JP2005290050A - 接着剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 環境や人体への悪影響が少なく、強度を持つ、水を媒質とする接着剤を提供することにある。また、本発明の他の目的は、より安全な試薬を用いて、温和な反応条件下で多糖類を酸化した酸化多糖類とキトサンを用いることにより、構造が均一で、接点となるカルボキシル基やアミノ基が制御可能な接着剤を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、天然多糖類由来のキトサンとウロン酸からなることから生体材料などとして利用したときに高い安全性と安定した作用機序を持つ接着剤を提供することにある。
【課題手段】 本発明では、酸性多糖類と塩基性多糖類とのポリイオンコンプレックスからなる接着剤であって、酸性多糖類がセルロース、デンプン、キチン等の多糖類の酸化により得られることを特徴とする接着剤を提供するものである。
【選択図】 なし

Description

本発明は接着剤組成物に関し、生分解性、生体親和性に優れる天然物由来の多糖類からなる接着剤に関するものである。
近年、接着剤業界並びに接着剤を使用する業界においては、人体への安全性、火災防止や環境保全等の観点から有機溶剤を媒質とする溶剤型接着剤に代わり、水を媒質とする水溶液型もしくはエマルジョン型接着剤等の接着剤が注目されつつある。木、紙、金属等への接着はもちろん、生体組織細胞など、特に安全性が要求されるような用途では、溶媒はもちろん、接着剤自体の安全性、生分解性、生体親和性も要求される。
一方で、天然多糖類は新しいタイプの生分解性高分子材料として、また生体親和性材料として注目され、その利用について多くの研究がなされ、数々の知見が報告されている。特に、キチン、キトサンは生物活性効果のある生体親和性材料として注目されている。キトサンはカニやエビなどの甲殻類、カブトムシやコオロギなどの昆虫類の骨格物質として存在し、また菌類の細胞壁にも存在する。キトサンは、キチン(N−アセチル−D−グルコサミン残基が多数、β−(1、4)−結合した多糖類)の脱アセチル化合物でグルコサミンのβ−(1、4)−結合した多糖類であり、唯一の天然カチオン性多糖類としても利用されている。
キトサンは酸性水溶液で容易に溶解することや、反応性のアミノ基を数多く持つことから、接着剤としての用途も様々な提案がなされている。
特開平7−163650号公報 特開平9−225019号公報 特開2000−5296号公報 特開2000−290633号公報 特開2003−221571号公報 なかでも、キトサンと例えば天然物であるヒアルロン酸やコンドロイチン、キチン、キトサン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、デキストラン等の多糖類、及びカルボキシメチルセルロース等の多糖類誘導体、またゼラチンやポリアミノ酸及びポリペプチド及びタンパク質、さらにはポリアクリル酸等の合成高分子を利用したポリイオンコンプレックスを利用し、感染症の心配のない生体用接着剤もいくつか提案されている。
しかし、これらの接着剤のゲルやフィルム等接着物質自体の強度や接着強度は未だ十分とは言えず、湿潤状態における膨潤が大き過ぎるという不具合もあった。
本発明の目的は、水を媒質とし、環境や人体への悪影響が少なく、かつ湿潤状態における膨潤が小さく、強度を持つ接着剤を提供することにある。また、本発明の他の目的は、より安全な試薬を用いて、温和な反応条件下で多糖類を酸化した酸化多糖類とキトサンを用いることにより、構造が均一で、接点となるカルボキシル基やアミノ基が制御可能な接着剤を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、天然多糖類由来のキトサンとウロン酸からなることから生体材料などとして利用したときに高い安全性と安定した作用機序を持つ接着剤を提供することにある。
請求項1の発明は酸性多糖類と塩基性多糖類とのポリイオンコンプレックスからなる接着剤であって、酸性多糖類がセルロース、デンプン、キチン等の多糖類の酸化により得られることを特徴とする接着剤である。
請求項2の発明は、前記酸性多糖類が、天然多糖類のピラノース環中6位の1級水酸基を選択的に酸化されてなることを特徴とする請求項1に記載の接着剤である。
請求項3の発明は、前記酸性多糖類が下記化学式(1)で表される構造を含む合成ポリウロン酸であることを特徴とする請求項1および2のいずれかに記載の接着剤である。
Figure 2005290050
(式中のX、Yは水素あるいはアルカリ金属を示す。また、式中のa、b、c、dは整数であり、化学式(1)中に含まれる割合を示す。)
請求項4の発明は、前記塩基性多糖類がキトサンであることを特徴とする請求項1から3に記載の接着剤である。
請求項5の発明は、前記塩基性多糖類がグルコサミンとN−アセチルグルコサミンを構成単糖とする多糖であり、グルコサミン:N−アセチルグルコサミンが40:60〜60:40の比率であることを特徴とする請求項1から4に記載の接着剤である。
請求項6の発明は、酸性多糖、および塩基性多糖が、pH1.0〜14.0において水溶性であることを特徴とする請求項1から5に記載の接着剤である。
請求項7の発明は、形状が、ゲル状またはシート状またはパウダー状であることを特徴とする請求項1から6に記載の接着剤である。
請求項8の発明は、pH3〜9の水溶液に膨潤させた膨潤度が自重の4倍以下であることを特徴とする請求項1から7に記載の接着剤である。
請求項9の発明は、生理食塩水に膨潤させた膨潤度が自重の8倍以下であることを特徴とする請求項1から7に記載の接着剤である。
請求項10の発明は、さらに、架橋剤等の添加剤を含むことを特徴とする請求項1から9に記載の接着剤である。
本発明の接着剤は、化学構造が制御されたウロン酸構造を有する天然多糖類由来の酸化多糖類と、N−アセチルグルコサミン及びグルコサミンよりなるキトサンからなるため、容易に生分解し、生体親和性が高いことから、従来の紙や、木材、金属などの接着用途はもちろん、外科手術等で生体内にて利用される医療用材料、及び薬品、食品、化粧品等の分野においても利用できる。
また、本発明の接着剤は、優れた水溶性または水分散性という特性を持つために、水を媒質とする水溶液型接着剤、もしくはエマルジョン型接着剤となる。これは、人体への影響や環境保全等の面で問題となっている有機溶剤を媒質とする接着剤に代わる、非常に有効な特性である。
さらに本発明では、従来の天然物材料からなるポリイオンコンプレックスの特性に加え、ポリイオンコンプレックスを形成するカルボキシル基とアミノ基を制御できることから、構造が明確で安全性が高く、接着剤としての物理的特性等をコントロールしやすく、様々な要求特性に対応することが可能になる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明はかかる実施形態に限定するものではない。
本発明の接着剤は、酸性多糖類と塩基性多糖類のポリイオンコンプレックスを基本とする、生体に対する安全性が高く、生体吸収性がよく、さらに酸性多糖類として、構造が明確な合成ポリウロン酸を用いることで、湿潤時の可塑性や、弾性、結着性、強度、さらには分解速度等を制御した特徴的な物性を有するものである。
本発明の接着剤において、酸性多糖としては、1)β−1,4−グルコピラノース及びβ−1,4−グルクロン酸を構成単糖とする合成ポリウロン酸、2)α−1,4−グルコピラノース及びα−1,4−グルクロン酸を構成単糖とする合成ポリウロン酸、3)β−1,4−グルコサミン及びβ−1,4−N−アセチルグルコサミン及びβ−1,4−グルコサミヌロン酸及びβ−1,4−N−アセチルグルコサミヌロン酸を構成単糖とする合成ポリウロン酸等が好ましく用いられる。
上記の合成ポリウロン酸は、例えば、セルロースやデンプン、キチン等の天然多糖類を選択的に酸化し、ピラノース環の6位にカルボキシル基またはその塩を導入することにより得られる。この選択的酸化手法としては、酸化度の制御が可能で、かつピラノース環の2位や3位を酸化することなく、ほとんど全てのピラノース環6位をカルボキシル基まで酸化することも可能であり、N−オキシル化合物触媒の存在下、水を媒質とした系で酸化剤を用いて酸化する方法が好ましく用いられる。
上記N−オキシル化合物としては、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル(以下TEMPOと称する)などが好ましく用いられる。また上記酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、目的の酸化反応を推進し得る酸化剤であれば、いずれの酸化剤も使用できる。さらに、臭化物やヨウ化物の共存下で酸化を行うと、温和な条件下でも酸化反応を円滑に進行させ、カルボキシル基の導入効率を大きく改善できるため、より好ましい。N−オキシル化合物にはTEMPOを用い、臭化ナトリウムの存在下、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いて行うのが特に好ましい。
ここでN−オキシル化合物は触媒としての量で済み、例えば、多糖類の構成単糖のモル数に対し、10ppm〜5%あれば充分であるが、0.05〜3%が好ましく、また臭化物またはヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択でき、例えば、多糖類の構成単糖のモル数に対し0〜100%、より好ましくは1〜50%である。
また、構成単糖の1級水酸基への酸化の選択性を上げ、副反応を抑える目的で、反応温度は室温以下、より好ましくは系内を5℃以下で反応させることが望ましい。さらに、反応中は系内をアルカリ性に保つことが好ましい。このときのpHは9〜12、より好ましくはpH10〜11に保つとよい。
さらにこの酸化方法は、酸化剤の量およびpHを一定に保つ際に添加されるアルカリの量により酸化度を制御することができる。例えば、アルカリが糖残基と等モル量添加されれば、ほぼ全てのピラノース環6位の一級水酸基がカルボキシル基にまで酸化され、水溶性のポリウロン酸が得られる。
さらに、非特許文献1によると、この酸化方法では、反応中間体としてアルデヒドやその変化形をした官能基がかなりの量存在している。このアルデヒドは接着剤中の塩基性多糖類や添加剤、接着基材と相互作用し、接着性の向上に寄与していると考えられる。
Kato,Y.,Matsuo,R. and Isogai,A.. Oxidation process of water−soluble starch in TEMPO−mediated system. Carbohydr.Polym.,51,69−75. この酸化反応の原料多糖類としては、デンプンやプルラン、ヒアルロン酸などの水溶性多糖類、さらに水不溶のセルロースやキチン等を用いることができる。セルロースやキチンなど結晶性の高い多糖類を原料とする場合は、前処理として結晶性を低下させる再生処理を行うことが好ましい。セルロースの再生処理としては、キュプラアンモニウム法、ビスコース法等の公知の再生処理法を利用できる。また、キチンの再生処理としては、例えばアルカリ再生処理が挙げられる。キチンを高濃度のアルカリに浸漬後、氷を加えながら低温下で希釈していくことにより、粘調な液体となる。ここに塩酸を加えて中和すると、フレーク状のキチンが析出するが、ほぼ非晶質化したキチンが得られ、これを充分に水洗して乾燥させずに上記酸化反応に供することにより、分子量低下を極力抑え、ほぼ全てのピラノース環6位の一級水酸基のみカルボキシル基にまで酸化することができる。
またあるいは、キチンの脱アセチル化物であるキトサンを原料に、均一反応下でN−アセチル化した材料を上記酸化反応に供してもよい。例えば、キトサンを酢酸に溶解し、メタノールで希釈後、キトサン中のアミノ基量に対して1.5〜3倍モル量の無水酢酸を添加することで、容易にN−アセチル化して、再びキチンの化学構造に戻すことができる。この操作を経て、充分に水洗したものを乾燥させずに、あるいは凍結乾燥して、上記酸化反応に供することにより、アルカリ再生キチン同様に6位の1級水酸基のみが選択性高く酸化される。
さらにこの場合、無水酢酸の添加量により酸化原料のN−アセチル化度をコントロールすることも可能である。
上記のように条件を制御して、キチン・キトサンを酸化すると下記化学式(1)に示す構造の合成ポリウロン酸(以下、キトウロン酸と称する)が得られる。該キトウロン酸は、本発明の接着剤の酸性多糖類として特に好ましい。ここで、(a+c)/(a+b+c+d)は、キトウロン酸のN−アセチル化度を表しており、N−アセチル化度が低い、つまり分子中のアミノ基量が多いと、酸性反応時の安定性が低下して分子量低下を招いたり、キトウロン酸の水溶性が低下するため好ましくない。本発明に用いる場合は、N−アセチル化度が80%以上であることが好ましい。また、(a+b)/(a+b+c+d)は、キトウロン酸のカルボキシ化度(酸化度)を表している。酸化度が低いと水溶性とはならず、塩基性多糖類とポリイオンコンプレックスを形成する際の均一性が低下するため好ましくない。本発明においては、70%以上の酸化度を有することが望ましい。したがって、(a+c):(b+d)の比率を8:2から10:0の範囲に、(a+c):(b+d)の比率を7:3から10:0の範囲のキトウロン酸を用いることが望ましく、得られる塩基性多糖類とのポリイオンコンプレックスは特に優れた接着剤となる。例えば、湿潤時に可塑性を有して様々な形状に変形できたり、一度乾燥粉末としたものを湿潤させると、結着性良く、物理的強度を有した被膜を形成したりする特性を有するものとなる。
Figure 2005290050
(式中のX、Yは水素あるいはアルカリ金属を示す。また、式中のa、b、c、dは整数であり、化学式(1)中に含まれる割合を示す。)
ここで、再生セルロースを上記酸化手法により酸化して、D−グルコースの6位にカルボキシル基を導入した、β−1,4−グルコピラノース及びβ−1,4−グルクロン酸を構成単糖類とする合成ポリウロン酸をセロウロン酸、デンプンを酸化してD−グルコースの6位にカルボキシル基を導入した、α−1,4−グルコピラノースおよびα−1,4−グルクロン酸を構成単糖とする合成ポリウロン酸をアミロウロン酸と呼ぶことにする。
また、これら合成ポリウロン酸の6位カルボキシル基は、ナトリウム塩などの塩で存在する方が安定であり、これらの合成ポリウロン酸の塩は特に水溶性が高い。また、この合成ポリウロン酸の水溶液に塩酸などの酸を添加するか、イオン交換樹脂で処理することにより、脱塩したCOOH型の合成ポリウロン酸を得ることができる。特に、前記したキトウロン酸やアミロウロン酸は、COOH型でも水溶性を示し、pH1〜14の広いpH域で高い水溶性を示す。
さらに本発明の接着剤において、上記の合成ポリウロン酸を単一で酸性多糖類として用いることも可能であるが、数種の合成ポリウロン酸を混合して用いることも可能である。例えば、酸性多糖類として、生分解速度の大きいセロウロン酸やキトウロン酸と、生分解速度の若干小さいアミロウロン酸を混合して、ポリイオンコンプレックスを形成すると、生分解速度をコントロールした接着剤を調製することが可能である。また、その混合比も目的や要求物性に応じて、自由に選択できる。
以上のように、本発明の接着剤に用いられる酸性多糖類は、アルギン酸、ペクチン、ヒアルロン酸などの天然のポリウロン酸類とは異なり、構造が明確かつ均一な合成ポリウロン酸であり、特にpH1〜14の広いpH領域で水溶性であることから、より均一なポリイオンコンプレックを形成し易いという特徴を有する。
続いて、本発明の接着剤の塩基性多糖類として用いられるキトサンについて説明する。
カニやエビなどの骨格物質の主成分として、また菌類などの細胞膜にも存在するキチンは、主にN−アセチル−D−グルコサミンがβ−1,4−グリコシド結合した多糖類である。このキチンの脱アセチル化物がキトサンであり、N−アセチル−D−グルコサミンとD−グルコサミンを構成単糖類とする多糖類で、カチオン性のアミノ基を有する。キチンは水に不溶であるが、キトサンは酢酸、塩酸等の希酸溶液に溶解する。
本発明の接着剤の塩基性多糖類として用いられるキトサンとしては、上記した一般的なキトサンが適用可能であり、原料や精製方法、重合度等については、特に限定されるものではない。また、構成単糖類中のグルコサミンとN−アセチルグルコサミンの比率も特に限定されるものではないが、水あるいは酸に対する溶解性の点から、40:60〜100:0の範囲であることが好ましい。グルコサミンはカチオン性のアミノ基を一つ有し、この比率は本発明の接着剤の物性を制御する上で重要な因子の一つである。
上記のグルコサミンとN−アセチルグルコサミンの割合、つまりアミノ基とN−アセチル基の割合は、酸やアルカリでの加水分解による脱アセチル化や、逆に無水酢酸などを用いたN−アセチル化の手法により制御が可能である。脱アセチル化反応においては加水分解の反応時間により、N−アセチル化反応においては試薬の添加量により、アミノ基の割合を制御できる。
このキトサンのグルコサミンとN−アセチルグルコサミンの比率は、一般に脱アセチル化度あるいはN−アセチル化度((N−アセチル化度(%))=100%−(脱アセチル化度(%))として示されるが、元素分析やコロイド滴定、KBr錠剤法による赤外分光法(IR)、あるいは酸性溶液に溶解して核磁気共鳴分光法(NMR)などにより求めることができる。
先述したように、一般にキトサンは希酸溶液に対して塩を形成して溶解するが、中性からアルカリ性では水に不溶である。しかし、グルコサミンとN−アセチルグルコサミンの比率が、40:60から60:40の範囲では幅広いpH領域で水に可溶であることが知られている。
この水溶性キトサンを調整する場合は、均一系でのN−アセチル化あるいは脱アセチル化を行い、分子間、分子内でのグルコサミンとN−アセチルグルコサミンの分布をより均一にすることが重要となる。
この水溶性キトサンは、pH1〜14の広いpH領域で水に可溶なため、前記したキトウロン酸やアミロウロン酸などの広いpH領域で水溶性の酸性多糖類と水中で混合して生じる水に不溶の生成物は、単独成分が不溶化したものを含むことのない、均一性の高いポリイオンコンプレックスであると言える。したがって、本発明の接着剤の塩基性多糖類として、グルコサミンとN−アセチルグルコサミンの比率が、40:60から60:40の範囲にあるキトサンは特に好ましく用いられる。
以上、本発明の水を媒質とする接着剤の基本であるポリイオンコンプレックスの酸性多糖類と塩基性多糖類について述べてきたが、ここで酸性多糖類と塩基性多糖類の配合比は、特に限定されるものではなく、接着剤として要求される物性を満たす範囲内において、任意に設定することができる。
さらに、本発明の接着剤の形状は、ゲル状、シート状あるいはパウダー状であることが、使用し易さやポットライフの点から好ましい。例えば、本発明の接着剤シートは、物体の湿潤面に貼付すると吸湿して物体表面に沿う形に変形し、接着を行うことができる。
また、本発明の接着剤は、湿潤時に可塑的な性質を有し、上記したシート状、パウダー状以外にも様々な形状に成形することも可能である。さらに、一度乾燥させた乾燥ゲルを湿潤させても、湿潤ゲルとしてのほぼ同様の物性を再現する。またさらには、パウダー状ポリイオンコンプレックスを水中で湿潤させても、粘着性、結着性を発現して再びブロックやシート形状に戻すことも可能である。したがって、本発明の接着剤パウダーは、湿潤基材に堆積させると、そこで物理的強度を有したゲル被膜を形成でき、かつ湿潤ゲルとしての物性を再現する非常に特徴的な特性を有するものである。
また、従来のポリイオンコンプレックスでは水に膨潤させたとき、形状を維持できるほどの強度を持たないか、もしくは膨潤が著しく大きく、湿潤状態での接着性はもちろん、形状維持もままならない。従来のものでは、これを回避するために主要成分の他に添加剤を加えて架橋点を増やすなどして膨潤を抑えている。
しかし本発明の接着剤は、pH3〜9の水溶液に膨潤させた膨潤度が自重の4倍以下であり、生理食塩水に膨潤させた膨潤度が自重の8倍以下であることを特徴とし、湿潤状態においても接着剤として十分な強度を有する。これは、特に添加剤がなくても達成することができる。
さらに、本発明の接着剤は、少なくとも1種類以上の架橋剤などの添加剤を含んでいてもよい。特に、前述の酸化多糖類中に存在するアルデヒドやカルボキシル基、塩基性多糖のアミノ基などの、他の多糖類の持つ水酸基などに対して比較的反応性の高い官能基を数多く持っているため、効率良く改質することが可能である。
引き続き、本発明の接着剤の製造方法について説明する。
酸性多糖類として前記した合成ポリウロン酸は、特に水溶性が高く、常温の水に5〜10%以上の高濃度でも溶解して、容易に水溶液を調製することが可能である。特にキトウロン酸、アミロウロン酸の水溶液は、酸やアルカリを添加してpHを変動させても、pH1〜14の広い範囲で水溶性である。
一方、塩基性多糖類としてキトサンの水溶液を調製する場合は、希酢酸や希塩酸の水溶液にキトサンを溶解させる、あるいはキトサンを水に分散させておいて、そこに酢酸や塩酸を加えて溶解させることで、キトサン水溶液を調整できる。
ここで塩基性多糖類として、グルコサミンとN−アセチルグルコサミンの比率が40:60〜60:40である水溶性キトサンを用いる場合は、上記のように調製した酸性キトサン水溶液にアルカリを加えてpHを変動させても、pH1〜14の広いpH域で可溶のキトサン水溶液となる。
また、この水溶性キトサンは、水に直接分散させ、凍結、融解を繰り返すことでも、1〜2%程度の濃度で対イオンのない水溶液を調製することも可能である。
この様にこれらの酸性多糖類、塩基性多糖類は高い水溶性を有するため、水のみでなく、アルコールなどの溶媒を添加しても溶解することが可能であり、これにより乾燥速度やゲル物性を変化させることもできる。
続いて、ポリイオンコンプレックスの形成工程において、上記のように調製した酸性多糖水溶液と塩基性多糖水溶液を混合して、pHを3〜9に調整することでポリイオンコンプレックスが析出する。
ここで酸性多糖類としてキトウロン酸あるいはアミロウロン酸、および塩基性多糖類として水溶性キトサンを用いた場合、両水溶液は共にpH1〜14の広いpH域で水溶性であることから、pH3〜9において析出した不溶物は均一なポリイオンコンプレックスであるということができる。さらにこれらの混合水溶液は、pH1〜3の酸性領域、あるいはpH9〜14のアルカリ性領域では、均一な水溶液となる。したがって、ポリイオンコンプレックスの形成工程において、混合水溶液のpHがpH1〜3あるいはpH9〜14の履歴を経た後に、攪拌しながらpHを3〜9に調整して析出したポリイオンコンプレックスはより均一性の高いイオンコンプレックスとなる。
この際、pH調整のために生じる対イオン同士の塩の存在は、生成したポリイオンコンプレックスの伸びや弾性等の物性に影響する。しかし、本発明の接着剤は湿潤時の強度に優れることから、ポリイオンコンプレックスの形成工程の後、あるいは形状付与工程の後に水洗処理することで対イオン同士の塩をポリイオンコンプレックスゲルから除くことも可能である。
さらに、酸性多糖水溶液としてCOOH型の合成ポリウロン酸水溶液を用い、塩基性多糖水溶液として水溶性キトサンを対イオンなく溶解した水溶液を用い、両溶媒を混合すると、即座にポリイオンコンプレックスが析出し、対イオン同士の塩の存在なく、ポリイオンコンプレックスを形成することもできる。
上記のように水中に析出したポリイオンコンプレックスは、攪拌を止めると容器底に堆積し、フレーク状、塊状、糸状、あるいはシート状のポリイオンコンプレックスとなる。これを取り出してゲル状接着剤として利用することはもちろん可能であるが、このゲルを湿潤状態のままプレスして乾燥するとシート状の接着剤が得られる。本発明の接着剤のポリイオンコンプレックスは、湿潤状態では可塑的な性質を有するので、この工程においてはプレスするだけではなく、様々な形状に成形することも可能である。また、攪拌を止めてからすぐにポリイオンコンプレックスの分散液をキャストすると、ポリイオンコンプレックスは均一に堆積して結着し、これを乾燥してもシート状の接着剤を得ることができる。
さらに、乾燥したポリイオンコンプレックスを公知の手法により粉砕することにより、パプダー状の接着剤とすることができる。このポリイオンコンプレックスパウダーは、水中で湿潤すると結着し、再度湿潤ゲルの物性を再現する。したがって、上記のようにパウダー状としてから水中に再分散させ、この分散液を用いて再度形状付与工程に供することも可能である。
本発明の接着剤は、化学構造が制御されたウロン酸構造を有する天然多糖類由来の酸化多糖類と、キトサンからなるため、容易に生分解し、また生分解性が高いこと、さらには水を媒質とする水溶液型もしくはエマルジョン型接着剤であることから、紙や木材、金属などの基材用接着用途だけでなく、基材の片面に本発明の接着剤を塗布し絆創膏や湿布などの医療用貼付剤として利用することも可能である。このとき、基材は特に限定されるものではなく、プラスチックフィルムや布等、目的に応じて適宜選択することが可能であるが、通気性を有する基材であることがより好ましい。また、パックやマニキュアなどの化粧用粘着剤、毛髪用化粧剤、歯科用粘着剤、薬品、食品等の分野においても利用が可能である。
以下に具体的な例をもとに実施例を説明する。
はじめに、実施例、比較例に用いる原料となる酸性多糖類、塩基性多糖類の製造例について説明する。
<製造例1>
(N−アセチル化キトサンの調製(1))
脱アセチル化度100%のキトサンとして、大日精化工業(株)製ダイキトサン100D(VL)を用い、このキトサン10gを10%酢酸190gに溶解し、メタノール1Lで希釈し、攪拌しながら無水酢酸12.68gを加えると、数分でゲル化した。これを15時間放置後、さらにメタノール1Lを加えてホモジナイザーで攪拌し、2N−NaOH水溶液を加えてpH7に中和し、これを濾過して、メタノール及び脱イオン水で十分に洗浄した後、凍結乾燥させてN−アセチル化キトサン11.6gを得た。元素分析によるN−アセチル化度は95%であった。
<製造例2>
(N−アセチル化キトサンの調製(2))
製造例1における無水酢酸の添加量を5.71gと変えた以外は、製造例1と同様に処理して、N−アセチル化キトサン11.4gを得た。元素分析によるN−アセチル化度は80%であった。
<製造例3>
(N−アセチル化キトサンの調製(3))
脱アセチル化度100%のキトサンとして、大日精化工業(株)製ダイキトサン100D(VL)を用い、このキトサン10gを10%酢酸190gに溶解し、メタノール1Lで希釈し、攪拌しながら無水酢酸3.17gを加え、室温で15時間攪拌した。ここに2N−NaOH水溶液を加えてpH7に中和すると、フレーク状のキトサンが析出し、これを濾過して、メタノール及び水:アセトン=1:7よりなる溶液で十分に洗浄した後、アセトンで脱水して、40℃で減圧乾燥させてN−アセチル化キトサン10.3gを得た。このキトサンは水溶性を示し、1wt%の水溶液でpH8.2であった。さらに酸やアルカリを加えてpHを変動させても溶解していた。塩化重水素酸重水溶液に溶解し測定した1H−NMR分析の結果から、N−アセチル化度は45%であった。図1に1H−NMRのスペクトルを示す。
<製造例4>
(キトウロン酸ナトリウム塩の調製(1))
前記製造例1にて調製したN−アセチル化キトサン10gを蒸留水400gに懸濁し、蒸留水100gにTEMPOを0.15gと臭化ナトリウム2.0gを溶解した溶液を加え、5℃以下まで冷却した。ここに11%濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液84gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。反応温度は常に5℃以下に維持した。反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.75に調整した。そして6位の1級水酸基の全モル数に対し、100%のモル数に対応するアルカリ添加量に達した時点で、エタノールを添加し反応を停止させ、2Lのエタノール中に反応液を投入して生成物を析出させ、水:アセトン=1:7よりなる溶液を用いて十分に洗浄した後、アセトンで脱水し、40℃で減圧乾燥させ、白い粉末状の酸化度100%のキトウロン酸ナトリウム塩10.8gを得た。図2に13C−NMRのスペクトルを示す。この水に対する溶解性は高く、5wt%水溶液でpH6であった。さらに酸やアルカリを加えてpHを変動させても溶解していた。GPC法により求めたプルラン換算の重量平均分子量32,000であった。
<製造例5>
(キトウロン酸ナトリウム塩の調製(2))
前記製造例2にて調製したN−アセチル化キトサン10gを蒸留水400gに懸濁し、蒸留水100gにTEMPOを0.15g、臭化ナトリウム2.0gを溶解した溶液を加え、5℃以下まで冷却した。ここに11%濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液84gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。反応温度は常に5℃以下に維持した。反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.75に調整した。そして、6位の1級水酸基の全モル数に対し、100%モル数に対応するアルカリ添加量に達した時点で、エタノールを添加し、反応を停止させ、2Lのエタノール中に反応液を投入して生成物を析出させ、水:アセトン=1:7よりなる溶液により十分洗浄した後、アセトンで脱水し、40℃で減圧乾燥させ、白い粉末状の酸化度100%のキトウロン酸ナトリウム塩10.6gを得た。図3に13C−NMRのスペクトルを示す。この水に対する溶解性は高く、5wt%水溶液でpH6.5であった。さらに酸やアルカリを加えてpHを変動させても溶解していた。GPC法により求めたプルラン換算の重量平均分子量は26000であった。
<製造例6>
(キトウロン酸ナトリウム塩の調製(3))
和光純薬工業(株)製キチン10gを、45%水酸化ナトリウム水溶液150gに浸漬し、室温以下で2時間攪拌した。この周囲を氷水などで冷やし、攪拌しながらこれに砕いた氷850gを添加した。このアルカリ処理によりキチンはほぼ溶解する。塩酸で中和し、十分に水洗した後、乾燥しないものを酸化原料とした。
この再生キチン2.5%濃度の懸濁液200gに、蒸留水50gにTEMPOを0.08g、臭化ナトリウム1.0gを溶解した溶液を加え、5℃以下まで冷却した。ここに11%濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液35gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。反応温度は常に5℃以下に維持した。反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.75に調整した。そして6位の1級水酸基の全モル数に対し、80%のモル数に対応するアルカリ添加量に達した時点で、エタノールを添加し、反応を停止させ、1Lのエタノール中に反応液を投入して生成物を析出させ、水:アセトン=1:7よりなる溶液により十分洗浄した後、アセトンで脱水し、40℃で減圧乾燥させ、白い粉末状の酸化度80%のキトウロン酸ナトリウム塩5.2gを得た。図4に13C−NMRのスペクトルを示す。この水に対する溶解性は高く、5wt%水溶液でpH6であった。さらに酸やアルカリを加えてpHを変動させても溶解していた。GPC法により求めたプルラン換算の重量平均分子量は35000であった。
<製造例7>
(アミロウロン酸ナトリウム塩の調製)
コンスターチ10gを蒸留水400gに加熱溶解させ冷却した。この溶液に、蒸留水100gにTEMPOを0.18g、臭化ナトリウム2.5gを溶解した溶液を加え、11%濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液104gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。反応温度は常に5℃以下に維持した。反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.75に調整した。そして、6位の1級水酸基の全モル数に対し、100%のモル数に対応するアルカリ添加量に達した時点で、エタノールを添加し、反応を停止させ、2Lのエタノール中に反応液を投入して生成物を析出させ、水:アセトン=1:7よりなる溶液により十分洗浄した後、アセトンで脱水し、40℃で減圧乾燥させ、白い粉末状の酸化度100%のアミロウロン酸ナトリウム塩11.7gを得た。図5に13C−NMRのスペクトルを示す。この水に対する溶解性は高く、5wt%でpH7であった。さらに酸やアルカリを加えてpHを変動させても溶解していた。GPC法により求めたプルラン換算の重量平均分子量は58000であった。
<製造例8>
(セロウロン酸ナトリウム塩の調製)
再生セルロースとして旭化成工業(株)製ベンリーゼを用い、再生セルロース10gを蒸留水400gに懸濁し、蒸留水100gにTEMPOを0.18g、臭化ナトリウム2.5gを溶解した溶液を加え、5℃以下まで冷却した。ここに11%濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液104gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。反応温度は常に5℃以下に維持した。反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.75に調整した。そして6位の1級水酸基の全モル数に対し、100%のモル数に対応するアルカリ添加量に達した時点で、エタノールを添加し、反応を停止させ、2Lのエタノール中に反応液を投入して生成物を析出させ、水:アセトン=1:7よりなる溶液により十分洗浄した後、アセトンで脱水し、40℃で減圧乾燥させ、白い粉末状の酸化度100%のセロウロン酸ナトリウム塩11.6gを得た。図6に13C−NMRのスペクトルを示す。この水に対する溶解性は高く、5wt%水溶液でpH7であった。この溶液に酸を加えてpH3以下にすると白濁したが、均一な分散液であった。GPC法により求めたプルラン換算の重量平均分子量は52000であった。
次に実施例1の接着剤について説明する。
製造例3で作成したN−アセチル化キトサン2gを希塩酸溶液に溶解し、固形分濃度3%、pH1の塩基性多糖水溶液とした。製造例4で作成したキトウロン酸ナトリウム塩1gを蒸留水に溶解し、固形分濃度5%、pH6の酸性多糖水溶液とした。塩基性多糖水溶液に攪拌しながら酸性多糖水溶液を加えると、混合溶液のpHは2で、均一な水溶液となった。ここに2N−NaOH水溶液を加えていくと、pH3〜9の範囲ではゲルが析出したが、さらにpHを上げ、pH12.5とすると均一な溶液となった。その後1N−塩酸によりpHを7に調製してゲルを析出させた。そのまま1分間攪拌後、析出したゲルを脱イオン水で十分に洗浄後、実施例1の接着剤を得た。
この実施例1の接着剤である湿潤ゲルをガラスシャーレ上に伸ばし、乾燥させた。接着剤は強固にガラスに付着し、付着した接着剤をはがすとガラス表面が剥離した。
製造例3で作成したN−アセチル化キトサン2gを希塩酸溶液に溶解し、固形分濃度3%、pH1の塩基性多糖水溶液とした。製造例5で作成したキトウロン酸ナトリウム塩1gを蒸留水に溶解し、固形分濃度5%、pH6.5の酸性多糖水溶液とした。攪拌しながら塩基性多糖水溶液に酸性多糖水溶液を加えると、混合溶液のpHは2で、均一な水溶液となった。その後1N−NaOH水溶液によりpHを7にしてゲルを析出させた。そのまま1分間攪拌後、速やかに底面積が127.5cm2のポリスチレン製容器に混合液を注ぎ込み、一晩静置した。析出したゲルは容器底面に堆積して結着し、湿潤ゲルシートとなった。この湿潤ゲルシートを脱イオン水で十分に洗浄後、風乾して実施例2の接着剤を得た。このポリイオンコンプレックスシートは乾燥時の膜厚が100〜200μmの黄褐色の透き通ったシートで、脱イオン水での洗浄時もシート形状が崩れることはなく、対イオン同士の塩であるNaClを除くことが可能であった。
製造例3で作成したN−アセチル化キトサン2gを希塩酸溶液に溶解し、固形分濃度3%、pH1の塩基性多糖水溶液とした。製造例6で作成したキトウロン酸ナトリウム塩1gを蒸留水に溶解し、固形分濃度5%、pH6の酸性多糖水溶液とした。攪拌しながら塩基性多糖水溶液に酸性多糖水溶液を加えると、混合溶液のpHは2で、均一な水溶液となった。その後1N−NaOH水溶液によりpHを7にしてゲルを析出させた。そのまま1分間攪拌後、速やかに底面積が127.5cm2のポリスチレン容器に混合液を注ぎ込み、一晩静置した。析出したゲルは容器底面に堆積して結着し、湿潤ゲルシートとなった。この湿潤ゲルシートを脱イオン水で十分に洗浄後、風乾して実施例3の接着剤を得た。このポリイオンコンプレックスシートは乾燥時の膜厚が100〜200μmの黄褐色の透き通ったシートで、脱イオン水での洗浄時もシート形状が崩れることはなく、対イオン同士の塩であるNaClを除くことが可能であった。
<比較例1>
0.1gの和光純薬工業(株)製キトサン500を0.1N酢酸10mlに溶解して塩基性多糖水溶液とした。0.1gの和光純薬工業(株)製アルギン酸ナトリウム500〜600cPを蒸留水10mlに溶解して、酸性多糖水溶液とした。ガラス板上に酸性多糖水溶液を下層、塩基性多糖水溶液を上層として重層した後、乾燥してフィルムを得た。これを比較例1の接着剤とした。このフィルムを蒸留水中に投入すると、溶け出すように崩壊し、フィルムの形状を留めなかった。
<比較例2>
製造例3で作成したN−アセチル化キトサン2gを希塩酸溶液に溶解し、固形分濃度3%、pH1の塩基性多糖水溶液とした。1gの和光純薬工業(株)製アルギン酸ナトリウム100〜150cPを蒸留水に溶解し、固形分濃度1%、pH7の酸性多糖水溶液とした。塩基性多糖水溶液に攪拌しながら酸性多糖水溶液を加えると、ゲルが析出した。そこに2N−NaOH水溶液を加えてpHを12.5に調整し、均一な溶液とした。その後1N−塩酸によりpHを7にしてゲルを析出させ、比較例2の湿潤ゲル状接着剤を得た。
<比較例3>
比較例2の湿潤ゲル状接着剤を、速やかに底面積が127.5cm2のポリスチレン製容器に混合液を注ぎ込み、一晩静置した。析出したゲルは高膨潤のままでシート状とはなっていなかったが、上澄み液を捨てて風乾し、比較例3の接着剤を得た。このポリイオンコンプレックスシートの乾燥時の膜厚は50〜300μmとムラの多いものであった。また、水中に投じると膨潤してシート形状を留めなかった。
<比較例4>
製造例3で作成したN−アセチル化キトサン2gを希塩酸溶液に溶解し、固形分濃度3%、pH1の塩基性多糖水溶液とした。ALDRICH製カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(Mw=250000 DS=0.7)1gを蒸留水に溶解し、固形分濃度1%、pH7の酸性多糖水溶液とした。攪拌しながら塩基性多糖水溶液に酸性多糖水溶液を加えると、ゲルが析出した。そこに2N−NaOH水溶液を加えてpHを12.5に調整し、均一な溶液とした。その後1N−塩酸によりpHを7にしてゲルを析出させた。1分間攪拌後、速やかに底面積が127.5cm2のポリスチレン製容器に混合液を注ぎ込み、一晩静置した。析出したゲルは容器底面に堆積したが、結着力が弱く、湿潤状態のままでは取り扱えず、そのまま風乾して比較例4の接着剤を得た。このポリイオンコンプレックスシートの乾燥時の膜厚は100〜200μmであった。このシートを水中に投入したところ、膨潤が大きく、部分的に崩壊が見られた。
実施例2のポリイオンコンプレックスシートを凍結粉砕してパウダー状とし、実施例4の接着剤を得た。
このパウダー1gを蒸留水100g中に攪拌しながら添加した。3分間攪拌後、速やかに底面積が36.3cm2のポリスチレン製容器に注ぎ込み、一晩静置した。容器底面に堆積した湿潤ゲルは結着して、抗張力を有する湿潤ゲルシートとなった。
実施例4のポリイオンコンプレックスパウダー1gを蒸留水100g中に攪拌しながら添加した。3分間攪拌後、速やかに底面積が36.3cm2のポリスチレン製容器に注ぎ込み、一晩静置した。容器底面に堆積した湿潤ゲルシートを風乾して実施例5の接着剤を得た。このポリイオンコンプレックスシートは乾燥時の膜厚が100〜200μmの黄褐色の透き通ったシートで、実施例2のポリイオンコンプレックスシートと同様の物性を示した。
<比較例4〜6>
比較例1〜3のポリイオンコンプレックスシートを凍結乾燥してパウダー状とし、それぞれ比較例4〜6の接着剤を得た。
それぞれ、パウダー1gを蒸留水100g中に攪拌しながら添加した。3分間攪拌後、速やかに底面積が36.3cm2のポリスチレン製容器に注ぎ込み一晩静置したが、いずれも結着してシート状になるものはなかった。
製造例3で作成したN−アセチル化キトサン2gを希塩酸溶液に溶解し、固形分濃度3%、pH1の塩基性多糖水溶液とした。製造例5で作成したキトウロン酸ナトリウム塩0.7gと製造例8で作成したセロウロン酸ナトリウム塩0.3gを蒸留水に溶解し、固形分濃度5%、pH7の酸性多糖水溶液とした。攪拌しながら塩基性多糖水溶液に酸性多糖水溶液を加えると、混合溶液のpHは2で、薄い白濁液となった。その後1N−NaOH水溶液によりpHを7にしてゲルを析出させた。そのまま1分間攪拌後、速やかに底面積が127.5cm2のポリスチレン製容器に混合液を注ぎ込み、一晩静置した。析出したゲルは容器底面に堆積して結着し、湿潤ゲルシートとなった。この湿潤ゲルシートを脱イオン水で十分に洗浄後、風乾して実施例6の接着剤を得た。このポリイオンコンプレックスシートは乾燥時の膜厚が100〜200μmの黄褐色の透き通ったシートで、脱イオン水での洗浄時もシート形状が崩れることはなく、対イオン同士の塩であるNaClを除くことが可能であった。
製造例3で作成したN−アセチル化キトサン2gを希塩酸溶液に溶解し、固形分濃度3%、pH1の塩基性多糖水溶液とした。製造例5で作成したキトウロン酸ナトリウム塩0.5gと製造例7で作成したアミロウロン酸ナトリウム塩0.5gを蒸留水に溶解し、固形分濃度5%、pH7の酸性多糖水溶液とした。攪拌しながら塩基性多糖水溶液に酸性多糖水溶液を加えると、混合溶液のpHは2で、均一な水溶液となった。その後1N−NaOH水溶液によりpHを7にしてゲルを析出させた。そのまま1分間攪拌後、速やかに底面積が127.5cm2のポリスチレン製容器に混合液を注ぎ込み、一晩静置した。析出したゲルは容器底面に堆積して結着し、湿潤ゲルシートとなった。この湿潤ゲルシートを脱イオン水で十分に洗浄後、風乾して実施例7の接着剤を得た。このポリイオンコンプレックスシートは乾燥時の膜厚が100〜200μmの黄褐色の透き通ったシートで、脱イオン水での洗浄時もシート形状が崩れることはなく、対イオン同士の塩であるNaClを除くことが可能であった。
製造例3で作成したN−アセチル化キトサン2gを希塩酸溶液に溶解し、固形分濃度3%、pH1の塩基性多糖水溶液とした。製造例7で作成したアミロウロン酸ナトリウム塩1gを蒸留水に溶解し、固形分濃度5%、pH6.9の酸性多糖水溶液とした。攪拌しながら塩基性多糖水溶液に酸性多糖水溶液を加えると、混合溶液のpHは2で、均一な水溶液となった。その後1N−NaOH水溶液によりpHを7にしてゲルを析出させた。そのまま1分間攪拌後、速やかに底面積が127.5cm2のポリスチレン製容器に混合液を注ぎ込み、一晩静置した。析出したゲルは容器底面に堆積して結着し、湿潤ゲルシートとなった。この湿潤ゲルシートを脱イオン水で十分に洗浄後、風乾して実施例8の接着剤を得た。このポリイオンコンプレックスシートは乾燥時の膜厚が100〜200μmの黄褐色の透き通ったシートで、脱イオン水での洗浄時もシート形状が崩れることはなく、対イオン同士の塩であるNaClを除くことが可能であった。
製造例3で作成したN−アセチル化キトサン2gを希塩酸溶液に溶解し、固形分濃度3%、pH1の塩基性多糖水溶液とした。製造例8で作成したセロウロン酸ナトリウム塩1gを蒸留水に溶解し、固形分濃度5%、pH6.9の酸性多糖水溶液とした。攪拌しながら塩基性多糖水溶液に酸性多糖水溶液を加えると、混合溶液のpHは2で、均一な水溶液となった。その後1N−NaOH水溶液によりpHを7にしてゲルを析出させた。そのまま1分間攪拌後、速やかに底面積が127.5cm2のポリスチレン製容器に混合液を注ぎ込み、一晩静置した。析出したゲルは容器底面に堆積して結着し、湿潤ゲルシートとなった。この湿潤ゲルシートを脱イオン水で十分に洗浄後、風乾して実施例9の接着剤を得た。このポリイオンコンプレックスシートは乾燥時の膜厚が100〜200μmの黄褐色の透き通ったシートで、脱イオン水での洗浄時もシート形状が崩れることはなく、対イオン同士の塩であるNaClを除くことが可能であった。
市販のキトサン2gを0.1N−HCl溶液100mlに溶解させた。製造例7のアミロウロン酸10%水溶液20mlに、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル2gを溶解させ、先のキトサン溶液の中に添加した。生成した湿潤ゲルを取り出し、実施例10の接着剤とした。
<試験例1>
<膨潤度> 実施例2、8、9、比較例3、4のポリイオンコンプレックスシートを0.5gずつ切り出し、それぞれ50ml容ガラス瓶に入れた蒸留水30ml中に浸漬した。37℃で3日間保存し、膨潤ゲルを取り出し、余分な水分を拭いた後重量を測定し、その膨潤度を測定した。その結果、実施例2、8、9、比較例3の順に2.9倍、2.4倍、3.4倍、8.8倍であり、比較例4は浸漬後に溶け出してしまった。
<試験例2>
<膨潤度> 実施例2、8、9、比較例3、4のポリイオンコンプレックスシートを0.5gずつ切り出し、それぞれ50ml容ガラス瓶に入れた生理食塩水30ml中に浸漬した。37℃で3日間保存し、膨潤ゲルを取り出し、余分な水分を拭いた後重量を測定し、その膨潤度を測定した。その結果、実施例2、8、9の順に7.2倍、6.3倍、7.9倍であり、比較例3、4は溶け出してしまった。
<試験例3>
<接着強度> 片面コロナ処理したポリオエチレンテレフタレートフィルム(膜厚15μm)1cm×10cmの短冊状フィルム2枚のうち、1枚の片端に実施例1および実施例10の湿潤ゲルをのせ、1cm×1cmの接合部分を持つように2枚の短冊状フィルムを重ね合わせた。10gの重りをのせて乾燥後、フィルムの両端を引っ張り(T字剥離、50mm/min)、試験した。比較例2の湿潤ゲルについても同様に試験を行った。その結果、実施例1および実施例10の試験体はそれぞれ1.29N/cm、1.11N/cmの荷重がかかったところでポリエチレンテレフタラートフィルムが破壊したが、比較例2の試験体は接合部分でフィルムが剥がれた。
<試験例4> 厚さ95μmのコピー用紙(1cm×10cm)について、実施例1の接着剤を用い、試験例3と同様にT字剥離強度を測定したところ、22.6N/cmの荷重がかかったところで基材である紙が破壊した。市販のスティックのりを用いて同様にT字剥離強度を測定したところ、8.4N/cmで剥離した。
また、実施例2、8、9、および比較例4のシート状接着剤を十分に水で湿潤させ、同様の試験を行ったところ、実施例2、8、9の順に、2.05N/cm、0.53N/cm、0.31N/cmの荷重がかかったところで剥離した。また、比較例4では接着できなかった。
本発明の接着剤は、化学構造が制御されたウロン酸構造を有する天然多糖類由来の酸化多糖類と、キトサンからなるため、容易に生分解し、また生分解性が高いこと、さらには水を媒質とする水溶液型もしくはエマルジョン型接着剤であることから、紙や木材、金属などの基材用接着用途はもちろん、基材の片面に本発明の接着剤を塗布し絆創膏や湿布などの医療用貼付剤として利用することにも優れている。また、パックやマニキュアなどの化粧用粘着剤、毛髪用化粧剤、歯科用粘着剤、薬品、食品等の分野においても利用が可能である。
製造例3のN−アセチル化キトサンを塩化重水素酸重水溶液に溶解して測定した1H−NMRスペクトルである。 製造例4のキトウロン酸ナトリウム塩を重水に溶解して測定した13C−NMRのスペクトルである。 製造例5のキトウロン酸ナトリウム塩を重水に溶解して測定した13C−NMRのスペクトルである。 製造例6のキトウロン酸ナトリウム塩を重水に溶解して測定した13C−NMRのスペクトルである。 製造例7のアミロウロン酸ナトリウム塩を重水に溶解して測定した13C−NMRのスペクトルである。 製造例8のセロウロン酸ナトリウム塩を重水に溶解して測定した13C−NMRのスペクトルである。

Claims (11)

  1. 酸性多糖類と塩基性多糖類とのポリイオンコンプレックスからなる接着剤であって、酸性多糖類がセルロース、デンプン、キチン等の多糖類の酸化により得られることを特徴とする接着剤。
  2. 前記酸性多糖類が、天然多糖類のピラノース環中6位の1級水酸基を選択的に酸化されてなることを特徴とする請求項1に記載の接着剤。
  3. 前記酸性多糖類が下記化学式(1)で表される構造を含む合成ポリウロン酸であることを特徴とする請求項1および2のいずれかに記載の接着剤。
    Figure 2005290050
    (式中のX、Yは水素あるいはアルカリ金属を示す。)
  4. 前記塩基性多糖類がキトサンであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の接着剤。
  5. 前記塩基性多糖類がグルコサミンとN−アセチルグルコサミンを構成単糖とする多糖であり、グルコサミン:N−アセチルグルコサミンが40:60〜60:40の比率であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の接着剤。
  6. 酸性多糖、および塩基性多糖が、pH1.0〜14.0において水溶性であることを特徴とする請求項1から5に記載の接着剤。
  7. 形状が、ゲル状またはシート状またはパウダー状であることを特徴とする請求項1から6に記載の接着剤。
  8. pH3〜9の水溶液に膨潤させた膨潤度が自重の4倍以下であることを特徴とする請求項1から7に記載の接着剤。
  9. 生理食塩水に膨潤させた膨潤度が自重の8倍以下であることを特徴とする請求項1から7に記載の接着剤。
  10. さらに、架橋剤等の添加剤を含むことを特徴とする請求項1から9に記載の接着剤。
  11. 基材上に請求項1から10のいずれかに記載の接着剤を塗布したことを特徴とする積層体。
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