ここで、上述した特許文献1に開示されるFOUPに収納される半導体ウェハについて、その口径は300mmに規定されるが、近年、300mmより大きい大口径化が図られ、例えば口径が450mmに促進されつつある。これに対応して、FOUPが大型化及び大重量化される傾向がある。
こうした傾向に対し、上述した特許文献2に開示される高層収納棚において、例えば、移載ロボットが故障し、収納部における荷の取り置きが不能となったり、収納部の収納面の変形や収納部上に落下した部品等の障害物により、荷が収納部の所定位置に載置されなかったり、該所定位置に載置されなかった荷を載置し直そうとも、所定位置にない荷を移載ロボットが把持できない旨の事態が発生する。こうした事態を解消するには、人手により、収納部における荷を高層収納棚外へ持ち運んだり、荷を収納部の所定位置に置き直すことが必要となる。仮に、上述した事態が発生した場合に、保管庫或いは荷を管理する管理者等の一人の作業員が、プラットホームを使用して、持ち運ぶべき荷或いはその近傍に到達し、荷を保持しようとする。この際、保持しようとする荷が大型化及び大重量化されたものであれば、一人の作業員が荷を直接に保持しつつ、プラットホームを渡って移動することは、安全性の観点から困難である。即ち、人手による保管庫内での荷の持ち運びや置き直しは、作業員の安全性を脅かし兼ねない旨の技術的問題点がある。
更には、荷自体が損傷したり、高層収納棚の内外で荷を移動可能な内外移動機構が故障する事態となれば、人手により、高層収納棚の内外で荷を持ち運ぶことが必要となる。仮に、上述した事態が発生した場合に、持ち運ぶべき荷を直接に保持する一人の作業員が、高層収納棚に固定されている梯子或いは階段を登り降りしようとする。ここで、保持している荷が大型化及び大重量化されたものであれば、一人の作業員が荷を直接に保持しつつ、梯子或いは階段を登り降りすることは、安全上の規定により許可されないこともある。即ち、人手による保管庫内外での荷の持ち運びもまた、作業員の安全性を脅かし兼ねない旨の技術的問題点がある。
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、人手により、当該保管庫内及び当該保管庫内外で荷を安全に移動させ得る保管庫を提供することを課題とする。
本発明に係る保管庫は上記課題を解決するために、第1軌道に沿って走行すると共に荷を搬送する搬送車との間で前記荷の入出庫が行われる保管庫であって、内部が鉛直方向に複数段に分断されていると共に、前記搬送車との間で前記荷を夫々出し入れ可能な第1出入口及び少なくとも一つの第2出入口が設けられている筐体又はフレームと、該筐体又はフレーム内に、前記複数段の各々において少なくとも水平一方向に広がるように配列されており、前記荷を収容又は載置可能に夫々構成されている複数の棚部分と、前記荷を把持可能な把持手段と、該把持手段を、前記複数の棚部分及び前記複数の棚部分の周囲の相互間で移動させると共に前記筐体又はフレームの内外で前記第2出入口を介して移動可能である移動手段とを備える。
本発明に係る保管庫では、例えばOHT(Overhead Hoist Tranport)等の搬送車により、例えばFOUP等の荷の入出庫が行われる。ここに「搬送車」は、天井走行型の、所謂、ビークルであって、荷の入出庫を行う際に、例えば半導体素子製造工場或いは半導体素子製造用の施設等の天井又は天井近傍に敷設されたレール等の第1軌道に沿って走行する。具体的には、荷を入庫する際に、例えばグリッパ等により入庫すべき荷を保持する搬送車が、第1軌道における、当該保管庫に対応する移載位置に到達し、停止する。すると、例えばホイスト等により、グリッパ等及びこれに保持された入庫すべき荷が鉛直方向に下降し、当該保管庫の内外で荷を出し入れするためのポートに該荷が載置される。すると、グリッパ等から入庫すべき荷が解放される。これにより、搬送車による荷の入庫が完了する。
一方、荷を出庫する際に、空荷の搬送車が上述した移載位置に到達し、停止する。すると、上述したホイスト等により、上述したグリッパ等が鉛直方向に下降し、グリッパ等により、ポートに載置されている出庫すべき荷が搬送車側に保持される。すると、ホイスト等により、グリッパ等及びこれに保持された出庫すべき荷が鉛直方向に上昇する。これにより、搬送車が走行可能な状態となれば、搬送車による荷の出庫が完了する。
当該保管庫について、その外観は、筐体又はフレームにより構成されており、該筐体又はフレーム内には、複数の棚部分が配列されている。ここに「複数の棚部分」とは、鉛直方向に一又は複数列配列された複数の載置面を有する棚列を示す。例えば、鉛直方向にm(但し、mは2以上の自然数)段、水平一方向にn(但し、nは1以上の自然数)列、且つこれに垂直である残る水平一方向(以下、単に「厚み方向」と称する)にはo(但し、oは1以上の自然数)列といった具合に、例えば薄く且つ縦に細長い平板形状となるように、棚全体の骨格が構成されてもよい。搬送車により当該保管庫に入庫された荷は、例えばローラ機構等により、ポートから、第1出入口を介して、複数の棚部分のうち第1出入口に隣接する一の棚部分に水平移動される。即ち、複数段のうち一の段に対応する高さに、第1出入口は設けられてよい。すると、例えばロボットアーム等の保管庫内搬送装置、所謂、スタッカが、複数の棚部分間を、例えば鉛直方向及び水平一方向という2方向或いは2軸方向に移動し、一の棚部分上の荷が、複数の棚部分のうち一の棚部分より他の棚部分上に移動される。即ち、保管庫内搬送され、入庫された荷が当該保管庫に収容或いは保管される。
ここで、上述した保管庫内搬送時に、スタッカの故障、搬送先たる棚部分の破損、又は棚部分上の障害物等に起因して、スタッカを使用せずに、当該保管庫内及び当該保管庫の内外で荷を移動させなければならない場合がある。
そこで、本発明に係る保管庫によれば、当該保管庫内で荷を移動する際に、人手による直接的又は間接的な操作により、移動手段が制御され、把持手段が移動すべき荷まで移動すると共に、把持手段が制御され、把持手段が移動すべき荷を把持可能な状態に変位する。即ち、荷は、把持手段により把持される。ここに「把持手段」は、荷の少なくとも一部を把持可能なグリップ等の把持機構である。この把持手段は、例えば荷がFOUPである場合、FOUPのフランジを把持可能である。また「移動手段」は、把持手段を各棚部分及びその周囲に移動可能な移動機構である。この移動手段は、例えば人力、又はアクチュエータ或いはモータにより駆動される。更には「棚部分の周囲」は、上述したスタッカの故障又はスタッカによる保管庫内搬送の失敗等により、荷が搬送先たる棚部分の所定位置からずれて載置されたり、該棚部分から落下した場合に、荷の所在として想定される棚部分の周囲を示す。尚、人手の操作に係る「直接的」とは、把持手段及び移動手段を、作業員等が直接に押圧し、人力により所望の位置或いは状態に変化させる旨を意味し、他方、「間接的」とは、把持手段及び移動手段を、作業員等が直接に押圧することなく、スイッチ操作或いはハンドル操作によりアクチュエータ或いはモータを制御して、所望の位置或いは状態に変化させる旨を意味する。尚、把持手段のみが、人手による直接的な操作により、制御されても構わない。
把持手段により荷が把持された後、人手による直接的又は間接的な操作により、移動手段が制御され、把持手段が荷を載置すべき棚部分まで移動すると共に、把持手段が制御され、把持手段が把持している荷を解放可能な状態に変位する。即ち、荷は、把持手段から解放される。以上のように、当該保管庫内における荷の移動が、スタッカを使用せずに行われる。
他方、当該保管庫の内外で荷を移動する際には、上述したように把持手段により荷が把持された後、人手による直接的又は間接的な操作により、移動手段が制御され、把持手段が当該保管庫の外部に設定された所定の受け取り位置まで移動すると共に、把持手段が制御され、把持手段が把持している荷を解放可能な状態に変位する。即ち、荷は、把持手段から解放される。ここに「移動手段」は、把持手段を、当該保管庫の内部から外部へ第2出入口を介して移動可能な移動機構でもある。また「第2出入口」は、把持手段及び移動手段を使用して荷を出し入れ可能である大きさの開口を示す。即ち、この第2出入口を、把持手段、移動手段及び荷が同時に通過可能である。この第2出入口は、例えば、筐体又はフレームにおける、第1出入口が設けられた側面と異なる側面、或いは該異なる側面に対応する側方フレームに設けられている。また、第2出入口は、複数段のうち、第1出入口に対応する段と同一の又は異なる段に設けられている。この場合に、荷を受け取る作業員等が、搬送車が走行する第1軌道の下方に進入することがなく、作業員等が荷を安全に受け取ることが可能である。
以上のように、スタッカによる保管庫内搬送が不能となり、人手による荷の持ち運びが余儀なくされる場合、人手による操作により、把持手段及び移動手段を制御して、複数の棚部分及び複数の棚部分の周囲の相互間、並びに当該保管庫内外で荷を移動する。これにより、作業員等が荷を直接に保持することがなくなり、作業員等の安全性を担保することが可能である。従って、人手により、当該保管庫内及び当該保管庫内外で荷を安全に移動させることが可能である。
本発明に係る保管庫の一態様では、前記移動手段は、前記筐体又はフレームの天井又は該天井側に敷設され、且つ一端が前記第2出入口を介して前記筐体又はフレームの外部へ延伸されている第2軌道と、該第2軌道に沿って前記水平一方向に往復移動可能なスライド機構と、一端が前記把持手段に固定されており、前記把持手段を鉛直方向に吊り下げた吊り下げ部材と、前記スライド機構と一体又は別体に設けられており、前記スライド機構の往復移動に伴って前記水平一方向に往復移動すると共に前記吊り下げ部材の他端を巻き上げ又は巻き下げ可能なホイスト機構とを有し、前記吊り下げ部材は、鉛直方向に吊り下がった前記把持手段の位置を中心とする所定範囲に、前記把持手段を移動自在に構成されている。
この態様によれば、把持手段により荷が把持される際に、例えば、人手による直接的又は間接的な操作により、スライド機構が制御され、スライド機構が第2軌道に沿って水平一方向に移動し、移動すべき荷に最近の水平一方向位置に停止する。ここに「第2軌道」は、当該保管庫の内外を連絡する、スライド機構におけるレール等の軌道を示す。この第2軌道は、具体的には、当該保管庫内において、筐体又はフレーム内の天井又は天井近傍に且つ複数の棚部分の配列に対応する水平一方向に敷設されると共に、当該保管庫外において、第2出入口を通過した一端が少なくとも荷一つ分延伸されている軌道である。スライド機構が移動すべき荷に最近の水平一方向位置まで移動すると、人手による直接的又は間接的な操作により、ホイスト機構が制御され、吊り下げ部材が移動すべき荷に最近の鉛直位置まで巻き上げ又は巻き下げられる。すると、人手による直接的な操作により、吊り下げ部材が制御され、吊り下げ部材の一端と接続している把持手段が所定範囲にある移動すべき荷まで移動すると共に、把持手段が制御され、把持手段が移動すべき荷を把持可能な状態に変位する。即ち、荷は、把持手段により把持されると共に、吊り下げ部材により把持手段を介して吊り下げられた状態となる。ここに、吊り下げ部材に係る「所定範囲」は、スライド機構及びホイスト機構による、水平一方向及び鉛直方向の二軸方向への移動後に、スライド機構及びホイスト機構の鉛直下方向に吊り下がった把持手段を、作業員等の押圧により、移動させることが可能である当該保管庫内外の空間を示す。即ち、この所定範囲は、移動すべき荷の所在として想定され得る、複数の棚部分及び複数の棚部分近傍をカバーし、且つ把持手段が移動すべき荷に到達し該荷を把持可能である空間として予め設定されている。尚、吊り下げ部材は、ホイスト機構により巻き上げ又は巻き下げ可能に且つ人手により屈曲可能な柔軟性、及び把持手段及び荷の荷重に耐え得る耐久性を有する、金属や繊維材料等からなる。
また、把持手段により把持された荷が当該保管庫外へ移動する際に、例えば、人手による直接的又は間接的な操作により、スライド機構及びホイスト機構が制御され、把持手段が、第2出入口を介して、第2軌道における延伸されている軌道部分に移動する。ここで、荷は、当該保管庫の外部に位置する。すると、ホイスト機構が制御され、吊り下げ部材が上述した受け取り位置まで巻き下げられる。続いて、人手による直接的な操作により、把持手段が制御され、把持手段が把持している荷を解放可能な状態に変位する。即ち、荷は、把持手段から解放されると共に、作業員等に直接に保持され、各種処理施設等へ持ち運ばれることとなる。
以上のように、人手による操作により、把持手段、並びにスライド機構及びホイスト機構を制御して、複数の棚部分及び複数の棚部分近傍の荷を把持すると共に、複数の棚部分及び複数の棚部分近傍の相互間、並びに当該保管庫内外で荷を移動する。これにより、作業員等が当該保管庫内、及び当該保管庫外に併設された梯子或いは階段等の高所で荷を直接に保持することがなくなり、作業員等の安全性を担保することが可能である。
この態様では、前記把持手段は、前記荷を把持する把持状態と、前記把持している荷を解放する解放状態との間で変位自在に構成されており、当該保管庫は、前記荷を、前記内部から、前記外部に設けられた所定の受け渡し棚に移動する場合に、移動すべき前記荷を把持すべく前記把持状態に変位するように前記把持手段を制御し、前記把持状態にある前記把持手段を、前記第2出入口の水平方向に位置する第1鉛直位置に移動させるように前記ホイスト機構を制御し、前記第1鉛直位置に移動した把持手段を、前記所定の受け渡し棚の鉛直方向に位置する第1水平位置に移動させるように前記スライド機構を制御し、前記第1水平位置に移動した把持手段を、前記所定の受け渡し棚に対応する第2鉛直位置に移動させるように前記ホイスト機構を制御し、前記第2鉛直位置に移動した把持手段から前記移動すべき荷を解放すべく前記解放状態に変位するように前記把持手段を制御する制御手段を更に備えてもよい。
このように構成すれば、荷が当該保管庫内から当該保管庫外の所定の受け渡し棚に移動する際に、例えば、人手による直接的な操作により、把持手段が制御され、把持手段が移動すべき荷に対し把持状態に変位する。即ち、移動すべき荷は、把持手段により把持される。続いて、人手によるチェーンブロック等の操作により(又はストッカコントローラ等の制御手段により)、把持手段の把持状態への変位が判別されると、ホイスト機構が制御され、把持状態にある把持手段が第1鉛直位置に移動する。続いて、スライド機構が制御され、把持手段が第1水平位置に移動する。ここで、把持手段は、当該保管庫の外部に且つ所定の受け渡し棚の上方に位置する。続いて、ホイスト機構が制御され、把持手段が第2鉛直位置に移動する。すると、人手による直接的な操作により、把持手段が制御され、把持手段が把持状態から解放状態に変位する。即ち、荷は、把持手段から解放されると共に、所定の受け渡し棚に支持された状態となり、作業員等は、移動すべき荷を直接に保持可能となる。このように、把持手段が把持状態に変位してから解放状態に変位するまでの間の制御、即ち、スライド機構及びホイスト機構の制御を、人手操作(又は制御手段)により行う。これにより、荷の移動を迅速且つ正確に行うことが可能である。
尚、所定の受け渡し棚について、その高さ、支持面の大きさ等は、作業者等が荷の受け渡しを可能とする形態であれば特に限定されず、極論すれば、所定の受け渡し棚は、可動式のものや、当該保管庫が設置された設置面に続く床面であっても構わない。
本発明に係る保管庫の他の態様では、当該保管庫は、前記荷をその底側から支持可能な第1載置面を有する載置部と、前記載置部を、前記複数の棚部分の相互間で移動可能である駆動手段とを更に備え、前記駆動手段は、前記載置部を前記水平一方向を含む水平方向に往復移動可能な水平駆動手段と、前記載置部を前記鉛直方向に往復移動可能な鉛直駆動手段とを有し、前記複数の棚部分は、前記第1載置面との間で前記荷を相互に移載可能に構成されている第2載置面を夫々有する。
この態様によれば、当該保管庫内で、本来荷が搬送される(即ち、保管庫内搬送される)際に、複数の棚部分のうち搬送元たる一の棚部分に向かって、例えば水平アクチュエータ、水平スライダ、ロボットアーム等の水平駆動手段により、載置部が水平方向に移動される。この水平方向の移動と相前後して、一の棚部分に向かって、例えば鉛直エレベータ、鉛直アクチュエータ、ロボットアーム等の鉛直駆動手段により、載置部が鉛直方向に移動される。すると、一の棚部分における第2載置面から載置部における第1載置面への荷の移載が行われる。続いて、複数の棚部分のうち、搬送先たる二の棚部分に向かって、水平駆動手段により、載置部が水平方向に移動される。この水平方向の移動と相前後して、二の棚部分に向かって、鉛直駆動手段により、載置部が鉛直方向に移動される。すると、載置部における第1載置面から二の棚部分における第2載置面への荷の移載が行われる。ここでの、第1及び第2載置面間での荷の移載は、次のように行われる。
第1及び第2載置面は、荷を夫々、相互に移載可能である。一の棚部分の第2載置面上の荷は、2軸方向に移動可能な載置部の第1載置面に移載される。例えば、第1及び第2載置面は、荷の底面における相異なる部分(典型的には、中央寄り部分と周辺寄り部分)を支持するように構成されており、どちらか一方で荷を支持することが可能である。具体的には、載置部が、一の棚部分の第2載置面が存在する鉛直位置且つ水平位置に移動された際に、第2載置面に代わって、第1載置面で荷を支持することで、第2載置面から第1載置面への移載が行われる。典型的には、鉛直駆動手段により第1載置面が第2載置面より高くなるまで移動されることで、荷は、第1載置面により支持されることとなる。これにより、保管庫内搬送が開始される。ここでは、鉛直駆動手段及び水平駆動手段による簡単な2軸動作によって、棚部分におけるいずれの第2載置面にも迅速に保管庫内搬送が可能である。
また、載置部の第1載置面上の荷は、搬送先とする二の棚部分の第2載置面に移載される。具体的には、載置部が、二の棚部分の第2載置面が存在する鉛直位置且つ水平位置に移動された際に、第1載置面に代わって、第2載置面で荷を支持することで、第1載置面から第2載置面への移載が行われる。典型的には、鉛直駆動手段により第1載置面が第2載置面より低くなるまで移動されることで、荷は、第2載置面により支持されることとなる。これにより、保管庫内搬送が終了され、二の棚部分に荷が収納或いは保管される。
以上のように、第1及び第2載置面間で荷が受け渡されることにより、保管庫内搬送における荷の移載時間を短縮することが可能となる。
この態様では、前記制御手段は、前記載置部が前記複数の棚部分の相互間で移動する際に、前記把持手段を、前記載置部の移動を妨げない退避位置に移動させるように前記スライド機構及び前記ホイスト機構を制御してもよい。
このように構成すれば、載置部の移動による保管庫内搬送が行われる際に、制御手段により、スライド機構及びホイスト機構が制御され、把持手段が退避位置に移動する。ここに「退避位置」は、把持手段が移動し得る当該保管庫内外において、載置部の移動を妨げない位置を示す。具体的には、この退避位置は、例えば、第2軌道における延伸されている軌道部分、又は該延伸されている軌道部分とは逆側の軌道端部を示すが、載置部の移動に応じて適宜変更しても構わない。このような退避位置を予め設定することにより、載置部及び把持手段が夫々に独立して移動するための二つの移動経路たる空間を設ける必要がなく、移動手段(具体的には、第2軌道)と、載置部及び駆動手段を含む保管庫内搬送装置たるスタッカとを近接して設けることが可能となり、その分空いた空間に棚部分を増設することも可能である。即ち、収納或いは保管数を増大し、当該保管庫の収納或いは保管力を高めることが可能である。
前記移動手段が前記第2軌道及び前記スライド機構を有する態様では、前記移動手段は、前記第2軌道に対して前記スライド機構を組み付け自在に構成されていてもよい。
このように構成すれば、載置部の移動による保管庫内搬送が不能となり、人手による荷の持ち運びが余儀なくされる場合にのみ、人手による直接的な操作により、第2軌道に対してスライド機構が組み付けられる。他方、載置部の移動による保管庫内搬送が可能であれば、第2軌道からスライド機構が取り外される。これにより、保管庫内搬送時に、把持手段を上述した退避位置に移動させる旨の制御を行わなくて済む。また、各保管庫が第2軌道のみを備えていれば、複数の保管庫において、スライド機構、ホイスト機構、釣り下げ部材及び把持手段を共用することが可能となり、一つの保管庫に係るコストを抑制することも可能である。
当該保管庫が前記載置部及び前記駆動手段を更に備える態様では、前記駆動手段は、前記第2軌道に対して前記水平駆動手段を組み付け自在に構成されており、前記水平駆動手段は、前記第2軌道に沿って前記水平一方向に前記載置部を往復移動可能であり、前記鉛直駆動手段は、前記第2軌道の鉛直方向に前記載置部を往復移動可能であってもよい。
このように構成すれば、第2軌道は、移動手段におけるスライダ機構の他に、駆動手段における水平駆動手段の軌道としても機能する。水平移動手段は、人手による直接的又は間接的な操作により、第2軌道に対し、スライダ機構と同時に又は異なる時期に組み付けられる。これにより、載置部及び把持手段が同一の移動経路を移動することとなり、載置部及び把持手段が異なる2つの移動経路を夫々に独立して移動する場合と比較して、棚部分を多く設置することも可能である。即ち、収納或いは保管数を増大し、当該保管庫の収納或いは保管力を高めることが可能である。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
以下、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
<実施形態>
<実施形態の構成>
図1から図3を参照して、本発明の実施形態に係る保管庫の構成について説明する。ここに図1は、実施形態に係る保管庫を備える搬送システムの外観を示す斜視図であり、図2は、図1の保管庫の内部構造を模式的に示す、図1の保管庫を前後方向(即ち、「一方向」と称する)で切断した場合の一方向断面図であり、図3は、図2の載置部及び複数の棚部分間で荷を移載する動作を説明するための、載置部及び複数の棚部分の一方向断面図である。
図1において、搬送システム1000は、レールR1、ビークル10及びストッカ20の他、制御系として、搬送指示部100、ビークルコントローラ101及びストッカコントローラ102を備える。搬送システム1000は、半導体素子製造における搬送スケジュールに従って、各種製造装置及びストッカ20等に対してFOUP3の搬送を行うと共に、ストッカ20においてFOUP3の収納或いは保管を行う。
FOUP3は、本発明に係る「荷」の一例として、ビークル10によりレールR1に沿って搬送されると共に、ストッカ20内で、入庫若しくは出庫、又は保管位置の調整のために搬送(即ち、保管庫内搬送)される。FOUP3は、その上面に、ビークル10、後述する自動搬送装置30又はマニュアル搬送装置40により把持されるフランジ4を備えている。図3において、FOUP3は、その下面中央部及び側部に、複数の凹部5,6を有する。下面側部に位置する凹部5は、後述する各棚部分21に設けられた凸部22に対応するサイズに形成されている。一方、下面中央部に位置する凹部6は、後述する載置部31に設けられた凸部32に対応するサイズに形成されている。
レールR1は、本発明に係る「第1軌道」の一例として、半導体素子製造施設の天井に敷設されており、ビークル10が走行するための軌道の役割を果たす。レールR1の下方且つこれに隣接する位置に、各種製造装置及びストッカ20等が設置されている。
図2において、ビークル10は、本発明に係る「搬送車」の一例として、リニアモータを動力源とするOHT(天井走行車)であって、レールR1に沿って走行し、FOUP3を搬送すると共に、レールR1上の所定位置で停止し、各種製造装置及びストッカ20等に夫々備えられたポート(例えば、ポートP1及びP2)との間でFOUP3を移載可能に構成されている。ビークル10は、ホイスト11、ベルト12及びグリッパ13を備えており、これら各部は、ビークルコントローラ101により制御される。
ホイスト11は、ビークル10内部に取り付けられており、アクチュエータ或いはモータにより駆動され、ベルト12を巻き上げ又は巻き下げ可能に構成されている。ベルト12について、その一端がホイスト11に固定され、その他端がグリッパ13に固定されている。グリッパ13は、アクチュエータ或いはモータにより駆動され、FOUP3を保持する保持状態、及びFOUP3を解放する解放状態間で変位可能に構成されている。
ストッカ20は、本発明に係る「保管庫」の一例として、ビークル10により搬送されるFOUP3を複数収容或いは保管可能である。ストッカ20は、本体部20a、ポートP1及びP2、複数の棚部分21、自動搬送装置30、並びにマニュアル搬送装置40を備える。
本体部20a(即ち、本発明に係る「筐体又はフレーム」の一例)には、レールR1側の側面(即ち、図1における正面)に、開口H1及びH2が設けられている。各開口H1,H2は、本発明に係る「第1出入口」の一例として、ポートP1又はP2に隣接しており、ポートP1又はP2と本体部20a内部との間で、FOUP3を出し入れ可能な大きさに形成されている。更に、本体部20aには、レールR1側の側面に隣り合う側面(即ち、図1における右側面)に、開口H3が設けられている。開口H3は、本発明に係る「第2出入口」の一例として、マニュアル搬送装置40の後述するレールR2を貫通させると共に、本体部20a内外でFOUP3を出し入れ可能な大きさに形成されている。本体部20a内部には、複数の棚部分21、自動搬送装置30及びマニュアル搬送装置40が設けられている。
尚、本体部20a内部には、不図示のメンテナンス用の足場、梯子或いは脚立等の作業台が各棚部分21に対向して固定されている、又は取り付け/取り外し可能に設けられる。搬送システム1000に係る作業を行う作業員は、このメンテナンス用作業台を歩行しつつ、各棚部分21又はその周囲に到達することにより、後述する変位操作及び押圧操作を可能としている。
各ポートP1,P2は、本体部20aのレールR1側の外面に、開口H1又はH2に隣接して設けられている。また、各ポートP1,P2は、ビークル10とストッカ20との間でFOUP3を移載可能に、レールR1の鉛直下方向に位置している。各ポートP1,P2は、ビークル10から移載されたFOUP3を、出入口H1又はH2を介して、本体部20a内部へ向けて水平移動可能なスライド機構を備える。具体的には、スライド機構は、ポートP1又はP2上のFOUP3を、後述する複数の棚部分21のうち、開口H1又はH2に隣接する一の棚部分(即ち、図2において二点鎖線で示されるエリアA1に位置する)上に移動する。
複数の棚部分21は、鉛直方向に7段、各段における水平一方向(即ち、図1における左右方向)に4列、且つ各段における厚み方向(即ち、図1における前後方向)に2列として、合計56個の棚部分から構成されている。各棚部分21は、FOUP3の下面側部を支持可能な載置面(即ち、本発明に係る「第2載置面」の一例)を夫々有する、一対の載置部21a,21bから構成されている。図3において、各棚部分21は、その載置面に、凸部22を有する。凸部22は、FOUP3の下面側部に形成された凹部5に対応するサイズに形成されており、FOUP3の収容或いは保管時にこの凹部5に係合される。
自動搬送装置30は、ストッカコントローラ102の制御により、複数の棚部分21間でFOUP3を自動的に搬送可能な保管庫内搬送装置たるスタッカ(或いはスタッカロボット)である。自動搬送装置30は、載置部31、並びに本発明に係る「駆動手段」の一例を構成する、本体部30a、複数のローラ33、鉛直ガイド部34及び水平伸縮旋回アーム(以下、適宜単に「アーム」と称する)35を備えており、複数のローラ33、鉛直ガイド部34及び水平伸縮旋回アーム35の各部が、ストッカコントローラ102により制御される。
載置部31は、複数のローラ33による水平一方向への駆動、鉛直ガイド部34による鉛直方向への駆動、及びアーム35による厚み方向への駆動により、複数の棚部分21間を往復移動可能に構成されている。載置部31は、FOUP3の下面中央部を支持可能な載置面(即ち、本発明に係る「第1載置面」の一例)を有する。図3において、載置部31は、その載置面に、凸部32を有する。凸部32は、FOUP3の下面中央部に形成された凹部6に対応するサイズに形成されており、FOUP3の移載時にこの凹部6に係合される。
本体部30aの底面には、アクチュエータ或いはモータにより駆動する複数のローラ33が、ストッカ20内部の床面に敷設されたレールR20上を回転可能に取り付けられている。本体部30aには、上下方向に、鉛直ガイド部34が固定されている。本体部30aは、本発明に係る「水平駆動手段」の一部として機能し、複数のローラ33の回転により、鉛直ガイド部34(言い換えれば、載置部31)を水平一方向に移動可能に構成されている。
鉛直ガイド部34には、アーム35が鉛直方向にのみ移動可能に取り付けられている。鉛直ガイド部34は、本発明に係る「鉛直駆動手段」の一例であって、アクチュエータ或いはモータにより鉛直方向に回動する機構34aと、該機構34aにおける回動部位に固定された回動部34bとから成っている。鉛直ガイド部34は、機構34aの動作により、回動部34bの上面に旋回自在に取り付けられたアーム35(言い換えれば、載置部31)を鉛直方向に往復移動可能に構成されている。
アーム35には、載置部31が厚み方向にのみ移動可能に取り付けられている。アーム35は、本体部30aと共に本発明に係る「水平駆動手段」の一部として機能し、上下方向に連結された2つのアーム部から成っている。これら2つのアーム部は、アクチュエータ(例えば、油圧シリンダ等)或いはモータにより相互に旋回することにより、厚み方向に伸縮自在に構成されている。アーム35は、2つのアーム部の動作により、2つのアーム部のうち上方のアーム部に固定された載置部31を厚み方向に往復移動可能に構成されている。
上述したように複数のローラ33、鉛直ガイド部34及びアーム35の駆動により移動する載置部31と、該載置部31の移動先たる各棚部分21との相対関係について説明する。各棚部分21の載置面は、ストッカ20の上面側から視て、馬蹄のようにU字形に形成されている。一方、載置部31の載置面は、そのU字形の中央を埋める島のように矩形に形成されている。即ち、各棚部分21の載置面及び載置部31の載置面は、相互に相補の平面形状を有する。このような各棚部分21及び載置部31間で、FOUP3の移載が行われる。
マニュアル搬送装置40は、作業員による不図示のチェーンブロックの操作により、FOUP3を移動可能な装置である。マニュアル搬送装置40は、把持部41、並びに本発明に係る「移動手段」の一例を構成するレールR2、スライド部43、ホイスト部44、及び吊り下げ部45を備える。
把持部41は、本発明に係る「把持手段」の一例として、FOUP3を把持可能に構成されている。具体的には、把持部41は、作業員の変位操作により、FOUP3のフランジ4を把持する把持状態、及びフランジ4を解放する解放状態間で変位自在に構成されている。
レールR2は、本発明に係る「第2軌道」の一例として、ストッカ20内部の天井に、その長手方向が水平一方向と平行になるように取り付けられている。レールR2の一端部は、開口H3を介してストッカ20内外を連絡すべく、ストッカ20外部へ延伸されている。レールR2の延伸部分の長さは、スライド部43における水平一方向の長さより大きいものとする。このレールR2には、スライド部43が組み付けられている。
スライド部43は、本発明に係る「スライド機構」の一例として、アクチュエータ或いはモータにより駆動され、レールR2に沿って水平一方向に往復移動可能に構成されている。スライド部43内部には、ホイスト部44が一体に取り付けられている。
ホイスト部44は、本発明に係る「ホイスト機構」の一例として、吊り下げベルト45の一端が固着されている巻き軸を備える。ホイスト部44は、アクチュエータ或いはモータにより駆動される巻き軸の回転により、吊り下げベルト45の一端を巻き上げ又は巻き下げ可能に構成されている。
吊り下げベルト45は、本発明に係る「吊り下げ部材」の一例として、その一端がホイスト部44の巻き軸に固着され、その他端が把持部41上面に固着されていることにより、ホイスト部44及び把持部41を接続する。通常時に、吊り下げベルト45は、ホイスト部44の鉛直下方向に把持部41を吊り下げた状態にある。吊り下げベルト45は、作業員による把持部41を押圧する操作により、鉛直方向に吊り下がった把持部41が一定の範囲で移動自在となるように構成されている。ここで「一定の範囲」とは、吊り下げベルト45を鉛直方向以外の方向に引っ張ったり、屈曲させることにより、吊り下げられた把持部41が到達し得る空間を示す。尚、吊り下げベルト45の代わりに、吊り下げチェーン或いは吊り下げワイヤが使用されても構わない。
搬送指示部100は、メインコントローラたる製造指示部における半導体素子製造スケジュールに基づいてFOUP3の搬送スケジュールを作成し、該搬送スケジュールに基づいて、ビークルコントローラ101及びストッカコントローラ102を制御可能に構成された、MCS(Material Control System)である。搬送指示部100は、ビークルコントローラ101に対し、ビークル10によるFOUP3の搬送を指示すると共に、ストッカコントローラ102に対し、ストッカ20内部におけるFOUP3の搬送を指示可能に構成されている。
ビークルコントローラ101は、搬送指示部100の指示により、ビークル10各部を制御し、レール1に沿ったFOUP3の搬送を実行すると共に、各種製造装置及びストッカ20等との間でFOUP3の移載を実行可能に構成されている。
ストッカコントローラ102は、搬送指示部100の指示により、ポートP1,P2及び自動搬送装置30の各部を制御し、ビークル10との間でポートP1又はP2を介してFOUP3の移載(即ち、入庫若しくは出庫)を実行すると共に、自動搬送装置30各部を制御し、ストッカ20内部におけるFOUP3の搬送(即ち、保管庫内搬送)を実行可能に構成されている。
<実施形態の動作>
<保管庫内搬送動作>
次に、図2及び図3を参照して、自動搬送装置30による、ストッカ20内部におけるFOUP3の搬送動作(即ち、保管庫内搬送動作)について説明する。
図2において、自動搬送装置30は、例えば、エリアA1に位置する棚部分21上のFOUP3を、エリアA2に位置する棚部分21上に移載する。図3(a)に示すように、エリアA1の棚部分21上のFOUP3は、その凹部5が棚部分21の凸部22と係合した状態で、棚部分21の載置面に支持されている。この場合に、先ず載置部31が、複数のローラ33、鉛直ガイド部34及びアーム35の駆動により、エリアA1における棚部分21の直下に移動される。この「棚部分21の真下」とは、一対の棚部分21a,21b間の空間(即ち、図3(a)において載置部31が点線で示される空間)の下方であり、具体的には、FOUP3における凹部6の鉛直下方向に載置部31における凸部32が位置することを示す。
続いて、エリアA1における棚部分21の真下に移動した載置部31は、鉛直ガイド部34の駆動により鉛直上方向へ移動する。この際、載置部31が、一対の棚部分21a,21b間の空間を通過して、図3(b)に示すように、この一対の棚部分21a,21bよりも上昇する。これに伴い、FOUP3の凹部5及び棚部分21の凸部22の係合が外れ、FOUP3は、エリアA1における棚部分21の載置面に代わって、その凹部6が載置部31の凸部32に係合した状態で、載置部31の載置面に支持される。即ち、エリアA1の棚部分21上のFOUP3が載置部31上に移載される。
続いて、FOUP3を支持している載置部31は、複数のローラ33、鉛直ガイド部34及びアーム35の駆動により、エリアA2における棚部分21の直上に移動される。この際、載置部11が、水平駆動部13により水平一方向の所定の水平位置に移動される。この「棚部分21の真上」とは、一対の棚部分21a,21b間の空間の上方であり、具体的には、FOUP3における凹部5の鉛直下方向に棚部分21における凸部22が位置することを示す。
続いて、エリアA2における棚部分21の真上に移動した載置部31は、鉛直ガイド部34の駆動により鉛直下方向へ移動する。この際、載置部31が、一対の棚部分21a,21b間の空間を通過して、図3(a)に示すように、この一対の棚部分21a,21bよりも下降する。これに伴い、FOUP3の凹部6及び載置部31の凸部32の係合が外れ、FOUP3は、載置部31の載置面に代わって、その凹部5が棚部分21の凸部22に係合した状態で、棚部分21の載置面に支持される。即ち、載置部31上のFOUP3がエリアA2の棚部分21上に移載される。これにより、エリアA1の棚部分21からエリアA2の棚部分21への、FOUP3の移載動作が完了される。尚、この移載工程を逆の順序で行えば、エリアA2の棚部分21からエリアA1の棚部分21への移載動作となる。
上述した保管庫内搬送動作について、各移載工程で、FOUP3の位置決め手段たる凹部5,6が、各棚部分21の位置決め手段たる凸部22、又は載置部31の位置決め手段たる凸部32と係合した状態となり、FOUP3の位置決めが確実になされる。これは、各移載工程が順調に実行されるために必要不可欠の条件である。一方、自動搬送装置30の故障、搬送先たる棚部分21の破損、棚部分21上の障害物、及びFOUP3自体の破損に起因する移載ずれにより、FOUP3の位置決めに確実性を欠くと、一連の移載工程が中断してしまう場合がある。この場合、中断した移載工程を再度始動するためには、各種移載ずれの要因を払拭することと併せて、FOUP3の移動動作を行うこととなる。具体的には、該移動動作として、位置決めが確実に行われなかった一のFOUP3を出庫する、又は該一のFOUP3より他の、ストッカ20内のFOUP3を少なくとも1つ若しくは全て出庫する。そこで、本実施形態では、保管庫内搬送動作の過程における、上述したようなFOUP3の移動動作が、故障中、又は故障中でなくとも所定の位置決め位置にないFOUP3を搬送不能な自動搬送装置30に代わって、マニュアル搬送装置40により実行される。
<マニュアル搬送動作>
次に、図4及び図5を参照して、マニュアル搬送装置40による、FOUP3の移動動作について説明する。ここに図4は、図1の保管庫における退避位置を示す、図1の保管庫を左右方向(即ち、「他方向」と称する)で切断した場合の他方向断面図であり、図5は、マニュアル搬送装置40による移動動作の一例たる、FOUPマニュアル搬送処理を示すフローチャートである。
先ず図4において、FOUPマニュアル搬送処理が実行される以前、即ち、自動搬送装置30による保管庫内搬送動作の実行中に、把持部41は、スライド部43及びホイスト部44の駆動により、レールR2の延伸部分(即ち、図4において、二点鎖線で示されるエリアA5に位置する)に位置する。このエリアA5は、自動搬送装置30によるFOUP3の搬送を妨げないと共に、マニュアル搬送装置40による移動動作が実行される際に搬送の対象たるFOUP3を逸早く到達すべく開口H3に最近である、本発明に係る「退避位置」の一例たる退避エリアである。FOUPマニュアル搬送処理では、例えば、エリアA6に位置する棚部分21への移載時に移載ズレが生じたFOUP3をストッカ20外部へ移動する動作が示される。
図5において、先ず作業員によるチェーンブロックのマニュアル操作に応答して、スライド部43及びホイスト部44が駆動され、退避エリアA5に位置する把持部41がエリアA6近傍に移動する。すると、作業員の押圧操作により、把持部41がFOUP3のフランジ4に対応する位置に移動されると共に、作業員の変位操作により、把持部41が把持状態に変位する。これにより、FOUP3が把持部41により把持される(ステップS51)。
続いて、作業員のマニュアル操作により、ホイスト部44が駆動され、把持部41が所定の第1鉛直位置(即ち、図4における二点鎖線で示されるエリアA7)に移動する(ステップS52)。ここで「第1鉛直位置」とは、開口H3と同じ高さになるまで、把持部41が鉛直方向に上昇された位置を示す。即ち、第1鉛直位置に移動した把持部41は、開口H3の水平方向に位置する。すると、スライド部43が駆動され、把持部41が所定の第1水平位置(即ち、図4における二点鎖線で示されるエリアA5)に移動する(ステップS53)。ここで「第1水平位置」とは、ストッカ20外部に設定される受け渡し棚P3(即ち、図4において点線で示されるポート)の上方にくるまで、把持部41が水平一方向に移動された位置を示す。即ち、第1水平位置に移動した把持部41は、受け渡し棚P3の鉛直上方に位置する。すると、ホイスト部44が駆動され、把持部41が所定の第2鉛直位置(即ち、図4における二点鎖線で示されるエリアA8)に移動する(ステップS54)。ここで「第2鉛直位置」とは、受け渡し棚P3に、把持しているFOUP3を移載可能である高さになるまで、把持部41が鉛直方向に下降された位置を示す。即ち、第2鉛直位置に移動した把持部41は、受け渡し棚P3の直上に位置する。
続いて、作業員の変位操作により、把持部41が解放状態に変位する。これにより、FOUP3が把持部41から解放される(ステップS55)。即ち、移載ズレが生じたFOUP3がストッカ20内部から外部へ移動され、一連のFOUPマニュアル移動処理が終了する。
本実施形態のFOUPマニュアル移動処理によれば、自動搬送装置30による保管庫内搬送が不能となり、人手によるFOUP3の持ち運びが余儀なくされる場合、作業員の操作により、マニュアル搬送装置40を制御して、ストッカ20内部及びストッカ20内外でFOUP3を移動する。これにより、作業員がストッカ20内で荷を直接に保持することがなくなり、作業員の安全性を担保することが可能である。
尚、本実施形態によれば、レールR2に対し、スライド部43が組み付けられているが、スライド部43はレールR2から取り外し自在(言い換えれば、レールR2に組み付け自在)に構成されていてもよい。
次に、図6を参照して、組み付け自在のスライド部が組み付けられるレールの一例について説明する。ここで、図6は、組み付け自在のスライド部が組み付けられるレールの構造を説明するための、レールの一方向断面図である。
図6(a)において、ストッカ220に適用されるマニュアル搬送装置240は、把持部241、レールR3、スライド部243、ホイスト部244、及び吊り下げ部245を備える。スライド部243は、本体部243a、一対のローラ246、及び一対の掛かり部247を備える。レールR3は、ストッカ本体部220aの天井に且つ水平一方向に敷設されている。レールR3について、その内部が開部O1を介してレール3下方と相通している。また、その下部は、一対の掛かり部247に形成されている。こうした構造は、レールR3の水平一方向に連続している。本体部243aの上面には、車軸で連結される一対のローラ246が回転可能に取り付けられている。スライド部243は、一対のローラ246のローラ面と一対の掛かり部247上面とが当接する状態となるように、レールR3に対して組み付けられる。この組み付け状態で、アクチュエータ或いはモータにより一対のローラ246が一対の掛かり部247上面を回動する。これにより、スライド部243が水平一方向に往復移動可能となる。
尚、本実施形態では、自動搬送装置30は、複数のローラ33がストッカ20内部の床面に敷設されたレールR20上を水平一方向に回動することにより、水平一方向への往復移動を可能とするが、自動搬送装置30の水平一方向への移動を規定する軌道として、上述したレールR3を設定してもよい。
図6(b)において、ストッカ220は、鉛直ガイド部234を含む自動搬送装置230を備える。鉛直ガイド部234の上面には、ローラ面が対向するように一対のローラ235が取り付けられている。レールR3に対し、マニュアル搬送装置240におけるスライド部243に加えて、自動搬送装置230における鉛直ガイド部234もまた組み付け可能に構成されている。鉛直ガイド部234は、一対のローラ235のローラ面間でレールR3を両側から挟み込んだ状態となるように、レールR3に対して組み付けられる。この組み付け状態で、鉛直ガイド部234が駆動すると、レールR3両側面を一対のローラ235が回動する。これにより、鉛直ガイド部234が水平一方向に往復移動可能となる。
尚、本実施形態によれば、図2に示すように、マニュアル搬送装置40におけるレールR2の直下に、自動搬送装置30が設置されるが、自動搬送装置30及びマニュアル搬送装置40の相対位置は、これに限定されない。
図7を参照して、自動搬送装置30及びマニュアル搬送装置40がとり得る相対位置の他の例について説明する。ここに図7は、図1における自動搬送装置30及びマニュアル搬送装置40の相対位置の他の例を示す一方向断面図である。尚、図7において、図1のストッカ20と同一に構成される要素について、同一の符号を付すこととする。
図7において、ストッカ120は、厚み方向に、マニュアル搬送装置40におけるレールR2、及び自動搬送装置30におけるレールR20を並べて設置している。このため、ストッカ120では、厚み方向における2つの棚部分列間の空間を、図1のストッカ20の場合よりも大きくせざるを得ない。一方、マニュアル搬送装置40及び自動搬送装置30における水平一方向への移動経路が夫々に独立しているので、自動搬送装置30による保管庫内搬送動作時に、把持部41が退避位置A5に退避するための退避動作を最小限とすることが可能となる。
尚、本実施形態によれば、自動搬送装置30は、特に棚部分21の設置数が多いワイドストッカに適用され、複数のローラ33、鉛直ガイド部34及びアーム35の駆動により複数の棚部分21間を往復移動可能とするが、自動搬送装置の構成は、これに限定されない。
図8を参照して、図1の自動搬送装置30と異なる自動搬送装置の一例について説明する。ここに図8は、図1の自動搬送装置30と異なる自動搬送装置の一例を示す他方向断面図である。
図8において、ストッカ320は、特に高層ストッカに適用されるH型の自動搬送装置330を備える。自動搬送装置330は、FOUP3の下面中央部を支持可能な載置部331、該載置部331を厚み方向に移動可能な水平アーム335、該水平アーム335を水平一方向に移動可能な水平ガイド部334、及び該水平ガイド部334の鉛直方向への移動を可能とする鉛直ガイド部333を備える。水平アーム335、水平ガイド部334及び鉛直ガイド部333は、アクチュエータ或いはモータにより夫々駆動される。水平アーム335は、複数のアーム部分からなっており、個々のアーム部分を段階的にスライドすることにより載置部331を最近の棚部分321に到達可能に構成されている。水平ガイド部334は、ストッカ本体部320aの水平一方向の長さより、鉛直移動のための有余を設けるべく、若干短く形成されている。鉛直ガイド部333は、2つの縦型コンベアからなっており、各々が、本体部320aの鉛直方向の高さより、マニュアル搬送装置40のレールR2に接触しないための有余を設けるべく、若干低く形成されている。このような水平アーム335、水平ガイド部334及び鉛直ガイド部333からなる自動搬送装置320における移動手段を構成することにより、載置部331を高部の棚部分321にも安定して移動させることが可能である。
尚、本実施形態によれば、マニュアル搬送装置40による一度の移動動作により、開口H3を介して、1つのFOUP3が出し入れされるが、マニュアル搬送装置による一度の移動動作により出し入れされるFOUP3の個数は、1つに限定されない。
図9を参照して、図1のマニュアル搬送装置40と異なるマニュアル搬送装置の一例について説明する。ここに図9は、図1のマニュアル搬送装置40と異なるマニュアル搬送装置の一例を示す他方向断面図である。尚、図9において、図7のストッカ120と同一に構成される要素について、同一の符号を付すこととする。
図9において、ストッカ420は、本体部420a及びマニュアル搬送装置440を備える。本体部420aには、水平一方向に位置する、相対する2つの側面に、2つの開口H4,H5が設けられている。マニュアル搬送装置440は、2つの開口H4,H5を介して、同時に2つのFOUP3を出し入れ可能に構成されている。具体的には、ストッカ本体部420aの天井には、2つの開口H4,H5を介して、ストッカ420内外を連絡すると共に両端部が本体部420a外部に延伸されているレールR4が敷設されている。マニュアル搬送装置440は、2つの把持部41A,41Bを水平一方向及び鉛直方向に独立して移動可能に、スライド部43、ホイスト部44及び吊り下げベルト45からなる移動手段を2組備える。例えば、レールR4の直下に自動搬送装置130が設置されている場合に、ストッカ420内部において、自動搬送装置130より左方にある、移載ずれが生じたFOUP3は、一の把持部41Aにより把持され、自動搬送装置130より右方にある、移載ずれが生じたFOUP3は、二の把持部41Bにより把持されるように、自動搬送装置420を構成してもよい。このように、複数の移動動作を行う場合に、1つの把持部41だけで行う場合よりも迅速に、移載ずれが生じたFOUP3へ到達し、移動動作を実行することが可能である。
尚、本実施形態によれば、スライド部43は、常時、マニュアル搬送装置40におけるレールR2に対して組み付けられているが、自動搬送装置30による保管庫内搬送動作が可能な場合には取り外しておき、作業員によるFOUP3の持ち運びが余儀なくされる場合にのみ、取り付けるようにしても構わない。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う保管庫もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。