JP2010270378A - 製鋼スラグからのリン回収方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】製鋼スラグからのリン回収において、鉱酸及び中和剤の使用量を減らすことを目的とする。
【解決手段】本発明の製鋼スラグからのリン回収方法は、製鋼スラグを、二酸化炭素を溶解させた水で洗浄し、製鋼スラグ中のカルシウムを除去する洗浄工程と、洗浄工程後の製鋼スラグから鉱酸を用いてリンを抽出する酸抽出工程と、酸抽出工程で得られた酸抽出液を中和してリン酸塩を回収する回収工程とを有する。洗浄工程後の洗浄水(炭酸水素カルシウムを含有する水溶液)を用いて、酸抽出工程の酸抽出液を中和することも可能である。
【選択図】図1

Description

本発明は、製鉄所等で発生する溶銑予備処理スラグ、転炉スラグ等の製鋼スラグに含まれるリンを効率よく回収する方法に関する。
高炉で製造された溶銑やスクラップから、靱性及び 加工性のある鋼にするのが製鋼工程であり、製鋼炉には転炉、電気炉がある。製銑工程では、鉄鉱石にコークスや造滓剤を加えて高炉で加熱し、銑鉄を生産する。銑鉄は、溶銑予備処理として造滓剤を加えて加熱され、脱リン及び脱硫された後、さらに造滓剤を加えて転炉で加熱され、粗鋼へと変化する。
溶銑予備処理及び転炉からは、脱リン・脱硫スラグ及び転炉スラグが生成されるが、これらは製鋼スラグと呼ばれる。一般的には、粗鋼1t当たり約110kgの製鋼スラグが生成するといわれている。
製鋼スラグは、粗鋼の生産において大量に発生するため、その有効利用に注目されている。例えば、製鋼スラグを冷却した後に、磁力により磁着物と非磁着物とに分離して回収し、次いで、該非磁着物に還元剤を混合し、混合した後に加熱処理して、非磁着物に含有されるリン酸化物を還元して気化除去し、リン酸化物を気化除去した後の非磁着物及び前記磁着物を、製銑工程又は製鋼工程にリサイクルする方法が、特許文献1に開示されている。
また、低リン転炉スラグを脱リン炉において造滓剤として再利用するに当り、ホタル石の使用量および遺失量の減少を図るために、前記転炉から排滓される転炉スラグを滓鍋で受滓する際、予め前記滓鍋中に少なくともホタル石等の副材を装入した状態で前記転炉スラグを受滓し、前記副材を転炉スラグ中に溶融・混合した後、脱リン炉又は取鍋における脱リン処理に供することが、特許文献2に開示されている。
また、溶融鉄の精錬に再利用するに際し、復リンが生じない転炉スラグの利用方法として、転炉スラグのリン濃度を溶銑や溶鋼のリン濃度などから予め推定し、該推定値に応じて転炉スラグを分別回収し、溶鋼のリン濃度に適合するリン濃度の分別回収物を、造滓剤として選択使用する転炉滓の利用方法が、特許文献3に開示されている。
製鋼スラグから回収されるリンを肥料として有効利用することにも注目されている。例えば、鶏糞焼却灰に対し、塩基性カリウム化合物粉末又は高炉水砕スラグ粉末より選ばれる1種以上を混合し、これに鉱酸を添加し、反応させて得られる新規リン酸カリ複合肥料であって、前記鶏糞焼却灰に含まれる難溶性リン酸塩が実質的に有効成分に変換されているとともにカリウム及び/又はケイ酸を多く含むことを特徴とする新規リン酸カリ複合肥料が、特許文献4に開示されている。
一方、製鋼スラグに含まれる遊離酸化カルシウム、水酸化カルシウム等の水和成分が水と接触すると、体積が約2倍になる。この現象に起因してスラグが膨潤化したり、遊離酸化カルシウムの溶解によるpH上昇が起こる。これを防止しうるために、炭酸ガスを用いて炭酸化処理する技術(特許文献5等)が知られている。
特開2007−204782号公報 特開平5−156338号公報 特開2003−155510号公報 特開2008−105898号公報 特許第3828895号公報
製鋼スラグから硫酸や硝酸等の鉱酸を用いてリンを抽出する場合、製鋼スラグ中にCa成分が含まれるため、リンを抽出するために必要な鉱酸量が膨大となってしまう。また、酸抽出したリンをリン酸塩として析出するために必要な炭酸カルシウム等の中和剤も大量に必要となる。
さらに、鉱酸及び中和剤の使用量が大量となるため、廃酸等の処理設備も大規模となり、処理コストが高くなるという問題もあった。
本発明は、製鋼スラグからのリン回収において、酸抽出における鉱酸及び中和剤の使用量を減らすことを目的とする。
本発明者は、鉱酸の使用量を減らすための技術について検討を続けたところ、製鋼スラグからのリンの酸抽出に先立ち、二酸化炭素を吹き込んだ水や炭酸水を洗浄水として使用して事前に製鋼スラグを洗浄することにより、製鋼スラグに含まれる酸化カルシウム等のCa成分を効率よく溶出させうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
具体的に、本発明は、
製鋼スラグを、二酸化炭素を溶解させた水で洗浄し、製鋼スラグ中のカルシウムを除去する洗浄工程と、
洗浄工程後の製鋼スラグから鉱酸を用いてリンを抽出する酸抽出工程と、
酸抽出工程で得られた酸抽出液を中和してリン酸塩を回収する回収工程と、
を有する製鋼スラグからのリン回収方法に関する。
洗浄工程において製鋼スラグを、二酸化炭素を溶解させた水又は炭酸水で洗浄することにより、製鋼スラグに含まれるCa成分を炭酸水素カルシウム又は炭酸カルシウムとして除去することが可能であり、工業用水で洗浄する場合と比較して、Ca成分の除去率は約4倍となる。その結果、酸抽出工程において製鋼スラグ中に含まれるCa成分と反応する鉱酸量が減少する。さらに、酸抽出液の中和に必要な中和剤量も減少する。
製鋼スラグを粉砕処理した後、磁気分離や比重分離することによって鉄分を多く含む鉄濃縮相と、リン成分を多く含むリン濃縮相とに分離することが可能である。本発明では、製鋼スラグのうち、リン濃縮相を対象とすることが好ましい。
ここで、「二酸化炭素を溶解させた水」とは、上水道水、工業用水、河川水等に二酸化炭素を吹き込んだものをいう。製鋼スラグ洗浄中も連続して洗浄水に二酸化炭素を吹き込むことが好ましい。二酸化炭素を連続して吹き込で洗浄水中の二酸化炭素を飽和状態に維持することで、スラグから溶出したCa成分が二酸化炭素と効率よく反応し、Ca成分を炭酸水素カルシウム又は炭酸カルシウムとして除去することが可能となるためである。
前記洗浄工程後の洗浄水(炭酸水素カルシウムを含有する水溶液)を用いて、前記酸抽出工程の酸抽出液を中和することが好ましい。
洗浄後の製鋼スラグは、固液分離操作によって洗浄水とCa成分が減少した製鋼スラグとに分離される。酸抽出工程では、Ca成分が減少した製鋼スラグに硫酸や硝酸等の鉱酸を作用させ、リン成分をリン酸イオンとして抽出する。このとき、リン酸イオンは鉱酸に溶解した状態であるため、酸抽出液をアルカリ剤によって中和し、リン酸塩として析出させなければならない。
ここで、洗浄工程後の洗浄水には、炭酸水素カルシウム(及び炭酸カルシウム)が含まれているので、これをそのままアルカリ剤として酸抽出液の中和に利用すれば、水酸化ナトリウム等の中和剤の使用量を大幅に削減することが可能となる。
洗浄工程後の洗浄水を50〜60℃に加熱することにより、ほぼ100%が炭酸カルシウムとして析出する。この析出した炭酸カルシウムを酸抽出液の中和に使用してもよい。また、洗浄工程後の洗浄水を加熱することによって洗浄水中のCa成分を炭酸カルシウムの固体として取り出すことができるので、スラグ中のCa成分を他用途に用いることも可能となる。さらに、Ca成分分離後の洗浄水はそのまま再利用することができるので、系外から導入する洗浄水の量を低減することも可能となる。
なお、余分なエネルギーをかけずに中和剤の使用量を削減する点から、炭酸水素カルシウム(及び炭酸カルシウム)を含む水溶液(洗浄工程後の洗浄水)をそのまま利用することが好ましい。
前記酸抽出工程において、前記酸抽出液に水を添加することが好ましい。
洗浄後のリン濃縮相に鉱酸を添加することによって、リン濃縮相中のリン成分がリン酸イオンとなって鉱酸中に溶出するものの、鉱酸に対するリン酸イオンの溶解量が飽和となった場合、それ以上抽出することができない。そこで、さらに水を添加することによって、飽和状態で鉱酸に溶解しなかったリン酸イオンが水に溶解し、回収することが可能となる。
前記製鋼スラグは、鉄濃縮相とリン濃縮相とに分離した後のリン濃縮相のスラグであることが好ましい。
製鋼スラグは、磁気分離等の手段を用いて鉄濃縮相とリン濃縮相とに分離可能であるが、本発明のリン回収方法は、リン濃度がより高いリン濃縮相のスラグに適用することが、リン回収効率の点からは好ましいためである。
本発明の製鋼スラグからのリン回収方法は、製鋼スラグから酸抽出によってリンを回収する従来技術と比較して、鉱酸の使用量が少なくてすむ。また、洗浄工程から得られる炭酸カルシウムを中和剤として利用することにより、別途中和剤を用意する必要性も少ない。
本発明の製鋼スラグからのリン回収方法におけるプロセスフロー図である。 洗浄工程における洗浄回数とCa除去率とを示すグラフである。 酸抽出試験におけるリン抽出率を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について、適宜図面を参酌しながら説明する。なお、本発明は以下の記載に限定されない。
図1は、本発明の製鋼スラグからのリン回収方法におけるプロセスフロー図の一例である。製鋼スラグは、まず、ジョークラッシャーやボールミル等によって平均粒子径が10〜100μm程度の大きさに粉砕される。粉砕された製鋼スラグは、磁気分離、比重分離等の公知手段を用いて鉄分の多い破砕スラグ(鉄濃縮相)と、リン成分の多い破砕スラグ(リン濃縮相)とに分離される。
製鋼スラグのリン含有量は3〜5重量%程度であるが、リン濃縮相のリン含有量は5重量%以上となる。
次に、洗浄工程として、リン濃縮相を、二酸化炭素を溶解させた水で洗浄する。このとき、洗浄中も二酸化炭素を水に吹き込み、洗浄水が二酸化炭素飽和状態となるように二酸化炭素を過剰に供給することが好ましい。二酸化炭素を含んだ水によってリン濃縮相を洗浄することにより、リン濃縮相中のCa成分が主に炭酸水素カルシウムとして除去される。
なお、二酸化炭素を含まない水(工業用水等)を洗浄水として使用した場合には、洗浄回数10回の場合でも10%程度しかCa成分を除去できないが、本発明の酸抽出工程では、リン濃縮相に含まれるCa成分は、5回の洗浄操作で40%程度が除去される。すなわち、通常の洗浄処理と比較して、約4倍もCa成分の除去効果が高い。
リン濃縮相と洗浄水とを固液分離し、洗浄後のリン濃縮相は、酸抽出工程へと移行する。硫酸等の鉱酸にリン濃縮相を浸漬し、撹拌する。すると、リン濃縮相に含まれるリン成分がリン酸イオンとして鉱酸中に抽出される。
なお、硫酸等の鉱酸は、1.0N以上とすることが好ましく、リン濃縮相(スラグ)重量と鉱酸との固液比(重量比)は、1:30以上とすることが好ましく、1:45以上とすることがより好ましい。1.0N以上の鉱酸を使用し、固液比を1:30〜1:60とした場合のリン成分の抽出効率は、45〜80%程度である。
ただし、スラグと鉱酸とを反応させた後、さらに水を添加する場合には、スラグと最初に反応させる鉱酸は1.0N以上の濃度とすることが好ましく、水添加後の見かけの鉱酸の濃度は0.4N以上となるように水を添加することが好ましい。ここで、見かけの鉱酸の濃度とは、スラグと反応前の鉱酸に水を添加したと仮定した場合の濃度をいう。
鉱酸を用いてリン成分を抽出する際に、単に所定濃度、所定量の鉱酸を用いて抽出してもよいが、予め所定濃度の鉱酸を用いて抽出を行い、その後、そこに水を添加することがより好ましい。リン濃縮相と接触させる鉱酸の濃度が低い場合には、効率よくリン成分を抽出することができないため、非常に大量の鉱酸が必要となる。
これに対して、所定濃度の鉱酸を用いると、製鋼スラグからリン成分を効率よく抽出できる。その一方で、鉱酸の濃度が高い場合、スラグ中からリン成分の抽出は行われるものの、鉱酸に対するリン酸イオンの溶解量が飽和し、リン成分の回収率は低くなるおそれがある。そこで、鉱酸を添加した後、さらに水を加えることによって、飽和量以上となって鉱酸に溶解しきれなかったリン酸イオンを、濃度が低くなった鉱酸水溶液中に溶解させることができるため、所定濃度の鉱酸のみを用いてリン成分を抽出する場合と比較すると、より効率良く抽出を行うことが可能となる。
また、製鋼スラグからリン成分の抽出自体は高濃度の酸で行うため、酸の量は少なくても十分に抽出を行うことができ、抽出されたリン成分をリン酸イオンとして溶解させるために、鉱酸に水を添加するだけであるため、抽出に利用する全体としての鉱酸量を低減することができる。
なお、鉱酸濃度は、上述したとおり、1.0N以上とすることが好ましいが、後で鉱酸に水を添加してリン成分を回収する場合には、水添加後の見かけの鉱酸の濃度が0.4N以上となるように水を添加することが好ましい。
さらに、本発明では、酸抽出工程前にCa成分を従来技術よりも除去しているため、リン濃縮相に含まれる酸化カルシウム、水酸化カルシウム等によって消費される鉱酸量が少ない。
酸処理されたスラグを固液分離し、固形分はさらに洗浄して鉱酸を除去し、乾燥させた後、造滓剤としてリサイクルされる。一方、酸抽出液は、回収工程に付され、水酸化ナトリウム等のアルカリ成分を用いて中和する。中和によってリン酸塩が析出するので、固液分離によってリン酸塩を回収し、脱水及び乾燥させた後、リン酸肥料として利用される。液相の廃液は、洗浄工程における洗浄水として再利用することも可能である。
洗浄工程後に固液分離された洗浄水には、リン濃縮相に含まれていたCa成分の約40%が炭酸水素カルシウム又は炭酸カルシウムとして溶出されている。この洗浄液をそのまま酸抽出液の中和に利用することにより、水酸化ナトリウム等のアルカリ(中和剤)を使用する必要がなくなり、その分コストが削減できる。
なお、洗浄液を50〜60℃程度に加熱することにより、炭酸水素カルシウムがすべて炭酸カルシウムへと変化して沈殿する。これを固液分離して乾燥させることにより、洗浄水中に溶出されたCa成分を、ほぼ100%の収率で炭酸カルシウムとして回収することが可能となる。こうして得られた炭酸カルシウムを、別用途に利用したり、酸抽出液の中和に利用するようにしてもよい。炭酸カルシウム回収後の洗浄水は、そのまま洗浄水として再利用することができる。
1.二酸化炭素飽和水による洗浄試験
0.1mm程度に粉砕された製鋼スラグ(リン濃縮相)10gをビーカーに採取した。このビーカーに精製水500mLを加え、スターラーによって製鋼スラグを分散させた。次に、ビーカー内の精製水にガスボンベから二酸化炭素を連続して吹き込んだ。
15分間二酸化炭素を吹き込みながら撹拌した後、ビーカー内容物を吸引ろ過し、ろ液を洗浄液(1)とした。残渣を再度ビーカーに移し、精製水500mLを加え、スターラーで撹拌しながら15分間、二酸化炭素を精製水に吹き込んだ。ビーカー内容物を再び吸引ろ過し、ろ液を洗浄液(2)とした。同様の操作を繰り返し、合計5回の洗浄操作を行った。
スラグ中のCa濃度は、予め蛍光X線分析計を利用してCaO濃度換算量を測定し、Ca量に換算することによって測定した。また、洗浄操作後の洗浄水中に含まれるCa量をフレーム原子吸法によって測定したCa濃度から算出した。これらの測定値から、洗浄操作毎の製鋼スラグからのCa除去率を算出した。その結果を、図2に示す。洗浄回数が増す毎にCa除去率は低くなるが、5回合計すると約40%に達した。
これに対して、二酸化炭素を吹き込まずに精製水のみで10回の洗浄を行った場合、Ca除去率は約10%であった。
なお、洗浄回数をさらに増やすことにより、Ca除去率を向上させることも可能であるが、洗浄水量が増大するために好ましくない。このため、バッチ式で洗浄を行う場合、洗浄回数は3回以上5回以下とし、1回の洗浄に利用する洗浄水は、十分にカルシウムを除去し、かつ、洗浄水量を低減する観点から、製鋼スラグの重量の10倍以上100倍以下とすることが好ましい。
一方、連続式で洗浄を行う場合、製鋼スラグを設置した反応槽内に二酸化炭素を吹き込み撹拌しつつ、連続して洗浄水を供給し、その一部を反応槽外に取り出す構成としてもよい。この場合、供給する洗浄水に予め二酸化炭素を吹き込んで炭酸水としてもよい。連続式の場合、利用する洗浄水は製鋼スラグの重量の30倍以上500倍以下とすることが好ましい。
2.酸抽出試験1
上記洗浄操作を5回行った製鋼スラグ(リン濃縮相)10gをビーカーに採取し、1Nの硫酸を180mL添加し、数分間撹拌しながら反応させた後、固液比が1:30となるように水を添加してさらに数分間撹拌しながら反応させた。反応終了後、ビーカー内容物を吸引ろ過し、ろ液を酸抽出液とした。ペルオキソ二硫酸カリウム分解法により酸抽出液中のリン濃度を測定しそこから算出したリン量と、予め蛍光X線分析計を用いて測定したP2O5換算量から算出したスラグ中のリン量とを比較することによって、製鋼スラグからのリン抽出率を算出した(実施例1)。
同様にして、1Nの硫酸を240mL添加して反応させた後、固液比が1:30になるように水を添加して反応させたものについても、スラグからのリン抽出率を算出した(実施例2)。
さらに、未洗浄の製鋼スラグを用いること以外、すべて実施例1及び実施例2と同様にして、製鋼スラグからリンを抽出し、リン抽出率を算出した(比較例1及び比較例2)。その結果を、図3に示す。
図3から分かるように、前処理として二酸化炭素を溶解させた水で洗浄を行うことによって、未洗浄の場合に比べてリンの抽出率が高くなった。特に、1N硫酸の使用量がより少ない実施例1の場合には、硫酸を同量使用した比較例1よりも6倍以上リン抽出率が高くなった。
300mLの1N硫酸を使用して未洗浄スラグからリン抽出した実験と、180mLの1N硫酸を使用した実施例1とが同等のリン抽出率となったことから、二酸化炭素を飽和させた水でスラグ洗浄することにより、リン抽出に必要な硫酸量を約40%削減できることが分かった。
3.酸抽出試験2
実施例1と同じスラグ10gを用いて、1.0Nの硫酸を180mL添加し、数分間撹拌しながら反応させた後、固液比が1:30となるように水を添加して数分間撹拌して反応させ、リン成分を抽出した(実施例3)。また、1.0Nの硫酸を180mL添加し、数分間反応させた後、固液比を1:45とするため、水を添加してさらに数分間撹拌しながら反応させてリン成分を抽出した(実施例4)。実施例3及び実施例4のリン抽出率を、表1に示す。
Figure 2010270378
ここで、表1における「見かけの硫酸濃度」とは、スラグと反応前の硫酸に水を添加した場合の硫酸の濃度をいう。
4.酸抽出試験3
実施例1と同じスラグ10gを用いて、1.0Nの硫酸300mLを添加して数分間反応させた後、固液比が1:45になるように水を添加してさらに数分間反応させてリン成分を抽出した(実施例5)。また、1.0Nの硫酸450mLを添加して数分間撹拌しながら反応させてリン成分を抽出した(実施例6)。実施例5及び実施例6のリン抽出率を、表2に示す。
Figure 2010270378
実施例5と実施例6では使用した1N硫酸量は同じであり、見かけの硫酸濃度は実施例5の方が低いにも拘わらず、リン抽出率は実施例5が実施例6よりも高かった。すなわち、後から水を添加することによって、さらにリン抽出率が高くなることが確認された。
5.リン析出試験
実施例1で得られた酸抽出液を利用し、リン析出試験を行った。酸抽出液のpHは、当初1未満であったが、これにアルカリ剤(中和剤)を添加することによりpHを上昇させ、リン酸塩を析出させた(実施例7)。
実施例7では上述した洗浄液(1)及び洗浄液(2)を中和剤として使用した。一方、比較例3では、1N水酸化ナトリウム水溶液を中和剤として使用した。実施例7及び比較例3の中和剤の添加に当たっては、酸抽出液100mLについて、pHを測定しながら中和剤を添加し、pHが4となった時点で添加を止めた。
中和剤の添加を止めた後、それぞれ析出したリン酸塩を除去し、リン酸塩除去後の酸抽出液中のリン濃度をペルオキソ二硫酸カリウム分解法により測定し、リン量を算出した。中和剤添加前のリン濃度も同様に測定し、リン量を算出し、中和剤添加前後における酸抽出液の析出率を算出した。その結果を、表3に示す。なお、中和前の酸抽出液中のリン濃度は、250mg/mLであった。
Figure 2010270378
中和剤として洗浄液(1)及び洗浄液(2)を使用した場合でも、pHを4に調整することで、酸抽出液に含まれるリン成分の80%以上をリン酸塩として析出させることができた。すなわち、洗浄工程で発生する洗浄液を中和剤として利用することにより、水酸化ナトリウムのような中和剤を別途用意する必要がなくなり、リン回収コストを抑制することが可能となる。
洗浄工程で発生する洗浄液のアルカリ成分は、炭酸水素カルシウムが主体として含有されているため、リン成分はリン酸カルシウムとして析出する。
なお、上述したように、洗浄工程で発生する洗浄液を50〜60℃に加熱することにより、炭酸水素カルシウムをほぼ100%炭酸カルシウムとして析出させることもできるため、中和剤として洗浄水から回収された固体の炭酸カルシウムを利用することも可能である。
本発明の製鋼スラグからのリン回収方法は、製鉄分野、農業肥料分野において有用である。

Claims (4)

  1. 製鋼スラグを、二酸化炭素を溶解させた水又は炭酸水で洗浄し、製鋼スラグ中のカルシウムを除去する洗浄工程と、
    洗浄工程後の製鋼スラグから鉱酸を用いてリンを抽出する酸抽出工程と、
    酸抽出工程で得られた酸抽出液を中和してリン酸塩を回収する回収工程と、
    を有する製鋼スラグからのリン回収方法。
  2. 前記洗浄工程の洗浄水を用いて、前記酸抽出工程の酸抽出液を中和する請求項1に記載の製鋼スラグからのリン回収方法。
  3. 前記酸抽出工程において、前記酸抽出液に水を添加する請求項1又は2に記載の製鋼スラグからのリン回収方法。
  4. 前記製鋼スラグが鉄濃縮相とリン濃縮相に分離した後のリン濃縮相のスラグである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の製鋼スラグからのリン回収方法。
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