JP2010246400A - 多型の識別方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高感度かつ高精度に多型を検出する方法の提供。
【解決手段】多型部位の塩基配列が第1の塩基配列である核酸1と当該多型部位を含む領域でハイブリダイズするプライマーを第1型検出用プライマー2とし、多型部位の塩基配列が第2の塩基配列である核酸の当該多型部位を含む領域の配列と相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドを阻害用オリゴヌクレオチド3とし、被検核酸試料中の核酸を鋳型とし、第1型検出用プライマー及び鎖置換活性のないポリメラーゼを用いて、阻害用オリゴヌクレオチドの存在下で核酸鎖伸長反応を行い、第1型検出用プライマーが伸長されたか否かにより、被検核酸試料中に含まれている核酸の多型を識別する工程を有し、多型部位の塩基配列が第1の塩基配列である核酸中の、第1型検出用プライマーとハイブリダイズする領域の5’側と、阻害用オリゴヌクレオチドとハイブリダイズする領域の3’側とが重複する多型の識別方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、従来よりも、高感度かつ高精度に多型を識別する方法に関する。
近年の遺伝子操作技術や遺伝子組換え技術等の進歩に伴い、核酸分析による遺伝子検査は、医療、研究、産業への応用に広く用いられている。このような検査は試料中の標的塩基配列を有するDNAの存在の検出を行うものであり、疾患の診断、治療だけでなく、食品検査等の様々な分野において応用されている。特に、SNP(一塩基多型)等の遺伝子多型は、癌等の特定の疾患に対する罹り易さや、薬物代謝能等の個体差の主要な一因と考えられており、学術研究においてのみならず、実際の臨床検査においても、遺伝子多型解析が広く行われている。このため、高精度かつ迅速に遺伝子多型を検出し得る方法の開発が盛んである。
遺伝子多型を検出・識別する方法として、プローブやプライマー等の人工合成したポリヌクレオチドを用いて核酸の塩基配列を調べる方法が多数報告されている。例えば、SNP等の多型を含む領域をPCR(Polymerase Chain Reaction、ポリメラーゼ連鎖反応)により増幅して検出する方法や、検出対象であるSNPを3’末端に有するプローブと、該SNPの5’側の隣の塩基を5’末端に有するプローブを用いて、ライゲーション反応を行い、2つのプローブが結合された一のポリヌクレオチドが得られるか否かによりSNPを検出する方法等のように、分子生物学的な酵素反応を用いて、解析対象であるSNP及びその近傍の塩基配列を解析する方法等がある。
特に、SNP解析においては、特定の塩基配列やアレル等に特異的に結合し得るプライマーを用いてPCRを行い、PCR産物の有無によりSNPを検出するSSP−PCR(Sequence Specific Primers−PCR)法やASP−PCR(Allele Specific Primers−PCR)法が汎用されている。SSP/ASP−PCR法による多型の検出は、塩基配列(遺伝子多型)の検出及び識別とシグナルの増幅を同時に行うことができるため、臨床検査における検体等のように、検体が微量である場合や試料中の核酸濃度が非常に低い場合であってもSNPを検出することができ、非常に利便性が高いためである。
一方で、SSP−PCR法やASP−PCR法は、プライマーの塩基配列の設計自由度が低いため、識別対象である遺伝子多型の塩基配列によっては、十分な感度が得られない、という問題がある。そこで、SSP−PCR法やASP−PCR法を用いてSNP等の遺伝子多型を識別する場合の識別精度を向上させるために、様々な方法が開示されている。例えば、(1)特定の既知の核酸配列の有無を検出する方法であって、特定の既知配列と相補的なプライマーと、当該既知配列と塩基ミスマッチを有する競合オリゴヌクレオチドプライマーとを、核酸又は核酸混合物試料に加え、競合するような条件下で特定の既知の配列に対して、本質的に相補的なプライマーを選択的にハイブリダイズさせ、プライマーがハイブリダイズされるヌクレオチド鎖に相補的な伸長産物を合成するために、その3’末端から選択的にハイブリダイズしたプライマーを伸長させ、その伸長産物を同定する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。当該方法は、識別対象である既知配列を含む核酸の共通する領域にハイブリダイズする2種類のプライマーを添加し、これらの競合反応により、当該既知配列を含む核酸の識別精度を改善する方法である。
また、(2)多型配列部位を有する核酸において多型配列部位が所望の塩基配列を有するか否かを識別する方法であって、識別プライマー(ここでこの識別プライマーは、その3’末端部分に多型配列識別用の塩基配列を有する)、及びプライマー機能を有さないオリゴヌクレオチド(ここでこのオリゴヌクレオチドは、前記識別プライマーよりも、標的核酸における5’側の領域に対して全部もしくは一部が相補的である)を、多型配列部位を有する標的核酸にハイブリダイズさせ、これらをプライマー鎖置換伸長反応が進行し得る反応条件下に置くことを含んでなる方法も開示されている(例えば、特許文献2参照。)。当該方法は、識別プライマーの下流にさらに、プライマー機能を有さないオリゴヌクレオチドを用いることにより、伸長反応の進行の可否の精度を高める方法である。識別プライマーが標的核酸と完全に相補的であると、該プライマーの下流に結合しているプライマー機能を有さないオリゴヌクレオチドを押しのけてプライマー伸長反応を進行することができるが、識別プライマーと標的核酸との間にミスマッチがあると、プライマー伸長反応がほとんど起こらない。
特許第2760553号公報 国際公開第04/022743号パンフレット
上記(1)の方法では、競合プライマーに塩基ミスマッチを入れることにより、識別対象である既知配列を含む核酸が、競合プライマーよりも、当該既知配列と相補的なプライマーと結合しやすくしている。しかしながら、塩基配列によってはプライマー同士の入れかわりが起こり難く、識別感度が不十分である。
一方、上記(2)の方法では、鎖置換伸長反応を用いており、非特異的反応の抑制効果が十分ではない。特に、体細胞変異は、試料中に含まれる大多数の核酸が正常遺伝子由来の核酸であり、変異遺伝子由来の核酸の占める割合は非常に低く、このために、SNPを検出・識別する場合よりも、非常に高い精度が要求されるが、このような体細胞変異の検出を、上記(2)の方法を用いて行うことは難しい。また、SNP等の多型部位を検出する多型検出部位が、プライマーの3’末端に限られるため、プライマーの設計自由度が非常に低い、という問題もある。
本発明は、SSP−PCR法又はASP−PCR法を用いて、高感度かつ高精度に多型を識別する方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、SSP−PCR法又はASP−PCR法において、多型のいずれかのアレルと特異的にハイブリダイズするプライマーと、鋳型となる核酸とをハイブリダイズさせて核酸伸長反応を行う際に、この反応溶液に、前記プライマーの3’末端と重複して、鋳型となる核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを添加することにより、非特異的な核酸伸長反応を抑制することができ、多型の識別精度を改善できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1) 多型部位を有する核酸の多型を識別する方法であって、被検核酸試料中の核酸を鋳型とし、第1型検出用プライマー及び鎖置換活性のないポリメラーゼを用いて、阻害用オリゴヌクレオチドの存在下で、核酸鎖伸長反応を行う伸長工程と、前記伸長工程において、前記第1型検出用プライマーが伸長されたか否かにより、前記被検核酸試料中に含まれている核酸の多型を識別する識別工程と、を有し、前記第1型検出用プライマーは、多型部位の塩基配列が第1の塩基配列である核酸と、当該多型部位を含む領域においてハイブリダイズするプライマーであり、前記阻害用オリゴヌクレオチドは、多型部位の塩基配列が第2の塩基配列である核酸の当該多型部位を含む領域の配列と、相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、多型部位の塩基配列が前記第1の塩基配列である核酸中の、前記第1型検出用プライマーとハイブリダイズする領域の5’側と、前記阻害用オリゴヌクレオチドとハイブリダイズする領域の3’側とが重複することを特徴とする多型の識別方法、
(2) 前記阻害用オリゴヌクレオチドの3’末端の塩基が、プライマーとして動作しないようにブロッキングされていることを特徴とする前記(1)記載の多型の識別方法、
(3) 多型部位の塩基配列が前記第1の塩基配列である核酸中の、前記第1型検出用プライマーとハイブリダイズする領域の5’ 側と、前記阻害用オリゴヌクレオチドとハイブリダイズする領域の3’ 側とが重複する領域の長さが、5塩基以下であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の多型の識別方法、
(4) 多型部位の塩基配列が前記第1の塩基配列である核酸中の、前記第1型検出用プライマーとハイブリダイズする領域の5’側と、前記阻害用オリゴヌクレオチドとハイブリダイズする領域の3’側とが重複する領域の長さが、前記多型部位の長さの2倍以下の塩基長であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の多型の識別方法、
(5) 多型部位の塩基配列が前記第1の塩基配列である核酸中の、前記第1型検出用プライマーとハイブリダイズする領域の5’ 側と、前記阻害用オリゴヌクレオチドとハイブリダイズする領域の3’ 側とが重複する領域の長さが、2塩基以下であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の多型の識別方法、
(6) 前記第1型検出用プライマーの、前記多型部位とハイブリダイズする多型検出部位が、3’末端にあることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか記載の多型の識別方法、
(7) 前記核酸鎖伸長反応が、被検核酸試料中の核酸を一本鎖化する変性ステップ、一本鎖化された核酸と、前記第1型検出用プライマー又は前記阻害用オリゴヌクレオチドとをハイブリダイズさせるアニーリングステップ、前記第1型検出用プライマーを起点として核酸鎖を伸長させる伸長ステップとからなり、多型部位の塩基配列が前記第1の塩基配列である核酸と前記阻害用オリゴヌクレオチドとからなる会合体のTm値が、前記アニーリングステップの温度よりも高く、前記伸長ステップの温度よりも低いことを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか記載の多型の識別方法、
(8) 多型部位の塩基配列が前記第1の塩基配列である核酸と前記阻害用オリゴヌクレオチドとからなる会合体の熱力学的安定性が、当該核酸と前記第1型検出用プライマーとからなる会合体よりも低いことを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか記載の多型の識別方法、
(9) 前記核酸鎖伸長反応が、前記変性ステップ、前記アニーリングステップ、及び前記伸長ステップとからなるサイクルを、2回以上繰り返すことを特徴とする前記(7)記載の多型の識別方法、
(10) 前記多型部位の塩基配列が、前記第1の塩基配列とは異なる塩基配列である核酸と、当該多型部位を含む領域においてハイブリダイズする検出用プライマーの存在下で、前記核酸鎖伸長反応を行うことを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれか記載の多型の識別方法、
(11) 前記検出用プライマーが、前記多型部位の塩基配列が前記第2の塩基配列である核酸と、当該多型部位を含む領域においてハイブリダイズする第2型検出用プライマーであることを特徴とする前記(10)記載の多型の識別方法、
(12) 多型部位の塩基配列が前記第1の塩基配列である核酸と前記阻害用オリゴヌクレオチドとからなる会合体の熱力学的安定性が、多型部位の塩基配列が前記第1の塩基配列である核酸と前記第1型検出用プライマーとからなる会合体よりも低く、かつ、多型部位の塩基配列が前記第2の塩基配列である核酸と前記阻害用オリゴヌクレオチドとからなる会合体の熱力学的安定性が、多型部位の塩基配列が前記第2の塩基配列である核酸と前記第2型検出用プライマーとからなる会合体よりも低いことを特徴とする前記(11)記載の多型の識別方法、
(13) 多型部位を有する核酸の多型の識別に用いられるキットであって、第1型検出用プライマー及び阻害用オリゴヌクレオチドを含み、前記第1型検出用プライマーは、多型部位の塩基配列が第1の塩基配列である核酸と、当該多型部位を含む領域においてハイブリダイズするプライマーであり、前記阻害用オリゴヌクレオチドは、多型部位の塩基配列が第2の塩基配列である核酸の当該多型部位を含む領域の配列と、相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、多型部位の塩基配列が前記第1の塩基配列である核酸中の、前記第1型検出用プライマーとハイブリダイズする領域の5’側と、前記阻害用オリゴヌクレオチドとハイブリダイズする領域の3’側とが重複することを特徴とする多型識別用キット、
を提供するものである。
本発明の多型の識別方法を用いることにより、多型の検出用プライマーの設計の自由度が低いSSP−PCR法及びASP−PCR法において、効果的に非特異的な核酸伸長反応を抑制することができ、多型を高精度かつ高感度に識別することができる。中でも、体細胞変異等の、従来のSSP−PCR法等では検出や識別が非常に困難であった多型も、感度よく検出・識別することができる。
第1型核酸と第1型検出用プライマーとのハイブリダイズにより形成される会合体と、第1型核酸と阻害用オリゴヌクレオチドとのハイブリダイズにより形成される会合体とを、模式的に示した図である。 第1型核酸と、第1型検出用プライマー及び阻害用オリゴヌクレオチドとがハイブリダイズする状態と、第2型核酸と、第1型検出用プライマー及び阻害用オリゴヌクレオチドとがハイブリダイズする状態とを、模式的に示した図である。 EGFR遺伝子における790番目のトレオニンをコードするコドンの周囲の塩基配列を示した図である。 実施例1において、測定された変異型検出用プライマーの消費率(K2%)を、変異型核酸の含有割合ごとに示した図である。 実施例1において、FCS測定の結果を、変異型検出用プライマーの消費率(K2%)を縦軸、野生型検出用プライマーの消費率(K2%)を横軸として、各被核酸試料ごとに示した散布図である。 実施例2において、測定された変異型検出用プライマーの消費率(K2%)を、変異型核酸の含有割合ごとに示した図である。
本発明において、多型とは、ある生物種の個体間若しくは同一個体中の細胞間において、同じ遺伝子の塩基配列に相違部分があることを意味する。具体的には、同じ遺伝子において、一の細胞由来の特定の遺伝子の塩基配列に対して、同じ生物種の別個体由来の、又は同一個体の他の細胞由来の当該遺伝子の塩基配列が、1又は複数の塩基が置換、欠損、若しくは挿入されている場合に、当該遺伝子は多型であるといい、両者の塩基配列で相違する部位を多型部位という。なお、ゲノムDNA上における多型であってもよく、ミトコンドリアDNAにおける多型であってもよい。
本発明において多型部位とは、各多型において、遺伝子の塩基配列が異なる部位を意味する。例えば、ある多型において、一の型(第1型)における塩基配列がgggaaaであり、第1型とは異なる型(第2型)における塩基配列がggcaaaである場合に、第1型においてgであり、第2型においてcである5’側から3番目の塩基が多型部位である。また、本発明において、多型を識別するとは、ある被検核酸試料に含有されている核酸の多型部位が、いずれの多型と同じ塩基配列を有しているかを識別することを意味する。したがって、本発明の多型の識別方法の対象となる多型は、識別が可能である程度に塩基配列が明らかになっているものである。
本発明において識別対象とする多型としては、上記多型であって、遺伝子組換え技術等により検出が可能な程度に塩基配列が明らかになっているものであれば、特に限定されるものではない。また、先天的な多型であってもよく、腫瘍細胞等において多くみられる後天的な多型であってもよい。該多型として、例えば、一塩基多型(SNP)、マイクロサテライト、体細胞変異等がある。本発明においては、1〜5個の塩基が置換、欠損、若しくは挿入されている多型を識別することが好ましく、1〜3個の塩基が置換、欠損、若しくは挿入されている多型を識別することがより好ましい。
本発明における被検核酸試料は、多型を識別すべき核酸が含まれている試料であれば、特に限定されるものではない。該被検核酸試料は、動物等から採取した生体試料であってもよく、培養細胞溶液等から調製した試料であってもよく、生体試料等から抽出・精製した核酸溶液であってもよい。特に臨床検査等に用いられるヒト由来の生体試料や、ヒト由来の生体試料から抽出・精製した核酸試料であることが好ましい。ヒト由来の生体試料として、例えば、血液、骨髄液、リンパ液、尿、喀痰、腹水、滲出液、羊膜液、腸管洗浄液、肺洗浄液、気管支洗浄液、膀胱洗浄液、膵液、唾液、精液、胆汁、又は大便等がある。また、該被検核酸試料は、生物から採取された状態の試料であってもよく、調製した試料であってもよい。該調製の方法は、該生体試料中に含有されているDNAやRNA等の核酸を損なわない方法であれば、特に限定されるものではなく、通常、生体試料に対してなされている調製方法を行うことができる。その他、生体試料から抽出・精製したDNAをPCR等により増幅処理して得られたものであってもよく、生体試料中に含有されるRNAから逆転写酵素を用いて合成されたcDNAであってもよい。生体試料から抽出・精製したDNA等を用いる場合には、含有する多型部位を含む核酸をPCR反応により増幅させ、得られた増幅産物を被検核酸試料とすることが好ましい。
本発明の多型の識別方法は、多型部位を有する核酸の多型を識別する方法であって、多型のうちの一の型(第1型)と特異的にハイブリダイズする第1型検出用プライマーを用いた核酸鎖伸長反応を、当該多型の他の型(第2型)と特異的にハイブリダイズする阻害用オリゴヌクレオチドの存在下で行う方法である。
本発明において、第1型検出用プライマーとは、識別対象である多型の多型部位の塩基配列が第1の塩基配列である核酸(以下、「第1型核酸」ということがある。)と、当該多型部位を含む領域においてハイブリダイズするプライマーである。第1型検出用プライマーは、第1型核酸中の当該多型部位を含む部分領域とハイブリダイズし得るものであればよく、第1型核酸の塩基配列と完全に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよく、1又は数塩基のミスマッチを有する塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよい。より高い識別精度を達成可能であることから、本発明においては、第1型検出用プライマーは、第1型核酸の塩基配列と完全に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであることが好ましい。
その他、第1型検出用プライマーは、第1型核酸とハイブリダイズする領域以外にも、5’側に付加的な塩基配列を有するものであってもよい。該付加的な配列として、例えば、制限酵素認識配列や、核酸の標識に供される配列等がある。
また、第1型検出用プライマーは、当該プライマーを起点として得られる伸長産物の検出を容易にするために、標識されたものであってもよい。該標識をするための物質は、核酸の標識に用いることができるものであれば、特に限定されるものではなく、放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質、ビオチン等がある。
第1型検出用プライマーは、第1核酸の多型部位とハイブリダイズする多型検出部位が、プライマーの5’側よりも3’側に存在するように設計されることが好ましい。中でも、多型検出部位は、第1型検出用プライマーの3’末端から5塩基以内に存在するように設計することが好ましく、3’末端から2塩基以内に存在するように設計することがより好ましく、3’末端にあるように設計することが特に好ましい。
本発明において、阻害用オリゴヌクレオチドとは、多型部位の塩基配列が第2の塩基配列である核酸(以下、「第2型核酸」ということがある。)と、当該多型部位を含む領域においてハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであり、第2型核酸の当該多型部位を含む領域の配列と相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドである。ここで、第2の塩基配列は、識別対象である多型の多型部位の塩基配列であって、前記第1の塩基配列とは異なる配列である。例えば、識別対象である多型が、野生型と変異型の2種類の多型を有するSNPである場合に、第1の塩基配列を変異型の塩基配列とし、第2の塩基配列を野生型の塩基配列とする。また、識別対象である多型が、体細胞変異である場合に、第1の塩基配列を変異型とし、第2の塩基配列を正常型の塩基配列とする。なお、多型部位の塩基配列が3種類以上ある多型の場合には、第2の塩基配列は、第1の塩基配列以外のいずれの塩基配列を選択してもよい。
第1型検出用プライマーは、低温環境下、例えば核酸鎖伸長反応のアニーリングステップにおいては、第1型核酸に対してと同様に第2型核酸ともハイブリダイズする。このように、第1型検出用プライマーが第2型核酸とハイブリダイズし、非特異的な核酸鎖伸長反応が起こることにより、多型の識別精度が低下する。
本発明の多型の識別方法は、当該多型のうち、第1型以外の型と特異的にハイブリダイズする阻害用オリゴヌクレオチドを用いることにより、アニーリングステップ等の低温環境下での核酸鎖伸長を抑制し、かつ、第1型以外の他の型の核酸と第1型検出用プライマーとの会合体の不安定化することにより、非特異的な核酸鎖伸長反応を効果的に抑制し、多型の識別精度を改善することができる。
前記阻害用オリゴヌクレオチドは、プライマーとして動作しないオリゴヌクレオチドであることが好ましい。ここで、「プライマーとして動作しない」とは、ポリメラーゼによっても、オリゴヌクレオチドの3’末端の塩基に新たな塩基が結合せず、核酸鎖が伸長しないことを意味する。具体的には、3’末端の塩基をブロッキングすることにより、プライマーとして動作しないオリゴヌクレオチドとすることができる。3’末端の塩基のブロッキング方法は、当該技術分野において公知のいずれの手法を用いて行ってもよい。例えば、阻害用オリゴヌクレオチドの3’末端の3’位の水酸基を水酸基以外の官能基に置換する方法、3’末端の塩基をジデオキシヌクレオチドに置換する方法、3’末端の塩基の3’位に(必要に応じてリンカーを介して)、色素、蛍光物質分子、消光物質分子、又はアミノ基等を結合させる方法等がある。
本発明においては、前記第1型核酸中の、第1型検出用プライマーとハイブリダイズする領域の5’側と、阻害用オリゴヌクレオチドとハイブリダイズする領域の3’側とが重複する。すなわち、第1型検出用プライマーの3’側と、阻害用オリゴヌクレオチドの5’側とが、第1型核酸上の同一領域にハイブリダイズするように、第1型検出用プライマーと阻害用オリゴヌクレオチドとをそれぞれ設計する。具体的には、第1型検出用プライマーの3’側と、阻害用オリゴヌクレオチドの5’側とは、多型部位とハイブリダイズする多型検出部位以外は、相同的な塩基配列とする。
図1は、第1型核酸(1)と第1型検出用プライマー(2)とのハイブリダイズにより形成される会合体と、第1型核酸(1)と阻害用オリゴヌクレオチド(3)とのハイブリダイズにより形成される会合体とを、模式的に示した図である。図中「○」は多型部位を、矢印で囲んだ領域が、第1型検出用プライマーの3’側と、阻害用オリゴヌクレオチドの5’側とが重複してハイブリダイズする領域(以下、単に「重複領域」ということがある。)を、それぞれ示す。
第1型核酸と第2型核酸は多型部位の塩基配列以外は相同的であるため、第2型核酸と相補的な塩基配列からなる阻害用オリゴヌクレオチドは、低温環境下、例えば核酸鎖伸長反応のアニーリングステップにおいては、第1型核酸ともハイブリダイズする。阻害用オリゴヌクレオチドが存在していない場合には、アニーリングステップにおいても、ポリメラーゼは活性を有しているため、検出用プライマーは伸長する。これに対して、阻害用オリゴヌクレオチド存在下では、阻害用オリゴヌクレオチドが乖離する温度(アニーリングステップより高い温度)まで核酸鎖伸長反応がブロッキングされるため、核酸鎖伸長反応が高温環境下でのみ起こるように限定されることが想定される。
また、第1型検出用プライマー及び阻害用オリゴヌクレオチドは、第1型核酸と同様に、第2型核酸ともハイブリダイズする。図2は、第1型核酸(1)と、第1型検出用プライマー(2)及び阻害用オリゴヌクレオチド(3)とがハイブリダイズする状態と、第2型核酸(4)と、第1型検出用プライマー(2)及び阻害用オリゴヌクレオチド(3)とがハイブリダイズする状態とを、模式的に示した図である。図中「○」及び矢印で囲んだ領域は、図1と同様である。第1型核酸と第2型核酸は、多型部位の塩基配列が異なるため、図2に示すように、第1型検出用プライマー及び阻害用オリゴヌクレオチドの、第1型核酸との会合体と第2型核酸との会合体とでは、末端微細構造に違いが生じ、阻害用オリゴヌクレオチドの安定性が変わり、多型の識別精度が改善されると推定される。
また、図1及び図2に示すような‘枝分かれしたハイブリダイゼーション(ブランチマイグレーション)’は、接合位置の変化に伴うエネルギー変化が小さいため、ハイブリダイゼーションしている塩基が平衡状態にあることが知られている(例えば、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、1994年、第91巻第6号、第2021〜2025ページ参照。)。すなわち、第1型核酸と第1型検出用プライマーとのハイブリダイズにより形成される会合体と、第1型核酸と阻害用オリゴヌクレオチドとのハイブリダイズにより形成される会合体とは、平衡状態にあると想定され、核酸鎖伸長反応に利用するポリメラーゼには鎖交換活性をもたないものが必要である。
前記重複領域の長さは、第1型検出用プライマーを起点とする非特異的な核酸鎖伸長反応の抑制効果が得られる程度に、図1及び図2に示すような‘枝分かれしたハイブリダイゼーション’の平衡状態に違いが生じる長さであれば、特に限定されるものではなく、多型部位の塩基配列の種類、核酸鎖伸長反応の反応条件等を考慮して、適宜決定することができる。例えば、本発明においては、前記重複領域の長さは、5塩基以下であることが好ましく、2塩基であることがより好ましい。その他、多型部位の長さの2倍以下の塩基長であってもよい。中でも、第1型検出用プライマーの3’末端の塩基が多型検出部位であり、当該3’末端の塩基を含み、かつ3’末端から2番目〜5番目の塩基までの部分、好ましくは3’末端から2番目の塩基までの部分が、第1型核酸の重複領域とハイブリダイズする領域であることが好ましい。
なお、第1型検出用プライマーの3’末端の塩基が多型検出部位であり、3’末端から2番目の塩基までの部分が前記重複領域とハイブリダイズする領域とした場合には、阻害用オリゴヌクレオチドの5’末端から2番目の塩基が多型検出部位であり、かつ5’末端から2番目の塩基までの部分が前記重複領域とハイブリダイズする領域とする。同様に、第1型検出用プライマーの3’末端の塩基が多型検出部位、3’末端から5番目の塩基までの部分が前記重複領域とハイブリダイズする領域とした場合には、阻害用オリゴヌクレオチドの5’末端から5番目の塩基が多型検出部位であり、かつ5’末端から5番目の塩基までの部分が前記重複領域とハイブリダイズする領域とする。
また、低温(アニーリング)条件下では図1及び図2に示すような‘枝分かれしたハイブリダイゼーション’が平衡状態にあり、核酸鎖伸長反応時には、阻害用オリゴヌクレオチドが鋳型となる第1型核酸から解離していることが好ましい。阻害用オリゴヌクレオチドを、このように設計することにより、第1型核酸を鋳型とし第1型検出用プライマーを起点とする目的の核酸鎖伸長反応を阻害することなく、非特異的な核酸鎖伸長反応のみを抑制することができるためである。
具体的には、核酸鎖伸長反応が、被検核酸試料中の核酸を一本鎖化する変性ステップ、一本鎖化された核酸と、前記第1型検出用プライマー又は前記阻害用オリゴヌクレオチドとをハイブリダイズさせるアニーリングステップとからなる場合に、第1型核酸と阻害用オリゴヌクレオチドとからなる会合体のTm値が、アニーリングステップの温度よりも高く、かつ伸長ステップの温度よりも低くなるように、阻害用オリゴヌクレオチドを設計することが好ましい。
その他、第1型核酸と阻害用オリゴヌクレオチドとからなる会合体の熱力学的安定性が、第1型核酸と第1型検出用プライマーとからなる会合体よりも低くなるように、第1型検出用プライマー及び阻害用オリゴヌクレオチドを設計してもよい。
なお、本発明において、検出用プライマーや阻害用オリゴヌクレオチドのTm値は、塩基配列に基づいて、常法により算出することができる。また、VisualOMP(DNA Software社製)等の市販のシミュレーションソフトウェアを用いて算出することもできる。
具体的には、本発明の多型の識別方法は、まず、被検核酸試料中の核酸を鋳型とし、前記第1型検出用プライマー及び鎖置換活性のないポリメラーゼを用いて、前記阻害用オリゴヌクレオチドの存在下で、核酸鎖伸長反応を行う(伸長工程)。
本発明の核酸鎖伸長反応においては、鎖置換活性のないポリメラーゼを用いる。前述したように、第1型検出用プライマー、阻害用オリゴヌクレオチド、及び第1型核酸との会合体の構造は、動的で平衡状態にある。このため、特許文献2に記載の方法とは異なり、鎖置換活性のある酵素を使用した場合には、阻害用オリゴヌクレオチドによる非特異的な核酸鎖伸長反応抑制効果が発揮されない。
核酸鎖伸長反応は、1回のみ行うものであってもよく、複数回繰り返すものであってもよい。例えば、PCR法のように、変性ステップ、アニーリングステップ、及び伸長ステップとからなるサイクルを、2回以上繰り返すものであってもよい。なお、核酸鎖伸長反応を1回のみ行う場合であっても、蛍光物質等で標識したヌクレオチドを用いることにより、得られた核酸鎖伸長産物を検出するためのシグナルを増幅することができる。
また、核酸鎖伸長反応は、PCRのように、第1型検出用プライマーのような多型特異的なプライマーと、多型非特異的なプライマーとを要する反応であってもよく、SSPCE(Sequence−Specific Primer Cycle Elongation)法(例えば、Current Pharmaceutical Biotechnology、2003年、第4巻、477〜484ページ参照。)のように、第1型検出用プライマーのみを用いる反応であってもよい。
核酸鎖伸長反応の反応条件は、特に限定されるものではなく、使用するポリメラーゼの種類、第1型検出用プライマー、阻害用オリゴヌクレオチドのTm値等を考慮して、適宜決定することができる。
また、核酸鎖伸長反応に用いられるポリメラーゼ、ヌクレオチド、バッファー等の試薬は、特に限定されるものではなく、通常核酸鎖伸長反応を行う場合に用いられるものを、通常用いられる量で用いることができる。
本発明の核酸鎖伸長反応は、マルチプレックスPCRのように、さらに、前記多型部位の塩基配列が、前記第1の塩基配列とは異なる塩基配列である核酸と、当該多型部位を含む領域においてハイブリダイズする検出用プライマーの存在下で行ってもよい。この第1型検出用プライマー以外の検出用プライマーは、第2型核酸と多型部位を含む領域においてハイブリダイズする第2型検出用プライマーであることが好ましい。その他、多型部位の塩基配列が3種類以上ある多型の場合には、第2の塩基配列及び第1の塩基配列以外の塩基配列である核酸とハイブリダイズする検出用プライマーであってもよい。
なお、第2型検出用プライマーとしては、第1型検出用プライマーと同様、第2型核酸中の当該多型部位を含む部分領域とハイブリダイズし得るものであればよく、第2型核酸の塩基配列と完全に相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよく、1又は数塩基のミスマッチを有する塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであってもよい。さらに、第2型核酸とハイブリダイズする領域以外にも、5’側に付加的な塩基配列を有するものであってもよく、標識されたものであってもよい。付加的な塩基配列や標識をするための物質は、第1型検出用プライマーと同様のものが挙げられる。
本発明の核酸鎖伸長反応を、第2型検出用プライマーの存在下で行う場合には、第1型核酸と阻害用オリゴヌクレオチドとからなる会合体の熱力学的安定性が、第1型核酸と第1型検出用プライマーとからなる会合体よりも低く、かつ、第2型核酸と阻害用オリゴヌクレオチドとからなる会合体の熱力学的安定性が、第2型核酸と第2型検出用プライマーとからなる会合体よりも低いことが好ましい。阻害用オリゴヌクレオチドの会合体の熱力学的安定性が、いずれの検出用プライマーの会合体の熱力学的安定性よりも低くすることにより、阻害用オリゴヌクレオチドによる、各種検出用プライマーの核酸鎖伸長反応に対する影響を低減することができる。
本発明において用いられる第1型検出用プライマー、第2型検出用プライマー、及び阻害用オリゴヌクレオチドは、識別対象である多型部位及びその近傍の塩基配列に応じて、常法により設計することができる。例えば、公知のゲノム配列データやSNPデータと、汎用されているプライマー設計ツールを用いて、簡便に設計することができる。公知のゲノム配列データは、通常、国際的な塩基配列データベースであるNCBI(National center for Biotechnology Information)やDDBJ(DNA Data Bank of Japan)等において入手することができる。該プライマー設計ツールとして、例えば、Web上で利用可能なPrimer3(Rozen, S., H.J. Skaletsky、1996年、http: //www−genome.wi.mit.edu/genome_software/other/primer3. html)や、Visual OMP(DNA Software社製)等がある。
このようにして設計したプライマー等は、当該技術分野においてよく知られている方法のいずれを用いても合成することができる。例えば、オリゴ合成メーカーに合成をされ依頼してもよく、市販の合成機を用いて独自に合成してもよい。
次いで、この伸長工程において、第1型検出用プライマーが伸長されたか否かにより、前記被検核酸試料中に含まれている核酸の多型を識別する(識別工程)。すなわち、第1型検出用プライマーを起点とする核酸鎖伸長産物が検出された場合には、被検核酸試料中には、第1型核酸が含まれている、と判断することができる。
例えば、識別対象である多型が、野生型と変異型の2種類の多型を有するSNPであり、第1の塩基配列を変異型の塩基配列とし、第2の塩基配列を野生型の塩基配列とした場合に、第1型検出用プライマーの核酸鎖伸長産物が検出された場合には、被検核酸試料中の核酸には、変異型アレルが含まれており、当該被検核酸試料が回収された個体は、変異型アレルのホモ型又はヘテロ型であると識別することができる。一方、識別対象である多型が体細胞変異であり、第1の塩基配列を変異型とし、第2の塩基配列を正常型の塩基配列とした場合に、第1型検出用プライマーの核酸鎖伸長産物が検出された場合には、被検核酸試料中の核酸には変異型核酸が含まれており、当該被検核酸試料が回収された個体は、体細胞変異が起こっていると判断できる。
識別工程における核酸鎖伸長産物の検出方法は、特に限定されるものではなく、核酸鎖伸長産物の定量的測定に用いられる公知の方法の中から、適宜選択して行うことができる。例えば、塩基長の差異を利用して、電気泳動法やカラムクロマトグラフィー法により分離して検出してもよく、TOF−MS等の質量分析法により検出してもよい。
検出用プライマーとして、予め標識物質で標識されたものを用いた場合には、当該標識物質から発されるシグナルを指標として検出することができる。例えば、検出用プライマーが、蛍光物質により標識されたプライマーである場合には、核酸鎖伸長産物量と未反応のプライマー量の比率を、蛍光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy、以下、FCSという。)、蛍光強度分布解析法(Fluorescence Intensity Distributiion Analysis、以下、FIDAという。)、及び蛍光偏光解析法(FIDA−polarization、以下、FIDA−POという。)からなる群より選択される1以上を用いて測定することができる。そして、この核酸鎖伸長産物量と未反応のプライマー量の比率から、核酸鎖伸長産物を検出することができる。
さらに、本発明の多型の識別方法において用いられる第1型検出用プライマーと阻害用オリゴヌクレオチドとをキット化することにより、より簡便に本発明の多型の識別方法を行うことができる。なお、当該キットには、その他に、核酸鎖伸長反応に用いられる酵素、反応溶液を調製するためのバッファー、ヌクレオチド等の試薬を含めてもよい。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
阻害用オリゴヌクレオチド存在下、又は非存在下で、SSP−PCRを行うことにより、本発明の多型の識別方法の多型の識別精度を検証した。
具体的には、腫瘍細胞において高頻度に検出される多型であるEGFR(epidermal growth factor receptor)遺伝子のT790M変異の識別精度を調べた。この体細胞変異は、EGFRの790番目のトレオニンをコードするコドンACGの2番目の塩基CがTに変異し、メチオニンとなる変異である。図3に、EGFR遺伝子における790番目のトレオニンをコードするコドンの周囲の塩基配列を示す。図中、[C/T]が多型部位(T790M多型部位)であり、該多型部位がCである塩基配列を野生型の塩基配列(第2の塩基配列)とし、該多型部位がTである塩基配列を変異型の塩基配列(第1の塩基配列)とした。
<検出用プライマー及び阻害用オリゴヌクレオチドの作製>
多型検出部位をプライマーの3’末端の塩基とし、変異型核酸の図3に示すT790M多型部位を含む領域とハイブリダイズする変異型検出用プライマーを設計し作製した。当該変異型検出用プライマーの5’末端の塩基には、蛍光物質ATTO647N(ATTO−TEC GmbH社製)を結合させ、蛍光標識プライマーとした(シグマジェノシス社製、HPLCグレード)。
また、変異型検出用プライマーの多型検出部位(3’末端の塩基)をAからGとしたプライマーを、野生型検出用プライマーとして設計し作製した。なお、当該野生型検出用プライマーの5’末端の塩基には、蛍光物質TAMRAを結合させた(シグマジェノシス社製、HPLCグレード)。
一方、阻害用オリゴヌクレオチドを、野生型の塩基配列中のT790M多型部位を含む領域と相補的な塩基配列であって、変異型核酸(又は野生型核酸)とハイブリダイズする際に、変異型検出用プライマー(又は野生型検出用プライマー)の3’末端と2塩基重複するように設計し作製した。さらに、プライマーとして機能しないように、3’末端の塩基の水酸基をアミノ基で修飾した(シグマジェノシス社製、カートリッジ精製)。
図3中、実線で示した領域は、変異型検出用プライマー及び野生型検出用プライマーが、変異型核酸及び野生型核酸とハイブリダイズする領域を示している。また、図中、四角で囲まれた領域は、阻害用オリゴヌクレオチドが、変異型核酸及び野生型核酸とハイブリダイズする領域を示している。実線で示した領域の5’側と、四角で囲まれた領域の3’側は、T790M多型部位を含む2塩基が重複している。
Figure 2010246400
Figure 2010246400
表1に、変異型検出用プライマー、野生型検出用プライマー、及び阻害用オリゴヌクレオチドの塩基配列を示す。表中、「SSP−Primer T」は変異型検出用プライマーを、「SSP−Primer C」は野生型検出用プライマーを、「PCR Optimizer」は阻害用オリゴヌクレオチドを、それぞれ示す。
また、表2に、変異型検出用プライマー、野生型検出用プライマー、及び阻害用オリゴヌクレオチドの、変異型核酸及び野生型核酸とハイブリダイズし形成される会合体の熱力学的安定性をTm値で示した。なお、Tm値は、50 mM Na、2.5 mM MgCl、[検出用プライマー又は阻害用オリゴヌクレオチド]=100 nM、[変異型核酸又は野生型核酸]=1nMの条件で、シミュレーションソフトウェアVisualOMP(DNA Software社製)により計算した。
表2からも明らかであるように、阻害用オリゴヌクレオチドの変異型核酸及び野生型核酸との会合体のTm値は、後のSSP−PCRにおけるアニーリングステップの温度(60℃)よりも高く、かつ、伸長ステップの温度(72℃)よりも低くなるように設計した。このように、阻害用オリゴヌクレオチドが、アニーリングステップにおいて各鋳型核酸と確実に結合させ、かつ、伸長ステップにおいて各鋳型核酸から解離させることができるように設計することにより、目的の核酸鎖伸長を過度に抑制することなく、非特異的な核酸鎖伸長を効果的に抑制することが可能となる。
<標準被検核酸試料の調製>
本発明の多型の識別方法を用いた場合のT790M多型の識別精度を検証するため、変異型核酸と野生型核酸の含有割合が既知の標準挽被検核酸試料を調製した。
まず、変異型核酸と野生型核酸を、変異型核酸の含有割合(変異型核酸と野生型核酸の総量に対する変異型核酸量の割合)がそれぞれ、0%、1%、4%、50%、及び100%となるようにそれぞれ混合し、5種類の変異型核酸含有割合が既知の標準被検核酸試料系列を調製した。なお、標準被検核酸試料の調製に用いた変異型核酸及び野生型核酸は、表3に示す2種類のプライマー(1stPCR−Primer1及び1stPCR−Primer2、いずれもシグマジェノシス社製、脱塩グレード)を用いて、図3に示す塩基配列を有する核酸を鋳型としてPCR増幅し、得られた増幅産物の塩基配列を確認した後、プラスミドに導入したものを、それぞれ用いた。
Figure 2010246400
<健常人サンプル>
財団法人ヒューマンサイエンス振興財団より購入した50種のゲノムサンプルを、健常人サンプルとした。以下のPCRにおいては、各ゲノムサンプルは、20ng/μLとなるようにTE Buffer(10mM Tris−HCl、1mM EDTA)で希釈した溶液をゲノムサンプル溶液として用いた。
<1stPCR>
一般的な遺伝子検査においては、テンプレート量を十分量とするため、多型部位を含むゲノム断片を予め増幅し、得られた増幅産物を鋳型としてSSP−PCR等の多型を識別するための核酸鎖伸長反応を行う。
本実施例においても同様にテンプレート量を十分量とするため、調製した標準被検核酸試料又はゲノムサンプルをテンプレートとし、1stPCR−Primer1及び1stPCR−Primer2を用いてPCRを行い、変異型核酸及び野生型核酸を増幅させた。なお、同じプライマーを用いているため、該増幅処理によっては、各試料中の変異型核酸の含有割合に影響はない。
具体的には、10μLの2×AmpliTaq Gold Master Mix(ABI社製)に、1μLの標準被検核酸試料又はゲノムサンプル溶液をそれぞれ添加し、さらに、最終濃度が0.1μMとなるように1stPCR−Primer1と1stPCR−Primer2とをそれぞれ添加し、純水で最終容量が20μLとなるように調製したものを、反応溶液とした。該反応溶液を、95℃で10分間処理した後、95℃で30秒間、65℃で30秒間、72℃で30秒間を40サイクル行い、さらに72℃で10分間処理する工程からなる反応条件によりPCR増幅を行った。PCR反応後のPCR反応溶液を、増幅処理後の被検核酸試料(増幅後被検核酸試料)とした。
<2ndPCR(SSP−PCR)>
1stPCRにより増幅処理された増幅後被検核酸試料を鋳型とし、阻害用オリゴヌクレオチド存在下、又は非存在下で、SSP−PCRを行った。DNAポリメラーゼとして、鎖置換活性のないTitanium Taq(TaKaRa社製)を用いた。
具体的には、阻害用オリゴヌクレオチド存在下における反応は、2μLの10×Titanium Taq Buffer(TaKaRa社製)に、1μLの増幅後被検核酸試料をそれぞれ添加し、さらに、最終濃度がそれぞれ0.01μMとなるように変異型検出用プライマー、野生型検出用プライマー、及び阻害用オリゴヌクレオチドを添加し、さらに1.6μLのdNTP Blend(10mM、TaKaRa社製)及び0.1μLの50×Titanium Taq(TaKaRa社製)を加え、純水で最終容量が20μLとなるように調製したものを反応溶液とした。これらの反応溶液を、95℃で2分間処理した後、95℃で30秒間、60℃で30秒間、72℃で30秒間を40サイクル行い、さらに72℃で10分間処理する工程からなる反応条件によりSSP−PCRを行った。
一方、上記反応溶液において、阻害用オリゴヌクレオチドに代えて等量の純水を添加したものを、阻害用オリゴヌクレオチド非存在下における反応の反応溶液とした。これらの反応溶液を、95℃で2分間処理した後、95℃で30秒間、65℃で30秒間、72℃で30秒間を40サイクル行い、さらに72℃で10分間処理する工程からなる反応条件によりSSP−PCRを行った。つまり、阻害用オリゴヌクレオチド非存在下における反応では、アニーリング温度を、阻害用オリゴヌクレオチドを添加した場合よりも5℃高く設定した。
<プライマー消費率の測定>
2ndPCRで得られたPCR産物を、10mM Tris−HClで10倍に希釈し、蛍光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy、以下、FCSという。)により、2ndPCRによる変異型検出用プライマーと野生型検出用プライマーのそれぞれのプライマーの消費率(K2%)を測定した。
ここで、プライマー消費率は、下記の式により算出される値である。
プライマー消費率 =[核酸鎖伸長産物量]/[初期プライマー量]
=[核酸鎖伸長産物量]/([核酸鎖伸長産物量]+[未反応のプライマー量])
FCSの測定は、蛍光相関分光装置MF−20(Olympus社製)を用いて行った。なお、測定は、1試料につき15秒3回行い、平均値を測定結果とした。測定の結果得られた拡散時間の短い成分を未反応のプライマーとし、拡散時間の長い成分を核酸鎖伸長産物として、両者の比率を求めた後、該比率からプライマーの消費率(K2%)を算出した。
図4は、測定された変異型検出用プライマーの消費率(K2%)を、変異型核酸の含有割合ごとに示した図である。図4(A)は阻害用オリゴヌクレオチド存在下における反応の結果を、図4(B)は阻害用オリゴヌクレオチド非存在下における反応の結果を、それぞれ示す。図中、「Pn%」は、鋳型として用いた標準被検核酸試料中の変異型核酸の含有割合がn%であることを意味する。また、「Wt」は、ゲノムサンプル溶液を鋳型とした場合の結果(50種の平均値)を意味する。
また、図5は、FCS測定の結果を、変異型検出用プライマーの消費率(K2%)を縦軸、野生型検出用プライマーの消費率(K2%)を横軸として、各被核酸試料ごとに示した散布図である。図5(A)は阻害用オリゴヌクレオチド存在下における反応の結果を、図5(B)は阻害用オリゴヌクレオチド非存在下における反応の結果を、それぞれ示す。図中、「□」はネガティブコントロール(Negative、前記1stPCRで鋳型の代わりに純水を加えたもの)の結果であり、「▲」はdye(FCS測定で蛍光色素のみを添加した試料の)の結果であり、「◆」はゲノムサンプル溶液(Sample)の結果である。また、「×」、「*」、「●」、「+」及び「△」は、それぞれ、P0%、P1%、P4%、P50%、及び100%の結果を示す。
この結果、鋳型中の変異型核酸の含有割合が0%及び1%の場合(P0%、P1%)の場合には、変異型検出用プライマーのプライマー消費率は、阻害用オリゴヌクレオチド非存在下の場合よりも、阻害用オリゴヌクレオチド存在下の場合のほうが、顕著に低かった。これに対して、変異型核酸の含有割合が4%の場合(P4%)には、阻害用オリゴヌクレオチド存在下の場合のほうがやや低いものの、阻害用オリゴヌクレオチド非存在下の場合と比べて大きな差はなかった。
理想的には、鋳型中の変異型核酸の含有割合が0%の場合には、変異型検出用プライマーのプライマー消費率は0%となる。つまり、これらの結果から、核酸鎖伸長反応の反応溶液に、阻害用オリゴヌクレオチドを添加することにより、非特異的な核酸鎖伸長反応が効果的に抑制されることが確認された。
健常人サンプル(50種のゲノムサンプル溶液)においても、変異型検出用プライマーのプライマー消費率は、阻害用オリゴヌクレオチド非存在下の場合よりも、阻害用オリゴヌクレオチド存在下の場合のほうが、顕著に低かった。加えて、50サンプルの測定結果のバラツキ(標準偏差)は、阻害用オリゴヌクレオチド非存在下の場合は4%、阻害用オリゴヌクレオチド存在下の場合は1.52%となり、阻害用オリゴヌクレオチドを添加した場合のほうがバラツキが小さくなることが確認された。これは、阻害用オリゴヌクレオチドを添加することにより、非特異的な核酸鎖伸長反応が抑制されたためと推察される。
このように、阻害用オリゴヌクレオチドを添加することにより、健常人サンプルにおける非特異的核酸鎖伸長反応のシグナルの低下と、SSP−PCRにおけるアニーリング温度の低下が生じることから、阻害用オリゴヌクレオチドを用いる本発明の多型の識別方法は、従来法よりもロバスト性が高い。
[実施例2]
阻害用オリゴヌクレオチドを添加した反応系において、鎖置換活性を有するポリメラーゼを用いた場合と、鎖置換活性を有さないポリメラーゼを用いた場合との多型識別における精度を比較した。
実施例1において使用した変異型検出用プライマー、野生型検出用プライマー、及び阻害用オリゴヌクレオチドを用いて、実施例1<標準被検核酸試料の調製>において調製した標準被検核酸試料系列の各試料を被検核酸試料とし、EGFRのT790M多型の識別精度を検証した。
<1stPCR>
まず、10μLの2×AmpliTaq Gold Master Mix(ABI社製)に、1μLの標準被検核酸試料をそれぞれ添加し、さらに、最終濃度が0.1μMとなるように実施例1で用いた1stPCR−Primer1と1stPCR−Primer2とをそれぞれ添加し、純水で最終容量が20μLとなるように調製したものを、反応溶液とした。該反応溶液を、95℃で10分間処理した後、95℃で30秒間、65℃で30秒間、72℃で30秒間を40サイクル行い、さらに72℃で10分間処理する工程からなる反応条件によりPCR増幅を行った。PCR反応後のPCR反応溶液を、増幅処理後の被検核酸試料(増幅後被検核酸試料)とした。
<2ndPCR(SSP−PCR)>
1stPCRにより増幅処理された増幅後被検核酸試料を鋳型とし、阻害用オリゴヌクレオチド存在下、又は非存在下で、SSP−PCRを行った。なお、鎖置換活性を有するポリメラーゼとしてDeep Vent(exo) DNA polymerase(NEB社製)を、鎖置換活性を有さないポリメラーゼとして実施例1で用いたTitanium Taq(TaKaRa社製)を、それぞれ用いた。
鎖置換活性を有さないポリメラーゼを用いる反応の反応溶液は、実施例1と同様の組成とした。
一方、鎖置換活性を有するポリメラーゼを用いる反応は、10×Titanium Taq Bufferに代えて10×TermoPol Reaction Buffer(NEB社製)を、50×Titanium Taq(TaKaRa社製)に代えてDeep Vent(exo) DNA polymerase(NEB社製、2000U/mL)を用いた以外は、鎖置換活性を有さないポリメラーゼを用いる反応の反応溶液と同様の組成とした。
これらの反応溶液を、95℃で2分間処理した後、95℃で30秒間、66℃で30秒間、72℃で30秒間を40サイクル行い、さらに72℃で10分間処理する工程からなる反応条件によりSSP−PCRを行った。
<プライマー消費率の測定>
2ndPCRで得られたPCR産物を用いて、実施例1と同様にしてFCS測定を行い、2ndPCRによる変異型検出用プライマーと野生型検出用プライマーのそれぞれのプライマーの消費率(K2%)を測定した。
図6は、測定された変異型検出用プライマーの消費率(K2%)を、変異型核酸の含有割合ごとに示した図である。図中、「P0%」は鋳型として用いた標準被検核酸試料中の変異型核酸の含有割合が0%(野生型核酸のみを鋳型とした場合)の結果を、「P100%」は鋳型として用いた標準被検核酸試料中の変異型核酸の含有割合が100%(変異型核酸のみを鋳型とした場合)の結果を示している。図中、「鎖置換活性(−)阻害オリゴ(+)」は、鎖置換活性のないポリメラーゼを用い、かつ阻害用オリゴヌクレオチドを添加した場合の結果を、「鎖置換活性(−)阻害オリゴ(−)」は、鎖置換活性のないポリメラーゼを用い、かつ阻害用オリゴヌクレオチドを添加しなかった場合の結果を、「鎖置換活性(+)阻害オリゴ(+)」は、鎖置換活性のあるポリメラーゼを用い、かつ阻害用オリゴヌクレオチドを添加した場合の結果を、「鎖置換活性(+)阻害オリゴ(−)」は、鎖置換活性のあるポリメラーゼを用い、かつ阻害用オリゴヌクレオチドを添加しなかった場合の結果を、それぞれ示す。
この結果、野生型核酸のみを鋳型とした場合(P0%)においても、鎖置換活性を有するポリメラーゼ(Deep Vent(exo) DNA polymerase)を用いた場合には、阻害用オリゴヌクレオチドの添加の有無に関わらず、FCS測定により分子量の大きい分子のシグナルが検出され、変異型検出用プライマーの消費率が40〜50%であり、核酸鎖伸長反応産物が生じたことが確認された。これに対して、鎖置換活性のないポリメラーゼ(Titanium Taq)を用いた場合には、阻害用オリゴヌクレオチドが添加されなかった場合には、鎖置換活性を有するポリメラーゼを用いた場合とほぼ同様に変異型検出用プライマーの消費率が大きかったが、阻害用オリゴヌクレオチドを添加した場合には、変異型検出用プライマーの消費率は約10%と非常に小さかった。
一方、変異型核酸のみを鋳型とした場合(P100%)においては、鎖置換活性を有するポリメラーゼよりも鎖置換活性のないポリメラーゼを用いた場合のほうが変異型検出用プライマーの消費率が大きいことがわかった。また、阻害用オリゴヌクレオチドを添加した場合としなかった場合とに特段の違いは観察されなかった。
つまり、野生型核酸のみを鋳型とした場合(P0%)における非特異的な核酸鎖伸長反応が十分に抑制され、かつ多型の検出が可能であったのは、阻害用オリゴヌクレオチドを添加し、かつ鎖置換活性を有さないポリメラーゼを用いた場合(すなわち、本発明の多型の識別方法を用いた場合)のみであった。
本発明の多型の検出方法を用いることにより、体細胞変異等の非常に高い検出感度が要求される多型も良好に検出することができるため、SNP識別等の遺伝子検査や腫瘍関連の体細胞変異解析等の臨床検査の分野で、特に有用である。
1…第1型核酸、2…第1型検出用プライマー、3…阻害用オリゴヌクレオチド、4…第2型核酸

Claims (13)

  1. 多型部位を有する核酸の多型を識別する方法であって、
    被検核酸試料中の核酸を鋳型とし、第1型検出用プライマー及び鎖置換活性のないポリメラーゼを用いて、阻害用オリゴヌクレオチドの存在下で、核酸鎖伸長反応を行う伸長工程と、
    前記伸長工程において、前記第1型検出用プライマーが伸長されたか否かにより、前記被検核酸試料中に含まれている核酸の多型を識別する識別工程と、
    を有し、
    前記第1型検出用プライマーは、多型部位の塩基配列が第1の塩基配列である核酸と、当該多型部位を含む領域においてハイブリダイズするプライマーであり、
    前記阻害用オリゴヌクレオチドは、多型部位の塩基配列が第2の塩基配列である核酸の当該多型部位を含む領域の配列と、相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、
    多型部位の塩基配列が前記第1の塩基配列である核酸中の、前記第1型検出用プライマーとハイブリダイズする領域の5’側と、前記阻害用オリゴヌクレオチドとハイブリダイズする領域の3’側とが重複することを特徴とする多型の識別方法。
  2. 前記阻害用オリゴヌクレオチドの3’末端の塩基が、プライマーとして動作しないようにブロッキングされていることを特徴とする請求項1記載の多型の識別方法。
  3. 多型部位の塩基配列が前記第1の塩基配列である核酸中の、前記第1型検出用プライマーとハイブリダイズする領域の5’ 側と、前記阻害用オリゴヌクレオチドとハイブリダイズする領域の3’ 側とが重複する領域の長さが、5塩基以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の多型の識別方法。
  4. 多型部位の塩基配列が前記第1の塩基配列である核酸中の、前記第1型検出用プライマーとハイブリダイズする領域の5’側と、前記阻害用オリゴヌクレオチドとハイブリダイズする領域の3’側とが重複する領域の長さが、前記多型部位の長さの2倍以下の塩基長であることを特徴とする請求項1又は2記載の多型の識別方法。
  5. 多型部位の塩基配列が前記第1の塩基配列である核酸中の、前記第1型検出用プライマーとハイブリダイズする領域の5’ 側と、前記阻害用オリゴヌクレオチドとハイブリダイズする領域の3’ 側とが重複する領域の長さが、2塩基以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の多型の識別方法。
  6. 前記第1型検出用プライマーの、前記多型部位とハイブリダイズする多型検出部位が、3’末端にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の多型の識別方法。
  7. 前記核酸鎖伸長反応が、被検核酸試料中の核酸を一本鎖化する変性ステップ、一本鎖化された核酸と、前記第1型検出用プライマー又は前記阻害用オリゴヌクレオチドとをハイブリダイズさせるアニーリングステップ、前記第1型検出用プライマーを起点として核酸鎖を伸長させる伸長ステップとからなり、
    多型部位の塩基配列が前記第1の塩基配列である核酸と前記阻害用オリゴヌクレオチドとからなる会合体のTm値が、前記アニーリングステップの温度よりも高く、前記伸長ステップの温度よりも低いことを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の多型の識別方法。
  8. 多型部位の塩基配列が前記第1の塩基配列である核酸と前記阻害用オリゴヌクレオチドとからなる会合体の熱力学的安定性が、当該核酸と前記第1型検出用プライマーとからなる会合体よりも低いことを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の多型の識別方法。
  9. 前記核酸鎖伸長反応が、前記変性ステップ、前記アニーリングステップ、及び前記伸長ステップとからなるサイクルを、2回以上繰り返すことを特徴とする請求項7記載の多型の識別方法。
  10. 前記多型部位の塩基配列が、前記第1の塩基配列とは異なる塩基配列である核酸と、当該多型部位を含む領域においてハイブリダイズする検出用プライマーの存在下で、前記核酸鎖伸長反応を行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の多型の識別方法。
  11. 前記検出用プライマーが、前記多型部位の塩基配列が前記第2の塩基配列である核酸と、当該多型部位を含む領域においてハイブリダイズする第2型検出用プライマーであることを特徴とする請求項10記載の多型の識別方法。
  12. 多型部位の塩基配列が前記第1の塩基配列である核酸と前記阻害用オリゴヌクレオチドとからなる会合体の熱力学的安定性が、多型部位の塩基配列が前記第1の塩基配列である核酸と前記第1型検出用プライマーとからなる会合体よりも低く、かつ、多型部位の塩基配列が前記第2の塩基配列である核酸と前記阻害用オリゴヌクレオチドとからなる会合体の熱力学的安定性が、多型部位の塩基配列が前記第2の塩基配列である核酸と前記第2型検出用プライマーとからなる会合体よりも低いことを特徴とする請求項11記載の多型の識別方法。
  13. 多型部位を有する核酸の多型の識別に用いられるキットであって、第1型検出用プライマー及び阻害用オリゴヌクレオチドを含み、
    前記第1型検出用プライマーは、多型部位の塩基配列が第1の塩基配列である核酸と、当該多型部位を含む領域においてハイブリダイズするプライマーであり、
    前記阻害用オリゴヌクレオチドは、多型部位の塩基配列が第2の塩基配列である核酸の当該多型部位を含む領域の配列と、相補的な塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであり、
    多型部位の塩基配列が前記第1の塩基配列である核酸中の、前記第1型検出用プライマーとハイブリダイズする領域の5’側と、前記阻害用オリゴヌクレオチドとハイブリダイズする領域の3’側とが重複することを特徴とする多型識別用キット。
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