JP2010282920A - リチウムイオン二次電池用負極材、および、その製造方法、ならびに、リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】リチウムイオン二次電池に用いられるリチウムイオン二次電池用負極材10であって、リチウムイオン二次電池用負極材10は、1〜40at%のSnと、3〜20at%の4A、5A、6A族元素から選ばれる少なくとも一種以上の金属が非晶質炭素中に分散した負極活物質2を、負極集電体1上に形成したものであることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
特許文献2による負極材では、リチウムを吸蔵する金属結晶をナノサイズにしているため、リチウム吸蔵による体積変化が小さく、充放電容量を高くできるが、金属ナノ結晶複合体同士の結合を、結合材を使って行っているために、カーボンブラックを添加したとしても負極電極材としては導電性が劣る。そのため、例えば、自動車のように高速充放電を行う必要がある用途では、大電流が流せず、充放電容量が低下するという問題がある。
さらに、グラファイトターゲットを用いたアークイオンプレーティング法を用いることで、厚膜化を図ることができると共に、リチウムを吸蔵しやすい膜を形成することができる。
図1に示すように、本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極材(以下、適宜、負極材ともいう)10は、負極集電体1と、負極集電体1上に形成された負極活物質2とを有し、負極活物質2は、非晶質炭素中に、1〜40at%のSnが金属ナノ粒子として、3〜20at%の4A、5A、6A族元素から選ばれる少なくとも一種以上の金属(以下、適宜、4A、5A、6A族元素ともいう)が炭化物ナノ粒子として分散したものである。
以下、各構成について説明する。
負極集電体1の材質は、負極活物質2が膨張しようとする応力に耐える機械的特性を有している必要がある。伸びが大きい(塑性変形が容易、耐力が小さい)材質では、負極活物質2の膨張に伴い、一緒に伸び(塑性変形)を生じてしまい、しわや折れ等が発生してしまう。このような理由から、負極集電体1の材質としては、一般に銅、銅合金、ニッケル、ステンレス等の金属が使用され、中でも薄膜に加工しやすいという点とコストの点から、耐力が大きく、破断伸びが2%程度以下であるような銅箔または銅合金箔が好ましい。また、引張強さは高ければ高いほど良く、少なくとも700N/mm2以上の引張強さであることが好ましい。この点で、電解銅箔より圧延銅合金箔であることが好ましい。このような高強度の銅合金箔としては、例えば、NiやSiを含有する、いわゆるコルソン系銅合金を用いた箔が挙げられる。
[非晶質炭素]
非晶質炭素は、炭素のsp2とsp3結合をもつものであり、例えば、ダイヤモンドライクカーボンのような結晶構造を示す。前記構造中の炭素のsp3結合が、充放電時における、非晶質炭素中に分散した金属の体積変化を抑制する働きをする。また、充放電容量増大の点から、非晶質炭素は、グラファイト構造等のリチウムを吸蔵する構造を有している方が好ましい。
Snの組成は1〜40at%であり、4A、5A、6A族元素から選ばれる少なくとも一種以上の金属の組成は3〜20at%である。
Snは、リチウムと合金化が可能であると共に融点が低い金属であるため、融点が高い炭素と合金化せずに非晶質炭素中に分散する。また、4A、5A、6A族元素は、Snと金属間化合物を作る金属であるが、炭素が存在する場合には、ほとんどがSnと結合せずに炭素と結合して炭化物を形成し、非晶質炭素中に分散する。従って、非晶質炭素中には、Snの金属ナノ粒子と、4A、5A、6A族元素の炭化物のナノ粒子が分散した構造となる。
一方、4A、5A、6A族元素(すなわち、4A、5A、6A族元素の炭化物)を非晶質炭素中に分散(ナノクラスター状に分散)させることにより、導電性(電子導電性)が向上する。すなわち、これらの炭化物は導電性が高いため、電子の導電パスとなって高速充放電を可能とする。
4A、5A、6A族元素の含有量が3at%未満では、導電性が向上せずに高速充放電ができない。一方、20at%を超えると、炭化物の割合が増えるため、負極活物質中のリチウム原子の拡散が抑制されるため、高速充放電ができなくなる。
本発明に係るリチウムイオン二次電池用負極材10の製造方法は、1〜40at%のSnと、3〜20at%の4A、5A、6A族元素から選ばれる少なくとも一種以上の金属(金属の炭化物)が非晶質炭素中に分散した負極活物質2を、気相成長法により負極集電体1上に形成させるものである。
以下、各工程について説明する。
負極集電体形成工程は、負極集電体1を形成する工程である。すなわち、負極活物質2を形成させるために、負極集電体1を準備するものである。負極集電体1としては、前記したように、公知の負極集電体1を使用すればよい。なお、負極集電体形成工程により、負極集電体1の歪みの矯正や、研磨等を施してもよい。
負極活物質形成工程は、1〜40at%のSnと、3〜20at%の4A、5A、6A族元素から選ばれる少なくとも一種以上の金属の炭化物を、気相成長法により非晶質炭素中に分散させると共に、前記非晶質炭素中へのSnや炭化物の分散により形成される負極活物質2として、負極集電体1上に形成させる工程である。
本発明に係るリチウムイオン二次電池は、前記記載のリチウムイオン二次電池用負極材を用いたものである。本発明に係る負極材を用いることにより、高い充放電容量を有し、サイクル特性に優れ、かつ高速充放電が可能なリチウムイオン二次電池を製造することができる。
リチウムイオン二次電池の形態としては、例えば、円筒型、コイン型、基板搭載薄膜型、角型、シール型等が挙げられるが、本発明に係る負極材を用いることができるものであれば、どのような形態であってもよい。
以下、各構成について説明する。
負極材は、前記した本発明に係る負極材を使用し、また、この負極材は、前記した本発明に係る製造方法により製造する。
正極材は、特に限定されるものではなく、公知の材料、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4等のリチウム含有酸化物を使用することができる。正極材の製造方法も特に限定されるものではなく、公知の方法、例えば、粉末状のこれらの正極材料に、バインダーの他、必要であれば導電材、溶剤等を添加して十分混練した後、アルミニウム箔等の集電体に塗布し、乾燥、プレスして製造することができる。
セパレータ材についても特に限定されるものではなく、公知の材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔質体のシートまたは不繊布等のセパレータ材を使用することができる。
電解液は、電池ケース内に注入されて密閉される。かかる電解液は、充放電時に、負極材および正極材で電気化学的反応によって生成されるリチウムイオンの移動を可能にする。
電池ケースは、前記した負極材、正極材、セパレータ材、電解液等を収容する。
以下の方法により、試料を作製した。
図2に示すようなスパッタリング装置のチャンバー内に、φ100mm×厚さ5mmの炭素ターゲット、スズターゲット(高純度化学株式会社製:純度99.99%)およびジルコニウムターゲット(高純度化学株式会社製:純度99.2%)をセットし、縦50×横50×厚さ0.02mmの銅箔(株式会社ニラコ製)を、炭素ターゲット、スズターゲット、およびジルコニウムターゲットに対向するように、基板台にセットし、チャンバー内を1×10-3Pa以下となるように真空に引き、チャンバー内を真空状態とした。その後、チャンバー内にArガスを導入し、チャンバー内の圧力を0.26Paとなるようにして、炭素ターゲット、スズターゲット、およびジルコニウムターゲットにDC(直流)を印加してプラズマを発生させ、炭素ターゲット、スズターゲット、およびジルコニウムターゲットをスパッタした。これにより、銅箔上に、非晶質炭素中にスズおよびジルコニウム炭化物が分散した膜を成膜して、リチウムイオン二次電池用負極材を作製した。
[充放電特性評価]
得られた負極材と、対極に正極材として金属リチウムとを配置し、両電極材間にポリプロピレン製の多孔質体のセパレータ材を挟んだ。電解液として、1mol/lの6フッ化りん酸リチウム塩を、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合有機溶媒に体積比1対1で溶かした溶液を使用し、2極式セルの評価用セルを作製した。なお、用いた評価用セルの構造を示す模式図を図4に示す。
これらの結果を表1に示す。なお、表中の各元素の含有量は、以下のオージェ電子分光分析(AES分析)により求めた。また、表1において、本発明の構成を満たさないもの、および、評価基準を満たさないものは、数値に下線を引いて示す。
組成の分析は、オージェ電子分光分析(AES分析)を実施し、膜中の元素濃度を得た。ここで、AES分析には、パーキン・エルマー社製PHI650走査型オージェ電子分光装置を使用し、直径10μmの領域について分析を行った。膜中には、成膜時に不可避的に混入する、基板由来の銅および酸素等の不純物が10at%以下存在していたが、これを除き、(Snの原子分率)/(Snの原子分率+Zrの原子分率+Cの原子分率)を、膜中のSn組成として、同様に、(Zrの原子分率)/(Snの原子分率+Zrの原子分率+Cの原子分率)および(Cの原子分率)/(Snの原子分率+Zrの原子分率+Cの原子分率)を、それぞれ膜中のZr組成およびC組成として計算した。
第1実施例と同様にスパッタリング装置を用いて、負極材を成膜した。但し、ジルコニウムターゲットを、別の4A,5A,6A族元素のターゲットに変えて成膜を実施した。
結果を表2に示す。
第3実施例では、成膜方法として、AIP法で非晶質炭素を、スパッタリング法でSnとCrを同時成膜することによってリチウムイオン電池用負極材を作製した。
2 負極活物質
10 リチウムイオン二次電池用負極材(負極材)
Claims (4)
- リチウムイオン二次電池に用いられるリチウムイオン二次電池用負極材であって、
前記リチウムイオン二次電池用負極材は、1〜40at%のSnと、3〜20at%の4A、5A、6A族元素から選ばれる少なくとも一種以上の金属が非晶質炭素中に分散した負極活物質を、負極集電体上に形成したものであることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材。 - 請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極材の製造方法であって、
1〜40at%のSnと、3〜20at%の4A、5A、6A族元素から選ばれる少なくとも一種以上の金属が非晶質炭素中に分散した負極活物質を、気相成長法により負極集電体上に形成させることを特徴とするリチウムイオン二次電池用負極材の製造方法。 - 前記負極活物質の非晶質炭素の形成を、グラファイトターゲットを用いてアークイオンプレーティング法により行うことを特徴とする請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用負極材の製造方法。
- 請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極材を用いたことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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