JP2013529907A - Ngalタンパク質変異体及びその使用 - Google Patents

Ngalタンパク質変異体及びその使用 Download PDF

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アンドン チウ
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Abstract

ある特徴では、本発明は、シデロフォア(例えばエンテロケリン)と結合し、さらに鉄をキレートしてこれを輸送する能力を有し、さらに尿中に排出される変異体NGALタンパク質に関する。そのようなNGAL変異体及びシデロフォアと前記の複合体を用い、例えば鉄過負荷の治療で過剰な鉄を身体から排除することができる。本発明のNGAL変異体はまた抗菌活性を有し、細菌性感染(例えば尿道感染)の治療で用いることができる。
【選択図】 なし

Description

本出願は、米国特許出願No.61/347587(2010年5月24日出願)及び米国特許出願No.61/354973(2010年6月15日出願)(前記出願の内容は参照によりその全体が本明細書に含まれる)の優先権を主張する。
本明細書に引用する全ての特許、特許出願及び刊行物は参照によりその全体が本明細書に含まれる。
本特許書類の明細書の一部分は著作権保護を受けるものを含む。本著作権者は、本特許書類又は明細書の何人によるファクシミリ複写も妨げないが、ただし特許商標局の出願書類の閲覧で行われる場合以外はこの限りではない。
本出願は、EFS-WebによりASCIIフォーマットで提出された配列表を含む(前記は参照によりその全体が本明細書に含まれる)。前記ASCIIコピー(2011年5月24日作成)は19248951.txtと称され、サイズは524,416バイトである。
NGAL(リポカリン2)は分子量が約22kDの小タンパク質である。NGALは鉄結合シデロフォア(例えばエンテロケリン)と高い親和性で結合し、したがって鉄をキレート及び輸送する。いったん細胞内で生成されると、NGALは細胞外間隙に分泌され腎臓に輸送され、そこでNGALは糸球体のろ過障壁を通り抜け、一次尿に入る。しかしながら、その後NGALは、近位細管上皮の先端側に局在するメガリンレセプターによって効率的に再吸収される。いったん再吸収されエンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれると、NGALはリソソームに輸送され分解される。いったん分解されると、NGALが腎臓へ輸送した一切の鉄が再吸収される。
本発明は部分的にはNGALタンパク質の変異型の開発に依拠する。前記変異型NGALタンパク質は腎臓で再吸収されず、したがって野生型NGALと異なり、尿中に顕著な量で排出される。野生型NGALと同様に、これらNGALの変異型は鉄結合シデロフォア(siderophore)(例えばエンテロケリン)と結合する能力を有する。したがって、これらのNGAL変異体は、尿への鉄の排出を促進することによって体外に鉄を排出するために用いることができる。したがって、本発明の変異体NGALタンパク質は、鉄過負荷並びに鉄過負荷に付随する疾患及び異常の治療に用いることができる。さらにまた、本発明の変異体NGALタンパク質は制菌活性を有し、尿道の細菌感染の治療に用いることができる。本発明のこれらの特徴及び他の特徴は、下記及び本出願の他の部分でより詳細に記述される。
ある実施態様では、本発明は、野生型ヒトNGALの配列(配列番号:1)と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列又はそのフラグメントを含む変異体NGALタンパク質を提供し、この場合、Lys 15、Lys 46、Lys 50、Lys 59、Lys 62、Lys 73、Lys 74、Lys 75、Lys 98、His 118、Arg 130、Lys 149及びHis 165の中の1つ以上の残基が、欠失によって又は正に荷電していないアミノ酸による置換によって変異し、さらに残基Asn 39、Ala 40、 Tyr 52、Ser 68、Trp 79、Arg 81、Tyr 100、Tyr 106、Phe 123、Lys 125、Tyr 132、Phe 133及びリジン134の1つ以上又は好ましくは全てが変異しないか又は保存的置換され、さらに本変異体NGALタンパク質は、シデロフォア及び/又はシデロフォア-鉄複合体と結合することができ、及び/又は尿中に排出され、及び/又は制菌活性を有する。
好ましい実施態様では、Lys 15、Lys 46、Lys 50、Lys 59、Lys 62、Lys 73、Lys 74、Lys 75、Lys 98、His 118、Arg 130、Lys 149及びHis 165の中の5、6,7,8、9,10又は11以上の残基が非正荷電アミノ酸(non-positively charged amino acid)により置換される。
いくつかの実施態様では、対象に変異体NGALタンパク質を全身投与した後で尿中に蓄積される変異体NGALタンパク質の%は、対象にWT NGALタンパク質を全身投与した後で尿中に蓄積されるWT NGALタンパク質の%より大きい。いくつかの実施態様では、対象に変異体NGALタンパク質を全身投与した後で尿中に蓄積される変異体NGALタンパク質の%は、対象にWT NGALタンパク質を全身投与した後で尿中に蓄積されるWT NGALタンパク質の%よりも10倍以上大きい。ある実施態様では、対象に変異体NGALタンパク質を全身投与して3時間後に尿中に蓄積される変異体NGALタンパク質の%は、1%以上、又は2%以上、又は5%以上、又は10%以上、又は20%以上である。これは、尿に蓄積されるWT NGALタンパク質の%よりも顕著に高い(対象に全身投与されたWT NGALの約0.1%だけが同じ時間の間に尿に蓄積される)。
いくつかの実施態様では、本発明は変異体NGALタンパク質をコードする核酸配列を提供する。いくつかの実施態様では、本発明は、作動するようにプロモーターに連結された前記のような核酸を含む発現ベクターを提供する。本発明はまた、前記のような核酸を安定的に発現し、組換えNGALタンパク質変異体の生産に有用であり得る細菌細胞及び哺乳動物細胞を提供する。
本発明はまた、本発明の変異体NGALタンパク質を含む医薬組成物及びそのような変異体NGALタンパク質とシデロフォア(例えばエンテロケリン、ピロガロール、カルボキシミコバクチン、カテコール又は前記の変種)との複合体を含む医薬組成物を提供する。
本発明はまた、鉄過負荷をその必要がある対象で治療する方法を提供し、前記方法は、変異体NGALタンパク質及びシデロフォアを含む医薬組成物の有効量を前記対象に投与する工程を含む。
本発明はまた、細菌性尿道感染をその必要がある対象で治療する方法を提供し、前記方法は、変異体NGALタンパク質を含む医薬組成物の有効量を前記対象に投与する工程を含む。
本発明のこれらの実施態様及び他の実施態様は、本出願の以下の部分(詳細な説明、実施例、特許請求の範囲及び図面を含む)でさらに記述される。
ヒト(HsNgal;NP_005555−WTヒトNGAL−配列番号:1)、マウス(MmNgal; NP_032517、配列番号:17)、ラット(RnNgal;NP_570097、配列番号:18)、チンパンジー(PtNgal;XP_001153985、配列番号:14)、ウシ(BtNgal; XP_605012、配列番号:16)、イヌ(CfNgal、配列番号:12)、イノシシ(SsNgal、配列番号:13)、アカゲザル(MamNgal、配列番号:15)及びウマ(エクヌス・カバルス(Equus caballus (Ec))NGAL、配列番号:11)のNgalタンパク質のアラインメント。ヒトNGALタンパク質配列は太字で示され、NGALタンパク質の表面のアミノ酸残基には下線が付されている。三角形及びひし形は、機能的なNgalタンパク質の表面の保存的及び非保存的正荷電残基(アルギニン(R)、リジン(K)及びヒスチジン(H))をそれぞれ示す。マゼンタ:正荷電残基、青:負荷電残基、赤:非極性及び疎水性残基、緑:極性及び親水性残基。 ヒト(配列番号:19)及びマウス(配列番号:20)のメガリンタンパク質の比較。ヒト及びマウスのメガリンタンパク質の配列はClastalW2(http://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw2/)を用いてアラインメントし、76%同一性及び87%類似性をそれぞれ有することが示された。 尿中での特異的な蓄積を示すNGAL変異体のスクリーニング(A)。NGAL変異体はエンテロケリン(Ent)及び55Fe3+と結合して複合体を形成する。アポNGAL変異体タンパク質(4nmol)を等モルのEnt及び55Fe3+と混合し、室温(RT)で30分間インキュベートした。続いて、10Kのカットオフを示すろ過カラムで前記混合物を4x5分間洗浄し、開始時の全55Fe3+に対するパーセンテージとしてNGAL結合Ent-55Fe3+を計算した。B-D:調製したNGAL-Ent-55Fe3+複合体をマウス(雌、4週)の腹腔内に注射し、尿(B)を代謝ケージ中で収集した。肝臓(C)及び腎臓(D)を切り出し、55Fe3+の蓄積を調べるために1MのNaOH及び2%SDS中で可溶化し、全NGAL-Ent-55Fe3+複合体のパーセンテージとして表した。 野生型NGAL及びK3変異体NGALタンパク質の比較(A)。野生型NGALタンパク質(アクセッション番号:1ng1A.pdb)の結晶構造を用いて、Swissmodel(http://swissmodel.expasy.org)でK3変異体タンパク質の3D構造を予測した。K3タンパク質のEnt-鉄結合ポケットの構成は、野生型NGALの構成と非常に類似していると予測される(B)。K3変異体タンパク質は、モデルにしたがった3D構造の野生型NGALと比較したとき、より低い正荷電残基(アルギニン、リジン及びヒスチジン)を含む。正荷電残基は球体-棒形の分子として示され、黄色は溶媒が近づくことができるNGALタンパク質表面を示している。 エンテロケリン及び55Fe3+とともに複合体を形成したNGAL変異体タンパク質を注入した後の55Fe3+の回収パーセンテージ。NGAL結合Ent-55Fe3+の量を開始時全55Fe3+のパーセンテージとして計算した。尿、腎臓、肺臓、脾臓、肝臓及び心臓における回収を示す。D1は配列番号:32、B1は配列番号:24、K1は配列番号:7、K2は配列番号:3、K3は配列番号:2、K5は配列番号:6、I5は配列番号:45である。 (A)左側からのエンテロケリン:鉄。グラム陰性生物の必須のシデロフォア。前記は骨格によって一緒に結合した3つのカテコール基で構成される。鉄(赤)は親和性10-49Mで結合する。(B)Ngalタンパク質の杯状部分内に親和性0.4nMで結合した右側からのエンテロケリン:鉄。変異体K1−K8は、本明細書に配列が提供される変異体D1-4、D1-4-1、D1-4-2-1、d1-4-2-1-1、d1-4-2-1-3、d1-4-2-1-4、WT-3及びD1-4-2を表す。 近位細管によるNgalのクリアランス。F1-Ngalを腹膜に導入し、1時間後に腎臓を採集した。Ngalは近位細管のリソソームに局在していた。変異体K1−K8は、本明細書に配列が提供される変異体D1-4、D1-4-1、D1-4-2-1、d1-4-2-1-1、d1-4-2-1-3、d1-4-2-1-4、WT-3及びD1-4-2を表す。 EntとFe3+との間(lmax=498nm)のリガンド-金属荷電伝達はNgalタンパク質の添加によって変化しなかったが(左の2つのチューブの赤の着色に留意されたい)、カテコール:Fe3+は、Ngalと結合したとき(右方のチューブ)、FeL複合体(青、lmax=575nm)からFeL3複合体(赤、lmax=498nm)に変化し、Ent:Feと同一のスペクトルを生じた。 Ngal結合55Feの血清から腎臓への輸送がラジオオートグラフィーによって可視化された。Ngal:Ent:55Fe又はNgal:カテコール:55Feの導入後、近位細管に黒色の銀粒子が認められるが遠位ネフロンには認められないことに留意されたい。変異体K1−K8は、本明細書に配列が提供される変異体D1-4、D1-4-1、D1-4-2-1、d1-4-2-1-1、d1-4-2-1-3、d1-4-2-1-4、WT-3及びD1-4-2を表す。 尿を野生型マウス及びメガリン欠失マウスから収集した。Ngalはポリクローナル抗マウスNgal抗体を用いてイムノブロットによって検出した。変異体K1−K8は、本明細書に配列が提供される変異体D1-4、D1-4-1、D1-4-2-1、d1-4-2-1-1、d1-4-2-1-3、d1-4-2-1-4、WT-3及びD1-4-2を表す。 抗Ngal抗体で染色したAKIのためのヒト腎生検。NGALとボーマン嚢との結合及び近位細管(赤褐色の染色)の先端エンドソームとの結合に留意されたい。変異体K1−K8は、本明細書に配列が提供される変異体D1-4、D1-4-1、D1-4-2-1、d1-4-2-1-1、d1-4-2-1-3、d1-4-2-1-4、WT-3及びD1-4-2を表す。 酸性化の結果としてNgalからリガンドが遊離する。低pHはNgal:カテコール:FeIIIから55Feを遊離させたが、Ngal:Ent:FeIIIからは遊離させなかった。pH7.0でのFeIIIのローディングをアッセイの100%と規定した。カテコールはEntと有意に相違した(P=0.00012)。変異体K1−K8は、本明細書に配列が提供される変異体D1-4、D1-4-1、D1-4-2-1、d1-4-2-1-1、d1-4-2-1-3、d1-4-2-1-4、WT-3及びD1-4-2を表す。 上、腹腔内注射(80mg)から3時間後の尿におけるwt及び変異体Ngalのウェスタンブロットによる尿免疫検出。中央、出発材料が精製WT及び変異体Ngalタンパク質(100mg)のイムノブロットを示す。下、SDS-Page及びクーマシー染色。変異体K1−K8は、変異体D1-4、D1-4-1、D1-4-2-1、d1-4-2-1-1、d1-4-2-1-3、d1-4-2-1-4、WT-3及びD1-4-2を表す。 55Fe3+は野生型及び変異体Ngal:Entの活性を維持。変異体K1−K8は、変異体D1-4、D1-4-1、D1-4-2-1、d1-4-2-1-1、d1-4-2-1-3、d1-4-2-1-4、WT-3及びD1-4-2を表す。 野生型Ngalとの複合体におけるシデロフォア:鉄の親和性の決定(A)。Ngalとシデロフォア(“L”)(B)又はNgalとFeIII-シデロフォア(“FeL3”)との蛍光消光分析。FeIIIは種々のカテコールに対するNgalの親和性を劇的に強化することに留意されたい。2,3DHBA=Ent。変異体K1−K8は、本明細書に配列が提供される変異体D1-4、D1-4-1、D1-4-2-1、d1-4-2-1-1、d1-4-2-1-3、d1-4-2-1-4、WT-3及びD1-4-2を表す。 野生型又は変異体Ngal:Entによってマウス尿にデリバーされた55Fe3+の解析。この図で、K1−K8は、変異体D1-4、D1-4-1、D1-4-2-1、d1-4-2-1-1、d1-4-2-1-3、d1-4-2-1-4、WT-3及びD1-4-2を表す。 Ngalは効率的にFeIIIをキレートする。HPFの蛍光(Ex 490nm、Em 515nm)への変換は、カテコール、鉄III及びH2O2(黒線)の存在下で検出されたが、Ngalの添加はこの反応を阻止した(灰色線);P<10-5。変異体K1−K8は、本明細書に配列が提供される変異体D1-4、D1-4-1、D1-4-2-1、d1-4-2-1-1、d1-4-2-1-3、d1-4-2-1-4、WT-3及びD1-4-2を表す。 K3 Ngal変異体は鉄のレドックス活性を阻害する。Fe(III)、カテコール及びH2O2によって生成された酸化性ラジカルは、蛍光プローブ3’-(p-ヒドロキシフェニル)フルオレセイン(HPF)によって検出され、酸化性ラジカルの生成は野生型(WT)及びK3 Ngalタンパク質によって完全に阻害された。 WT NGAL(配列番号:1)及びK3 NGAL変異体(配列番号:2)の配列及びアミノ酸アラインメントを示す。 左のチューブは、NGALは尿中で見出されるカテコール:Feと結合して明るい赤色を生じることを示す。前記チューブは、近位細管を迂回して鉄又はアポ-NGALを尿にデリバーすることができるNGALの変異体型を含む。右のチューブはアポ-NGALである。これらのデータは、K3変異体NGALはシデロフォア(例えばEnt:Fe)と結合することができ、したがって鉄を血液から尿へ輸送すると予想されることを示している。
詳細な説明
本発明は部分的には、腎臓で再吸収されず、したがって野生型NGALとは異なり尿中に排出されるNGALタンパク質の変異型の開発に依拠する。NGALのこれらの変異型は、鉄結合シデロフォア(例えばエンテロケリン)と結合する能力を有し、さらに尿への排出によって体外へ鉄を運び出すために用いることができる。したがって、本発明の変異体NGALタンパク質は、鉄過負荷並びに鉄過負荷に付随する疾患及び異常の治療に用いることができる。さらにまた、本発明の変異体NGALタンパク質は制菌活性を有し、尿道感染の治療に用いることができる。したがって、本発明は、変異体NGALタンパク質、そのような変異体NGALタンパク質(単独又はシデロフォアと複合体形成)を含む医薬組成物、並びに多様な異常および疾患の治療(例えば鉄過負荷に付随する疾患の治療及び尿道の細菌感染の治療)におけるそのような変異体NGALタンパク質及び組成物の使用を提供する。本発明のこれらの特徴及び他の特徴はさらに完全に下記で及び本出願の他の部分で述べる。
略語及び定義
略語“NGAL”は好中球ゼラチナーゼ関連リポカリンを指す。NGALはまた、当分野ではヒト好中球リポカリン、シデロカリン、a-ミクログロブリン関連タンパク質、Scn-NGAL、リポカリン2、24p3、超誘導性タンパク質24(SIP24)、ウテロカリン及びneu-関連リポカリンと称される。NGALのこれらの別称は本明細書では互換的に用いることがある。特段の記載がなければ、本明細書で用いられる“NGAL”という用語は、任意のNGALタンパク質、フラグメント又は変異体を含む。いくつかの実施態様では、NGALタンパク質は変異体NGALタンパク質である。
略語hNGALはヒトNGALを指す。
略語“WT”は野生型、例えば野生型ヌクレオチド又はアミノ酸配列を指す。
本明細書で用いられる“約”という用語は、ほぼ、ざっと、およそ又は…の範囲を意味する。“約”という用語が数で表される範囲と一緒に用いられるとき、表示された数値の上及び下に境界を広げることによって当該範囲が加減される。一般的に本明細書では、“約”という用語は、20%の上下変動(より高くし又はより低くすること)によって記載の値より上又は下に数値を加減するために用いられる。
NGAL
NGALは約22kDの分子量を有する小さなタンパク質であり、シデロフォア結合タンパク質である。シデロフォアは、鉄と結合しこれをキレートする有機分子である。細菌はシデロフォアエンテロケリンを生成し、哺乳動物は、カテコールと称される、同様なタイプであるがより単純な分子を内因的に発現する。エンテロケリンは鉄に対して極めて高い親和性を有し、野生型NGALはエンテロケリン-鉄複合体に対し高い親和性を有する。エンテロケリン-鉄-NGAL複合体はpH非感受性であり、結合した鉄はレドックス不活性である。したがって、そのようなNGAL複合体が結合した鉄は、酸素ラジカル生成の触媒に利用することができず、NGALはin vivoで使用される理想的な鉄キレート物質である。
NGALは(細胞内で生成されるや直ちに)細胞外間隙に分泌され、腎臓で迅速に排除される(半減期10分)。このタンパク質の血清及び尿レベルは、多数の疾患モデルで非常に高くなることがある。NGALタンパク質は健康なヒトの腎臓へ輸送され、糸球体のろ過障壁(ろ過のカットオフサイズは70kD)を通過して初期尿に入ることができるが、続いてNGALは、近位細管の上皮の先端側に局在するメガリン又はメガリン-キュビリン-キュビリンレセプターによって効率的に再吸収される。メガリンは広い基質特異性を有する遍在性レセプターであり、腎臓の近位細管の先端表面で発現される(そこでメガリンはタンパク質再吸収に中心的に関係する)。メガリンのその基質への結合はイオンの相互反応によって媒介され、その負に荷電した基質結合ドメインは尿のろ過物中のタンパク質の正に荷電した表面と効率的に結合することができる。いったん吸収されエンドサイトーシスによって取り込まれると直ちにNGALはリソソームに輸送され、そこで分解される。分解されると直ちに、NGALが腎臓に輸送した鉄は再吸収される。
NGAL変異体
本発明は変異体NGALタンパク質を提供する。前記変異体には変異が導入されて正荷電残基(メガリン相互作用に必要とされ得る)が除去されたものが含まれるが、ただし前記に限定されない。WT NGALと同様に、本発明のNGAL変異体はエンテロケリン-鉄複合体に対して高い親和性を有するが、メガリンに対しては有意に軽減された親和性を有するようである(表1)。したがって、腎臓のメガリンレセプター媒介機構によって再吸収されるのではなく、本発明のNGAL変異体、並びにエンテロケリン及び鉄とこれら変異体との複合体は腎臓で効率的に再吸収されず、その代わり尿中に排出される。したがって、本発明の変異体NGALタンパク質を用いて、身体から過剰な鉄を効率的に除去し、安全なレドックス不活性型で尿に輸送することができる。さらにまた、以前の報告は、NGAL-エンテロケリン-鉄がほとんどまたは全く化学的有害性又は細胞有害性をもたないことを示し、前記が治療で、例えば鉄過負荷に付随する疾患及び異常(例えばヘモクロマトーシス)の治療で安全に用いられる可能性を示唆している。
本明細書で用いられる“変異体NGALタンパク質”及び“Ngal変異体”という用語は、WTヒトNGALのアミノ酸配列(配列番号:1、図1のHsNGALの配列を参照されたい)と1つ以上のアミノ酸により相違するタンパク質又はアミノ酸配列を指す。
本発明の変異体NGALタンパク質は1つ以上の“非保存的”変異を有することができ、この場合、あるアミノ酸が異なる構造又は化学的特性を有する別のアミノ酸で置換される。本発明のいくつかの実施態様では、NGALタンパク質の表面の塩基性/正荷電リジン、アルギニン及び/又はヒスチジン残基(例えばメガリンと相互作用する残基)は、これらの残基を非塩基性/非正荷電残基で置換することによって変異が導入される。前記は非保存的変異である。例えば、本発明のいくつかの実施態様では、塩基性/正荷電リジン(Lys−K)、アルギニン(Arg−R)及び/又はヒスチジン(His−H)残基(例えばメガリン相互作用で必要とされ得るNGALタンパク質の表面の残基)は、非塩基性/非正荷電残基、例えばアラニン(Ala−A)、アスパラギン(Asn−N)、アスパラギン酸(Asp−D)、システイン(Cys−C)、グルタミン(Glu−Q)、グルタミン酸(Glu−E)、グリシン(Gly−G)、イソロイシン(Ile−I)、ロイシン(Leu−L)、メチオニン(Met−M)、フェニルアラニン(Phe−F)、プロリン(Pro−P)、セリン(Ser−S)、スレオニン(Thr−T)、トリプトファン(Trp−W)、チロシン(Tyr−Y)及びバリン(Val−V)で置換される。いくつかの実施態様では、塩基性/正荷電リジン、アルギニン及び/又はヒスチジンは負に荷電した残基、例えばアスパラギン酸(Asp−D)及びグルタミン酸(Glu−E)で置換される。
いくつかの実施態様では、本発明の変異体NGALタンパク質は1つ以上の“保存的”変異を有することができる。この場合、あるアミノ酸が同様な構造又は化学的特性を有する別のアミノ酸で置換される。例えば、いくつかの実施態様では、シデロフォア相互作用に必要とされるNGALの残基を無傷のままにしておくか、又はそれら前記で保存的変異を導入することが所望される。多様な他の保存的アミノ酸置換(例えば体外に鉄を輸送する本発明のNGAL変異体の能力を破壊しない保存的アミノ酸置換)をNGALタンパク質全体で実施することができる。保存的アミノ酸置換の1つのタイプは同様な側鎖を有する残基の互換性に依存する。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸グループは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシンである。脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸のグループはセリン及びスレオニンである。アミド含有側鎖を有するアミノ酸のグループはアスパラギン及びグルタミンである。芳香族側鎖を有するアミノ酸のグループはフェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンである。塩基性側鎖を有するアミノ酸のグループはリジン、アルギニン及びヒスチジンである。硫黄含有側鎖を有するアミノ酸のグループはシステイン及びメチオニンである。有用な保存的アミノ酸置換のグループは、バリン・ロイシン・イソロイシン、フェニルアラニン・チロシン、リジン・アルギニン、アラニン・バリン、及びアスパラギン・グルタミンである。
本発明の変異体NGALタンパク質は、本明細書(下記)で示す特定の残基の変異の他に、多様な変異(付加、欠失及び置換を含む)を含むことができる(例えばNGAL変異体のN-及び/又はC-末端への付加又は前記末端からの欠失を含む)。そのような変異はいずれも、当該NGAL変異体の能力(シデロフォアとの結合能力、鉄の輸送能力及び/又は尿中へ排出される能力)にそれら変異が悪影響を与えない程度に実施することができる。
更なる実施態様では、本発明のNGAL変異体は1つ以上の天然に存在しないアミノ酸を含むことができる。非天然アミノ酸(例えば、固有の側鎖官能基(ハロゲンを含む)、不飽和炭化水素、複素環、シリコン及び有機金属ユニットを含むアミノ酸)は、タンパク質の安定性の改善に利点を提供することができる。そのような天然に存在しないアミノ酸は多数知られている。そのような天然に存在しないアミノ酸を本発明のNGAL変異体で用いることができる。
ある種の実施態様では、本発明は、WTヒトNGAL又は他のいくつかのNGAL変異体と一定の%同一性を有するNGAL変異体を提供する。以下の用語は、2つ以上のポリヌクレオチド又はアミノ酸配列間における配列関係性を表すために用いられる:“配列同一性”、“配列同一性パーセンテージ”及び“同一性”。これらの用語は当分野におけるそれらの通常の意味にしたがって用いられる。配列同一性パーセンテージは参照配列に対して測定される。“配列同一性”という用語は、2つのポリヌクレオチド又はアミノ酸配列が同一であることを意味する(すなわち1ヌクレオチド毎の基準で)。“配列同一性のパーセンテージ”は、最適にアラインメントを実施した2つの配列を比較し、同一の核酸塩基又はアミノ酸が両配列に存在する位置の数を決定して一致する位置数を入手し、一致する位置数を総位置数で割り、さらに結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算する。
NGALにおける13の非保存陽性表面残基
NGALタンパク質は、種の間で保存されない13の塩基性/陽性アミノ酸残基、すなわちLys 15、Lys 46、Lys 50、Lys 59、Lys 62、Lys 73、Lys 74、Lys 75、Lys 98、His 118、Arg 130、Lys 149及びHis 165を含む。本出願で提示するデータは、これら13のアミノ酸残基の多様な組合せの変異が、WT NGALと同様にエンテロケリン-鉄と結合する能力を有するが、WT NGALとは異なり腎で効率的に再吸収されないNGAL変異体の創出をもたらすことを示す。そのようなNGAL変異体は、シデロフォア(例えばエンテロケリン)と複合体を形成するとき、尿へのその排出を促進することによって体外へ過剰な鉄を送り出すために用いることができる。そのようなNGALタンパク質はまた制菌活性を有し、尿道の細菌性感染の治療に用いることができる。
ある実施態様では、本発明の変異体NGALタンパク質は、WTヒトNGALのアミノ酸配列を土台にするが1つ以上の変異を含むアミノ酸配列又はそのフラグメントを含むか、前記から成るか、又は本質的に前記から成る。ある実施態様では、本発明は、WTヒトNGALと比較したとき以下のアミノ酸の位置のうち1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12又は13全てが変異したNGALを提供する:Lys 15、Lys 46、Lys 50、Lys 59、Lys 62、Lys 73、Lys 74、Lys 75、Lys 98、His 118、Arg 130、Lys 149及びHis 165。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき、列挙した13のアミノ酸の位置の5以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき、列挙した13のアミノ酸の位置の6以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき、列挙した13のアミノ酸の位置の7以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき、列挙した13のアミノ酸の位置の8以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき、列挙した13のアミノ酸の位置の9以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき、列挙した13のアミノ酸の位置の10以上が変異する。
ある実施態様では、変異アミノ酸残基は欠失される。別の実施態様では、変異アミノ酸残基は正に荷電していないアミノ酸で置換される(すなわち非保存的置換)。別の実施態様では、変異アミノ酸残基は負に荷電したアミノ酸で置換される(すなわち非保存的置換)。別の実施態様では、NGAL変異体はそのような変異の任意の組合せを含むことができる。すなわち、欠失、非正荷電アミノ酸による置換又は負荷電アミノ酸による置換の任意の組合せが、上記に列挙したアミノ酸残基のいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12又は13全てに存在し得る。好ましい実施態様では、そのようなNGAL変異体は、NGAL-エンテロケリン相互作用に必要とされる以下のアミノ酸残基の1つ以上で、又はより好ましくは全てで変異しないか(すなわちWTヒトNGALと同じアミノ酸配列を有する)、又はこれら残基で変異が導入されるならば保存的置換のみが導入される:アスパラギン39、アラニン40、チロシン52、セリン68、トリプトファン79、アルギニン81、チロシン100、チロシン106、フェニルアラニン123、リジン125、チロシン132、フェニルアラニン133及びリジン134。
ある好ましい実施態様では、本発明は、Lys(K)15が非荷電アミノ酸(Ser(S)を含むがただし前記に限定されない)で置換されるNGAL変異体を提供する。ある好ましい実施態様では、本発明は、Lys(K)46が負荷電アミノ酸(Glu(E)を含むがただし前記に限定されない)で置換されるNGAL変異体を提供する。ある好ましい実施態様では、本発明は、Lys(K)50が非荷電アミノ酸(Thr(T)を含むがただし前記に限定されない)で置換されるNGAL変異体を提供する。ある好ましい実施態様では、本発明は、Lys(K)59が非荷電アミノ酸(Gln(Q)を含むがただし前記に限定されない)で置換されるNGAL変異体を提供する。ある好ましい実施態様では、本発明は、Lys(K)62が非荷電アミノ酸(Gly(G)を含むがただし前記に限定されない)で置換されるNGAL変異体を提供する。ある好ましい実施態様では、本発明は、Lys(K)73が負荷電アミノ酸(Asp(D)を含むがただし前記に限定されない)で置換されるNGAL変異体を提供する。ある好ましい実施態様では、本発明は、Lys(K)74が負荷電アミノ酸(Asp(D)を含むがただし前記に限定されない)で置換されるNGAL変異体を提供する。ある好ましい実施態様では、本発明は、Lys(K)75が脂肪族アミノ酸(Gly(G)を含むがただし前記に限定されない)で置換されるNGAL変異体を提供する。ある好ましい実施態様では、本発明は、Lys(K)98が非荷電アミノ酸(Gln(Q)を含むがただし前記に限定されない)で置換されるNGAL変異体を提供する。ある好ましい実施態様では、本発明は、His(H)118が非極性アミノ酸(Phe(F)を含むがただし前記に限定されない)で置換されるNGAL変異体を提供する。ある好ましい実施態様では、本発明は、Arg(R)130が非荷電アミノ酸(Gln(Q)を含むがただし前記に限定されない)で置換されるNGAL変異体を提供する。ある好ましい実施態様では、本発明は、Lys(K)149が非荷電アミノ酸(Gln(Q)を含むがただし前記に限定されない)で置換されるNGAL変異体を提供する。ある好ましい実施態様では、本発明は、His(H)165が非荷電アミノ酸(Asn(N)を含むがただし前記に限定されない)で置換されるNGAL変異体を提供する。
ある実施態様では、本発明は、WTヒトNGALの配列(配列番号:1)と少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%同一であるアミノ酸配列、又はそのフラグメントを含むか、本質的に前記から成るか、又は前記から成るNGAL変異体を提供し、ここでLys 15、Lys 46、Lys 50、Lys 59、Lys 62、Lys 73、Lys 74、Lys 75、Lys 98、His 118、Arg 130、Lys 149及びHis 165の中の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12又は13全ての残基が欠失するか、又は正に荷電していないアミノ酸、例えば負に荷電したアミノ酸で置換され、さらに前記NGAL変異体は、(a)尿中に排出されるか、又はWTヒトNGALよりもはるかに高いレベルの尿中への排出を示し、及び/又は(b)腎臓の近位細管で再吸収されないか、又はWTヒトNGALと比較してより低レベルの腎近位細管再吸収を示し、及び/又は(c)メガリン-キュビリン-キュビリンレセプター媒介機構による腎再吸収の基質ではなく、及び/又は(d)WT NGALと比較してメガリン-キュビリン-レセプターに対して軽減親和性を有し、及び/又は(e)WTヒトNGALと比較してその溶媒接近可能表面により低い正荷電を有する残基を有し、さらにここで前記NGAL変異体はまた(i)シデロフォアと結合することができ、及び/又は(ii)鉄と複合体を形成したシデロフォアと結合することができ、及び/又は(iii)エンテロケリン結合ポケットの保全された三次元構造を有し、及び/又は(iv)制菌活性を有する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち5以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち6以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち7以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち8以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち9以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち10以上が変異する。好ましい実施態様では、そのようなNGAL変異体は、NGAL-エンテロケリン相互作用に必要とされる以下のアミノ酸残基の1つ以上で、又はより好ましくは全てで変異しないか(すなわちWTヒトNGALと同じアミノ酸配列を有する)、又はこれら残基で変異が導入されるならば保存的置換のみが導入される:アスパラギン39、アラニン40、チロシン52、セリン68、トリプトファン79、アルギニン81、チロシン100、チロシン106、フェニルアラニン123、リジン125、チロシン132、フェニルアラニン133及びリジン134。
本発明の例示的なNGAL変異体には、変異体K1、K2、K3、K5、I1、I3、F4、F5及びB2の配列(表2参照)を含むもの、又は前記の配列のフラグメント若しくは変種を含むものが含まれる。いくつかの実施態様では、そのような変種は、残基15、46、59、62、73、74、75、98、118、130、149及び165で表2に規定したアミノ酸配列を有するが、他のアミノ酸残基は、以下を条件として前記規定の配列と異なり得る:NGAL変異体は、WTヒトNGALの配列(配列番号:1)と少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%同一であるか、又は前記のフラグメントであり、さらにNGAL変異体は、(a)尿中に排出されるか、又はWTヒトNGALよりもはるかに高いレベルの尿中への排出を示し、及び/又は(b)腎臓の近位細管で再吸収されないか、又はWTヒトNGALと比較してより低レベルの腎近位細管再吸収を示し、及び/又は(c)メガリン-キュビリン-レセプター媒介機構による腎再吸収の基質ではなく、及び/又は(d)WT NGALと比較してメガリン-キュビリン-レセプターに対して軽減親和性を有し、及び/又は(e)WTヒトNGALと比較してその溶媒接近可能表面により低い正荷電を有する残基を有し、さらにまたNGAL変異体は(i)シデロフォアと結合することができ、及び/又は(ii)鉄と複合体を形成したシデロフォアと結合することができ、及び/又は(iii)エンテロケリン結合ポケットの保全された三次元構造を有し、及び/又は(iv)制菌活性を有する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち5以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち6以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち7以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち8以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち9以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち10以上が変異する。好ましい実施態様では、そのようなNGAL変異体は、NGAL-エンテロケリン相互作用に必要とされる以下のアミノ酸残基の1つ以上で、又はより好ましくは全てで変異しないか(すなわちWTヒトNGALと同じアミノ酸配列を有する)、又はこれら残基で変異が導入されるならば保存的置換のみが導入される:アスパラギン39、アラニン40、チロシン52、セリン68、トリプトファン79、アルギニン81、チロシン100、チロシン106、フェニルアラニン123、リジン125、チロシン132、フェニルアラニン133及びリジン134。
ある実施態様では、本発明は、K3 NGAL変異体の配列(配列番号:2)と少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的に前記から成るか、又は前記から成るNGAL変異体を提供し、ここで残基15、46、73、74、75、98、118、130、149及び165は各々WTヒトNGALの配列と異なり、各々は非正荷電アミノ酸であり、さらにここで、NGAL変異体は、(a)尿中に排出されるか、又はWTヒトNGALよりもはるかに高いレベルの尿中への排出を示し、及び/又は(b)腎臓の近位細管で再吸収されないか、又はWTヒトNGALと比較してより低レベルの腎近位細管再吸収を示し、及び/又は(c)メガリン-キュビリン-レセプター媒介機構による腎再吸収の基質ではなく、及び/又は(d)WT NGALと比較してメガリン-キュビリン-レセプターに対して軽減親和性を有し、及び/又は(e)WTヒトNGALと比較してその溶媒接近可能表面により低い正荷電を有する残基を有し、さらにここでNGAL変異体はまた(i)シデロフォアと結合することができ、及び/又は(ii)鉄と複合体を形成したシデロフォアと結合することができ、及び/又は(iii)エンテロケリン結合ポケットの保全された三次元構造を有し、及び/又は(iv)制菌活性を有する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち5以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち6以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち7以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち8以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち9以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち10以上が変異する。好ましい実施態様では、そのようなNGAL変異体は、NGAL-エンテロケリン相互作用に必要とされる以下のアミノ酸残基の1つ以上で、又はより好ましくは全てで変異しないか(すなわちWTヒトNGALと同じアミノ酸配列を有する)、又はこれら残基で変異が導入されるならば保存的置換のみが導入される:アスパラギン39、アラニン40、チロシン52、セリン68、トリプトファン79、アルギニン81、チロシン100、チロシン106、フェニルアラニン123、リジン125、チロシン132、フェニルアラニン133及びリジン134。
別の実施態様では、本発明は、K2 NGAL変異体の配列(配列番号:3)と少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的に前記から成るか、又は前記から成るNGAL変異体を提供し、ここで残基15、73、74、75、98、118、130、149及び165は各々WTヒトNGALの配列と異なり、各々は非正荷電アミノ酸であり、さらにここで、NGAL変異体は、(a)尿中に排出されるか、又はWTヒトNGALよりもはるかに高いレベルの尿中への排出を示し、及び/又は(b)腎臓の近位細管で再吸収されないか、又はWTヒトNGALと比較してより低レベルの腎近位細管再吸収を示し、及び/又は(c)メガリン-キュビリン-キュビリンレセプター媒介機構による腎再吸収の基質ではなく、及び/又は(d)WT NGALと比較してメガリン-キュビリン-キュビリンレセプターに対して軽減親和性を有し、及び/又は(e)WTヒトNGALと比較してその溶媒接近可能表面により低い正荷電を有する残基を有し、さらにここでNGAL変異体はまた(i)シデロフォアと結合することができ、及び/又は(ii)鉄と複合体を形成したシデロフォアと結合することができ、及び/又は(iii)エンテロケリン結合ポケットの保全された三次元構造を有し、及び/又は(iv)制菌活性を有する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち5以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち6以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち7以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち8以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち9以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち10以上が変異する。好ましい実施態様では、そのようなNGAL変異体は、NGAL-エンテロケリン相互作用に必要とされる以下のアミノ酸残基の1つ以上で、又はより好ましくは全てで変異しないか(すなわちWTヒトNGALと同じアミノ酸配列を有する)、又はこれら残基で変異が導入されるならば保存的置換のみが導入される:アスパラギン39、アラニン40、チロシン52、セリン68、トリプトファン79、アルギニン81、チロシン100、チロシン106、フェニルアラニン123、リジン125、チロシン132、フェニルアラニン133及びリジン134。
別の実施態様では、本発明は、I3 NGAL変異体の配列(配列番号:4)と少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的に前記から成るか、又は前記から成るNGAL変異体を提供し、ここで残基62、73、74、75及び98は各々WTヒトNGALの配列と異なり、各々は非正荷電アミノ酸であり、さらにここで、NGAL変異体は、(a)尿中に排出されるか、又はWTヒトNGALよりもはるかに高いレベルの尿中への排出を示し、及び/又は(b)腎臓の近位細管で再吸収されないか、又はWTヒトNGALと比較してより低レベルの腎近位細管再吸収を示し、及び/又は(c)メガリン-キュビリン-キュビリンレセプター媒介機構による腎再吸収の基質ではなく、及び/又は(d)WT NGALと比較してメガリン-キュビリン-キュビリンレセプターに対して軽減親和性を有し、及び/又は(e)WTヒトNGALと比較してその溶媒接近可能表面により低い正荷電を有する残基を有し、さらにここでNGAL変異体はまた(i)シデロフォアと結合することができ、及び/又は(ii)鉄と複合体を形成したシデロフォアと結合することができ、及び/又は(iii)エンテロケリン結合ポケットの保全された三次元構造を有し、及び/又は(iv)制菌活性を有する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち5以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち6以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち7以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち8以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち9以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち10以上が変異する。好ましい実施態様では、そのようなNGAL変異体は、NGAL-エンテロケリン相互作用に必要とされる以下のアミノ酸残基の1つ以上で、又はより好ましくは全てで変異しないか(すなわちWTヒトNGALと同じアミノ酸配列を有する)、又はこれら残基で変異が導入されるならば保存的置換のみが導入される:アスパラギン39、アラニン40、チロシン52、セリン68、トリプトファン79、アルギニン81、チロシン100、チロシン106、フェニルアラニン123、リジン125、チロシン132、フェニルアラニン133及びリジン134。
別の実施態様では、本発明は、I1 NGAL変異体の配列(配列番号:5)と少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的に前記から成るか、又は前記から成るNGAL変異体を提供し、ここで残基15、73、74、75及び130は各々WTヒトNGALの配列と異なり、各々は非正荷電アミノ酸であり、さらにここで、NGAL変異体は、(a)尿中に排出されるか、又はWTヒトNGALよりもはるかに高いレベルの尿中への排出を示し、及び/又は(b)腎臓の近位細管で再吸収されないか、又はWTヒトNGALと比較してより低レベルの腎近位細管再吸収を示し、及び/又は(c)メガリン-キュビリン-レセプター媒介機構による腎再吸収の基質ではなく、及び/又は(d)WT NGALと比較してメガリン-キュビリン-レセプターに対して軽減親和性を有し、及び/又は(e)WTヒトNGALと比較してその溶媒接近可能表面により低い正荷電を有する残基を有し、さらにここでNGAL変異体はまた(i)シデロフォアと結合することができ、及び/又は(ii)鉄と複合体を形成したシデロフォアと結合することができ、及び/又は(iii)エンテロケリン結合ポケットの保全された三次元構造を有し、及び/又は(iv)制菌活性を有する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち5以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち6以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち7以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち8以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち9以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち10以上が変異する。好ましい実施態様では、そのようなNGAL変異体は、NGAL-エンテロケリン相互作用に必要とされる以下のアミノ酸残基の1つ以上で、又はより好ましくは全てで変異しないか(すなわちWTヒトNGALと同じアミノ酸配列を有する)、又はこれら残基で変異が導入されるならば保存的置換のみが導入される:アスパラギン39、アラニン40、チロシン52、セリン68、トリプトファン79、アルギニン81、チロシン100、チロシン106、フェニルアラニン123、リジン125、チロシン132、フェニルアラニン133及びリジン134。
別の実施態様では、本発明は、K5 NGAL変異体の配列(配列番号:6)と少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的に前記から成るか、又は前記から成るNGAL変異体を提供し、ここで残基15、46、98、118、130、149および165は各々WTヒトNGALの配列と異なり、各々は非正荷電アミノ酸であり、さらにここで、NGAL変異体は、(a)尿中に排出されるか、又はWTヒトNGALよりもはるかに高いレベルの尿中への排出を示し、及び/又は(b)腎臓の近位細管で再吸収されないか、又はWTヒトNGALと比較してより低レベルの腎近位細管再吸収を示し、及び/又は(c)メガリン-キュビリン-レセプター媒介機構による腎再吸収の基質ではなく、及び/又は(d)WT NGALと比較してメガリン-キュビリン-レセプターに対して軽減親和性を有し、及び/又は(e)WTヒトNGALと比較してその溶媒接近可能表面により低い正荷電を有する残基を有し、さらにここでNGAL変異体はまた(i)シデロフォアと結合することができ、及び/又は(ii)鉄と複合体を形成したシデロフォアと結合することができ、及び/又は(iii)エンテロケリン結合ポケットの保全された三次元構造を有し、及び/又は(iv)制菌活性を有する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち5以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち6以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち7以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち8以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち9以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち10以上が変異する。好ましい実施態様では、そのようなNGAL変異体は、NGAL-エンテロケリン相互作用に必要とされる以下のアミノ酸残基の1つ以上で、又はより好ましくは全てで変異しないか(すなわちWTヒトNGALと同じアミノ酸配列を有する)、又はこれら残基で変異が導入されるならば保存的置換のみが導入される:アスパラギン39、アラニン40、チロシン52、セリン68、トリプトファン79、アルギニン81、チロシン100、チロシン106、フェニルアラニン123、リジン125、チロシン132、フェニルアラニン133及びリジン134。
別の実施態様では、本発明は、F4 NGAL変異体の配列(配列番号:8)と少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的に前記から成るか、又は前記から成るNGAL変異体を提供し、ここで残基15及び46は各々WTヒトNGALの配列と異なり、各々は非正荷電アミノ酸であり、さらにここで、NGAL変異体は、(a)尿中に排出されるか、又はWTヒトNGALよりもはるかに高いレベルの尿中への排出を示し、及び/又は(b)腎臓の近位細管で再吸収されないか、又はWTヒトNGALと比較してより低レベルの腎近位細管再吸収を示し、及び/又は(c)メガリン-キュビリン-レセプター媒介機構による腎再吸収の基質ではなく、及び/又は(d)WT NGALと比較してメガリン-キュビリン-レセプターに対して軽減親和性を有し、及び/又は(e)WTヒトNGALと比較してその溶媒接近可能表面により低い正荷電を有する残基を有し、さらにここでNGAL変異体はまた(i)シデロフォアと結合することができ、及び/又は(ii)鉄と複合体を形成したシデロフォアと結合することができ、及び/又は(iii)エンテロケリン結合ポケットの保全された三次元構造を有し、及び/又は(iv)制菌活性を有する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち5以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち6以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち7以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち8以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち9以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち10以上が変異する。好ましい実施態様では、そのようなNGAL変異体は、NGAL-エンテロケリン相互作用に必要とされる以下のアミノ酸残基の1つ以上で、又はより好ましくは全てで変異しないか(すなわちWTヒトNGALと同じアミノ酸配列を有する)、又はこれら残基で変異が導入されるならば保存的置換のみが導入される:アスパラギン39、アラニン40、チロシン52、セリン68、トリプトファン79、アルギニン81、チロシン100、チロシン106、フェニルアラニン123、リジン125、チロシン132、フェニルアラニン133及びリジン134。
別の実施態様では、本発明は、F5 NGAL変異体の配列(配列番号:9)と少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的に前記から成るか、又は前記から成るNGAL変異体を提供し、ここで残基15、46及び165は各々WTヒトNGALの配列と異なり、各々は非正荷電アミノ酸であり、さらにここで、NGAL変異体は、(a)尿中に排出されるか、又はWTヒトNGALよりもはるかに高いレベルの尿中への排出を示し、及び/又は(b)腎臓の近位細管で再吸収されないか、又はWTヒトNGALと比較してより低レベルの腎近位細管再吸収を示し、及び/又は(c)メガリン-キュビリン-レセプター媒介機構による腎再吸収の基質ではなく、及び/又は(d)WT NGALと比較してメガリン-キュビリン-レセプターに対して軽減親和性を有し、及び/又は(e)WTヒトNGALと比較してその溶媒接近可能表面により低い正荷電を有する残基を有し、さらにここでNGAL変異体はまた(i)シデロフォアと結合することができ、及び/又は(ii)鉄と複合体を形成したシデロフォアと結合することができ、及び/又は(iii)エンテロケリン結合ポケットの保全された三次元構造を有し、及び/又は(iv)制菌活性を有する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち5以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち6以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち7以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち8以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち9以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち10以上が変異する。好ましい実施態様では、そのようなNGAL変異体は、NGAL-エンテロケリン相互作用に必要とされる以下のアミノ酸残基の1つ以上で、又はより好ましくは全てで変異しないか(すなわちWTヒトNGALと同じアミノ酸配列を有する)、又はこれら残基で変異が導入されるならば保存的置換のみが導入される:アスパラギン39、アラニン40、チロシン52、セリン68、トリプトファン79、アルギニン81、チロシン100、チロシン106、フェニルアラニン123、リジン125、チロシン132、フェニルアラニン133及びリジン134。
別の実施態様では、本発明は、B2 NGAL変異体の配列(配列番号:10)と少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的に前記から成るか、又は前記から成るNGAL変異体を提供し、ここで残基15、46、118及び165は各々WTヒトNGALの配列と異なり、各々は非正荷電アミノ酸であり、さらにここで、NGAL変異体は、(a)尿中に排出されるか、又はWTヒトNGALよりもはるかに高いレベルの尿中への排出を示し、及び/又は(b)腎臓の近位細管で再吸収されないか、又はWTヒトNGALと比較してより低レベルの腎近位細管再吸収を示し、及び/又は(c)メガリン-キュビリン-レセプター媒介機構による腎再吸収の基質ではなく、及び/又は(d)WT NGALと比較してメガリン-キュビリン-レセプターに対して軽減親和性を有し、及び/又は(e)WTヒトNGALと比較してその溶媒接近可能表面により低い正荷電を有する残基を有し、さらにここでNGAL変異体はまた(i)シデロフォアと結合することができ、及び/又は(ii)鉄と複合体を形成したシデロフォアと結合することができ、及び/又は(iii)エンテロケリン結合ポケットの保全された三次元構造を有し、及び/又は(iv)制菌活性を有する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち5以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち6以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち7以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち8以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち9以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち10以上が変異する。好ましい実施態様では、そのようなNGAL変異体は、NGAL-エンテロケリン相互作用に必要とされる以下のアミノ酸残基の1つ以上で、又はより好ましくは全てで変異しないか(すなわちWTヒトNGALと同じアミノ酸配列を有する)、又はこれら残基で変異が導入されるならば保存的置換のみが導入される:アスパラギン39、アラニン40、チロシン52、セリン68、トリプトファン79、アルギニン81、チロシン100、チロシン106、フェニルアラニン123、リジン125、チロシン132、フェニルアラニン133及びリジン134。
別の実施態様では、本発明は、K1 NGAL変異体の配列(配列番号:7)と少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を含むか、本質的に前記から成るか、又は前記から成るNGAL変異体を提供し、ここで残基15、46、59、98、118、130、149及び165は各々WTヒトNGALの配列と異なり、各々は非正荷電アミノ酸であり、さらにここで、NGAL変異体は、(a)尿中に排出されるか、又はWTヒトNGALよりもはるかに高いレベルの尿中への排出を示し、及び/又は(b)腎臓の近位細管で再吸収されないか、又はWTヒトNGALと比較してより低レベルの腎近位細管再吸収を示し、及び/又は(c)メガリン-キュビリン-レセプター媒介機構による腎再吸収の基質ではなく、及び/又は(d)WT NGALと比較してメガリン-キュビリン-レセプターに対して軽減親和性を有し、及び/又は(e)WTヒトNGALと比較してその溶媒接近可能表面により低い正荷電を有する残基を有し、さらにここでNGAL変異体はまた(i)シデロフォアと結合することができ、及び/又は(ii)鉄と複合体を形成したシデロフォアと結合することができ、及び/又は(iii)エンテロケリン結合ポケットの保全された三次元構造を有し、及び/又は(iv)制菌活性を有する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち5以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち6以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち7以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち8以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち9以上が変異する。いくつかの実施態様では、WTヒトNGALと比較したとき列挙した13のアミノ酸の位置のうち10以上が変異する。好ましい実施態様では、そのようなNGAL変異体は、NGAL-エンテロケリン相互作用に必要とされる以下のアミノ酸残基の1つ以上で、又はより好ましくは全てで変異しないか(すなわちWTヒトNGALと同じアミノ酸配列を有する)、又はこれら残基で変異が導入されるならば保存的置換のみが導入される:アスパラギン39、アラニン40、チロシン52、セリン68、トリプトファン79、アルギニン81、チロシン100、チロシン106、フェニルアラニン123、リジン125、チロシン132、フェニルアラニン133及びリジン134。
更なる実施態様では、13の非保存陽性/塩基性表面残基の1つ以上で変異を有する上記に記載のNGAL変異体はまた、下記の5つの保存陽性/塩基性表面残基における1つ以上の変異、又はこの詳細な説明の以下の他の部分に記載する他の変異の1つ以上を有することができる。
NGALにおける5つの保存陽性/塩基性表面残基
NGALタンパク質は、ヒト、ラット、マウス、チンパンジー、乳牛、イヌ、イノシシ及びアカゲザルの種間で保存されている5つの塩基性/陽性表面アミノ酸、すなわち残基Arg(R)43、Arg(R)72、Arg(R)140、Lys(K)142及びLys(K)157を含む。ある実施態様では、本発明は、WTヒトNGALと比較したときこれらアミノ酸の位置の1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ全てが変異したNGAL変異体を提供する。ある実施態様では、前記変異アミノ酸残基は欠失される。別の実施態様では、前記変異アミノ酸残基は非正荷電アミノ酸で置換される(すなわち非保存的変異)。別の実施態様では、前記変異アミノ酸残基は負荷電アミノ酸で置換される(すなわち非保存的変異)。別の実施態様では、NGAL変異体はそのような変異の任意の組合せを含むことができる。すなわち、欠失、非正荷電アミノ酸による置換又は負荷電アミノ酸による置換の任意の組合せを、上記に列挙したアミノ酸残基の1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つで提供することができる。
ある実施態様では、本発明は、WTヒトNGALの配列(配列番号:1)と少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%同一であるアミノ酸配列、又はそのフラグメントを含むか、本質的に前記から成るか、又は前記から成るNGAL変異体を提供し、ここでArg(R)43、Arg(R)72、Arg(R)140、Lys(K)142及びLys(K)157の中の1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ全てが欠失するか、又は非正荷電アミノ酸(例えば負荷電アミノ酸)で置換され、さらにここで、NGAL変異体は、(a)尿中に排出されるか、又はWTヒトNGALよりもはるかに高いレベルの尿中への排出を示し、及び/又は(b)腎臓の近位細管で再吸収されないか、又はWTヒトNGALと比較してより低レベルの腎近位細管再吸収を示し、及び/又は(c)メガリン-キュビリン-レセプター媒介機構による腎再吸収の基質ではなく、及び/又は(d)WT NGALと比較してメガリン-キュビリン-レセプターに対して軽減親和性を有し、及び/又は(e)WTヒトNGALと比較してその溶媒接近可能表面により低い正荷電を有する残基を有し、さらにここでNGAL変異体はまた(i)シデロフォアと結合することができ、及び/又は(ii)鉄と複合体を形成したシデロフォアと結合することができ、及び/又は(iii)エンテロケリン結合ポケットの保全された三次元構造を有し、及び/又は(iv)制菌活性を有する。好ましい実施態様では、そのようなNGAL変異体は、NGAL-エンテロケリン相互作用に必要とされる以下のアミノ酸残基の1つ以上で、又はより好ましくは全てで変異しないか(すなわちWTヒトNGALと同じアミノ酸配列を有する)、又はこれら残基で変異が導入されるならば保存的置換のみが導入される:アスパラギン39、アラニン40、チロシン52、セリン68、トリプトファン79、アルギニン81、チロシン100、チロシン106、フェニルアラニン123、リジン125、チロシン132、フェニルアラニン133及びリジン134。
更なる実施態様では、詳細な説明のこの部分に記載した、5つの保存陽性/塩基性表面残基の1つ以上で変異を有するNGAL変異体はまた、詳細な説明の先の部分に記載した13の非保存陽性/塩基性表面残基の1つ以上の変異、又はこの詳細な説明の以下の部分に記載する他の変異の1つ以上を有することができる。
NGALの補足的表面残基
以下のアミノ酸残基はNGALタンパク質の表面に位置し、NGALタンパク質とメガリンタンパク質との相互作用で、及び/又は腎臓におけるNALの再吸収で役割を果たすことができる:アミノ酸残基1−15、17−26、40−50、57−62、71−82、84−89、96−105、114−118、128−131、134、140−151、157−165及び170−174。
ある実施態様では、本発明の変異体NGALタンパク質は、ヒトNGALのアミノ酸配列を土台とするが、WTヒトNGALの残基1−15、17−26、40−50、57−62、71−82、84−89、96−105、114−118、128−131、134、140−151、157−165及び170−174に位置する個々のアミノ酸残基の1つ以上で変異を含むアミノ酸配列またはそのフラグメントを含むか、前記から成るか、又は本質的に前記から成る。別の実施態様では、前記変異アミノ酸残基の1つ以上が欠失され得る。別の実施態様では、前記変異アミノ酸残基は、非正荷電アミノ酸(負荷電アミノ酸を含むが、ただしこれに限定されない)で置換され得る。別の実施態様では、NGAL変異体はそのような変異の任意の組合せ(すなわち、上記列挙のアミノ酸残基の任意の1つ以上における、欠失、非正荷電アミノ酸による置換及び/又は負荷電アミノ酸による置換の任意の組合せ)を含むことができる。表2は、本発明で意図されるNGALの表面残基における全ての可能な変異の詳細を提供する。好ましい実施態様では、そのようなNGAL変異体は、NGAL-エンテロケリン相互作用に必要とされる以下のアミノ酸残基の1つ以上で、又はより好ましくは全てで変異しないか(すなわちWTヒトNGALと同じアミノ酸配列を有する)、又はこれら残基で変異が導入されるならば保存的置換のみが導入される:アスパラギン39、アラニン40、チロシン52、セリン68、トリプトファン79、アルギニン81、チロシン100、チロシン106、フェニルアラニン123、リジン125、チロシン132、フェニルアラニン133及びリジン134。
ある実施態様では、本発明は、WTヒトNGALの配列(配列番号:1)と少なくとも70%、又は少なくとも75%、又は少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%同一であるアミノ酸配列、又はそのフラグメントを含むか、本質的に前記から成るか、又は前記から成るNGAL変異体を提供し、ここでWTヒトNGALの残基1−15、17−26、40−50、57−62、71−82、84−89、96−105、114−118、128−131、134、140−151、157−165及び170−174に位置する個々のアミノ酸残基の1つ以上は欠失されるか、又は非正荷電アミノ酸(例えば負荷電アミノ酸)で置換され、さらにここで、NGAL変異体は、(a)尿中に排出されるか、又はWTヒトNGALよりもはるかに高いレベルの尿中への排出を示し、及び/又は(b)腎臓の近位細管で再吸収されないか、又はWTヒトNGALと比較してより低レベルの腎近位細管再吸収を示し、及び/又は(c)メガリン-キュビリン-レセプター媒介機構による腎再吸収の基質ではなく、及び/又は(d)WT NGALと比較してメガリン-キュビリン-レセプターに対して軽減親和性を有し、及び/又は(e)WTヒトNGALと比較してその溶媒接近可能表面により低い正荷電を有する残基を有し、さらにここでNGAL変異体は(i)シデロフォアと結合することができ、及び/又は(ii)鉄と複合体を形成したシデロフォアと結合することができ、及び/又は(iii)エンテロケリン結合ポケットの保全された三次元構造を有し、及び/又は(iv)制菌活性を有する。好ましい実施態様では、そのようなNGAL変異体は、NGAL-エンテロケリン相互作用に必要とされる以下のアミノ酸残基の1つ以上で、又はより好ましくは全てで変異しないか(すなわちWTヒトNGALと同じアミノ酸配列を有する)、又はこれら残基で変異が導入されるならば保存的置換のみが導入される:アスパラギン39、アラニン40、チロシン52、セリン68、トリプトファン79、アルギニン81、チロシン100、チロシン106、フェニルアラニン123、リジン125、チロシン132、フェニルアラニン133及びリジン134。
NGAL変異体の機能的特性
ある種の実施態様では、本発明の変異体NGALタンパク質は一定の規定された機能を有する。例えばいくつかの実施態様では、本発明の変異体NGALタンパク質は以下の特性の1つ以上を有する:(a)それらは尿中に排出されるか、又はWTヒトNGALよりもはるかに高いレベルの尿中への排出を示し、及び/又は(b)それらは腎臓の近位細管で再吸収されないか、又はWTヒトNGALよりも低い腎近位細管再吸収レベルを示し、及び/又は(c)それらはメガリン-キュビリン-レセプター媒介機構による腎再吸収の基質ではない。同様に、いくつかの実施態様では、本発明の変異体NGALタンパク質は以下の特性の1つ以上を有する:(i)それらはエンテロケリン型シデロフォアと結合することができ、及び/又は(ii)それらは鉄と複合体を形成したエンテロケリン型シデロフォアと結合することができ、及び/又は(iii)それらはエンテロケリン結合ポケットの保全された三次元構造を有し、及び/又は(iv)それらは制菌活性を有する。
本発明の変異体NGALタンパク質の上記の特性の各々はそれについて試験し及び/又は定量することができ、いくつかの実施態様では、本発明の変異体NGALタンパク質は一定の数値的範囲内に収まる機能的特性を有する。
例えばいくつかの実施態様では、本発明の変異体NGALタンパク質は尿中に排出されるか、又はWTヒトNGALよりもはるかに高いレベルの尿中への排出を示す。本発明の変異体NGALタンパク質の排出は、例えば本出願の実施例の部分に記載する方法を用いて検出及び定量することができる。例えば、対象(例えばマウスまたはヒト対象)へのその投与からある時間後に尿中に存在する変異体NGALタンパク質の量を測定することが可能で、投与総量のパーセンテージとして表し(実施例及び表1参照)、尿中の%蓄積を提供することができる。あるNGAL変異体の尿中の%蓄積を他の変異体又はWT NGALの%蓄積と比較することができる。NGAL若しくはNGAL変異体又は前記のシデロフォア複合体を放射能標識するか(例えば放射性鉄で)、又はいくつかの他の検出可能部分で標識してその検出及び定量を容易にすることができる。いくつかの実施態様では、本発明の変異体NGALタンパク質はWTヒトNGALよりもはるかに高いレベルの尿中への排出を示す。例えばNGAL変異体は、WTヒトNGALよりも6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、100倍、又はそれより高いレベルの尿中排出を示すことができる。図5で分かるように、WT NGALは0.2%未満の尿中%蓄積を有することができる(腹腔に投与した量の%として測定)。対照的に、図3、図5及び表1から分かるように、本発明のNGAL変異体は、1%を超える、又は2%を超える、又は3%を超える、又は4%を超える、又は5%を超える、又は6%を超える、又は7%を超える、又は8%を超える、又は9%を超える、又は10%を超える、又は15%を超える、又は20%を超える、又は前記を超える尿中%蓄積を有することができる(投与後3時間の腹腔投与量の%として測定)。
いくつかの実施態様では、本発明の変異体NGALタンパク質はシデロフォア(例えばエンテロケリン)と結合することができ、及び/又はそれらは鉄と複合体を形成したシデロフォアと結合することができる。シデロフォア及びシデロフォア-鉄複合体と結合する本発明のNGAL変異体の能力は、例えば本出願の実施例の部分に記載する方法を用いて試験及び/又は定量することができる。例えばNGAL(本発明のNGAL変異体を含む)及びシデロフォア分子(例えばエンテロケリン)及び鉄は1:1:1の分子比で互いに結合し、さらにNGAL(本発明のNGAL変異体を含む)及びシデロフォア分子(例えばカテコール)及び鉄は1:3:1の分子比で互いに結合する。したがって鉄の放射能標識型を用いて、NGALとシデロフォア分子及び鉄との結合を、あるNGALタンパク質によって保持される放射能標識鉄の%を調べることによって測定または概算することができる。保持される鉄(鉄-シデロフォア)の%を、複数のNGAL変異体間で又は1つのNGAL変異体とWT NGAL間で比較することができる。いくつかの実施態様では、本発明の変異体NGALタンパク質は、WT NGALと比較したとき同様な鉄((鉄-シデロフォア)保持%を示す。いくつかの実施態様では、本発明の変異体NGALタンパク質は、WT NGALと比較したときより高い鉄(鉄-シデロフォア)保持%、例えば1.5倍、2倍、2.5倍又は前記より大きな倍数の高い鉄(鉄-シデロフォア)保持%を示す。いくつかの実施態様では、本発明の変異体NGALタンパク質は、約20%以上又は約30%以上又は約40%以上の鉄(鉄-シデロフォア)保持%を示す。
いくつかの実施態様では、本発明の変異体NGALタンパク質は抗菌活性を有する。本発明のNGAL変異体の抗菌活性は、例えば当分野で公知の標準的な方法論を用いて、例えばNGAL変異体の存在下で細菌を培養し、細菌の増殖、生存、数などに対するNGAL変異体の影響をNGAL変異体が存在しないコントロール条件と比較して評価することによって試験及び定量することができる。
非NGALリポカリン
NGALの変異体の他に、本発明はまた、シデロフォア-鉄複合体との結合能力を有するが腎臓で再吸収されない他のリポカリンの変異体を作製し得ることも予期する。そのようなリポカリン変異体を本明細書に記載のNGAL変異体と同様に用いて体外に鉄を輸送し、したがって鉄過負荷疾患の治療で用い得ることが期待される。そのようなリポカリン変異体を尿道の細菌感染の治療に用い得ることもまた期待される。
リポカリンファミリーには約20の公知のタンパク質が存在する。シデロフォア-鉄複合体と結合する、任意のリポカリンタンパク質又はそのホモローグ、変種、誘導体、フラグメント若しくは変種を変異させて、本発明のリポカリン変異体を提供することができる。本発明にしたがって用いることができるリポカリンの例には、レチノール結合タンパク質、リポカリンアレルゲン、アフロディシン、アルファ-2-ミクログロブリン、プロスタグランジンDシンターゼ、ベータ-ラクトグロブリン、ビリン-結合タンパク質、ニトロフォリン、リポカリン1、リポカリン12及びリポカリン13が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
シデロフォア
シデロフォアは高親和性の鉄(例えばFe+3)結合化合物である。公知のシデロフォアの大半が細菌によって産生される。細菌は、鉄を除去又はキレートし、鉄を細菌内に輸送する(細菌の生存に必要なプロセス)目的のために、周囲環境にシデロフォアを放出する。当分野で公知のシデロフォアには、TRENCAM、MECAM、TRENCAM-3,2-HOPO、パラバクチン、カルボキシミコバクチン、フシゲン、トリアセチルフサリニン、フェリクローム、コプロゲン、ロドトルール酸(rhodotorulic acid)、オルニバクチン、エクソケリン、フェリオキサミン、デスフェリオキサミンB、エーロバクチン、フェリクローム、リゾフェリン、ピオケリン、ピオベルジンが含まれるが、ただしこれらに限定されない。これらの化合物の構造は以下に記載されている:Holmes et al., Structure, 2005, 13:29-41 and Flo et al., Nature, 2004, 432: 917-921(前記文献は参照により本明細書に含まれ)。
上記のシデロフォアのいくつかはリポカリン(NGALを含む)と結合することが知られていて、これらシデロフォアとリポカリンの複合体は鉄と結合できることが知られている(例えば以下を参照されたい:Holmes et al., Structure, 2005, 13:29-41;Flo et al., Nature, 2004, 432: 917-921;Goetz et al, Molecular Cell, 2002, 10: 1033-1043;Mori, et al., “Endocytic delivery of lipocalin-siderophore-iron complex rescues the kidney from ischemia-reperfusion injury.” J. Clin Invest., 2005, 115, 610-621)。本発明の変異体NGALタンパク質はまたシデロフォアとの複合体を形成することができ、それによって鉄をキレートしこれを輸送することができる。
いくつかの特徴では、本発明は、本発明の変異体NGALタンパク質とシデロフォア(本明細書に列挙したシデロフォアが含まれるが、ただしこれらに限定されない)との複合体を提供する。好ましい特徴では、シデロフォアは、エンテロケリン、ピロガロール、カルボキシミコバクチン、カテコール及び前記の変種または誘導体から成る群から選択される。鉄と(理想的にはpH非感受性態様で)結合する能力を保持し、さらにNGAL及び/又は本発明のNGAL変異体の1つ以上と結合する能力を保持するシデロフォアの任意の変種又は誘導体を用いることができる。
変異体MGALタンパク質の製造及びシデロフォアとの複合体
本発明の変異体NGALタンパク質は、タンパク質薬の製造のために当分野で公知の任意の適切な方法を用いて製造できる。変異体NGALタンパク質は、例えば組換えタンパク質の生産のために公知の標準的な技術を用いて、例えば、適切なプロモーターの制御下でNGAL変異体をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを細胞(例えば細菌細胞又は哺乳動物細胞)にデリバーし、さらに前記細胞を前記タンパク質が発現される条件下で培養することによって製造するすることができる。組換えタンパク質の大規模培養、単離及び精製のための方法は当分野で公知であり、本発明のNGAL変異体の製造で用いることができる。同様に、ペプチド及びタンパク質を合成により生産する方法も当分野で公知であり、本発明のNGAL変異体の製造で用いることができる。
ある種の実施態様では、本発明は、本発明のNGAL変異体及び1つ以上の補足“タグ”を含む融合タンパク質を提供する。そのような補足タグはNGAL変異体のN-又はC-末端に融合させるか、又はいくつかの事例ではタグの挿入がNGAL変異体の機能に悪影響を及ぼさない程度に内部箇所に付加することができる。適切なタグには、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、ポリ-ヒスチジン(His)、アルカリホスファターゼ(AP)、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)及び緑色蛍光タンパク質(GFP)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。他の適切なタグもまた当業者には明白であろう。タグはいくつかの適用のために(NGALの単離及び/又は精製のための補助、及び/又はそれらの検出の促進を含む)有用であり得る。
タンパク質の多くの化学的改変がタンパク質系薬剤の特性の改善に有用であることは当分野で公知であり、そのような改変を本発明にしたがって用い、治療に適用される本発明の変異体NGALタンパク質の安定性を改善し、免疫原性を減少させることができる。例えば、ポリエチレングリコールポリマー鎖を別の分子に共有結合させるプロセス(すなわちPEG化)は、タンパク質性薬剤を宿主の免疫系から“覆い隠し”、さらにまた流体力学的サイズ(溶液中のサイズ)を増加させ、循環半減期を延長し、タンパク質系薬剤の水への溶解性を改善できることは当分野では周知である。多様な他の化学的改変もまた公知であり、本発明の変異体NGALタンパク質とともに用いることができる。
本発明の変異体NGALタンパク質及びシデロフォア(例えばエンテロケリン又はその誘導体若しくは変種)を含む複合体は、当分野で公知の方法論(例えば本出願の実施例の部分で提供するもの)を用いて容易に調製できる。例えば、NGAL-シデロフォア複合体は、NGAL(変異体NGALを含む)及びシデロフォアを1:1のモル比(例えばEnt)で、又は1:3のモル比(例えばカテコール)で一緒に混合することによって調製できる。前記混合物を室温で適切な時間、例えば30分インキュベートし、複合体を形成させることができる。続いて結合したシデロフォア-NGAL複合体から未結合シデロフォアを、標準的な分離技術(例えば遠心分離系技術、ろ過系技術又は他のサイズ依存分離技術)を用いて除去/分離することができる。
治療方法−鉄過負荷
ある実施態様では、本発明の変異体NGALタンパク質並びにそのような変異体NGALタンパク質を含む複合体及び組成物を用いて、過剰な鉄レベル又は鉄過負荷に付随する症状、疾患又は異常を治療することができる。特に、本発明の変異体NGALタンパク質とシデロフォア(例えばエンテロケリン)との複合体及びそのような複合体を含む組成物を用いて、体内の鉄をキレートし尿への鉄の排出を促進することができる。
血流中の大量の遊離鉄は特に肝臓、心臓及び内分泌腺の細胞損傷をもたらし得る。過剰鉄の原因は遺伝性であり得る。例えば鉄過剰は、遺伝性症状、例えばヘモクロマトーシス1型(古典的ヘモクロマトーシス)、ヘモクトマトーシス2A又は2B型(若年型ヘモクロマトーシス)、ヘモクロマトーシス3型、ヘモクロマトーシス4型(アフリカ型鉄過負荷)、新生児ヘモクロマトーシス、無セルロプラスミン血症又は先天性無トランスフェリン血症によって引き起こされ得る。鉄過剰の非遺伝性原因の例には、食事性鉄過負荷、輸血性鉄過負荷(サラセミア又は他の先天性血液疾患の患者に実施された輸血による)、血液透析、慢性肝疾患(例えばC型肝炎、肝硬変、非アルコール性脂肪肝炎)、晩発性皮膚ポルフィリン症、門脈大静脈後方シャント、代謝機能不全過負荷症候群、鉄剤過剰投与(例えば小児の鉄消費により引き起こされるもの)、又は他の任意の急性若しくは慢性鉄過負荷の原因が含まれる。
鉄過負荷の治療に利用可能な2つの一般的な鉄キレート剤はデフェロキサミン(DFO)及びデフェリプロン(経口DFO)である。その高コスト及び非経口投与の必要性のために、標準的な鉄キレート剤デフェロキサミンは、急性及び/又は慢性鉄中毒の多くの個体で使用されない。デフェロキサミンは、非経口的に(通常は12時間に及ぶ持続的な皮下輸液として)1週間に3から7回投与されねばならない。治療は多くの時間を必要とし痛みを伴い得る。結果としてコンプライアンスはしばしば極めて低い。副作用には、局所の皮膚反応、失聴、腎毒性、肺毒性、生長遅延及び感染が含まれる。デフェリプロンは、輸血性鉄過負荷の症状の治療に用いることができる唯一の経口的に活性な鉄キレート薬である。デフェリプロンは、デフェロキサミン治療が禁忌であるサラセミアメジャーの患者、又はデフェロキサミン治療に対して重篤な毒性を示す患者で二番手の治療として指示される。デフェリプロンは、心臓(鉄の毒性及び鉄負荷サラセミア患者の死亡率の標的器官である)から鉄を除去する経口鉄キレート剤である。
しかしながら、デフェリプロンは経口投与の利点を示すが、前記は顕著な毒性を伴いその長期的安全性及び有効性については問題がある。副作用、アレルギー又は有効性の欠如のためにデフェロキサミンを使用できない患者でデフェリプロンを用いることが推奨されている。デフェリプロンは、遺伝子毒性、好中球減少症及び顆粒球減少症を含む重大な安全性に関する問題を伴う。好中球の1週間隔のモニタリングが推奨される。胃腸管及び関節の問題が発生する可能性があり、肝毒性は既に報告されている。したがって、また別の簡便で安全で効果的な鉄キレート治療(例えば本発明によって提供されるもの)に対する明確な要請が存在する。
本発明の変異体NGALタンパク質、及び特に前記のシデロフォアとの複合体を用いて遊離鉄をキレートし、例えば有害な鉄循環レベルを有害レベル未満に低下させるために腎臓を介して体内から過剰な鉄を除去することができる。
治療方法−尿道の細菌感染
WT NGALが制菌活性を有することは公知である。前記制菌活性は、部分的にはWT NGALが細菌のシデロフォアにしっかりと結合し、細菌における鉄の枯渇及び細菌の増殖阻害をもたらす能力に依拠する(Goetz et al., Mol. Cell. (2002), 10(5) 1033-1043)。本発明の変異体NGALタンパク質は、WT NGALと同様に細菌のシデロフォアと結合する能力を有し、したがって抗菌活性を有し得る。さらにまた、本発明の変異体NGALタンパク質は腎により吸収されず、尿中に蓄積されるので、それらは、尿道の細菌感染の治療で使用するために特に適切である。
医薬組成物及び投与
本発明はまた、本明細書に記載の変異体NGALタンパク質及び前記とシデロフォアとの複合体を含み、多様な疾患、異常及び症状(鉄過負荷及び細菌感染を含む)の治療に有用であり得る、医薬組成物、処方物、キット及び医療装置を提供する。医薬処方物には、経口又は非経口(筋肉内、皮下及び静脈内を含む)に適切なものが含まれる。本発明によって提供される医療装置の例には、ビーズ、フィルター、シャント、ステント及び体外ループが含まれ(ただし前記に限定されない)、前記装置は、それら装置を対象に埋め込み或いは投与できるように、変異体NGAL又はその複合体が対象中の過剰な鉄をキレート又は吸収することを可能にする態様で、本明細書に記載の変異体NGAL又はその複合体で被覆されてあるか或いは前記を含む。
変異体NGALタンパク質及びその複合体の治療的に有効な量の投与は、治療薬剤に適した任意の投与態様により達成することができる。当業者は煩雑な実験を実施することなく投与態様を容易に選択することができる。適切な態様には、全身投与又は局所投与、例えば経口、経鼻、非経口、経皮、皮下、経膣、経頬、直腸、局部、静脈内(ボーラス及び輸液)、腹腔内又は筋肉内投与態様が含まれ得る。好ましい実施態様では、経口又は静脈内投与が用いられる。他の好ましい実施態様では、本発明の組成物は、所望の作用部位(例えば腎臓)に、例えば局所注射又は局所輸液によって、又はタンパク質若しくは薬剤を特定の組織に誘導するために有用な物質(例えば抗体など)を使用することによって直接投与される。
意図される投与態様に応じて、(治療的に有効な量の)本発明の変異体NGALタンパク質及び複合体は、固体、半固体又は液体投薬形、例えば注射可能物、錠剤、座薬、ピル、経時放出性カプセル、エリキシル、チンキ、エマルジョン、シロップ、散剤、リキッド、懸濁物などであり得る。ある実施態様では、本発明の変異体NGALタンパク質及び複合体は、通常の製薬慣行にしたがってユニット投薬形で処方され得る。液体、特に注射可能な組成物は、例えば溶解または分散によって調製することができる。例えば、本発明の変異体NGALタンパク質及び複合体は、医薬的に許容できる溶媒、例えば水、食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール、エタノールなどと混合し、それによって注射可能な等張溶液又は懸濁物を生成することができる。
非経口注射可能物の投与は、皮下、筋肉内又は静脈内注射および輸液に利用することができる。注射可能物は、通常の形態で(流動性溶液若しくは懸濁物として、又は注射前に液体に溶解するために適切な固体形として)調製することができる。非経口投与のためのある実施態様は、米国特許3,710,795号(前記文献は参照により本明細書に含まれる)にしたがって、徐放系又は持続放出系の埋め込みを利用する。
本発明の変異体NGALタンパク質及び複合体は滅菌することができ、適切な任意のアジュバント、保存料、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、溶解促進剤、塩(例えば浸透圧調整用)、pH緩衝剤、及び/又は他の医薬的に許容できる物質(酢酸ナトリウム又はオレイン酸トリエタノールアミンを含むがただしこれらに限定されない)を含むことができる。さらにまた、本発明の組成物はまた、他の治療に有用な物質、例えば他の鉄キレート剤又は鉄過負荷の治療で有用な他の薬剤、又は本明細書に記載した症状のいずれかの治療に有用な他の薬剤を含むことができる。
本発明の組成物は、それぞれ通常的な混合、顆粒化又はコーティング方法にしたがって調製することができ、さらに本医薬組成物は、重量または体積で約0.1%から約99%、好ましくは約1%から約70%の本発明の化合物又は組成物を含むことができる。
用いることができる用量及び投薬レジメンは、以下を含む多様な要件にしたがって決定することができる:対象の種、年齢、体重、性別及び医学的状態;症状の重篤性;投与経路;対象の腎臓または肝臓機能;及び用いられる具体的な変異体又は複合体。当業者は、例えば上記に記載した要件を考慮しながら、症状の治療又は予防に有用な本発明の変異体又は複合体の有効量を容易に決定及び/又は処方することができよう。投薬方法はまた以下で提供される:L.S. Goodman, et al., The Pharmacological Basis of Therapeutics, 201-26, 5th ed., 1975(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。ある実施態様では、本発明の組成物は、NGAL成分が約1から約100mg/kg体重の用量範囲で、典型的には約1から約10mgkg体重の投薬で投与されるように、血中で約0.1ng/mLから約100ng/mLの範囲、例えば約1.0ng/mLから約20ng/mLの範囲の濃度を生じるように投与される。本発明の組成物のシデロフォア成分の量は、したがって変異体NGALタンパク質と結合する所望の化学量論が達成されるように選択される(例えば1:1又は1:3)。
上記の治療方法に加えて、本発明の変異体NGALタンパク質-シデロフォア複合体は、サンプルから鉄をキレート及び/又は除去するために有用であり得る(この場合、前記サンプルは対象の体内に存在しない)。したがって、ある実施態様では、本発明は液体から鉄を除去する方法を提供し、前記方法は、前記液体を変異体NGALタンパク質-シデロフォア複合体と一緒に、サンプルの鉄が変異体NGALタンパク質-シデロフォア複合体と結合するために十分な時間混合する工程を含み、ここで前記変異体NGALタンパク質-シデロフォア複合体はサンプルの鉄をキレートすることができる。ある実施態様では、鉄を結合させた変異体NGALタンパク質-シデロフォア複合体は、続いてサンプルから除去することができる。好ましい実施態様では、サンプルは生物学的液体(例えば血液、血清、血漿又は尿)である。ある種の実施態様では、変異体NGALタンパク質-シデロフォア複合体は体外で(例えば体外装置中で)サンプルと混合され、続いて前記サンプルは身体へデリバリーされるか又は戻される。例えば、そのような方法を用いて、輸液用血液サンプルで又は透析工程で過剰な鉄をキレート及び/又は除去することができる。例えば、対象の血液または別の体液を身体から取り出し、本発明の化合物または組成物で処理して過剰な鉄をキレート又は除去し、続いて前記を対象に戻すことができる。
実施例
変異体NGALタンパク質並びに治療用鉄キレート剤として及び抗菌剤としてのそれらの使用
リポカリン2(Lcn2)(好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)とも称される)は、高い親和性で鉄と結合するタンパク質である。鉄と結合するために、NGALは、細菌によって産生されるシデロフォアと称される補助因子と結合するか(NGAL:エンテロケリン-鉄相互作用については結合定数Km=0.41x10-9M;エンテロケリン(エンテロバクチン):鉄相互作用についてはKm=0.41x10-49M)、又は細菌性及び哺乳動物性酵素の組合せによって産生されるカテコール含有化合物と結合する(カテコール-鉄に対してKm=0.4±10-9M;カテコール:鉄相互作用に対してKm=10-45.9M)。NGALはまた細菌感染及び急性腎損傷によって顕著にアップレギュレートされ、血液及び尿中に分泌される。細菌感染時に、NGALはエンテロケリン-鉄と結合することによって細菌から鉄を引き離し、細菌の増殖阻害をもたらす。
血清NGALは結合したエンテロケリン:鉄とともに腎臓の糸球体によってろ過されるが、その大半は腎に保持され(再吸収され)、そこで分解される。NGALはほとんど尿に漏出及び排出されない。例えば、最近の研究によって示されたように、NGALを腹腔に注射したとき、WT NGALの70%以上が腎臓に蓄積するが、0.1%未満が3時間後に尿に見出される。
血清NGALの腎による捕捉及び保持は、メガリン(低密度リポタンパク質レセプター関連タンパク質2(LRP2)とも称されるマルチリガンドレセプター)によるNGALの再吸収によって達成される。メガリンは、近位細管の上皮の先端形質膜に存在し、そこでメガリンは糸球体のろ過物と接触する。メガリンはキュビリンと結合する。NGALは、補助因子(例えばエンテロケリン又はカテコール)を用いることによって鉄を輸送し、特異的に腎臓に鉄をデリバリーすることができる。
治療用鉄キレート剤及び抗微生物剤としての変異体NGAL
糸球体ろ過の分子カットオフは約70kDである。組換えNGAL又は天然のNGAL(それぞれ約20.5kD及び23−25kDの分子量を有する)は糸球体でろ過され得るが、続いてメガリンによって及び/又はキュビリンを含むメガリン結合複合体によって近位上皮中に効率的に再吸収される。メガリンは、アポ-及び鉄-付加NGALに対して約60nMの結合親和性を有する(Hvidberg, et al., FEBS Letters, 2005, 579: 773-777)。メガリンは、糸球体ろ過後に多くのタンパク質(NGAL、アポE、リポタンパク質リパーゼ、ラクトフェリン、アプロチニンなどを含む)の再吸収に必要なマルチリガンド細胞内レセプターである(Christensen and Birn, Nature Reviews-Molecular Cell Biology, 2002, 3: 258-2682002)。メガリンタンパク質中の“A型リピート”のメガリン酸性領域とリガンドの塩基性領域との間の静電気的相互作用がリガンド-レセプター認識に必要である(すなわち、メガリンはリガンドタンパク質の正荷電表面を認識する(Moestrup and Verrost, Annual Reviews of Nutrition, 2001, 21: 407-428. 2001)。ヒトNGALタンパク質の表面のいくつかの塩基性アミノ酸残基はしたがってメガリンに対するその高い結合親和性に必要とされ、これらの塩基性残基の変異は、その内部の杯状部分におけるエンテロケリン-鉄に対する結合親和性を保全しながら、NGALとメガリンとの間の静電気的相互作用を破壊し得る。変異体NGALとメガリンとの間の損なわれた相互作用は、変異体NGAL:エンテロケリン:鉄又はアポ-変異体NGALが、糸球体ろ過後にろ過物から再吸収されることなく尿中にろ過されるのを許容できる。前者の事例では(エンテロケリンが変異体NGAL複合体中に存在する)、変異体NGALは鉄を血液から吸収し、尿にそれを輸送することができる。これは、シデロフォア-鉄と結合した対象物(例えば動物又はヒト)から鉄を除去することを可能にする。また別には、変異体アポ-NGALの事例では、尿へのNGALの蓄積がもたらされ、尿道での細菌増殖が阻害され得る。
本発明の変異体NGALタンパク質は、臨床治療で少なくとも2つの潜在的な応用を有する。
第一に、変異体NGALタンパク質を効率的な鉄キレート剤として用い、鉄過負荷異常を有する対象(例えばヒト対象)から過剰な鉄を除去することができる。鉄過負荷の患者(例えばヘマクロマトーシス、鎌状血球症、サラセミア、赤血球又は他の生物学的生成物の多重輸液による)は、例えば静脈内輸液によって、鉄を含まないシデロフォア(例えばエンテロケリン)と結合させた変異体NGALを投与される。エンテロケリンは血清の鉄をキレートし、NGAL-エンテロケリン-鉄複合体を形成する。この複合体は大半が腎臓へ輸送され、続いて糸球体によってろ過される。前記複合体は糸球体ろ過物中に残存し、近位細管の上皮細胞中のメガリンと結合することができないので再吸収されない。前記は続いて尿中に出現し、最終的にはそれに結合した鉄と一緒に排出される。変異体NGALは、鉄過負荷のヒト対象から過剰な鉄を除去する効率的なツールであり得る。エンテロケリン及び鉄と結合するNGALの分子比は1:1:1である。10gの変異体アポ-NGAL(前記は約500μモルに等しい)が鉄過負荷の患者に投与されるならば、理論的には約500μモルまたは約27.9mgの鉄が変異体NGAL及びエンテロケリンと結合し、排出のために尿にデリバリーされ得る(変異体NGALの尿中への蓄積を100%と仮定する)。ヒトは主として腸管細胞の剥離及び死んだ皮膚細胞により毎日わずか1−2mgの鉄を失い、食物から毎日わずかに1−2mgの鉄を得ることを考えるならば、前記は、鉄過負荷のヒトの患者から過剰な鉄を除去するために非常に効率的な方法である。
第二に、変異体NGALタンパク質を抗微生物剤として用い、尿道感染(UTI)の患者を治療できる。UTIのヒト対象に輸液により変異体アポ-NGALが投与される。変異体NGALは腎臓に輸送され、尿中にろ過され、メガリンに対するその結合親和性の低下のために再吸収されない。いったん尿中に入れば、前記変異体アポ-NGALタンパク質はUTIの細菌のシデロフォア(例えばエンテロケリン)と結合してそれら細菌の増殖阻害をもたらす。
実験の設計及び実験手順
ヒトNGALのクローニング
ヒトNGAL cDNA(Genbankアクセッション番号NM_005564)をオープンバイオシステムズ(Open Biosystems)から入手し、分泌されるNGALタンパク質をコードするオープンリーディングフレームをPfuUltra DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いてPCRにより増幅し、さらに位置特異的変異導入のためにpGEX-4T-3プラスミドベクター(GE Healthcare)でクローニングする。
ヒトNGALタンパク質の構造
ヒトNGALタンパク質の構造によれば、タンパク質表面のアミノ酸残基、特に塩基性残基は、高親和性結合のためにメガリンとの静電気的相互作用を媒介することができる(図1及び4A)。
NGAL変異体の指定
NGALタンパク質の表面には、種々の哺乳動物種(ヒト、マウス、ラット、チンパンジー、ウシ、イノシシ及びアカゲザルを含む)の間で保存される5つの塩基性アミノ酸残基(R43、72、140及びK142、157)が存在し、一方、13の非保存塩基性残基が存在する(R130;K15、46、50、59、62、73、74、75、97、149;H118、165)。これらの塩基性残基を他の非塩基性残基に変異させることができる。
NGAL変異体の作製
NGALタンパク質表面の異なる種々のアミノ酸残基を、以下の位置特異的変異導入キット(Quickchange Site-Directed Lightning Multi Mutagenesis Kit, Stratagene)を用いて変異させ、NGALタンパク質の種々の位置に変異を有する多くの変異体が作製された。表2に示す、57のNGAL変異体が作製された(配列番号:2−10、21−68、247−251)。
NGALタンパク質の生成
野生型及び変異体プラスミド構築物を大腸菌BL21(GE Healthcare)にエレクトロポレーションによって導入し、IPTGを最終濃度0.2mMで5時間添加することによって野生型及び変異体アポ-NGALタンパク質の発現を誘導し、続いてGST系プル-ダウン及びセファロースカラムによるFPLC系ゲルろ過の組合せによって精製する。
エンテロケリン及び鉄に対する変異体NGALの結合親和性
鉄の放射能活性型、55Fe3+を用いて、NGAL変異体タンパク質をそのエンテロケリン及び鉄との結合能力について調べる。エンテロケリン及び55Fe3+に対するNGALの結合親和性は、変異体及び野生型NGALタンパク質によって保持された55Fe3+のパーセンテージを調べることによって概算した(野生型NGALタンパク質を陽性コントロールとして用いることができる)。
NGAL-エンテロケリン-鉄複合体の調製
NGAL-エンテロケリン-鉄複合体は、NGALタンパク質、エンテロケリン及び55Fe3+を1:1:1のモル比(各々4nmole)で一緒に混合することによって調製される。前記混合物を30分RTでインキュベートし、7000rpmで5分、4回の遠心分離によって10Kマイクロコンで洗浄し、未結合のエンテロケリン及び55Fe3+を除去し、NGAL-エンテロケリン-55Fe3+複合体は前記マイクロコンに保持される。
NGAL変異体のマウスでのスクリーニング
ヒト、マウスのメガリンタンパク質間には76%のアミノ酸同一性及び87%のアミノ酸類似性が存在し、それらはおそらく非常に類似する結合特性を有することを示している。本実験では、ヒトNGALタンパク質とマウスメガリンとの結合を試験した。ヒト及びマウスメガリンタンパク質間のアミノ酸同一性及び類似性の程度が高いために、マウス系は、メガリン-キュビリン依存腎再吸収を回避し最終的には尿にデリバーされる変異体NGALタンパク質の能力をスクリーニングするために有用なモデルを提供する。
放射能標識NGAL-エンテロカリン-55Fe3+複合体を雌のC57BL/6マウス(4週)の腹腔内に注射し、尿を代謝ケージで収集する。3時間の尿収集の後、マウスを殺し、腎臓及び肝臓を収集して重さを測定し、0.5MのNaOH及び1%のSDSの溶液中で70℃にて一晩可溶化する。尿、腎臓及び肝臓の放射能をシンチレーションカウンターで調べる。NGAL-エンテロケリン-鉄複合体の蓄積は総注入複合体のパーセンテージとして計算される。
実験結果
57のNGAL変異体を作製した(表2;配列番号:2−10、21−68、247−251)。29のアポ-タンパク質変異体を大腸菌BL21で生成し、それらのエンテロケリン結合親和性及び腹腔内(i.p.)注射後のC57BL/6マウスでの輸送について調べた。図3Aに示すように、全ての変異体ヒトNGALタンパク質は、1:1:1(各々4nmole)のモル比でのエンテロケリン-鉄とのインキュベーション(室温で30分間)後に総鉄の16.7%から45.7%を保持し、それらのエンテロケリン-鉄に対する結合親和性の保全を示した(エンテロケリンの量が多ければNGALのローディングは増加するであろう)。
腹腔内注射により投与したとき、6つの変異体NGAL-エンテロケリン-55Fe3+複合体が、野生型NGAL複合体と比較して尿中蓄積の顕著な増加を示した(変異体K3、K2、I3、I1、K5及びK1)。3時間後の肝臓及び腎臓における蓄積低下もまた観察された(図3B、C、D;表1)。I1、I3、K1、K2、K3及びK5変異体の6%、6.9%、1.9%、9.3%、19.6%及び2.9%が3時間後にそれぞれ尿にデリバリーされ、一方、A2、B4、C3、D1、F2、G3、H2及びI5変異体NGAL複合体の0.18%、0.13%、0.26%、0.1%、0.11%、0.17%、0.27%及び0.05%のみが尿に存在した。
基質として野生型NGAL(PDBアクセッション番号1ng1A)の結晶構造を用い、K3変異体の構造をSwissmodel(http://swissmodel.expasy.org)により予測した。図4Aに示すように、予測されたK3変異体タンパク質の3D構造は野生型タンパク質と同様なポケットを含み、エンテロケリン-鉄に対する親和性が保全されているという我々の発見を支持する。しかしながら、K3変異体タンパク質は、溶媒が接近できる表面に野生型NGALタンパク質よりも少ない陽性アミノ酸を示し(図4B)、メガリンとの静電気的相互作用の能力が低下すること及びマウス導入後の尿への蓄積が増加することと一致する。
表1:変異体Ngalタンパク質のエンテロケリン-55Fe3+との結合、及びC57BL/6マウスのi.p.注射後3時間の尿、腎臓及び肝臓におけるNgal-エンテロケリン-55Fe3+の蓄積
本実施例中の上付き数字は、本実施例の後に続く参考文献リストの番号付与参考文献を指す。実施例2及び図6−17の変異体K1−K8は、本明細書の表2に配列が提供される変異体D1-4、D1-4-1、D1-4-2-1、d1-4-2-1-1、d1-4-2-1-3、d1-4-2-1-4、WT-3及びD1-4-2である。
鉄の輸送は重要な問題を提示する。なぜならば遊離第二鉄イオンは、生理学的pHの好気性溶液中では不溶性(<10-18M)であるが、いくつかのキレート剤による可溶化に際して有害な酸素種を生成し得る鉄の反応型を生じるからである。結果として特殊化された機構が鉄輸送のために要求され、これら特殊化機構は、鉄と直接結合するために保存されたモチーフを利用するか(トランスフェリン及びフェリチン)又は埋め込まれた補助因子を利用するタンパク質で見出される。細胞外鉄輸送は大半がトランスフェリンによって媒介されるが、これらの遺伝子が欠失したマウスは極めて限定された表現型を示す(Barasch, Developmental Cell, 2009)。Ngalと称されるリポカリンスーパーファミリーのメンバーは、カテコールと呼ばれる新規な補助因子のファミリー又はカテコールから構築される関連する細菌性シデロフォアと結合するとき高い親和性の鉄担体として機能することが判明した(Barasch, Molecular Cell, 2002)。鉄の存在下では、Ngal:シデロフォア:FeIII複合体はナノモル以下の親和性で生じ(Barasch, Nature Chemical Biology, 2010)、明るい赤色タンパク質を形成した(前記は何日間も溶液中で安定であり、前記複合体にしっかりと結合した鉄の輸送に関してin vivoで安定であった)。Ngalはin vivoで発現されるが、多数の“損傷”刺激はNgalの濃度を数桁上昇させる。その後、Ngalは血清中を往来し、腎臓のメガリンレセプターによって捕捉されると考えられる(腎臓でNgalはシデロフォア:Fe複合体を除去する)。尿型Ngalの代謝については極めて多くのことが判明しているが(Ngalは遠位ネフロンから発現され、完全長タンパク質として尿中に分泌される)、この除去系及びメガリンレセプターの役割について判明していることは極めて少ない(メガリンレセプターはNgalの唯一の確認されたレセプターである)。このプロセスを深く調べるために、メガリンの条件付き変異体を試験することができる。さらにまた、野生型マウスでの試験のために、一連のNgal変異体を試験することができる。そのような変異体のいくつかは、メガリンが存在する近位細管を飛び越え、その結果尿中にそれらが出現する。これらの変異体は高い親和性でなおシデロフォア:FeIIIと結合することができ(赤色タンパク質を生成することができ)、さらにおそらくレドックス不活性な態様で明確に鉄を排出できる。実際、鉄を微生物に与えるのではなく(前記は小分子キレート剤に関する主要な問題である)、Ngal:シデロフォア:Fe複合体は鉄を細菌から隔離する。メガリンはNgalの重要なリサイクルレセプターであるという仮説を試験することができる。メガリン-Ngal複合体が阻止されるとき、Ngalはしっかりと結合した鉄を尿に運ぶことができ、したがって鉄過負荷疾患の通常的症候群の安全な治療薬として役立つと期待される。
鉄過負荷は臨床的には通常的に出現し、その治療は、細菌の増殖を誘発するとともに多くの細胞系列にとって有害であることが分かった。鉄過負荷は輸血の通常的な後遺症であるが、肝炎、慢性腎疾患でも、一般的遺伝性疾患(例えばヘマクロマトーシス)の場合と同様に鉄負荷はよく知られている。本発明は、タンパク質Ngal(ヒトで種々のタイプの組織損傷で大量に発現される)による鉄輸送経路の発見に密接に関係している。Ngalの代謝に関する我々の研究は、安全な治療用鉄キレート剤としてNgalを用いることができるという考えについての証拠を提供する。
鉄は循環トランスフェリンによって特異的に結合される(トランスフェリンは鉄の生体利用性を保全し鉄のレドックス毒性を防止する)。しかしながら、トランスフェリン非結合鉄(NTBI)は多様な疾患1-3(遺伝性及び非遺伝性原因を含む)を有する患者で出現する。NTBIは肝臓4-7、心臓8-12、内分泌腺13-18及び腎臓19-21を損傷し、重症の過負荷は、ヘイバー-ワイス(Haber-Weiss)及びフェントン(Fenton)反応24,25を介して反応性酸素種(ROS)を触媒することによって致死性であり得る22,23
今日まで、2つの小分子、デフェロキサミン(DFO)及びデフェリプロンがNTBIのキレート及び鉄過負荷の治療に利用可能である26-28。しかしながら、これらの分子は顕著な毒性を示す。DFOは、皮膚反応、失聴、腎及び肺毒性、さらにもっとも重要なことには真菌感染29-32を引き起こす(真菌感染はDFO(真菌“シデロフォア”の誘導体である)が病原体に鉄をデリバリーできることの結果である32)。デフェリプロンはまた、遺伝子毒性、好中球減少症及び顆粒球減少症、並びに腎疾患33,34と密接に関係する。したがって、鉄を微生物にデリバリーしない新規な薬剤が有害でないNTBI排出のために必要である。
本発明は内在性鉄輸送機構(Molecular Cell, 2002;Nature N&V, 2005;Nature Chemical Biology, 2010)35-38を利用する(前記機構は鉄を身体から安全に排出するために操作される)。その担体は好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(Ngal)と呼ばれる。本発明は、鉄となおしっかりと結合しているNgalの安全な排出を可能にする変異体Ngalを必要とする。
Ngalは小さな鉄担体タンパク質(22kDa)であり、前記は、ヒトまたは動物が刺激(典型的には急性腎損傷を引き起こす)に曝露されたとき、血清及び尿中で顕著に発現される(AKI: JASN, 2003; JCI, 2005; Lancet, 2005; Ann Int Med, 2008)39-42。したがって、前記タンパク質はAKIの“バイオマーカー”として今日周知であり、優に100を超える論文がその激烈な発現を確認しているが、ほんの数研究室がその生物学を調べているだけである。我々は、Ngalはいったん発現されると迅速に循環中に分泌され、そこで結合補助因子によって(例えば内因性カテコール又は関連するカテコール型シデロフォア(エンテロケリン、Ent))36鉄を捕捉することができる。カテコール型シデロフォアは鉄を捕捉するために細菌によって合成される(図6参照)。したがって、Ngalは細菌のための鉄の捕捉を妨害し、制菌作用を提供する。
Ngalは輸送に対して安定であり、それは糸球体によってろ過され、近位細管によって捕捉され(図7)、そこでNgalは分解されて鉄はリサイクルのために放出される38。Ngalは、近位細管細胞のメガリンによって細胞内に取り込まれると考えられ、Ngal-メガリン間の直接的相互作用は表面プラズモン共鳴(SPR/Biacore)43によって性状が調べられた。本発明は、メガリンを回避するがなおEnt:鉄と結合することができ、したがって尿中にNTBIを安全に排出することができる治療薬を提供できるNgal変異体に関する。
Ngal変異体を用いるNgal-メガリン相互作用の評価
メガリンは、ろ過されたNgalの再吸収を媒介する主要なレセプター43であり得るので、40の変異体Ngalタンパク質を生成した(それらのいくつかはNgal-メガリン相互作用を標的とするようであった)。これらの変異体の1つ(K6)及びその最適化誘導体(部分的に近位細管を飛び越え尿中に出現する)を用いて、メガリン仮説を試験することができる。この変異体を用いて、タンパク質の相互作用並びに野生型マウス及び条件付きメガリンノックアウトにおける細胞及び器官による捕捉を調べ、メガリンの遮断は鉄の排出を可能にすることを確認できる。この系を用いてさらに別の変異体も試験することができる。
Ngal変異体のNgal:Ent;Fe III 相互作用の評価
Ngalは中心の杯状部分を含み、Ent:FeIIIが結合するとき前記杯状部分で明るい赤色タンパク質35が生成される(図8)。Ngal変異体(メガリンとの相互作用が低下するように操作された)もまた、Ent:FeIIIと混合したとき明るい赤色を生成し、リガンド親和性の保持を示した。蛍光消光技術及びX-線結晶解析を用いて、Ngal複合体を定量的に解析することができる。
変異体Ngal:Ent:Fe III のデリバリーによる安全な鉄の排出
K6及び最適化変異体をマウスに投与して、遺伝性(HEF-/-44,45及び後天性ヘモクロマトーシス44のネズミモデルでNTBIのキレート及び鉄IIIの尿への排出を試験することができる。有効性は、NTBIの血清及び肝からの枯渇を測定することによって評価でき、毒性は酸化性ストレスの測定によって排除できる。さらに内因性Ngalの発現(我々はそれを以前に発見した)は腎の損傷の開始を示す。
有意性:鉄過負荷患者は、血清トランスフェリン飽和の上昇(>50%)及び血清フェリチンレベルの上昇(>1000μg/L)を示す1-3。彼らはまた、循環中のトランスフェリン非結合鉄(NTBI、例えばサラセミア血清で0.9−12.8μmol/L;遺伝性ヘマクロマトーシス(HH)血清2で4−16.3μM)とともに細胞内の不安定な鉄プール(LIP)46を示す。これらの異常な鉄プールはヘイバー-ワイス及びフェントン反応に加わわる(前記反応は脂質及びタンパク質を酸化し、ヒドロキシル、フェリル又はパーフェリル種を形成することによってヌクレオチドを変異させる24,25,47)。最終的に、感受性を有する以下を含む多様な器官で細胞死が見出される:肝臓(線維症/肝硬変及び肝細胞性肝癌)4-7、心臓(うっ血性心筋症)8-12、腎臓(近位細管細胞の壊死及びアポトーシス)19-21及び内分泌腺(糖尿病、甲状腺機能低下及び生殖線機能低下)13-18
一般的には、2つのタイプの鉄過負荷疾患、遺伝性ヘマクロマトーシス(HH)及び後天性ヘマクロマトーシス(AH)が存在する。HHは、鉄代謝の調節に関係する例えば以下の遺伝子の機能低下によって引き起こされる:HFE(1型HH)、HJV(2A型HH)、HAMP(2B型HH)、TfR2(3型HH)、SLC40A1(4型HH)、CP(無セルロプラスミン血症)、TF(無トランスフェリン血症)3,48。もっとも一般的なもの、I型HFE C282Y対立遺伝子座では、28%の雄が鉄過負荷であった49。対照的に、AHは、輸血、サラセミアメジャー、シデロブラスト性及び溶血性貧血、食事性鉄過負荷、慢性腎及び肝疾患(C型肝炎又はアルコール又はポルフィリン症による)によって引き起こされる3,44,48。5百万の輸血(米国で15百万ユニット/年以上)がもっとも一般的なAHの原因である50。ヒトは1−2mgの鉄を毎日失うが、血液1ユニットは250mgの鉄を含むので、輸血は鉄過負荷を引き起こす。明瞭な毒性の証拠は20回の輸血後に出現する51-53。慢性腎疾患もまた、近位細管及び尿空間に過剰鉄の蓄積による症状をもたらし得る。鉄は、HIV関連ネフローゼ54及びネフローゼ症候群の他の型55で腎臓の皮質に蓄積される。尿中鉄はまた、ヘモグロビン尿症及びミオグロビン尿症56、化学療法(シスプラチン57;ドキソルビシン58)、虚血-再灌流59,60及び移植虚血61を含む多様な病因によるAKIの共通の所見である。尿中への鉄の放出は細胞損傷の危機的段階であると考えられている62-69。総合すれば、HH及びAHの患者は両方とも鉄キレート療法を受けてなくても器官の損傷を有している22,23
2つの鉄キレート化学物質がこれまで臨床的に使用されているが26-28、両方とも毒性及び長期安全性の懸念のために制限を受けている(例えばデフェラシロクス:腎不全性致死性疾患に続く将来の不確実性、低顆粒球症及び他の毒性(Expert Opin Drug Saf. 2007, 6:235-9)29-34)。本発明は、内在性鉄輸送機構を利用する、非常に効率的で毒性のない鉄過負荷治療用鉄キレート剤の開発のために操作された新規な方法を提供する。Ngalは以下の特徴のためにこのアプローチに対して非常に適切である。第一に、Ngalは鉄担体及び腎臓細胞の増殖因子として同定された。第二に、Ngalは、細菌のシデロフォア(例えばグラム陰性細菌由来のエンテロケリン(Ent)、グラム陽性細菌由来のバシリバクチン及びミコバクテリア由来のカルボキシミコバクチン36,70)、また別には哺乳動物で見出される内在性カテコール38を用いることによって鉄と結合する。Ent及びカテコールは鉄に対して極めて高い親和性を有し(それぞれKd=10-49M及び10-45.9M)、さらにNgalはEnt:Fe及びカテコール:Feと強力に結合し(Kd=0.4nM)36,38、このことはこれら複合体が鉄を隔離することを可能にする。実際、Ngalによる細菌のシデロフォアのキレートは、Ngal-/-マウスは細菌接種物を除去できないと仮定するならば、本質的免疫応答の決定的特徴である37。これらのデータは高い親和性の鉄キレート剤DFO(Kd=10-30M)37と対照的である(前記はリゾプス(Rhizopus)に鉄をデリバリーし致死性ムコール菌症を誘発する)37。第三に、鉄とNgalとの結合は、反応性Fe2+のフェナントロリン及び3’-(p-ヒドロキシフェニル)フルオレセイン(HPF)試験の抑制によって示されるようにその反応性を制限する。換言すれば、Ngalとの結合はフェントン反応を阻止する38。第四に、NgalがEnt:55Fe又はカテコール:55Feとともに提示されるとき、Ngalは鉄を担持することができ、このNgal複合体は続いて5分後に血清から回収され得る。第四に、Ngalは循環中を移動する鉄を担持し、オートラジオグラフィーによって示されるようにマウス腎へ誘導する38,40(図9)。このプロセスは、極めて高い蓋然性で、糸球体によるNgal複合体のろ過とその後に続く近位細管の先端膜でのメガリン媒介エンドサイトーシスを必要とした43(なぜならば、我々はメガリンノックアウトマウスの尿中にNgalを見出し74(図10)、さらに表面プラズモン共鳴解析(Biacore)はNgal及びメガリンが直接相互作用することを示したからである(Kd=60nM43)。第五に、同じプロセスがヒトでも進行した(なぜならば、NgalはAKIの患者の近位細管のリソソームで可視化されたからである(図6))。第六に、Entは鉄の非存在下であってもNgalに対して非常に高い親和性を有し(Kd=3.57nM)75、一方、カテコールそのものは極めて低い親和性でNgalと結合し(Kd=200±6nM)38、Entは、鉄捕捉及び輸送のためにカテコールより良好な候補物質であることを示した。最後に、Ngal:Ent:FeIII複合体はpH非感受性で、pH4.0でも分解せず、一方、Ngal:カテコールt:FeIII複合体はpH6.5まで安定であるが、酸性化はカテコール依存蛍光消光を徐々に逆転させ、pH6.0で鉄を解離させた(図12)38。したがって、酸性pHにおけるその安定性にために、Ngal:Ent:FeIIIは酸性化尿で解離するとは思われない。
要約すれば、Ngal:カテコール/Entは循環中のNTBIを高い親和性でキレートし、腎臓で鉄を除去する。この経路はヒトにおいてin vivoで活性であり、潜在的に大量のNgal及び鉄を輸送する。もしGFRが140L/日であり、血清Ngalが20ng/mLであるとすると、2.8mg/日のNGAL(0.14μmole)及び8μgの鉄が近位細管でリサイクルされるが、虚血、腎不全、敗血症の状況では、Ngalレベルは100−1000倍上昇し、非常に実質的な除去機構が進行し得ることを意味する(残留GFRに左右される)。したがって、腎臓における鉄の捕捉を理解し、新規な治療法を創出するために、我々はNgalの再吸収を破壊しようと決めた。
刷新:A.刷新の第一の領域は鉄過負荷疾患の治療を取り扱わねばならない(鉄過負荷疾患はあまりにも長期間有害なキレート剤に依存してきた29-34)。本発明は、高効率で無害なNTBIキレート剤を開発する方法を提供する。この方法は、以下の点で従来の鉄キレート剤を凌ぐ多くの利点を有する:(1)Ngalは腎臓に鉄をデリバリーする内在性経路を提供する35,36,38,39;(2)Ngal:Entは、鉄に対して他の公知のいずれの物質よりも高い親和性を有する71,72;(3)Ngal:Ent:FeIIIはレドックス不活性である38;(4)Ngal:Ent:FeIIIは酸性化尿で安定であり38、したがって(5)尿中の鉄をキレートし、おそらく一定の腎疾患で損傷を緩和することができる。B.刷新の第二の領域はNGAL-鉄の対処の説明である。バイオルミネセンスマウスを用いて、腎臓及び尿のNgal遺伝子発現のタイミング及び強度を比較することができる(前記はこのプールの生合成及び分泌の明瞭な理解を提供する(Paragas et al, In Review))。Ngal変異体を野生型マウスにおけるメガリンの役割について直接試験し、メガリン欠損マウスの解析のための補完的データを提供することができる。このアプローチはまた、第二のNGALレセプター(24p3R)76がネフロンに存在し得るという考えを試験することができる。
Ngal変異体の作製によるNgal-メガリン相互作用の評価
メガリンは、メガリンの負に荷電したリガンド結合ドメインとリガンドの正に荷電した表面ドメインとの間の一連の静電気的相互作用を利用してそのリガンドと結合すると考えられる77。したがって、Ngalの正荷電表面残基を変異させることによって、メガリン-Ngal相互作用を破壊することができる。ソフトウェアPymol78を用い、ヒトNgalの表面ドメインをその結晶構造をもとにして同定した(R. Strong; PDB no. 1L6M)。表面ドメインは18の正荷電アミノ酸(Lys 15、Lys 46、Lys 50、Lys 59、Lys 62、Lys 73、Lys 74、Lys 75、Lys 98、His 118、Arg 130、Lys 149、His 165、R43、72、140及びK142、157)を含み、そのうち5つは哺乳動物で保存され36てあり、これらの残基を位置特異的変異導入のために選択した。ヒトNgalのORF(シグナルペプチド配列を含まない)をpGEX-4T-3細菌発現ベクター(Amersham)でクローニングし、変異導入用鋳型の生成のためにGST-Ngal融合物を作製した。続いて保存されている正荷電表面残基をアラニンに変異させた。非保存アミノ酸を非正荷電残基(非ヒトNgalタンパク質で同じ位置を占める)に変異させた。変異導入のために、単一方法又は位置特異的変異導入キット(Quick-Change Site-Directed Mutagenesis kit, Stratagene)との組合せ方法を用い、40のNgal変異体クローンを作出した。続いて、大腸菌BL21で0.2mMのIPTGによる誘導によって野生型及び変異体Ngalタンパク質を生成し、我々が確立したプロトコール35,38を用いてGST系親和性単離及びゲルろ過クロマトグラフィーにより精製した。続いて、これらNgalタンパク質をC57BL/6マウス(4週)に導入し(80μg/400μL)、どの変異体が3時間以内に腎吸収を飛び越えて尿に出現するかを同定することによって、それらを機能的にスクリーニングした。Ngal変異体K1、K2、K3、K5、K6及びK8が、ラットで作成したヒトNgal特異的抗体(R&D System)を用いたSDSPAGE及びイムノブロットによって尿で検出され(組換えNgal=21KDa;内在性Ngal=25KDa)、変異は近位細管上皮の形質膜のリサイクリングレセプターに対する親和性の消失をもたらすことを示唆した。対照的に、野生型、K4及びK7変異体は尿で検出されず、したがって再吸収の可能性は極めて高い(図13)。これらのデータはNgal-メガリン相互作用についての価値の高い情報を提供する。なぜならば、それらは、Ngal再吸収における変化がメガリン-Ngal相互作用における変化に帰するか否かの試験であり、血清Ngalの除去メカニズムについての洞察を提供し、鉄排出のための変異体の最適化を可能にするからである。
NGAL-メガリン相互作用のための構造的基準
メガリンとの相互作用
野生型ヒトNgal(リガンドフリー)及びヒト腎臓皮質から精製したチップ結合メガリン(Kd=約60nM)43は、α2-マクログロブリン親和性クロマトグラフィーによって以前に解析された79。Biacore T100技術を用いて、野生型及びK6(又は他の変異体)とメガリンとの相互作用を比較した。細菌のシデロフォア及びカテコールリガンドを用いることによって、リガンド結合がNgal-メガリン相互作用に影響するか否かも試験できる。BIAエバリュエーション4.1ソフト(Biacore)を用い、動力学的及び平衡パラメーターを誘導するために全体的にデータを適合させながらデータを計算することができる。ある範囲のカップリング及び再生条件もまた用いことができるが、抗体捕捉はしばしばもっとも明確なデータを提供する。
メガリン媒介エンドサイトーシス
古典的メガリン発現細胞モデルを用いて、メガリンの結合及びエンドサイトーシスを解明することができる。そのような細胞には、HK-290及びブラウンノルウェーラット卵黄嚢上皮43が含まれる。ラット卵黄嚢細胞は、メガリンがこれらの細胞でヒトNgalのエンドサイトーシスを媒介する唯一のレセプターであるので重要である(抗メガリン抗体(中和抗体はメガリンshRNAより有効であることが証明された)により取り込みは完全に停止した43)。野生型及びK6変異体タンパク質(及び他の変異体)を蛍光プローブ(Alexa 488, Molecular Probes)で標識し、ゲルろ過(GE Biotech, PD10)及び透析(Pierce 10K cassette)により浄化し35,43、抗ヒト及び抗ラットメガリン抗体(anta Cruz;200μg/ml)43の存在下又は非存在下でそれらの取り込み速度を調べた(無血清DMEM中の50μg/mL、0.5−6時間)。前記抗体は野生型ヒトNgalのBN細胞での取り込みを阻止することが以前に示された43。Ngalのエンドサイトーシスは、Zeiss LSM510-META倒立共焦点レーザー走査顕微鏡及び細胞抽出物のイムノブロットを用い、ヒトNgalの存在を検出することによって測定できる。これらの実験は、K6捕捉の失敗は不完全なNgal-メガリン相互作用に帰することができるか否か、さらに親和性の欠如又はエンドサイトーシスの欠如が真に部分的であるか否かを決定することができる。そのとおりであるならば、さらに別の変異を提供してメガリンとの残留相互作用を破壊することができる。K6(又は他の変異体)の残りの正荷電表面残基を上記のような単一又は組合せアプローチを用いて変異させ、さらにBiacoreアッセイ及び細胞取り込みアッセイを用いて繰り返し試験することができる。これらの変異導入の結果として、Ngal捕捉におけるメガリンの役割及びNgalのメガリン結合ドメインを明らかにすることができる。さらにまた、最適変異体もまた創出することができる。
また別のレセプター
我々のデータ(図9及び13)及び以前に刊行された報告43は、メガリンがNgalの必須のレセプターであることを示唆している。しかしながら、近位細管に非メガリンレセプターが存在する可能性がある。主要な候補は24p3R(SLC22A17)であり、前記は腎臓全体で見出されNgalのエンドサイトーシスを媒介することが示されているが、その機能は未だ確定されていない。ヒト24p3Rを過剰発現する安定的にトランスフェクトしたHEK293細胞を作製し、Alexa-488標識野生型及びK6変異体Ngal及びNgal:Ent:FeIIIの取り込みを、例えば共焦点顕微鏡及びイムノブロットを用いることによって決定することができる。もし24p3Rが野生型Ngalの取り込みを刺激するならば、前記はNgalのレセプターであり、K6変異体(及び他の変異体)はこのレセプターとの相互作用の欠如を示し得る。
Ngal変異体のin vivo分布
メガリンの条件付きノックアウトネズミモデル91を用いて更なるNgal-メガリン試験を実施することができる。前記モデルでは、フロクス化(floxed)メガリンマウス及びgGT-Cre(近位細管のS3セグメントの細胞の80%で遺伝子を特異的に欠失させる)92を用いて近位細管上皮でメガリンが欠失されている。TE Willnow91によれば、これら条件付き欠失マウスは生存可能で繁殖能力を有する。メガリン欠失効率は、抗メガリン抗体による免疫組織化学的染色により確認できる。欠失が完全である場合、メガリンf/fマウスをメガリンf/+gGT-Creマウスと交配して、メガリンf/f:gGt-Creマウス(25%)及び同複仔コントロールメガリンf/f(25%)、メガリンf/+:gGt-Cre(25%)及びメガリンf/+(25%)を作製した。メガリン欠失マウス(n=12)は、フロクス化対立遺伝子座及びgGT-creリコンビナーゼのPCR遺伝子型決定によって同定できる。Alexa-488若しくはローダミン標識野生型又はK6変異体(2つの異なる標識の使用は負荷電(Alexa-488)又は正荷電(ローダミン)による要因を回避するため)を4週齢マウスの腹腔内注射によって試験し、それらの輸送をZeiss LSM510-META倒立共焦点レーザー走査顕微鏡及び抗ヒト抗体によるイムノブロットを用いて分析した。メガリン発現は、近位腎上皮、上皮小体細胞、精巣状態上皮細胞、II型肺細胞、乳房上皮及び甲状腺小胞細胞に限定されているので、野生型及びノックアウトマウスにおける野生型Ngal及び変異体Ngalの両方の分布を解明して、in vivoのNgal-メガリン相互作用を探索することができる。近位細管によるWT Ngalの捕捉が条件付きメガリンノックアウト腎で停止し、さらにNgalが分泌されるならば(図10に類似)、メガリンはおそらく腎における唯一のNgalレセプターであり、レセプター24p3Rは必須ではないと推定される。これが正しければ、野生型Ngalの分布もまた種々の組織のメガリン分布と相関性を示すはずである。さらにまた、Ngal変異体(例えばK6)がメガリンに対して低い親和性を有するならば、尿中へのそれらの漏出は直接的に説明できる。他方、野生型Ngalがメガリンノックアウトの近位細管で及びメガリン非発現の体細胞によって捕捉されるならば、また別のレセプターが予想される。この事例では、変異体Ngalの分泌は、メガリンに対してだけでなく非メガリンレセプターに対する親和性低下の結果であり得る。
Ngal変異体におけるNgal:Ent:Fe III 相互作用の評価
Ngalは、高い親和性でEnt:FeIII及びEntと特異的に結合し(それぞれ0.4nM及び3.57nM)36,75、さらに前記は結合した鉄をたとえ低pHでさえ遊離させることができない38。Ngalは、もはや化学反応に加わることができないように鉄を隔離し、複合体は循環中の輸送のために安定である。“再吸収”消失変異体がなお第二鉄シデロフォアと高い親和性で結合する能力を有するか否かを試験することができる。初期的データは、Entの存在下で変異体は鉄を保持することを示し(図14)、さらに明瞭な赤い着色を提示する。K6 Ngal:Ent相互作用を定量し、導入された変異の構造的影響を決定することができる。
NgalによるEnt:Fe III の結合の定量的測定
蛍光消光(FQ)方法(Nature Chemical Biology, 201038、図10)を用いて、Ngal及びNgal変異体:第二鉄シデロフォア相互作用のスペクトルを定量し93-98、Ent結合の親和性測定値を導き出すことができる。励起λexc=281nm及び発光λem=340nmデータを、Ent:Feに曝露した、100nMのK6 Ngal変異体タンパク質溶液(32μg/mLのユビキチン及び5%DMSOを含む)から収集できる。前記複合体のpH感受性は、蛍光シグナルが安定化するまで溶液のpHを増加調節することによって決定できる。データは、一部位結合モデル(DYNAFIT)99による非線形回帰分析を用いて調べることができる。コントロール実験を実施してタンパク質の安定性を確認することができる。また別の技術にはSPR及びイソサーマルタイトレーション熱量測定(例えば強力な基に由来するもの86)が含まれる。
変異体Ngal:Ent:Fe III の生成のための構造的基礎
メガリン結合能力を損なうために導入された変異が第二鉄シデロフォアリガンド認識を妨げないことを確認するために、K6±Ent:FeIIIの構造をX-線結晶学によって決定することができる。20を超えるNgal結晶構造(ヒト、ネズミ及び変異体型を含む)±N結合CHO(空のもの及び一連の天然シデロフォア又は合成アナローグと結合したもの)は以前に決定されている36,38,93,99,100。K6変異体は、全ての公知のNgal結晶形で結晶接触に影響を与えるので、前記をde novoな構造決定としてアプローチできる。結晶化のために、タンパク質を、還元/非還元PAGE及び同時静的/動的光分散(concurrent static/dynamic light scattering;SLS/DLS)による質量分析によって決定される純度及び単分散性を用いて、GSTクロマトグラフィー、続いてゲルろ過及びイオン交換クロマトグラフィーによって高度に精製することができる。単分散するタンパク質調製物を、サブマイクロリットルの自動装置及び市販のファクトリアルスクリーンを用いて結晶性についてスクリーニングできる。結晶化を触媒する確立された方法論を用いて初期結晶を通常の結晶化形式で最適化することができる。また別には、タンパク質をさらに厳密に精製するか、又はFabと複合体を形成させることができる(ネズミNgal:Fab複合体の構造[20% PEG4000及び10%イソプロパノール(pH=7.0)から結晶化、空間群:P212121、a=37.9Å、b=69.4Å、c=117.6Å;dmin=2,15Å、Rmerge=0.04]を決定した(16を超える抗ヒトNgal抗体Fabパネルを共同結晶形成のために用いることができる)。回折データを収集することができる。利用可能な種々のソフトパッケージのいずれかを用いてデータを変換し、直接的相違フーリエ(同形結晶のため)、分子置換(MR)、MAD(一般的にセレノメチオニンを使用)又はMIRAS(多様な推論方法のいずれかを使用)によって相転移を実施できる。これらのデータはNgal:Ent相互作用の特徴を定量的に決定し、K6(又は他の変異体)がEnt:FeIIIに対して親和性を保持しているか否かを示すことができる。これらの試験は、導入された変異がリガンド結合を損なうことを示すことができ、さらにそれら構造を用いてさらに別の変異を操作することができる。
変異体Ngal:Ent:Fe III のデリバリーによる安全な鉄の排出
K6 Ngal:EntがNTBIを効率的にキレートして腎臓から尿へデリバリーできるか否かを試験するために、K6:Ent:55FeIII複合体(80μg)をマウス(4週)に導入し、代謝ケージで3時間尿を収集した。図16に示すように、注射したK6-55FeIII複合体の16.23%が尿にデリバリーされ、これは尿で見出されるK6タンパク質のパーセンテージと一致するが(図13)、野生型注射物は0.1%未満が排出された。肝臓には微量(<1%)の55FeIIIが蓄積し、鉄はいったんK6:Entによってキレートされたことを示している(キレートされたものは主に腎臓及び尿にデリバリーされた)。これらのデータを基にして、K6:Entが内在性NTBIを捕捉し、キレートし、輸送してこれを除去できるか否かを試験できる。
ヘモクロマトーシスのネズミモデルにおけるK6:EntによるNTBIのキレート及び排出
マウスモデルの確立及び評価
Hfe遺伝子を欠く遺伝性ヘモクロマトーシス1型のマウスモデルは市場(Jackson Labs, Stock#:003812)から入手できる。これらのマウスは離乳後12週間で器官の鉄過負荷を生じる。後天性ヘモクロマトーシスのマウスモデルは以前に報告されたように作製することができる101。この輸血媒介鉄過負荷のマウスモデルは、イソフラン麻酔マウスの後眼窩動脈叢を介したレシピエントへの保存(4℃で14日)マウスRBCの輸血(17.0−17.5g/dLヘモグロビンで200又は400μL)によって作製された(前記輸血はヒトへの1−2ユニットのRBC輸血に匹敵する)。簡単に記せば、RBCは30−50匹のC57BL/6マウスからCPDA-1溶液(Baxter)中に入手し、新生児用白血球高効率軽減フィルター(Neonatal High-Efficiency Leukocyte Reduction Filter, Purecell Neo)を用いて白血球を減少させ、続いて遠心分離によって17g/dLの最終ヘモグロビンレベルに濃縮する(前記ヘモグロビンレベルは、Drabkinアッセイ(Ricca)102及び標準物(Count-a-Part Cyanmethemoglob-in Standards, Diagnostic Technology)101と比較する光学密度(540nm)によって決定した)。残留白血球を細胞計測法(LeucoCOUNT, BD)101によって計測する。NTBIは以前にHFE-/-マウス103(約3.7μM)及びRBC輸血マウス101(約2.5μM)の両マウスで観察された。標準的なニトリロトリ酢酸(NTA)限外濾過アッセイ101を用いて、これらのモデルでNTBIを測定できる。前記は、ヘパリン添加血漿(90μL)をNTA(800mM、pH7.0)とともにインキュベートし、続いて30Kの限外濾過物(Nanosep, 30kDaカットオフ、ポリスルホン型)を調製し、フェロジンによりNTBIを測定することによって実施できる104。総器官鉄は、65℃での乾燥、前記に続く酸性化及び色素原(1.6mMのバソフェナントロリン)によるNTBIの検出を含む手順を用いて決定できる105。ヘモグロビン血症は、パワーウェーブ(PowerWave)XS分光光度計(BioTek)を用いて分光学的に検出できる101。肝臓及び脾臓の細胞内鉄蓄積は、パール試薬54(青色の顆粒を提示する)を用いるパラフィン切片及びマクロファージを検出する同時免疫染色(抗マウスF4/80抗体(eBioscience)並びにABC及びDABキット(Vector Laboratories)による)101を用いる切片で検出できる。
以前に報告されたように、多数のサイトカイン/ケモカイン(特にインターロイキン-6(IL-6)、単球化学走性タンパク質-1(MCP-1)、マクロファージ阻害性タンパク質-1β(MIP-1β)及びケラチノサイト誘導ケモカイン/CXCL1(KC/CXCL1))が、古い保存RBCの輸血後2時間で増加する101。したがって、これらのサイトカインを鉄過負荷のマーカーとして及びNgalの治療有効性の測定として測定することができる。サイトカイン/ケモカインは、キット(Cytometric Bead Array Mouse Flex Kit, BD Biosciences)及び血漿を用い、ソフト(FlowJoソフトウェア)101を搭載した細胞計測装置(FACSCalibur cytometer, BD Biosciences)により定量することができる。
K6:Entによる鉄過負荷の治療及び治療有効性の評価
K6:Ent複合体は、HFE-/-マウス及びRBC輸血マウスに微小浸透圧ポンプ(ALZET(商標))により静脈内輸液によって導入できる。HFE-/-マウスのためには、K6:Entの用量は、12時間で17.9mgのK6:Ent、毎週3回、4週間であった。この用量は以下の計算に依拠する:HFE-/-マウスについては、NTBIは約3.7μM、血液体積は約1.6mLであり、鉄キレート及び除去を最大にするために、Mgalの半減期が10分であることを考慮して、12時間治療の間に等モルのNgal:Entが循環中に持続的に存在すべきであるか、或いは12時間にわたって約0.85μmole(約17.9mg)のNgal:Entが理論的に要求される。同様に、輸血マウスのための用量は、ただ1回の治療期間である12時間の間にK6:Ent約0.58μM(12mg)である。アポ-K6は陰性コントロールである(なぜならば、前記は鉄に結合せず、さらに内在性カテコールは解離するからである)。WT Ngalはまた有用なコントロールである(なぜならば、前記はメガリンに捕捉され、さらに鉄を尿へ輸送しないからである)。
治療有効性は、血清及び尿中の鉄、肝臓、脾臓及び腎臓の鉄濃度、マクロファージ及び肝細胞の細胞内鉄蓄積、並びに上記に記載したK6:Ent処置マウスと比較したK6又は野生型処置マウスの血漿サイトカイン/ケモカインの測定によって評価できる。K6 Ngalは抗ヒト抗体によるイムノブロットによって尿で検出できる。予備的データは、K6は尿に出現し、K6:Entは血清NTBIを顕著に減少させ、HFE-/-マウス及び輸血過負荷の鉄含有量を減少させ、さらにまた古いRBC輸液でサイトカイン/ケモカインのレベルを正常化させることを示唆する。
鉄媒介細胞損傷に対するK6:Ent治療の効果
腎臓の過酸化脂質におけるレドックス活性の測定値は鉄触媒超酸化物ストレスのマーカーである(前記はマロンジアルデヒドによって測定される)。K6治療に付したマウスの腎皮質を髄質から分離して均質化し106,107、TCA及びチオバルビタール酸で処理し、上清を535nmで読み取る。マロンジアルデヒド(ナノモルで発現される)は分子吸光係数1.56x105 M-1cm-1(535nm)を用いて計算する。K6による治療時の腎損傷のさらに別の測定は、マウス抗体(R&D system)による内在性マウスuNgal(25KDa)の検出である。NgalはAKIを引き起こす刺激(ラジカルの攻撃を含む)による損傷から3時間以内に発現される。我々は種々の処置群でuNgalを測定するであろう。
マウス尿の遊離鉄およびレドックス活性の測定
本明細書に提示したデータは、鉄はK6 Ngalと強固に結合し酸性尿においてさえもレドックス不活性であることを示唆している。前記は、K6、K6:Ent及び野生型Ngalで処置したマウスの尿中の“触媒性”鉄を測定する、Gutterridgeの古典的分光測定ブレオマイシン試験57を用いて試験することができる。Chelex処理した発熱因子を含まない水に尿を収集し、マイクロコン(10K、Millipore)を用いて作製した限外濾過物をブレオマイシンアッセイで測定する。標準曲線はFeCl3を加えた尿を用いて調製し、クレアチニン(Abcam)1mg当たりのブレオマイシン検出可能な鉄を記録する。レドックス活性を測定する第二の方法もまた用いることができる。鉄媒介ヒドロキシルラジカルの生成は、アスコルビン酸の存在下での3’-(p-ヒドロキシフェニル)フルオレセイン(HPF;Invitrogen)のフルオレセインへの変換によって検出できる(Ex 490nm、Em 515nm)94。図12に示すように、野生型Ngalは、カテコール:FeIIIの活性を消失させた(K6、K6:Ent及びWT Ngal:Entで処置したマウスの尿が試験される)。陽性コントロールは、K6が後に続くEnt/カテコール: FeIII(スーパーオキシドラジカルの生成を阻害する)である。
表2はアミノ酸配列リスト及び変異体NGALタンパク質のアミノ酸配列を示す。作製した変異体NGALタンパク質は配列番号:2−10;21−68;247−251として示される。表2はまたNGALの全ての位置において非正荷電アミノ酸への置換を有する推定的変異体NGALタンパク質を示す(配列番号:69−246(全ての表面残基を含む)、その表面残基は以下の位置を含む:1−15位(配列番号:69−83)、17−26位(配列番号:85−94)、4−50位(配列番号:108−118)、57−62位(配列番号:125−130)、71−82位(配列番号:139−150)、84−89位(配列番号:152−157)、96−105位(配列番号:164−173)、114−118位(配列番号:182−186)、128−131位(配列番号:196−199)、140−151位(配列番号:208−219)、157−165位(配列番号:225−233)、170−174位(配列番号:238−242))。























































本発明を前述の例示的実施態様で説明および例証してきたが、前記開示は単なる例示によって実施され、本発明の範囲(前記は下記の特許請求の範囲によってのみ制限される)を逸脱することなく、多数の改変が本発明の実施の詳細において為され得ることは理解されよう。開示した実施態様の特徴は、本発明の範囲内において多様な態様で組み合わされ、再構成することができる。
参考文献リスト









Claims (29)

  1. 野生型ヒトNGALの配列(配列番号:1)と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列又はそのフラグメントを含む変異体NGALタンパク質であって、
    (a)Lys 15、Lys 46、Lys 50、Lys 59、Lys 62、Lys 73、Lys 74、Lys 75、Lys 98、His 118、Arg 130、Lys 149及びHis 165の中の5つ以上の残基が、欠失によって又は非正荷電アミノ酸残基による置換によって変異し、さらに、
    (b)残基Asn 39、Ala 40、 Tyr 52、Ser 68、Trp 79、Arg 81、Tyr 100、Tyr 106、Phe 123、Lys 125、Tyr 132、Phe 133及びリジン134が変異していないか、又は保存的置換され、さらに
    (c)変異体NGALタンパク質がシデロフォアと結合する能力を有し、さらに
    (d)変異体NGALタンパク質が尿中に排出される、
    前記変異体NGALタンパク質。
  2. Lys 15、Lys 46、Lys 50、Lys 59、Lys 62、Lys 73、Lys 74、Lys 75、Lys 98、His 118、Arg 130、Lys 149及びHis 165の中の6つ以上の残基が非正荷電アミノ酸で置換される、請求項1に記載の変異体NGALタンパク質。
  3. Lys 15、Lys 46、Lys 50、Lys 59、Lys 62、Lys 73、Lys 74、Lys 75、Lys 98、His 118、Arg 130、Lys 149及びHis 165の中の7つ以上の残基が非正荷電アミノ酸で置換される、請求項1に記載の変異体NGALタンパク質。
  4. Lys 15、Lys 46、Lys 50、Lys 59、Lys 62、Lys 73、Lys 74、Lys 75、Lys 98、His 118、Arg 130、Lys 149及びHis 165の中の8つ以上の残基が非正荷電アミノ酸で置換される、請求項1に記載の変異体NGALタンパク質。
  5. Lys 15、Lys 46、Lys 50、Lys 59、Lys 62、Lys 73、Lys 74、Lys 75、Lys 98、His 118、Arg 130、Lys 149及びHis 165の中の9つ以上の残基が非正荷電アミノ酸で置換される、請求項1に記載の変異体NGALタンパク質。
  6. Lys 15、Lys 46、Lys 50、Lys 59、Lys 62、Lys 73、Lys 74、Lys 75、Lys 98、His 118、Arg 130、Lys 149及びHis 165の中の10以上の残基が非正荷電アミノ酸で置換される、請求項1に記載の変異体NGALタンパク質。
  7. 変異体NGALタンパク質が制菌活性を有する、請求項1に記載の変異体NGALタンパク質。
  8. 対象に変異体NGALタンパク質を全身投与して一定時間後に尿中に蓄積される変異体NGALタンパク質の%が、対象にWT NGALタンパク質を全身投与した後同じ時間をかけて尿中に蓄積されるWT NGALタンパク質の%より大きい、請求項1に記載の変異体NGALタンパク質。
  9. 対象に変異体NGALタンパク質を全身投与して一定時間後に尿中に蓄積される変異体NGALタンパク質の%が、対象にWT NGALタンパク質を全身投与した後同じ時間をかけて尿中に蓄積されるWT NGALタンパク質の%より10倍以上大きい、請求項1に記載の変異体NGALタンパク質。
  10. 対象に変異体NGALタンパク質を全身投与して一定時間後に尿中に蓄積される変異体NGALタンパク質の%が、対象にWT NGALタンパク質を全身投与した後同じ時間をかけて尿中に蓄積されるWT NGALタンパク質の%より100倍以上大きい、請求項1に記載の変異体NGALタンパク質。
  11. 対象に変異体NGALタンパク質を全身投与して一定時間後に尿中に蓄積される変異体NGALタンパク質の%が、対象にWT NGALタンパク質を全身投与した後同じ時間をかけて尿中に蓄積されるWT NGALタンパク質の%より100倍以上大きい、請求項1に記載の変異体NGALタンパク質。
  12. 対象に変異体NGALタンパク質を全身投与して3時間後に尿中に蓄積される変異体NGALタンパク質の%が1%以上である、請求項1に記載の変異体NGALタンパク質。
  13. 対象に変異体NGALタンパク質を全身投与して3時間後に尿中に蓄積される変異体NGALタンパク質の%が2%以上である、請求項1に記載の変異体NGALタンパク質。
  14. 対象に変異体NGALタンパク質を全身投与して3時間後に尿中に蓄積される変異体NGALタンパク質の%が5%以上である、請求項1に記載の変異体NGALタンパク質。
  15. 請求項1に記載の変異体NGALタンパク質をコードする核酸配列。
  16. 作動するようにプロモーターに連結された、請求項15に記載の核酸配列を含む発現ベクター。
  17. 請求項15に記載の核酸を安定的に発現する細菌細胞。
  18. 請求項15に記載の核酸を安定的に発現する哺乳動物細胞。
  19. 請求項1に記載の変異体NGALタンパク質含む医薬組成物。
  20. 請求項1に記載の変異体NGALタンパク質及びシデロフォアの複合体を含む医薬組成物。
  21. シデロフォアが、エンテロケリン、ピロガロール、カルボキシミコバクチン、カテコール及び前記の変種から成る群から選択される、請求項20に記載の医薬組成物。
  22. シデロフォアがpH非感受性である、請求項20に記載の医薬組成物。
  23. シデロフォアが尿pHで変異体NGALタンパク質及び鉄と結合する、請求項20に記載の医薬組成物。
  24. シデロフォアが変異体NGALタンパク質及び鉄と尿中で結合する、請求項20に記載の医薬組成物。
  25. シデロフォアが血液pHで変異体NGALタンパク質及び鉄と結合する、請求項20に記載の医薬組成物。
  26. シデロフォアが変異体NGALタンパク質及び鉄と血中で結合する、請求項20に記載の医薬組成物。
  27. 変異体NGALタンパク質及びシデロフォアが1:1のモル比で存在する、請求項20に記載の医薬組成物。
  28. 鉄過負荷をその必要がある対象で治療する方法であって、前記方法が、請求項20に記載の医薬組成物の有効量を前記対象に投与する工程を含む、前記方法。
  29. 尿道感染をその必要がある対象で治療する方法であって、前記方法が、請求項19に記載の医薬組成物の有効量を前記対象に投与する工程を含む、前記方法。
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