JP2010267400A - 正極活物質材料の製造方法 - Google Patents

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靖 土田
Koji Kawamoto
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Shigeki Hama
重規 濱
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正人 神谷
Hiroshi Nagase
浩 長瀬
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Abstract

【課題】本発明は、正極活物質と固体電解質材料との反応による高抵抗部位の生成を抑制することが可能な正極活物質材料の製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、アルカリ金属源と遷移金属源と被覆元素とを含有する原料組成物を調製する調製工程と、上記原料組成物を焼成する焼成工程とを有する正極活物質材料の製造方法であって、上記正極活物質材料に含まれるすべての遷移金属元素の価数と上記被覆元素の最も取りやすい価数との差が2以上であることを特徴とする正極活物質材料の製造方法を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図5

Description

本発明は、全固体電池に用いられる正極活物質材料の製造方法に関する。
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として優れた電池(例えばリチウム電池)の開発が重要視されている。また、情報関連機器や通信関連機器以外の分野では、例えば自動車産業界において、電気自動車やハイブリッド自動車に用いられるリチウム電池等の開発が進められている。
ここで、従来市販されているリチウム電池には、可燃性の有機溶媒を用いた有機電解液が使用されているため、短絡時の温度上昇を抑える安全装置の取り付けや短絡防止のための構造・材料面での改善が必要となる。これに対して、液体電解質を固体電解質に変更した全固体電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。
このような全固体電池において、従来から、正極活物質および固体電解質材料の界面に着目し、全固体電池の性能向上を図る試みがある。例えば非特許文献1においては、LiCoO(正極活物質)の表面をLiNbO(ニオブ酸リチウム)で被覆した材料が開示されている。この技術は、LiCoOの表面をLiNbOで被覆することで、LiCoOおよび固体電解質材料の反応を抑制し、界面抵抗を低減させ、電池の高出力化を図ったものである。
また、全固体電池に関するものではないが、正極活物質の表面改質の技術として、例えば特許文献1および特許文献2には、LiCoO(正極活物質)の表面をジルコニウムで被覆した材料が開示されている。この技術は、LiCoO粒子の表面を酸化ジルコニウムもしくはリチウム・ジルコニウムの複合酸化物などで覆うことによって安定化し、電解液の分解反応やコバルトの溶出を抑制するものである。
特許第2855877号公報 特許第4030424号公報
Narumi Ohta et al., "LiNbO3−coated LiCoO2 as cathode material for all solid−state lithium secondary batteries", Electrochemistry Communications 9 (2007) 1486−1490
非特許文献1には、LiCoO(正極活物質)の表面上に、LiNbOの前駆体を含有するコート溶液を塗布し、その後、酸素雰囲気で熱処理することによって、LiCoOの表面をLiNbOで被覆する方法が開示されている。正極活物質と固体電解質材料との反応を抑制するためには、正極活物質粒子の表面をLiNbOで被覆する必要があり、しかも正極活物質粒子の表面を薄く均一にLiNbOで被覆することが望ましい。このような方法としては、転動流動コーティング法が用いられる。しかしながら、転動流動コーティング法はバッチ処理であり、また装置が大型であることから、製造コストが高いという問題がある。また、LiNbOはLiCoO(正極活物質)表面への接着力が弱く、せん断力が加えられると容易に剥がれてしまう。転動流動コーティング装置には凝集解砕機構(スクリーン)が設けられているため、LiNbOの剥がれを完全に抑制するのは困難である。
また、特許文献1には、リチウム化合物とコバルト化合物との混合物にジルコニウム化合物を添加し焼成することにより、LiCoOの表面をジルコニウムで覆う方法が開示されている。特許文献2には、コバルト化合物溶液にジルコニウム化合物を添加して共沈させた後、リチウム化合物と混合し、焼成することにより、LiCoOの表面をジルコニウムで覆う方法が開示されている。しかしながら、焼成時にジルコニウムがLiCoOに析出するとともに固溶するため、ジルコニウムはLiCoOの表面に存在するものの、表面被覆効果が十分ではない。また、ジルコニウムの固溶により、充放電(Liイオン伝導や電子伝導)が阻害され、抵抗が増加することも懸念される。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、正極活物質と固体電解質材料との反応による高抵抗部位の生成を抑制することが可能な正極活物質材料の製造方法を提供することを主目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、アルカリ金属源と遷移金属源と被覆元素とを含有する原料組成物を調製する調製工程と、上記原料組成物を焼成する焼成工程とを有する正極活物質材料の製造方法であって、上記正極活物質材料に含まれるすべての遷移金属元素の価数と上記被覆元素の最も取りやすい価数との差が2以上であることを特徴とする正極活物質材料の製造方法を提供する。
本発明によれば、正極活物質材料に含まれるすべての遷移金属元素の価数と被覆元素の最も取りやすい価数との差が2以上であるので、焼成時に、正極活物質の表面に被覆元素が析出しやすく、正極活物質と固体電解質材料との反応による高抵抗部位の生成を抑制することができる。したがって、本発明により得られる正極活物質材料を用いて全固体電池を作製した際には、界面抵抗を低減することができる。
上記発明においては、上記遷移金属元素の価数が4以下であることが好ましい。
また本発明においては、上記調製工程にて、上記遷移金属源となる遷移金属化合物に上記被覆元素を添加して共沈させた後、上記被覆元素が共沈された上記遷移金属源と上記アルカリ金属源とを混合することが好ましい。アルカリ金属源と遷移金属源と被覆元素とを均一に混合することができ、焼成時に、正極活物質の表面に均質に被覆元素を析出させることができるからである。
さらに本発明は、正極層と、負極層と、上記正極層および上記負極層の間に形成された固体電解質層とを有する全固体電池を製造する全固体電池の製造方法であって、上述の正極活物質材料の製造方法により得られる正極活物質材料と固体電解質材料とを含有する正極層用組成物を用いて上記正極層を形成する正極層形成工程を有することを特徴とする全固体電池の製造方法を提供する。
本発明によれば、上述の正極活物質材料の製造方法により得られる正極活物質材料と固体電解質材料とを含有する正極層用組成物を用いて正極層を形成するので、正極活物質と固体電解質材料との反応による高抵抗部位の生成を抑制し、界面抵抗を低減することができ、高い出力特性を有する全固体電池を得ることができる。
本発明においては、正極活物質と固体電解質材料との反応による高抵抗部位の生成を抑制し、界面抵抗を低減することができるという効果を奏する。
本発明の正極活物質材料の製造方法の一例を示す工程図である。 本発明の正極活物質材料の製造方法の他の例を示す工程図である。 本発明の正極活物質材料の製造方法により得られる正極活物質材料の一例を示す模式図である。 本発明の全固体電池の製造方法の一例を示す工程図である。 実施例1、実施例2および比較例2の正極活物質材料におけるX線光電子分光(XPS)による表面分析の結果を示すグラフである。 実施例1,2および比較例1,2の全固体電池における界面抵抗を示すグラフである。
以下、本発明の正極活物質材料の製造方法および全固体電池の製造方法について詳細に説明する。
A.正極活物質材料の製造方法
本発明の正極活物質材料の製造方法は、アルカリ金属源と遷移金属源と被覆元素とを含有する原料組成物を調製する調製工程と、上記原料組成物を焼成する焼成工程とを有する正極活物質材料の製造方法であって、上記正極活物質材料に含まれるすべての遷移金属元素の価数と上記被覆元素の最も取りやすい価数との差が2以上であることを特徴とするものである。
本発明の正極活物質材料の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の正極活物質材料の製造方法の一例を示すフローチャートである。図1においては、まず、遷移金属源となる遷移金属化合物を含む溶液に、被覆元素を含有する化合物または被覆元素の単体を添加した後、沈殿剤を加えることによって、遷移金属源の合成時に被覆元素を共沈させる。次いで、被覆元素が共沈された遷移金属源と、アルカリ金属源とを乳鉢等で混合し、原料組成物を調製する(調製工程)。次に、得られた原料組成物を、例えば酸素を含む雰囲気中で焼成し、正極活物質材料を得る(焼成工程)。
図2は、本発明の正極活物質材料の製造方法の他の例を示すフローチャートである。図2においては、まず、アルカリ金属源と遷移金属源と被覆元素を含有する化合物または被覆元素の単体とを乳鉢等で混合し、原料組成物を調製する(調製工程)。次に、得られた原料組成物を、例えば酸素を含む雰囲気中で焼成し、正極活物質材料を得る(焼成工程)。
このような正極活物質材料の製造方法においては、正極活物質材料に含まれるすべての遷移金属元素の価数と被覆元素の最も取りやすい価数との差が2以上であることにより、図3に例示するように、焼成時に、正極活物質1の表面に被覆元素2が被覆元素の単体または被覆元素を含む化合物として析出しやすくなり、正極活物質の表面が被覆元素の単体または被覆元素を含む化合物で覆われると考えられる。
正極活物質材料に含まれるすべての遷移金属元素の価数と被覆元素の最も取りやすい価数との差が2以上であることにより、焼成時に、正極活物質の表面に被覆元素が析出しやすくなるのは、次のような理由による。すなわち、金属元素の価数と固溶限(固溶体として他の元素が入り込める限界の量)との関係によって説明することができる。正極活物質材料に含まれる遷移金属元素の価数と被覆元素の最も取りやすい価数との差が大きくなるにつれて、被覆元素の固溶限は小さくなる。この固溶限を越えると、固溶体の中に析出物が現れる。すなわち、固溶限以上の被覆元素は析出する。よって、すべての遷移金属元素の価数と被覆元素の最も取りやすい価数との差が2以上である場合には、被覆元素の固溶限が比較的小さいために、被覆元素は析出しやすくなるのである。
正極活物質の表面に被覆元素が析出した正極活物質材料では、正極活物質の表面に被覆元素が存在することにより、正極活物質と固体電解質材料とが反応して高抵抗部位が形成されるのを抑制することができる。したがって、本発明により得られる正極活物質材料と固体電解質材料とを用いて正極層を形成し、全固体電池を作製した場合には、正極活物質材料と固体電解質材料との界面をイオンが移動する際の界面抵抗を低減することができ、出力特性の高い全固体電池を得ることができる。
また、正極活物質材料に含まれるすべての遷移金属元素の価数と被覆元素の最も取りやすい価数との差が2以上であることにより、被覆元素は析出しやすく固溶しにくいと考えられるため、被覆元素の固溶によって充放電(Liイオン伝導や電子伝導)が阻害されることも回避できる。
さらに、本発明によれば、アルカリ金属源と遷移金属源と被覆元素とを含有する原料組成物を調製し、この原料組成物を焼成することで、容易に正極活物質の表面に被覆元素が析出した正極活物質材料を得ることができる。簡便な方法かつ低コストで界面抵抗の低減を可能とする正極活物質材料を得ることができるのである。
ここで、「正極活物質材料に含まれる遷移金属元素の価数」とは、正極活物質材料における遷移金属元素の価数をいう。すなわち、一般に遷移金属元素は複数の価数をとりえるが、正極活物質材料に含まれる遷移金属元素の価数とは、遷移金属源を構成する遷移金属元素の価数や遷移金属源となる遷移金属化合物を構成する遷移金属元素の価数ではなく、正極活物質材料を構成する遷移金属元素の価数を意味する。
また、「正極活物質材料に含まれるすべての遷移金属元素」とは、正極活物質材料に含まれる遷移金属元素が1種である場合にはその遷移金属元素を意味し、正極活物質材料に含まれる遷移金属元素が2種以上である場合にはすべての遷移金属元素を意味する。本発明においては、正極活物質材料に含まれるすべての遷移金属元素の価数に対して、被覆元素の最も取りやすい価数が2以上異なる必要がある。被覆元素の最も取りやすい価数に対して価数の差が小さい遷移金属元素があると、被覆元素がその遷移金属元素と置換して固溶してしまうおそれがあるからである。ただし、少量添加されている遷移金属元素は除くものとする。
この正極活物質材料に含まれる遷移金属元素の価数は、整数に限られない。
なお、正極活物質材料に含まれる遷移金属元素の価数は、XAFS(X線吸収微細構造)、XPS(X線光電子分光)、EELS(電子エネルギー損失分光)により決定することができる。
一方、「被覆元素の最も取りやすい価数」とは、被覆元素の最も安定な原子価をいう。最も安定な原子価について、例えば、Zrは4価、Nbは5価、Wは6価、Taは5価、Moは6価である。
なお、被覆元素の最も取りやすい価数は、XAFS(X線吸収微細構造)、XPS(X線光電子分光)、EELS(電子エネルギー損失分光)により決定することができる。
以下、本発明の正極活物質材料の製造方法における元素の価数および各工程について説明する。
1.元素の価数
本発明においては、正極活物質材料に含まれるすべての遷移金属元素の価数と被覆元素の最も取りやすい価数との差が2以上である。正極活物質材料に含まれるすべての遷移金属元素の価数と被覆元素の最も取りやすい価数との差は2以上であればよく、その上限は、元素がとりえる価数の範囲が限られることから、特に限定されない。
正極活物質材料に含まれる遷移金属元素の価数は、被覆元素の最も取りやすい価数との差が2以上となればよく、目的とする正極活物質材料の組成に応じて適宜選択され、通常は被覆元素の最も取りやすい価数よりも小さい。中でも、上記遷移金属元素の価数は、4以下であることが好ましく、2〜4の範囲内であることがより好ましい。なお、上述したように、上記遷移金属元素の価数は、整数に限られない。
このような遷移金属元素は、上述の価数の関係を満たすものであればよく、目的とする正極活物質材料の組成に応じて適宜選択される。
ここで、本発明の正極活物質材料の製造方法により得られる正極活物質材料は、アルカリ金属源に含まれるアルカリ金属元素と、遷移金属源に含まれる遷移金属元素と、被覆元素とを含有するものであれば特に限定されるものではないが、中でも、酸化物系正極活物質材料であることが好ましい。酸化物系正極活物質材料および硫化物系固体電解質材料を用いて正極層を形成する場合、酸化物系正極活物質中の金属元素は、酸素よりも硫黄と反応しやすいため、硫化物系固体電解質材料中の硫黄と反応し、硫黄金属を形成する。この硫黄金属自体が抵抗部位になるとともに、酸化物系正極活物質材料および硫化物系固体電解質材料の界面付近では、金属イオンおよび硫黄イオンの欠損(分解)が起こる。本発明においては、正極活物質と固体電解質材料との反応による高抵抗部位の形成を抑制することができるので、酸化物系正極活物質材料の場合には、その効果を特に発揮することができる。また、酸化物系正極活物質材料の場合、エネルギー密度の高い全固体電池を得ることができる。
酸化物系正極活物質材料としては、例えば、一般式Li(Mは遷移金属元素であり、x=0.02〜2.2、y=1〜2、z=1.4〜4)で表される正極活物質材料を挙げることができる。上記一般式において、Mは、Co、Mn、Ni、VおよびFeからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましく、Co、NiおよびMnからなる群から選択される少なくとも一種であることがより好ましい。このような酸化物系正極活物質材料としては、具体的には、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiVO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiMn、Li(Ni0.5Mn1.5)O、LiFePO、LiMnPO等を挙げることができる。
よって、上記遷移金属元素としては、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)および鉄(Fe)からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましく、Co、NiおよびMnからなる群から選択される少なくとも一種であることがより好ましい。
被覆元素の最も取りやすい価数は、すべての上記遷移金属元素の価数との差が2以上となればよく、通常はすべての上記遷移金属元素の価数よりも大きい。中でも、被覆元素の最も取りやすい価数は、5以上であることが好ましく、5〜6の範囲内であることがより好ましい。
このような被覆元素は、上述の価数の関係を満たし、固体電解質材料と反応性を有さないものであればよい。具体的には、上記被覆元素としては、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等を挙げることができ、中でも、Nb、Wが好ましい。
2.調製工程
本発明における調製工程は、アルカリ金属源と遷移金属源と被覆元素とを含有する原料組成物を調製する工程である。
原料組成物を調製する方法としては、アルカリ金属源と遷移金属源と被覆元素を含む化合物または被覆元素の単体とを用意して、これらを混合する方法や、遷移金属源となる遷移金属化合物に被覆元素を添加して共沈させた後、被覆元素が共沈された遷移金属源とアルカリ金属源とを混合する方法を挙げることができる。混合方法は、特に限定されるものではないが、より均一に混合することが好ましい。例えば、一般的な撹拌手段を用いて混合する方法や、ボールミル法によって混合する方法を挙げることができる。
中でも、遷移金属源となる遷移金属化合物に被覆元素を添加して共沈させた後、被覆元素が共沈された遷移金属源とアルカリ金属源とを混合することが好ましい。より一層均一に混合することができ、焼成時に、正極活物質の表面に均質に被覆元素を析出させることができるからである。
このような共沈法においては、遷移金属源となる遷移金属化合物を含有する金属塩溶液を用いる。金属塩溶液としては、遷移金属化合物を水、アルコール等の溶媒に溶解した溶液が好適に用いられる。また、金属塩溶液のpHは、特に限定されるものではないが、溶液中で金属イオンがより安定に存在するという観点から、金属塩溶液のpHが1.0〜6.0であることが好ましい。
そして、金属塩溶液に、被覆元素を含む化合物または被覆元素の単体を添加し、塩基(沈殿剤)の存在下で遷移金属元素と被覆元素とを含む化合物(共沈物)を沈殿させる。具体的には、被覆元素が添加された金属塩溶液に含まれる酸基と等量以上の塩基を添加することで、共沈物を沈殿させることができる。このように等量以上の塩基で中和することにより、共沈物の析出反応が促進される。これにより、被覆元素が共沈された遷移金属源を得ることができる。
塩基(沈殿剤)としては、例えば、アンモニア、炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を用いることができる。これらの塩基は水、アルコール等の溶媒に溶解させて塩基性溶液として用いてもよい。この際、塩基性溶液のpHは9以上であることが好ましい。
共沈物を沈殿させる方法としては、様々な方法があり、例えば、金属塩溶液に塩基性溶液を瞬時に添加し強撹拌して沈殿を析出させる方法、金属塩溶液に過酸化水素等を加えることで共沈物が沈殿し始めるpHを調節した後、塩基性溶液で沈殿を析出させる方法、金属塩溶液に塩基性溶液を添加する際に中和にかかる時間を十分に長く(好ましくは10分以上)して徐々に沈殿を析出させる方法、金属塩溶液に塩基性溶液を添加する際にpHをモニターしながら段階的に中和するまたは所定のpHに保つような緩衝溶液を添加しつつ沈殿を析出させる方法が挙げられる。
アルカリ金属源としては、目的とする全固体電池の種類に応じて適宜選択される。例えば、全固体リチウム電池の場合には、アルカリ金属源としてリチウム源が用いられる。
リチウム源としては、リチウム元素を含む化合物であればよく、例えば、LiCO、LiO、LiNO、LiNO、LiCl、CHCOOLi、Li、LiOH、LiHおよびLiP等を挙げることができる。中でも、リチウム源は、焼成によりリチウム元素以外の構成成分が気体になる化合物であることが好ましい。目的とする正極活物質材料の組成に悪影響を与え難いからである。特に、リチウム源はLiCOであることが好ましい。
遷移金属源としては、遷移金属元素を含む化合物であればよく、目的とする正極活物質材料に応じて適宜選択される。遷移金属元素は、上述したとおりである。遷移金属元素を含む化合物としては、例えば、炭酸塩、酸化物、硝酸塩、酢酸塩、塩化物、硫酸塩、亜硫酸塩、無機錯塩が挙げられる。中でも、遷移金属源は、焼成により遷移金属元素以外の構成成分が気体になる化合物であることが好ましい。目的とする正極活物質材料の組成に悪影響を与え難いからである。特に、遷移金属源は炭酸塩であることが好ましい。
アルカリ金属源と遷移金属源と被覆元素を含む化合物または被覆元素の単体とを用意して、これらを混合する場合であって、遷移金属元素が2種以上の場合、遷移金属元素を含む化合物としては、各遷移金属元素を化合物がそれぞれ用いられる。この際、各遷移金属元素を化合物の配合比としては、目的とする正極活物質材料における元素の組成比に応じて適宜選択される。
一方、遷移金属源となる遷移金属化合物に被覆元素を添加して共沈させ、被覆元素が共沈された遷移金属源を得る場合、遷移金属化合物としては、金属塩であればよく、例えば、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物、硫酸塩、亜硫酸塩、無機錯塩が挙げられる。この場合であって、遷移金属元素が2種以上の場合、遷移金属化合物としては、各遷移金属元素を含む金属塩がそれぞれ用いられる。この際、各遷移金属元素を含む金属塩の配合比としては、目的とする正極活物質材料における元素の組成比に応じて適宜選択される。
被覆元素は、上述したとおりである。アルカリ金属源と遷移金属源と被覆元素を含む化合物または被覆元素の単体とを用意して、これらを混合する場合、この被覆元素を含む化合物としては、例えば、炭酸塩、酸化物、硝酸塩、酢酸塩、塩化物、硫酸塩、亜硫酸塩、無機錯塩が挙げられる。一方、遷移金属源となる遷移金属化合物に被覆元素を含む化合物または被覆元素の単体を添加して共沈させ、被覆元素が共沈された遷移金属源を得る場合、この被覆元素を含む化合物としては、金属塩であればよく、例えば、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物、硫酸塩、亜硫酸塩、無機錯塩が挙げられる。被覆元素を含む化合物および被覆元素の単体のいずれを用いるかは、被覆元素の種類に応じて適宜選択される。例えば、金属塩溶液に溶解しやすいものを選択することができる。
アルカリ金属源および遷移金属源の配合比としては、目的とする正極活物質材料における元素の組成比に応じて適宜選択される。
被覆元素の添加量としては、遷移金属元素を100モル%とした場合、10モル%〜0.01モル%の範囲内であることが好ましく、5モル%〜0.05モル%の範囲内であることがより好ましく、3モル%〜0.1モル%の範囲内であることがさらに好ましい。被覆元素の添加量が少なすぎると、高抵抗部位生成の抑制効果が十分に得られないからである。また、被覆元素の添加量が多すぎると、イオン伝導や電子伝導が阻害されるおそれがあるからである。
3.焼成工程
本発明における焼成工程は、上記原料組成物を焼成する工程である。
焼成温度および焼成時間は、所望の正極活物質材料を得ることができれば特に限定されるものではなく、正極活物質材料の組成に応じて適宜選択される。
また、焼成時の雰囲気は、特に限定されるものではないが、通常、酸素を含む雰囲気とされる。
4.正極活物質材料
本発明の正極活物質の製造方法により得られる正極活物質材料の組成としては、上述したとおりである。
正極活物質材料の形状としては、例えば粒子形状を挙げることができ、中でも真球状または楕円球状であることが好ましい。また、正極活物質材料が粒子形状である場合、その平均粒径は、例えば0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
正極活物質材料の用途としては、例えば、全固体電池用途を挙げることができる。全固体電池の種類としては、全固体リチウム電池、全固体ナトリウム電池、全固体マグネシウム電池および全固体カルシウム電池等を挙げることができ、中でも全固体リチウム電池および全固体ナトリウム電池が好ましく、特に全固体リチウム電池が好ましい。
B.全固体電池の製造方法
本発明の全固体電池の製造方法は、正極層と、負極層と、上記正極層および上記負極層の間に形成された固体電解質層とを有する全固体電池を製造する全固体電池の製造方法であって、上述の正極活物質材料の製造方法により得られる正極活物質材料と固体電解質材料とを含有する正極層用組成物を用いて上記正極層を形成する正極層形成工程を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、上述した製造方法によって得られた正極活物質材料を用いることで、正極層内において正極活物質材料と固体電解質材料との反応による高抵抗部位の生成を抑制し、界面抵抗を低減することができる。また、簡便な方法かつ低コストで、出力特性の高い全固体電池を製造することができる。
図4は、本発明の全固体電池の製造方法の一例を示す工程図である。図4における製造方法においては、まず、上述した製造方法により得られた正極活物質材料と、固体電解質材料とを含有する正極層用組成物を用い、この正極層用組成物をプレスすることにより、正極層11を形成する(図4(a))。次に、正極層11の表面に、固体電解質材料を添加し、プレスすることにより、固体電解質層12を形成する(図4(b))。続いて、固体電解質層12の表面に、In箔(負極活物質)を配置し、プレスすることにより、負極層13を形成する(図4(c))。これにより、正極層11、固体電解質層12および負極層13を有する発電要素20を得ることができる。最後に、この発電要素20を電池ケースの内部に収納し、電池ケースをかしめることで、全固体電池を得ることができる。なお、発電要素の各層を形成する順番は特に限定されるものではなく、任意の順番を採用することができる。また、発電要素を構成する複数の層を同時に形成してもよい。
以下、本発明の全固体電池の製造方法における各工程について説明する。
1.正極層形成工程
本発明における正極活物質層形成工程は、上記「A.正極活物質材料の製造方法」に記載された正極活物質材料の製造方法により得られる正極活物質材料と固体電解質材料とを含有する正極層用組成物を用いて上記正極層を形成する工程である。
正極層用組成物に含まれる固体電解質材料は、イオン伝導性を向上できるものであれば特に限定されるものではないが、通常は、正極活物質と反応し高抵抗部位を形成し得るものが用いられる。なお、高抵抗部位の生成は、透過型電子顕微鏡(TEM)やエネルギー分散型X線分光法(EDX)により確認することができる。
固体電解質材料としては、例えば、硫化物系固体電解質材料、酸化物系固体電解質材料、ポリマー固体電解質材料等を挙げることができる。中でも、硫化物系固体電解質材料が好ましい。硫化物系固体電解質材料はイオン伝導性に優れているからである。また、硫化物系固体電解質材料は正極活物質材料と比較して軟らかく、プレス成形等して正極層とした場合、正極層内において、硫化物系固体電解質材料は、潰れて正極活物質材料の表面を覆うような形状となる。そのため、正極活物質材料と固体電解質材料との接触面積が増えるので、高抵抗部位が形成される割合が高くなる。本発明においては、高抵抗部位の形成を抑制することができるので、硫化物系固体電解質材料を用いた場合のように高抵抗部位が多く形成されるような場合には、その効果を特に発揮することができる。
硫化物系固体電解質材料の具体例としては、Li11、80LiS−20P、LiPO−LiS−SiS等を挙げることができる。
また、固体電解質材料は、非晶質であってもよく、結晶質であってもよい。結晶質の固体電解質材料は、例えば、非晶質の固体電解質材料に熱処理を行うことで得ることができる。
固体電解質材料の形状としては、例えば粒子形状を挙げることができ、中でも真球状または楕円球状であることが好ましい。固体電解質材料が粒子形状である場合、その平均粒径は、例えば0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
正極層における固体電解質材料の含有量は、例えば1重量%〜90重量%の範囲内、中でも10重量%〜80重量%の範囲内であることが好ましい。
正極層用組成物は、必要に応じて導電化材を含有していてもよい。導電化材としては、正極層の導電性を向上させることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー等を挙げることができる。正極層における導電化材の含有量は、例えば0.1重量%〜20重量%の範囲内である。
正極層を形成する方法としては、例えばプレス法を挙げることができる。
また、正極層の厚さは、例えば1μm〜100μmの範囲内である。
2.固体電解質層形成工程
本発明においては、通常、固体電解質材料を含有する固体電解質層用組成物を用いて固体電解質層を形成する固体電解質形成工程を行う。
固体電解質層用組成物は、少なくとも固体電解質材料を含有していればよいが、中でも、固体電解質材料のみを含有することが好ましい。
固体電解質層用組成物に含まれる固体電解質材料としては、例えば、硫化物系固体電解質材料、酸化物系固体電解質材料、ポリマー固体電解質材料等を挙げることができる。中でも、硫化物系固体電解質材料が好ましい。硫化物系固体電解質材料はイオン伝導性に優れているからである。
硫化物系固体電解質材料は、例えば、架橋硫黄を有するものであってもよく、架橋硫黄を有しないものであってもよいが、中でも、架橋硫黄を有するものが好ましい。高抵抗部位が生成しやすく、本発明の効果を充分に発揮することができるからである。架橋硫黄を有する硫化物系固体電解質材料としては、例えば、Li11、0.6LiS−0.4SiS、0.6LiS−0.4GeS等を挙げることができる。ここで、上記のLi11は、PS−S−PS構造と、PS構造とを有するものであり、PS−S−PS構造が架橋硫黄を有する。このように、硫化物系固体電解質材料が、PS−S−PS構造を有することが好ましい。
また、固体電解質材料は、非晶質であってもよく、結晶質であってもよい。
固体電解質材料の形状としては、例えば粒子形状を挙げることができ、中でも真球状または楕円球状であることが好ましい。固体電解質材料が粒子形状である場合、その平均粒径は、例えば0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
固体電解質層を形成する方法としては、例えばプレス法を挙げることができる。
また、固体電解質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内、中でも0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
3.負極層形成工程
本発明においては、通常、負極活物質を含有する負極層用組成物を用いて負極層を形成する負極活物質層形成工程を行う。
負極層用組成物は、負極活物質を含有するものであり、必要に応じて固体電解質材料および導電化材の少なくとも一方をさらに含有していてもよい。
負極活物質としては、例えば金属活物質およびカーボン活物質を挙げることができる。金属活物質としては、例えばIn、Al、SiおよびSn等を挙げることができる。一方、カーボン活物質としては、例えばメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等を挙げることができる。
なお、負極層に用いられる固体電解質材料および導電化材については、上述した正極層における場合と同様である。
負極層を形成する方法としては、例えばプレス法を挙げることができる。
また、負極層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内である。
4.その他の工程
本発明においては、上述した工程の他に、正極層の表面上に正極集電体を配置する工程、負極層の表面上に負極集電体を配置する工程、発電要素を電池ケースに収納する工程等を有していてもよい。正極集電体の材料としては、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができる。一方、負極集電体の材料としては、例えばSUS、銅、ニッケルおよびカーボン等を挙げることができる。正極集電体および負極集電体の厚さや形状等については、全固体電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。また、本発明における電池ケースには、一般的な全固体電池の電池ケースを用いることができ、例えばSUS製電池ケース等を挙げることができる。本発明においては、発電要素を絶縁リングの内部に形成してもよい。
本発明により得られる全固体電池は、一次電池であってもよく、二次電池であってもよいが、中でも、二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば車載用電池として有用だからである。さらに、全固体電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
(正極活物質材料の合成)
硫酸コバルト(CoSO)と硫酸ニッケル(NiSO)と硫酸マンガン(MnSO)との混合溶液(Co:Ni:Mn=1:1:1)に、硫酸ニオブを、Co+Ni+Mn(100mol%)に対してニオブ(Nb)が0.5mol%となるように加え、炭酸水素ナトリウムを用いて共沈させた。その後、乾燥させた。共沈法により得られた粉末と炭酸リチウムとを、Li:(Co+Ni+Mn)=1:1で混合し、酸素中、800℃で20時間焼成し、ニオブ(Nb)が添加された正極活物質材料(Li−Co−Ni−Mn複合酸化物)を得た。
(全固体電池の作製)
まず、正極活物質材料として上記で得られた正極活物質材料を用い、固体電解質材料として特開2005−228570号公報に記載された方法により作製した固体電解質材料(Li11)を用い、正極活物質材料と固体電解質材料とを、重量比7:3で混合し、正極合剤とした。
次に、プレス機により、上述の図4(c)に示すような発電要素20を作製した。正極層11には上述の正極合剤を用い、固体電解質層12には固体電解質材料(Li11)を用い、負極層13にはIn箔を用いた。この発電要素を用いて全固体電池を得た。
[実施例2]
硫酸ニオブの代わりにタングステン粉末を用いた以外は、実施例1と同様にして、正極活物質材料を合成し、全固体電池を作製した。硫酸コバルト(CoSO)と硫酸ニッケル(NiSO)と硫酸マンガン(MnSO)との混合溶液に、タングステン粉末を添加する際には、Co+Ni+Mn(100mol%)に対してタングステン(W)が0.5mol%となるようにした。
[比較例1]
硫酸ニオブを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、正極活物質材料を合成し、全固体電池を作製した。
[比較例2]
硫酸ニオブの代わりに硫酸ジルコニウムを用いた以外は、実施例1と同様にして、正極活物質材料を合成し、全固体電池を作製した。硫酸コバルト(CoSO)と硫酸ニッケル(NiSO)と硫酸マンガン(MnSO)との混合溶液に、硫酸ジルコニウムを添加する際には、Co+Ni+Mn(100mol%)に対してジルコニウム(Zr)が0.5mol%となるようにした。
[評価]
(表面分析)
実施例1,2および比較例2で得られた正極活物質材料について、X線光電子分光(XPS)にて表面および深さ分析を行った。結果を図5(a)〜(c)にそれぞれ示す。実施例1では表面近傍にニオブ(Nb)が多く存在し、実施例2では表面近傍にタングステン(W)が多く存在した。一方、比較例2では表面と内部でジルコニウム(Zr)濃度に大きな差がなかった。これは、比較例2では、正極活物質材料において、遷移金属元素(Co、Ni、Mn)の価数(3価)と被覆元素(Zr)の価数(4価)との差が2未満であるので、Zrは固溶しやすく、固溶するとともに表面にも析出したと考えられる。これに対し、実施例1,2では、正極活物質材料において、遷移金属元素(Co、Ni、Mn)の価数(3価)と被覆元素(Nb、W)の価数(Nb:5価、W:6価)との差が2以上であるので、Nb、Wは固溶しにくく、表面にのみ析出したと考えられる。
(電池特性)
まず、実施例1,2および比較例1,2で得られた全固体電池の充電を行った。充電条件は、0.1Cで4.2VvsLiまで充電する条件とした。充電後、交流インピーダンス法によるインピーダンス測定により、正極活物質材料および固体電解質材料の界面抵抗値を求めた。インピーダンス測定の条件は、OCVに対して振幅±10mV、1MHz〜10mHz、25℃とした。
結果を図6に示す。被覆元素を添加しなかった比較例1に比べて、Zrを添加した比較例2では界面抵抗が小さくなり、Nb、Wを添加した実施例1,2では界面抵抗がさらに小さくなった。これは、実施例1,2では、正極活物質材料の表面近傍にNb、Wが多く存在するので、正極活物質材料と固体電解質材料との反応による高抵抗部位の生成が効果的に抑制されたためであると考えられる。
1 … 正極活物質
2 … 被覆元素
11 … 正極層
12 … 固体電解質層
13 … 負極層
20 … 発電要素

Claims (4)

  1. アルカリ金属源と遷移金属源と被覆元素とを含有する原料組成物を調製する調製工程と、前記原料組成物を焼成する焼成工程とを有する正極活物質材料の製造方法であって、
    前記正極活物質材料に含まれるすべての遷移金属元素の価数と前記被覆元素の最も取りやすい価数との差が2以上であることを特徴とする正極活物質材料の製造方法。
  2. 前記遷移金属元素の価数が4以下であることを特徴とする請求項1に記載の正極活物質材料の製造方法。
  3. 前記調製工程にて、前記遷移金属源となる遷移金属化合物に前記被覆元素を添加して共沈させた後、前記被覆元素が共沈された前記遷移金属源と前記アルカリ金属源とを混合することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の正極活物質材料の製造方法。
  4. 正極層と、負極層と、前記正極層および前記負極層の間に形成された固体電解質層とを有する全固体電池を製造する全固体電池の製造方法であって、
    請求項1から請求項3までのいずれかに記載の正極活物質材料の製造方法により得られる正極活物質材料と固体電解質材料とを含有する正極層用組成物を用いて前記正極層を形成する正極層形成工程を有することを特徴とする全固体電池の製造方法。
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