JP2010265412A - 光硬化性組成物とそのシーリング材としての使用、並びに湿式有機太陽電池 - Google Patents

光硬化性組成物とそのシーリング材としての使用、並びに湿式有機太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】封止性、電解液に対する耐性、高温での接着力、耐透湿性、スクリーン印刷適性などの諸特性に優れ、湿式有機太陽電池の電解液を封止するためのシーリング層の形成に適した光硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】炭素数15〜26の脂肪族単官能(メタ)アクリレート及び炭素数15〜26の脂環族単官能(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の単官能(メタ)アクリレート、コハク酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、ヘキサヒドロフタル酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、及びフタル酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)からなる群より選ばれる少なくとも1種の極性基含有(メタ)アクリレート、飽和熱可塑性エラストマー、脂環族飽和炭化水素樹脂、並びに、光重合開始剤を含有する光硬化性組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、光硬化性組成物に関し、さらに詳しくは、湿式有機太陽電池の電解液を封入するためのシーリング材として優れた諸特性を示す光硬化性組成物に関する。また、本発明は、該光硬化性組成物の湿式有機太陽電池用シーリング材としての使用に関する。さらに、本発明は、該光硬化性組成物から形成された光硬化物層をシーリング層として備えた湿式有機太陽電池に関する。
湿式有機太陽電池は、従来の太陽電池のようにシリコン半導体膜を使用せず、有機色素などの有機化合物を光電変換層として用いて太陽光から電気を取り出す新しい太陽電池である。湿式有機太陽電池を代表する色素増感型太陽電池は、低コストで製造することができることに加えて、プラスチックフィルム基板を用いることにより薄型化や屈曲性の付与が可能なこと、様々な色素分子を使用することによりカラフルな太陽電池を作製することができること、自動車や衣類、カーテンなどに簡単に装着できることなど、多彩な特徴を有している。
近年、湿式有機太陽電池の実用化に向けて、そのエネルギー変換効率の向上に関する研究開発が進められているが、電解液を封入するのに適したシーリング材の開発が欠かせない研究課題のひとつとなっている。湿式有機太陽電池は、一般に、2枚の導電性基板の間に電解液が封入された構造を有している。電解液の封入には、一般に、シーリング材が用いられるため、シーリング材の封止性や電解液に対する耐性の向上が、湿式有機太陽電池の信頼性と耐久性を高める上で不可欠の課題である。
より具体的に、湿式有機太陽電池として代表的な色素増感型太陽電池を例にとって説明する。図1は、色素増感型太陽電池の基本構造の一例を示す断面図である。ガラスまたはプラスチックフィルムからなる透明基板1の片面に、透明導電膜2が形成されており、該透明導電膜2の上に、二酸化チタン粒子などの金属酸化物半導体粒子を焼き付けた金属酸化物半導体層4が形成されている。金属酸化物半導体層4は、通常、多孔質構造を有しており、その表面及び多孔質構造の内部に多数の色素3が吸着されている。
上記の「透明基板/透明導電膜/色素を吸着した金属酸化物半導体膜」の層構成を有する第一導電性基板(作用電極基板)に対向して、基板8上に導電膜(導電層)7を形成した「導電膜/基板」の層構成を有する第二導電性基板(対極基板)が配置されている。両導電性基板は、各導電膜側で対向して、これらの導電性基板の周辺部に枠状に設けられたシーリング層6を介して配置されている。
導電膜(導電層)7自体が第二導電性基板としての役割を果たす場合には、基板8を省略することができる。例えば、色素増感型太陽電池が1枚の透明基板に直列構造セルを形成させたモノリシック型である場合には、第二導電性基板に代えて、導電膜を有しない第二基板を用いることができる。モノリシック型で用いる第二基板は、透明であっても、不透明であってもよい。
シーリング層6は、一般にシーリング材により形成されているが、シーリング材に代えて固体のスペーサーを用いたり、固体のスペーサーと接着剤を併用してシーリング層を形成したりすることがある。シーリング層6により形成された両導電性基板間の隙間に電解液5を封入する。電解液5として、有機溶媒に電解質を溶解した溶液が用いられている。ヨウ素とヨウ化リチウムとを含有するアセトニトリル/エチレンカーボネート混合溶液が代表的な電解液である。
色素増感型太陽電池に光を当てると、先ず、色素3が光を吸収して、電子を放出する。電子は、金属酸化物半導体層4に素早く移動し、そこから透明導電膜2を伝わり、さらに回路9及び11を経て、対極の導電膜7に伝わる。対極の導電膜7に伝わった電子は、電解液中の三ヨウ化物イオン(I )を還元して、ヨウ化物イオン(I)に変換する。ヨウ化物イオンは、色素3上で再び酸化されて三ヨウ化物イオンとなる。このようにして、色素増感型太陽電池内では、酸化−還元反応のサイクルが繰り返される。
このサイクルを繰り返すことにより、回路9及び11に電流が流れる。回路9及び11を負荷(例えば、モーター、照明機器)10に接続すれば、色素増感型太陽電池から電気エネルギーを取り出すことができる。充放電過程で電荷輸送に関与する電解質としては、ヨウ素/ヨウ素化合物の組み合わせ以外にも、様々なレドックス系を用いることができるが、その場合にも、同様の酸化−還元反応のサイクルが繰り返される。
湿式有機太陽電池のシーリング層の封止性が不十分であると、電解液が漏れやすくなる。シーリング層は、初期の封止性が良好であっても、電解液に対する耐性が不十分であると、経時により電解液によって膨潤したり、電解質との反応によって劣化したりする。その結果、シーリング層から電解液が漏れたり、電解質濃度が低下したりするため、湿式有機太陽電池の信頼性と耐久性が低下する。
シーリング層を、単官能(メタ)アクリレートを含有する光硬化性組成物などの反応性シーリング材により形成すると、光硬化反応などの硬化反応時に構成成分の一部がアウトガスとして揮散する。反応性シーリング材からのガス放出量が多いと、シーリング層の封止性が損なわれる上、放出したガス成分によって湿式有機太陽電池の性能が悪影響を受ける。
湿式有機太陽電池は、屋外で長時間にわたって太陽光にさらされるため、高温になることがある。シーリング層の高温での接着力が不十分であると、電解液が漏れたり、電解質濃度が低下したりするため、湿式有機太陽電池の信頼性と耐久性が低下する。シーリング層の透湿度が高いと、シーリング層を通して水分が電解液中に浸透しやすくなり、電解質を劣化させる。湿式有機太陽電池のシーリング層は、基板表面に、シーリング材をスクリーン印刷によってパターン状に形成できるものであることが、作業性や生産性の観点から望まれる。
そのため、シーリング層を形成するシーリング材には、封止性、電解液に対する耐性、高温での接着力、耐透湿性、スクリーン印刷適性などの諸特性に優れることが求められている。
色素増感型太陽電池の基本原理や構造については、例えば、特許第2664194号公報(特許文献1)及び特公平8−15097号公報(特許文献2)に、その詳細が開示されている。電解液の封止に関し、特許文献1には、合成樹脂やガラスなどの電気絶縁材料からなる枠を用いた封止方法が記載されている。特許文献2には、シーラントとして、シリコン接着剤、ポリエチレン、及びエポキシ樹脂を用いた封止方法が記載されている。
特開2000−30767号公報(特許文献3)には、色素増感型太陽電池の電解液注入用開口部をシリコン樹脂またはエポキシ樹脂で封止する方法が記載されている。特開2000−150005号公報(特許文献4)には、色素増感型半導体電極が形成されたチタン基板と、白金が蒸着されたITO薄膜の付いたガラス基板とを、スペーサー(ポリエステルフィルム)を介して張り合わせ、その隙間にヨウ素電解液を入れ、周囲にエポキシ樹脂を塗布し硬化させて接合する封止方法が記載されている。特開2000−294814号公報(特許文献5)には、色素増感型太陽電池の電極間の4辺の端部にスペーサー(ポリテトラフルオロエチレンシート)を挟み、注入口2箇所を残し周囲をエポキシ接着剤でシールする封止方法が記載されている。
固体のスペーサーは、2枚の導電性基板間に圧縮された状態で配置されているが、経時により弾力性が損なわれるため、封止性が低下しやすい。シリコン樹脂やエポキシ樹脂などのシーラントは、湿式有機太陽電池の電解液により侵されやすいため、長期間にわたって電解液と接触すると、膨潤及び/または劣化して、電解液が漏れるおそれがある。また、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂は、硬化反応に長時間を必要とし、生産性に劣る。
特開2000−186114号公報(特許文献6)には、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体またはそのアイオノマーを太陽電池素子の封止材料として使用する封止方法が提案されている。特開2001−144313号公報(特許文献7)には、エチレン−極性モノマー共重合体にカップリング剤を配合した樹脂組成物を太陽電池素子の封止材料として使用する封止方法が提案されている。
特許文献6及び7に開示されている封止方法は、樹脂材料を押出成形またはプレス成形によりシートに成形し、該シートを所定形状に打抜き加工し、次いで、打抜き加工品を樹脂材料の溶融温度に加熱して基板に圧着させる方法である。そのため、該樹脂材料を使用する方法は、製造工程が多く、打抜き加工による歩留まり低下の問題もある。しかも、打抜き加工品を基板に加熱圧着させると、色素増感型太陽電池の色素が熱劣化する。アイオノマー樹脂は、電解質のヨウ素イオンと反応するため、ヨウ素イオン濃度が低下するおそれがある。このような樹脂材料は、溶剤に難溶性であることから、スクリーン印刷により基板上にシーリングパターンを形成することができない。
特開2004−311036号公報(特許文献8)には、少なくとも1つ以上の(メタ)アクリレート基を有するイソプレン重合体を主成分とする色素増感型太陽電池用封止組成物が開示されている。特許文献8には、該封止組成物に、希釈剤としてイソボルニルアクリレートを添加することや、光重合開始剤を添加することが記載されている。そのため、該封止組成物は、導電性基板上に所望の形状に塗布し、光硬化させることができる。しかし、該封止組成物は、光硬化後にも、イソプレンに由来する炭素−炭素二重結合が主鎖中に存在するため、この二重結合と電解液中のヨウ素が反応して、ヨウ素濃度の低下による色素増感型太陽電池の性能低下やシーリング層の接着力低下が生じるおそれがある。
特開2005−154528号公報(特許文献9)には、炭素数18〜25の鎖状脂肪族単官能(メタ)アクリレート100重量部、イソボルニル(メタ)アクリレート5〜10重量部、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体5〜30重量部、及びラジカル開始剤1〜10重量部からなる硬化性組成物が開示されている。特許文献9には、該硬化性組成物を色素増感型太陽電池などの封止剤に適用することが記載されている。該硬化性組成物は、耐透湿性は良好であるものの、高温での接着力が低い。また、特許文献9の実施例で使用されているイソボルニルアクリレートは、沸点があまり高くないため、硬化反応時にアウトガスとして飛散しやすい。
特開2005−302564号公報(特許文献10)には、分子内に炭素数10〜20の直鎖脂肪族炭化水素を有する(メタ)アクリレート100重量部、脂環式(メタ)アクリレート5〜15重量部、マレイン酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体10部以上、光重合開始剤を主成分とする光硬化性の色素増感型太陽電池用シール剤が開示されている。該硬化性組成物は、透湿度が高く、高温接着力が低い。特許文献10の実施例では、脂環式(メタ)アクリレートとして、イソボルニルアクリレートやシクロヘキシルアクリレートが用いられているが、これらの化合物は、ともに沸点があまり高くないため、硬化反応時にアウトガスとして飛散しやすい。
特開2007−106822号公報(特許文献11)には、イソボルニルアクリレートとアルキル基の炭素数が4〜18のアルキル(メタ)アクリレートとの重量比が20:80〜70:30の範囲内であり、飽和熱可塑性エラストマーの割合が、該モノマー成分100重量部に対して、1〜40重量部の範囲であり、光重合開始剤の割合が、該モノマー成分100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲内であり、かつ、温度20℃、剪断速度1sec−1の条件下で測定した粘度が5〜4000Pa・sの範囲にある光硬化性組成物が開示されている。特許文献11には、該光硬化性組成物を色素増感型太陽電池などの封止剤に適用することが記載されている。しかし、該光硬化性組成物は、耐透湿性が不十分であり、高温での接着力が低い上、比較的沸点の低いイソボルニルアクリレートを含有するため、光硬化反応時にイソボルニルアクリレートがアウトガスとして飛散しやすい。
特開2008−69302号公報(特許文献12)には、2官能(メタ)アクリレート、単官能アルキル(メタ)アクリレート、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、光重合開始剤、及びシリカ粉を含有する光硬化性シール材組成物が開示されている。特許文献12の実施例では、イソノニルアクリレートまたはイソオクチルアクリレートを主成分として含有するモノマー成分が用いられているが、これらの成分は、硬化反応時にアウトガスとして揮散しやすいものである上、シーリング層の高温接着力を低下させる。
特許第2664194号公報 特公平8−15097号公報 特開2000−30767号公報 特開2000−150005号公報 特開2000−294814号公報 特開2000−186114号公報 特開2001−144313号公報 特開2004−311036号公報 特開2005−154528号公報 特開2005−302564号公報 特開2007−106822号公報 特開2008−69302号公報
本発明の課題は、封止性、電解液に対する耐性、高温での接着力、耐透湿性、スクリーン印刷適性などの諸特性に優れ、色素増感型太陽電池などの湿式有機太陽電池の電解液を封止するためのシーリング層の形成に適した光硬化性組成物を提供することにある。
より具体的に、本発明の課題は、1)スクリーン印刷適性を有し、作業性や生産性に優れており、2)電離性放射線の照射前後の質量変化が小さく、硬化反応時のガス放出量が抑制されており、3)透湿度が低く、耐透湿性に優れており、かつ、4)基板に対する高温での接着力に優れている光硬化性組成物を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、光重合性モノマーとして、炭素数15〜26の脂肪族及び/または脂環族単官能(メタ)アクリレートと、コハク酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、ヘキサヒドロフタル酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、及びフタル酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)からなる群より選ばれる少なくとも1種の極性基含有(メタ)アクリレートとを組み合わせて使用し、これらのモノマー成分に、飽和熱可塑性エラストマー、脂環族飽和炭化水素樹脂、及び光重合開始剤を加えた光硬化性組成物が、湿式有機太陽電池の電解液を封止するのに適した諸特性を有するシーリング材となり得ることを見出した。
本発明の光硬化性組成物は、紫外線(UV)などによる光硬化前後の質量変化が小さく、透湿度が低く、基板に対する高温接着性に優れ、スクリーン印刷適性を備えている。本発明の光硬化性組成物は、電離放射線を照射することにより、加熱することなく迅速に硬化させることができるため、色素増感型太陽電池の色素を劣化させることがなく、生産性にも優れている。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
本発明によれば、下記成分(a)〜(e):
(a)炭素数15〜26の脂肪族単官能(メタ)アクリレート及び炭素数15〜26の脂環族単官能(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の単官能(メタ)アクリレート、
(b)コハク酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、ヘキサヒドロフタル酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、及びフタル酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)からなる群より選ばれる少なくとも1種の極性基含有(メタ)アクリレート、
(c)飽和熱可塑性エラストマー、
(d)脂環族飽和炭化水素樹脂、並びに、
(e)光重合開始剤
を含有し、かつ、(a)該単官能(メタ)アクリレート100質量部に対する各成分(b)〜(e)の含有割合が、
(b)該極性基含有(メタ)アクリレートが0.5〜9質量部の範囲内であり、
(c)該飽和熱可塑性エラストマーが5〜60質量部の範囲内であり、
(d)該脂環族飽和炭化水素樹脂が10〜70質量部の範囲内であり、及び
(e)該光重合開始剤が0.1〜10質量部の範囲内である
ことを特徴とする光硬化性組成物が提供される。
また、本発明によれば、該光硬化性組成物の湿式有機太陽電池用シーリング材としての使用が提供される。さらに、本発明によれば、シーリング層を介して2枚の基板間に封入された電解液中に有機化合物からなる光電変換層が配置された構造を有する湿式有機太陽電池において、該シーリング層が、前記光硬化性組成物から形成された光硬化物層であることを特徴とする湿式有機太陽電池が提供される。
本発明によれば、封止性、電解液に対する耐性、高温での接着力、耐透湿性、スクリーン印刷適性などの諸特性に優れ、色素増感型太陽電池などの湿式有機太陽電池の電解液を封止するためのシーリング層の形成に適した光硬化性組成物が提供される。本発明の光硬化性組成物は、スクリーン印刷適性を有しており、作業性や生産性に優れている。
本発明の光硬化性組成物は、紫外線などの電離性放射線の照射前後の質量変化が小さく、硬化反応時のガス放出量が少ない。本発明の光硬化性組成物から形成されたシーリング層は、透湿度が低く、耐透湿性に優れており、かつ、基板に対する高温での接着力に優れている。そのため、本発明の光硬化性組成物は、色素増感型太陽電池などの湿式有機太陽電池の電解液を封止するためのシーリング層の形成に適している。
図1は、色素増感型太陽電池の基本構造の一例を示す断面略図である。
本発明では、光重合性モノマーの主成分として、炭素数15〜26の脂肪族単官能(メタ)アクリレート及び炭素数15〜26の脂環族単官能(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の単官能(メタ)アクリレートを使用する。本発明の光硬化性組成物は、イソボルニルアクリレートやシクロヘキシルアクリレートなどの比較的低沸点でガス放出しやすい光重合性モノマーを実質的に含有しない。
本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/またはメタクリレートを意味する。単官能とは、光重合性の炭素−炭素二重結合の数が1つであること、換言すれば、アクリロイル基またはメタアクリロイル基が1つであることを意味する。脂肪族または脂環族単官能(メタ)アクリレートとは、エステル残基〔−C(=O)ORのR〕が脂肪族基または脂環族基である単官能(メタ)アクリレートを意味する。脂肪族基及び脂環族基は、カルボキシル基などの極性基を持たない炭化水素基である。
単官能(メタ)アクリレートの炭素数が少なすぎると、その沸点が低くなるため、光硬化性組成物の製造工程や光硬化性組成物の塗工を含む湿式有機太陽電池の製造工程などを低温条件下で行う必要があり、これらの製造条件が制約を受ける。炭素数が少なすぎる単官能(メタ)アクリレートを用いると、光硬化性組成物の光硬化時にガス放出量が多くなる傾向にある。他方、炭素数が多すぎる単官能(メタ)アクリレートを用いると、光硬化性組成物のスクリーン印刷適性や基板への接着力が低下傾向を示す。
単官能(メタ)アクリレートの炭素数は、15〜26の範囲内であるが、好ましくは16〜25、より好ましくは17〜22の範囲内である。単官能(メタ)アクリレートの炭素数が上記範囲内にあることによって、他の成分と組み合わせることにより、スクリーン印刷適性に優れ、硬化反応時のガス放出量が少なく、耐透湿性と高温接着力に優れたシーリング層を形成することができる光硬化性組成物を得ることができる。
炭素数15〜26の脂肪族単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、n−ラウリルアクリレート(炭素数15)、イソミリスチルアクリレート(炭素数17)、n−ステアリルアクリレート(炭素数21)、イソステアリルアクリレート(炭素数21)、ベヘニルアクリレート(炭素数25)などのアクリレート類;n−ラウリルメタクリレート(炭素数16)、イソミリスチルメタクリレート(炭素数18)、n−ステアリルメタクリレート(炭素数22)、イソステアリルメタクリレート(炭素数22)、ベヘニルメタクリレート(炭素数26)などのメタクリレート類;が挙げられるが、これらに限定されない。炭素数15〜26の脂環族単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(炭素数15)、シジクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(炭素数16)などが挙げられるが、これらに限定されない。
脂肪族及び脂環族単官能(メタ)アクリレートの中でも、脂肪族単官能(メタ)アクリレートが好ましく、脂肪族単官能アクリレートがより好ましい。脂肪族単官能アクリレートの中でも、n−ラウリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、及びイソミリスチルアクリレートが好ましく、基板に対する接着性の観点からイソステアリルアクリレートがより好ましい。脂肪族または脂環族単官能(メタ)アクリレートとして、イソステアリルアクリレートを、該単官能(メタ)アクリレートの全量基準で、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、特に好ましくは90〜100質量%の範囲内の割合で含有するものが、諸特性のバランスに優れるため望ましい。
本発明では、極性基を含有する光重合性モノマーとして、コハク酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、ヘキサヒドロフタル酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、及びフタル酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)からなる群より選ばれる少なくとも1種の極性基含有(メタ)アクリレートを使用する。該極性基含有(メタ)アクリレートは、極性基としてカルボキシル基を含有する単官能のアクリレートである。
これらの極性基含有(メタ)アクリレートとして、市販品を使用することができる。市販品の具体例としては、共栄社化学(株)製のHOA−MS〔コハク酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)〕、HOA−HH〔ヘキサヒドロフタル酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)〕、及びHOA−MPL〔フタル酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)〕が挙げられる。極性基含有(メタ)アクリレートの酸価は、190〜300(KOHmg/g)の範囲内にあることが好ましい。
本発明の光硬化性組成物は、前記特定の極性基含有(メタ)アクリレートを含有することによって、耐透湿性に優れる上、高温での接着力に優れたシーリング層を形成することができる。前記特定の極性基含有(メタ)アクリレートは、該単官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、0.5〜9質量部、好ましくは1〜9質量部、より好ましくは2〜8質量部の範囲内で使用する。該単官能(メタ)アクリレートに対する該極性基含有(メタ)アクリレートの割合が過小であると基板に対する高温接着力が低下する。この割合が過大であると、高温接着力が向上するものの、透湿度が低下する。
本発明の光硬化性組成物には、所望により少量の多官能(メタ)アクリレートを含有させてもよい。多官能(メタ)アクリレートを含有させることにより、光硬化性組成物から形成されたシーリング層の耐溶剤性を更に向上させることができる。多官能(メタ)アクリレートとは、二官能以上の多官能アクリレート及び/またはメタクリレートを意味する。二官能以上の多官能(メタ)アクリレートとは、分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを意味する。
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートなどのジアクリレート類;1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレートなどのジメタクリレート類;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのトリアクリレート類;トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどのトリメタクリレート類;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリメチロールプロパンポリアクリレートなどの四官能以上のアクリレート類;が挙げられる。これらの多官能(メタ)アクリレートの中でも、ジアクリレート類やジメタクリレート類などの二官能(メタ)アクリレートが好ましい。
本発明の光硬化性組成物に多官能(メタ)アクリレートを含有させる場合は、多官能(メタ)アクリレートを、前記単官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、0.001〜10質量部、好ましくは0.01〜8質量部、より好ましくは0.1〜7質量部、特に好ましくは0.5〜5質量部の範囲内の割合で含有させる。多官能(メタ)アクリレートの割合が過小であると、耐溶剤性の改善効果が少なく、過大であると、接着力が低下したり、光硬化物の柔軟性が低下したりする。本発明の光硬化性組成物は、通常、多官能(メタ)アクリレートを含有させなくても、良好な諸特性を発揮することができる。
本発明で使用する飽和熱可塑性エラストマーとは、主鎖及び側鎖に炭素−炭素二重結合などの反応性の不飽和結合を実質的に含有せず、かつ、未架橋のエラストマーを意味する。ただし、飽和熱可塑性エラストマーは、芳香族環を有するものであってもよい。本発明の光硬化性組成物は、飽和熱可塑性エラストマーを含有することにより、スクリーン印刷に適した粘度に調整することが容易となることに加えて、耐透湿性が向上する。芳香環以外の炭素−炭素不飽和結合が存在する熱可塑性エラストマーは、耐候性、耐光性、耐熱性などに劣り、屋外での太陽光に曝される湿式有機太陽電池のシーリング層を形成するのに使用するシーリング材の成分としては好ましくない。
本発明の光硬化性組成物は、通常、前記モノマー成分のみでは粘度が低すぎるため、スクリーン印刷適性が不十分となりやすい。本発明の光硬化性組成物は、飽和熱可塑性エラストマーの含有割合を制御することにより、スクリーン印刷に適した粘度に調整することができる。しかも、飽和熱可塑性エラストマーを含有する光硬化性組成物は、透湿度が低いシーリング層を形成することができる。
本発明で使用する飽和熱可塑性エラストマーとしては、例えば、水添スチレン系熱可塑性エラストマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の飽和熱可塑性エラストマーが好ましい。これらの中でも、水添スチレンブタジエンラバー、水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、及びエチレン−ブチルアクリレート共重合体がより好ましい。
飽和熱可塑性エラストマーは、前記単官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、5〜60質量部、好ましくは8〜50質量部、より好ましくは10〜40質量部の範囲内の割合で使用する。飽和熱可塑性エラストマーの割合が過小であると、透湿度の改善効果が小さく、過大であると、光硬化性組成物の粘度が高くなりすぎて、スクリーン印刷などによるパターン印刷技術を適用することが困難になる。飽和熱可塑性エラストマーの割合は、耐透湿性とスクリーン印刷適性とを高度にバランスさせる観点からは、好ましくは15〜40質量部、より好ましくは20〜40質量部の範囲内とすることが望ましい。
本発明で使用する脂環族飽和炭化水素樹脂とは、芳香族系石油樹脂を水添した水素化石油樹脂、芳香族系化合物を含む石油樹脂を水添した樹脂、及び不飽和結合を持つ脂環族炭化水素樹脂を水添した樹脂を意味する。この水添により、芳香環は、脂環飽和構造に変換される。また、水添により、不飽和結合が飽和結合に変換される。本発明の光硬化性組成物に脂環族飽和炭化水素樹脂を含有させることにより、光硬化前後の質量変化を抑制しつつ、耐透湿性を向上させることができる。本発明の光硬化性組成物は、前記極性基含有(メタ)アクリレートを使用することにより、基板に対する高温接着力を高めることができる。
脂環族飽和炭化水素樹脂としては、例えば、水添テルペン系樹脂〔ヤスハラケミカル社製クリアロン(登録商標)P、M、Kシリーズ〕)、水添ロジン及び水添ロジンエステル系樹脂〔(株)理化ファインテク社製Foral(登録商標) AX、Foral 105、荒川化学工業(株)製ペンセル(登録商標)A、荒川化学工業(株)製エステルガム(登録商標)H、荒川化学工業(株)製スーパーエステル(登録商標)Aシリーズ〕、不均化ロジン及び不均化ロジンエステル系樹脂〔荒川化学工業(株)製パインクリスタル(登録商標)シリーズ〕、石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1,3−ペンタジエンなどのC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂の水添加樹脂である水添ジシクロペンタジエン系樹脂〔ドーネックス(株)製エスコレッツ(登録商標)5300,5400シリーズ、イーストマンケミカルジャパン(株)製Eastotac(登録商標) Hシリーズ〕、部分水添芳香族変性ジシクロペンタジエン系樹脂〔トーネックス(株)製エスコレッツ(登録商標)5600シリーズ〕、石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン、α−またはβ−メチルスチレンなどのC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂を水添した樹脂〔荒川化学工業(株)製アルコン(登録商標)P及びMシリーズ〕、上記したC5留分とC9留分の共重合石油樹脂を水添した樹脂〔出光興産(株)製アイマーブ(登録商標)シリーズ〕が挙げられる。
脂環族飽和炭化水素樹脂は、前記単官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、10〜70質量部、好ましくは15〜60質量部、より好ましくは20〜50質量部の範囲内の割合で使用する。脂環族飽和炭化水素樹脂の割合が過小であると、耐透湿性の改善効果が小さく、過大であると光硬化物の柔軟性が低下して脆くなりやすい。
本発明では、前記単官能(メタ)アクリレートを含むモノマー成分を光重合により硬化させるために、光重合開始剤を使用する。本発明で使用する光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、m−クロロアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、4−ジアルキルアセトフェノンなどのアセトフェノン類;ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;ミヒラーケトンなどのミヒラーケトン類;ベンジル、ベンジルメチルエーテルなどのベンジル類; ベンゾイン、2−メチルベンゾインなどのベンゾイン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテルなどのベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタールなどのベンジルジメチルケタール類;チオキサントンなどのチオキサントン類;プロピオフェノン、アントラキノン、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンゾイルベンゾエート、α−アシロキシムエステル;などのカルボニル化合物を挙げることができる。
光重合開始剤としては、上記カルボニル化合物以外に、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、ジフェニルジスルフィドなどの硫黄化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどの過酸化物;が挙げられる。さらに、光重合開始剤として、フェニルグリオキシレート類;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドなどのアシルホスフィンオキシド類;有機色素系化合物、鉄−フタロシアニン系化合物などが挙げられる。
これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。光重合開始剤として、これらの中でも、ベンゾイン類、アセトフェノン類、及びアシルホスフィンオキシド類が好ましく、アシルホスフィンオキシド類が特に好ましい。
色素増感型太陽電池などの湿式有機太陽電池の基板は、紫外線をカットする場合があるので、光硬化性組成物を湿式有機太陽電池のシーリング材として用いる場合には、400nm近傍または400nm以上の波長領域で光の吸収がある光重合開始剤を使用するのが望ましい。このような光重合開始剤としては、アシルホスフィンオキシド類が好ましい。
光重合開始剤は、前記単官能(メタ)アクリレートモノマー100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは0.3〜5質量部、より好ましくは0.5〜4質量部の範囲内の割合で使用する。光重合開始剤の割合が過小であると、硬化に時間を要し、過大であると、硬化物の接着力が低下傾向を示す。
本発明の光硬化性組成物には、所望により、充填剤を含有させてもよい。本発明の光硬化性組成物は、充填剤を含有することにより、線膨張係数を小さくすることができる。充填剤を含有させたり、その含有量を大きくすると、光硬化性組成物とその硬化物の軽量性や透明性などが損なわれる場合があるので、適用する用途によって、充填剤の種類や充填量を調整することが望ましい。充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クラッシュガラス、カーボンブラックなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
充填剤は、前記単官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、50質量部までの割合で使用する。充填剤を使用する場合には、その添加割合は、前記単官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、好ましくは0.1〜50質量部、より好ましくは1〜50質量部、特に好ましくは5〜45質量部である。充填剤の割合が過小であると、添加効果が小さく、過大であると、接着力が低下したり、光硬化物の柔軟性が低下したりする。本発明の光硬化性組成物は、通常、充填剤を含有させなくても、良好な諸特性を発揮することができる。
本発明の光硬化性組成物には発明の目的を損なわない範囲で、各種添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、例えば、フェノール系老化防止剤、リン系老化防止剤、フェノール系熱劣化防止剤、ベンゾフェノン系紫外線安定剤、アミン系帯電防止剤、フタル酸エステルなどの可塑剤、界面活性剤、吸油性樹脂、有機顔料、無機顔料、安定剤、シランカップリング剤、スペーサー粒子などを挙げることができる。これらの各種添加剤は、その使用目的に応じて、適宜適量を使用することができる。光硬化性組成物を光が到達しにくい部位に塗布したり、厚手の塗布を行ったりする場合には、硬化反応を十分に進行させるために、有機過酸化物などの熱重合開始剤を添加してもよい。熱重合開始剤を添加した場合には、電離放射線の照射と同時または照射の前及び/または後に、加熱工程を配置することが好ましい。
本発明の光硬化性組成物は、各成分を、サンドミル、ディスパー、コロイドミルなどの混合装置で撹拌分散することにより調製することができる。本発明の光硬化性組成物は、常温(25℃)で液状を呈し、適度の粘度を有するため、スクリーン印刷やその他の塗工法により、所望の箇所に塗布することができる。本発明の光硬化性組成物をパターン状に塗布するには、スクリーン印刷法を適用することができる。本発明の光硬化性組成物は、プラスチックフィルムや導電膜に対する接着性に優れるため、プラスチックフィルム基板を用いた色素増感型太陽電池などの湿式有機太陽電池のシーリング材として好適である。
本発明の光硬化性組成物は、被着体に塗付した後、得られた塗膜に電離放射線を照射することにより硬化させることができる。電離放射線としては、紫外線、電子線(ベータ線)、ガンマ線、アルファ線が好ましく、紫外線及び電子線がより好ましい。電離放射線を照射するには、それぞれの線源を発生する装置を用いればよい。例えば、電子線を照射するには、通常20〜2000kVの電子線加速器から取り出される加速電子線を照射する。電子線は、加速電圧によって浸透する深さが変わる。電子線は、加速電圧が高いほど、塗膜中に深く浸透する。電子線の照射線量は、通常1〜300kGy、好ましくは5〜200kGy程度であるが、硬化塗膜が得られる限りにおいて、この範囲に限定されない。
紫外線(UV)を照射するには、殺菌灯、紫外用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、無電極ランプなどのUV照射装置を用いて、波長200〜400nmを含む光を照射する。UV照射装置のランプ出力は、発光長1cm当りの出力ワット数(W/cm)で表示する。単位長当りのワット数が大きくなれば、発生する紫外線強度が大きくなる。ランプ出力は、通常30〜300W/cmの範囲から選択される。発光長は、通常40〜2500mmの範囲から選ばれる。紫外線の照射エネルギーは、通常0.1〜10J/cm、好ましくは0.5〜5J/cmであるが、硬化塗膜が得られる限りにおいて、この範囲に限定されない。
硬化塗膜を形成するに際し、酸素による重合禁止効果を除去する必要がある場合には、電離放射線の照射処理を、窒素ガス、炭酸ガス、希ガスなどの不活性ガス雰囲気下とすることが好ましい。
本発明の光硬化性組成物は、湿式有機太陽電池用シーリング材として好ましい諸特性を有している。湿式有機太陽電池は、シーリング層を介して2枚の基板間に封入された電解液中に、有機化合物からなる光電変換層が配置された構造を有している。湿式有機太陽電池として代表的な色素増感型太陽電池は、シーリング層を介して2枚の基板間に封入された電解液中に有機色素からなる光電変換層が配置された構造を有している。より具体的に、色素増感型太陽電池は、例えば、図1に示す基本的構造を有している。
透明基板としては、ガラス板やプラスチックフィルムが用いられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)などの熱可塑性ポリエステルフィルムが代表的なものであるが、透明で耐熱性のある他のフィルムを使用することもできる。透明導電膜(透明電極)としては、95%酸化インジウムと5%酸化スズからなる化合物を基板に薄く焼き付けたITO膜が代表的なものである。この他、透明導電膜としては、酸化スズにフッ素をドーピングした膜(FTO)が知られている。対極基板も、これと同様の導電性基板を用いることができるが、これに限定されない。例えば、対極基板として、ガラスなどの透明基板を用いても、該基板上に白金を蒸着して導電膜を形成すると、導電性基板全体の透明性が低下することがある。
金属酸化物半導体としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、亜鉛、インジウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステンなどの酸化物が挙げられるが、これらの中でも二酸化チタンが代表的なものである。二酸化チタンは、例えば、直径が10〜30nmという超微粒子が好ましく、それによって、色素を吸着させるのに適した広大な比表面積を有する二酸化チタン膜を形成することができる。
色素としては、ルテニウム錯体〔RuL(NCS)、L=4,4′−ジカルボキシ−2,2′−ビピリジン〕、ポルフィリン系色素、シアニン系色素、C60誘導体、スチリルベンゾチアゾリウムプロピルスルフォネート(BTS)、植物の色素などが挙げられる。
電解液は、一般に、電解質を有機溶剤に溶解した溶液である。このような電解液としては、例えば、ヨウ素とヨウ化リチウムとを含有するアセトニトリル/エチレンカーボネート溶液が代表的なものである。電解質としては、ヨウ素/ヨウ素化合物、臭素/臭素化合物などの酸化還元対(レドックス系)が用いられているが、これらの中でも、ヨウ素/ヨウ素化合物の組み合わせが汎用されている。
電解質を溶解または分散させる有機溶剤としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレングリコール(例えば、PEG#220)、アセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、これらの2種以上の混合物などが用いられている。電解液には、電解質に加えて、増粘剤(例えば、PEG#600)、粘性を低下させてイオンの拡散を円滑にする常温溶融塩(1−プロピルー2,3−ジメチルイミダゾリウムイオダイド)、逆電流を防ぎ開放起電力を高める4−tert−ブチルピリジンなどの各種添加剤を含有させてもよい。
本発明の光硬化性組成物を用いて色素増感型太陽電池を作製するには、下記工程1乃至4:
(1)「透明基板/透明導電膜/色素を吸着した金属酸化物半導体膜」の層構成を持つ第一導電性基板と、「導電膜/基板」の層構成を持つ第二導電性基板のいずれか一方の導電性基板(A)の導電膜側の周辺部に、本発明の光硬化性組成物をスクリーン印刷により塗布して、枠状の光硬化性組成物層を形成する工程1;
(2)導電性基板(A)の上に、他方の導電性基板(B)を、各導電膜側で対向させて、該光硬化性組成物層を介して配置する工程2;
(3)電離放射線を照射して、該光硬化性組成物を硬化させる工程3;及び
(4)該光硬化性組成物の硬化物からなるシーリング層により形成された両導電性基板間の隙間に電解液を封入する工程4;
を採用することができる。
第二基板として、前記「導電膜/基板」の層構成を持つ第二導電性基板に代えて、「導電膜」からなる導電性基板または導電膜を有しない基板を用いることができる。第一導電性基板の構造や第二基板の種類などは、色素増感型太陽電池のタイプに応じて選択することができる。
光硬化性組成物の塗布厚みは、電解液の所望の厚みに応じて適宜調整することができるが、通常、5〜200μm、好ましくは10〜150μm、多くの場合15〜50μmの範囲内である。導電性基板上に光硬化性組成物を塗布する際のパターンとしては、環状、長方形、矩形など、色素増感型太陽電池の形状に合わせたものとする。
両導電性基板間の隙間に電解液を注入する場合、硬化または未硬化のシーリング層の一部に開口部を設けるか、あるいは基板の一部に開口部を設けて、シーリング層により形成された両導電性基板間の隙間に電解液を注入する方法を採用することができる。開口部(電解液注入孔)は、同じ光硬化性組成物または他の常温硬化性接着剤などを用いて封止する。これによって、電解液を両導電性基板間に封入することができる。ガラス基板の場合には、その端部(シーリング層の内側)に電解液の液溜めを設けて、その中に電解液を入れておき、シーリング層により形成された両導電性基板間の隙間に、毛管現象を利用して電解液を注入させてもよい。
本発明によれば、シーリング層を介して2枚の基板間に封入された電解液中に有機化合物からなる光電変換層が配置された構造を有する湿式有機太陽電池において、該シーリング層が、前記光硬化性組成物から形成された光硬化物層である湿式有機太陽電池が提供される。
該湿式有機太陽電池は、シーリング層を介して2枚の基板間に封入された電解液中に有機色素からなる光電変換層が配置された構造を有する色素増感型太陽電池を含む。該色素増感型太陽電池は、具体的には、「透明基板/透明導電膜/色素を吸着した金属酸化物半導体膜」の層構成を有する第一導電性基板と該第一導電性基板に対向する第二基板とが、これら両基板の周辺部に枠状に設けたシーリング層を介して配置され、該シーリング層によって形成された両基板間の隙間に電解液が封入された構造を有するものである。
第二基板は、通常、「導電膜/基板」または「導電膜」の層構成を有する第二導電性基板である。色素増感型太陽電池がモノリシック型である場合には、第二基板として導電膜のない基板を用いることができる。
本発明の光硬化性組成物からなるシーリング層(光硬化物層)は、電解液に対する耐性が十分であり、経時により電解液によって膨潤したり、電解質との反応によって劣化したりすることがない。
本発明の光硬化性組成物は、測定治具として直径25mmのコーンプレートを備えた粘弾性測定装置を用いて、温度23℃及び該コーンプレートの回転数2rpmの条件下で測定した粘度(V)が8〜500Pa・s、好ましくは10〜400Pa・sの範囲内にある。該粘弾性測定装置として、AntonPaar社製のPhysicaMCR301(登録商標)を用いた。測定治具としては、半径方向に一様な剪断力を与えることができるコーンプレートを用いた。
光硬化性組成物の粘度(V)が低すぎると、スクリーン印刷適性が不十分となり、スクリーン印刷によって、基材上に所望の厚みを有するシーリングパターンを形成することが困難になる。光硬化性組成物の粘度(V)が高すぎると、スクリーン印刷すること自体が困難または不可能になる。スクリーン印刷適性が特に優れる点で、この粘度(V)は、30〜300Pa・sの範囲内にあることが特に好ましい。
本発明の光硬化性組成物は、測定治具として直径25mmのコーンプレートを備えた粘弾性測定装置を用いて、温度23℃及び該コーンプレートの回転数20rpmの条件下で測定した粘度(V20)に対する前記粘度(V)の比(V/V20)が1.3〜30の範囲内にあることが好ましい。比(V/V20)は、より好ましくは1.4〜29、さらに好ましくは1.5〜28の範囲内である。この比(V/V20)の値が高すぎると、光硬化性組成物の流動性が低下して、スクリーン印刷適性が低下しやすい。
本発明の光硬化性組成物は、プラスチックフィルム上に厚み100μmで直径50mmの円形の塗膜を形成し、高圧水銀灯によりエネルギー束密度270mW/cmの紫外線を5秒間照射して該塗膜を光硬化させたとき、紫外線照射前の該塗膜の質量に対する光硬化後の該塗膜の質量の減少率が1.50%以下を示すものであることが好ましい。質量減少率は、より好ましくは1.30%以下、さらに好ましくは1.00%以下、特に好ましくは0.80%以下である。質量減少率の下限値は、通常、0.30%、多くの場合0.40%である。この質量減少率は、光硬化時のガス放出量の指標となる。この質量減少率が大きいほど、光硬化時のガス放出量が多くなることを示す。
本発明の硬化性組成物を用いて作製した厚み100μmの硬化膜について、日本工業規格のJIS Z 0208に基づいて、温度60℃で、相対湿度95%で測定した透湿度は、好ましくは130g/m・24h以下、多くの場合125g/m・24h以下である。透湿度の下限値は、通常90g/m・24h以下、多くの場合100g/m・24h以下である。
本発明の光硬化性組成物は、2枚の「透明基板/透明導電膜」を各透明導電膜側で対向させて、該光硬化性組成物から形成した厚み100μmの光硬化物層を介して貼り合わせた試料について、温度85℃、相対湿度50%、及び速度50mm/分の条件で測定したT−ピール接着力が0.50N/10mm以上を示すものであることが好ましい。高温でのT−ピール接着力は、多くの場合0.60N/10mm以上、さらには0.65N/10mm以上を示す。高温でのT−ピール接着力の上限値は、通常、2.00N/10mm、多くの場合1.50N/10mmである。このT−ピール接着力が低すぎると、光硬化性組成物の光硬化物の基板に対する高温接着性が低下する。
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて詳細に説明する。諸特性の測定方法は、次の通りである。
(1)粘度
光硬化性組成物の粘度は、測定治具として直径25mmのコーンプレートを備えた粘弾性測定装置(AntonPaar社製PhysicaMCR301;登録商標)を用いて、温度23℃、回転数2rpm及び20rpmの条件下で測定した。回転数2rpmで測定した粘度をVとし、回転数20rpmで測定した粘度をV20としたとき、これらの測定値から、比(V/V20)を求めた。
(2)UV照射前後の質量減少率
厚み25μmのPETフィルム上に、厚み100μmで直径50mmの円形に光硬化性組成物を塗工し、高圧水銀灯(270mW/cm)で紫外線を5秒間照射し、紫外線硬化させる前後の塗膜の質量を測定し、紫外線照射前後の質量減少率を求めた。すなわち、紫外線照射前の塗膜の質量(m)に対する光硬化後の塗膜の質量(m)の減少率は、下記式
〔(m−m)/m〕×100
により求めた。
(3)透湿度
日本工業規格のJIS Z 0208に基づいて、透湿度の測定を行った。測定条件は、温度を60℃で、相対湿度を95%とした。測定膜の作製は、剥離処理PETフィルム上に光硬化性組成物をコーティングして、膜厚100μmの被膜を形成する方法により行った。被膜の他方の面に剥離処理PETフィルムを貼り合わせ、高圧水銀灯(270mW/cm)で5秒間照射し硬化させた。硬化被膜を指定容器の形状にカットし、塩化カルシウムを約7g投入した容器内に入れて養生させた。測定は、24時間後の質量を基準値とし、その後、経時で質量変化が飽和した時点を終点とした。
(4)T−ピール接着力
ITO−PENフィルム〔トービ製 OTEC113B−N125N(基材厚125μm)〕のITO面上に、光硬化性組成物を厚み約100μmとなるように塗布して被膜を形成した。この被膜の他方の面に、ITO−PENフィルム(同上)のITO面を貼り合わせた後、高圧水銀灯(270mW/cm)で5秒間照射した。得られた硬化被膜を測定試料とし、85℃の雰囲気下、インストロン型引張試験機(オリエンテック製RTM−100)を用いて、50mm/分の速度でT−ピール接着力を測定した。
[実施例1]
イソステアリルアクリレート〔新中村化学工業(株)製NKエステル S−1800A(登録商標)〕100質量部に対して、コハク酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)(共栄社化学(株)製HOA−MS)5質量部、水添スチレンブタジエンラバー〔JSR製DYNARON 1321(登録商標)〕15質量部、エチレン−ブチルアクリレート共重合体〔三井・デュポンポリケミカル(株)製エルバロイ3717AC(登録商標)〕10質量部、脂環族飽和炭化水素樹脂〔荒川化学工業(株)製アルコンP−140(登録商標)〕30質量部、及び光重合開始剤〔長瀬産業社製イルガキュア 819(登録商標)〕1質量部を加えて、高速攪拌機で100℃で攪拌し、光硬化性組成物を調製した。各種特性の測定結果を表1に示す。
[実施例2〜9]
表1に示す配合処方に変更したこと以外は、実施例1と同様にして光硬化性組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
Figure 2010265412
[実施例10〜18]
表2に示す配合処方に変更したこと以外は、実施例1と同様にして光硬化性組成物を調製し、評価した。結果を表2に示す。
Figure 2010265412
[比較例1〜8]
表3に示す配合処方に変更したこと以外は、実施例1と同様にして光硬化性組成物を調製し、評価した。結果を表3に示す。
Figure 2010265412
[比較例9〜11]
表4に示す配合処方に変更したこと以外は、実施例1と同様にして光硬化性組成物を調製し、評価した。結果を表4に示す。
[比較例12]
アイオノマー樹脂である亜鉛イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体〔三井・デュポンケミカル(株)製ハイミラン1652(登録商標)〕を加熱押出し塗工して、厚み100μmのアイオノマー樹脂シートを作製した。厚み25μmのPETフィルム上に、直径50mmの円形に切り抜いたアイオノマー樹脂シートを載せ、接着条件である120℃3分間の前と後にアイオノマー樹脂シートの質量を測定し、接着前後の質量減少率を求めた。
ITO−PENフィルム〔トービ製 OTEC113B−N125N(基材厚125μm)〕にアイオノマー樹脂シート(厚み100μm)を載せ、その上にITO−PENフィルム(同上)を貼り合わせ、120℃3分間で加熱接着させた。この試料を用いて、85℃の雰囲気下、インストロン型引張試験機(オリエンテック製RTM−100)を用いて50mm/分の速度でT−ピール接着力を測定した。結果を表4に示す。
[比較例13〜15]
表4に示す配合処方に変更したこと以外は、実施例1と同様にして光硬化性組成物を調製し、評価した。結果を表4に示す。
Figure 2010265412
(脚注)
(1)イソステアリルアクリレート:新中村化学工業(株)製NKエステル S−1800A(登録商標)
(2)イソミリスチルアクリレート:共栄社化学(株)製ライトアクリレート 1M−A(登録商標)
(3)ラウリルアクリレート:共栄社化学(株)製ライトアクリレート L−A(登録商標)
(4)イソボルニルアクリレート:共栄社化学(株)製ライトアクリレート 1B−XA(登録商標)
(5)コハク酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル):共栄社化学(株)製HOA−MS
(6)ヘキサヒドロフタル酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル):共栄社化学(株)製HOA−HH
(7)フタル酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル):共栄社化学(株)製HOA−MPL
(8)ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート:東亞合成(株)製アロニックス M5300(登録商標)
(9)2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート:共栄社化学(株)製ライトアクリレート P−1A
(10)ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート:共栄社化学(株)製ライトアクリレート DCP−A
(11)ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド:長瀬産業社製イルガキュア 819(登録商標)
(12)水添スチレンブタジエンラバー:JSR製DYNARON 1321(登録商標)
(13)水添SBSブロック共重合体1:水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、JSR製DYNARON 1320(登録商標)
(14)エチレン−ブチルアクリレート共重合体:三井・デュポンポリケミカル(株)製エルバロイ 3717AC(登録商標)
(15)エチレン−エチルアクリレート共重合体:三井・デュポンポリケミカル(株)製エルバロイ 2615AC(登録商標)
(16)水添SBSブロック共重合体2:水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、クレイトンポリマージャパン(株)製クレイトン G1657(登録商標)
(17)アイオノマー樹脂:三井・デュポン社製ハイミラン 1652(登録商標)
(18)マレイン酸変性水添SBSブロック共重合体:マレイン酸変性水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、クレイトンポリマージャパン(株)製クレイトン FG1901X(登録商標)
(19)スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体:(株)カネカ製SIBSTAR 073T(登録商標)
(20)アルコンP−140:荒川化学工業(株)製水素化石油樹脂アルコンP−140(登録商標)
(21)アルコンP−125:荒川化学工業(株)製水素化石油樹脂アルコンP−125(登録商標)
(22)ガラスフレーク:日本板硝子(株)製ガラスフレークRCF−015
(23)アエロジルR976s:日本アエロジル社製アエロジル R976s(登録商標)
(*1)粘度が高くなりすぎて、サンプルの作製ができなかった。
(*2)光硬化物が脆すぎて、接着力の評価ができなかった。
(*3)接着力が低すぎて、接着力評価サンプルの作製ができなかった。
<考察>
表1及び表2の結果から明らかなように、実施例1〜18で得られた光硬化性組成物は、スクリーン印刷適性を有しており、UV硬化前後の質量減少率が小さく、透湿度が低く、かつ、高温でのT−ピール接着力も良好であった。
表3及び表4の結果から明らかなように、比較例1は、極性基含有(メタ)アクリレート、及び脂環族飽和炭化水素樹脂が未添加の光硬化性組成物であり、スクリーン印刷適性及びUV照射前後の質量減少率は良好であるが、透湿度が高く、85℃でのT−ピール接着力が低い。比較例2は、脂環族飽和炭化水素樹脂が未添加の光硬化性組成物であり、スクリーン印刷適性及びUV照射前後の質量減少率は良好であるが、透湿度が高く、85℃でのT−ピール接着力が低い。
比較例3は、飽和熱可塑性エラストマーの割合が大きくなりすぎて、粘度が高くなり、サンプルの作製ができなかった。比較例4は、脂環族飽和炭化水素樹脂が未添加の光硬化性組成物であり、スクリーン印刷適性、UV照射前後の質量減少率、及び透湿度は良好であるが、85℃でのT−ピール接着力が低い。
比較例5は、飽和熱可塑性エラストマーが未添加の光硬化性組成物であり、UV照射前後の質量減少率、及び85℃でのT−ピール接着力は良好であるが、スクリーン印刷適性が悪く、透湿度が高い。比較例6は、極性基含有(メタ)アクリレートとしてω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレートを用いた光硬化性組成物であり、スクリーン印刷適性、UV照射前後の質量減少率、及び透湿度は良好であるが、85℃でのT−ピール接着力が低い。
比較例7は、極性基含有(メタ)アクリレートとして2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートを用いた光硬化性組成物であり、スクリーン印刷適性、UV照射前後の質量減少率、及び85℃でのT−ピール接着力は良好であるが、透湿度が高い。
比較例8は、極性基含有(メタ)アクリレートとしてN,N−ジエチルアクリルアミドを用いた光硬化性組成物であり、スクリーン印刷適性、及びUV照射前後の質量減少率は良好であるが、透湿度が高く、85℃でのT−ピール接着力が低い。
比較例9は、極性基含有(メタ)アクリレートとしてN,N−ジメチルアミノエチルアクリレートを用いた光硬化性組成物であり、スクリーン印刷適性、及びUV照射前後の質量減少率は良好であるが、透湿度が高く、85℃でのT−ピール接着力が低い。比較例10は、極性基含有(メタ)アクリレートの添加量を増やした光硬化性組成物であり、スクリーン印刷適性、UV照射前後の質量減少率、及び85℃でのT−ピール接着力は良好であるが、透湿度が高い。
比較例11は、脂環族飽和炭化水素樹脂の添加量を増やした光硬化性組成物であり、スクリーン印刷適性、UV照射前後の質量減少率、及び透湿度は良好であるが、光硬化物が脆すぎて接着力の評価ができなかった。比較例12は、アイオノマー樹脂を用いた例であり、透湿度や85℃でのT−ピール接着力に優れるものの、溶剤に難溶性であることから、スクリーン印刷により基板上にシーリングパターンを形成することができない。
比較例13は、イソボルニルアクリレートを比較的多量に含有する光硬化性組成物であり、スクリーン印刷適性、UV照射前後の質量減少率、透湿度、及び85℃でのT−ピール接着力が悪い。比較例14は、単官能(メタ)アクリレートとしてイソノニルアクリレートを主成分とする光硬化性組成物であり、スクリーン印刷適性は良好であるが、UV照射前後の質量減少率、透湿度、及び85℃でのT−ピール接着力が悪い。比較例15は、極性基含有(メタ)アクリレートを含まない光硬化性組成物であり、スクリーン印刷適性、及び透湿度は良好であるが、UV照射前後の質量減少率が大きく、かつ、接着力が低すぎて、接着力評価サンプルの作製ができなかった。
本発明の光硬化性組成物は、封止性、電解液に対する耐性、高温での接着力、耐透湿性、スクリーン印刷適性などの諸特性に優れ、色素増感型太陽電池などの湿式有機太陽電池の電解液を封止するためのシーリング層の形成に適した光硬化性組成物として利用することができる。
本発明の光硬化性組成物は、封止性、被着物に対する密着性、耐薬品性などが要求されるシーリング材をはじめとする各種用途に利用することができる。本発明の光硬化性組成物により電解液を封入した色素増感型太陽電池などの湿式有機太陽電池は、信頼性及び耐久性に優れており、新しい太陽電池としての用途に利用することができる。
1 透明基板
2 透明導電膜
3 色素
4 金属酸化物半導体層
5 電解液
6 シーリング層
7 導電膜
8 基板
9 回路
10 負荷
11 回路

Claims (9)

  1. 下記成分(a)〜(e):
    (a)炭素数15〜26の脂肪族単官能(メタ)アクリレート及び炭素数15〜26の脂環族単官能(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1種の単官能(メタ)アクリレート、
    (b)コハク酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、ヘキサヒドロフタル酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、及びフタル酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)からなる群より選ばれる少なくとも1種の極性基含有(メタ)アクリレート、
    (c)飽和熱可塑性エラストマー、
    (d)脂環族飽和炭化水素樹脂、並びに、
    (e)光重合開始剤
    を含有し、かつ、(a)該単官能(メタ)アクリレート100質量部に対する各成分(b)〜(e)の含有割合が、
    (b)該極性基含有(メタ)アクリレートが0.5〜9質量部の範囲内であり、
    (c)該飽和熱可塑性エラストマーが5〜60質量部の範囲内であり、
    (d)該脂環族飽和炭化水素樹脂が10〜70質量部の範囲内であり、及び
    (e)該光重合開始剤が0.1〜10質量部の範囲内である
    ことを特徴とする光硬化性組成物。
  2. 多官能(メタ)アクリレートを、該単官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、0.001〜10質量部の範囲内の割合でさらに含有する請求項1記載の光硬化性組成物。
  3. 充填剤を、該単官能(メタ)アクリレート100質量部に対して、0.001〜50質量部の範囲内の割合でさらに含有する請求項1または2記載の光硬化性組成物。
  4. 該飽和熱可塑性エラストマーが、水添スチレンブタジエンラバー、水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、及びエチレン−ブチルアクリレート共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種の飽和熱可塑性エラストマーである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
  5. 該単官能(メタ)アクリレートが、イソステアリルアクリレートを、該単官能(メタ)アクリレートの全量基準で、70〜100質量%の範囲内の割合で含有するものである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光硬化性組成物。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光硬化性組成物の湿式有機太陽電池用シーリング材としての使用。
  7. シーリング層を介して2枚の基板間に封入された電解液中に有機化合物からなる光電変換層が配置された構造を有する湿式有機太陽電池において、該シーリング層が、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光硬化性組成物から形成された光硬化物層であることを特徴とする湿式有機太陽電池。
  8. 該湿式有機太陽電池が、シーリング層を介して2枚の基板間に封入された電解液中に有機色素からなる光電変換層が配置された構造を有する色素増感型太陽電池である請求項7記載の湿式有機太陽電池。
  9. 該色素増感型太陽電池が、「透明基板/透明導電膜/色素を吸着した金属酸化物半導体膜」の層構成を有する第一導電性基板と該第一導電性基板に対向する第二基板とが、これら両基板の周辺部に枠状に設けたシーリング層を介して配置され、該シーリング層によって形成された両基板間の隙間に電解液が封入された構造を有する色素増感型太陽電池である請求項8記載の湿式有機太陽電池。
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