JP2010259443A - 組織試料およびパラフィン包埋組織から核酸を抽出するための改良方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は組織試料およびパラフィン包埋組織試料からPCR増幅に適する核酸を迅速且つ効率的に抽出する方法を提供する。
【解決手段】抽出は、緩衝剤、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤およびプロテアーゼ酵素を含んで成る組成物を使って、数分以内に達成される。次いでその試料をアルカリ性pHで加熱しそして遠心分離段階の後、上澄液中のDNAを既知の増幅方法、例えばPCRにおいて直接使用することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、核酸の抽出方法およびそのためのキットに関する。特に、本発明は組織試料およびパラフィン包埋組織試料から核酸を抽出する方法に関する。
生物学的診断の分野では、遺伝病、癌および感染症の検出のために、核酸の増幅を含む分子技術の使用が増加してきている。しかしながら、そのような増幅技術を組織または他の重要な臨床試料に適用する際には、核酸調製物中に不純物が存在すると増幅感度や増幅効率を抑制または低下させることがある〔Wilson, I.G., Applied and Environmental Microbiology 63(10):3741-3751, 1997 〕。
古記録(archival)のパラフィン包埋病理学組織試料からのDNA抽出は、分子診断測定を患者の結果と関連づけることができる追想的研究において特に有用である。CrisanおよびMattson により指摘されたように(DNA and Cell Biology 12:455-464, 1993 )、追想的DNA分析の利点は多数あり、そして(i) ウイルス、細菌または原生動物の物質が病因の役割を果たすと疑われ、潜在的な疫学または予後の相関関係が導き出せるようになる、多数の病気経過の研究;(ii)様々なタイプの悪性に関連する内因性DNA異常の研究;(iii) 遺伝病における遺伝したDNAの研究;(iv)古記録試料の使用が、新鮮組織を必要とする予想的研究において可能であるよりも大きな患者研究グループを使用できるようにする、珍しい病気の追想的研究;および(v) 臨床結果が既に知られている場合、特定の病気の有無、形態学的診断またはタイプ、病期、予後、および治療に対する応答と相関関係がある可能性の研究、に適用することができる。
DNAの増幅について報告された方法は、DNAポリメラーゼの使用(例えばポリメラーゼ連鎖反応、PCR)、リガーゼの使用(リガーゼ連鎖反応、LCR)または両方の使用(GAP−LCR)のいずれかに基づいている。それらの方法のうち、PCRが現在まで最も広く使われている。PCRは、適当な条件下でDNA重合剤とデオキシリボヌクレオシド三リン酸の存在下で標的核酸の鎖にプライマーをハイブリダイズせしめることを含んで成る。その結果は、数サイクルの増幅を通じたプライマー伸長生成物の形成、および元の標的配列の数の指数的増加である。PCRについての更なる詳細は、米国特許第4,683,195 号(Mullis他)、同第4,683,202 号(Mullis)および同第4,965,188 号(Mullis他)明細書を調べることにより得ることができる。
固有の感受性のために、一般に試料間の生成物の持ち越しや汚染がPCRおよび核酸増幅方法に伴う問題である。試料調製中の生成物の持ち越しは深刻な問題である。それは試料が外部環境に暴露される時間の量の関数であり、試料収容装置を開放することによって試料を外部環境に暴露しなければならない回数に関係する。よって、迅速であり且つ外部環境への試料の暴露を減少させるかまたは最小にする試料調製方法を提供することが有利である。特に、試料収容装置を開放しなけれならない回数が最小である核酸抽出方法を提供することが有利である。
多数のヒト癌腫においてras プロトオンコジーン中の点変異が高頻度で起こるので、それは潜在的に重要な診断の標的である(Bos, J.L., Cancer Res. 49:4682-4689, 1989 )。例えば、膵癌の90%位がK-ras遺伝子中に変異を含み、大部分はコドン12において起こる(Almoguera 他, Cell 53:549-554, 1998 )。ras 変異の存在を検出する方法は多数存在する。1つの方法として、制限エンドヌクレアーゼ媒介選択的PCR(REMS−PCR)が最近記載されている(WO 96/32500 )。REMS−PCRはPCR熱循環の間に耐熱性制限酵素を使用することに基づく。REMS−PCRは分析と検出を単純化し且つそれに要する時間を大幅に短縮する。
Volenandt 他により指摘されたように、抽出されるDNAの量はPCR反応の収率に大きく影響を及ぼし得る(Polymerase Chain Reaction Analysis of DNA from Paraffin-Embedded Tissue. Methods in Molecular Biology Vol. 15: Current Methods and Applications, 1993, B.A. White 編, Humana Press Inc., N.J. )。固定化組織からのDNAを分析する時、添加する抽出試料の容量とPCR増幅収率との間に反比例関係がしばしば観察される。これは、或る種の固定剤およびTaq DNAポリメラーゼ活性に対する他の阻害剤の影響によるものである。更に、固定またはDNA抽出中に起こる核酸の断片化も、DNA増幅の際に問題となり得る(Greer 他, Am. J. Clin. Pathol. 95:117-124, 1991; Crisan 他, Clin. Biochem. 25:99-103, 1992)。
パラフィン組織片または新鮮組織片からのDNA抽出の場合、典型的には、複雑なDNA調製方法が用いられる。そのような方法は、DNAを遊離させそして核酸増幅を妨害し得るタンパク質を分解するために、界面活性剤の存在下でプロテアーゼ酵素と共に長時間インキュベートすることを必要とする。抽出されたDNAの精製の際に行われるその後の別段階として、混入したRNAを除去するためのRNアーゼによる処理に続き、タンパク質や他の細胞性物質を除去するためのエタノールのような溶媒またはフェノールとイソアミルアルコールのような溶媒混合物を使ったDNAの沈澱、次いでDNAの水和を含み得る(Volenandt 他, Polymerase Chain Reaction Analysis of DNA from Paraffin-Embedded Tissue. Methods in Molecular Biology Vol. 15: Current Methods and Applications, 1993, B.A. White 編, Humana Press Inc., N.J. )。パラフィン包埋組織の場合、普通はプロテイナーゼ段階の前に多段階法においてキシレンのような溶媒を使って抽出することにより、パラフィンが除去される。Banerjee他による最近の報告は、パラフィン包埋組織からのDNA遊離のためのプロトコールを提供している(BioTechniques 18:768-773, 1995)。この方法は次の段階を含む:(1) マイクロウエーブ処理、(2) 遠心分離段階によるパラフィンの除去、(3) プロテイナーゼK消化、および(4) プロテアーゼK活性を失活させるための加熱段階。
Slebosと彼の仲間は、パラフィン包埋組織からDNAを遊離させる方法であって、3つの10ミクロン切片を使用し、非イオン性界面活性剤と共にインキュベートし、そしてプロテイナーゼKと共に18〜24時間インキュベートした後、遠心分離することを含んで成る方法を報告している(Diagnostic Molecular Pathology 1(2); 136-141, 1992)。結果として得られた上澄液はそのままPCR増幅に使われる。
プロテイナーゼKとの長いインキュベーションの必要性および加熱不活性化段階の必要性を回避するために、ニュージーランド特許NZ 233270 の仮明細書は、細胞タンパク質を消化しそして核酸を遊離させるために、プロテイナーゼKに代わるものとして耐熱性プロテイナーゼの使用を記載している。この方法は速さと使用容易性の改善を提供する。しかしながら、その方法では、パラフィン包埋組織から遊離される増幅可能なDNAの量が限定される。
従って、その後の増幅方法に適合する方法で、組織試料から迅速且つ高効率的に核酸を抽出する方法が当業界でまだ要望されている。
本発明は上述の課題を解決し、且つその後の増幅方法に適合する方法で組織試料から核酸を抽出する方法を提供する。よって、本発明の目的は、組織試料およびパラフィン包埋組織試料から核酸を抽出する方法並びにそのためのキットを提供することである。
本発明の他の様々な目的および利点は、発明の詳細な説明から明らかであろう。
一態様では、本発明は、組織試料から核酸を抽出する方法に関する。この方法は、組織試料から核酸を遊離させるのに十分な条件下で、組織試料を緩衝剤、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤およびプロテアーゼ酵素と接触させることを含んで成る。次いでその試料をプロテアーゼ酵素を不活性化するのに十分な時間に渡りアルカリ性pHで加熱する。前記試料を遠心分離することにより、上澄液中に核酸が単離される。
本明細書中に言及される全ての刊行物は参考として本明細書中に組み込まれる。
本発明は、抽出された核酸が既知技術を使ったその後の増幅および検出に適するように、組織試料から核酸を抽出する方法に関する。本発明を使って、新鮮な組織試料とパラフィン包埋組織試料の両方のヒト組織試料から、核酸(DNAおよび/またはRNA)を抽出することができる。本発明を使って核酸を抽出することができる組織の例としては、正常のおよび癌性の肺組織、結腸組織、膵臓組織、胸部組織、前立腺組織、血液および他の体液、並びに検出することができる核酸を含む細胞性物質が挙げられるが、それらに限定されない。
本発明では、着目のDNAを含むと思われる組織試料を、緩衝剤、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤およびプロテアーゼ酵素と同時にまたは連続的に接触せしめる。適当な常用の生物学的緩衝剤としては、pHを約4〜約10、好ましくは約7〜約9で維持する1または複数の有機緩衝剤が挙げられる。有用な緩衝剤としては、非限定的に、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸、3−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸、トリシン、グリシン、トリス(TRIS)、リン酸塩および当業者に容易に明らかな他のものが挙げられる。使用する緩衝剤の量はpKaに依存し、そして所望のpHを維持するのに十分であるものである。
多数の非イオン性界面活性剤のいずれも本発明に使用できる。本発明において有用な界面活性剤の例としては、非限定的に、ポリオキシエチレンソルビタン誘導体、ポリオキシエチレンエーテル、ポリグリコールエーテル、ペルフルオロアルキルポリオキシエチレン、フッ素化アルキルアルコキシレート、およびフッ素化アルキルエステル化合物が挙げられる。他の有用な界面活性剤の種類および各種類の例は、特に界面活性剤の標準参考文献であるMcCutcheon's Emulsfers and Detergents, 1986 North American Edition, McCutcheon Division Publishing Co., Glen Rock, NJ.を参考にすれば、当業者に容易に明白であろう。典型的な非イオン性界面活性剤は米国特許第5,231,015 号(Cummins 他)明細書中にも与えられており、その内容が参考として本明細書中に組み込まれる。非イオン性界面活性剤の組合せも本発明に用いることができる。
プロテアーゼ酵素は組織およびタンパク質を分解して核酸を遊離させるために用いられる。プロテアーゼは遊離したDNAをより安定にするヌクレアーゼも分解し得る。好ましくは、プロテアーゼ酵素は耐熱性である。多種多様なプロテアーゼが本発明に使用することができ、その例としてはセリンプロテアーゼ(E.C. 3.4.21 、例えばトリプシンおよびキモトリプシン)、チオールプロテアーゼ(E.C. 2.4.22 、例えばパパイン、フィシン)、カルボキシプロテアーゼ(酸性プロテアーゼ、E.C. 2.4.23 、例えばペプシン)、およびメタロプロテアーゼ(E.C. 2.4.24 、例えばサーモリシン、プロナーゼ)が挙げられる。温度、pH、イオン強度、および界面活性剤タイプの最適条件は、使用するプロテアーゼによって異なるだろう。好ましいプロテイナーゼとしては、プロテアーゼK〔E.C. 3.4.21.64、トリチラキウム・アルブム(Tritirachium album)から〕、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)からのプロテアーゼ(P6911, Sigma Chemical Company, St. Louis)およびPRETAQが挙げられる。PRETAQは、Peek, K.他(Purification and characterization of thermostable proteinase, Eur. J. Biochem. 207:1035-1044, 1992)により記載されたように、テルムス(Thermus )種RT41株から単離された非常に耐熱性のアルカリ性プロテアーゼである。この酵素は70℃で24時間後に全く活性の損失がなく、且つ室温で6か月以上も活性の損失がないと報告された非常に耐熱性の酵素である。PRETAQおよび同様の耐熱性酵素の使用は、75℃付近およびそれ以上の温度でパラフィンが融解することから、パラフィン組織からのDNAの調製に有利である。よってそのような高度の耐熱性プロテアーゼの使用は、プロテアーゼ消化前にパラフィンを除去するための別個の溶媒抽出プロトコールを行う必要性を除去する。溶媒によるパラフィン除去方法は、上記に引用したVolkenandt他、Wright & Manos、およびGreer による参考文献中に記載されており、それはオクタンまたはキシレンを使った処理に続きエタノールもしくは他のアルコールまたはアセトンのような溶媒を使った処理という多段階処理の使用に基づいている。
試料はDNAを遊離させるのに十分な条件下で緩衝剤、非イオン性界面活性剤およびプロテアーゼ酵素と接触せしめられる。使用する条件は、使用する組織試料とプロテアーゼによって異なるだろうが、それは当業者により容易に決定することができる。例えば、PRETAQプロテアーゼを使う時、70℃〜100 ℃において、温度によって5分間〜3時間、試料を緩衝剤、非イオン性界面活性剤およびプロテアーゼと接触させることができる。90℃〜100 ℃で10〜15分間が好ましい。プロテアーゼKを使う場合、試料を30分〜24時間、緩衝剤、非イオン性界面活性剤およびプロテアーゼと接触させることができる。30分〜60分間が好ましい。
次いでプロテアーゼを不活性化するのに十分な時間に渡りアルカリ性pHで試料を加熱する。試料のpHは、アルカリ性pHが得られるまで試料に水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを添加することにより調整することができる。次いで抽出された核酸を遠心分離により単離することができる。
本発明に開示される方法は多数の利点を有する。本発明の方法は迅速であり、潜在的に毒性の溶媒を使用する必要性をなくし、そして試料収容装置を開放しなければならない操作の回数を最小にする。加熱したアルカリでの処理段階を含めることは、多分二本鎖DNAを変性させそしてそれをPCRで一層容易に増幅できる一本鎖DNAの小片に変えることにより、PCR増幅を改善する。熱アルカリでの処理はプロテアーゼを変性させ、そのため残余のプロテアーゼ活性がその後の増幅に必要なTaq ポリメラーゼまたは他の酵素を阻害してしまうかもしれないという心配を取り除くと期待される。第三に、PCR増幅を阻害することが知られている幾つかの化学物質(ヘパリン、ビリルビン、ヘモグロビン等)が熱アルカリ処理により変性されることも期待される。第四に、熱アルカリ処理は、或るPCR増幅プロトコールを妨害することがあるRNAを破壊する。最後に、熱アルカリ処理はまた、脂質、脂肪酸および他の重要な細胞膜の可溶化をもたらすと期待されよう。この細胞膜の完全性の破壊は更に、細胞および組織から遊離されるDNAを増加させると期待される。
本発明に従って組織試料から抽出される核酸は、当該技術分野で既知の方法(例えばPCRやLCR)を使ったその後の増幅に適当である。PCRを使った核酸の増幅および検出のための一般原理および条件は十分に周知であり、その詳細は多数の刊行物、例えば米国特許第4,683,195 号(Mullis他)、同第4,683,202 号(Mullis)および同第4,965,188 号(Mullis他)明細書に提供されている。それらの刊行物は全て参考として本明細書中に組み込まれる。好ましくは、PCRは耐熱性DNAポリメラーゼを使って実施される。多数の適当な耐熱性DNAポリメラーゼが当該技術分野において報告されており、例えば米国特許第4,965,188 号(Gelfand 他)および同第4,889,818 号(Gelfand 他)明細書中に詳細に記載されている。その両刊行物は参考として本明細書中に組み込まれる。PCRにおいて使用することができる他の試薬としては、例えば、増幅前に耐熱性DNAポリメラーゼを抑制する、該DNAポリメラーゼに特異的な抗体が挙げられる。そのような抗体は米国特許第5,338,671 号(Scalice 他)明細書(その内容は参考として本明細書に組み込まれる)中に記載されたモノクローナル抗体により代表される。
増幅された核酸は、多数の既知方法、例えば米国特許第4,965,188 号(Gelfand 他)明細書に記載されたものにより検出することができる。例えば、増幅された核酸はサザンブロット法、ドットブロット技術、または標識プローブによる非同位体オリゴヌクレオチド捕捉検出法を使って検出することができる。あるいは、適当に標識されたプライマーを使って増幅を実施し、そして前記標識の検出のための手順および装置を使って増幅されたプライマー伸長生成物を検出することができる。よって、当該技術分野の技術と本明細書中に提供される特別な技術を考慮すれば、当業者は、新鮮組織試料またはパラフィン包埋組織試料からその後のPCR増幅および検出に適当な核酸を抽出するために何ら困難なしに本発明を実施できるだろう。
本明細書中、時間に対して言及する時、「約」という語は、その時間限界値の±10%を指す。温度に対して言及する時、「約」という語は、±5℃を指す。
次の実施例は本発明の幾つかの態様を例証するために提供されるのであって、本発明を限定するものと解釈してはならない。
材料および方法
パラフィン包埋組織
パラフィン包埋組織の分析用に、パラフィン塊から10ミクロン片を切り取り、そして1.5 mLの無菌スクリューキャップ付試験管に入れた。試料間の汚染を防止するために、新たなパラフィン塊毎に新しい刃を使った。各切片を切った後、圧縮空気の噴射により、刃とミクロトーム領域を清浄した。新しい木製アプリケーター棒を使って各切片を収容試験管に移した。
制限エンドヌクレアーゼ媒介選択的PCR(REMS−PCR)変異分析
REMS−PCRを使ってK−ras 遺伝子のコドン12の1番目と2番目の塩基の変異を検出した。各PCR反応は3セットのプライマーを含んだ(表1)。診断プライマーは野性型ras 中にBstN-1制限部位を誘導するが、コドン12の変異は誘導しない。よって、ras 野性型DNAはPCR熱循環の間に選択的に開裂され、そしてコドン12のところのras 変異型配列が富化される。PCR対照プライマーはPCR増幅可能DNAが抽出されることを確かめ、そして酵素対照プライマーは制限酵素が機能していることを確かめるために用いる。
Figure 2010259443
REMS−PCR用の反応混合物は、12単位/100 μL の組換えTaq ポリメラーゼ、0.842 μL のTaq 阻害抗体TP4-9.2 (5倍過剰)、10 mM HT50緩衝剤(100 mM NaCl および50 mM Tris-HCl, pH 8.3)、0.3 μM のプライマー 5BKITおよび3K2 、0.05μM のプライマー 5BK5, 3K6, 5BK28 および3K29、0.2 mM全ジヌクレオシド三リン酸(dNTPs )、0.6 単位/μL のBstn1 (New England BioLabs, Beverly, MA)、1mMジチオスレイトール(DTT) 、4mM MgCl2、試料(典型的には3μL )並びに最終容量100 μL までの脱イオン水を含んだ。典型的には、Taq ポリメラーゼと抗Taq 抗体を混合し、そして10〜15分間インキュベートした後、その他のPCR反応成分を添加した。Bstn1 制限酵素は、試料の添加の直前に最後に反応混合物に添加した。
上記反応混合物を、米国特許第5,089,233 号、同第5,229,297 号および同第5,380,489 号明細書に記載された核酸増幅および検出のためのオルソ−クリニカル ダイアグノスティクス,インコーポレイティドのパウチ収容システムを使って増幅しそして検出した。簡単に言えば、上述した通りに試料とPCR試薬を混合し、パウチの膨れ部分(ブリスター)に充填し、そしてパウチをシールした。ビオチン標識診断プライマー、PCR対照プライマーおよび酵素対照プライマーを増幅に使った。「PCR反応ブリスター」を94℃で1分間加熱し、次いで30サイクル増幅させた。各サイクルは、94℃の融解温度および10秒間のインキュベーションに続き、58℃で75秒間のアニーリングを含んだ。103 ℃で5分間の加熱後インキュベーションの後、反応生成物を検出チャンバーに通過させ、そこで反応生成物がビーズに取り付けた相補的オリゴヌクレオチド(オリゴ体;表2)とハイブリダイズすることにより、増幅生成物を検出した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)路および洗浄路は55℃であり、一方、検出路では40℃の温度を使った。HRP−ストレプトアビジンおよびその後にHRP−色素基質を検出路に通過させた後、ハイブリダイズした生成物を検出した。
Figure 2010259443
表2の各オリゴヌクレオチドの3′末端に、ポリスチレンビーズへの付着のために次の配列:557Tを有するリンカーを使用した。ここで塩基#5はテトラエチレングリコール(TEG) スペーサーであり、そして塩基#7はアミノジオールリンカー(ADリンカー)であり、そしてTはチミジン配列である。
各パウチは3つの検出ブリスターを含み、各々が200 μL の液体を有した(ストレプトアビジン−HRP 200μL /ブリスター;洗浄溶液 200μL /ブリスター;および色素/ゲル 200μL /ブリスター)。ブリスターの順序はストレプトアビジンブリスター、次に洗浄溶液ブリスター、そして最後に色素/ゲルブリスターであった。
捕捉オリゴ体ビーズは次の順序でパウチ中に配置された(流れの方向で):INC 26.7a , K-Cap 6M, 無スポット, K-CapD8, 無スポット, K-Cap2E およびINC 26.7a 。
実施例1Pre-Taq 処理後、NaOHおよび加熱処理の有無のもとでのパラフィン包埋組織からのDNAの抽出
この実施例では、異なる癌試料からの厚さ10ミクロンのパラフィン切片を次のように抽出した。ミクロトーム切断後、切片試料を1.5 mLのスクリューキャップ付超遠心管に入れた。80μL のTEK緩衝液(10 mM Tris-HCl緩衝剤, pH 8.0および0.5 %Tween 20)を添加し、次いで10μL の耐熱性プロテアーゼK(Pre-Taq )(0.3 単位/μL, Gibco/BRL Products, Gaithersburg, MD )を添加した。試験管を100 ℃で5分間加熱した。まだ熱い状態で1セットの複製試験管を14,000 rpmで2分間遠心分離し、そしてパラフィン層の下の上澄液を新しい試験管に移し、分析まで4℃で冷蔵保存した。第二セットの複製試験管に、10μL の250 mM NaOH を加え、そして試験管をヒートブロック中で105 ℃で3分間加熱した。まだ熱い状態でその試験管を14,000 rpmで2分間遠心分離し、そしてパラフィン層の下の上澄液を取り出し、新しい試験管に移し、分析まで4℃で保存した。
各上澄液の5μL を1mLキュベットに添加し、そしてBeckman DU70型分光光度計上で260 nmの吸光度を測定することにより、DNA濃度を決定した。その結果を下の表3に与える。
Figure 2010259443
ここで調べた組織の各々について、NaOH処理を行った時のパラフィン片からはPre-Taq 処理だけのものと比較して、抽出されたDNA量に約2倍の増加が観察された。
各上澄液の4μL を、上述した「パウチアッセイ」におけるREMS−PCRに基づいて、コドン12のK−ras 変異の検出を目的としたPCR増幅にかけた。パウチ法での二重反復アッセイの結果を表4に与える。
Figure 2010259443
上記結果は、NaOH処理した膵臓組織切片からのDNA抽出についてのK-12 ras診断用目視評点が、NaOH処理しない対照と比較して、有意な増加を示す。NaOH処理した直腸結腸癌および肺癌切片においても、対照と比較して、わずかではあるが検出可能な評点の改善を示した。扁桃癌試料はNaOH処理をしてもしなくても強力な増幅(目視評点が6)を示した。
実施例2プロテアーゼKでの処理後、NaOH処理したまたは処理しないパラフィン包埋組織からのDNAの抽出
この実験では、次のようにして4つの異なるパラフィン包埋結腸直腸片を処理した:ミクロトープ切断後、各切片を1.5 mLのスクリューキャップ付遠心管に入れた。87μL のTEK緩衝液を添加し、次いで3μL の耐熱性プロテアーゼK(Gentra Systems, Inc., Minneapolis, MN )を添加した。試験管をヒートブロック中で65℃で4時間インキュベートした。1セットの複製試験管を100 ℃で5分間ヒートブロック中に置き、そしてまだ熱い状態で14,000 rpmで2分間遠心分離し、そしてパラフィン層の下の上澄液を新しい試験管に移し、分析まで4℃で保存した。第二セットの複製試験管に、10μL の250 mM NaOH を加え、そして試験管をヒートブロック中で105 ℃で3分間加熱した。まだ熱い状態でその試験管を14,000 rpmで2分間遠心分離し、そしてパラフィン層の下の上澄液を取り出し、新しい試験管に移し、分析まで4℃で保存した。
上述したのと同様に分光光度測定した時、プロテアーゼK処理細胞を使った実験の結果は、対照に比較して、NaOHで処理した試料において抽出されるDNAがわずかにしか増加しなかったことを示す。しかしながら、表6に示されるように、NaOHで処理した試料ではPCR対照プライマーを用いた増幅は強力であり、そしてNaOH処理段階を省略するとPCR対照プライマーによる増幅は全く検出されなかった。
Figure 2010259443
Figure 2010259443

Claims (1)

  1. 組織試料から核酸を抽出する方法であって、前記試料から前記核酸を遊離させるのに十分な条件下で、前記試料を緩衝剤、少なくとも1つの非イオン性界面活性剤およびプロテアーゼ酵素と接触させ;
    前記プロテアーゼ酵素を不活性化するのに十分な時間に渡り、アルカリ性pHで前記試料を加熱し;そして
    前記試料を遠心分離して上澄液中に前記核酸を単離する
    ことを含んで成る方法。
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