JP2010509596A - 妊娠中の雌における子宮内感染の検出または早産のリスクの決定のための子宮頸部液のプロテオーム解析 - Google Patents

妊娠中の雌における子宮内感染の検出または早産のリスクの決定のための子宮頸部液のプロテオーム解析 Download PDF

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Abstract

本発明は、生体液のプロテオームの同定、ならびに胎児の起源である母体の状態、染色体異数性ならびに胎児の成長および成熟に関連する胎児疾患をはじめとした母体/胎児の状態の状況を判定する際にそれらのプロテオームを使用することに関する。特に、本発明は、ヒトの羊水(AF)および子宮頸部膣液(CVF)の網羅的プロテオーム解析ならびに様々な母体/胎児の病的状態(例えば、羊水内感染、早期陣痛および/または染色体の欠陥)と正常なプロテオームとの特徴的な変化の相関に関する。本発明はさらに、様々な妊娠関連障害の非侵襲性診断のために使用することができる生物学的マーカーおよび生物学的マーカー群の同定ならびにそのような生物学的マーカーを使用する診断アッセイに関する。

Description

発明の分野
本発明は、生体液のプロテオームの同定、ならびに胎児の起源である母体の状態、染色体異数性ならびに胎児の成長および成熟に関連する胎児疾患をはじめとした母体/胎児の状態の状況を判定する際にそれらのプロテオームを使用することに関する。特に、本発明は、ヒトの羊水(AF)および子宮頸部膣液(cervical vaginal fluid)(CVF)の網羅的プロテオーム解析ならびに様々な母体/胎児の病的状態(例えば、羊水内感染、早期陣痛および/または染色体の欠陥)と正常なプロテオームとの特徴的な変化の相関に関する。本発明はさらに、様々な妊娠関連障害の非侵襲性診断のために使用することができる生物学的マーカーおよび生物学的マーカー群の同定ならびにそのような生物学的マーカーを使用する診断アッセイに関する。
従来技術の説明
プロテオミクス
現在のDNAクローニングおよび遺伝子プロファイリングアプローチを補う重要かつ必要な解析として、タンパク質発現パターンの大規模解析が新たに出現してきた(非特許文献1)。DNA配列情報は、ホモロジー法に基づいていくつかの構造的および潜在的なタンパク質修飾を推定する際に有益であるが、翻訳後修飾、タンパク質分解または区画化によるタンパク質機能の制御に関する情報を提供しない。
1次元および2次元ゲル電気泳動などの従来のゲルベースの方法は、小規模なタンパク質の検出(<1,000タンパク質)に有用であるが、これらには、大量のサンプルが必要である(非特許文献2)。この限界を克服するためのアプローチとしては、サンプル中のタンパク質の質量を示すプロファイルを正確に生成する、マトリックス支援または表面増強レーザー脱離/イオン化(MALDIまたはSELDI)飛行時間型質量分析計が挙げられる。これらのパターンまたはプロファイルを使用することにより、様々な疾患を同定し、モニターすることができる。第2レベルの同定は、ペプチドフラグメントからアミノ酸配列情報を生成するタンデム質量分析とペプチドマッピングを組み合わせることによってもたらされる。これは、例えば、四重極飛行時間型MS(Qq−TOF MS)とMALDI/SELDIまたはESIを組み合わせることによって達成され得る。四重極飛行時間型MSは、特定のペプチドの定量化にも使用することができる(ICAT技術)。
母体/胎児の病的状態の診断
妊娠中に発症し得るか、健康を損ない得るか、あるいは、いくつかの場合では母親および/または胎児もしくは新生児の生命を脅かし得る、数多くの母体および胎児の病的状態(例えば、羊水内感染(IAI)、子癇前症、早産および早期陣痛ならびに染色体異数性)が存在する。そのような状態の早期診断は、時宜を得た処置および介入を可能にするために非常に重要である。残念なことに、その臨床的な徴候および症状が遅れて顕れ、しばしば非特異的であり、一貫性がないので、これらの状態のほとんどに対する早期診断は困難である。例えば、IAIの臨床的な症状としては、代表的には、母体の発熱および白血球増加が挙げられるが、これらの症状は、しばしば遅れて顕れ、知覚しうるものでもなく、特異的でもない。例えば、非ヒト霊長類モデルを利用した非特許文献3では、B群連鎖球菌属による実験上の羊水内感染の後に、発熱および白血球増加が、実験上の感染の28〜40時間後に生じる、感染症に誘発される早期陣痛の発生時点において50%だけに現れることが証明された。ゆえに、診断の遅れを回避するために、疑いの高い指標および補助的な臨床検査を適切に使用することは当然のことである。IAIを診断するために通常使用される臨床基準としては、以下のもの:母体の白血球増加(≧15,000/mm)、母体もしくは胎児の頻拍、子宮圧痛または悪臭のある羊水、のうちの2つ以上に加えた、母体の発熱(≧37.8℃)が挙げられる。
臨床的特徴が一致しないので、IAIの診断を支援するために他の補助的な臨床検査が利用されている。これらとしては:母体のC反応性タンパク質の測定、白血球またはグラム染色に対する細菌についての羊水の直接的な検査、羊水培養、羊水中のグルコース濃度の測定、羊水中の白血球エステラーゼの検出、ガス液体クロマトグラフィによる細菌の有機酸の検出、様々な羊水または膣のサイトカイン(例えば、インターロイキン2、4、6、顆粒球コロニー刺激因子および腫瘍壊死因子−α)、マトリックスメタロプロテアーゼ−9、ラクトフェリンの測定、および超音波検査による胎児の活動(生物物理学的プロファイル)の評価が挙げられる。サイトカインまたは他の生化学的な因子の測定は、高価であり、一般に臨床的には利用できないものであり、主に研究ツールとして使用される。さらに、これらの検査の検査効率は、容易に利用可能な従来の検査(例えば、羊水のグラム染色および培養、羊水中のグルコース濃度ならびに羊水中の白血球エステラーゼの検出)よりも一貫して良くない。これらの検査の効率は、以前に広く概説されている(非特許文献4)。すべての検査が妥当な感度、特異性および予測値を有するにもかかわらず、そのどれもがIAIの診断において臨床的特徴と無関係に利用できるのに十分な感度または特異性を有しない。
PandeyおよびMann,Nature 405:837−46(2000) Lilley KS,Razzaq A,Dupree P:Two−dimensional gel electrophoresis:recent advances in sample preparation,detection and quantitation.Curr Opin Chem Biol.6(1):46−50,2002 Gravettら、Am.J.Obstet.Gynecol.171:1660−7(1994) Ohlsson,A.およびWang,E.:An analysis of antenatal tests to detect infection at preterm rupture of the membranes.American Journal of Obstetrics and Gynecology 162:809,1990
したがって、IAIおよび他の母体/胎児の病的状態、特に早期陣痛および早産を早期かつ正確に診断することができる新規アプローチが強く求められている。
染色体異数性の診断のために、新規の効率的な信頼性の高い非侵襲性の方法を開発することが特に望ましい。現在、母体の血清スクリーニングおよび超音波検査の後の染色体異数性の確定診断には、妊娠中期の遺伝学的な羊水穿刺検査が必要である。これは、0.5%という妊娠喪失のリスクを伴う侵襲性の手技である。さらに、羊水細胞の染色体解析は、大きな労働力を要し、最大2週間を必要とする時間のかかる手技である。ゆえに、母体血清または他の生体液からの染色体異数性の検出が改善され、母体スクリーニングの容認しがたい高偽陽性率が低下し、そして羊水穿刺後の羊水からの診断の速度および効率が高い、信頼性の高い検査が必要である。他の病的な異数性の状態(例えば、クラインフェルター症候群およびターナー症候群)は、超音波検査を用いたスクリーニングまたは従来の母体の血清スクリーニングによって完全に見落とされることがある。
発明の要旨
本発明は、生体液のプロテオーム解析による胎児/母体の病的状態の早期診断、予後診断およびモニタリングのための非侵襲性かつ感度の高い方法を提供する。
本発明は、様々な胎児/母体の病的状態(例えば、羊水内感染(IAI)、染色体異数性ならびに胎児の成長および成熟に関連する胎児疾患が挙げられるがこれらに限定されない)の診断、予後診断およびモニタリングを可能にする、羊水および母体血清などの生体液のプロテオミクスプロファイルをさらに提供する。特に、本発明は、IAIおよび染色体異数性に対する正常および病的なプロテオミクスプロファイルを提供する。正常なプロテオミクスプロファイルの測定は、非常に重要である。なぜなら、それが、対象となる胎児/母体の状態の排除(陰性診断)を可能にするからであり、それによって、その患者を不必要な処置または介入および潜在的に危険である処置または介入に供する必要がなくなる。
本発明はさらに、IAIおよび染色体異数性の存在および状態に対して特異的な生物学的マーカーを提供し、そのマーカーは、そのような病的状態が存在する場合に、羊水または母体血清などの生体液において異なって発現されるものである。
1つの局面において、本発明は、母体または胎児の状態の状況を判定するための方法に関し、この方法は、哺乳動物被験体から得られた生体液の試験サンプルのプロテオミクスプロファイルを、正常サンプルのプロテオミクスプロファイルまたはそのような状態に特徴的な少なくとも1つの特有の発現サイン(expression signature)を含んでいる参照プロテオミクスプロファイルと比較する工程を包含する。
この方法の実施形態において、哺乳動物被験体は、妊娠中の雌性の、好ましくは霊長類またはヒトである。
別の実施形態において、母体の状態は、子宮内感染、子癇前症および早期陣痛からなる群から選択される。
さらなる実施形態において、胎児の状態は、染色体異数性、先天性奇形、在胎期間および胎児の成熟からなる群から選択され、ここで、染色体の異数性は、例えば、ダウン症候群、13トリソミー、18トリソミー、ターナー症候群またはクラインフェルター症候群であり得る。
本発明の方法を実施する際、任意の生体液を使用することができ、その体液としては、羊水、血清、血漿、尿、脳脊髄液、母乳、粘液および唾液、好ましくは、羊水または母体血清が挙げられるがこれらに限定されない。
さらなる実施形態において、試験サンプルのプロテオミクスプロファイルは、少なくとも2個のタンパク質または少なくとも5個のタンパク質または少なくとも10個のタンパク質または少なくとも20個のタンパク質または少なくとも50個のタンパク質の情報を含む。
特定の実施形態において、プロテオミクスプロファイルは、質量スペクトルである。
別の実施形態において、質量スペクトルは、3〜5kDの範囲の質量スペクトルにおける少なくとも1つの特有の発現サインを含む。
さらに別の実施形態において、質量スペクトルは、10〜12kDの範囲の質量スペクトルにおける少なくとも1つの特有の発現サインを含む。
さらなる実施形態において、母体の状態は、羊水内感染であり、特有の発現サインは、試験サンプル中の10〜11kDaの分子量範囲における特別なピークであり、それが羊水内感染を示唆する。
異なる実施形態において、プロテオミクスプロファイルは、ウエスタンブロット解析によって生成される。
別の実施形態において、生体液は、ヒトの生体液であり、プロテオミクスプロファイルは:マクロファージキャッピングタンパク質、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン、ミエロペルオキシダーゼ;L−プラスチン;アズロシジン(azurocidin);抗菌性タンパク質FALL−39;Gp340バリアントタンパク質;エブナー唾液腺(Ebner salivary gland)タンパク質ホモログ(homologoue)(GenBankアクセッション番号355392);白血球エラスターゼインヒビター;カルグラニュリン(calgranulin)A;カルグラニュリンB;コフィリン;モエシン(moesin);プロフィリンI、クロニン(cronin)様タンパク質p57;アネキシンII、フィブロネクチン;グリア由来ネキシン;アンチトロンビン−III;扁平上皮癌抗原1、扁平上皮癌抗原2;セルピン12;シスタチンA;シスタチンB;シスタチンC;IGFBP−1;ビタミンD結合タンパク質;アポリポタンパク質A−I;14−3−3タンパク質シグマ;14−3−3タンパク質ゼータ/デルタ;ゲルゾリン;ラクトトランスフェリン;ホスホグリセリン酸キナーゼ1;ホスホグリセリン酸ムターゼ1;およびトランスケトラーゼ;またはそれらのフラグメント、前駆体もしくは天然に存在するバリアントからなる群から選択されるタンパク質のうちの1つ以上の発現の情報を含む。
さらなる実施形態において、プロテオミクスプロファイルは、マクロファージキャッピングタンパク質;好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン;ミエロペルオキシダーゼ;L−プラスチン;アズロシジン;抗菌性タンパク質FALL−39;白血球エラスターゼインヒビター;カルグラニュリンA;カルグラニュリンB;プロフィリンI、グリア由来ネキシン;セルピン12;シスタチンA;およびIGFBP−1;またはそれらのフラグメント、前駆体もしくは天然に存在するバリアントからなる群から選択されるタンパク質のうちの1つ以上の発現の情報を含む。
前述の方法は、様々な胎児および母体の状態の診断に適しており、その状態としては、羊水内感染、発生上の欠陥(器官系の欠陥を含む)、骨格筋奇形および染色体異数性が原因の状態(例えば、ダウン症候群、13トリソミー、18トリソミー、ターナー症候群またはクラインフェルター症候群)が挙げられるがこれらに限定されない。
試験サンプルのプロテオミクスプロファイルが、正常サンプルのプロテオミクスプロファイルと本質的に同じである場合、その被験体は、上記の母体または胎児の状態を有しないと判定される。
プロテオミクスプロファイルが、罹患サンプルと本質的に同じ特有の発現サインを含んでいる場合、その患者は、対応する母体(materal)または胎児の状態を有すると診断される。
別の局面において、本発明は、羊水内感染を診断するための方法に関し、この方法は、
(a)妊娠中の雌性哺乳動物から得られた生体液の試験サンプルのプロテオミクスプロファイルを正常サンプルのプロテオミクスプロファイルまたは参照プロテオミクスプロファイルと比較する工程(ここで、そのプロテオミクスプロファイルは、サンプル中に存在するタンパク質またはそのタンパク分解性フラグメントの質量の情報を提供する);および
(b)試験サンプルのプロテオミクスプロファイルが、3〜5および/または10〜12KDaの分子量範囲において特有の発現サインを示す場合に、その哺乳動物を、羊水内感染を有すると診断する工程
を包含する。
さらなる局面において、本発明は、羊水内感染を診断するための方法に関し、その方法は:
(a)妊娠中の雌性哺乳動物から得られた生体液の試験サンプルのプロテオミクスプロファイルを正常サンプルのプロテオミクスプロファイルと比較する工程;および
(b)IGFB−1、プロフィリン、セルロプラスミン、L−プラスチンおよびカルグラニュリン(calgraulin)またはそれらのフラグメント、前駆体もしくは天然に存在するバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質が、正常サンプルと比べて、試験サンプルにおいて異なって発現している場合に、その哺乳動物を、羊水内感染を有すると診断する工程
を包含する。
特定の実施形態において、IGFBP−1、プロフィリン、セルロプラスミンおよびカルグラニュリンまたはそれらのフラグメント、前駆体もしくは天然に存在するバリアントのうちの少なくとも1つが、正常サンプルと比べて、試験サンプルにおいて過剰発現している。
別の実施形態において、L−プラスチンが、正常サンプルと比べて、試験サンプルにおいて過小発現している。
さらに別の実施形態において、IGFBP−1の存在は、図12に示されるタンパク分解性フラグメントまたはそのフラグメントを同定することによって検出される。
別の局面において、本発明は、染色体の異数性を診断するための方法に関し、この方法は:
(a)妊娠中の雌性哺乳動物から得られた生体液の試験サンプルのプロテオミクスプロファイルを正常サンプルのプロテオミクスプロファイルまたは参照プロテオミクスプロファイルと比較する工程(ここで、そのプロテオミクスプロファイルは、サンプル中に存在するタンパク質またはそのタンパク分解性フラグメントの質量の情報を提供する);および
(b)試験サンプルのプロテオミクスプロファイルが、4〜15KDaの分子量範囲において特有の発現サインを示す場合に、その哺乳動物を、染色体の異数性を有すると診断する工程を包含する。
異なる局面において、本発明は、胎児の発生上の欠陥を診断するための方法に関し、この方法は:
(a)妊娠中の雌性哺乳動物から得られた生体液の試験サンプルのプロテオミクスプロファイルを正常サンプルのプロテオミクスプロファイルまたは参照プロテオミクスプロファイルと比較する工程;および
(b)少なくとも1つのアクチン調節タンパク質またはそれらのフラグメント、前駆体もしくは天然に存在するバリアントが、正常サンプルと比べて、試験サンプルにおいて異なって発現している場合に、発生上の欠陥の存在を確認する工程
を包含する。
この方法の特定の実施形態において、アクチン調節タンパク質は、モエシン、p57、ゲルゾリンおよび14−3−3タンパク質からなる群から選択される。
さらなる局面において、本発明は、母体もしくは胎児の感染症または免疫応答関連障害を診断するための方法に関し、この方法は:
(a)妊娠中の雌性哺乳動物から得られた生体液の試験サンプルのプロテオミクスプロファイルを正常サンプルのプロテオミクスプロファイルまたは参照プロテオミクスプロファイルと比較する工程;および
(b)マクロファージキャッピングタンパク質(MCP)、白血球エラスターゼ、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(lipcalcin)(NGAL)、ミエロペルオキシダーゼ、L−プラスチン、カルグラニュリン、FALL−39、アズロシジン(azyrocidin)(CAP37)、プロテアーゼおよびプロテアーゼインヒビターからなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質が、正常サンプルと比べて、試験サンプルにおいて異なって発現している場合に、母体もしくは胎児の感染症または免疫応答関連障害の存在を確認する工程
を包含する。
なおもさらなる局面において、本発明は、新生児敗血症を診断するための方法に関し、その方法は、妊娠中の雌性哺乳動物から得られる生体液のプロテオミクスプロファイルにおいてGp−340の存在を検出する工程を包含する。
さらに別の局面において、本発明は、マクロファージキャッピングタンパク質、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン、ミエロペルオキシダーゼ;L−プラスチン;アズロシジン;抗菌性タンパク質FALL−39;Gp340バリアントタンパク質;エブナー唾液腺タンパク質ホモログ(GenBankアクセッション番号355392);白血球エラスターゼインヒビター;カルグラニュリンA;カルグラニュリンB;コフィリン;モエシン;プロフィリンI、クロニン様タンパク質p57;アネキシンII、フィブロネクチン;グリア由来ネキシン;アンチトロンビン−III;扁平上皮癌抗原1、扁平上皮癌抗原2;セルピン12;シスタチンA;シスタチンB;シスタチンC;IGFBP−1;ビタミンD結合タンパク質;アポリポタンパク質A−I;14−3−3タンパク質シグマ;14−3−3タンパク質ゼータ/デルタ;ゲルゾリン;ラクトトランスフェリン;ホスホグリセリン酸キナーゼ1;ホスホグリセリン酸ムターゼ1;およびトランスケトラーゼ;またはそれらのフラグメント、前駆体もしくは天然に存在するバリアントからなる群から選択される1つ以上のタンパク質の情報を含む生体液のプロテオミクスプロファイルに関する。
さらなる局面において、本発明は、マクロファージキャッピングタンパク質;好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン;ミエロペルオキシダーゼ;L−プラスチン;アズロシジン;抗菌性タンパク質FALL−39;白血球エラスターゼインヒビター;カルグラニュリンA;カルグラニュリンB;プロフィリンI、グリア由来ネキシン;セルピン12;シスタチンA;およびIGFBP−1;またはそれらのフラグメント、前駆体もしくは天然に存在するバリアントからなる群から選択される1つ以上のタンパク質の情報を含む生体液のプロテオミクスプロファイルに関する。
本発明は、IGFB−1、プロフィリン、セルロプラスミン、L−プラスチンおよびカルグラニュリンからなる群から選択されるタンパク質の存在を確認する情報を含む羊水内感染に特徴的な生体液のプロテオミクスプロファイルにさらに関する。
別の局面において、本発明は、3〜5KDaおよび/または10〜12KDaの分子量範囲における特有の発現サインを含む生体液中に存在するタンパク質またはそのタンパク分解性フラグメントの分子量の情報を提供する形態で表された、羊水内感染に特徴的な生体液のプロテオミクスプロファイルに関する。
さらなる局面において、本発明は、本質的には図1A〜1Cのいずれか1つに示されるような、または本質的には図2A〜Cのいずれか1つに示されるような、または本質的には図3A〜Cのいずれか1つに示されるような、または本質的には図4Aもしくは4Bに示されるような、または本質的には図6〜10のいずれか1つに示されるような、プロテオミクスプロファイルに関する。
特定の実施形態において、プロテオミクスプロファイルは、マイクロアレイ形式で解析される。
別の局面において、本発明は、妊娠中の雌性哺乳動物被験体における子宮内感染の存在を判定するための方法に関し、この方法は:
(a)前記被験体から得られた子宮頸部膣液のサンプルにおいて、ハプトグロビン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P00738);アルファ−1−酸糖タンパク質(Swiss−Prot Acc.No.P02763)、表皮型脂肪酸結合タンパク質(Swiss−Prot Acc.No.Q01469)およびインスリン様成長因子結合タンパク質(Swiss−Prot Acc.No.P08833)からなる群から選択される2つ以上のタンパク質の存在量を、正常な子宮頸部液(cervical fluid)または子宮内感染を示していることが知られている子宮頸部液における存在量と比べて検査する工程;および
(b)前記存在量が、前記正常な子宮頸部液における存在量と比べて統計学的有意差を示すか、または子宮内感染を示していることが知られている前記子宮頸部液における存在量と比べて統計学的有意差を示さない場合に、子宮内感染が存在すると結論を下す工程
を包含する。その哺乳動物被験体は、好ましくはヒトである。様々な実施形態において、列挙されたタンパク質のうちの少なくとも3つまたは4つすべての存在量が検査される。
別の実施形態において、上記方法は、プロフィリン−1(Swiss−Prot Acc.No.P07737);血清アルブミン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P2768);カルグラニュリンB(Swiss−Prot Acc.No.P06702);および扁平上皮癌抗原1(Swiss−Prot Acc.No.P29508)からなる群から選択される1つ以上のさらなるタンパク質の存在量を検査する工程を包含し得る。
さらに別の実施形態において、以下の群から選択される少なくとも1つのさらなるタンパク質の存在量が検査される:アルファ−1−抗トリプシン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P01009);フィブロネクチン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P02751);アネキシンA2(Swiss−Prot Acc.No.P07355);ビタミンD結合タンパク質前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P02774)。
さらなる実施形態において、以下の群から選択される少なくとも1つのさらなるタンパク質の存在量が検査される:シスタチンA(Swiss−Prot Acc.No.P01040);ムチン−5B前駆体(Swiss−Prot Acc.No.Q9HC84);小型プロリンリッチタンパク質3(Swiss−Prot Acc.No.Q9UBC9);リゾチームC前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P61626);およびセロトランスフェリン(serotransferrin)前駆体(P02787)。
なおもさらなる実施形態において、以下の群から選択される少なくとも1つのさらなるタンパク質の存在量が検査される:シスタチンA(Swiss−Prot Acc.No.P01040);ムチン−5B前駆体(Swiss−Prot Acc.No.Q9HC84);小型プロリンリッチタンパク質3(Swiss−Prot Acc.No.Q9UBC9);リゾチームC前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P61626);およびセロトランスフェリン前駆体(P02787)。
そのようなタンパク質の存在量は、当該分野で公知の任意の方法(例えば、イムノアッセイ、質量分析による方法またはタンパク質アレイを用いる方法)によって測定され得る。
さらなる局面において、本発明は、早期陣痛の症状を示している妊娠中の雌性哺乳動物被験体における早産の可能性を判定するための方法に関し、この方法は、
(a)その被験体から得られた子宮頸部膣液のサンプルにおいて、ハプトグロビン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P00738);アルファ−1−酸糖タンパク質1(Swiss−Prot Acc.No.P02763)、表皮型脂肪酸結合タンパク質(Swiss−Prot Acc.No.Q01469)およびインスリン様成長因子結合タンパク質(Swiss−Prot Acc.No.P08833)からなる群から選択される2つ以上のタンパク質の存在量を、正常な子宮頸部液または子宮内感染を示していることが知られている子宮頸部液における存在量と比べて検査する工程;および
(b)その存在量が、前記正常な子宮頸部液における存在量と比べて統計学的有意差を示すか、または子宮内感染を示していることが知られている子宮頸部液における存在量と比べて統計学的有意差を示さない場合に、早産の発生を予測する工程
を包含する。
前の局面のとおり、上記方法は、上で列挙されたタンパク質などの1つ以上のさらなるタンパク質の存在量を検査する工程を包含し得る。
さらなる実施形態において、早産の発生を、上に記載されたように行われる検査に基づいて予測することができない場合、フィブロネクチン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P02751)の存在量についてその被験体をさらに検査し、そのような存在量が、正常な子宮頸部液における存在量と比べて統計学的有意差を示す場合に、早産の発生が予測される。
特定の実施形態において、フィブロネクチン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P02751)の存在量は、工程(a)の前に測定される。
さらなる局面において、本発明は、ハプトグロビン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P00738);アルファ−1−酸糖タンパク質1(Swiss−Prot Acc.No.P02763);表皮型脂肪酸結合タンパク質(Swiss−Prot Acc.No.Q01469);およびインスリン様成長因子結合タンパク質(Swiss−Prot Acc.No.P08833)からなる群から選択される2つ以上のタンパク質を検出するための抗体および試薬を備えたイムノアッセイキットに関する。
1つの実施形態において、上記イムノアッセイキットは、プロフィリン−1(Swiss−Prot Acc.No.P07737);血清アルブミン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P2768);カルグラニュリンB(Swiss−Prot Acc.No.P06702);扁平上皮癌抗原1(Swiss−Prot Acc.No.P29508);アルファ−1−抗トリプシン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P01009);フィブロネクチン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P02751);アネキシンA2(Swiss−Prot Acc.No.P07355);ビタミンD結合タンパク質前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P02774);シスタチンA(Swiss−Prot Acc.No.P01040);ムチン−5B前駆体(Swiss−Prot Acc.No.Q9HC84);小型プロリンリッチタンパク質3(Swiss−Prot Acc.No.Q9UBC9);リゾチームC前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P61626);およびセロトランスフェリン前駆体(P02787);シスタチンA(Swiss−Prot Acc.No.P01040);ムチン−5B前駆体(Swiss−Prot Acc.No.Q9HC84);小型プロリンリッチタンパク質3(Swiss−Prot Acc.No.Q9UBC9);およびリゾチームC前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P61626);およびセロトランスフェリン前駆体(P02787)からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質を検出するための抗体および試薬をさらに備える。
霊長類の羊水における、感染に誘導される差次的なタンパク質発現。既知組成の順相チップアレイに結合している羊水抽出物のSELDI−TOF解析。A)ピーク強度の差を示している、235レーザー強度において回収された全体のスペクトル。B)コントロールと感染との間で10〜12KDa領域において差を示している詳細なスペクトル。C)コントロールと感染との間で3〜5KDa領域において差を示している詳細なスペクトル。実線は、診断検査を開発するために使用され得る発現の有意差(特有の発現サイン)を示すために使用した。 霊長類の羊水における、感染に誘導される差次的なタンパク質発現。既知組成の順相チップアレイに結合している羊水抽出物のSELDI−TOF解析。A)ピーク強度の差を示している、235レーザー強度において回収された全体のスペクトル。B)コントロールと感染との間で10〜12KDa領域において差を示している詳細なスペクトル。C)コントロールと感染との間で3〜5KDa領域において差を示している詳細なスペクトル。実線は、診断検査を開発するために使用され得る発現の有意差(特有の発現サイン)を示すために使用した。 霊長類の羊水における、感染に誘導される差次的なタンパク質発現。既知組成の順相チップアレイに結合している羊水抽出物のSELDI−TOF解析。A)ピーク強度の差を示している、235レーザー強度において回収された全体のスペクトル。B)コントロールと感染との間で10〜12KDa領域において差を示している詳細なスペクトル。C)コントロールと感染との間で3〜5KDa領域において差を示している詳細なスペクトル。実線は、診断検査を開発するために使用され得る発現の有意差(特有の発現サイン)を示すために使用した。 感染(GBS)に応答した霊長類羊水の経時的な解析。細菌接種の前および感染後は連続的に羊水を回収し、以下に記載するようなSELDI−TOF解析に供した。図2A:感染前;2B:感染の12時間後;2C:感染の36時間後。 ヒト羊水中における、感染に誘導される差次的なタンパク質発現。既知組成の順相チップアレイに結合している羊水抽出物のSELDI−TOF解析。A)ピーク強度の差を示している、235レーザー強度において回収された全体のスペクトル。B)コントロールと感染との間で、10〜12KDaの領域において差を示している詳細なスペクトル。C)コントロールと感染との間で、3〜5KDaの領域において差を示している詳細なスペクトル。D)コントロールと感染とを区別する、ピーク強度に基づいたクラスター。 ヒト羊水中における、感染に誘導される差次的なタンパク質発現。既知組成の順相チップアレイに結合している羊水抽出物のSELDI−TOF解析。A)ピーク強度の差を示している、235レーザー強度において回収された全体のスペクトル。B)コントロールと感染との間で、10〜12KDaの領域において差を示している詳細なスペクトル。C)コントロールと感染との間で、3〜5KDaの領域において差を示している詳細なスペクトル。D)コントロールと感染とを区別する、ピーク強度に基づいたクラスター。 ヒト羊水中における、感染に誘導される差次的なタンパク質発現。既知組成の順相チップアレイに結合している羊水抽出物のSELDI−TOF解析。A)ピーク強度の差を示している、235レーザー強度において回収された全体のスペクトル。B)コントロールと感染との間で、10〜12KDaの領域において差を示している詳細なスペクトル。C)コントロールと感染との間で、3〜5KDaの領域において差を示している詳細なスペクトル。D)コントロールと感染とを区別する、ピーク強度に基づいたクラスター。 ヒトのA)子宮内感染を有しないコントロールおよびB)子宮内感染を有するサンプルからの羊水を用いた、一般的なMALDI−TOF質量分析計において取得された質量スペクトル。 ヒトのA)子宮内感染を有しないコントロールおよびB)子宮内感染を有するサンプルからの羊水を用いた、一般的なMALDI−TOF質量分析計において取得された質量スペクトル。 SDS−PAGEのクマシー(Commassie)ブルーで染色したゲル。A)4個のプールされたコントロールヒトAFサンプル;B)個別のコントロールAFサンプル;C)4個のプールされたヒト感染AFサンプル;D)個別の感染AFサンプル。 ヒト羊水における差次的なタンパク質発現の検出。A)コントロールAFサンプル(プールされたもの);B)感染AFサンプル(プールされたもの)。 ヒト羊水における差次的なタンパク質発現の検出。A)コントロールAFサンプル(プールされたもの);B)感染AFサンプル(プールされたもの)。 図8は、ヒト羊水および母体血清における差次的なタンパク質発現の検出を示している。A)コントロールサンプル(プールされたもの);B)感染サンプル(プールされたもの)。 図9は、タンパク質アレイを使用した、母体血清において異なって発現しているタンパク質の検出を示している。1)対応するタンパク質とそれらの抗体との結合を示しているタンパク質アレイの疑似カラー像;2)そのアレイを拡大したもの;3)カルグラニュリンIPのウエスタンブロット。 図10は、トリソミーを区別する特有プロファイルを有する母体血清における差次的なタンパク質発現パターンを示している。 羊水タンパク質のデノボタンパク質配列同定の概略図。PRO1_HUMAN(P07737)プロフィリンI(配列番号:5〜11)。 IGFBP−1デノボタンパク質同定およびタンパク分解性フラグメント配列(配列番号:1)。Ms/MSを用いてサンプル0426se_H1_12および0425se_H1_13において見出されたペプチド配列を小文字で示している(配列番号:2および3。これらは、トリプシン消化し、MS/MS解析に供した1−Dゲルバンドにおいて行ったときの感染羊水に由来したものである。感染羊水由来のトリプシン消化された約10.5〜12KDaバンドの、1−Dゲル(dels)(低分子量範囲、図5)、ウエスタンブロット(図6)およびMS/MS解析(図13)において検出されたIGF−BP−1のタンパク分解性フラグメントを、下線が引かれた配列の領域に表している(配列番号:4)。 感染羊水からの10.5〜11kD IDゲルバンドのトリプシン消化物のLCQ−MSプロファイル。LCQ−MSは、サンプル中に存在する潜在的なタンパク質を代表する親イオンを示している。 図13に示される、17.55〜18.21分の保持時間におけるピークに対する質量スペクトル。 図14に示される434.9ピークの親イオンに対するMS/MSスペクトル。 すべてのサンプルから取得したLC/MS/MSスペクトル(16a−I)を、図16bに示されているバイオインフォマティクスワークフローを用いて処理した。個別のサンプルからのタンパク質同定(16a−II)を網羅的なタンパク質リストに統合した(16a−III)。その網羅的リスト由来の少なくとも3個の特有ペプチドヒットを有したすべてのタンパク質を、手作業での確認なしに表4に含めることを認めた(16a−IV)。最も多い2つの特有のペプチドヒットを有した網羅的リスト内のタンパク質を、方法の項に概説した基準を用いて手作業で確認した(16a−IV)。手作業確認を通過した2つの特有のペプチドヒットを有するすべてのタンパク質を表4に加えた(16a−IV)。手作業確認を通過した単一のペプチドヒットを有したタンパク質を表5に加えた(図16a−IV)。図16bは、タンパク質およびペプチドを同定するためのバイオインフォマティクスワークフローを示している。サンプルからのLC/MS/MSスペクトルを同位体除去し(deisotoped)、セントロイドした(centrioded)(16b−I)。TurboSequest(ThermoFinnigan,Waltham,MA)、X!Tandem(Fenyo,D.;ら、Anal Chem 2003,75,(4),768−74)およびOpenSea Searle,B.C.,ら、Anal Chem 2004,76,(8),2220−30;Searle,B.C.et a.,J Proteome Res 2005,4,(2),546−54.)を用いて、組み合わされたタンパク質データベース(方法の項を参照のこと)に対して、前処理されたMS/MSスペクトルを検索することによって、サンプル中のペプチドおよびタンパク質を同定した。3つすべてのプログラムからのペプチドヒットおよびタンパク質ヒットを、Scaffoldソフトウェア(Proteome Software,Portland,OR)を用いて統合した。 すべてのサンプルから取得したLC/MS/MSスペクトル(16a−I)を、図16bに示されているバイオインフォマティクスワークフローを用いて処理した。個別のサンプルからのタンパク質同定(16a−II)を網羅的なタンパク質リストに統合した(16a−III)。その網羅的リスト由来の少なくとも3個の特有ペプチドヒットを有したすべてのタンパク質を、手作業での確認なしに表4に含めることを認めた(16a−IV)。最も多い2つの特有のペプチドヒットを有した網羅的リスト内のタンパク質を、方法の項に概説した基準を用いて手作業で確認した(16a−IV)。手作業確認を通過した2つの特有のペプチドヒットを有するすべてのタンパク質を表4に加えた(16a−IV)。手作業確認を通過した単一のペプチドヒットを有したタンパク質を表5に加えた(図16a−IV)。図16bは、タンパク質およびペプチドを同定するためのバイオインフォマティクスワークフローを示している。サンプルからのLC/MS/MSスペクトルを同位体除去し(deisotoped)、セントロイドした(centrioded)(16b−I)。TurboSequest(ThermoFinnigan,Waltham,MA)、X!Tandem(Fenyo,D.;ら、Anal Chem 2003,75,(4),768−74)およびOpenSea Searle,B.C.,ら、Anal Chem 2004,76,(8),2220−30;Searle,B.C.et a.,J Proteome Res 2005,4,(2),546−54.)を用いて、組み合わされたタンパク質データベース(方法の項を参照のこと)に対して、前処理されたMS/MSスペクトルを検索することによって、サンプル中のペプチドおよびタンパク質を同定した。3つすべてのプログラムからのペプチドヒットおよびタンパク質ヒットを、Scaffoldソフトウェア(Proteome Software,Portland,OR)を用いて統合した。 SCX画分において同定された特有ペプチドの数の分布。ヒトCVF 2D−LCサンプル中の1画分あたりに同定された特有ペプチドの総数は、従来のゲルベースの電気泳動手法に対する本手法の利点を示している。 異なる検索エンジン間でのスペクトルおよびタンパク質同定の重複。(A)Sequest、X!TandemおよびOpenSea検索エンジンを用いて、ヒトCVF 2D−LC実験からの合計9,507個のMS/MSスペクトルを検索した。3つの独立した検索エンジンを使用するとき、サンプル中の合計5601個(59%)のMS/MSスペクトルが、2つの特有ペプチド同定閾値において、タンパク質にマッチした。同定されたスペクトル(閾値より大きかったもの)の、検索エンジン間のパーセンテージの分布は、複数の独立した検索エンジンを使用することによって、サンプルにおいてより多くのMS/MSスペクトルが同定されたことを示している。(B)3つすべての検索エンジンを使用して、単一のヒトCVF 2D−LCサンプルからのMS/MSスペクトルを解析したとき、合計118個の候補タンパク質が同定された。3個の検索エンジン間における候補タンパク質ヒットの数の分布は、複数の独立した検索エンジンを使用することによって、より多くのタンパク質が同定されたことを示している。 生物学的複製物におけるタンパク質IDの分布。このベン図は、2D−LCを用いて解析されたCVF生物学的複製物間のタンパク質同定の分布を示している。同定された合計147個のタンパク質のうち、102個のタンパク質が、両方のサンプルに存在し、45個のタンパク質が、一方のサンプルまたは他方のサンプルに存在した。 異なる解析アプローチにおけるタンパク質IDの分布。タンパク質同定の割合は、生物学的複製物および実験的複製物を解析に加えることによって増加した。合計150個のタンパク質のうち、62個のタンパク質が、1DGE手法と2D−LC手法の両方によって検出され、85個が、2D−LCのみによって検出され、3個(このすべてが少なくとも2個の特有ペプチド同定を有した)が、1DGEのみによって検出された。 ヒトCVFにおけるタンパク質のトリプシンペプチドプロファイル。CVFにおいて同定されたタンパク質のトリプシンペプチドプロファイルは、同定の89%超が少なくとも2個の特有ペプチド同定を有したことを示している;しかしながら、多岐にわたるトリプシンペプチド産物を有するタンパク質が、CVFにおいて同定された。 ヒトCVFプロテオームの機能的分類。DAVIDバイオインフォマティクスリソースDennis,G.,Jr.ら、GenomeBiol 2003,4,P3において利用可能な機能的分類ツールを用いて、ヒトCVFタンパク質の機能アノテーションを行った。合計150個の同定されたタンパク質のうち、32%は、代謝に関与し、22%は、免疫応答に関与し、11%は、細胞分化に関与し、9%は、輸送に関与し、8%は、細胞の組織化に関与し、6%は、酵素の制御に関与し、3%は、シグナル伝達に関与し、3%は、細胞増殖に関与していた。同定されたタンパク質の6%に対しては、DAVIDデータベースにおいて、関連性のある機能アノテーションは見出されなかった。 CVFにおいて発現していたタンパク質の機能アノテーションおよび細胞内局在。アノテーションデータベース(DAVID,バージョン2.0,NIAID)を用いて、GeneOntologyターム(GOターム)について、MudPITおよびゲルベース分画を用いて同定された205個のタンパク質を解析した。全タンパク質の8%が、既知の機能アノテーションを示さなかった。 非ヒト霊長類CVFおよびAFサンプルにおけるUreaplasma parvum誘導性の差次的タンパク質レベルのマトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(MALDI−TOF−MS)タンパク質プロファイル。10.8kDaのピークを示しているプロファイルが、(A)実験的IAIの前および(B)実験的IAIの後に採取されたコントロールサンプルにおいて示されている。3〜5kDa MW範囲においてペプチドを示しているプロファイルが、C)実験的IAIの前に採取されたコントロールサンプルおよびD)実験的IAIの後に採取されたサンプルにおいて示されている。ベースライン除去およびSavitsky−Golayスムージングのために、10Da/チャネルにおいて5サイクルの処理をスペクトルに対して行った。3000〜2000の範囲のm/zを示すスペクトルを、コントロールと感染との間で異なって発現していたピークを指し示す矢印とともに示している。 IAIに対するCVF生物学的マーカーの免疫検出。ハプトグロビンは、制御されていないコントロールマーカーである。IGFBP−1バンドは、完全なタンパク質(約30kDa)およびタンパク分解性フラグメント(約19kDa)を示している。 PTL、PTBおよびコントロールCVFサンプルの2D DIGE解析。A.PTB(緑色)とコントロール(赤色)とのオーバーレイ、(B)PTL(緑色)およびコントロール(赤色)ならびに(C)PTB(緑色)およびPTL(赤色)。D.PTBとPTLとの間において異なる量で存在していたタンパク質のマップ。(D)パネルCの差次的なスポットマップ。緑色の輪郭で示されているスポットは、PTBにおいて>2倍多いことを示し、赤色の輪郭で示されているスポットは、PTLに対してPTBにおいて>2倍少ないことを示す。このスポットマップは、Phoretix Evolutionによって生成された。同定されたタンパク質に番号を付け、それらを表9に示す。 ヒトCVFにおける自然早産の生物学的マーカーの免疫検出。各サンプル群を代表する50μgのCVFタンパク質をブロットし、特異的な抗体をプローブに用いた。IGFBP−1バンドは、完全なタンパク質(約30kDa)およびタンパク分解性フラグメント(約16および約11kDa)を示している。
好ましい実施形態の詳細な説明
I.定義
別段定義されない限り、本明細書中で使用される専門用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されている意味と同じ意味を有する。Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed.,J.Wiley & Sons(New York,NY 1994)では、本願において使用される用語の多くに対する全般的な規準が当業者に提供されている。
用語「プロテオーム」は、所与の時点における生物学的サンプル中のかなりの部分のタンパク質のことを記述するために本明細書中で使用される。プロテオームという概念は、ゲノムとは基本的に異なるものである。ゲノムが実質的に静的なものである一方で、プロテオームは、内部および外部の事象に応答して絶えず変化するものである。
用語「プロテオミクスプロファイル」は、所与の時点における生物学的サンプル中、例えば、生体液中の複数のタンパク質の発現パターンを表しているものを指すために使用される。プロテオミクスプロファイルは、例えば、質量スペクトルとして表され得るが、タンパク質の任意の物理化学的または生化学的な特性に基づいた他の表現もまた含まれる。従って、プロテオミクスプロファイルは、例えば、2次元ゲル電気泳動、例えば、2−D PAGEによって判定されるようなタンパク質の電気泳動的特性の差に基づき得、例えば、2次元電気泳動ゲルにおける複数のスポットとして表され得る。差次的発現プロファイルは、詳細に同定されたタンパク質の非存在下においてでさえも重要な診断価値を有し得る。そして、単一タンパク質のスポットは、例えば、免疫ブロット法によって検出され得、複数のスポットまたはタンパク質は、タンパク質マイクロアレイを用いて検出され得る。プロテオミクスプロファイルは、代表的には、いくつかのピークから50以上のピークを表す複雑なプロファイルまでにわたり得る情報を表しているか、または含んでいる。従って、例えば、プロテオミクスプロファイルは、少なくとも2個、または少なくとも5個、または少なくとも10個、または少なくとも15個、または少なくとも20個、または少なくとも25個、または少なくとも30個、または少なくとも35個、または少なくとも40個、または少なくとも45個、または少なくとも50個、または少なくとも60個、または少なくとも65個、または少なくとも70個、または少なくとも75個、または少なくとも80個、または少なくとも85個、または少なくとも85個、または少なくとも90個、または少なくとも95個、または少なくとも100個、または少なくとも125個、または少なくとも150個、または少なくとも175個、または少なくとも200個のタンパク質を含み得るか、または表し得る。
用語「病的状態」は、最も広い意味において使用され、被験体の健康を損なうすべての変化および現象を包含する。母体の病的状態としては、羊水内感染、胎児または母体の起源の状態、例えば、子癇前症ならびに早期陣痛および早産が挙げられるがこれらに限定されない。胎児の病的状態としては、ダウン症候群などの染色体の欠陥(異数性)ならびに在胎期間および胎児の成熟におけるすべての異常が挙げられるがこれらに限定されない。
用語「[母体または胎児の]病的状態の状況」は、最も広い意味において本明細書中で使用され、病的状態が存在していないこと、存在すること、その程度、ステージ、性質、進行または後退のことを指す。
用語「特有の発現サイン」は、対応する正常な生物学的サンプル(同じタイプの起源、例えば、生体液から得られたもの)のプロテオミクスプロファイルと統計学的に有意な様式で異なる生物学的サンプル(例えば、参照サンプル)のプロテオミクスプロファイル内の特有の特徴またはモチーフのことを記述するために使用される。
用語「羊水内感染(IAI)」、「羊水感染」、「羊膜炎」および「臨床的絨毛羊膜炎」は、交換可能に使用され、妊娠中の羊水および子宮内の内容物の急性感染(例えば細菌が挙げられるがこれに限定されない)のことを指す。
「患者の応答」は、患者の利益を示唆する任意のエンドポイントを用いて評価され得、そのエンドポイントとしては、(1)病的状態の進行の少なくともある程度の阻害、(2)病的状態の予防、(3)病的状態に関連する1つ以上の症状の少なくともある程度の軽減;(4)処置後の生存時間の延長;および/または(5)処置後の所与の時点における死亡率の低下が挙げられるがこれらに限定されない。
用語「処置」とは、治療的な処置と、予防的または防止的な措置との両方のことを指し、ここで、その目的は、標的にされている病的状態または障害を予防するかまたは遅らせる(小さくする)ことである。処置の必要な者としては、その障害をすでに有している者ならびにその障害を有する傾向のある者またはその障害が予防されるべき者が挙げられる。
「先天性奇形」は、非遺伝性であるが出生時に存在している異常である。
任意の特定のタンパク質の表示は、本明細書中で使用されるとき、その指し示されているタンパク質の他の種における天然の配列ホモログ(天然に存在するバリアントのすべてを含む)に加えて、そのタンパク質のフラグメント、前駆体(precurser)および天然に存在するバリアント(例えば、選択的スプライシングされたバリアントおよび対立遺伝子バリアント)およびアイソフォームならびに可溶型のすべてを包含する。従って、例えば、ハプトグロビン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P00738)の存在量が検査されると記載されているとき、その記載は、具体的には、Swiss−Prot Acc.No.P00738として列挙されるタンパク質の任意のフラグメント、前駆体または天然に存在するバリアント、ならびに被験体が非ヒトである場合、その非ヒトホモログおよびその天然に存在するバリアントの検査を包含する。
II.詳細な説明
本発明は、母体または胎児の生体液のプロテオミクスプロファイルに基づいた母体および胎児の状態の早期の、信頼性の高い、非侵襲性の検査のための方法および手段に関する。本発明は、例えば、以下の教科書(その内容は、本明細書において明示的に参考として援用される)に記載されているような当該分野で周知のプロテオミクス技術を利用するものである:Proteome Research:New Frontiers in Functional Genomics(Principles and Practice),M.R.Wilkinsら、eds.,Springer Verlag,1007;2−D Proteome Analysis Protocols,Andrew L Link編,Humana Press,1999;Proteome Research:Two−Dimensional Gel Electrophoresis and Identification Methods(Principles and Practice),T.Rabilloud編,Springer Verlag,2000;Proteome Research:Mass Spectrometry(Principles and Practice),P.James編,Springer Verlag,2001;Introduction to Proteomics,D.C.Liebler編,Humana Press,2002;Proteomics in Practice:A Laboratory Manual of Proteome Analysis,R.Westermeierら、eds.,John Wiley & Sons,2002。
当業者は、本発明の実施において使用され得る本明細書中に記載される方法および材料と類似または等価な多くの方法および材料を認識するだろう。実際に、本発明は、記載される方法および材料に何ら限定されない。
1.生体液中で発現しているタンパク質およびポリペプチドの同定
本発明によれば、生体液のプロテオミクス解析は、当該分野で公知の種々の方法を用いて実施され得る。
代表的には、正常な生体液(正常サンプル)および試験生体液(試験サンプル)などの異なる起源由来のサンプルのタンパク質パターン(プロテオームマップ)を比較することによって、ある疾患においてアップレギュレートまたはダウンレギュレートされているタンパク質が検出される。そして、これらのタンパク質を、同定および完全な特徴付けのために、例えば、ペプチド質量フィンガープリンティングおよび/または質量分析ならびに配列決定法を用いて取り出すか、または正常なプロテオームマップおよび/もしくは疾患特異的プロテオームマップを、目的の疾患の診断のために直接使用することができるか、または疾患の有無を確認するために直接使用することができる。
比較解析では、タンパク質の相対存在量を正確に示すためおよび正確な結果を得るために、正常サンプルと試験サンプルとを正確に同じ方法で処理することが重要である。必要とされる総タンパク質の量は、使用する分析技術に左右され、当業者が容易に決定することができる。生物学的サンプル中に存在するタンパク質は、代表的には、そのpIおよび分子量に従って2次元ゲル電気泳動(2−DE)によって分離される。まず、等電点電気泳動(1次元ゲル電気泳動)を用いてタンパク質の電荷によってタンパク質を分離する。この工程は、例えば、市販の固定化pH勾配(IPG)ストリップを用いて行われ得る。二次元目は、通常のSDS−PAGE解析であり、その泳動されたIPGストリップをサンプルとして使用する。2−DE分離後、クマシーブルーのような従来の色素または銀染色を用いて、タンパク質を可視化することができ、また、公知の手法および装置(例えば、Bio−Rad GS800デンシトメーターおよびPDQUESTソフトウェア(両方とも市販されている))を用いて撮像することができる。そして、個別のスポットをゲルから切り出し、脱染し、トリプシン消化に供する。ペプチド混合物を質量分析(MS)によって解析することができる。あるいは、ペプチドを例えばキャピラリー高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)によって分離することができ、そして個別にまたはプールとしてMSで解析することができる。
質量分析計は、イオン源、質量分析器、イオン検出器およびデータ収集ユニットからなる。まず、ペプチドをイオン源においてイオン化する。次いで、そのイオン化されたペプチドを質量分析器において質量電荷比に従って分離し、別個のイオンを検出する。質量分析は、特にマトリックス支援レーザー脱離イオン化(ionisation)/飛行時間型(MALDI−TOF)およびエレクトロスプレーイオン化(ESI)法の発明以来、タンパク質解析において広く使用されている。質量分析器には、いくつかのバーションがあり、例えば、MALDI−TOFおよび三重極型もしくは四重極型−TOF、またはESIと組み合わされたイオントラップ質量分析器が挙げられる。従って、例えば、Q−Tof−2質量分析計は、質量スペクトルの全範囲にわたるイオンの同時検出が可能な直交飛行時間型分析器を利用する。さらなる詳細として、例えば、Chemusevichら、J.Mass Spectrom.36:849−865(2001)を参照のこと。
所望であれば、ペプチドフラグメントおよび究極的にはそのフラグメトが由来するタンパク質のアミノ酸配列を、当該分野で公知の手法(例えば、質量分析のある特定の変法)またはエドマン分解によって決定することができる。
2.早期かつ非侵襲性の診断の利益を享受する胎児−母体の状態
羊水内感染
羊水内感染(IAI)は、妊娠中の羊水および子宮内の内容物の急性の細菌感染である。前向き研究によって、IAIが全分娩の4%〜10%において発生すると示唆されている(Newton,E.R.,Prihoda,T.J.and Gibbs,R.S.:Logistic regression analysis of risk factors for intra−amniotic infection.Obstet.Gynecol.73:571,1989;Soper,D.E.,Mayhall,C.G.,and Dalton,H.P.:Risk factors for intraamniotic infection:a prospective epidemicologic study.American Journal of Obstetrics and Gynecology 161:562,1989;and Lopez−Zeno,J.A.,Peaceman,A.M.,Adashek,J.A.,and Socol,M.L.:A controlled trial of a program for the active management of labor.N.Engl.J.Med.326:450,1992)。IAIを記述するために使用される他の用語としては、羊水感染、羊膜炎および臨床的絨毛羊膜炎が挙げられる。羊水内感染は、母体の発熱、子宮の圧痛、白血球増加および胎児の頻拍によって臨床的に診断され、組織学的絨毛羊膜炎と区別されるべきである。羊水内感染は、母体および新生児の罹患の重要な原因である。羊水内感染は、周産期における有熱性の病的状態の症例の10〜40%を占め、早期の新生児敗血症および肺炎の症例の20〜40%に関連する(Newton,E.R.:Chorioamnionitis and intraamniotic infection.Clin.Obstet.Gynecol.36:795,1993)。母体の菌血症は、IAIを有する患者の2〜6%において発生し、分娩後の感染性の罹患率は、上昇する。IAIを有する患者では、機能不全の分娩および帝王切開分娩のリスクも高い。Duffらは、分娩時に羊水内感染を発症していた患者のうち、機能不全の分娩は75%の発生率であり、帝王切開分娩は34%の発生率であったことを報告した(Duff,P.,Sanders,R.およびGibbs,R.S.:The course of labor in term pregnancies with chorioamnionitis.American Journal of Obstetrics and Gynecology 147:391,1983)。羊水内感染もまた、新生児(特に早期陣痛新生児)の高罹患率および高死亡率と関連する。一般に、IAIを有する母体から誕生した出生時体重の軽い新生児では、周産期の死亡率が3〜4倍高い(Gibbs,R.S.,Castillo,M.A.およびRodgers,P.J.:Management of Acute Chorioamnionitis.American Journal of Obstetrics and Gynecology 136:709,1980;Gilstrap,L.C.,III,Leveno,K.J.,Cox,S.M.,Burris,J.S.,Mashburn,M.,and Rosenfeld,C.R.:Intrapartum treatment of acute chorioamnionitis:impact on neonatal sepsis.Am.J.Obstet.Gynecol.159:579,1988)。呼吸窮迫症候群、脳室内出血および新生児敗血症も高い。Morales,W.J.:The effect of chorioamnionitis on the developmental outcome of preterm infants at one year.Obstetrics and Gynecology 70:183,1987)。近年、IAIは、新生児の脳室周囲白質軟化症および脳性麻痺と関係付けられた;大脳白質損傷および脳性麻痺のリスクは、羊水内感染において9倍高い。Bejar,R.,Wozniak,P.,Allard,M.,Benirschke,K.,Vaucher,Y.,Coen,R.,Berry,C.,Schragg,P.,Villegas,I.and Resnik,R.:Antenatal origin of neurologic damage in newborn infants.I.Preterm infants.Am.J.Obstet.Gynecol.159:357,1988;Grether,J.K.and Nelson,K.B.:Maternal infection and cerebral palsy in infants of normal birth weight.JAMA 278:207,1997)。最終的には、完全な胎膜での早期陣痛において少なくとも10%の女性が無症状のIAIを有していたことが見出されたことから、IAIが、早熟児の重要かつ潜在的に予防可能な原因であると示唆される(Romero,R.,Avila,C.,Brekus,C.A.,and Morotti,R.:The role of systemic and intrauterine infection in preterm parturition.Annuals of the New York Academy of Sciences 622:355,1991)。Newtonによる文献レビューから、臨床的IAIの発生率は、27週未満の在胎期間において41%、27〜37週の在胎期間において15%、および38週以上の妊娠期間において2%であることが証明された(Newtonら、前出)。下部生殖管に常在する細菌もまた、羊水内感染の臨床的徴候がなく完全な胎膜での早期陣痛を有したすべての女性のうちの10〜20%の羊水から回収されており(Romeroら、前出)、23〜24週で妊娠が終了し早期陣痛を有した最大67%の女性の羊水から回収された(Watts,D.H.,Krohn,M.A.,Hillier,S.L.,and Eschenbach,D.A.:The association of occult amniotic fluid infection with gestational age and neonatal outcome among women in preterm labor.Obstet Gynecol 79:351,1992)。これらの患者のほとんどが、早く分娩し、多くの患者において臨床的に明らかなIAIを発症する。これらの観察結果から、初期は無症状である上昇性の子宮内感染が、早期陣痛より先に生じ、極端な早産の重要な原因であり得るという仮説が支持される。
子癇前症
子癇前症は、タンパク尿、浮腫またはその両方とともに起きる母体の高血圧症と定義されるものであり、第1三半期において終結しない妊娠の7%において生じる。その原因は不明であるが、極端な出産年齢、母体の糖尿病、多胎妊娠ならびに母体の腎疾患およびまたは高血圧症の既往が共通している。子癇前症は、周産期死亡率の上昇と関連しており、母体のてんかんおよび母体の高死亡率を特徴とする子癇をもたらし得る。現在、子癇前症に対する主要な治療法は、分娩および硫酸マグネシウムを含む抗痙攣薬による予防である。硫酸マグネシウム治療を開始する前に、観察された母体の死亡率は、20〜30%であった。しかしながら、迅速な診断を行い、硫酸マグネシウムを含む抗痙攣薬による治療、抗高血圧および分娩が可能になると、母体の死亡率は、ゼロ近くまで減少した。
残念なことに、一般に認識されている症状および徴候に基づいた子癇前症の診断は、困難であることが多く、疾患の経過の後期に行われることが多い。しばしば、胎児の成長または健康が損なわれていることが、最初に認識される子癇前症の所見である。子癇前症に対する研究室マーカーとしては、タンパク尿の定量化および尿酸またはクレアチニンの高血清濃度が挙げられる。現在、初期の子癇前症に対する血清マーカーまたは今後、子癇前症を発症する女性を同定するマーカーで、利用可能なものはない。近年、1つの研究において、レプチンおよび尿酸をはじめとしたプロスペクティブな血清マーカーが、その後に起きる子癇前症と関連していた(Gursoy Tら、Preeclampsia disrupts the normal physiology of leptin.:Am J Perinatol.19(6):303−10,2002)が、これらの知見を確かめるために、さらに研究する必要がある。治療および介入によって、新生児および母体の予後を最も良好にすることができるようになるために、子癇前症に対する信頼性の高い早期マーカーの開発が肝要である。
早期陣痛および早産
早産は、37週が完了する前の妊娠期間での出生と定義される。米国における早産の発生率は、全出生の10〜11%であり、早期陣痛の積極的な処置にもかかわらず、増え続けている。全般的に言えば、早熟およびその結果は、先天性奇形に起因しない周産期死亡の80%に関与し、国家の医療予算に年間約50億ドルを追加させている。早産に対する危険因子としては、有色人種、低年齢、不良な社会経済的状況、55kg未満の母体体重、未経産、第1三半期における出血、多胎妊娠が挙げられる(Meis PJ,Michielutte R,Peters TJら、Factors associated with preterm birth in Cardiff,Wales:II.Indicated and spontaneous preterm birth.Am J Obstet Gynecol 173:597−602,1995)。
残念なことに、自然発症の早産に対するリスクを有する患者の予測は、一般に期待を裏切るものである(Creasy RK,Iams JD.Preterm labor and delivery.Maternal−Fetal Medicine,Creasy RK,Resnik R(eds.).W.B.Saunders Company,Philadelphia,PA 4th edition,1999.498−531頁)。早産に対して最も高いリスクの集団を定義し、それによって初期の介入の利益を潜在的に享受させる際の以前の試みとしては、リスクのスコアリング指標、子宮頸部の胎児フィブロネクチンの生化学的検出、子宮頸管長の超音波測定および家庭内での子宮活動モニタリングが挙げられた。これらのプログラムは、いずれも高価であり、どの患者が早期の介入または予防の利益を享受し得るのかを正確に予測することが不可能であったことが足かせとなっていた。すべての人が、約30%という低い陽性の予測値に苦しみ、「リスク有り」と同定された患者の大部分が期間の満了時に分娩した。子宮の収縮を阻害する薬理学的処置を含む介入は、効果的であるが、早期かつ信頼性の高い早期陣痛の診断に依存する。それゆえ、莫大なコストを下げ、早産に関連する新生児の死亡率および罹患率を低下させるために、早産のリスクが最も高い患者を同定する信頼性の高い早期マーカーが必要である。
染色体異数性
染色体の異常は、周産期の罹患率および死亡率のよくある原因である。染色体の異常は、200出生のうちの1出生の発生率で起きる。これらの異常の主な原因は、両親から受け継いだ異常な数の染色体である染色体の異数性である。最も多い染色体異数性の1つは、21トリソミー(ダウン症候群)であり、これは、800出生のうちの1出生の発生率で起きる(Hook EB,Hamerton JL:The frequency of chromosome abnormalities detected in consecutive newborn studies:Differences between studies:Results by sex and by severity of phenotypic involvement.Hook EB,Porter IH(eds):Population Cytogenetics,pp 63-79.New York,Academic Press,1978)。21トリソミーに対する主要な危険因子は、35歳を超える母体の年齢であるが、21トリソミーを有する小児の80%は、35歳未満の女性から生まれている。他の一般的な異数性の状態としては、13トリソミーおよび18トリソミー、ターナー症候群ならびにクラインフェルター症候群が挙げられる。
21トリソミーを有する小児の80%が、35歳未満の女性から生まれているので、母体の年齢のみに基づいて設計される出生前の診断スクリーニングプログラムは、役に立たない。ゆえに、出生前スクリーニングプログラムには、胎児の染色体の異数性に関連する検体に対して母体の血清スクリーニング、超音波検査またはその両方の組み合わせが補われている。広く利用されている血清マーカー候補としては、アルファ−フェトプロテイン(AFP)、非抱合エストリオール、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(choriogonadotrophic)ホルモン(hHCG)およびインヒビン−Aが挙げられる。しかしながら、スクリーニングの陽性率は2〜5%であり、21トリソミーおよび他の異数性に対する検出率は、たった70〜86%という検出率であり、失望させるものであった(Cuckle H.Biochemical screening for Down syndrome.Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol.92(1):97−101,2000)。さらに、検査の真陽性率、すなわち、スクリーニング検査で陽性であったもののうち21トリソミーであったものは、たった1〜2%であったことから、全体で、98%を超える偽陽性率がもたらされることになる。
母体の血清スクリーニングおよび超音波検査の後の染色体異数性の確定診断には、妊娠中期の遺伝学的な羊水穿刺検査が必要である。これは、0.5%という妊娠喪失のリスクを伴う侵襲性の手技である。さらに、羊水細胞の染色体解析は、大きな労働力を要し、最大2週間を必要とする時間のかかる手技である。ゆえに、母体血清からの染色体異数性の検出が改善され、母体スクリーニングの容認しがたい高偽陽性率が低下し、そして羊水穿刺後の羊水からの診断の速度および効率が高い、信頼性の高い検査が必要である。
3.生体液のプロテオミクスプロファイルを用いた母体/胎児の状態の診断
本発明は、生体液(例えば、羊水、血清、血漿、子宮頸部膣液(CVF)、尿、脳脊髄液、母乳、粘液または唾液)のプロテオーム解析によって前述および他の同様の母体/胎児の状態を診断するための信頼性の高い、早期の非侵襲性の方法を提供する。
先に述べたように、本発明の文脈において、用語「プロテオミクスプロファイル」は、所与の時点における生物学的サンプル中、例えば、生体液中の複数のタンパク質の発現パターンを表すものを指すために使用される。プロテオミクスプロファイルは、例えば、質量スペクトルとして表され得るが、タンパク質の任意の物理化学的または生化学的な特性に基づいた他の表現もまた含まれる。生体液のプロテオーム中に存在するタンパク質の全部または一部を同定し、配列決定することは、可能であるが、本発明に従って生成されるプロテオミクスプロファイルの診断的な用途には必要ない。特定疾患の診断は、正常なプロテオミクスプロファイルと、同じ状況下において得られた同じ生体液の、診断される疾患または病的状態が存在するときのプロテオミクスプロファイルとの特徴的な差異(特有の発現サイン)に基づき得る。その特有の発現サインは、同じタイプの起源から得られた、対応する正常な生物学的サンプルのプロテオミクスプロファイルと、統計学的に有意な様式で異なる、生物学的試験サンプルまたは生物学的参照サンプルのプロテオミクスプロファイル内の任意の特有の特徴またはモチーフであり得る。例えば、プロテオミクスプロファイルが質量スペクトルの形式で表されている場合、特有の発現サインは、代表的には、対応する正常サンプルの質量スペクトルと定性的または定量的に異なるピークまたはピークの組み合わせである。従って、質量スペクトルにおける新しいピークの出現もしくは新しいピークの組み合わせの出現、あるいは既存のピークもしくは既存のピークの組み合わせの大きさまたは形状の任意の統計学的に有意な変化、あるいは質量スペクトルにおける既存のピークの消失は、特有の発現サインと考えられ得る。哺乳動物被験体から得られた試験サンプルのプロテオミクスプロファイルを、母体または胎児の病的状態に特徴的な特有の発現サインを含む参照サンプルのプロテオミクスプロファイルと比較するとき、それが参照サンプルと特有の発現サインを共有する場合、その哺乳動物被験体は、そのような病的状態を有すると診断される。
特定の母体/胎児の病的状態は、診断される被験体から得られた生体液のプロテオミクスプロファイルを、同じ種類の正常な生体液の、同じ様式で得て処理されたプロテオミクスプロファイルと比較することによって診断され得る。試験サンプルのプロテオミクスプロファイルが正常サンプルのプロテオミクスプロファイルと本質的に同じである場合、その被験体は、母体/胎児の病的状態を有しないと考えられる。試験サンプルのプロテオミクスプロファイルが正常サンプルのプロテオミクスプロファイルと比べて特有の発現サインを示す場合、その被験体は、対象の母体/胎児の状態を有すると診断される。
あるいはまたはさらに、試験サンプルのプロテオミクスプロファイルを、対象の母体/胎児の病的状態を有すると独立して診断された被験体の生体液から得られた参照サンプルのプロテオミクスプロファイルと比較してもよい。この場合、その試験サンプルのプロテオミクスプロファイルが、参照サンプルのプロテオミクスプロファイルと、特有の発現サインを表している少なくとも1つの特徴または特徴の組み合わせを共有する場合、その被験体は、病的状態を有すると診断される。
本発明の方法において、正常な生物学的サンプルのプロテオミクスプロファイルは、診断上の重要な役割を果たす。上に記載したように、試験サンプルのプロテオミクスプロファイルが、正常な生物学的サンプルのプロテオミクスプロファイルと本質的に同じである場合、その患者は、特定される母体/胎児の病的状態を有しないと診断される。この「陰性」診断は、非常に重大である。なぜなら、それによって、潜在的な副作用を有し得るか、または患者、胎児もしくは新生児に別途リスクをもたらし得る、不必要な処置または介入に患者を供する必要性が排除されるからである。そのデータは、統計学的有意差の有無を判定するために解析される。
従来のタンパク質分離方法を用いて、解析の前に、本質的に同じ発現レベルにおいて正常プロテオームと罹患プロテオームの両方に見られるタンパク質(共通のタンパク質、例えば、アルブミンおよび免疫グロブリン)を除去することによって、本発明の診断方法の感度が高まり得る。特有の発現サインの一部ではないそのような共通のタンパク質の除去によって、感度および診断の精度が改善される。あるいはまたはさらに、共通のタンパク質の発現サインを、代表的には、診断コールを作成する機械指向のスペクトル選択アルゴリズムを用いて、それらの結果のコンピュータ解析中に除外することができる(またはシグナルを除去することができる)。
下記の実施例に詳述される結果は、羊水(AF)または子宮頸部膣液(CVF)の正常なプロテオミクスプロファイルと統計学的に有意な様式で異なる、羊水内感染(IAI)および早期陣痛に特徴的なプロテオミクスプロファイルを示す。さらに、それらの実施例は、IAI、早産、ダウン症候群および他の母体もしくは胎児の状態に特徴的な発現マーカーおよび特有の発現サインを示す。
本発明の非侵襲性の診断方法を実施するために特に有利な生体液は、子宮頸部膣液(CVF)である。CVFは、水、電解質、低分子量の有機化合物(グルコース、アミノ酸および脂質)、細胞(白血球、リンパ球および上皮細胞)ならびに子宮頸内膜によって主に合成される多数のタンパク質およびタンパク分解性酵素からなる複雑な生体液である(Blandauら、The Biology of the cervix.University of Chicago Press:Chicago,1973;p xi,450p。CVFは、ムチン、ディフェンシン、補体因子、免疫グロブリン、ラクトフェリンおよびコレクチンをはじめとした膣細胞からの分泌物も含む(Blandauら、前出)。CVFは、膣、子宮頸部および子宮の領域を含む雌性生殖輸管全体から流れ出て、それらを潤滑するものである。CVFは、外部の病原体に対する防御の最前線を形成し、受精能をシグナル伝達し、媒精、妊娠および分娩を助ける(Blandauら、前出;Bigelow,J.L.ら、Hum Reprod 2004,19,(4),889−92)。CVFは、Lactobacilli crispatusおよびLactobacilli vaginalisなどの細菌叢も含む。この細菌叢からの分泌物によってCVFが低pHとなり、その抗病原体活性が増強される(Blandauら、前出)。膣の細菌叢の任意の不均衡または外部の細菌叢の侵入によって、細菌性の腟疾患が生じる。細菌性の腟疾患に応答して、子宮頸部および膣の内上皮(endoepithelia)によるCVFへのいくつかのサイトカイン(例えば、IL−1α、IL−1β、IL−10、IL−6およびTNF−α)の分泌が変化する(Mattsby−Baltzer,Iら、Acta Obstet Gynecol Scand 1998,77,(7),701−6;Eschenbach,D.A.ら、J Clin Microbiol 1989,27,(2),251−6)。細菌性の腟疾患を抑制しないことは、子宮頸癌(Mikamo,Hら、J Infect Chemother 1999,5,(2),82−85)、骨盤内炎症性疾患(Ness,R.B.ら、Am J Epidemiol 2005,162,(6),585−90.)、子宮内膜炎(Haggerty,C.L.ら、Clin Infect Dis 2004,39,(7),990−5;Morris,M.ら、Bjog 2001,108,(5),439−50)および卵管不妊(Morrisら、前出)と正に相関する。妊娠中の女性における細菌性の腟疾患は、高リスクの早期陣痛および早期分娩と相関する(Gravett,M.G.ら、Jama 1986,256,(14),1899−903)。
CVF中に存在するサイトカインおよび他の防御分子もまた、膣における性感染の免疫不全ウイルス(例えば、HIV)および単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染、複製および増殖に重要な役割を果たす(Poli,G.ら、AIDS Res Hum Retroviruses 1992,8,(2),191−7;Zara,F.ら、Sex Transm Infect 2004,80,(2),108−12;John,M.ら、J Infect Dis 2005,192,(10),1731−40)。CVFのカチオン性ポリペプチド分画の解析によって、抗HIV活性に寄与する20個のポリペプチドが同定された(Venkataraman,N.ら、J Immunol 2005,175,(11),7560−7)。以前の研究によって、HIVビリオンの捕捉、それによる感染予防におけるCVFに対する役割も同定されている(Maher,D.ら、Proc Natl Acad Sci USA 2005,102,(32),11504−9;Quinones−Mateu,M.Eら、Aids 2003,17,(16),F39−48)。最近の研究から、CVF中のいくつかの免疫応答分子と早産に導く無症状の前期破水(PROM)の発生率との間に相関が検出されている(Helmig,B.R.ら、J Matern Fetal Neonatal Med 2002,12,(4),237−46;Ogino,M.ら、J Obstet Gynaecol Res 2005,31,(5),421−6)。妊娠中、CVFは、絨毛膜脱落膜界面の破損またはそれに平行した分泌に起因して、子宮由来の羊水(AF)を含み得る。このCVFへのAFの「漏出」は、女性における早期陣痛を予測するために使用されている胎児フィブロネクチンの存在に対する現在の非侵襲性診断の根拠を提供する(Swamy,G.K.ら、J Reprod Med 2005,50,(11),851−6)。
CVFは、AF、すなわち、羊水の穿刺検査と比べて最小限の侵襲性の回収方法であることから、妊娠中の女性における母体および胎児の健康をモニターするために、重要かつ有望な診断部位である。本明細書中に提供されるCVFプロテオームにおいて発現しているタンパク質の網羅的な一覧は、妊娠中または膣の病態における合併症に寄与するかまたは合併症を反映する様々なCVFタンパク質の潜在的な役割についてよりよい洞察を可能にする。
プロテオミクスプロファイルを比較するための統計学的方法は、当該分野で周知である。例えば、質量スペクトの場合、プロテオミクスプロファイルは、スペクトルの横軸に沿って、重要な質量/電荷(M/Z)の位置におけるピーク振幅値によって定義される。従って、特徴的なプロテオミクスプロファイルは、例えば、所与のM/Z値(vales)におけるスペクトル振幅の組み合わせによって形成されるパターンによって特徴付けられ得る。特徴的な発現サインの有無または2つのプロファイルの実質的な同一性は、適切なアルゴリズムを用いて、試験サンプルのプロテオミクスプロファイル(パターン)を参照サンプルまたは正常サンプルのプロテオミクスプロファイル(パターン)と対応させることによって判定され得る。プロテオームパターンを解析するための統計学的方法は、例えば、Petricoin IIIら、The Lancet 359:572−77(2002).;Issaqら、Biochem Biophys Commun 292:587−92(2002);Ballら、Bioinformatics 18:395−404(2002);およびLiら、Clinical Chemistry Journal,48:1296−1304(2002)に開示されている。
4.薬物スクリーニングアッセイ
本発明のプロテオミクスプロファイルは、特定の母体/胎児の状態を処置するための候補薬物を同定するスクリーニングアッセイにおける有用性を見出す。そのようなスクリーニングアッセイは、試験分子が、処置される母体/胎児の状態に特徴的な発現サインを含むプロテオミクスプロファイルを、その発現サインを欠いているプロテオミクスプロファイルに変換する能力に基づくものである。1つの特定の実施形態では、試験化合物が病的な発現プロファイルを正常な発現プロファイルに変換する能力を試験する。別の実施形態において、スクリーニングアッセイは、試験化合物が病的状態に特徴的な特有の発現サインを対応する正常な発現サインに変換する能力を試験する。
そのようなスクリーニングアッセイは、生物学的罹患サンプルの処理およびその処理の前後のプロテオミクス発現プロファイルの比較によって、インビトロにおいて実施され得る。あるいはまたはさらに、薬物スクリーニングは、標的の母体/胎児の病的状態を示している実験動物を試験化合物で処置し、処置の前後においてその動物の生体液のサンプルを採取し、そしてその2つのサンプルのプロテオミクスプロファイルを比較することによって実施され得る。このアッセイでは、処置後の様々な時点における生体液のサンプルを採取することもでき、処置の経過を追跡することができる。これらの方法は、医薬品の毒物学を特徴付けるため、ならびに特定の治療に対する最適な候補を同定するためにも適用され得る。
その試験化合物は、例えば、ペプチド、非ペプチド有機小分子、タンパク質、ポリペプチド、抗体(抗体フラグメントを含む)、アンチセンス分子、オリゴヌクレオチドデコイおよび以前から薬物または候補薬物として使用されている他の任意のクラスの分子であり得る。
生体液は、例えば、羊水、血清(例えば、母体の血清)、血漿、尿、脳脊髄液、母乳、粘液または唾液であり得る。
同定された治療的に活性な化合物は、従来の医薬製剤に製剤化され得る。当該分野で公知の製剤に関する概論は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,最新版,Mack Publishing Company,Easton,PAに見られる。この手引書に対する参考文献は、当該分野において通例のものである。
5.タンパク質アレイ
上で記載した診断アッセイとスクリーニングアッセイの両方が、タンパク質アレイを用いて行われ得る。近年、タンパク質アレイは、タンパク質の検出、その発現レベルのモニターならびにタンパク質の相互作用および機能の研究に対する強力なツールとして広く認識されている。タンパク質アレイは、自動化された手段を用いて多数の測定を同時に行うことができるとき、ハイスループットのタンパク質解析が可能となる。元々はDNAアレイに対して開発されたマイクロアレイまたはチップの形式において、そのような測定を、大量のデータを生成するにもかかわらず最少の材料を使用して、行うことができる。
上に記載されたような2Dゲル電気泳動および質量分析によるプロテオーム解析が非常に有効であるが、そのようなプロテオーム解析は、必要とされる感度の高さを必ずしも提供するわけではなく、少ない存在量で発現している多くのタンパク質を見逃すことがある。タンパク質マイクロアレイは、高効率に加えて、高感度を提供する。
タンパク質アレイは、当該分野で周知の種々の共有結合化学および非共有結合化学を用いて、タンパク質を固体表面(例えば、ガラス、ケイ素、マイクロウェル、ニトロセルロース、PVDF膜およびマイクロビーズ)上に固定化することによって形成される。その固体支持体は、結合手順の前後において化学的に安定でなければならないし、良好なスポット形態を可能にするし、最小の非特異的結合を示すし、検出システムにおけるバックグラウンドに寄与するべきでないし、様々な検出システムに適合可能でなければならない。
一般に、タンパク質マイクロアレイは、DNAアレイの読み出しに通常使用される方法と同じ検出方法を使用する。同様に、DNAマイクロアレイを読み出すために使用されるものと同じ器械をタンパク質アレイに適用することができる。
従って、捕捉アレイ(例えば、抗体アレイ)は、2つの異なる起源(例えば、正常生体液および罹患生体液)由来の蛍光標識されたタンパク質をプローブとして使用することができる。この場合、読み出しは、標的タンパク質の発現レベルの変化を反映するものとしての蛍光シグナルの変化に基づく。代替の読み出し方法としては、蛍光共鳴エネルギー転移、表面プラズモン共鳴、ローリングサークルDNA増幅、質量分析、共鳴光散乱および原子間力顕微鏡法が挙げられるがこれらに限定されない。
さらなる詳述として、例えば、Zhou H,ら、Trends Biotechnol.19:S34−9(2001);Zhuら、Current Opin.Chem.Biol.5:40−45−(2001);Wilson and Nock,Angew Chem Int Ed Engl 42:494−500(2003);およびSchweitzer and Kingsmore,Curr Opin Biotechnol 13:14−9(2002)を参照のこと。生体分子アレイは、2002年6月18日発行の米国特許第6,406,921号(その開示全体が本明細書によって明示的に参考として援用される)にも開示されている。
6.イムノアッセイ
本発明の診断アッセイは、当該分野で周知である様々なイムノアッセイ形式の形態で行われ得る。イムノアッセイには、ホモジニアスおよびヘテロジニアスという2つの主要なタイプがある。ホモジニアスイムノアッセイでは、抗原と抗体との免疫学的反応と検出との両方が、同種の反応において行われる。ヘテロジニアスイムノアッセイは、反応産物と未反応試薬との区別を可能にする、少なくとも1つの分離工程を包含する。
ELISAは、ヘテロジニアスイムノアッセイであり、1970年代前半から研究室業務において広く使用されている。このアッセイを使用することによって、様々な形式で抗原を検出することができる。
「サンドイッチ」形式において、アッセイされる抗原は、2つの異なる抗体の間に保持される。この方法では、まず、固体表面を固相抗体でコーティングする。次いで、測定される抗原(すなわち、診断タンパク質)を含む試験サンプルを加え、上記の結合している抗体と反応させる。任意の未結合の抗原を洗い流す。次いで、酵素で標識された既知量の抗体を、上記の結合している抗原と反応させる。その反応後に、任意の過剰の未結合の酵素結合抗体を洗い流す。次いで、そのアッセイに使用される酵素に対する基質を加えると、その基質と酵素との反応によって色の変化がもたらされる。視覚的な色の変化の量は、酵素が結合体化された、結合している特異的抗体の直接的な測定値であり、その結果として、サンプル中に存在する抗原が試験される。
ELISAは、競合アッセイとしても使用され得る。競合アッセイ形式では、測定される抗原を含む試験検体を、酵素標識された正確な量の抗原と混合し、その両方を、固体表面に接着している抗−抗原抗体に対する結合について競合させる。酵素に対する基質を加える前に、過剰な遊離酵素標識抗原を洗い流す。酵素と基質との相互作用から生じる色の強さの量は、試験されるサンプル中の抗原の量の尺度となる。
ホモジニアスイムノアッセイとしては、例えば、酵素増幅免疫測定法(EMIT)が挙げられ、これは、代表的には、測定される化合物を含む生物学的サンプル、その測定される化合物の酵素標識分子、その測定される化合物に結合する特異的抗体、および特異的酵素色素生産性基質を含む。代表的なEMITでは、過剰の特異的抗体が生物学的サンプルに加えられる。その生物学的サンプルが、検出されるべきタンパク質を含んでいる場合、そのようなタンパク質は、その抗体に結合する。次いで、一定量の対応する酵素標識タンパク質がその混合物に加えられる。サンプル中のタンパク質の分子によって占有されていない抗体の結合部位が、上記の加えられた酵素標識タンパク質の分子で占有される。結果として、遊離酵素標識タンパク質だけが基質に対して作用できるので、酵素活性は低下する。無色の形態から有色の形態に変換される基質の量は、混合物中に残存している遊離酵素の量を決定する。サンプル中の検出されるタンパク質の濃度が高いほど、読み出される吸光度が高くなる。サンプル中のタンパク質が少ないほど、酵素活性は低くなり、その結果として、読み出される吸光度が低くなる。Ag−酵素複合体がAb結合型であるときの酵素標識の不活性化が、EMITを特有システムにし、他のイムノアッセイ方法で必要であるような未結合化合物から結合化合物を分離することなく試験を行うことができる。
本発明の一部は、(a)特定の母体/胎児の状態(例えば、羊水内感染または早産)の診断において使用されるポリペプチドに対して結合特異性を有するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体;および(b)抗抗体免疫グロブリンを別個の容器で備えているイムノアッセイキットでもある。このイムノアッセイキットは、本明細書中に提供される様々な方法の実施のために利用され得る。上記モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体ならびに抗抗体免疫グロブリンは、約0.001mg〜100グラムの量、およびより好ましくは約0.01mg〜1グラムの量で提供され得る。抗抗体免疫グロブリンは、ポリクローナル免疫グロブリン、プロテインAもしくはプロテインGまたはそれらの機能的フラグメントであり得、それらは、当該分野で公知の方法によって、使用前に標識され得る。特定の母体/胎児の状態の診断において使用されるポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体は、当該分野において利用可能かつ適当な読み出しデバイスを用いた比色定量検出または荷電状態検出を利用する迅速なスポット定量化に適合され得る。
7.質量分析ベースのアッセイ
近年の質量分析の進歩(Anderson L.and Hunter C.L.,Mol Cell Proteomics,2006 Apr;5(4):573−88)のおかげで、質量選択(mass selection)によって特定のイオンをモニターして特定のタンパク質およびポリペプチドを定量化することができるようになった。これらのアッセイでは、質量選択を使用することにより、絶対的特異性がもたらされ、第1選択(MS1)では、親イオンを捕捉し、そして第2工程では、親イオンの特定のフラグメントを捕捉し(多重反応モニタリング(Multiple reaction monitoring),MRM)、検出および定量化される。特定タンパク質に対する適切な標準を用いることにより、MRMアッセイは、被検体の信頼性の高い定量化を提供し、様々な疾患特異的バイオマーカーをモニターすることができる。母体の胎児の疾患(dieases)のマーカーに対するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を使用することにより、MRMアッセイによる捕捉および解析が可能になる。
8.診断方法および処置方法
本発明の診断方法は、開業医が迅速な処置の決断をくだすための価値あるツールであり、しばしば、乳児(infact)および/または母親の生存(survivial)に極めて重要となる。従って、例えば、妊娠中の女性が早期陣痛の症状を示す場合、子宮内感染が存在するかどうかを判定するための診断検査を行うことが重要である。本明細書中の迅速かつ非侵襲性の診断検査によって、子宮内感染の存在が確認された場合、医師は、早産が必ず起きると想定しなければならないし、早産児(pre−term infact)の生存の可能性を改善し、母体の健康のリスクを制限する工程を即座に行う必要がある。
子宮内感染に対する検査が陰性である場合でも、早産が予想される疑議が残る。現在、時折、この目的で、単一マーカーである胎児フィブロネクチン(fFN)検査が使用される。妊娠中の患者のCVF中にfFNが存在しないことは、少なくともさらに2週間その妊娠が継続するという良好な指標である。しかしながら、fFNの存在(陽性検査)に基づいて、早産が起きる可能性があるかどうかを確かに予測することはできない。本発明の複数マーカーによる診断検査は、陰性および陽性の検査結果の両方の場合において、早産の可能性の信頼性の高い予測の判断材料を提供する。
あるいは、患者が、早産の症状を示し、そして診断検査(本明細書中の検査または診療において使用される他の任意の検査)を使用して早産の可能性を評価する場合、子宮内感染に対する検査は、より詳細な情報を得るための経過観察として行われ得、そのおかげで医師がより良い処置の判断をくだすことができるようになる。
本発明のさらなる詳細は、以下の非限定的な実施例から明らかになろう。
実施例1
羊水内感染の診断マーカーを測定するために羊水のプロテオーム解析において使用されるプロトコル
下記の実施例2〜13に記載される羊水のプロテオーム解析において、以下のプロトコルを使用した。
羊水内感染の霊長類モデル
このプロトコルは、Oregon National Primate Research CenterのInstitutional Animal Care Utilization Committeeによって承認されたものであり、ヒト(humane)を治療するためのガイドラインに従ったものである。妊娠期間中の3頭の妊娠中のアカゲザル(Macaca mulatta)に、以前に報告されたように(Haluska GJら、Temporal changes in uterine activity and prostaglandin response to RU 486 in rhesus macaques in late gestation,Am J Obstet Gynecol 157:1487−95(1987);およびGravett MGら、An experimental model for intramniotic infection and preterm labor in rhesus monkeys.Am J Obstet Gynecol 171:1660−7(1994))長期間カテーテルを挿入した。簡潔には、妊娠期間の約110日目(妊娠期間は167日である)に、妊娠中の動物をジャケットおよび係留システムに慣れさせた(Ducssay CAら、Simplified vest and tether system for maintenance of chronically catheterized pregnant rhesus monkeys.Lab.Anim Sci 38:343−4(1988))。慣れさせた後、妊娠期間の119〜126日目に通常の麻酔下において子宮内の手術を行った。母体の大腿動脈カテーテルおよび大腿静脈カテーテル、胎児の動脈カテーテルおよび静脈カテーテル、2本の開放型の羊水内の圧迫カテーテル、子宮筋層の電気筋運動記録用の電極ならびに胎児の心電図用の電極を外科的に挿入した。子宮の被刺激性を制御するための手術の1〜5日後に、すべての動物に硫酸テルブタリンを投与した(1日2回の3〜5時間にわたる1mgの静脈内投与)。また、動物にセファゾリンを投与し(12時間ごとの250mgの静脈内投与)、この投与を細菌接種の少なくとも48時間前に中断した。
手術後、8〜13日間(妊娠期間の126〜138日目)安定させた後、B群連鎖球菌属III型(Todd−Hewittブロス中で一晩培養して生育し、遠沈し、洗浄し、そして0.5mlの食塩水溶液に懸濁した10コロニー形成単位(cfu))(n=3頭)、ブロス中で生育した、10cfuのUreaplasma urealyticum(1頭)またはMycoplasma hominis(1頭)を羊水内に接種することによって、羊水内感染を確立した。定量的な細菌培養、血球計算板による白血球解析ならびにサイトカインおよびプロスタグランジンの濃度測定のために、研究期間中、連続的にすべての動物から羊水サンプルを回収した(接種前の毎日および接種後の4〜12時間ごと)(以前の報告−Gravett MG,ら、An experimental model for intra−amniotic infection and preterm labor in rhesus monkeys.Am J Obstet Gynecol 171:1660−7(1994))。
胎児の心電図および子宮活動(電気筋運動記録および羊水内の圧力)を、手術から分娩まで連続的に記録した。子宮の収縮を、1時間あたりの収縮曲線下面積として記録し、1時間ごとの収縮面積(HCA)(単位:ミリメートル水銀×秒/時)として表した。
感染前およびその後は連続的に、母体の子宮頸部を経膣的に触診した。各検査時において、粘度、頸管の成熟度および拡張を記録した。1頭を除くすべての動物では帝王切開術による分娩および1頭は経膣的な分娩の後、感染を確認するために脱落膜、胎盤および膜間の細菌培養物を感染動物から得て、そして病理組織学的研究を行った。
羊水アッセイ
羊水サンプル(3ml)を回収後すぐに3,000rpmおよび4℃において20分間、遠心分離した。その沈渣は、細胞解析のために保存し、上清は、発熱物質が存在しない滅菌バイアル中で、アッセイするまで−20℃において保存した。
ヒトでの研究
以前に報告されたように(Hitti J,ら、Amniotic fluid tumor necrosis factor−α and the risk of respiratory distress syndrome among preterm infants.Am J Obstet Gynecol 177:50−6(1997)、1991年6月25日から1997年6月30日に、完全な胎膜での早期陣痛でUniversity of Washington Medical CenterまたはSeattleにある関連病院に入院していた309人の女性から研究集団を選んだ。すべての女性が書面によるインフォームドコンセントを提供し、研究プロトコルは、すべての参加病院に対してInstitutional Review Boardsが承認したものであった。参加者は、最後の月経周期または最初の利用可能な超音波検査から22〜34週の在胎期間であった。すべての参加者が、研究登録時に完全な胎膜を有していた。早期陣痛を、記録された子宮頸部の変化または1センチメートルの子宮頸部の拡張もしくは50%の頸管成熟度を伴う10分間隔での規則的な子宮の収縮と定義した。入院時に4センチメートルを超える子宮頸部の拡張または膜の破裂を有していた女性は除外した。多胎妊娠、頸管縫縮術、前置胎盤、常位胎盤早期剥離、糖尿病、高血圧症および子癇前症を有する女性は、別途研究基準を満たしている場合、適格であるとみなした。
すべての研究参加者に対して超音波誘導のもとで経腹的羊水穿刺を行い、登録時に静脈穿刺によって母体の静脈血も採取した。本研究集団から、サブセット(表1AおよびB)を、本明細書中で報告するようなプロテオーム解析のために遡及的に特定した。このサブセットは、子宮内感染の証拠を有していた11人の患者(羊水から微生物の病原体が回収されたことまたは羊水のIL−6濃度が>2,000pg/mlであったことによって定義される)、および子宮内感染を有していなかったが早産であった11人の患者のランダムに選択されたサブセット、および感染しておらず、子宮収縮抑制薬治療に反応性の早期陣痛を有していて、その後満期産だった11人の患者を含んでいた。これらの患者が、この報告に対する研究集団を構成している。
この研究集団を3群に分けた:1)羊水から微生物が回収されたことまたは羊水のIL−6濃度が>2,000pg/mlであったことに基づいて子宮内感染の証拠を有していた患者;2)子宮内感染の証拠がなく、妊娠期間の35週より前の早期陣痛および早産だった患者;ならびに3)子宮収縮抑制薬治療に反応性の早期陣痛を有し、妊娠期間の35週を超えて分娩した患者。これらの3群間で母体の年齢、人種または出産歴に差はなかった(表1AおよびB)。しかしながら、子宮内感染を有していた患者は、登録時の在胎期間がいくらか早く(p=0.10)、感染していなくて早産だった患者または満期産だった患者と比べて有意に早い妊娠期間で分娩した(27.3+0.9週 対 それぞれ29.8+1.0週および37.0+0.9週,p<0.0001)。さらに、子宮内感染を有していた患者は、登録から分娩までの間隔が有意に短かった(他の2群の8.4+6.3日および46.9+5.6日に対して2.1+5.6日,p<0.0001)。子宮内感染を有していた患者の91パーセントが、登録の7日以内に分娩した。
感染を有していた11人の患者のうち、4人から微生物が回収された(2人がEscherichia coli、1人がCandida albicans、そして1人が嫌気性菌の混合を有していた);これらの患者全員が、7日以内に分娩した。他の7人の患者は、2,000pg/mlを超える羊水中のIL−6濃度に基づいて同定された。羊水中のインターロイキン−6の平均濃度は、感染なしで早産だった患者の0.68+0.20ng/mlおよび早期陣痛かつ満期産だった患者の0.25+0.13ng/mlに対して、上記患者では27.7+7.8ng/mlだった(p<0.01)。
研究集団の特徴を表1Aに示している。表1Aでは、データを平均値の標準偏差として表した。連続データについてはANOVAおよびカテゴリカルデータについてはカイ2乗によって解析した。省略形:PMD,35週未満の未熟産;IUI,子宮内感染;PML,分娩を伴わない早発性陣痛。
スクリーニング結果を表1Bに示している。
表1Aおよび1Bでは、データを平均値の標準偏差として表している。連続データについてはANOVAおよびカテゴリカルデータについてはカイ2乗によって解析した。省略形:PMD,35週未満の未熟産;IUI,子宮内感染;PML,分娩を伴わない早発性陣痛。表1Cは、スクリーニング試験の結果に対するフィッシャー検定の有意値を示している。
羊水のプロテオーム解析
1次元(1−D)ゲル電気泳動解析
ヨードアセトアミドを用いて還元した後の100μgの羊水を15%SDS−PAGEゲルにロードした。80Vで電気泳動を行い、サンプル中のタンパク質を分離した。電気泳動後、そのゲルをクマシー(Coomasie)ブルーR−250で染色し、Bio−Rad GS800デンシトメーターおよびPDQUESTソフトウェアを用いて像を収集した。個別のバンドをゲルから切り出し、脱染し、トリプシンを用いて37℃において24〜48時間、ゲル内消化した。そのペプチドを、0.1%TFAを用いて抽出し、スピードバック(speedvac)において乾燥させた。その抽出物を0.1%TFAに溶解し、Millipore製のZip Tipc18ピペットチップを用いて精製した。(Marvin L.ら、Identification of proteins from one−dimensional sodium dodecyl sulfate−polyacrylamide gel electrophoresis using electrospray quadrupole−time−of−flight tandem mass spectrometry.Rapid Commun Mass Spectrom.14(14):1287−92,2000).
2次元(2−D)ゲル電気泳動解析
アルブミン除去を行ったか、または行っていない、羊水(400〜2000μg)を、IEF緩衝液に溶解し、室温で12時間、24cmのIPGストリップ(pH3〜10)上で再水和した。再水和後、そのIPGストリップを70〜90kV時において1次元電気泳動に供した。次いで、IPGストリップを連続して15分間、DTT平衡緩衝液IおよびIAA平衡緩衝液IIで平衡化した後、2次元目のSDS−PAGE解析を行った。次いで、IPGストリップを4〜20%SDS−PAGEゲル上にロードし、120Vにおいて12時間、電気泳動を行うことにより、2次元目においてタンパク質を分離した。そのゲルをクマシーブルーR−250で染色し、Bio−Rad GS800デンシトメーターおよびPDQUESTソフトウェアを用いて画像化した。個別のスポットをゲルから切り出し、脱染し、そしてトリプシンを用いて37℃において24〜48時間、ゲル内消化した。そのペプチドを、0.1%TFAを用いて抽出し、Millipore製のZip Tipc18ピペットチップを用いて精製した(2−D Proteome analysis protocols:Methods in Molecular Biology:112,1999)。
HPLC分画
アルブミンおよびIgGを除去した後のヒト羊水サンプル(1〜15mgタンパク質)を20mM Tris−HCl,pH7.5に溶解した。オートサンプラーおよびUV吸光度検出器を備えたWaters 1525 HPLCにおいてTSKゲルDEAE−5PWカラムを用いて、陰イオン交換クロマトグラフィを行った。線形の塩溶出勾配を用いて、タンパク質を分画した。1分間隔で画分を回収した。画分をプールし、トリプシンで消化し、そして質量分析計(Q−Tof−2)を用いてペプチド混合物を解析した。
質量分析解析
(1)Q−Tof−2
ゲル内消化後のサンプルを、Micromass CapLCに接続されたMicromass Q−Tof−2質量分析計において解析した。Q−Tof−2に規格のZ−スプレー源またはナノスプレー源を装着し、そしてIntegrafrit C18 75um ID×15cm融合シリカキャピラリーカラムに接続した。Windows(登録商標) NTおよびMassLynx 3.5ソフトウェアを備えたCompaqワークステーションによって上記装置を制御し、そのワークステーションにおいてデータを取得した。Q−Tof−2は、CapLCへの直接的な注入または注射により、Glu1フィブリノペプチドBを用いて較正された。MS/MSMS調査方法を用いて、MS/MSMSスペクトルを取得した。質量400〜1500をMS調査のためにスキャンし、質量50〜1900をMSMSのためにスキャンした。Windows(登録商標) 2000ならびにSEQUEST(バージョン1.3)および/またはLUTEFISKを備えたPCにおいて主要なデータ解析を行った。ピークの取得のために、内蔵されている自動機能を使用し、そしてセントロイドフィッティング(centroid−fitting)を各ピークに適用して、ピークのリストを生成した。
(2)LCQ−MS
乾燥したクマシーブルー染色ゲルからタンパク質スポットを切り出し、30分間、0.5mlの20mM重炭酸アンモニウム、50%アセトニトリル溶液中で再水和/洗浄した。次いで、ゲル領域を真空遠心分離によって乾燥し、CourchesneおよびPattersonの方法(Identification of proteins by matrix−assisted laser desorption/ionization masses,Methods Mol.Biol.112:487−511(1999))を用いて、20nMの配列決定グレードの修飾トリプシン(ProMega,Madison,WI,USA)中において切片上で再水和することによって消化した。次いで、トリプシン消化物を真空遠心分離によって濃縮し、逆相クロマトグラフィで分離し、そしてペプチドを、あるモデルのLCQイオントラップ質量分析計(ThermoFinnigan,San Jose,CA)で解析した。Zorbax C−18 0.5mm×150mmマイクロボアカラムを用いて、10μL分−1の流速および0〜40%の勾配のB(75%アセトニトリル水溶液)を用い、1時間にわたって、1100CapillaryLC System(Agilent Technologies,Foster City,CA)を使用して、サンプルを分離した。ペプチドを標準的なThermoFinniganエレクトロスプレー源に直接導入した。標準的なLCQソフトウェアを用いて自動形式でMS/MSスペクトルを取得し、次いで、SEQUEST(ThermoFinnigan)をさらに使用して解析した。さらなる詳細については、Courchesne,P.L.およびPatterson,S.D.,前出を参照のこと。
データ解析
(1)SequestおよびDTASelect
タンデム質量スペクトル(MS/MS)の自動解析を、Yatesら、Methods Mol.Biol.112:553−69(1999)に記載されているように、SEQUESTソフトウェア(ThermoFinnigan)を用いて行った。SEQUESTは、連続したタンデム質量スペクトルをデータベースのペプチド配列とマッチさせる。Protein Information Resource(公表日時)およびSwissProt(公表日時)から得られたタンパク質配列の、組み合わされたインデックス付き非冗長データベースを使用し、デフォルトのパラメータを用いて検索を実行した。そのデータベースは、Xcalibur Database Manager(ThermoFinnigan)を用いて構築されたものである。S−カルボキシアミド化されたシステインだけを修飾とみなした。
DTASelect(The Scripps Research Institute,Tabb,2002)を用いてSequest結果をさらに解析した。DTASelectは、SEQUEST同定を系統立て、選別する。以下を除いてデフォルトのパラメータを使用した:1)タンパク質の説明中にストリング「ケラチン」を含む、データベース中のマッチした任意のものを除外、および2)二重荷電イオンに対して2.4という相互相関スコアのカットオフでLCQ質量分析計からのスペクトルを選別した。DTASelectによって選択された各スペクトルおよび提案された配列対を視覚的に調べ、最終結果を管理のためにスプレッドシート(Microsoft Excel)またはデータベース(Microsoft Access)に入力した。
さらなる詳細については:Tabb DLら、DTASelect and Contrast:Tools for Assembling and Comparing Protein Identifications from Shotgun Proteomics.J.Proteome Res.1:21−26(2002)もまた参照のこと。
(2)Lutefisk
コンピュータプログラムLutefisk 1900v1.2.5(Taylor JA,Johnson RS.Implementation and uses of automated de novo peptide sequencing by tandem mass spectrometry.Anal Chem 73(11):2594−604(2001)を用いてすべてのスペクトルの自動新規配列決定を行った。Lutefiskは、ホモロジーベースの配列検索のために十分に詳細であるいくつかのスペクトルに対してペプチド配列を生成する。修飾、アクリルアミド、カルバミドメチル化(carbamidomethylation)およびリン酸化を考慮した。
MALDI検出のプロトコルおよびパラメータ
2段階の遅延引き出し源(delayed extraction source)を備えた、注文製の飛行時間型リフレクター質量分析計(Jensen ONら、Direct observation of UV−crosslinked protein−nucleic acid complexes by matrix−assisted laser desorption ionization mass spectrometry.Rapid Commun Mass Spectrom 7(6):496−501(1993))においてMALDI質量分析を行った。約1μLのサンプル溶液を1μLのSA(60:40水/アセトニトリル0.1%TFA最終濃度中のシナピン酸(Sinapinic acid))と混合した。この被検体/マトリックス溶液の1.0μLの液滴を、マトリックスの予め結晶化されたサンプルプローブ上に沈積し、風乾させた。そのサンプルに(355nm)Nd:YAGレーザー(Spectra Physics)を照射し、700ns/1.0kV遅延で23kVにおいてイオン源を作動させることによって、質量スペクトルを生成した。20の連続したスペクトルの合計としてすべての質量スペクトルを記録し、各々を単一パルスの光子によって生成した。加えられた標準物質からのイオンを質量較正に使用した。
羊水のSELDI解析
羊水サンプルからの合計0.5〜3.0μgのタンパク質を、順相NP20(SiO表面)、逆相H4(疎水性表面:C−16(長鎖脂肪族)または固定化ニッケル(IMAC)SELDI ProteinChip(登録商標)アレイ(Ciphergen Biosystems,Inc.Fremont,CA)上にスポットした。室温で1時間インキュベートした後、NP1チップおよびH4チップを5μlの水による洗浄に供することにより、未結合タンパク質および干渉物質(すなわち、緩衝液、塩、洗浄剤)を除去した。2〜3分間風乾させた後、50%アセトニトリル(v/v)、0.5%トリフルオロ酢酸(v/v)中のシナピン酸の飽和溶液0.5μlを2回塗布し、Ciphergen Protein Biology System II(PBS II)における飛行時間型質量分析によって質量解析を行った。Issaq,J.H,ら:The SELDI−TOF MS Approach to Proteomics:Protein Profiling and Biomarker Identification.Biochem Biophys Res Commun.5:292(3):587−92,2000
実施例2
羊水において発現しているタンパク質およびポリペプチドの同定
実施例1に記載された材料および方法を用いて、正常な羊水および感染している羊水中で発現しているタンパク質およびポリペプチドを同定した。ヒトおよび霊長類の羊水サンプル(プールしたものおよび個別のもの)を、実施例1に記載されたようにタンパク質分離技術(1−D、2−DおよびHPLC分画)に供した。分離したタンパク質(ゲルバンド、スポットおよび画分)をトリプシンで消化して、ペプチドプールを調製した。そのペプチドプールを、タンデムMSを用いて解析することにより、それらのアミノ酸配列およびアミノ酸組成を解読した。
スペクトル検証プログラムを用いて、5000個のMSスペクトルを選択した。これらのスペクトルファイルを、デノボ配列決定プログラム(Lutefisk,Peaks)を用いて解析することにより、各ペプチドに対応するアミノ酸配列を生成した。ペプチドプールから生成されたデノボ配列を使用して、実施例1に記載されたようにタンパク質データベースおよびDNAデータベースを検索した。
ホモロジーマップおよび配列の検証を用いて、種々のタンパク質の発現が羊水中で見出された。検出されたタンパク質を、既知の構造上の類似性(配列相同性マップ)に基づいて潜在的な機能について解析した。多岐にわたる疾患に関与する重要な機能クラスに属しているタンパク質が見出された。ヒト羊水において初めて見出されたタンパク質およびポリペプチドを、これらの潜在的な機能カテゴリーに従って添付の表2に列挙する。
イムノアッセイによっても異なって発現していると示されたタンパク質および感染羊水中により多くまたは独特に示されたタンパク質を別々にマークした。この文脈において、相対存在量は、参照サンプルに対する、試験サンプル中のある特定のポリペプチドまたはタンパク質を代表するペプチドの量と定義する。従って、同じタンパク質から得られたより多くのペプチドが、羊水の非感染参照サンプルよりも感染羊水中に存在する場合、タンパク質は、感染羊水中により多く示される。
羊水中に存在することがこれまでに知られているタンパク質およびポリペプチドを表3に列挙しており、それらの存在は、本アッセイによって再確認された。感染に関連する事象に対する公知のマーカーであるタンパク質を別々にマークしている。
子宮内の状態に対する診断マーカー:
診断マーカーの公知の生物学的機能に鑑みて、前述の表に列挙したいくつかのタンパク質は、子宮内の状態を検出し、モニターするための有望な候補である。そのような状態のいくつかの例および対応するタンパク質マーカーを以下で詳細に説明する。
発生上の欠陥のマーカーとしてのアクチン調節タンパク質およびアクチン関連タンパク質:
表2において構造タンパク質に列挙されているモエシン(膜構成伸長スパイクタンパク質)は、アクチン細胞骨格と膜貫通タンパク質との連結に関与し、様々な細胞シグナル伝達経路と関係していることが知られている(Speck O,ら:Moesin functions antagonistically to the Rho pathway to maintain epithelial integrity.Nature 2:421(6918):83−7,2003)。アクチン改変分子(例えば、コフィリンおよびプロフィリン)(表2に構造タンパク質としても列挙されている)の活性を調節し、その結果細胞骨格の変化をもたらすRho−ファミリーGTPアーゼおよびそれらのエフェクターが成長円錐の伸長または収縮に関連することが示されている(Tang BL.Inhibitors of neuronal regeneration:mediators and signaling mechanisms.Neurochem Int,42(3):189−203,2003)。コロニン(Coronin)様タンパク質p57(表2に列挙されているさらに別の構造タンパク質)もまた、アクチンの架橋およびキャッピングに関与し(Weitzdoerfer Rら:Reduction of actin−related protein complex 2/3 in fetal Down syndrome.Biochem Biophys Res Commun.293:836,2002)、公知の発生上の欠陥において調節不全である。別のアクチン調節タンパク質であるゲルゾリン(表2にトランスポーター/結合タンパク質として列挙されているゲルゾリン前駆体を参照のこと)もまた、発生的に制御されており、器官系において重要であることが知られている(Arai M,Kwiatkowski DJ.Differential developmentally regulated expression of gelsolin family members in the mouse.Dev Dyn,215,297,1999)。14−3−3タンパク質もまた、シグナル伝達および分化経路に関与する公知の上皮マーカーであり、脳および他の重要臓器の正常な発生に不可欠である(Wu C,Muslin AJ.Role of 14−3−3 proteins in early Xenopus development.Mech Dev,119,45,2002)。
従って、ヒト羊水において初めて同定された、発生中に重要な役割を有する、列挙されたアクチン調節タンパク質および他の関連分子を使用することにより、例えば、染色体の異数体が原因であり得る、様々な器官系の発生上の欠陥(例えば、中枢神経系、心臓血管系および他の骨格筋の奇形)を検出することができる。これは、感染羊水において異なって発現すると示されていて、その異なる発現がイムノアッセイによって確認されているプロフィリン(Profiling)Iについて特にあてはまる。
感染および免疫応答に関連する障害のマーカー:
感染羊水中のマクロファージキャッピングタンパク質、白血球エラスターゼ、好中球ゼラチナーゼ(gelatenase)関連リポカリン(lipocalicn)、ミエロペルオキシダーゼ(myleoperoxidase)、L−プラスチン(リンパ球サイトゾルタンパク質)およびカルグラニュリン(表2の免疫応答関連遺伝子のリストを参照のこと)の検出は、羊水内感染におけるこれらのタンパク質の存在および制御の初めての証明である。これらのタンパク質のうちのいくつかは、感染、炎症およびストレスに応答する免疫細胞の公知のレスポンダーである。マクロファージキャッピングタンパク質(MCP)は、アクチンフィラメントを調節するCa(2+)感受性タンパク質であり、炎症性プロセスに関与する(Dabiri GA,Molecular cloning of human macrophage capping protein cDNA.A unique member of the gelsolin/villin family expressed primarily in macrophages J Biol Chem 15;267(23):16545−52,1992)。同様に、カルグラニュリンは、損傷および創傷治癒に関与することが知られているカルシウム結合タンパク質である(Thorey IS.ら、The Ca2+−binding proteins S100A8 and S100A9 are encoded by novel injury−regulated genes.J Biol Chem 21;276(38):35818−25,2001)。白血球エラスターゼおよび好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(lipocalcin)(NGAL)は、静菌性および溶菌(baceterolysis)のメカニズムに関与する(Goetz DH.ら、The neutrophil lipocalin NGAL is a bacteriostatic agent that interferes with siderophore−mediated iron acquisition.Mol Cell 10(5):1033−43,2002)。
上記の免疫調節物質に加えて、本発明者らは、2つの抗菌性タンパク質Fall−39およびアズロシジンも感染羊水において初めて見出した。抗菌性タンパク質Fall−39(LL−37)は、細菌のリポ多糖類(lps)に結合し、骨髄、精巣および好中球において発現する。Fall−39は、マスト細胞の脱顆粒を刺激し、マスト細胞に対する強力な走化性因子である。Fall−39は、その抗菌活性に加えて、マスト細胞を炎症病巣にリクルートする能力を有し得る。基本培地Eの存在下において、合成FALL−39は、Escherichia coli D21およびBacillus megaterium Bm11に対して非常に活性であった。皮膚バリアの完全性が損傷を受けたときの防御的役割がFall39に対して提唱されており、それは防御の最前線に関与し、微生物の局所的な感染および全身性の侵入を防ぐという役割である(Agerberth B,ら:FALL−39,a putative human peptide antibiotic,is cysteine−free and expressed in bone marrow and testis.Proc Natl Acad Sci USA,3:92(1):195−9,1995)。
アズロシジン(CAP37)は、ヒト好中球から単離されたカチオン性抗微生物タンパク質であり、宿主防御および炎症において重要な意味を有する。アズロシジンは、炎症中に放出され、単球/マクロファージの機能(例えば、走化性)、長い生存時間および分化を制御する(Pereira HA.CAP37,a neutrophil−derived multifunctional inflammatory mediator.J Leukoc Biol 57(6):805−12,1995)。
プロテアーゼおよびプロテアーゼインヒビターは、タンパク質の制御において重要な役割を果たし、それ故、いくつかの重要な生理学的メカニズムを支配する。本発明者らは、羊水内感染を含むヒト羊水において初めてプロテアーゼのセルピンファミリー(セルピン、扁平上皮癌抗原1および2、グリア由来ネキシン)の発現を同定した。このセリンプロテイナーゼインヒビターのセルピンスーパーファミリーは、多くの生物学的経路においてプロテイナーゼを支配する際に中心的役割を有し、コンフォメーション病(例えば、アミロイドーシス、プリオン脳症ならびにハンチントン病およびアルツハイマー病)に関与する(Lomas DA,Carrell RW,Serpinopathies and the conformational dementias.Nat Rev Genet;3:759,2002)。
さらに、羊水内感染において、本発明者らは、免疫調節に関連する周知のプロテイナーゼインヒビターであるシスタチンの発現を同定した(Vray B,Hartmann S,Hoebeke J.Immunomodulatory properties of cystatins.Cell Mol Life Sci:59(9):1503−12,2002)。
列挙されたタンパク質は、感染および/または免疫応答に関連する障害の有望なマーカーである。
マクロファージキャッピングタンパク質、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン、ミエロペルオキシダーゼ前駆体、L−プラスチン、アズロシジン、抗菌性タンパク質Fall−39、カルグラニュリンA、プロフィリンI、グリア由来ネキシン、セルピンI2およびシスタチンAを代表するペプチドが、正常な羊水よりも感染羊水において多くもしくは独特に検出されたことおよび/またはイムノアッセイにおいて異なる発現を示したことは、注目に値する。従って、これらのタンパク質は、羊水内感染および/または免疫応答に関連する障害のマーカーとして特に重要である。
ヒト羊水において検出された他の疾患(感染症)特異的タンパク質
表2に列挙されているGp−340バリアントタンパク質は、ヒトの感染羊水において検出されており、以前に肺において同定されたスカベンジャーレセプターである。このタンパク質は、細菌(連鎖球菌属および変種)に結合することが知られている。感染羊水においてこのタンパク質が検出されたことは、IAIに対する生物学的マーカーを同定するための、本発明の感度の高いプロテオミクスのアプローチを補完する。従って、感染羊水において同定されたGp−340バリアントタンパク質は、新生児敗血症の検出に適している)。
IGFBP−1(タンパク分解性フラグメント)
表2に示されるように、IGFBP−1は、感染羊水において異なって発現すると示されている。インスリン様成長因子(IGF)系は、胎児および胎盤の成長に強く関与しており、オートクライン/パラクリンメカニズムを介して子宮内膜におけるステロイドホルモンの作用を調節する。IGF−IおよびIGF−IIは、増殖および分化を刺激し、いくつかの細胞型において分化細胞の機能をインビトロにおいて維持する。子宮内膜のストローマ細胞は、IGF−IおよびIGF−IIならびに高親和性IGF結合タンパク質(IGFBP)を産生する。6つの高親和性IGFBPのmRNAは、IGF作用を調節することができ、ヒトの子宮内膜において発現する。ヒトの子宮内膜において最も多いIGFBPは、IGFBP−1であり、これは、前脱落膜化/脱落膜化された子宮内膜のストローマ細胞によって分泌期後期および妊娠中に分泌される。このことは、臨床の産科学および婦人科学に対して意味があり、ここで、子癇前症、子宮内の成長制限、多嚢胞性卵巣症候群ならびにトロホブラストおよび子宮内膜の新生物におけるIGFBP−1の病態生理学的役割に対する証拠が存在する。
ヒト羊水および母体血清におけるIGFBP−1タンパク分解性フラグメントの存在および制御によって、妊娠に関連する子宮内および母体の状態をモニターするための新しい方法が開拓される。
さらなる詳細については、下記の実施例12も参照のこと。
実施例3
子宮内感染後の霊長類の羊水のタンパク質発現プロファイル
子宮内感染後の霊長類の羊水のタンパク質発現プロファイルを、対応する正常な発現プロファイルと比較して図1A〜Cに示す。
図1A〜Cに示されているように、コントロール羊水と感染羊水とでは、タンパク質発現プロファイルが全体的に異なっている。より小さい質量範囲における羊水プロファイルの詳細なスペクトル(図1Bおよび1C)は、およそ3〜5KDaおよび10〜12KDaの範囲において、コントロールサンプルと感染サンプルのタンパク質発現プロファイル間で異なっていて、かつ特徴的な差を示している。これは、子宮内感染に応答したタンパク質発現の全体的な制御および子宮内感染の診断となる特有の発現サインの検出能力を説明している。
実施例4
霊長類の羊水における感染の診断パターン/プロファイルの早期検出
図2A〜Cは、感染(GBS)に応答した霊長類の羊水の経時的解析を示している。細菌の接種前および感染後は続けて羊水を回収し、実施例1に記載されたようにSELDI−TOF解析に供した。図2Aは、感染前のタンパク質発現プロファイルを示しており、図2Bは、感染の12時間後のタンパク質発現プロファイルを示しており、図2Cは、感染の36時間後のタンパク質発現プロファイルを示している。
図2Cに示されるように、子宮内感染の特徴的なピークの1つ(10〜11KDa)は、急性感染の36時間以内に高レベルの発現に明らかに達している。このことから、特徴的なタンパク質プロファイルは、疾患状態および処置に対する応答をモニターするために使用することができると証明される。
実施例5
子宮内感染後のヒト羊水のタンパク質発現プロファイル
図3A〜Cは、既知組成の順相チップアレイに結合した羊水抽出物のSELDI−TOF解析の結果を示している。図3Aは、235レーザー強度における全体のスペクトルを示している。図3Bは、10〜12kDa領域における感染サンプルとコントロールサンプルとの差を示している詳細なスペクトルである。図3Cは、3〜5kDa領域における感染サンプルとコントロールサンプルとの特徴的な差を示している詳細なスペクトルである。
図3A〜Cに示されるように、コントロール羊水と感染羊水とでは、タンパク質発現プロファイルが全体的に異なる。より小さい質量範囲における羊水プロファイルの詳細なスペクトル(図3BおよびC)は、コントロールサンプルと感染サンプルの間で、異なって過剰発現しているタンパク質(3〜5KDaおよび10〜12KDaの範囲)を示している。タンパク質ピークの相対強度の解析から、2つの異なる特徴的なクラスター(10〜12kDaおよび3〜5kDaの範囲)の存在が示唆される。このことから、子宮内感染に応答するタンパク質発現の全体的な制御およびヒトと霊長類モデルの両方において子宮内感染の診断となる特有の発現サインを検出する能力が説明される。
ヒト羊水の特徴的なパターンが、霊長類羊水の特徴的なパターンとうまく一致していることは注目に値する(実施例3および4)。
実施例6
様々な質量分析計を使用することによる診断プロファイルの生成
特徴的なタンパク質発現プロファイルは、様々なタイプの質量分析計を用いて検出され得る。異なる質量分析計が、同様の特徴的なプロファイルを生成するか否かを調べた。特徴的なプロファイルが、質量分析計のタイプと実質的に無関係である場合、羊水において検出された差次的なタンパク質発現は、子宮内感染に対する診断サインを提供し得る。
図4Aおよび4Bは、子宮内感染を有しないヒトコントロールからの羊水(A)および子宮内感染を有するサンプル(B)を用いて、一般的なMALDI−TOF質量分析計(Jensen ONら、Direct observation of UV−crosslinked protein−nucleic acid complexes by matrix−assisted laser desorption ionization mass spectrometry.Rapid Commun Mass Spectrom 7(6):496−501(1993))において取得された質量スペクトルを示している。
図4AおよびBに示されるように、代替の質量分析計を使用して検出された10〜12KDaの範囲における子宮内感染の特徴的なプロファイルは、SELDI−TOF装置を用いて検出されたプロファイルと類似している。このことから、差次的なタンパク質発現プロファイルがロバストであり、多岐にわたる現行の質量分析計を用いて検出され得ることが示唆される。
まとめると、羊水のタンパク質およびポリペプチドが、疾患状態の診断となる差次的な発現パターンを示すことが見出された。本明細書中に示される結果から、複数の質量分析アプローチを使用して、疾患特異的で特徴的なパターンを検出することができると証明される。そのパターンまたはタンパク質発現プロファイルは、ヒトと霊長類との間で類似している。それらのプロファイルを用いることにより、経時的な(感染または処置)効果をモニターすることができる。
実施例7
診断モニタリングおよび予後モニタリングのための羊水におけるタンパク質およびポリペプチドの発現の定量化
SDS−PAGE:
塩濃度の高いヒト羊水(AF)由来のタンパク質を、アセトンを用いて沈殿させた。100μgの羊水タンパク質を15%SDS−PAGEに供した。そのゲルをクマシーブルーR−250で染色した。Bio−Radゲルスキャナーでゲル画像をスキャンした。
図5は、A)4つのプールされたヒトコントロールAFサンプル;B)個別のコントロールAFサンプル;C)4つのプールされたヒト感染AFサンプル;およびD)個別の感染AFサンプル、のSDS−Coommassie Blue染色ゲルを示している。
図5は、10〜15KDaの範囲において、コントロールタンパク質発現レベルと感染タンパク質発現レベルとの間で有意差を示している。上記質量分析計を用いて検出されたこの質量におけるタンパク質およびタンパク分解性フラグメントのいくつかが、タンパク質発現レベルを反映している特徴的なプロファイルに関与しており、診断的および予後診断的な有用性を有すると結論付けられる。
実施例8
子宮内感染の羊水のウエスタンブロット解析
100μgのAFタンパク質を、200Vにおいて60分間、4〜20%SDS−PAGEに供し、90mMにおいて75分間、PVDF膜に転写した。その膜を5%乳PBSTで45分間、RTにおいてブロッキングし、1μg/mlの1次抗体(Santa CruzおよびDako)とともに4℃において一晩インキュベートした。TBSTで3回洗浄した後、その膜を2次抗体IgG−HRP(Sigma)とともに90分間、RTにおいてインキュベートし、そしてECL(Pierce)を用いて可視化した。
その結果を図6に示す:A)コントロールAFサンプル(プール);B)感染AFサンプル(プール)。図6は、IGFBP1(11KDa)、プロフィリンおよびセルロプラスミン(130KDa)が、非感染AFよりも感染AFにおいてのほうが高レベルで発現されていることを示している。L−プラスチンレベルは、コントロールAFサンプルよりも感染サンプルにおけるほうが低かった。これらのタンパク質は、MSアプローチ(デノボ配列決定方法)を用いてヒト感染サンプルからも同定され、上の実施例2に列挙されている。
実施例9
子宮内感染の羊水の免疫沈降解析
2マイクログラムの1次抗体を600μgのAFタンパク質と混合し、4℃において一晩インキュベートした。15μlのプロテインGセファロースビーズを加え、室温で60分間、シェーカー上でインキュベートした。そのビーズをIP緩衝液で6回洗浄した。
その結果を図7に示し、ここで、(A)は、コントロール羊水サンプル(プール)を示しており、(B)は、感染羊水サンプルを示している。図7は、セルロプラスミン(約130KDa)およびカルグラニュリン(約16KDa)が、コントロール羊水よりも感染羊水において高レベルで発現されていることを示している。
実施例10
ヒト羊水および母体血清における差次的なタンパク質発現の検出
羊水において異なって発現していたタンパク質を、母体血清において類似のタンパク質を測定するためにリードとして使用することができるか否かを調べた。これによって、診断およびモニタリングのための迅速かつ非侵襲性の検査の開発が可能になる。その結果を図8に示し、ここで、(A)は、コントロールサンプル(プール)であり、(B)は、感染サンプル(プール)である。図8は、IGFBP−1のより小さいタンパク分解性フラグメントが、子宮内感染に応答してAFと母体血清との両方において一貫して異なって発現していることを示している。
実施例11
子宮内感染の羊水のタンパク質マイクロアレイ解析
抗体:IGFBP−1(DSL);補体C3、デスミン、好中球エラスターゼ、NSE抗体(DAKO);カルグラニュリン、セルロプラスミン、TIMP−1、プラスチンおよびプロフィリン(Santa Cruz)。
抗体スポット:100μg/mlの濃度で抗体を40%グリセロール、60%PBS,pH7.5に溶解し、Arrayer(Cartesian)を用いてアルデヒドスライド上にスポットした。
室温の多湿のチャンバー内で3時間インキュベートした後、そのスライドを、室温の1%BSA(w/vを含んでいるPBS,pH7.5の溶液中において静かに撹拌しながら1時間インキュベートした。
タンパク質のビオチン化:ビオチン−NHSを50mg/lでDD水に溶解した。10μlのこの溶液を母体の血清タンパク質溶液(10mM PB,pH8.5中5mg/ml)に加え、シェーカー上で3時間インキュベートした。5μlのエタノールアミンを加えることにより、反応を停止した。ビオチン化タンパク質を200μlのTNB緩衝液に希釈し、抗体アレイに加え、4℃において一晩インキュベートした。TNT緩衝液中で3回洗浄した後、ストレプトアビジン−HRPを加え、室温で30分間インキュベートした。Cy5−チラミド(tyramide)蛍光を用いて、抗原−抗体相互作用を検出した。定量化のために、スライドをPE蛍光スキャナーにおいてスキャンした。画像解析プログラムを用いて、コントロールスライドおよび感染スライドの画像をオーバーレイすることにより、相対存在量に対する疑似カラー表示を生成した。その結果を図9に示し、これは、対応するタンパク質とその抗体との結合を示しているタンパク質アレイの疑似カラー像である。緑色は、感染サンプルを示しており、赤色は、コントロールサンプルを示している。パートIIは、感染血清サンプルにおいてカルグラニュリン発現(緑色)がより強いことを示しているアレイを拡大したものである。パートIIIは、感染羊水サンプル中で同様に発現が増大していることを示しているカルグラニュリンIPのウエスタンブロットである。
実施例12
感染羊水の特有の診断サインにおいて示されるタンパク質のさらなる解析
コントロール羊水および感染羊水のSELDI−TOFプロファイルが、10〜12KDaの質量の範囲において、明確に感染したサンプルに典型的な特有サインを示すことが証明された(図1、2および3)。1−Dゲルで分離されたコントロール羊水および感染羊水(図5)は、そのプールされた感染羊水サンプルまたは独立した感染羊水サンプルにおいてより多い、10〜12KDaの質量範囲における多くのバンドが存在することを示している。図13に示されるように、これらの1−Dゲルバンドの単離およびLCQ−MSを用いたさらなる解析によって、IGF−BR−1およびS−100カルシウム結合タンパク質に相当するペプチドが同定された。
図8に示されるように、抗IGF−BP1抗体を使用したコントロール羊水および感染羊水のウエスタンブロット解析もまた、感染羊水におけるタンパク分解性フラグメント(約11KDa)の差次的な発現を証明している。
羊水ポリペプチドの配列決定により、感染羊水におけるIGF−BP1およびカルグラニュリンの存在も同定された(表3)。
同定されたIGFBP−1の新規のタンパク分解性フラグメントの配列を図12に示す(配列番号:1)。この図において、感染羊水の1−Dゲル電気泳動、トリプシン消化ならびにMS/MS解析の後のサンプル「0426seq_HI_12」および「0425seq_HI−113」において見られるペプチド配列を小文字で示している(配列番号:2および3)。1−Dゲルにおいて検出されたIGF−BP−1のタンパク分解性フラグメント(低分子量の範囲、図5)、ウエスタンブロット(図6)および感染羊水由来のトリプシン消化された約10.5〜12KDaのバンドのMS/MS解析(図13)が、下線の配列の領域に示されている(配列番号:4)。
実際に、MS/MS解析および配列検索結果から、図13に示される質量スペクトルにおける親イオン434.89が、IGF−BP−1タンパク分解性フラグメントの図12の配列マップにも示されているIGF−BP−1配列(RSPGSPEIR)に相当することが証明された。親イオン1082.97は、S−100カルシウム結合タンパク質(すなわち、カルグラニュリンAおよびB)に相当し、また、AFのデノボ配列決定によって独立して同定される(表2および3)。
図14は、図13に示された17.55〜18.21分の保持時間のピークに対する質量スペクトルを示している。主要なピークが、質量434.9に見られることが明らかである。
図15は、図14に示された434.9ピークの親イオンに対するMS/MSスペクトルを示している。データベース検索に基づいて、その親イオンは、IGFBP−1の部分配列に対応する。
実施例13
染色体異数性に特徴的な診断的プロファイル
母体の血清スクリーニングを用いて21トリソミーをより正確に同定するために、プロテオミクスのプロファイリングの有用性を調べた。コントロール(n=6)、21トリソミー(n=6)および18トリソミー(n=4)のパネル、十分に特徴付けられた母体血清サンプル(同じ症例に対する羊水サンプルを標準的な染色体マッピング方法によって検査し、トリソミーが存在すると確認されたもの)を用いて本研究を行い、上に記載されたようなSELDI−TOF方法を用いて子宮内感染モデルについて解析した。
図10は、トリソミーを区別する特有のプロファイルを有する母体血清における、差次的なタンパク質発現パターンを示している。1マイクログラムの母体血清(タンパク質分離カラム,BioRad technologiesを用いてアルブミンおよび免疫グロブリンを除去した後のもの)を用いて、上記の方法に記載されたように既知組成の順相チップアレイに結合させた母体の血清抽出物のSELDI−TOF解析を行った。ピーク強度の差を示す235−レーザー強度で全体のスペクトルを回収した。A)コントロール血清;B)21トリソミー(ダウン症)血清;C)18トリソミー血清。詳細なスペクトルは、各症例に対して4〜15KDaの領域において特有の差を示している。矢印は、アルゴリズムを組み立てるために組み合わせて使用することによって診断スクリーニング検査を開発することができる特徴的なピークを指し示している。
実施例14
ヒト子宮頸部膣液の網羅的なプロテオーム解析において使用されるプロトコル
サンプルの回収および処理
本研究は、Oregon Health & Science UniversityにおけるIRB委員会によって承認されたものである。先を見越してすべての被験体を同定し、その被験者らは、本研究に参加するために、書面によるインフォームドコンセントを提出した。平均在胎期間(GA)18.5週+/−2.1週(標準偏差)の7人の被験体を募集した。2本の6インチの滅菌Dacron付きプラスチックアプリケーター(Solon,Skowhegan,ME)を後膣円蓋に挿入し、滅菌された腟鏡で検査しながらそれを15秒間回転させることによって、CVFサンプルを回収した。回収後、プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche Diagnostics,Alameda,CA)を含むリン酸緩衝食塩水中にタンパク質を抽出した。抽出後、サンプルを遠心することにより、任意の残骸および細胞材料を除去し、上清を−70℃で保存した。GAが対応するサンプルを組み合わせることによって、2つのプールサンプル(GA16〜18週、19〜21週)を調製した(各プールについてn=3)。各プールサンプルから合計530μgのタンパク質をアセトン沈殿し、2D−LC解析のために10mM Tris,pH8.5に溶解した。2つの個別のサンプル由来の各々100μgを1次元ゲル電気泳動(1DGE)に使用した。
多次元液体クロマトグラフィ(2D−LC)
各プールサンプルから530μgのタンパク質を乾燥させ、8M尿素、1M Tris塩基、100mMメチルアミンおよび10mM CaCl(pH8.5)を含んでいる100μlの消化緩衝液に溶解した。サンプルを還元し、まず12.5μlの0.9M DTT中で15分間、50℃においてインキュベートし、次いで、25μlの1.0Mヨードアセトアミド中、暗黒下でさらに15分間、室温においてインキュベートすることによってアルキル化した。さらに12.5μlの0.9M DTTを210μlの水および1N NaOHとともにその溶液に加えることによって、pHを8.5に調整した。サンプル(Sampels)を、37℃において一晩、40μlの1mg/mlトリプシン(Promega)液で消化した。40μlのギ酸を用いて消化を停止し、C18 SepPak Plusカートリッジを用いて脱塩した。消化物(1ml)をポリスルホエチル強陽イオン交換カラム(2.1mm ID×100mm、5μm粒径および300Åポアサイズ(The Nest Group,Southborough,MA)上に注入し、そしてUV検出器および画分回収器を備えたHPLCを用いて分画した。溶媒Aは、25%アセトニトリル(ACN)を含む10mMリン酸カリウム(pH3)であり、溶媒Bは、25%ACNを含む、10mMリン酸カリウム(pH3)、350mM KClであった。200μl/分の流速での95分間の勾配をペプチドの分画に使用した。合計80個の画分を回収し、蒸発させ、そして96ウェルVydac C18シリカスピンプレート(The Nest Group,Southborough,MA)を用いて脱塩するために100μlの0.1%TFAに再懸濁した。画分を80%ACN/0.1%ギ酸(FA)中に溶出し、蒸発させ、20μlの5%FAに再懸濁し、そして5μlの各画分を、CapLC(Waters,Milford,MA)に接続されたQ−Tof−2質量分析計において解析した。
1次元(1−D)ゲル電気泳動解析
2つの各サンプルから100μgのタンパク質をヨードアセトアミドで還元し、そしてTris−トリシン、10〜20%勾配SDS−PAGEゲルにおいて分離した。そのゲルをクマシーブルーR−250で染色した。各レーンを25個の個別のバンドに切り出し、脱染し、トリプシンを用いて37℃において24時間、ゲル内消化した。そのペプチドを重炭酸アンモニウム中に抽出し、次いで、0.22μm MultiScreenフィルタープレート(Millipore,Billerica,MA)で濾過した。濾過された溶液を乾燥させ、5%ギ酸中で再構成し、CapLCを備えたQ−Tof−2質量分析計(Waters,Inc.,Milford,MA)において解析した。
質量分析
Nanoease C18 75μm ID×15cm溶融シリカキャピラリーカラム(Waters Inc.,Milford,MA)および95分間の水/ACN勾配を用いて、2D−LC画分およびゲル消化物をさらに分離した。その質量分析計は、Glu1フィブリノペプチドBを用いて較正された。MS/MSMS測定方法を用いて、スペクトルを取得した。m/z400〜1500の質量をMS測定のためにスキャンし、m/z50〜1900の質量をMSMS測定のためにスキャンした。合計10,824個のMS/MSスペクトルを2D−LC画分から取得した。ProteinLynx Global Server v.2.1ソフトウェア(Waters Inc.,Milford,MA)を用いて、生MS/MSスペクトルを前処理した。
タンパク質およびペプチドの同定
図16AおよびBは、タンパク質およびペプチドの同定のワークフローを示している。生データから同位体除去し(de−isotoping)、セントロイドする(centroiding)ことによって、2D−LCサンプルまたは1DGEサンプルからの生MS/MSスペクトルをさらに処理した。サンプルの様々な画分からの前処理されたMS/MSスペクトルをさらなる解析のためにプールした。プールしたMS/MSスペクトルを、既知の夾雑物を含む組み合わされたタンパク質データベースならびにヒト種用に選択されたSwissProtデータベース(バージョン46.6)からのフォワードエントリーおよびリバースエントリーとマッチさせることによってサンプル中に存在するペプチドを同定した。3つの独立した検索エンジン:TurboSequest(ThermoFinnigan,Waltham,MA)、X!TandemおよびOpenSeaを用いて、ペプチド同定検索を行った。SequestおよびX!Tandemは、実験スペクトルを、タンパク質データベースの理論的な酵素消化物から生成される理論的なスペクトルとマッチさせるデータベース検索エンジンである。OpenSeaは、的確でないデノボ配列とデータベース内のタンパク質配列との間のエラートレラントなマッチを行うデノボ配列ベースの検索エンジンである。Peaksソフトウェア(Bioinformatics Solutions,Ontario,CA)を使用して、OpenSea検索エンジンにデノボ配列を提供した。サンプル処理の還元工程およびアルキル化工程によって、そのタンパク質中のすべてのシステイン残基上に一定のカルバミドメチル化(cabamidomethylation)修飾を導入する。それ故、すべてのシステイン残基に対して標準的な質量として改変されたシステイン質量(160.03Da)を使用するようにすべてのプログラムを設定した。モノアイソトピック質量(monoisotopic mass)を用いて親イオン質量およびフラグメントイオン質量を計算するために、デノボシークエンサーおよびすべての検索エンジンを設定した。親イオン質量およびフラグメントイオン質量の許容範囲にそれぞれ0.2Daおよび0.1Daを使用するように、Peaksソフトウェアを設定した。各MS/MSスペクトルについてPeaksソフトウェアによって報告された上位5つのデノボ配列候補を、エラートレラントなデータベースマッチングを行うためにOpenSeaに送った。フラグメントイオン質量の許容範囲として0.25Daを使用するようにOpenSeaを設定した。Sequest検索のために、親イオン質量許容範囲として2.0Daを用いて親イオン質量を計算した。親イオンおよびフラグメントイオンに対してそれぞれ0.5Daおよび0.25Daという質量許容範囲を使用するようにX!Tandemを設定した。Sequest検索を高速化するために、任意の不定の改変に対して検索するように設定しなかった。一方、本発明者らのこれまでの経験に基づいて、サンプル処理またはペプチド断片化メカニズムからのアーチファクトとしてMS/MSスペクトル中に存在し得る不定の改変(すなわち、メチオニンの酸化、N末端におけるピログルタミン酸の形成、N末端のカルバミル化、内部のセリン、トレオニン、アスパラギン酸およびグルタミン酸残基の脱水、ならびにグルタミンおよびアスパラギンのアミド分解中間体)について検索するようにX!TandemおよびOpenSeaを設定した。Scaffold(Version:1.3.2,Proteome Software,Portland,OR)において実行される確率的なタンパク質同定アルゴリズムを用いて、個別の検索エンジンからの同定ペプチドを同定タンパク質と組み合わせた。
少なくとも1つの特有で、高度に信頼性の高い(確率≧0.9)同定ペプチドを有する同定タンパク質は、サンプル中に存在する可能性があると考えられた。あるタンパク質が、高度に信頼できる3つの特有のペプチドヒットを用いてサンプルの少なくとも1つにおいて確信して同定される場合、そのタンパク質は、手作業で確認することなく網羅的なリストに含められることが認められた。この選別の判定基準を満たさないタンパク質は、手作業で確認された。参考文献(Wilmarth,P.A.ら、J Proteome Res 2004,3,(5),1017−23)に列挙されているすべての基準、アスパラギン酸に対してC末端の断片化の促進(Gu,C.,ら、Anal Chem 2000,72,(23),5804−13)および低質量のインモニウム(immonium)イオン(プロリン、バリン、イソロイシン、ロイシン、ヒスチジン、フェニルアラニンおよびチロシン)の存在(ペプチド配列中にこれらの残基が存在しているときは必ず)を用いて、手作業での確認を行った。
実施例15
ヒト子宮頸部膣液(CVF)の網羅的なプロテオーム解析
解析
実施例14に記載されたプロトコルに従って、2つの異なるプロテオミクス技術:2D−LCおよび1DGEを用いてヒトCVFを解析した。2つのプールサンプルをトリプシン処理し、SCX分画に供したところ、合計40個の画分が得られた。2つの個別のサンプルを、1DGEを用いて分画し、得られたバンドをゲル内トリプシン消化に供した。LC−ESI−qTOF質量分析計においてすべての画分を解析することによって、合計27,397個のMS/MSスペクトルを回収した。Sequest、X!TandemおよびOpenSeaを用いてすべてのMS/MSスペクトルを検索した。Scaffoldを用いて、すべてのプログラムからの同定ペプチドを同定タンパク質に構築した。
最も低いペプチド同定の確率閾値(0.2)を使用したとき、単一ペプチドによる同定レベルにおいて合計831個のタンパク質が同定された。同定されたタンパク質の30%が偽陽性の同定だった(リバースデータベースエントリー)。いくつかのタンパク質アイソフォームおよび他のタンパク質のサブセットであるタンパク質が本リスト中に存在した。さらに、低スコア(ペプチド同定確率<0.9)の同定ペプチドは、方法の項に列挙した手作業による確認の判定基準を満たす必要な特徴を示さなかった。タンパク質ヒットの大部分(54%)は、単一ペプチドによる同定でもあった。単一ペプチドによるタンパク質同定は、偽陽性である可能性が高く、それゆえそれらはタンパク質の定量化および病理学的機能の推測にとって不十分であるので、0.9というペプチド同定確率を最低の判定基準として定めることにより、高度に信頼できる同定ペプチドおよび同定タンパク質のみを検討した。縮重した同定タンパク質をまとめてグループ化して、1エントリーとして報告し、他のタンパク質のサブセットである任意のタンパク質を解析から排除した。
すべての実験から合計206個の特有タンパク質を、上に記載した選別を適用した後、実験MS/MSスペクトルの55%にマッピングした。そのリスト中の同定されたタンパク質の3%および15%が、それぞれ偽陽性同定および単一ペプチドによる同定である。ケラチン、トリプシンおよびウシカゼインなどの夾雑物を除去した後、合計177個のタンパク質が残った。少なくとも1回の実験において少なくとも3個の特有ペプチドヒットを有していた105個のタンパク質をさらなる手作業確認なしに認めた。方法の項に列挙した基準を用いて、残りの同定タンパク質を手作業で確認した。さらに45個のタンパク質が、手作業確認を通過した;そのうち29個が、少なくとも2個の特有ペプチドヒットを有し、16個が単一ペプチドヒットを有していた。これにより、少なくとも2個の異なるペプチドヒットを用いて同定されたタンパク質の数が134に増加し、少なくとも1つの異なるペプチドヒットを用いて同定されたタンパク質の数が150に増加した。
タンパク質同定の信頼性を確実にするために、フォワード配列の末端に付加されたデータベースのリバースエントリーを用いて構築された組み合わされたデータベースを用いてすべての検索を行った。タンパク質同定に対してすべての基準を満たしたリバースデータベースエントリーの数は、方法の項に概説したタンパク質同定基準の信頼性を反映すると考えられた。いずれのリバースエントリーもこれらの基準を満たさなかったので、そのタンパク質同定の信頼性は、100%であると推定される。
MS/MSスペクトルカウンティングは、通常、タンパク質存在量を測定するための、感度の高い半定量的な方法であると考えられている(Old,W.M.,ら、Mol Cell Proteomics.2005,4,(10),1487−502.Epub 2005 Jun 23)。しかしながら、相同タンパク質は、配列類似性が高いので、正確なMS/MSスペクトルカウントの表示に対して大きな問題を提起する。相同タンパク質のMS/MSスペクトルカウントの膨張または収縮を回避するために、最終的なレベルの選別を行うことにより、50%を超える配列相同性を共有するタンパク質ホモログのMS/MSスペクトルカウントを統合した。例えば、扁平上皮癌1抗原および2抗原は、90%を超える配列相同性を共有する。本発明者らは、両方のタンパク質がサンプル中に存在することを示唆するペプチドヒットを同定したが、それらのMS/MSスペクトルカウントを統合して、単一エントリーとして示した。この判定基準のもとで統合されたタンパク質は、IGHA1およびIGHA2、IGHG1、IGHG2およびIGHG4、SCCA1およびSCAA2ならびにSPR2A、SPR2BおよびSPR2Dであった。高い配列相同性を共有しないタンパク質に共通のペプチドのMS/MSスペクトルカウントを、サンプル中に存在する可能性が最も高い(ペプチドヒットの数がより多い)と考えられるタンパク質に対して引いた。最終的には、各タンパク質に対する統合MS/MSスペクトルは、すべての実験においてタンパク質の各MS/MSスペクトルカウントを統合することによって確立された。その統合MS/MSスペクトルカウントを、すべての実験において0.9という単一ペプチド確率閾値において非夾雑物タンパク質とマッチした総MS/MSスペクトル数(12,827)で補正した。補正されたスペクトルカウントは、厳密には定量的でないが、サンプル中に存在するタンパク質の互いに対する相対存在量を評価するために使用することができる。
少なくとも2個の特有ペプチドヒットを有し、手作業で確認された最終的な134個のタンパク質を、補正されたMS/MSスペクトルカウントの降順で添付の表4に列挙している。
ヒトCVFプロテオーム。ヒトCVFにおいて見られた少なくとも2個の同定ペプチドを有するタンパク質をそのSwissProt/TrEmblアクセッション番号および説明とともに列挙する。相同な同定タンパク質を単一エントリーとしてまとめてグループ化した。SwissProtウェブサイト上のCalPI/MWツール(Gasteiger,E.ら、Nucleic Acids Res 2003,31,(13),3784−8)を用いて、理論上のPIおよびモノアイソトピック分子量を計算した。DAVIDデータベース(Dennis,G.,Jr.ら、Genome Biol 2003,4,(5),P3)バイオインフォマティクスリソースを用いて、機能アノテーションを行った。1DGE実験と2D−LC実験の両方からの同定タンパク質の各々に対する統合スペクトルカウントを、全サンプルにおいて0.9という単一ペプチド確率閾値においてマッチした(非夾雑物タンパク質)MS/MSスペクトルの総数(12,827)で補正した。表中のタンパク質は、補正されたスペクトルカウントの降順で並べられている。AF(A)および/または血清(S)にも見られたタンパク質にしかるべくメークを付けた。
単一ペプチドヒットを有し、手作業確認を通過した16個のタンパク質を添付の表5に統合MS/MSスペクトルカウントの降順で列挙する。このように、表5において、方法の項に列挙されている手作業による確認基準を通過したヒトCVF中に見られた単一ペプチドによる同定タンパク質を、それらのSwissProt/TrEmblアクセッション番号および説明とともに列挙する。相同な同定タンパク質を単一エントリーとしてまとめてグループ化する。SwissProtウェブサイト上のCalPI/MWツールを用いて、理論上のPIおよびモノアイソトピック分子量を計算した。DAVIDデータベースバイオインフォマティクスリソースを用いて機能アノテーションを行った。この表中のタンパク質は、1DGEと2D−LCの両方の実験からの同定タンパク質の各々に対する統合スペクトルカウントの降順で並んでいる。AF(A)および/または血清(S)にも見られたタンパク質にしかるべくマークを付けた(考察の文章を参照のこと)。
表4および5に列挙しているタンパク質は、アノテーション、可視化および統合された発見(Visualization and Integrated Discovery)(DAVID)(Dennis,G.,Jr.,ら、Genome Biol 2003,4,(5),P3)に対するデータベースからの分類に基づいて機能的にアノテートされている。
本研究において見出されたCVFタンパク質は、高度に信頼できるHUPO血漿プロテオーム(Anderson,N.L.ら、Mol Cell Proteomics 2004,3,(4),311−26;States,D.J.ら、Nat Biotechnol 2006,24,(3),333−8)およびAFプロテオーム(Park,S.J.ら、Proteomics 2006,6,(1),349−63;Michel,P.E.ら、Electrophoresis 2006,27,(5−6),1169−81)と相互参照される。可能性があるものはどの部分であってもIPIデータベース加入タンパク質をSwissProt/TrEmbl加入タンパク質に変換し、ケラチンのような共通の夾雑物を除去することによって、HUPO血漿プロテオームをさらにキュレート(curated)した。異なるアイソフォームを分離し得る直接的なMS/MSスペクトルの証拠がないので、HUPO血漿プロテオームにおいて報告されたタンパク質アイソフォームを単一タンパク質エントリーにまとめた。キュレートされたHUPO血漿プロテオーム(526個のタンパク質)を、Andersonら、2004,前出に列挙されている195個のタンパク質と組み合わせることにより、非冗長の、高度に信頼できるHUPO血漿プロテオームが作製された(データ示さず)。同定CVFタンパク質を、キュレートされたHUPO血漿プロテオームおよびAFプロテオームと、それらのSwissProt/TrEmblタンパク質アノテーションに基づいて比較し、対応する表の最後の欄にしかるべくマークをつけた(A−羊水中に見られたもの、S−血清中に見られたもの)。
考察
2D−LC技術は、従来のゲルベースの電気泳動方法よりも多くの分画をもたらすことが知られている。図17は、2D−LC分画からの1SCX画分あたりの同定された特有ペプチドの数を示している。この技術による多くの分画が、RP−HPLCと組み合わされるとき、1SCX画分あたりの特有ペプチドのより多い数の同定およびそのサンプルにおける全体的に多いタンパク質同定に明らかに寄与した。
最近の研究から、MS/MSデータセット内のペプチドを同定するために、そのデータセットを複数の検索エンジンを使用することによって完全に特徴付けることができることが示された(Resing,K.A.ら、Anal Chem 2004,76,(13),3556−68)。あるデータセットにおいて、異なる検索エンジンを使用してペプチドを同定するとき、それらの検索エンジンは、対応する検索エンジンにおいてエンコードされるヒューリスティックスの相違に起因して、異なるセットのMS/MSスペクトルが同定される。従って、同じデータセットにおいて異なる検索エンジンを組み合わせた結果は、より網羅的な同定ペプチドのリストを与える。本研究において、本発明者らは、3つの異なる検索エンジン:Sequest、X!TandemおよびOpenSeaを使用して、サンプル中に存在するペプチドを同定した。この組み合わせのアプローチを用いて、本発明者らは、2D−LC実験の1つにおいて取得したMS/MSスペクトルの59%を同定することができた。3つのプログラム間のスペクトル同定の割合(対応するプログラムのスコアカットオフを超えるもの)の分解(図18A)によって、スペクトルのたった38%が3つすべてのプログラムによって同定された一方で、スペクトルの21%が、それらのプログラムのうちの1つのみによって独自に同定されたことが示される。興味深いことに、上記スペクトルの15%が、OpenSea検索エンジンによって単独で同定された。これは、OpenSeaが、フラグメントイオンおよび予想外の配列改変を見逃してスペクトルを同定するという能力に起因する。サンプルにおいて同定された候補タンパク質の総数は、検索手法の組み合わせに起因して増加した。図18Bに示されるように、合計118個の候補同定タンパク質のうち、66%が、3つすべてのプログラムによって同定された一方で、13%が、プログラムのうちの1つだけによって独自に同定された。従って、本研究において使用された、検索手法の組み合わせによって、データセットからより多くのペプチドおよび候補同定タンパク質が同定された。
妊娠期間中において、様々な体液の組成、特にCVFの組成は、経時的に変化する。2D−LC実験からの2つの生物学的な複製物(replicates)において同定されたタンパク質の重複を図19に示す。これらのタンパク質の69%が、両方の生物学的複製物において同定されたのに対し、それらのタンパク質の31%が、一方の複製物において単独で同定された。両方のサンプルはGAが2週異なるので、このことは、予想外のことではなかった。質量分析計による低存在量のタンパク質のランダムなサンプリングもまた、上述の差に寄与し得る。1DGEの技術的な複製物によって同定された65個のタンパク質のうち、69%が、両方の複製物において同定されたのに対し、31%が一方の複製物において独自に同定された。このことは、プロテオームを特徴付けるときに生物学的および技術的な複製物を有することの重要性を強調するものである。この解析に実験を加えたときの同定タンパク質の数の全体的な増加を図20にまとめる。単一の1DGE実験を用いるときの本発明者らのタンパク質同定基準によって、合計40個のタンパク質を同定した。単一の1DGEの技術的な複製物、2D−LC実験およびその対応する生物学的複製物がその解析に加えられるとき、それぞれ15、69および16個の同定タンパク質の増加が観察された。これは、種々の解析プログラム、技術的な複製物、生物学的複製物および実験方法を使用してヒトCVFのプロテオームを特徴付けた、最初の網羅的なプロテオミクス研究である。
本研究において適用された、組み合わされたプロテオミクスアプローチは、CVF中に存在するとこれまで知られていなかった多数のタンパク質を明らかにすることによって、妊娠中のCVFのプロテオミクスの組成を特徴付けた。表4および表5に、生殖領域のホメオスタシスおよび胎児の保護に関与する、CVFに存在する広範囲のタンパク質のセットを列挙している。表4に列挙されているタンパク質のトリプシンペプチドプロファイルを図21に示す。それらのタンパク質のうちの89%を超えるタンパク質が、少なくとも2個の特有の同定ペプチドを有した。このペプチドプロファイルは、CVFが、多岐にわたるトリプシンペプチド産物を有する種々のタンパク質を含むことも示している。図22は、妊娠中のCVFプロテオームの機能的分類を示している。CVF中の主要な機能的な群は、免疫および防御関連分子(例えば、カルグラニュリンAおよびB)ならびに代謝性分子(カテプシンBおよびGのようなプロテアーゼからHSP90−αのようなシャペロンに及ぶ)である。
本研究において見出された免疫応答タンパク質は、3つのカテゴリー:炎症性反応分子、抗炎症性反応分子および抗微生物分子に分類された。通常存在する免疫グロブリンのほかに、CVF中に見られる最も注目すべき炎症性反応分子は、S100ファミリーの2つのカルシウム結合タンパク質、カルグラニュリンAおよびBである。これらのタンパク質は、Ca+2イオンによって媒介されるヘテロ二量体を形成し、通常、急性期の炎症反応と慢性の炎症反応の両方に関係づけられる(Kerkhoff,C.ら、Biochim Biophys Acta 1998,1448,(2),200−11)。アルブミンと比べたときのコントロールCVFサンプル中のこれらのタンパク質の相対存在量(表4)から、膣の感染と闘う際の極めて重大な役割が示唆される。カルグラニュリンAおよびBは、羊水内感染中の羊水内においても見られ(Gravett,M.G.ら、Jama 2004,292,(4),462−9.;Ruetschi,U.ら、J Proteome Res 2005,4,(6),2236−42)、これによって早期陣痛および早産がもたらされ得ることも興味深い。抗炎症性反応分子は、妊娠中において、母体の免疫応答をダウンレギュレートするためおよび胎児の免疫拒絶を防ぐためまたは子癇前症(preeclampasia)を回避するために不可欠である(Lachapelle,M.H.ら、J Immunol 1996,156,(10),4027−34;Borzychowski,A.M.ら、Eur J Immunol 2005,35,(10),3054−63)。本発明者らがCVFにおいて検出したタンパク質のいくつか(最も明白にはインターロイキン1レセプターアンタゴニスト(IL1−ra)および熱ショックタンパク質70kDa(HSP70))は、妊娠中に発現されると免疫応答のダウンレギュレーションを助ける分子の群に属する。膣の感染によって複雑になる、妊娠中のCVFへのHSP70の分泌は、IL1−raの発現を誘導する(Genc,M.R.ら、Am J Obstet Gynecol 2005,192,(3),916−21)。おそらく、これは、感染の有害作用であるにもかかわらず免疫調節性レベルにおいて妊娠を保つためのメカニズムである。
抗微生物のタンパク質は、細菌および真菌の病原体からの膣感染の予防において重要な役割を果たす。本発明者らは、以前の報告(MasCasullo,V.ら、Viral Immunol 2005,18,(4),595−606)を確認したところ、CVF中に好中球ディフェンシン1(ディフェンシンファミリー)およびラクトトランスフェリンを検出し、これらは、抗微生物特性を有することが知られており、Neisseriae gonorrhoeaeおよびHSVのような感染から膣を保護し得る(MasCasulloら、前出)。さらに、本発明者らはまた、ヒストンファミリー由来のいくつかのタンパク質(H4、H2A、H2BおよびH1.2)も検出した。伝統的に、ヒストンは、核内のクロマチン配置に関与する細胞内のタンパク質であると考えられている。しかしながら、最近の研究では、分泌型の好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps)(NETs)がヒストンを含み(Brinkmann,V.ら、Science 2004,303,(5663),1532−5;Buchanan,J.T.ら、Curr Biol 2006,16,(4),396−400)、分泌型ヒストンは、幅広い抗微生物特性を有する(Venkataraman,N.ら、J Immunol 2005,175,(11),7560−7;Silphaduang,U.ら、Biochem Biophys Res Commun 2006,340,(2),648−55;Jacobsen,F.ら、J Antimicrob Chemother 2005,55,(5),735−41;Kim,H.S.ら、J Immunol 2002,168,(5),2356−64;Rose,F.R.ら、Infect Immun 1998,66,(7),3255−63)と示唆されている。様々な抗微生物の分子に加えて多岐にわたる炎症性応答分子および抗炎症性反応分子の検出から、CVFが、先天免疫応答の複雑な環境を有することが示唆される。
本研究において見出されたタンパク質の主要な割合(32%)が、炎症制御、タンパク質分解およびプロテアーゼ阻害のような様々な代謝活性(図22)に関連する。本発明者らが観察した炎症制御タンパク質は、熱ショックタンパク質90−アルファ(HSP90−A)、ブラジキニン(キニノーゲン1前駆体)およびカリクレイン(カリクレイン11前駆体および13前駆体)である。HSP90−Aは、炎症性ブラジキニン−カリクレイン複合体の細胞媒介性の活性化に関与すると最近報告された(Joseph,K.ら、Proc Natl Acad Sci USA 2002,99,(2),896−900)。そのような細胞性免疫は、下部雌性生殖管に感染する病原体からの防御における重要な因子であることが示されている(Pudney,J.ら、Biol Reprod 2005,73,(6),1253−63)。プロテアーゼとプロテアーゼインヒビターとの均衡は、健常な組織の維持にとって非常に重要であり、不均衡は、しばしば、重篤な子宮頸部の上皮病態に導く。本発明者らがCVFにおいて観察したいくつかのプロテアーゼおよびアンチプロテアーゼのうち、興味深い1対は、カテプシンBおよびα1抗トリプシン(A1AT)である。子宮頸癌の場合、CVF中のカテプシンBのレベルは高く、A1ATのレベルは変化しない(Bhuvarahamurthy,V.ら、Mol Cell Biochem 1995,144,(1),35−43;Makarewicz,R.ら、Neoplasma 1995,42,(1),21−4;Benitez−Bribiesca,L.ら、Arch Invest Med(Mex)1980,11,(4),523−45)。従って、子宮頸部におけるプロテアーゼの発現と抗プロテアーゼの発現との不均衡によって、侵襲性の子宮頸癌がもたらされ得る。CVFにおける上述の代謝性タンパク質の検出によって、CVFは、炎症性応答の制御から子宮頸部組織の健康状態の維持に及ぶ種々の機能を制御する酵素を含むことが示唆される。
免疫応答タンパク質および代謝性タンパク質のほかに、本発明者らは、細胞分化(11%)、輸送(9%)、細胞の組織化(8%)、酵素の制御(6%)、シグナル伝達(3%)および細胞増殖(3%)を助けるタンパク質も見出した。ある1つのタンパク質は、その環境に応じて複数の機能を有し得る。例えば、DAVID機能アノテーションツールによれば、ヒストンは、細胞の組織化に関与するタンパク質と分類される。しかしながら、先に述べたように、それらは、細胞外に分泌されると抗微生物特性も有する。このように、妊娠中のCVFに見られる他のタンパク質のほとんどの役割が、いまだ不明であり、さらなる研究を正当化する。
本研究の前までは、妊娠中のCVFに存在するタンパク質の相対存在量は、ほとんど知られていなかった。表4中のタンパク質は、補正されたスペクトルカウントの降順で並べられている。本発明者らの解析におけるIgG/IgAタンパク質の一般的な存在比は、以前の研究と十分に一致している(Mestecky,J.ら、Am J Reprod Immunol 2005,53,(5),208−14)。CVFおよび血清のタンパク質存在量プロファイルが有意に異なることは、注目すべきである。上位15個の多く存在するCVFタンパク質のうち、6個のタンパク質は、外来性であり、そして/または血清において低存在量であることが知られている(扁平上皮癌抗原、カルグラニュリンAおよびB、小型プロリンリッチタンパク質3、表皮型脂肪酸結合タンパク質ならびにムチン5B)(Anderson,N.L.et l.,Mol Cell Proteomics 2004,3,(4),311−26;Wilmarth,P.A.ら、J Proteome Res 2004,3,(5),1017−23;Qin,S.ら、Proteomics 2005,5,(12),3183−92;Katz,A.B.ら、J Invest Dermatol 1999,112,(5),818−21)。さらに、血清中で中程度の存在量であることが知られているタンパク質(補体因子C4、補体因子Hおよびアポリポタンパク質A−1)が、CVFにおいて低存在量であることが見出された(Andersonら、前出)。表4を検討することにより、CVF中の上位10個の最も多く存在するタンパク質の40%が、炎症性応答分子であることが示唆される。このことは、CVFが、病原に対処するために有効かつ攻撃的なサイトカイン反応系を有するという断定をさらに裏付ける。
AF、血清およびCVFの間で重複しているプロテオームの定量的解析を行い、表4および表5における最後の欄に、AF(A)および血清(S)でも観察されたCVFタンパク質を記載した。能動的な血清輸送および局所合成は、子宮頸部における血清タンパク質の起源であると知られている(Bard,E.ら、J Immunoassay Immunochem 2002,23,(2),145−62)。このことを確かめたところ、本発明者らは、子宮頸部において局所的に合成されるsIgA複合体を見出した(Hocini,H.ら、Scand J Immunol 1995,42,(2),269−74)。さらに、本発明者らは、血清アルブミン、アルファ−1−抗トリプシン前駆体、アポリポタンパク質A1前駆体、セロトランスフェリン、ラクトトランスフェリン、アポリポタンパク質A1前駆体、アルファ−2−HS糖タンパク質、Igγ1、2および4鎖C領域ならびにベータ−2−糖タンパク質(glycopotein)1前駆体のような、CVF中に多量に存在するいくつかの血清タンパク質(Anderson,N.L.ら、前出;States,D.Jら、前出;Bard,E.ら、前出)を検出した。本発明者らは、小型プロリンリッチタンパク質3、CD59糖タンパク質前駆体、シスタチンA、シスタチンB、コルフィニン(cornifin)A、インボルクリン、チオレドキシンのような、AFに見られるが血清に見られないいくつかのタンパク質もCVFにおいて検出したことは興味深い。絨毛膜−脱落膜の平行分泌は、CVFにおけるこれらのタンパク質の起源であり得る。3つすべての生体液に存在したタンパク質のうち、A1ATおよびセルロプラスミン(銅トランスポーター)は、診断上の重要性を有することが知られている。母体の膣分泌物および血清中のセルロプラスミンの存在量は、前期破水(PROM)の発生頻度と逆に相関し(Ogino,M.ら、J Obstet Gynaecol Res 2005,31,(5),421−6;Kiilholma,P.ら、Gynecol Obstet Invest 1984,17,(4),194−201)、血清中のA1ATの高発現は、子宮頸癌と相関する(Benitez−Bribiesca,L.;ら、Arch Invest Med(Mex)1980,11,(4),523−45)。このことから、CVFまたは血清のような容易に入手可能な体液の連続的な評価が、母体および胎児の健康状態の診断に使用することができたことが示唆される。
まとめると、本発明者らは、複数の生物学的複製物を用い、組み合わせたプロテオミクスアプローチを使用し、そして本研究において、タンパク質分画およびペプチド分画に対する複数の実験手法ならびにデータマイニングのための複数の検索エンジンを使用することにより、CVFプロテオームを特徴付けた。この複合的なアプローチによって、CVFに存在することが以前に知られていなかった大きなタンパク質セットが同定された。CVFプロテオームの機能的な分類により、病原体と闘い、胎児を保護する際に極めて重要な役割を果たす多岐にわたるサイトカイン反応タンパク質の存在が示唆された。血清、AFおよびCVFの間で重複しているプロテオームの定量的解析によって、妊娠中のCVFに存在するいくつかの血清タンパク質およびAFタンパク質が同定された。それらのタンパク質のいくつかの差次的発現は、すでにPROMおよび子宮頸癌と関係づけられている。しかしながら、妊娠中のCVFにおいて見出された新規タンパク質の大部分の正確な役割は、いまだ不明であり、さらに詳細な研究が必要である。大規模ハイスループットプロテオミクス技術は、妊娠中のCVFプロテオームのさらなる理解ならびに母体および胎児の健康状態をモニターするための有望な診断ツールとしての開発に不可欠である。
実施例16
多次元タンパク質同定技術(MudPIT)を用いた非ヒト霊長類実験的IAIモデルにおけるCVFプロテオームのグローバル解析のためのプロトコル
非ヒト霊長類における実験的IAI
このプロトコルは、Oregon Health & Science UniversityのInstitutional Animal Care and Utilization Committeeによって承認されたものである。妊娠期間中の4頭の妊娠中のアカゲザル(Macaca mulatta)に、以前に報告されたように(Gravett,M.G.ら、Am J Obstet Gynecol 1994,171,(6),1660−7)妊娠期間の120日目に(妊娠期間は167日である)長期間カテーテルを挿入した。10B培養液において生育された10コロニー形成単位の臨床的な低継代数の(low−passage)Ureaplamsa parvum血清型1を羊水内に接種することによって実験的IAIを確立した(Novy MJら、Experimental primate model for Ureaplasma chorioamnionitis and preterm labor.Society for Gynecologic Investigation,2001,Toronto,Canada,March 14−17,2001)。各動物をそれ自身のコントロールとして用いた。接種の前後において、AFサンプルおよびCVFサンプルを、以前に報告されたように(Gravettら、前出,Novyら、前出)定量的な細菌培養、白血球解析ならびにサイトカインおよびプロスタグランジンの濃度のためそしてプロテオーム解析のために連続的に回収した。滅菌Dacronスワブ(Solon,カタログ#36816)を用いて後膣円蓋からCVFを回収し、次いでそれを、プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche Diagnositics,カタログ#11836)を含んでいるリン酸緩衝食塩水中に入れた。タンパク質を抽出した後、サンプルを遠心することによって細胞の残骸を除去し、アッセイするまで上清を−70℃で保存した。これらのアッセイのために、感染前および感染の24〜72時間後に得られたサンプルからプールされたCVFサンプルを利用した。子宮の収縮を、羊水圧曲線下面積として記録し、1時間ごとの収縮面積(HCA;mmHg×秒/per)として表した。感染動物からの帝王切開による分娩後に、胎児、脱落膜、胎盤および細菌培養物を得て、感染を確認し、病理組織学的研究を行うことにより、組織学的絨毛羊膜炎を確認した。
CVFおよびAFのMALDI−TOF−MSプロファイリング
CVFおよびAFから合計0.5〜3.0μgの未分画タンパク質を、パルスイオン抽出源(pulsed−ion extraction source)を備えたMALDI−TOF−TOF質量分析計(AutoFLEX II TOF/TOF,Bruker Daltonics,Billerica,MA)において解析した。簡潔には、1μlのサンプルを4μlの50%アセトニトリル(ACN)/0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)および5μlのマトリックス溶液(50%ACN/0.5%TFA中の飽和シナピン酸)で希釈した。サンプルを四つ組で382ウェルのグラウンドスチールScoutターゲット(Bruker Daltonics,Billerica,MA)上にスポットした(2μl)。+20kVで電圧を上げながら線形モードにおいてAutoflexを用いた。パルスイオン電圧降下(pulsed−ion extraction drop voltage)は、350nsの遅れ時間で1500Vとした。最大イオンゲーティング設定(maximum ion gating setting)を用いて、マトリックスイオンを最大3000Daに抑えた。サンプリングレートは、2.0GHzであり、各プロファイルスペクトルは、10個の異なる位置において当てられた500レーザーショットの合計を表す。50Hzで作動する窒素レーザー(λ=337nm)を用いてサンプルに照射した。レーザーの出力エネルギーは、62%のオフセットおよび36%の範囲で減衰する約110μJであった。30%のレーザー出力においてサンプルに照射し、20%のレーザー出力において標準物質に照射した。一定のレーザー出力において、m/zが3000〜20000のスペクトルを手作業で回収した。以下:インスリン(m/z 5734.6)、ユビキチン(m/z 8565.9)、シトクロムc(m/z 12361.9)およびミオグロビン(m/z 16952.6)を含んでいるタンパク質較正標準物質I混合物(Bruker Daltonics,Billerica,MA)を用いた外部の較正によってスペクトルを較正し、そしてClinProtソフトウェアバージョン2.0(Bruker Daltonics,Billerica,MA)を用いて解析した。
LC−MS/MS解析に組み合わされた1次元PAGE
コントロールサンプルおよび感染サンプルから100μgのCVFタンパク質を、ヨードアセトアミドを用いて還元し、そしてTris−トリシン、10〜20%勾配SDS−PAGEゲルにおいて分離した。そのゲルをクマシーブルーR−250で染色し、各レーンからの異なるバンドをゲルから切り出し、脱染し、CourchesneおよびPattersonの方法(Courchesne,P.L.ら、Methods Mol Biol 1999,112,487−511)を用いて37℃において24時間、トリプシンでゲル内消化した。次いで、0.1%TFAを用いてペプチドを抽出し、Millipore製のZip−Tip c18ピペットチップを用いて精製した。ゲル内消化後、CapLC(Waters,Inc.,Milford,MA)に連結されたQ−Tof−2質量分析計(Micromass UK Ltd,United kingdom)においてサンプルを解析した。400〜1500Daの質量をMS測定のためにスキャンし、50〜1900Daの質量をMS/MSのためにスキャンした。MudPIT解析において、以下に記載されるように、タンパク質同定のためにデータ解析を行った。
MudPITタンパク質同定およびスペクトルカウンティング
CVFのMudPIT解析のために、4つのコントロールサンプルおよび感染サンプルの各々から100μgをプールすることによって、各条件から0.4mgのサンプルを調製した。タンパク質を、8M尿素、1M Tris塩基、80mMメチルアミンおよび8mM CaCl(pH8.5)を含んでいる100μlの消化緩衝液に溶解した。システイン残基の還元およびアルキル化のために、まず、サンプルを12.5μlの0.9M DTT中で50℃において15分間インキュベートし、次いで、25μlの1.0Mヨードアセトアミド中、暗黒下でさらに15分間、室温においてインキュベートした。さらなる12.5μlの0.9M DTTを210μlの水および1N NaOHとともに加えることによって、その溶液をpH8.5に調整した後、40μlの質量分析グレードのトリプシン(1μg/μl;Promega,Madison WI)を加えた。次いで、サンプルを完全に混合し、37℃で一晩インキュベートした。40μlのギ酸を加えることによって消化を停止した。MudPIT解析の前に、C18 Sep−Pakカートリッジ(Waters,Inc.,Milford,MA)を用いて消化物を脱塩した。
脱塩した消化物(1ml)をポリスルホエチル強陽イオン交換カラム(2.1mm ID×100mm、5μm粒子および300μポアサイズ(Nest Group,Southborough,MA)上に注入し、UV検出器および画分回収器を備えたHPLCを用いて分画した。溶媒Aは、25%アセトニトリル(ACN)を含む5.6mMリン酸カリウム(pH3)であり、溶媒Bは、25%ACNを含む、5.6mMリン酸カリウム(pH3)および350mM KClであった。200μl/分の流速での95分間の勾配をペプチドの分画に使用した:10分間の100%A、45分間にわたって50%Bに勾配、15分間にわたって100%Bに勾配、そして0.1分間で100%Aに戻る勾配、100%Aで20分間保持。合計80個の画分を回収し、−20℃で保存した。96ウェルスピンカラム(Vydac C18シリカ:Nest Group,Southborough,MA)を用いて脱塩するために、それらの画分を蒸発させ、100μlの0.1%TFAに再懸濁した。80%ACN/0.1%ギ酸(FA)中に溶出した後、画分を43個の画分に統合し、蒸発させ、25μlの5%FAに再懸濁した。
CapLC(Waters Inc.,Milford,MA)に接続されたQ−Tof−2質量分析計においてSCX画分(各5μl)を解析した。そのQ−Tof−2は、ナノスプレー源を備えていた。Nanoease C18 75μm ID×15cm溶融シリカキャピラリーカラム(Waters Inc.,Milford,MA)および95分間の水/ACN勾配を用いて、各SCX画分を分離した。上記質量分析計は、Glu1フィブリノペプチドBを用いて較正された。MS/MSMS測定方法を用いて、スペクトルを取得した。m/zが400〜1500の質量をMS測定のためにスキャンし、m/zが50〜1900の質量をMSMSのためにスキャンした。ProteinLynx Global Server v.2.1ソフトウェア(Waters Inc.,Milford,MA)を用いてMS/MSスペクトルを処理した。
コントロールサンプルからは合計3,120個のMS/MSスペクトルおよびIAIサンプルからは2,800個のMS/MSスペクトルを、公知の夾雑物ならびにSwiss−Protヒトデータベース(バージョン46.6)のフォワードエントリーおよびリバースエントリーを含む組み合わされたデータベースに対して、3つの独立した検索エンジン:OpenSea、TurboSequest(ThermoFinnigan,Waltham,MA)およびX!Tandemを用いて検索した。PEAKSソフトウェア(Bioinformatics Solutions,Ontario,CA)を用いてOpenSea検索エンジン用のデノボ配列を生成した。個別の検索エンジンの結果からの同定タンパク質を、Scaffoldソフトウェア(Proteome Software,Portland,OR)において実行される確率的タンパク質同定アルゴリズムを用いて統合した。コントロールサンプルからのスペクトルの52%およびIAIサンプルからのスペクトルの50%が、少なくとも1つの信頼できる同定ペプチド(確率≧0.8)を有するタンパク質に割り当てられた。少なくとも2個の独立した同定ペプチドを有する同定タンパク質(確率≧0.8)を、サンプル中に存在する可能性があるとみなした。
ポリクローナル抗体およびウエスタン免疫ブロット法
免疫原性のペプチドおよび/または組換えタンパク質を使用して、ウサギおよびヤギのポリクローナル抗体を作製した(DSL Laboratories,Webster,TX)。次いで、アフィニティ精製した抗体をウエスタンブロットに使用した。100μgのCVFタンパク質を4〜20%SDS−PAGEにおいて分離し、PVDF膜に転写した。その膜を、PBST中の5%無脂肪乳で45分間、室温においてブロッキングし、1μg/mlの1次抗体(IGFBP−1、アズロシジン、カルグラニュリン−A、カルグラニュリン−B、アネキシンII、リポカリン、プロフィリン)とともに4℃において一晩インキュベートした。TBSTで3回洗浄した後、その膜をIgG−HRP2次抗体(Sigma−Aldrich Co.)とともにインキュベートし、高感度化学発光(Pierce)で可視化した。
統計解析
スペクトルカウンティングを用いて、コントロールMudPITサンプルと感染MudPITサンプルとの間で異なって発現しているタンパク質を測定した。スペクトルカウンティングを用いたタンパク質定量化のために、2個よりも多い信頼できる同定ペプチドを有するすべてのタンパク質を検討した。同種のタンパク質(例えば、免疫グロブリン、α−1−酸−糖タンパク質1および2ならびに妊娠特異的糖タンパク質)に対するスペクトルカウントを単一エントリーにまとめることによって、同定されたタンパク質リストをさらにキュレートした。似ていないタンパク質間の同一のペプチドのスペクトルカウントを、タンパク質間において等比で分割した。両方のサンプルに対するキュレートされたタンパク質リストをマージし、サンプル間における各タンパク質に対するスペクトルカウントにおける独立性2×2χ検定を用いて、それらの間で異なって存在するタンパク質を見出した。異なって多く存在するタンパク質の偽陽性率を低下させるために、p値<0.1を有し、かつ、サンプルの少なくとも1つにおいて少なくとも4個のMS/MSスペクトルにマッチする(確率>0.8)少なくとも2個の独立したペプチドを有するタンパク質だけを統計学的に有意であるとみなした。スペクトルカウント比を計算するために公開されている式(Old,W.M.ら、Mol Cell Proteomics 2005,4,(10),1487−502)を用いて、上記の基準を満たすタンパク質が何倍変化したかを判定した。
実施例17
多次元タンパク質同定技術(MudPIT)を用いた非ヒト霊長類実験IAIモデルにおけるCVFプロテオームのグローバル解析
実施例16に記載されたプロトコルを用いて、以下の結果を得た。
結果
Ureaplasma parvum感染後の実験的IAI
羊水内の接種後に、すべての動物において速やかに感染を確立した。Ureaplasma parvum接種の平均54時間後(34〜72時間後の範囲)に、基礎レベルの100HCAから3,000〜6,000HCAを超えるレベルまでの子宮の収縮性の増強が生じ、ビショップスコアによって測定される進行性の子宮頸部の変化がもたらされた。以前に報告されているように(Gravett,M.G.,ら、Am J Obstet Gynecol 1994,171,(6),1660−7;Novy MJ,ら:Experimental primate model for Ureaplasma chorioamnionitis and preterm labor. Society for Gynecologic Investigation. 2001,Toronto,Canada,March 14−17,2001)、子宮の収縮性の増強の前に、炎症性サイトカインのTNF−α、IL−1β、IL−6およびIL−8ならびにプロスタグランジンEおよびF2αが有意に上昇した。子宮の収縮性の最初の増強の時点で、IAIの他の臨床的徴候を有する動物はいなかった。分娩後、病理組織学的検査により、すべての症例において絨毛羊膜炎が確認された。
多次元タンパク質同定技術(MudPIT)を用いた非ヒト霊長類実験的IAIモデルにおけるCVFプロテオームのグローバル解析
質量分析ベースのペプチド同定および定量化の方法の信頼性が高まったことによって、MS/MSと組み合わされた、大規模かつ様々な多次元的ペプチド分離の開発が開始された。そのような「ショットガン」ペプチドシークエンスの試みによって、信頼性の高いタンパク質同定、ならびに平行して解析されるサンプルセットを比較するための相対的定量的情報がもたらされる。
MudPITおよびゲルベースの分画(LC−タンデム質量分析に組み合わされる1D PAGE)解析を用いて、CVFにおいて合計205個の特有タンパク質(表6)を同定した。GeneOntologyターム(DAVID V2.1)を用いたCVFプロテオームの機能アノテーション(図23A)によって、それらの大部分が代謝(25%)および免疫応答(23%)に関連することが示された。CVFから同定されたタンパク質の予測される細胞内位置の解析(図23B)によって、アノテーションされたタンパク質が、細胞質(24%)、分泌型(18%)、細胞骨格系(14%)および核(14%)のカテゴリー由来であることが示された。同定されたタンパク質のうちの13%の細胞内の位置に関する情報は入手できなかった。
感染の環境における差次的なタンパク質レベルを解析するために、実験的IAIの前後に得られたCVFサンプルをトリプシンで消化し、MudPIT解析に供した。MudPIT解析から得られたMS/MSスペクトルによって、コントロールサンプルおよび感染サンプルにおいて、それぞれ149個および151個のタンパク質の信頼性の高い同定(2以上のペプチド/タンパク質)がもたらされた。偽陽性タンパク質を同定する比率を下げるために、3つの独立した検索エンジンを用いて、公知の夾雑物(すなわち、トリプシン、ケラチンおよび血清アルブミン)ならびにSwiss−Protヒトおよび霊長類データベースからのフォワードとリバースの両方のペプチド配列エントリーを含んでいるデータベースに対して、MS/MSスペクトルを検索した。確率に基づくアルゴリズムであるScaffold(Proteome Software Inc.,Portland,OR)を用いて、3つの検索エンジンからの結果を結合した。複数の検索アルゴリズムを使用すると、偶然生じるペプチド同定が減少することによって、報告される同定の信頼性が上がる。上で報告された同定タンパク質数は、2つ以上の特有ペプチド同定を有した。
コントロールサンプルとIAIサンプルとを定量的に比較するために、スペクトルカウンティング方法を実行した。スペクトルカウンティングでは、複雑なディファレンシャルラベリング実験(Zybailov 2005)に頼ることなく2つのサンプルプール間の存在量の差を迅速に検出することができる。コントロールおよびIAIからのキュレートされたタンパク質リストをコンパイルし、各タンパク質のスペクトルカウントに対する独立なχ検定を行った。計算されたχ値が2.706を超えていた(90%信頼区間)タンパク質を表7に報告する。
その表には、コントロールサンプルおよびIAIサンプルに対して所与のタンパク質にマッチするスペクトルカウントおよびMS/MSペプチドスペクトルの数が含まれている。重要なタンパク質の各々についてコントロールとIAIとの間で何倍の変化があったかも計算した。スペクトルカウンティングによってコントロールとIAIとの間で異なって存在していることが見出された27個のタンパク質のうち、19個のタンパク質が、99%信頼区間におけるχ値を有しており、8個のタンパク質が、95%信頼区間におけるχ値を有していた。タンパク質分離(1D PAGE LC−MS/MS)を用いて行われた定量的なプロテオミクス研究と比べて、スペクトルカウンティングによって見出された15個のタンパク質が、1−Dゲルベース実験において見られた差次的なトレンドと対応した。有望な低存在量血清タンパク質マーカーの同定は、MudPIT解析の利益の1つである。多次元的なフロントエンドのペプチド分離(SCXおよびRP−LC)によって、ゲルベースプロテオーム解析ならびにMALDIプロファイリング技術よりも広いダイナミックレンジな濃度の照合が可能になる。
表7にまとめた、IAIを検出するための、CVF中の有望な生物学的マーカーは、主に免疫調節タンパク質であった。これらのうちのいくつか(カルグラニュリンAおよびB、アズロシジンならびにIGFBP−1を含む)は、IAI AF中で異なって存在し、IAI CVFにおいてアップレギュレートされることも見出された。総IGFBP−1の差次的な存在量(表7)は、図24A〜Dにおけるウエスタンブロットによって同定された完全な30kDaタンパク質とタンパク分解性フラグメントの両方を反映した。しかしながら、IAIの環境において存在するIGFBP−1の大部分は、タンパク分解性フラグメントを含んでいた(図24)。羊水内または下部生殖管の感染に対するマーカーとして以前に同定されたディフェンシンは、3〜5kDaのピークにおいても同定された。しかしながら、コントロールおよびIAI CVF中のそれらの差次的な存在は、スペクトル解析によって統計的有意性に達しなかった。興味深いことに、免疫調節性ペプチドのうちのいくつかの基礎レベルは、正常な無菌の羊膜腔よりも、微生物が多い下部生殖管におけるより慢性的な炎症性環境と一致して、AFよりもCVFにおいて高かった。
MALDI−TOF MSによるIAIタンパク質プロファイルの同定
CVFおよびAFタンパク質抽出物のMALDI−TOF MS解析により、3〜5kDaおよび11〜12kDa領域において、感染霊長類と非感染霊長類およびヒトCVFとヒトAFとの間においていくつかのピーク強度の差が明らかになり(図24A〜D)、それは、SELDI−TOFによって得られた、AFにおける以前に報告されていたタンパク質サイン(Gravett,M.G.ら、Jama 2004,292,(4),462−9)と類似していた。
10.8kDaのクラスターは、すべての症例の感染CVFおよび感染羊水において一貫してアップレギュレートされていた。興味深いことに、このピークの相対強度は、感染後のAFサンプル間よりもCVFサンプル間のほうが高く、これは、下部生殖管環境の基礎的状態が炎症促進性であるという仮説と一致する。IAIに応答しての3〜5kDaのクラスターの高発現は、CVFよりもAFにおいてよりロバストである。質量が3432Daおよび4128Daのタンパク質は、一般に、IAIの存在下においてAFおよびCVFにおいて過剰発現していた。これらの質量は、先に報告されているように(Buhimschi,I.A.;ら、Bjog 2005,112,(2),173−81)ディフェンシンであり得る。Ureaplasma parvum感染後の長期的なサンプリングによって、10.8kDaのクラスターの強度が接種の24時間後に増加し、CVFサンプルとAFサンプルの両方において感染動物のHCAの増加が先行したことが明らかになった(データ示さず)。
IAI生物学的マーカーの免疫検出
IAIにおいて同定されたタンパク質の差次的な発現を確認するために、本発明者らは、MudPIT解析から同定されたマーカーのうち5つを選択した。カルグラニュリンAおよびB、IGFBP−1、アズロシジン、リポカリン、アネキシンIIならびに未制御(unregulated)タンパク質(ハプトグロビン)に対する抗体を作製することにより、有望なIAI生物学的マーカーの差次的な存在量を確かめた。図25に示されるように、ウエスタンブロット解析によって、これらの生物学的マーカーのすべての差次的な存在が確認され、これは、IAI CVFに対して行われたタンパク質同定実験と一致する差次的なレベルを表した。
考察
無症状のIAIが、極度の早産の少なくとも50%において存在し、その場合、新生児の罹患率および死亡率が、異常に高い(Goldenberg,R.L.ら、N Engl J Med 2000,342,(20),1500−7)。IAIの徴候および症状が感染に遅れて顕在化するという事実によって、IAIの早期の臨床診断は困難になる。さらに、利用可能な非侵襲性の診断検査(例えば、母体の白血球数またはC反応性タンパク質)は、予測値に限界がある。AFのグルコース、白血球、インターロイキン−6の測定またはグラム染色をはじめとした他の検査は羊水穿刺を必要とし、さらに、AF培養の場合では、その結果が、臨床的に最適な時間枠を超えて遅れる。
雌において観察される経過に平行するIAIと早産との因果関係は、非ヒト霊長類実験的モデルにおいて証明されている(Gravett,M.G.ら、Am J Obstet Gynecol 1994,171,(6),1660−7)。前の実施例に記載した研究において、本発明者らは、実験的IAIを有するアカゲザル由来ならびに無症状のIAIおよび早産を有する女性由来のAFにおけるタンパク質プロファイルを特徴付けるために、SELDI−TOF質量分析を利用した(Gravett,M.G.ら、Jama 2004,292,(4),462−9もまた参照のこと)。本発明者らは、感染後のすべてのAFサンプルでは3〜5kDaおよび10.8kDaの分子量範囲において高レベルのペプチドを有し、感染前に得られたAFではそのようなペプチドを有しなかった特有のSELDI−TOFプロファイルを同定した。同様に、この特有のタンパク質プロファイルが、IAIおよび早産を有するすべての女性において観察され、感染しておらず早期陣痛を有していてその後満期産だった女性では観察されなかった。これらの質量の範囲内のタンデム質量分析によって同定されたタンパク質には、カルグラニュリンAおよびBならびにIGFBP−1の特有のタンパク分解性フラグメントが含まれていた。これらの知見は最近確かめられ、IAIの他のタンパク質生物学的マーカーが、Buhimschiら、Bjog 2005,112,(2),173−81によって同定された。
本研究において、本発明者らは、初めてCVFのプロテオームを特徴づけ、そして、以前に報告されたもの(Gravett,M.G.ら、Am J Obstet Gynecol 1994,171,(6),1660−7;Novy MJ,ら、:Experimental primate model for Ureaplasma chorioamnionitis and preterm labor. Society for Gynecologic Investigation.2001,Toronto,Canada,March 14−17,2001;Gravett,M.G.ら、Jama 2004,292,(4),462−9)と同じ実験的モデルを利用して、実験的IAIを有するアカゲザル由来のCVF中のタンパク質プロファイルを特徴づけ、そしてAFのものと比較しようとした。これは、MALDI−TOF質量分析および多次元タンパク質同定技術(MudPIT)を利用してCVFのタンパク質プロファイルを特徴付け、そしてより到達可能な母体のサンプリング部位からサンプルを連続的に非侵襲性で回収できる部位に存在するIAIに対する新規生物学的マーカーを同定した初めての報告である。これにより、IAIの病因において子宮内感染をさかのぼってリスクの予測または診断が可能になり得、また、母体の血清および胎児のAFサンプリングと比較することによって、IAIの病原論に新たな知見がもたらされ得る。本発明者らは、実験的IAIがUreaplasma parvumを羊水内接種することによって引き起こされる十分に確立された非ヒト霊長類モデルを利用した。本発明者らは、組織学的絨毛羊膜炎を有する女性の胎盤から(Hillier,S.L.ら、N Engl J Med 1988,319,(15),972−8)、または完全な胎膜での早期陣痛の女性のAFから最もよく単離される微生物が、Ureaplasma種(U.urealyticumおよびU.parvum)であるので、この病原体を選択した。Ureaplasma種は、分娩後の子宮内膜筋層炎、新生児敗血症、髄膜炎および新生児の気管支肺異形成症にも関係づけられている(Chaim,W.ら、Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol 2003,109,(2),145−8;Viscardi,R.M.ら、Pediatr Dev Pathol 2002,5,(2),141−50;Yoon,B.H.ら、Am J Obstet Gynecol 2000,183,(5),1130−7)。
本発明者らは、本研究において2つの非常に異なるプロテオミクスのアプローチを利用した:異なる発現プロファイルを生成し、詳細なタンパク質同定とともに迅速なスクリーニングアッセイの開発にかなう、迅速なタンパク質フィンガープリンティングアプローチ(MALDI−TOF MS)、および従来のイムノアッセイによる同定に適した生物学的マーカーを同定する定量化アプローチ(LC−LC−MS/MS,MudPIT)。MALDI−TOF−MSベースのプロファイリング手法は、そのロバストネス、使用しやすさおよびハイスループット性に対して標的化されている。現在までのプロファイリング研究の大部分は、MALDI−TOF−MSと組み合わされたクロマトグラフィ技術を用いた血清分画を含むMALDI−MSタンパク質プロファイリング方法を用いて疾患状態を評価するものであった。本研究からのMSタンパク質プロファイルは、正常サンプルと撹乱されているサンプルとを区別することができる特有の質量を同定し得るが、使用した方法は、MALDI−MSタンパク質m/z値だけに基づいて、見出されたタンパク質分類子を同定することができないし、確認することもできない。
差次的なタンパク質発現パターンを検出するために通常使用される2次元ゲル電気泳動(2−DE)(Tsangaris,G.;ら、Electrophoresis 2005,26,(6),1168−73;Pieper,R.ら、Proteomics 2003,3,(7),1345−64)は、低存在量タンパク質を検出する能力は限定的で、高存在量タンパク質の検出に偏っている(Gorg,A.,ら、Proteomics 2004,4,(12),3665−85)。MS/MSと組み合わされた多次元的LCアプローチの進歩(Multi−dimensional Protein Identification Technology,MudPIT)によって、複雑な混合物のトリプシン消化物からの全体的なタンパク質発現の変化を研究するための、より良好なサンプルの濃縮、分離および詳細なペプチド範囲を可能にした(Washburn,M.P.ら、Nat Biotechnol 2001,19,(3),242−7.;Schirmer,E.C.ら、Science 2003,301,(5638),1380−2.;Le Roch,K.G.ら、Genome Res 2004,14,(11),2308−18;Peng,J.ら、Nat Biotechnol 2003,21,(8),921−6;Ideker,T.ら、Science 2001,292,(5518),929−34)。最近、複雑なペプチド混合物からのMS/MSスペクトルのサンプリングが、相対的定量的情報の出所としてみなされている。スペクトルカウンティングを用いることにより、MudPITによって解析される複雑なペプチド混合物におけるペプチド同定の総数が、100倍の濃度範囲においてタンパク質の存在量と直線的に相関すること、および質量分析から得られるイオンクロマトグラムよりも広いダイナミックレンジで、より再現性があることが見出された(Old,W.M.ら、Mol Cell Proteomics 2005,4,(10),1487−502;Liu,H.ら、Anal Chem 2004,76,(14),4193−201;Zybailov,B.ら、Anal Chem 2005,77,(19),6218−24)。
MudPIT解析を用いてコントロールおよびIAIにおけるCVF中で発現しているタンパク質を特徴付けることによって、IAIにおいてアップレギュレートされるかなりの数の免疫応答/防御関連タンパク質が明らかになった。IAIのAFとCVFとに異なって多量に存在するタンパク質の間にかなりの程度の重複が存在する。本発明者らの研究において、カルグラニュリン、アズロシジン、リポカリン、L−プラスチンおよびその他のもの(IAIに対する、羊水中の有望な生物学的マーカーであると以前に同定されたもの)もまた、CVF中に異なって存在していた。上記の免疫調節物質に加えて、感染に応答したCVF中の抗菌性タンパク質アズロシジンの検出から、子宮内の免疫応答に新たな知見がもたらされる。アズロシジン(CAP37)は、宿主防御および炎症において潜在的に重要な作用を有する、ヒト好中球から単離されたカチオン性の抗微生物タンパク質である(Gabay,J.E.ら、Proc Natl Acad Sci USA 1989,86,(14),5610−4)。IAIにおいて高発現している別の抗微生物タンパク質は、カテリン(cathelin)であり、これは、細菌の感染に対して活性なC末端の37残基のアルファヘリックスペプチドを有する(Zhao,C.ら、Antimicrob Agents Chemother 2001,45,(10),2695−702)。感染CVF中の高レベルのアネキシンは、CVF特異的IAI応答に関し得る。アネキシンは、炎症性および防御応答に関連するCa2結合タンパク質の1つの群である。アネキシンA2は、ウイルスで形質転換された細胞株およびヒト腫瘍においてアップレギュレートされる(Filipenko,N.R.ら、J Biol Chem 2004,279,(10),8723−31)。アネキシン1は、ステロイドホルモンの抗炎症性作用を調節する(Castro−Caldas,M.ら、Mediators Inflamm 2001,10,(5),245−51)。マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は、多くの炎症状態において発現し、結合組織の損傷の一因となる亜鉛依存性エンドペプチダーゼの1ファミリーである。パラクリンシグナルまたはオートクラインシグナルのように、細菌の産物ならびに/または炎症性サイトカインIL−1ベータおよびTNF−アルファは、羊膜絨毛膜細胞がMMP発現を誘導するのを引き起こし得ると提唱されている(Vadillo−Ortega,F.ら、Am J Obstet Gynecol 2002,186,(1),128−38;Vadillo−Ortega,F.ら、Bjog 2005,112 Suppl 1,19−22。
第2のアプローチにおいて、本発明者らは、MALDI−TOF MSを利用し、実験的霊長類IAIの環境においてCVF中で有意に過剰発現される10.8kDaのクラスターを検出した。これは、本発明者らの以前の研究(Gravett,M.G.ら、Jama 2004,292,(4),462−9)において観察されたAFプロテオームプロファイルと類似しており、このサインプロファイルの、CVF中のIAIの検出に対する特異性を確かめるものである。この過剰発現される特有のクラスターにおいて同定されたタンパク質の1セット、すなわち、カルグラニュリンは、急性炎症性組織におけるマクロファージおよび上皮細胞によって発現されるS−100カルシウム結合タンパク質ファミリーのメンバーであるので、この過剰発現される特有のクラスターは、感染に対する基本的な子宮内の免疫応答を表し得る。このクラスターからの第2の候補(IGFBP−1のタンパク分解性フラグメント)は、感染に応答する潜在的なプロテアーゼ関連メカニズムを示唆する。完全なIGFBP−1は、AFにおいて見られる主要なIGFBPであり、胎膜と母体の脱落膜の両方によって合成される。しかしながら、特に、このサインは、相対的に低濃度でありながらもCVFサンプル中に存在するが、感染前のAFサンプルには存在しない。これらの免疫調節性ペプチドのより高い基礎レベルは、羊水の基本的な炎症性の特徴と比べて、膣環境の基本的な炎症性の特徴を反映し得る。羊水は、正常では無菌であり、最低濃度の炎症性マーカーを有する。対照的に、膣は、炎症促進性で微生物が多い環境を特徴とする。従って、CVFサンプルは、非侵襲性のサンプリングが容易であるという利点を有し得るが、その結果は、細菌性の腟疾患などの局所的な炎症状態によって混乱し得る。
CVFプロテオームの特徴付けおよびIAIにおいて異なって発現されるかなりの数のタンパク質の同定は、生物学的マーカーを同定するために使用される感度の高いプロテオミクスのアプローチおよびIAIに対する非侵襲性検査を開発する際のそれらの潜在的価値を補完するものである。CVF、AFおよび母体血清由来の一時的および定量的なサンプルの解析によってIAIの病原に関して多くのことを知ることができる。他の子宮頸部−膣の炎症性生物学的マーカー(例えば、炎症性サイトカインおよび胎児フィブロネクチン)の調査によって、類似の問題が生じている(Rizzo,G.ら、Am J Obstet Gynecol 1996,175,(4 Pt 1),812−7;Holst,R.M.ら、Acta Obstet Gynecol Scand 2005,84,(6),551−7;Di Naro,E.ら、Acta Obstet Gynecol Scand 2003,82,(12),1072−9;Yoon,B.H.ら、Am J Obstet Gynecol 2001,185,(5),1137−42)。これらの観察結果および本発明者らの観察結果は、感染に関連する早産において、絨毛膜脱落膜界面で細胞外マトリックスが破壊されているという仮説、およびおそらく子宮頸部バリアの破壊に関連して、この界面において産生される炎症性メディエーターが膣円蓋部貯留に達するという仮説と一致する。
まとめると、本発明者らは、子宮頸部−膣のタンパク質の全体的な発現を特徴づけ、子宮頸部膣液中のIAIの有望な生物学的マーカーを同定するために、2つの補完的な(complimentary)プロテオミクスのアプローチを利用した。実験的IAI後にCVF中で異なって発現する異なる免疫調節性ペプチドが同定された。これらのペプチドの差次的な発現は、イムノアッセイを用いて確認され、IAIを診断するための非侵襲性で信頼性の高い検査の開発の機会を提供する。
実施例18
多次元タンパク質同定技術(MudPIT)を用いたIAIにおけるヒトCVFプロテオームのグローバル解析
実施例14に記載したプロトコルを用いて、以下の結果を得た。
結果
上記ヒト研究から、患者のサブセットを、本明細書中で報告するようなプロテオーム解析のために遡及的に特定した。このサブセットは、子宮内感染の証拠を有していた20人の患者(羊水から微生物の病原体が回収されたことまたは羊水のIL−6濃度が>2,000pg/mlであったことによって定義される)、および子宮内感染を有していなかったが早産であった20人の患者のランダムに選択されたサブセット、および感染しておらず、子宮収縮抑制薬治療に反応性の早期陣痛を有していて、その後満期産だった20人の患者を含んでいた。これらの患者が、本研究に対する研究集団を構成している。
2本の6インチの滅菌Dacron付きプラスチックアプリケーター(Solon,Skowhegan,ME)を後膣円蓋に挿入し、滅菌された腟鏡で検査しながらそれを15秒間回転させることによって、ヒトCVFサンプルを回収した。回収後、プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche Diagnostics,Alameda,CA)を含むリン酸緩衝食塩水中にタンパク質を抽出した。抽出後、サンプルを遠心することにより、任意の残骸および細胞材料を除去し、上清を−70℃で保存した。
LC−MS/MS解析と組み合わされた1次元PAGE
各群のサンプルからプールされた100mgのCVFタンパク質をヨードアセトアミドで還元し、そしてTris−トリシン、10〜20%勾配SDS−PAGEゲルにおいて分離した。そのゲルをクマシーブルーR−250で染色し、各レーンの異なるバンドをゲルから切り出し、脱染し、トリプシンを用いて37℃において24時間、ゲル内消化した。次いで、ペプチドを0.1%TFAで抽出し、Millipore製のZip−Tip c18ピペットチップを用いて精製した。ゲル内消化後、CapLC(Waters,Inc.,Milford,MA)に連結されたQ−Tof−2質量分析計(Micromass UK Ltd,United kingdom)においてサンプルを解析した。400〜1500Daの質量をMS測定のためにスキャンし、50〜1900Daの質量をMS/MS測定のためにスキャンした。MudPIT解析において以下に記載されるように、タンパク質同定のためにデータ解析を行った。
MudPITタンパク質同定およびスペクトルカウンティング
CVFのMudPIT解析のために、各サンプル(各群n=20)からの50μlをプールすることによって、各条件から0.6mgのサンプルを調製した。タンパク質を、8M尿素、1M Tris塩基、80mMメチルアミンおよび8mM CaCl2(pH8.5)を含んでいる100mlの消化緩衝液に溶解した。システイン残基の還元およびアルキル化のために、まず、サンプルを12.5mlの0.9M DTT中で50℃において15分間インキュベートし、次いで、25mlの1.0 Mヨードアセトアミド中、暗黒下でさらに15分間、室温においてインキュベートした。さらなる12.5mlの0.9M DTTを210mlの水および1N NaOHとともに加えることによって、その溶液をpH8.5に調整した後、40mlの質量分析グレードのトリプシン(1mg/ml;Promega,Madison WI)を加えた。次いで、サンプルを完全に混合し、37℃で一晩インキュベートした。40mlのギ酸を加えることによって消化を停止した。MudPIT解析の前に、C18 Sep−Pakカートリッジ(Waters,Inc.,Milford,MA)を用いて消化物を脱塩した。
脱塩した消化物(1ml)をポリスルホエチル強陽イオン交換カラム(2.1mm ID×100mm、5mm粒子および300−mポアサイズ(Nest Group,Southborough,MA)上に注入し、UV検出器および画分回収器を備えたHPLCを用いて分画した。溶媒Aは、25%アセトニトリル(ACN)を含む5.6mMリン酸カリウム(pH3)であり、溶媒Bは、25%ACNを含む、5.6mMリン酸カリウム(pH3)および350mM KClであった。200ml/分の流速での95分間の勾配をペプチドの分画に使用した:10分間の100%A、45分間にわたって50%Bに勾配、15分間にわたって100%Bに勾配、そして0.1分間で100%Aに戻る勾配、100%Aで20分間保持。合計80個の画分を回収し、−20℃で保存した。96ウェルスピンカラム(Vydac C18シリカ:Nest Group,Southborough,MA)を用いて脱塩するために、それらの画分を蒸発させ、100mlの0.1%TFAに再懸濁した。80%ACN/0.1%ギ酸(FA)中に溶出した後、画分を43個の画分に統合し、蒸発させ、25mlの5%FAに再懸濁した。
CapLC(Waters Inc.,Milford,MA)に接続されたQ−Tof−2質量分析計においてSCX画分(各5μl)を解析した。そのQ−Tof−2は、ナノスプレー源を備えていた。Nanoease C18 75mm ID×15cm溶融シリカキャピラリーカラム(Waters Inc.,Milford,MA)および95分間の水/ACN勾配を用いて、各SCX画分を分離した。上記質量分析計は、Glu1フィブリノペプチドBを用いて較正された。MS/MSMS測定方法を用いて、スペクトルを取得した。m/zが400〜1500の質量をMS測定のためにスキャンし、m/zが50〜1900の質量をMSMSのためにスキャンした。ProteinLynx Global Server v.2.1ソフトウェア(Waters Inc.,Milford,MA)を用いてMS/MSスペクトルを処理した。
各群から平均2,800個のMS/MSスペクトルを、既知の夾雑物ならびにSwiss−Protヒトデータベース(バージョン46.6)のフォワードエントリーおよびリバースエントリーを含んでいる組み合わされたデータベースに対して、3つの独立した検索エンジン:OpenSea 14、15、TurboSequest(ThermoFinnigan,Waltham,MA)およびX!Tandem16を用いて検索した。PEAKSソフトウェア(Bioinformatics Solutions,Ontario,CA)を使用して、OpenSea検索エンジン用にデノボ配列を生成した。個別の検索エンジンの結果からのタンパク質同定を、Scaffoldソフトウェア(Proteome Software,Portland,OR)において実行される確率的タンパク質同定アルゴリズムを用いて統合した。少なくとも2個の独立した同定ペプチドを有する同定タンパク質(確率>0.8)を、サンプル中に存在する可能性があるとみなした。
結果
PTL 対 IAI。PTLとIAIとの比較から、統計学的に有意に(p<0.05)異なる存在量の33個のタンパク質が示された(表10)。これらのタンパク質の存在量の差は、+45倍から−8.7倍までに及んだ。扁平上皮癌抗原1(SCCA−1)、アネキシンA2(アネキシンII)、S100カルシウム結合タンパク質A7(ソリアシン(Psoriasin))、ペリプラキン(Periplakin)、熱ショック同族71kDaタンパク質、インボルクリン、表皮型脂肪酸結合タンパク質(E−FABP)、チオレドキシン(ATL由来因子)(ADF)、ヒストンH4、神経芽細胞分化関連タンパク質AHNAK、アネキシンA1(アネキシンI)(リポコルチンI)、アクチン、細胞質1(ベータ−アクチン)、熱ショックタンパク質ベータ−1(HspB1)、フルクトース二リン酸アルドラーゼA(EC4.1.2.13)、ムチン−5B前駆体、小型プロリンリッチタンパク質2A(SPR−2A)(2−1)、シスタチンA(ステフィン(Stefin)A)(シスタチンAS)、ミエロペルオキシダーゼ前駆体(EC1.11.1.7)(MPO)、コルフィニンA(小型プロリンリッチタンパク質IA)(SPR−IA)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン前駆体を含む21個のタンパク質は、IAIよりもPTLにおいて多く存在した。ヘモペキシン前駆体(ベータ−1B−糖タンパク質)、セロトランスフェリン前駆体(トランスフェリン)カタラーゼ(EC1.11.1.6)、リゾチームC前駆体(EC3.2.1.17)、マトリックスメタロプロテアーゼ−9前駆体(MMP−9)kDaマトリックスメタロプロテアーゼ−9]、ハプトグロビン前駆体、プロフィリン−1(プロフィリンI)、血清アルブミン前駆体、フィブロネクチン前駆体(FN)(低温不溶性グロブリン)、脳酸可溶型タンパク質1(BASP1タンパク質)、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素、ビタミンD結合タンパク質前駆体(DBP)を含む12個のタンパク質は、IAIにおいて有意に多く存在した。
IAIを有しない早産 対 IAIを有する早産。IAIを有しないPTBとIAIを有するPTBとの比較により、統計学的に有意に(p<0.05)異なる存在量の27個のタンパク質が示された(表11)。ハプトグロビン前駆体、プロフィリン−1(プロフィリンI)、脳酸可溶型タンパク質1(BASP1タンパク質)、フルクトース二リン酸アルドラーゼA、グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素、カタラーゼ(EC1.11.1.6)、アルファ−アクチニン4(非筋肉アルファ−アクチニン4)、ミオシン−9(ミオシン重鎖、非筋肉型IIa)、血清アルブミン前駆体、ビタミンD結合タンパク質前駆体(DBP)、マトリックスメタロプロテアーゼ−9前駆体(MMP−9)kDaマトリックスメタロプロテアーゼ−9]、カルグラニュリンC(CAGC)(CGRP)(好中球S100タンパク質)、サイモシンベータ−4(Tベータ4)、リゾチームC前駆体(EC3.2.1.17)、シスタチンB(肝臓チオールプロテイナーゼインヒビター)、セロトランスフェリン前駆体(トランスフェリン)、アルファ−1−酸糖タンパク質1前駆体(AGP1)、ベータ−2−糖タンパク質I前駆体(アポリポタンパク質H)、非分泌性リボヌクレアーゼ前駆体、アルファ−2−HS−糖タンパク質前駆体(フェチュイン−A)、アルファ−1B−糖タンパク質前駆体(アルファ−1−B糖タンパク質)、ペプチドグリカン認識タンパク質前駆体(SBBI68)(PGRP−S)、アネキシンA3(アネキシンIII)(リポコルチンIII)を含む23個のタンパク質は、IAIを有するPTBにおいてより多く存在した。S100カルシウム結合タンパク質A2(S−100Lタンパク質)(CAN19)、トロポミオシンアルファ3鎖(トロポミオシン3)、ラクトトランスフェリン前駆体(ラクトフェリン)、小型プロリンリッチタンパク質3(コルフィニンベータ)、カリクレイン13前駆体、表皮型脂肪酸結合タンパク質(E−FABP)、ヒストンH4、熱ショックタンパク質ベータ−1(HspB1)(熱ショック27kDaタンパク質)、アネキシンA1(アネキシンI)(リポコルチンI)、チオレドキシン(ATL由来因子)(ADF)、ペリプラキン(195kDa角化膜前駆体タンパク質)、熱ショック同族71kDaタンパク質(熱ショック70kDaタンパク質8)、ムチン−5B前駆体(ムチン5サブタイプB、気管気管支)、インボルクリン、神経芽細胞分化関連AHNAK、フィブロネクチン前駆体(FN)(低温不溶性グロブリン)(CIG)、アネキシンA2(アネキシンII)(リポコルチンII)、扁平上皮癌抗原1(SCCA−1),S100カルシウム結合タンパク質A7(ソリアシン)は、IAIを有しないPTBにおいてより多く存在した。
考察
上で述べたように、CVFプロテオームの特徴付けおよびIAIにおいて異なって発現されるかなりの数のタンパク質の同定は、生物学的マーカーを同定するために使用される感度の高いプロテオミクスのアプローチおよびIAIに対する非侵襲性検査を開発する際のそれらの潜在的価値を補完するものである。CVF、AFおよび母体血清由来の一時的および定量的なサンプルの解析によってIAIの病原に関して多くのことを知ることができる。本発明者らの観察結果は、感染に関連する早産において、絨毛膜脱落膜界面で細胞外マトリックスが破壊されているという仮説、およびおそらく子宮頸部バリアの破壊に関連して、この界面において産生される炎症性メディエーターが膣円蓋部貯留に達するという仮説と一致する。
まとめると、本発明者らは、子宮頸部−膣のタンパク質の全体的な発現を特徴づけ、子宮頸部膣液中のIAIの有望な生物学的マーカーを同定するために、2つの補完的なプロテオミクスのアプローチを利用した。実験的IAI後にCVF中で異なって発現する異なる免疫調節性ペプチドが同定された。これらのペプチドの差次的な発現は、イムノアッセイを用いて確認され、IAIを診断するための非侵襲性で信頼性の高い検査の開発の機会を提供する。
実施例19
ヒト子宮頸部膣液(CVF)中の早産の新規タンパク質生物学的マーカーを同定するためのプロトコル
サンプルの回収および処理
本研究は、Oregon Health & Science University Institutional Review Boardによって承認されたものである。すべての被験体が、先を見越して同定され、本研究に参加するために、書面によるインフォームドコンセントを提出した。PTLを、37週の妊娠期間の前の規則的な子宮の活動と子宮頸部拡張との組み合わせと定義し、早産を37週の妊娠期間の前に生じる自然分娩と定義した。患者は、羊水内感染の臨床上の証拠を有しなかった。
平均GA26.9週±7.5SD(15.8〜35.9の範囲)の18人の被験体(各群n=6)を募集した。母体の平均出産歴は、0.8であり、被験体の20%が以前に早産を経験していた。2本の6インチの滅菌Dacron付きプラスチックアプリケーター(Solon,Skowhegan,ME)を後膣円蓋に挿入し、滅菌された腟鏡で検査しながらそれを15秒間回転させることによって、CVFサンプルを回収した。回収後、プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche Diagnostics,Alameda,CA)を含むリン酸緩衝食塩水中にタンパク質を抽出した。抽出後、サンプルを遠心することにより、任意の残骸および細胞材料を除去し、上清を−70℃で保存した。
MudPIT解析のために、コントロール、早産を伴わないPTLおよび感染を有しないSPTBの各々5つの母体CVFサンプル(100μl×5)を個別にプールし、アセトン沈殿した。490μgの各プールサンプルを10mM Tris,pH8.5に溶解した。2−D−DIGE実験では、各50μgのGA一致コントロール、PTLおよびSPTB(GA29〜34週)サンプルを使用した。
蛍光2次元ディファレンシャルゲル内電気泳動(2D−DIGE)
GA一致コントロール/PTL/SPTB(29〜34週)サンプル対を選択した。各サンプルに対して、50mgのCVFタンパク質を、CyDye DIGE Fluorミニマルダイ(GE Healthcare Biosciences,Piscataway,NJ)で、400pm色素/50mgタンパク質の濃度において標識した。Cy2、Cy3およびCy5色素を使用して、それぞれコントロール、PTLおよびSPTBを標識し、標識された3つすべてのサンプルを多重化し、1枚のゲルにおいて分離した。標識タンパク質をアセトン沈殿により精製し、IEF緩衝液に溶解し、室温において12時間、24cmIPGストリップ(pH4〜7)上に再水和した。そのIPGストリップを65〜70kV時で1次元電気泳動に供し、次いで、15分間、DTTおよびIAA平衡緩衝液で順次平衡化した。80〜90Vにおいて18時間、2次元8〜16%SDS−PAGEを行った
550〜600のPMT電圧セットを用い、適切なレーザーおよびフィルターを使用して、ゲルをTyphoon 9400スキャナー(Amersham Biosciences)においてスキャンした。疑似カラーを用いて異なるチャネルにおける画像をオーバーレイし、ImageQuantソフトウェア(Amersham Biosciences)を用いて差を可視化した。Phoretix 2D evolution,バージョン2005(Non−Linear Dynamics,Ltd.)を用いて、異なる量で存在するタンパク質スポットを同定する2D−ゲル画像解析を行った。一定面積をすべてのゲルから選択し、クロスステイン(cross−stain)解析プロトコルを行った。「ノンスポットモード(mode of non spot)」法を用いてバックグラウンド除去を行い、スポットのマッチングを最大にするために画像をワーピングした(wrapped)。レシオメトリック補正アルゴリズムを適用して、タンパク質標識の潜在的な濃度差を明らかにした。Cy5およびCy3チャネルにおける、補正されたタンパク質スポットを内標準(Cy2)と比較して相対量の比を生成した。タンパク質スポットの強度の差の統計的有意性を、各群に対する平均ゲルについてのt検定によって判定した。相対比が>2.0であり、t検定の値が<0.05であるタンパク質スポットを有意であるとみなした。
目的のスポットにおけるタンパク質の同定に向けて、700μgのCVFタンパク質を用いて分取用2D電気泳動(2DE)を行い、ゲルをクマシーブルーR−250で染色するか、または銀染色した。個別のスポットをゲルから切り出し、脱染し、37℃において16〜18時間、トリプシンによるゲル内消化に供した。ペプチドを重炭酸アンモニウム中に抽出し、次いで、0.22mm MultiScreenフィルタープレート(Millipore,Billerica,MA)で濾過した。濾過された溶液を乾燥させ、質量分析による解析のために5%ギ酸中で再構成した。
ポリクローナル抗体およびウエスタン免疫ブロット法。免疫原性のペプチドおよび/または組換えタンパク質を使用して、ウサギおよびヤギのポリクローナル抗体を作製した(DSL Laboratories,Webster,TX)。次いで、アフィニティ精製した抗体をウエスタンブロットに使用した。50μgのCVFタンパク質を4〜20%SDS−PAGEにおいて分離し、PVDF膜に転写した。膜を、Sea Block(Pierce)中でブロッキングし、1μg/mlの1次抗体(IGFBP−1、カルグラニュリン−A、カルグラニュリン−B、アネキシンVまたはプロフィリン1)とともに4℃において一晩インキュベートした。TBSTで3回洗浄した後、その膜をCy色素でタグ化された適切な2次抗体とともに1時間、一定にゆすりながら暗黒下でインキュベートし、その後洗浄した。Typhoon 9400バリアブルモード画像装置(GE Healthcare,Piscataway,NJ)を用いて、特定のタンパク質バンドの可視化を行った。
多次元的液体クロマトグラフィタンデム質量分析(LC−LC−MS/MS;MudPIT)解析
各490μgの個別にプールされたコントロール、PTLおよび非感染SPTBのCVFサンプルを乾燥させ、8M尿素、1M Tris塩基、100mMメチルアミンおよび10mM CaCl(pH8.5)を含んでいる100μlの消化緩衝液に溶解した。サンプルを還元し、そしてまず、12.5μlの0.9M DTT中で15分間、50℃においてインキュベートし、次いで、25μlの1.0Mヨードアセトアミド中、暗黒下でさらに15分間、室温においてインキュベートすることによってアルキル化した。さらに12.5μlの0.9M DTTを210μlの水および1N NaOHとともにその溶液に加えることによって、pHを8.5に調整した。サンプルを、37℃において一晩、40μlの1mg/mlトリプシン(Promega)液で消化した。40μlのギ酸を用いて消化を停止し、C18 SepPak Plusカートリッジを用いて脱塩した。消化物(1ml)をポリスルホエチル強陽イオン交換カラム(2.1mm ID×100mm、5μm粒径および300Åポアサイズ(The Nest Group,Southborough,MA)上に注入し、そしてUV検出器および画分回収器を備えたHPLCを用いて分画した。溶媒Aは、25%アセトニトリル(ACN)を含む10mMリン酸カリウム(pH3)であり、溶媒Bは、25%ACNを含む、10mMリン酸カリウム(pH3)、350mM KClであった。200ml/分の流速での95分間の勾配をペプチドの分画に使用した。合計80個の画分を回収し、蒸発させ、そして96ウェルVydac C18シリカスピンプレート(The Nest Group,Southborough,MA)を用いて脱塩するために100mlの0.1%TFAに再懸濁した。画分を80%ACN/0.1%ギ酸(FA)中に溶出し、蒸発させ、20mlの5%FAに再懸濁し、そして5mlの各画分を、CapLC(Waters,Inc.,Milford,MA)に接続されたQ−Tof−2質量分析計において解析した。
質量分析
Nanoease C18 75μm ID×15cm溶融シリカキャピラリーカラム(Waters Inc.)および95分間の水/ACN勾配を用いて、2D−LC画分およびゲル消化物をさらに分離した。その質量分析計は、Glu1フィブリノペプチドBを用いて較正された。MS/MSMS研究方法を用いて、スペクトルを取得した。m/zが400〜1500の質量をMS測定のためにスキャンし、m/zが50〜1900の質量をMSMS測定のためにスキャンした。合計10,824個のMS/MSスペクトルを2D−LC画分から取得した。ProteinLynx Global Server v.2.1ソフトウェア(Waters Inc.)を用いて、生MS/MSスペクトルを前処理した。
各サンプルからの平均3,645個のMS/MSスペクトルを、公知の夾雑物(ケラチンおよびアルブミン)、SwissProtヒトデータベース(バージョン46.6)のフォワードエントリーおよびリバースエントリーを含んでいる、組み合わせたデータベースに対して検索した。ペプチド同定検索は、3つの独立した検索エンジン:TurboSequest(ThermoFinnigan,Waltham,MA)、X!Tandem(Craig,R.and Beavis,前出)およびOpenSea(Wenstrom,K.D.,Am J Obstet Gynecol 175,830−3(1996);Ghidini,A.ら、Am J Reprod Immunol 37,227−31(1997)を用いて行われた。SequestおよびX!Tandemは、タンパク質データベースの理論的な酵素消化物から生成される理論的なスペクトルと実験スペクトルとをマッチさせるデータベース検索エンジンである。OpenSeaは、的確でないデノボ配列とデータベース内のタンパク質配列との間のエラートレラントなマッチを行うデノボ配列ベースの検索エンジンである。Peaksソフトウェア(Bioinformatics Solutions,Ontario,CA)を使用して、OpenSea検索エンジンにデノボ配列を提供した。個別の検索エンジンの結果からのペプチド同定を、Scaffold(バージョン:1.3.2,Proteome Software,Portland,OR)において実行される確率的タンパク質同定アルゴリズムを用いて同定タンパク質に統合した。少なくとも2個の独立した同定ペプチド(確率>=0.9)を有した同定タンパク質を、サンプル中に存在するとみなした。
スペクトルカウントおよび統計解析を用いた定量化
特定のタンパク質にマッチしたMS/MSスペクトルの総数であるスペクトルカウンティングを用いて、サンプル中のその相対存在量を入手した。Liu,H.,ら、Anal Chem.76,4193−201.(2004);Zybailov,B.,ら、Anal Chem.77,6218−24.(2005);Old,W.M.ら、Mol Cell Proteomics.4,1487−502.Epub 2005 Jun 23.(2005))。この方法を用いて、同位体標識に頼ることなく2つのサンプル間でのタンパク質の存在量の差を効率的に検出した(Julka,S.& Regnier,F.J Proteome Res 3,350−63(2004))。2個より多い信頼できる同定ペプチドを有したサンプル中のすべてのタンパク質を、スペクトルカウントを用いたタンパク質定量化のために考慮に入れた。同種のタンパク質(例えば、免疫グロブリン、α−1−酸糖タンパク質1および2など)のスペクトルカウントを単一エントリーにまとめることによって、そのサンプルのタンパク質リストをさらにキュレートした。
群(コントロール、PTLまたはSPTB)間で各タンパク質に対するスペクトルカウントの有意差があるか否かを評価するχ適合度検定を用いて対比較を行った。誤発見率(FDR)法(Benjamini,Y.& Hochberg,Y.,Journal of the Royal Statistical Society B,289−300(1995))を介して多重比較のために補正した後、各タンパク質に対する統計的有意性を判定し、有意水準は、0.05に設定した(SASバージョン9.1)。異なる量で存在するタンパク質の偽陽性率を低下させるために、サンプルの少なくとも1つにおいて少なくとも4個のMS/MSスペクトル(確率≧0.8)にマッチした少なくとも2個の独立したペプチドを有した統計学的に有意なタンパク質だけを、真に異なる量で存在するとみなした。スペクトルカウント比を計算するための公開されている式(Old,W.M.ら、前出)を用いて、上記基準を満たすタンパク質が何倍変化していたかを判定した。
対数リンク関数およびポアソン分布エラー(すなわち、ポアソン回帰)を用いた一般化線形回帰モデル(Agresti,A.An Introduction to Categorical Data Analysis,(John Wiley & Sons,Inc,New York,1996)を当てはめることによって、コントロール群、PTL群、SPTB群からの各タンパク質の相対存在量の進行的な差を評価した。直交多項式対比を用いて、順序的な被験体群において増加傾向または減少傾向があるか否かを検定した。有意水準を0.05に設定し、上記と同様に、FDR法によって多重比較のための補正を行った。PTL群 対 コントロール群およびSPTB群 対 コントロール群の回帰係数(すなわち、モデルベースで何倍変化したか)を評価することによって、有意な傾向が確認された。これらの解析は、SASバージョン9.1におけるGENMODの手法を用いて行われた。
実施例20
ヒト子宮頸部膣液(CVF)における早産の新規タンパク質生物学的マーカーの同定
実施例19に記載されたプロトコルに従って、以下の結果を得た。
結果
CVFプロテオーム。複数の検索エンジンを用いた合計10,824個のMS/MSスペクトルの解析によって、添付の表6に列挙されている、CVF中の205個の特有タンパク質が同定された。これらのタンパク質の機能アノテーションから、代謝(25%)、免疫応答(23%)および輸送(18%)が、CVFにおいて示される主要なカテゴリーであることが明らかになった。
コントロールとPTLとの比較から、統計学的に有意に(p<0.05)異なる存在量の21個のタンパク質が示された。これらのタンパク質は、+28倍から−18倍の範囲で異なって存在していた。8個のタンパク質(S100カルシウム結合タンパク質A7、ムチン−5B前駆体、カルギザリン(calgizzarin)、ヒストンH2B、ヒストンH1.2(ヒストンH1d)、L−乳酸デヒドロゲナーゼA鎖、rho GDP解離インヒビター2および14−3−3δ)が、PTLにおいて3倍超アップレギュレートされた。発生および細胞分化タンパク質であるS100カルシウム結合タンパク質A7は、コントロールと比べてPTLにおいて最も有意に過剰発現されたタンパク質(28倍)であった。3つのタンパク質(デスモプラキン(desmoplankin)(−18倍)、ペリプラキン(−4倍)およびジャンクションプラコグロビン(junction plakoglobin)(デスモプラキンIII)(−3倍))が、PTLにおいて有意にダウンレギュレートされた。
コントロール 対 SPTB。コントロールとSPTBとの比較から、統計学的に有意に(p<0.05)異なる存在量の30個のタンパク質が示された。7個のタンパク質(α−1−抗トリプシン前駆体、カルグラニュリンC、アネキシンA5(アネキシンV)、rho GDP解離インヒビター2、ビタミンD結合タンパク質前駆体(DBP)、α−1−酸糖タンパク質1前駆体およびL−プラスチン(リンパ球サイトゾルタンパク質1))が、SPTBにおいて3倍超アップレギュレートされた。プロテアーゼインヒビターであるアルファ−1−抗トリプシンは、SPTBにおいて最も有意に過剰発現されたタンパク質(16倍)であり、そしてカルグラニュリンC(約16倍)およびアネキシンA5(8.5倍)が続いた。6個のタンパク質(デスモプラキン(DP)、ペプチジル−プロリルcis−transイソメラーゼA、ジャンクションプラコグロビン(デスモプラキンIII)、熱ショックタンパク質β−1、ペリプラキンおよび表皮型脂肪酸結合タンパク質)が、SPTBにおいて3倍超ダウンレギュレートされた。
分娩を伴わないPTL 対 SPTB。PTLとPTBとの比較から、統計学的に有意に(p<0.05)異なる存在量の25個のタンパク質が示された。4個のタンパク質(α−1−抗トリプシン前駆体(8.5倍)、カルグラニュリンC(6.2倍)、アネキシンA5(アネキシンV)(4.9倍)およびキニノーゲン(kinninogen)(4.5倍))が、PTB CVFにおいて3倍超アップレギュレートされた。8個のタンパク質(S100カルシウム結合タンパク質A7(−13倍)、14−3−3σ(−10.1倍)、ヒストンH2B(−9.2倍)、ペプチジル−プロリルcis−transイソメラーゼA(−8.3倍)、L−乳酸デヒドロゲナーゼA鎖(−7.4倍)、ヒストンH1.2(−4.6倍)、シスタチンB(−4.2倍)およびヒストンH4(−4.1倍))が、PTLと比べてSPTBにおいて3倍超ダウンレギュレートされた。
トレンド解析。コントロール、PTLおよびSPTBにおいて見られる共通のタンパク質の相対存在量の傾向および線形性を推定するために、対数リンク関数およびポアソン分布エラー(すなわち、ポアソン回帰)を用いた一般化線形回帰モデルを当てはめることによって、GENMOD線形回帰モデル(SASバージョン9.1)を使用した。有意水準を0.05に設定し、FDR法によって多重比較のための補正を行った。16個のタンパク質が、3つすべてのサンプルにおいて異なって(p<0.003)存在すると見出された(表8)。13個のタンパク質が、SPTB>分娩を伴わないPTL>コントロールの順で統計学的に有意な増加を一貫して示した。3つのタンパク質、表皮型脂肪酸結合タンパク質、熱ショックタンパク質ベータ−1およびデスモプラキンだけが、SPTB<分娩を伴わないPTL<コントロールの順で減少を示した。
コントロール、PTLおよびSPTB CVFの2D−DIGE解析 2次元ゲル電気泳動は、癌および他の疾患に対する生物学的マーカーを同定するために血清プロテオームを特徴付けるために広く使用されている(Chromy,B.A.ら、Journal of Proteome Research 3,1120−7(2004))。広範なダイナミックレンジでの感度、再現性および検出を高めるために、本発明者らは、蛍光シアニン色素でタンパク質を標識する複合プロテオーム解析アプローチを利用した。GAが一致した3つのコントロール、PTLおよびSPTB CVF(GA29〜34週)をそれぞれCy3、Cy5およびCy2で標識した。標識された各GA一致サンプル対を同じゲルにおいて分離した。緑色または赤色の強度は、異なる量で存在するタンパク質レベルを示唆し、黄色は、比較的同じ存在量を表す。コントロール/PTL/SPTBゲルマップの疑似カラーによる可視化(ImageQuant;GE Healthcare)から、PTL/SPTBにおいてタンパク質がアップレギュレートされた明瞭なパターンが示された(図26A、26Bおよび26C)。
Phoretix 2D evolutionソフトウェアを用いて、2D−DIGEによって分解されたCVFプロテオームの定量的解析を行った。第3チャネルとして内標準(Cy2)を使用することが、スポットの補正およびマッチングに参照を提供することによって、解析の質が向上させた。スポット−定量化プロトコルは、対比較において平均590スポットをマッチさせた。17個のタンパク質が、分娩を伴わないPTLおよびSPTBのCVFサンプルにおいて2倍超異なって存在した。
分娩を伴わないPTLと比べると、SPTBにおいて、11個のタンパク質がアップレギュレートされ、6個のタンパク質がダウンレギュレートされた。ゲルスポットからのタンパク質同定によって、14−3−3δすなわちストラティフィン(stratifin)が、最も高い過剰発現(11倍)を示し、そしてアネキシンA2(7.5倍)、シスタチンA(5.7倍)、カルグラニュリンB(4倍)および細胞レチノイン酸結合タンパク質2(3.9倍)が続いた。インボルクリンは、SPTBサンプル中で高度にダウンレギュレートされ(15倍)、そして表皮型脂肪酸結合タンパク質(6.3倍)および細胞質アクチン2(2.9倍)が続いた。
MudPIT実験から、高い信頼性で(>90%)異なる量で存在する多くのSPTB生物学的マーカーが明らかになり、それらのうちのいくつかは、2D−DIGE実験に対して補完的であった。2D−DIGEとMudPITとで共通の、異なる量で存在するタンパク質は、14−3−3δ、カルグラニュリンB、S100カルシウム結合タンパク質A7、α−1−抗トリプシンおよびシスタチンAであった。MudPITは、2Dゲル条件を用いた分離および可視化が困難な、より少量の異なる量で存在する多くのタンパク質をさらに同定した。さらに、すべての液体分画の結果として、2Dゲル実験よりもMudPITにおいて同定されたタンパク質の多くに対して、より良好な配列範囲が得られた。カルグラニュリン、アネキシンVおよびプロフィリン1に対して特異的な抗体を用いた免疫ブロット法から、MudPIT解析において観察された一貫した傾向が確認された(図27)。IGFBP−1は、SPTBにおいて明瞭なタンパク分解性パターンおよび高レベルの発現を示した。検出されたIGFBP−1の大部分は、羊水内感染に対する羊水生物学的マーカーとして以前に報告された低分子量11kDaタンパク分解性フラグメント(Gravett,M.G.ら、Jama 292,462−9(2004))に対応した。
考察
自然早産(SPTB)は、世界的規模の周産期医療における主要な問題であり、先天性奇形に起因しない周産期死亡の主な原因である。1年間でおよそ800万の周産期死亡が起きており、その原因は、主に早熟および新生児敗血症である(Lawn,J.,McCarthy,B.& Ross,s.The Healthy Newborn:a Reference Manual for Program Managers.(ed.Centers for Disease Control,C.)(Atlanta,2001);WHO.2001 Estimates in:Saving Newborn Lives.State of the World’s Newborns.1−49(World Health Organization/Save the Children Federation−US,Washington,DC,2001)。SPTBの割合は、医療が改善されたにもかかわらず、過去30年間低下しておらず(Smith,R.,ら、Regul Pept 108,159−64(2002))、米国では、SPTBの割合は、過去25年間にわたって連続して上昇しており、2004年には12.5%に達している(National Vital Statistics 2004)。数多くの研究が、STPBのマーカーの同定を試みている。疫学的危険因子、子宮頸長、子宮頸部−膣胎児フィブロネクチン(fFN)単一ヌクレオチド多型、母体の病状、膣感染ならびに羊水および他の生物学的体液中のタンパク質生物学的マーカーの関連が、SPTBを積極的に予測するための有用なモデルの開発を試みる際に解析されている。しかしながら、現在のところ、一般的な臨床上の用途のためのロバストなマーカーは、確認されていない。
CVF、唾液および/または血漿をはじめとしたいくつかの生体液がすべて、SPTBに対するマーカーを検出するための起源として使用された。しかしながら、早産の良好な予測物となるこれらのマーカーは見出されなかった。SPTBの有望な生物学的マーカーとして、唾液中の様々なホルモンが評価されている。これらのうち、唾液エストリオールだけが、妊娠期間が通常32週を超えるSPTBに対するマーカーであると示されている(Ramsey,P.S.& Andrews,Clin Perinatol 30,701−33(2003);McGregor,J.A.ら、Am J Obstet Gynecol 173,1337−42(1995);Heine,R.P.ら、Obstet Gynecol 96,490−7(2000))。妊娠期間が32週を超えて分娩された乳児は、もっと早期のGAにおいて分娩された乳児と比べて新生児の罹患および死亡のリスクが低いので、このマーカーの臨床上の有用性は限定的である。血清または血漿中の成分が、SPTBのマーカーについて広く評価されている。Goldenbergら(Goldenberg,R.L.ら、Am J Obstet Gynecol 185,643−51(2001);Goldenberg,R.L.ら、Am J Obstet Gynecol 182,625−30(2000))は、75パーセンタイルを超える血清顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)レベルおよび90パーセンタイルを超える血清フェリチンレベルが、SPTBの最も強力な予測物であることを示している。高レベルのα−フェトプロテイン、アルカリホスファターゼおよび高レベルのコルチコトロピン放出ホルモンもまた、SPTBの有望な血清マーカーである(Moawad,A.H.ら、Am J Obstet Gynecol 186,990−6(2002);McLean,M.ら、Am J Obstet Gynecol 181,207−15(1999))。CVF中のいくつかの物質が、SPTBに対する、可能性のある生物学的マーカーとしてこれまでに評価されてきた。現在までのすべてのマーカーのうち、子宮頸部または膣におけるfFNだけが、早期PTLの症状を有する女性の妊娠期間約24〜26週におけるSPTBに対する信頼性の高い陰性予測物であると示されている(Goldenberg,R.L.ら、Obstet Gynecol 87,643−8(1996))。しかしながら、他の在胎期間、特に24週より前の在胎期間においては、fFNは、SPTBに対して低感度である(<20%)。Honest,H.,ら、Bmj 325,301(2002))。
本研究において使用された複数のプロテオミクスのアプローチから、SPTLを有し、満期産した女性と比べて、早産の女性のCVFにおいて異なる量で存在した明らかなタンパク質セットが同定された(表9および表10)。PTLを有する無症状のコントロールとSPTBとの初めての対比較から、SPTBと異なるPTLに対する特有マーカーセットの存在が明らかになった(表9)。これらの有望なPTLマーカーのさらなる研究は、PTLのメカニズムのより良い理解を助け、治療のための新規手段を提供する可能性がある。
連続的な解析(トレンド解析)から、無症状のコントロールからSPTBに徐々に増加すると示したマーカーの潜在的なリストが明らかになった。これらのマーカーは、連続的な測定を通してSPTBのリスクをモニターするのに有益であり得る。トレンド解析から、有意な統計的有意差を示す分子の1群としてS100タンパク質が同定された。S100タンパク質であるカルグラニュリンA、BおよびCは、以前に、SPTBを有する女性の母体血清および羊水中に異なって存在すると報告されており、それらは、一般に、感染および炎症の環境においてアップレギュレートされる(Gravett,M.G.ら、Jama 292,462−9(2004))。S100タンパク質は、カルシウム結合を介して生物学的活性を調節すると考えられ(Ikura,M.,Trends Biochem Sci 21,14−7(1996))、新生児のCSF、血液および尿における高レベルのS100タンパク質は、新生児の脳損傷と関連する(Blennow,M.,ら、Acta Paediatr 90,1171−5(2001);Sellman,M.ら、Scand J Thorac Cardiovasc Surg 26,39−45(1992))。本発明者らの研究におけるS100タンパク質の差次的な存在量は、満期産に進む女性と比べて、SPTBをもたらすPTLを有する女性における無症状性の羊水内感染および炎症の有病率の上昇を反映し得る。本発明者らのいずれの患者も、羊水内感染の臨床上の証拠を有しなかったが、羊水穿刺を行わずに、この可能性を排除した。同様に、トレンド解析も、SPTBの陰性予測物(例えば、表皮型脂肪酸結合タンパク質、熱ショックタンパク質ベータ−1およびデスモプラキンが挙げられる)の存在を示した(表9)。アップレギュレートされたタンパク質とダウンレギュレートされたタンパク質の両方を評価するイムノアッセイによって、SPTBの診断に対してより高い感度および特異性がもたらされる可能性がある。
重要な急性期の反応物は、本発明者らの対比較およびトレンド解析において存在量の増加を示した(表8および9)。これらは、−1−酸糖タンパク質(A1AG)、α−1−抗トリプシン前駆体ならびにアネキシンA3(アネキシンIII)およびA5(アネキシンV)を含んだ。以前に、アカゲザルの分娩前の高レベルのA1AGが報告されている(Golub,M.S.& Kaaekuahiwi,M.A.Clin Chim Acta 262,29−37(1997))が、炎症性刺激に応答して白血球によって放出される糖タンパク質プロテアーゼインヒビターであるα−1−抗トリプシンは、子宮表面の維持および胎盤の付着において重要な役割を果たすとみられる(Geisert,R.D.,ら、Reproduction 126,621−7(2003))。ヒト栄養膜組織によってα−1−抗トリプシンが産生されることは、証明されている(Bergman,D.ら、Synthesis of alpha 1−antichymotrypsin and alpha 1−antitrypsin by human trophoblast.Pediatr Res 34,312−7(1993))。アネキシンIIIの生理学的役割は、十分に確定されていない;しかしながら、その機能が細胞内のカルシウムシグナル伝達および膜貫通型のカルシウム輸送のメディエーターとして提唱されており、それが胎盤および好中球に存在すること(Le Cabec,V.,ら、Biochemical and Biophysical Research Communications 189,1471−1476(1992))は、SPTBの病態生理学においてこのタンパク質の果たし得る役割を支持する。アネキシンVは、妊娠喪失(Rand,J.,Eerden,ら、Thromb Res 115 Suppl 1,77−81(2005))、子癇前症および子宮内の成長の制限(Bretelle,F.ら、Thromb Haemost 89,486−92(2003))に関与しており、このことから、脱落膜の梗塞/胎盤媒介性のPTLにおけるアネキシン5に対する機構的な役割の可能性が示唆される。
PTLおよびSPTBにおいて異なる量で存在したいくつかのCVFタンパク質は、細胞骨格の構造、配置および運動性に不可欠である。プロフィリン−1、rho GDI 2およびサイモシンβ−4のすべてが、アクチン細胞骨格の組織化およびバイオジェネシスに関与し、SPTBにおいてアップレギュレートされた。プロフィリン−1、rho GDI 2およびサイモシンもまた、アクチン重合の阻害またはアクチン細胞骨格の破壊に関与している(Honore,B.,FEBS Lett 330,151−5(1993))。また、プロフィリン−1は、ポリ−L−プロリンモチーフに結合することが知られており(Witke,W.Trends Cell Biol 14,461−9(2004))、宿主−病原体の相互作用と関与している。Listeria細菌およびShigella細菌は、隣接する細胞への侵入に宿主細胞の細胞骨格を使用することを可能にするプロフィリン−1結合タンパク質を産生する(Witke,前出)。インボルクリンは、上皮の構造タンパク質であり、表皮細胞の初期分化のマーカーである。インボルクリンは、化学的予防治験において子宮頸部における初期の分化の生物学的マーカーとして使用されている(Mitchell,M.F.ら、J Cell Biochem Suppl 23,104−12(1995))。
本研究は、満期産のPTLの被験体およびSPTBであった被験体に対する、無症状のコントロール被験体のCVFの差次的なタンパク質プロファイルの現在における最も網羅的な解析を提供する。MudPITと2D−DIGEの両方が、PTLサンプルおよびSPTBサンプルにおいて有意に異なる量で存在したいくつかのタンパク質を明らかにした。しかしながら、本研究の知見は、限られた数のサンプルに基づくものであり、より大きなコホートにおいて確認されなければならない。さらに、本発明者らの観察結果のいくつかの生物学的なもっともらしさにもかかわらず、本発明者らの知見の一部は、ランダムな生物学的変異に起因するという可能性が存在する。この可能性を最小にするために、本発明者らは、スペクトルカウントおよびその変化がp値<.001をもたらしたタンパク質だけを考慮に入れ、コントロール群とPTL群とSPTB群との間での対比較ならびにトレンド解析を行い、コントロール<PTL<SPTBの順で差次的な発現を同定した。これらのタンパク質の1つ以上が、臨床上の用途のためにモデル化され得る場合、本研究の知見は、産科の臨床行為に対して有望な意味を有する。現在、最も広く利用されているSPTBに対する子宮頸部−膣マーカーは、特異性は良好であるが低感度の生物学的マーカーであるfFNである。fFNと比べて、本発明者らは、無症状群とPTL群の両方をSPTB群と比べたとき、fFNよりも大きな差次的発現を有するいくつかのタンパク質を同定した。これらは、上で考察したタンパク質のうちのいくつかであり、それらとしては、カルグラニュリンC、α−1−酸糖タンパク質、α−1−抗トリプシン前駆体およびアネキシンVが挙げられる。
SPTBの新規のタンパク質生物学的マーカーの同定は、早産をもたらす生理学的な撹乱(perturbances)の理解を進める際に重要な工程である。本発明者らは、本発明者らの知見が、より大きなコホートにおいて確証されるまでは予備的なものであるとみなされるべきであり、これらのマーカーの有用性が、臨床的に有意であるためには、実際に現在利用可能な検査よりも良好でなければならないことを認める。しかしながら、米国においてSPTBの割合が着実に上昇しているとみられている過去25年間の傾向を逆転させるために、早産に対して高リスクの女性の信頼性の高い同定に基づいた革新的な処置ストラテジーが開発されなければならない。
前述の説明全体を通して、ある特定の実施形態を参照して本発明を論じてきたが、本発明は、そのように限定されない。実際は、前述の説明から、本明細書中において示されたものおよび説明されたものに加えて、本発明の様々な改変が当業者に明らかになるであろうし、それらは、添付の請求項の範囲内に含められる。
本説明を通して引用されたすべての参考文献およびそれに引用されている参考文献は、それらの全体が本明細書によって明示的に参考として援用される。
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Claims (26)

  1. 妊娠中の雌性哺乳動物被験体における子宮内感染の存在を判定するための方法であって:
    (a)該被験体から得られた子宮頸部膣液のサンプルにおいて、ハプトグロビン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P00738);アルファ−1−酸糖タンパク質(Swiss−Prot Acc.No.P02763)、表皮型脂肪酸結合タンパク質(Swiss−Prot Acc.No.Q01469)およびインスリン様成長因子結合タンパク質(Swiss−Prot Acc.No.P08833)からなる群から選択される2つ以上のタンパク質の存在量を、正常な子宮頸部液または子宮内感染を示していることが知られている子宮頸部液における存在量と比べて検査する工程;および
    (b)該存在量が、該正常な子宮頸部液における存在量と比べて統計学的有意差を示すか、または子宮内感染を示していることが知られている該子宮頸部液における存在量と比べて統計学的有意差を示さない場合に、子宮内感染が存在すると結論を下す工程
    を包含する、方法。
  2. 前記哺乳動物被験体が、ヒトである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記タンパク質のうちの少なくとも3つの存在量を検査する工程を包含する、請求項2に記載の方法。
  4. 前記タンパク質のうちの4つすべての存在量を検査する工程を包含する、請求項2に記載の方法。
  5. プロフィリン−1(Swiss−Prot Acc.No.P07737);血清アルブミン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P2768);カルグラニュリンB(Swiss−Prot Acc.No.P06702);および扁平上皮癌抗原1(Swiss−Prot Acc.No.P29508)からなる群から選択される1つ以上のさらなるタンパク質の存在量を検査する工程をさらに包含する、請求項2に記載の方法。
  6. アルファ−1−抗トリプシン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P01009);フィブロネクチン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P02751);アネキシンA2(Swiss−Prot Acc.No.P07355);ビタミンD結合タンパク質前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P02774)からなる群から選択される1つ以上のさらなるタンパク質の存在量を検査する工程をさらに包含する、請求項2または請求項5に記載の方法。
  7. シスタチンA(Swiss−Prot Acc.No.P01040);ムチン−5B前駆体(Swiss−Prot Acc.No.Q9HC84);小型プロリンリッチタンパク質3(Swiss−Prot Acc.No.Q9UBC9);リゾチームC前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P61626);およびセロトランスフェリン前駆体(P02787)からなる群から選択される1つ以上のさらなるタンパク質の存在量を検査する工程をさらに包含する、請求項1または請求項5に記載の方法。
  8. シスタチンA(Swiss−Prot Acc.No.P01040);ムチン−5B前駆体(Swiss−Prot Acc.No.Q9HC84);小型プロリンリッチタンパク質3(Swiss−Prot Acc.No.Q9UBC9);リゾチームC前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P61626);およびセロトランスフェリン前駆体(P02787)からなる群から選択される1つ以上のさらなるタンパク質の存在量を検査する工程をさらに包含する、請求項6に記載の方法。
  9. 前記存在量が、イムノアッセイによって測定される、請求項2に記載の方法。
  10. 前記存在量が、質量分析によって測定される、請求項2に記載の方法。
  11. 前記存在量が、タンパク質アレイを用いて測定される、請求項2に記載の方法。
  12. 早期陣痛の症状を示している妊娠中の雌性哺乳動物被験体における早産の可能性を判定するための方法であって、
    (a)該被験体から得られた子宮頸部膣液のサンプルにおいて、ハプトグロビン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P00738);アルファ−1−酸糖タンパク質1(Swiss−Prot Acc.No.P02763)、表皮型脂肪酸結合タンパク質(Swiss−Prot Acc.No.Q01469)およびインスリン様成長因子結合タンパク質(Swiss−Prot Acc.No.P08833)からなる群から選択される2つ以上のタンパク質の存在量を、正常な子宮頸部液または子宮内感染を示していることが知られている子宮頸部液における存在量と比べて検査する工程;および
    (b)該存在量が、該正常な子宮頸部液における存在量と比べて統計学的有意差を示すか、または子宮内感染を示していることが知られている該子宮頸部液における存在量と比べて統計学的有意差を示さない場合に、早産の発生を予測する工程
    を包含する、方法。
  13. 前記哺乳動物被験体が、ヒトである、請求項12に記載の方法。
  14. 前記タンパク質のうちの少なくとも3つの存在量を検査する工程を包含する、請求項13に記載の方法。
  15. 前記タンパク質のうちの4つすべての存在量を検査する工程を包含する、請求項13に記載の方法。
  16. プロフィリン−1(Swiss−Prot Acc.No.P07737);血清アルブミン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P2768);カルグラニュリンB(Swiss−Prot Acc.No.P06702);および扁平上皮癌抗原1(Swiss−Prot Acc.No.P29508)からなる群から選択される1つ以上のさらなるタンパク質の存在量を検査する工程をさらに包含する、請求項13に記載の方法。
  17. アルファ−1−抗トリプシン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P01009);フィブロネクチン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P02751);アネキシンA2(Swiss−Prot Acc.No.P07355);ビタミンD結合タンパク質前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P02774)からなる群から選択される1つ以上のさらなるタンパク質の存在量を検査する工程をさらに包含する、請求項13または請求項16に記載の方法。
  18. シスタチンA(Swiss−Prot Acc.No.P01040);ムチン−5B前駆体(Swiss−Prot Acc.No.Q9HC84);小型プロリンリッチタンパク質3(Swiss−Prot Acc.No.Q9UBC9);リゾチームC前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P61626);およびセロトランスフェリン前駆体(P02787)からなる群から選択される1つ以上のさらなるタンパク質の存在量を検査する工程をさらに包含する、請求項13または請求項16に記載の方法。
  19. シスタチンA(Swiss−Prot Acc.No.P01040);ムチン−5B前駆体(Swiss−Prot Acc.No.Q9HC84);小型プロリンリッチタンパク質3(Swiss−Prot Acc.No.Q9UBC9);リゾチームC前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P61626);およびセロトランスフェリン前駆体(P02787)からなる群から選択される1つ以上のさらなるタンパク質の存在量を検査する工程をさらに包含する、請求項17に記載の方法。
  20. 前記存在量が、イムノアッセイによって測定される、請求項13に記載の方法。
  21. 前記存在量が、質量分析によって測定される、請求項13に記載の方法。
  22. 前記存在量が、タンパク質アレイを用いて測定される、請求項13に記載の方法。
  23. 早産の発生を、前記検査に基づいて予測することができない場合に、フィブロネクチン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P02751)の存在量について前記被験体をさらに検査し、該存在量が、前記正常な子宮頸部液における存在量と比べて統計学的有意差を示す場合に、早産の発生を予測する、請求項13に記載の方法。
  24. フィブロネクチン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P02751)の存在量を前記工程(a)の前に測定する、請求項13に記載の方法。
  25. ハプトグロビン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P00738);アルファ−1−酸糖タンパク質1(Swiss−Prot Acc.No.P02763);表皮型脂肪酸結合タンパク質(Swiss−Prot Acc.No.Q01469);およびインスリン様成長因子結合タンパク質(Swiss−Prot Acc.No.P08833)からなる群から選択される2つ以上のタンパク質を検出するための抗体および試薬を備えた、イムノアッセイキット。
  26. プロフィリン−1(Swiss−Prot Acc.No.P07737);血清アルブミン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P2768);カルグラニュリンB(Swiss−Prot Acc.No.P06702);扁平上皮癌抗原1(Swiss−Prot Acc.No.P29508);アルファ−1−抗トリプシン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P01009);フィブロネクチン前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P02751);アネキシンA2(Swiss−Prot Acc.No.P07355);ビタミン−D結合タンパク質前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P02774);シスタチンA(Swiss−Prot Acc.No.P01040);ムチン−5B前駆体(Swiss−Prot Acc.No.Q9HC84);小型プロリンリッチタンパク質3(Swiss−Prot Acc.No.Q9UBC9);リゾチームC前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P61626);およびセロトランスフェリン前駆体(P02787);シスタチンA(Swiss−Prot Acc.No.P01040);ムチン−5B前駆体(Swiss−Prot Acc.No.Q9HC84);小型プロリンリッチタンパク質3(Swiss−Prot Acc.No.Q9UBC9);およびリゾチームC前駆体(Swiss−Prot Acc.No.P61626);およびセロトランスフェリン前駆体(P02787)からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質を検出するための抗体および試薬をさらに備えている、請求項25に記載のイムノアッセイキット。
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