JP2010517577A - 酵母細胞原形質膜による抗体ライブラリー提示 - Google Patents
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Abstract
本発明は、宿主細胞に発現したとき、原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片に関する。本発明は、複数の原形質膜提示抗体を含むライブラリー、および所望の特性を有する抗体またはその断片のライブラリーをスクリーニングする方法を提供する。
【選択図】図1
【選択図】図1
Description
本発明は、宿主細胞に発現したとき、原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片に関する。
1.発明の背景
過去十年間、組換え抗体は、ますます優勢な治療薬となっており、現在、これらは、臨床試験における生物薬剤の30%以上を占めている。従って、組換え抗体の迅速な作製、特性決定、および最適化は、生物製剤業界にとって極めて重要である。この課題に対する早期の解決策は、単純化抗体断片のファージ提示ライブラリーの使用によりもたらされた。大きなライブラリーの作製が可能であること、およびライブラリーのスクリーニングが容易になったことにより、抗体断片ファージ提示技術は、様々なヒトの疾患に対する新たな治療薬開発のための強力なツールとなった。
過去十年間、組換え抗体は、ますます優勢な治療薬となっており、現在、これらは、臨床試験における生物薬剤の30%以上を占めている。従って、組換え抗体の迅速な作製、特性決定、および最適化は、生物製剤業界にとって極めて重要である。この課題に対する早期の解決策は、単純化抗体断片のファージ提示ライブラリーの使用によりもたらされた。大きなライブラリーの作製が可能であること、およびライブラリーのスクリーニングが容易になったことにより、抗体断片ファージ提示技術は、様々なヒトの疾患に対する新たな治療薬開発のための強力なツールとなった。
しかし、ファージ提示技術は、全長抗体とは対照的に、抗体断片のスクリーニングに依存するという不利益がある。ほとんどの治療用途は二価IgG抗体の使用を要求することから、通常、所望の結合特性を備えた単離抗体断片を全長抗体に変換する。変換プロセスは、労力がかかるだけでなく、抗体結合特異性の消失を招く恐れもある。
これらの問題を対処するために別の提示技術が開発されている。近年、酵母細胞壁での抗体断片(scFvおよびFab)のa型凝集素媒介提示が、ファージ提示技術に代わる有効な代替方法として浮上してきている。
しかし、当分野では、全長抗体の大きなライブラリーの高速スクリーニングを可能にする新たな技術の開発が依然として求められている。
2.発明の概要
本発明は、細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片に関し、本明細書ではこれを「本発明の抗体」およびこれと同様の用語で呼ぶ。特定の実施形態では、本発明の抗体は、重鎖またはその断片、および随意に軽鎖またはその断片を含み、その際、重鎖または軽鎖のいずれかが、該抗体またはその断片を原形質膜の細胞外表面にターゲッティングするアミノ酸配列をさらに含む。一実施形態では、本発明の抗体は、該抗体を原形質膜の細胞外表面にターゲッティングするアミノ酸配列を有する全長重鎖を含み、その際、上記アミノ酸配列は、上記重鎖のC末端に融合されており、かつ上記抗体は、全長軽鎖をさらに含んでいてもよい。さらに別の実施形態では、本発明の抗体は、該抗体を原形質膜の細胞外表面にターゲッティングするアミノ酸配列を有する重鎖の一部分を含み、その際、上記アミノ酸配列は、上記重鎖部分のC末端に融合されており、上記抗体は、軽鎖またはその断片をさらに含んでいてもよい。具体的実施形態では、本発明の抗体を原形質膜の細胞外表面にターゲッティングする上記アミノ酸配列は、膜貫通ドメインである。別の実施形態では、本発明の抗体を原形質膜の細胞外表面にターゲッティングする上記アミノ酸配列は、GPIアンカードメインである。
本発明は、細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片に関し、本明細書ではこれを「本発明の抗体」およびこれと同様の用語で呼ぶ。特定の実施形態では、本発明の抗体は、重鎖またはその断片、および随意に軽鎖またはその断片を含み、その際、重鎖または軽鎖のいずれかが、該抗体またはその断片を原形質膜の細胞外表面にターゲッティングするアミノ酸配列をさらに含む。一実施形態では、本発明の抗体は、該抗体を原形質膜の細胞外表面にターゲッティングするアミノ酸配列を有する全長重鎖を含み、その際、上記アミノ酸配列は、上記重鎖のC末端に融合されており、かつ上記抗体は、全長軽鎖をさらに含んでいてもよい。さらに別の実施形態では、本発明の抗体は、該抗体を原形質膜の細胞外表面にターゲッティングするアミノ酸配列を有する重鎖の一部分を含み、その際、上記アミノ酸配列は、上記重鎖部分のC末端に融合されており、上記抗体は、軽鎖またはその断片をさらに含んでいてもよい。具体的実施形態では、本発明の抗体を原形質膜の細胞外表面にターゲッティングする上記アミノ酸配列は、膜貫通ドメインである。別の実施形態では、本発明の抗体を原形質膜の細胞外表面にターゲッティングする上記アミノ酸配列は、GPIアンカードメインである。
本発明はさらに、細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含むベクターに関し、本明細書ではこれを「本発明のベクター」と称する。一実施形態では、本発明のベクターは、宿主細胞内で原形質膜の細胞外表面での抗体またはその断片の発現および提示を指令するように操作可能である。具体的実施形態では、本発明のベクターは、2つのベクターのセットであり、その際、第1のベクターは、抗体またはその断片の重鎖をコードするポリヌクレオチドを含み、第2のベクターは、抗体またはその断片の軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含んでおり、上記抗体またはその断片は、原形質膜の細胞外表面に提示されうる。
本発明はまた、原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片を含む宿主細胞を提供し、本明細書ではこれを「本発明の宿主細胞」と称する。一実施形態では、本発明の宿主細胞は、子嚢菌門から選択される真核細胞である。具体的実施形態では、本発明の宿主細胞は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、またはヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)である。一実施形態において、本発明の宿主細胞は、遺伝子突然変異を含み、この遺伝子突然変異は、抗体結合物質(例えば、抗原、Fc受容体、抗体)に対し細胞壁を透過性にする。
本発明はまた、細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含むライブラリーに関し、本明細書ではこれを「本発明のポリヌクレオチドライブラリー」と称する。一実施形態において、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、重鎖可変領域の異種集団を含む抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、軽鎖可変領域の異種集団を含む抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、Fc領域(変異型Fc領域を含む)の異種集団を含む抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。一実施形態では、宿主細胞の集団は、本発明のポリヌクレオチドライブラリーを含む。
本発明はまた、細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片の異種集団を含むライブラリーに関し、本明細書ではこれを「本発明の抗体ライブラリー」と称する。一実施形態において、本発明の抗体ライブラリーは、重鎖可変領域の異種集団を含んでもよい。別の実施形態では、本発明の抗体ライブラリーは、軽鎖可変領域の異種集団を含んでもよい。さらに別の実施形態では、本発明の抗体ライブラリーは、Fc領域(変異型Fc領域を含む)の異種集団を含んでもよい。一実施形態では、宿主細胞の集団は、本発明の抗体ライブラリーを含む。
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドライブラリーまたは本発明の抗体ライブラリーのスクリーニング方法も提供する。一実施形態において、ライブラリーのスクリーニング方法により、特定の抗原に結合する抗体またはその断片の識別が可能になる。一実施形態では、ライブラリーのスクリーニング方法により、特定の抗原との結合が改変されている抗体またはその断片の識別が可能になる。一実施形態では、ライブラリーのスクリーニング方法により、エフェクター分子(例えば、FcγRおよび/またはC1q)との結合が改変されている抗体またはその断片の識別が可能になる。
本発明はまた、宿主細胞において本発明のポリヌクレオチドライブラリーを発現する方法を提供する。一実施形態において、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片の異種集団をコードすることができる。
3.図面の簡単な説明
本発明の代表的実施形態を説明する目的で、本明細書に図面を提供する。
本発明の代表的実施形態を説明する目的で、本明細書に図面を提供する。
4.定義
本明細書で用いる用語「抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチド」とは、抗体またはその断片の個々のポリペプチド鎖をコードする1以上のポリヌクレオチド鎖を含むポリヌクレオチドの組成物を包含する。
本明細書で用いる用語「抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチド」とは、抗体またはその断片の個々のポリペプチド鎖をコードする1以上のポリヌクレオチド鎖を含むポリヌクレオチドの組成物を包含する。
本明細書で用いる「ベクター」とは、宿主細胞における遺伝子伝達、遺伝子発現、または外来ポリヌクレオチドの複製もしくは組込みのビヒクルとして働くことができるあらゆる要素を指す。ベクターは、人工染色体またはプラスミドであってもよく、宿主細胞ゲノムに組み込んでもよいし、独立した遺伝要素(例えば、エピソーム、プラスミド)として存在してもよい。ベクターは、単一のポリヌクレオチドとして、または2つ以上の個別のポリヌクレオチドとして存在してもよい。「本発明のベクター」は、適切な宿主内で、宿主細胞の原形質膜に提示されうる抗体またはその断片の少なくとも1つの鎖の発現を指令することができる。本発明のベクターは、単コピーベクターまたは多コピーベクター(宿主細胞内に一般的に維持されるベクターのコピー数を示す)のいずれでもよい。本発明のベクターには、酵母発現ベクター、2μベクターおよびセントロメアベクターが含まれる。「シャトルベクター」(または二機能性ベクター)は、2以上の種の生物において複製することができる任意のベクターとして当分野で公知である。例えば、大腸菌(E. coli)およびサッカロミセス・セレビシエ(S. cerevisiae)の両方で複製することができるシャトルベクターは、大腸菌プラスミド由来の配列を酵母2μプラスミド由来の配列と連結することにより構築することができる。
用語「ライブラリー」とは、異種ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの混合物を指す。ライブラリーは、類似したポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列を有するメンバーから構成される。ライブラリーがポリヌクレオチドライブラリーである場合、これは、ポリペプチドの異種集団(例えば、抗体ポリペプチドの異種集団)をコードする。ライブラリーメンバー同士の配列の違いは、ライブラリーに存在する多様性によるものである。ライブラリーは、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの単純な混合物の形態を採ることもできるし、ポリヌクレオチドのライブラリーで形質転換された生物もしくは細胞(例えば、酵母細胞など)の形態であってもよい。ポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの発現を可能にするように、ポリヌクレオチドを発現ベクターに組み込むのが有利である。一実施形態では、ライブラリーは宿主細胞の集団の形態を採ることができ、その際、各細胞は、抗体またはその断片をコードする1以上のポリヌクレオチドを含む発現ベクターの1以上のコピーを含み、これらを発現させて、その対応する抗体またはその断片を生産することができる。従って、宿主細胞の集団は、抗体またはその断片の異種集団をコードする能力を有する。
本明細書で用いる用語「抗体」とは、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体Fv(scFv)、ジスルフィド連結型Fv(sdFv)、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体を含む)、ならびにこれらいずれかのエピトープ結合性断片を指す。具体的には、抗体として、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片、すなわち、抗原結合部位を含む分子が挙げられ、これらの断片は、別の免疫グロブリンドメイン(限定するものではないが、Fc領域またはその断片を含む)に融合させてもよいし、させなくてもよい。用語「抗体」はまた、任意のポリペプチド融合パートナーに融合した、免疫グロブリン分子またはその免疫学的に活性な断片(すなわち、抗原結合部位を含む分子)を含むあらゆるポリペプチドを包含する。本明細書で用いる用語「抗体」はまた、Fc変異体、全長抗体、ならびにFc領域を含むFc変異体融合物、またはこれらの断片も包含する。Fc変異体融合物として、限定するものではないが、scFv-Fc融合物、可変領域(例えば、VLおよびVH)-Fc融合物、scFv-scFv-Fc融合物が挙げられる。抗体は、いずれのタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)もしくはサブクラスであってもよい。
本明細書で述べる相補性決定領域(CDR)の残基数は、Kabatら(1991, NIH Publication 91-3242, National Technical Information Service, バージニア州スプリングフィールド)に記載されているものである。具体的には、軽鎖可変ドメイン内の残基24〜34(CDR1)、50〜56(CDR2)および89〜97(CDR3)、ならびに重鎖可変ドメイン内の残基31〜35(CDR1)、50〜65(CDR2)および95〜102(CDR3)である。CDRは、抗体によってかなり変わってくる(また、定義によれば、CDRはKabatコンセンサス配列との相同性を呈示しない)ことに留意すべきである。フレームワーク残基の最大アラインメントには、多くの場合、Fv領域について、番号付けシステムにおいて「スペーサー」残基の挿入を用いる必要がある。本明細書に記載するCDRが、Kabatら(前掲)のものであることは理解されよう。加えて、いずれか所与のKabat部位番号における特定の個々の残基の同一性は、種間またはアレルダイバージェンスのために抗体によって変わりうる。
本明細書で用いる「Fc領域」とは、第1定常領域免疫グロブリンドメインを除いた抗体の定常領域を含むポリペプチドを意味する。従って、Fcは、IgA、IgD、およびIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、IgEおよびIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびに、これらドメインまでのフレキシブルなヒンジN-末端を指す。IgAおよびIgMについて、FcはJ鎖を含んでもよい。IgGの場合、Fcは、免疫グロブリンドメインCγガンマ2およびCガンマ3(Cγ2およびCγ3)と、Cガンマ1(Cγ1)およびCガンマ2(Cγ2)間のヒンジを含む。Fc領域の境界は変動しうるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、そのカルボキシル末端までの残基C226またはP230を含むと定義され、その際、番号付けは、Kabatら(1991, NIH Publication 91-3242, National Technical Information Service, バージニア州スプリングフィールド)に記載のEUインデックスに従う。「Kabatに記載のEUインデックス」とは、Kabatら(前掲)に記載されているヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。Fcは、単離されているこの領域、もしくは抗体に関連するこの領域、抗体断片、またはFc融合タンパク質を指すこともある。Fc変異体タンパク質は、抗体、Fc融合物、またはFc領域を含むあらゆるタンパク質もしくはタンパク質ドメインでよい。また、Fc領域の非天然変異体である、変異体Fc領域を含むタンパク質も含まれる。非天然Fc領域(また、「変異体Fc領域」とも呼ぶ)のアミノ酸配列は、野生型アミノ酸配列と比較して、少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、挿入および/または欠失を含む。挿入または置換の結果として、変異体Fc領域の配列に現れる新しいアミノ酸残基はいずれも、非天然アミノ酸残基と呼ぶことがある。注:多数のFc位置(限定するものではないが、Kabat270、272、312、315、356、および358など)に多型が観察されていることから、ここで提示する配列と当分野で公知の配列の間に若干の相違が存在しうる。
本明細書で用いる用語「膜貫通ドメイン」とは、細胞の原形質膜を貫通することができるペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質のドメインを意味する。これらのドメインを用いて、抗体を原形質膜に固定することができる。
「キメラ抗体」は、抗体の様々な部分が、様々な免疫グロブリン分子由来のものである分子、例えば、非ヒト抗体由来の可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体である。キメラ抗体を生産する方法は、当分野で公知である。例えば、以下の文献を参照されたい:Morrison, 1985, Science 229:1202;Oiら、1986, BioTechniques 4:214; Gilliesら、1989, J. Immunol. Methods 125:191-202;ならびに米国特許第5,807,715号、第4,816,567号、および第4,816,397号、CDRグラフティング(欧州特許第239,400号;PCT公開番号WO 91/09967;ならびに米国特許第5,225,539号、第5,530,101号、および第5,585,089号)、ベニアリングまたはリサーフェーシング(欧州特許第592,106号;欧州特許第519,596号;Padlan, 1991, Molecular Immunology 28(4/5):489-498;Studnickaら、1994, Protein Engineering 7:805;および Roguskaら、1994, PNAS 91:969)、ならびにチェーンシャッフリング(米国特許第5,565,332号)。
「ヒト化抗体」は、予め定めた抗原に結合することができ、かつ、実質的にヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有するフレームワーク領域と、実質的に非ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有するCDRとを含んでなる、抗体またはその変異体もしくはその断片である。ヒト化抗体は、CDR領域の全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリン(すなわち、ドナー抗体)のものに対応し、かつフレームワーク領域の全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメイン(Fab、Fab'、F(ab')2、Fabc、Fv)の実質的に全てを含む。一実施形態において、ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的には、ヒト免疫グロブリンの少なくとも一部を含む。通常、抗体は、軽鎖と、重鎖の少なくとも可変ドメインの両方を含むことになる。抗体はまた、重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3、およびCH4領域を含んでもよい。あらゆるクラスの免疫グロブリン(限定するものではないが、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEなど)、ならびにあらゆるアイソタイプの免疫グロブリン(限定するものではないが、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4など)からヒト化抗体を選択することができる。別の実施形態では、ヒト化抗体が細胞傷害活性を呈示するのが望ましい場合、定常ドメインは、補体結合性(complement fixing)定常ドメインであり、クラスは典型的にはIgG1である。このような細胞傷害活性が望ましくない場合には、定常ドメインはIgG2クラスのものでよい。ヒト化抗体は、2以上のクラスまたはアイソタイプ由来の配列を含んでもよく、特定の定常ドメインを選択して、所望のエフェクター機能を最適化することは、当業者の技術の範囲内である。ヒト化抗体のフレームワークおよびCDR領域が、親配列と厳密に対応する必要はなく、例えば、少なくとも1つの残基の置換、挿入または欠失により、ドナーCDRまたはコンセンサスフレームワークに突然変異誘発を起こし、その部位でのCDRまたはフレームワーク残基がコンセンサスまたは移入抗体のいずれかと対応しないようにしてもよい。しかし、このような突然変異は広範囲に及ぶものではない。一実施形態では、少なくとも75%、少なくとも90%、および/または少なくとも95%のヒト化抗体残基が、親フレームワーク領域(FR)およびCDR配列のものに対応する。ヒト化抗体は、当分野では公知の様々な技術を用いて生産することができ、このような技術として、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:CDRグラフティング(欧州特許第239,400号;PCT公開番号WO 91/09967;および米国特許第5,225,539号、第5,530,101号および第5,585,089号)、ベニアリングまたはリサーフェーシング(欧州特許第592,106号および欧州特許第519,596号;Padlan, 1991, Molecular Immunology 28(4/5):489-498;Studnickaら、1994, Protein Engineering 7(6):805-814;ならびにRoguskaら、1994, PNAS 91:969-973)、チェーンシャッフリング(米国特許第5,565,332号)、ならびに下記文献に開示されている技術:例えば、米国特許第6,407,213号、米国特許第5,766,886号、PCT特許公開番号WO 93/17105、Tanら、2002, J. Immunol. 169:1119-25、Caldasら、2000, Protein Eng. 13:353-60、Moreaら、2000, Methods 20:267-79、Bacaら、1997, J. Biol. Chem. 272:10678-84、Roguskaら、1996, Protein Eng. 9:895-904、Coutoら、1995, Cancer Res. 55 (23 Supp):5973s - 5977s、Coutoら、1995, Cancer Res. 55:1717-22, Sandhu JS, Gene 150(2):409-10 (1994)、およびPedersenら、1994, J. Mol. Biol. 235:959-73。往々にして、フレームワーク領域内のフレームワーク残基をCDRドナー抗体由来の対応残基で置換することにより、抗原結合を改変および/または改善する。これらのフレームワーク置換は、当分野で周知の方法、例えば、CDRとフレームワーク残基の相互作用のモデル化により、抗原結合について重要なフレームワーク残基を同定すること、ならびに、配列比較により、特定位置の特異なフレームワーク残基を同定すること、によって同定される(例えば、Queenら、米国特許第5,585,089号;およびRiechmannら、1988, Nature 332:323を参照)。
用語「ADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)」とは、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が、標的細胞に結合した抗体を認識した後、この標的細胞の溶解を引き起こすという細胞媒介性反応を意味する。ADCCを媒介する主要細胞であるNK細胞が、FcγRIIIのみを発現するのに対し、単球は、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。目的とする分子のADCC活性を評価するために、in vitro ADCCアッセイ(例えば、米国特許第5,500,362号および米国特許第5,821,337号に記載されているものなど)を実施することができる。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞として、末梢血液単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。
「補体依存性細胞傷害」および「CDC」とは、補体の存在下で標的細胞を溶解することを意味する。補体活性化経路は、補体系(C1q)の第1成分と、分子、例えば、コグネイト抗原と複合体化した抗体、との結合により開始される。補体活性化を評価するために、CDCアッセイ(例えば、Gazzano-Santoroら、1996, J. Immunol. Methods, 202:163に記載のもの)を実施することができる。
5.詳細な説明
本発明は、細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片に関し、本明細書ではこれを「本発明の抗体」およびこれと同様の用語で呼ぶ。
本発明は、細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片に関し、本明細書ではこれを「本発明の抗体」およびこれと同様の用語で呼ぶ。
一実施形態において、本発明の抗体は、マウス抗体、霊長類抗体、キメラ抗体、霊長類化抗体、ヒト化抗体もしくはヒト抗体である。一実施形態では、本発明の抗体は、ヒト抗体である。
一実施形態において、本発明の抗体は、IgA、IgE、IgM、IgD、IgYおよびIgGからなる群より選択される免疫グロブリンタイプのものである。
一実施形態において、本発明の抗体は、この抗体を細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面にターゲッティングするアミノ酸配列を有する重鎖またはその断片を含む。一実施形態では、本発明の抗体は、この抗体を原形質膜の細胞外表面にターゲッティングするアミノ酸配列を有する重鎖またはその断片を含み、その際、上記アミノ酸配列は、上記重鎖またはその断片のC末端に融合している。
別の実施形態において、本発明の抗体は、この抗体を細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面にターゲッティングするアミノ酸配列を有する軽鎖またはその断片を含む。具体的実施形態では、本発明の抗体は、この抗体を原形質膜の細胞外表面にターゲッティングするアミノ酸配列を有する軽鎖またはその断片を含み、その際、上記アミノ酸配列は、上記軽鎖またはその断片のC末端に融合している。
さらに別の実施形態において、本発明の抗体は、一本鎖抗原結合ドメイン(限定するものではないが、scFVなど)を含み、この一本鎖抗体を細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面にターゲッティングするアミノ酸配列を有している。特定の実施形態では、上記一本鎖抗体を細胞の原形質膜の細胞外表面にターゲッティングするアミノ酸配列は、膜貫通ドメインまたはGPIアンカードメイン(図1)である。特定の実施形態では、上記一本鎖抗体は、Fc領域に融合しており、上記膜ターゲッティングドメインは、一本鎖抗体Fc融合タンパク質のC末端に融合している。
一実施形態では、抗体を原形質膜の細胞外表面にターゲッティングする前記アミノ酸配列は、膜貫通ドメイン(図1)である。別の実施形態では、抗体を原形質膜の細胞外表面にターゲッティングする前記アミノ酸配列は、GPIアンカードメインである。
一実施形態において、本発明の抗体は、この抗体を細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面にターゲッティングする膜貫通ドメインを有する重鎖またはその断片を含む。具体的実施形態では、本発明の抗体は、この抗体を原形質膜の細胞外表面にターゲッティングする膜貫通ドメインを有する重鎖またはその断片を含み、その際、上記膜貫通ドメインは、上記重鎖またはその断片のC末端に融合している。
一実施形態において、本発明の細胞表面提示抗体またはその断片は、配列番号2のアミノ酸配列またはその機能的断片を有するトロンボモジュリンの膜貫通ドメインを含む。別の実施形態では、本発明の細胞表面提示抗体またはその断片は、配列番号2と少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも99%同一の膜貫通ドメインを含む。
一実施形態において、本発明の細胞表面提示抗体またはその断片は、配列番号4のアミノ酸配列またはその機能的断片を有するAx12pの膜貫通ドメインを含む。別の実施形態では、本発明の細胞表面提示抗体またはその断片は、配列番号4と少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも99%同一の膜貫通ドメインを含む。
一実施形態において、本発明の細胞表面提示抗体またはその断片は、配列番号6のアミノ酸配列またはその機能的断片を有するSwp1pの膜貫通ドメインを含む。別の実施形態では、本発明の細胞表面提示抗体またはその断片は、配列番号6と少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも99%同一の膜貫通ドメインを含む。
別の実施形態において、本発明の抗体は、この抗体を細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面にターゲッティングする膜貫通ドメインを有する軽鎖またはその断片を含む。具体的実施形態では、本発明の抗体は、この抗体を原形質膜の細胞外表面にターゲッティングする膜貫通ドメインを有する軽鎖またはその断片を含み、その際、上記膜貫通ドメインは、上記軽鎖またはその断片のC末端に融合している。
一実施形態において、本発明の抗体は、この抗体を細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面にターゲッティングするアミノ酸配列を有する全長重鎖を含み、その際、上記アミノ酸配列は、上記重鎖のC末端に融合しており、かつ上記抗体は、全長軽鎖またはその断片をさらに含んでもよい。さらに別の実施形態では、本発明の抗体は、この抗体を原形質膜の細胞外表面にターゲッティングするアミノ酸配列を有する重鎖の一部を含み、その際、上記アミノ酸配列は、上記重鎖部分のC末端に融合しており、かつ上記抗体は、軽鎖またはその断片をさらに含んでもよい。さらにまた別の実施形態では、本発明の抗体は、この抗体を細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面にターゲッティングするアミノ酸配列を有する一本鎖抗原結合ドメイン(限定するものではないが、scFVなど)を含み、その際、上記アミノ酸配列は、上記一本鎖抗体のN末端またはC末端のいずれかに融合している。特定の実施形態では、上記一本鎖抗体はFc領域に融合し、また、上記アミノ酸配列は、上記一本鎖抗体Fc融合タンパク質のN末端またはC末端のいずれかに融合している。
一実施形態において、本発明の抗体は、この抗体を細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面にターゲッティングする膜貫通ドメインを有する全長重鎖を含み、その際、上記膜貫通ドメインは、上記重鎖のC末端に融合しており、かつ上記抗体は、全長軽鎖またはその断片をさらに含んでもよい。別の実施形態では、本発明の抗体は、この抗体を原形質膜の細胞外表面にターゲッティングする膜貫通ドメインを有する重鎖の一部を含み、その際、上記膜貫通ドメインは、上記重鎖部分のC末端に融合しており、かつ上記抗体は、軽鎖またはその断片をさらに含んでもよい。また別の実施形態では、本発明の抗体は、一本鎖抗原結合ドメイン(限定するものではないが、scFVなど)を含み、該ドメインは、この一本鎖抗体を細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面にターゲッティングする膜貫通ドメインを有しており、その際、上記膜貫通ドメインは、上記一本鎖抗体のN末端またはC末端のいずれかに融合している。特定の実施形態では、上記一本鎖抗体はFc領域に融合し、また、上記膜貫通ドメインは、上記一本鎖抗体Fc融合タンパク質のN末端またはC末端のいずれかに融合している。
本発明はまた、細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドに関し、本明細書ではこれを「本発明のポリヌクレオチド」と称する。一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、2つの機能的に連結されたコーディング領域を含み、その際、第1のコーディング領域は、抗体ポリペプチドまたはその断片をコードし、第2のコーディング領域は、膜貫通ドメインをコードする。別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、2つの機能的に連結されたコーディング領域を含み、その際、これらのコーディング領域は直接隣接している。さらに別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、2つの機能的に連結されたコーディング領域を含み、その際、これらのコーディング領域は、少なくとも1つのコドンにより隔てられている。
本発明はさらに、細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含むベクターに関し、本明細書ではこれを「本発明のベクター」と称する。一実施形態では、本発明のベクターは、シャトルベクターである。具体的実施形態では、本発明のベクターは、本発明の抗体を発現することができる大腸菌宿主細胞、ならびに真核宿主細胞において複製が可能なシャトルベクターである。さらに別の実施形態では、本発明のベクターは、大腸菌宿主細胞および酵母宿主細胞において複製が可能なシャトルベクターである。具体的実施形態では、本発明のベクターは、大腸菌宿主細胞およびビール酵母(S. serevisiae)宿主細胞において複製が可能なシャトルベクターである。
一実施形態において、本発明のベクターは、エピソームベクターである。別の実施形態では、本発明のベクターは、組込みベクターである。一実施形態では、本発明のベクターは、単コピーベクターである。別の実施形態では、本発明のベクターは、低コピー数ベクターである。さらに別の実施形態では、本発明のベクターは、高コピー数ベクターである。具体的実施形態では、本発明のベクターは、自律複製性の低コピー数酵母ベクターである。
一実施形態において、本発明のベクターは、宿主細胞内で細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面での抗体またはその断片の発現および提示を指令するように操作可能である。一実施形態では、本発明のベクターは、原形質膜に提示された抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターまたは転写ターミネーターを含んでもよい。別の実施形態では、本発明のベクターは、第1および第2ポリヌクレオチドを含んでいてもよく、その際、シグナル配列ペプチドをコードする第1ポリヌクレオチドは、原形質膜に提示されうる抗体またはその断片をコードする第2ポリヌクレオチドに機能的に連結されている。
一実施形態において、本発明のベクターは単一ベクターである。別の実施形態において、本発明のベクターは、ベクターのセットである。さらに別の実施形態において、本発明のベクターは、2つのベクターのセットであり、その際、第1のベクターは、抗体またはその断片の重鎖をコードするポリヌクレオチドを含み、第2のベクターは、抗体またはその断片の軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含んでおり、上記抗体またはその断片は原形質膜の細胞外表面に提示されうる。
本発明はまた、原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片を含む宿主細胞に関し、本明細書ではこれを「本発明の宿主細胞」と称する。一実施形態では、本発明の宿主細胞は、子嚢菌門から選択される真核細胞である。別の実施形態では、本発明の宿主細胞は、サッカロミセス(Saccharomyces)属、ピキア(Pichia)属、ハンセヌラ(Hansenula)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属、ヤロウィア(Yarrowia)属、またはカンジダ(Candida)属に属する細胞である。具体的実施形態において、本発明の宿主細胞は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、またはヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)である。別の実施形態では、本発明の宿主細胞は、S. セレビシエ(S. cerevisiae)である。別の実施形態では、本発明の宿主細胞は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)である。
本発明はまた、細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片の異種集団を含むライブラリーに関し、本明細書ではこれを「本発明の抗体ライブラリー」と称する。一実施形態において、本発明の抗体ライブラリーは、重鎖可変領域の異種集団を含んでもよい。別の実施形態では、本発明の抗体ライブラリーは、軽鎖可変領域の異種集団を含んでもよい。さらに別の実施形態では、本発明の抗体ライブラリーは、一本鎖抗原結合ドメイン(限定するものではないが、scFvドメインなど)の異種集団を含んでもよい。特定の実施形態では、このライブラリーは、各々がFc領域に融合した一本鎖抗体の異種集団を含んでもよい。さらに別の実施形態では、本発明の抗体ライブラリーは、Fc領域(変異体Fc領域を含む)の異種集団を含んでもよい。
当業者であれば、抗体またはその断片が、重鎖可変領域、軽鎖可変領域およびFc領域を含むこともあり、それらのいずれか1つまたはそれらの任意の組合せが、本発明の抗体ライブラリー内に異種集団を構成しうることを理解するだろう。
一実施形態では、本発明の抗体ライブラリーは、全長抗体のライブラリーであり、その際、本発明の抗体ライブラリーは、重鎖可変領域の異種集団および/または軽鎖可変領域の異種集団を含む。別の実施形態では、本発明の抗体ライブラリーは、抗体断片のライブラリーであり、その際、本発明の抗体ライブラリーは、重鎖可変領域の異種集団および/または軽鎖可変領域の異種集団を含む。さらに別の実施形態では、本発明の抗体ライブラリーは、一本鎖抗原結合ドメイン(限定するものではないが、scFvドメインなど)の異種集団を含む。特定の実施形態では、このライブラリーは、各々がFc領域に融合した一本鎖抗体の異種集団を含む。さらに別の実施形態では、本発明の抗体ライブラリーは、全長抗体またはFc融合タンパク質のライブラリーであり、その際、本発明の抗体ライブラリーは、Fc領域(変異体Fc領域を含む)の異種集団を含む。別の実施形態では、本発明の抗体ライブラリーは、抗体断片のライブラリーであり、その際、本発明の抗体ライブラリーは、Fc領域(変異体Fc領域を含む)の異種集団を含む。
本発明はまた、細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含むライブラリーに関し、本明細書ではこれを「本発明のポリヌクレオチドライブラリー」と称する。一実施形態において、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、重鎖可変領域の異種集団を含む抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、軽鎖可変領域の異種集団を含む抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。さらに別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、一本鎖抗原結合ドメイン(限定するものではないが、scFvドメインなど)の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。特定の実施形態では、このライブラリーは、各々がFc領域と融合した一本鎖抗体の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含む。さらに別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、Fc領域(変異体Fc領域を含む)の異種集団を含む抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。
当業者であれば、抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドが、重鎖可変領域、軽鎖可変領域およびFc領域をコードする可能性があり、それらのいずれか1つ、またはそれらの任意の組合せが、本発明のポリヌクレオチドライブラリー内に異種集団を構成しうることを理解するだろう。
一実施形態において、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、全長抗体をそれぞれコードするポリヌクレオチドのライブラリーであり、その際、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、重鎖可変領域の異種集団および/または軽鎖可変領域の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含む。別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、各々が抗体断片をコードするポリヌクレオチドのライブラリーであり、その際、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、重鎖可変領域の異種集団および/または軽鎖可変領域の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含む。さらに別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、一本鎖抗原結合ドメイン(限定するものではないが、scFvドメインなど)をコードするポリヌクレオチドのライブラリーである。特定の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、各々がFc領域と融合した一本鎖抗体をコードするポリヌクレオチドのライブラリーである。さらに別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、各々が全長抗体をコードするポリヌクレオチドのライブラリーであり、その際、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、Fc領域(変異体Fc領域を含む)の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含む。別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、各々が抗体断片をコードするポリヌクレオチドのライブラリーであり、その際、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、Fc領域(変異体Fc領域を含む)の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含む。さらにまた別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、単一抗体ドメインをコードするポリヌクレオチドのライブラリーであり、その際、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、Fc領域(変異体Fc領域を含む)の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含む。
一実施形態において、本発明のベクターは、本発明のポリヌクレオチドライブラリーのメンバーを含む。従って、本発明は、各々が本発明のポリヌクレオチドライブラリーのメンバーを含むベクターの集団をさらに提供する。
一実施形態において、本発明の宿主細胞の集団は、本発明のポリヌクレオチドライブラリーを含む。このライブラリーを含む宿主細胞の集団を本明細書では「本発明の宿主細胞ライブラリー」とも呼ぶ。当業者であれば、宿主細胞の集団の各メンバー(すなわち、各宿主細胞)が、一般に、本発明のポリヌクレオチドライブラリーの限定数のメンバーを含むことを理解するだろう。一実施形態では、各宿主細胞は、本発明のポリヌクレオチドライブラリーの1〜6メンバーを含む。従って、各宿主細胞が、原形質膜の細胞外表面に1種だけ、または2種だけ、または3種だけ抗体を発現することが意図される。
一実施形態において、宿主細胞の集団は、本発明のライブラリーを含み、その際、上記宿主細胞は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、またはヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)からなる群より選択される。具体的実施形態では、宿主細胞の集団は、本発明のライブラリーを含み、その際、上記宿主細胞は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)である。別の実施形態では、宿主細胞の集団は、本発明のライブラリーを含み、その際、上記宿主細胞は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。
また、本発明は、本発明のライブラリーのスクリーニング方法も提供する。本発明はまた、所望の特性を有する抗体またはその断片の同定を容易にするスクリーニング方法も提供する。一実施形態において、ライブラリーのスクリーニング方法により、特定の抗原に結合する抗体またはその断片の同定が可能になる。一実施形態では、ライブラリーのスクリーニング方法により、特定の抗原との結合が改変された抗体またはその断片の同定を可能にする。一実施形態では、ライブラリーのスクリーニング方法により、エフェクター分子(例えば、FcγRおよび/またはC1q)との結合が改変された抗体またはその断片の同定が可能になる。
本発明はまた、所望の結合特性を有する抗体またはその断片を含む宿主細胞を選択する方法であって、a)原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドのライブラリーを宿主細胞に導入するステップ;b)ライブラリーを含む宿主細胞を培養することにより、原形質膜の細胞外表面に各抗体またはその断片を発現させ、提示させるステップ;c)上記宿主細胞を抗体結合試薬(例えば、抗原、FcγR、C1q)と接触させるステップ;ならびにd)上記抗体結合試薬に結合した原形質膜提示抗体またはその断片を含む宿主細胞を単離するステップを含む、上記方法を提供する。本発明はさらに、1)単離した宿主細胞から核酸を回収する;2)上記核酸から少なくとも1つの抗体可変領域をコードする核酸を増幅する;3)増幅核酸を第2のベクターに挿入する(その際、第2ベクターは、挿入された核酸と共に、分泌された可溶性抗体をコードする)、4)上記第2ベクターで宿主細胞を形質転換する、各方法をさらに提供する。
本発明はまた、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)作用に基づく抗体のスクリーニング方法も提供する。一実施形態では、本発明のライブラリーは、抗体Fc変異体を含む。
5.1 抗体
本発明に従い、実質的にあらゆる種類の抗体を用いることができる。このようなものとして、限定するものではないが、合成抗体、モノクローナル抗体、組換えにより作製した抗体、細胞内抗体、多重特異性抗体、ダイアボディ、二重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、一本鎖抗体Fv(scFv)、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、ジスルフィド結合Fv(scFv)、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体、これらのうちいずれかのエピトープ結合断片、ならびに、これらのうちいずれかのFc-融合物などが挙げられる。本発明の方法で用いられる抗体としては、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分が挙げられる。本発明の免疫グロブリン分子は、いずれのタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)もしくはサブクラスの免疫グロブリン分子であってもよい。
本発明に従い、実質的にあらゆる種類の抗体を用いることができる。このようなものとして、限定するものではないが、合成抗体、モノクローナル抗体、組換えにより作製した抗体、細胞内抗体、多重特異性抗体、ダイアボディ、二重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、一本鎖抗体Fv(scFv)、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、ジスルフィド結合Fv(scFv)、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体、これらのうちいずれかのエピトープ結合断片、ならびに、これらのうちいずれかのFc-融合物などが挙げられる。本発明の方法で用いられる抗体としては、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分が挙げられる。本発明の免疫グロブリン分子は、いずれのタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)もしくはサブクラスの免疫グロブリン分子であってもよい。
抗体または抗体断片は、鳥類および哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ロバ、ヒツジ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ウマ、もしくはニワトリ)を含むあらゆる動物に由来するものでよい。一実施形態では、抗体はヒトまたはヒト化モノクローナル抗体である。本明細書で用いる「ヒト」抗体は、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有する抗体を包含し、ヒト免疫グロブリンライブラリーから単離した抗体、またはヒト遺伝子由来の抗体を発現するマウスから単離した抗体を含む。本発明に従って用いられる抗体または抗体断片は、単一特異性、二重特異性、三重特異性、もしくはそれ以上の多重特異性のいずれでもよい。多重特異性抗体は、所望の標的分子の様々なエピトープに特異的に結合するものでもよいし、標的分子と、異種エピトープ(例えば、異種ポリペプチドもしくは固体支持体材料など)の両方に特異的に結合するものでもよい。例えば、PCT公開番号WO 93/17715、WO 92/08802、WO 91/00360、およびWO 92/05793;Tuttら、1991, J. Immunol. 147:60-69;米国特許第4,474,893号、第4,714,681号、第4,925,648号、第5,573,920号、および第5,601,819号;ならびにKostelnyら、1992, J. Immunol. 148:1547-1553を参照されたい。本発明はまた、単一ドメイン抗体(ラクダ化単一ドメイン抗体など)を用いて実施してもよい(例えば、Muyldermansら、2001, Trends Biochem. Sci. 26:230;Nuttallら、2000, Cur. Pharm. Biotech. 1:253;ReichmannおよびMuyldermans, 1999, J. Immunol. Meth. 231:25;PCT公開番号WO 94/04678およびWO 94/25591;米国特許第6,005,079号を参照)。
本発明の実施形態は、任意の標的に結合する抗体を含む。当分野で公知の任意の抗体を操作して、原形質膜の細胞外表面に提示させるようにしてもよい。従って、任意の抗体を用いて、結合特性が改変された変異体のライブラリーを作製することができる。ライブラリーのメンバー間の変異は、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、Fc領域、もしくはそのいずれかの組合せに制限することもできる。
抗体は、どんな種に由来するものでもよく、キメラ抗体もしくはヒト化抗体でもよい。一実施形態では、抗体はヒト抗体である。一実施形態では、抗体はヒト化抗体である。
当分野ですでに記載されている抗体から、原形質膜提示変異体のライブラリーを作製することも意図され、このような抗体として、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:抗フルオレセインモノクローナル抗体、4-4-20(Kranzら、1982 J. Biol. Chem. 257(12): 6987-6995)、ヒト化抗TAG72抗体(CC49)(Shaら、1994 Cancer Biother. 9(4): 341-9)、Eph受容体に特異的に結合する抗体(限定するものではないがPCT公開番号WO 04/014292、WO 03/094859および米国特許出願番号10/863,729に開示されているものを含む)、インテグリンαVβ3に特異的に結合する抗体(限定するものではないが、LM609(Scripps)、マウスモノクローナルLM609(PCT公開番号WO 89/015155および米国特許第5,753,230号)を含む);ヒト化モノクローナル抗体MEDI-522(また、VITAXIN(登録商標)(MedImmune, Inc.、ゲザーズバーグ、メリーランド州)としても知られる;Wuら、1998, PNAS USA 95(11): 6037-6042;PCT公開番号WO 90/33919およびWO 00/78815)、WO/2005/05059106に開示のようなインターフェロンαに対する抗体、WO/2006/059106に開示のようなインターフェロン受容体1に対する抗体、Erbitux(商標)(また、IMC-C225としても知られる)(ImClone Systems Inc.)、EGFRに対するキメラ化モノクローナル抗体;転移性乳癌患者治療のためのヒト化抗HER2モノクローナル抗体であるHERCEPTIN(登録商標)(Trastuzumab)(Genentech、カリフォルニア州);血栓形成予防のための、血小板の抗糖タンパク質IIb/IIIa 受容体であるREOPRO(登録商標)(abciximab)(Centocor);急性腎同種移植片拒絶の予防のための免疫抑制性ヒト化抗CD25モノクローナル抗体であるZENAPAX(登録商標)(Roche Pharmaceuticals、スイス)。その他の例として、以下のものが挙げられる:ヒト化抗CD18 F(ab')2(Genentech);ヒト化抗CD18 F(ab')2であるCDP860(Celltech、英国);CD4と融合した抗HIV gp120抗体であるPRO542(Progenics/Genzyme Transgenics);抗CD14 抗体であるC14(ICOS Pharm);ヒト化抗VEGF IgG1抗体(Genentech);マウス抗CA 125抗体であるOVAREX(商標)(Altarex);マウス抗17-IA細胞表面抗原IgG2a抗体であるPANOREX(商標)(Glaxo Wellcome/Centocor);キメラ抗EGFR IgG抗体であるIMC-C225(ImClone System);ヒト化抗αVβ3インテグリン抗体であるVITAXIN(商標)(Applied Molecular Evolution/MedImmune);ヒト化抗CD52 IgG1抗体であるCampath 1H/LDP-03(Leukosite);ヒト化抗CD33IgG抗体であるSmart M195(Protein Design Lab/Kanebo);キメラ抗CD20 IgG1抗体であるRITUXAN(商標)(IDEC Pharm/Genentech、Roche/Zettyaku);ヒト化抗CD22 IgG抗体であるLYMPHOCIDE(商標)(Immunomedics);ヒト化抗HLA 抗体であるSmart ID10(Protein Design Lab);放射標識マウス抗HLA DR 抗体である ONCOLYM(商標)(Lym-1)(Techniclone);ヒト化IgG1抗体である抗CD11(Genetech/Xoma);ヒト化抗ICAM3抗体であるICM3(ICOS Pharm);霊長類化抗CD80抗体であるIDEC-114(IDEC Pharm/Mitsubishi);放射標識マウス抗CD20抗体である ZEVALIN(商標)(IDEC/Schering AG);ヒト化抗CD40L 抗体であるIDEC-131(IDEC/Eisai);霊長類化抗CD4抗体であるIDEC-151(IDEC);霊長類化抗CD23抗体であるIDEC-152(IDEC/Seikagaku); ヒト化抗CD3 IgGであるSMART抗CD3 (Protein Design Lab); ヒト化抗補体因子5(C5)抗体である5G1.1(Alexion Pharm);霊長類化抗CD4IgG1抗体であるIDEC-151(IDEC Pharm/SmithKline Beecham);ヒト抗CD4IgG抗体である MDX-CD4(Medarex/Eisai/Genmab);ヒト化抗TNF-αIgG4抗体であるCDP571(Celltech);ヒト化抗α4β7抗体であるLDP-02(LeukoSite/Genentech);ヒト化抗CD4 IgG 抗体であるOrthoClone OKT4A(Ortho Biotech);ヒト化抗CD40L IgG抗体であるANTOVA(商標)(Biogen);ヒト化抗VLA-4 IgG抗体である ANTEGREN(商標)(Elan);ヒト抗CD64 (FcγR) 抗体である MDX-33(Medarex/Centeon);ヒト化抗IgE IgG1抗体であるrhuMab-E25(Genentech/Norvartis/Tanox Biosystems);霊長類化抗CD23抗体であるIDEC-152(IDEC Pharm);マウス抗CD-147 IgM抗体であるABX-CBL(Abgenix);ラット抗CD2 IgG抗体であるBTI-322(Medimmune/Bio Transplant);マウス抗CD3 IgG2a抗体であるOrthoclone/OKT3(ortho Biotech);キメラ抗CD25 IgG1抗体であるSIMULECT(商標)(Novartis Pharm);ヒト化抗β2-インテグリンIgG 抗体であるLDP-01(LeukoSite);マウス抗CD18 F(ab')2 である抗LFA-1(Pasteur-Merieux/Immunotech);ヒト抗TGF-β2抗体であるCAT-152(Cambridge Ab Tech);ならびにキメラ抗因子VII抗体であるCorsevin M(Centocor)。
本発明に従い用いることのできる別の抗体は、癌または腫瘍抗原に特異的に結合するものでもよく、このような抗原として、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:KS 1/4パン(pan)癌抗原(PerezおよびWalker, 1990, J. Immunol. 142: 3662-3667;Bumal, 1988, Hybridoma 7(4): 407-415);卵巣癌抗原(CA125)(Yuら、1991, Cancer Res. 51(2): 468-475);前立腺性酸性ホスファターゼ(Tailorら、1990, Nucl. Acids Res. 18(16): 4928);前立腺特異的抗原(HenttuおよびVihko, 1989, Biochem. Biophys. Res. Comm. 160(2): 903-910;Israeliら、1993, Cancer Res. 53: 227-230);黒色腫関連抗原p97(Estinら、1989, J. Natl. Cancer Instit. 81(6): 445-446);黒色腫抗原gp75(Vijayasardahlら、1990, J. Exp. Med. 171(4): 1375-1380);高分子量黒色腫抗原(HMW-MAA)(Nataliら、1987, Cancer 59: 55-63;Mittelmanら、1990, J. Clin. Invest. 86: 2136-2144);前立腺特異的膜抗原;癌胎児性抗原(CEA)((Foonら、1994, Proc. Am. Soc. Clin. Oncol. 13: 294);多形上皮ムチン抗原;ヒト乳脂肪球抗原;直腸結腸腫瘍関連抗原、例えば、CEA、TAG-72(Yokataら、 1992, Cancer Res. 52: 3402-3408)、CO17-1A(Ragnhammarら、1993, Int. J. Cancer 53: 751-758);GIGA 19-9(Herlynら、1982, J. Clin. Immunol. 2: 135)、CTA-1およびLEA;バーキットリンパ腫抗原-38.13;CD19(Ghetieら、1994, Blood 83: 1329-1336);ヒトBリンパ腫抗原-CD20(Reffら、1994, Blood 83:435-445);CD33(Sgourosら、1993, J. Nucl. Med. 34:422-430);黒色腫特異的抗原、例えば、ガングリオシドGD2(Salehら、1993, J. Immunol., 151, 3390-3398)、ガングリオシドGD3(Shitaraら、1993, Cancer Immunol. Immunother. 36:373-380)、ガングリオシドGM2(Livingstonら、1994, J. Clin. Oncol. 12: 1036-1044)、ガングリオシドGM3(Hoonら、1993, Cancer Res. 53: 5244-5250);腫瘍特異的移植型の細胞表面抗原(TSTA)、例えば、ウイルス誘導型腫瘍抗原(例:T抗原DNA腫瘍ウイルスおよびRNA腫瘍ウイルスのエンベロープ抗原);癌胎児性抗原αフェトプロテイン、例えば、結腸のCEA、膀胱腫瘍癌胎児性抗原(Hellstromら、1985, Cancer. Res. 45:2210-2188);分化抗原、例えば、ヒト肺癌抗原L6、L20(Hellstromら、1986, Cancer. Res. 46:3917-3923);繊維肉腫の抗原;ヒト白血病T細胞抗原-Gp37(Bhattacharya-Chatterjeeら、1988, J. of Immun. 141:1398-1403);ネオ糖タンパク質;スフィンゴ脂質;EGFR(表皮増殖因子受容体)のような乳癌抗原;HER2抗原(p185HER2);多形上皮ムチン(PEM)(Hilkensら、1992, Trends in Bio. Chem. Sci. 17:359);悪性ヒトリンパ球抗原-APO-1(Bernhardら、Science 245: 301-304);分化抗原(Feizi, 1985, Nature 314: 53-57)、例えば、胎児赤血球に存在するI抗原、成体赤血球に存在する一次内胚葉I抗原、前移植胚、胃腺癌に存在するI(Ma)、乳房上皮に存在するM18、M39、骨髄性細胞に存在するSSEA-1、結腸直腸癌に存在するD156-22、VEP8、VEP9、Myl、VIM-D5、結腸腺癌に存在するC14、TRA-1-85(血液群H)、肺腺癌に存在するF3、胃癌に存在するAH6、胚性癌細胞に存在するLey、Yハプテン、A431細胞に存在するEGF受容体、TL5(血液群A)、膵臓癌に存在するE1系列(血液群B)、胚性癌細胞に存在するFC10.2、腺癌に存在するCO-514(血液群Lea)、胃腺癌抗原、腺癌に存在するNS-10、A431細胞のEGF受容体に存在するG49、CO-43(血液群Leb)、結腸腺癌に存在するMH2(血液群ALeb/Ley)、結腸癌に存在する19.9、骨髄性細胞に存在するT5A7、胃癌ムチン、黒色腫に存在するR24、胚性癌細胞に存在する4.2、GD3、D1.1、OFA-1、GM2、OFA-2、GD2、およびM1:22:25:8、ならびに、4〜8細胞期胚に存在するSSEA-3およびSSEA-4。一実施形態では、抗原は、皮膚T細胞リンパ腫に由来するT細胞受容体誘導ペプチドである(Edelson, 1998, The Cancer Journal 4:62参照)。
5.2 膜貫通ドメイン
本発明は、酵母原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片に関し、本明細書ではこれを「本発明の抗体」およびこれと同様の用語で呼ぶ。特定の実施形態において、本発明の抗体は、重鎖またはその断片、および軽鎖またはその断片を含み、その際、重鎖または軽鎖のいずれかは、該抗体またはその断片を酵母原形質膜の細胞外表面にターゲッティングする膜貫通ドメインを含む。膜貫通ドメインは天然の供給源に由来するもの、または合成起源のもののいずれでもよい。合成膜貫通ドメインについては、Lawsonらによる米国特許第7,052,906号に記載されている。
本発明は、酵母原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片に関し、本明細書ではこれを「本発明の抗体」およびこれと同様の用語で呼ぶ。特定の実施形態において、本発明の抗体は、重鎖またはその断片、および軽鎖またはその断片を含み、その際、重鎖または軽鎖のいずれかは、該抗体またはその断片を酵母原形質膜の細胞外表面にターゲッティングする膜貫通ドメインを含む。膜貫通ドメインは天然の供給源に由来するもの、または合成起源のもののいずれでもよい。合成膜貫通ドメインについては、Lawsonらによる米国特許第7,052,906号に記載されている。
タンパク質の膜貫通領域は、高度に疎水性または親油性ドメインであり、細胞膜の脂質二重層を貫通することにより、該タンパク質を細胞膜内に固定するのに適切な大きさである。これらは典型的に、しかし常にというわけではないが、15〜30個のアミノ酸を含む。Chouら(1999 Biotechnology and Bioengineering 65(2):160-169)を参照されたい。この文献には、様々な供給源タンパク質に由来する多数の膜貫通ドメインを用いて、細胞表面に広範なタンパク質の配列を提示することが記載されている。当業者であれば、Chouら(1999)で実施されている方法を適応して、本発明で用いる様々な細胞膜貫通ドメインを最適化またはスクリーニングすることができる。
所与の膜貫通タンパク質は、単一または複数の膜貫通ドメインを含みうる。例えば、受容体チロシンキナーゼ、特定のサイトカイン受容体、受容体グアニリルシクラーゼおよび受容体セリン/トレオニンタンパク質キナーゼは、単一の膜貫通ドメインを含む。他のタンパク質、例えば、膜チャンネル成分およびアデニリルシクラーゼは、多数の膜貫通ドメインを含んでおり、7つの膜貫通領域を有する共通の特性により「7回膜貫通型ドメイン」タンパク質として分類される細胞表面受容体の群も同様である。単一膜貫通ドメインを含む受容体タンパク質の例として、限定するものではないが、インスリン受容体、インスリン様増殖因子受容体、ヒト成長ホルモン受容体、グルコース輸送体、トランスフェリン受容体、上皮増殖因子受容体、低密度リポタンパク質受容体、上皮増殖因子受容体、レプチン受容体、およびインターロイキン受容体(例えば、IL-1受容体、IL-2受容体)が挙げられる。
特定の理論に拘束されるわけではないが、真核生物における分泌および膜結合タンパク質の大部分は、その翻訳と同時に小胞体膜を通して移行する(WickerおよびLodish, Science 230:400 (1985);VernerおよびSchatz, Science 241:1307 (1988);Hartmannら、Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 86:5786 (1989);Matlackら、Cell 92:381 (1998))。この同時翻訳移行プロセスの第1段階で、新生ポリペプチドのN末端疎水性セグメントである「シグナル配列」は、シグナル認識粒子(SRP)と複合体を形成し、その後、これはSRPと膜結合SRP受容体との相互作用により小胞体膜に固定される。これら相互作用の結果、シグナル配列は、小胞体膜を横断し、新生ポリペプチドの残りは、この移行機構を通って小胞体ルーメン内に進入し始める。移行プロセスの終了時に、上記シグナルペプチドは、専用のプロテアーゼにより、移行されたポリペプチド鎖から切断され、これによって、SRP/受容体/シグナルペプチド複合体の分解が起こる。
1回膜貫通型タンパク質は、下記2つの基本機構の1つにより原形質膜に挿入されると考えられる。I型膜貫通ドメインタンパク質の場合、新生ポリペプチドのN末端に位置するシグナル配列が、前記のように膜を通した移行を開始する。いったん膜貫通ドメインが膜内に挿入されると、移行は停止する。成熟膜固定化タンパク質は、シグナル配列ペプチドの切断により、移行機構から解放される。I型膜貫通ドメインタンパク質の挿入プロセスは、常に、成熟タンパク質のC末端がサイトゾル内に位置する配向をもたらす。その結果、原形質膜に結合したI型膜貫通ドメインのN末端は、細胞外空間に配置される。IIおよびIII型膜貫通タンパク質の場合、移行は、内部「シグナルアンカードメイン」により開始するが、このドメインは、膜貫通ドメインおよび内部シグナル配列エレメントの両者として働く。上記「シグナルアンカードメイン」は、SRPにより認識され、SRP-SRP受容体相互作用により小胞体膜に運ばれる。この「シグナルアンカードメイン」は、自らを膜に挿入して、タンパク質移行を開始し、移行プロセスの終了時には、膜に結合したままである。シグナルアンカードメインは切断されない。これは、成熟膜に結合したタンパク質の一部である。「シグナルアンカードメイン」とタンパク質移行機構間の初期相互作用の配向によって、成熟膜貫通タンパク質の最終的配向が決定される。IIおよびIII型膜貫通ドメインタンパク質は、サイトゾル内にそれらのNおよびC末端をそれぞれ有する。その結果、原形質膜に結合したIIおよびIII型膜貫通ドメインは、細胞外空間にそれらのCおよびN末端をそれぞれ有する。
一実施形態では、膜貫通ドメインは、I型膜タンパク質由来のものである。別の実施形態では、膜貫通ドメインは、II型またはIII型シグナルアンカードメインである。
本明細書に膜貫通ドメインの例を記載するが、本発明の融合タンパク質の膜貫通ドメインは、原形質膜を貫通し、この膜に別のドメインを固定することができるどんなアミノ酸配列でもよい。膜貫通ドメインの特徴として、一般に、連続した疎水性アミノ酸が挙げられ、これに続いて、荷電アミノ酸が位置することもある。従って、当業者は、特定のタンパク質のアミノ酸配列を分析すれば、そのタンパク質内の膜貫通ドメインの位置および数を推定することができる。膜貫通ドメインは、疎水性領域または両親媒性領域を含むものでよい。疎水性領域は、疎水性アミノ酸(限定するものではないが、フェニルアラニン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、バリン、システイン、トリプトファン、アラニン、トレオニン、グリシンおよびセリンを含む)を含み、かつ疎水性αヘリックスを含む。
両親媒性領域は、疎水性および親水性アミノ酸、およびそれらの部分の両方を有し、両親媒性αヘリックスを含むことができる。親水性アミノ酸として、限定するものではないが、アルギニン、アスパラギン酸、リシン、グルタミン酸、アルパラギン、グルタミン、ヒスチジン、チロシンおよびプロリンなどが挙げられる。安定なαヘリックスを形成する膜貫通ドメインは、当分野においてすでに記載されている。
ほぼ全ての膜貫通ドメインが本発明と適合性である。膜貫通ドメインとして、限定するものではないが、以下由来のものが挙げられる:腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバー、CD30、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR、例えば、ヒトPDGFRのアミノ酸514〜562;Chestnutら、1996 J Immunological Methods 193:17-27;また、Gronwaldら、1988 PNAS 85:3435も参照);神経増殖因子受容体、マウスB7-1(Freemanら、1991 J Exp Med 174:625-631)、アシアログリコプロテイン受容体H1サブユニット(ASGPR;Speissら、1985 J Biol Chem 260:1979-1982)、CD27、CD40、CD120a、CD120b、CD80(Freemanら、1989 J Immunol 143:2714-22)リンホトキシンβ受容体、ガラクトシルトランスフェラーゼ(例えば、GenBank登録番号AF155582)、シアリルトランスフェラーゼ(例えば、GenBank登録番号NM-003032)、アスパルチルトランスフェラーゼ1(Asp1;例えば、GenBank登録番号AF200342)、アスパルチルトランスフェラーゼ2(Asp2;例えば、GenBank登録番号NM-012104)、シンタキシン6 (例えば、GenBank登録番号NM-005819)、ユビキチン、ドーパミン受容体、インスリンB鎖、アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(例えば、GenBank登録番号NM-002406)、APP(例えば、GenBank登録番号A33292)、Gタンパク質結合型受容体、トロンボモジュリン(Suzukiら、1987 EMBO J 6, 1891)およびTRAIL 受容体。一実施形態では、膜貫通ドメインは、ヒトタンパク質由来のものである。本発明の目的のために、1タンパク質に由来する膜貫通ドメインの全部または一部を使用してよい。具体的実施形態では、膜貫通ドメインは、Asp2の残基454〜477、APP(例えば、APP 695)の残基598〜661、ガラクトシルトランスフェラーゼの残基4〜27、Asp1の残基470〜492、シアリルトランスフェラーゼの残基10〜33、アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼの残基7〜29、またはシンタキシン6の残基261〜298である。膜貫通ドメインの例は、特許公開番号WO 03/104415および US20040126859にも記載されている。一実施形態では、膜貫通ドメインは、ヒトタンパク質由来のものである。
一実施形態において、本発明の細胞表面提示抗体またはその断片は、配列番号2のアミノ酸配列またはその機能的断片を有するトロンボモジュリンの膜貫通ドメインを含む。別の実施形態では、本発明の細胞表面提示抗体またはその断片は、配列番号2と少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも99%同一の膜貫通ドメインを含む。
一実施形態において、本発明の細胞表面提示抗体またはその断片は、配列番号4のアミノ酸配列またはその機能的断片を有するAx12pの膜貫通ドメインを含む。別の実施形態では、本発明の細胞表面提示抗体またはその断片は、配列番号4と少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも99%同一の膜貫通ドメインを含む。
一実施形態において、本発明の細胞表面提示抗体またはその断片は、配列番号6のアミノ酸配列またはその機能的断片を有するSwp1pの膜貫通ドメインを含む。別の実施形態では、本発明の細胞表面提示抗体またはその断片は、配列番号6と少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも99%同一の膜貫通ドメインを含む。
5.3 GPIアンカー
GPIアンカーにより、広範な細胞表面タンパク質(酵素、被覆タンパク質、表面抗原、および接着性分子を含む)が原形質膜に接着する(Burikoferら、2002 FASEB J 15:545)。GPIは、翻訳後に付加される脂質アンカーであるため、様々な膜貫通ドメインを有しかつ特定の細胞質延長物(cytoplasmic extension)に結合する通常のポリペプチドアンカーとは違い、GPIアンカーは、共通の脂質構造を用いて、それと連結したタンパク質とは無関係に、膜に結合する(Englundら、Annul Rev. Biochem. 62:121 (1993))。GPIアンカードメインは、多くのタンパク質について同定されている(例えば、Caresら、Science 243:1196 (1989)参照)。GPIアンカーシグナルを別のタンパク質のC末端に作製するのに成功しており、これらのGPI固定化タンパク質を細胞表面にコーティングすると、これらは機能的である(Andersonら、P.N.A.S. 93:5894 (1996);Brunschwigら、J. Immunother. 22:390 (1999))。GPIアンカーは、タンパク質ターゲッティング、膜貫通シグナル伝達、ならびに小分子の取込み(エンドサイトーシス)において機能させることが提案されている。原形質膜タンパク質のGPIアンカーは、原生動物および真菌から脊椎動物に至る真核生物に存在する。本発明に用いることができるGPIアンカードメインの例については、Doering, T. L.ら、(1990) J. Biol. Chem. 265:61 1-614;McConville, M. J.ら、(1993) Biochem. J. 294:305-324;およびPCT公開番号WO 03/017944を参照されたい。
GPIアンカーにより、広範な細胞表面タンパク質(酵素、被覆タンパク質、表面抗原、および接着性分子を含む)が原形質膜に接着する(Burikoferら、2002 FASEB J 15:545)。GPIは、翻訳後に付加される脂質アンカーであるため、様々な膜貫通ドメインを有しかつ特定の細胞質延長物(cytoplasmic extension)に結合する通常のポリペプチドアンカーとは違い、GPIアンカーは、共通の脂質構造を用いて、それと連結したタンパク質とは無関係に、膜に結合する(Englundら、Annul Rev. Biochem. 62:121 (1993))。GPIアンカードメインは、多くのタンパク質について同定されている(例えば、Caresら、Science 243:1196 (1989)参照)。GPIアンカーシグナルを別のタンパク質のC末端に作製するのに成功しており、これらのGPI固定化タンパク質を細胞表面にコーティングすると、これらは機能的である(Andersonら、P.N.A.S. 93:5894 (1996);Brunschwigら、J. Immunother. 22:390 (1999))。GPIアンカーは、タンパク質ターゲッティング、膜貫通シグナル伝達、ならびに小分子の取込み(エンドサイトーシス)において機能させることが提案されている。原形質膜タンパク質のGPIアンカーは、原生動物および真菌から脊椎動物に至る真核生物に存在する。本発明に用いることができるGPIアンカードメインの例については、Doering, T. L.ら、(1990) J. Biol. Chem. 265:61 1-614;McConville, M. J.ら、(1993) Biochem. J. 294:305-324;およびPCT公開番号WO 03/017944を参照されたい。
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)において、GPI会合タンパク質は、数種の共通する以下の構造的特徴を有する:N末端における分泌のためのシグナル配列と、C末端におけるGPIとの接着のためのGPIシグナル(Hamadaら、J Bacteriol., 181(13):3886-3889 (1999)を参照)。GPIシグナル自体が、以下の3つのドメインを有する:GPI接着部位(ω部位)と、ω部位下流の第1および第2アミノ酸を含む領域、5〜10アミノ酸のスペーサー、ならびに10〜15アミノ酸の疎水性ストレッチ。GPIシグナルを含むタンパク質はω部位で切断され、これにより生じたタンパク質のカルボキシ末端はGPI部分と共有結合する。この反応は、小胞体内で起こる。GPI部分により膜と会合すると、GPI接着タンパク質は細胞表面に移行され、GPI固定化タンパク質として原形質膜上に残るが、その一部はさらにプロセッシングされる。これらは、GPI部分から自身を脱離した後、細胞壁のβ-1,6-グルカンに自身を連結することにより、細胞壁に組み込まれる。これらの異なるプロセスは、各GPI接着タンパク質が、細胞壁に組み込まれるか、または原形質膜上に残るかのいずれかを選択するシグナルを有することを示唆している。ω部位上流の領域(ωマイナス部位)における以下2種類のアミノ酸配列が、この選択に関連することが提案されている:原形質膜上の残留に関する二塩基性残基、ならびに細胞壁への組込みに関するω部位から4または5および2アミノ酸上流部位(ぞれぞれ、ω-4/5およびω-2部位)の特定のアミノ酸残基。
5.4 ポリヌクレオチド
本発明はまた、原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドに関し、本明細書ではこれを「本発明のポリヌクレオチド」と称する。一実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、2つの機能的に連結されたコーディング領域を含み、その際、第1のコーディング領域は、抗体ポリペプチド(例えば、重鎖またはその断片)をコードし、第2のコーディング領域は、上記抗体を原形質膜の細胞外表面上での提示のためにターゲッティングするアミノ酸配列(例えば、膜貫通ドメイン)をコードする。一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、2つの機能的に連結されたコーディング領域を含み、その際、第1および第2コーディング領域は、翻訳中に1つのポリペプチドが形成されるように、インフレームで連結されている。具体的実施形態では、第1ポリヌクレオチドは、免疫グロブリン重鎖またはその断片をコードし、第2ポリヌクレオチドは、ヒトトロンボジュリンの膜貫通ドメインをコードする(配列番号1)。
本発明はまた、原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドに関し、本明細書ではこれを「本発明のポリヌクレオチド」と称する。一実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、2つの機能的に連結されたコーディング領域を含み、その際、第1のコーディング領域は、抗体ポリペプチド(例えば、重鎖またはその断片)をコードし、第2のコーディング領域は、上記抗体を原形質膜の細胞外表面上での提示のためにターゲッティングするアミノ酸配列(例えば、膜貫通ドメイン)をコードする。一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、2つの機能的に連結されたコーディング領域を含み、その際、第1および第2コーディング領域は、翻訳中に1つのポリペプチドが形成されるように、インフレームで連結されている。具体的実施形態では、第1ポリヌクレオチドは、免疫グロブリン重鎖またはその断片をコードし、第2ポリヌクレオチドは、ヒトトロンボジュリンの膜貫通ドメインをコードする(配列番号1)。
一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、2つの機能的に連結されたコーディング領域を含み、その際、これらのコーディング領域は直接隣接している。さらに別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、2つの機能的に連結されたコーディング領域を含み、その際、これらのコーディング領域は、少なくとも1つのコドンにより隔てられている。一実施形態では、上記第1および第2コーディング領域を隔てる少なくとも1つのコドンは、抗体ポリペプチド(例えば、重鎖)と原形質膜ターゲッティングポリペプチド(例えば、膜貫通ドメイン)とを隔てるリンカーまたはスペーサー配列をコードする。
5.5 ベクター
本発明はさらに、原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはそ断片をコードするポリヌクレオチドを含むベクターに関し、本明細書ではこれを「本発明のベクター」と称する。特定の実施形態において、本発明のベクターは、宿主細胞内で原形質膜の細胞外表面での抗体またはその断片の発現および提示を指令するように操作可能である。一実施形態において、本発明のベクターは、酵母細胞内で抗体またはその断片の発現および原形質膜提示を指令するように操作可能である。
本発明はさらに、原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはそ断片をコードするポリヌクレオチドを含むベクターに関し、本明細書ではこれを「本発明のベクター」と称する。特定の実施形態において、本発明のベクターは、宿主細胞内で原形質膜の細胞外表面での抗体またはその断片の発現および提示を指令するように操作可能である。一実施形態において、本発明のベクターは、酵母細胞内で抗体またはその断片の発現および原形質膜提示を指令するように操作可能である。
酵母における組換え遺伝子発現の各種要件を満たす広範なベクターが当分野において公知であり、市販されている。ほとんどの酵母ベクターは、シャトルベクターであり、このようなベクターは、大腸菌においてそれらを選択および増殖させる配列を含んでいるため、好都合な増幅、およびこれに続くin vitroでの改変が可能である。最も一般的な酵母シャトルベクターは、pBR322に由来する。これらは、大腸菌における高コピー数維持を促進する複製起点(例えば、Co1E1複製起点)、ならびに、選択可能な抗生物質マーカー(例えば、アンピシリンおよびテトラサイクリンに対する耐性をそれぞれ賦与するβラクタマーゼ遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子)を含む。具体的な酵母シャトルベクターとして、限定するものではないが、米国特許第5,866,404号および第6,897,353号に記載のものが挙げられる。本明細書に記載する発明、例えば、限定するものではないが、ピキア・パストリス(Pichic pastoris)宿主細胞における細胞表面提示抗体の発現、を実施するのに有用な別の酵母ベクターは、米国特許第5,707,828号、第6,730,499号、米国特許公開番号2006/0270041、ならびにPCT公開番号05/040395、04/04165および02/31178に記載されている。
酵母ベクターは全て、所望のプラスミドを含む形質転換細胞の選択を可能にするマーカー遺伝子を含む。最も一般的に用いられるマーカー遺伝子の例として、限定するものではないが、URA3、HIS3、LEU2、TRP1およびLYS2が挙げられ、これらは、宿主細胞における特定の栄養要求性突然変異、例えば、ura3-52、his3-Δ1、leu2-Δ1、trp1-Δ1およびlys2-201を補足する。URA3およびLYS2酵母マーカー遺伝子は、正および負の選択スキームの両者の使用も可能にするため、さらに利点がある。酵母宿主細胞に、優性薬物耐性表現型を賦与する選択マーカー遺伝子、例えば、ハイグロマイシンBおよびノウルセオスリシン(nourseothricin)に対する耐性をそれぞれ賦与するhphおよびnat遺伝子(Satoら、Yeast 22:583-591 (2005)参照)など、も用いることができる。
最も一般的に用いられる酵母シャトルベクターは、次の3つの大きなカテゴリーに分けられる:(i)組込みベクター、(ii)自律複製性高コピー数ベクター、または(iii)自律複製性低コピー数ベクター。組込みベクターは、自立的に複製しないが、相同的組換えにより、低い頻度でゲノムに組み込まれる。組込み部位は、組込みベクターにおいて酵母セグメントを制限エンドヌクレアーゼで切断し、酵母菌株を線状化プラスミドで形質転換することにより標的化できる。組込みベクターは、典型的には、単コピーとして組み込まれる。しかし、多重組込みも低い頻度で起こっており、その特性を用いて、特定の遺伝子を過剰発現する安定な菌株を構築することができる。組込みベクターで形質転換した菌株は、選択圧の非存在下でさえ極めて安定している。組込みベクターの例として、限定するものではないが、pRS304(ATCC)、pRS305(ATCC)およびpRS306(ATCC)(SikorskiおよびHieter, Genetics, 122(1):19-27, (1989)を参照)が挙げられる。
自律的に複製する高コピー数ベクターは、2μm酵母プラスミドを基礎とするエピソームベクターである。それらの複製は、2μm複製起点(ori)により制御され、これによって高コピー数および高頻度の形質転換が起こる。このベクターは、2μmプラスミドの全コピー、またはこの種のベクターの大部分がそうであるように、oriおよびREP3遺伝子を包含する領域、のいずれかを含む。REP3遺伝子は、トランス作用性REP1およびREP2遺伝子(分裂時の細胞間でプラスミドの分割を促進する産物をコードする)の作用を媒介するために、oriに対してcisにあることが必要である。従って、oriおよびREP3のみを包含する領域を含む2μmプラスミドは、天然の2μmプラスミドを含むcir+宿主において増殖させなければならない。2μmベクターの例として、限定するものではないが、pYES2/GS(Invitrogen)、pRegal(Invitrogen)、pBridge(Clontech)が挙げられる。
自律複製性低コピー数ベクターは、酵母セントロメア配列(CEN)と、自律複製性配列(ARS)を含む。これらのベクターは、典型的に、1細胞当たり1〜3コピーで存在し、選択圧なしで、1世代当たり約10-2個の細胞において消失する。ARS配列は、酵母染色体の天然の複製起点に相当すると考えられる。CEN機能は、I、IIおよびIIIと呼ばれる3つの保存ドメインに依存しており、これらエレメントの3つ全てがベクターの有糸分裂の安定化に必要である。自律複製性低コピー数ベクターの安定性および低コピー数によって、これらベクターは、ライブラリー構築のための良好な選択肢となっている。TRP1に極めて近接したARS1は、最も一般的に用いられるARSエレメントの1つである。CEN3、CEN4およびCEN11は、一般的に用いられるセントロメアの例である。自律複製性低コピー数ベクターの例としては、限定するものではないが、pYD1(Invitrogen)、pRS314(ATCC)、pRS315(ATCC)およびpRS316(ATCC)が挙げられる(SikorskiおよびHieter, Genetics, 122(1):19-27, (1989)を参照)。
原形質膜提示抗体の有効な細胞発現を達成するために、各抗体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを転写プロモーターに機能的に連結させて、ポリペプチド鎖の発現を調節する。有効なプロモーターは、真核宿主細胞において機能的でなければならない。このプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターのいずれであってもよい。均衡のとれた発現を達成し、かつ、発現の同時誘導を確実にするために、各鎖について同じプロモーターを使用するベクター構築物が好ましい。本発明において有用なプロモーター、ならびにそれらとの機能的連結は多数存在し、当分野において周知であるが、本発明がそれらの使用によって制限されるわけでない。具体的に考慮されるプロモーターとして、酵母発現ベクターにおいて有用なもの、例えば、AOX1プロモーター、ガラクトース誘導性プロモーター(pGAL1、pGAL1-10、pGal4、およびpGal10)、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター(pPGK)、シトクロムcプロモーター(pCYC1)、およびアルコールデヒドロゲナーゼIプロモーター(pADH1)が挙げられる。
一実施形態では、本発明のベクターは、pGAL1ガラクトース誘導性プロモーターを含む。
原形質膜提示抗体ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、適正なmRNAプロセシングを促進するために、転写終結配列に機能的に連結される。真核生物の場合、RNAポリメラーゼIIによる転写終結は、前駆体RNAの切断およびポリアデニル化のプロセスに連結される。酵母細胞では、ポリA部位の下流の100ヌクレオチド以内に転写終結が起こるが、このことは、この生物に認められる短い遺伝子間領域と一致している。前駆体RNA切断およびポリA形成に必要な酵母調節エレメントは、以下の3つの成分から構成される:(1)下流に位置するエレメントの効率を高める効率エレメント、(2)ポリA部位を配置する配置エレメント、ならびに(3)実際のポリA部位。また、3'RNAプロセシングを調節する配列エレメントにも、転写終結に直接関与しているものがある。本発明において有用な転写終結エレメント、ならびにそれらとの機能的連結は多数存在し、当分野において周知であるが、本発明がそれらの使用によって制限されるわけではない。転写終結エレメントの例として、限定するものではないが、数種の酵母遺伝子の3'フランク配列、例えば、CYC1、ADH1、ARO4、TRP1、ACT1およびYPT1が挙げられる。
一実施形態において、本発明のベクターは、CYC1ゲノム遺伝子座由来の転写終結エレメント(配列番号20)を含む。別の実施形態では、本発明の細胞表面提示抗体またはその断片は、配列番号20と少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも99%同一の転写終結エレメントを含む。
一実施形態において、本発明のベクターは、α因子遺伝子座由来の転写終結エレメント(配列番号21)を含む。別の実施形態では、本発明の細胞表面提示抗体またはその断片は、配列番号21と少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも99%同一の転写終結エレメントを含む。
細胞プロセシング、ならびに、本発明の抗体の表面への輸送を促進するために、上記抗体をコードするポリヌクレオチドを、シグナル配列ペプチドををコードするポリヌクレオチドエレメントに機能的に連結させてもよい。特定の実施形態において、本発明の抗体は、重鎖またはその断片および軽鎖またはその断片を含んでもよく、その際、重鎖および/または軽鎖の新生形態は、該抗体またはその断片を膜挿入の標的とするシグナル配列を含む。
シグナル配列は、新生ポリペプチドを細胞膜内または細胞膜を通した輸送の標的とする小さなN末端ペプチドエレメントである。真核生物のプロテオーム内には、タンパク質を特定の細胞下コンパートメント(例えば、ミトコンドリア)内に膜を通して輸送するための標的とすることができる多数の様々なシグナル配列がある。具体的には、新生ポリペプチドを、原形質膜を通して分泌させるまたは原形質膜内に挿入するために、小胞体(ER)に対してターゲッティングするシグナル配列が考慮される。小胞体(ER)用のシグナル配列は、新生ポリペプチド鎖のN末端に位置する、長さ約15〜30アミノ酸のペプチドエレメントである。これらは、通常、5〜10個の疎水性アミノ酸からなるブロックを含む。シグナル配列の二次構造および全般的な生化学的特性は、一次配列自体より、その機能には重要であるようである。真核生物属の様々なタンパク質に由来するERのシグナル配列は、往々にして相互交換可能に機能する。
一実施形態において、本発明の抗体の個々のサブユニットは、真核生物宿主内で発現され、アセンブリのために小胞体(ER)に輸送され、細胞外提示のために原形質膜に輸送される。一実施形態では、本発明の抗体の各個別のポリペプチドサブユニットの新生形態は、そのN末端にER特異的シグナル配列を含む。このシグナル配列は、本発明の抗体の各サブユニットの新生形態と同じものでもよいし、違うものでもよい。上記シグナル配列は、これが融合されるポリペプチドの細胞外膜輸送または膜挿入に影響するように操作可能であれば、宿主に対して天然であっても異種であってもよい。本発明において操作可能な多数のシグナル配列が当業者に公知である(例えば、Aga2pシグナル配列、Mfα1プレプロ−ペプチド、Mfα1プレ−ペプチド、酸性ホスファターゼPho5、インベルターゼSUC2シグナル配列)。シグナル配列は、宿主細胞の天然分泌タンパク質由来のもの、例えば、酵母のα接合因子の真核シグナル配列、酵母のα凝集素、サッカロミセス(Saccharomyces)属のインベルターゼ、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属のイヌリナーゼ、ならびに酵母a-凝集素のAga2pサブユニットのシグナルペプチドでよい。一実施形態では、タンパク質の翻訳後プロセシング中に、新生ポリペプチドのアミノ末端のシグナル配列を切断する。一実施形態では、天然のシグナル配列を保持する。
一実施形態において、本発明の細胞表面提示抗体またはその断片は、その新生形態において、配列番号23のアミノ酸を有するAga2pのシグナル配列またはその機能的断片を含む。別の実施形態では、本発明の細胞表面提示抗体またはその断片は、その新生形態において、配列番号23と少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも99%同一のシグナル配列を含む。
一実施形態において、本発明の細胞表面提示抗体またはその断片は、その新生形態において、配列番号25のアミノ酸を有するα接合因子のシグナル配列またはその機能的断片を含む。別の実施形態では、本発明の細胞表面提示抗体またはその断片は、その新生形態において、配列番号25と少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも99%同一のシグナル配列を含む。
一実施形態において、本発明のベクターは、宿主細胞内で抗体重鎖またはその断片および抗体軽鎖またはその断片の両方の発現を指令できるように操作可能な発現ベクターである。一実施形態において、抗体発現ベクターは、2つの個別の発現カセット(1つは重鎖用で、もう1つは軽鎖用)を含んでいてもよい。これら2つのカセットは、同じ、または異なる転写調節エレメント(例えば、プロモーターおよび転写ターミネーター)を含んでもよい。異なる転写調節エレメントを用いる場合には、重鎖および軽鎖ポリペプチドの発現レベルが均衡するように注意すべきである。別の実施形態では、重鎖および軽鎖ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを単一プロモーターから発現させた後、単一RNA分子に転写させる。当分野で公知の多数の様々な分子技術を用いて、このようなポリシストロン性RNAメッセージを個別の重鎖および軽鎖ポリペプチドに翻訳することができる。有用な技術として、限定するものではないが、IRESエレメント、トランス−スプライシングリボザイム、およびインテインの使用などが挙げられる。IRES(内部リボソーム進入部位)は、タンパク質合成のキャップ非依存性翻訳を可能にする、特定のウイルスおよび細胞遺伝子の5’非翻訳領域に由来する配列エレメントである。広範な真核細胞(限定するものではないが、酵母など)において機能的なIRESエレメントの使用が、米国特許第6,376,745号、および第6,933,378号に記載されている。トランス−スプライシングリボザイムは、1つの転写産物から特異的に個別の標的転写産物へとRNA配列をスプライシングすることができるRNAベースの触媒である。このようにして、mRNAとして機能的であるか、または標的細胞に発現するようにタンパク質をコードするキメラmRNAを生産することができる(例えばAyreら、Nucleic Acids Research, 第1巻、30(24):e141 (2002);米国特許公開番号2006/0246422A1を参照)。インテインは、両側の隣接領域が互いにスプライシングされる際、翻訳後除去されて、追加のタンパク質産物を生じる、タンパク質配列の内部部分である。ポリタンパク質からのインテインの除去を促進するが、タンパク質スプライシングに通常伴うライゲーション反応を阻止する、改変型インテインが記載されている(米国特許第7,026,526号参照)。上記以外の方法も当分野において公知であり、例えば、単一の新生ポリペプチド鎖から重鎖および軽鎖を解放するための、宿主細胞プロテアーゼにより切断可能なペプチドリンカーの使用がある(例えば、米国特許公開番号20060252096A1を参照)。
一実施形態では、本発明のベクターは、2つのベクターのセットであり、その際、第1のベクターは、抗体の重鎖またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含み、第2のベクターは、抗体の軽鎖またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含んでおり、第1および第2ベクターの上記抗体またはその断片は、原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片の第1および第2ポリペプチド鎖をそれぞれコードするポリヌクレオチドを含む。抗体の有効な細胞発現を達成するために、抗体鎖の各々をコードするポリヌクレオチドを転写プロモーターに連結することにより、ポリペプチド鎖の発現を調節する。有効なプロモーターは、宿主細胞において機能的でなければならない。このプロモーターは、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターのいずれであってもよい。均衡発現を達成し、かつ、発現の同時誘導を確実にするために、各鎖について同じプロモーターを使用するベクターセットを用いることができる。本発明において有用な多数のプロモーターが当分野においては公知である。考慮されるプロモーターとして、酵母発現ベクターにおいて有用なもの、例えば、ガラクトース誘導性プロモーター(pGAL1、pGAL1-10、pGal4、およびpGal10)、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター(pPGK)、シトクロムcプロモーター(pCYC1)、およびアルコールデヒドロゲナーゼIプロモーター(pADH1)が挙げられる。一実施形態では、本発明のベクターは、第1ベクターと第2ベクターのセットであり、その際、第1および第2ベクターは、本発明のポリヌクレオチドに機能的に連結されたガラクトース誘導性プロモーターpGAL1を含む。
一実施形態において、抗体の最適な細胞発現を達成するために、抗体鎖の各々をコードするポリヌクレオチドを転写終結エレメントに機能的に連結する。一実施形態では、本発明のベクターは、第1ベクターと第2ベクターのセットであり、その際、第1ベクターは、CYC1ゲノム遺伝子座由来の転写終結エレメント(配列番号20)を含み、第2ベクターは、α接合因子遺伝子座由来の転写終結エレメント(配列番号21)を含む。別の実施形態では、本発明のベクターは、第1ベクターと第2ベクターのセットであり、その際、第1ベクターは、配列番号20と少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも99%同一の転写終結エレメントを含み、上記第2ベクターは、配列番号21と少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも99%同一の転写終結エレメントを含む。
また、抗体鎖をコードするポリヌクレオチドの各々をシグナル配列に機能的に連結することも考慮される。有効なシグナルは、宿主細胞において機能的でなければならない。抗体鎖をコードするポリヌクレオチドを、典型的には、シグナル配列をコードするポリヌクレオチドにインフレーム直接連結(ポリヌクレオチドに直接隣接するか、または随意に、リンカーまたはスペーサー配列を介して連結)することにより、ポリペプチド鎖−シグナル配列ペプチド融合タンパク質を作製する。特定の実施形態では、多重鎖ポリペプチドの各鎖を個別のシグナル配列ペプチドと融合する。シグナル配列ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、多重鎖ポリペプチドの各鎖について同じでも、違っていてもよい。シグナル配列は、これが融合されるポリペプチドの細胞外輸送に影響するように操作可能であれば、宿主に対して天然であっても異種であってもよい。一実施形態では、本発明のベクターは、第1ベクターと第2ベクターのセットであり、その際、第1ベクターは、配列番号23のアミノ酸配列を有するAga2pのシグナル配列またはその機能的断片をコードするポリヌクレオチドを含み、第2ベクターは、配列番号25のアミノ酸配列を有するα接合因子のシグナル配列またはその機能的断片をコードするポリヌクレオチドを含む。別の実施形態では、本発明のベクターは、第1ベクターと第2ベクターのセットであり、その際、第1ベクターは、配列番号23と少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも99%同一のシグナル配列をコードするポリヌクレオチドを含み、第2ベクターは、配列番号25と少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも99%同一のシグナル配列をコードするポリヌクレオチドを含む。
本発明の抗体は、原形質膜の細胞外表面に提示されうる。原形質膜での提示は、本発明の抗体の少なくとも1つのポリペプチド鎖を膜貫通ドメインと融合することにより、達成される。本発明の抗体の2以上のポリペプチド鎖を膜貫通ドメインと融合することもできるが、原形質膜提示を達成するには、1つの鎖だけを融合する必要がある。抗体鎖をコードするポリヌクレオチドを、典型的には、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドにインフレームで直接連結(ポリヌクレオチドに直接隣接するか、または随意に、リンカーまたはスペーサー配列を介して連結)することにより、抗体鎖−膜貫通ドメイン融合タンパク質を作製する。一実施形態では、本発明のベクターは、2つのベクターのセットであり、その際、少なくとも1つのベクターは、本発明の抗体のポリペプチド鎖(例えば、重鎖またはその断片)をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結した膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドを含む。一実施形態では、本発明のベクターは、2つのベクターのセットであり、その際、少なくとも1つのベクターは、本発明の抗体のポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結した、配列番号2のアミノ酸配列を有するトロンボモジュリンの膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドを含む。一実施形態では、本発明のベクターは、2つのベクターのセットであり、その際、少なくとも1つのベクターは、本発明の抗体のポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結した、配列番号4のアミノ酸配列を有するAx12pの膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドを含む。一実施形態では、本発明のベクターは、2つのベクターのセットであり、その際、少なくとも1つのベクターは、本発明の抗体のポリペプチド鎖(例えば、重鎖またはその断片)をコードするポリヌクレオチドに機能的に連結した、配列番号6のアミノ酸配列を有するSwp1pの膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドを含む。
発現ベクター成分および適合性宿主細胞の適正な選択がなされれば、多重鎖ポリペプチドの鎖(例えば、抗体またはその断片)が、真核宿主細胞の原形質膜に提示されることになる。当業者であれば、多数の可変発現ベクター構築物のいずれかを用いてこれを達成できること、また、それによって本発明が制限されないことを理解するだろう。当分野で公知かつ市販されている(例えば、Invitrogen、Clontech、Stratagene、ATCCから)多数の遺伝子ベクターおよび遺伝子制御エレメントのいずれかから、提示ベクター自体を構築または改変することができる。実質的に、本発明のベクターは、このベクターで形質転換された真核宿主細胞の原形質膜の細胞外表面での有効な提示のために、膜貫通ドメインを有する抗体またはその断片を発現させることができるあらゆるベクターを包含する。
図2AおよびBに示したベクター対は、本発明のベクターの非制限的例である。
5.6 ライブラリー
本発明はまた、原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片を含むライブラリーも提供し、本明細書ではこれを「本発明の抗体ライブラリー」と称する。一実施形態において、本発明の抗体ライブラリーは、重鎖可変領域の異種集団を含んでもよい。別の実施形態では、本発明の抗体ライブラリーは、軽鎖可変領域の異種集団を含んでもよい。さらに別の実施形態では、本発明の抗体ライブラリーは、一本鎖抗原結合ドメイン(限定するものではないが、scFvドメインなど)の異種集団を含んでもよい。特定の実施形態では、このライブラリーは、各々がFc領域に融合した一本鎖抗体の異種集団を含んでもよい。別の実施形態では、本発明の抗体ライブラリーは、Fc領域(変異体Fc領域を含む)の異種集団を含んでもよい。
本発明はまた、原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片を含むライブラリーも提供し、本明細書ではこれを「本発明の抗体ライブラリー」と称する。一実施形態において、本発明の抗体ライブラリーは、重鎖可変領域の異種集団を含んでもよい。別の実施形態では、本発明の抗体ライブラリーは、軽鎖可変領域の異種集団を含んでもよい。さらに別の実施形態では、本発明の抗体ライブラリーは、一本鎖抗原結合ドメイン(限定するものではないが、scFvドメインなど)の異種集団を含んでもよい。特定の実施形態では、このライブラリーは、各々がFc領域に融合した一本鎖抗体の異種集団を含んでもよい。別の実施形態では、本発明の抗体ライブラリーは、Fc領域(変異体Fc領域を含む)の異種集団を含んでもよい。
当業者であれば、配列の異種集団が、ライブラリー内の抗体またはその断片に関連して存在しうることは理解されよう。例えば、重鎖可変領域の異種集団は、全長抗体のライブラリーに関連して存在しうる。
一実施形態において、本発明の抗体ライブラリーは、全長抗体のライブラリーであり、その際、本発明の抗体ライブラリーは、重鎖可変領域の異種集団および/または軽鎖可変領域の異種集団を含む。別の実施形態では、本発明の抗体ライブラリーは、抗体断片のライブラリーであり、その際、本発明の抗体ライブラリーは、重鎖可変領域の異種集団および/または軽鎖可変領域の異種集団を含む。さらに別の実施形態では、本発明の抗体ライブラリーは、一本鎖抗原結合ドメイン(限定するものではないが、scFvドメインなど)の異種集団を含む。特定の実施形態では、本ライブラリーは、各々がFc領域に融合した一本鎖抗体の異種集団を含む。また別の実施形態では、本発明の抗体ライブラリーは、全長抗体、またはFc融合タンパク質のライブラリーであり、その際、本発明の抗体ライブラリーは、Fc領域(変異体Fc領域を含む)の異種集団を含む。別の実施形態では、本発明の抗体ライブラリーは、抗体断片のライブラリーであり、その際、本発明の抗体ライブラリーは、Fc領域(変異体Fc領域を含む)の異種集団を含む。
本発明の抗体ライブラリーは、実質的にあらゆるタイプの抗体を複数含みうる。このようなものとして、限定するものではないが、合成抗体、モノクローナル抗体、組換えにより作製した抗体、細胞内抗体、多重特異性抗体、ダイアボディ、二重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、一本鎖抗体Fv(scFv)、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体、これらのうちいずれかのエピトープ結合断片、ならびに、これらのうちいずれかのFc-融合物が挙げられる。抗体は、単一特異性、二重特異性、三重特異性、もしくはそれ以上の多重特異性のものでよい。多重特異性抗体は、所望の標的分子の様々なエピトープに特異的に結合するか、または標的分子と、異種エピトープ(例えば、異種ポリペプチドもしくは固体支持体材料)の両方に特異的に結合しうる。本発明のライブラリーは、複数の免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分を含んでもよい。免疫グロブリン分子は、いずれのタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)もしくはサブクラスの免疫グロブリン分子であってもよい。
本発明はまた、原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含むライブラリーに関し、本明細書ではこれを「本発明のポリヌクレオチドライブラリー」と称する。本明細書に記載の抗体ライブラリーをコードするポリヌクレオチドライブラリーはいずれも、本明細書のポリヌクレオチドライブラリーである。
一実施形態において、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、重鎖可変領域の異種集団を含む抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、軽鎖可変領域の異種集団を含む抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。さらに別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、Fc領域(変異体Fc領域を含む)の異種集団を含む抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。
当業者であれば、抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドが、重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチド、軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチド、ならびにFc領域をコードするポリヌクレオチドを含みうること、また、それらのいずれか1つ、またはそれらいずれかの組合せが、本発明のポリヌクレオチドライブラリー内に異種集団を構成しうることを理解するだろう。
一実施形態において、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、各々が全長抗体をコードするポリヌクレオチドのライブラリーであり、その際、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、重鎖可変領域の異種集団および/または軽鎖可変領域の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含む。別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、各々が抗体断片をコードするポリヌクレオチドのライブラリーであり、その際、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、重鎖可変領域の異種集団および/または軽鎖可変領域の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含む。さらに別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、一本鎖抗原結合ドメイン(限定するものではないが、scFvドメインなど)をコードするポリヌクレオチドのライブラリーである。特定の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、各々がFc領域に融合した一本鎖抗体をコードするポリヌクレオチドのライブラリーである。また別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、各々が全長抗体をコードするポリヌクレオチドのライブラリーであり、その際、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、Fc領域(変異体Fc領域を含む)の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含む。別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、各々が抗体断片をコードするポリヌクレオチドのライブラリーであり、その際、本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、Fc領域(変異体Fc領域を含む)の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含む。
本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、当業者に公知のいずれの方法でも構築することができる。手短には、抗体またはその断片をコードする核酸配列の多様なレパートリーを含むポリヌクレオチドのライブラリーを単離する。例えば、抗体重鎖をコードする核酸配列のレパートリーは、例えば、抗体cDNAライブラリー、すなわち、抗体を発現する任意の組織または細胞集団から単離した核酸(例えば、ポリA+RNA)から作製したcDNA分子のライブラリー、から単離することができる。次に、例えばPCRにより、コーディング配列のレパートリーを増幅し、当分野で公知の標準的方法(例えば、米国特許公開番号2005/00048617A1、2005/00042664A1;Wu, H., Methods Mol Biol., 207:197-212 (2003);Wu, H.およびAnn, L.L., Methods Mol Biol., 207:213-33 (2003)を参照)を用いて、ベクターにクローニングすることができる。また、抗体コーディング配列のライブラリーは市販されている。一実施形態では、ヒト抗体由来のコーディング領域を用いて、ライブラリーを構築する。いくつかの実施形態では、本ライブラリーは、少なくとも、2、10、100、103、104、105、106、5x106、107、5x107、108、5x108、109、5x109、1010、5x1010、1011、5x1011もしくは1012種の異なる抗体を発現する。
いったん抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドのライブラリーが得られたら、これを本発明のベクターにクローニングすることができる。核酸をベクターにクローニングする公知の方法のほぼ全てを用いることができる。このような方法として、限定するものではないが、制限酵素消化およびライゲーション、SOEing PCRまたは組換えが挙げられる(例えば、Hortonら、1989, Gene, 77, 61-68;Wu, H., Methods Mol Biol., 207:197-212 (2003);Wu, H.およびAnn, L.L., Methods Mol Biol., 207:213-33 (2003)を参照)。
本発明のライブラリーは、あらゆる供給源に由来するものでよい。これは、脊椎動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ロバ、ヤギ、ネコ、イヌ、ニワトリ、ラクダ)から単離した大きなライブラリーでよく、供給源生物の単一検体または集団由来の抗体またはその断片の完全なレパートリーを実質的に表すものでよい。一実施形態では、ライブラリーは、単一のヒトまたはヒト集団の全レパートリーを表すものである。一実施形態では、ライブラリーは、1マウスまたは1マウス群の全レパートリーを表すものである。ライブラリーは、免疫学的にナイーブな個体から単離してもよい。ライブラリーはまた、目的とする抗原で事前に免疫しておいた脊椎動物から単離してもよい。従って、ライブラリーは、目的の抗原に結合する抗体に関して富化することができる。別の実施形態では、ファージディスプレイ抗体ライブラリーを目的の抗原に対してスクリーニングする。次に、目的の抗原に結合する抗体を発現するファージから、本発明の抗体ライブラリーを作製する。やはり、このライブラリーは、目的の抗原に結合する抗体について富化される。さらに別の実施形態では、本発明の抗体ライブラリーは、ヒト化抗体断片のライブラリーから作製する。ヒト化抗体断片は、当業者には公知のあらゆる方法、例えば、限定するものではないが、フレームワークシャッフリング(例:PCT公開番号WO 05/042743)および低相同性ヒト化(例:PCT公開番号WO 05/035575)、により作製することができる。別の実施形態では、ライブラリーは、目的の抗原に結合する抗体に由来する突然変異体CDRライブラリーである。突然変異体CDRライブラリーは、親抗体のCDR配列のCDR突然変異である抗体をコードするライブラリーである。突然変異体CDRとして、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:結晶学試験により接触残基であると決定されるCDRアミノ酸に突然変異を起こすことにより作製されるライブラリー(例えば、Dall’Acquaら、1996 Biochemistry 35:9667-76);1つの天然CDR(例えば、最大結合効率を有すると考えられるもの)を保持し、これを別の5つのCDRの代わりにCDRのライブラリーと組み合わせることにより作製されるライブラリー(例えば、Raderら、1998, PNAS 95:8910-15);「CDRウォーキング」により作製されるライブラリー(例えば、Yangら、1995, J Mol Biol 254:392-403);ならびに、親抗体の各CDRに個別に突然変異を起こす方法により作製されるライブラリー(例えば、Wuら、1998, PNAS 95:6037-42)。従って、本発明に従い、任意の抗体のライブラリーを用いて、原形質膜にライブラリーを発現させることができる。一実施形態では、ライブラリーは、親抗体に由来する親和性成熟ライブラリーである。
別の実施形態では、ファージディスプレイ抗体ライブラリーを目的の抗原に対してスクリーニングする。次に、目的の抗原に結合する抗体を発現するファージから、本発明の抗体ライブラリーを作製する。一実施形態では、選択された各ファージに由来する重鎖および軽鎖可変領域の両方を本発明のベクターにクローニングするが、その際、各ベクターは重鎖および軽鎖をコードする。従って、同じ重鎖および軽鎖の組合せが維持される。別の実施形態では、重鎖および軽鎖可変領域を単離し、ランダムな様式で組み合わせる。このようにして、ライブラリーは、理論上、先に選択した各重鎖可変配列と先に選択した各軽鎖配列との全ての組合せを含む。例えば、初期ファージのスクリーニングにより、1,000種の固有のファージおよび抗体配列が得られたとすると、先に選択した各重鎖可変配列と先に選択した各軽鎖配列との全ての組合せからなるライブラリーは、106種の固有の抗体配列を計上することになり、これらが本発明のウイルスベクターにクローニングされることになる。この方法により、初期のファージライブラリーより一層多様なレパーとリーが作製される。加えて、ファージディスプレイ方法が特定の抗体断片に限定されるのに対し、本明細書に記載の方法は、全抗体のスクリーニングを可能にする。従って、第1ファージ提示スクリーンで選択され、全長抗体に変換された抗体断片の集団を第2ラウンドのスクリーニングに付すこともできる。本発明の抗体ライブラリーを作製するのに用いることができるファージディスプレイ方法の例として、以下の文献に開示されているものが挙げられる:Brinkmanら、1995, J. Immunol. Methods 182:41-50;Amesら、1995, J. Immunol. Methods 184:177-186;Kettleboroughら、1994, Eur. J. Immunol. 24:952-958;Persicら、1997, Gene 187:9-18;Burtonら、1994, Advances in Immunology 57:191-280;PCT公開番号WO 90/02809、WO 91/10737、WO 92/01047、WO 92/18619、WO 93/11236、WO 95/15982、WO 95/20401、およびWO97/13844;ならびに、米国特許第5,698,426号、第5,223,409号、第5,403,484号、第5,580,717号、第5,427,908号、第5,750,753号、第5,821,047号、第5,571,698号、第5,427,908号、第5,516,637号、第5,780,225号、第5,658,727号、第5,733,743号、および第5,969,108号。
抗体ライブラリーのクローニングに関する更なる詳細および方法については、例えば、PCT特許公開番号WO 2005/063817;WO 95/15393;米国特許公開番号2005/00048617A1、2005/00042664A1;Wu, H., Methods Mol Biol., 207:197-212 (2003);Wu, H.およびAnn, L.L., Methods Mol Biol., 207:213-33 (2003);Higuchiら、1997 J Immunological Methods 202:193-204を参照されたい。
本発明の抗体ライブラリーは、Fc変異体抗体を含みうる。一実施形態では、Fc変異体のライブラリーは、同じ可変領域またはFab領域を有するが、Fc領域は異なる抗体を含む。具体的実施形態では、Fc変異体のライブラリーは、ヒンジドメイン、CH3ドメイン、CH2ドメインの変異体、またはこれらいずれかの組合せを含んでもよい。
Fc変異体およびFc変異体抗体ライブラリーを構築する方法は、当分野において公知である。例えば、特許公開番号WO 05/0037000;WO 06/023420;およびWO 06/023403を参照されたい。
本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含む。本発明のポリヌクレオチドライブラリーは、複数の重鎖またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含んでもよく、本発明のポリヌクレオチドライブラリーはさらに、複数の軽鎖またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含んでもよく、また、複数の変異体Fc領域またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。当業者であれば、抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドが、重鎖可変領域、軽鎖可変領域およびFc領域をコードする配列エレメントを含みうることを理解するだろう。上記配列エレメントのいずれか1つ、またはこれら配列エレメントのいずれかの組合せは、本発明のポリヌクレオチドライブラリーに関連する抗体ポリペプチドの異種集団をコードすることができる。
本発明のポリヌクレオチドライブラリーをベクターにクローニングして、本発明のベクターライブラリーを作製してもよい。ポリヌクレオチドをベクターに導入する様式は、当分野で公知の組換えDNA技術の適用可能な方法のいずれかを含む。ベクターは、単一ベクターまたは2つのベクターのセットを含んでもよい。一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドライブラリーをベクターに導入することにより、本発明のベクターライブラリーを作製するが、その際、上記ベクターは単一ベクターであり;上記単一ベクターは、重鎖またはその断片、および軽鎖またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含む。別の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドライブラリーをベクターに導入することにより、本発明のベクターライブラリーを作製するが、その際、上記ベクターは第1ベクターと第2ベクターのセットであり;第1ベクターは、重鎖またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含み、第2ベクターは、軽鎖またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含む。
5.7 宿主細胞
本発明はまた、原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片を含む宿主細胞にも関し、本明細書ではこれを「本発明の宿主細胞」およびこれと同様の用語で呼ぶ。本発明の宿主細胞は、宿主細胞原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片を発現することができる任意の真核細胞である。本発明の宿主細胞は、任意の遺伝子型、分化もしくは未分化、単細胞もしくは多細胞の、任意の真核細胞であることができ、これは実践者の具体的な目的や要求に依存する。一実施形態において、宿主細胞は、未分化、単細胞、半数体もしくは二倍体細胞生物である。別の実施形態では、本発明の宿主細胞は、真菌である。さらに別の実施形態では、本発明の宿主細胞は、子嚢菌門に属する。一実施形態では、本発明の宿主細胞は、ニューロスポラ(Neurospora)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、ピキア(Pichia)属、ハンセヌラ(Hansenula)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属、ヤロウィア(Yarrowia)属、デバリオミセス(Debaryomyces)属、およびカンジダ(Candida)属のものである。別の実施形態では、本発明の宿主細胞は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)からなる群より選択される。具体的実施形態では、本発明の宿主細胞は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。別の実施形態では、本発明の宿主細胞は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)である。
本発明はまた、原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片を含む宿主細胞にも関し、本明細書ではこれを「本発明の宿主細胞」およびこれと同様の用語で呼ぶ。本発明の宿主細胞は、宿主細胞原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片を発現することができる任意の真核細胞である。本発明の宿主細胞は、任意の遺伝子型、分化もしくは未分化、単細胞もしくは多細胞の、任意の真核細胞であることができ、これは実践者の具体的な目的や要求に依存する。一実施形態において、宿主細胞は、未分化、単細胞、半数体もしくは二倍体細胞生物である。別の実施形態では、本発明の宿主細胞は、真菌である。さらに別の実施形態では、本発明の宿主細胞は、子嚢菌門に属する。一実施形態では、本発明の宿主細胞は、ニューロスポラ(Neurospora)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、ピキア(Pichia)属、ハンセヌラ(Hansenula)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属、ヤロウィア(Yarrowia)属、デバリオミセス(Debaryomyces)属、およびカンジダ(Candida)属のものである。別の実施形態では、本発明の宿主細胞は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)からなる群より選択される。具体的実施形態では、本発明の宿主細胞は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。別の実施形態では、本発明の宿主細胞は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)である。
真菌細胞の基本的生活環は、二倍体状態と半数体状態の交代を含む。多くの真菌の場合、生活環の半数体状態が支配的である。重要なことには、個別の半数体細胞の細胞融合から得られた遺伝物質の天然の組換えおよび再混合による二倍体細胞の産生は、強力な方法であり、これを生物学的研究に用いることができる。具体的実施形態では、本発明の宿主細胞は、細胞融合に適した細胞である。例えば、反対の接合型の酵母細胞を「接合」させて、融合二倍体細胞を作製することができる。さらに、細胞融合に適した酵母プロトプラストまたはスフェロプラストも、本発明の目的のための好適な真核宿主細胞である。
本発明の抗体を含む宿主細胞は、原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドで宿主細胞を形質転換することにより、作製することができる。抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドは、1以上のベクターを介して宿主細胞に導入することができる。ベクターを宿主細胞に導入する様式は、当分野で知られる、細胞への遺伝物質の導入方法のいずれかを含む。このような方法の例として、限定するものではないが、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、ウイルス輸送、バリスティック挿入などが挙げられる。
一実施形態では、本発明の宿主細胞は、原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片を含む。一実施形態では、本発明の宿主細胞は、本発明のベクターを含み、その際、このベクターは、抗体の重鎖またはその断片、および抗体の軽鎖またはその断片、をコードするポリヌクレオチドを含む単一ベクターであり;上記抗体またはその断片は、原形質膜の細胞外表面に提示されうる。別の実施形態では、本発明の宿主細胞は、本発明のベクターを含み、その際、このベクターは、第1ベクターと第2ベクターのベクターセットである。一実施形態では、本発明の宿主細胞は、2つのベクターのセットを含み;その際、第1のベクターは、抗体の重鎖またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含み、第2のベクターは、抗体の軽鎖またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含み;上記抗体またはその断片は、原形質膜の細胞外表面に提示されうる。
一実施形態において、本発明の宿主細胞は、本発明のベクターを含む二倍体細胞であり、その際、このベクターは、抗体の重鎖またはその断片、および抗体の軽鎖またはその断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む単一ベクターであり;上記抗体またはその断片は、原形質膜の細胞外表面に提示されうる。
一実施形態において、本発明の宿主細胞は、二倍体細胞である。一実施形態では、本発明の宿主細胞は、2つのベクターのセットを含む二倍体細胞であり、その際、第1のベクターは、抗体の重鎖またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含み、第2のベクターは、抗体の軽鎖またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含み;上記抗体またはその断片は、原形質膜の細胞外表面に提示されうる。
一実施形態において、本発明の宿主細胞は、細胞融合により作製された二倍体細胞である。一実施形態では、本発明の二倍体宿主細胞は、第1の半数体宿主細胞と第2の半数体宿主細胞を融合することにより作製され、その際、第1および第2半数体宿主細胞は、反対の接合型であり;第1半数体宿主細胞は、本発明の抗体の重鎖またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含み;第2半数体宿主細胞は、本発明の抗体の軽鎖またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含む。さらなる詳細および方法については、米国特許公開番号2003/0186374、2006/0270041、およびPCT公開番号05/040395を参照されたい。
本発明のポリヌクレオチドライブラリーを宿主細胞の集団に導入して、本発明の宿主細胞ライブラリーを作製することができる。本発明のベクターライブラリーで宿主細胞集団を形質転換することにより、本発明のポリヌクレオチドライブラリーを宿主細胞集団に導入するのが有利である。本発明のベクターライブラリーを宿主細胞の集団に導入する様式は、当分野で知られる、細胞への遺伝物質の導入方法のいずれかを含む。このような方法の例として、限定するものではないが、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、ウイルス輸送、バリスティック挿入など(例えば、Gietz, D.ら、Nucleic Acids Res., 20:1425 (1992))が挙げられる。具体的実施形態では、宿主細胞のギャップ修復機構を利用して、本発明のポリヌクレオチドライブラリーを宿主細胞の集団に導入してもよい(例えば、Swers JSら、Biochem Biophys Res Commun. 350(3):508-13 (2006)を参照)。
一実施形態において、本発明のポリヌクレオチドライブラリーをベクターに導入することにより、本発明のベクターライブラリーを作製するが、その際、このベクターは単一ベクターであり;上記単一ベクターは、重鎖またはその断片、および軽鎖またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含む。本発明のベクターライブラリーは、細胞に遺伝物質を導入する当分野で公知の方法のいずれにより、宿主細胞集団へ導入することができる。このような方法の例として、限定するものではないが、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、ウイルス輸送、バリスティック挿入導入など(例えば、Gietz, D.ら、Nucleic Acids Res., 20:1425 (1992))が挙げられる。具体的実施形態では、宿主細胞のギャップ修復機構を利用して、本発明のポリヌクレオチドライブラリーを宿主細胞の集団に導入してもよい(例えば、Swers JSら、Biochem Biophys Res Commun. 350(3):508-13 (2006)を参照)。
一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドライブラリーをベクターに導入することにより、本発明のベクターライブラリーを作製するが、その際、このベクターは第1ベクターと第2ベクターのセットであり;第1ベクターは、重鎖またはその断片の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含み、第2ベクターは、軽鎖またはその断片の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含む。本発明のベクターライブラリーは、第1の半数体宿主細胞集団と第2の半数体宿主細胞集団の融合により、宿主細胞集団に導入することができ、その際、第1および第2半数体宿主細胞集団は、反対の接合型であり;第1半数体宿主細胞集団は、重鎖またはその断片の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含み;第2半数体宿主細胞集団は、軽鎖またはその断片の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含む。個別の半数体細胞の細胞融合から得られた遺伝物質の天然の組換えおよび再混合による二倍体細胞の作製は、強力な方法であり、これを生物学的研究に用いることができる。例えば、より低い多様性の重鎖のみのライブラリーと、より低い多様性の軽鎖のみのライブラリーとの細胞融合による組換えによって、多様性が増大した全長抗体のライブラリーを作製することができる。さらなる詳細および方法については、米国特許公開番号2003/0186374、2006/0270041、およびPCT公開番号05/040395を参照されたい。
5.8 スクリーニング方法
本発明はまた、原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片を含むライブラリーをスクリーニングする方法を提供し、本明細書では以後これを「本発明のスクリーニング方法」と称する。一実施形態では、本発明のスクリーニング方法により、特定の抗原に結合する抗体またはその断片の同定が可能になる。一実施形態では、本発明のスクリーニング方法により、特定の抗原との結合が改変された抗体またはその断片の同定が可能になる。一実施形態では、本発明のスクリーニング方法により、エフェクター分子(例えば、FcγRおよび/またはClq)との結合が改変された抗体またはその断片の同定が可能になる。
本発明はまた、原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片を含むライブラリーをスクリーニングする方法を提供し、本明細書では以後これを「本発明のスクリーニング方法」と称する。一実施形態では、本発明のスクリーニング方法により、特定の抗原に結合する抗体またはその断片の同定が可能になる。一実施形態では、本発明のスクリーニング方法により、特定の抗原との結合が改変された抗体またはその断片の同定が可能になる。一実施形態では、本発明のスクリーニング方法により、エフェクター分子(例えば、FcγRおよび/またはClq)との結合が改変された抗体またはその断片の同定が可能になる。
本発明は、望ましい結合特性を有する抗体またはその断片を含む宿主細胞を選択する方法であって、a)細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドのライブラリーを宿主細胞に導入するステップ;b)このライブラリー(本明細書ではまた、「本発明の宿主細胞ライブラリー」とも呼ぶ)を含む上記宿主細胞を培養することにより、原形質膜の細胞外表面に各抗体またはその断片を発現させ、提示させるステップ;c)上記宿主細胞を抗体結合試薬(本明細書ではまた、「抗体リガンド」または単純に「リガンド」とも呼ぶ)と接触させるステップ;ならびにd)上記抗体結合試薬に結合した原形質膜提示抗体またはその断片を含む宿主細胞を単離するステップを含む、上記方法を提供する。抗体結合試薬として、限定するものではないが、抗原、FcγR、C1qが挙げられる。望ましい結合特性としては、限定するものではないが、特定抗原との結合、特定抗原との結合増強、特定抗原との結合低減などが挙げられる。望ましい結合特性にはさらに、限定するものではないが、エフェクター分子(例えば、C1q、FcγRI、FcγRII、FcγRIIA)との結合、エフェクター分子との結合増強、およびエフェクター分子との結合低減も含まれる。本発明はさらに、1)単離した宿主細胞から核酸を回収する;2)上記核酸から少なくとも1つの抗体可変領域をコードする核酸を増幅する;3)増幅核酸を第2のベクターに挿入する(その際、第2ベクターは、挿入された核酸と一緒に、分泌型の可溶性抗体をコードする)、および4)上記第2ベクターで宿主細胞を形質転換する、各方法も提供する。
当業者であれば、宿主細胞ライブラリーの各宿主細胞が、一般に、細胞の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片をコードする、限られた数のポリヌクレオチドを含むことを理解するだろう。一実施形態では、各宿主細胞は、細胞の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片をコードする、1〜6種のポリヌクレオチドを含む。従って、各宿主細胞は、本発明の抗体を1種だけ、または2種だけ、または3種だけ原形質膜の細胞外表面に発現することが意図される。
一実施形態では、本発明の宿主細胞は酵母細胞である。酵母細胞は、以下の3つの主要構成要素からなる細胞エンベロープにより保護されている:(内側から外側へ)原形質膜、細胞周辺腔、および細胞壁。細胞エンベロープは、細胞の浸透性および透過性を制御する上で主要な役割を果たす。細胞壁は、乾燥細胞質量の15〜25%を含み、高分子量化合物(例えば、抗体)が細胞周辺腔に進入するのを阻止することにより一次ゲートキーパーとして働く。細胞壁の主要構造成分は、βグルカン、キチン、およびマンノース含有糖タンパク質(マンノプロテイン)である。酵母細胞壁の多孔性は、主に、マンノプロテインにより制御される(Zlotnikら、J. Bacteriology, 159:1018-1026 (1984);De Nobelら、J. Gen. Microbiol. 135:2077-2084 (1989)を参照)。原形質膜の細胞外表面に提示され、従って、細胞周辺腔内に位置する本発明の抗体は、細胞壁により外部環境から保護され、タンパク質抗原のような何らかの抗体結合試薬との相互作用から保護されうる。抗体と相互作用性リガンド(例えば、抗原、FcγR、C1q)との示差的相互作用を利用した本発明のスクリーニング方法が、インタクトな細胞壁の存在下では実現可能ではないこともあることは、当業者に明らかであろう。スクリーニング工程を容易化するために、本明細書は、細胞壁の多孔性を増大することにより、細胞周辺腔に提示される抗体との接近を可能にする方法を提供する。
酵母細胞壁の多孔性は、多数の様々な方法(例えば、突然変異体宿主細胞、細胞壁合成の化学阻害剤、宿主細胞の細胞壁分解酵素処理の使用)により増大することができるが、本発明は、それらの使用に限定されるわけではない。一実施形態では、本発明の宿主細胞は、細胞壁の多孔性増大をもたらす突然変異を含む酵母細胞である。具体的実施形態では、本発明の宿主細胞は、mnn1、mnn2、mnn9、およびmnn1、mnn2、mnn9のオーソログからなる群より選択される遺伝子の機能を低減または排除する突然変異を含み;この突然変異は、細胞壁の多孔性増大をもたらす。
一実施形態において、本発明の方法は、化学阻害剤の存在下で酵母宿主細胞を培養するステップを含み、その際、上記化学阻害剤の活性により、多孔性が増大した細胞壁の形成がもたらされる。具体的実施形態では、上記化学阻害剤は、ツニカマイシンである。一実施形態では、本発明の方法は、本発明の宿主細胞を酵素で処理するステップを含み、その際、この酵素処理により、細胞壁の多孔性が増大する。具体的実施形態では、上記酵素は、リチカーゼおよびチモラーゼからなる群より選択される。一実施形態において、望ましい結合特性を有する抗体またはその断片を有する酵母宿主細胞を選択する方法は、a)細胞(例えば、酵母細胞)の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドのライブラリーを酵母宿主細胞に導入するステップ;b)このライブラリーを含む酵母宿主細胞を培養することにより、原形質膜の細胞外表面に各抗体またはその断片を発現させ、提示させるステップ;c)細胞壁が抗体リガンドに対して透過性となるように、該細胞壁を十分多孔性にする酵素と、上記酵母宿主細胞を接触させるステップ;d)上記酵母宿主細胞を抗体結合試薬(例えば、抗原、FcγR、C1q)と接触させるステップ;ならびにe)上記抗体結合試薬に結合した原形質膜提示抗体またはその断片を含む宿主細胞を単離するステップを含む。本発明の方法は、1)単離した宿主細胞から核酸を回収するステップ;2)上記核酸から少なくとも1つの抗体可変領域をコードする核酸を増幅するステップ;3)増幅した核酸を第2のベクターに挿入するステップ(その際、第2ベクターは、挿入された核酸と一緒に、分泌型の可溶性抗体をコードする);ならびに、4)上記第2ベクターで酵母宿主細胞を形質転換するステップ、をさらに含んでもよい。
いったん本発明の宿主細胞ライブラリーを作製したら、これを目的の少なくとも1つの抗原に対してスクリーニングすることができる。また、本発明の宿主細胞ライブラリーをスクリーニングすることにより、望ましい特性を備えたFc変異体を同定することができる。当業者であれば、本明細書に記載した本発明から逸脱することなく、スクリーニングに様々な変形を施しうることを理解するだろう。
本発明の宿主細胞ライブラリーを培養することにより、細胞表面に提示されうる本発明の抗体ライブラリーの発現が可能になる。次に、細胞をスクリーニングすることにより、所望のリガンド(例えば、抗原、FcγR、C1q)結合特性または他の所望する特性を備えた抗体を発現する細胞を同定し、選択する。本明細書に記載の方法、および当業者に公知の方法により、これらの細胞をスクリーニングおよび選択することができる。次に、所望の特性を備えた抗体を発現する細胞を他の細胞からの分離により選択する。
スクリーニングおよび選択ステップは、当分野で公知の様々な技術(本明細書に記載のものを含む)のいずれかを用いて、達成することができる。最もよく用いられている技術は、a)抗体と目的のリガンドとの特異的結合を可能にするが、抗体または宿主細胞と目的のリガンドとの非特異的会合は阻止する条件下で、本発明の宿主細胞ライブラリーを目的のリガンド(例えば、抗原、FcγR、C1q)と一緒にインキュベートするステップ;b)宿主細胞に結合した目的のリガンドを検出するステップ;c)結合した目的のリガンドを含まない宿主細胞から、結合した目的のリガンドを含む宿主を分離するステップ、を含む。有用な結合条件として、限定するものではないが、0.1%Triton-X 100を含むPBSバッファー(pH 7.6)の使用が挙げられる。特定の実施形態では、以下に説明するように、抗体に結合した目的の試薬をタグ付けすることにより、検出および/または分離を容易にする。
当業者に知られる多数の方法のいずれか1つを用いて、目的のリガンドを検出することができるが、本発明がそれらの使用により制限されるわけではない(例えば、米国特許第5,994,519号、第6,180,336号、第6,489,123号)。目的のリガンドは、特異的結合試薬(例えば、リガンド特異的抗体またはその断片、リガンド特異的アプタマー)で検出することもでき、その際、検出を手当てするため、この結合試薬自体が標識される(例えば、蛍光標識試薬、磁気ビーズコンジュゲート型試薬、セファロースビーズコンジュゲート型試薬)。直接的な検出を手当てするために、リガンドを改変してもよい(例えば、蛍光標識試薬、GEPタンパク質融合リガンド)。また、間接的な検出を手当てするために、リガンドをタグ付けまたは改変することもでき(例えば、ビオチン化リガンド、HAアフィニティータグ融合リガンド、FLAGタグ融合リガンド、MBPタグ融合リガンド、ストレプトアビジン融合リガンド)、および、リガンドのタグまたは改変と特異的に相互作用する、標識した(例えば、蛍光標識、磁気ビーズコンジュゲート、セファロースビーズコンジュゲート)二次試薬(例えば、ビオチン化リガンド用のストレプトアビジン、ビオチン化リガンド用の抗ビオチン抗体またはその断片、HAタグ付きリガンド用の抗HA抗体、FLAGタグ付きリガンド用の抗FLAG抗体)を用いて、リガンドは間接的に検出される。
一実施形態において、目的のリガンド(例えば、抗原、FcγR、C1q)にタグ付け(例えば、蛍光マーカー)し、これを用いて、宿主細胞表面上の抗体に結合させることで、リガンドに結合した抗体を発現する宿主細胞を標識することができる。一実施形態では、蛍光標識は、Aqua、テキサスレッド、FITC、ローダミン、ローダミン誘導体、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、カスケードブルー、Cy5、フィコエリトリン、GFPまたはGFP誘導体、例えば、EGFPからなる群より選択される。多くの蛍光標識が当分野で公知であり、市販されている(例えば、Molecular Probes: Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, R. P. Haugland, 第9版、Molecular Probes, (OR, 2004)を参照)。一実施形態では、目的のリガンドをビオチン標識する。目的のリガンドに細胞が結合したら、ストレプトアビジンにコンジュゲートさせた標識を用いて、リガンド結合細胞を標識する。一実施形態では、PEコンジュゲート型ストレプトアビジンを用いる。一実施形態では、目的のリガンドは、ストレプトアビジンを含み、標識化ビオチンを検出試薬として用いる。一実施形態では、目的のリガンドを組換えにより作製し、ペプチドタグ(例えば、FLAG、HISタグ)を組み込む。ペプチドタグに対する抗体を用いて、特定の抗原に結合する細胞を検出およびソーティング/選択する、または排除することができる。
結合した目的のリガンドを含まない宿主細胞から、特異的に結合した目的のリガンドを含む宿主細胞を分離する方法は、当業者に知られる多数の方法のいずれか1つを用いて、達成することができるが、本発明がそれらの使用により制限されるわけではない。例えば、蛍光タグ付きリガンドの場合には、例えばフローサイトメーターにより、宿主細胞を分離/ソーティングし、蛍光に基づきソーティングすることができる。例えば、PCT公開番号WO 04/014292、WO 03/094859、WO 04/069264、WO 04/028551、WO 03/004057、WO 03/040304、WO 00/78815、WO 02/070007およびWO 03/075957、米国特許第5,795,734号、第6,248,326号および第6,472,403号、Pecheurら、2002, FASEB J. 16: 1266-1268;Almedら、2002, J.Histochemistry & Cytochemistry 50:1371-1379を参照されたい。別の実施形態では、蛍光顕微鏡を用いて、蛍光標識した宿主細胞を観察し、標準的顕微操作(例えば、微小ガラスピペット、マイクロピペッター、もしくはマイクロマニピュレーターを用いて、直接単離することができる。別の実施形態では、ビーズを用いて、細胞をソーティング/分離することができる(例えば、米国特許第6,342,588号、第5,665,582号、および第4,219,411号;Chestnutら、1996, J Immunological Methods 193:17-27)。例えば、抗原をビオチン化し、抗原に結合した抗体を発現する細胞を、ストレプトアビジンでコーティングした磁気ビーズを用いて単離することができる。
例えば、第1抗原に結合するが、第2抗原には結合しない抗体をスクリーニングする場合、選択ステップに2以上の抗原を用いてもよい。この場合、第2抗原に結合しない抗原を発現する細胞をソーティングすることにより、ネガティブ選択ステップを実施することができ、その後に、第1抗原に結合する抗体をソーティングするポジティブ選択ステップを実施する。一実施形態では、ポジティブ選択ステップを実施した後、ネガティブ選択ステップを実施する。一実施形態では、ポジティブおよびネガティブ選択ステップをほぼ同時に実施する。例えば、第1および第2抗原を異なる蛍光分子で標識する。抗体を提示する細胞と一緒に、両抗原をインキュベートする。抗体の濃度はこの実施形態について最適化してもよい。次に、第1抗原に結合するが、第2抗原には結合しない抗体について、細胞を同時にソーティングする(例えば、二色FACS分析)。当業者であれば、本明細書の教示に基づき、連続的スクリーニング/選択ステップの使用、および多色FACS分析により、多数の抗原に対する結合についてネガティブおよび/またはポジティブスクリーニングを実施することができる。
いくつかの実施形態において、特定の細胞種(標識細胞)に結合する抗体を選択することができる。ファージディスプレイ抗体に関するこのような選択については、例えば、Hutsら、2001, Cancer Immunol. Immunother. 50:163-171に記載されている。標的細胞を固定化しても、しなくてもよく、これによって、例えば、固定化により改変される細胞表面抗原に結合する抗体を選択する機会が与えられる。この工程でスクリーニング/選択しようとする生物学的機能に関して、特定の細胞種を選択することができる。適切な細胞種は、所望の生物学的機能を備えた抗体が結合すると予想される細胞種である。例えば、癌細胞の増殖を阻害することができる抗体を単離したい場合には、このような抗体は癌細胞に結合する可能性があると予想される。従って、癌細胞に結合することができる抗体を最初に選択するのが適切であろう。細胞に結合する抗体を選択するためには、結合の助けとなる条件を用いて、標的細胞との結合について、抗体を提示する細胞をスクリーニングすることができる。例えば、標的細胞に結合するが、抗体を発現する細胞には結合しないビオチンコンジュゲート型抗体は、ストレプトアビジンをコーティングした磁気ビーズに結合することができる。次に、これらのビーズを用いて、標的細胞を固定化する。抗体発現性細胞を固定化細胞と合わせた後、磁気ビーズに結合するものを単離することができる。特定の既知抗原ではなく、細胞に結合する抗体を選択することには、細胞表面に提示された依然として未知の抗原に結合する抗体を選択する可能性があるという利点がある。このような抗原は、タンパク質である必要はなく、2以上の細胞表面分子を含むものでもよい。選択した細胞種または特定の分子との結合についての選択ステップは、1回または複数回、例えば、少なくとも約2、3、4、5、6、7回、またはそれ以上繰り返してもよい。所望であれば、2つ以上の異なる前選択ステップを同時、または連続して実施することもできる。例えば、2つの異なる種類の癌細胞に結合する抗体を選択することができる。
随意に、1以上のネガティブ選択ステップによりさらなる改善を達成することができ、このようなステップは、ポジティブ選択ステップ前または後のいずれに実施してもよい。例えば、癌細胞に結合する抗体を選択する場合、抗体を提示する細胞を非癌細胞に結合させ(例えば、前述のように)、これらの細胞に結合しない抗体をさらなる試験のために保持することができる。このようなネガティブ選択により、非標的細胞に非特異的に結合する抗体の少なくとも一部を排除することができる。あるいは、非標的タンパク質(例えば、標的抗原と比較して、非関連または類似の抗原)を固体支持体に固定化し、ネガティブ選択ステップで用いることにより、非標的タンパク質に結合する抗体発現性細胞を排除する。別の例では、特定の受容体に対する抗体を単離するのが望ましい場合もあり、その際、この受容体は、密接に関連する構造を有する受容体のファミリーに属する。この特定の受容体に特異的な抗体を単離する確率を高めるために、このファミリーに由来する他の受容体の1つ、いくつか、または全部を用いて、ネガティブ選択ステップを実施してもよい。ネガティブ選択ステップにおいて、非標的抗原に結合しない抗体を発現する細胞をさらなる試験のために保持することもできる。この選択により、固体支持体、または非標的タンパク質に非特異的に結合する抗体の少なくとも一部を排除することができる。同様に、特定のタンパク質に結合する抗体を提示する細胞を選択する場合には、非関連または類似のタンパク質と細胞を混合して、標的タンパク質との結合について競合させることができる。
第1ラウンドの選択後、選択した抗体をコードするポリヌクレオチドを単離し、更なる特性決定のためにこれを使用して対応する抗体を発現させることができる。また、ポジティブ選択によりに単離した所望の抗体を発現する細胞を増殖し、もう1ラウンドのスクリーニングに付してもよい。本発明のスクリーニング方法では、1、2、3、4、5、6、7、8以上の選択ステップを用いてもよい。
一実施形態では、本発明の宿主細胞ライブラリーは、本発明の抗体の第1および第2鎖をコードする第1および第2ポリヌクレオチドを有する第1および第2ベクターを含む二倍体宿主細胞のライブラリーである。一実施形態では、本発明の宿主細胞ライブラリーは、第1の半数体宿主細胞集団と第2の半数体宿主細胞集団の融合により作製された二倍体宿主ライブラリーであり、その際、第1および第2半数体宿主細胞集団は、反対の接合型であり;第1半数体宿主細胞集団は、重鎖またはその断片の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含み;第2半数体宿主細胞集団は、軽鎖またはその断片の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含む。第1ラウンドのスクリーニングを実施することにより、原形質膜の表面に、所望の特性を備えた抗体を提示する二倍体宿主細胞を単離する。単離した細胞から、DNAを単離して、原形質膜の表面に提示された抗体の重鎖および軽鎖をコードするベクターを回収する。単離したDNAは、随意に、大腸菌において増幅してもよい。単離したベクターDNAを用いて、一次スクリーニングから単離した重鎖および軽鎖の可能な全ての組合せを有効に発現する二倍体宿主細胞を含む二次宿主細胞ライブラリーを樹立する。さらに改善された特性を備えた抗体について、上記二次ライブラリーをスクリーニングしてもよい。
先行する選択ステップで所望の特性を備えた抗体を含む細胞を同定したら、これらの抗体をコードするポリヌクレオチドを単離し、再試験することにより、これらが、所望の生物学的特性を備えた抗体をコードすることを確認する。個々の形質転換体または形質転換体のプールを単離した場合には、再試験のためにこれらから組換え核酸を取得することができる。例えば、個々の形質転換体を単離した場合には、上記抗体をコードする核酸を精製し、これを用いて、哺乳動物細胞をトランスフェクトした後、これらの細胞を抗原との結合特性について特性決定することができる。形質転換体のプールを単離した場合には、試験の結果が陽性のプールから得た抗体コード核酸を用いて、細胞を形質転換することにより、1つの抗体を発現する個々の形質転換体を作製することができる。
これらの個々の形質転換体から得た抗体コード核酸を用いて細胞をトランスフェクトし、抗体を発現し、単離し、機能について試験することができ、このようにして、所望の機能を有するタンパク質または抗体を同定することができる。個々の形質転換体または形質転換体のプールを単離していない場合には、試験の結果が陽性であったトランスフェクタントまたはトランスフェクタントのプールから、例えばPCRにより発現した抗体の可変領域をコードする配列を増幅することによって、上記タンパク質または少なくとも抗体可変領域をコードする核酸を取得することができる。また、これらの配列(PCRにより増幅してもよい)は、好適なベクターに再挿入して、個々の形質転換体を作製するのに用いることもできる。これら形質転換体からの組換えDNAを用いて、哺乳動物細胞をトランスフェクトすることにより、抗体を発現させ、機能についてこれらを再試験することも可能である。
5.9 本発明の特異的抗原および融合パートナー
前述したように、本発明の方法はあらゆる抗体に適用することができる。例えば、Fc変異体ライブラリーをどの抗体から作製してもよいし、また、本発明の変異体Fc領域をどの抗体に導入してもよい。さらに、変異体Fc領域を用いて、Fc融合タンパク質を作製してもよい。従って、ほぼ全ての分子は、本発明に従って使用できる抗体および/またはFc融合タンパク質によりターゲッティングされ、および/またはこれに組み込むことができ、限定するものではないが、以下に記載するタンパク質のリスト、ならびに、以下のタンパク質のリストに属するサブユニット、ドメイン、モチーフおよびエピトープが挙げられる:レニン;ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α1-抗トリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;凝血因子、例えば、因子VII、因子VIIIC、因子IX、組織因子(TF)、およびフォン・ビルブランド因子;抗凝血因子、例えば、プロテインC;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性物質;プラスミノーゲン活性化因子、例えば、ウロキナーゼもしくはヒト尿または組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA);ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;腫瘍壊死因子(TNF)タンパク質、例えば、TNF-α、TNF-β、TNF-β2、TNFc、TNF-αβ、4-1BBL、ならびにTNFスーパーファミリーのメンバー、例えば、アポトーシスのTNF様の弱い誘導因子(TWEAK)、およびLIGHT、Bリンパ球刺激因子(BlyS);TNF受容体スーパーファミリーのメンバー、例えば、TNF-RI、TNF-RII、TRAIL受容体-1、CD137、膜貫通活性化因子およびCAML相互作用因子(TACI)ならびにOX40L;Fasリガンド(FasL);エンケファリナーゼ;RANTES(活性化に基づいて調節され、通常、T細胞が発現および分泌する);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-α);血清アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン;Muellerian阻害物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;微生物タンパク質、例えば、β-
ラクタマーゼ;DNase;IgE;細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA)、例えば、CTLA-4;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);ホルモンまたは増幅因子の受容体、例えば、EGFR(ErbB-1)、VGFR、CTGF(結合組織増殖因子);インターフェロン、例えば、αインターフェロン(α-IFN)、βインターフェロン(β-IFN)およびγインターフェロン(γ-IFN);インターフェロンα受容体(IFNAR)サブユニット1および/または2ならびにその他の受容体、例えば、A1、アデノシン受容体、リンホトキシンβ受容体、BAFF-R、エンドセリン受容体;プロテインAまたはD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5、もしくは-6(NT-3、NT-4、NT-5、もしくはNT-6)、または神経成長因子;血小板由来増殖因子(PDGF);αFGFおよびβFGFのような繊維芽細胞増殖因子;上皮増殖因子(EGF);TGF-αおよびTGF-βのようなトランスフォーミング成長因子(TGF)、例えば、TGF-1、TGF-2、TGF-3、TGF-4、もしくはTGF-5など;インスリン様増殖因子IおよびII(IGF-IおよびIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質、ケラチノサイト増殖因子;増殖因子受容体、例えば、FGFR-3、IGFR、PDGFRα;CDタンパク質、例えば、CD2、CD3、CD3E、CD4、CD8、CD11、CD11a、CD14、CD16、CD18、CD19、CD20、CD22、CD23、CD25、CD27、CD27L、CD28、CD29、CD30、CD30L、CD32、CD33(p67タンパク質)、CD34、CD38、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD52、CD54、CD55、CD56、CD63、CD64、CD80;CD137およびCD147;IL-2R/IL-15Rβサブユニット(CD122);エリスロポイエチン;骨誘導因子;イムノトキシン;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン、例えば、インターフェロン-α、-β、および-γ;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M-CSF、GM-CSF、およびG-CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL-1〜IL-13およびIL-15、IL-18、IL-23;EPO;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体α/β;表面膜タンパク質;分解促進因子;ウイルス抗原、例えば、AIDSエンベロープの一部(例:gp120);輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;ケモカインファミリーメンバー、例えば、エオタキシン、MIP、MCP-1、RANTES;細胞接着分子、例えば、セレクチン(L-セレクチン、P-セレクチン、E-セレクチン)、LFA-1、LFA-3、Mac1、p150.95、VLA-1、VLA-4、ICAM-1、ICAM-3、EpCAMおよびVCAM、a4/p7インテグリン、およびXv/p3インテグリン、インテグリンαサブユニット、例えば、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、α7、α8、α9、αD、CD11a、CD11b、CD51、CD11c、CD41、αIIb、αIELb;インテグリンβサブユニット、例えば、CD29、CD18、CD61、CD104、β5、β6、β7およびβ8;限定するものではないが、αVβ3、αVβ5およびα4β7などのインテグリンサブユニットの組合せ;細胞リガンド、例えば、TNF関連アポトーシス誘導性リガンド(TRAIL)、A増殖誘導性リガンド(APRIL)、B細胞活性化因子(BAFF)、アポトーシス経路のメンバー;IgE;血液群抗原;flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC;Eph受容体、例えば、EphA2、EphA4、EphB2など;免疫系マーカー、受容体およびリガンド、例えば、CTLA-4、T細胞受容体、B7-1、B7-2、IgE、ヒト白血球抗原(HLA)、例えば、HLA-DR、CBL;補体タンパク質、例えば、補体受容体CR1、C1Rq、ならびにC3およびC5のような他の補因子;血液因子、例えば、組織因子、因子VII;糖タンパク質受容体、例えば、GpIbα、GPIIb/IIIaおよびCD200;ならびに、以上挙げたポリペプチドいずれかの断片。
前述したように、本発明の方法はあらゆる抗体に適用することができる。例えば、Fc変異体ライブラリーをどの抗体から作製してもよいし、また、本発明の変異体Fc領域をどの抗体に導入してもよい。さらに、変異体Fc領域を用いて、Fc融合タンパク質を作製してもよい。従って、ほぼ全ての分子は、本発明に従って使用できる抗体および/またはFc融合タンパク質によりターゲッティングされ、および/またはこれに組み込むことができ、限定するものではないが、以下に記載するタンパク質のリスト、ならびに、以下のタンパク質のリストに属するサブユニット、ドメイン、モチーフおよびエピトープが挙げられる:レニン;ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α1-抗トリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;凝血因子、例えば、因子VII、因子VIIIC、因子IX、組織因子(TF)、およびフォン・ビルブランド因子;抗凝血因子、例えば、プロテインC;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性物質;プラスミノーゲン活性化因子、例えば、ウロキナーゼもしくはヒト尿または組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA);ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;腫瘍壊死因子(TNF)タンパク質、例えば、TNF-α、TNF-β、TNF-β2、TNFc、TNF-αβ、4-1BBL、ならびにTNFスーパーファミリーのメンバー、例えば、アポトーシスのTNF様の弱い誘導因子(TWEAK)、およびLIGHT、Bリンパ球刺激因子(BlyS);TNF受容体スーパーファミリーのメンバー、例えば、TNF-RI、TNF-RII、TRAIL受容体-1、CD137、膜貫通活性化因子およびCAML相互作用因子(TACI)ならびにOX40L;Fasリガンド(FasL);エンケファリナーゼ;RANTES(活性化に基づいて調節され、通常、T細胞が発現および分泌する);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-α);血清アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン;Muellerian阻害物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;微生物タンパク質、例えば、β-
ラクタマーゼ;DNase;IgE;細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA)、例えば、CTLA-4;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);ホルモンまたは増幅因子の受容体、例えば、EGFR(ErbB-1)、VGFR、CTGF(結合組織増殖因子);インターフェロン、例えば、αインターフェロン(α-IFN)、βインターフェロン(β-IFN)およびγインターフェロン(γ-IFN);インターフェロンα受容体(IFNAR)サブユニット1および/または2ならびにその他の受容体、例えば、A1、アデノシン受容体、リンホトキシンβ受容体、BAFF-R、エンドセリン受容体;プロテインAまたはD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5、もしくは-6(NT-3、NT-4、NT-5、もしくはNT-6)、または神経成長因子;血小板由来増殖因子(PDGF);αFGFおよびβFGFのような繊維芽細胞増殖因子;上皮増殖因子(EGF);TGF-αおよびTGF-βのようなトランスフォーミング成長因子(TGF)、例えば、TGF-1、TGF-2、TGF-3、TGF-4、もしくはTGF-5など;インスリン様増殖因子IおよびII(IGF-IおよびIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質、ケラチノサイト増殖因子;増殖因子受容体、例えば、FGFR-3、IGFR、PDGFRα;CDタンパク質、例えば、CD2、CD3、CD3E、CD4、CD8、CD11、CD11a、CD14、CD16、CD18、CD19、CD20、CD22、CD23、CD25、CD27、CD27L、CD28、CD29、CD30、CD30L、CD32、CD33(p67タンパク質)、CD34、CD38、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD52、CD54、CD55、CD56、CD63、CD64、CD80;CD137およびCD147;IL-2R/IL-15Rβサブユニット(CD122);エリスロポイエチン;骨誘導因子;イムノトキシン;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン、例えば、インターフェロン-α、-β、および-γ;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M-CSF、GM-CSF、およびG-CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL-1〜IL-13およびIL-15、IL-18、IL-23;EPO;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体α/β;表面膜タンパク質;分解促進因子;ウイルス抗原、例えば、AIDSエンベロープの一部(例:gp120);輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;ケモカインファミリーメンバー、例えば、エオタキシン、MIP、MCP-1、RANTES;細胞接着分子、例えば、セレクチン(L-セレクチン、P-セレクチン、E-セレクチン)、LFA-1、LFA-3、Mac1、p150.95、VLA-1、VLA-4、ICAM-1、ICAM-3、EpCAMおよびVCAM、a4/p7インテグリン、およびXv/p3インテグリン、インテグリンαサブユニット、例えば、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、α7、α8、α9、αD、CD11a、CD11b、CD51、CD11c、CD41、αIIb、αIELb;インテグリンβサブユニット、例えば、CD29、CD18、CD61、CD104、β5、β6、β7およびβ8;限定するものではないが、αVβ3、αVβ5およびα4β7などのインテグリンサブユニットの組合せ;細胞リガンド、例えば、TNF関連アポトーシス誘導性リガンド(TRAIL)、A増殖誘導性リガンド(APRIL)、B細胞活性化因子(BAFF)、アポトーシス経路のメンバー;IgE;血液群抗原;flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;プロテインC;Eph受容体、例えば、EphA2、EphA4、EphB2など;免疫系マーカー、受容体およびリガンド、例えば、CTLA-4、T細胞受容体、B7-1、B7-2、IgE、ヒト白血球抗原(HLA)、例えば、HLA-DR、CBL;補体タンパク質、例えば、補体受容体CR1、C1Rq、ならびにC3およびC5のような他の補因子;血液因子、例えば、組織因子、因子VII;糖タンパク質受容体、例えば、GpIbα、GPIIb/IIIaおよびCD200;ならびに、以上挙げたポリペプチドいずれかの断片。
また、限定するものではないが、以下に挙げるような癌関連タンパク質も意図される:ALK受容体(プレイオトロフィン受容体)、プレイオトロフィン;KS 1/4パン(pan)癌抗原;卵巣癌抗原(CA125);前立腺酸性ホスファターゼ;前立腺特異的抗原(PSA);前立腺特異的膜抗原(PSMA);黒色腫関連抗原p97;黒色腫抗原gp75;高分子量黒色腫抗原(HMW-MAA);前立腺特異的膜抗原;癌胎児性抗原(CEA);癌胎児性抗原関連細胞接着分子(CEACAM1);サイトケラチン腫瘍関連抗原;ヒト乳脂肪球(HMFG)抗原;CanAg抗原;LewisY関連炭水化物を発現する腫瘍関連抗原;直腸結腸腫瘍関連抗原、例えば、CEA、腫瘍関連糖タンパク質-72(TAG-72)、CO17-1A、GICA 19-9、CTA-1およびLEA;バーキットリンパ腫抗原-38.13;CD19;ヒトBリンパ腫抗原-CD20;CD22;CD33;黒色腫特異的抗原、例えば、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2およびガングリオシドGM3;腫瘍特異的移植型細胞表面抗原(TSTA);ウイルス誘導型腫瘍抗原、例えば、T抗原、DNA腫瘍ウイルスおよびRNA腫瘍ウイルスのエンベロープ抗原;癌胎児性抗原αフェトプロテイン、例えば、結腸のCEA、5T4癌胎児性栄養芽層糖タンパク質および膀胱腫瘍癌胎児性抗原;分化抗原、例えば、ヒト肺癌抗原L6およびL20;繊維肉腫の抗原;ヒト白血病T細胞抗原Gp37;ネオ糖タンパク質;スフィンゴ脂質;EGFR(表皮増殖因子受容体)のような乳癌抗原;NY-BR-16;NY-BR-16およびHER2抗原(p185HER2);Her2/neu(ErbB-2)、Her3(ErbB-3)、Her4(ErbB-4)、多形上皮ムチン(PEM)抗原;上皮膜抗原(EMA);黒色腫関連抗原MUC18;MUC1;悪性ヒトリンパ球抗原-APO-1;分化抗原、例えば、胎児赤血球に存在するI抗原;成体赤血球に存在する一次内胚葉I抗原;前移植胚;胃腺癌に存在するI(Ma);乳房上皮に存在するM18、M39;骨髄性細胞に存在するSSEA-1;VEP8;VEP9;Myl;VIM-D5;結腸直腸癌に存在するD156-22;TRA-1-85(血液群H);精巣および卵巣癌に存在するSCP-1;結腸腺癌に存在するC14;肺腺癌に存在するF3;胃癌に存在するAH16;Yハプテン;胚性癌細胞に存在するLey;結腸直腸腫瘍に存在する結腸細胞分化抗原、腎細胞癌に存在する炭酸脱水酵素IX、多数の腫瘍タイプ周辺の間質に存在するFAPα、卵巣腫瘍に存在する葉酸結合タンパク質、PD1;死受容体タンパク質、DR5;TL5(血液群A);A431細胞に存在するEGF受容体;膵臓癌に存在するE1系列(血液群B);胚性癌細胞に存在するFC10.2;胃腺癌抗原;腺癌に存在するCO-514(血液群Lea);腺癌に存在するNS-10;CO-43(血液群Leb);A431細胞のEGF受容体に存在するG49;結腸腺癌に存在するMH2(血液群ALeb/Ley);結腸癌に存在する19.9;胃癌ムチン;骨髄性細胞に存在するT5A7;黒色腫に存在するR24;胚性癌細胞に存在する4.2、GD3、D1.1、OFA-1、GM2、OFA-2、GD2、およびM1:22:25:8、ならびに、4〜8細胞期胚に存在するSSEA-3およびSSEA-4;皮膚T細胞リンパ腫抗原;MART-1抗原;シアリルTn(STn)抗原;大細胞リンパ腫に存在する未分化リンパ腫キナーゼ(ALK);結腸癌抗原NY-CO-45;肺癌抗原NY-LU-12変異体A;腺癌抗原ART1;腫瘍随伴性脳−精巣癌抗原(神経癌抗原MA2;腫瘍随伴性神経抗原);神経−腫瘍学的腹側抗原2(NOVA2);肝細胞癌抗原遺伝子520;腫瘍関連抗原CO-029;腫瘍関連抗原MAGE-C1(癌/精巣抗原CT7)、MAGE-B1(MAGE-XP抗原)、MAGE-B2(DAM6)、MAGE-2、MAGE-4a、MAGE-4bおよびMAGE-X2;癌‐精巣抗原(NY-EOS-1);胎盤アルカリホスファターゼ(PLAP)および精巣PLAP様アルカリホスファターゼ、トランスフェリン受容体;ヘパラナーゼI;多種の癌に関連するEphA2、多くの腫瘍タイプの壊死性コアに存在するDNA/ヒストンH1複合体;ホスファチジルセリンのようなアミノリン脂質;胎盤アルカリホスファターゼ(PALP);多くの腫瘍タイプに関連する細胞表面糖タンパク質、例えば、CS1、gp-3、gp-4およびgp9、ならびに以上挙げたポリペプチドのいずれかの断片。
Fc変異体タンパク質によりターゲッティングされうる、および/またはこれに組み込むことができるその他のタンパク質の例として、限定するものではないが、以下のタンパク質のリスト、ならびに、以下の微生物タンパク質のリストに属するサブユニット、ドメイン、モチーフ、およびエピトープが挙げられる:炭疽菌(B. anthracis)タンパク質または毒素;ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)タンパク質、例えば、エンベロープ糖タンパク質、gB、ウイルスの内部マトリックスタンパク質、pp65およびpp150、前初期(IE)タンパク質;ヒト免疫不全ウイルス(HIV)タンパク質、例えば、Gag、Pol、VifおよびNef(Vogtら、1995, Vaccine 13: 202-208);HIV抗原gp120およびgp160(Achourら、1995, Cell. Mol. Biol. 41: 395-400;Honeら、1994, Dev. Biol. Stand. 82: 159-162);ヒト免疫不全ウイルスのgp41エピトープ(Eckhartら、1996, J. Gen. Virol. 77:2001-2008);C型肝炎ウイルス(HCV)タンパク質、例えば、分泌または非分泌形態のヌクレオキャプシドタンパク質、コアタンパク質(pC);E1(pE1)、E2(pE2)(Saitoら、1997, Gastroenterology 112:1321-1330)、NS3、NS4a、NS4bおよびNS5(Chenら、1992, Virology 188:102-113);重度急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルスタンパク質、限定するものではないが、S(スパイク)糖タンパク質、小エンベロープタンパク質E(Eタンパク質)、膜糖タンパク質M(Mタンパク質)、血球凝集素エステラーゼタンパク質(HEタンパク質)、およびヌクレオキャプシドタンパク質(Nタンパク質)(例えば、Marraら、“The Genome Sequence of the SARS-Associated Coronavirus,” Science Express, May 2003を参照);結核菌(Mycobacterium tuberculosis)タンパク質、例えば、通常、細胞表面上のリポ糖タンパク質である30-35 kDa(また、抗原85、α抗原としても知られる)、65-kDa熱ショックタンパク質、および36-kDaプロリンリッチ抗原(Tasconら、(1996) Nat. Med. 2: 888-92)、Ag85A、Ag85b(Huygenら、1996, Nat. Med. 2: 893-898)、65-kDa熱ショックタンパク質、hsp65 (Tasconら、1996, Nat. Med. 2: 888-892)、MPB/MPT51(Mikiら、2004, Infect. Immun. 72:2014-21)、MTSP11、MTSP17(Limら、2004, FEMS Microbiol. Lett. 232:51-9および前掲);単純ヘルペスウイルス(HSV)タンパク質、例えば、gD 糖タンパク質、gB糖タンパク質;ルーシュマニア(Leishmania)属のような細胞内寄生体由来のタンパク質、例えば、LPG、gp63(XuおよびLiew、1994, Vaccine 12: 1534-1536;XuおよびLiew, 1995, Immunology 84: 173-176)、P-2(Nylenら、2004, Scand. J. Immunol. 59:294-304)、P-4(Karら、2000, J Biol. Chem. 275:37789-97)、LACK(Kellyら、2003, J Exp. Med. 198:1689-98);ウエルシュ菌(Clostridium perfringens)毒素のような微生物毒素タンパク質;C.ディフィシレ(C.difficile)毒素AおよびB;さらには、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(hRSV)、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)およびパラインフルエンザウイルス(PIV)の抗原ペプチド例が、Youngらによる特許公開番号WO04010935A2に詳述されている。
当業者であれば、前記リストのタンパク質が特定のタンパク質および生体分子だけではなく、これらを含む1以上の生化学的経路も指していることを理解するだろう。例えば、標的抗原および/または融合パートナーとしてCTLA-4を挙げた場合、これは、T細胞共刺激経路を構成するリガンドおよび受容体(CTLA-4、B7-1、B7-2、CD28など)、ならびに、これらのタンパク質に結合するその他未知のあらゆるリガンドまたは受容体も、標的抗原および/または融合パートナーとして有用であることを意味する。従って、本発明は、特定の生体分子だけではなく、この生体分子と相互作用するタンパク質のセット、ならびに、該生体分子が属する生化学的経路のメンバーも包含する。また、当業者であれば、タンパク質に結合する抗体および/またはその抗原結合断片、これらに結合するリガンドもしくは受容体、またはそれらの対応する生化学的経路の他のメンバーを、当分野で周知の方法(例えば、以下に記載するものなど)により誘導することができること、および、このような抗体および/または抗原結合断片が、変異体Fc領域もしくはその断片(限定するものではないが、本明細書に記載のものなど)を含むように操作できることも理解するだろう。当業者はさらに、前記タンパク質、これらに結合するリガンドもしくは受容体、またはそれらの対応する生化学的経路の他のメンバーのいずれかを、変異体Fc領域もしくはその断片(限定するものではないが、本明細書に記載のものなど)に機能的に連結させることにより、Fc融合物を作製できることも理解するだろう。このように、例えば、EGFRをターゲッティングするFc融合物は、変異体Fc領域を、EGF、TGFα、またはEGFRに結合するその他いずれかのリガンド(既知または未知に関わらず)と機能的に連結させることにより、構築することができる。従って、変異体Fc領域をEGFRと機能的に連結させることにより、EGF、TGFα、またはEGFRに結合するその他いずれかのリガンド(既知または未知に関わらず)に結合するFc融合物を作製することができる。このように、リガンド、受容体、または他のタンパク質もしくはタンパク質ドメイン(限定するものではないが、前記標的、ならびに、対応する生化学的経路を構成するタンパク質など)に関わらず、ほぼ全てのポリペプチドを融合パートナーとして用いることにより、Fc変異体タンパク質を作製することができる。前文に挙げた1種以上の分子をターゲッティングするおよび/または組み込む上記Fc変異体タンパク質(例えば、抗体、Fc融合物)を本発明に従って作製することが意図される。
5.10 ダウンストリーム操作
本発明のスクリーニング方法を用いて単離した1以上のポリペプチドをさらに改変することも意図される。例えば、本発明に従って単離した抗体を改変することができる(すなわち、抗体と任意のタイプの分子との共有結合(例えば、共有結合)により)。限定するものではないが、抗体誘導体の例として、例えば、グリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、公知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質との結合などにより、改変された抗体が挙げられる。多数の化学的改変のいずれかを公知の技術、限定するものではないが、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化などにより実施することができる。特定の実施形態では、本発明に従って単離した抗体、またはその断片を生物活性分子に融合するが、このような生物活性分子として、限定するものではないが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、小分子、擬似物質、合成薬物、無機分子、および有機分子が挙げられる。別の実施形態では、本発明に従って単離した抗体、またはその断片を診断、検出もしくは治療薬とコンジュゲートさせる。このような薬剤およびコンジュゲート方法は、当業者には周知であり、多数の文献に開示されている(例えば、以下を参照:Arnonら、“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeldら、(編), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985);Hellstromら、 “Antibodies For Drug Delivery”, in Controlled Drug Delivery (第2版), Robinsonら、(編), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987);Thorpe, Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”, in Monoclonal Antibodies‘84: Biological And Clinical Applications, Pincheraら、(編), pp. 475-506 (1985); “Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwinら、(編), pp. 303-16 (Academic Press 1985)、ならびに、Thorpeら、1982, Immunol. Rev. 62:119; 国際公開番号WO 93/15199;WO 93/15200;WO 97/33899;WO 97/34911;WO 01/77137;WO 03/075957;米国特許公開番号2006/0040325)。
本発明のスクリーニング方法を用いて単離した1以上のポリペプチドをさらに改変することも意図される。例えば、本発明に従って単離した抗体を改変することができる(すなわち、抗体と任意のタイプの分子との共有結合(例えば、共有結合)により)。限定するものではないが、抗体誘導体の例として、例えば、グリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、アミド化、公知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質との結合などにより、改変された抗体が挙げられる。多数の化学的改変のいずれかを公知の技術、限定するものではないが、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化などにより実施することができる。特定の実施形態では、本発明に従って単離した抗体、またはその断片を生物活性分子に融合するが、このような生物活性分子として、限定するものではないが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、小分子、擬似物質、合成薬物、無機分子、および有機分子が挙げられる。別の実施形態では、本発明に従って単離した抗体、またはその断片を診断、検出もしくは治療薬とコンジュゲートさせる。このような薬剤およびコンジュゲート方法は、当業者には周知であり、多数の文献に開示されている(例えば、以下を参照:Arnonら、“Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeldら、(編), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985);Hellstromら、 “Antibodies For Drug Delivery”, in Controlled Drug Delivery (第2版), Robinsonら、(編), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987);Thorpe, Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review”, in Monoclonal Antibodies‘84: Biological And Clinical Applications, Pincheraら、(編), pp. 475-506 (1985); “Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwinら、(編), pp. 303-16 (Academic Press 1985)、ならびに、Thorpeら、1982, Immunol. Rev. 62:119; 国際公開番号WO 93/15199;WO 93/15200;WO 97/33899;WO 97/34911;WO 01/77137;WO 03/075957;米国特許公開番号2006/0040325)。
代わりに、または随意に、本発明に従って単離した抗体またはその断片をポリペプチド部分に融合させてもよい。抗体をポリペプチド部分に融合またはコンジュゲートさせる方法は、当分野では公知である。例えば、米国特許第5,336,603号;第5,622,929号;第5,359,046号;第5,349,053号;第5,447,851号、および第5,112,946号;欧州特許第307,434号;欧州特許第367,166号;PCT公開番号WO 96/04388およびWO 91/06570;Ashkenaziら、1991, PNAS USA 88:10535;Zhengら、1995, J 1mmunol 154:5590;ならびに、Vilら、1992, PNAS USA 89:11337(各々、その全文を参照として組み込む)を参照されたい。抗体またはその断片と部分との融合は、必ずしも直接である必要はなく、リンカー配列を介してもよい。このようなリンカー分子は、当分野で一般的に知られており、Denardoら、1998, Clin Cancer Res 4:2483;Petersonら、1999, Bioconjug Chem 10:553;Zimmermanら、1999, Nucl Med Biol 26:943;Garnett, 2002, Adv Drug Deliv Rev 53:171に記載されている。
一実施形態では、本発明に従って単離した抗体またはその断片を組換えにより異種タンパク質またはポリペプチド部分(またはその断片、好ましくは、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、もしくは少なくとも100アミノ酸のポリペプチド)に融合するか、または化学的にコンジュゲートする(共有および非共有コンジュゲーションの両者を含む)ことにより、融合タンパク質を作製する。これに代わり、または随意に、抗体またはその断片を用いて、該抗体を、特定の細胞表面受容体に特異的な抗体と融合またはコンジュゲートすることにより、in vitroまたはin vivoのいずれかで、特定の細胞種に異種ポリペプチドをターゲッティングすることもできる。あるいは、Segalらにより、米国特許第4,676,980号に記載されているように、抗体を第2の抗体にコンジュゲートすることにより、抗体へテロコンジュゲートを形成させることもできる。
5.11 具体的実施形態
1.酵母細胞の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体。
1.酵母細胞の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体。
2.原形質膜の細胞外表面に上記抗体をターゲッティングするアミノ酸配列を含み、その際、このアミノ酸配列が、上記抗体の重鎖または軽鎖に融合されている、実施形態1に記載の抗体。
3.前記アミノ酸配列が、前記抗体の重鎖または軽鎖のC末端に融合されている、実施形態2に記載の抗体。
4.前記アミノ酸配列が、膜貫通ドメインを含む、実施形態2に記載の抗体。
5.前記アミノ酸配列が、GPIアンカードメインを含む、実施形態2に記載の抗体。
6.前記膜貫通ドメインが、トロンボモジュリン、Ax12p、またはSwp1pに由来する、実施形態4に記載の抗体。
7.前記膜貫通ドメインが、配列番号2、4もしくは6に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、実施形態4に記載の抗体。
8.前記抗体が、IgA、IgE、IgM、IgD、IgYおよびIgGからなる群より選択される免疫グロブリンタイプのものである、実施形態1に記載の抗体。
9.前記抗体が、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体もしくはヒト抗体である、実施形態1に記載の抗体。
10.前記抗体が、ヒト抗体である、実施形態1に記載の抗体。
11.前記抗体が、抗原結合断片である、実施形態1に記載の抗体。
12.前記抗原結合断片が、一本鎖Fv(scFv);Fabフラグメント;F(ab')フラグメント;およびFdフラグメントからなる群より選択される、実施形態1に記載の抗体。
13.前記抗原結合断片が、Fc領域に融合している、実施形態11または12に記載の抗体。
14.前記抗体が、細胞表面にこの抗体をターゲッティングするアミノ酸配列を含み、このアミノ酸配列が、Fc領域のC末端に融合している、実施形態13に記載の抗体。
15.前記抗体が、変異体Fc領域を含む、実施形態1または13に記載の抗体。
16.前記抗体が、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、または重鎖および軽鎖可変領域の両方を含む、実施形態1に記載の抗体。
17.前記抗体が、重鎖、軽鎖、または重鎖および軽鎖の両方を含む、実施形態1に記載の抗体。
18.実施形態1〜17のいずれか1つの抗体をコードするポリヌクレオチド。
19.実施形態18のポリヌクレオチドを含むベクターであって、このベクターは、酵母宿主細胞内で原形質膜の細胞外表面での抗体の発現および提示を指令できるように操作可能である、上記ベクター。
20.前記ベクターが、2つのベクターのセットであり、その際、第1のベクターは、抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチドを含み、第2のベクターは、抗体の軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含んでおり、上記抗体は、原形質膜の細胞外表面に提示されうる、実施形態19に記載のベクター。
21.前記第1ベクターが、(a)誘導性プロモーター、(b)シグナル配列、(c)ポリAシグナル、および(d)抗体の重鎖をコードする上記ポリヌクレオチドに機能的に連結された転写終結エレメントをさらに含み;前記第2ベクターが、(a)誘導性プロモーター、(b)シグナル配列、(c)ポリAシグナル、および(d)抗体の軽鎖をコードする上記ポリヌクレオチドに機能的に連結された転写終結エレメントをさらに含む、実施形態20に記載のベクター。
22.前記ベクターが、(a)誘導性プロモーター、(b)シグナル配列、および(c)ポリAシグナル、および(d)原形質膜の細胞外表面に提示されうる酵母発現組換え抗体をコードする上記ポリヌクレオチドに機能的に連結された転写終結エレメントをさらに含む、実施形態19に記載のベクター。
23.前記ベクターが、選択マーカーをさらに含む、実施形態19のベクター。
24.前記第1および/または第2ベクターが、選択マーカーをさらに含む、実施形態20に記載のベクター。
25.前記ベクターが、シャトルベクターである、実施形態19に記載のベクター。
26.前記ベクターが、自律複製性の低コピーベクター、自律複製性の高コピーベクター、または組込みベクターである、実施形態19に記載のベクター。
27.実施形態19に記載のベクターを含む酵母細胞。
28.前記酵母細胞が、タンパク質抗原または抗体に対して細胞壁が透過性となるように該細胞壁を十分多孔性にする遺伝子突然変異を含む、実施形態27に記載の酵母細胞。
29.前記酵母細胞が、mnn9における遺伝子突然変異、またはmnn9のオーソログを含む、実施形態28に記載の酵母細胞。
30.前記酵母細胞が、サッカロミセス(Saccharomyces)属、ピキア(Pichia)属、ハンセヌラ(Hansenula)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属、ヤロウィア(Yarrowia)属、デバリオミセス(Debaryomyces)属、およびカンジダ(Candida)属からなる群より選択される属のものである、実施形態27に記載の酵母細胞。
31.前記酵母細胞が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)からなる群より選択される、実施形態30に記載の酵母細胞。
32.前記酵母細胞が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces serevisiae)である、実施形態31の酵母細胞。
33.前記酵母細胞が、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)である、実施形態31に記載の酵母細胞。
34.酵母細胞の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含むライブラリー。
35.前記抗体の異種集団が、重鎖可変領域配列のライブラリーを含む、実施形態34に記載のライブラリー。
36.前記抗体の異種集団が、軽鎖可変領域配列のライブラリーを含む、実施形態34に記載のライブラリー。
37.前記抗体の異種集団が、一本鎖抗体配列のライブラリーを含む、実施形態34に記載のライブラリー。
38.前記一本鎖抗体配列が、Fc領域をさらに含む、実施形態37に記載のライブラリー。
39.前記抗体の異種集団が、変異体Fc領域のライブラリーを含む、実施形態34に記載のライブラリー。
40.前記抗体が、細胞表面に上記抗体をターゲッティングするアミノ酸配列を含み、その際、このアミノ酸配列が、上記抗体の重鎖もしくは軽鎖またはFc領域に融合されている、実施形態34〜39のいずれか1つに記載のライブラリー。
41.前記アミノ酸配列が、前記抗体の重鎖もしくは軽鎖またはFc領域のC末端に融合されている、実施形態40に記載のライブラリー。
42.前記アミノ酸配列が、膜貫通ドメインを含む、実施形態41に記載のライブラリー。
43.前記アミノ酸配列が、GPIアンカードメインを含む、実施形態41に記載のライブラリー。
44.前記膜貫通ドメインが、トロンボモジュリン、Ax12p、またはSwp1pに由来する、実施形態42に記載のライブラリー。
45.前記膜貫通ドメインが、配列番号2、4もしくは6に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、実施形態44に記載のライブラリー。
46.実施形態34〜45のいずれか1つに記載のライブラリーを含む酵母細胞の集団。
47.前記酵母細胞の集団が、タンパク質抗原または抗体に対して細胞壁が透過性となるように該細胞壁を十分多孔性にする遺伝子突然変異を含む、実施形態46に記載の酵母細胞の集団。
48.前記酵母細胞の集団が、mnn9における遺伝子突然変異、またはmnn9のオーソログを含む、実施形態47に記載の酵母細胞の集団。
49.前記酵母細胞の集団が、サッカロミセス(Saccharomyces)属、ピキア(Pichia)属、ハンセヌラ(Hansenula)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属、ヤロウィア(Yarrowia)属、デバリオミセス(Debaryomyces)属、およびカンジダ(Candida)属からなる群より選択される属のものである、実施形態46に記載の酵母細胞の集団。
50.前記酵母細胞の集団が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)からなる群より選択される、実施形態49に記載の酵母細胞の集団。
51.前記酵母細胞の集団が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である、実施形態50に記載の酵母細胞の集団。
52.前記酵母細胞の集団が、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)である、実施形態50に記載の酵母細胞の集団。
53.所望の結合特性を有する抗体を単離する方法であって、この方法は、以下:
a)原形質膜の細胞外表面での抗体の提示を可能にする条件下で、ライブラリーを含む酵母細胞の集団を培養するステップ;
b)細胞壁が抗体リガンドに対して透過性となるように該細胞壁を十分多孔性にする酵素と、上記酵母細胞とを接触させるステップ;
c)上記酵母細胞を抗体リガンドと接触させるステップ;ならびに、
d)上記抗体リガンドの結合に基づき、上記酵母細胞をソーティングし、これにより、所望の結合特性を有する抗体を発現する少なくとも1種の細胞を単離するステップ
を含み、その際、上記ライブラリーは、酵母細胞の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含む、上記方法。
a)原形質膜の細胞外表面での抗体の提示を可能にする条件下で、ライブラリーを含む酵母細胞の集団を培養するステップ;
b)細胞壁が抗体リガンドに対して透過性となるように該細胞壁を十分多孔性にする酵素と、上記酵母細胞とを接触させるステップ;
c)上記酵母細胞を抗体リガンドと接触させるステップ;ならびに、
d)上記抗体リガンドの結合に基づき、上記酵母細胞をソーティングし、これにより、所望の結合特性を有する抗体を発現する少なくとも1種の細胞を単離するステップ
を含み、その際、上記ライブラリーは、酵母細胞の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含む、上記方法。
54.所望の結合特性を有する抗体を単離する方法であって、この方法は、以下:
a)原形質膜の細胞外表面での抗体の提示を可能にする条件下で、ライブラリーを含む酵母細胞の集団を培養するステップ;
b)上記酵母細胞を抗体リガンドと接触させるステップ;ならびに、
c)上記抗体リガンドとの結合に基づき、上記酵母細胞をソーティングし、これにより、所望の結合特性を有する抗体を発現する少なくとも1種の細胞を単離するステップ
を含み、その際、上記ライブラリーは、酵母細胞の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含む、上記方法。
a)原形質膜の細胞外表面での抗体の提示を可能にする条件下で、ライブラリーを含む酵母細胞の集団を培養するステップ;
b)上記酵母細胞を抗体リガンドと接触させるステップ;ならびに、
c)上記抗体リガンドとの結合に基づき、上記酵母細胞をソーティングし、これにより、所望の結合特性を有する抗体を発現する少なくとも1種の細胞を単離するステップ
を含み、その際、上記ライブラリーは、酵母細胞の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含む、上記方法。
55.前記リガンドを、検出可能な物質で標識する、実施形態53〜54のいずれか1つに記載の方法。
56.前記検出可能な物質が蛍光マーカー、ビオチン、ストレプトアビジン、およびペプチドタグからなる群より選択される、実施形態55に記載の方法。
57.単離した酵母細胞からポリヌクレオチドを単離するステップをさらに含み、その際、このポリヌクレオチドが、所望の結合特性を有する抗体をコードする、実施形態53〜56のいずれか1つに記載の方法。
58.前記所望の結合特性が、特定の抗原に対する結合である、実施形態53〜56のいずれか1つに記載の方法。
59.前記所望の結合特性が、特定の抗原に対する結合増大である、実施形態の53〜56いずれか1つに記載の方法。
60.前記所望の結合特性が、特定の抗原に対する結合低減である、実施形態の53〜56にいずれか1つに記載の方法。
61.前記所望の結合特性が、エフェクター分子に対する結合である、実施形態53〜56のいずれか1つに記載の方法。
62.前記所望の結合特性が、エフェクター分子に対する結合低減である、実施形態53〜56のいずれか1つに記載の方法。
63.前記所望の結合特性が、エフェクター分子に対する結合増大である、実施形態53〜56のいずれか1つに記載の方法。
64.前記エフェクター分子が、Clq、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIAからなる群より選択される、実施形態61〜63のいずれか1つに記載の方法。
65.前記抗体の異種集団が、重鎖可変領域配列のライブラリーを含む、実施形態53〜56のいずれか1つに記載の方法。
66.前記抗体の異種集団が、軽鎖可変領域配列のライブラリーを含む、実施形態53〜56のいずれか1つに記載の方法。
67.前記抗体の異種集団が、一本鎖抗体配列のライブラリーを含む、実施形態53〜56のいずれか1つに記載の方法。
68.前記一本鎖抗体配列が、Fc領域をさらに含む、実施形態67のいずれか1つに記載の方法。
69.前記抗体の異種集団が、変異体Fc領域のライブラリーを含む、実施形態53〜56のいずれか1つに記載の方法。
70.前記抗体が、該抗体を細胞表面にターゲッティングするアミノ酸配列を含み、その際、このアミノ酸配列が、抗体の重鎖もしくは軽鎖またはFc領域に融合されている、
実施形態53〜69のいずれか1つに記載の方法。
実施形態53〜69のいずれか1つに記載の方法。
71.前記アミノ酸配列が、抗体の重鎖もしくは軽鎖またはFc領域のC末端に融合されている、実施形態70に記載の方法。
72.前記アミノ酸配列が、膜貫通ドメインを含む、実施形態71に記載の方法。
73.前記アミノ酸配列が、GPIアンカードメインを含む、実施形態71に記載の方法。
74.前記膜貫通ドメインが、トロンボモジュリン、Ax12p、またはSwp1pに由来する、実施形態72に記載の方法。
75.前記膜貫通ドメインが、配列番号2、4もしくは6に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、実施形態74に記載の方法。
76.さらに以下:
i)ステップ(d)で単離した少なくとも1種の細胞由来の、所望の結合特性を有する抗体をコードするポリヌクレオチドをクローニングし、真核細胞での発現のために適合させたベクターに上記ポリヌクレオチドをサブクローニングするステップ;ならびに
ii)上記抗体を上記真核細胞において発現させ、その際、上記抗体の特性を決定することにより、所望の結合特性を確認するステップ
を含む、実施形態53に記載の方法。
i)ステップ(d)で単離した少なくとも1種の細胞由来の、所望の結合特性を有する抗体をコードするポリヌクレオチドをクローニングし、真核細胞での発現のために適合させたベクターに上記ポリヌクレオチドをサブクローニングするステップ;ならびに
ii)上記抗体を上記真核細胞において発現させ、その際、上記抗体の特性を決定することにより、所望の結合特性を確認するステップ
を含む、実施形態53に記載の方法。
77.さらに以下:
i)所望の結合特性を有する抗体をコードするポリヌクレオチドを、原核生物での発現のために適合させたベクターにクローニングするステップ;ならびに
ii)上記抗体を上記原核生物において発現させ、その際、上記抗体の特性を決定することにより、所望の結合特性を確認するステップ
を含む、実施形態53に記載の方法。
i)所望の結合特性を有する抗体をコードするポリヌクレオチドを、原核生物での発現のために適合させたベクターにクローニングするステップ;ならびに
ii)上記抗体を上記原核生物において発現させ、その際、上記抗体の特性を決定することにより、所望の結合特性を確認するステップ
を含む、実施形態53に記載の方法。
78.前記真核細胞が、哺乳動物、昆虫および酵母細胞からなる群より選択される、実施形態76の方法。
79.さらに以下:
i)所望の結合特性を有する抗体をコードするポリヌクレオチドを、真核細胞での発現のために適合させたベクターにクローニングするステップ;ならびに
ii)上記抗体を上記真核細胞において発現させ、その際、上記抗体の特性を決定することにより、所望の結合特性を確認するステップ
を含む、実施形態54に記載の方法。
i)所望の結合特性を有する抗体をコードするポリヌクレオチドを、真核細胞での発現のために適合させたベクターにクローニングするステップ;ならびに
ii)上記抗体を上記真核細胞において発現させ、その際、上記抗体の特性を決定することにより、所望の結合特性を確認するステップ
を含む、実施形態54に記載の方法。
80.さらに以下:
i)所望の結合特性を有する抗体をコードするポリヌクレオチドを、原核生物での発現のために適合させたベクターにクローニングするステップ;ならびに
ii)上記抗体を上記原核生物において発現させ、その際、上記抗体の特性を決定することにより、所望の結合特性を確認するステップ
を含む、実施形態54のに記載方法。
i)所望の結合特性を有する抗体をコードするポリヌクレオチドを、原核生物での発現のために適合させたベクターにクローニングするステップ;ならびに
ii)上記抗体を上記原核生物において発現させ、その際、上記抗体の特性を決定することにより、所望の結合特性を確認するステップ
を含む、実施形態54のに記載方法。
81.前記真核細胞が、哺乳動物、昆虫および酵母細胞からなる群より選択される、実施形態79に記載の方法。
82.酵母細胞の集団においてライブラリーを発現させる方法であって、この方法は、以下:
a)酵母細胞の集団を上記ライブラリーで形質転換するステップ;ならびに、
b)上記酵母細胞の集団の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体の産生に十分な条件下で、酵母細胞の集団をインキュベートするステップを含み;
その際、上記ライブラリーは、酵母細胞の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含む、上記方法。
a)酵母細胞の集団を上記ライブラリーで形質転換するステップ;ならびに、
b)上記酵母細胞の集団の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体の産生に十分な条件下で、酵母細胞の集団をインキュベートするステップを含み;
その際、上記ライブラリーは、酵母細胞の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含む、上記方法。
83.前記酵母細胞の集団が、タンパク質抗原または抗体に対して細胞壁が透過性となるように該細胞壁を十分多孔性にする遺伝子突然変異を含む、実施形態82に記載の方法。
84.前記酵母細胞の集団が、mnn9における遺伝子突然変異、またはmnn9のオーソログを含む、実施形態83に記載の方法。
85.前記酵母細胞の集団が、サッカロミセス(Saccharomyces)属、ピキア(Pichia)属、ハンセヌラ(Hansenula)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属、ヤロウィア(Yarrowia)属、デバリオミセス(Debaryomyces)属、およびカンジダ(Candida)属からなる群より選択される属のものである、実施形態82〜84に記載の方法。
86.前記酵母細胞の集団が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)からなる群より選択される、実施形態85に記載の方法。
87.前記酵母細胞の集団が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である、実施形態86に記載の方法。
88.前記酵母細胞の集団が、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)である、実施形態81に記載の方法。
89.前記抗体の異種集団が、重鎖可変領域配列のライブラリーを含む、実施形態82に記載の方法。
90.前記抗体の異種集団が、軽鎖可変領域配列のライブラリーを含む、実施形態82に記載の方法。
91.前記抗体の異種集団が、一本鎖抗体配列のライブラリーを含む、実施形態82に記載の方法。
92.前記一本鎖抗体配列が、Fc領域をさらに含む、実施形態86に記載の方法。
93.前記抗体の異種集団が、変異体Fc領域のライブラリーを含む、実施形態82に記載の方法。
94.前記抗体が、該抗体を細胞表面にターゲッティングするアミノ酸配列を含み、その際、このアミノ酸配列が、抗体の重鎖もしくは軽鎖またはFc領域に融合されている、
実施形態82または89〜93のいずれか1つに記載の方法。
実施形態82または89〜93のいずれか1つに記載の方法。
95.前記アミノ酸配列が、抗体の重鎖もしくは軽鎖またはFc領域のC末端に融合されている、実施形態94に記載の方法。
96.前記アミノ酸配列が、膜貫通ドメインを含む、実施形態95に記載の方法。
97.前記アミノ酸配列が、GPIアンカードメインを含む、実施形態95に記載の方法。
98.前記膜貫通ドメインが、トロンボモジュリン、Ax12p、またはSwp1pに由来する、実施形態96に記載の方法。
99.前記膜貫通ドメインが、配列番号2、4もしくは6に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、実施形態96に記載の方法。
100.a)実施形態34〜45のいずれか1つに記載のライブラリーを含むキット。
101.さらに酵母細胞を含む、実施形態100に記載のキット。
102.前記酵母細胞が、サッカロミセス(Saccharomyces)属、ピキア(Pichia)属、ハンセヌラ(Hansenula)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属、ヤロウィア(Yarrowia)属、デバリオミセス(Debaryomyces)属、およびカンジダ(Candida)属からなる群より選択される属のものである、実施形態101に記載のキット。
103.前記酵母細胞が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)からなる群より選択される、実施形態102に記載のキット。
104.前記酵母細胞が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である、実施形態103に記載のキット。
105.前記酵母細胞が、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)である、実施形態103に記載のキット。
6.実施例
以下の実施例を参照しながら、本発明を説明する。これらの実施例は説明のみを目的として提供されるものであり、本発明がこれらの実施例に制限されると解釈すべきではなく、むしろ、本明細書に提供する教示により明らかになるあらゆる変形を全て包含すると解釈すべきである。
以下の実施例を参照しながら、本発明を説明する。これらの実施例は説明のみを目的として提供されるものであり、本発明がこれらの実施例に制限されると解釈すべきではなく、むしろ、本明細書に提供する教示により明らかになるあらゆる変形を全て包含すると解釈すべきである。
6.1 実施例1.酵母原形質膜での抗体提示
以下のセクションに、酵母原形質膜の細胞外表面に効率的に提示される抗体融合ポリペプチドの作製および特性決定を記載する。
以下のセクションに、酵母原形質膜の細胞外表面に効率的に提示される抗体融合ポリペプチドの作製および特性決定を記載する。
6.1.1 軽鎖提示ベクターの構築
GuickChangeキット(Stratagene)と、YD1(配列番号26)およびYD2(配列番号27)プライマーとを用いて、新規のNheI制限部位をpYD1(Invitrogen)に、Aga2シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列の3’末端で導入した。YD3(配列番号28)およびYD4(配列番号29)プライマーを用いて、12G3H11抗EphA2抗体(配列番号60)の全長軽鎖をコードするポリヌクレオチドをPCR増幅し、NheI制限エンドヌクレアーゼで消化し、NheI PmeIで消化した前記の改変pYD1ベクターにライゲーションした。得られた軽鎖提示ベクターをpYD-LCと指定し、pYD-LCの概略図を図2Bに示す。ここで用いたプライマーは、Aga2シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドと軽鎖とが、軽鎖提示ベクター内で機能的に連結されていることを確実にするように設計したものである。クローニングの手順は標準的プロトコルに従い実施した。制限消化およびジデオキシヌクレオチド配列決定を用いて、pYD-LCの同一性を確認した。
GuickChangeキット(Stratagene)と、YD1(配列番号26)およびYD2(配列番号27)プライマーとを用いて、新規のNheI制限部位をpYD1(Invitrogen)に、Aga2シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列の3’末端で導入した。YD3(配列番号28)およびYD4(配列番号29)プライマーを用いて、12G3H11抗EphA2抗体(配列番号60)の全長軽鎖をコードするポリヌクレオチドをPCR増幅し、NheI制限エンドヌクレアーゼで消化し、NheI PmeIで消化した前記の改変pYD1ベクターにライゲーションした。得られた軽鎖提示ベクターをpYD-LCと指定し、pYD-LCの概略図を図2Bに示す。ここで用いたプライマーは、Aga2シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドと軽鎖とが、軽鎖提示ベクター内で機能的に連結されていることを確実にするように設計したものである。クローニングの手順は標準的プロトコルに従い実施した。制限消化およびジデオキシヌクレオチド配列決定を用いて、pYD-LCの同一性を確認した。
6.1.2 重鎖提示ベクターの構築
pYC2a-HC重鎖提示ベクターの概略図を図2Aに示す。pYC2a-HCは、足場(scaffold)としてpYC2-Eベクター(Invitrogen)を用いて、構築した。最初に、標準的RT-PCRプロトコルに従い、プライマーYD5(配列番号30)およびYD6(配列番号31)を用いて、BJ5457(ATCC)酵母菌株から単離した全RNAから、α因子シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号24)を増幅した。増幅したポリヌクレオチドをHindIII制限エンドヌクレアーゼで消化し、PvuII HindIII切断pYC2-Eベクターにライゲーションすることにより、pYCa-Eを作製した。二番目に、12G3H11抗EphA2抗体の全長重鎖(配列番号59)と、ヒトトロンボモジュリンの膜貫通ドメイン(配列番号1)とからなる融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをオーバーラップPCRにより作製した。反応の鋳型は、3'末端に操作したAfl II制限部位を有する12G3H11抗EphA2抗体の重鎖遺伝子を含む発現構築物である。反応混合物は、単一のフォワードプライマー、YD(配列番号32)、および2つのリバースプライマーのセット、YD8(配列番号33)およびYD9(配列番号34)を含んでいた。標準的プロトコルに従い、オーバーラップPCR反応を実施した。増幅したポリヌクレオチドをXhoI制限エンドヌクレアーゼで消化し、XhoI PmeI切断pYCa-Eベクターにライゲーションすることにより、pYCa-HC-ThrmTMを作製した。pYCa-HC-ThrmTMベクターを用いて、重鎖を原形質膜の表面での提示についてターゲッティングすることができる。三番目に、標準的RT-PCRプロトコルに従い、プライマーYD10(配列番号35)およびYD11(配列番号36)を用いて、BJ5457酵母菌株から単離した全RNAから、Aga1遺伝子GPIアンカードメインをコードするポリヌクレオチドを増幅した。PCR産物をAflIIおよびHindIII制限エンドヌクレアーゼで消化し、同様に消化したpYCa-HC-ThrmTMベクターにクローニングすることにより、pYCa-HC-AgaGPIを作製した。pYC2a-HC-AgaGPIベクターを用いて、重鎖を細胞壁での提示についてターゲッティングすることができる。四番目に、標準的RT-PCRプロトコルに従い、プライマーYD14(配列番号39)およびYD15(配列番号40)を用いて、BJ5457酵母菌株から単離した全RNAから、Ax12p膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドを増幅した。PCR産物をAflIIおよびHindIII制限エンドヌクレアーゼで消化し、同様に消化したpYCa-HC-ThrmTMベクターにクローニングすることにより、pYC2a-HC-Ax12TMを作製した。pYC2a-HC-Ax12TMベクターを用いて、重鎖を原形質膜の表面での提示についてターゲッティングすることができる。五番目に、標準的RT-PCRプロトコルに従い、プライマーYD12(配列番号37)およびYD13(配列番号38)を用いて、BJ5457酵母菌株から単離した全RNAから、Swp1p膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドを増幅した。PCR産物をAflIIおよびHindIII制限エンドヌクレアーゼで消化し、同様に消化したpYCa-HC-ThrmTMベクターにクローニングすることにより、pYC2a-HC-Swp1pTMを作製した。pYC2a-HC-Swp1pTMベクターを用いて、重鎖を原形質膜の表面での提示についてターゲッティングすることができる。クローニングの手順は標準的プロトコルに従い実施した。制限消化およびジデオキシヌクレオチド配列決定を用いて、各種ベクターの同一性を確認した。
pYC2a-HC重鎖提示ベクターの概略図を図2Aに示す。pYC2a-HCは、足場(scaffold)としてpYC2-Eベクター(Invitrogen)を用いて、構築した。最初に、標準的RT-PCRプロトコルに従い、プライマーYD5(配列番号30)およびYD6(配列番号31)を用いて、BJ5457(ATCC)酵母菌株から単離した全RNAから、α因子シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号24)を増幅した。増幅したポリヌクレオチドをHindIII制限エンドヌクレアーゼで消化し、PvuII HindIII切断pYC2-Eベクターにライゲーションすることにより、pYCa-Eを作製した。二番目に、12G3H11抗EphA2抗体の全長重鎖(配列番号59)と、ヒトトロンボモジュリンの膜貫通ドメイン(配列番号1)とからなる融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをオーバーラップPCRにより作製した。反応の鋳型は、3'末端に操作したAfl II制限部位を有する12G3H11抗EphA2抗体の重鎖遺伝子を含む発現構築物である。反応混合物は、単一のフォワードプライマー、YD(配列番号32)、および2つのリバースプライマーのセット、YD8(配列番号33)およびYD9(配列番号34)を含んでいた。標準的プロトコルに従い、オーバーラップPCR反応を実施した。増幅したポリヌクレオチドをXhoI制限エンドヌクレアーゼで消化し、XhoI PmeI切断pYCa-Eベクターにライゲーションすることにより、pYCa-HC-ThrmTMを作製した。pYCa-HC-ThrmTMベクターを用いて、重鎖を原形質膜の表面での提示についてターゲッティングすることができる。三番目に、標準的RT-PCRプロトコルに従い、プライマーYD10(配列番号35)およびYD11(配列番号36)を用いて、BJ5457酵母菌株から単離した全RNAから、Aga1遺伝子GPIアンカードメインをコードするポリヌクレオチドを増幅した。PCR産物をAflIIおよびHindIII制限エンドヌクレアーゼで消化し、同様に消化したpYCa-HC-ThrmTMベクターにクローニングすることにより、pYCa-HC-AgaGPIを作製した。pYC2a-HC-AgaGPIベクターを用いて、重鎖を細胞壁での提示についてターゲッティングすることができる。四番目に、標準的RT-PCRプロトコルに従い、プライマーYD14(配列番号39)およびYD15(配列番号40)を用いて、BJ5457酵母菌株から単離した全RNAから、Ax12p膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドを増幅した。PCR産物をAflIIおよびHindIII制限エンドヌクレアーゼで消化し、同様に消化したpYCa-HC-ThrmTMベクターにクローニングすることにより、pYC2a-HC-Ax12TMを作製した。pYC2a-HC-Ax12TMベクターを用いて、重鎖を原形質膜の表面での提示についてターゲッティングすることができる。五番目に、標準的RT-PCRプロトコルに従い、プライマーYD12(配列番号37)およびYD13(配列番号38)を用いて、BJ5457酵母菌株から単離した全RNAから、Swp1p膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドを増幅した。PCR産物をAflIIおよびHindIII制限エンドヌクレアーゼで消化し、同様に消化したpYCa-HC-ThrmTMベクターにクローニングすることにより、pYC2a-HC-Swp1pTMを作製した。pYC2a-HC-Swp1pTMベクターを用いて、重鎖を原形質膜の表面での提示についてターゲッティングすることができる。クローニングの手順は標準的プロトコルに従い実施した。制限消化およびジデオキシヌクレオチド配列決定を用いて、各種ベクターの同一性を確認した。
6.1.3 酵母原形質膜での抗体提示
本明細書に記載する実験に用いるビール酵母(S.cerevisiae)細胞の株は、別途記載のない限り、MATα ura3-52 trp1 lys2-801 leu2-Δ1 his3-Δ200 pep4::HIS3 prb1-Δ1.6R can1 GALの遺伝子型を有するBJ5457(ATCC)である。
本明細書に記載する実験に用いるビール酵母(S.cerevisiae)細胞の株は、別途記載のない限り、MATα ura3-52 trp1 lys2-801 leu2-Δ1 his3-Δ200 pep4::HIS3 prb1-Δ1.6R can1 GALの遺伝子型を有するBJ5457(ATCC)である。
1)10C12の軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドをPCR増幅し;2)NheI/ BsiWIで消化した単離PCR断片を、同様に切断したpYD-LCベクターにクローニングすることにより、10C12抗EphA4抗体の軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含むpYD-LC-10C12ベクターを作製した。1)10C12の重鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドをPCR増幅し;2)XhoI/ SalIで消化した単離PCR断片を、同様に切断したpYCa-HC-AgaGPI、pYCa-HC-ThrmTM、pYCa-HC-Axl2TM、およびpYCa-HC-Swp1TMベクターにそれぞれクローニングすることにより、pYCa-HC-AgaGPI-10C12、pYCa-HC-ThrmTM-10C12、pYCa-HC-Axl2TM-10C12、およびpYCa-HC-Swp1TM-10C12ベクター(各々、10C12抗EphA4抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む)を作製した。
S.c. EasyComp(商標)Transformation Kit (Invitrogen)を用いて、10C12抗EphA4抗体を含む軽鎖および重鎖発現ベクターでビール酵母(S. cerevisiae)細胞を共形質転換する。以下のベクター対を試験する: pYD-LC-10C12とpYCa-HC-AgaGPI-10C12、pYD-LC-10C12とpYCa-HC-ThrmTM-10C12、pYD-LC-10C12とpYCa-HC-Axl2TM-10C12、およびpYD-LC-10C12とpYCa-HC-Swp1TM-10C12。Trp-Ura-SDCAAプレートに形質転換細胞をプレーティングし、30℃で36時間インキュベートした。4mlのSD-CAA 2%デキストロース含有酵母最少増殖培地に単一コロニーを接種し、オービタルシェーカー(30℃、300rpm)上で一晩増殖させる。遠心分離により細胞を回収し、20mlのSG-CAAガラクトース含有酵母最少誘導培地に再懸濁させ、オービタルシェーカー(300 rpm)で、20℃で一晩インキュベートすることにより、抗体を発現させる。誘導細胞を回収し、1Mソルビトール、0.1%βメルカプトエタノール、および0.1 mM EDTAの存在下、30℃で30分、リチカーゼ(Sigma、100U/mlストック、最終濃度は1U/ 106細胞)で消化することにより、スフェロプラストを調製する。続いて、スフェロプラストを1 Mソルビトールの存在下で、FITCコンジュゲート型抗ヒトIgG(H+L)抗体(PIERCE)と一緒に30分インキュベートした後、フローサイトメーターによる分析に付す。未誘導の対照酵母細胞から調製したスフェロプラストをネガティブコントロールとして用いる。
pYCa-HC-ThrmTM-10C12、pYCa-HC-Axl2TM-10C12、またはpYCa-HC-Swp1TM-10C12重鎖提示ベクターを含むガラクトース誘導酵母細胞から調製したスフェロプラストは、ネガティブコントロールサンプルと比較して顕著なポジティブ染色を示す。pYCa-HC-AgaGPI-10C12重鎖提示ベクターを含むガラクトース誘導酵母細胞から調製したスフェロプラストは、ネガティブコントロールサンプルのものと同等のレベルで染色されるが、これは、リチカーゼ消化により、細胞壁そのものと一緒に細胞壁提示抗体も除去されたためと推定される。観察された結果は、酵母スフェロプラスト原形質膜提示抗体が、高分子量試薬に接触可能であることを示す。フローサイトメトリー結果の代表例を図3に示す。
6.1.4 スフェロプラスト形成の最適化
6.1.3に記載のように、pYD-LC-10C12/pYCa-HC-AgaGPI-10C12、またはpYD-LC-10C12/pYCa-HC-ThrmTM-10C12抗体提示ベクター対のいずれかを含むビール酵母(S.cerevisiae)細胞をガラクトース誘導に付す。細胞を回収し、0.5 Mソルビトールの存在または非存在下で、100U/ mlのリチカーゼを用いて、リチカーゼ処理に付す。リチカーゼ消化を30℃で30分実施する。様々なpHレベル(例えば、pH 7.4、pH 7.6、pH 7.9、pH 9.0、pH9.7)を有するバッファー中でリチカーゼ処理を実施することにより、スフェロプラスト調製に対するpH変化の影響をアッセイする。0.5%BSAおよび1mM EDTAを含むPBSバッファー(pH 7.2)中で、FITCコンジュゲート型抗ヒトIgG(H+L)抗体と一緒にスフェロプラストを室温で30分インキュベートする。染色サンプルをフローサイトメーターで分析する。リチカーゼ酵素を含まない0.5 Mソルビトール含有のリチカーゼ処理バッファー(pH9.6)中で、ガラクトース誘導酵母細胞を30℃で30分インキュベートすることにより、「リチカーゼなし」対照サンプルを調製する。実験サンプルに用いたのと同じ条件を用いて、対照サンプルの染色および分析を実施する。
6.1.3に記載のように、pYD-LC-10C12/pYCa-HC-AgaGPI-10C12、またはpYD-LC-10C12/pYCa-HC-ThrmTM-10C12抗体提示ベクター対のいずれかを含むビール酵母(S.cerevisiae)細胞をガラクトース誘導に付す。細胞を回収し、0.5 Mソルビトールの存在または非存在下で、100U/ mlのリチカーゼを用いて、リチカーゼ処理に付す。リチカーゼ消化を30℃で30分実施する。様々なpHレベル(例えば、pH 7.4、pH 7.6、pH 7.9、pH 9.0、pH9.7)を有するバッファー中でリチカーゼ処理を実施することにより、スフェロプラスト調製に対するpH変化の影響をアッセイする。0.5%BSAおよび1mM EDTAを含むPBSバッファー(pH 7.2)中で、FITCコンジュゲート型抗ヒトIgG(H+L)抗体と一緒にスフェロプラストを室温で30分インキュベートする。染色サンプルをフローサイトメーターで分析する。リチカーゼ酵素を含まない0.5 Mソルビトール含有のリチカーゼ処理バッファー(pH9.6)中で、ガラクトース誘導酵母細胞を30℃で30分インキュベートすることにより、「リチカーゼなし」対照サンプルを調製する。実験サンプルに用いたのと同じ条件を用いて、対照サンプルの染色および分析を実施する。
予想通り、pYD-LC-10C12/pYCa-HC-ThrmTM-10C12抗体提示ベクター対を含むスフェロプラストの染色強度は、同じベクター対を含むインタクトな細胞のものより高く、これは、酵素による細胞壁の除去によって、原形質表面提示抗体が、FITC標識された結合試薬に接触可能になることを示している。対照的に、pYD-LC-10C12/pYCa-HC-AgaGPI-10C12抗体提示ベクター対を含むスフェロプラストは、同じベクター対を含むインタクトな細胞のものより顕著に低い染色強度を呈示し、これは、酵素による細胞壁の除去によって、細胞壁提示抗体も除去されることを示している。pYD-LC-10C12/pYCa-HC-ThrmTM-10C12抗体提示ベクター対を含むスフェロプラストの染色強度は、リチカーゼ処理バッファーのpHに応じて変動する。最高染色強度は、pHが7.9以上のバッファー中で消化したサンプルに認められる。リチカーゼ消化バッファー中の0.5 Mソルビトールの存在または非存在は、使用した条件下ではスフェロプラストの最終染色強度に顕著に影響していないようである。代表実験の結果を要約するチャートを図4に示す。
6.2 実施例2.酵母原形質膜提示抗体の抗原結合特性
以下のセクションに、酵母原形質膜の細胞外表面に提示された抗体が、その標的抗原に効率的に結合できることを示す実験を記載する。
以下のセクションに、酵母原形質膜の細胞外表面に提示された抗体が、その標的抗原に効率的に結合できることを示す実験を記載する。
6.2.1 酵母原形質膜提示10C12抗体は、その標的抗原に効率的に結合する
5.1.3に記載のように、pYD-LC-10C12/pYCa-HC-ThrmTM-10C12抗体提示ベクター対を含むビール酵母(S.cerevisiae)細胞をガラクトース誘導に付す。誘導後、細胞を回収し、0.5 Mソルビトール含有バッファー(pH9.6)において100U/ mlのリチカーゼで30℃にて30分処理する。FACSバッファー(PBS(pH7.2)、0.5%BSA、1mM EDTA)中で、ビオチン化EphA4-Fc融合タンパク質(50μg/ml)と一緒に、スフェロプラストを室温で30分インキュベートする。次に、スフェロプラストをFACSバッファーで洗浄した後、1:200倍希釈のPEコンジュゲート型ストレプトアビジン(Pierce)と一緒に氷上で30分インキュベートする。染色したスフェロプラストをフローサイトメーターを用いて分析する。実験サンプルと並行して、2つの対照サンプルを調製し、分析する。第1対照サンプルは、pYD-LC-10C12/pYCa-HC-ThrmTM-10C12抗体提示ベクター対を含む未誘導酵母細胞から調製したスフェロプラストであり、スフェロプラストの調製および染色は、実験サンプルと同じである。第2対照サンプルは、pYD-LC-10C12/pYCa-HC-AgaGPI-10C12抗体提示ベクター対を含むガラクトース誘導酵母細胞から調製したものであり、この第2対照サンプルは、実験サンプルに用いたのと同じプロトコルに従い免疫染色したインタクトな酵母細胞を含む。
5.1.3に記載のように、pYD-LC-10C12/pYCa-HC-ThrmTM-10C12抗体提示ベクター対を含むビール酵母(S.cerevisiae)細胞をガラクトース誘導に付す。誘導後、細胞を回収し、0.5 Mソルビトール含有バッファー(pH9.6)において100U/ mlのリチカーゼで30℃にて30分処理する。FACSバッファー(PBS(pH7.2)、0.5%BSA、1mM EDTA)中で、ビオチン化EphA4-Fc融合タンパク質(50μg/ml)と一緒に、スフェロプラストを室温で30分インキュベートする。次に、スフェロプラストをFACSバッファーで洗浄した後、1:200倍希釈のPEコンジュゲート型ストレプトアビジン(Pierce)と一緒に氷上で30分インキュベートする。染色したスフェロプラストをフローサイトメーターを用いて分析する。実験サンプルと並行して、2つの対照サンプルを調製し、分析する。第1対照サンプルは、pYD-LC-10C12/pYCa-HC-ThrmTM-10C12抗体提示ベクター対を含む未誘導酵母細胞から調製したスフェロプラストであり、スフェロプラストの調製および染色は、実験サンプルと同じである。第2対照サンプルは、pYD-LC-10C12/pYCa-HC-AgaGPI-10C12抗体提示ベクター対を含むガラクトース誘導酵母細胞から調製したものであり、この第2対照サンプルは、実験サンプルに用いたのと同じプロトコルに従い免疫染色したインタクトな酵母細胞を含む。
pYD-LC-10C12/pYCa-HC-ThrmTM-10C12抗体提示ベクター対を含むガラクトース誘導酵母細胞から調製したスフェロプラストは、未誘導酵母細胞から調製したスフェロプラストのものと比較して、顕著に高い染色強度を呈示し、これは、酵素による細胞壁の除去によって、原形質表面提示抗体が、ビオチン化抗原およびPEコンジュゲート型ストレプトアビジンに接触可能になることを示している。予想通り、pYD-LC-10C12/pYCa-HC-AgaGPI-10C12抗体提示ベクター対を含むインタクトなガラクトース誘導酵母細胞も、高い染色強度を呈示し、これは、細胞壁提示10C12抗体が、抗原と結合できることを示している。pYD-LC-10C12/pYCa-HC-ThrmTM-10C12抗体提示ベクター対を含むガラクトース誘導スフェロプラストに観察された高い染色強度は、酵母原形質膜提示10C12抗EphA4抗体が、抗原と結合できることを示している。フローサイトメトリー結果の代表例を図5に示す。
6.2.2 酵母原形質膜提示3F2 Fabは、その標的抗原に効率的に結合する
(i)3F2抗EphA2抗体のFd重鎖断片と、(ii)ヒトトロンボモジュリンの膜貫通ドメインを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有するp3F2Fd-ThrmTM抗体提示ベクターを以下のように構築する。プライマーYD16およびYD17を用いて、ヒト化抗EphA2抗体である3F2のFd領域をPCR増幅し、Xho IおよびAfl II制限エンドヌクレアーゼで消化し、同様に消化したpYCa-HC-ThrmTMベクターにライゲーションすることにより、p3F2Fd-ThrmTMを作製する。
(i)3F2抗EphA2抗体のFd重鎖断片と、(ii)ヒトトロンボモジュリンの膜貫通ドメインを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有するp3F2Fd-ThrmTM抗体提示ベクターを以下のように構築する。プライマーYD16およびYD17を用いて、ヒト化抗EphA2抗体である3F2のFd領域をPCR増幅し、Xho IおよびAfl II制限エンドヌクレアーゼで消化し、同様に消化したpYCa-HC-ThrmTMベクターにライゲーションすることにより、p3F2Fd-ThrmTMを作製する。
3F2抗EphA2抗体の軽鎖と、ヒトトロンボモジュリンの膜貫通ドメインとを含む融合ポリペプチド(3F2LC-ThrmTM)をコードするポリヌクレオチドを有するp3F2LC-ThrmTM抗体提示ベクターを以下のように構築する。プライマーYD18およびYD19を用いたPCR増幅により、3F2軽鎖ポリペプチドをコードする第1ポリヌクレオチドを作製する。プライマーYD20および21を用いて、pYCa-HC-ThrmTM鋳型からのPCR増幅により、ヒトトロンボモジュリンの膜貫通ドメインをコードする第2ポリペプチドを作製する。YD18およびYD21プライマーを用いたオーバーラップPCRにより、第1および第2ポリヌクレオチドを融合することによって、3F2LC-ThrmTM融合ポリペプチドをコードする第3ポリヌクレオチドを作製する。第3ポリヌクレオチドをNheIおよびNotIで消化し、同様に消化したpYD-LCベクターにライゲーションすることにより、p3F2LC-ThrmTMを作製する。
3F2抗EphA2抗体のFd重鎖断片をコードするポリヌクレオチドを有するp3F2Fd抗体提示ベクターを以下のように構築する。プライマーYD16およびYD22を用いて、3F2重鎖のFd領域をPCR増幅し、Xho IおよびNot Iで消化し、同様に消化したpYCa-HC-ThrmTMベクターにクローニングすることにより、ベクターp3F2Fdを作製する。
1)3F2の軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドをPCR増幅し;2)NheI/BsiWI消化した単離PCR断片を、同様に切断したpYD-LCベクターにクローニングすることにより、3F2抗EphA2抗体の軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含むpYD-LC-3F2ベクターを作製した。
5.1.3に記載のように、pYD-LC-3F2/p3F2Fd-ThrmTMまたはp3F2LC-ThrmTM/p3F2Fd抗体提示ベクター対を含むビール酵母(S.cerevisiae)細胞をガラクトース誘導に付す。誘導後、細胞を回収し、0.5 Mソルビトール含有バッファー(pH9.4)において100 U/mlのリチカーゼで30℃にて30分処理する。スフェロプラストを2つのバッチに分ける。第1バッチは、FACSバッファー(PBS(pH7.2)、0.5%BSA、1mM EDTA)中で、18μg/mlのビオチン化EphA2-Fc融合タンパク質(R&D Systems)と一緒に室温で30分インキュベートした後、FACSバッファーで洗浄してから、1:2000倍希釈のPEコンジュゲート型ストレプトアビジン(Pierce)で、30分氷上で染色する。第2バッチのスフェロプラストは、0.5%BSAおよび1mM EDTAを含むPBSバッファー(pH7.2)中で、FITCコンジュゲート型抗ヒトIgG(H+L)抗体(PIERCE)で、室温にて30分染色する。染色したスフェロプラストをフローサイトメーターを用いて分析する。本実験には、pYD-LC-3F2/p3F2Fd-ThrmTM抗体提示ベクター対を含む未誘導酵母細胞から調製したスフェロプラストの対照サンプルも含まれる。
pYD-LC-3F2/p3F2Fd-ThrmTMまたはp3F2LC-ThrmTM/p3F2Fd抗体提示ベクター対を含むガラクトース誘導酵母細胞から調製したスフェロプラストは、FITCコンジュゲート型抗ヒトIgG(H+L)抗体(PIERCE)による同等の高い染色強度を呈示し、これは、重鎖断片または軽鎖断片のいずれかが膜貫通ドメインを含むとき、抗体断片が原形質膜の表面に効率的に提示されることを示している。ガラクトース誘導スフェロプラストの染色強度は、対照未誘導スフェロプラストのものより顕著に高いが、これは、原形質膜提示抗体断片のガラクトース誘導発現が、ポジティブ染色シグナルを獲得するために必要な条件であることを示している。pYD-LC-3F2/p3F2Fd-ThrmTMまたはp3F2LC-ThrmTM/p3F2Fd抗体提示ベクター対を含むガラクトース誘導酵母細胞から調製したスフェロプラストは、ビオチン化EphA2-Fc/PEコンジュゲート型ストレプトアビジンによる同等の高い染色強度を呈示するが、これは、重鎖断片または軽鎖断片が膜貫通ドメインを含むかにかかわらず、原形質膜提示抗体断片がそのコグネイト抗原に効率的に結合することを示している。ガラクトース誘導スフェロプラストの染色強度は、対照未誘導スフェロプラストのものより顕著に高いが、これは、酵素による細胞壁の除去によって、原形質表面提示抗体断片が、FITC標識した結合試薬に接触可能になることを示している。観察された結果は、重鎖Fd断片または軽鎖のいずれかにより固定化された酵母原形質膜提示Fabフラグメントがその標的抗原に効率的に結合できることを示す。フローサイトメトリー結果の代表例を図6に示す。
6.2.3 酵母原形質膜提示3F2 scFvは、その標的抗原に効率的に結合する
(i)FLAGタグ、(ii)3F2抗EphA2 scFv、および(iii)ヒトトロンボモジュリンの膜貫通ドメインを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有するpFLAG3F2scFv-ThrmTM抗体提示ベクターを以下のように構築する。プライマー対:YD23/YD24およびYD25/YD26をそれぞれ用いて、3F2抗EphA2抗体のFLAGタグ付きVHおよびタグなしVL領域をコードするポリヌクレオチドをPCR増幅する。これら2つのポリヌクレオチドを、プライマーYD23およびYD26を用いたオーバーラップPCRにより、FLAGタグ付き3F2 scFvをコードする単一ポリヌクレオチドに融合する。アセンブルしたPCR産物をXho I/Afl IIで消化し、同様に消化したpYCa-HC-ThrmTMベクターにクローニングすることにより、pFLAG3F2scFv-ThrmTMを作製する。
(i)FLAGタグ、(ii)3F2抗EphA2 scFv、および(iii)ヒトトロンボモジュリンの膜貫通ドメインを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有するpFLAG3F2scFv-ThrmTM抗体提示ベクターを以下のように構築する。プライマー対:YD23/YD24およびYD25/YD26をそれぞれ用いて、3F2抗EphA2抗体のFLAGタグ付きVHおよびタグなしVL領域をコードするポリヌクレオチドをPCR増幅する。これら2つのポリヌクレオチドを、プライマーYD23およびYD26を用いたオーバーラップPCRにより、FLAGタグ付き3F2 scFvをコードする単一ポリヌクレオチドに融合する。アセンブルしたPCR産物をXho I/Afl IIで消化し、同様に消化したpYCa-HC-ThrmTMベクターにクローニングすることにより、pFLAG3F2scFv-ThrmTMを作製する。
(i)FLAGタグ、(ii)10C12抗EphA4 scFv、および(iii)ヒトトロンボモジュリンの膜貫通ドメインを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有するpFLAG10C12scFv-ThrmTM抗体提示ベクターを以下のように構築する。プライマー対:YD27/YD28およびYD29/YD30をそれぞれ用いて、12C12抗EphA4抗体のFLAGタグ付きVHおよびタグなしVL領域をコードするポリヌクレオチドをPCR増幅する。これら2つのポリヌクレオチドを、プライマーYD27およびYD30を用いたオーバーラップPCRにより、FLAGタグ付き10C12 scFvをコードする単一ポリヌクレオチドに融合する。アセンブルしたPCR産物をXho I/Afl IIで消化し、同様に消化したpYCa-HC-ThrmTMベクターにクローニングすることにより、pFLAG10C12scFv-ThrmTMを作製する。
5.1.3に記載のように、pFLAG3F2scFv-ThrmTM抗体提示ベクターを含むビール酵母(S.cerevisiae)細胞をガラクトース誘導に付す。誘導後、細胞を回収し、0.5 Mソルビトール含有バッファー(pH9.4)において100 U/mlのリチカーゼで30℃にて30分処理する。スフェロプラストを、0.5%BSAおよび1mM EDTAを含むPBSバッファー(pH7.2)において、10μg/mlのFITCコンジュゲート型抗FLAG抗体で、室温にて30分染色する。染色したスフェロプラストをフローサイトメーターを用いて分析する。また、未誘導酵母細胞から調製したスフェロプラストのネガティブコントロールサンプルも分析する。
pFLAG3F2scFv-ThrmTM抗体提示ベクターを含むガラクトース誘導酵母細胞から調製したスフェロプラストは、未誘導酵母細胞から調製したスフェロプラストのものより顕著に高い染色を示す。観察された結果は、酵母スフェロプラスト原形質膜提示scFvが、高分子量試薬(例えば、抗体)と相互作用するために接触可能であることを示す。フローサイトメトリー結果の代表例を図7に示す。
6.2.4 酵母原形質膜提示3F2 scFv-Fc抗体は、その抗原に効率的に結合する
(i)3F2抗EphA2 scFv、(ii)重鎖Fc領域、および(iii)ヒトトロンボモジュリンの膜貫通ドメインを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有するp3F2 scFv-Fc-ThrmTM抗体提示ベクターを以下のように構築する。YD16およびYD31プライマーを用いて、pFLAG3F2scFv-ThrmTM鋳型から、3F2 scFvフラグメントをコードするポリヌクレオチドをPCR増幅する。ヒトトロンボモジュリンの膜貫通ドメインに融合した、IgG1 Fc領域をコードするポリヌクレオチドを、YD32およびYD21プライマーを用いて、pYCa-HC-ThrmTM鋳型から、PCR増幅する。プライマー対:YD16/YD21を用いたオーバーラップPCRにより、3F2 scFv-Fc-TM融合ポリペプチドをコードする単一ポリヌクレオチドに上記2つのPCR産物をアセンブルする。最終PCR産物をXho I/Not Iで消化し、同様に消化したpYCa-HC-ThrmTMベクターにライゲーションすることにより、p3F2 scFv-Fc-ThrmTMを作製する。
(i)3F2抗EphA2 scFv、(ii)重鎖Fc領域、および(iii)ヒトトロンボモジュリンの膜貫通ドメインを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有するp3F2 scFv-Fc-ThrmTM抗体提示ベクターを以下のように構築する。YD16およびYD31プライマーを用いて、pFLAG3F2scFv-ThrmTM鋳型から、3F2 scFvフラグメントをコードするポリヌクレオチドをPCR増幅する。ヒトトロンボモジュリンの膜貫通ドメインに融合した、IgG1 Fc領域をコードするポリヌクレオチドを、YD32およびYD21プライマーを用いて、pYCa-HC-ThrmTM鋳型から、PCR増幅する。プライマー対:YD16/YD21を用いたオーバーラップPCRにより、3F2 scFv-Fc-TM融合ポリペプチドをコードする単一ポリヌクレオチドに上記2つのPCR産物をアセンブルする。最終PCR産物をXho I/Not Iで消化し、同様に消化したpYCa-HC-ThrmTMベクターにライゲーションすることにより、p3F2 scFv-Fc-ThrmTMを作製する。
(i)3F2抗EphA2抗体の重鎖、および(ii)ヒトトロンボモジュリンの膜貫通ドメインを含む融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有するpYCa-HC-ThrmTM-3F2抗体提示ベクターを以下のように構築する。プライマーYD16およびYD33を用いて、3F2のVHドメインをコードするポリヌクレオチドをPCR増幅し、Xho I/Sal Iで消化し、同様に消化したpYCa-HC-ThrmTMベクターにクローニングすることにより、pYCa-HC-ThrmTM-3F2を作製する。
p3F2scFv-Fc-TMまたはpYCa-HC-ThrmTM-3F2 抗体提示ベクターのいずれかを含むビール酵母(S.cerevisiae)菌株LB 3003-4B(MATα mnn9 ur3 leu2 his4)の細胞(ATCC)(以後、mnn9細胞と称する)を3mlのSD-CAA(-Ura、-Trp、-Ade)培地において、オービタルシェーカー(300rpm)で、30℃で一晩増殖させる。30mlのガラクトース含有SG-CAA(-Ura, -Trp, -Ade)培地に細胞を移し、オービタルシェーカー(300rpm)で、20℃で20時間インキュベートすることにより、原形質膜提示3F2scFv-Fc-TM抗体の発現を誘導する。誘導後、波長600 nmでの培養物の吸光度を測定することにより、細胞密度を決定する。培養物の約1x106個の細胞に対応する0.1吸光単位を14,000rpmで2分の遠心分離により回収し、PBS/1%BSAバッファーで洗浄する。抗体提示ベクターを含まないmnn9細胞の対照サンプルも前述したガラクトース誘導に付す。以下のように、FITCコンジュゲート型抗ヒトFc抗体またはビオチン化EphA2/PEコンジュゲート型ストレプトアビジンのいずれかで、誘導細胞を染色する。
FITCコンジュゲート型抗ヒトFc抗体染色:PBS/1%BSA中の1:150倍希釈FITCコンジュゲート型抗ヒトFc抗体(PIERCE)50μlに細胞を再懸濁させ、氷上で30〜60分インキュベートする。細胞をPBS/1%BSAで洗浄し、350μlのPBS/1%BSAに再懸濁させ、フローサイトメーターで分析する。ポジティブ染色シグナルは、scFv-Fc抗体が原形質膜の表面に提示されており、染色しやすくなっていることを示す。
ビオチン化EphA2/PEコンジュゲート型ストレプトアビジン染色:18 mg/mlのビオチン化EphA2(R&D Systems)/PBS/1%BSA 50μlに細胞を再懸濁させ、氷上で60分インキュベートする。細胞をPBS/1%BSAで洗浄し、50μlの1:200倍希釈PEコンジュゲート型ストレプトアビジン(PIERCE)/PBS/1%BSAに再懸濁させ、30分氷上でインキュベートする。細胞をPBS/1%BSAで洗浄し、350μlのPBS/1%BSAに再懸濁させ、フローサイトメーターで分析する。ポジティブ染色シグナルは、原形質膜提示scFv-Fc抗体が、抗原に接触可能であり、抗原結合が可能であることを示す。
FITCコンジュゲート型抗ヒトFc抗体およびビオチン化EphA2/PEコンジュゲート型ストレプトアビジンで観察した染色強度パターンは同じである。いずれの場合にも、p3F2scFv-Fc-ThrmTM抗体提示ベクターを含むガラクトース誘導mnn9細胞の染色強度は、抗体提示ベクターを含まない対照mnn9細胞のものより顕著に高い。pYCa-HC-ThrmTM-3F2 抗体提示ベクターを含むmnn9細胞の染色強度は、抗体提示ベクターを含まない対照mnn9細胞のものと同じであるが、これは、膜貫通ドメインを含む3F2重鎖融合ポリペプチドが、3F2軽鎖の非存在下では原形質膜の表面に効率的に提示されないことを示している。観察されたデータは、a)p3F2scFv-Fc-ThrmTM抗体は、酵母原形質膜に効率的に提示され、b)mnn9細胞では、原形質膜提示抗体は、高分子量試薬(例えば、抗ヒトFc抗体、ビオチン化EphA2タンパク質)と相互作用のために接触可能であり、c)酵母原形質膜提示3F2scFv-Fc-ThrmTM抗体は、そのコグネイト抗原に効率的に結合できること、を示している。フローサイトメトリー結果の代表例を図8および9に示す。
6.3 実施例3.人工酵母原形質膜提示全長抗体ライブラリーのスクリーニング方法
以下のセクションに、人工ライブラリーを含む酵母細胞の集団から、全長抗体をその原形質膜に提示する細胞をスクリーニングおよび単離する方法の非制限的例を記載する。人工ライブラリーを含む酵母細胞の集団は、pYD-LC-10C12/pYCa-HC-ThrmTM-10C12(全長抗体)またはpYD-LC-3F2/p3F2Fd-ThrmTM(抗体断片)抗体提示ベクター対のいずれかを含む酵母細胞を1:104比で混合することにより作製する。
以下のセクションに、人工ライブラリーを含む酵母細胞の集団から、全長抗体をその原形質膜に提示する細胞をスクリーニングおよび単離する方法の非制限的例を記載する。人工ライブラリーを含む酵母細胞の集団は、pYD-LC-10C12/pYCa-HC-ThrmTM-10C12(全長抗体)またはpYD-LC-3F2/p3F2Fd-ThrmTM(抗体断片)抗体提示ベクター対のいずれかを含む酵母細胞を1:104比で混合することにより作製する。
第1ラウンド選択:pYD-LC-10C12/pYCa-HC-ThrmTM-10C12またはpYD-LC-3F2/p3F2Fd-ThrmTM抗体提示ベクター対を含む酵母細胞をCAA/2%グルコース培地において、オービタルシェーカー(約300 rpm)で、約30℃で一晩増殖させる。細胞を回収し、CAA-RGD(2%ラフィノーズ、2%ガラクトース、0.1%グルコース)培地に再懸濁させ、オービタルシェーカー(約300 rpm)で、約20℃で一晩インキュベートする。波長600 nmで培養物の吸光度を測定することにより、細胞密度を決定する。OD1は、おおよそ1x107細胞/mlの細胞密度に相当する。pYD-LC-10C12/pYCa-HC-ThrmTM-10C12抗体提示ベクター対を含む104個の細胞と、pYD-LC-3F2/p3F2Fd-TM抗体提示ベクター対を含む108個の細胞を混合して、人工ライブラリーを作製する。約14,000 rpmで約2分の遠心分離により、細胞を回収し、炭酸ナトリウムバッファー(pH9.6)に再懸濁させ、100 U/mlのリチカーゼで30℃で30分消化した後、PBS(pH9.6)で2回洗浄する。PBS(pH7.4)/1%BSA中、1:150倍希釈immunoPURE FITCコンジュゲート型ウサギ抗ヒトIgG(Fc)抗体(例えば、PIERCE)において室温で約30分スフェロプラストをインキュベートする。染色したスフェロプラストをPBS/1%BSAで2回洗浄し、FACS機でソーティングする。ポジティブ染色細胞を、カルベニシリン(50μg/ml)/テトラサイクリン(5μg/ml)(例えば、Sigma)と一緒にCAA/2%グルコース培地において30℃で2日増殖させる。少量(約1μl)の液体培養物を100 mm CAA-グルコースプレートにプレーティングし、30℃で3日インキュベートする。残りの液体培養物は第2ラウンド選択に付す。
第2ラウンド選択:第1ラウンド選択から増殖させた細胞を回収し、CAA-RGD(2%ラフィノーズ、2%ガラクトース、0.1%グルコース)培地に再懸濁させ、オービタルシェーカー(約300 rpm)で、約20℃で一晩インキュベートする。波長600 nmで培養物の吸光度を測定することにより、細胞密度を決定する。OD1は、おおよそ1x107細胞/mlの細胞密度に相当する。14,000 rpmで2分の遠心分離により、5x107個の細胞を回収し、炭酸ナトリウムバッファー(pH9.6)に再懸濁させ、30℃にて100 U/mlのリチカーゼで30分消化した後、PBS(pH9.6)で2回洗浄する。PBS(pH7.4)/1%BSA中、1:150倍希釈immunoPURE FITCコンジュゲート型ウサギ抗ヒトIgG(Fc)抗体(例えば、PIERCE)において室温で30分スフェロプラストをインキュベートする。染色したスフェロプラストをPBS/1%BSAで2回洗浄し、FACS機でソーティングする。ポジティブ染色細胞を、カルベニシリン(50μg/ml)/テトラサイクリン(5μg/ml)(例えば、Sigma)と一緒にCAA/2%グルコース培地において37℃で2日増殖させる。少量(約1μl)の液体培養物を100 mm CAA-グルコースプレートにプレーティングし、37℃で3日インキュベートする。
第1および第2ラウンド選択から回収したポジティブ細胞を含むプレートから、十分に単離したクローンを選択する。個々のCAA-RGD培養物にコロニーを接種し、30℃で一晩増殖させる。一晩培養物からの酵母細胞をペレット化し、Fc領域特異的PCR反応(プライマーYD21およびYD32)に鋳型として用いる。
第1ラウンド選択から回収したポジティブクローンにより、Fc領域の存在についての陽性のPCRシグナルが得られる。スクリーニングから得られるあらゆるPCRポジティブクローンの有効性について、FITCコンジュゲート型抗ヒトIg(Fc)抗体によるスフェロプラストの免疫染色によりさらに確認してもよい。
また、抗原(例えば、タンパク質抗原)に結合できる抗体を提示する細胞を単離する目的で、本発明の宿主細胞ライブラリーをスクリーニングするために、前述のスクリーニング方法に若干の改変を加えて用いることもできる。手短には、宿主細胞ライブラリーを前述のようにインキュベートして、抗体またはその断片の細胞表面提示を達成する。インキュベーション後、宿主細胞を処理することにより、スフェロプラストを調製する。目的とする抗原の標識形態(例えば、ビオチン化抗原、FLAFタグ付き抗原)と一緒にスフェロプラストをインキュベートすることにより、抗原と、スフェロプラストの原形質膜に提示された抗体またはその断片との特異的結合を達成する。続いて、上記抗原に特異的に結合できる蛍光標識二次試薬(例えば、ビオチン化抗原についてはPE-ストレプトアビジン、FLAGタグ付き抗原についてはFITCコンジュゲート型抗FLAG抗体)と一緒に、抗原結合スフェロプラストをインキュベートする。表面結合抗原/二次試薬複合体を有するスフェロプラストを検出し、蛍光活性化セルソーティングにより単離する。単離した細胞からベクターDNAを回収する。第2ラウンド選択は、前述のように実施してよい。所望の抗原結合特性を備えた抗体を提示する単離細胞を前述のように処理する。
6.4 実施例4.酵母原形質提示ナイーブヒト抗体ライブラリー
以下のセクションに、酵母原形質膜提示ナイーブヒト抗体ライブラリーの作製に用いることができるプロトコルの非制限的例を記載する。
以下のセクションに、酵母原形質膜提示ナイーブヒト抗体ライブラリーの作製に用いることができるプロトコルの非制限的例を記載する。
6.4.1 cDNAライブラリーの合成
最初に、例えばQIAgen Rneasyキットを用いることにより、数種の健康なドナーの末梢血単核細胞(PBMC)から全RNAを単離する。さらに、複数の供給源(例えば、Bioscience、カタログ番号636170、BD Bioscience カタログ番号6594-1、Origene technologies and Biochain Institute, Inc. カタログ番号M1234246)から得た材料を組み合わせることにより、mRNAのプールを取得する。Superscript III RTキット(例えば、Invitrogen)を製造者の指示に従って用いることにより、ヒトcDNAライブラリーを合成する。
最初に、例えばQIAgen Rneasyキットを用いることにより、数種の健康なドナーの末梢血単核細胞(PBMC)から全RNAを単離する。さらに、複数の供給源(例えば、Bioscience、カタログ番号636170、BD Bioscience カタログ番号6594-1、Origene technologies and Biochain Institute, Inc. カタログ番号M1234246)から得た材料を組み合わせることにより、mRNAのプールを取得する。Superscript III RTキット(例えば、Invitrogen)を製造者の指示に従って用いることにより、ヒトcDNAライブラリーを合成する。
6.4.2 pYC2a重鎖ライブラリーの構築
再配列したVHセグメントをヒトcDNAライブラリーからPCR増幅する(5.4.1参照)。用いることのできるプライマーを表3に記載する。以下のように、Taq DNAポリメラーゼ(Invitrogen, カタログ番号18038-018)、50pmolのyMedieu-VH1-15および50pmolのプールしたリバース-Medieu-JH1、JH2およびJH3プライマーを用いて、重鎖可変領域をcDNAライブラリーから増幅することができる。5分の変性後、95℃で30秒、52℃で60秒、および72℃で60秒の8サイクルで鋳型を増幅し、次いで、95℃で30秒、62℃で30秒、および72℃で60秒の32サイクルで鋳型をさらに増幅し、72℃で7分保持する。増幅VH断片をアガロースゲルで精製し、20μlのTEバッファー(pH8.0)に再懸濁してから、各断片の濃度を決定する。等量の各VH断片を含む混合物をXho IおよびSal I制限エンドヌクレアーゼ(New England Biolabs)で消化し、同様に消化したpYCa-HCベクターにクローニングすることにより、VHライブラリーを作製する。連結産物をフェノール−クロロホルム抽出し、沈殿させ、DH10Bエレクトロコンピテントセルに形質転換する。100 mg/mlアンピリシンと一緒に、形質転換細胞をLBプレートにプレーティングし、37℃で一晩増殖させる。96ウェルの単離クローンを配列決定することにより、ライブラリーの多様性の程度を決定する。プレートに液体培地を注いで、細胞を収集することにより、ライブラリーレパートリーを回収する。ライブラリーを15%グリセロール中の小アリコート中で凍結する。100μg/mlアンピリシンを含む100 ml液体培養培地に凍結ライブラリーの小アリコートを接種し、37℃で一晩インキュベートする。市販のDNA精製キット(例えば、Qiagen DNA精製キット)を用いて、ナイーブヒト重鎖レパートリーを含むpYD-LCプラスミドDNAを細胞から回収する。
再配列したVHセグメントをヒトcDNAライブラリーからPCR増幅する(5.4.1参照)。用いることのできるプライマーを表3に記載する。以下のように、Taq DNAポリメラーゼ(Invitrogen, カタログ番号18038-018)、50pmolのyMedieu-VH1-15および50pmolのプールしたリバース-Medieu-JH1、JH2およびJH3プライマーを用いて、重鎖可変領域をcDNAライブラリーから増幅することができる。5分の変性後、95℃で30秒、52℃で60秒、および72℃で60秒の8サイクルで鋳型を増幅し、次いで、95℃で30秒、62℃で30秒、および72℃で60秒の32サイクルで鋳型をさらに増幅し、72℃で7分保持する。増幅VH断片をアガロースゲルで精製し、20μlのTEバッファー(pH8.0)に再懸濁してから、各断片の濃度を決定する。等量の各VH断片を含む混合物をXho IおよびSal I制限エンドヌクレアーゼ(New England Biolabs)で消化し、同様に消化したpYCa-HCベクターにクローニングすることにより、VHライブラリーを作製する。連結産物をフェノール−クロロホルム抽出し、沈殿させ、DH10Bエレクトロコンピテントセルに形質転換する。100 mg/mlアンピリシンと一緒に、形質転換細胞をLBプレートにプレーティングし、37℃で一晩増殖させる。96ウェルの単離クローンを配列決定することにより、ライブラリーの多様性の程度を決定する。プレートに液体培地を注いで、細胞を収集することにより、ライブラリーレパートリーを回収する。ライブラリーを15%グリセロール中の小アリコート中で凍結する。100μg/mlアンピリシンを含む100 ml液体培養培地に凍結ライブラリーの小アリコートを接種し、37℃で一晩インキュベートする。市販のDNA精製キット(例えば、Qiagen DNA精製キット)を用いて、ナイーブヒト重鎖レパートリーを含むpYD-LCプラスミドDNAを細胞から回収する。
6.4.3 pYC-LCライブラリーの構築
再配列したVLセグメントをヒトcDNAライブラリーからPCR増幅する(5.4.1参照)。用いることのできるプライマーを表3に記載する。12種のyMedieu-Vλフォワードプライマーを2種のλリバースプライマーと組合せることにより、抗体λ軽鎖可変領域および定常領域を増幅する。同様に、11種のyMedieu-yVκフォワードプライマーをκリバースプライマーと組合せることにより、抗体κ軽鎖可変領域および定常領域を増幅する。Pfu Ultra(Stratagene)を使用し、以下のように、10 pmolの各プライマーを用いて各反応を個別に行なう:最初3分の変性後、95℃で30秒、52℃で30秒、および68℃で90秒の30サイクルでPCR反応物を増幅した後、68℃で10分保持する。等量のPCR産物をプールし、アガロースゲルで精製した後、NheIおよびClaI制限エンドヌクレアーゼで消化する。同様に消化したpYD-LCベクターを用いて、産物をT4 DNAにライゲーションし、フェノール−クロロホルムで抽出し、沈殿させ、DH10Bエレクトロコンピテントセルに形質転換する。100μg/mlアンピリシンと一緒に、形質転換細胞をLBプレートにプレーティングし、37℃で一晩増殖させる。96ウェルの単離クローンを配列決定することにより、ライブラリーの多様性の程度を決定する。プレートに液体培地を注いで、細胞を収集することにより、ライブラリーレパートリーを回収する。ライブラリーを15%グリセロール中の小アリコート中で凍結する。凍結ライブラリーの小アリコートを用いて100 μg/mlアンピリシンを含む100 mlの液体培地に接種し、37℃で一晩インキュベートする。市販のDNA精製キット(例えば、Qiagen DNA精製キット)を用いて、ナイーブヒト軽鎖レパートリーを含むpYD-LCプラスミドDNAを細胞から回収する。
再配列したVLセグメントをヒトcDNAライブラリーからPCR増幅する(5.4.1参照)。用いることのできるプライマーを表3に記載する。12種のyMedieu-Vλフォワードプライマーを2種のλリバースプライマーと組合せることにより、抗体λ軽鎖可変領域および定常領域を増幅する。同様に、11種のyMedieu-yVκフォワードプライマーをκリバースプライマーと組合せることにより、抗体κ軽鎖可変領域および定常領域を増幅する。Pfu Ultra(Stratagene)を使用し、以下のように、10 pmolの各プライマーを用いて各反応を個別に行なう:最初3分の変性後、95℃で30秒、52℃で30秒、および68℃で90秒の30サイクルでPCR反応物を増幅した後、68℃で10分保持する。等量のPCR産物をプールし、アガロースゲルで精製した後、NheIおよびClaI制限エンドヌクレアーゼで消化する。同様に消化したpYD-LCベクターを用いて、産物をT4 DNAにライゲーションし、フェノール−クロロホルムで抽出し、沈殿させ、DH10Bエレクトロコンピテントセルに形質転換する。100μg/mlアンピリシンと一緒に、形質転換細胞をLBプレートにプレーティングし、37℃で一晩増殖させる。96ウェルの単離クローンを配列決定することにより、ライブラリーの多様性の程度を決定する。プレートに液体培地を注いで、細胞を収集することにより、ライブラリーレパートリーを回収する。ライブラリーを15%グリセロール中の小アリコート中で凍結する。凍結ライブラリーの小アリコートを用いて100 μg/mlアンピリシンを含む100 mlの液体培地に接種し、37℃で一晩インキュベートする。市販のDNA精製キット(例えば、Qiagen DNA精製キット)を用いて、ナイーブヒト軽鎖レパートリーを含むpYD-LCプラスミドDNAを細胞から回収する。
6.4.4 原形質膜提示ナイーブヒト抗体ライブラリーを含む酵母細胞集団の作製
原形質膜提示ナイーブヒト抗体のライブラリーを含む酵母細胞集団は、好適な宿主細胞(例えば、LB 3003-4B(MATα mnn9 ur3 leu2 his4)細胞(ATCC))をナイーブヒト軽鎖および重鎖の両方で形質転換することにより、作製することができる。ライブラリースケール形質転換のために開発されたプロトコル(例えば、Dualsystems Biotech製のDSYキット)を用いて、形質転換を実施することができる。次に、原形質膜提示ナイーブヒト抗体のライブラリーを含む酵母細胞集団を、本明細書に記載のスクリーニング方法と組合せて用いてもよい。
原形質膜提示ナイーブヒト抗体のライブラリーを含む酵母細胞集団は、好適な宿主細胞(例えば、LB 3003-4B(MATα mnn9 ur3 leu2 his4)細胞(ATCC))をナイーブヒト軽鎖および重鎖の両方で形質転換することにより、作製することができる。ライブラリースケール形質転換のために開発されたプロトコル(例えば、Dualsystems Biotech製のDSYキット)を用いて、形質転換を実施することができる。次に、原形質膜提示ナイーブヒト抗体のライブラリーを含む酵母細胞集団を、本明細書に記載のスクリーニング方法と組合せて用いてもよい。
あるいは、原形質膜提示ナイーブヒト重鎖および軽鎖のライブラリーを含む酵母細胞集団は、Huftonによる米国特許公開番号2003/0186374に記載の方法を用いて、作製することもできる。この方法によれば、抗体重鎖の発現ライブラリーを含む半数体酵母細胞集団を、抗体軽鎖の発現ライブラリーを含む反対の接合型の半数体酵母集団と接合させることにより、全長抗体の発現ライブラリーを含む二倍体酵母細胞の集団を作製する。プロトコルの概略を以下に記載する。
ナイーブヒト重鎖レパートリーを含むpYD-HCプラスミドDNA調製物を用いて、半数体酵母菌株(例えば、Clontech製のEGY48(MATα、ura3、his3、trp1、LexAop(x6)-LEU2))を形質転換する。ライブラリースケール形質転換のために開発されたプロトコル(例えば、Dualsystems Biotech製のDSYキット)を用いて、形質転換を実施する。-Uraプレート上で形質転換細胞を選択する。ナイーブヒト軽鎖レパートリーを含むpYD-LCプラスミドDNA調製物を用いて、反対の接合型の半数体酵母菌株(例えば、Clontech製のYM4271(MATα、ura3、his3-200、lys2-801、ade2-101、ade5、trp1-901、leu2-3、112、tyr1-501、gal4Δ、gal80Δ、ade5::hisG)を形質転換する。ライブラリースケール形質転換のために開発されたプロトコル(例えば、Dualsystems Biotech製のDSYキット)を用いて、形質転換を実施する。-Trpプレート上で形質転換細胞を選択する。ライブラリースケール形質転換のために開発されたプロトコル(例えば、Dualsystems Biotech製のDSYキット)を用いて、形質転換を実施する。pYD-HCおよびpYD-LCを含む半数体細胞を混合し、-Trp、-Uraプレート上で平板培養することにより、重鎖および軽鎖提示ベクターの両方を含む二倍体細胞を選択する。原形質膜提示ナイーブヒト抗体のライブラリーを含む二倍体酵母細胞集団を本明細書に記載のスクリーニング方法(実施例1および2参照)と組合せて用いてもよい。
6.5 実施例5.2μ-scFv-TMプラスミドベースのビール酵母(S.cerevisiae)ライブラリーのスクリーニング方法
2μ-scFv-TMプラスミドの構築:HinAlphaF(配列番号112)およびCycR(配列番号113)プライマーを用いて、膜貫通アンカードメインに融合した抗体断片をコードするポリヌクレオチド断片をpYC-scFv-TMベクターからPCR増幅した。増幅したポリヌクレオチド断片をHindIIIおよびNotI制限エンドヌクレアーゼで消化し、HindIII/NotI消化pYes2 CT(Invitrogen)ベクターにライゲーションした。標準的な実験室技術を用いて、得られた2μ-scFv-TMベクター(図10)を回収した。
2μ-scFv-TMプラスミドの構築:HinAlphaF(配列番号112)およびCycR(配列番号113)プライマーを用いて、膜貫通アンカードメインに融合した抗体断片をコードするポリヌクレオチド断片をpYC-scFv-TMベクターからPCR増幅した。増幅したポリヌクレオチド断片をHindIIIおよびNotI制限エンドヌクレアーゼで消化し、HindIII/NotI消化pYes2 CT(Invitrogen)ベクターにライゲーションした。標準的な実験室技術を用いて、得られた2μ-scFv-TMベクター(図10)を回収した。
スフェロプラストの蛍光標識化:単一の酵母コロニーをSDCAA増殖培地に接種し、30℃で一晩増殖させることにより、OD600nm:1〜3に到達させた。酵母細胞をペレット化し、誘導培地SGCAAに再懸濁させ、20℃で一晩増殖させることにより、抗体発現を誘導した。1mLのSEバッファー(H2O中1Mソルビトール、100mM EDTA)で約108個の酵母細胞を2回洗浄してから、これらを100ユニット/mlのリチカーゼ(SigmaAldrich)を含む1 mLのリチカーゼ消化バッファーに再懸濁させ、再懸濁酵母細胞を30℃で30分インキュベートすることにより、スフェロプラストを作製する。500gで4分の遠心分離によりスフェロプラストを回収し、0.5 ml PBSA(PBS中1%BSA)で2回洗浄して、リチカーゼを全て除去した。フローサイトメトリーによる二重検出のために、10μg/ml抗FLAG M2抗体と25μg/mlビオチン化抗原(例えば、EphA4-Fc-ビオチンまたはEphA2-Fc-ビオチン)を含む0.5 ml PBSAにスフェロプラストを再懸濁させた。スフェロプラストを4℃で1時間染色し、0.5 mlのPBSAで2回洗浄した。ヤギ抗マウスIgG-FITCコンジュゲート(Molecular Probes)およびストレプトアビジン−アロフィコシアニン(Caltag)と一緒に、上記細胞を4℃で30分インキュベートすることにより、二次染色を実施した。スフェロプラストを0.5 ml PBSAで2回洗浄し、フローサイトメトリーのために0.5 mlのPBSAに再懸濁させた。抗FLAG/抗IgG-FITC抗体染色により、細胞表面提示FLAGタグ付き抗体の存在が視覚化される。他方で、ビオチン化抗原/ストレプトアビジン−アロフィコシアニンのポジティブ染色は、細胞表面提示抗体が、その標的抗原に特異的に結合できることを示す。
FACSソーティングおよび抗体遺伝子増幅:FACSに先立ち、細胞懸濁液に1滴のヨウ化プロピジウム(PI)溶液を添加した。PIネガティブスフェロプラストのみを分析するようにゲートを設定した。FITCおよびアロフィコシアニン二重ポジティブ細胞のみを含むように、ソーティングゲートを設定した。二重ポジティブは、PIネガティブスフェロプラストの約0.1%を占めた(例えば、図13参照)。100μl溶解/結合バッファーを含むChargeswitch EasyPlex(商標)gDNA PCRチューブ(Invitrogen)内に二重ポジティブ細胞を収集した。これらのチューブを室温で30分インキュベートした。反応チューブを120μlの洗浄バッファーで2回洗浄した。製造者のプロトコルに従い、DNAを回収した。αFC(配列番号114)/His6R(配列番号115)およびHis6F(配列番号116)/HcRev(配列番号117)プライマー対をそれぞれ用いて、抗体および膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド断片を増幅した。図12に示すデータは、用いたPCR反応の頑健性を証明している。2つの断片をゲル精製し、αFD(配列番号118)およびHTMRD(配列番号119)プライマーを用いた単一PCR反応においてアセンブルさせた。単一PCR産物を精製し、AflII/XhoI消化2μ-scFv-TMベクターと質量比10:1で合わせた。PCR断片/ベクターミックスをエタノールで沈殿させ、ギャップ修復/酵母形質転換のために10μlのH2Oに再懸濁させた。
ギャップ修復による酵母形質転換:Swers JSら、Biochem Biophys Res Commun. 350(3):508-13 (2006)に記載されているのとほぼ同様に、酵母形質転換/ギャップ修復を実施した。手短には、BJ5457酵母菌株の単一コロニーをYPD培地において30℃で一晩増殖させた。一晩細胞培養物を50 mlの新鮮なYPD中に希釈して最終OD600nm:0.1に到達させ、対数期(OD600nm=1.2〜1.5)まで約5時間増殖させた。遠心分離により細胞を回収し、YPD中の新たに調製した10 mM Tris(pH8.0)および25mMジチオトレイトール(DTT)50mlに再懸濁させ、30℃で20分振盪した。15 mlのバッファーE(10 mM Tris(pH 7.5)、270 mMスクロース、1 mM MgCl2)で細胞を1回洗浄し、エレクトロコンピテントセルの50μlアリコート当たり、2x108細胞の密度で約150μlのバッファーEに再懸濁させた。1μgのAflII/XhoI消化2μ-scFv-TMベクターと10μgのPCR産物とを含むギャップ修復DNAミックスのアリコートを50μlのエレクトロコンピテントセルに添加し、氷上で5分インキュベートした。0.54kV/25μFで0.2 cmキュベットを用いて酵母細胞をエレクトロポレートし、1mlのYPDに移した後、30℃で1時間インキュベートした。エレクトロポレートした細胞を遠心分離により回収し、SDCAAプレート(-URA、+TRP)にプレーティングし、30℃で一晩インキュベートした。
6.5.1 2μ-scFv-TMプラスミドベースの人工ビール酵母(S.cerevisiae)ライブラリーの原理証明スクリーニング
以下のセクションに、2μ-scFv-TMプラスミドベースの人工ビール酵母(S.cerevisiae)原形質膜提示抗体ライブラリーから所望の全長抗体をスクリーニングおよび単離する方法の非制限的例を記載する。このスクリーニングは、(1)所望の特性(例えば、特定の抗原との結合)を備えた抗体をその表面に提示するスフェロプラストを選択するステップ;(2)選択した細胞から、抗体コードポリヌクレオチドを増幅するステップ;(3)ステップ1で選択した抗体を発現する細胞の二次ライブラリーを作製するステップを含む、連続的ラウンドを用いる(図11参照)。
以下のセクションに、2μ-scFv-TMプラスミドベースの人工ビール酵母(S.cerevisiae)原形質膜提示抗体ライブラリーから所望の全長抗体をスクリーニングおよび単離する方法の非制限的例を記載する。このスクリーニングは、(1)所望の特性(例えば、特定の抗原との結合)を備えた抗体をその表面に提示するスフェロプラストを選択するステップ;(2)選択した細胞から、抗体コードポリヌクレオチドを増幅するステップ;(3)ステップ1で選択した抗体を発現する細胞の二次ライブラリーを作製するステップを含む、連続的ラウンドを用いる(図11参照)。
1:100、1:330、および1:1,000の比で、10C12抗EphA4および3F2抗EphA2 TM固定化抗体断片を発現する酵母細胞を混合することにより作製した数種の人工ライブラリーについて、スクリーニングを実施した。抗FLAG/抗IgG-FITC抗体およびビオチン化EphA2/ストレプトアビジン−アロフィコシアニンでスフェロプラストを染色した。第1ラウンドの選択における各種細胞集団の蛍光強度プロフィールを図13に示す。実験は、10C12および3F2抗体提示細胞の純粋な集団を含んだ。第1ラウンドにおいて二重ポジティブ細胞を選択し、これを用いて、前記の方法に従い二次ライブラリーを調製した。各種二次ライブラリーを呈示する細胞集団の蛍光強度プロフィールを図14に示す。二重ポジティブ細胞の頻度は、対応する一次ライブラリーで認められる頻度と比較して、二次ライブラリーの各々で顕著に増加している。
第1および第2ラウンド選択の二重ポジティブ細胞から増幅した抗体遺伝子を含む約50のランダムに選択したクローンを分析することにより、選択プロセスの効率を評価した。結果を図14に示す。第1および第2ラウンド選択において、それぞれ1:1,000ライブラリーから単離した二重ポジティブ細胞を呈示するランダムクローンの4/63(6%)および38/52(73%)が、10C12抗体遺伝子を含んでいた。これは、第1および第2ラウンド選択後、それぞれ60倍および730倍の総富化を表している。第1および第2ラウンド選択において、それぞれ、1:330ライブラリーから単離した二重ポジティブ細胞を呈示するランダムクローンの11/59(19%)および29/52(56%)が、10C12抗体遺伝子を含んでいた。これは、第1および第2ラウンド選択後、それぞれ63倍および185倍の総富化を表している。第1ラウンド選択において、1:100ライブラリーから単離した二重ポジティブ細胞を呈示するランダムクローンの20/44(45%)が、10C12抗体遺伝子を含んでいた。これは、45倍の総富化を表している。第1ラウンドで1:100ライブラリーから単離した二重ポジティブ細胞は、第2選択ラウンドでは処理しなかった。
6.6 ピキア・パストリス(Pichia pastoris)における抗体の細胞表面提示に関する方法
ベクターおよび菌株:ピキア・パストリス(Pichia pastoris)宿主株X-33およびプラスミドpPICZαをInvitrogenから取得した。本明細書に記載のビール酵母(S.cerevisiae)プラスミド構築物から、GPIシグナルおよび膜貫通ドメイン固定化scFvおよびscFv-Fc抗体断片を切除し、Xho I/Not I消化ベクターpPICαにクローニングした。クローニング手順は、標準的プロトコルに従って実施した。作製したベクターの代表例として、pPICZ+scFv-Fcベクターの概略図を図15に示す。
ベクターおよび菌株:ピキア・パストリス(Pichia pastoris)宿主株X-33およびプラスミドpPICZαをInvitrogenから取得した。本明細書に記載のビール酵母(S.cerevisiae)プラスミド構築物から、GPIシグナルおよび膜貫通ドメイン固定化scFvおよびscFv-Fc抗体断片を切除し、Xho I/Not I消化ベクターpPICαにクローニングした。クローニング手順は、標準的プロトコルに従って実施した。作製したベクターの代表例として、pPICZ+scFv-Fcベクターの概略図を図15に示す。
全長抗体(IgG)提示のために、抗体重鎖および軽鎖をコードするポリヌクレオチド断片をpPICZαベクターに個別にクローニングすることにより、それぞれ、pPICZα-HcおよびpPICZα-Lc構築物を作製した。QuickChangeキット(Stratagene)およびPmeIF(配列番号120)/PmeIR(配列番号121)プライマーを用いて、Pme I制限エンドヌクレアーゼの認識部位をpPICZα-HcプラスミドのAOX1プロモーター領域から除去した。pPICZα-Lcベクターの軽鎖発現カセットをBglII/BamHIフラグメントとして単離し、BglII切断pPICZα-Hcベクターにクローニングすることにより、10C12 P.パストリス全長抗体提示ベクターを作製した。
PICZa10C12ScFvFc-GPIおよびPICZa10C12ScFvHF-GPIベクターにPARS1自律複製配列を挿入することにより、エピソーム抗体発現ベクターを作製した。PARS1を含むポリヌクレオチド配列を、PARS1F1(配列番号122)、PARS1F2(配列番号123)、PARS1R1(配列番号124)、PARS1R2(配列番号125)プライマーを用いて、単一反応で増幅した。PciI制限エンドヌクレアーゼ消化PCR産物をPciI消化ベクターにクローニングした。標準的プロトコルに従い、酵母形質転換を実施した。
ピキア(Pichia)の形質転換:抗体提示ベクターをPme I消化により線状化し、X-33ピキア・パストリスエレクトロコンピテントセルにエレクトロポレートした。組み込まれた抗体遺伝子を含む形質転換ピキア・パストリス細胞を、100 ug/mlのゼオシン(Zeocin)を補充したYPD(1%酵母エキス、2%トリプトン、2%デキストロース)プレート上での増殖のために選択した。形質転換前に、エピソームベクターを線状化しない以外は同じプロトコルに従い、エピソームベクター形質転換を実施した。
抗体発現:形質転換X-33細胞の単一コロニーをゼオシン(100 ug/ml)の存在下で5 mlのBMGY(1%酵母エキス、2%ペプトン、100 mMリン酸カリウム、pH6.0、1.34%YNB、4x10-5%ビオチン、1%グリセロール)中、30℃で一晩増殖させた。細胞をペレット化し、メタノール含有BMYY(1%酵母エキス、2%ペプトン、100 mMリン酸カリウム、pH6.0、1.34%YNB、4x10-5%ビオチン、0.5%メタノール)培地にOD600:1.0で再懸濁させて、1日または2日にわたり抗体発現を誘導した。誘導は、製造者のプロトコル(Invitrogen)に従って実施した。
スフェロプラストの調製:誘導後、約108個の酵母細胞を滅菌水で2回、1 mlの新鮮なSED(1Mソルビトール中50mM DTT)で1回、さらに1Mソルビトールで1回洗浄した。2.5ユニットのザイモリエース(Zymolyase)を含む100μlのSECバッファー(1Mソルビトール、1mM EDTAおよび10mMクエン酸ナトリウムバッファー、pH5.8)に細胞を懸濁させ、室温で2分インキュベートすることにより、スフェロプラストを調製した。スフェロプラストを1Mソルビトールで1回、PBS中の1%BSAで1回洗浄した。
P.パストリス(P.pastoris)スフェロプラストのフローサイトメトリー:P.パストリスで発現した膜貫通ドメイン固定化10C12抗EphA4 His/FLAG-タグ付き-scFv(10C12ScFvHF-TM)またはscFv-Fc(10C12ScFvFc-TM)分子による抗原結合に対するザイモリエース消化延長の影響を調べた。標準的プロトコルに従い、様々な原形質膜提示抗体発現ベクターを含むP.パストリス細胞を誘導した。前述のようにスフェロプラストを調製した。ザイモリエース(Zymolase)消化を0分、2分、5分、10分、20分もしくは30分進行させた。EphA4-Fc-ビオチン/ストレプトアビジン-PEでスフェロプラストを染色し、フローサイトメーターで分析した。染色したスフェロプラストの蛍光強度プロフィールを図17に示す。同様に染色した親P.パストリススフェロプラストもネガティブコントロールとして含んだ。TM固定化scFvおよびscFv-Fc発現細胞の蛍光強度プロフィールは、試験したすべてのザイモリエース消化時点でほとんど同じである。抗体発現細胞および対照細胞の平均蛍光強度(MFI)の開きは、2分のザイモリエース消化後、最大2 logに達する。ザイモリエースと一緒にこれ以上インキュベートしても、スフェロプラストの染色強度は増加しないようである。
P.パストリス(P.pastoris)細胞のフローサイトメトリー:膜貫通ドメイン固定化10C12抗EphA4 scFvまたはscFv-Fcを発現する約500万個の細胞をバッファー(1%BSA/PBS)で2回洗浄し、100μlバッファーに再懸濁させた。EphA4-Fc-ビオチン(1μg/ml)/ストレプトアビジン-PE染色により細胞表面提示抗体の抗原結合を検出した。抗hIgGFc-FITCを用いて、細胞表面提示ヒトFcドメイン上のヒトFcを検出した。染色およびフローサイトメトリーを前記のように実施した。
インタクトな細胞における抗原に対するP.パストリス発現TM固定化10C12抗EphA4 scFvまたはscFv-Fc分子の接触性を評価した。以下の標準的プロトコルに従い、組込まれた原形質膜提示抗体発現ベクターを含むP.パストリス細胞を誘導した。約500万個の細胞をPBSまたは50mM DTT/1Mソルビトールのいずれかで洗浄した。洗浄後、細胞を10μg/ml、1μg/mlまたは0.1μg/mlのEphA4-Fc-ビオチンと一緒にインキュベートし、ストレプトアビジン-PEで染色し、フローサイトメーターで分析した。同様に染色した親P.パストリス細胞をネガティブコントロールとして含んだ。結果を図18に示す。PBS洗浄TM固定化scFvおよびscFv-Fc発現細胞の蛍光強度プロフィールは、試験したEphA4-Fc-ビオチンの各濃度で同じであり、抗体発現細胞および親細胞のMFIの開きは、試験した範囲では抗原濃度に依存的ではない。DTT/1Mソルビトール洗浄TM固定化scFv-Fc発現細胞の蛍光強度プロフィールは、試験したEphA4-Fc-ビオチンの全濃度でscFv発現細胞のものより高く、抗体発現細胞および親細胞のMFIの開きは、試験した範囲では抗原濃度に依存的ではない。
GPI固定化抗体を含むP.パストリス細胞のMFIを図16に示す。様々なGPI固定化原形質膜提示抗体発現ベクターを含むP.パストリス細胞を標準的プロトコルに従い誘導した。前述のように、誘導細胞をEphA4-Fc-ビオチン/ストレプトアビジン-PEで染色し、フローサイトメーターで分析した。
P.パストリス(P.pastoris)における細胞表面提示抗体のエピソーム発現:エピソーム表面提示抗体発現ベクターを含むP.パストリス細胞を標準的プロトコルに従い誘導した。約500万個の細胞をPBSまたは50mM DTT/1Mソルビトールで洗浄した。洗浄後、細胞を10μg/mlのEphA4-Fc-ビオチンと一緒にインキュベートし、ストレプトアビジン-PEで染色し、フローサイトメーターで分析した。同様に染色した親P.パストリス細胞をネガティブコントロールとして含んだ。結果を図19に示す。10C12ScFvFc-GPIおよび10C12ScFvHF-GPI発現細胞のMFIは親細胞のものより1.5〜2 log高かった。
本発明の具体的実施形態を説明の目的で記載してきたが、当業者には、添付の特許請求の範囲に記載する本発明を逸脱することなく、細部について多数の変更をなしうることは理解されよう。
本明細書で言及した刊行物、特許および特許出願は全て、あたかもそれぞれの刊行物、特許または特許出願が、具体的かつ個別に、参照により本明細書に組み込まれるものとして明示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込むものとする。さらに、2007年2月9日に出願された米国仮出願番号60/889,019は、あらゆる目的のためにその全文を参照により本明細書に組み込むものとする。
Claims (39)
- 酵母細胞の原形質膜の細胞外表面に提示されうる抗体の異種集団をコードするポリヌクレオチドを含む、ライブラリー。
- 前記抗体の異種集団が、IgA、IgE、IgM、IgD、IgYおよびIgGからなる群より選択される免疫グロブリンタイプのものである、請求項1に記載のライブラリー。
- 前記抗体の異種集団が、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、または合成抗体である、請求項1に記載のライブラリー。
- 前記抗体の異種集団が、ヒト抗体である、請求項1に記載のライブラリー。
- 前記抗体の異種集団が、抗原結合断片である、請求項1に記載のライブラリー。
- 前記抗原結合断片が、一本鎖Fv(scFv);Fabフラグメント;F(ab')フラグメント;およびFcフラグメントからなる群より選択される、請求項5に記載のライブラリー。
- 前記抗原結合断片が、Fc領域に融合している、請求項5または6に記載のライブラリー。
- 前記抗体の異種集団が、重鎖可変領域配列のライブラリーおよび/または軽鎖可変領域配列のライブラリーを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のライブラリー。
- 前記抗体が、細胞表面に該抗体をターゲッティングするアミノ酸配列を含み、このアミノ酸配列が、上記抗体の重鎖または軽鎖のC末端に融合している、請求項1〜8のいずれか一項に記載のライブラリー。
- 前記抗体が、細胞表面に該抗体をターゲッティングするアミノ酸配列を含み、このアミノ酸配列が、上記Fc領域のC末端に融合している、請求項7に記載のライブラリー。
- 前記アミノ酸配列が、膜貫通ドメインを含む、請求項9または10に記載のライブラリー。
- 前記アミノ酸配列が、GPIアンカードメインを含む、請求項9または10に記載のライブラリー。
- 前記膜貫通ドメインが、トロンボモジュリン、Ax12p、またはSwp1pに由来する、請求項11に記載のライブラリー。
- 前記膜貫通ドメインが、配列番号2、4、または6に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、請求項11に記載のライブラリー。
- 酵母細胞の原形質膜の細胞外表面に抗体の異種集団を提示する方法であって、
a)請求項1〜14のいずれか一項に記載のライブラリーで酵母細胞の集団を形質転換するステップ;および
b)上記酵母細胞の集団を、該酵母細胞集団の原形質膜の細胞外表面での抗体の提示を可能にする条件下で培養するステップ
を含む、上記方法。 - 前記酵母細胞の集団が、細胞壁がタンパク質抗原または抗体もしくはその断片に対して透過性となるように、該細胞壁を十分多孔性にする遺伝子突然変異を含む、請求項15に記載の方法。
- 前記酵母細胞の集団が、mnn9における遺伝子突然変異、またはmnn9のオーソログを含む、請求項16に記載の方法。
- 前記酵母細胞の集団が、サッカロミセス(Saccharomyces)属、ピキア(Pichia)属、ハンセヌラ(Hansenula)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属、ヤロウィア(Yarrowia)属、デバリオミセス(Debaryomyces)属、およびカンジダ(Candida)属からなる群より選択される属のものである、請求項15または16に記載の方法。
- 前記酵母細胞の集団が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、およびヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
- 前記酵母細胞の集団が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である、請求項19に記載の方法。
- 前記酵母細胞の集団が、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)である、請求項19に記載の方法。
- 所望の結合特性を有する抗体を単離する方法であって、
a)請求項1〜14のいずれか一項に記載のライブラリーを含む酵母細胞の集団を、該酵母細胞集団の原形質膜の細胞外表面での抗体の提示を可能にする条件下で培養するステップ;
b)上記酵母細胞を抗体リガンドと接触させるステップ;ならびに、
c)上記抗体リガンドの結合に基づき、上記酵母細胞をソーティング(sorting)し、これにより、所望の結合特性を有する抗体を発現する少なくとも1個の細胞を単離するステップ
を含む、上記方法。 - 所望の結合特性を有する抗体を単離する方法であって、
a)請求項1〜14のいずれか一項に記載のライブラリーを含む酵母細胞の集団を、該酵母細胞集団の原形質膜の細胞外表面での抗体の提示を可能にする条件下で培養するステップ;
b)上記酵母細胞を、細胞壁が抗体リガンドに対して透過性となるように、該細胞壁を十分多孔性にする酵素と接触させるステップ;
c)上記酵母細胞を抗体リガンドと接触させるステップ;ならびに、
d)上記抗体リガンドの結合に基づき、上記酵母細胞をソーティング(sorting)し、これにより、所望の結合特性を有する抗体を発現する少なくとも1個の細胞を単離するステップ
を含む、上記方法。 - 前記リガンドを、検出可能な物質で標識する、請求項22または23に記載の方法。
- 前記検出可能な物質が、蛍光マーカー、ビオチン、ストレプトアビジン、およびペプチドタグからなる群より選択される、請求項24に記載の方法。
- 単離した酵母細胞からポリヌクレオチドを単離するステップをさらに含み、その際、このポリヌクレオチドが、所望の結合特性を有する抗体またはその断片をコードする、請求項22〜25のいずれか一項に記載の方法。
- 前記所望の結合特性が、特定の抗原に対する結合である、請求項22〜25のいずれか一項に記載の方法。
- 前記所望の結合特性が、特定の抗原に対する結合増大である、請求項22〜25のいずれか一項に記載の方法。
- 前記所望の結合特性が、特定の抗原に対する結合低減である、請求項22〜25のいずれか一項に記載の方法。
- 前記所望の結合特性が、エフェクター分子に対する結合である、請求項22〜25のいずれか一項に記載の方法。
- 前記所望の結合特性が、エフェクター分子に対する結合増大である、請求項22〜25のいずれか一項に記載の方法。
- 前記所望の結合特性が、エフェクター分子に対する結合低減である、請求項22〜25のいずれか一項に記載の方法。
- 前記エフェクター分子が、Clq、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIAからなる群より選択される、請求項30〜32のいずれか一項に記載の方法。
- さらに以下:
i)ステップ(c)で単離した少なくとも1個の細胞由来の、所望の結合特性を有する抗体をコードするポリヌクレオチドを、真核細胞での発現のために適合させたベクターにクローニングするステップ;ならびに
ii)上記抗体を上記真核細胞において発現させ、その際、上記抗体の特性を決定することにより所望の結合特性を確認するステップ
を含む、請求項22に記載の方法。 - さらに以下:
i)ステップ(c)で単離した少なくとも1個の細胞由来の、所望の結合特性を有する抗体をコードするポリヌクレオチドを、原核生物での発現のために適合させたベクターにクローニングするステップ;ならびに
ii)上記抗体を上記原核生物において発現させ、その際、上記抗体の特性を決定することにより所望の結合特性を確認するステップ
を含む、請求項22に記載の方法。 - さらに以下:
i)ステップ(d)で単離した少なくとも1個の細胞由来の、所望の結合特性を有する抗体をコードするポリヌクレオチドを、真核細胞での発現のために適合させたベクターにクローニングするステップ;ならびに
ii)上記抗体を上記真核細胞において発現させ、その際、上記抗体の特性を決定することにより所望の結合特性を確認するステップ
を含む、請求項23に記載の方法。 - さらに以下:
i)ステップ(d)で単離した少なくとも1個の細胞由来の、所望の結合特性を有する抗体をコードするポリヌクレオチドを、原核生物での発現のために適合させたベクターにクローニングするステップ;ならびに
ii)上記抗体を上記原核生物において発現させ、その際、上記抗体の特性を決定することにより所望の結合特性を確認するステップ
を含む、請求項23に記載の方法。 - 前記真核細胞が、哺乳動物、昆虫および酵母細胞からなる群より選択される、請求項34または36に記載の方法。
- 前記酵母細胞の集団が、サッカロミセス(Saccharomyces)属、ピキア(Pichia)属からなる群より選択される属のものである、請求項22〜33のいずれか一項に記載の方法。
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