以下、第1の実施形態として本発明に係るダンパ装置24、44を備えたブレーキ液圧制御装置Aについて図面を参照し説明する。図1はブレーキ液圧制御装置Aを示す概要図である。ブレーキ液圧制御装置Aは、ブレーキペダル11の踏込状態に応じた液圧のブレーキ液を生成して各車輪Wfl、Wrr、Wrl、Wfrの回転を規制するホイールシリンダWCfl、WCrr、WCrl、WCfrに供給するマスタシリンダ10と、ブレーキ液を貯蔵するとともにマスタシリンダ10へ補給するリザーバタンク12と、ブレーキペダル11の踏み込み力を助勢する負圧式ブースタ13と、車輪Wfl、Wrr、Wrl、Wfrの車輪速度を検出する車輪速度センサSfl、Srr、Srl、Sfrと、ブレーキペダル11の踏込状態に関係なくホイールシリンダWCfl、WCrr、WCrl、WCfrに独立して制御液圧を供給することも可能なアクチュエータBと、アクチュエータBを制御する制御装置60とを備えている。第1の実施形態においては、このブレーキ液圧制御装置Aは前輪駆動車両に適用されている。
各ホイールシリンダWCfl、WCrr、WCrl、WCfrは、各キャリパCLfl、CLrr、CLrl、CLfrに設けられており、液密に摺動するピストン(図示省略)を収容している。各ホイールシリンダWCfl、WCrr、WCrl、WCfrにマスタシリンダ10からの液圧が供給されると、各ピストンが一対のブレーキパッド(図示省略)を押圧して各車輪Wfl、Wrr、Wrl、Wfrと一体回転するディスクロータDRfl、DRrr、DRrl、DRfrを両側から挟んでその回転を停止するようになっている。なお、本実施の形態においては、ディスク式ブレーキを採用するようにしたが、ドラム式ブレーキを採用するようにしてもよい。この場合、各ホイールシリンダWCfl、WCrr、WCrl、WCfrに液圧が供給されると、各ピストンが一対のブレーキシューを押圧して各車輪Wfl、Wrr、Wrl、Wfrと一体回転するブレーキドラムの内周面に当接してその回転を停止するようになっている。
第1の実施形態のブレーキ液圧制御装置Aのブレーキ配管系はX配管方式にて構成されており、マスタシリンダ10の第1および第2出力ポート10a、10bは、第1および第2配管系La 、Lb にそれぞれ接続されている。第1配管系Laは、マスタシリンダ10と左前輪Wfl、右後輪WrrのホイールシリンダWCfl、WCrrとをそれぞれ連通するものであり、第2配管系Lbは、マスタシリンダ10と左後輪Wrl、右前輪WfrのホイールシリンダWCrl、WCfrとをそれぞれ連通するものである。
第1配管系Laは、第1〜第7油路La1〜La7から構成されている。第1油路La1は一端がマスタシリンダ10の第1出力ポート10aに接続されている。第2油路La2は、一端が第1油路La1に接続され他端がホイールシリンダWCflに接続されている。第2油路La2上には、マスタシリンダ10側から順番に遮断弁21および保持弁22が直列に配設されている。第3油路La3 は、一端が第2油路La2の遮断弁21および保持弁22の間に接続され他端がホイールシリンダWCrrに接続されている。第3油路La3上には、保持弁23が配設されている。第4油路La4は、一端が第2油路La2の遮断弁21および保持弁22の間に接続され、他端が内蔵リザーバタンク29に接続されている。第4油路La4上には、第2油路La2側から順番にダンパ装置24、逆止弁25、ポンプ26、逆止弁27および逆止弁28が配設されている。第5油路La5は、一端が第2油路La2の保持弁22とホイールシリンダWCflとの間に接続され、他端が第4油路La4の逆止弁28と内蔵リザーバタンク29の間に接続されている。第5油路La5上には、減圧弁31が配設されている。第6油路La6は、一端が第3油路La3の保持弁23とホイールシリンダWCrrとの間に接続され、他端が第4油路La4の逆止弁28と内蔵リザーバタンク29の間に接続されている。第6油路La6には、減圧弁32が配設されている。第7油路La7は、一端が第1油路La1に接続され、他端が第4油路La4の逆止弁27と逆止弁28の間に接続されている。第7油路La7には、充填弁33が配設されている。
遮断弁21は、マスタシリンダ10とホイールシリンダWCfl、WCrrを連通・遮断するノーマルオープン型の電磁開閉弁である。遮断弁21は通常連通状態(図示状態)とされているが、遮断状態にあるときホイールシリンダWCfl、WCrr側の圧力をマスタシリンダ10側の圧力よりも所定の差圧分高い圧力に保持するようになっている。この差圧は制御装置60により制御電流に応じて調圧されるようになっている。遮断弁21は、制御装置60の指令に応じて非通電されると連通状態(図示状態)に、また通電されると遮断状態に制御できる2位置弁として構成されている。遮断弁21には、マスタシリンダ10からホイールシリンダWCfl、WCrrへの流れを許容する逆止弁21aが並列に設けられている。
保持弁22は、マスタシリンダ10とホイールシリンダWCflを連通・遮断するノーマルオープン型の電磁開閉弁である。保持弁23は、マスタシリンダ10とホイールシリンダWCrrを連通・遮断するノーマルオープン型の電磁開閉弁である。保持弁22、23は、制御装置60の指令に応じて非通電されると連通状態(図示状態)に、また通電されると遮断状態に制御できる2位置弁として構成されている。保持弁22、23にはホイールシリンダWCfl、WCrrからマスタシリンダ10への流れを許容する逆止弁22a、23aがそれぞれ並列に設けられている。
ポンプ26は、制御装置60の指令に応じた電動モータ26aの作動によって駆動されている。ポンプ26は、ABS制御の減圧モード時においては、吸い込み口がブレーキ液を貯蔵する内蔵リザーバタンク29に連通し、吐出口が逆止弁25およびダンパ装置24を介してマスタシリンダ10およびホイールシリンダWCfl、WCrrに連通するものである。ポンプ26は、ホイールシリンダWCfl、WCrr内のブレーキ液または内蔵リザーバタンク29内に貯められているブレーキ液を吸い込んでマスタシリンダ10に戻している。また、ポンプ26は、トラクション制御時においては、充填弁33が連通となり、吸い込み口がブレーキ液を貯蔵するリザーバタンク12に連通し、吐出口が逆止弁25およびダンパ装置24を介してホイールシリンダWCfl、WCrrに連通するものである。ポンプ26は、リザーバタンク12内に貯められているブレーキ液を吸い込んでホイールシリンダWCfl、WCrrに圧送している。ポンプ26は、回転式のポンプであり、トロコイドポンプ等の内接歯車型の回転式のポンプである。そしてポンプ26から吐出されるブレーキ液には脈動が含まれている。
逆止弁25は、ポンプ26の吐出口へブレーキ液が流入を止めるものである。逆止弁27は、ポンプ26からブレーキ液が逆流するのを止めるものである。逆止弁28は、トラクション制御時において、内蔵リザーバタンク29へマスタシリンダ10からのブレーキ液が流入するのを止めるものである。
減圧弁31は、ホイールシリンダWCflと内蔵リザーバタンク29を連通・遮断するノーマルクローズ型の電磁開閉弁である。減圧弁32は、ホイールシリンダWCrrと内蔵リザーバタンク29を連通・遮断するノーマルクローズ型の電磁開閉弁である。減圧弁31、32は、制御装置60の指令に応じて非通電されると遮断状態(図示状態)に、また通電されると連通状態に制御できる2位置弁として構成されている。
第2配管系Lbは前述した第1配管系Laと同様な構成であり、第1〜第7油路Lb1〜Lb7、遮断弁41、保持弁42、43、本発明に係るダンパ装置44、逆止弁45、ポンプ46、逆止弁47、逆止弁48、内蔵リザーバタンク49、減圧弁51、52、充填弁53などを備えている。これらの説明は省略する。
車輪速度センサSfl、Srr、Srl、Sfrは、各車輪Wfl、Wrr、Wrl,Wfrの付近にそれぞれ設けられており、各車輪Wfl、Wrr、Wrl、Wfrの回転に応じた周波数のパルス信号を制御装置60に出力している。
また、第1配管系Laの第1油路La1には、マスタシリンダ10内のブレーキ液圧であるマスタシリンダ圧を検出する圧力センサPが設けられており、この検出信号は制御装置60に送信されるようになっている。なお、圧力センサP は第2配管系Lbの第1油路Lb1に設けるようにしてもよい。
さらに、ブレーキ液圧制御装置Aは、上述した圧力センサP、電動モータ26a、各電磁弁21、22、23、31、32、33、41、42、43、51、52、53、および各車輪速度センサSfl、Srr、Srl、Sfrに接続された制御装置60を備えている。また、制御装置60は、各車輪速度センサSfl、Srr、Srl、Sfr、圧力センサPからの入力に基づいてABS制御やトラクション制御等を行う。
次に本発明に係るダンパ装置24の構成について図2に基づいて詳細に説明する。ダンパ装置24は、ポンプ26が吐出したブレーキ液の脈動を低減するためのものである。ダンパ装置24はポンプ26の吐出側、即ち下流側に配置されている。
ダンパ装置24は図2に示すように固定部材61と、ピストン部材62と、固定部材61とピストン部材62との間で形成される可変容積室63と、ピストン部材62を可変容積室63の容量が減少する方向に付勢する弾性部材としての圧縮コイルばね64と、ポンプ26へのブレーキ液の逆流を防止する逆止部72と、からなる。なお、図2において左側がポンプ26側であり、右側がマスタシリンダ10側である。ポンプ26が作動したときには、ブレーキ液はポンプ26からマスタシリンダ10側に向って流れるため、以降、ポンプ26側を上流側、マスタシリンダ10側を下流側とする。
固定部材61は、ダンパ装置24の本体を構成するものである。固定部材61は、円柱部61bと、円柱部61bの外周縁部に形成され、ピストン部材62が移動する空間である溝部61jと、脈動が低減されたブレーキ液が排出される流出ポート61kと、流出ポート61kに排出されたブレーキ液をマスタシリンダ10の排出側流路に向けて送出するための排出通路61mとからなる。
円柱部61b内部には、円柱部61bの軸線方向にポンプ26から吐出されたブレーキ液が流入するための流入ポート61aと、逆止部72を構成するテーパ部61cと、通路61dと、貫通孔61eとが上流側から下流側に向って貫設されている。
テーパ部61cは流入ポート61aの下流側に流入ポート61aと連続して形成され円柱部61bの軸線方向において略中央部から所定の角度で下流に向って全周均一に拡径し形成されている。テーパ部61cは、ボール65、及び圧縮コイルばね67とによって逆止部72を構成している。ボール65は例えば金属によって形成され、圧縮コイルばね67によって下流側から上流側に向って付勢されている。そして付勢されたボール65はテーパ部61cと当接するよう構成されている。また、圧縮コイルばね67はボール65と当接する側と対向する側の端面が後述する圧入部材68の上流側端面68bに支持されている。
通路61dはボール65がブレーキ液の流れ方向において自在に移動でき、且つブレーキ液の最大流量時においても通油抵抗とならないような所定の開口径にて形成されている。
貫通孔61eは通路61dの下流側に形成されている。貫通孔61eは通路61dよりさらに拡径され、円柱部61bの下流側の端面61fまで貫通している。 貫通孔61eには、圧入部材68が円柱部61bと一体的に圧入されている。圧入部材68は、円柱状に形成され、圧入部材68の下流側の端面68aは円柱部61bの端面61fと同一面を形成している。また圧入部材68の下流側端面68aの中心部には下流側に向って先端部が先細りとなるテーパ状の突起部68cが形成されている。突起部68cは、後述するピストン部材62に設けられた絞り孔62aを貫通し、突起部68cの外周と絞り孔62aの内径部との間に形成される隙間によって絞り部を形成している。そして絞り部の面積(有効径)はピストン部材62が軸方向に移動するのに伴い増減し可変絞り69を形成している。また圧入部材68には、上流側の端面68dから下流側の端面68aに貫通されるブレーキ液を流通させるための貫通孔68eが設けられている。ただし、貫通孔68eは、圧入部材68の側面部に上流側端面68bから下流側端面68aに連通するように設けた切り欠きと、圧入部材68が圧入された貫通孔61eの内周面とによって囲繞し形成してもよい。さらに圧入部材68の上流側の端面68dの中心部には、圧縮コイルばね67の円筒内径部に収納され、圧縮コイルばね67の位置決め、及び保持を行なうための半球状の突部68bが形成されている。
円柱部61bの側面部61gには、例えばNBR等のゴムによってリング状に形成されたOリング66を嵌入するためのOリング溝61hが全周に亘り刻設されている。
流出ポート61kは可変容積室63から可変絞り69を介して排出された脈動が低減されたブレーキ液が排出される空間である。流出ポート61kは、移動するピストン部材62の底板の下流側端面と、固定部材61の溝部61jを形成する大径側の円筒内周面と、固定部材61に一体的に形成されている下流側壁面61nとによって形成されている。つまり流出ポート61kはダンパ装置24が作動中には常時、容積が変化する空間である。下流側壁面61nにはピストン部材62の移動最大時の停止部とするための、停止部61pが突設されている。停止部61pはピストン部材62の底板の下流側端面と当接しピストン部材62の移動を規制する。これによって流出ポート61kの必要容積を確保し、ブレーキ液の流路を確保する。よって停止部61pの下流側壁面61nからの高さは、流出ポート61kがブレーキ液の最大流量時に通油抵抗とならないように決定される。
排出通路61mは流出ポート61kに連通し、ブレーキ液をマスタシリンダ10の排出側流路に向けて送出するための通路である。
ピストン部材62は一端が開口されたカップ状に形成されている。ピストン部材62は開口部側端面に設けられた鍔部62bと、底面に穿設された絞り孔62aと、内径部62cに設けられた段付き部とを有する。そしてピストン部材62は固定部材61に形成された溝部61jに開口部側から挿入されている。そしてピストン部材62の内径部62cが円柱部61bにOリング66を介して摺動可能に嵌合されている。そして、ピストン部材62の内径部62cと、円柱部61bの下流側端面61fとの間の空間によって可変容積室63が形成されている。
Oリング66は円柱部61bに刻設されたOリング溝61hに嵌入されている。そしてOリング66は、円柱部61bの外周面より若干はみだし膨らんだ状態で固定されている。これによりピストン部材62が円柱部61bに嵌合されるとき、ピストン部材62の内径部62cの内周面は、円柱部61bの外周面より若干はみだしているOリング66を潰しながら嵌合される。そして内径部62cの内周面は、Oリング66を円柱部61bの軸心に向って押圧し、Oリング66はOリング溝61h内で圧縮されている。しかしOリング66の、圧縮に対抗し復元しようとする力によって、円柱部61bに設けられたOリング溝61hの底面及びピストン部材62の内径部62c内周面は夫々押圧され、これにより可変容積室63を固定部材61との間で液密的に区画している。
ピストン部材62の開口部側端面には、鍔部62bが端面から直角に外方に向って屈曲され設けられている。鍔部62bはピストン部材62を可変容積室63の容量が減少する方向に付勢する圧縮コイルばね64の一端側端面64aの受け部である。
ピストン部材62の底面には絞り孔62aが穿設されている。絞り孔62aは、前述したように円柱部61bと一体的に圧入されている圧入部材68に設けられたテーパ状の突起部68cに貫通され、絞り孔62aとの間に形成される隙間によって絞り部(可変絞り69)が形成されている。可変絞り69は、可変容積室63のブレーキ液が排出ポート63kに排出されるときに通過する通路である。可変絞り69は、可変容積室63に流入したブレーキ液が排出されるときに抵抗となることによってブレーキ液の脈動を低減する。可変絞り69を構成する絞り孔62aの孔径は、ブレーキ液の最大流量時に突起部68cが絞り孔62aから離脱し絞り孔62aのみにて脈動の低減に対応できる径にて設定されている。
ピストン部材62の内径部62cの径は開口部側の端面から所定の位置まで円柱部61bの外径よりも若干大きい径で形成されている。そして該所定の位置よりも下流側(奥側)では円柱部61bの外径よりも若干小さい径で形成されている。これによって段付き面62dが形成されている。そしてピストン部材62の内径部62cが円柱部61bに嵌合されたとき、段付き面62dが円柱部61bの端面61f周縁と当接し停止されピストン部材62の移動の起点とすることができる。これによって円柱部61bと一体的に圧入されている圧入部材68の突起部68cとピストン部材62の底面に設けられた絞り孔62aとの位置関係の設定ができ、初期の可変絞り69の有効径を確定することができる。つまり、初期の可変絞り69の有効径を大きくしたいときは、段付き面62d位置をピストン部材62の開口部からより深い位置に設定すればよい。また初期の有効径を小さくしたいときには、段付き面62d位置をピストン部材62の開口部から浅い位置に設定すればよい。いずれにするかはシステム毎に異なり適合によって決定される。また突起部68c、及び絞り孔62aの形状は、ダンパ装置24への要求仕様によって決定される。つまり突起部68cのテーパの角度や外径、また絞り孔62aの孔径等はブレーキ液圧制御装置毎に夫々決定される。
圧縮コイルばね64は、ピストン部材62の外周部にピストン部材62と略同軸に配置されている。圧縮コイルばね64は一端側端面64aがピストン部材62の鍔部62bの下流側端面上に支持されている。また圧縮コイルばね64の他端側端面64bは固定部材61に一体的に形成されている下流側壁面61nに支持されている。これによって圧縮コイルばね64は、ピストン部材62を可変容積室63の容量が減少する方向、即ち上流側に向って付勢している。また、圧縮コイルばね64を形成する線材間の隙間は流出ポート61kから流出してくるブレーキ液の流路を形成している。よって圧縮コイルばね64は、ピストン部材62の下流側への最大移動時には最大流量のブレーキ液の通油抵抗とならない線材間隙間が確保されるように構成されている。
次に、このように構成された第1の実施形態の作動について説明する。上記の構成になるブレーキ液圧制御装置Aにおいて、通常時は、アクチュエータBの各開閉電磁弁は図1
に示す常態位置にあり、電動モータ26aは停止している。この常態でブレーキペダル11が操作されると、負圧式ブースタ13が作動してマスタシリンダ10を作動させる。マスタシリンダ10は、その内部の前後二つの液圧発生室にブレーキペダル操作力に応じた液圧を発生し、第一、第二出力ポート10a、10bから第一、第二配管系La及びLbに出力する。マスタシリンダ10から第一配管系Laに出力された液圧は、第1油路La1から第2油路La2の遮断弁21及び保持弁22を介して車輪WflのホイールシリンダWCflに供給されると共に、第1油路La1から第2油路La2の遮断弁21及び第3油路La3の保持弁23を介して車輪WrrのホイールシリンダWCrrに供給される。これと同時に、マスタシリンダ10から第二配管系Lbに出力された液圧は、第1油路Lb1から第2油路Lb2の遮断弁41及び保持弁42を介して車輪WfrのホイールシリンダWCfrに供給されると共に、第1油路Lb1から第2油路Lb2の遮断弁41及び第3油路Lb3の保持弁43を介して車輪WrlのホイールシリンダWCrlに供給される。これによってホイールシリンダWCfl、WCrr、WCrl、WCfrの各ピストンが一対のブレーキパッド(図示省略)を押圧して各車輪Wfl、Wrr、Wrl、Wfrと一体回転するディスクロータDRfl、DRrr、DRrl、DRfrを両側から挟んでその回転を停止し車両が制動される。
操作されていたブレーキペダル11が解放されると、負圧式ブースタ13が常態へと復帰する。そしてマスタシリンダ10が常態へと復帰し、マスタシリンダ10の内部の二つの圧力発生室から第一、第二配管系La及びLbに出力される液圧が大気圧まで低下する。従って、ホイールシリンダWCfl、WCrr、WCrl、WCfrの液圧も大気圧まで低下し、ホイールシリンダWCfl、WCrr、WCrl、WCfrのブレーキパッドが常態へと復帰し、車両の制動が終了する。
次にアンチロック制御(ABS制御)について説明する。車両の制動時において、制御装置60は、各車輪速度センサSfl、Srr、Srl、Sfrの出力信号に基づき、各車輪Wfl、Wrr、Wrl、Wfrの制動スリップ量が過剰になりそうであるか否かを判別する。そして例えば車輪Wflに制動スリップ量が過剰になりそうになったときには保持弁22を常態の開位置から閉位置へと切り換えると共に減圧弁31を常態の閉位置から開位置へと切り換え、同時に電動モータ26aを始動する。これにより、ホイールシリンダWCflのブレーキ液が減圧弁31を介して内蔵リザーバタンク29へと排出される。そしてホイールシリンダWCflの液圧が減圧されてホイールシリンダWCflのブレーキパッドがディスクロータDRflを押圧する力が減少されるので、左前輪Wflの制動スリップ量が減少する。
ホイールシリンダWCflから減圧弁31を介して内蔵リザーバタンク29へと排出されたブレーキ液は、電動モータ26aによりポンプ26が駆動され、ダンパ装置24を介して遮断弁21と保持弁22と保持弁23との間の連通路に戻される。そして更に遮断弁21を介してマスタシリンダ10に戻される。このときポンプ26で発生した脈動はダンパ装置24によって十分低減されたのちマスタシリンダ10に戻されている。これによりブレーキペダル11を踏む運転者には脈動による振動は伝わらずフィーリングの悪化が防止される。
また、左前輪Wflの制動スリップ量が十分に減少すると、制御装置60が減圧弁31を開位置から閉位置に切り換えると共に保持弁22を閉位置から開位置に切り換える。これにより、マスタシリンダ10からホイールシリンダWCflにブレーキ液が供給されてホイールシリンダWCflの液圧が再増圧され左前輪Wflに加えるブレーキトルクが増加し、左前輪Wflの制動スリップ量が増大する。そして左前輪Wflの制動スリップ量が過剰な制動スリップ量に近づくと、制御装置60は保持弁22を開位置から閉位置に切り換え、ホイールシリンダWCfrの液圧を保持する。
ホイールシリンダWCflの液圧が保持されている状態で左前輪Wflの制動スリップ量が増大し、再び過剰なスリップ量になりそうになると、制御装置60は、保持弁22を開位置から閉位置に切り換えると共に減圧弁31を閉位置から開位置に切り換える。これにより、再度ホイールシリンダWCflのブレーキ液が減圧弁31を介して内蔵リザーバタンク29へと排出され、ホイールシリンダWCflの液圧が減圧され、左前輪Wflに加えるブレーキトルクが減少されて、左前輪Wflの制動スリップ量が減少する。
上述のように、制御装置60が、車両制動中の左前輪Wflの制動スリップ量に応じて保持弁22及び減圧弁31を二つの位置の間で切り換えると共に、電動モータ26aでポンプ26を作動させることにより、ホイールシリンダWCflの液圧が減圧、再増圧、保持の間で切り換えられて調整される。そしてホイールシリンダWCflの液圧が調整されることによって車両制動中の左前輪Wflの制動スリップ量が過剰となることが回避される。
また車両制動中の右後輪Wrrの制動スリップ量が過剰となることは、制御装置60が、車両制動中の右後輪Wrrの制動スリップ量に応じて減圧弁32及び保持弁23を二つの位置の間で切り換えると共に、電動モータ26aでポンプ26を作動させることにより、ホイールシリンダWCrrの液圧が減圧、再増圧、保持の間で切り換えられ調整されて回避される。
また車両制動中の右前輪Wfrの制動スリップ量が過剰となることは、制御装置60が、車両制動中の右前輪Wfrの制動スリップ量に応じて保持弁42及び減圧弁51を二つの位置の間で切り換えると共に、電動モータ26aでポンプ46を作動させることにより、ホイールシリンダWCfrの液圧が減圧、再増圧、保持の間で切り換えられ調整されて回避される。
さらに、車両制動中の左後輪Wrlの制動スリップ量が過剰となることは、制御装置60が、車両制動中の左後輪Wrlの制動スリップ量に応じて保持弁43及び減圧弁52を二つの位置の間で切り換えると共に、電動モータ26aでポンプ46を作動させることにより、ホイールシリンダWCrlの液圧が減圧、再増圧、保持の間で切り換えられ調整されて回避される。
次に、車両の発進時や加速時の駆動輪における駆動スリップ量が過剰となることを回避するトラクション制御について説明する。図1に示す車両用ブレーキ液圧制御装置Aは、前輪駆動車に適用されているものである。車両の発進時や加速時においては、一般的に、ブレーキペダル11は操作されておらず、アクチュエータBの各開閉電磁弁は図1に示す常態位置にあり、電動モータ26aは停止している。例えば、車両の左前輪Wflの駆動スリップ量が過剰になりそうになると、制御装置60は、遮断弁41を全開位置から全閉位置に切り換えると共に充填弁33を閉位置から開位置に切り換え、電動モータ26aを始動させてポンプ26及び46を駆動する。これにより、ポンプ26は、リザーバタンク12内のブレーキ液をマスタシリンダ10と充填弁33を介して吸入ポートから吸入し、昇圧して吐出ポートから吐出する。ポンプ26が吐出するブレーキ液はダンパ装置24と保持弁22とを介してホイールシリンダWCflに供給される。このときも上記のアンチロック制御と同様にポンプ26から吐出されるブレーキ液はダンパ装置24によって十分脈動が低減されている。そして常時安定した吐出圧をホイールシリンダWCflに供給している。これによりホイールシリンダWCflの液圧が安定的に上昇し、左前輪Wflにブレーキトルクを加え、左前輪Wflの車輪速の上昇が抑制されて左前輪Wflの駆動スリップ量の増加が精度よく抑制される。そして、制御装置60により遮断弁21が開位置にされると共に遮断弁21の開度が調整されることによりホイールシリンダWCflの液圧が調整され、左前輪Wflの駆動スリップ量が適切な駆動スリップ量となるように精度よく調整される。
また、車両の右前輪Wfrの駆動スリップ量が過剰になりそうになると、制御装置60は、遮断弁41を全開位置から全閉位置に切り換えると共に充填弁53を閉位置から開位置に切り換え、電動モータ26aを始動させてポンプ46及び26を駆動する。これにより、ポンプ46は、リザーバタンク12内のブレーキ液をマスタシリンダ10と充填弁53を介して吸入ポートから吸入し昇圧して吐出ポートから吐出する。ポンプ46から吐出される脈動を含むブレーキ液はダンパ装置44によって脈動が十分低減されたのち保持弁42を介して、ホイールシリンダWCfrに供給される。これによりホイールシリンダWCfrの液圧が安定的に上昇し、右前輪Wfrにブレーキトルクを加え、右前輪Wfrの車輪速の上昇が抑制されて右前輪Wfrの駆動スリップ量の増加が精度よく抑制される。そして、制御装置60により遮断弁41が開位置にされると共に遮断弁41の開度が調整されることによりホイールシリンダWCfrの液圧が調整され、右前輪Wfrの駆動スリップ量が適切な駆動スリップ量となるように精度よく調整される。
次に、ダンパ装置24、44の作用について図3の作動図に基づいて説明する。いずれのダンパ装置も同様の構成、作用を持つため、ダンパ装置24のみについて説明する。
図3(a)、(b)、(c)は、ポンプ26から吐出された脈動のある小流量、中流量、大流量のブレーキ液が、ダンパ装置24に流入したときのピストン部材62等の可動部の作動状態とブレーキ液の流れの状態とを示している。なお、(a)、(b)、(c)ともに図面の左側がポンプ側とし、上流とする。そして図面の右側に向ってブレーキ液が流れるものとする。
まず小流量での作動状態である図3(a)について説明する。図3(a)に示すように、小流量のブレーキ液が、流入ポート61aからボール65を開弁し流入している。そしてブレーキ液は通路61d、及び円柱部材61に一体的に形成された圧入部材68の貫通孔68eを介して可変容積室63に流入する。
なお、このとき可変容積室63を形成するピストン部材62は、圧縮コイルばね64によって可変容積室63の容量を減少する方向に付勢されている。この状態において圧縮コイルばね64の撓み量は小さく、よってピストン部材62は撓み量に相当した小さな力によって付勢されている。
また、ピストン部材62はピストン部材62の内径部62cに設けられた段付き面62dと、円柱部61bの下流側端面61fの周縁部とが当接しており、可変容積室63は小さな容積の状態で停止している。また同時に圧入部材68の端面68aの中央部に設けられたテーパ状の突起部68cが、ピストン部材62の底面に設けられた絞り孔62aに深く貫通している。そして突起部68cの根元近傍の大径部と、絞り孔62aとの間の隙間によって小さな有効径の絞り部が形成されている。
このように形成された小さな容積の可変容積室63に流入する小流量のブレーキ液によって可変容積室63の圧力が所定圧まで昇圧される。そして初期の短い時間においては可変容積室63と流出ポート61kとの間を連通する可変絞り69の有効径は非常に小さいため、可変絞り69から排出されるブレーキ液は少なく、よって可変容積室63の内圧は高い昇圧割合で上昇する。しかし小流量のブレーキ液であるため、昇圧後も絶対圧力は低く、可変容積室63、延いてはダンパ装置24を破損させる虞れはない。なお、昇圧割合とは流量の変化量に対する内圧の変化量の割合をいう。
内圧が高い昇圧割合を示す区間が経過された後、ピストン部材62はブレーキ液の脈動による圧力変動に対応して軸方向に摺動し、可変容積室63の容量を細かく変動させることによって内圧を略一定に保持するとともに脈動の一部を低減させる。そして略一定に保持されたブレーキ液が、可変容積室63の動きに連動して絞り抵抗が変化する可変絞り69を通過することによって効果的に脈動が低減される。そしてブレーキ液は可変絞り69部から排出ポート61kを介して排出通路61mに排出される。このように小流量時においては、可変容積室63の容量の増大と、可変絞り69の有効径の拡大とが連動され同時になされるため、効果的にブレーキ液の脈動の低減がされる。
次に中流量での作動状態である図3(b)について説明する。図3(b)に示すように、中流量のブレーキ液が、小流量時と同様に可変容積室63に流入している。
中流量のブレーキ液は、可変容積室63に小流量時より大量に流入し、可変容積室63の内圧を上昇させる。これによってブレーキ液圧は可変容積室63を外方に向って押圧し、可変容積室63を形成する摺動可能なピストン部材62を下流側である可変容積室63の容積が増大する方向に移動させる。そして可変容積室63を付勢する圧縮コイルばね64を撓ませ、圧縮コイルばね64の撓み量、即ち付勢力と釣り合う位置まで移動させて、可変容積室63の容量が増大される。このように可変容積室63の容量を増大することによって、可変容積室63内の急激な圧力上昇を防ぐことができる。そして小流量時と同様に、ピストン部材62はブレーキ液の圧力変動に対応して軸方向に摺動し、可変容積室63の容量を細かく変動させることによって内圧を略一定に保持するとともに脈動の一部を低減させる。またこのとき可変絞り69部では、ピストン部材62が可変容積室63の容積が増大する方向に移動するのに連動し、突起部68cが絞り孔62aから離間してくる。そして突起部68cの先端部近傍の小径部と、絞り孔62との隙間によって可変絞り69の絞りが形成される。これによって可変絞り69の有効径は小流量時よりも拡大され、中流量のブレーキ液の脈動低減に適した有効径となり、これによって効果的に脈動の低減がされる。そしてブレーキ液は可変絞り69部から排出ポート61kを介して排出通路61mに排出される。このように中流量時においては、可変容積室63の容量の増大と、可変絞り69の有効径の拡大とが連動され同時になされるため、一層効果的にブレーキ液の脈動の低減がされる。
次に大流量での作動状態である図3(c)について説明する。図3(c)に示すように、大流量のブレーキ液が、小、中流量時と同様に可変容積室63に流入している。
大流量のブレーキ液は、可変容積室63に中流量時より大量に流入し、可変容積室63内の圧力をさらに上昇させる。これによってブレーキ液圧は可変容積室63を外方に向ってさらに押圧し、可変容積室63を形成する摺動可能なピストン部材62をさらに可変容積室63の容積が増大する方向に移動させる。そしてピストン部材62の底板の下流側端面と、固定部材61の下流側壁面61nに突設された停止部61pとが当接しピストン部材62は停止する。そして、このときの可変容積室63内の圧力によるピストン部材62を下流側に移動させようとする力の大きさは、ピストン部材62を付勢する圧縮コイルばね64の付勢力と等しいかまたは超えている。
このように可変容積室63の容量を増大することによって、ピストン部材62が停止部61pと当接し停止するまでの間では可変容積室63内の急激な圧力上昇を効果的に防ぐことができる。またピストン部材62が停止部61pと当接し停止するまでの間では小、中流量時と同様に、ピストン部材62はブレーキ液の圧力変動に対応して軸方向に摺動し、可変容積室63の容量を細かく変動させることによって内圧を略一定に保持するとともに脈動の一部を低減させる。さらにこのとき可変絞り69部ではピストン部材62が可変容積室63の容積が増大する方向に移動するのに連動し、突起部68cが絞り孔62aから離脱してくる。そして、やがて突起部68cが完全に絞り孔62aから離脱し可変絞り69は絞り孔62aのみとなって固定絞り状態となる。このように大流量時においても、ピストン部材62が停止するまでの間と、起部68cが絞り孔62aから離脱し固定絞り状態となるまでの間では、小、中流量時と同様に可変容積室63の容量の増大と可変絞り69の有効径の拡大とが連動され同時になされるため、効果的にブレーキ液の脈動の低減がされる。また可変容積室63の内圧の急激な上昇が抑制されるためダンパ装置24の破損を効果的に防止することができる。
なお、可変容積室63の内圧上昇について検証したので図4に結果を示す。図4のグラフは、ポンプ26から吐出された小流量から大流量までのブレーキ液が容積室に流入したときの、容積室の内圧の昇圧割合を示したものである。なお、ここで昇圧割合は、グラフの傾きと等しい。図4には可変容積室63及び可変絞り69を備える本発明に係るダンパ装置24の内圧(実線)と、容積室の容積が一定で、且つ固定絞りのみを備えた図示しないダンパ装置の内圧(破線)とが示されている。ダンパ装置24の可変絞り69の最大径、つまりピストン部材62の絞り孔62aの径と、ダンパ装置の固定絞りの径は同じである。図4において、縦軸は各ダンパ装置の容積室の内圧を示す。横軸はブレーキ液の流量を示す。
図4をみると、破線が示す固定絞りのダンパ装置の内圧は、流量の増加に応じて略直線状に上昇している。これに対しダンパ装置24の内圧の昇圧割合は、上記で説明した通りの特性を示すことが確認できた。つまり、初期においては内圧の昇圧割合は固定絞り品よりも大きくなっている。そして小流量時から大流量時においては固定絞りのダンパ装置より内圧の昇圧割合が小さくなっているのがわかる。そしてピストン部材62がさらに移動し突起部68cがピストン部材62の絞り孔62aから離脱して可変絞り69が固定絞り同然となったC点以降は固定絞りのダンパ装置と同様の昇圧割合で内圧が上昇しているのが確認できた。
また脈動低減効果についても同時に評価がされ、小流量から大流量の全流量域においてダンパ装置24の方が固定絞りのダンパ装置よりも効果的に脈動が低減できていることが確認できた。
上述の説明から明らかなように、第1の実施形態においては、脈動低減効果が高いブレーキ液圧制御装置Aのダンパ装置24、44がポンプ26の吐出ポートとマスタシリンダ10の流出側との間に設けられている。よって運転者がブレーキペダル11を踏んでマスタシリンダ10からブレーキ液圧を送出している車輪のロックを防止するアンチロック制御(ABS)状態の場合は、運転者に脈動は伝達されずブレーキフィーリングの向上が図られる。
またトラクション制御等においてマスタシリンダ10がブレーキ液圧制御装置Aから遮断されている場合でもポンプ26から可変容積室63に流入するブレーキ液の急激な圧力上昇が抑制され、流体の脈動を吸収するとともにダンパ装置24、44の破損を防ぐことができる。また可変容積室63で急激な圧力上昇が抑制されたブレーキ液が、ブレーキ液の流量に応じた絞り抵抗の可変絞りを通過することにより低流量域から高流量域までの幅広い範囲において一層効果的に脈動が低減される。
また第1の実施形態においては、ブレーキ液が流入ポート61aから可変容積室63に流入することによって可変容積室63の内圧が昇圧する。そしてピストン部材62は、圧縮コイルばね64の付勢力に抗し可変容積室63の容量が増大する方向に移動する。これにより可変容積室63に流入するブレーキ液の流量に対する昇圧割合が低減され、可変容積室63の圧力上昇が抑制されるので、ブレーキ液の脈動を吸収するとともにダンパ装置24、44の破損を防ぐことができる。またピストン部材62の移動に連動して、可変容積室63からブレーキ液を排出するための可変絞り69の絞り抵抗が低減される。これにより可変絞り69はブレーキ液の流量に応じた絞り抵抗となり、脈動低減のために適切な絞り抵抗が得られる。このように、可変容積室で急激な圧力上昇が抑制されたブレーキ液が、ブレーキ液の流量に応じた絞り抵抗の可変絞り69を通過することにより低流量域から高流量域までの幅広い範囲において一層効果的に脈動が低減される。
またピストン部材62は、圧縮コイルばね64により付勢され可変容積室の容積が減少する方向に戻り力が作用するので、液体の流量に応じた位置でバランスして停止し流量に応じた絞り抵抗を確保することができる。
またピストン部材62は、圧縮コイルばね64により付勢されているため重力方向に落下することはない。よって、どの方向にも配置でき、組付け性が向上する。
さらに第1の実施形態においては、ピストン部材62はカップ状に形成され、ピストン部材62の底面に絞り穴62aが貫通されている。またピストン部材62との間で可変容積室63を形成する円柱部61bにテーパ状の突起部68cが突設され、絞り穴62aとの間で可変絞り69を形成している。このように可変容積室63と可変絞り69とを2個の部品で、且つ簡素に構成しており、低コストに対応できる。またピストン部材62はカップ状に形成され、円柱部61bに摺動可能に嵌合される。よって円柱部61bとピストン部材62とは軸方向に重合して組付けができ小型化を図ることができる。
次に第2の実施形態について図5の模式図に基づいて説明する。第2の実施形態のダンパ装置54は、第1の実施形態のダンパ装置24に対し、可変容積室63及び可変絞り69の構成が異なるのみであるため、変更点のみ説明し、その他については説明を省略する。また同一部品には同一符号を付す。
第2の実施形態においては、図5に示すように固定部材81と液密に設けられた固定板91に絞り孔91aが穿設されている。またピストン部材82がOリング86によって固定部材81との間で液密に区画され摺動可能に設けられている。ピストン部材82と固定板91との間には可変容積室83が形成されている。ピストン部材82の可変容積室83側の端面には先端部がテーパ状に先細りした突起部82aが設けられ、突起部82aが絞り孔81aに貫通されて可変絞り89が形成されている。ピストン部材82は可変容積室83が減少する方向に弾性部材としての圧縮コイルばねによって付勢されている。
そしてポンプ26から吐出されたブレーキ液が、固定部材81に設けられた流入ポート81aを介して可変容積室83内に流入し、可変容積室83の内圧が上昇する。そして上昇した圧力に対応してピストン部材82が移動され可変容積室83の容積が増大される。そして可変容積室83の容積が増大するのと同時に、ピストン部材82に設けられた突起部82aが移動し可変絞り89の有効径が拡大されて、効果的に脈動が低減される。以上の構成によって第1の実施形態と同様の効果が期待できる。
次に第3の実施形態について図6の模式図に基づいて説明する。第3の実施形態のダンパ装置94は、第2の実施形態のダンパ装置54に対し、一部が異なるのみであるため、変更点のみ説明し、その他については説明を省略する。また同一部品には同一符号を付す。
図6に示すように、ダンパ装置94の本体を構成する固定部材101には、流入ポート101a及びバイパスポート101bとを介して可変容積室103と連通する液室105が設けられている。液室105はマスタシリンダ10側へのブレーキ液の流路を成している。液室105の下流側には固定部材101と液密に設けられた固定板111が設けられている。そして固定板111の中心部には絞り孔111aが穿設されている。
ピストン部材102はOリング86によって固定部材101との間で液密に区画され摺動可能に設けられている。ピストン部材102において図面上方側の端面と固定部材101との間には可変容積室103が設けられている。そしてピストン部材102は可変容積室103が減少する方向に弾性部材としての圧縮コイルばね104によって付勢されている。
ピストン部材102の可変容積室103と対向する側の端面にはテーパ状の突起部102aが突設されている。突起部102aは絞り孔111aに貫通され、突起部102aの外形部と、絞り孔111aとの間の隙間によって可変絞り109が形成されている。
突起部102aは、円柱状に形成された軸部において、Oリング106によって固定部材101との間を液密に区画され、液室105のブレーキ液を封止している。突起部102aは中間部に最も細い外径部を備え、中間部から先端に向って太くなっている。そして先端部の太い外形部と、絞り孔111aとの間で小流量時の小さな有効径の絞りが形成されるよう構成されている。
ポンプ26から吐出されるブレーキ液は、流入ポート101aを介して可変容積室103内に流入し、可変容積室103の内圧が上昇する。上昇した圧力に応じてピストン部材102が移動し可変容積室103の容量が増大し、可変容積室103の内圧の急激な上昇が抑制される。そして可変容積室103の内圧が抑制されたことにより、可変容積室103と、流入ポート101a及びバイパスポート101bとを介して連通する液室105の内圧も昇圧されない。
また可変容積室103の容量が増大するのと同時に、ピストン部材102に設けられた突起部102aが移動し液室105の下流側に設けられた可変絞り109の有効径が拡大する。そして内圧の上昇が抑制された液室105に流入したブレーキ液が可変絞り109を通過しマスタシリンダ10側に向って流出して効果的に脈動が低減される。以上の構成によっても第1の実施形態と同様の効果が期待できる。
なお、本実施形態においてはダンパ装置24、44、54、94を車両用ブレーキ液圧制御装置におけるポンプ26、46の脈動低減用として示した。しかしこれに限らずダンパ装置24、44、54、94はブレーキ液圧制御装置以外にも適用可能である。