以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
<(1)携帯電話機の概略構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るカメラモジュール500を搭載した携帯電話機100の概略構成を示す模式図である。なお、図1および図1以降の図では方位関係を明確化するために、XYZの相互に直交する3軸が適宜付されている。
図1で示されるように、携帯電話機100は、折り畳み式の携帯電話機として構成され、第1の筐体200と、第2の筐体300と、ヒンジ部400とを有する。第1の筐体200および第2の筐体300は、それぞれ板状の略直方体の形状を有し、各種電子部材を格納する筐体としての役割を有する。具体的には、第1の筐体200は、カメラモジュール500および表示ディスプレイを有し、第2の筐体300は、携帯電話機100を電気的に制御する制御部とボタン等の操作部材とを有する。なお、ヒンジ部400は、第1の筐体200と第2の筐体300とを回動可能に接続する。このため、携帯電話機100は、折り畳み可能となっている。
また、第1の筐体200には、電流供給ドライバ600、電気抵抗検出部700、およびコントラスト検出部800が搭載されている。電流供給ドライバ600は、カメラモジュール500の形状記憶合金(SMA)膜41(図7)への電流の供給を制御する。電気抵抗検出部700は、SMA膜41における電気抵抗を検出する。コントラスト検出部800は、カメラモジュール500の撮像素子11(図3)で得られる画像信号についてコントラストを検出する。また、第2の筐体300には、合焦制御部310が搭載されている。合焦制御部310は、電気抵抗検出部700およびコントラスト検出部800からの信号の入力に応じて、電流供給ドライバ600を介したSMA膜41への電流の供給量を制御することで、カメラモジュール500の合焦状態を調整するオートフォーカス制御を行う。
図2は、携帯電話機100のうちの第1の筐体200に着目した断面模式図である。図1および図2で示されるように、カメラモジュール500は、XY断面のサイズが約5mm四方であり、厚さ(Z方向の奥行き)が数mm程度である小型の撮像装置、所謂マイクロカメラユニット(MCU)となっている。
以下、カメラモジュール500の構成、およびカメラモジュール500の製造工程について順次説明する。
<(2)カメラモジュールの構成>
図3は、カメラモジュール500の断面模式図である。図3で示されるように、カメラモジュール500は、撮像素子層10、撮像素子保持層20、スペーサ層30、アクチュエータ層40、第1平行ばね層50、撮像レンズ層60、第2平行ばね層70、および蓋層80からなる8層がこの順番で積層されて形成されている。そして、該8層に含まれる相互に隣接する各2層の間が、エポキシ樹脂等の樹脂によって接合されているため、各層間に樹脂が介在している。
また、各層10〜80は、±Z方向の面において略同一の矩形状(ここでは、一辺が約5mmの正方形)の外形を有する。なお、後述するが、撮像レンズ層60については、カメラモジュール500の製造途中で、例えば、固定枠体60F(図9)と突起部61a,61b(図9)とを連結する連結部64a,64bが切断され、光学レンズ部63、突起部61a,61b、およびレンズ保持部62a,62bを備えて構成されるレンズユニット60Uと、固定枠体60Fとが分離された状態となる。
カメラモジュール500では、アクチュエータ層40によってレンズユニット60Uが光学レンズ部63の光軸PLに沿った方向(ここでは、±Z方向)に移動されることで、撮像素子層10の撮像素子11とレンズユニット60Uとの距離が変更される。該距離の変更により、カメラモジュール500の合焦状態が調整されるオートフォーカス制御が実現される。
カメラモジュール500は、詳細には次のように構成される。
撮像素子層10の上面(+Z側の面)には該撮像素子層10を保持する撮像素子保持層20が配置されるとともに、該撮像素子保持層20の上面(+Z側の面)にはスペーサ層30が配置される。このスペーサ層30は、第1および第2平行ばね層50,70によるレンズユニット60Uの−Z方向への押し下げによってアクチュエータ層40のSMA膜41が弾性変形を行う空間を確保する機能を有する。
また、スペーサ層30の上面には、アクチュエータ層40、第1平行ばね層50、撮像レンズ層60、および第2平行ばね層70がこの順番で積層されることで、光学レンズ部63を移動させるための機構(移動機構)が構成されている。
この移動機構では、レンズユニット60Uのレンズ保持部62a,62bが、第1平行ばね層50と第2平行ばね層70とによって±Z方向から挟持されることで、光軸PLに沿った方向に移動可能に支持される機構(平行リンク機構)を構成する。このため、レンズユニット60Uは、±Z方向への移動によって固定枠体60Fに対して相対的に傾かない。また、レンズユニット60Uの突起部61a,61bのうちの−Z側に配置された当接部61Ta,61Tbが、アクチュエータ層40のSMA膜41と当接する。このため、SMA膜41の変形に応じて、レンズユニット60Uが、光軸PLに沿った方向に移動される駆動装置が形成されている。
また、第2平行ばね層70の上面には、ガラス等の透明な素材で構成される蓋層80が配置される。
そして、上述したように、8つの層10〜80は、外周部でエポキシ樹脂等の接着剤によって相互に接合される。このため、カメラモジュール500は、光学レンズ部63が移動する空間を包含する密閉空間を形成する。なお、カメラモジュール500の製造は、例えば、クリーンルーム内またはクリーンベンチ内で行われ、カメラモジュール500が形成する密閉空間にゴミや塵が侵入しないように維持される。これにより、細かい隙間を有する移動機構にゴミや塵等が付着する不具合、ならびに密閉空間内における空気の対流の発生が抑制される。その結果、駆動機構に対する負荷のばらつきが低減され、光学レンズ部63の移動精度の向上が図られる。
また、カメラモジュール500では、撮像素子層10の上面(+Z側の面)からアクチュエータ層40の上面(+Z側の面)にかけて、撮像素子保持層20、スペーサ層30、およびアクチュエータ層40を順次に貫通する孔(貫通孔)CVa,CVbが設けられる。この微小な貫通孔CVa,CVbの内径は、例えば、数十μm程度に設定される。また、この貫通孔CVa,CVbには、導電材料が充填され、撮像素子層10とアクチュエータ層40のSMA膜41との間が導電可能に接続される。
<(2-1)各機能層について>
以下では、カメラモジュール500を構成する各機能層の詳細について説明する。図4〜図10は、撮像素子層10、撮像素子保持層20、スペーサ層30、アクチュエータ層40、第1および第2平行ばね層50,70、撮像レンズ層60、および蓋層80の構成例をそれぞれ示す平面図である。なお、各機能層については、−Z側の面を一主面と称し、+Z側の面を他主面と称する。
<(2-1-1)撮像素子層>
図4で示されるように、撮像素子層10は、例えば、COMSセンサまたはCCDセンサ等で形成される撮像素子11、その周辺回路、および撮像素子11を囲む外周部12を備えるチップである。なお、ここでは図示を省略しているが、撮像素子層10の裏面(−Z側の面)には、撮像素子11に対する信号の付与、および撮像素子11からの信号の読み出しを行うための配線を接続するための各種端子が設けられる。
例えば、撮像素子層10の裏面では、はんだボールを用いたリフロー方式によるはんだ付けが行われることで、撮像素子層10と、電流供給ドライバ600、電気抵抗検出部700、およびコントラスト検出部800等との間が、導電可能またはデータ送受信可能に接続される。
<(2-1-2)撮像素子保持層>
撮像素子保持層20は、例えば、樹脂等の素材によって形成され、接合によって取り付けられる撮像素子層10を保持するチップである。
具体的には、図5で示されるように、撮像素子保持層20の略中央には、断面が略正方形の開口20HがZ方向に沿って設けられ、該開口20Hの断面は+Z側に行くに従って小さくなる。なお、図5の破線で描かれた四角形は、−Z側の面における開口20Hの外縁を示す。また、撮像素子保持層20の外周部の一辺を成す板状の部分の所定の2箇所には、Z方向に沿って貫通する微小な孔(貫通孔)CV2a,CV2bが設けられ、該貫通孔CV2a,CV2bには導電材料が充填される。なお、開口20Hおよび貫通孔CV2a,CV2bは、例えば、型押し等によって形成される。
更に、撮像素子保持層20の一主面および他主面はそれぞれ略平坦であり、且つ該一主面と他主面とは略平行の関係にある。そして、撮像素子保持層20の外周部の一主面が隣接する撮像素子層10と接合されるとともに、該外周部の他主面が隣接するスペーサ層30と接合される。
<(2-1-3)スペーサ層>
スペーサ層30は、例えば、樹脂等の素材によって形成され、レンズユニット60Uの移動空間を確保するチップである。
具体的には、図6で示されるように、外縁および内縁がそれぞれ矩形である環状の形状を有し、Z方向に貫通する中空部分30Hを有する。また、スペーサ層30の一辺を成す棒状の部分の所定の2箇所には、撮像素子保持層20と同様に、Z方向に沿って貫通する微小な孔(貫通孔)CV3a,CV3bが設けられ、該貫通孔CV3a,CV3bには導電材料が充填される。なお、中空部分30Hおよび貫通孔CV3a,CV3bは、例えば、型押し等によって形成される。
更に、スペーサ層30の一主面および他主面はそれぞれ略平坦であり、且つ該一主面と他主面とは略平行の関係にある。そして、スペーサ層30の一主面が隣接する撮像素子保持層20と接合されるとともに、他主面が隣接するアクチュエータ層40と接合される。
<(2-1-4)アクチュエータ層>
アクチュエータ層40は、図7で示されるように、固定枠体40F、電極部40Ea,40Eb、およびSMA膜41を有する。
固定枠体40Fは、例えば、シリコン等といった導電体でない素材によって形成される。そして、この固定枠体40Fは、外縁および内縁がそれぞれ矩形である環状の形状を有し、Z方向に貫通する中空部分40Hを有する。別の観点から言えば、固定枠体40Fは、X方向に延設され且つ相互に対向する板状の部分(板状部)40Fa,40Fcと、Y方向に延設され且つ相互に対向する板状の部分(板状部)40Fb,40Fdとを有する。そして、固定枠体40Fは、4枚の板状部40Fa〜40Fdがこの順番で連結されるような形状を有する。なお、固定枠体40Fは、カメラモジュール500の外周部を構成し、カメラモジュール500における固定部材として機能する。
また、板状部40Faの所定の2箇所には、撮像素子保持層20およびスペーサ層30と同様に、Z方向に沿って貫通する微小な孔(貫通孔)CV4a,CV4bが設けられ、該貫通孔CV4a,CV4bには導電材料が充填される。ここで、貫通孔CV4a,CV4bおよび中空部分40Hは、各種エッチング等によって形成される。
ここでは、貫通孔CV4aに充填される導電材料は、貫通孔CV2a,CV3aに充填される導電材料と電気的に接続され、貫通孔CV4bに充填される導電材料は、貫通孔CV2b,CV3bに充填される導電材料と電気的に接続される。具体的には、貫通孔CV2a〜CV4aによって貫通孔CVaが形成され、貫通孔CV2b〜CV4bによって貫通孔CVbが形成される。そして、該貫通孔CVa,CVbにそれぞれ導電材料が充填されることで、それぞれ貫通配線が形成される。この貫通配線により、撮像素子層10とアクチュエータ層40とが電気的に接続される。なお、撮像素子層10とアクチュエータ層40との間における電気的な接続は、カメラモジュール500の側面に印刷技術等を用いて配線を設けることによっても実現可能である。
2つの電極部40Ea,40Ebは、板状部40Faの他主面上において、相互に離隔して設けられる。具体的には、電極部40Eaは、貫通孔CV4aの一主面側に設けられるとともに、電極部40Ebは、貫通孔CV4bの他主面側に設けられる。
SMA膜41は、形状記憶合金(SMA)を用いて構成される。このSMA膜41は、第1可動部41a、および第2可動部41bを有する。第1可動部41aは、3本の梁部411a〜413aと第1および第2接続部C1,C2によって構成され、第2可動部41bは、3本の梁部411b〜413bと第4および第5接続部C4,C5によって構成される。そして、各梁部411a〜413a,411b〜413bは、相互に対向する板状部40Faと板状部40Fcとの間に架設される。つまり、板状部40Faと板状部40Fcが、各梁部411a〜413a,411b〜413bが固定される部材として機能する。
また、第1,3,5接続部C1,C3,C5が、板状部40Fcの他主面上に設けられるとともに、第2,4接続部C2,C4が、板状部40Faの他主面上に設けられる。
具体的には、梁部411aの一端部は、電極部40Ea上に形成されることで、該電極部40Eaに対して電気的に接続される。梁部411aの他端部は、板状部40Fcの他主面上において、第1接続部C1によって、梁部412aの一端部に対して電気的に接続される。梁部412aの他端部は、板状部40Faの他主面上において、第2接続部C2によって、梁部413aの一端部に対して電気的に接続される。梁部413aの他端部は、板状部40Fcの他主面上において、第3接続部C3によって、梁部411bの一端部に対して電気的に接続される。梁部411bの他端部は、板状部40Faの他主面上において、第4接続部C4によって、梁部412bの一端部に対して電気的に接続される。梁部412bの他端部は、板状部40Fcの他主面上において、第5接続部C5によって、梁部413bの一端部に対して電気的に接続される。そして、梁部413bの他端部は、電極部40Eb上に形成されることで、該電極部40Ebに対して電気的に接続される。
つまり、第1可動部41aは、3本の梁部411a〜413aおよび第1および第2接続部C1,C2によって、板状部40Faと板状部40Fcとの間を一往復半するように、板状部40Faと板状部40Fcとの間に架設される。また、第2可動部41bは、3本の梁部411b〜413bおよび第4および第5接続部C4,C5によって、板状部40Faと板状部40Fcとの間を一往復半するように、板状部40Faと板状部40Fcとの間に架設される。
なお、SMA膜41では、第1〜5接続部C1〜C5のうち、第3接続部C3の延設距離が他の接続部の延設距離よりも数十倍程度に設定されることで、第1可動部41aと第2可動部41bとが比較的大きく離隔されている。
このように、SMA膜41は、電極部40Eaと電極部40Ebとの間で、梁部411a、第1接続部C1、梁部412a、第2接続部C2、梁部413a、第3接続部C3、梁部411b、第4接続部C4、梁部412b、第5接続部C5、および梁部413bの順番で電気的に直列に接続されている。従って、電極部40Eaと電極部40Ebとの間に電圧が印加されると、SMA膜41に電流が流れる。そして、このとき、第1および第2可動部41a,41bは、通電に応じて発生するジュール熱によって発熱するとともに、該発熱に応じて変形する。
更に、アクチュエータ層40の一主面および他主面はそれぞれ略平坦であり、且つ該一主面と他主面とは略平行の関係にある。そして、アクチュエータ層40の一主面が隣接するスペーサ層30と接合されるとともに、他主面が隣接する第1平行ばね層50と接合される。なお、SMA膜41と第1平行ばね層50との間には、接合に用いられる樹脂等が介在することで、電極部40Ea,40EbおよびSMA膜41と第1平行ばね層50との間における短絡が生じないように構成される。但し、電極部40Ea,40EbおよびSMA膜41と第1平行ばね層50との間における短絡を防止する観点から言えば、アクチュエータ層40の他主面のうちの第1平行ばね層50と接合される部分に絶縁膜が形成されることが好ましい。
<(2-1-5)第1および第2平行ばね層>
第1および第2平行ばね層50,70は、同様な構成を有するため、ここでは、第1平行ばね層50を例に挙げて具体的に説明する。
図8で示されるように、第1平行ばね層50は、固定枠体50Fと、弾性部51とを有する弾性部材であり、ばね機構を形成する層(弾性層)となっている。第1平行ばね層50の素材としては、例えば、ステンレス等の金属材料またはりん青銅等が採用される。
固定枠体50Fは、第1平行ばね層50の外周部を構成する。
弾性部51は、固定枠体50Fとの接続部51a,51bと、レンズユニット60Uとの接合部52a,52bとを有し、接続部51a,51bと接合部52a,52bとが板状部材50EBで繋がれる。そして、第1平行ばね層50は、接合部52a,52bにおいてレンズユニット60Uのレンズ保持部62a,62bと接合される。ここでは、レンズユニット60Uの当接部61Taが、弾性部51の内側に形成される中空の部分を通って、アクチュエータ層40の第1可動部41aの架設されている部分の略中央部に当接する。更に、第1平行ばね層50は、レンズユニット60Uの突起部61a,61bおよび当接部61Ta,61Tbと接触しないような形状を有する。ここでは、レンズユニット60Uの当接部61Tbが、弾性部51の内側に形成される中空の部分を通って、アクチュエータ層40の第2可動部41bの架設されている部分の略中央部に当接する。
そして、レンズユニット60Uが固定枠体50Fに対して+Z方向に移動されるにつれて、接続部51a,51bと接合部52a,52bとのZ方向の位置がずれ、板状部材50EBは曲げ変形(たわみ変形)を生じて湾曲する。つまり、第1平行ばね層50は、板状部材50EBの弾性変形によって、光学レンズ部63の光軸方向(±Z方向)に弾性変形可能であり、ばね機構として機能する。
更に、固定枠体50Fの一主面および他主面がそれぞれ略平坦に構成され、該一主面と他主面とが略平行に構成される。そして、固定枠体50Fの一主面が隣接するアクチュエータ層40の固定枠体40Fと接合され、該固定枠体50Fの他主面が隣接する撮像レンズ層60の固定枠体60F(図9)と接合される。
ところで、第2平行ばね層70は、図8で示されるように、第1平行ばね層50と比較して、固定枠体50F、弾性部51、接続部51a,51b、接合部52a,52b、および板状部材50EBが、それぞれ同様な構成を有する固定枠体70F、弾性部71、接続部71a,71b、接合部72a,72b、および板状部材70EBに変更されたものとなっている。つまり、第2平行ばね層70も、ばね機構を形成する層(弾性層)となっている。但し、第2平行ばね層70では、固定枠体70Fの一主面が隣接する撮像レンズ層60の固定枠体60F(図9)と接合され、該固定枠体70Fの他主面が隣接する蓋層80の外周部と接合される。
<(2-1-6)撮像レンズ層>
図9で示されるように、撮像レンズ層60は、固定枠体60Fと、レンズユニット60Uとを有する。この撮像レンズ層60を構成する素材としては、フェノール系の樹脂やアクリル系の樹脂等が挙げられる。
固定枠体60Fは、撮像レンズ層60の外周部を構成し、Z方向について、レンズユニット60Uの厚みに応じた厚みを有する。具体的には、固定枠体60Fは、外縁および内縁がそれぞれ矩形である環状の形状を有し、Z方向に貫通する中空部分60Hを有する。そして、固定枠体60Fの一主面および他主面がそれぞれ略平坦に構成され、且つ該一主面と他主面とが略平行に構成される。そして、固定枠体60Fの一主面が隣接する第1平行ばね層50の固定枠体50Fと接合され、該固定枠体60Fの他主面が隣接する第2平行ばね層70の固定枠体70Fと接合される。
レンズユニット60Uは、中空部分60Hに配置され、光学レンズ部63、突起部61a,61b、およびレンズ保持部62a,62bを有する。
光学レンズ部63は、被写体からの光を撮像素子11まで導く光学系であり、正のレンズパワーを有する。
突起部61aは、光学レンズ部63の側面から−X方向に突設される部分である。また、突起部61aの先端近傍には、−Z方向に突設される当接部61Ta(図3)が設けられ、該当接部61Taの先端が第1可動部41aに当接する。
突起部61bは、光学レンズ部63の側面から+X方向に突設される部分である。また、突起部61bの先端近傍には、−Z方向に突設される当接部61Tb(図3)が設けられ、該当接部61Tbの先端が第2可動部41bに当接する。
このように、当接部61Ta,61Tbによって、移動対象物であるレンズユニット60Uが、第1および第2可動部41a,41bに対して当接する。なお、ここでは、当接部61Taと第1可動部41aとの当接、および当接部61Tbと第2可動部41bとの当接をそれぞれ安定させるために、当接部61Ta,61Tbの先端部に、第1および第2可動部41a,41bが配置される溝部が設けられることが好ましい。
レンズ保持部62aは、光学レンズ部63の側面から固定枠体60Fの対角線に沿って突設される部分である。レンズ保持部62aの先端部は、+Z方向および−Z方向にそれぞれ突起した形状を有し、該先端部の一主面および他主面がそれぞれ略平坦に構成され、且つ該一主面と他主面とが略平行に構成される。そして、レンズ保持部62aの先端部の一主面が、第1平行ばね層50の接合部52aに対して接合され、レンズ保持部62aの先端部の他主面が、第2平行ばね層70の接合部72aに対して接合される。
レンズ保持部62bは、光学レンズ部63の側面のうち、レンズ保持部62aが突設される面とは略反対側の側面から固定枠体60Fの対角線に沿って突設される部分である。レンズ保持部62bの先端部は、+Z方向および−Z方向にそれぞれ突起した形状を有し、該先端部の一主面および他主面がそれぞれ略平坦に構成され、且つ該一主面と他主面とが略平行に構成される。そして、レンズ保持部62bの先端部の一主面が、第1平行ばね層50の接合部52bに対して接合され、レンズ保持部62bの先端部の他主面が、第2平行ばね層70の接合部72bに対して接合される。
なお、撮像レンズ層60については、例えば、レンズ保持部62a,62bが第1平行ばね層50に対して接合された時点で、破線で描かれた連結部64a,64b(図9)がフェムト秒レーザ等によって切断され、固定枠体60Fと、レンズユニット60Uとが分離される。
<(2-1-7)蓋層>
図10で示されるように、蓋層80は、XY断面の外縁が略正方形であり、且つXY平面に略平行な盤面を有する板状の部材である。蓋層80は、樹脂等といった透明の素材で構成され、被写体からの光をカメラモジュール500の内部に導入する役割を果たすとともに、カメラモジュール500の内部を密閉することで、カメラモジュール500の内部にゴミや塵が侵入しないようにする役割を果たす。また、蓋層80の外周部の一主面が、第2平行ばね層70の固定枠体70Fに対して接合される。
<(2-2)レンズユニットの移動について>
図11は、アクチュエータ層40とレンズユニット60Uとの相対的な配置関係を示す模式図である。図11では、アクチュエータ層40と、撮像レンズ層60のうちのレンズユニット60Uのみとに着目した構成が示されており、第1および第2平行ばね層50,70等のその他の層については、図示が省略されている。
図11で示されるように、アクチュエータ層40は、光学レンズ部63の光軸を挟んで、一対の可動部(具体的には、第1および第2可動部41a,41b)を有する。可動部41aについては、一端部が板状部40Faに固定され、板状部40Faと板状部40Fcとの間を1.5回往復するように架設されて、他端部が板状部40Fcに固定される。また、可動部41bについては、一端部が板状部40Fcに固定され、板状部40Fcと板状部40Faとの間を1.5回往復するように架設されて、他端部が板状部40Faに固定される。
そして、各可動部41a,41bでは、梁部411a〜413aが第1および第2接続部C1,C2によって電気的に直列に接続され、梁部411b〜413bが第4および第5接続部C4,C5によって電気的に直列に接続される。
また、図11で示されるように、電極部40Ea,40Ebの間には、外部から電源PWが接続され、電流供給ドライバ600におけるスイッチSWの開閉に応じて、電極部40Eaと電極部40Ebとの間に電圧が印加される。これにより、各可動部41a,41bは、通電によるジュール熱の発生により加熱されて、延設方向に縮むように変形する。また、各可動部41a,41bは、通電の終了によって加熱されている状態から冷却(ここでは空冷)されることで、延設方向に伸びるように変形する。この各可動部41a,41bの変形およびレンズユニット60Uの移動について、以下、具体的に説明する。
図12および図13は、SMA膜41の変形によるレンズユニット60Uの動作を説明するための模式図である。図12および図13では、レンズユニット60UとSMA膜41と固定枠体40Fに着目した構成が示されている。
図12および図13で示されるように、レンズユニット60Uの当接部61Ta,61Tbが、第1および第2可動部41a,41bの架設されている部分の略中央部に対してそれぞれ当接する。
第1および第2可動部41a,41bが通電によって加熱されていない状態(非駆動状態)では、図12で示されるように、第1および第2平行ばね層50,70の板状部材50EB,70EBが平面状になろうとする弾性力によって、レンズユニット60Uに対して−Z方向に押し下げる力が働く。このとき、当接部61Ta,61Tbによって、第1および第2可動部41a,41bの中央部が押し下げられ、該第1および第2可動部41a,41bが撓む。従って、アクチュエータ層40は、第1および第2平行ばね層50,70によって、プリチャージされた状態となる。
また、非駆動状態から、第1および第2可動部41a,41bが通電によって加熱されている状態(駆動状態)に移行すると、図13で示されるように、第1および第2可動部41a,41bが、撓んだ状態から縮んで平面状になる方向に変形する。つまり、第1および第2可動部41a,41bの撓み量が減少するように変形する。このとき、板状部材50EB,70EBの弾性力に抗して、第1および第2可動部41a,41bによってレンズユニット60Uに押し上げる力が加えられ、レンズユニット60Uが+Z方向に移動する。
更に、駆動状態から、第1および第2可動部41a,41bが通電によって加熱されていない状態(非駆動状態)に移行すると、レンズユニット60Uの位置は、図12で示された元の位置(初期位置)に戻る。
ここで、図13では、図12で示された第1および第2可動部41a,41bの形状が太い破線で示されている。そして、非駆動状態において、第1および第2可動部41a,41bの中央部が−Z方向へ距離δ0押し下げられていれば、駆動状態では、光学レンズ部63の光軸に沿って、レンズユニット60Uを初期位置を基準として距離δ0までの範囲内で+Z方向に移動させることが可能である。
上述したように、アクチュエータ層40では、梁部411a〜413aが第1および第2接続部C1,C2によって電気的に直列に接続され、梁部411b〜413bが第4および第5接続部C4,C5によって電気的に直列に接続される。このため、梁部411a〜413aの延設方向に対して垂直な面に係る該梁部411a〜413aの断面積の合計値、すなわち第1可動部41aの架設されている部分の断面積が、ある程度大きく保たれるとともに、梁部411b〜413bの延設方向に対して垂直な面に係る該梁部411b〜413bの断面積の合計値、すなわち第2可動部41bの架設されている部分の断面積が、ある程度大きく保たれたまま、各可動部41a,41bの配設経路が延長される。その結果、各可動部41a,41bにおける一端部と他端部との間における電気抵抗値の上昇が図られる。
ところで、携帯電話機100を地面に落下させた場合や、携帯電話機100が激しく揺らされた場合に、レンズユニット60Uに慣性力が生じて、第1および第2可動部41a,41bに対して瞬間的に大きな力が加わることが想定される。
このような問題に対して、本実施形態では、上述したように、第1および第2可動部41a,41bの架設されている部分の断面積が、ある程度大きく保たれる。このため、第1および第2可動部41a,41bが衝撃や外力の負荷に耐え得る能力(以下「許容力」と称する)が高まる。また、第1および第2可動部41a,41bがレンズユニット60Uに対して付与することが可能な最大の力(最大可能出力)も高まる。更に、SMA膜41における電気抵抗値の上昇により、電極部40Ea,40Ebの間に印加される電圧が同一であれば、電流の消費量が低減され、電力の消費量が抑制される。そして、第1および第2可動部41a,41bの架設されている部分の断面積と、電気的に直列に接続される梁部の本数とを適宜調整することで、電気抵抗と許容力とを適宜設定することができる。従って、SMA層41の設計の自由度が高まる。
なお、図14および図15は、第1および第2平行ばね層50,70の機能を説明するための模式図である。図14および図15では、レンズユニット60Uと弾性部51,71の状態を側方から見た模式図が示されている。図14および図15で示されるように、弾性部51,71が、それぞれ接合部52a,52b,72a,72bにおいてレンズユニット60Uに接合されることで、レンズユニット60Uを挟持する。また、図14では、弾性部51,71が殆ど変形していない状態(初期状態)が示され、図15では、弾性部51,71がある程度変形している状態(変形状態)が示されている。
上述したように、弾性部51,71は、ともに同様な構成を有し、それぞれ同様に固定枠体50F,70Fに対して2箇所(接続部51a,51bおよび接続部71a,71b)で固設される。また、弾性部51,71は、それぞれ同様にレンズユニット60Uに対して2箇所(接合部52a,52bおよび接合部72a,72b)で接合される。そして、第1および第2可動部41a,41bの変形により、図15で示されるように、レンズユニット60Uが+Z方向に押し上げられる際には、弾性部51,71が略同一の変形を行う。このため、レンズユニット60Uに含まれる光学レンズ部63は、光軸が傾くことなく、上下方向(ここでは、Z軸に沿った方向)に移動する。すなわち、光学レンズ部63の光軸の方向がずらされることなく、光学レンズ部63と撮像素子11との距離が変更される。その結果、撮像素子11と光学レンズ部63との距離が変更され、焦点調整を行うオートフォーカス制御が実行される。
<(2-3)カメラモジュールにおけるオートフォーカス制御について>
カメラモジュール500におけるオートフォーカス制御は、図1で示された電流供給ドライバ600、電気抵抗検出部700、コントラスト検出部800、および合焦制御部310によって実現される。
具体的には、電気抵抗検出部700は、SMA膜41の電気抵抗を検出し、該電気抵抗を示す信号を合焦制御部310に対して出力する。合焦制御部310は、SMA膜41の電気抵抗に基づいて、SMA膜41の変形(具体的には、第1および第2可動部41a,41bの中央部の変位)を検出する。つまり、電気抵抗検出部700および合焦制御部310によって、第1および第2可動部41a,41bに係る電気抵抗が検出されることで、第1および第2可動部41a,41bに係る変位が認識される。ここでは、第1および第2可動部41a,41bの中央部の変位が、レンズユニット60Uの変位となる。
第1および第2可動部41a,41bの中央部の変位の検出については、SMA膜41(具体的には、第1および第2可動部41a,41b)における形状と電気抵抗との関係が一義的に決まることが利用されて実行される。そして、合焦制御部310は、第1および第2可動部41a,41bの中央部の変位を検出しつつ、電流供給ドライバ600を介してSMA膜41への電流の供給を制御することで、第1および第2可動部41a,41bの変形量、すなわち第1および第2可動部41a,41bの中央部の変位を制御する。このとき、該中央部による当接部61Ta,61Tbの押し上げにより、レンズユニット60Uが+Z方向に移動されることで、光学レンズ部63と撮像素子11との離隔距離が変更されて、焦点の位置が変更される。
また、コントラスト検出部800は、撮像素子11で得られる画像信号について、コントラストを検出する。例えば、隣接画素間の階調値の差分を画像全体について積算した数値が、コントラストを示す評価値として検出される。このコントラストを示す評価値を示す信号は、合焦制御部310に対して出力される。
オートフォーカス制御が行われる際には、合焦制御部310の制御により、まず、レンズユニット60Uと撮像素子11との離隔距離が予め設定された多段階の離隔距離に順次に設定され、各離隔距離にレンズユニット60Uと撮像素子11とが設定される状態で撮像素子11によって画像信号が取得される。換言すれば、レンズユニット60Uの+Z方向への繰り出し位置が、予め設定された多段階の位置に設定されるとともに、各繰り出し位置にレンズユニット60Uが配置される時点において撮像素子11によって画像信号が取得される。なお、このとき、合焦制御部310が、電気抵抗検出部700で検出されるSMA膜41の電気抵抗をモニタリングしつつ、電流供給ドライバ600を介したSMA膜41への電流の供給を制御することで、レンズユニット60Uの繰り出し位置が変更される。
次に、合焦制御部310が、コントラスト検出部800によって各繰り出し位置について検出されたコントラストを示す評価値に基づいて、コントラストを示す評価値が最大となる繰り出し位置を検出する。このコントラストを示す評価値が最大となる繰り出し位置にレンズユニット60Uが配置されている状態が、被写体に合焦している状態に相当する。そして、合焦制御部310の制御により、レンズユニット60Uがコントラストを示す評価値が最大となる繰り出し位置まで移動されることで、カメラモジュール500における被写体に対する合焦が実現される。すなわち、オートフォーカス制御が実現される。
ここでは、SMA膜41では、梁部411a〜413a,梁部411b〜413bが第1〜5接続部C1〜C5によって電気的に直列に接続されるため、SMA膜41の電気抵抗値が大きくなる。このため、第1および第2可動部41a,41bの変位に応じたSMA膜41の電気抵抗値の変化量が大きくなる。その結果、電気抵抗値の変化の検出における外乱の影響が小さくなり、レンズユニット60Uの変位の検出感度が上昇するため、オートフォーカス制御の高精度化が図られる。
<(3)カメラモジュールの製造工程>
図16は、カメラモジュール500の製造工程の手順を例示するフローチャートである。図16で示されるように、(工程A)複数のシートの準備(ステップS1)、(工程B)複数のシートの接合(ステップS2)、および(工程C)ダイシング(ステップS3)が順次に行われることで、カメラモジュール500が製造される。以下、各工程について説明する。
<(3-1)複数のシートの準備(工程A)>
図17で示されるように、撮像素子層シートU10、撮像素子保持層シートU20、スペーサ層シートU30、アクチュエータ層シートU40、第1平行ばね層シートU50、撮像レンズ層シートU60、第2平行ばね層シートU70、および蓋層シートU80が準備される。ここでは、各シートが、円盤状である例を示して説明する。
撮像素子層シートU10は、撮像素子層10に相当するチップがマトリックス状の所定配列で多数形成されたシートである。この撮像素子層シートU10は、例えば、円盤状のシリコン製の基板に、撮像素子11および各種回路が形成されることで製作される。
撮像素子保持層シートU20は、撮像素子保持層20に相当するチップがマトリックス状の所定配列で多数形成されたシートである。この撮像素子保持層シートU20は、例えば、樹脂等の素材で形成された円盤状のウエハに対して、型押し等によって開口20Hおよび貫通孔CV2a,CV2bが形成され、該貫通孔CV2a,CV2bに対して金属メッキ等によって導電材料が充填されることで製作される。
スペーサ層シートU30は、スペーサ層30に相当するチップがマトリックス状の所定配列で多数形成されたシートである。このスペーサ層シートU30は、例えば、樹脂等の素材で形成された円盤状のウエハに対して、型押し等によって中空部分および貫通孔CV3a,CV3bが形成され、該貫通孔CV3a,CV3bに対して金属メッキ等によって導電材料が充填されることで製作される。
アクチュエータ層シートU40は、アクチュエータ層40に相当するチップがマトリックス状の所定配列で多数形成されたシートである。このアクチュエータ層シートU40は、例えば、以下のような工程(I)〜(VII)が順次に行われることで製作される。
(I)シリコン基板が準備される。(II)フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング等によってシリコン基板に対して貫通孔CV4a,CV4bが形成される。なお、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)等のエッチングが施されることで貫通孔CV4a,CV4bが形成されても良い。(III)貫通孔CV4a,CV4bに対して金属メッキ等によって導電材料が充填される。(IV)シリコン基板の貫通孔CV4a,CV4bを覆う位置に、印刷技術を用いた塗布または蒸着等によって、電極部40Ea,40Ebが形成される。(V)シリコン基板上に、形状記憶合金の薄膜がスパッタリング等によって形成される。(VI)形状記憶合金の薄膜に対して、高温加熱時に縮むように形状を記憶させる熱処理(記憶熱処理)が施される。ここでは、形状記憶合金の薄膜が、平面状の形状を記憶する。(VII)形状記憶合金の薄膜がフォトリソグラフィ技術を用いたエッチング等によって第1および第2可動部41a,41bと第3接続部C3とを有するSMA膜41が形成される。(VIII)シリコン基板に対して、フッ酸と硝酸の混合液であるフッ硝酸を用いた選択的なエッチングが施されることで、中空部分40Hが形成される。このとき、第1および第2可動部41a,41bが、中空部分40Hを跨ぐように架設された状態となる。
第1平行ばね層シートU50は、第1平行ばね層50に相当するチップがマトリックス状の所定配列で多数形成されたシートである。この第1平行ばね層シートU50は、例えば、ステンレス等の金属材料またはりん青銅等の素材で形成された円盤状のウエハに対して、フォトリソグラフィ技術により、平行ばねの形状のレジストが金属材料上にパターンニングされ、塩化鉄系のエッチング液に浸してウエットエッチングが行われることで、平行ばねのパターンが形成される。
撮像レンズ層シートU60は、撮像レンズ層60に相当するチップがマトリックス状の所定配列で多数形成されたシートである。但し、撮像レンズ層シートU60では、各チップにおいては、固定枠体60Fと突起部61a,61bとが連結部64a,64bによって連結された状態にある。この撮像レンズ層シートU60は、例えば、樹脂の成型等によって製作される。
第2平行ばね層シートU70は、第2平行ばね層70に相当するチップがマトリックス状の所定配列で多数形成されたシートである。この第2平行ばね層シートU70は、第1平行ばね層シートU50と同様な工程で製作される。
蓋層シートU80は、蓋層80に相当するチップがマトリックス状の所定配列で多数形成されたシートである。この蓋層シートU80は、例えば、樹脂の成型等によって製作される。なお、蓋層80の形状が単なる平板で良い場合には、蓋層シートU80は、平板状のガラスであっても良い。
なお、工程Aで準備される8枚のシートU10〜U80には、シートの接合工程における位置合わせのためのマーク(アライメントマーク)が、略同一の位置に付される。アライメントマークとしては、例えば、十字などのマーク等が挙げられ、各シートU10〜U80の上面の外周部近傍であって比較的離隔した2箇所以上の位置に設けられることが好ましい。
<(3-2)複数のシートの接合(工程B)>
図17で示されるように、工程Aで準備された8枚のシートU10〜U80が、順次に積層されて接合される。
まず、撮像素子層シートU10、撮像素子保持層シートU20、スペーサ層シートU30、アクチュエータ層シートU40、第1平行ばね層シートU50、および撮像レンズ層シートU60の各チップが、それぞれ直上に積層されるように、シート形状のまま位置合わせ(アライメント)が行われる。
具体的には、公知のアライナー装置に、まず、撮像素子層シートU10および撮像素子保持層シートU20がセットされ、予め形成しておいたアライメントマークを用いたアライメントが行われる。この際、事前に、撮像素子層シートU10と撮像素子保持層シートU20とが接合される面(接合面)に、いわゆるエポキシ樹脂系の接着剤、または紫外線硬化接着剤が塗布されており、両シートU10,U20が接合される。なお、接合面にO2プラズマを照射することで、接合面を活性化して、両シートU10,U20を直接接合する方法を用いても良い。
続いて、上記と同様なアライメントならびに接合方法により、撮像素子保持層シートU20上にスペーサ層シートU30が接合され、次に、該スペーサ層シートU30上にアクチュエータ層シートU40が接合され、その次に、該アクチュエータ層シートU40上に第1平行ばね層シートU50が接合され、更に、第1平行ばね層シートU50上に撮像レンズ層シートU60が接合される。
このとき、撮像レンズ層シートU60の各レンズ保持部62aが、第1平行ばね層シートU50の各接合部52aに対して接合され、撮像レンズ層シートU60の各当接部61Taが、第1可動部41aの略中央部に対して当接する。また、撮像レンズ層シートU60の各レンズ保持部62bが、第1平行ばね層シートU50の各接合部52bに対して接合され、撮像レンズ層シートU60の各当接部61Tbが、第2可動部41bの略中央部に対して当接する。
また、ここでは、3つのシートU20〜U40が接合されることで、貫通孔CV2a〜CV4aに充填された導電材料が相互に電気的に接続されることで、貫通孔CVaによって形成される貫通配線が形成される。また、貫通孔CV2b〜CV4bに充填された導電材料が相互に電気的に接続されることで、貫通孔CVbによって形成される貫通配線が形成される。
更に、第1平行ばね層シートU50上に撮像レンズ層シートU60が接合された状態で、固定枠体60Fと突起部61a,61bとを連結する連結部64a,64bが切断されることで、固定枠体60Fと突起部61a,61bとが分離される。
次に、6つのシートU10〜U60が積層されて形成された積層体の上面に対して、第2平行ばね層シートU70、および蓋層シートU80がこの順番で下から順に積層および接合される。アライメントならびに接合方法については、上述したシートU10〜U60に係る手法と同様であり、このとき、シートU10〜U80の各チップが、それぞれ直上に積層される。
このとき、撮像レンズ層シートU60の各レンズ保持部62aが、第2平行ばね層シートU70の各接合部72aに対して接合されるとともに、撮像レンズ層シートU60の各レンズ保持部62bが、第2平行ばね層シートU70の各接合部72bに対して接合される。
<(3-3)ダイシング(工程C)>
8つのシートU10〜U80が積層されて形成された積層部材が、ダイシング装置によってチップ毎に切り離されて、8つの層10〜80が積層されたカメラモジュール500が多数生成される。つまり、カメラモジュール500が完成される。
以上のように、本発明の一実施形態に係るカメラモジュール500を搭載した携帯電話機100では、アクチュエータ層40において、第1および第2可動部41a,41bの延設方向に垂直な面に係る断面積を維持しつつ、該第1および第2可動部41a,41bの配設経路を長くすることで、該第1および第2可動部41a,41bにおける電気的な抵抗値を増加させることができる。このため、電力の消費量を抑制しつつ、衝撃や外力の負荷に耐え得るアクチュエータ層40が実現される。
また、第1可動部41aが、複数の梁部411a〜413aが電気的に直列に接続されるとともに、第2可動部41bが、複数の梁部411b〜413bが電気的に直列に接続されることで、第1および第2可動部41a,41bの配設経路が長くなる。このため、該第1および第2可動部41a,41bの電気的な抵抗値が増加することで、外乱の影響に拘わらず、第1および第2可動部41a,41bに係る変位を精度良く認識することができる。
<(4)変形例>
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
◎例えば、上記一実施形態では、固定部材としての固定枠体40Fに対して、各梁部411a〜413a,411b〜413bの両端が固定されたが、これに限られない。例えば、各梁部の一端が固定部材に固定され、各梁部の他端が、固定部材に対して相対的に移動する移動部材に固定されても良い。すなわち、各梁部の端部が固定される部材のうちの少なくとも一方が、固定部材であれば良い。以下、各梁部の一方の端部が移動部材に固定される構成を有する具体的な一態様を示して説明する。
図18は、一変形例に係るアクチュエータ層40Aの構成例に係る模式図である。本変形例では、上記一実施形態に係るカメラモジュール500を構成するアクチュエータ層40、第1平行ばね層50、撮像レンズ層60、および第2平行ばね層70の代わりに、アクチュエータ層40Aが採用されることで、カメラモジュール500Aを搭載する第1の筐体200Aを有する携帯電話機100Aが構成されるものとして説明する。
図18で示されるように、アクチュエータ層40Aは、固定部材としての固定枠体40FA、移動部材としてのレンズホルダ63HD、電極部40Ea,40Eb、および可動部としてのSMA膜41Aを備える。
固定枠体40FAは、例えば、樹脂等で形成され、中央部にZ方向に貫通する中空部分40HAを有する。該中空部分40HAは、断面が略円形を有する。
レンズホルダ63HDは、例えば、樹脂等で形成され、外縁および内縁が略円形の環状の部材であり、中空部分40HA内に配置される。つまり、レンズホルダ63HDの周囲に固定枠体40FAが設けられる。なお、図18では図示が省略されているが、レンズホルダ63HDの他主面側には、バイアスばねBA(図19および図20)が設けられ、該バイアスばねBAは、レンズホルダ63HDに対して−Z方向に押し下げる力を付与する。また、レンズホルダ63HDに、移動対象物としての光学レンズ部63が取り付けられることで、アクチュエータ層40Aによって光学レンズ部63を移動させる駆動装置が構成される。
電極部40Ea,40Ebは、固定枠体40FAの他主面上に設けられ、SMA膜41Aの一端部と他端部に対して電圧を印加するための部分である。ここでは、電極部40Ea,40Ebの配置に応じて、貫通配線の位置が適宜設定される。
SMA膜41Aは、形状記憶合金を用いて構成され、8本の梁部411A〜418A、および9本の第1〜9接続部CA1〜CA9を有する。各梁部411A〜418Aは、固定枠体40FAとレンズホルダ63HDとの間に架設され、レンズホルダ63HDをZ軸に沿った方向に移動可能に保持する。ここでは、8本の梁部411A〜418Aの架設位置が、レンズホルダ63HDの周囲の略等間隔の場所となっている。このような架設形態により、バランス良くレンズホルダ63HDが保持され、光学レンズ部63の光軸の傾きが防止される。
ここでは、第1、第3、第5、第7、および第9接続部CA1,CA3,CA5,CA7,CA9が、固定枠体40FAの他主面上に配設され、第2、第4、第6、および第8接続部CA2,CA4,CA6,CA8が、レンズホルダ63HDの他主面上に配設される。なお、第1〜9接続部CA1〜CA9については、形状記憶合金でないその他の導電性を有する素材によって構成されても良い。
また、第1接続部CA1の一端部が電極部40Eaに対して電気的に接続され、該第1接続部CA1の他端部が、梁部411Aの一端部に対して電気的に接続される。梁部411Aの他端部が、第2接続部CA2の一端部に対して電気的に接続され、第2接続部CA2の他端部が、梁部412Aの一端部に対して電気的に接続される。梁部412Aの他端部が、第3接続部CA3の一端部に対して電気的に接続され、第3接続部CA3の他端部が、梁部413Aの一端部に対して電気的に接続される。梁部413Aの他端部が、第4接続部CA4の一端部に対して電気的に接続され、第4接続部CA4の他端部が、梁部414Aの一端部に対して電気的に接続される。梁部414Aの他端部が、第5接続部CA5の一端部に対して電気的に接続され、第5接続部CA5の他端部が、梁部415Aの一端部に対して電気的に接続される。
更に、梁部415Aの他端部が、第6接続部CA6の一端部に対して電気的に接続され、第6接続部CA6の他端部が、梁部416Aの一端部に対して電気的に接続される。梁部416Aの他端部が、第7接続部CA7の一端部に対して電気的に接続され、第7接続部CA7の他端部が、梁部417Aの一端部に対して電気的に接続される。梁部417Aの他端部が、第8接続部CA8の一端部に対して電気的に接続され、第8接続部CA8の他端部が、梁部418Aの一端部に対して電気的に接続される。梁部418Aの他端部が、第9接続部CA9の一端部に対して電気的に接続され、第9接続部CA9の他端部が、電極部40Ebに対して電気的に接続される。
このように、SMA膜41Aが、8本の梁部411A〜418Aによって、固定枠体40FAとレンズホルダ63HDとの間を4回往復するように、固定枠体40FAとレンズホルダ63HDとの間に架設される。
そして、SMA膜41Aでは、第1接続部CA1、梁部411A、第2接続部CA2、梁部412A、第3接続部CA3、梁部413A、第4接続部CA4、梁部414A、第5接続部CA5、梁部415A、第6接続部CA6、梁部416A、第7接続部CA7、梁部417A、第8接続部CA8、梁部418A、および第9接続部CA9がこの順番で電気的に直列に接続される。従って、電極部40Eaと電極部40Ebとの間に電圧が印加されると、SMA膜41Aに電流が流れる。このとき、SMA膜41Aは、通電に応じて発生するジュール熱によって発熱するとともに、該発熱に応じて変形する。
更に、一体的に繋がって形成されたSMA膜41Aは、上記各接続部において固定枠体40FAおよびレンズホルダ63HDと接続されているため、接続部全体の面積が大きくなることで、衝撃や外力の負荷に耐える能力が高まることになる。
図19および図20は、SMA膜41Aの変形による光学レンズ部63の動作を説明するための模式図である。図19および図20では、光学レンズ部63とSMA膜41Aと固定枠体40FAに着目した構成が示されている。
SMA膜41Aが通電によって加熱されていない状態(非駆動状態)では、図19で示されるように、バイアスばねBAによって、レンズホルダ63HDに対して−Z方向に押し下げる力が働く。このとき、レンズホルダ63HDが押し下げられ、SMA膜41Aが撓む。従って、アクチュエータ層40Aは、バイアスばねBAによって、プリチャージされた状態となる。
また、非駆動状態から、SMA膜41Aが通電によって加熱されている状態(駆動状態)に移行すると、図20で示されるように、SMA膜41Aの各梁部411A〜418Aが、撓んだ状態から縮んで平面状になる方向に変形する。つまり、SMA膜41Aの撓み量が減少するように変形する。このとき、バイアスばねBAの弾性力に抗して、SMA膜41Aによってレンズホルダ63HDに押し上げる力が加えられ、光学レンズ部63が取り付けられたレンズホルダ63HDが+Z方向に移動する。
更に、駆動状態から、SMA膜41Aが通電によって加熱されていない状態(非駆動状態)に移行すると、光学レンズ部63が取り付けられたレンズホルダ63HDの位置は、図19で示された元の位置(初期位置)に戻る。
ここでは、非駆動状態において、SMA膜41Aが略平坦となる場合のレンズホルダ63HDの位置よりも、該レンズホルダ63HDが−Z方向へ距離δ0押し下げられていれば、光学レンズ部63の光軸に沿って、光学レンズ部63が取り付けられたレンズホルダ63HDを初期位置を基準として距離δ0の範囲内で+Z方向に移動させることが可能である。
上述したように、アクチュエータ層40Aでは、8本の梁部411A〜418Aが第1〜9接続部CA1〜CA9によって電気的に直列に接続される。このため、梁部411A〜418Aの延設方向に対して垂直な面に係る該梁部411A〜418Aの断面積の合計値、すなわちSMA膜41Aのうちの架設部の断面積が、ある程度大きく保たれたまま、SMA膜41Aのうちの架設部の配設経路が延長され、SMA膜41Aにおける一端部と他端部との間における電気抵抗値の上昇が図られる。従って、上記一実施形態と同様に、電力の消費量を抑制しつつ、衝撃や外力の負荷に耐え得るアクチュエータ層40Aが実現される。
また、SMA膜41Aによってレンズホルダ63HDが支持される。このため、アクチュエータ層40Aの構成および製造工程の簡素化により、アクチュエータ層40Aの製造が容易となる。
なお、本変形例では、バイアスばねBAが設けられたが、これに限られず、例えば、上記一実施形態と同様に、レンズホルダ63HDを挟持する第1および第2平行ばね層が設けられても良い。また、本変形例では、SMA膜41Aが、8本の梁部411A〜418Aを有していたが、これに限られず、例えば、3本以上の梁部を有して構成されても良い。更に、本変形例では、レンズホルダ63HDに対して、移動対象物としての光学レンズ部63が取り付けられたが、これに限られない。例えば、固定枠体40FAと光学レンズ部63との間に梁部が架設されるように、SMA膜が形成されても良い。
◎また、上記一実施形態では、各可動部41a,41bが、板状部40Faと板状部40Fcとの間を一往復半するように架設されたが、これに限られず、少なくとも一往復するように架設されれば良い。
◎また、上記一実施形態では、移動対象物であるレンズユニット60Uが、第1および第2可動部41a,41bに対して直接当接したが、これに限られない。例えば、第1平行ばね層50の形状を変えて、該第1平行ばね層50等といった別部材を介して、レンズユニット60Uが、第1および第2可動部41a,41bに対して当接しても良い。
◎また、上記一実施形態および上記一変形例では、層状のアクチュエータ層40,40Aが採用されたが、これに限られない。例えば、ある程度の厚みを有するアクチュエータとされても良い。
◎また、上記一実施形態および上記一変形例では、移動対象物が、光学レンズ部63であったが、これに限られない。例えば、撮像素子等のその他の部材を移動対象物としても良い。例えば、被写体からの光を撮像素子に導く光学系にあたる光学レンズ部を固定し、上記一実施形態または一変形例において光学レンズ部63を移動させるための構成と同様な構成によって撮像素子層をZ方向に移動させても良い。
図21は、光学レンズ部63Bを固定して、該光学レンズ部63Bの光軸Axに沿った方向に撮像素子層10Bを前後に移動させる一態様の概念図を例示する図である。図21では、撮像素子層10Bを光軸Axに沿って前後に移動させるアクチュエータACが描かれている。このような構成では、アクチュエータACの動作に応じて撮像素子層10Bが光軸Axに沿って前後に移動されて、光学レンズ部63Bと撮像素子層10Bとの距離が変更されることで、オートフォーカス制御が実現される。このように、SMA膜41,41Aの変形に応じて撮像素子および光学系のうちの少なくとも一方が移動されれば、オートフォーカス制御が実現される。
また、アクチュエータによって移動される対象物(移動対象物)は、光学系や撮像素子等といった撮像装置を構成する要素に限られない。例えば、移動対象物は、光ピックアップレンズの対物レンズ等といったその他のものであっても良い。すなわち、本発明は、SMAを用いて構成されるアクチュエータと、該SMAの変形に応じて移動対象物が移動される駆動装置一般に適用することができる。
◎なお、上記一実施形態および各種変形例をそれぞれ構成する全部または一部の構成を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。