JP2010273660A - 部分競合型プローブを用いた標的塩基配列の検出方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】塩基変異部位を有する標的塩基配列を検出する方法であって、標的塩基配列中の塩基変異部位を含有する部分配列を塩基変異含有配列とし、(a)核酸試料に検出型プローブと部分競合型プローブとを添加し、核酸試料中の標的塩基配列を有する標的核酸に、前記検出型プローブと前記部分競合型プローブとをハイブリダイズさせる工程と、(b)工程(a)の後、標的核酸中の塩基変異含有配列からなる部分とハイブリダイズした検出型プローブを検出する工程とを有し、検出型プローブの塩基配列は、標的塩基配列の塩基変異含有配列を含む部分領域と相補的であり、部分競合型プローブの塩基配列は、標的塩基配列の前記塩基変異含有配列を含み前記部分領域は異なる部分領域と、塩基変異部位以外において相補的であり、かつ塩基変異部位において非相補的である。
【選択図】図1
Description
検出を目的とする標的塩基配列を有する核酸試料に対して、標的塩基配列と相補的な塩基配列を有する核酸プローブを用意する。細胞等から抽出し、電気泳動を行った標的核酸をプロットし、該標的核酸と前記核酸プローブとをハイブリダイズする。該核酸プローブは、検出可能となるように、あらかじめラジオアイソトープ等により標識をしておき、核酸とハイブリダイズした核酸プローブをオートラジオグラフィーにより検出し、標的塩基配列を有する核酸の存在を確認する。この方法はサザンブロッテイング法と呼ばれ、種々の変形をなされつつ、今なお使用されている(たとえば、非特許文献1(494〜500貢)参照)。
また、ハイブリダイズによる検出は、ハイブリダイズにより形成される会合体の熱的安定性の差を利用しているものであり、相補的な塩基対形成によるハイブリダイズも、非相補的な塩基対形成を含むハイブリダイズも、その差は熱的安定性の違いに過ぎない。そのため、適切な検出条件は標的塩基配列によって異なり、さらに、適切な条件下でもなお、熱的安定性を変化させる条件は両者に均等に作用する。よって、ハイブリダイズの熱的安定性の差のみを、両者の区別の原理として使用する限りは、検出の特異性と感度のバランスで妥協して一定のノイズを甘受せざるをえない、という問題点がある。
また、本発明は、標的塩基配列の検出において、簡便かつ効率的に検出できる方法を提供することを目的とする。
[1]塩基変異部位を有する標的塩基配列を検出する方法であって、
標的塩基配列中の塩基変異部位を含有する部分配列を、塩基変異含有配列とし、
(a)核酸試料に、検出型プローブと、部分競合型プローブとを添加し、
前記核酸試料中の標的塩基配列を有する標的核酸に、前記検出型プローブと、前記部分競合型プローブとをハイブリダイズさせる工程と、
(b)前記工程(a)の後、標的核酸中の塩基変異含有配列からなる部分とハイブリダイズした検出型プローブを検出する工程と、を有し、
前記検出型プローブの塩基配列は、標的塩基配列の塩基変異含有配列を含む部分領域と相補的であり、
前記部分競合型プローブの塩基配列は、標的塩基配列の前記塩基変異含有配列を含み前記部分領域は異なる部分領域と、塩基変異部位以外において相補的であり、かつ、塩基変異部位において非相補的であり、
さらに、下記の(1)または(2)のいずれか一方を充足することを特徴とする、標的塩基配列の検出方法。
(1)前記検出型プローブは、標的核酸と、前記塩基変異含有配列およびその5’端側においてハイブリダイズしうるものであり、前記部分競合型プローブは、標的核酸と、前記塩基変異含有配列およびその3’端側においてハイブリダイズしうるものであること。
(2)前記検出型プローブは、標的核酸と、前記塩基変異含有配列およびその3’端側においてハイブリダイズしうるものであり、前記部分競合型プローブは、標的核酸と、前記塩基変異含有配列およびその5’端側においてハイブリダイズしうるものであること。
[2]前記塩基変異部位が、前記塩基変異含有配列中のいずれの位置にあってもよいことを特徴とする前記[1]の標的塩基配列の検出方法。
[3]前記工程(b)において、標的核酸中の塩基変異含有配列からなる部分とハイブリダイズした検出型プローブを、標識物質を用いて検出することを特徴とする前記[1]または[2]の標的塩基配列の検出方法。
[4]前記標識物質が、蛍光色素であることを特徴とする前記[3]の標的塩基配列の検出方法。
[5]前記工程(b)において、標的核酸と検出型プローブと部分競合型プローブとがハイブリダイズした会合体中の、当該標的核酸中の塩基変異含有配列からなる部分とハイブリダイズした検出型プローブを検出することを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかの標的塩基配列の検出方法。
[6]前記工程(b)において、QP(Quenching Probe/Primer)法、または、FRET法を用いて、標的核酸中の塩基変異含有配列からなる部分とハイブリダイズした検出型プローブを検出することを特徴とする前記[4]または[5]の標的塩基配列の検出方法。
さらに、非相補的なハイブリダイズを、部分競合型プローブを添加するだけで、洗浄操作をすることなく抑制することが可能であるため、検出の簡便化および効率化が可能となる。
また、本発明において、塩基変異検出部位とは、検出型プローブまたは部分競合型プローブの塩基配列中で、標的塩基配列中の塩基変異部位と、塩基対を形成する部位をいう。
本明細書中において、標的塩基配列を有する核酸を「標的核酸」という。
なお、核酸試料中に含有される核酸が、二本鎖核酸である場合、あらかじめ一本鎖核酸にしておくことが好ましい。一本鎖核酸を用いることにより、後述する工程(a)において、該一本鎖核酸に、検出型プローブと部分競合型プローブとをハイブリダイズさせることができる。抽出された二本鎖核酸の一本鎖化は、熱エネルギーを加える等の公知の手法により行うことができる。
標的塩基配列が含有する塩基変異部位は、遺伝子多型等の先天的な変異の多型部位であってもよく、体細胞変異等の後天的な変異の変異部位であってもよい。
また、標的塩基配列は、1個の塩基変異部位のみを有していてもよく、2個以上の塩基変異部位を有していてもよい。
塩基変異含有配列の長さは、特に限定されるものではなく、標的塩基配列の種類、検出型プローブおよび部分競合型プローブの塩基配列等を考慮して適宜決定することができる。
なお、本発明において、塩基変異部位は、塩基変異含有配列中のいずれの位置にあってもよい。たとえば、塩基変異含有配列の5’ 末端であってもよく、塩基変異含有配列の3’末端であってもよく、塩基変異含有配列の中間部位であってもよい。
ここで、ヌクレオチドアナログとは、非天然のヌクレオチドであり、天然のヌクレオチドであるデオキシリボヌクレオチド(DNA)やリボヌクレオチド(RNA)と同様の機能を有するものをいう。すなわち、ヌクレオチドアナログは、ヌクレオチドと同様にリン酸ジエステル結合により鎖を形成することができ、かつ、ヌクレオチドアナログを用いて形成されたプライマーやプローブは、ヌクレオチドのみを用いて形成されたプライマーやプローブと同様に、PCRやハイブリダイズに用いることができる。このようなヌクレオチドアナログとして、例えば、PNA(ポリアミドヌクレオチド誘導体)、LNA(BNA)、ENA(2’−O,4’−C−Ethylene−bridged nucleic acids)、およびこれらの複合体等がある。ここで、PNAは、DNAやRNAのリン酸と5炭糖からなる主鎖をポリアミド鎖に置換したものである。また、LNA(BNA)は、リボヌクレオシドの2’部位の酸素原子と4’部位の炭素原子がメチレンを介して結合している2つの環状構造を持つ化合物である。
ここで、修飾体としては、たとえば、修飾デオキシリボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、修飾ホスフェート−糖−骨格オリゴヌクレオチド、修飾PNA、修飾LNA(BNA)、修飾ENA等がある。ここで、ヌクレオチドやヌクレオチドアナログの修飾に用いられる物質は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されるものではなく、ヌクレオチド等の修飾に通常用いられる物質を用いることができる。修飾ヌクレオチドや修飾ヌクレオチドアナログとして、たとえば、アミノ基、カルボキシビニル基、リン酸基、メチル基等の官能基により修飾されたヌクレオチド等、メチル基により2−O−メチル化修飾されたヌクレオチド等、ホスホロチオエート化修飾されたヌクレオチド等、蛍光物質等の後述する標識分子により修飾されたヌクレオチド等がある。
検出型プローブの塩基配列は、以下の2つの部分配列に分けられる。
(I)標的塩基配列中の塩基変異含有配列と相補的である塩基配列(以下、「(I)配列」ということがある。)。
(II)標的塩基配列中の塩基変異含有配列以外の部分領域と、相補的である塩基配列(以下、「(II)配列」ということがある。)。
部分競合型プローブの塩基配列は、以下の2つの部分配列に分けられる。
(I’)標的塩基配列中の塩基変異含有配列と、塩基変異部位以外において相補的であり、かつ、塩基変異部位において非相補的である配列(以下、「(I’)配列」ということがある。)。
(II’)標的塩基配列中の塩基変異含有配列以外の塩基配列と相補的である配列(以下、「(II’)配列」ということがある。)。
(1)前記検出型プローブは、標的核酸と、前記塩基変異含有配列およびその5’端側においてハイブリダイズしうるものであり、前記部分競合型プローブは、標的核酸と、前記塩基変異含有配列およびその3’端側においてハイブリダイズしうるものであること。このとき、(I)配列からなる部分および(I’)配列からなる部分は、それぞれ標的核酸と塩基変異含有領域においてハイブリダイズし、(II)配列からなる部分は、標的核酸と塩基変異含有配列の5’端側からなる部分においてハイブリダイズし、(II’)配列からなる部分は、標的核酸と塩基変異含有配列の3’端側からなる部分においてハイブリダイズする。
(2)前記検出型プローブは、標的核酸と、前記塩基変異含有配列およびその3’端側においてハイブリダイズしうるものであり、前記部分競合型プローブは、標的核酸と、前記塩基変異含有配列およびその5’端側においてハイブリダイズしうるものであること。このとき、(I)配列からなる部分および(I’)配列からなる部分は、それぞれ標的核酸と塩基変異含有領域においてハイブリダイズし、(II)配列からなる部分は、標的核酸と塩基変異含有配列の3’端側からなる部分においてハイブリダイズし、(II’)配列からなる部分は、標的核酸と塩基変異含有配列の5’端側からなる部分においてハイブリダイズする。
標的核酸は、塩基変異含有配列以外の領域において、検出型プローブの(II)配列からなる部分、および部分競合型プローブの(II’)配列からなる部分とハイブリダイズし、3者で会合体を形成する。そして、標的核酸は、塩基変異含有配列において、検出型プローブの(I)配列からなる部分のみならず、部分競合型プローブの(I’)配列からなる部分ともハイブリダイズしうる。よって、核酸試料中には、塩基変異含有配列において標的核酸と検出型プローブとがハイブリダイズしている会合体(B)と、塩基変異含有配列において標的核酸と部分競合型プローブとがハイブリダイズしている会合体(C)とが存在し、図1に示す動的な平衡状態をとる。
本発明では、検出型プローブは、(I)配列中の塩基変異検出部位において、標的核酸と完全に相補的な塩基配列を有し、部分競合型プローブは、(I’)配列中の塩基変異検出部位において、標的核酸と完全に相補的な塩基配列を有しない。そのため、標的核酸の塩基変異含有配列において、検出型プローブと標的核酸との会合体は、部分競合型プローブと標的核酸との会合体よりも、高い熱的安定性を有する。したがって、3者が単独で存在している状態(A)からは、会合体(C)よりも、会合体(B)の方が優先的に形成される。同様に、一度形成された会合体(C)から会合体(B)へ優先的に移行する。
本発明の標的塩基配列の検出方法は、検出型プローブと部分競合型プローブとを用いて、標的核酸に対して、検出型プローブと部分競合型プローブとを競合的にハイブリダイズさせ、図1に示すような動的平衡状態を形成し、優先的に会合体(B)のような塩基変異部位に検出型プローブがハイブリダイズする会合体を形成させるため、標的塩基配列の検出精度が向上すると推定される。
また、部分競合型プローブの(II’)配列からなる部分の長さは、標的核酸と検出型プローブとをハイブリダイズさせる反応条件で、(II’)配列からなる部分のみで、標的核酸と好適にハイブリダイズできるように調整されていることが好ましい。
なお、塩基変異が3種類以上の遺伝子型からなる場合には、任意の異なる2種の遺伝子型の配列を、それぞれ、標的塩基配列(第1型配列)または第2型配列としてよい。
以下、各工程について説明する。
また、ハイブリダイズ反応時は、緩衝作用のある塩を含む反応溶液の中で行われることが好ましい。該反応溶液のpHは、pH6.5〜8.5の範囲であることが好ましく、pH6.7〜7.7の範囲であることがより好ましく、該反応溶液の塩濃度は、5〜250mMの範囲であることが好ましく、10〜100mMの範囲であることがより好ましい。緩衝作用のある塩としては、カコジル酸塩、リン酸塩、トリス塩等が挙げられる。また、反応溶液がアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の塩を含むことが好ましく、塩化ナトリウムおよび/または塩化マグネシウムを含むことがより好ましい。
本発明の会合体検出方法は、標識物質を用いたものであることが好ましい。標識物質としては、標的核酸と、検出型プローブおよび部分競合型プローブとのハイブリダイズを妨げないものであれば特に限定されるものではなく、核酸の標識に通常使用される標識物質を用いることができる。このような標識物質として、たとえば、色素等が挙げられる。
本発明の標識物質は、色素であることが好ましく、蛍光色素であることがより好ましい。
なお、各標識物質のプローブへの標識は、有機合成方法等の、通常オリゴヌクレオチドの標識に用いられる方法を用いることにより行うことができる。
本発明の検出型プローブを、グアニン塩基との近接により消光する蛍光色素で標識することにより、検出型プローブと、標的核酸または部分競合型プローブとの近接の有無を検出することができる。該グアニン塩基を有するのは、標的核酸であっても、部分競合型プローブであってもよく、標的核酸であることが好ましい。このとき、検出型プローブは、図1の会合体(B)が形成された場合に消光するように設計されることが好ましい。
標的塩基配列において、内部にグアニン塩基を有するように塩基変異含有配列を設定し、かつ、検出型プローブは、該標的核酸のグアニン塩基と相補的となる部位に、蛍光色素により標識されたシトシン塩基を有するように、あらかじめ設計する。検出型プローブ、部分競合型プローブ、および標的核酸を用いてハイブリダイズを行い、標的核酸と、検出型プローブとがハイブリダイズした場合は、標識された検出型プローブの蛍光色素と、標的核酸中のグアニン塩基が近接し、蛍光色素の消光が起こる。一方、標的核酸と、部分競合型プローブとがハイブリダイズした場合は、蛍光色素とグアニン塩基は近接せず、蛍光色素の消光は起こらない。
このように、標的核酸と検出型プローブとの近接により、標的核酸中の塩基変異含有配列からなる部分とハイブリダイズした検出型プローブを検出する場合、標的核酸と部分競合型プローブとのハイブリダイズは、検出には必ずしも必要ではない。
本発明の検出型プローブを、ドナーまたはアクセプターのいずれか一方で標識し、標的核酸または部分競合型プローブを他方で標識することにより、検出型プローブと、標的核酸または部分競合型プローブとの近接の有無を検出することができる。このとき、両プローブは、図1の会合体(B)が形成された場合に、蛍光共鳴エネルギー転移が生じるように設計されることが好ましい。
たとえば挿入変異を有する標的核酸において、標的塩基配列(第1型配列)である変異型の塩基変異含有配列が5’−gtac−3’であり、第2型配列である正常型の塩基変異含有配列が5’−gtc−3’である場合、検出型プローブの塩基変異含有配列は5’−gtac−3’となる。部分競合型プローブの塩基変異含有配列としては、第2型配列の塩基変異部位の塩基配列と相補的である5’−gac−3’が好ましい。
たとえば欠失変異を有する標的核酸において、標的塩基配列(第1型配列)である変異型の塩基変異含有配列が5’−gtc−3’であり、第2型配列である正常型の塩基変異含有配列が5’−gtgc−3’である場合、検出型プローブの塩基変異含有配列は5’−gac−3’となる。部分競合型プローブの塩基変異含有配列としては、第2型配列の塩基変異部位の塩基配列と相補的である5’−gcac−3’が好ましい。
また、たとえば反復配列変異を有する標的核酸において、標的塩基配列(第1型配列)である変異型の塩基変異含有配列が5’−atatat−3’であり、第2型配列である正常型の塩基変異含有配列が5’−atat−3’である場合、検出型プローブの塩基変異含有配列は5’−atatat−3’となる。部分競合型プローブの塩基変異含有配列としては、第2型配列の塩基変異部位の塩基配列と相補的である5’−atat−3’が好ましい。
なお、本図では、検出型プローブ(Probe1)がその一端に標識物質として蛍光物質を有し、該蛍光物質により検出を行う方法を採用しているが、本発明の検出方法はこの方法に限られるものではない。図2中、○または□で囲まれた部位が、塩基変異部位または塩基変異検出部位である。標的核酸(Target1)中、塩基が記載されている領域が塩基変異含有配列からなる部分である。
図2の上図に示すように、標的核酸が標的塩基配列(第1型配列)を有する場合、近接して整列した前記プローブセットのうち、標的核酸中の塩基変異含有配列と相補的な塩基配列を有する検出型プローブ(Probe1)が優先的にハイブリダイズする。標的塩基配列(第1型配列)を有する標的核酸(Target1)とハイブリダイズした検出型プローブ(Probe1)は、当該検出型プローブが有する蛍光物質により検出される。
また、図2の下図に示すように、核酸が第2型配列を有する場合、近接して整列した前記プローブセットのうち、核酸中の塩基変異含有配列と相補的な塩基配列を有する部分競合型プローブ(Probe2)が優先的にハイブリダイズする。これにより、検出型プローブ(Probe1)が、第2型配列を有する核酸(Target2)とミスハイブリダイズし、誤って検出されることを防ぐことができる。
ここで、「ミスハイブリダイズ」とは、2種の核酸がハイブリダイズして会合体を形成した際に、該会合体内に非相補的な塩基対を含むことをいう。
また、図3に示すように、挿入変異を有する標的塩基配列の場合、標的塩基配列の塩基変異部位は、第2型配列の塩基変異部位に塩基が挿入されているものであり、図4に示すように、欠失変異を有する標的塩基配列の場合、標的塩基配列の塩基変異部位は、第2型配列の塩基変異部位から塩基が欠失しているものである。
図6は、一塩基変異を有する標的核酸における、標的塩基配列を有する標的核酸(Target1)または第2型配列を有する核酸(Target2)と、検出型プローブ(Probe1)と、部分競合型プローブ(Probe2)とからなる会合体を、FRET法を用いて検出した場合の模式図である。図6中、○または□で囲まれた部位が、塩基変異部位または塩基変異検出部位である。標的核酸(Target1)中、塩基が記載されている領域が塩基変異含有配列からなる部分である。
検出型プローブ(Probe1)および部分競合型プローブ(Probe2)は、標的核酸中の塩基変異含有配列からなる部分と検出型プローブ(Probe1)とがハイブリダイズした際に近接するようにあらかじめ設計されている。これらのプローブおよび核酸を用いてハイブリダイズを行うと、図6の上図に示すように、標的核酸(Target1)と、検出型プローブ(Probe1)とがハイブリダイズした場合は、これらの蛍光色素が近接し、ドナーの蛍光色素の消光およびアクセプターの蛍光色素の発光が起こる。一方、図6の下図に示すように、第2型配列を有する核酸(Target2)と、部分競合型プローブ(Probe2)とがハイブリダイズした場合は、これらの蛍光色素は近接せず、ドナーの蛍光色素の消光およびアクセプターの蛍光色素の発光は起こらない。
このように、検出型プローブと部分競合型プローブとの近接により、標的核酸中の塩基変異含有配列からなる部分とハイブリダイズした検出型プローブを検出する場合、標的核酸と検出型プローブと部分競合型プローブとがハイブリダイズした会合体中の、当該標的核酸中の塩基変異含有配列からなる部分とハイブリダイズした検出型プローブを検出することになる。よって、この場合、標的核酸は、検出型プローブとのみならず、部分競合型プローブともハイブリダイズし、3者で会合体を形成している必要がある。
補正用の色素としては、検出される波長が、前記会合体の検出に用いる蛍光色素の波長とクロスしないものであれば、特に限定されるものではなく、通常使用される蛍光色素を使用することができる。たとえば、Alexa Fluor(登録商標)488(商品名、インビトロジェン社製)、ATTO 488(商品名、ATTO-TEC GmbH社製)、Alexa Fluor(登録商標)594(商品名、インビトロジェン社製)、HEX(商品名、インビトロジェン社製)、TAMRA(商品名、インビトロジェン社製)等が挙げられる。
また、QP法等の蛍光標識を用いて、会合体を検出する場合には、温度変化による蛍光強度の変化を測定し、塩基配列既知の核酸(コントロール)と比較することによっても、核酸試料中の標的塩基配列を検出することができる。
本実施例において用いられるオリゴヌクレオチドは、日本バイオサービス社またはオペロンバイオテクノロジー社より購入したものを使用した。
表1に示す、一塩基変異を有する標的オリゴヌクレオチドであるTarget1(wT49;野生型)およびTarget2(mT49;変異型)、部分競合型プローブであるProbe3(wL27)、および検出型プローブであるProbe4(mR27)を用いて、標的遺伝子配列の変異型の検出を行った。
検出型プローブProbe4は、Target2(変異型)と相補的なプローブであり、該プローブの5’末端のシトシン塩基を、BODIPY FL(商品名、インビトロジェン社製)で標識した。部分競合型プローブProbe3は、Target1(野生型)と相補的なプローブである。
まず、Target2のみからなる変異型ホモ接合体核酸試料(mT)、Target2とTarget1とを1:1の割合で混和してなる変異型/野生型へテロ接合体核酸試料(wT+mT)、およびTarget1のみからなる野生型ホモ接合体核酸試料(wT)を準備した。次いで、検出型プローブおよび部分競合型プローブ(最終濃度各1pmol/μL)に、上記核酸試料のいずれか1種(ホモ接合体は最終濃度2pmol/μL、ヘテロ接合体は最終濃度各1pmol/μL)と、4種のデオキシヌクレオチド三リン酸(最終濃度各250μM)と、蛍光強度補正用蛍光色素Alexa Fluor(登録商標)594(商品名、インビトロジェン社製、最終濃度1pmol/μL)と、反応バッファー10×PCR buffer(100mM Tris−HCl、500mM KCl、15mM MgCl2)と、2.5mM dNTP Mixtureとを添加し、反応溶液量が40μLとなるように純水でメスアップし、混和した。また、ネガティブコントロールとして、サンプルの代わりに純水を添加したものを用意した。
次に、該サンプルを、リアルタイムPCR用の検出容器に装填し、QP法を用いて検出を行った。前述のとおり、QP法ではハイブリダイズした場合に、蛍光が消光する。具体的には、35〜95℃でサンプルを昇温し、温度変化に対する蛍光強度をF1(BODIPY検出用、520nm)、およびF2(補正用蛍光色素検出用、640nm)のフィルタを用いて測定した。検出型プローブの蛍光強度(F1)を、補正用蛍光色素の蛍光強度(F2)で補正した結果を、図7に示す。
部分競合型プローブとして表1に示すProbe1(mL27)を、検出型プローブとして表1に示すProbe2(wR27)を用いた以外は、実施例1と同様にして、標的遺伝子配列の野生型の検出を行った。検出型プローブProbe2は、Target1(野生型)と相補的なプローブであり、該プローブの5’末端のシトシン塩基を、BODIPY FL(商品名、インビトロジェン社製)で標識した。部分競合型プローブProbe1は、Target2(変異型)と相補的なプローブである。
検出型プローブの蛍光強度(F1)を、補正用蛍光色素の蛍光強度(F2)で補正した結果を、図8に示す。
上記の結果から、本発明の標的塩基配列の検出方法を用いて、複数種類の塩基変異を有する核酸の標的塩基配列の検出を行うことが可能であり、ジェノタイピングに有用であることが示された。
また、上記の結果は、従来のハイブリダイゼーション法による標的塩基配列の検出方法と比較して、高精度かつ高感度であることがわかった。
Claims (6)
- 塩基変異部位を有する標的塩基配列を検出する方法であって、
標的塩基配列中の塩基変異部位を含有する部分配列を、塩基変異含有配列とし、
(a)核酸試料に、検出型プローブと、部分競合型プローブとを添加し、
前記核酸試料中の標的塩基配列を有する標的核酸に、前記検出型プローブと、前記部分競合型プローブとをハイブリダイズさせる工程と、
(b)前記工程(a)の後、標的核酸中の塩基変異含有配列からなる部分とハイブリダイズした検出型プローブを検出する工程と、を有し、
前記検出型プローブの塩基配列は、標的塩基配列の塩基変異含有配列を含む部分領域と相補的であり、
前記部分競合型プローブの塩基配列は、標的塩基配列の前記塩基変異含有配列を含み前記部分領域は異なる部分領域と、塩基変異部位以外において相補的であり、かつ、塩基変異部位において非相補的であり、
さらに、下記の(1)または(2)のいずれか一方を充足することを特徴とする、標的塩基配列の検出方法。
(1)前記検出型プローブは、標的核酸と、前記塩基変異含有配列およびその5’端側においてハイブリダイズしうるものであり、前記部分競合型プローブは、標的核酸と、前記塩基変異含有配列およびその3’端側においてハイブリダイズしうるものであること。
(2)前記検出型プローブは、標的核酸と、前記塩基変異含有配列およびその3’端側においてハイブリダイズしうるものであり、前記部分競合型プローブは、標的核酸と、前記塩基変異含有配列およびその5’端側においてハイブリダイズしうるものであること。 - 前記塩基変異部位が、前記塩基変異含有配列中のいずれの位置にあってもよいことを特徴とする請求項1記載の標的塩基配列の検出方法。
- 前記工程(b)において、標的核酸中の塩基変異含有配列からなる部分とハイブリダイズした検出型プローブを、標識物質を用いて検出することを特徴とする請求項1または2記載の標的塩基配列の検出方法。
- 前記標識物質が、蛍光色素であることを特徴とする請求項3記載の標的塩基配列の検出方法。
- 前記工程(b)において、標的核酸と検出型プローブと部分競合型プローブとがハイブリダイズした会合体中の、当該標的核酸中の塩基変異含有配列からなる部分とハイブリダイズした検出型プローブを検出することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の標的塩基配列の検出方法。
- 前記工程(b)において、QP(Quenching Probe/Primer)法、または、FRET法を用いて、標的核酸中の塩基変異含有配列からなる部分とハイブリダイズした検出型プローブを検出することを特徴とする請求項4または5記載の標的塩基配列の検出方法。
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