JP2010508642A - イオン移送装置 - Google Patents

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Abstract

交互に並んだ、第1の複数の環電極(205)と第2の複数の環電極(210)とを備えた電極集合体(120)を含む、質量分析計の圧力の高い領域と低い領域との間でイオンを輸送するためのイオン移送装置である。第1複数環電極(205)は、長手方向において第2複数環電極(210)よりも狭いが、第1複数環電極は、そこに印加された、第1極性の相対的に高い電圧を持ち、一方、第2複数環電極(210)は、そこに印加された、第1組環電極(205)に印加されている電圧と反対の極性の、相対的に低い電圧を持っている。この方法では、イオン移送装置を通過するイオンは、イオンをチャネル壁の内側表面から遠ざけ、チャネル対称面または対称軸に向かって収束する、空間的に交互に並んだ非対称電界を受ける。

Description

本発明は、質量分析計内でイオンを輸送するためのイオン移送装置、より詳細には、大気圧イオン化源から高真空の質量分析計真空チャンバへイオンを輸送するための、イオン移送装置に関する。
キャピラリとしても知られるイオン移送管は、質量分析技術において、大気圧またはその付近に保たれているイオン化チャンバと、減圧下に保たれている第2チャンバとの間でイオンを移送するものとして良く知られている。イオン移送チャネルは典型的に、イオン化チャンバに向いて開いている吸込端と、第2チャンバに向いて開いている排出端とを備えた、細長い管(キャピラリ)の形状を取ると一般的に示されている。イオンは、荷電および非荷電粒子(例えば、エレクトロスプレーまたはAPCIプローブからの部分的に脱溶媒和した(desolvated)液滴、あるいは、レーザー脱離またはMALDI源からのイオンと中性粒子(ニュートラル:neutrals)と基質(Substrate)/マトリックス(Matrix))、バックグラウンドガスと共に、イオン移送キャピラリの吸込端に入り、圧力勾配の影響を受けながらその全長を移動する。その後、イオン/ガス流は、自由噴射膨張(free jet expansion)として、イオン移送管から吹き出す。続いて、イオンはスキマーコーンの開口部を通り、連続的に圧力の低下する領域を通り抜けた後、質量スペクトルを取るための質量分析器に到達する。
既存のイオン移送装置では損失が大きいため、イオン源から生じたこれらのイオンの大部分は、イオン移送装置を通過して、次の質量分析の段階に到達することができない。
この問題に対しては、多くの取り組みが成されている。例えば、イオン移送管を加熱して残留溶媒を蒸発させ(これにより、イオン生成が向上する)、溶媒−分析物付加化合物を解離させる。スプレーが移送チャネルに入る前の脱溶媒和を進めるための、加熱ガスの向流も提案されている。イオン移送チャネルの下流にある質量分析計のイオン光学系が実質的に受け取る、イオン源からのイオン数を最大とするため、試料スプレー、キャピラリ管、およびスキマーの配列や位置決めについて、様々な手法が実践されている。
イオン移送管に入ったイオンの大部分は、管壁との衝突で失われることが観測されている(例えば、Sunnerら、J. Amer. Soc. Mass Specrometry, V.5, No.10, pp.873-885 (October 1994)参照)。これは質量分析器に到達するイオンの数を減らし、計器感度に悪影響を及ぼす。更に、誘電体から成る管では、イオンと管壁との衝突によって電荷蓄積を生じ、イオンが管に流れ込んで通過するのを妨げる。先行技術には、イオンと管壁との相互作用を減らすことで、あるいは、荷電効果を減らすことでイオン損失を少なくしようとする、多くのイオン移送管の設計が含まれている。例えば、Franzenによる、米国特許第5,736,740号は、軸方向DC電界を加えて、ガス流に対してイオンを減速することを提示している。この参考文献によれば、ガス流の(イオンに対する)放物線速度プロフィールは、管中心線へイオンを収束する気体力学的力を生じる。
その他の先行文献(例えば、Fischerによる、米国特許第6,486,469号)は、例えば、電荷シンクに繋がる入口部分を導電性材料の層で被覆することで、誘電体の管の荷電を最小とする技術に関するものである。
もう一つの取り組みは、大気中から中心軸へ向けて入ってくるイオンを漏斗状に狭めるる“ファンネル”である。イオン移送キャピラリの後、真空条件下で作動するイオンファンネルの概念は、米国特許第6,107,628号に初めて発表され、後に、Belovらによる、J. Am. Soc. Mass Spectrom 200, Vol 11, pages 19-23 に詳細に述べられている。最新のイオンファンネル技術は、米国特許第6,l07,628号、Tangらによる、"Independent Control of Ion transmission in a jet disrupter Dual-Channel ion funnel electrospray ionization MS interface", Anal. Chem. 2002, Vol 74, p5431-5437,(デュアル型ファンネル装置を示している)、Pageらによる、"An electrodynamic ion funnel interface for greater sensitivity and higher throughput with linear ion trap mass spectrometers", Int. J. Mass Spectrometry 265(2007) p244-250,(線形トラップ四重極(LTQ)装置での使用に適応させたイオンファンネルを述べている)に記載されている。残念ながら、イオンファンネルの有効作動範囲は、およそ40ミリバール(40hPa)、すなわち、大気圧の4%のガス圧までしか伸ばせない。
大気圧への開口部を持つファンネル(漏斗)型デバイスは、Kremerらによる、"A novel method for the collimation of ions at atmospheric pressure", J. Phys D:Appl Phys. Vol 39(2006) p5008-5015に開示されているが、ここでは、静電気によってイオンを収束する(平行にする)ため、フローティングエレメント受動イオンレンズを用いている。しかし、これは、大気圧と前真空(フォアバキューム:forevacuum)との間の圧力領域でのイオン収束を論点としているものではない。
更に別の装置が、Willoughbyらによる、米国特許第6,943,347号に述べられており、これは、軸方向に導電性電極の層が交互に並んだ層状管構造を提示している。導電性電極に加速電位を印加して、入口領域へ侵入する電界を最小とし、また、電界の減少から生じる分散効果を粘性力が十分に上回るようになるまで、電界拡散を遅らせる。これはイオン損失の減少に役立つように見えるが、実際に中心軸にイオンを収束するには常に軸方向電界を大きくする必要があると考えられ、これは、低圧ではブレークダウンのため技術的に不可能となる。
更にその他の先行文献(例えば、Fischerによる、米国特許第6,486,469号)は、例えば、電荷シンクに繋がる入口部分を導電性材料の層で被覆することで、誘電体の管の荷電を最小とする技術に関するものである。
前述の取り組みのいくつかは、イオン損失の減少、および/または、イオンと管壁との衝突から生じる悪影響の軽減には部分的に成功しているが、収束力は、特に、イオンビーム内にかなりの空間電荷があり、管が相当長いとするならば、イオンを壁から離して保つにはあまりに不足している。後者の要求は、エレクトロスプレーまたはAPCIイオン源によって形成されたクラスタの脱溶媒和の必要性から生じる。別の装置では、管を、簡単な開口部に置き換え、この開口部の前に脱溶媒和領域を設けなければならない。しかし、この領域での気体速度は管内部より著しく遅いため、空間電荷効果によって多くの損失が生じる。このため、当該技術においては、イオン損失がより少なく、より広範囲の実験条件および試料の種類で使用可能なイオン移送管の設計が求められている。
この背景に対して、また本発明の第1の態様に従って、
相対的に圧力の高い領域と相対的に圧力の低い領域との間でイオンを輸送するためのイオン移送装置を提示する。
この装置は、長手方向軸を持つイオン移送チャネルを構成しているDC電極集合体であって、このDC電極集合体は、長手方向軸に沿って第1の距離D1に亘って延びる第1の複数の電極と、前記第1複数電極と交互に並んだ、長手方向軸に沿って第2の距離D2>D1に亘って延びる第2の複数の電極とを含んでいる、DC電極集合体と、第1の極性のDC電圧+Vを第1複数電極に印加し、電極集合体の長手方向の平均電圧分布に対して第2の極性のDC電圧−V(|V|>|V|)を、第2複数電極に印加するための手段と、を含むものである。本発明の第2の態様に従って、相対的に圧力の高い領域と相対的に圧力の低い領域との間でイオンを移送する方法を提示する。この方法は、長手方向にイオン移送チャネルを構成しているDC電極集合体を形成するよう、長手方向に第1の幅D1を持つ第1組の電極と、長手方向に第2の幅D2(D1<D2)を持つ第2組の電極とを、交互に配置する工程と、第1のDC電圧Vを第1組電極に印加する工程と、DC電極集合体の長手方向の平均電圧分布に対して反対の極性の、第2のDC電圧V(|V|>|V|)を、第2組電極に印加する工程と、を含み、幅D1およびD2、電圧VおよびVは、相対的に電界の高い領域と相対的に電界の低い領域とが、イオン移送チャネル内に連続的に交互に並んで発生するように選び、それぞれの高電界領域は、長手方向に、それぞれの低電界領域よりも短い。
大まかに言うと、本発明の1つの実施の形態に従って構成したイオン移送チャネルは、周期的電極構造体を用いて空間的に交互に並んだ非対称電界を発生し、この電界は、チャネル壁の内側表面からイオンを遠ざけ、チャネルの対称面または対称軸に向けて収束する。第1複数電極は、第2複数電極と交互に配置されており、第1複数電極の幅(軸方向)は、第2複数電極の幅に比べて著しく小さい。第1および第2DC電圧が、それぞれ第1および第2複数電極に印加され、第1電圧は、第2DC電圧よりも著しく大きく、また反対極性を持つ。ここでいうDC電圧の極性とは、流路に沿って平滑化した(即ち、空間的周期に亘って平均した)電位分布を指し、対応する電位より大きい、または小さいDC電圧は、それぞれ陽極性または陰極性を持つと見なす。チャネル内側表面に近い領域を通ってイオン移送チャネル中を移動するイオンは、交互に高および低電界強度条件を連続的に受けるが、第1複数電極の幅は相対的に小さいため、高電界強度条件の持続時間は、低電界強度条件よりも著しく短い。チャネル内でのイオンまたは他の荷電粒子の正味半径方向運動は、高および低電界におけるその移動度の間の関係に応じて変わると考えられる。A型イオン(電界強度に対してイオン移動度が正の依存性を示すもので、目的とする多くの分析物、特に、低分子量のイオンが含まれる)では、第1DC電圧の極性をイオン極性に合わせることで、イオンを、チャネル内側表面から遠ざけ、チャネル中心線へ向けて移動させることができる。
前述のイオン移送チャネルの実施の形態は、質量分析計の相対的に圧力の高い領域で使用でき、ここでは、チャネルを通るイオン運動はガス流条件によって支配され、また規定される。多くの場合、チャネルを通る流れは、全ての質量のイオンおよび分子について、ほぼ一定の速度であるという特徴を持つ。正味の(即ち、平滑化した)DC勾配によって力を加えることができる。イオン移送チャネルの作動を成功させるには、一般に、チャネル内でのイオンの平均自由行程を、電極の寸法によって規定される周期よりも著しく短く(数百〜数千分の一)する必要があると考えられる。このような条件下では(典型的に、数百〜1000mbar(数百〜1000hPa)のオーダー)、従来のRFイオンガイド(例えば、Smithらによる、米国特許第6,583,408号の、RFのみの多極またはイオンファンネル)では効率が悪く、伝達を向上させることができない。このような場合、本発明のイオン移送チャネルは、先行技術のものより、作動において著しい長所を提示する。
前述の実施の形態の変形において、収束/ガイド構造体は、多数の環電極から構成されており、隣り合う環電極に反対極性のDC電圧を印加する。環電極の寸法(幅および内径)は、イオントンネル中を移動するイオン(ガス流中に同伴されている)が、従来の高周波(RF)電界に近い振動数で交互に変化する電界を受け、イオンが、RFイオンガイド中で収束されるように流れ中心線に収束されるよう選択する。環電極を、少なくとも1つの方向変化(例えば、90度の湾曲)を備えた流路を構成するよう配置し、イオン−中性粒子の分離を促しても良い。この実施の形態は、数十mbar(数十hPa)の圧力領域内でのイオンの輸送に、特に向いている(また実際に、望ましいと考えられる)。
本発明の更にその他の特徴および長所は、添付の請求項および以下の記述より明らかとなろう。
本発明の第1の実施の形態による、イオン移送装置を示す断面図である。 図1のイオン移送装置のイオン入口領域の例を示す断面図である。 流れを最適化するための空力レンズを備えた図2のイオン入口領域を示す断面図である。 図2および3のイオン入口領域の、形を作った実施の形態の筐体の例を示す図である。 図2および3のイオン入口領域の、形を作った実施の形態の筐体の例を示す図である。 図2および3のイオン入口領域の、形を作った実施の形態の筐体の例を示す図である。 図4bに示した形状を備えたイオン入口領域を更に詳細に示す断面図である。 図4bに示した形状を備えたイオン入口領域を更に詳細に示す断面図である。 図1のイオン移送装置の一部を成す、交互に変化する電圧(alternating voltage)の導管の第1の実施の形態を示す断面図である。 交互電圧導管の第2の実施の形態を示す断面図である。 図7および8の交互電圧導管の別の実施の形態を示す上面図である。 本発明による、イオン移送装置の別の実施の形態を示す断面図である。 本発明による、イオン移送装置の別の実施の形態を示す断面図である。 本発明による、イオン移送装置の別の実施の形態を示す断面図である。 本発明による、イオン移送装置の別の実施の形態を示す断面図である。 イオン移送装置を通るイオンの代表的な軌跡を示す図である。
図1は、大気圧のイオン源(例えば、エレクトロスプレー)と、それに続く、質量分析の1つ以上の段階が置かれている、真空チャンバの高真空との間でイオンを運ぶための、本発明の様々な態様を具体的に示す、イオン移送装置を表している。図1において、エレクトロスプレー源、大気圧化学イオン化(APCI)、または大気圧光イオン化(APPI)源など(但し、これらに限定しない)のイオン源10は大気圧下に置かれている。これは、公知の方法でイオンを発生し、イオンは入口開口部30を通ってイオン移送装置(一般に、参照番号20で示す)に入る。次に、イオンは、排気される第1の輸送チャンバ40(以後、膨張チャンバ40と呼ぶ)を通過して、イオン導管60を含んでいる第2の真空チャンバ50に入る。導管60を出たイオンは、イオン移送装置の出口開口部70を通過し、ここで(一連のイオンレンズ(図示せず)を経て)質量分析の第1段階(以後、MS1と呼ぶ)80に入る。当業者には容易に理解されるように、通常、MS1の後には、質量分析の次の段階(MS2、MS3...)が続くが、これらは本発明の一部を成すものではなく、明瞭にするため、図1には示していない。
以下に、図1のイオン移送装置20中のコンポーネントの配置をより詳しく説明する。この配置をより良く理解するため、まず、大気圧と前真空(およそ、約1〜10mbar(約1〜10hPa)以下)との間の異なる圧力領域でイオンを輸送する方法について一般論を述べる。
図1のイオン輸送装置20中の、またはこれを取り囲んでいる異なる圧力領域において、イオン輸送は特徴的に異なっている。無論、実際に圧力は、イオン源とMS1 80との間のどの点においても即時に変化しないが、それでもなお、それぞれイオン輸送特性の異なる5つの明確な圧力領域が定義できる。5つの領域は、図1中で次のように示されている。
領域1:MS1の入口イオン光学系が置かれている、圧力がおよそ1〜10mbar(1〜10hPa)以下の領域。この領域は、本発明の対象ではない。
領域5:大気圧の領域であって、動的流れによりほぼ支配されており、エレクトロスプレーまたは他の大気圧イオン化源本体である。領域1と同じく、本発明の直接の対象ではない。
これより、領域2、3、および4が残る。
領域4:イオン輸送装置20への入口オリフィス30の付近である。
領域2:導管60の置かれている領域であり、MS1へのイオン輸送装置20の出口開口部70に境を接している。
最後に、領域3:イオン輸送装置20の入口オリフィス30(領域4)と上記の領域2との間の領域である。
典型的な市販のキャピラリの、イオン輸送装置に流れ込むイオン流(入口オリフィス30における)の測定値は、Iの範囲が、およそ2.5nAであることを示している。これより、流入ガス流の値Q=8atm・cm/s、導管の内径が0.5mmであることから、初期電荷密度ρの範囲は、0.3〜1×10−9C/cm=0.3〜1×10−3C/mと推定される。導管内でのイオンの滞留時間t=0.113m/50m/s、およそ2×10−3s、大気圧での平均イオン移動度の値K=10−4/sであることから、空間電荷斥力による伝達効率の限界は、次の式で求められる。
Figure 2010508642
つまり、イオン流を向上させるには(これが本発明の態様の目的である)、導管中におけるイオン移動度とイオン滞留時間を最適化することが望ましい。
大気圧イオン化(API)源でのイオン損失の大部分は、インターフェースの入口オリフィス30の前にあるイオン化チャンバ内で起きている。このイオン損失の割合は、API源のTaylorコーンから入口オリフィス30までのイオン/液滴ドリフト時間より求める。入口オリフィス30付近でのガス流速分布は、次の式で表せる。
Figure 2010508642
式中、dは、導管の直径であり、Rは、その点から入口オリフィス30までの距離であり、Cは定数であり、ΔPは圧力低下である。イオン速度は、Vion=Vgas+KEであって、式中、Kはイオン移動度であり、Eは電界強度である。Kを、約10−4/s、Eを、約5×10V/mとすると、電界によって生じる速度は、約50m/sとなる。内径0.5mmの導管中でのガス流速はほぼ同じ値であるが、入口オリフィス30から5mmの距離では、ガスと共に移動するイオンは、電界中での移動より約10倍も遅くなる。このため、この領域でのイオン滞留時間は、10−4sの範囲であり、上記の式(2)による空間電荷斥力のため、イオン損失は約50%となる。
言い換えると、イオン移送装置の解析的考察より、空間電荷斥力が主なイオン損失機構であることが示唆される。イオン伝達効率を決定する主なパラメータは、導管中でのイオン滞留時間tと、イオン移動度Kである。つまり、イオン輸送効率を高める1つの方法は、tを小さくすることと考えられる。しかし、tには一連の制限がある。
1.液滴を蒸発させるために必要な時間
2.ガス流が層流から乱流に変わる臨界速度
3.ガス流が音速まで加速された際の衝撃波の出現。これは特に、領域5から領域1にかけて大きな圧力低下(およそ1000mbar(1000hPa)から1mbar(1hPa)へ)が起こる場合である。
図1に戻って、イオン輸送装置の望ましい実施の形態を更に詳細に述べる。使用した形状および配置は、先に確認したイオン輸送効率の制限に対処しようとするものである。
検討すべき最初の領域は、それぞれ、入口開口部30の付近および膨張チャンバ40を構成する、領域4および3である。
入口オリフィス30前でのイオン損失に対処するには、入口オリフィス30に流れ込むガス流を増やすことが望ましい。これは、上記の分析に従い、所定のイオン流では、イオン輸送装置へ入るときのガス流速が大きいほど、より大量のガスが捕捉でき、このガスが飽和までイオンで充たされているとすれば、より多くのイオンを捕捉することができる。領域3および4での滞留時間を短くすると、イオン流は、超音速ほどではないが、速く適当な状態になる。
このように、API源10と導管60への入口との間を最適とし、または、コンポーネントを加えることで、領域4および3における改良が可能である。大気圧の領域5と領域2との間を接続する領域4および3は、望ましくは、一般に、対象とする殆どの分析物において、窒素分子より4〜10倍以上重いイオンを、気体力学的に収束する。
領域5と2との間の流れが超音速になると、予期しないイオン損失を生じることがあるため、第1の目的はその回避である。この目的は、膨張チャンバ40内に設けられた入口ファンネル48を使用することで達成できる。このようなファンネル48は、中心口径の異なる一連の平行板として図1に示されており、このような装置(およびそのいくつかの代替物)の目的は、図2〜4に関連して、後に述べられている。望ましくは、ファンネル48は短く(実際には、図1に示されているようなセグメント配置では、短ければおよそ3mmが可能である)、望ましくは長さ1cm以下である。
膨張チャンバ40は、膨張チャンバのポンピングポート45に接続した、ダイヤフラム、抽出、またはスクロールポンプ(図示せず)で、300〜600mbar(300〜600hPa)付近まで排気することが望ましい。イオンファンネル48を適当な形状とすることで、膨張チャンバ40吸入時のイオンの膨張を、衝撃波が全く発生しないよう、あるいは発生を制御するよう調節可能である。
先の、Sunnerらの参考文献に示されているように、スプレー流が遅くても、大気圧イオン源(例えば、エレクトロスプレーまたはAPCI)は空間電荷が制限される。最も高い電界を加えても、API源は、0.1〜0.5×10−9クーロン/(atm.cm)以上を運べないことが、本発明者らにより実験的に確認されている。ナノスプレー源であっても、この流れの大半を捕捉するには、入口開口部30の直径を少なくとも0.6〜0.7mmとし、その後に強力な加速および収束電界(全電圧低下を、電気的破壊が始まるより低く保つ必要があるが)を必要とする。
図2は、この強力な加速および収束電界を得るための、簡単な装置の略図である。ここでは、吸込口30は、第1のDC電圧V1に保たれ、一方、膨張チャンバ40内であるが、導管60への入口に隣接している平板電極90は電圧V2に保たれている。電圧を印加した吸込口30と平板電極90とが共に、簡単なイオンファンネル48を構成する。図2の平板電極には中心開口部があり、一般に、導管60の内径と同じ大きさで、同一線上にあり、これがイオンを導管60へ注ぎ込む働きをする。開口部30と平板90との間の電界は、荷電粒子を効果的に加速し、また荷電粒子は粘性流中であっても力線と平行に移動する傾向があるため、荷電粒子は、開口部のフリンジ電界により導管中に引き込まれる。この電気的に促進された導管領域への加速は、一般に望ましい。
図2の簡単な装置の発展として、電圧V1の入口オリフィス30と電圧V2の平板電極との間の膨張チャンバ40内の空間に、イオンレンズまたは空力レンズ、あるいはこの二つを組み合わせたものを更に設けることができる。図3は、この概略図を示したものであり、平板電極のアレイ100を、入口オリフィス30と平板電極90との間に設置して、イオンファンネル48を構成する。平板電極のアレイ100を形成する各電極には、入口オリフィス30および平板電極90の開口部と一般に同軸の中心開口部があるが、それぞれの直径は異なっている。平板電極のアレイ100によって、様々な異なる形状を描くことができる。最も簡単なケースでは、導管へ向かうファンネルは、フレア型に広がっているだけである(直線テーパー)。この概略図を図4aに示すが、これは、Wuら、"Incorporation of a Flared Inlet Capillary tube on a Fourier Transform Ion Cyclotron Resonance Mass Spectrometer", J. Am. Soc. Mass Spectrom. 2006 Vol 17, p 772-779 に更に詳細に述べられている。その他の形状の同じく大まかな概略図も、図4bおよび4cに示すが、これらはそれぞれ、ジェットノズル形(ベンチュリ装置−Zhouら(Zhou, L.; Yue, B.; Dearden, D.; Lee, E.; Rockwood, A. & Lee, M. Incorporation of a Venturi Device in Electrospray Ionization, Analytical Chemistry, 2003. 75, 5978-5983)参照)およびトランペット形または指数関数形の吸込口である。
このように、図2から図4の装置(および、図1の膨張チャンバ40内に示されている装置)の効果により、導管60に向かうセグメント化されたファンネル入口ができる。いずれの場合にも、入口開口部30は、収束チャネルの直径より小さいかもしれないが、大量のガスが流れるには十分に大きい。イオンファンネルの形を作る目的は、ファンネル出口と導管60の入口との間の容積を、ジェットセパレータ(ガスクロマトグラフ装置に接続した質量分析計で現在でも広く使われている装置)に似たものに変えることである。分析物の分子はキャリアガス(一般に、窒素)の分子より著しく重いため、膨張後の発散は、キャリアガスより遙かに小さい。即ち、空力収束が起こる。この効果は、特に、必要な電圧が、貴ガス類の低いグロー放電限界に対応するよう十分低い場合には、キャリアガスの少なくとも一部をヘリウムとすることで更に促進することができる。この結果、チャネル直径がファンネルの直径よりあまり大きくなく、例えば、内径0.8〜1.2mmであっても、イオンを、軸の近くに保ち、収束チャネルの中心部分に送り込むことができる。この直径は通常のキャピラリよりは大きいが、始動圧力は1/2〜1/3であるため、現在使われているものと同様のポンプ容量、例えば、28〜40m/hの真空ポンプをファンネルの端に用いることはまだ可能であろう。同時に、ファンネル48内部のイオンを積極的に収束することで、それに続く導管60の長さを、損失を起こさずに大きくできる。これは同様に、残留している液滴やクラスタの脱溶媒和も進める。その結果、試料流量を、より多く、ナノスプレーの流量よりも遙かに多い範囲にまで広げることができる。
空力レンズの一例に過ぎないが、ジェットセパレーションの非常に簡単な例を、図9a〜dの実施の形態の一部と関連して後に論じる。
望ましい実施の形態の領域4および3の装置に更に付け加える、あるいはその代わりとなるものとして、イオンファンネル48に、チャネル内部の1つ以上の場所に境界層の補助ポンプを加え、チャネルに沿った圧力低下を制限するなどしても良い。このようなファンネル48に沿って強い電界を保つため、これらのポンピングスロットを、異なる電位の薄板間の隙間として用いることができる。
再び図1を参照として、領域2の配置(即ち、膨張チャンバ40とMS1 80への出口オリフィス70との間の領域)を更に詳細に述べる。
真空チャンバ50内に設置され、イオン移送装置の領域2を構成している導管60は、3つの独立したコンポーネント、ヒーター110と、一組のDC電極120と、一般に130で示され、以下に更に詳細に述べる、差動ポンピング装置とから成る。これらのコンポーネントは、それ独自の機能と長所をそれぞれ備えているが、共に使用すると互いに相乗的な効果が更に得られることを理解すべきである。言い換えれば、これらの3つのコンポーネントのいずれか1つ、または2つを用いてもMS1への正味のイオン流は向上するが、この3つを全て組み合わせれば最大の向上が得られる。
ヒーター110は、導管60の長手軸に沿って延びた、DC電極の組によって構成されているチャネルの周囲に巻いた抵抗線として、公知の方法で形成される。巻き線は、チャネル115と直接熱的接触しており、あるいは、代わりに、チャネル115と離して設け、ヒーター110の巻き線に電流を通して、チャネル内のガス流を放射または対流加熱しても良い。実際、別の装置では、チャネル115内のガス流に向けて内側へ熱を放射するよう、ヒーター巻き線を、差動ポンピング装置130中またはその上に形成しても良い。更に別の装置では、ヒーターも、DC電極120(抵抗体は対応できるよう準備する)で構成することができ、これについては後に更に検討する。当業者には、更に別の装置も明らかであろう。
イオン移送チャネル115を加熱すると、それを通って流れるガス流の温度が上がるため、残留溶媒の蒸発と、溶媒イオンクラスタの分解が促進され、MS1 80に到達する分析物イオンの数が増加する。
図5は、ポンピングを向上させるための設備48を備えた、積み重ね型平板電極のポンピングされている導管の入り口領域として、図4bに描かれている形状の実施の形態を示したものである。示されている平板電極は、DC、交互(alternating)DC、またはRFで稼働可能であり、ポンピングと、入口開口部の適当な形状により、全ての場合において伝達が向上することを理解すべきである。
DC電極120の組の実施の形態について述べる。これらの概略図は、図1に縦断面図として一度示されているが、別の実施の形態を、図6および7に拡大して詳細に示す。それぞれの場合において、同じ参照番号は同じ部品を示している。
図1および6を参照とするならば、DC電極120の目的は、DC電極120自体によって構成されているチャネル115の壁とイオンとの相互作用を小さくすることである。これは、イオンを、チャネル壁の内側表面から離して、チャネル中心線へ向けて収束する、空間的に交互に並んだ非対称の電界を発生させることで達成される。図1および6は、このような電界を生じるため、一組のDC電極120を用いてどのようにイオン移送チャネル115を構成するかの例を示す縦断面図である。イオン移送チャネル115は、交互に並んだ、第1の複数の電極205(ここでは、後に明らかになる理由により、“高電界強度電極”またはHFEと呼ぶ)と、第2の複数の電極210(ここでは、“低電界強度電極”またはLFEと呼ぶ)とから構成されている。個々のHFE205およびLFE210は環状であり、HFE205とLFE210の内側表面が集合して、イオン移送チャネル壁の内側表面を構成する。隣接する電極は、間隙または絶縁層によって互いに電気的に絶縁されているため、後に述べる方法で異なる電圧を印加することができる。1つの具体的な実施の形態では、電気的絶縁は、複数の電極(例えば、LFE)の1つの外側表面に、またはその付近に、絶縁材(例えば、酸化アルミニウム)の層を形成することで行うことができる。図6に示すように、HFE205とLFE210を、外側管状構造体215で取り囲んで、構造完全性、気密性を与え、また集合体としても良い。しかし、図1の望ましい実施の形態では、外側管状構造体を省いても良く、あるいは、外側管状構造体に、イオン移送チャネルの内部領域を(隣接する電極間の間隙から)ポンピングできるよう、その長さに沿って穴または細孔を設けて適応させても良い。その方法は後に更に述べる。
図1および6は、明確にするため比較的少数の電極を示しているが、典型的なイオン移送チャネル115の実施の形態は、数十から数百の電極を含むことは理解されよう。図1および6は、イオン移送チャネル115のほぼ全長に亘って延びている電極を示しているが、別の実施の形態では、イオン移送チャネルの長さに電極が欠けている部分が一つ以上あっても良いことも更に言及しておく。
電極は、周期H(連続するLFEまたはHFEの間隔)で配置されている。HFE205の幅(長手方向の長さ)は、対応するLFE210の幅よりかなり小さく、HFEは一般に、周期Hのおよそ20から25%を占めている。HFE幅は、H/pで表わすことができ、pは、一般に3〜4の範囲である。周期Hは、イオン移送チャネル115を通過するイオンが、従来の高電界非対称イオン移動度分光測定(FAIMS)装置の高周波閉じ込め磁場に近い周波数で、高い電界強度と低い電界強度とを交互に受けるように選ぶ。例えば、平均ガス流速を500m/秒とすると、500マイクロメートルの周期Hは、1メガヘルツの周波数となる。周期Hは、管の全長に亘って一定に保ち、あるいは代わりに、チャネル長さに沿って調節(連続的または段階的に)して、圧力勾配による速度の変化を反映しても良い。イオン移送チャネル115(LFE205とHFE210の内側表面によって構成されている)の内径(ID)は、周期Hより大きな値を持つことが望ましいと考えられる。
1つ以上のDC電圧源(図示せず)を電極に接続して、HFE205に第1電圧Vを、LFE210に第2電圧Vを印加する。Vは、Vと反対の極性を持ち、その大きさはVより著しく小さい。望ましくは、V/V比は、−pに等しく、式中、pは(先に示したように)、LFE幅が占める周期Hの割合の逆数であり、一般に3〜4の範囲であって、全周期に亘ってイオンが受ける電界の空間/時間積分は、ゼロに等しい。VとVの大きさは、後に詳細に示す所望の収束効果を得るには十分に大きいが、隣接する電極の間で、または、電極と近くの表面との間で放電が起きるほど大きくてはならない。50から500Vの大きさが前述の基準を満たすと考えられる。
HFE205とLFE210に所定のDC電圧を印加すると、イオン移送チャネル115内部に、電界強度の高い領域と低い領域が空間的に交互に並んだパターンが生じ、それぞれの領域は、対応する電極とおおよそ長手方向に同じ広がりを持っている。各領域において、電界強度は、流れ中心線においてゼロまたはゼロに近く、中心からの径方向距離と共に増加するため、イオンは、イオン移送管の内側表面にイオンが近づくにつれて強くなる半径方向引力または斥力を受ける。交互高/低電界強度パターンは、従来の高電界非対称イオン移動度分光測定(FAIMS)装置で起きるものと概念的に同じイオン挙動を生じる。FAIMS装置では、非対称波形を、分析器領域を構成する向かい合った電極対の一方の電極に加えている(例えば、Guevremontら、米国特許第7,084,394号参照)。
図6は、交互非対称電界の影響下における、流れ中心線から離れた位置にある陽イオンの軌跡を示したものである。イオンは、電界強度の高い領域ではイオン移送チャネルの内側表面から離れるように動き、電界強度の低い領域では内側表面に向かって動き(これは、あたかもHFE205が、そこに印加された陽電圧を持ち、LFE210が、陰電圧を帯びているようである(もう一度、極性は、前述のように、流路に沿って平滑化した(即ち、空間的周期に亘って平均化した)ポテンシャル分布に基づいて与えられなければならないことに注意))、ジグザグの経路を描く。
FAIMS技術において詳細に示されているように、交互高/低電界を受ける粘性流領域中でのイオンの正味の移動は、電界強度でイオンの移動度を変える機能となると考えられる。イオン移動度が電界強度の増加と共に大きくなるA型イオンでは、サイクルの高電界強度部分で移動する半径距離は、低電界強度部分の間に移動する半径距離を上回ると考えられる。図6に図示し、先に述べた例では、A型イオンは、流れ中心線に向かう正味の半径方向運動を示すため、イオン移送チャネル115の内側表面と衝突して中性化するのが防止されると考えられる。イオンが流れ中心線に近づくにつれて電界強度は殆ど消失し、イオンは、電極から生じる強い半径方向力を受けなくなる。反対に、C型イオン(電界強度の増大と共にイオン移動度が小さくなる)では、電界強度の低い領域でイオンが移動する半径方向距離は、電界強度の高い領域での移動を上回り、Vとイオンの極性が同じであれば、イオン移送チャネル115内側表面へ向かう正味の移動が生じると考えられる。C型イオンはチャネル壁との衝突により優先的に壊れ、A型イオンは流れ中心線に収束されるため、この挙動は、A型およびC型イオンの判別に使用できるであろう。C型イオンを優先的に輸送したいならば、VとVの極性を入れ替える。
交互DC電界を与える上記の手法は、ガスの動的力が、イオンの軌跡を純粋に長手方向経路から逸らす、あるいは、平均自由行程が十分長くなる(即ち、気体原子または分子との衝突がイオンの動きをもはや支配しない)領域においては、イオンの収束には不適当であるかもしれない。例えば、大気圧のAPI源10と、高真空(<1mbar(<1hPa))のMS1 80との間の圧力差による、イオン移送チャネル115内でのガスの膨張と加速は、イオン移送チャネル内部で生じる1つ以上の衝撃波を、その排出端付近で引き起こし、これによりイオンの経路が大きく逸れることがある。イオン移送チャネル115の遠位部に設けられた電極では、イオン−チャネル壁相互作用が起きないよう十分に収束させるため、RF電圧(DC電圧と共に、または代わりに)を印加する必要があることがある。この場合、隣接電極には逆位相のRF電圧を印加すると考えられる。
衝撃波を抑止する別の取り組みは、導管60(図1)の差動排気であり、これを以下に述べる。
図7は、本発明の第2の実施の形態による、イオン収束/ガイド構造体300を示しており、これは、質量分析計装置の大気圧付近または圧力の低い領域を通って、イオンを輸送するために用いることができる。このような圧力において、イオンは、高い粘性摩擦によりガス流内に“埋め込まれる”ため、ガス流と同じ速度を持つ。
一般に、イオンの平均自由行程が装置の大きさに比べて小さい場合、流れは、分子流れに対抗するほど粘稠であると見なせる。このような場合、分子間または分子とイオンとの間の衝突は、輸送現象において重要な役割を果たす。
本発明による、数ミリメートルから1センチメートルまでの典型的な直径と、数センチメートルまたは数十センチメートルの全長を備え、およそ大気圧から約1hPaまでの圧力勾配を持つ装置において、本発明のデバイス全体は粘性流条件にある。
実際に、クヌーセン数K=λ/Dが1以下の粘性流条件では、分析物と大きさにより、およそ1から10Paの圧力まで粘性流が保たれる(直径1mmのキャピラリ中、代謝産物などの小分子では、1Pa)。
収束/ガイド構造体300は、交互に間に配置した、第1の複数の環電極(以後、“第1電極”)305と第2の複数の環電極(以後、“第2電極”)310とから成る。隣り合った電極は、間隙あるいは絶縁体または層によって互いに電気的に絶縁されている。図5の実施の形態とは対照的に、第1電極305と第2電極310は、ほぼ同じ幅である。環電極305および310の配置は、質量分析技術においてよく知られているRF環電極イオンガイドと外見的には同じである。しかし、収束/ガイド構造体300は、逆位相のRF電圧を隣接電極に印加するのではなく、異符号で同じ大きさDC電圧を隣接電極へ印加するものである。ガス(イオン)速度に対して電極周期Dを適当に選ぶことで、ガイド/収束構造体の内部を通るイオンは、従来のRF電界に近い周波数(例えば、1メガヘルツのオーダー)で、交互に極性の変化する電界を受ける。交互に変化する電界は、RF電界とほぼ同じようにイオンを保ち、収束する。第1電極305と第2電極310に印加する適当なDC電圧は、様々な幾何学的パラメータ(電極の内径および幅)や操作パラメータ(ガス圧力)に応じて選び、典型的な実施の形態では、100から500VのDC電圧であれば、電極間で放電を起こすことなく、所望の電界強度を発生するためには十分と考えられる。また、これらのDC電圧と共に、更にRF電圧を印加しても良い(こうすると、独立した周波数で効果的に収束電界を生じる)。
この装置においては、また他の本発明の装置でも、走行長さHはなるべく小さく、およそ0.1から20mm、典型的に約1mm程度であって、イオンの平均自由行程は一般に、導管の関連寸法より短い。
AまたはC型イオンを優先的に伝達するよう調節可能な、図6の装置とは反対に、図7のより簡単な装置は、イオンの特異的なイオン移動度特性に関して大きな偏りを示さないが、単純に全ての荷電粒子の伝達が向上すると考えられる。
同様な効果は、図6の装置を、B型イオンを伝達する条件に調節することで(つまり、明確な高および低電界領域ができないよう、電圧を設定することで)、達成可能である。
別の操作モードでは、図7の装置を、交互に変化する高および低電界波形を用いて直接操作し、空間に伴う電界の変化を、荷電粒子の移動座標系から見た場合におおよそ等価である、時間に伴う電界の変化に変換する、RF FAIMSデバイスを作ることができる。
収束/ガイド構造体の第1および第2電極の配置は、特定の目的を達成するために変更しても良い。例えば、図8は、第1電極405と第2電極410とから成る、収束/ガイド構造体400の上面図を示している。この中では、隣り合う環電極が互いに横方向にずれて湾曲したイオン軌跡(点線415で示す)を構成する。あるいは、構造体の軸を徐々に曲げても良い。イオン軌跡に湾曲をつけることで、イオン−中性粒子分離(電界の差動効果により)を多少行い、ガス/イオン流中のイオンの濃度を高めることができる。収束/ガイド構造体のもう一つの変形では、次第に内径を小さくした第1および第2電極を用いて、Smithらによる、米国特許第6,583,408号に開示のものと同様のイオンファンネル構造体を作るが、これは、従来のRF電界の代わりに交互DC電界を使用するものである。
再び図1を参照して、差動排気装置130を更に詳細に述べる。
先に述べたように、大気圧イオン化源を備えた従来の吸込口部分では、質量分析計のフィルタリングおよび分析部分へ輸送するためのイオン光学系にイオンが入る前に、イオン源で発生したイオンの大部分が失われてしまう。イオン移送装置の出口端でのガス流速が速いことが、このイオンの損失の多さの原因と考えられる。中性ガスは、イオン移送管を通り抜けながらエネルギー膨張する。従来の吸込口部分では、この膨張領域と、イオン移送管中の上流の一定距離までの流れは、一般に乱流となる。このように、過去のイオン吸込口部分では、ガスによって運ばれるイオンは、限られた程度までしか収束されない。むしろ、イオンの多くは、流動ガスの容量全体に活発に動き回っている。この活発な乱流と、それによって生じるイオンに対する混合効果のため、好ましいほどまではイオンが収束せず、この流れ条件下でイオンと中性ガスとを分離することは困難であると考えられる。つまり、中性ガスを排気しながらイオンの大部分を分離し、これを下流に送るのは困難である。むしろ、イオンの多くは中性ガスと共に運び去られ、失われる。一方、本発明の実施の形態に関わる仮説は、イオン移送管のより長い部分に亘って流れを層流としておけるならば、イオンをより強く収束した状態に保つことができるというものである。所望の層流を作る1つの方法は、イオン移送管の側壁から中性ガスを除き、軸方向の流れおよびイオン移送管の出口端から出る流れを減らすことである。また、中等度まで側壁の外へ中性ガスを排気することで、イオン移送管の内側を軸方向へ流れるガスの境界層が薄くなって、速度分布がよりなだらかになり、流れがより安定となる。
大気圧イオン化インターフェースにおけるイオンのスループットまたは移送効率を高める1つの方法は、イオン移送管の内径を大きくするか、イオン移送管の長さを短くするかの1つ以上により、伝導性を大きくすることである。一般的に知られているように、イオン移送管をより太く、より短くすれば、より多くのイオンを下流のイオン光学系へ輸送することが可能であろう。しかし、利用できるポンピング装置の容量によって、どのくらい直径を大きくできるか、どのくらい全体の伝導性を大きくできるかが制限される。このため、本発明の実施の形態に従って、イオン移送チャネル115(図1)の内径を相対的に大きくし、同時に、イオン移送チャネル115の出口端から出るガス流を少なくして、ガス流の中心に向かってイオンを収束し続けるよう、流れ特性を向上させることができる。この方法では、中性ガスをイオンから容易に分離可能で、イオンを、出口オリフィス70を通って下流のMS1へ、一貫して向けることができる。この結果、輸送効率が向上し、機器感度が上がる。
一部または全てのケースにおいて、乱流がイオン輸送効率を上げることが認められたとしても、イオン移送チャネルの下流端で圧力が下がり、圧力低下によって脱溶媒和が進むことは、層流および乱流いずれの条件下においても、本発明の実施の形態に伴う長所であることは理解すべきである。更に、乱流条件であっても、イオン移送管の側壁から中性ガスの少なくとも一部が除かれることは、中性ガスからイオンを効果的に分離するよう作用するであろう。乱流中でも、液滴とイオンはその大きな質量のため、導管60を通る軸流である間は、その殆どがより中心付近に分散していると考えられる。このように、側壁から中性ガスを除去することは、層流および乱流いずれの条件下においても、比較的少ないイオン損失で、イオンから中性ガスを効果的に分離すると期待される。また更に、側壁から中性ガスを排気することによる潜熱の除去は、層流および乱流いずれの条件下においても、脱溶媒和を進めるための加熱を可能とする。
導管60を含む領域2は、望ましくはポンピングポート55から排気する。図1からわかるように、差動ポンピング装置130は、領域2の中で、チャネル115を含む内部領域と、導管60を含む真空チャンバ50との間で流体を流通させるための、複数の通路140を含んでいる。中性ガスは、内部領域115から、差動ポンプ装置130中の通路140を通って、真空チャンバ50へ排気され、ここから排出される。
イオン移送導管60の側壁または他のいくつかの部分の温度を示す信号をコントローラ58へ送り返すため、センサをイオン移送導管60とコントローラ58に接続しても良い。温度プロフィールを得るため、複数のセンサを様々な場所に設けても良いことは理解すべきである。このように、イオン移送導管60の側壁の複数の通路140からガスを排出する際の熱の減少を検出するため、イオン移送導管60にセンサを接続することができる。
図9aに示す別の装置では、導管60を、密閉された第3の真空チャンバ150で取り囲んでいる。これは、差動ポンピング装置130の壁の通路140からガスを吸引するために用いることができる。先に述べたような、バックグラウンドガスの除去の代わりに、通路140を通してイオン移送導管60のチャネル115の中へガスを流入させるためにも同様に使用できるであろう。これは、第3真空チャンバ150内の圧力を、大気圧と、チャネル115内の圧力との間に調節することで行える。通路140からチャネル115内へガスを流入させると、試料液滴がばらばらになるような、より乱れた流れの状況が作られる。より流れの乱れた状況では、試料液滴が砕けて更に小さな液滴となる。この液滴の分解は、同じく液滴を砕くクーロン爆発型分解とは対照的に、外力による分解である。図9aの実施の形態では、膨張チャンバ40に差し込まれた、必要に応じて追加されたポンピングポート56も示されている。ポンピングポート45は、平板電極48の前に向けて設けられているが、ポンピングポート56は、平板電極48と、第3真空チャンバ150への入口との間の領域を排気する。
外力およびクーロン爆発型分解の両方を用いる場合、1つのイオン移送管中でガスの除去と添加の両方を行うことができる。例えば、図9bに示されているように、第3真空チャンバ150を短くして、第2真空チャンバ50の一つの領域だけを包囲する。この手段によって、吸込口156または吸込口156を経由して、第2真空チャンバ50のどちらの部分にもガスを加えることができる。このように、一連の外力およびクーロン爆発分解を交互に行って、試料の液滴を砕くことができる。
図1、9a、9b、9c、および9dの実施の形態の差動ポンピング装置130の壁は、金属フリット、金属スポンジ、浸透性セラミック、および浸透性ポリマーの1つ以上を含む材料からできている。通路140は、材料中の細孔または間隙によって構成されていても良い。側壁の材料中の細孔または間隙は小さく、一般に、個別の開口部を持たない連続的な浸透性要素を形成している。あるいは、通路は、差動ポンピング装置130の側壁中に形成された個々の開口部または打ち抜き穴の形をとることができる。通路は、円形、直線形、細長い形、定形、および不定形の1つ以上の外形を持つ、貫通開口部で形成されていても良い。
更に詳細なものとして、図9cでは、決定的な入口領域におけるイオン流れを改良するための対策を示している。オリフィス30内の膨張ゾーン90は、ジェットセパレーションの簡単な形をしており、重い粒子を軸の比較的近くに優先的に送り、軽い粒子は周囲に拡散させて、その次の開口部に入らないようにしている。一方、加速プレートはイオンを集めるよう作用する。図9dは、ノズルプレート48の方向が逆で、それ自体が膨張ゾーンを形成し、その後に非常に薄い入口プレートがある実施の形態を示している。十分に圧力が低下すると、重い(即ち、キャリアガスより重い)荷電粒子は、大量のキャリアビームと、ふるい分けられるべき軽い(溶媒)イオンと共に、導管領域に容易に入り込むと考えられる。
早期にガス負荷量が減少すると、次の段階でのポンピング必要量が少なくなるため、図9a、c、およびdに示されている(更に、図9bの実施の形態にも応用できる)多数のポンピング装置は、インターフェースのコストの削減に役立つ。特に、ごく初期の段階45は、それが単なる送風機であっても、次の段階のガス負荷量を半分以下に減らすことができる。
図10は、SIMION(RTM)ソフトウェアを用いてシミュレートしたイオン軌跡(r,z)を示している。DC電極120によって構成されているチャネルの内径は0.75mmであり、長いDC電極セグメント210は0.36mmであり、短い電極セグメント205は0.12mmであり、その間の間隙は0.03mmである。ガス流速は、200m/sであり、セグメントの組に印加する電圧は、+/−100Vである。イオンは左から右へ移動する。このシミュレーションは、DC電極によって構成されているチャネル直径の内側の3分の1にあるイオンは閉じ込められ、チャネルに沿って収束されることを示している。振動するイオンの最大動径座標は、開始時の0.16mmから、約20mmの長さを通って排出される際には0.07mmに減少する。図10では、チャネル半径の3分の1以内にないイオンは、チャネル壁付近の逆向きのDC電界に打ち勝つほど早く移動しないため、失われることが認められる。このシミュレーションから、このイオンの閉じ込めが、導管60内部の圧力とガス流速に応じて変わることが確認されている。この効果は、大気圧およびこの圧力に相当する速度(およそ60m/s)では非常に弱い(0.174mmから0.126mmへ収束)。しかし、より低い圧力(大気圧の数分の一)と、約200m/sのガス流速で、前述のDC電極装置120を用いると、イオン閉じ込めに大きな向上が見られる。これは、圧力が約1mbar(約1hPa)である、MS1 80への最大ガス流が制限されるためである。
このように、DC電極装置120のみを用いても領域2におけるイオンの閉じ込めには多少の向上が見られ、またこれとは別に、DC電極装置による半径方向の静電気的閉じ込めなしに、差動ポンピング装置130を使用しても向上が見られるが、望ましい実施の形態においては、静電気によってイオンを軸方向に閉じ込めつつ、最適圧力範囲(約300〜600mbar(約300〜600hPa)以下)を作り出すよう、二つを共に使用する。
先の導入部の討論から、イオン移送装置の様々な部分が、衝撃波が生じないよう、導管60から排出される際のガス流速を超音速以下に保とうとするものであることが注目されるだろう。この成果の1つは、MS1 80への入口にスキマーが不要である、つまり、領域2からの出口開口部70は、簡単な開口部であっても良いということである。出口開口部にスキマーがあると、イオン流が減少することがあるため、実際には亜音速のガスが導管60から排出されると、より望ましい結果が得られることが認められている(スキマーは不要である)。
前述の実施の形態の殆どでは、望ましくは、円形の断面(即ち、管)のイオン移送導管を用いているが、本発明は管に限定されるものではない。別の断面、例えば、楕円形または長方形、あるいは平面形(即ち、非常にアスペクト比の高い長方形または楕円形)の方が望ましいこともあり、特に、イオン流が速い、または多数のノズル(ノズルアレイ)が用いられている場合に好ましい。同伴するガス流の著しい増大は、差動ポンピングの段階の数を増やすことで補償する。これは、例えば、既に使用しているこれらのポンプの中間段階を用いることで行うことができる。
本出願に記載のイオン移送チャネルは、前述のようなポンピングの調節と共に、多重化してアレイとするのに適している。このような装置は、マルチキャピラリまたはマルチスプレイヤーイオン源にとって最適なものとなると考えられる。

Claims (25)

  1. 相対的に圧力の高い領域と相対的に圧力の低い領域との間でイオンを輸送するためのイオン移送装置であって、
    前記装置は、
    長手方向軸を持つイオン移送チャネルを構成している電極集合体であって、前記電極集合体は、長手方向軸に沿って第1の距離D1に亘って延びる第1の複数の電極と、前記第1複数電極と交互に並んだ、長手方向軸に沿って第2の距離D2>D1に亘って延びる第2の複数の電極とを含んでいる、前記電極集合体と、
    第1の極性のDC電圧+Vを前記第1複数電極に印加し、前記電極集合体の長手方向の平均電圧分布に対して第2の極性のDC電圧−V(|V|>|V|)を、前記第2複数電極に印加するための手段と
    を含むことを特徴とするイオン移送装置。
  2. 請求項1に記載のイオン移送装置であって、前記第1複数電極中の連続する電極間の間隔Hは、前記幅D1のおよそ20〜25%であることを特徴とするイオン移送装置。
  3. 請求項2に記載のイオン移送装置であって、|V|/|V|は、D2+H/Dl+Hにほぼ等しいことを特徴とするイオン移送装置。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載のイオン移送装置であって、前記第1複数電極中の連続する電極間の周期Hは、前記イオン移送チャネル内において速度Sを持つイオンが、前記イオン移送チャネル内で、電磁スペクトルの高周波領域にある効果的な振動数νeff(νeff=S/H)を受けるよう選ぶことを特徴とするイオン移送装置。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載のイオン移送装置であって、前記第1複数電極の隣接する電極間の周期Hは、前記DC電極集合体のほぼ全長に亘って一定であることを特徴とするイオン移送装置。
  6. 請求項1から4のいずれかに記載のイオン移送装置であって、前記第1複数電極の隣接する電極間の周期Hは、前記周期電極集合体の長手方向に沿って、連続的または段階的に変化することを特徴とするイオン移送装置。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載のイオン移送装置であって、前記第1複数電極中の各電極は、間隙または絶縁層により、前後にある前記第2複数電極の電極と隔てられていることを特徴とするイオン移送装置。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載のイオン移送装置であって、前記電極集合体を少なくとも部分的に取り囲む筐体を更に含むことを特徴とするイオン移送装置。
  9. 請求項8に記載のイオン移送装置であって、前記筐体は、その中に1つ以上のオリフィスを含むことを特徴とするイオン移送装置。
  10. 請求項9に記載のイオン移送装置であって、その中の各オリフィスからガスを排出するよう、前記筐体を取り囲む領域をポンピングするためのポンピング手段を更に含むことを特徴とするイオン移送装置。
  11. 請求項8に記載のイオン移送装置であって、前記筐体は気密性であることを特徴とするイオン移送装置。
  12. 請求項11に記載のイオン移送装置であって、前記イオン移送チャネル内からガスを吸引するよう、前記気密性筐体を排気するためのポンピング手段を更に含むことを特徴とするイオン移送装置。
  13. 請求項9または11に記載のイオン移送装置であって、前記イオン移送チャネルにガスを加えるための、埋め戻しガス供給源を更に含むことを特徴とするイオン移送装置。
  14. 請求項1から13のいずれかに記載のイオン移送装置であって、大気圧のイオン源から前記イオン移送チャネルの長手方向軸に向けてイオンを収束するための、空力、および/または、電気レンズを、前記電極集合体の上流に更に含むことを特徴とするイオン移送装置。
  15. 請求項14に記載のイオン移送装置であって、前記レンズは、湾曲した筐体を備えていることを特徴とするイオン移送装置。
  16. 請求項14または15に記載のイオン移送装置であって、前記レンズは、複数の独立した環形レンズ電極から成り、前記電極集合体に近いレンズ電極は、前記電極集合体から遠いレンズ電極より小さい開口部を備えていることを特徴とするイオン移送装置。
  17. 請求項16に記載のイオン移送装置であって、前記電極集合体に近い前記レンズ電極の開口部の半径は、前記電極集合体によって構成されている前記イオン移送チャネルの半径よりも小さいことを特徴とするイオン移送装置。
  18. 請求項15から18のいずれかに記載のイオン移送装置であって、前記イオンファンネルは、第1真空チャンバ内に置かれており、前記電極集合体は、第2の、異なる真空チャンバ内に置かれていることを特徴とするイオン移送装置。
  19. 請求項14から19のいずれかに記載のイオン移送装置であって、前記空力、および/または、電気レンズへ正味負電位を印加するための手段を更に含むことを特徴とするイオン移送装置。
  20. 請求項14から20のいずれかに記載のイオン移送装置であって、前記空力、および/または、電気レンズは、ジェットセパレータを更に含むことを特徴とするイオン移送装置。
  21. 請求項14から20のいずれかに記載のイオン移送装置であって、前記空力、および/または、電気レンズは、ベンチュリ装置を更に含むことを特徴とするイオン移送装置。
  22. 相対的に圧力の高い領域と相対的に圧力の低い領域との間でイオンを移送する方法であって、
    前記方法は、
    長手方向にイオン移送チャネルを構成しているDC電極集合体を形成するよう、長手方向に第1の幅D1を持つ第1組の電極と、長手方向に第2の幅D2(D1<D2)を持つ第2組の電極とを、交互に配置する工程と、
    第1のDC電圧Vを前記第1組電極に印加する工程と、
    前記DC電極集合体の長手方向の平均電圧分布に対して反対極性の、第2のDC電圧V(|V|>|V|)を、前記第2組電極に印加する工程と
    を含み、
    前記幅D1およびD2、電圧VおよびVは、相対的に電界の高い領域と相対的に電界の低い領域とが、前記イオン移送チャネル内に連続的に交互に並んで発生するように選び、それぞれの高電界領域は、長手方向に、それぞれの低電界領域よりも短い
    ことを特徴とする方法。
  23. 請求項22に記載の方法であって、前記電極集合体の付近をポンピングする工程を更に含むことを特徴とする方法。
  24. 請求項23に記載の方法であって、前記ポンピング工程は、前記電極集合体の付近を約600mbar(600hPa)以下までポンピングする工程を含むことを特徴とする方法。
  25. 請求項22、23、または24に記載の方法であって、イオン源から前記電極集合体の入り口へ、イオンを漏斗状に吸い込む(ファンネリング:funnelling)する工程を更に含むことを特徴とする方法。
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