JP2010273442A - ロータ及びモータ - Google Patents

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Abstract

【課題】モータ振動の低減を図ることができるロータを提供する。
【解決手段】表面が露出されたマグネット13と、該マグネット13の他方の磁極として機能するロータコア12の突極14とからロータ10Aが構成され、その突極14の外側面14aにおいて、突極14内及びティース21a内の磁束の流れを良好とするスリット14bが設けられる。
【選択図】図2

Description

本発明は、コンシクエントポール型構造を採用したロータ、及びそのロータを備えるモータに関するものである。
モータに用いられるロータとしては、例えば特許文献1にて示されているように、ロータコアの周方向に一方の磁極のマグネットが表面を露出させて複数配置され(SPM構造)、該コアに一体形成された突極が各マグネット間に配置され、該突極を他方の磁極として機能させる所謂コンシクエントポール型構造のロータが知られている。
特開平9−327139号公報
ところで、突極部分においては、通過する磁束の流れがマグネット部分と異なるため、このことがモータの振動増大に繋がっていた。そこで、磁束の流れを考慮した突極部分の形状の適正化を図り、モータ振動に繋がるコギングトルクやトルクリップルの低減が検討されていた。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、モータ振動の低減を図ることができるロータ、及びそのロータを備えたモータを提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ロータコアの周方向に一方の磁極のマグネットが表面を露出させて複数配置されるとともに、前記ロータコアに一体形成された突極が各マグネット間に空隙を以て配置され、前記突極を他方の磁極として機能するように構成されたロータであって、前記突極の先端面、若しくは前記突極の内部にスリットが設けられていることをその要旨とする。
この発明では、表面が露出されたマグネットと、該マグネットの他方の磁極として機能するロータコアの突極とからロータが構成されており、その突極の先端面、若しくは突極の内部にスリットが設けられる。つまり、突極にスリットを設けることで、その突極内及び該突極と対向するステータでの磁束の流れが良好となり、マグネット側の磁束の流れに近似させることが可能となる。これにより、ロータの磁気的バランスが向上し、モータ振動の低減に寄与できる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のロータにおいて、前記スリットは、前記突極の先端面に設けられるものであり、前記突極の突出長さよりも小さく形成されていることをその要旨とする。
この発明では、スリットは、突極の先端面に設けられ、突極の突出長さよりも小さく形成される。つまり、スリットによる切欠き量が小さく済み、突極の剛性を確保できるため、モータ振動の一層の低減に寄与できる。また、スリットによる切欠き量が小さいため、突極へのスリットの後加工も可能である。また、スリット寸法を適正化することで、モータ振動の低減やモータトルクの向上といったモータ特性を調整することも可能である。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のロータにおいて、前記スリットは、前記突極の先端面に設けられるものであり、前記突極の突出長さと同等に形成されていることをその要旨とする。
この発明では、スリットは、突極の先端面に設けられ、突極の突出長さと同等に形成される。つまり、突極内での磁束の流れが径方向に沿った流れとなり、マグネット側の磁束の流れにより近似させることが可能となる。これにより、ロータの磁気的バランスがより確実に向上し、モータ振動の一層の低減に寄与できる。また、スリット寸法を適正化することで、モータ振動の低減やモータトルクの向上といったモータ特性を調整することも可能である。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のロータにおいて、前記ロータコアは、複数枚の鋼板が軸方向に積層されてなるものであり、前記スリットは、前記突極の内部に設けられ、そのスリット内にかしめ部材が嵌挿されて各鋼板が連結され前記ロータコアが構成されていることをその要旨とする。
この発明では、ロータコアは、複数枚の鋼板が軸方向に積層されてなり、スリットは、突極の内部に設けられ、そのスリット内にかしめ部材が嵌挿されて各鋼板が連結されロータコアが構成される。つまり、突極内等の磁束の流れを良好とするスリットにかしめ部材が嵌挿され、積層型とする各鋼板の連結がそのスリットを用いて行われるため、各鋼板を連結する連結手段を他の箇所に設ける必要がなく、ロータの軽量化等に寄与できる。
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のロータにおいて、前記スリットは、前記突極の先端面に設けられるものであり、ロータの軸線に対して傾斜するように連続して設けられていることをその要旨とする。
この発明では、スリットは、突極の先端面に設けられ、ロータの軸線に対して傾斜するように連続して設けられる。つまり、スリットは、突極内等の磁束の流れを良好とするとともに、突極内の磁束の流れが滑らかに変化してコギングトルク波形がなまるようになる所謂スキュー効果が得られ、これによりモータ振動の一層の低減に寄与できる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のロータを備えたモータである。
この発明では、上記請求項に記載のロータが備えられるため、低振動なモータとして提供できる。
本発明によれば、モータ振動の低減を図ることができるロータ、及びそのロータを備えたモータを提供することができる。
第1実施形態におけるモータの平面図である。 同形態におけるモータの部分拡大図である。 同形態における磁束の流れを説明するための説明図であり、(a)はスリット有りの状態を示す図、(b)はスリット無しの状態を示す図である。 同形態におけるWa/Wb比とトルク比の関係を示す特性図である。 同形態におけるWs/G比とトルクリップル比の関係を示す特性図である。 別例におけるモータの部分拡大図である。 別例におけるモータの部分拡大図である。 第2実施形態におけるモータの平面図である。 同形態におけるモータの部分拡大図である。 同形態における電気角とコギングトルクの関係を示す特性図である。 同形態におけるW1/W2比とコギングトルク比の関係を示す特性図である。 同形態におけるD1/W2比とコギングトルク比の関係を示す特性図である。 別例におけるモータの部分拡大図である。 第3実施形態におけるモータの平面図である。 同形態におけるモータの部分拡大図である。 同形態における磁束の流れを説明するための説明図であり、(a)はかしめ有りの状態を示す図、(b)はかしめ無しの状態である。 同形態におけるTy/Tm比とトルク比の関係を示す特性図である。 同形態におけるTy/Tm比とトルクリップル比の関係を示す特性図である。 第4実施形態におけるモータの平面図である。 同形態における傾斜スリットの説明のためのロータの部分展開図である。 同形態におけるA°/(360°/N)比とコギングトルク比との関係を示す特性図である。 別例における傾斜スリットの説明のためのロータの部分展開図である。 別例における傾斜スリットの説明のためのロータの部分展開図である。 別例における傾斜スリットの説明のためのロータの部分展開図である。
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2は、インナロータ型のブラシレスモータMを示す。本実施形態のモータMに用いるロータ10Aは、回転軸11の外周面に磁性金属材料よりなる略円環状のロータコア12が固着されており、該コア12の周方向にN極のマグネット13が7個配置されるとともに、コア12に一体形成された突極14が各マグネット13間に配置され、該突極14をS極として機能させる14磁極の所謂コンシクエントポール型にて構成されている。尚、ステータ20には、ステータコア21の12個のティース21aにコイル22が所定の巻回態様にて巻回された12磁極で構成されたものが用いられる。マグネット13及び突極14は、ロータ10Aの外周部に等角度間隔で交互に設けられている。
マグネット13は、突極14よりも周方向長さが若干大きく、平坦な内側面13aと湾曲形状をなす外側面13bとを有する略四角板状に形成されている。マグネット13は、その内側面13aがロータコア12の隣接する突極14間に設けた径方向と直交する平坦面の固着面12aに対して固着され、外側面13bがステータ20(ティース21a)に直接的に対向すべく露出して設けられている(SPM構造)。
突極14は、マグネット13よりも周方向長さが若干小さく、略扇状に径方向外側に突出する形状をなしている。突極14の周方向両端面は径方向に沿った平坦面にて形成されるとともに、マグネット13の周方向両端面は周方向中央部を通る径方向直線に対してそれぞれ平行な平坦面にて形成されている。つまり、突極14とマグネット13との間に逆三角形状の空隙を形成し、互いが周方向に非当接とされている。また、突極14は、マグネット13の外側面13bと同一円周上に位置する同じく湾曲形状の外側面14aを有し、マグネット13及び突極14の各外側面13b,14aとステータ20のティース21aの径方向内側端部との間に同等の空隙(エアギャップ長G)が設定されている。
また、突極14には、外側面14aから径方向内側(ロータコア12の中心方向)に向かって直線状に切り欠かれたスリット14bが形成されている。スリット14bは、突極14の周方向両端面間において等角度間隔に同形状のものが3つ設けられ、突極14の基端部まで延びる長さ(突極14の突出長さと同等)で、また所定のスリット幅(周方向幅)Wsに設定されている。スリット幅Wsについては後述する。また、スリット14bは、ロータ10A(ロータコア12)の軸方向両端部間に連続して設けられている。そして、このようなスリット14bが設けられた突極14部分では磁束の流れが良好となる。
図3(a)に示すように、突極14にスリット14bを設けたことにより(スリット有り)、突極14内での磁束の流れが各スリット14bの両側に分かれ(擬似的にティース数が増加)、この突極14内及びティース21a内においても磁束の流れが周方向に分散する良好な流れになる(マグネット13の磁束の流れと近似する)。そのため、突極14内及びティース21a内の磁束密度が平均化されて、突極14内及びティース21a内での磁気飽和が回避される。これに対し、図3(b)に示すように、突極14のスリット14bを省略すると(スリット無し)、突極14内及びティース21a内において主流の磁束の流れがその両側に大きく二分し、磁束が部分的に集中する態様となる。そのため、突極14内及びティース21a内での磁束密度の高低の差が拡大し、部分的に磁気飽和が生じることが懸念される。従って、本実施形態のように突極14にスリット14bを設ける意義は大きい。
因みに、1つの突極14におけるスリット幅Wsを合計したスリット合計幅Waとその1つの突極14の周方向長さWbとの比Wa/Wbを変化させるとモータトルクが変化するため、Wa/Wb比に対するトルク比を測定した。
図4では、Wa/Wbを変化させたときのモータMのトルク比が示され、Wa/Wb=0、即ちスリット14bを設けない場合のモータトルクを100%とすると、そのWa/Wbが0.2付近(約0.23)までは100%を超え、そこからWa/Wbが大きくなるに連れて100%より次第に小さくなる。同図4より、0<Wa/Wb≦0.4の範囲では十分なモータトルクが得られるため、この範囲内のいずれかに設定するのが望ましい。特に0<Wa/Wb≦0.23の範囲ではモータトルクが100%を超えるため、より望ましい。
また、突極14のスリット幅Wsとエアギャップ長G(ロータ10A及びステータ20間の空隙距離)との比Ws/Gを変化させるとトルクリップルが変化するため、Ws/G比に対するトルクリップル比を測定した。
図5では、Ws/Gを変化させたときのトルクリップル比が示され、Ws/G=0、即ちスリット14bを設けない場合のトルクリップルを100%とすると、そのWs/Gが大きくなるに連れてトルクリップルが次第に小さくなり、Ws/Gが約1.4でトルクリップルが約48%で最小値となる。そこからWs/Gが大きくなるに連れてトルクリップルも次第に大きくなり、Ws/Gが約2.2でトルクリップルが約88%まで大きくなる。同図5より、0.5≦Ws/G≦2.2の範囲内ではトルクリップルの低減効果が得られるため、この範囲内のいずれかに設定するのが望ましい。特にWs/Gを1.4付近に設定すればトルクリップルの低減効果が十分に得られるため、より望ましい。
これらを踏まえ本実施形態では、1つの突極14でのスリット合計幅Waと突極14の周方向長さWbとの比Wa/Wbが0<Wa/Wb≦0.4の範囲内のいずれかに設定され、また個々のスリット幅Wsとエアギャップ長Gとの比Ws/Gが0.5≦Ws/G≦2.2の範囲内のいずれかに設定されている。つまり、ロータ10Aの突極14にスリット14bを設け、そのスリット14bの形状の適正化を図ることで、良好なモータトルクを得ながら、モータMの振動低減が図られている。
尚、上記では、突極14のスリット14bは径方向外側に開口しているが、例えば図6に示すように、突極14の径方向外側端部においてスリット14bの両側の部位同士を幅狭の橋絡部14cで連結する構成としてもよい。このようにすれば、突極14の剛性が高くなりロータ10Aの剛性が高くなるため、モータMの振動騒音の低減に寄与できる。また、例えば図7に示すように、ティース21aの径方向内側端部寄りに、突極14のスリット14bと同数及び同角度ピッチのスリット21bを形成してもよい。このようにすれば、ティース21aのスリット21bを設けることで、突極14のスリット14bに加えて、突極14内及びティース21a内の磁束の流れが良好となる。尚、図7では、ティース21aのスリット21bを径方向内側に開口させていないが、径方向内側に開口していてもよい。また、ティース21aのスリット21bの数及び角度ピッチはこの限りでない。
次に、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)本実施形態のロータ10Aにおいて、図2のように突極14の外側面14a、若しくは図6及び図7の変形例のように突極14の内部にスリット14bが設けられている。つまり、突極14にスリット14bを設けることで、その突極14内及びティース21a内の磁束の流れが良好となり、マグネット13側の磁束の流れに近似させることができる。これにより、ロータ10Aの磁気的バランスを向上でき、モータ振動の低減を図ることができる。
(2)本実施形態では、スリット14bは、突極14の外側面14aから該突極14の突出長さと同等の長さにて形成されている。つまり、突極14内での磁束の流れが径方向に沿った流れとなり、マグネット13側の磁束の流れにより近似させることができる。これにより、ロータ10Aの磁気的バランスをより確実に向上でき、モータ振動の一層の低減に寄与できる。また、スリット14bの寸法を適正化することで、モータ振動の低減やモータトルクの向上といったモータ特性を調整することもできる。また、スリット14bが突極14の突出長さと同等に形成されることから、スリット14bによるロータコア12の軽量化、ひいてはロータ10Aの軽量化に寄与でき、ロータ10Aのイナーシャ低減も可能である。
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図面に従って説明する。
図8及び図9に示すように、本実施形態のモータMに用いるロータ10Bにおいても同様に、突極14の外側面14aに軸方向に連続する3つのスリット14dが等角度間隔に設けられている。各スリット14dは、スリット幅(周方向幅)W1及び所定のスリット深さ(径方向長さ)D1がそれぞれ所定値に設定されており、このスリット深さD1が突極14の突出長さ(径方向長さ)と比べて小さく設定されている。
図10では、突極14にスリット14dを設けた場合(スリット有り)と、スリット14dを設けない場合(スリット無し)とにおける電気角30°のコギングトルクの変化が示されている。尚、ロータ10Bの回転に伴うコギングトルクの変化は、この電気角30°での変化が繰り返される。同図10に示すように、スリット有り(本実施形態)では、前記第1実施形態でも述べたように、突極14内及びティース21a内での磁束の流れが周方向に分散する良好な流れになり、擬似的にティース数が増加するような状態となるため、スリット無しに比べてコギングトルクが小さく抑えられる。
また、突極14に設けたスリット14dのスリット幅W1と、隣接するティース21aの径方向内側端部間の距離、即ちティース間幅W2との比W1/W2を変化させるとコギングトルクが変化するため、W1/W2比に対するコギングトルク比を測定した。
図11では、W1/W2を変化させたときのコギングトルク比が示され、W1/W2=0、即ちスリット14dを設けない場合のコギングトルクを100%とすると、そのW1/W2が大きくなるに連れてコギングトルクが次第に小さくなり、W1/W2が0.5付近(約0.48)でコギングトルクが約35%で最小値となる。そこからW1/W2が大きくなるに連れてコギングトルクも次第に大きくなり、W1/W2が1.2でコギングトルクが約90%まで大きくなる。同図11より、0.2≦W1/W2≦0.9の範囲内ではコギングトルクの低減効果が得られるため、この範囲内のいずれかに設定するのが望ましい。特に0.4≦W1/W2≦0.6の範囲内ではコギングトルクの低減効果が十分に得られるため、より望ましい。
また、突極14のスリット深さD1とスリット幅W1との比D1/W1を変化させるとコギングトルクが変化するため、D1/W1比に対するコギングトルク比を測定した。
図12では、D1/W1を変化させたときのコギングトルク比が示され、D1/W1=0、即ちスリット14dを設けない場合のコギングトルクを100%とすると、そのD1/W1が大きくなるに連れてコギングトルクが次第に小さくなり、D1/W1が約0.25でコギングトルクが約43%まで小さくなる。そこからD1/W1が約0.5まで大きくなるとコギングトルクが約38%まで小さくなり、それ以降はD1/W1が大きくなっても略一定となる。同図12より、0.25≦D1/W1の範囲でコギングトルクの低減効果が得られるため、この範囲のいずれかに設定するのが望ましい。特に0.5の範囲内ではコギングトルクの低減効果がより得られるため、より望ましい。
これらを踏まえ本実施形態では、突極14のスリット幅W1とティース間幅W2との比W1/W2が0.2≦W1/W2≦0.9の範囲内のいずれかに設定され、また突極14のスリット深さD1とスリット幅W1との比D1/W1が0.25≦D1/W1の範囲のいずれかに設定されている。つまり、ロータ10Bの突極14にスリット14dを設け、そのスリット14dの形状の適正化を図ることで、モータMの振動低減が図られている。
尚、図13に示すように、ティース21aの径方向内側端面に開口するスリット21cを設けてもよい。スリット21cは周方向に2つ並んで設けられる。このようにすれば、前記第1実施形態と同様に、突極14内及びティース21a内の磁束の流れが良好となる。尚、ティース21aのスリット21cは径方向内側端面に開口しなくてもよく、またティース21aのスリット21cは突極14のスリット14dと同数及び同角度ピッチで設けてもよい。
次に、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)本実施形態のロータ10Bにおいて、図9のように突極14の外側面14aにスリット14dが設けられている。つまり、突極14にスリット14dを設けることで、本実施形態においても突極14内及びティース21a内の磁束の流れが良好となり、マグネット13側の磁束の流れに近似させることができる。これにより、ロータ10Bの磁気的バランスを向上でき、モータ振動の低減を図ることができる。
(2)本実施形態では、スリット14dは、突極14の外側面14aから該突極14の突出長さよりも小さく長さにて形成されている。つまり、スリット14dによる切欠き量が小さく済み、突極14の剛性を確保できるため、モータ振動の一層の低減に寄与できる。また、スリット14dによる切欠き量が小さいため、突極14へのスリット14dの後加工も可能である。また、スリット14dの寸法を適正化することで、モータ振動の低減やモータトルクの向上といったモータ特性を調整することもできる。
(第3実施形態)
以下、本発明を具体化した第3実施形態を図面に従って説明する。
図14及び図15に示すように、本実施形態のモータMに用いるロータ10Cでは、突極14部分の所定位置にかしめ部15が設けられている。詳述すると、本実施形態のロータ10Cに用いるロータコア12は、複数枚の鋼板を軸方向に積層してなる積層型コアよりなり、各鋼板の突極14部分に形成した長方形状のスリット15a(コア12の軸方向に連続)にかしめ部材15bを軸方向に嵌挿させる構成のかしめ部15にて軸方向の鋼板同士が連結されてなる。このようなかしめ部15は、ロータコア12の各突極14に1つずつ設けられ、各突極14の周方向中央位置に位置し、また突極14の外側面14aから若干径方向内側に位置している。また、かしめ部15(スリット15a)は軸方向から見て長方形状をなし、その長辺が径方向に沿うように設けられている。
これにより、図16(a)に示すように、突極14の所定位置にかしめ部15を設けたことにより(かしめ有り)、突極14内では磁束がかしめ部15の両側に分かれ該かしめ部15の長辺に沿って流れ、この突極14内及びティース21a内においても磁束の流れが周方向に分散する良好な流れになる(マグネット13の磁束の流れと近似する)。これに対し、図16(b)に示すように、突極14のかしめ部15を省略すると(かしめ無し)、突極14内での主流の磁束の流れが周方向一方側に偏り、磁束が部分的に集中してしまう。従って、突極14部分にかしめ部15を設けて磁束の流れの改善を図り、モータMの振動低減が図られている。
因みに、このようなかしめ部15を有するロータ10Cにおいて、マグネット13の厚さ(径方向長さ)、本実施形態では周方向中央部のマグネット厚さTmと、その径方向内側部分のロータコア12の厚さ(バックヨーク厚さTy)との比Ty/Tmを変化させるとモータトルクが変化するため、Ty/Tm比に対するトルク比を測定した。
図17では、Ty/Tmを変化させたときのモータMのトルク比が示され、Ty/Tm=1、即ちマグネット厚さTmとバックヨーク厚さTyとを同じとした場合のモータトルクを100%とすると、Ty/Tm=1より大きい範囲ではTy/Tmが大きくなってもモータトルクは略100%一定となる。Ty/Tm=1より小さい範囲では、Ty/Tmが0.4付近(約0.36)まではモータトルクが100%を越え、Ty/Tmが約0.5で最大値約105%となる。Ty/Tmが0.4付近(約0.36)から小さくなるとモータトルクが100%から次第に小さくなっていき、Ty/Tmが約0.2で約85%、Ty/Tmが約0.1で約70%となる。
また、バックヨーク厚さTyとマグネット厚さTmとの比Ty/Tmに対するトルクリップル比も測定した。
図18では、Ty/Tmを変化させたときのトルクリップル比が示され、Ty/Tm=1とした場合のトルクリップルを100%とすると、Ty/Tm=1より大きい範囲ではTy/Tmが約1.2でトルクリップルが約105%まで増加し、それ以降は略一定となる。Ty/Tm=1より小さい範囲では、Ty/Tmが約0.5で最小値約95%となる。Ty/Tmが約0.5から小さくなるとトルクリップルが次第に大きくなり、Ty/Tmが約0.2で約120%、Ty/Tmが約0.1で約145%となる。
これらを踏まえ本実施形態では、バックヨーク厚さTyとマグネット厚さTmとの比Ty/Tmが0.4≦Ty/Tm≦1.2の範囲内のいずれかに設定されている。これにより、突極14部分にかしめ部15を設けて磁束の流れを良好としモータMの振動低減を図り、またバックヨーク厚さTyとマグネット厚さTmとの比を適正化して良好なモータトルク及びトルクリップルが得られる。特に0.4≦Ty/Tm≦1の範囲内に設定すれば、モータトルクが大きく、トルクリップルも低減される、より望ましい範囲といえる。
尚、上記では、積層型のロータコア12の連結にかしめ部材15bを嵌挿する手法を用いたが、その他の連結手法として例えば、ロータコア12を構成する各鋼板を軸方向に凹凸嵌合させて各鋼板を軸方向に連結させる手法を用いてもよい。このようにしても、凹凸嵌合(かしめ)による連結部分がスリット15aと同様に機能し、突極14部分の磁束の流れを改善できる。
次に、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)本実施形態のロータ10Cにおいて、図15のように突極14の内部にスリット15a(かしめ部15)が設けられている。つまり、突極14にスリット15aを設けることで、本実施形態においても突極14内及びティース21a内の磁束の流れが良好となり、マグネット13側の磁束の流れに近似させることができる。これにより、ロータ10Cの磁気的バランスを向上でき、モータ振動の低減を図ることができる。
(2)本実施形態では、ロータコア12が複数枚の鋼板が軸方向に積層される積層型コアであり、スリット15aは、突極14の内部に設けられそのスリット15a内にかしめ部材15bが嵌挿されて各鋼板が連結されロータコア12が構成されている。つまり、突極14内等の磁束の流れを良好とするスリット15aにかしめ部材15bが嵌挿され、積層型とする各鋼板の連結がそのスリット15aを用いて行われるため、各鋼板を連結する連結手段を他の箇所に設ける必要がなく、ロータ10Cの軽量化等に寄与できる。
(3)本実施形態では、ロータコア12のバックヨーク厚さTyの適正化がなされることで該コア12の無用な大型化が防止され、ロータコア12の軽量化、ひいてはロータ10Cの軽量化に寄与でき、ロータ10Cのイナーシャ低減も可能である。
(第4実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図面に従って説明する。
図19及び図20に示すように、本実施形態のモータMに用いるロータ10Dでは、各突極14の外側面14aに径方向外側から見てロータ10Dの軸線L1に対して傾斜する1つのスリット14eが設けられている。つまり、スリット14eを設けたことにより、上記実施形態と同様に、突極14内及びティース21a内においても磁束の流れが周方向に分散する良好な流れになるのに加えて、突極14内の磁束の流れが滑らかに変化してコギングトルク波形がなまるようになる所謂スキュー効果が得られるようになり、これによりモータMの振動低減が図られている。
因みに、スリット14eの傾斜角度A°(径方向から見た軸線L1とのなす角)を変化させるとコギングトルクが変化するため、それを測定した。この場合、スリット14eの傾斜角度A°と、ステータ20におけるティース21aの数(スロット数)及びロータ10Dの磁極数(マグネット13と突極14との合計)の最小公倍数Nを用いた比A°/(360°/N)を変化させてコギングトルクを測定した。
図21では、A°/(360°/N)を変化させたときのコギングトルク比が示され、A°/(360°/N)=0、即ちスリット14eを傾斜させない場合のコギングトルクを100%とすると、A°/(360°/N)が約0.5まではコギングトルクが減少し、その約0.5で最小値約90%となる。そこからはA°/(360°/N)が大きくなるに連れてコギングトルクが次第に増加し、約1.0で約92%、そこから増加度合いも若干大きくなって約1.9で約98%、そして約2.0において約100%となる。同図21より、0<A°/(360°/N)≦2の範囲内ではコギングトルクの低減効果が得られるため、この範囲内のいずれかに設定するのが望ましい。特に0<A°/(360°/N)を0.5付近に設定すればコギングトルクの低減効果が十分に得られるため、より望ましい。本実施形態ではティース21aの数は「12」、ロータ10Dの磁極数は「14」であるため(その最小公倍数N=84)、コギングトルクを最も低減できるA°/(360°/N)=0.5となるスリット14eの傾斜角度A°は、約2.1°となる。
尚、上記では、各突極14の外側面14aに設けるスリット14eの傾斜角度A°を全て同じとしたが、図22に示すように、スリットの傾斜角度は各突極14毎に設定してもよく、例えば1つ置きに前記スリット14eと、傾斜角度の異ならせたスリット14fとを混在させてもよい。これにより、各突極14で発生したコギングトルクの波形の相殺関係を得ることができ、コギングトルクの一層の低減に寄与できる。
また、スリット14e,14fのように傾斜方向を一方に揃える態様以外に、図23に示すように、各突極14に互いに傾斜方向の異なるスリット14g,14hを例えば1つ置きに設けてもよい。これにより、傾斜方向の異なるスリット14g,14h同士でコギングトルクの波形の相殺関係を得ることができ、コギングトルクの一層の低減に寄与できる。また、軸方向の途中でスリットの傾斜方向を変えてもよい。
また、スリット14e,14fのようにロータコア12の軸方向両端部まで連続して設けたが、同図23に示すスリット14g,14hのように、例えばロータコア12の軸方向両端部まで延設せず、軸方向の一部に形成する態様としてもよい。
また、スリット14e,14f,14g,14hのように、1つの突極14に1つのスリットを設けたが、図24に示すように、1つの突極14に例えば2つの傾斜のスリット14iを設けてもよい。また、スリットは2以上の複数設けてもよい。
次に、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)本実施形態のロータ10Dにおいて、図19のように突極14の外側面14aにスリット14eが設けられている(変形例ではスリット14f〜14h)。つまり、突極14にスリット14eを設けることで、本実施形態においても突極14内及びティース21a内の磁束の流れが良好となり、マグネット13側の磁束の流れに近似させることができる。これにより、ロータ10Dの磁気的バランスを向上でき、モータ振動の低減を図ることができる。
(2)本実施形態では、スリット14eは、突極14の外側面14aにおいてロータ10Dの軸線L1に対して傾斜するように連続して設けられている。つまり、スリット14eは、突極14内等の磁束の流れを良好とするとともに、突極14内の磁束の流れが滑らかに変化してコギングトルク波形がなまるようになる所謂スキュー効果が得られ、これによりモータ振動の一層の低減に寄与できる。
尚、上記各実施形態は、更に以下のように変更することもできる。
・上記各実施形態についての数値範囲は、状況等に応じて適宜変更してもよい。
・上記各実施形態では、7個の突極14と7個のマグネット13とで構成した14磁極のロータ10A〜10Dと、12個のティース21a(12磁極)を有するステータ20とで構成されたモータMに適用したが、各磁極数はこれに限らず適宜変更してもよい。
・上記各実施形態では、インナロータ型のモータに用いられるロータ10A〜10Dに適用したが、アウタロータ型のモータのロータに適用してもよい。
10A,10B,10C,10D…ロータ、12…ロータコア、13…マグネット、14…突極、14a…外側面(先端面)、14b,14d,14e,14f,14g,14h,14i,15a…スリット、15b…かしめ部材、L1…軸線。

Claims (6)

  1. ロータコアの周方向に一方の磁極のマグネットが表面を露出させて複数配置されるとともに、前記ロータコアに一体形成された突極が各マグネット間に空隙を以て配置され、前記突極を他方の磁極として機能するように構成されたロータであって、
    前記突極の先端面、若しくは前記突極の内部にスリットが設けられていることを特徴とするロータ。
  2. 請求項1に記載のロータにおいて、
    前記スリットは、前記突極の先端面に設けられるものであり、前記突極の突出長さよりも小さく形成されていることを特徴とするロータ。
  3. 請求項1に記載のロータにおいて、
    前記スリットは、前記突極の先端面に設けられるものであり、前記突極の突出長さと同等に形成されていることを特徴とするロータ。
  4. 請求項1に記載のロータにおいて、
    前記ロータコアは、複数枚の鋼板が軸方向に積層されてなるものであり、
    前記スリットは、前記突極の内部に設けられ、そのスリット内にかしめ部材が嵌挿されて各鋼板が連結され前記ロータコアが構成されていることを特徴とするロータ。
  5. 請求項1に記載のロータにおいて、
    前記スリットは、前記突極の先端面に設けられるものであり、ロータの軸線に対して傾斜するように連続して設けられていることを特徴とするロータ。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のロータを備えたことを特徴とするモータ。
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