JP2010267400A - 正極活物質材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、アルカリ金属源と遷移金属源と被覆元素とを含有する原料組成物を調製する調製工程と、上記原料組成物を焼成する焼成工程とを有する正極活物質材料の製造方法であって、上記正極活物質材料に含まれるすべての遷移金属元素の価数と上記被覆元素の最も取りやすい価数との差が2以上であることを特徴とする正極活物質材料の製造方法を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図5
Description
本発明の正極活物質材料の製造方法は、アルカリ金属源と遷移金属源と被覆元素とを含有する原料組成物を調製する調製工程と、上記原料組成物を焼成する焼成工程とを有する正極活物質材料の製造方法であって、上記正極活物質材料に含まれるすべての遷移金属元素の価数と上記被覆元素の最も取りやすい価数との差が2以上であることを特徴とするものである。
図1は、本発明の正極活物質材料の製造方法の一例を示すフローチャートである。図1においては、まず、遷移金属源となる遷移金属化合物を含む溶液に、被覆元素を含有する化合物または被覆元素の単体を添加した後、沈殿剤を加えることによって、遷移金属源の合成時に被覆元素を共沈させる。次いで、被覆元素が共沈された遷移金属源と、アルカリ金属源とを乳鉢等で混合し、原料組成物を調製する(調製工程)。次に、得られた原料組成物を、例えば酸素を含む雰囲気中で焼成し、正極活物質材料を得る(焼成工程)。
また、「正極活物質材料に含まれるすべての遷移金属元素」とは、正極活物質材料に含まれる遷移金属元素が1種である場合にはその遷移金属元素を意味し、正極活物質材料に含まれる遷移金属元素が2種以上である場合にはすべての遷移金属元素を意味する。本発明においては、正極活物質材料に含まれるすべての遷移金属元素の価数に対して、被覆元素の最も取りやすい価数が2以上異なる必要がある。被覆元素の最も取りやすい価数に対して価数の差が小さい遷移金属元素があると、被覆元素がその遷移金属元素と置換して固溶してしまうおそれがあるからである。ただし、少量添加されている遷移金属元素は除くものとする。
この正極活物質材料に含まれる遷移金属元素の価数は、整数に限られない。
なお、正極活物質材料に含まれる遷移金属元素の価数は、XAFS(X線吸収微細構造)、XPS(X線光電子分光)、EELS(電子エネルギー損失分光)により決定することができる。
なお、被覆元素の最も取りやすい価数は、XAFS(X線吸収微細構造)、XPS(X線光電子分光)、EELS(電子エネルギー損失分光)により決定することができる。
本発明においては、正極活物質材料に含まれるすべての遷移金属元素の価数と被覆元素の最も取りやすい価数との差が2以上である。正極活物質材料に含まれるすべての遷移金属元素の価数と被覆元素の最も取りやすい価数との差は2以上であればよく、その上限は、元素がとりえる価数の範囲が限られることから、特に限定されない。
ここで、本発明の正極活物質材料の製造方法により得られる正極活物質材料は、アルカリ金属源に含まれるアルカリ金属元素と、遷移金属源に含まれる遷移金属元素と、被覆元素とを含有するものであれば特に限定されるものではないが、中でも、酸化物系正極活物質材料であることが好ましい。酸化物系正極活物質材料および硫化物系固体電解質材料を用いて正極層を形成する場合、酸化物系正極活物質中の金属元素は、酸素よりも硫黄と反応しやすいため、硫化物系固体電解質材料中の硫黄と反応し、硫黄金属を形成する。この硫黄金属自体が抵抗部位になるとともに、酸化物系正極活物質材料および硫化物系固体電解質材料の界面付近では、金属イオンおよび硫黄イオンの欠損(分解)が起こる。本発明においては、正極活物質と固体電解質材料との反応による高抵抗部位の形成を抑制することができるので、酸化物系正極活物質材料の場合には、その効果を特に発揮することができる。また、酸化物系正極活物質材料の場合、エネルギー密度の高い全固体電池を得ることができる。
酸化物系正極活物質材料としては、例えば、一般式LixMyOz(Mは遷移金属元素であり、x=0.02〜2.2、y=1〜2、z=1.4〜4)で表される正極活物質材料を挙げることができる。上記一般式において、Mは、Co、Mn、Ni、VおよびFeからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましく、Co、NiおよびMnからなる群から選択される少なくとも一種であることがより好ましい。このような酸化物系正極活物質材料としては、具体的には、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LiVO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiMn2O4、Li(Ni0.5Mn1.5)O4、LiFePO4、LiMnPO4等を挙げることができる。
よって、上記遷移金属元素としては、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)および鉄(Fe)からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましく、Co、NiおよびMnからなる群から選択される少なくとも一種であることがより好ましい。
本発明における調製工程は、アルカリ金属源と遷移金属源と被覆元素とを含有する原料組成物を調製する工程である。
塩基(沈殿剤)としては、例えば、アンモニア、炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等を用いることができる。これらの塩基は水、アルコール等の溶媒に溶解させて塩基性溶液として用いてもよい。この際、塩基性溶液のpHは9以上であることが好ましい。
リチウム源としては、リチウム元素を含む化合物であればよく、例えば、Li2CO3、Li2O、LiNO2、LiNO3、LiCl、CH3COOLi、Li2C2O4、LiOH、LiHおよびLi3P等を挙げることができる。中でも、リチウム源は、焼成によりリチウム元素以外の構成成分が気体になる化合物であることが好ましい。目的とする正極活物質材料の組成に悪影響を与え難いからである。特に、リチウム源はLi2CO3であることが好ましい。
アルカリ金属源と遷移金属源と被覆元素を含む化合物または被覆元素の単体とを用意して、これらを混合する場合であって、遷移金属元素が2種以上の場合、遷移金属元素を含む化合物としては、各遷移金属元素を化合物がそれぞれ用いられる。この際、各遷移金属元素を化合物の配合比としては、目的とする正極活物質材料における元素の組成比に応じて適宜選択される。
一方、遷移金属源となる遷移金属化合物に被覆元素を添加して共沈させ、被覆元素が共沈された遷移金属源を得る場合、遷移金属化合物としては、金属塩であればよく、例えば、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物、硫酸塩、亜硫酸塩、無機錯塩が挙げられる。この場合であって、遷移金属元素が2種以上の場合、遷移金属化合物としては、各遷移金属元素を含む金属塩がそれぞれ用いられる。この際、各遷移金属元素を含む金属塩の配合比としては、目的とする正極活物質材料における元素の組成比に応じて適宜選択される。
本発明における焼成工程は、上記原料組成物を焼成する工程である。
また、焼成時の雰囲気は、特に限定されるものではないが、通常、酸素を含む雰囲気とされる。
本発明の正極活物質の製造方法により得られる正極活物質材料の組成としては、上述したとおりである。
正極活物質材料の形状としては、例えば粒子形状を挙げることができ、中でも真球状または楕円球状であることが好ましい。また、正極活物質材料が粒子形状である場合、その平均粒径は、例えば0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
本発明の全固体電池の製造方法は、正極層と、負極層と、上記正極層および上記負極層の間に形成された固体電解質層とを有する全固体電池を製造する全固体電池の製造方法であって、上述の正極活物質材料の製造方法により得られる正極活物質材料と固体電解質材料とを含有する正極層用組成物を用いて上記正極層を形成する正極層形成工程を有することを特徴とするものである。
以下、本発明の全固体電池の製造方法における各工程について説明する。
本発明における正極活物質層形成工程は、上記「A.正極活物質材料の製造方法」に記載された正極活物質材料の製造方法により得られる正極活物質材料と固体電解質材料とを含有する正極層用組成物を用いて上記正極層を形成する工程である。
固体電解質材料としては、例えば、硫化物系固体電解質材料、酸化物系固体電解質材料、ポリマー固体電解質材料等を挙げることができる。中でも、硫化物系固体電解質材料が好ましい。硫化物系固体電解質材料はイオン伝導性に優れているからである。また、硫化物系固体電解質材料は正極活物質材料と比較して軟らかく、プレス成形等して正極層とした場合、正極層内において、硫化物系固体電解質材料は、潰れて正極活物質材料の表面を覆うような形状となる。そのため、正極活物質材料と固体電解質材料との接触面積が増えるので、高抵抗部位が形成される割合が高くなる。本発明においては、高抵抗部位の形成を抑制することができるので、硫化物系固体電解質材料を用いた場合のように高抵抗部位が多く形成されるような場合には、その効果を特に発揮することができる。
硫化物系固体電解質材料の具体例としては、Li7P3S11、80Li2S−20P2S5、Li3PO4−Li2S−SiS2等を挙げることができる。
固体電解質材料の形状としては、例えば粒子形状を挙げることができ、中でも真球状または楕円球状であることが好ましい。固体電解質材料が粒子形状である場合、その平均粒径は、例えば0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
正極層における固体電解質材料の含有量は、例えば1重量%〜90重量%の範囲内、中でも10重量%〜80重量%の範囲内であることが好ましい。
また、正極層の厚さは、例えば1μm〜100μmの範囲内である。
本発明においては、通常、固体電解質材料を含有する固体電解質層用組成物を用いて固体電解質層を形成する固体電解質形成工程を行う。
固体電解質層用組成物に含まれる固体電解質材料としては、例えば、硫化物系固体電解質材料、酸化物系固体電解質材料、ポリマー固体電解質材料等を挙げることができる。中でも、硫化物系固体電解質材料が好ましい。硫化物系固体電解質材料はイオン伝導性に優れているからである。
硫化物系固体電解質材料は、例えば、架橋硫黄を有するものであってもよく、架橋硫黄を有しないものであってもよいが、中でも、架橋硫黄を有するものが好ましい。高抵抗部位が生成しやすく、本発明の効果を充分に発揮することができるからである。架橋硫黄を有する硫化物系固体電解質材料としては、例えば、Li7P3S11、0.6Li2S−0.4SiS2、0.6Li2S−0.4GeS2等を挙げることができる。ここで、上記のLi7P3S11は、PS3−S−PS3構造と、PS4構造とを有するものであり、PS3−S−PS3構造が架橋硫黄を有する。このように、硫化物系固体電解質材料が、PS3−S−PS3構造を有することが好ましい。
固体電解質材料の形状としては、例えば粒子形状を挙げることができ、中でも真球状または楕円球状であることが好ましい。固体電解質材料が粒子形状である場合、その平均粒径は、例えば0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
また、固体電解質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内、中でも0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
本発明においては、通常、負極活物質を含有する負極層用組成物を用いて負極層を形成する負極活物質層形成工程を行う。
負極活物質としては、例えば金属活物質およびカーボン活物質を挙げることができる。金属活物質としては、例えばIn、Al、SiおよびSn等を挙げることができる。一方、カーボン活物質としては、例えばメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等を挙げることができる。
なお、負極層に用いられる固体電解質材料および導電化材については、上述した正極層における場合と同様である。
また、負極層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内である。
本発明においては、上述した工程の他に、正極層の表面上に正極集電体を配置する工程、負極層の表面上に負極集電体を配置する工程、発電要素を電池ケースに収納する工程等を有していてもよい。正極集電体の材料としては、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができる。一方、負極集電体の材料としては、例えばSUS、銅、ニッケルおよびカーボン等を挙げることができる。正極集電体および負極集電体の厚さや形状等については、全固体電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。また、本発明における電池ケースには、一般的な全固体電池の電池ケースを用いることができ、例えばSUS製電池ケース等を挙げることができる。本発明においては、発電要素を絶縁リングの内部に形成してもよい。
本発明により得られる全固体電池は、一次電池であってもよく、二次電池であってもよいが、中でも、二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば車載用電池として有用だからである。さらに、全固体電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。
[実施例1]
(正極活物質材料の合成)
硫酸コバルト(CoSO4)と硫酸ニッケル(NiSO4)と硫酸マンガン(MnSO4)との混合溶液(Co:Ni:Mn=1:1:1)に、硫酸ニオブを、Co+Ni+Mn(100mol%)に対してニオブ(Nb)が0.5mol%となるように加え、炭酸水素ナトリウムを用いて共沈させた。その後、乾燥させた。共沈法により得られた粉末と炭酸リチウムとを、Li:(Co+Ni+Mn)=1:1で混合し、酸素中、800℃で20時間焼成し、ニオブ(Nb)が添加された正極活物質材料(Li−Co−Ni−Mn複合酸化物)を得た。
まず、正極活物質材料として上記で得られた正極活物質材料を用い、固体電解質材料として特開2005−228570号公報に記載された方法により作製した固体電解質材料(Li7P3S11)を用い、正極活物質材料と固体電解質材料とを、重量比7:3で混合し、正極合剤とした。
次に、プレス機により、上述の図4(c)に示すような発電要素20を作製した。正極層11には上述の正極合剤を用い、固体電解質層12には固体電解質材料(Li7P3S11)を用い、負極層13にはIn箔を用いた。この発電要素を用いて全固体電池を得た。
硫酸ニオブの代わりにタングステン粉末を用いた以外は、実施例1と同様にして、正極活物質材料を合成し、全固体電池を作製した。硫酸コバルト(CoSO4)と硫酸ニッケル(NiSO4)と硫酸マンガン(MnSO4)との混合溶液に、タングステン粉末を添加する際には、Co+Ni+Mn(100mol%)に対してタングステン(W)が0.5mol%となるようにした。
硫酸ニオブを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、正極活物質材料を合成し、全固体電池を作製した。
硫酸ニオブの代わりに硫酸ジルコニウムを用いた以外は、実施例1と同様にして、正極活物質材料を合成し、全固体電池を作製した。硫酸コバルト(CoSO4)と硫酸ニッケル(NiSO4)と硫酸マンガン(MnSO4)との混合溶液に、硫酸ジルコニウムを添加する際には、Co+Ni+Mn(100mol%)に対してジルコニウム(Zr)が0.5mol%となるようにした。
(表面分析)
実施例1,2および比較例2で得られた正極活物質材料について、X線光電子分光(XPS)にて表面および深さ分析を行った。結果を図5(a)〜(c)にそれぞれ示す。実施例1では表面近傍にニオブ(Nb)が多く存在し、実施例2では表面近傍にタングステン(W)が多く存在した。一方、比較例2では表面と内部でジルコニウム(Zr)濃度に大きな差がなかった。これは、比較例2では、正極活物質材料において、遷移金属元素(Co、Ni、Mn)の価数(3価)と被覆元素(Zr)の価数(4価)との差が2未満であるので、Zrは固溶しやすく、固溶するとともに表面にも析出したと考えられる。これに対し、実施例1,2では、正極活物質材料において、遷移金属元素(Co、Ni、Mn)の価数(3価)と被覆元素(Nb、W)の価数(Nb:5価、W:6価)との差が2以上であるので、Nb、Wは固溶しにくく、表面にのみ析出したと考えられる。
まず、実施例1,2および比較例1,2で得られた全固体電池の充電を行った。充電条件は、0.1Cで4.2VvsLiまで充電する条件とした。充電後、交流インピーダンス法によるインピーダンス測定により、正極活物質材料および固体電解質材料の界面抵抗値を求めた。インピーダンス測定の条件は、OCVに対して振幅±10mV、1MHz〜10mHz、25℃とした。
結果を図6に示す。被覆元素を添加しなかった比較例1に比べて、Zrを添加した比較例2では界面抵抗が小さくなり、Nb、Wを添加した実施例1,2では界面抵抗がさらに小さくなった。これは、実施例1,2では、正極活物質材料の表面近傍にNb、Wが多く存在するので、正極活物質材料と固体電解質材料との反応による高抵抗部位の生成が効果的に抑制されたためであると考えられる。
2 … 被覆元素
11 … 正極層
12 … 固体電解質層
13 … 負極層
20 … 発電要素
Claims (4)
- アルカリ金属源と遷移金属源と被覆元素とを含有する原料組成物を調製する調製工程と、前記原料組成物を焼成する焼成工程とを有する正極活物質材料の製造方法であって、
前記正極活物質材料に含まれるすべての遷移金属元素の価数と前記被覆元素の最も取りやすい価数との差が2以上であることを特徴とする正極活物質材料の製造方法。 - 前記遷移金属元素の価数が4以下であることを特徴とする請求項1に記載の正極活物質材料の製造方法。
- 前記調製工程にて、前記遷移金属源となる遷移金属化合物に前記被覆元素を添加して共沈させた後、前記被覆元素が共沈された前記遷移金属源と前記アルカリ金属源とを混合することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の正極活物質材料の製造方法。
- 正極層と、負極層と、前記正極層および前記負極層の間に形成された固体電解質層とを有する全固体電池を製造する全固体電池の製造方法であって、
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の正極活物質材料の製造方法により得られる正極活物質材料と固体電解質材料とを含有する正極層用組成物を用いて前記正極層を形成する正極層形成工程を有することを特徴とする全固体電池の製造方法。
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