JP2010284055A - 交流回転機の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】電力変換手段により交流回転機を回転駆動するために必要な、電気系の制御パラメータを交流回転機の電気的定数誤差等の外乱に対してロバストになる調整が可能で、その調整が簡便に行える交流回転機の制御装置を提供することを目的としている。
【解決手段】電流指令演算手段4、電流検出手段3、電流指令値と電流検出値との偏差および設定された制御パラメータに基づき電圧指令値を出力する電流制御手段5、電力変換手段2、および品質工学に基づき、制御パラメータを制御因子として当該各制御因子に複数の水準を設定し各制御因子および各水準を直交表上に割り付け、割り付けた各条件において電流検出値と電圧指令値とから求めた電力演算値に基づき設定すべき制御パラメータを電流制御手段5に出力する制御パラメータ調整手段6を備える。
【選択図】図1

Description

この発明は、交流回転機を回転駆動する電力変換手段を備えた交流回転機の制御装置に関するものである。
交流回転機を回転駆動する際、特に交流回転機が三相回転機の場合、交流回転機の三相電流を交流回転機の角周波数で回転する回転二軸座標(以下d−q軸と称す)上の二軸電流に分解し、各軸上で電流制御するいわゆるベクトル制御が行われる。これを実現するために、交流回転機の制御装置には、電流制御手段と電流検出手段とが備わっている。また、電力変換手段から出力可能な電圧の範囲で電流制御が行われるよう更なる制御手段を付加しているものもある。
このような交流回転機の制御装置の一例として、例えば、特許文献1のものでは、d−q軸上の二軸電流に分解し、励磁分電流(d軸電流)とトルク分電流(q軸電流)とに分けてそれぞれを比例積分制御する電流制御手段を備えている、そして、トルク分電流を比例積分制御するトルク分電流制御手段から出力されるトルク分電圧成分を所定の値以下になるように制限するトルク分電圧リミッタと、前記トルク分電流制御手段から出力されるトルク分電圧成分と前記トルク分電圧リミッタから出力されるトルク分電圧指令とからトルク分電圧飽和量を求める減算器と、このトルク分電圧飽和量を保持する第1の積分器と、この保持されたトルク分電圧飽和量と角周波数とから励磁分電流指令修正量を出力する励磁分電流指令修正器と、励磁分電流指令からこの励磁分電流指令修正量を減算することにより励磁分電流修正指令を出力する減算器とを備えている。
また、大きな出力を得るため、例えば、特許文献2には、1つの回転機において同相電流が流される電機子巻線の組を少なくとも2組以上有する永久磁石同期電動機の制御装置が紹介されている。この装置では、複数組の三相巻線に三相交流電流を別々に供給し、電流位相をずらしたことを特徴とする。
先の特許文献1においては、速度が急激に変化した場合の電圧飽和の発生を抑えるために制御器の数が増加し、調整すべき制御パラメータの数も増えるが、適切にこれらの制御パラメータを調整する方法は開示されておらず、制御パラメータの調整が煩雑化する恐れが考えられる。
また、特許文献2においては、複数組の三相巻線の各組に電流位相をずらした三相交流電流を別々に供給するため、各三相巻線に対応する複数の電流制御手段が必要となるが、これらの電流制御手段の制御パラメータを調整する方法は開示されておらず、同様に、制御パラメータの調整が煩雑化する恐れが考えられる。
ところで、パラメータの設計方法として、例えば、非特許文献1に記載された品質工学による方法が広く知られており、この方式を利用した装置や方法が紹介されている。
例えば、特許文献3には、処理対象物を移動させるためのサーボモータの自動調整において、サーボモータの負荷イナーシャからサーボモータの最高加速度を求め、さらに、サーボモータの各種パラメータおよびその各々の水準をメカ剛性(共振周波数)に応じて自動設定した後、直交表や要因効果図を作成し、SN比が高くなるようなパラメータや水準を自動的に抽出するものが記載されている。
また、例えば、特許文献4には、位置指令を与え機械の位置を制御量とするサーボ系の制御装置が紹介されている。そして、位置指令としてステップ指令を与えた時の指令と制御量との間の理想的機能を、負荷機械位置の応答の時間積分値が時間に比例するものとして、品質工学の動特性解析実験を実施して最適パラメータの設計を行い、機械のパラメータ変動に対してロバストな、即ち、外乱や設計誤差などの不確定な変動に対して装置の特性を安定に維持できる制御パラメータを設定することができるとされている。
国際公開番号WO2003−009463号公報(請求項2、図4) 特許第4032370号公報(請求項2、図3) 特開2003−179083号公報(請求項1、図7) 特開2002−175101号公報(請求項1、図1)
「やさしく使える「タグチメソッド」の計算法」矢野宏著 日刊工業新聞社 2006年5月31日初版1刷発行
以上のように、交流回転機の制御装置では、種々複雑な制御が要請されるが、既述した通り、特許文献1や特許文献2では、必要となる制御パラメータを適切に調整する方法は開示されておらず、制御パラメータの調整が煩雑化するという課題があった。
また、特許文献3や特許文献4は、主として負荷接続を考慮した機械系の制御パラメータ調整を品質工学や遺伝的アルゴリズムの手法を用いて行うものであり、電流制御器等の電気系特有の制御パラメータの調整に適用できるものではない。
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、電力変換手段により交流回転機を回転駆動するために必要な、電気系の制御パラメータ(主に電流制御手段の制御パラメータ)を交流回転機の電気的定数誤差等の外乱に対してロバストになるように調整することが可能、かつ、前記制御パラメータの調整が簡便に行える交流回転機の制御装置を提供することを目的としている。
この発明に係る交流回転機の制御装置は、電流指令を演算し電流指令値として出力する電流指令演算手段、交流回転機の電流を検出し電流検出値として出力する電流検出手段、電流検出値が電流指令値に追従するように電流指令値と電流検出値との偏差および設定された制御パラメータに基づき電圧指令を演算し電圧指令値として出力する電流制御手段、電圧指令値に基づき交流回転機に電圧を出力する電力変換手段、および設定すべき制御パラメータを調整して出力する制御パラメータ調整手段を備えた交流回転機の制御装置であって、
前記電流指令演算手段は、制御パラメータの調整を行うときは、調整用電流指令値を電流制御手段に出力し、
前記制御パラメータ調整手段は、品質工学に基づき、制御パラメータを制御因子として当該各制御因子に複数の水準を設定し各制御因子および各水準を直交表上に割り付け、調整用電流指令値を電流指令値とし直交表上に割り当てられた各制御因子および各水準の組み合わせで決まる各条件において交流回転機の制御装置から得られる出力に基づき評価値を演算し評価値に基づき複数の水準から最適な水準を選択し当該水準に相当する制御因子を設定すべき制御パラメータとして出力するものである。
この発明は、以上のように、特に、電圧指令を演算し電圧指令値として出力する電流制御手段で必要となる制御パラメータの調整を、電流指令演算手段が調整用電流指令値を当該電流制御手段に出力し、品質工学に基づき、当該制御パラメータを制御因子として各制御因子に複数の水準を設定し各制御因子および各水準を直交表上に割り付け、交流回転機の制御装置から得られる出力に基づき評価値を演算しこれらの結果から最適の制御パラメータを選定調整するようにしたので、制御パラメータを、簡便確実に、しかも、電気的定数誤差等の外乱に対してロバストになるように調整することが可能な交流回転機の制御装置を提供することができる。
本発明の実施の形態1における、交流回転機1と交流回転機1の制御装置を含めた交流回転機制御システムを示す構成図である。 本発明の実施の形態1における、電力変換手段2の構成図である。 本発明の実施の形態1における、調整対象制御パラメータと各制御パラメータに割り当てた3つの値(水準1〜3)の一例を示す図である。 L18直交表を示す図である。 図4のL18直交表を適用した場合の要因効果図の一例を示す図である。 本発明の実施の形態2における、交流回転機1aと交流回転機1aの制御装置を含めた交流回転機制御システムを示す構成図である。 本発明の実施の形態2における、電力変換手段2aの構成図である。 本発明の実施の形態2における、調整法Bの場合の、調整対象制御パラメータと各制御パラメータに割り当てた2つまたは3つの値(水準1〜3)の一例を示す図である。 本発明の実施の形態3における、交流回転機1と交流回転機1の制御装置を含めた交流回転機制御システムを示す構成図である。 本発明の実施の形態4における、交流回転機1と交流回転機1の制御装置を含めた交流回転機制御システムを示す構成図である。 本発明の実施の形態4における、電流指令演算手段4bの構成図である。 制御因子1が6水準設定可能なL18直交表を示す図である。 本発明の実施の形態4における、図4のL18直交表を適用した場合の調整対象制御パラメータと各制御パラメータに割り当てた3つの値(水準1〜3)の一例を示す図である。 本発明の実施の形態4における、図12のL18直交表を適用した場合の調整対象制御パラメータと各制御パラメータに割り当てた3ないし6つの値(水準1〜3ないし6)の一例を示す図である。 図12のL18直交表を適用した場合の要因効果図の一例を示す図である。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における、交流回転機1と交流回転機1の制御装置を含めた交流回転機制御システムを示すものである。
図1において、交流回転機1の制御装置は、交流回転機1へ三相交流電圧Vu、Vv、Vwを出力する電力変換手段2と、交流回転機1から出力される三相電流Iu、Iv、Iwを交流回転機1の角周波数で回転する回転二軸座標(以下dq軸と称す)上の電流Id、Iq(Id:d軸電流、Iq:q軸電流)として検出する電流検出手段3と、dq軸上の電流指令値Id*、Iq*を演算する電流指令演算手段4と、電流検出手段3からの電流検出値Id、Iqと電流指令値Id*、Iq*と制御パラメータとに基づいて、dq軸上の電圧指令値Vd*、Vq*を演算し、電力変換手段2へ電圧指令値Vd*、Vq*を出力する電流制御手段5と、制御パラメータを調整する制御パラメータ調整手段6とにより構成する。
電力変換手段2は、電流制御手段5から出力される電圧指令値Vd*、Vq*と交流回転機1の回転子位置θとに基づいて三相電圧Vu、Vv、Vwを出力する。なお、交流回転機1の回転子位置θとは、交流回転機1が回転子に永久磁石を有する永久磁石同期機の場合、固定子のu相電機子巻線を基準に回転子に配置された永久磁石のN極方向の角度を指し、回転二軸座標のd軸を前記永久磁石のN極方向に定めることが一般的であり、以下の説明もこれに従う。交流回転機1が誘導機の場合は任意に定めた固定位置で良い。
図1において、回転子位置θは交流回転機1に備え付けの回転子位置検出手段7によって検出しているが、公知の技術である交流回転機1の出力電流や電圧を用いて推定するいわゆる(位置)センサレス制御技術を用いても良い。
図2は、本発明の実施の形態1における、電力変換手段2の構成図である。
電力変換手段2は、電力変換部21、スイッチング制御部22、二相−三相座標変換部23とからなる。
二相−三相座標変換部23は、dq軸上の電圧指令値Vd*、Vq*と回転子位置θとに基づいて三相電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*を出力する。dq軸上の電圧指令値Vd*、Vq*を三相電圧指令Vu*、Vv*、Vw*へ座標変換する式は(1)式である。
Figure 2010284055
スイッチング制御部22は、三相電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*に基づいて電力変換部21へ三相スイッチング信号Su、Sv、Swを出力する。電力変換部21は、u相、v相、w相の計3つのアーム24a、24b、24cを有しており、u相には2つのスイッチング素子25a、25dが直列接続されている。同様に、v相には2つのスイッチング素子25b、25eが直列接続されており、w相には2つのスイッチング素子25c、25fが直列接続されている。電力変換手段2は、これらのスイッチング素子25a、25b、25c、25d、25e、25fを三相スイッチング信号Su、Sv、Swに基づいてオンオフすることによって直流電圧源26の直流電圧を交流電圧に変換して交流回転器1へ出力する。なお、直流電圧源26に関し、直流電圧を出力する電源あるいは電池、単相あるいは三相の交流電源を公知のコンバータによって直流電圧を得るものも直流電圧源26に含む。
電流検出手段3は、交流回転機1の出力電流Iu、Iv、Iwを検出し、出力電流Iu、Iv、Iwと交流回転機1の回転子位置θとに基づいてdq軸上の電流検出値Id、Iqを出力する。交流回転機1の出力電流Iu、Iv、Iwをdq軸上の電流Id、Iqへ座標変換する式は(2)式である。
Figure 2010284055
なお、交流回転機1の出力電流Iu、Iv、Iwを検出する際、Iu、Ivのみ実測して、残りの一相の電流Iwは検出したIu、Ivに基づいてIw=−Iu−Ivの関係から求める方法、三相とも全て実測する方法いずれでも良い。また、各相の電流を直接検出する方法以外に、公知の技術である、電力変換部21のDCリンク電流から前記出力電流を検出する方法でも良い。
電流指令演算手段4は、所望のdq軸上の電流指令値Id*、Iq*を演算し、電流制御手段5へ出力する。例えば、所望のトルクを出力するような制御を行う場合は、q軸電流指令値Iq*を交流回転機1の電気的定数等から換算して設定すればよい。
電流制御手段5は、比例積分制御などを用いて、dq軸上の電流検出値Id、Iqとdq軸上の電流指令値Id*、Iq*とに基づいて電圧指令値Vd*、Vq*を出力する。電流制御手段5のシンプルな構成として(3)、(4)式で演算される比例積分制御を用いて、dq軸上の電流検出値Id、Iqとdq軸上の電流指令値Id*、Iq*との各々の偏差が無くなるような電圧指令値Vd*、Vq*を出力するものがある。
Vd*=Kpd・(Id*−Id)+Kid・(Id*−Id)/s・・・(3)
Vq*=Kpq・(Iq*−Iq)+Kiq・(Iq*−Iq)/s・・・(4)
ただし、sはラプラス演算子であり、1/sは1回の時間積分を意味する。また、Kpdは電流制御d軸比例ゲイン、Kidは電流制御d軸積分ゲイン、Kpqは電流制御q軸比例ゲイン、Kiqは電流制御q軸積分ゲインであり、これらKpd、Kid、Kpq、Kiqは電流制御に係わる制御パラメータで、本願発明の調整対象とする制御パラメータである。
制御パラメータ調整手段6は、本発明の要部をなす部分であり、制御パラメータ調整用の電流指令(調整用電流指令値)を電流指令演算手段4から出力することで交流回転機1へ電圧を出力した際の、dq軸上の電流検出値Id、Iqとdq軸上の電圧指令値Vd*、Vq*に基づいて、品質工学の解析法、特に直交表を用いたパラメータ設計手法により調整対象の制御パラメータKpd、Kid、Kpq、Kiqを調整する。
本実施の形態1では、調整対象制御パラメータ(品質工学における制御因子に相当する)を前記制御パラメータKpd、Kid、Kpq、Kiqの4因子とし、L18直交表と呼ばれる行数を18行有する直交表を用いた例について説明する。
まず、各制御パラメータに適当に3つの値(水準1〜3)を割り当てる。割り当てる方法に制約は無く、パラメータの概数が予め判明している場合、あるいは交流回転機の電気的定数(抵抗、インダクタンス等)から算出される場合はそれらの値を基準に割り当てても良い。
図3は、調整対象制御パラメータと各制御パラメータに割り当てた3つの値(水準1〜3)の一例を示し、図4は、L18直交表を示している。L18直交表を用いると、最大8つのパラメータ(因子)を調整することができるが、本実施の形態では調整する制御パラメータは4因子であるため、残りの4因子(図3の制御因子1、6、7、8)は何も割り当てない。
図4において、試験条件No.1〜No.18の各行に記載されている通り、前記4つの制御パラメータの水準を設定し、各々の制御パラメータ設定の条件で計18回制御パラメータ調整のための試験を実施する。すなわち、図4の直交表に基づいて、4つの制御パラメータの設定値を18回変更して試験を実施する。本試験結果から制御パラメータ毎に水準1〜3の中でどの水準が適切な値かを求めることができる。本実施の形態で設定しなかった制御因子1、6、7、8については無視する。
通常、4つのパラメータ(4因子)を各因子3水準ずつ設定して、全ての水準の組合せについて総当りで試験を行うと、3の4乗である81通りの試験が必要である。仮に、L18直交表を用いて調整可能な8因子(7因子3水準と1因子2水準)を設定した場合は、全ての水準の組合せについて総当りで試験を行うと、3の7乗×2の4374通りの試験が必要である。しかし、図4のL18直交表を用いると、18回の試験といったより少ない作業工程で各パラメータの適切な水準値を求めることができ、省エネルギーとなる。
なお、本実施の形態1では、L18直交表を用いたが、必ずしもL18直交表を用いる必要は無く、調整する制御パラメータの因子数と水準数に応じて他の直交表を用いても良い。
パラメータ調整のための試験方法は、一例として、前記制御パラメータ調整用の所定のq軸電流指令値(Iqr1*、Iqr2*、・・・)を1通りまたは複数通り設定し、評価値として、これらを電流制御手段5へ出力した時の電力演算値Pcalを、dq軸上の電流検出値Id、Iqとdq軸上の電圧指令値Vd*、Vq*とに基づいて(5)式により算出し、入力に対する電力演算値PcalのSN比と感度を、試験条件No.1〜No.18の各々について算出する。SN比と感度の算出は、非特許文献1に記載されている公知の演算手法を用いて算出する。
Pcal=Vd*・Id+Vq*・Iq ・・・(5)
(5)式は、評価値とする電力演算値Pcalの算出にdq軸上の電流検出値Id、Iqとdq軸上の電圧指令値Vd*、Vq*とを用いているが、(6)式のように、交流回転機1の出力電流検出値Iu、Iv、Iwと三相電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*とに基づいて算出しても良い。
Pcal=Vu*・Iu+Vv*・Iv+Vw*・Iw ・・・(6)
他の試験方法の例として、前記制御パラメータ調整用のq軸電流指令値Iq*をサインスイープ波形とし、このサインスイープ波を入力した時のq軸電流指令値Iq*に対するq軸電流検出値Iqのゲイン特性と位相差特性を求め、所定の周波数におけるゲインあるいは位相差のSN比と感度を試験条件No.1〜No.18の各々について算出する方法でも良い。
前記のパラメータ調整のための試験において、所定の調整用電流指令値をq軸側に与える方法について示したが、d軸側に与える方法でも良い。ただし、電力演算値PcalのSN比と感度を求めるには、トルクが発生するq軸側に電流を流すようにするのが望ましい。
No.1〜No.18の各々について電力演算値PcalのSN比と感度を算出すると、非特許文献1に記載されている公知の演算手法を用いて、各制御パラメータ(制御因子)の水準毎にSN比と感度を算出し、要因効果図を作成する。
図5は、要因効果図の一例を示すもので、縦軸がSN比または感度、横軸が制御因子1〜8とその水準を示している。この要因効果図から、制御パラメータ毎に水準1〜3の中でどの水準が適切かをSN比の大きさを基準に選択する。
なお、感度の大きさを基準に適切な各制御パラメータの水準を求めてもよいが、通常SN比が小さければ感度の調整は可能であるため、ここではSN比を優先させ、所望の感度が得られない場合は感度も水準選択に考慮する。
図5の場合、各制御パラメータのSN比が最大となる水準値を選択すると、制御因子2(制御パラメータKpd):水準2(30)、制御因子3(制御パラメータKid):水準2(30000)、制御因子4(制御パラメータKpq):水準2(60)、制御因子5(制御パラメータKiq):水準1(40000)となり、制御パラメータの適切な設定値Kpd:30、Kid:30000、Kpq:60、Kiq:40000が求まる。ただし、図5において、設定しなかった制御因子1、6、7、8のSN比・感度は特に意味を持たない。
図3のL18直交表では、各制御パラメータとも3水準の設定となるため、さらに細かく制御パラメータを調整する場合は、前記No.1〜No.18の18通りの試験で得られた各制御パラメータ(Kpd、Kid、Kpq、Kiq)の適切値を基準に再度水準を設定し直して、同様な試験を繰り返せば良い。
このようにして、電流制御に係わる調整対象制御パラメータKpd、Kid、Kpq、Kiqを調整する。
また、抵抗・インダクタンス等の誤差因子に対してロバストになるように制御パラメータを調整できるように、誤差条件N1、N2、・・・といったように複数の誤差条件を設定し、前記誤差条件の各々に対してL18直交表に基づいたNo.1〜No.18の18通りの試験を実施し、No.1〜No.18の各々について複数の誤差条件を考慮した電力演算値PcalのSN比と感度を算出しても良い。
一例として、制御パラメータの概数を交流回転機の電気的定数(抵抗、インダクタンス等)から算出する場合、温度変化等に起因する抵抗値の変動、磁気飽和等に起因するインダクタンスの変動を考慮するために、制御パラメータの概数の演算に用いる交流回転機の電気的定数に誤差があると仮定して、予め設定した誤差条件N1、N2、・・・に基づいた誤差を含めて制御パラメータの概数を演算する。例えば、誤差条件N1では、インダクタンスLの値が所定の値より30%小さいケースを想定し、誤差条件N2では、インダクタンスLの値が所定の値より30%大きいケースを想定する場合、誤差条件N1では、所定の値より30%小さいインダクタンスLの値を用いて制御パラメータを演算し、誤差条件N2では、所定の値より30%大きいインダクタンスLの値を用いて制御パラメータを演算する。
前記誤差条件N1、N2の各々に対して前記L18直交表に基づいたNo.1〜No.18の18通りの試験を実施(結果として36回の試験を実施)し、No.1〜No.18の各々について複数の誤差条件を考慮した電力演算値PcalのSN比と感度を算出して、要因効果図を作成する。
このように、温度変化等種々の外乱を想定した広い範囲の条件データを考慮した中から最適の制御パラメータを調整抽出することになり、結果として、このようにして設定された制御パラメータKpd、Kid、Kpq、Kiqを用いた制御動作は、温度変化等によるインダクタンス等の誤差因子に対して影響されにくい、すなわち、ロバストな制御特性が得られる。
以上で説明したように、本発明の実施の形態1における交流回転機の制御装置によれば、品質工学による直交表を用いた制御パラメータ設計手法に基づいて電気系の制御パラメータ(電流制御手段の比例積分制御における比例ゲイン・積分ゲイン)調整を行うことから、インダクタンスをはじめとする交流回転機の電気的定数誤差等の外乱にロバストな制御パラメータが得られ、かつ、複数の制御パラメータをより少ない作業工程で簡便に調整できる効果がある。その結果、電力変換手段2を用いて交流回転機1を安定に駆動できる。
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2における、交流回転機1aと交流回転機1aの制御装置を含めた交流回転機制御システムを示すものである。
なお、実施の形態1と同一の構成部分には同一の符号を付して説明を省略し、ここでは主として実施の形態1と異なる構成について説明する。
本実施の形態2の交流回転機1aは、実施の形態1の交流回転機1と異なり、第1の三相巻線と第2の三相巻線との2組の三相巻線を有している。
また、本実施の形態2の交流回転機1aの制御装置は、交流回転機1aの第1の三相巻線へ三相交流電圧Vu1、Vv1、Vw1を出力し、交流回転機1aの第2の三相巻線へ三相交流電圧Vu2、Vv2、Vw2を出力する電力変換手段2aと、交流回転機1aの第1の三相巻線から出力される三相電流Iu1、Iv1、Iw1を交流回転機1aの角周波数で回転するdq軸上の電流Id1、Iq1として検出する第1の電流検出手段3aと、交流回転機1aの第2の三相巻線から出力される三相電流Iu2、Iv2、Iw2を交流回転機1aの角周波数で回転するdq軸上の電流Id2、Iq2として検出する第2の電流検出手段3bと、dq軸上の電流指令値Id*、Iq*を演算する電流指令演算手段4と、第1の電流検出手段3aからの電流検出値Id1、Iq1と電流指令値Id*、Iq*と制御パラメータとに基づいて、dq軸上の電圧指令値Vd1*、Vq1*を演算し、電力変換手段2aへ電圧指令値Vd1*、Vq1*を出力する第1の電流制御手段5aと、第2の電流検出手段3bからの電流検出値Id2、Iq2と電流指令値Id*、Iq*と制御パラメータとに基づいて、dq軸上の電圧指令値Vd2*、Vq2*を演算し、電力変換手段2aへ電圧指令値Vd2*、Vq2*を出力する第2の電流制御手段5bと、制御パラメータを調整する制御パラメータ調整手段6aとにより構成する。
電力変換手段2aは、第1の電流制御手段5aから出力される電圧指令値Vd1*、Vq1*と交流回転機1aの回転子位置θとに基づいて三相電圧Vu1、Vv1、Vw1を出力し、第2の電流制御手段5bから出力される電圧指令値Vd2*、Vq2*と交流回転機1aの回転子位置θとに基づいて三相電圧Vu2、Vv2、Vw2を出力する。ただし、固定子の巻線配置の制約上、交流回転機1aの第1の三相巻線のu相電機子巻線の配置と第2の三相巻線のu相電機子巻線の配置がずれていることがある。このことにより、交流回転機1aが回転子に永久磁石を有する永久磁石同期機の場合、第1の三相巻線のu相電機子巻線を基準に回転子に配置された永久磁石のN極方向の角度と第2の三相巻線のu相電機子巻線を基準に回転子に配置された永久磁石のN極方向の角度とにずれが生じ、第1の三相巻線と第2の三相巻線とでは回転子位置θが異なってしまう。
この回転子位置θのずれを補正する例として、図6では、交流回転機1aの回転子位置θ(第1の三相巻線を基準とした回転子位置、あるいは第2の三相巻線を基準とした回転子位置、その他回転子の任意の位置を基準とした回転子位置いずれでも良い)を回転子位置検出手段7で検出(あるいは推定)し、位相補正手段8によって、交流回転機1aの回転子位置θに対して個別に補正した第1の三相巻線を基準とした回転子位置θ1、第2の三相巻線を基準とした回転子位置θ2を出力し、このθ1、θ2に基づいて、dq軸から三相への変換(またはその逆)を行うようにしている。前記2組の三相巻線同士の配置のずれが無ければ、位相補正手段8を省略してもよく、また、位相補正手段8での回転子位置θに対する位相補正量は前記2組の三相巻線同士の配置のずれの角度と必ずしも同じにしなくても良い。
図7は、本発明の実施の形態2における、電力変換手段2aの構成図である。実施の形態1における電力変換手段2の構成とは異なり、各々2組の電力変換部(21a、21b)、スイッチング制御部(22a、22b)、二相−三相座標変換部(23a、23b)とからなる。
二相−三相座標変換部23aは、第1の三相巻線に関するdq軸上の電圧指令値Vd1*、Vq1*と前記θ1とに基づいて三相電圧指令値Vu1*、Vv1*、Vw1*を出力し、二相−三相座標変換部23bは、第2の三相巻線に関するdq軸上の電圧指令値Vd2*、Vq2*と前記θ2とに基づいて三相電圧指令値Vu2*、Vv2*、Vw2*を出力する。
2組のdq軸上の電圧指令値(Vd1*、Vq1*)、(Vd2*、Vq2*)を2組の三相電圧指令値(Vu1*、Vv1*、Vw1*)、(Vu2*、Vv2*、Vw2*)へ座標変換する式は(7)式である。
Figure 2010284055
スイッチング制御部22aは、第1の三相巻線に関する三相電圧指令値Vu1*、Vv1*、Vw1*に基づいて電力変換部21aへ三相スイッチング信号Su1、Sv1、Sw1を出力し、スイッチング制御部22bは、第2の三相巻線に関する三相電圧指令値Vu2*、Vv2*、Vw2*に基づいて電力変換部21bへ三相スイッチング信号Su2、Sv2、Sw2を出力する。
電力変換部21aは、u相、v相、w相の計3つのアーム24d、24e、24fを有しており、u相には2つのスイッチング素子25g、25jが直列接続されている。同様に、v相には2つのスイッチング素子25h、25kが直列接続されており、w相には2つのスイッチング素子25i、25lが直列接続されている。
電力変換部21bは、u相、v相、w相の計3つのアーム24g、24h、24iを有しており、u相には2つのスイッチング素子25m、25pが直列接続されている。同様に、v相には2つのスイッチング素子25n、25qが直列接続されており、w相には2つのスイッチング素子25o、25rが直列接続されている。
電力変換手段2aは、スイッチング素子25g、25h、25i、25j、25k、25lを三相スイッチング信号Su1、Sv1、Sw1に基づいてオンオフすることによって直流電圧源26aの直流電圧を交流電圧に変換して交流回転機1aの第1の三相巻線へ出力し、スイッチング素子25m、25n、25o、25p、25q、25rを三相スイッチング信号Su2、Sv2、Sw2に基づいてオンオフすることによって直流電圧源26bの直流電圧を交流電圧に変換して交流回転機1aの第2の三相巻線へ出力する。
なお、直流電圧源26a、26bに関し、図7では、電力変換部21aと電力変換部21bとでは別の直流電圧源となっているが、電力変換部21aと電力変換部21bとで共通の1つの直流電圧源を用いても良い。
図6に戻り、第1の電流検出手段3aは、交流回転機1aの第1の三相巻線から出力される三相電流Iu1、Iv1、Iw1を検出し、出力電流Iu1、Iv1、Iw1と前記θ1とに基づいて第1の三相巻線に関するdq軸上の電流検出値Id1、Iq1を出力する。同様に、第2の電流検出手段3bは、交流回転機1aの第2の三相巻線から出力される三相電流Iu2、Iv2、Iw2を検出し、出力電流Iu2、Iv2、Iw2と前記θ2とに基づいて第2の三相巻線に関するdq軸上の電流検出値Id2、Iq2を出力する。交流回転機1の各三相巻線から出力される電流をdq軸上の電流へ座標変換する式は(8)式である。
Figure 2010284055
電流指令演算手段4は、実施の形態1と同一の構成なので説明を省略する。
第1の電流制御手段5aは、比例積分制御などを用いて、第1の三相巻線に関するdq軸上の電流検出値Id1、Iq1とdq軸上の電流指令値Id*、Iq*とに基づいて第1の三相巻線に関する電圧指令値Vd1*、Vq1*を出力する。同様に、第2の電流制御手段5bは、第2の三相巻線に関するdq軸上の電流検出値Id2、Iq2とdq軸上の電流指令値Id*、Iq*とに基づいて第2の三相巻線に関する電圧指令値Vd2*、Vq2*を出力する。
電流制御手段5a、5bの構成として、実施の形態1と同様に、(9)〜(12)式で演算される比例積分制御を用いて、各三相巻線のdq軸上の電流検出値Id1、Iq1、Id2、Id2とdq軸上の電流指令値Id*、Iq*との各々の偏差が無くなるような電圧指令値Vd1*、Vq1*、Vd2*、Vq2*を出力するものがある。
Vd1*=Kpd・(Id*−Id1)+Kid・(Id*−Id1)/s
・・・(9)
Vq1*=Kpq・(Iq*−Iq1)+Kiq・(Iq*−Iq1)/s
・・・(10)
Vd2*=Kpd・(Id*−Id2)+Kid・(Id*−Id2)/s
・・・(11)
Vq2*=Kpq・(Iq*−Iq2)+Kiq・(Iq*−Iq2)/s
・・・(12)
ただし、(9)〜(12)式では電流制御に係わる各ゲイン(制御パラメータ)は、第1の電流制御手段5aと第2の電流制御手段5bとで共通としたが、各電流制御手段5a、5bとで異なる設定にしても良い。この場合、第1の電流制御手段5aの各制御パラメータをKpd1、Kid1、Kpq1、Kiq1、第2の電流制御手段5bの各制御パラメータをKpd2、Kid2、Kpq2、Kiq2とする。
制御パラメータ調整手段6aは、実施の形態1と同様に、前記制御パラメータ調整用の電流指令値を電流指令演算手段4から出力することによって、第1の三相巻線、第2の三相巻線の少なくとも片方に電圧を印加し、各三相巻線のdq軸上の電流検出値Id1、Iq1、Id2、Iq2とdq軸上の電圧指令値Vd1*、Vq1*、Vd2*、Vq2*に基づいて、直交表を用いた制御パラメータ設計手法により前記制御パラメータKpd、Kid、Kpq、Kiqを調整する。
交流回転機1aが2組の三相巻線を有する場合、主な調整法として以下のA〜Cの調整法がある。
(調整法A)2組の三相巻線両方に前記制御パラメータ調整用の電流指令値に基づき電圧を印加し、第1の電流制御手段5aと第2の電流制御手段5bとで共通である前記制御パラメータKpd、Kid、Kpq、Kiqを調整する。
(調整法B)2組の三相巻線両方に前記制御パラメータ調整用の電流指令値に基づく電圧を印加し、第1の電流制御手段5aと第2の電流制御手段5bとで異なる前記制御パラメータを調整する。
(調整法C)2組の三相巻線の内、片方のみに前記制御パラメータ調整用の電流指令値に基づく電圧を印加し、第1の電流制御手段5aと第2の電流制御手段5bとで共通である前記制御パラメータKpd、Kid、Kpq、Kiqを調整する。
以下、前記調整法A〜Cの一例について説明する。
調整法Aの一例として、実施の形態1の図3と同様に、各制御パラメータに3つの値(水準)を割り当てて図4のL18直交表を用いて調整する方法を説明する。
この方法では、前記制御パラメータ調整用の所定のq軸電流指令値(Iqr1*、Iqr2*、・・・)を1通りまたは複数通り設定し、これらを入力した時の評価値として電力演算値Pcalを各三相巻線のdq軸上の電流検出値Id1、Iq1、Id2、Iq2と各三相巻線のdq軸上の電圧指令値Vd1*、Vq1*、Vd2*、Vq2*とに基づいて(13)〜(15)式により算出し、入力に対する電力演算値PcalのSN比と感度を試験条件No.1〜No.18の各々について算出する。ここで、第1の三相巻線における電力演算値を第1の電力演算値Pcal1、第2の三相巻線における電力演算値を第2の電力演算値Pcal2とする。
Pcal=Pcal1+Pcal2 ・・・(13)
Pcal1=Vd1*・Id1+Vq1*・Iq1 ・・・(14)
Pcal2=Vd2*・Id2+Vq2*・Iq2 ・・・(15)
また、第1の電力演算値Pcal1と第1の電力演算値Pcal2の算出の際、(16)式、(17)式から算出しても良い。
Pcal1=Vu1*・Iu1+Vv1*・Iv1+Vw1*・Iw1・・・(16)
Pcal2=Vu2*・Iu2+Vv2*・Iv2+Vw2*・Iw2・・・(17)
電力演算値Pcalの演算以外は、実施の形態1と同様の手順で前記制御パラメータKpd、Kid、Kpq、Kiqを調整できる。
調整法Bの一例として、前記8因子の制御パラメータKpd1、Kid1、Kpq1、Kiq1、Kpd2、Kid2、Kpq2、Kiq2に2つまたは3つの値(水準)を割り当てて図4のL18直交表を用いて調整する方法がある。
図8は、調整法Bにおいて調整する制御パラメータと各制御パラメータに割り当てた2つまたは3つの値(水準1〜3)の一例を示している。ただし、制御因子1〜8に対する前記8因子の制御パラメータの割り当て方は必ずしも図8と同じである必要はない。前記の通り、図4のL18直交表を用いれば、最大8つのパラメータ(因子)を調整することができるため、No.1〜No.18の18通りの試験結果から図5と同様の要因効果図が得られ、得られた要因効果図を基に前記8因子の制御パラメータの適切な値が得られる。実施の形態1における図3が図8に変更となる以外は、前記調整法Aと同様の手順で前記制御パラメータKpd1、Kid1、Kpq1、Kiq1、Kpd2、Kid2、Kpq2、Kiq2を調整できる。
調整法Cでは、前記調整法Aと同様の調整を、2組の三相巻線の内、片方のみに前記制御パラメータ調整用の電流指令値に基づく電圧を印加して実施する。この方法では、前記制御パラメータ調整用の所定のq軸電流指令値(Iqr1*、Iqr2*、・・・)を1通りまたは複数通り設定し、これらを、電圧を印加する三相巻線に係わる電流制御手段5a(または電流制御手段5b)へ出力した時の評価値として電力演算値Pcalを、電圧を印加する三相巻線に係わる方のdq軸上の電流検出値と電圧指令値とに基づいて算出し、入力に対する電力演算値PcalのSN比と感度を試験条件No.1〜No.18の各々について算出する。すなわち、第1の三相巻線に前記制御パラメータ調整用の電流指令値に基づく電圧を印加した場合はPcal=Pcal1、第2の三相巻線に前記制御パラメータ調整用の電流指令値に基づく電圧を印加した場合はPcal=Pcal2として電力演算値PcalのSN比と感度とを試験条件No.1〜No.18の各々について算出すれば良い。2組の三相巻線の内、片方のみに前記制御パラメータ調整用の電圧を印加して実施する点以外は、前記調整法Aと同様の手順で制御パラメータKpd、Kid、Kpq、Kiqを調整できる。
また、これらの調整法の応用として、前記制御パラメータKpd1、Kid1、Kpq1、Kiq1、Kpd2、Kid2、Kpq2、Kiq2の調整を、2組の三相巻線の内、片方ずつ前記制御パラメータ調整用の電流指令値に基づく電圧を印加して実施しても良い。
なお、以上の本発明の実施の形態2では、第1の三相巻線と第2の三相巻線との2組の三相巻線を有している交流回転機1aを対象とした交流回転機の制御装置について説明したが、三相巻線の組数が3組以上の交流回転機についても同様な調整手順により、電気系の制御パラメータ(電流制御手段の比例積分制御における比例ゲイン・積分ゲイン)調整を実施できる。
以上で説明したように、本発明の実施の形態2における交流回転機の制御装置によれば、品質工学による直交表を用いた制御パラメータ設計手法に基づいて電気系の制御パラメータ(電流制御手段の比例積分制御における比例ゲイン・積分ゲイン)調整を行うことから、インダクタンスをはじめとする交流回転機の電気的定数誤差等の外乱にロバストな制御パラメータが得られ、かつ、複数の制御パラメータをより少ない作業工程で簡便に調整できる効果があるとともに、交流回転機を相電流が流される電機子巻線の組数、すなわち三相巻線の組数が複数であっても前記制御パラメータを調整できる効果がある。
実施の形態3.
図9は、本発明の実施の形態3における、交流回転機1と交流回転機1の制御装置を含めた交流回転機制御システムを示すものである。
なお、実施の形態1と同一の構成部分には同一の符号を付して説明を省略し、ここでは主として実施の形態1と異なる構成について説明する。
本実施の形態3では、図1に示される本実施の形態1の交流回転機制御システムに回転子位置検出手段7で検出(あるいは推定)した交流回転機1の回転子位置θに基づいて交流回転機1の回転速度ωmを演算する速度演算手段9を加えている。そして、電流指令演算手段4aは、速度指令ωm*と交流回転機1の回転速度ωmとに基づいてq軸電流指令値Iq*を出力するようにした。
なお、速度演算手段9が加わる点と、本実施の形態3における電流指令演算手段4aが実施の形態1における電流指令演算手段4と異なる点以外、実施の形態1における交流回転機の制御装置と同一の構成である。
以下、本発明の実施の形態3における速度演算手段9と電流指令演算手段4aについて説明する。
速度演算手段9は、回転子位置検出手段7で検出(あるいは推定)した交流回転機1の回転子位置θの変化率を演算し、交流回転機1の回転速度ωmとして出力する。
電流指令演算手段4aは、比例積分制御などを用いて、所望の速度指令ωm*と回転速度ωmとに基づいてq軸電流指令値Iq*を出力する。Iq*を演算する方法として(18)式で演算される比例積分制御を用いて、回転速度ωmと速度指令ωm*との各々の偏差が無くなるようにq軸電流指令値Iq*を演算する方法がある。
Iq*=Kps・(ωm*−ωm)+Kis・(ωm*−ωm)/s・・・(18)
ただし、sはラプラス演算子であり、1/sは1回の時間積分を意味する。また、Kpsは速度制御比例ゲイン、Kisは速度制御積分ゲインである。これらのゲインは、交流回転機の電気的定数(抵抗、インダクタンス等)や機械的定数(イナーシャ等)に基づいて設定しても良い。図9は、この場合の構成を示している。すなわち、制御パラメータ調整手段6は、もっぱら電流制御で必要となる制御パラメータを調整して電流制御手段5に出力する。
以下では、(18)式のKps、Kisを速度制御パラメータとし、制御パラメータ調整手段6が、制御パラメータに前記速度制御パラメータを含めて調整対象制御パラメータとして合わせてその調整を行い、調整の結果としての設定すべき制御パラメータおよび速度制御パラメータをそれぞれ電流制御手段5および電流指令演算手段4aに出力するとした場合について説明する。
具体的には、これら速度制御パラメータKps、Kisに相当する制御因子を、先の図3において割り当てられていない制御因子1、6〜8のいずれか2つに割り当てることで、制御パラメータKpd、Kid、Kpq、Kiqとともに速度制御パラメータKps、Kisを合わせ調整する。
そして、パラメータ調整のための試験においては、調整用の所定の速度指令ωm*(ωm1*、ωm2*、・・・)を1通りまたは複数通り設定して、これらの速度指令ωm*を電流指令演算手段4aへ入力し、(18)式の演算によって得られるq軸電流指令値Iq*を、先の実施の形態例で設定した調整用電流指令値として電流制御手段5へ出力した時の電力演算値Pcalを評価値として前記制御パラメータKpd、Kid、Kpq、Kiqと速度制御パラメータKps、Kisとを合わせ調整する。
なお、調整用電流指令値として、前記q軸電流指令値Iq*に加え、トルク等から決まる所定の値に設定したd軸電流指令値Id*を電流制御手段5に出力して各制御パラメータの調整を行うようにしてもよい。
なお、以上の本発明の実施の形態3では、1組の三相巻線を有している交流回転機1を対象とした交流回転機の制御装置について説明したが、実施の形態2で示したような三相巻線の組数が2組以上の交流回転機についても同様な調整手順により、電気系の制御パラメータ(電流制御手段の比例積分制御における比例ゲイン・積分ゲイン)調整が実施できる。
本発明によれば、速度制御系の構築により所望の速度指令に制御できるとともに、インダクタンスをはじめとする回転機の電気的定数誤差等の外乱にロバストな制御パラメータが得られ、かつ、複数の制御パラメータをより少ない作業工程で調整できる効果がある。
以上で説明したように、本発明の実施の形態3における交流回転機の制御装置によれば、品質工学による直交表を用いた制御パラメータ設計手法に基づいて電気系の制御パラメータ(電流制御手段の比例積分制御における比例ゲイン・積分ゲイン)調整を行うことから、インダクタンスをはじめとする交流回転機の電気的定数誤差等の外乱にロバストな制御パラメータが得られ、かつ、速度指令と回転速度とから電流指令を演算する場合に必要となる速度制御パラメータの調整についても、電流制御で必要となる制御パラメータに含め、これら複数の制御パラメータをより少ない作業工程で簡便に調整できる効果がある。その結果、電力変換手段2を用いて交流回転機1を安定に駆動できる。
実施の形態4.
図10は、本発明の実施の形態4における、交流回転機1と交流回転機1の制御装置を含めた交流回転機制御システムを示すものである。
なお、実施の形態3と同一の構成部分には同一の符号を付して説明を省略し、ここでは主として実施の形態3と異なる構成について説明する。
本実施の形態4における電流指令演算手段4bは、速度指令ωm*と交流回転機1の回転速度ωmとに基づいてq軸電流指令値を出力するとともに、電流制御手段5から出力される電圧指令値に基づいてdq軸上の電流指令値を補正するようにした。これは、電流制御手段5から出力されるdq軸上の電圧指令値が電力変換手段2から出力可能な電圧である出力電圧制限値Vlimを超えた場合に、前記Vlimとdq軸上の電圧指令との差分に応じてdq軸上の電流指令値を補正することにより、dq軸上の電圧指令値を前記Vlim以下に抑制することを目的とする。
なお、本実施の形態4における電流指令演算手段4bが実施の形態3における電流指令演算手段4aと異なる点、本実施の形態4における制御パラメータ調整手段6bが実施の形態3における制御パラメータ調整手段6と異なる点以外、実施の形態1における交流回転機の制御装置と同一の構成である。
以下、本発明の実施の形態4における電流指令演算手段4bの構成と動作、および制御パラメータ調整手段6bにおける制御パラメータ調整法について説明する。
図11は、本発明の実施の形態4における、電流指令演算手段4bの構成図である。図11は、特に交流回転機1が電力変換手段2から出力する三相電圧の周波数と交流回転機1の電気的回転速度(交流回転機1の回転速度ωmと交流回転機1の極対数Pmとの積)が同じとなる同期機の場合の構成図である。
本実施の形態4における電流指令演算手段4bは、dq軸上の電圧指令値Vd*、Vq*と速度指令ωm*と交流回転機1の回転速度ωmと、後述する補正制御パラメータKd、Kqを入力とし、dq軸上の電流指令値Id*、Iq*を出力とする。
まず、d軸電圧指令値Vd*の絶対値|Vd*|を絶対値演算器41aにて演算し、前記Vlimに応じて設定されるd軸電圧制限値Vdlimと前記|Vd*|の差分ΔVd(=|Vd*|−Vdlim)を加減算器42aにて演算する。同様に、q軸電圧指令値Vq*の絶対値|Vq*|を絶対値演算器41bにて演算し、前記Vlimに応じて設定されるq軸電圧制限値Vqlimと前記|Vq*|の差分ΔVq(=|Vq*|−Vqlim)を加減算器42bにて演算する。速度演算手段9より出力される交流回転機1の回転速度ωmに対しては、回転速度ωmの絶対値|ωm|を絶対値演算器41cにて演算し、機械角換算から電気角換算に変換するために|ωm|と交流回転機1の極対数Pmとの積|ω1|(=Pm・|ωm|)を乗算器430にて演算する。(19)式で演算される比例積分制御を用いて、回転速度ωmと速度指令ωm*との各々の偏差が無くなるようにq軸電流指令値をPI制御器45にて演算する。ただし、(19)式により得られるq軸電流指令値に対し、後述する補正を行うことから、この補正前と補正後のq軸電流指令値を区別するため、(19)式で得られる(補正前の)q軸電流指令値をIqx*とする。
Iqx*=Kps・(ωm*−ωm)+Kis・(ωm*−ωm)/s・・・(19)
また、交流回転機1が電力変換手段2から出力する三相電圧の周波数と交流回転機1の電気的回転速度(交流回転機1の回転速度ωmと交流回転機1の極対数Pmとの積)が負荷運転時にすべり周波数ωs分異なる誘導機の場合は、前記|ω1|は(20)式の演算により求め、すべり周波数ωsは(21)式の演算により求める。
|ω1|=Pm・|ωm+ωs| ・・・(20)
ωs=(1+Lr・s / Rr)・(Rr・Iq)/(Lr・Id)・・・(21)
乗除算器431a、431bにて(22)式、(23)式の演算を行い、(22)式、(23)式で得られたΔdq、Δqdを各々積分器44a、44bにて積分することで、dq軸上の電流補正量ΔId(=Δqd/s)、ΔIq(=Δdq/s)を得る。
Δdq=ΔVd・Kd / |ω1| ・・・(22)
Δqd=ΔVq・Kq / |ω1| ・・・(23)
ただし、Kd:d軸側調整ゲイン、Kq:q軸側調整ゲインであり、これらKd、Kqは電流指令補正に係わる補正制御パラメータである。前記Kd、Kqは、後述の方法により、制御パラメータ調整手段6により制御パラメータKpd、Kid、Kpq、Kiqに含めて合わせて調整される。
また、(補正前の)d軸電流指令値Idx*は、零またはトルク等から決まる所定の値に設定すれば良い。
このようにして得られたdq軸上の電流補正量ΔId、ΔIqを用いて、(補正前の)dq軸上の電流指令値Idx*、Iqx*を(24)式、(25)式により補正し、(補正後の)dq軸上の電流指令値Id*、Iq*を電流制御手段5へ出力する。
Id*=Idx*−ΔId ・・・(24)
Iq*=Iqx*−ΔIq ・・・(25)
次に、制御パラメータ調整手段6bでの制御パラメータ調整法について説明する。
本発明の実施の形態4における制御パラメータ調整手段6bでは、電流指令演算手段4bの動作により前記調整用速度指令と交流回転機1の回転速度ωmとに基づいたq軸電流指令値Iq*が調整用電流指令値として電流制御手段5に出力されることに基づき交流回転機1へ三相電圧を出力した際の、dq軸上の電流検出値Id、Iqとdq軸上の電圧指令値Vd*、Vq*とによる評価値に基づいて、品質工学の解析法、特に直交表を用いた制御パラメータ設計手法により、補正制御パラメータであるd軸側調整ゲインとq軸側調整ゲインとを含んだ制御パラメータKpd、Kid、Kpq、Kiq、Kd、Kqを調整する。
本実施の形態4では、調整する制御パラメータ(品質工学における制御因子)をKpd、Kid、Kpq、Kiq、Kx(=Kd/Kq)、Kqの6因子とし、L18直交表を用いた例について説明する。勿論、KdとKqの比を表すKxではなく、Kdを直接調整する方法でも良い。本実施の形態では、図4のL18直交表とは異なる1つの制御因子(制御因子1)のみ6水準設定可能なL18直交表を用いる方法についても説明する。
図12は、図4の直交表とは異なるL18直交表を示している。図4の直交表とは異なり、調整できるパラメータ(因子)の数は最大7つであるが、1つの制御因子(制御因子1)のみ6水準設定できる。
先の実施の形態1と同様に、各制御パラメータに適当に3つの値(水準1〜3)を割り当てる。ただし、図12の直交表を用いる場合は、制御因子1に6つの値(水準1〜6)を割り当てる。割り当てる方法に制約は無く、パラメータの概数が予め判明している場合、あるいは交流回転機の電気的定数(抵抗、インダクタンス等)から算出される場合はそれらの値を基準に割り当てても良い。
図13は、図4のL18直交表を適用した場合における調整対象制御パラメータと各制御パラメータに割り当てた3つの値(水準1〜水準3)の一例を示している。最大8つのパラメータ(因子)を調整することができるが、調整する制御パラメータは6因子であるため、残りの2因子(制御因子1、8)は何も割り当てない。
図14は、図12のL18直交表を適用した場合における調整対象制御パラメータと各制御パラメータに割り当てた3ないし6つの値(水準1〜3ないし6)の一例を示している。最大7つの制御パラメータ(因子)を調整することができるが、調整する制御パラメータは6因子であるため、残りの1因子(制御因子7)は何も割り当てない。
図4または図12において、試験条件No.1〜No.18の各行に記載されている通り、前記6つの制御パラメータの水準を設定し、各々の制御パラメータ設定の条件で計18回パラメータ調整のための試験を実施する。すなわち、図4または図12の直交表に基づいて、6つの制御パラメータの設定値を18回変更して試験を実施する。本試験結果からパラメータ毎に水準1〜3ないし6の中でどの水準が適切な値かを求めることができる。(本実施の形態で設定しなかった制御因子については無視する。)なお、必ずしも図4または図12のL18直交表を用いる必要は無く、調整する制御パラメータの因子数と水準数に応じて他の直交表を用いても良い。
パラメータ調整のための試験方法は、調整用の所定の速度指令(ωm1*、ωm2*、・・・)を1通りまたは複数通り設定し、電流指令演算手段4bの動作により電流制御手段5へ出力した時の評価値としての電力演算値Pcalをdq軸上の電流検出値Id、Iqとdq軸上の電圧指令値Vd*、Vq*とに基づいて前記(5)式により算出し、入力に対する電力演算値PcalのSN比と感度を試験条件No.1〜No.18の各々について算出する。SN比と感度の算出は、非特許文献1に記載されている公知の演算手法を用いて算出する。前記(6)式による算出でも良い。
なお、調整用電流指令値として、前記q軸電流指令値Iq*に加え、トルク等から決まる所定の値に設定したd軸電流指令値Id*を電流制御手段5に出力して各制御パラメータの調整を行うようにしてもよい。
No.1〜No.18の各々について電力演算値PcalのSN比と感度を算出すると、非特許文献1に記載されている品質工学による公知の演算手法を用いて、各制御パラメータ(制御因子)の水準毎にSN比と感度を算出し、要因効果図を作成する。
図15は、図12のL18直交表を適用した場合の要因効果図の一例を示すもので、縦軸がSN比または感度、横軸が制御因子1〜7とその水準を示している。この要因効果図から、制御パラメータ毎に水準1〜3(制御因子1は水準1〜6)の中でどの水準が適切かをSN比の大きさを基準に選択する。
なお、感度の大きさを基準に適切な各制御パラメータの水準を求めてもよいが、通常SN比が小さければ感度の調整は可能であるため、ここではSN比を優先させ、所望の感度が得られない場合は感度も水準選択に考慮する。
図15の場合、各制御パラメータのSN比が最大となる水準値を選択すると、制御因子1(補正制御パラメータKq):水準5(500)、制御因子2(補正制御パラメータの比Kx=Kd/Kq):水準3(5)、制御因子3(制御パラメータKpd):水準3(40)、制御因子4(制御パラメータKid):水準2(30000)、制御因子5(制御パラメータKpq):水準1(40)、制御因子6(制御パラメータKiq):水準1(40000)となり、制御パラメータの適切な設定値Kq:500、Kx:5(すなわちKd:2500)、Kpd:40、Kid:30000、Kpq:40、Kiq:40000が求まる。ただし、図15において、本実施の形態で設定しなかった制御因子7のSN比・感度は特に意味を持たない。さらに細かく制御パラメータを調整する場合は、前記No.1〜No.18の18通りの試験で得られた各制御パラメータ(Kpd、Kid、Kpq、Kiq、Kx、Kq)の適切値を基準に再度水準を設定し直して、同様な試験を繰り返せば良い。
このようにして、電流指令補正に係わる補正制御パラメータKx(Kd)、Kqと電流制御に係わる制御パラメータKpd、Kid、Kpq、Kiqのパラメータを調整する。
また、実施の形態1と同様に、抵抗・インダクタンス等の誤差因子に対してロバストになるように制御パラメータを調整できるように、誤差条件N1、N2、・・・といったように複数の誤差条件を設定し、前記誤差条件の各々に対して前記L18直交表に基づいた前記No.1〜No.18の18通りの試験を実施し、No.1〜No.18の各々について複数の誤差条件を考慮した電力演算値PcalのSN比と感度を算出しても良い。
さらに、特に定出力運転と呼ばれる交流回転機1から出力されるトルクと交流回転機1の回転速度ωmとの積が一定となる運転領域において、定出力運転中に常に交流回転機1の出力(電力)が一定値となるように制御パラメータを調整する方法として以下の方法がある。
この方法は、まず、定出力運転領域を回転速度ωmに応じて複数の区間S1、S2、・・・に分ける。
一例として、定格速度1000r/min、最高速度2000r/minの交流回転機があるとすると、定出力領域において区間S1(1000r/min〜1250r/min)、区間S2(1250r/min〜1500r/min)、区間S3(1500r/min〜1750r/min)、区間S4(1750r/min〜2000r/min)の4区間を設定する。
調整用速度指令ωm*として最高速度2000r/minのステップ指令を与えると、交流回転機1は上限値である最高速度2000r/minまで加速する。交流回転機1の加速中において、区間Si(i=1〜4)における電力演算値Pcalの時間積分値P(Si)を(26)式から設定区間毎に算出する。
Figure 2010284055
ただし、t1:区間Siに入った瞬間の時刻、t2:区間Siを抜けた瞬間の時刻である。
この4区間におけるP(Si)を、前記L18直交表に基づいた前記No.1〜No.18の18通りの試験毎に算出し、4区間におけるP(Si)のSN比と感度をNo.1〜No.18の各々について算出する。
このように、定出力運転が実行される広い回転速度の範囲を想定した条件データを考慮した中から最適の制御パラメータを調整抽出することになり、結果として、このようにして設定された制御パラメータを用いた制御装置は、回転速度の広い範囲で安定した定出力運転を可能とするわけである。
なお、定出力領域内の区間の設定数は前記のように4区間に拘る必要は無く、交流回転機1の制御装置(制御パラメータ調整手段)の演算能力や交流回転機1の定出力領域の速度帯域の広さ等を勘案して設定すれば良い。
なお、電流制御に係わる制御パラメータKpd、Kid、Kpq、Kiqのパラメータ設定値を固定値にしておいて、電流指令補正に係わる補正制御パラメータKx(Kd)、Kqのみを調整しても良い。
また、逆に、さらに数多くの種別の制御因子の割り付けが可能な直交表を用い、電流制御に係わる制御パラメータKpd、Kid、Kpq、Kiqに加え、補正制御パラメータパラメータKx(Kd)、Kqおよび速度制御パラメータKps、Kisの合計8つの制御パラメータを調整することも可能である。
なお、以上の実施の形態4では、1組の三相巻線を有している交流回転機1を対象とした交流回転機の制御装置について説明したが、実施の形態2で示したような三相巻線の組数が2組以上の交流回転機についても同様な調整が実施できる。
以上で説明したように、本発明の実施の形態4における交流回転機の制御装置によれば、品質工学による直交表を用いた制御パラメータ設計手法に基づいて電気系の制御パラメータ(電流制御手段の比例積分制御における比例ゲイン・積分ゲイン)調整を行うことから、インダクタンスをはじめとする交流回転機の電気的定数誤差等の外乱にロバストな制御パラメータが得られ、かつ、電力変換手段2の出力電圧制限から電流指令値を補正する場合に必要となる補正制御パラメータの調整についても、電流制御で必要となる制御パラメータに含め、これら複数の制御パラメータをより少ない作業工程で簡便に調整できる効果がある。その結果、電力変換手段2を用いて交流回転機1を安定に駆動できる。
本願発明は、各種の交流回転機の制御装置における制御演算において必要となる各種の制御パラメータを適切な値に設定調整する場合に広く適用できるものである。
1,1a 交流回転機M、2,2a 電力変換手段、3,3a,3b 電流検出手段、
4,4a,4b 電流指令演算手段、5,5a,5b 電流制御手段、
6,6a,6b 制御パラメータ調整手段、7 回転子位置検出手段、
8 位相補正手段、9 速度演算手段、21,21a,21b 電力変換部、
22,22a,22b スイッチング制御部、
23,23a,23b 二相−三相座標変換部、24a〜i アーム、
25a〜r スイッチング素子、26,26a,26b 直流電圧源、
41a〜c 絶対値演算器、42a〜e 加減算器、44a,44b 積分器、
45 PI制御器、400a,400b 電圧制限値設定器、401 極対数設定器、
402 電流指令設定器、430 乗算器、431a,431b 乗除算器。

Claims (9)

  1. 電流指令を演算し電流指令値として出力する電流指令演算手段、交流回転機の電流を検出し電流検出値として出力する電流検出手段、前記電流検出値が前記電流指令値に追従するように前記電流指令値と前記電流検出値との偏差および設定された制御パラメータに基づき電圧指令を演算し電圧指令値として出力する電流制御手段、前記電圧指令値に基づき前記交流回転機に電圧を出力する電力変換手段、および設定すべき前記制御パラメータを調整して出力する制御パラメータ調整手段を備えた交流回転機の制御装置であって、
    前記電流指令演算手段は、前記制御パラメータの調整を行うときは、調整用電流指令値を前記電流制御手段に出力し、
    前記制御パラメータ調整手段は、品質工学に基づき、前記制御パラメータを制御因子として当該各制御因子に複数の水準を設定し前記各制御因子および前記各水準を直交表上に割り付け、前記調整用電流指令値を前記電流指令値とし前記直交表上に割り当てられた前記各制御因子および前記各水準の組み合わせで決まる各条件において前記交流回転機の制御装置から得られる出力に基づき評価値を演算し前記評価値に基づき前記複数の水準から最適な水準を選択し当該水準に相当する前記制御因子を設定すべき前記制御パラメータとして出力することを特徴とする交流回転機の制御装置。
  2. 前記交流回転機の回転速度を出力する速度演算手段を備え、
    前記電流指令演算手段は、速度指令を入力し前記回転速度が前記速度指令に追従するように前記速度指令と前記回転速度との偏差および設定された速度制御パラメータに基づき電流指令を演算し前記電流指令値として出力することを特徴とする請求項1記載の交流回転機の制御装置。
  3. 前記電流指令演算手段は、前記制御パラメータの調整を行うときは、調整用速度指令を入力して演算した電流指令を前記調整用電流指令値として前記電流制御手段に出力し、
    前記制御パラメータ調整手段は、前記品質工学に基づき、前記制御パラメータに前記速度制御パラメータを含めて制御因子として当該各制御因子に複数の水準を設定し前記各制御因子および前記各水準を直交表上に割り付けるようにし、前記調整用電流指令値を前記電流指令値とし前記直交表上に割り当てられた前記各制御因子および前記各水準の組み合わせで決まる各条件において前記交流回転機の制御装置から得られる出力に基づき評価値を演算し前記評価値に基づき前記複数の水準から最適な水準を選択し当該水準に相当する前記制御因子を設定すべき前記速度制御パラメータを含む制御パラメータとして出力するようにしたことを特徴とする請求項2記載の交流回転機の制御装置。
  4. 前記電流指令演算手段は、前記電流制御手段からの電圧指令値と前記電力変換手段の出力電圧制限値と設定された補正制御パラメータとに基づき前記電流指令値を補正するようにしたことを特徴とする請求項2記載の交流回転機の制御装置。
  5. 前記電流指令演算手段は、前記制御パラメータの調整を行うときは、調整用速度指令を入力して演算した電流指令を前記調整用電流指令値として前記電流制御手段に出力し、
    前記制御パラメータ調整手段は、前記品質工学に基づき、前記制御パラメータに前記補正制御パラメータを含めて制御因子として当該各制御因子に複数の水準を設定し前記各制御因子および前記各水準を直交表上に割り付けるようにし、前記調整用電流指令値を前記電流指令値とし前記直交表上に割り当てられた前記各制御因子および前記各水準の組み合わせで決まる各条件において前記交流回転機の制御装置から得られる出力に基づき評価値を演算し前記評価値に基づき前記複数の水準から最適な水準を選択し当該水準に相当する前記制御因子を設定すべき前記補正制御パラメータを含む制御パラメータとして出力するようにしたことを特徴とする請求項4記載の交流回転機の制御装置。
  6. 前記調整用速度指令をステップ状に入力し、前記速度演算手段からの前記回転速度が上限値に至るまでの範囲で複数の速度領域を設定し、
    前記制御パラメータ調整手段は、前記各速度領域において前記評価値を演算し、当該評価値に基づき設定すべき前記制御パラメータを出力するようにしたことを特徴とする請求項3または5に記載の交流回転機の制御装置。
  7. 前記制御パラメータ調整手段は、前記評価値として、前記電流制御手段から出力される前記電圧指令値と前記電流検出手段から出力される前記電流検出値とを乗算して電力演算値を演算することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の交流回転機の制御装置。
  8. 前記電流指令演算手段は、前記制御パラメータの調整を行うときは、前記調整用電流指令値として所定の周波数の正弦波のスイープ波形のものを出力し、
    前記制御パラメータ調整手段は、前記評価値として、前記電流検出手段から出力される前記電流検出値の前記スイープ波形の調整用電流指令値に対するゲインおよび位相差特性を演算することを特徴とする請求項1記載の交流回転機の制御装置。
  9. 前記交流回転機は、n(nは2以上の整数)組の巻線を有し、前記電流制御手段は、前記交流回転機の前記n組の各巻線へ電圧を出力するための電圧指令値を出力する前記n個の電流制御手段からなり、前記電流指令演算手段は、前記制御パラメータの調整を行うときは、前記調整用電流指令値を前記電流指令値として前記n個の電流制御手段の少なくとも1個に出力し、前記制御パラメータ調整手段は、前記交流回転機の制御装置から得られる出力に基づき前記評価値を演算し前記評価値に基づき設定すべき前記制御パラメータを前記n個の電流制御手段に出力することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の交流回転機の制御装置。
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