の記載がある。当該キトサン誘導体は、アミノ基にアシル基を有する点で本願発明のキトサン誘導体と類似するが、本願の構成単位に相当する基を有していない。また、用途については、ノニオン界面活性剤として、食品、医薬品、トイレタリー製品、化粧品、農薬、乳化剤、分散剤、洗浄剤としての記載があるが、接着剤としての記載はない。
さらに、キトサン誘導体を接着剤の原料として用いた例としては、例えば、(特許文献3)に、紫外線硬化性官能基を有するN−アルキルキトサン誘導体及び該キトサン誘導体を含む医療用接着剤が記載されており、生体に使用される医療用接着剤としての利用が開示されている。
また、(特許文献4)には、酸性多糖類と塩基性多糖類とのポリイオンコンプレックスからなる接着剤であって、酸性多糖類がセルロース、デンプン、キチン等の多糖類の酸化により得られる接着剤が記載されている。さらに、酸性多糖類は、天然多糖類のピラノース環中6位の1級水酸基が選択的に酸化された接着剤であり、更には、酸性多糖類が特定の化学構造を有するポリウロン酸であること、塩基性多糖類がキトサンであることが記載されている。
日本包装学会誌、405−411ページ、Vol16、No.6(2007)
特許第2615444号公報 特許第3108763号公報 特開2005−154477号公報 特開2005−290050号公報
以上のように、これまでの環境対応型であるといわれる水性型ラミネート接着剤或いは無溶媒型ラミネート接着剤においては、接着剤としての性能が不十分であったり、環境及び人体に対して十分な安全性が担保されているとは言えない状況であった。
そこで、本発明は、環境対応型であって、安全性が高く、且つラミネートフィルム用接着剤として十分な性能を有する接着剤、及び硬化した該接着剤を介して2層のプラスチックフィルム層が積層して得られるラミネートフィルムを提供することを課題とする。
即ち、本発明は、キトサン、又は一般式(1)で表される基又はその塩を構成単位として有するキトサン誘導体又はその塩を含む接着剤、該接着剤の硬化物を介して2層のプラスチックフィルム層が積層して得られるラミネートフィルム、該ラミネートフィルムを用いてなる食品用包装材又は医療用包装材を提供することにより上記課題を解決する。
Figure 2011006571
〔但し、式中、Rは−NH及び下記式(2)〜(8)
Figure 2011006571
で表される基からなる群から選ばれる基であり、Rは−OH及び下記式(9)〜(16)
Figure 2011006571
(Xは、水素原子、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンを表す。)
で表される基からなる群から選ばれる基であるが、Rが−NHであり且つRが−OHである場合を除く。〕
本発明によれば、環境対応型であって、安全性が高く、且つラミネートフィルム用接着剤として十分な性能を有する接着剤、及び硬化した該接着剤を介して2層のプラスチックフィルム層が積層して得られるラミネートフィルムを提供することができる。
本発明者らは、ある特定の置換基で置換された基を構成単位として有するキトサン誘導体又はその塩を含む接着剤の検討、更に該接着剤の組成の検討を行うことにより、キトサン誘導体又はその塩の他に、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性化合物を含むことによりその接着力が向上することを見出し、本発明の接着剤を完成させた。
更に、本発明者らは、該接着剤の硬化物を介して2層のプラスチックフィルム層が積層して得られるラミネートフィルム、及び該ラミネートフィルムを用いてなる食品用包装材又は医療用包装材に関する発明をも完成させた。
即ち、本発明は、一般式(1)
Figure 2011006571
で表されるキトサン誘導体において、Rは−NH又は特定の重合性官能基を示し、Rは−OH又は特定の重合性官能基を示すが、Rが−NHであり且つRが−OHである場合を除く基を構成単位として有するキトサン誘導体又はその塩を含む接着剤、該接着剤の硬化物を介して2層のプラスチックフィルム層が積層して得られるラミネートフィルム、該ラミネートフィルムを用いてなる食品用包装材又は医療用包装材に関する。
前記一般式(1)で表される基における重合性官能基は、多重結合を有し、重合反応に与る基であれば特に制限はないが、好ましくは、二重結合を有する重合性官能基を挙げることができる。
における好ましい重合性官能基としては、式(2)〜(8)
Figure 2011006571
で表される基からなる群から選ばれる基であり、またRにおける好ましい重合性官能基としては、式(9)〜(16)
Figure 2011006571
で表される基からなる群から選ばれる基である。
これらの一般式(2)〜(16)で表される基の導入は、通常公知の方法によって行なうことができる。
即ち、上記基の導入法の一例を挙げると、例えば、式(2)又は(3)で表される基の導入においては、キトサンと(メタ)アクリル酸ハライドを反応させればよいし、式(4)であらわされる基の導入においては、ハロゲン化アリルを反応させればよい。また、式(6)の基を導入する場合には、無水マレイン酸を反応させればよい。更に、式(7)で表される基を導入する場合には、p−ビニルベンゾイルハライドと反応させればよく、式(8)で表される基の導入には、p−ビニルベンジルハライドと反応させればよい。また、式(16)で表される基を導入するには、ハロ酢酸誘導体と反応させればよい。
これらの反応条件は、導入する基に応じて適宜選択して、通常公知の方法によって設定することができる。
好ましい構成単位の構造としては、具体的には、例えば以下の一般式(17)〜(20)で表される構造を有する構成単位が挙げられるが、これらに限るものではない。
Figure 2011006571
前記キトサン誘導体又はその塩における構成単位(1)において、R又はRが置換された割合は、特に制限はない。
置換された割合は、以下のようにプロトンNMR測定によってその値を求めることができる。即ち、プロトン核磁気共鳴チャートから、キトサンに置換したR又はRの二重結合の水素原子数と、キトサンの骨格を形成する炭素原子に結合した水素原子の内、酸素原子或いは窒素原子に隣接する炭素に置換した水素原子数6個(キトサン骨格の1位炭素に結合した水素:1個、同2位:1個、同3位:1個、同5位:1個、同6位2個、合計6個)との比率を求め、その数値からキトサン誘導体中に存在する二重結合の割合を算出する。
例えば、アクリロイル基で置換された場合には、キトサンの構成単位である下記2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコピラノースの有する水素原子数6個に対して、アクリロイル基に由来する水素原子が3個観測された場合、置換された割合を100%として、以下の計算式によって、置換された割合(%)を算出する。

置換された割合(%)=((観測されるアクリロイル基の水素原子数)/6)/(100%置換された場合の水素原子数3/キトサンの有する水素原子数6)

上記の置換された割合(%)は、特に制限はないが、好ましくは5%以上200%以下であり、より好ましくは、20%以上150%以下の割合を挙げることができる。
前記キトサン誘導体の分子量に特に制限はないが、好ましくは500〜30,000の重量平均分子量を挙げることができる。
上記キトサンは、単一の重合度を持つものであっても、種々の重合度を持つキトサンの混合物であってもよいが、好ましくは溶媒分別法等により重合度分布を狭めたものが好ましく、例えば各種クロマト法等により一定の重合度を持つオリゴ糖に精製したものが好ましい。
キトサンは、β−1,4結合した2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコピラノースであって、このようなキトサンは、カニ、エビ、昆虫の甲殻、酵母菌などの微生物の細胞壁に存在する多糖であるキチンから、通常公知の方法、例えば、キチンをアルカリ性条件下で脱アセチル化して得ることができる。また、該キチンを鉱酸又は酵素により加水分解してもキトサンとすることができ、本発明では、これらのいずれかの方法によって得られたキトサンを用いることができる。
本発明のキトサンの塩は、キトサンを構成する前記2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコピラノースのアミノ基の酸付加塩であっても、一般式(1)のアミノ基の酸付加塩であってもよい。該アミノ基と塩を形成する酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、臭化水素酸、リン酸、ホウ酸などの無機酸及びクエン酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、糖酸、グルコン酸等の有機酸が挙げられる。
また、キトサンにおいては、脱アセチル化度に特に限定はないが、40〜95%のものを好ましく用いることができる。脱アセチル化度の相違は、当該キトサンの溶解度に影響し、適宜選択して用いることができる。
本発明のキトサン誘導体は、上記のキトサンを溶解せしめる溶媒に溶解して、上記方法によりアシル化剤と反応せしめることにより得ることができる。反応に用いられる溶媒としては、キトサンの溶解性が高いことから酸性溶媒が好ましく、例えば、メタンスルホン酸、酢酸等の溶媒を単独で、或いは水と混合して用いることができる。
また、その他の塩としては、キトサン誘導体の構成単位の構造にカルボキシル基が含まれる場合は、公知のカルボキシル基と塩を形成しうるナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン、アンモニア、アルキルアミン、芳香属アミン等のアミン類等が挙げられる。
これらの塩は、公知の方法によって得ることができ、毒性低減のため、塩は無毒性か低毒性であることが好ましい。
接着剤の調整は、通常公知の方法によって行うことができる。即ち、本発明のキトサン誘導体、または該キトサン誘導体を含むキトサンを水に分散して調整することができる。その際、本発明のキトサン誘導体、または該キトサン誘導体を含むキトサンの溶解を促進するため、酸性物質を添加することもできる。酸性物質は、キトサン類を水に溶解する際に用いられる通常公知の酸性物質を挙げることができる。水の他に、水溶性の有機溶媒を用いても良いが、環境対応型の接着剤とするためには、有機溶媒は用いない方が好ましい。
調整液中の本発明のキトサン誘導体、または該キトサン誘導体を含むキトサンの濃度に限定はないが、好ましくは、0.1〜5質量%の範囲を挙げることができる。
本発明の接着剤は、更に、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性化合物を含んでもよい。本発明の接着剤は、これらの水溶性化合物を含むことにより、接着力が向上する特徴を有する。該水溶性化合物の使用量に特に制限はないが、好ましくは、本発明のキトサン誘導体、または該キトサン誘導体を含むキトサン100質量部に対して、10〜200質量部の範囲を挙げることができる。
次に、得られた接着剤の調整液をプラスチックフィルムに塗布を行う。塗布は通常公知の方法によって行うことができ、接着剤を塗布する量は、プラスチックフィルムの材質によって適宜選択して行うことができる。塗布膜は、凡そ0.01〜100μmの厚さを挙げることができる。
接着剤塗布後の接着剤からの水分の乾燥は、大気中で略20〜30℃で放置することにより行うことができるが、乾燥時間を短縮するために加熱しておこなってもよい。加熱温度は、使用するプラスチックフィルムの材質によって適宜選択して行うことができる。
また、接着剤を硬化させるために、活性エネルギー線を照射してもよい。用いられる活性エネルギー線としては、紫外線又は可視光線を挙げることができるが、特に紫外線が好ましい。また、硬化反応をより効率的に行なうために、公知慣用の光重合開始剤を添加してもよい。光重合開始剤としては、分子内結合開裂型と分子内水素引き抜き型の2種に大別でき、以下のものが挙げられる。
分子内結合開裂型の光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノンの如きアセトフェノン系;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルの如きベンゾイン類;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドの如きアシルホスフィンオキシド系;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル、などが挙げられる。
一方、分子内水素引き抜き型の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンの如きベンゾフェノン系;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンの如きチオキサントン系;ミヒラ−ケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンの如きアミノベンゾフェノン系;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、などが挙げられる。
光重合開始剤を使用する場合の配合量は、活性エネルギー線硬化性組成物の0.01〜10重量%の範囲が好ましい。
また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、硬化反応をより効率的に行なうために、光増感剤を併用することもできる。
そのような光増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシルの如きアミン類が挙げられる。
光増感剤を使用する場合の配合量は、活性エネルギー線硬化性組成物中0.01〜10重量%の範囲が好ましい。さらに、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、用途に応じて、非反応性化合物、無機充填剤、有機充填剤、カップリング剤、粘着付与剤、消泡剤、レベリング剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、顔料、染料などを適宜併用することもできる。
本発明で用いるプラスチックフィルムは、その表面をコロナ放電処理、化学処理等を行うことが好ましいが、特にコロナ放電処理が好ましい。コロナ放電処理は、通常公知の方法によって行うことができ、例えば、プラスチックフィルム表面の濡れ指数を40mN/m程度とすることが好ましい。コロナ放電される条件は、フィルムの種類、厚さ等により適宜選択することができる。
また、用いられるプラスチックフィルムに特に制限はないが、例えば、通常公知のポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、又は生分解性フィルム等のプラスチックフィルム等が好ましい。
生分解性フィルムとしは、通常公知のものを使用することが可能で、例えば、ポリ乳酸フィルムが挙げられる。
特に好ましい実施の形態としては、ポリプロピレンフィルムに接着剤を塗布し、ポリ乳酸フィルムをラミネートする場合が挙げられる。これは、ポリ乳酸フィルムは水蒸気透過性が大きいことから容易に水分を蒸発できるため、一般に水を含む接着剤は接着し難いにも関わらず、少量のキトサン接着剤の塗布量で十分な接着効果を発揮することができると考えられるからである。
本発明により得られるラミネートフィルムは食品用或いは医療用包装材として用いることができる。これらの包装材は通常公知の方法で作製できる。
以下に具体例をもって本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(合成例1)キトサンとアクリル酸クロリドとの反応
温度計、還流冷却管を装着した4つ口丸底フラスコ中で、20〜30℃でキトサン10gをメタンスルホン酸150gに溶解し、11.3gのアクリル酸クロリドを添加し、5時間反応させた。アルコール/エーテルによって生成物を沈殿させ、下記構成単位(A1)〜(A3)を有するキトサン誘導体(A)を得た。
Figure 2011006571
IR及びNMRにて生成物の構造を測定した。
IR(cm−1):1732(エステル基のC=O伸縮振動)、1633(アミド基のC=O伸縮振動)、781(C=C伸縮振動)
NMR(d−DMSO、ppm):6.2(H−C=C)
(合成例2)キトサンと無水マレイン酸との反応
11.3gのアクリル酸クロリドの替わりに18.0gの無水マレイン酸を用い、5時間反応させる替わりに2日間反応させる他は、実施例1と同様にして、下記構成単位(B1)〜(B3)を有するキトサン誘導体(B)を得た。
Figure 2011006571
IR及びNMRにて生成物の構造、及び前記方法で置換された割合(%)を測定した。
IR(cm−1):1733(エステル基のC=O伸縮振動)、1654(アミド基のC=O伸縮振動)、775(C=C伸縮振動)
NMR(d−DMSO、ppm):6.8(トランス体:H−C=C)、6.2(シス体:H−C=C)
置換された割合(%):50%
(合成例3)化合物(B)とアクリル酸クロリドとの反応
10gのキトサンの替わりに10gの(実施例2)で得られた化合物(B)を用いた他は、実施例1と同様にして、下記構成単位(C1)〜(C4)を有するキトサン誘導体(C)を得た。
Figure 2011006571
IR及びNMRにて生成物の構造、及び前記方法で置換された割合(%)を測定した。
IR(cm−1):1739(エステル基のC=O伸縮振動)、1633(アミド基のC=O伸縮振動)、806(C=C伸縮振動)
NMR(d−DMSO、ppm):6.8(トランス体:H−C=C)、6.3(H−C=C)、6.2(シス体:H−C=C)
置換された割合(%):85%
(合成例4)キトサンとアリルブロマイドとの反応
11.3gのアクリル酸クロリドの替わりに15.1gのアリルブロマイドを用い、5時間反応させる替わりに2日間反応させる他は、実施例1と同様にして、下記構成単位(D1)〜(D2)を有するキトサン誘導体(D)を得た。
Figure 2011006571
IR及びNMRにて生成物の構造を測定した。
IR(cm−1):780(C=C伸縮振動)
NMR(d−DMSO、ppm):6.0(H−C=C)
(合成例5)キトサンとp−ビニルベンゾイルクロリドとの反応
11.3gのアクリル酸クロリドの替わりに20.8gのp−ビニルベンゾイルクロリドを用いた他は、実施例1と同様にして、下記構成単位(E1)〜(E2)を有するキトサン誘導体(E)を得た。
Figure 2011006571
IR及びNMRにて生成物の構造を測定した。
IR(cm−1):1740(エステル基のC=O伸縮振動)、1625(アミド基のC=O伸縮振動)、780(C=C伸縮振動)
NMR(d−DMSO、ppm):6.2(H−C=C)
(合成例6)
100gのキトサンを40%水酸化ナトリウム水溶液1000mLとイソプロパノール400mLの混合溶媒に添加し、一夜攪拌した。280gのクロロ酢酸の100mLイソプロパノール溶液を添加し、50℃で8時間攪拌した。沈殿物をろ過後、エタノールで洗浄し、水に溶解した。溶液を塩酸で中和し、沈殿物を得た。
得られた沈殿物を乾燥後、実施例1と同様にしてアリルブロミドと反応せしめ、下記構成単位(F1)〜(F2)を有するキトサン誘導体(F)を得た。
Figure 2011006571
IR(cm−1):841(C=C伸縮振動)
NMR(d−DMSO、ppm):5.8(H−CH=C)、5.2(H−CH=C)
置換された割合(%):20%
(合成例7)
実施例6におけるアリルブロミドの替わりに、無水マレイン酸を用いて同様の反応を行い、下記構成単位(G1)〜(G3)を有するキトサン誘導体(G)を得た。
Figure 2011006571
IR(cm−1):1733(エステル基のC=O伸縮振動)、1654(アミド基のC=O伸縮振動)、775(C=C伸縮振動)
NMR(d−DMSO、ppm):6.8(トランス体:H−C=C)、6.2(シス体:H−C=C)
(合成例8)
実施例6におけるアリルブロミドの替わりに、アクリル酸クロリドを用いて同様の反応を行い、下記構成単位(H1)〜(H3)を有するキトサン誘導体(H)を得た。
Figure 2011006571
IR(cm−1):1732(エステル基のC=O伸縮振動)、1633(アミド基のC=O伸縮振動)、781(C=C伸縮振動)
NMR(d−DMSO、ppm):6.3(H−C=C)
(実施例1)
合成例1で得られたキトサン誘導体(A):キトサンPSH−80(分子量800000、焼津水産化学工業社製)=30:70(質量比率)のキトサン混合物10gを水1000mLに分散した後、接着剤1質量%キトサン水溶液(I)を調整した。得られた1質量%キトサン水溶液(I)を、表面エネルギーが44mN/mになるようにコロナ放電処理を行ったマレイン酸変性ポリプロピレンフィルム(MAh−PP)上に塗布し、更に42mN/mになるようにコロナ放電処理を行ったポリ乳酸フィルムを重ね、大気中で48時間放置して乾燥し、ラミネートフィルム(a)を得た。
(実施例2)
実施例1で使用したキトサン誘導体(A)の替わりに、合成例2で得られたキトサン誘導体(B)を用いる他は、実施例1と同様にして、ラミネートフィルム(b)を得た。
(実施例3)
実施例1で使用したキトサン誘導体(A)の替わりに、合成例3で得られたキトサン誘導体(C)を用いる他は、実施例1と同様にして、ラミネートフィルム(c)を得た。
(実施例4)
実施例1で使用したキトサン誘導体(A)の替わりに、合成例4で得られたキトサン誘導体(D)を用いる他は、実施例1と同様にして、ラミネートフィルム(d)を得た。
(実施例5)
実施例1で使用したキトサン誘導体(A)の替わりに、合成例5で得られたキトサン誘導体(E)を用いる他は、実施例1と同様にして、ラミネートフィルム(e)を得た。
(実施例6)
実施例1で使用したキトサン誘導体(A)の替わりに、合成例6で得られたキトサン誘導体(F)を用いる他は、実施例1と同様にして、ラミネートフィルム(f)を得た。
(実施例7)
実施例1で使用したキトサン誘導体(A)の替わりに、合成例7で得られたキトサン誘導体(G)を用いる他は、実施例1と同様にして、ラミネートフィルム(g)を得た。
(実施例8)
実施例1で使用したキトサン誘導体(A)の替わりに、合成例8で得られたキトサン誘導体(H)を用いる他は、実施例1と同様にして、ラミネートフィルム(h)を得た。
(実施例9)
実施例1における1質量%キトサン水溶液(I)の替わりに、キトサン誘導体(A):キトサンPSH−80(分子量800000、焼津水産化学工業社製)=30:70(質量比率)のキトサン混合物5gとポリビニルアルコール5gを水1000mLに分散して得られる0.5質量%キトサン水溶液(II)を用いる他は、実施例1と同様にして、ラミネートフィルム(i)を得た。
(実施例10)
ポリビニルアルコールの替わりに、メチルセルロースを用いる他は、実施例9と同様にして、ラミネートフィルム(j)を得た。
(実施例11)
ポリビニルアルコールの替わりに、ヒドロキシメチルセルロースを用いる他は、実施例9と同様にして、ラミネートフィルム(k)を得た。
(実施例12)
合成例1で得られたキトサン誘導体(A):キトサンPSH−80(分子量800000、焼津水産化学工業社製)=30:70(質量比率)のキトサン混合物10gを水1000mLに分散した後、重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(市販名:UV−1173)0.2gを添加して接着剤を調整した。得られた調整液を、表面エネルギーが44mN/mになるようにコロナ放電処理を行ったマレイン酸変性ポリプロピレンフィルム(MAh−PP)上に塗布し、更に42mN/mになるようにコロナ放電処理を行ったポリ乳酸フィルムを重ね、紫外線を照射(140mW/cm、紫外線照射量:220〜270mJ/cm、波長域:350〜450nm、30秒間照射)後、大気中で20時間放置して乾燥して、ラミネートフィルム(l)を得た。
(実施例13)
マレイン酸変性ポリプロピレンフィルム(MAh−PP)の替わりにポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリ乳酸フィルムの替わりに直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを用いた他は、実施例12と同様にして、ラミネートフィルム(m)を得た。
(比較例1)
実施例1で使用したキトサン誘導体(A)の替わりにキトサンPSH−80を用いる他は、実施例1と同様にして、ラミネートフィルム(n)を得た。
(比較例2)
表面エネルギーが44mN/mになるようにコロナ放電処理を行ったマレイン酸変性ポリプロピレンフィルム(MAh−PP)、及び42mN/mになるようにコロナ放電処理を行ったポリ乳酸フィルムの替わりに、表面エネルギーが38mN/mになるようにコロナ放電処理を行ったマレイン酸変性ポリプロピレンフィルム(MAh−PP)、及び38mN/mになるようにコロナ放電処理をいったポリ乳酸フィルムを用いる他は、実施例1と同様にして、ラミネートフィルム(o)を得た。
(比較例3)
実施例1で使用した合成例1で得られたキトサン誘導体(A):キトサンPSH−80(分子量800000、焼津水産化学工業社製)=30:70(質量比率)のキトサン混合物の替わりに、ポリビニルアルコールを用いる他は、実施例1と同様にして、ラミネートフィルム(p)を得た。
(比較例4)
ポリビニルアルコールの替わりに、メチルセルロースを用いる他は、比較例3と同様にして、ラミネートフィルム(q)を得た。
(試験例1)
上記実施例及び比較例により得られたラミネートフィルム(a)〜(q)を用いて、JIS K 6854−2(接着剤−はく離接着強さ試験方法−第2部:180度はく離)に基づきはく離試験を行った。
・はく離スピード:300mm/min.
・試験片幅:25.4mm
尚、はく離力の評価は以下のように表示する。
・5N/mm以上:◎
・4〜5N/mm:○
・1〜4N/mm:△
・1N/mm以下:×
試験結果を表1に示す。
Figure 2011006571
(試験例2)安全性試験
キトサン誘導体(A)〜(H)についての毒性試験を行った。
使用動物:雄性マウス(各化合物について5匹使用、体重20〜25g)
投与法:試験化合物500mg/水1mLの混合液を、0.4mL/体重20g(20mL/kg)経口投与
投与量:試験化合物10g/kg
その結果、いずれの試験化合物においても死亡が観察されず、本発明化合物は低毒性であることが確認された。
本発明のラミネートフィルムは、食品用又は医療用包装材としての利用が可能である。

Claims (6)

  1. キトサン、又は一般式(1)
    Figure 2011006571
    〔但し、式中、Rは-NH及び下記式(2)〜(8)
    Figure 2011006571
    で表される基からなる群から選ばれる基であり、Rは−OH及び下記式(9)〜(16)
    Figure 2011006571
    (Xは、水素原子、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンを表す。)
    で表される基からなる群から選ばれる基であるが、Rが-NHであり且つRが-OHである場合を除く。〕
    で表される基又はその塩を構成単位として有するキトサン誘導体を含むことを特徴とする接着剤。
  2. 前記接着剤が、さらにポリビニルアルコール、メチルセルロース、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むものである請求項1に記載の接着剤。
  3. 請求項1または2に記載の接着剤の硬化物を介して2層のプラスチックフィルム層が積層して得られるラミネートフィルム。
  4. 前記プラスチックフィルムが、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、及び生分解性フィルムからなる群から選ばれる1である請求項3に記載のラミネートフィルム。
  5. 前記プラスチックフィルムの表面が、コロナ放電処理されたものである請求項3または4に記載のラミネートフィルム。
  6. 請求項3〜5のいずれかに記載のラミネートフィルムを用いた食品用又は医療用包装材。
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