JP2010531669A - シアノバクテリアによるバイオプラスチックおよびバイオマテリアルの生産のための試薬および方法 - Google Patents

シアノバクテリアによるバイオプラスチックおよびバイオマテリアルの生産のための試薬および方法 Download PDF

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Abstract

本発明はシアノバクテリアからバイオマテリアルを生産するための試薬および方法を提供する。

Description

本発明は、シアノバクテリアによるバイオプラスチックおよびバイオマテリアルの生産のための試薬および方法に関する。
相互参照
本願は、2007年6月27日に出願された米国特許出願シリアル番号第60/937,400号の優先権を主張するものであり、前記出願は参照により全体が本願に組み込まれる。
今後数十年の間に、再生可能エネルギーは、ポリマーなどの石油化学製品を基にした工業製品に徐々に取って代わると予想される。生体高分子からのプラスチックの生産は、石油由来の再生不能物質が再生可能資源に置き換わり、その結果として確実な(国内)供給、農村共同体での雇用、持続可能な生産、温室効果ガス産出量の低下、および価格競争力がもたらされる可能性を提示している。
地球環境問題意識の高まりに応じて、PHA(ポリヒドロキシアルカノエート(PHA))は、非生物分解性のポリマーの潜在的代替品として多大な関心を集めている。現在の石油および天然ガスの価格上昇はプラスチック市場に反映されており、再生可能なバイオプラスチックの競争力を高めている。しかしながら、細菌発酵に基づいたバイオプラスチック生産の原料価格はさらに上昇している。
いくつかの報告によれば、細菌発酵によるバイオプラスチックの生産原価は、特に、肥料、殺虫剤、輸送、および工程エネルギーの生成のために消費されるエネルギーおよび材料を考慮に入れると、原料および化石燃料エネルギーを必要とせず環境からCOを利用する光合成で生産されるプラスチックの生産原価よりも高い。したがって、独自の固定炭素供給源を生成する独立栄養性のシアノバクテリアから作られる生体高分子は、発酵による生体高分子の生産よりも絶えず大きい利点を有すると思われる。
1つの態様では、本発明はバイオマテリアルを生産する方法を提供し、前記方法は、
(a)Slr1125発現が欠損しているシアノバクテリア宿主細胞を培養する工程、
(b)前記シアノバクテリア宿主細胞を採取する工程、および
(c)採取されたシアノバクテリア宿主細胞からバイオマテリアルを調製する工程
からなる。
本発明の方法は、例えば、既知のシアノバクテリア宿主細胞を使用しても従来は不可能であった大量のバイオマテリアルを生産するために使用することができる。1つの実施形態では、シアノバクテリア宿主細胞はSlr1125の発現を低減または除去するように遺伝子操作されている。別の実施形態では、バイオマテリアルは、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)およびシアノフィシンからなる群から選択されたバイオマテリアルを含む。さらなる実施形態では、シアノバクテリア宿主細胞は、シネコシスティス(Synechocystis )、アルスロスピラ・マキシマ(Arthrospira maxima)、シネココッカス(Synechococcus )、トリコデスミウム(Trichodesmium )、およびクロコスファエラ(Crocosphaera)からなる群から選択される。別の実施形態では、シアノバクテリア宿主細胞はシネコシスティス属細菌PCC6803細胞である。様々なさらなる実施形態では、シアノバクテリア宿主細胞はslr1125遺伝子を欠失させるように遺伝子組換え操作されており、シアノバクテリア宿主細胞はNAD合成酵素またはNAD+リン酸化酵素のうち少なくともいずれか一方を過剰発現するように遺伝子操作されており;シアノバクテリア宿主細胞はシアノフィシン産生が欠損しており;シアノバクテリア宿主はSlr1993発現が欠損しており;シアノバクテリア宿主細胞はシアノフィシナーゼ(cyanophycinase)発現が欠損しており、かつ、シアノバクテリア宿主細胞はSlr1994、Slr1829およびSlr1830のうち1つ以上の発現を低減または除去するように遺伝子組換えされる。
さらなる態様では、本発明は、単離された組換え核酸であって、
(a)誘導型のシアノバクテリアプロモータを含む第1の核酸と、
(b)第1の核酸に作動可能なように連結された第2の核酸とを含み、第2の核酸は配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8からなる群から選択されたポリペプチドのアミノ酸配列をコードする標的核酸配列に相補的な抑制性の核酸をコードすることを特徴とする、核酸を含む。本発明の単離核酸は、例えば本発明の方法によってバイオマテリアルを生産する際に有用な、例えばシアノバクテリア細胞におけるSlr1125発現のダウンレギュレーションのために、使用することができる。1つの実施形態では、抑制性の核酸はアンチセンス核酸を含む。別の実施形態では、標的核酸配列は配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7からなる群から選択される。さらなる実施形態では、誘導型のシアノバクテリアプロモータは配列番号9を含む。さらなる実施形態では、単離核酸は、配列番号10、11および12からなる群から選択されたNAD合成酵素タンパク質をコードする第3の核酸をさらに含む。別の実施形態では、第3の核酸は、配列番号13、14、または15の、NAD合成酵素をコードする配列で構成される。別の実施形態では、本発明の単離核酸は、複製および発現のためのベクター中に含まれて提供される。
別の態様では、本発明は、本発明による単離核酸または発現ベクターを含む組換え宿主細胞を提供する。そのような宿主細胞は、例えば、本発明の単離核酸を大量に生産するために、本発明の方法を実行するために、使用することができる。1つの実施形態では、宿主細胞はシアノバクテリア宿主細胞であり、別の実施形態では、組換え宿主細胞は細菌宿主細胞である。さらなる実施形態では、組換えシアノバクテリア宿主細胞は、シネコシスティス(Synechocystis )、アルスロスピラ・マキシマ(Arthrospira maxima)、シネココッカス(Synechococcus )、トリコデスミウム(Trichodesmium )、およびクロコスファエラ(Crocosphaera)からなる群から選択される。別の実施形態では、組換えシアノバクテリア宿主細胞はシネコシスティスのPCC6803細胞である。さらなる実施形態では、組換え核酸はシアノバクテリアゲノムの染色体に組み込まれる。様々なさらなる実施形態では、シアノバクテリア宿主細胞はslr1125遺伝子を欠失させるように遺伝子組換え操作されており;シアノバクテリア宿主細胞はNAD合成酵素またはNAD+リン酸化酵素のうち少なくともいずれか一方を過剰発現するように遺伝子操作されており;シアノバクテリア宿主細胞はシアノフィシン産生が欠損しており;シアノバクテリア宿主はSlr1993の発現が欠損しており;シアノバクテリア宿主細胞はシアノフィシナーゼ発現が欠損しており、かつ、シアノバクテリア宿主細胞はSlr1994、Slr1829およびSlr1830のうち1つ以上の発現を低減または除去するように遺伝子組換え操作される。
さらなる態様では、本発明は、組換えシアノバクテリア宿主細胞であって、
(a)Slr1125発現の欠損と;
(b)遺伝子組換えにより生じた以下の表現型、すなわち
(i)シアノフィシン産生の欠損;
(ii)ポリ‐β‐ヒドロキシアルカノエート(PHA)産生の欠損;
(iii)NAD合成酵素の過剰発現;
(iv)NAD+リン酸化酵素の過剰発現;
(v)シアノフィシン合成酵素発現の欠損;
(vi)Slr1993発現の欠損;
(vii)シアノフィシナーゼ発現の欠損;
(viii)PHB産生の欠損;
(ix)Slr1994発現の欠損;
(x)Slr1829発現の欠損;および
(xi)Slr1830発現の欠損
のうち1つ以上とを有する宿主細胞を提供する。
そのような宿主細胞は、例えば、本発明の方法を実行するために使用することができる。1つの実施形態では、組換えシアノバクテリア宿主細胞はSlr1125の発現を低減または除去するように遺伝子操作されている。別の実施形態では、シアノバクテリアは、シネコシスティス(Synechocystis )、アルスロスピラ・マキシマ(Arthrospira maxima)、シネココッカス(Synechococcus )、トリコデスミウム(Trichodesmium )、およびクロコスファエラ(Crocosphaera)からなる群から選択される。さらなる実施形態では、組換えシアノバクテリア宿主細胞はシネコシスティス属細菌のPCC6803細胞である。
本発明のこれらの態様および実施形態について以下により詳細に述べるが、各々の態様および実施形態は、本明細書の文脈がそうでないことを明白に示している場合を除き、組み合わせることが可能である。
シネコシスティスにおけるPHB生合成の流れ図。 例えばPHA生産用の安定にトランスフェクションされたシアノバクテリア菌株を作出するために使用可能な、例示の組換え核酸構築物を示す概略図。 安定なシアノフィシン産生シアノバクテリア菌株の作出に有効な組換え核酸の概略図。 3‐ヒドロキシブチレートの生産に適した組換え核酸の概略図。
発明の詳細な説明
本願においては、別途記載のない限り、利用される技法は、いくつかの良く知られた参照文献すなわち「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」(Sambrookら、1989年、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press))、「Gene Expression Technology」(D. Goeddel編、Methods in Enzymology第185巻、1991年、米国カリフォルニア州サンディエゴ所在のアカデミックプレス(Academic Press))、Methods in Enzymologyの「Guide to Protein Purification」(M.P. Deutshcer編、(1990)アカデミックプレス社(Academic Press, Inc.));「PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications」(Innisら、1990年、米国カリフォルニア州サンディエゴ所在のアカデミックプレス)、「Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique」第2版(R.I. Freshney、1987年、ニューヨーク州ニューヨーク所在のリス・インコーポレイテッド(Liss, Inc.))、および「Gene Transfer and Expression Protocols」、p.109〜128、E.J. Murray編、米国ニュージャージー州クリフトン所在のヒューマナ出版社(The Humana Press Inc.))のうちいずれかにおいて見出すことができる。
1つの態様では、本発明は組換え核酸を提供し、前記組換え核酸は、
(a)誘導型のシアノバクテリアプロモータを含む第1の核酸と、
(b)第1の核酸に作動可能なように連結された第2の核酸とを含み、第2の核酸は、配列番号2、配列番号4、配列番号6および配列番号8からなる群から選択された1以上のポリペプチドのアミノ酸配列をコードする標的核酸配列に相補的な抑制性の核酸をコードすることを特徴とする。
本発明のこの第1の態様の組換え核酸を、例えば、Slr1125(またはそのオーソログ)の産生を制御するために組換えシアノバクテリアを生産するための構築物として使用することができる。Slr1125タンパク質は、ミクソキサントフィルの生合成に関与するカロチノイドグリコシルトランスフェラーゼであり、本発明の組換え核酸は、例えば、少なくとも部分的には、Slr1125のダウンレギュレーションによる、カロチノイド生合成/分解経路の中断に起因する、顆粒形成および生体高分子産生への細胞の変換の誘導に基づいて、シアノバクテリア中で従来可能であったよりも大量のバイオプラスチック(例えば以下に議論されるようなPHBを含むポリヒドロキシアルカノエート(「PHA」)など)およびシアノフィシンを生産するために使用することができる。
配列番号2はシネコシスティス属細菌PCC6803のSlr1125のアミノ酸配列である。繊維状シアノバクテリアであるトリコデスミウム・エリトラウム(Trichodesmium erythraeum)IMS101は、アミノ酸レベルで同一性55%のSlr1125オーソログ(配列番号4)を有し、クロコスファエラ・ワストニイ(Crocosphaera watsonii)WH8501(かつてはシネコシスティス属細菌WH8501として知られていた)のSlr1125は、2つのオープンリーディングフレーム(ZP_00177831(配列番号6)およびZP_00174102(配列番号8))に分割されているようである。
したがって、1つ以上のSlr1125オーソログをコードする核酸配列に相補的な抑制性の核酸をコードする第2の核酸を組み入れた組換え核酸も、シアノバクテリア中で、従来可能であったよりも大量のバイオプラスチックを生産するために使用することができる。
本明細書で使用されるように、「組換え核酸」とは、ゲノム配列中またはcDNA配列中において正常時にその周囲にある核酸配列から取り出されているものである。そのような組換え核酸配列は、抑制性の核酸の発現を促進するのに有用な追加の配列、またはその他任意の有用なシグナルを含むことができる。
用語「作動可能なように連結された」とは、単一の組換え核酸における第1および第2の核酸のつながりであって、第2の核酸の発現が第1の核酸によって活性化されるようなつながりを指す。したがって、第1の核酸が第2の核酸の発現に影響を及ぼすことができる場合に、第1の核酸は第2の核酸に作動可能なように連結されている。
本明細書中で使用されるように、用語「発現」とは、本発明の核酸フラグメントに由来するセンスRNA(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写を指す。発現とはまた、mRNAのポリペプチドへの翻訳を指す場合もある。
用語「抑制性の核酸」とは、前記核酸の標的核酸配列の発現(転写または翻訳)、または発現産物(RNAまたはタンパク質)の蓄積を阻害することができる任意の種類の核酸を意味する。そのような抑制性の核酸には、限定するものではないが、アンチセンス核酸、低分子干渉核酸、リボザイム、および標的核酸に結合するアプタマーが挙げられる。
「アンチセンスRNA」とは、標的の一次転写産物またはmRNAの全体または一部に相補的なRNA転写物、および標的遺伝子の発現を阻止するRNA転写物を指す(米国特許第5,107,065号明細書)。アンチセンスRNAの相補性は、特定の遺伝子転写物の任意の部分、すなわち5’非コード配列、3’非コード配列、イントロン、またはコード配列に対するものであってよい。「機能的なRNA」とは、アンチセンスRNA、リボザイムRNA、または翻訳されないが細胞プロセスに対して影響を有する他のRNAを指す。「センス」RNAとは、mRNAを含み、したがって細胞により翻訳されてタンパク質を生じることができるRNA転写物を指す。
「アンチセンス阻害」とは、標的タンパク質の発現を抑制することができるアンチセンスRNA転写物の産生を指す。「共抑制」とは、同一またはほぼ同様の外来または内因性の遺伝子の発現を抑制することができるセンスRNA転写物の産生を指す(米国特許第5,231,020号明細書)。
用語「相補的」とは、互いにハイブリダイズすることが可能なヌクレオチド塩基間の関係について述べるために使用される。例えば、DNAに関しては、アデノシンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。抑制性の核酸は、標的核酸の発現産物の発現または蓄積を阻害するのに十分な大きさの領域にわたって、標的核酸に相補的である。1つの実施形態では、抑制性の核酸は、標的核酸のうち少なくとも20個の連続したヌクレオチドに相補的であり、様々なさらなる実施形態では、抑制性の核酸は、標的核酸のうち少なくとも30個、50個、100個、250個、もしくは500個の連続したヌクレオチドに相補的であるか、または標的核酸の全核酸配列に相補的である。
「プロモータ」とは、第2の核酸の発現を制御することができるDNA塩基配列を指す。一般に、第2の核酸は誘導型プロモータの3’側に配置されるが、第1および第2の核酸の作動可能な連結を可能にする任意の配置構成を使用することができる。「誘導型」とは、そのプロモータが第2の核酸の発現を構成的には活性化しないが調節された発現を可能にすることを意味する。誘導型プロモータはその全体が天然の遺伝子に由来するものでもよいし、自然界で見つかった異なるプロモータに由来する異なる要素で構成されてもよいし、またはさらに合成DNAセグメントを含むものでもよい。当然ながら、ほとんどの場合は調節配列の正確な境界は完全には定義されていないので、様々な長さのDNAフラグメントが同一のプロモータ活性を有する場合がある。
用語「シアノバクテリアプロモータ」とは、前記プロモータがシアノバクテリア(例えばシネコシスティス、トリコデスミウム、およびクロコスファエラ)の中で第2の核酸の発現を導くことができることを意味し、シアノバクテリアに由来するプロモータに限定されない。
この第1の態様の1つの実施形態では、標的核酸配列は、それぞれ配列番号2、4、6および8をコードするDNAである配列番号1、配列番号3、配列番号5および配列番号7から選択された核酸を含むかまたは前記核酸で構成されている。
当業者には当然のことであるが、抑制性の核酸は、標的核酸配列との十分な同一性を有する限りは様々なシアノバクテリア細菌種において使用することができる。好ましい実施形態では、抑制性の核酸の由来となった菌株が使用される。原核生物では、遺伝子はその転写の間に翻訳されるので、RNAは通常、一方では転写酵素と結合し、他方では翻訳のためにリボソームが結合している。したがって、さらなる実施形態では、完全長のアンチセンスRNA分子が使用されて、遊離状態のRNA分子への完全な結合だけでなく、転写‐翻訳過程においてRNA分子が少しでも露出した部分に結合することができるようになっている。これらの実施形態は、最大限の抑制特異性をも確実にする。
第1の核酸は誘導型シアノバクテリアプロモータを含むかまたは前記プロモータで構成されている。本明細書中で使用されるように、「誘導型」とは、プロモータからの抑制性の核酸の発現が調節可能であること、したがって前記発現は、前記プロモータが機能する場である細胞に適切な刺激を加えることによって、所望の通りに増大または減少させることができることを意味する。シアノバクテリアにおいて複製可能な任意の誘導型プロモータを使用することができるが、シネコシスティス、アルスロスピラ・マキシマ、トリコデスミウムおよびクロコスファエラからなる群から選択されたシアノバクテリアにおいて誘導可能なものが好ましい。1つの実施形態では、誘導型シアノバクテリアプロモータは、配列番号9のプラストシアニンプロモータ(銅によって誘導可能)、またはその機能的な等価物を含む。他の実施形態では、誘導型シアノバクテリアプロモータはUS20040157331またはUS20020164706に開示されているような誘導型プロモータを含むかまたは前記プロモータで構成される。
本発明のこの態様の組換え核酸は、所与の適用に応じて所望されるさらなる機能的構成成分を含むことができる。例えば、構築物は、対象とする発現産物をコードする1つ以上の追加の核酸を含むことが可能であり、そのような追加の核酸は、誘導型プロモータに作動可能なように連結されてもよいし、組換え核酸の中に存在する1以上の別のプロモータに作動可能なように連結されてもよい。1つのそのような実施形態では、組換え核酸は、配列番号10(シネコシスティス)、11(クロコスファエラ・ワストニイ WH8501)、または12(トリコデスミウム・エリトラウム IMS101)のアミノ酸配列を含むかまたは前記アミノ酸配列で構成されるNAD合成酵素タンパク質(Slr1691)をコードする第3の核酸をさらに含む。本発明のこの第1の態様のさらなる実施形態では、第3の核酸は、配列番号13(シネコシスティス)、14(クロコスファエラ・ワストニイ WH8501)、または15(トリコデスミウム・エリトラウム IMS101)のNAD合成酵素コード配列を含むかまたは前記配列で構成される。
本発明のこの第1の態様の別の実施形態では、組換え核酸は、slr1691とともに、配列番号16(シネコシスティス属細菌PCC6803)、18(クロコスファエラ・ワストニイ WH8501)、または20(トリコデスミウム・エリトラウム IMS101)のアミノ酸配列を含むかまたは前記アミノ酸配列で構成される推定上のNAD+リン酸化酵素Sll1415をコードする第4の核酸をさらに含む。さらなる実施形態では、第4の核酸は、配列番号17(シネコシスティス属細菌PCC6803)、19(クロコスファエラ・ワストニイ WH8501)、または21(トリコデスミウム・エリトラウム IMS101)のNAD+リン酸化酵素コード配列を含むかまたは前記配列で構成される。
PHA生合成は補因子としてNADPHを必要とし、したがってNAD生合成の増加がPHA産生を増強することも考えられる。したがって、本発明は、NAD合成酵素またはNAD+リン酸化酵素のうち少なくともいずれか一方をPHA生合成の誘導と協調して過剰発現させることにより、PHA生合成に必要な補因子の利用可能性を増大させるために、NAD合成酵素またはNAD+リン酸化酵素のうち少なくともいずれか一方のコピーを誘導型プロモータ(例えば銅制御型プロモータ)の前に導入することが可能なシアノバクテリア組換え体を提供する。
本発明の第1の態様の核酸は、シアノバクテリアゲノムにおける二重の相同組換えを促進するために「組換え用配列(recombination sequence)」をさらに含むことができる。本明細書中で使用されるように、「二重の相同組換え」とは、2つのDNA分子の間のヌクレオチド配列が同一の2つの部位におけるDNAフラグメントの交換を意味する。したがって、「組換え用配列」は、ゲノム内への組換えを行うべき領域に隣接する2つの核酸を含み、前記組換え用配列は、本発明の組換え核酸を挿入するための標的とされるシアノバクテリアゲノム中の配列と同一である。例えば、Mes and Stal, Gene. 2005 Feb 14;346:163-71;およびMes and Doeleman,. J Bacteriol. 2006 Oct;188(20):7176-85を参照されたい。1つの実施形態では、挿入のためのシアノバクテリアゲノム標的の領域は、非タンパク質コード領域であってよいが、他の実施形態では、シアノバクテリアゲノムの標的領域を、分断すべきタンパク質コード遺伝子とすることにより、その分断されるタンパク質コード遺伝子を発現できないが本発明の組換え核酸を発現する突然変異シアノバクテリアを生成させる能力が提供される。これらの実施形態のさらなる実施例を以下に提供する。
この第1の態様の任意の実施形態の組換え配列は、選択された生物における複製を促進するための配列をさらに含むことができる。そのような配列は当分野において良く知られている。例えば、そのような複製能力を備えた市販のベクター(プラスミドベクターまたはウイルスベクター)を使用することが可能であり、本発明の組換え核酸を前記ベクター内にクローニングすることができる。そのような複製能力を有するベクターは、例えば、大量の本発明の組換え核酸を生産するのに有用である。選択される生物は、組換え核酸の複製に有用であろう任意の生物であってよく、例えば大腸菌が挙げられるがこれに限定されない。
本発明の第1の態様の組換え核酸、および本発明の第1の態様の組換え核酸を含むベクターは、例えばベクターを発現している宿主細胞の選択を容易にするために、選択可能なマーカーをコードする核酸配列をさらに含む場合もある。前記組換え核酸およびベクターは、以下により詳細に議論するような他のプロモータ配列および他のコード核酸またはポリペプチド、ならびに適切な制御シグナル(すなわちリーダーシグナル、転写シグナルおよび翻訳停止シグナル)、および組換え核酸の特定領域に、ライゲーションを容易にする特定の制限部位を導入するためのポリリンカーを包含することができる。
本発明の第1の態様のこれらの実施形態は、本明細書の文脈からそうでないことが明白に示される場合を除き、組み合わせることが可能である。
第2の態様では、本発明は、(a)本発明の第1の態様の組換え核酸が染色体に組み込まれているか、(b)本発明の第1の態様の組換え核酸を含む複製能力を有するベクターでトランスフェクションされているか、のうち少なくともいずれか一方である組換え宿主細胞を提供する。そのような組換え宿主細胞は原核生物でも真核生物でもよいが、原核生物の宿主細胞が好ましい。例として、例えば大腸菌での発現を可能にするために構築された組換え発現ベクターでトランスフェクションされた組換え宿主細胞を、本発明の組換え発現ベクターおよび組換え核酸の大量生産に使用することができる。二重の相同組換えについては上記に議論されている。組換えシアノバクテリア宿主細胞、例えば、限定するものではないが、クロロコックム目(例えばシネコシスティスおよびシネココッカス(Synechococcus )、好ましくはシネコシスティス属細菌PCC6803およびシネココッカスMA19)、トリコデスミウム、およびクロコスファエラからなる群から選択されるシアノバクテリア、ならびに以下の実施例において開示する特定の菌株を、例えば、以下により詳細に議論するようにして大量のバイオプラスチックを生産するために使用することができる。原核細胞および真核細胞への発現ベクターのトランスフェクションは、当分野で既知の任意の技術、例えば、限定するものではないが、標準的な細菌形質転換、リン酸カルシウム共沈法、エレクトロポレーション、またはリポソーム介在型、DEAEデキストラン介在型、ポリカチオン介在型、もしくはウイルス介在型のトランスフェクションによって行うことができる(例えば、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」(Sambrookら、1989年、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press));「Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique」第2版(R.I. Freshney、1987年、ニューヨーク州ニューヨーク所在のリス・インコーポレイテッド(Liss, Inc.))を参照されたい)。組換えシアノバクテリア宿主細胞を生産するための二重の相同組換えについては上記に議論されているが、Koksharova and Wolk, Appl Microbiol Biotechnol. 2002 Feb;58(2): 123-37、およびGolden, Methods Enzymol. 1988;167:714-27も参照されたい。
本発明の第2の態様の組換えシアノバクテリアは大量のPHAおよびシアノフィシンを産生する。場合によっては、例えば対象とする産物の単離を容易にするために、上記産物のうち一方のみを大量に生産することが望ましいかもしれない。これは、本発明の第2の態様の組換えシアノバクテリアを、上記2つの主要産物のうち一方のみを産生するようにさらに改変することにより、成し遂げることができる。したがって、上記実施形態のうちいずれかについての様々なさらなる実施形態では、本発明の第2の態様の組換えシアノバクテリア細胞はさらに、
(a)シアノフィシン発現、および
(b)ポリ‐β‐ヒドロキシアルカノエート(PHA)発現
のうちの一方が欠損していてもよい。
したがって、本発明の第2の態様の、一組のさらなる実施形態においては、本発明による組換えシアノバクテリア宿主細胞はさらにシアノフィシンの発現が欠損している。本発明の第2の態様の、別の一組のさらなる実施形態においては、いずれの組換え宿主細胞もさらにPHA発現が欠損している。本明細書中で使用されるように、「PHA」(本明細書中では「バイオプラスチック」とも呼ばれ、生体起源のポリマーである)には、操作されているシアノバクテリア中の任意のPHA(例えば3‐ヒドロキシブチリルCoAおよびポリ(3‐ハイドロキシブチレート)(「PHB」)が挙げられるがこれらに限定されない)が含まれる。
列挙した欠損を作出するための任意のメカニズム、例えば、限定するものではないが、二重の相同組換えを使用する遺伝子ノックアウト、およびシアノフィシン発現に関与する遺伝子(例えば、限定するものではないがシアノフィシン合成酵素)またはPHA発現に関与する遺伝子(例えば、限定するものではないがPHA合成酵素)(典型的な遺伝子は以下に議論されている)の発現産物に相補的な抑制性の核酸に作動可能なように連結されたプロモータを備えた組換え核酸の構築物を使用することが可能である。抑制性の核酸が使用される場合、作動可能なように連結されるプロモータは構成的プロモータでも誘導型プロモータでもよく、いずれの場合も、組換え核酸は本発明の第1の態様の組換え核酸とともに単一の構築物として連結されてもよいし、本発明の第1の態様の組換え核酸とは分離した組換え核酸として構築されてもよい。
1つの実施形態では、本発明の第2の態様の組換え宿主細胞はシアノフィシン発現が欠損しており、この菌株はPHAの生産に特に有用である。別の実施形態では、シアノフィシン発現の欠損は、前記シアノバクテリアにおけるシネコシスティス由来のシアノフィシン合成酵素遺伝子(配列番号22)の欠損に起因する。これらの実施形態の実施例は以下に提供される。
別例として、本発明の第2の態様の組換え宿主細胞は、シネコシスティスのシアノフィシン合成酵素(配列番号23)(Slr2002)のアミノ酸配列をコードする標的核酸配列に相補的な抑制性の核酸をコードする核酸に作動可能なように連結されたプロモータ配列を含む核酸構築物を有する発現ベクターをさらに含む。さらなる実施形態では、抑制性の核酸は、配列番号22(slr2002)の核酸配列のうち少なくとも20個の連続したヌクレオチドを含むアンチセンス転写物である。様々なさらなる実施形態では、アンチセンス転写物は、配列番号22のうち少なくとも連続した30個、50個、100個、250個、500個、または全核酸配列を含む。好ましい実施形態では、アンチセンス転写物をコードする核酸は、シアノバクテリアの誘導型プロモータに作動可能なように連結される。
別の実施形態では、本発明の第2の態様の組換えシアノバクテリア細胞はPHA発現が欠損しており、PHA発現の欠損は、slr1993遺伝子(配列番号24;シネコシスティス由来)の欠失に起因する。この実施形態は、シアノフィシンの生産に特に有用である。この実施形態の実施例は以下に提供される。別例として、組換え宿主細胞は、配列番号25(Slr1993)のアミノ酸配列をコードする標的核酸配列に相補的な抑制性の核酸をコードする核酸に作動可能なように連結されたプロモータ配列を含む核酸構築物を有する発現ベクターをさらに含む。さらなる実施形態では、抑制性の核酸は、配列番号24の核酸配列のうち少なくとも20個の連続したヌクレオチドを含むアンチセンス転写物である。様々なさらなる実施形態では、アンチセンス転写物は、配列番号24のうち少なくとも連続した30個、50個、100個、250個、500個、または全核酸配列を含む。好ましい実施形態では、前記アンチセンス転写物をコードする核酸は、上記に議論されたプラストシアニンプロモータのようなシアノバクテリアの誘導型プロモータに作動可能なように連結される。
slr1125突然変異およびPHA欠損突然変異が組み合わさっている宿主細胞は、PHAが十分に発現されないので、例えばシアノフィシンの生産/単離に使用することができる。さらなる実施形態では、これらの宿主細胞は、第2の抑制性の核酸であってその発現が誘導型プロモータの制御下にあり、シアノフィシン顆粒(cyanophycin granule)を分解するシアノフィシナーゼ(Slr2001;シネコシスティス由来の配列番号26を参照)をコードする標的核酸に相補的である第2の抑制性の核酸をさらに含んでもよい。この実施形態では、シアノフィシナーゼを標的とする第2の抑制性の核酸、およびslr1125を標的とする抑制性の核酸が、いずれも同じ誘導型プロモータの制御下にあることが好ましい。第2の抑制性の核酸は、配列番号27の核酸配列のうち少なくとも20個の連続したヌクレオチドを含むアンチセンス転写物であってもよい。様々なさらなる実施形態では、アンチセンス転写物は、配列番号27のうち少なくとも連続した30個、50個、100個、250個、500個、または全核酸配列を含む。別例の実施形態では、シアノフィシナーゼの欠損は、slr2001遺伝子(配列番号27)またはそのオーソログの欠失に起因する。
シネコシスティスにおけるPHB経路
ポリヒドロキシブチレート(PHB)は、シアノバクテリアを含む多くの細菌によって産生される細胞内貯蔵物質である。シネコシスティスでは、アセチルCoAからPHBへの変換には3つの酵素すなわち:β‐ケトチオラーゼ(Slr1993)、アセトアセチルCoAレダクターゼ(Slr1994)およびPHBポリメラーゼ(Slr1829およびSlr1830;これらの2つのORFはPHBヘテロダイマーを形成する2つのポリペプチドをコードし、PHBポリメラーゼ活性を完全に除去するには一方または両方の欠如で十分である)が関与する。2つのアセチルCoA基がβ‐ケトチオラーゼによって縮合されてアセトアセチルCoAを形成する。その後、アセトアセチルCoAはNADP特異的レダクターゼによって還元されて、PHBポリメラーゼの基質であるD(−)‐β‐ヒドロキシブチリルCoAを形成する。
さらなる実施形態では、本発明の第2の態様の組換えシアノバクテリアを、他のPHA(PHBなど)生合成経路の遺伝子の発現が欠損して、その結果所望のPHA経路最終生成物が生じる状態にすることができる。これらの実施形態を、好ましくはシアノフィシン発現が阻害される実施形態と組み合わせて、その結果所望のPHAを産生する組換えシアノバクテリアを得ることができる。シネコシスティスにおけるPHB生合成の流れ図は図1に提示されている。
このように、様々なさらなる実施形態では、本発明の第2の態様の組換えシアノバクテリアはさらに、
Slr1994(配列番号28)、
Slr1829(配列番号29)、および
Slr1830(配列番号30)
のうち1つ以上の発現が欠損するようになされる。(Taroncher-Oldenburg et al, Appl Environ Microbiol. 2000 Oct;66(10):4440-8; Hein et al., Arch Microbiol. 1998 Sep;170(3):162-70)
slr1994発現が欠損するようになされた細胞は、例えば、一例においては他の細菌が他の所望の化学物質を産生するための供給原料として有用なアセトアセチルCoAを生産するために使用することが可能であり、slr1829およびslr1830のうち一方または両方が欠損するようになされたものは、例えば、他の細菌のための供給原料として、または生物燃料として直接使用するために有益な3‐ヒドロキシブチリルCoAまたは3‐ヒドロキシブチリルモノマーのうち少なくともいずれか一方を生産するために使用可能なポリ(3‐ヒドロキシブチリルCoA)を生産するために使用することができる。
1つの実施形態では、発現の欠損は、シアノバクテリアにおける関連遺伝子(配列番号31、32、および/または33)の欠失に起因する。この実施形態の実施例は以下に提供される。別例として、本発明の第2の態様の組換えシアノバクテリアは、配列番号28、配列番号29、および配列番号30のうち1つ以上のアミノ酸配列をコードする標的核酸配列に相補的な抑制性の核酸をコードする核酸に作動可能なように連結されたプロモータ配列を含む核酸構築物を有する発現ベクターをさらに含む。さらなる実施形態では、抑制性の核酸は、配列番号31、配列番号32、および配列番号33のうち1つ以上の核酸配列のうち少なくとも20個の連続したヌクレオチドを含むアンチセンス転写物である。様々なさらなる実施形態では、アンチセンス転写物は、配列番号31、配列番号32、および配列番号33のうち少なくとも連続した30個、50個、100個、250個、500個、または全核酸配列を含む。好ましい実施形態では、アンチセンス転写物をコードする核酸は、上記に議論されたプラストシアニンプロモータのようなシアノバクテリアの誘導型プロモータに作動可能なように連結される。
別例の実施形態では、本発明の第2の態様の組換えシアノバクテリア細胞は、slr1993遺伝子(配列番号24)またはそのオーソログの欠失に起因するPHA発現の欠損を有している。この実施形態の一実施例が以下に提供される。別例として、組換え宿主細胞は、配列番号25のアミノ酸配列をコードする標的核酸配列に相補的な抑制性の核酸をコードする核酸に作動可能なように連結されたプロモータ配列を含む核酸構築物を有する発現ベクターをさらに含む。さらなる実施形態では、抑制性の核酸は、配列番号24の核酸配列のうち少なくとも20個の連続したヌクレオチドを含むアンチセンス転写物である。様々なさらなる実施形態では、アンチセンス転写物は、配列番号24のうち少なくとも連続した30個、50個、100個、250個、500個、または全核酸配列を含む。好ましい実施形態では、アンチセンス転写物をコードする核酸は、上記に議論されたプラストシアニンプロモータのようなシアノバクテリアの誘導型プロモータに作動可能なように連結される。
下記は、本発明の範囲内にある組換え核酸構築物の具体例と、そのような構築物の具体的な用法である。
図2は、例えばPHA生産用の安定にトランスフェクションされたシアノバクテリア菌株を作出するために使用することができる、例示の構築物の概略図を提供している。前記構築物は、例えば大腸菌において増殖させるための任意の標準的なベクターにクローニング可能である。本発明の宿主細胞とともに使用するのに適した、任意の抗生物質耐性マーカー、例えば、限定するものではないがクロラムフェニコール耐性マーカーを使用することができる。
ボックスはそれぞれDNAセグメントを表す。slr2002の「N末端」および「C末端」は、ゲノムのslr2002遺伝子との二重の相同組換えのための上流部位および下流部位の略称である。Slr2002は上記に議論されたシアノフィシン合成酵素遺伝子(配列番号22)である。当業者には当然のことであるが、600bpの、slr2002の5’配列(配列番号34)またはslr2002の3’配列(配列番号35)を使用することは、例示である。様々な実施形態では、200ヌクレオチドまたはそれ以上を使用することが可能であり、ヌクレオチド数の大きいほうが好ましい。
銅制御型のpetEプロモータに作動可能なように連結されたアンチセンスslr1125をコードする核酸を含む核酸構築物を、slr2002相同組換え用配列の内側に挿入し、前記構築物を用いてシアノバクテリアを二重の相同組換えによりトランスフェクションすることにより、結果として、銅の存在下で大量のPHAを産生するがシアノフィシン顆粒を合成することはできず、従ってシアノフィシンの妨害を伴わずに宿主細胞からPHAのみを生産かつ精製することが容易な組換えシアノバクテリアが得られる。
図3は、純粋なシアノフィシン生産のための安定なシアノフィシン産生株の作出に役立つ、本発明による組換え核酸の概略図を提供している。この場合、組換え用配列はslr1993(PHA特異的β‐ケトチオラーゼ遺伝子)(配列番号24)に由来し、したがって二重の相同組換えによりこの構築物でトランスフェクションされた組換えシアノバクテリアはこの遺伝子が欠失しており、PHAを合成しない。前記構築物は、それぞれが銅制御型のpetEプロモータに作動可能なように連結された、アンチセンスslr1125とさらにアンチセンスslr2001とをコードする核酸をさらに含み、slr2001はシアノフィシン顆粒を分解するシアノフィシナーゼの遺伝子である(上記参照)。
したがって、細胞を銅に曝露すると前記構築物からシアノフィシナーゼをダウンレギュレーションするアンチセンスの発現が生じることになり、同時にアンチセンスslr1125は、PHB生合成およびシアノフィシン分解の不在下でシアノフィシン顆粒の形成を引き起こすことになる。
図4は、3‐ヒドロキシブチレートの生産に適した本発明の組換え核酸の概略図を示す。この場合、組換え用配列はslr1829(ポリ(3‐ヒドロキシアルカノエート合成酵素遺伝子)(配列番号32))に由来し、したがって、二重の相同組換えによりこの構築物でトランスフェクションされた組換えシアノバクテリアはこの遺伝子が欠失しており、PHBを合成しない。
前記構築物は、それぞれが銅制御型のpetEプロモータに作動可能なように連結された、アンチセンスslr1125と、さらにアンチセンスslr2002とをコードする核酸をさらに含み、slr2002はシアノフィシン合成酵素の遺伝子(配列番号22)である。したがって、細胞を銅に曝露すると前記構築物からシアノフィシン発現をダウンレギュレーションするアンチセンスの発現が生じることになり、同時にアンチセンスslr1125は、機能的なslr1829遺伝子の欠如により重合しないモノマーとして3‐ヒドロキシブチリル酸の蓄積を引き起こすことになる。
本明細書の文脈がそうでないことを明白に示している場合を除き、本発明の第2の態様のこれらの実施形態を望み通りに組み合わせることも、本発明の第1の態様の様々な実施形態と組み合わせることも可能である。
第3の態様では、本発明は、バイオマテリアルを生産する方法であって、
(a)Slr1125発現が欠損しているシアノバクテリア宿主細胞を培養する工程、
(b)前記シアノバクテリア宿主細胞を採取する工程、および
(c)採取されたシアノバクテリア宿主細胞からバイオマテリアルを調製する工程
からなる方法を提供する。本発明の方法は、例えば、既知のシアノバクテリア宿主細胞を使用しても従来は不可能であった量のバイオマテリアルを生産するために使用することができる。シアノバクテリア宿主細胞は、Slr1125発現が元々欠損していてもよいし、Slr1125発現を低減または除去するように遺伝子操作されてもよい。1つの実施形態では、そのような遺伝子操作はslr1125遺伝子を欠失させることを含む。別の実施形態では、そのような遺伝子操作は、Slr1125の発現を所望の通りに制御することができるように、slr1125が誘導型プロモータの制御下にある上記に開示されるような宿主細胞の使用を含む。例えば、アンチセンス技術は、上記に議論されるような、後方にアンチセンス方向のslr1125を備えた天然の銅制御型プラストシアニンプロモータを使用して、培地にμM量の銅を加えることでSlr1125発現のダウンレギュレーションを可能にすることにより、達成することができる。このプロトコールは、slr1125遺伝子発現を制御する直接的かつ安価な方法を提供する。
本発明者らは、Slr1125発現が欠損しているシアノバクテリアが大量の顆粒を産生し、かつPHAおよびシアノフィシンの混合物が主な生成物である顆粒内容物を放出することができるため、当分野において可能であった量よりも非常に大量のこれら生成物の生産が容易になることを発見した。
本発明の第1および第2の態様の組換え核酸および組換え宿主細胞のすべての実施形態は、本発明のこの第3の態様における使用に等しく適用可能である。上記に開示されるように、様々な実施形態はすべて誘導可能なslr1125インヒビター構築物との組み合わせを基にしており、この第3の態様では、上記の様々な実施形態はすべて、slr1125欠失変異株とともに使用するにあたり、単独でも組み合わせでも等しく両立性を有する。
したがって、1つの典型的な実施形態では、生産されるバイオマテリアルは、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)およびシアノフィシンからなる群から選択されたバイオマテリアルを含む。別の実施形態では、シアノバクテリア宿主細胞は、シネコシスティス、アルスロスピラ・マキシマ、シネココッカス、トリコデスミウムおよびクロコスファエラからなる群から選択される。さらなる実施形態では、シアノバクテリア宿主細胞はシネコシスティスのPCC6803細胞である。別の実施形態では、シアノバクテリア宿主細胞はNAD合成酵素またはNAD+リン酸化酵素のうち少なくともいずれか一方を過剰発現するように遺伝子操作されており、培養は、NAD合成酵素またはNAD+リン酸化酵素のうち少なくともいずれか一方を過剰発現するのに適した条件下で組換えシアノバクテリア宿主細胞を培養することを含む。
さらなる実施形態では、前記方法はPHAを調製する工程を含み、シアノバクテリア宿主細胞は、例えばシアノバクテリア宿主細胞におけるシアノフィシン合成酵素の発現を低減または除去するようにシアノバクテリア宿主細胞を遺伝子組換え操作することにより、シアノフィシン産生が欠損している。別の実施形態では、前記方法はシアノフィシンを調製する工程を含み、シアノバクテリア宿主細胞は、例えばシアノバクテリア宿主細胞におけるSlr1993の発現を低減または除去するようにシアノバクテリア宿主細胞を遺伝子組換え操作することにより、PHA産生が欠損している。別の実施形態では、シアノバクテリア宿主細胞はシアノフィシナーゼ発現が欠損している。
別の実施形態では、前記方法はPHAを調製する工程を含み、シアノバクテリア宿主細胞は、例えばSlr1994、Slr1829、およびSlr1830のうち1つ以上の発現を低減または除去するようにシアノバクテリア宿主細胞を遺伝子組換え操作することにより、ポリヒドロキシブチレート(PHB)の産生が欠損している。1つの実施形態では、シアノバクテリア宿主細胞はSlr1994の発現を低減または除去するように遺伝子操作されており、かつ前記方法はアセトアセチルCoAの生産を含む。別の実施形態では、シアノバクテリア宿主細胞は、Slr1829およびSlr1830のうち一方または両方の発現を低減または除去するように遺伝子操作されており、かつ前記方法はポリ(3‐ヒドロキシブチリル‐CoA)の生産を含む。
これらの様々な実施形態による核酸構築物および組換えシアノバクテリア宿主細胞の調製については、上記に詳細に説明されている。
使用される培養条件は対象とするバイオマテリアルの生産に適した任意の条件でよい。slr1125欠失変異株のための典型的な培養条件は、以下の実施例に提供されている。シアノバクテリアをバイオプラスチック生産に使用する主な利点は、投入エネルギーを太陽エネルギーが提供するということである。一実施例において、シアノバクテリアは25℃〜34℃で(例えばシネコシスティス属細菌のPCC6803は至適温度(30℃)を含めた25℃〜34℃で増殖する)、緩衝化したBG‐11培地(40)のような培地中で、適切な光条件、例えば光子量50〜200μmol m−2−1(50は低光量、200は高光量である)の存在下で振とうしながら増殖させることが可能である。当業者には当然のことであるが、大規模生産の細胞は、立地およびバイオリアクタの仕様により異なる光条件、例えば細胞の自己遮蔽効果を考慮に入れることにより、明るい日当たりのよい日とほぼ同等な光子量600μmol m−2−1まで適応させることができる。光条件は所与の目的に適するように変動可能であり、また連続的であっても周期的であってもよく、大規模かつ屋外の培養については、コストを最小限にし、かつ人工照明の追加費用を回避するために光/暗サイクルが好ましい。そのような条件下では、大規模なシアノバクテリア増殖により高密度培養物を得ることができる。
1つの実施形態では、増殖培地中の窒素源として硝酸塩の代わりにアンモニアを用いることにより、細胞増殖中に顆粒形成が誘導される。シアノバクテリアは窒素を固定せず、したがって増殖培地中には窒素源が必要であるが、窒素源としてアンモニアを使用するとシアノバクテリアが硝酸塩をアンモニアに変換する必要がなくなり、NADPH還元力の消費が制限されて、誘導期における顆粒形成およびバイオマテリアル生合成のためのNADPH備蓄量が細胞内で増大するのを可能にする。1つの実施形態では、アンモニアの量は、標準的な増殖培地中の硝酸塩の量とほぼ等モルである。別の実施形態では、アンモニアの量は0.75g/L〜1.5g/Lの範囲にある。別の実施形態では、0.75g/L〜1.25g/Lの範囲にある。別の実施形態では、0.75g/L〜1.0g/Lの範囲にある。これらの顆粒形成の実施形態のうちのいずれかのさらなる実施形態では、細胞を最大密度まで増殖させて、そして顆粒形成を誘導してPHB、シアノフィシンおよび3‐ヒドロキシブチレートなどの対象とするバイオマテリアルの産生を最大限にすることができる。さらなる実施形態では、シアノバクテリア細胞は、上記に開示されるように、銅誘導型プロモータを含めることなどによってSlr1125遺伝子の発現を誘導式にダウンレギュレーションするように遺伝子組換え操作されている。さらなる実施形態では、slr1125のダウンレギュレーションまたは欠失と併せてNAD合成酵素またはNADリン酸化酵素のうち少なくともいずれか一方が過剰発現されてもよい。1つの非限定的な実施例では、シネコシスティス属細菌のPCC6803は8〜10時間の倍加時間を有する。したがって、4〜5OD730/リットルのバイオマスを二等分し、一方を細胞バイオマスの連続供給を可能にするためにさらに増殖させ、他の半分を上記に議論したような顆粒の産生を促すために使用することができる。さらなる実施形態では、顆粒形成は、増殖培地にリコピンシクラーゼの阻害剤を含めることにより誘導することが可能であり、そのような阻害剤の例には、限定するものではないが、ニコチン酸(5〜50μM)、クロロフェノキシトリエチルアミン(COPTA)、2‐(4‐クロロフェニルチオ)‐トリエチルアミン(CAPT)、2‐(3,4‐ジクロロフェン‐オキシ)‐トリエチルアミン(DCPTA)、2‐(3,5‐ジメチルフェノキシ)‐トリエチルアミン(DMPTA)、2‐(4‐メチル‐フェノキシ)‐トリエチルアミン(MPTA)、アミノトリアゾール、アザスクアレン(azasqualene )、ドデシルトリメチルアンモニウム、N,N‐ジメチルドデシルアミン、イミダゾール、ピペロニルブトキシド、ピペリジン、トリエチルアミンおよびピリジンが挙げられる。そのような阻害剤の使用は顆粒の形成を増強し、細胞培養物がその最大密度に達した後の顆粒形成時間を短縮する。1つの実施形態では、培養培地は窒素源として硝酸塩を含み、別の実施形態では、アンモニアが窒素源として提供される。slr1125構築物のうち任意のものを、カロチノイド生合成阻害剤(例えばデサチュラーゼおよびシクラーゼ)を使用する実施形態に好適な欠失変異株と共に使用することができる。
カロチノイドは、いずれもC炭化水素分子であるイソペンテニルピロリン酸(IPP)とその異性体ジメチルアリルピロリン酸(DMPP)との重合から、フィトエン(C40分子)を形成するまでの逐次工程を経て合成される一群のC40炭化水素である。この分子フィトエンは、シアノバクテリアであるシネコシスティス属細菌PCC6803のカロチノイド生合成経路の中で合成される最初の関連カロチノイド分子である。2つのカロチンデサチュラーゼ酵素(フィトエンデサチュラーゼおよびζ‐カロチンデサチュラーゼ)の作用による、フィトエン分子への4つの二重結合の導入は、不飽和C40リコピンを生じる。リコピンはリコピンシクラーゼによってさらに環化されて、単環式カロチン(γ‐カロチン)または二環式カロチン(β‐カロチン)を生じる。ミクソキサントフィルの場合には、単環式カロチノイド分子をさらに修飾してグリコシル化分子を生じるために追加の酵素が必要であり(sll0254、slr1293およびslr1125)、これらの遺伝子の産物は、ミクソキサントフィル・カロチノイド配糖体の最終形成に必要な主要酵素である。最終的な主要カロチノイドはさらに処理されてより小さなカロチノイド生成物(例えばレチナール群)になる。以下に列挙した阻害剤は、カロチノイド生合成/分解の酵素のうち1つ以上を阻害し、ミクソキサントフィルの生合成を阻止する。したがって、1つ以上のこれらの阻害剤を本発明の宿主細胞の組み合わせとともに使用することにより、バイオマテリアル(PHBおよびシアノフィシンなど)の産生および増大がさらに制御され、細胞が全面的に顆粒に移行するために必要な顆粒形成時間が短縮される。1つの実施形態では、最終生成物の量および質の両方をさらに改善し、かつコストを最小限にするために、シアノバクテリアからのPHBおよびシアノフィシンの大規模生産のために1つ以上の阻害剤が使用される。表1は、阻害剤についての培地中における好ましい濃度域を提示している。
Figure 2010531669
上記に開示された様々な条件によって引き起こされる電子の利用可能性の劇的な変化、NADPHの蓄積、および自己遮蔽効果による光の変化は、本発明のシアノバクテリア宿主細胞における顆粒の形成を著しく増大させる。
適切な誘導条件が適切な時に使用されることを除いて同様の培養条件を、発現するとslr1125(またはそのオーソログ)のオープンリーディングフレームの発現をダウンレギュレーションする抑制性の核酸に連結された誘導型プロモータを担持する組換えシアノバクテリアに使用することができる。slr1125発現を低減するための適切な条件は、使用される誘導型プロモータ、ならびにその他の要因、例えば、限定されるものではないが使用される特定のシアノバクテリア、シアノバクテリアの濃度、培地、pH、温度、露光量などによって変わることになる。しかしながら、当業者であれば、本明細書中の教示に照らして使用すべき特定の条件を決定することができる。1つの典型的な実施形態では、誘導型プロモータはpetEプロモータ(配列番号9)を含み、抑制性の核酸の発現は、培地にμM量の銅を添加することによって誘導される(例えば(Briggs, et al., 1990)を参照されたい)。当業者であれば銅の最適濃度を決定することができるが、実験室条件下では2〜10μMの範囲が使用された。1つの実施形態では、アンチセンスslr1125構築物はpetEプロモータの下流かつ制御下にある。したがって、培地にμM量の銅を加えることにより、slr1125発現がダウンレギュレーションされ、顆粒が産生され、かつ細胞を採取して前記細胞からPHAおよびシアノフィシンを調製することができるようになる。
シアノバクテリア細胞の採取は、当業者には既知の任意の技術、例えば、限定するものではないが遠心分離および濾過によって遂行することができる。
同様に、採取された組換えシアノバクテリアからバイオマテリアルを調製する方法は、以下の実施例に記載されるもののような当分野で既知の任意の手段によって実行することができる。1つの非限定的な実施形態では、PHAポリエステルは、非PHA細胞塊の酸性溶解、pH調整(pH10)、および漂白液中での最終脱色で構成される手順で回収および精製することができる。本発明の組換えシアノバクテリアによって産生される主要生成物は、PHAおよびシアノフィシンの混合物である。上記に述べたように、様々な実施形態において、これら2つのポリマーの生合成を選別するために別個のシアノバクテリア菌株(シアノフィシン欠損およびPHA合成酵素欠損)が作られる。
L‐アスパラギン酸およびL‐アルギニンのコポリマーであるシアノフィシンは、シアノフィシン合成酵素によって非リボソーム型ポリペプチド生合成によって生産される。さらなる実施形態では、単離されるバイオマテリアルはシアノフィシンを含み、シアノフィシンは次に、任意の適切な方法、例えば、限定するものではないが高pH値での煮沸を使用して、部分加水分解されてポリアスパルテートを生じるが、ポリアスパルテートは化学合成ポリカルボキシレートの生物分解性の代替物である。後者ポリカルボキシレートは陰イオン性高分子電解質であり、極めて有効な色素分散剤として水性の工業用の保護コーティング材、光沢分散塗料ならびに印刷インキにおける使用に用いることができる。さらに、塗料、革製品の仕上げ、織物、プラスチック、インクなどの着色に使用される色素濃縮物においても使用される。種々様々の接着剤、例えば物理的に乾燥するアクリル酸分散液、空気乾燥するアルキド樹脂乳剤、ポリエステルメラミン、2液エポキシ剤、アクリラートなどと共に使用される。したがって、本発明のこの実施形態は、毒性のポリカルボキシレートに代わるシアノフィシン(ポリアスパルテート)生産用の非常にコスト効率の良い方法であって、エネルギーおよび水の節約法としても使用することができる(すなわち、水の蒸発を防ぐために湖沼および溜池の水面で薄膜を形成する)方法を提供する。
よって、上述の様々な実施形態において、本発明の第3の態様で使用される組換えシアノバクテリアは、上記に開示されるように、シアノフィシン発現またはPHA発現がさらに欠損していてもよい。非PHA細胞塊からのPHAポリマーの分離および精製は、PHA顆粒および非PHA細胞塊がいずれも固相であることから技術的障害を呈する。純度、収量および分子の大きさがPHA回収における3つの主な要素である。PHAポリエステル(PHBなど)は、非PHA細胞塊の酸性溶解、pH調整(pH10)、および漂白液中での最終脱色で構成される手順で回収および精製することができる。したがって、シアノフィシン発現が欠損している細胞の使用は、本発明の組換えシアノバクテリアによって産生されたPHAの分離および精製を容易にする。同様に、PHA合成酵素の発現が欠損している細胞の使用は、本発明の組換えシアノバクテリアによって産生されたシアノフィシンの分離および精製を容易にする。PHA生合成は補助因子としてNADPHを必要とし、したがってNAD生合成を増大させると、PHA産生を増強し、顆粒に全面的に変換するための時間を短縮することができると考えられる。したがって、上記に議論されるように、本発明は、銅制御型プロモータの前にNAD(+)合成酵素のコピーを導入してPHA生合成の誘導と協調して過剰発現させることによって、PHA生合成に必要な補助因子の利用可能性を増大させることができるシアノバクテリア組換え体を提供する。
1つの非限定的な実施例では、シネコシスティス属細菌のPCC6803は8〜10時間の倍加時間を有する。したがって、4OD730/リットルのバイオマスを二等分して:一方を細胞バイオマスの連続供給を可能にするためにさらに増殖させ、他の半分を、顆粒の産生段階に使用することができる。細胞が4〜5OD730/リットルのバイオマスの連続供給は、太陽光を使用して毎日達成することができる。例えば:20cm×100cm×250cm(幅×長さ×高さ)のプラスチックバッグは500Lを供給し、この500Lはおよそ1.5kg/バッグ/日のバイオマスを産出し、このバイオマスは0.75〜1.0kg/バッグ/日のPHA(50%、乾燥バイオマス重量比)に変換される。本発明の方法は、1.2〜1.35kg/バッグ/日のPHAを供給する乾燥バイオマス重量比でおよそ80〜90%の非常に高収量かつ高純度を達成し、これは生物学的に光合成独立栄養である生物由来のこれらのバイオマテリアルについて現在まで先例のない収率に相当する。
第4の態様では、本発明は、組換えシアノバクテリア宿主細胞であって、
(a)Slr1125発現の欠損と;
(b)遺伝子組換えにより生じた以下の表現型、すなわち
(i)シアノフィシン産生の欠損;
(ii)ポリ‐β‐ヒドロキシアルカノエート(PHA)産生の欠損;
(iii)NAD合成酵素の過剰発現;
(iv)NAD+リン酸化酵素の過剰発現;
(v)シアノフィシン合成酵素発現の欠損;
(vi)Slr1993発現の欠損;
(vii)シアノフィシナーゼ発現の欠損;
(viii)PHB産生の欠損;
(ix)Slr1994発現の欠損;
(x)Slr1829発現の欠損;および
(xi)Slr1830発現の欠損
のうち1つ以上とを有する宿主細胞を提供する。
本発明のこの態様の宿主細胞は、例えば、上記に開示された本発明の方法によって大量のバイオマテリアルを調製するために使用することができる。
列挙された発現の欠損または過剰発現のうちいずれかを備えた組換えシアノバクテリア宿主細胞を得るための実施形態は、上記に開示されており、本発明のこの第4の態様で使用するために等しく適用可能である。この態様では、組換えシアノバクテリア宿主細胞は、Slr1125発現の欠損と、列挙された一覧から少なくとも1つのさらに改変された表現型であって組換え体がPHAおよびシアノフィシンのようなバイオマテリアルを産生する能力を増大させる表現型とを有する。1つの実施形態では、Slr1125発現の欠損は天然に存在する欠損に基づくものであってよい。別の実施形態では、宿主細胞は例えばslr1125遺伝子の欠失によって欠損を引き起こすように遺伝子操作される。別の実施形態では、そのような遺伝子操作は、上記に開示されるような宿主細胞であって、slr1125が誘導型プロモータの制御下にあるため、Slr1125の発現を所望の通りに、かつ上記に詳細に開示されるように制御することができる宿主細胞の使用を含む。
シアノバクテリア宿主における発現の、少なくとも1つのさらなる遺伝子組換えによる改変は、列挙された改変のうち1つ以上を含み、各々について上記に詳細に開示されている。様々なさらなる実施形態において、シアノバクテリアは、シネコシスティス、アルスロスピラ・マキシマ、シネココッカス、トリコデスミウムおよびクロコスファエラからなる群から選択され、さらなる実施形態では、組換えシアノバクテリア宿主細胞はシネコシスティスのPCC6803細胞である。
slr1125のクローニングおよびpΔslr1125Sプラスミドの構築
シネコシスティス属細菌PCC6803のslr1125遺伝子およびそのフランキング領域を、利用可能なシネコシスティスのゲノム配列(CyanoBase;ウェブサイト:kazusa.or.jp/cyano/cyano.html)(Kanekoら)に基づいたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってクローニングした。順方向プライマーは、人為的にEcoRI部位(下線部)が組み込まれ、CyanoBaseの塩基番号85721‐85745に対応する
Figure 2010531669
(配列番号39)とし、逆方向プライマーは、人為的にSphI制限部位(下線部)が組み込まれ、CyanoBaseの塩基87845‐87867に対応する配列を備えた
Figure 2010531669
(配列番号40)とした(制限部位を導入するための塩基変更は太字で表されている)。PCRで増幅された配列は、ORFの両側におよそ430‐450bpのフランキング配列を備えたslr1125に相当する。期待される大きさ(2.147kb)のPCR産物を精製し、EcoRIおよびSphIを用いて(プライマーに導入された制限部位を使用して)制限酵素切断し、pUC19にクローニングしてpslr1125構築物を作出した。slr1125遺伝子を、slr1125オープンリーディングフレームの始点および終点の付近にある内部StyI部位で制限酵素切断によって削除し、このStyIフラグメント(1.2kb)を1.5kbのストレプトマイシン耐性カセットに交換した。その結果pΔslr1125S構築物が作出され、前記構築物を、Vermaas et al. 1987に従って実行したシネコシスティス属細菌PCC6803の形質転換に使用した。5mMグルコースを補足し、かつ最大300μg/mlまで濃度を漸増させたストレプトマイシン(滅菌水に溶解)を添加したBG‐11/寒天プレートで形質転換体を増殖させた。形質転換体の分離状態を、slr1125コード領域の上流および下流の配列を認識するプライマーを使用した形質転換体DNAのPCRによって観察した。変異体のPCR分析に使用したシネコシスティス属細菌PCC6803のゲノムDNAは、He et al.に記載されているようにして調製した。上流および下流にフランキング領域を備えてクローニングされたslr1125ORFの配列を検証した(配列番号41)。
増殖条件
シネコシスティス属細菌株PCC6803を、5mMのN‐トリス(ヒドロキシメチル)メチル‐2‐アミノエタンスルホン酸‐NaOH(pH8.2)で緩衝化したBG‐11培地(40)の中で30℃にて回転振盪機で培養した。プレート上での増殖については、1.5%(重量/体積)のDifcoTM(ディフコ、登録商標)寒天および0.3%(重量/体積)のチオ硫酸ナトリウムを添加した。冷白色(cool-white)の蛍光灯からの光子量束密度40および100μmol m−2−1を、液体培地中での連続光下での増殖に使用した。Rippka et al. 1979に記載の通常のBG11培地は、シネコシスティス菌株増殖用の窒素源として硝酸塩を含有し、この培地組成により細胞増殖はその最大限度(3〜5OD730)に至る。
顆粒形成条件
顆粒誘導期を開始するために、細胞を、硝酸塩の代わりに窒素源として等モル量のアンモニア(1g/L)を含有するBG11培地で0.75OD730に希釈したが、この方策は、顆粒生合成の増大を促進するNADPHの還元力のおよそ40%を節約する。細胞を、上記に述べた同じ培養条件下でさらに48時間培養した。この培養条件下では、前記増殖条件が大規模な顆粒産生に有利に働くためさらなる細胞増殖はほとんどなかった。
PHBの抽出
本発明の利点のうちの1つは、顆粒形成が誘導されてしまえば、PHB顆粒は培地表面に浮かび、前記表面から直接大規模に回収することができるということである。0.75OD730の細胞の1リットル培養物を遠心分離によって回収して培地中のあらゆるものを回収し、かつPHBの量を正確に分析した。回収された顆粒および細胞物質を、色素の除去のためにメタノール中に懸濁させた(4℃、一晩)。遠心分離後に得られたペレットを60℃で乾燥させて、PHBを温クロロホルムで抽出し、続いて冷ジエチルエーテルで沈殿させた。沈殿物を、11000gで20分間遠心分離処理し、アセトンで洗浄し、温クロロホルムに再び溶解させた。
PHBの分光光度測定
Law and Slepecky (1961)の通りに分光光度アッセイを実施した。クロロホルム中にポリマーを含有する試料を清浄な試験管に移した。クロロホルムを蒸発させ、10mlの濃HSOを添加した。この溶液を水浴中で20分間加熱した。冷却して完全に混合した後、前記溶液の吸光度をHSOブランクに対して235nmで計測した。PHBの存在をさらに確認するために、試料および標準品(dl‐β‐ヒドロキシブチリル酸、米国所在のシグマケミカル社(Sigma Chemical Co.))の吸収スペクトル(200〜1000nm)を、酸消化に続く分光光測定によって比較した。これらのスペクトルをさらに、PHBの酸加水分解の副産物であるクロトン酸のスペクトル、および標準品のPHBまたは細胞由来のPHBの場合には235nmで吸収を示す化合物のスペクトルと比較した。slr1125欠失菌株の0.75OD730の培養フラスコから合計200mgが回収された。抽出された顆粒の235nmにおける吸収を、米国所在のシグマケミカル社のβ‐ヒドロキシブチリル酸によって生成された標準曲線と比較した。200mgの細胞物質から105mgのPHBが測定され、概算で回収された物質の乾燥重量あたり52%のPHBが得られた。
Figure 2010531669
Figure 2010531669

Claims (42)

  1. バイオマテリアルを生産する方法であって、
    (a)Slr1125発現が欠損しているシアノバクテリア宿主細胞を培養する工程、
    (b)前記シアノバクテリア宿主細胞を採取する工程、および
    (c)採取されたシアノバクテリア宿主細胞からバイオマテリアルを調製する工程
    からなる方法。
  2. シアノバクテリア宿主細胞はSlr1125の発現を低減または除去するように遺伝子操作されている、請求項1に記載の方法。
  3. バイオマテリアルは、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)およびシアノフィシンからなる群から選択されたバイオマテリアルを含む、請求項1に記載の方法。
  4. シアノバクテリア宿主細胞は、シネコシスティス(Synechocystis )、アルスロスピラ・マキシマ(Arthrospira maxima)、シネココッカス(Synechococcus )、トリコデスミウム(Trichodesmium )、およびクロコスファエラ(Crocosphaera)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  5. シアノバクテリア宿主細胞はシネコシスティスのPCC6803細胞である、請求項1に記載の方法。
  6. シアノバクテリア宿主細胞はslr1125遺伝子を欠失させるように遺伝子組換え操作されている、請求項2に記載の方法。
  7. シアノバクテリア宿主細胞はslr1125遺伝子の発現を誘導式にダウンレギュレーションするように遺伝子組換え操作されている、請求項2に記載の方法。
  8. シアノバクテリア宿主細胞はシネコシスティスのPCC6803のslr1125遺伝子を欠失させるように遺伝子組換え操作されている、請求項5に記載の方法。
  9. シアノバクテリア宿主細胞はシネコシスティスのPCC6803のSlr1125の発現を誘導式にダウンレギュレーションするように遺伝子組換え操作されている、請求項5に記載の方法。
  10. シアノバクテリア宿主細胞はNAD合成酵素およびNAD+リン酸化酵素のうち少なくともいずれか一方を過剰発現するように遺伝子操作されており、培養は、NAD合成酵素およびNAD+リン酸化酵素のうち少なくともいずれか一方を過剰発現するのに適した条件下で組換えシアノバクテリア宿主細胞を培養することを含む、請求項1に記載の方法。
  11. 前記方法はPHAを調製する工程を含み、前記シアノバクテリア宿主細胞はシアノフィシン産生が欠損している、請求項3に記載の方法。
  12. シアノフィシン発現の欠損は、シアノバクテリア宿主細胞におけるシアノフィシン合成酵素の発現を低減または除去するようにシアノバクテリア宿主細胞を遺伝子組換え操作することに起因する、請求項11に記載の方法。
  13. 前記方法はシアノフィシンを調製する工程を含み、前記シアノバクテリア宿主細胞はPHA産生が欠損している、請求項2に記載の方法。
  14. PHA発現の欠損は、シアノバクテリア宿主細胞におけるSlr1993の発現を低減または除去するようにシアノバクテリア宿主細胞を遺伝子組換え操作することに起因する、請求項13に記載の方法。
  15. シアノバクテリア宿主細胞はシアノフィシナーゼ発現が欠損している、請求項13に記載の方法。
  16. 前記方法はPHAを調製する工程を含み、前記シアノバクテリア宿主細胞はポリヒドロキシブチレート(PHB)の産生が欠損している、請求項3に記載の方法。
  17. PHBの産生の欠損は、Slr1994、Slr1829、およびSlr1830のうち1つ以上の発現を低減または除去するように遺伝子組換え操作することに起因する、請求項16に記載の方法。
  18. シアノバクテリア宿主細胞はSlr1994の発現を低減または除去するように遺伝子操作されており、かつ前記方法はアセトアセチルCoAを生産する工程を含む、請求項16に記載の方法。
  19. シアノバクテリア宿主細胞は、Slr1829およびSlr1830のうち一方または両方の発現を低減または除去するように遺伝子操作されており、かつ前記方法はポリ(3‐ヒドロキシブチリルCoA)を生産する工程を含む、請求項16に記載の方法。
  20. 単離された組換え核酸であって、
    (a)誘導型のシアノバクテリアプロモータを含む第1の核酸と、
    (b)第1の核酸に作動可能なように連結された第2の核酸とを含み、第2の核酸は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、および配列番号8からなる群から選択されたポリペプチドのアミノ酸配列をコードする標的核酸配列に相補的な抑制性の核酸をコードすることを特徴とする、核酸。
  21. 抑制性の核酸はアンチセンス核酸を含む、請求項20に記載の単離核酸。
  22. 標的核酸配列は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、および配列番号7からなる群から選択される、請求項20に記載の単離核酸。
  23. 誘導型のシアノバクテリアプロモータは配列番号9を含む、請求項20に記載の単離核酸。
  24. 配列番号10、11、および12からなる群から選択されたNAD合成酵素タンパク質をコードする第3の核酸をさらに含む、請求項20に記載の単離核酸。
  25. 第3の核酸は、配列番号13、14、または15の、NAD合成酵素をコードする配列で構成される、請求項24に記載の単離核酸。
  26. 請求項20に記載の単離された組換え核酸を含む発現ベクター。
  27. 請求項1に記載の単離された組換え核酸を含む組換え宿主細胞。
  28. 宿主細胞はシアノバクテリア宿主細胞である、請求項27に記載の組換え宿主細胞。
  29. シアノバクテリアは、シネコシスティス(Synechocystis )、アルスロスピラ・マキシマ(Arthrospira maxima)、シネココッカス(Synechococcus )、トリコデスミウム(Trichodesmium )、およびクロコスファエラ(Crocosphaera)からなる群から選択される、請求項28に記載の組換えシアノバクテリア宿主細胞。
  30. 組換えシアノバクテリア宿主細胞はシネコシスティスのPCC6803細胞である、請求項28に記載の組換えシアノバクテリア宿主細胞。
  31. 組換え宿主細胞は、
    (a)シアノフィシン産生、および
    (b)ポリ‐β‐ヒドロキシアルカノエート(PHA)産生
    のうち一方が欠損している、請求項28に記載の組換え宿主細胞。
  32. 組換え宿主細胞はシアノフィシン発現が欠損しており、シアノフィシン発現の欠損は、シアノバクテリアにおけるシアノフィシン合成酵素遺伝子(配列番号22)の欠失に起因する、請求項28に記載の組換え宿主細胞。
  33. 組換え宿主細胞はシアノフィシン発現が欠損しており、かつ組換え宿主はシアノフィシン合成酵素のアミノ酸配列(配列番号23)をコードする標的核酸配列に相補的な抑制性の核酸をコードする核酸に作動可能なように連結されたプロモータ配列を含む核酸構築物を有する発現ベクターをさらに含む、請求項28に記載の組換え宿主細胞。
  34. 組換え宿主細胞はPHA発現が欠損しており、PHA発現の欠損は、シアノバクテリアにおけるslr1993遺伝子(配列番号24)の欠失に起因する、請求項28に記載の組換え宿主細胞。
  35. 組換え宿主細胞はシアノフィシン発現が欠損しており、かつ組換え宿主は配列番号25のアミノ酸配列をコードする標的核酸配列に相補的な抑制性の核酸をコードする核酸に作動可能なように連結されたプロモータ配列を含む核酸構築物を有する発現ベクターをさらに含む、請求項28に記載の組換え宿主細胞。
  36. 発現が誘導型プロモータの制御下にある第2の抑制性の核酸をさらに含み、第2の抑制性の核酸は配列番号26(シアノフィシナーゼ)のアミノ酸配列をコードする標的核酸に相補的である、請求項35または36に記載の組換え宿主細胞。
  37. 第2の抑制性の核酸は、配列番号27のうち少なくとも20個の連続したヌクレオチドを含む、請求項37に記載の組換え宿主細胞。
  38. 本発明の組換えシアノバクテリアはさらに、
    Slr1994(配列番号28)、
    Slr1829(配列番号29)、および
    Slr1830(配列番号30)
    のうち1つ以上の発現が欠損するようになされる、請求項28に記載の組換え宿主細胞。
  39. 組換えシアノバクテリア宿主細胞であって、
    (a)Slr1125発現の欠損と;
    (b)遺伝子組換えにより生じた以下の表現型、すなわち
    (i)シアノフィシン産生の欠損;
    (ii)ポリ‐β‐ヒドロキシアルカノエート(PHA)産生の欠損;
    (iii)NAD合成酵素の過剰発現;
    (iv)NAD+リン酸化酵素の過剰発現;
    (v)シアノフィシン合成酵素発現の欠損;
    (vi)Slr1993発現の欠損;
    (vii)シアノフィシナーゼ発現の欠損;
    (viii)PHB産生の欠損;
    (ix)Slr1994発現の欠損;
    (x)Slr1829発現の欠損;および
    (xi)Slr1830発現の欠損
    のうち1つ以上とを有する組換え宿主細胞。
  40. 前記組換えシアノバクテリア宿主細胞は、Slr1125発現を低減または除去するように遺伝子操作されている、請求項40に記載の組換え宿主細胞。
  41. シアノバクテリアは、シネコシスティス、アルスロスピラ・マキシマ、シネココッカス、トリコデスミウム、およびクロコスファエラからなる群から選択される、請求項40に記載の組換えシアノバクテリア宿主細胞。
  42. 前記組換えシアノバクテリア宿主細胞はシネコシスティスのPCC6803細胞である、請求項40に記載の組換えシアノバクテリア宿主細胞。
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