JPH099967A - 核酸合成法 - Google Patents
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Abstract
害されないポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を提供す
ることにより、PCRに付す核酸含有試料の前処理を簡
便、迅速なものとすることを目的とする。 【構成】 PCR反応液の25℃温度条件下でのpH値
を 8.9以上にしたことを特徴とする。
Description
メラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction :以下
PCRと略す)法による核酸合成法に関する。
をはさんで、プライマーを結合させ、DNAポリメラー
ゼを作用させて、DNA合成反応を繰り返すことによっ
て、目的のDNA断片を数十万倍にも増幅できる方法で
ある。PCR法は、マリス氏らの発明である特開昭61
−274697号に述べられている。
分析法として使用可能で、特に動物体液由来の試料中の
核酸の分析法に使用できる。従って、PCR法は、微生
物に起因する伝染病や遺伝病やガンの診断等に利用され
る。さらに、PCRは移植や親子鑑定の際のDNAタイ
ピングの検査にも適した方法である。これらの場合末梢
血液が検査対象に選ばれる場合が多い。
糖類あるいは未知の夾雑物が反応を阻害することであ
る。従って、PCR法によるDNA増幅に先立つて被験
物から細胞、細菌、ウィルス等(以下、遺伝子包含体と
称する)を分離し、そして、その遺伝子包含体からのD
NAの抽出が必要である。阻害を除去するために、酵
素、界面活性剤、カオトロピック剤等により遺伝子包含
体を分解し、その後、フェノールあるいはフェノール・
クロロホルム等を用いて、遺伝子包含体の分解物からD
NAを抽出する方法が従来より使用されている。最近で
はDNA精製法として、イオン交換樹脂、ガラスフィル
ターあるいはタンパク凝集作用を有する試薬が使用され
ている。
LECTAGENE」(AMRAD社)の名で市販され
ている。この試薬キットを用いて試料は以下の手順で前
処理される。
血を試験管中で「マグネティクパーティクル」とよく混
合し、これにより白血球と「マグネティクパーティク
ル」を結合させる。
した白血球をリン酸緩衝液で洗浄する。
した白血球は、結合状態のままでプロテアーゼで分解
し、これによりたんぱくは分解され、白血球中のDNA
が遊離される。
不活性化するため加熱し、冷却後白血球由来の遊離DN
Aを含む溶液を得て、この溶液はそのまま次のPCRに
使用される。
出したり、その塩基配列の研究に使用され、従って、診
断の他にも医学用途、産業用途、環境用途等に利用され
る。例えば、RNA−PCRは、肝炎の原因となるC型
肝炎ウィルス(HCV)や後天性免疫不全症候群の原因
となるHIVウィルスの検出に使われる。
存在下で目的RNAを鋳型にして相補的なDNA(cD
NA)が合成される。そして、このcDNAがPCRで
増幅される。従来の技術では、試料中のRNAをRNA
−PCR法で取り扱う場合には、RNAの精製処理は必
須である。基本的にRNAは、DNA精製法と同様な方
法により精製される。
おいて不純物の完全な除去は困難であり、このため引き
続く核酸合成が、とりわけ試料中の目的とする核酸の含
量が少ない場合には、うまくできない場合が多い。ま
た、これら精製法は操作が煩雑で時間を要し、また操作
中のコンタミネーションの機会が高い。
うな、改良された核酸精製法は、伝統的な手法に比較し
て精製時間が短く、簡単になりつつあるが、それでも精
製に1時間程度は必要であり、また不純物の完全な除去
は困難であり、かつ多段階の操作手順中にDNAがコン
タミネーションする機会は依然として高い。PCR法
は、試料中の1分子のDNAでも増幅できるほど鋭敏な
手法なので、コンタミネーションが原因で予期せぬ結果
が得られ重大な問題を引き起しかねない。従って、コン
タミネーションの可能性の低い、より簡便な試料前処理
法が望まれている。
は、不純物の存在下でもPCRが可能な反応法および反
応試薬を提供することにある。
遺伝子を直接増幅出来る核酸合成法を提供することにあ
る。言い換えれば、試料、特に動物体液由来試料もしく
は試料中に含まれる遺伝子包含体の反応系への直接添加
によってもPCRが可能な反応法および反応試薬を提供
することにある。
下でもPCRが可能な反応法に適した試薬キットを提供
することにある。
体液および排泄物あるいは環境試料中に存在する遺伝
子、とりわけDNAの増幅に適したPCR改良法および
PCR反応試薬を提供することにある。
する遺伝子を増幅する核酸合成法において、遺伝子包含
体または遺伝子包含体を含む試料とPCR反応液を混合
し反応させることを特徴とする。また、本発明は試料中
の目的とする遺伝子を増幅する核酸合成法において、反
応液のpH値を 8.9以上(25℃での値)にしたことを
特徴とする。さらに、pH緩衝液並びにプライマー、デ
オキシリボヌクレオチド類及び熱安定性ポリメラーゼを
含み試料中の目的とする遺伝子を増幅する核酸合成法に
用いる試薬キットにおいて、当該pH緩衝液が、当該キ
ットを使用するPCR反応液のpHが25℃の温度条件
下で 8.9以上となるpH緩衝能力を有するpH緩衝液と
したことを特徴とする。
動植物組織、体液、排泄物あるいは環境試料等をいい、
遺伝子包含体とは細胞、細菌、ウイルス等をいう。体液
には血液やダ液が含まれ、細胞には血液から分離した白
血球が含まれるが、これらに限定されるものではない。
た白血球で直接PCRを行う場合には当該反応液中のp
H値は9.1 (25℃での値)以上とすることが好まし
い。また、本発明により赤血球の溶血等の前処理を施す
ことなく、血液試料でPCRを行う場合には当該反応液
中のpH値は9.1 (25℃での値)付近とすることが好
ましい。さらに、ダ液試料より直接PCRを行う場合に
は当該反応液中のpH値は8.9 (25℃での値)付近と
することが好ましい。
合成法に用いる反応液は、通常、pH緩衝液並びにMg
Cl2 、KCl等の塩類、プライマー、デオキシリボヌ
クレオチド類及び熱安定性ポリメラーゼを含むものであ
る。また、上記の塩類は適宜他の塩類に変更して使用さ
れている。また、ノニデットP−40、ポリオキシエチ
レンソルビタン類等の界面活性剤、ゼラチン、アルブミ
ン等の蛋白、ジメチルスルホキシド等種々の物質が添加
される場合がある。本発明はPCR実施者が自身で反応
液を調整して実施することもできるし、またこれらの反
応液を構成する全部あるいは一部を試薬キットにして提
供すれば、本発明の実施がより確実、容易になる。
り、本発明によれば、従来多用されているpHよりも高
いpH条件下でPCRが行われる。つまり、PCR法の
一連の加熱サイクルは、25℃温度条件下でのpH値が
8.9以上の反応液中で行われる。
った試料を用いてDNA増幅が進行する。例えば、全血
は低張液と混合され、赤血球が破壊される。続いて残っ
た遺伝子包含体が集められる。集められた遺伝子包含体
は、そのまま増幅反応用の試薬類、プライマー及びDN
Aポリメラーゼ等と混合されPCRサイクルが行われ
る。
液由来の試料の反応系への直接添加によってもDNA増
幅が可能となる。つまり、動物体液由来の試料、例え
ば、全血、血漿、血清又はダ液はそのまま増幅反応用の
試薬類、プライマー及びDNAポリメラーゼ等と混合さ
れPCRサイクルが行われる。
Rの一工程としてPCR反応液がDNAの変性の目的で
高温条件にさらされたときに、遺伝子包含体は破壊され
DNAが遊離される結果、プライマー等のPCRに必要
な試薬がDNAに接触可能となる。この際、PCR反応
液中に血液成分やダ液成分等が存在するが、それにもか
かわらず、この改良されたPCR法によればDNA増幅
が生ずる。さらに、PCRによる増幅産物は、直接制限
酵素等による切断が可能であるため、増幅産物の制限酵
素切断後のフラグメントの長さの比較(PCR−RFL
P)が容易となる。
液は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと塩
酸、硝酸、硫酸等の鉱酸の組合せであり、鉱酸の中で望
ましいものは塩酸である。また、CAPSO(3-N-Cyclo
hexylamino-2-hydroxypropanesulfonic acid) あるいは
CHES(2-(Cyclohexylamino)ethanesulfonic acid)と
苛性ソーダ、苛性カリとの組み合せによるpH緩衝液等
種々のpH緩衝液が使用され得る。
中で10mMから100mMの間の濃度で使用される。
試薬等の存在下に合成の開始点として働くオリゴヌクレ
オチドをいう。プライマーは一本鎖であることが望まし
いが、二本鎖も使用できる。もし、プライマーが二本鎖
の場合には、増幅反応に先立って一本鎖状にすることが
望ましい。
ことができるし、また、生物界から単離することもでき
る。
本鎖、二本鎖およびDNAとRNAよりなる二本鎖を意
味する。
る。両端の一定個数以上のプライマーが準備できれば、
核酸は本発明により増幅することができる。
よる核酸を合成する酵素あるいは、かような化学合成系
を意味する。適切な合成酵素としては、E.coliのDN
AポリメラーゼI、E.coliのDNAポリメラーゼのク
レノーフラグメント、T4DNAポリメラーゼ、Taq
DNAポリメラーゼ、T.litoralis DNAポリメラー
ゼ、TthDNAポリメラーゼ、PfuDNAポリメラ
ーゼそして逆転写酵素などがあるが、これらにのみ限定
されるものではない。
定性”は、高温下好ましくは、65−95℃でもその活
性を保持する化合物の性質を意味する。
が、いかなる意味においても本発明を限定的に解釈する
ための意味を有するものではない。
験である。PCR中の熱サイクルの各段階等で反応液の
pHを一定の値に保つため、反応液に加えるトリス緩衝
液のpHを種々変えてPCRを行った。
β−グロビン遺伝子領域内に位置する174塩基のDN
A鎖である。従来技術を用いて以下の2種類のプライマ
ーを作成した。
ACTAGC3′ P2:5′CACATACCTCCTTCCACTCG
3′ このP1プライマー(P1、配列番号:1)は、当該D
NA鎖のプラス鎖と相同性を有し、P2プライマー(P
2、配列番号:2)は、当該DNA鎖のマイナス鎖と相
同性を有する。
レート(integrate)されたDNAのモデルとして、霊長
類の血液に微量のげっ歯類の血液を混合して用いた。ヒ
ト白血球の一部にインテグレートされたDNAとは例え
ば、ウィルスにより生体内に持ち込まれたDNAであ
る。
緩衝液(2.68mM KCl、1.47mM KH2 PO4 、
8.1mM Na2 HPO4 、137mM NaCl)で
段階希釈し、2μl中に白血球が104 、103 、10
2 、10、0個含まれる希釈溶液を得た。
血液27μl(1μl中に5,100 個の白血球を含む)を
0.6mlのディスポーザブルチューブに入れ、上述の段
階希釈したBalb/cマウス全血希釈液を2μlずつ
混合した。
4mM NaCl、1mM EDTA)を加え攪拌し
た。チューブを氷中に1分間放置し、浸透圧の低下によ
り赤血球を溶血した後、4℃下10,000回転/分、1分間
遠心分離した。上澄液をマイクロピペットで取り除き、
残査の白血球ペレットをそのままDNA増幅反応に使用
した。
を調べるためにpHを種々に調整したトリス緩衝液を作
成した。
1モルの水溶液を作成した。その後、当該溶液を6部に
分割し、各々に塩酸溶液を滴下して、各々pHを25℃
の温度条件下で8.3 、9.1 、9.5 、10.0、10.5、11.0に
調整した。これらトリス緩衝液は、以下の表1に記載し
た反応液の構成成分として使用した。
反応液中の最終のトリス濃度が10mMになるように加
えた。
わち、 デオキシ−アデノシン−三リン酸(dATP) デオキシ−グアノシン−三リン酸(dGTP) デオキシ−チミジン−三リン酸(dTTP) デオキシ−シチジン−三リン酸(dCTP) TaqDNAポリメラーゼ 2.5単位(パーキンエルマー
シータス社の市販品「Ampli Taq」を使用) 前記の白血球ペレットに、この反応液100μlを加え
たチューブに75μlの鉱物油を加えた。
ず、反応液の入ったチューブは、94℃の温度条件下に
1分半置かれた。これにより、DNAの遊離と変性が行
われる。 その後に、以下の表2の温度サイクルを使っ
て、PCRが40回行われた。
せた。
ロースゲル電気泳動法を使用した。3%のアガロースゲ
ルに、PCR終了後の反応液10μlを添加し、TAE
緩衝液中(40mM トリス酢酸と1mM EDTA
pH8.0 )で、3〜4V/cmの電圧下に40分間電気
泳動した。その後、発けい光試薬として 0.5μg/ml
のエチジウムブロマイド溶液を使用し、DNAバンドを
検出した。
スヒドロキシメチルアミノメタンは双極子形のイオン性
緩衝液であり、20℃でのpKaは8.3 、そのΔpKa
は−0.021 である。従って、PCR中の反応液のpH値
は、25℃での測定値より低くなっているであろうこと
が予測される。
るために、種々の温度下で反応液のpHを測定した。す
なわち、上述のPCR反応溶液を25℃、55℃、70
℃のインキュベータ内に置き、そのpHをpHメーター
で測定した。以下の表3はその測定結果である。
図1に示した。図1中でA〜Fは、PCR反応液の作成
に使用した1Mトリス緩衝液のpHの違いを示す。すな
わち、Aは8.3 、Bは9.1 、Cは9.5 、Dは10.0、Eは
10.5、Fは11.0のpHを各々示している。さらに、図1
中の1〜5の数字は、各々ターゲットDNAが含まれて
いるマウス白血球の濃度を示している。すなわち、1は
104 個、2は103 個、3は102 個、4は10個、
5は0個のマウス白血球がPCR反応液中に含まれてい
ることを示している。文字Mは制限酵素HincIIで
切断した250ngのφX174RFDNAであり、分
子量マーカーとして用いている。図中Tは増幅目的とし
たDNA鎖バンドの泳動位置を示している。
は、DNAバンドは検出されていない。すなわち、通常
のPCRで用いられているpH8.3 のトリス緩衝液を用
いて作成したPCR反応液を使用した場合には、反応液
が104 個のマウス白血球を含んでいてもDNA鎖の増
幅が生じなかった。
用いて作成したPCR反応液を使用した場合には、B1
とB2のレーンで増幅されたDNAが検出された。つま
り、マウス白血球濃度が比較的高い104 、103 個の
白血球を含む反応系において、PCRによるDNA増幅
が観察された。
D、E、Fの1、2レーンのみならず、各々の3レーン
でも検出された。これは、pHが9.5 、10.0、10.5、1
1.0の緩衝液を使用して作成した反応液を用いてPCR
を行った場合には、104 個、103 個のマウス白血球
という比較的白血球濃度が高い状態のみならず、マウス
白血球102 個を含んだ反応系でもDNA増幅が生じた
ことを現わしている。
PCRを行った実験である。本実験例においては、PC
R反応液のpH緩衝液として、CHES緩衝液(2-(Cycl
ohexylamino)ethanesulfonic acid)とCAPSO緩衝液
(3-N-Cyclohexylamino-2-hydroxypropanesulfonic aci
d) を使用した。
用したマウス遺伝子の一部分と同一である。ウィルスに
感染した人間の血液のモデルである実験血液系も実験例
1とほぼ同一であり、以下に述べるように作成された。
血液26.5μl(1μl中に 5,200個の白血球を含む)を
ディスポーザブルチューブに入れた。段階希釈したBa
lb/cマウス全血希釈液2μlをチューブに入れ混合
して、目的DNA濃度の異なる実験血液系を作成した。
この実験血液系は、各々マウス白血球を104 、1
03 、102 、10、0個ずつ含んでいる。
た。すなわち、150μlの低張液(34mM NaC
lと1mM EDTA)をそれぞれのチューブに加え、
よく混合した。チューブを氷中に5分間放置し、浸透圧
の低下により赤血球を溶血した後、4℃で10,000回転/
分、1分間遠心分離した。上澄液をマイクロピペットで
取り除き、残査の白血球ペレットをそのままDNA増幅
反応に使用した。
に、CHESあるいはCAPSO緩衝液を使用した以外
は、実験例1と同一である。
た。CHESを蒸留水に溶解して200mMのCHES
水溶液を作り、2つに分割する。各々の溶液に水酸化ナ
トリウム水溶液を滴下し、そのpHを25℃温度条件下
で8.3 と9.0 に各々調整した。
た。CAPSOを蒸留水に溶解して200mMのCAP
SO水溶液を作り、水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、
そのpHを25℃温度条件下で9.5 に調整した。これら
緩衝液は、以下の表4に記載したPCRの反応液の構成
成分として使用した。
衝液のいずれかをCHESの最終濃度が10mMになる
ように加える。
O緩衝液をCAPSOの最終濃度が10mMになるよう
に加える。
わち、 デオキシ−アデノシン−三リン酸(dATP) デオキシ−グアノシン−三リン酸(dGTP) デオキシ−チミジン−三リン酸(dTTP) デオキシ−シチジン−三リン酸(dCTP) TaqDNAポリメラーゼ 2.5単位(パーキンエルマー
シータス社の市販品「Ampli Taq」を使用) 前記の白血球ペレットに、この反応液100μlを加え
たチューブに75μlの鉱物油を加えた。加熱サイクル
の条件及びゲル電気泳動による増幅DNAの検出方法も
実験例1と同様である。
あり、CAPSOのpKaは10.0と報告されている。異
なった温度条件下で反応液のpHを測定した結果は、以
下の表5の通りであった。
図を図2に示した。図2の各レーンに付した記号のう
ち、Aは200mMCHES緩衝液pH8.3 、Bは20
0mMCHES緩衝液pH9.0 、Cは200mMCAP
SO緩衝液pH 9.5を用いたことを示している。さら
に、図2中のレーンに付した1〜5の数字は、ターゲッ
トDNAが含まれているマウス白血球の濃度を示してい
る。すなわち、1は104 個、2は103 個、3は10
2 個、4は10個、5は0個のマウス白血球が含まれて
いたことを示している。文字Mは制限酵素HincII
で切断した250ngのφX174RFDNAであり、
分子量マーカーとして用いている。図中Tは増幅目的と
したDNA鎖バンドの泳動位置を示している。
たPCR反応液でPCRを行った場合には、A1とA2
レーンで増幅された弱いDNAバンドが検出された。p
H9.0 のCHES緩衝液を用いて作成したPCR反応液
でPCRを行った場合には、B1、B2のレーンで強
い、B3のレーンで弱い増幅されたDNAバンドが検出
された。CAPSO緩衝液pH9.5 を用いて作成したP
CR反応液を使用した場合には、C1、C2、C3のレ
ーンで増幅されたDNAが観察された。
の増幅に正の効果を及ぼすことが観察された。
を行った後PCR反応を行った実験である。
緩衝液で段階希釈したマウス血液を添加した血液を試料
とした。実験例1、2と同様に、マウス血液中のDNA
は、カニクイザルに持ち込まれた外来性DNAのモデル
である。
mM KCl、1.47mM KH2 PO4 、 8.1mM N
a2 HPO4 、137mM NaCl)で段階希釈し、
2μlに白血球が104 、103 、102 、10、0個
含む溶液を作成した。
ル血液9μl(1μl中に白血球15,000個を含む)をデ
ィスポーザブルチューブに入れた。このチューブに上記
マウス全血希釈液を2μlずつ加えた。
OLLECTAGENEの名称で販売されているマグネ
ティクパーティクル溶液をその取扱い説明に従い、リン
酸緩衝液で51倍に希釈した。そのリン酸緩衝液252
μlを上記血液が含まれているチューブに加え、室温条
件下に10分間放置したのち、白血球が付着したマグネ
ティクパーティクルを磁石で一端に集め、溶液はピペッ
トで取り除いた。
ルは、これ以降の洗浄、精製等の処理を行うことなく、
次のPCR反応行程に使用した。PCRのプライマーと
反応条件等は、実験例1と同様である。ここでも、反応
液のpHとDNA増幅との関係を知るために、トリス緩
衝液のpHのみが異なる2つの反応液でPCRを行っ
た。すなわち、実験例1で述べたと同一の方法により、
pH8.3 とpH9.5 の1Mトリス緩衝液を作成した。
に記載したプライマー、dNTP、Taqポリメラーゼ
等を含むPCR反応液を作成しチューブ中の白血球付着
粒子に100μlづつ加え、更に75μlの鉱物油を加
えた。PCRの温度サイクル(表2に記載した)とゲル
電気泳動による検出条件もまた実験例1と同一である。
ゲル電気泳動図を図3に示した。図3中AはPCRがp
H8.3 のトリス緩衝液を用いて作成したPCR反応液を
使用して行われたことを示し、BはPCRがpH9.5 の
トリス緩衝液を用いて作成したPCR反応液を使用して
行われたことを示している。また数字の1〜5は、目的
DNAを含むマウス白血球の異なる濃度を示すものであ
り、1は104 個、2は103 個、3は102 個、4は
10個、5は0個を示す。文字Mは分子量マーカーを示
し、制限酵素HincIIで切断した250ngのφX
174RFDNAである。図中Tは増幅目的としたDN
A鎖バンドの泳動位置を示している。
5レーンには、目的DNAのバンドが検出されていな
い。つまり、通常のPCRで用いられているpH8.3 の
トリス緩衝液を用いて作成したPCR反応液を使用した
場合には、104 個のマウス白血球を含んでいてもDN
Aの増幅が生じなかった。
は、目的DNAのバンドが検出された。すなわち、pH
9.5 のトリス緩衝液を用いて作成したPCR反応液を使
用した場合には、マウス白血球を103 、104 個含む
反応系で目的DNAの増幅が生じた。
1、2と異なる前処理を施した試料を使用してPCRを
行った。本実験例3においてもPCR反応が、高pH条
件で夾雑物の阻害が少なく行なわれることが確認され
た。
てPCRを行った実験である。PCR中の熱サイクルの
各段階等で反応液のpHを一定の値に保つため、反応液
に加えるトリス緩衝液のpHを種々変えてPCRを行っ
た。
−グロビン遺伝子領域内に位置する408塩基のDNA
鎖である。従来技術を用いて以下の2種類のプライマー
を作成した。
ACAGGTAC3´ GH21:5´GGAAAATAGACCAATAGG
CAG3´ (Saiki,R.K. et al., Science 239 487-491(1988) このGH20プライマー(配列番号:3)は当該DNA
鎖のプラス鎖と相同性を有し、GH21プライマー(配
列番号:4)は当該DNA鎖のマイナス鎖と相同性を有
する。
2、1、または0.1μl(1μl中に3700個の白
血球を含む)を直接、DNA増幅反応に使用した。
を調べるために実験例1で作成したpHを種々に調整し
たトリス緩衝液を使用した。
1モルの水溶液を作成した。その後、当該溶液を4部に
分割し、各々に塩酸溶液を滴下して、各々pHを25℃
の温度条件下で8.3 、9.1 、9.5 、10.0に調整した。こ
れらトリス緩衝液は、以下の表6に記載した反応液の構
成成分として使用した。
反応液中の最終のトリス濃度が10mMになるように加
えた。
6μM MgCl2 1.5mM KCl 50mM 4種のデオキシリボヌクレオチド各々200μM すな
わち、 デオキシ−アデノシン−三リン酸(dATP) デオキシ−グアノシン−三リン酸(dGTP) デオキシ−チミジン−三リン酸(dTTP) デオキシ−シチジン−三リン酸(dCTP) TaqDNAポリメラーゼ 1.25 単位(パーキンエルマ
ーシータス社の市販品「Ampli Taq」を使用) 前記の血液に、この反応液50μlを加えたチューブに
50μlの鉱物油を加えた。
ず、反応液の入ったチューブは、94℃の温度条件下に
4分置かれた。これにより、DNAの遊離と変性が行わ
れる。 その後に、以下の表7の温度サイクルを使っ
て、PCRが50回行われた。
ロースゲル電気泳動法を使用した。3%のアガロースゲ
ルに、PCR終了後の反応液10μlを添加し、TAE
緩衝液中(40mM トリス酢酸と1mM EDTA
pH8.0 )で、3〜4V/cmの電圧下に60分間電気
泳動した。その後、発けい光試薬として 0.5μg/ml
のエチジウムブロマイド溶液を使用し、DNAバンドを
検出した。
断を行った。即ち、血液0.1μlにpH9.5の1M
トリス緩衝液を用いて作成したPCR反応液を加え、P
CRを行った後の反応液1μlに、50mMトリス・塩
酸(pH7.5)、10mM塩化マグネシウム、1mM
ジチオトレイトール、100mM塩化ナトリウムおよび
15ユニットの制限酵素、HinfI溶液または10m
Mトリス・塩酸(pH7.5)、10mM塩化マグネシ
ウム、1mMジチオトレイトール、50mM塩化ナトリ
ウムおよび12ユニットの制限酵素、HaeIII溶液
9μlを混合し、37℃1時間反応後、全反応液を用い
てアガロースゲル電気泳動を行い、DNAバンドを検出
した。
電気泳動図を図4に示した。図4中でA〜Dは、PCR
反応液の作成に使用した1Mトリス緩衝液のpHの違い
を示す。すなわち、Aは8.3 、Bは9.1 、Cは9.5 、D
は10.0のpHを各々示している。さらに、図4中の1〜
3の数字は、各々,PCR反応を行った血液量を示して
いる。すなわち、1は2μl、2は1μl、3は0.1
μlの血液がPCR反応液中に含まれていることを示し
ている。文字Mは制限酵素HincIIで切断した25
0ngのφX174RFDNAであり、分子量マーカー
として用いている。図中Tは増幅目的としたDNA鎖バ
ンドの泳動位置を示している。
ドは検出されていない。すなわち、通常のPCRで用い
られているpH8.3 の緩衝液を用いて作成したPCR反
応液を使用した場合には、反応液中に微量の血液が存在
してもDNA鎖の増幅が生じなかった。
緩衝液を用いて作成したPCR反応液を使用したB、C
の場合には、2と3のレーンで増幅されたDNAが検出
された。つまり、1μl以下の血液を含む反応系におい
て、PCRによるDNA増幅が観察された。さらに、p
H10.0の緩衝液を用いて作成したPCR反応液を使
用した場合には、D3のレーンでは増幅されたDNAの
バンドが検出された。つまり、0.1μlの血液を含む
反応系において、PCRによるDNA増幅が観察され
た。
産物の制限酵素による切断の結果を考察する。図5は、
pH9.5 の緩衝液を用いて作成したPCR反応液を使用
した0.1μlの血液のPCR増幅産物(本反応液中の
DNAバンドは図4中のC3レーンにあらわされてい
る)の制限酵素による切断後のゲル電気泳動図である。
図5の中で、Xは制限酵素HinfI、Yは制限酵素H
aeIIIを用いて切断したPCR増幅産物の泳動レー
ンを示している。また、文字Mは図1と同じ分子量マー
カーの泳動レーンを示し、TxはPCR増幅産物がHi
nfIで切断された場合の、TyはPCR増幅産物がH
aeIIIで切断された場合の予想されるDNAバンド
の泳動位置を示している。図5から、どちらの制限酵素
を用いた場合もPCR増幅産物が完全に切断されている
ことが明らかである。
てPCRを行った実験である。PCR中の熱サイクルの
各段階等で反応液のpHを一定の値に保つため、反応液
に加えるトリス緩衝液のpHを種々変えてPCRを行っ
た。
を何らの前処理なしに直接PCR反応液に加え、PCR
を行った。
ある。また、PCRの条件は加熱サイクルを40回とし
た以外は実験例4と同じである。増幅されたDNAの検
出も、実験例4と同じくアガロースゲル電気泳動法で行
った。
電気泳動図を図6に示した。図6中でA〜Dは、PCR
反応液の作成に使用した1Mトリス緩衝液のpHの違い
を示す。すなわち、Aは8.3 、Bは9.1 、Cは9.5 、D
は10.0のpHを各々示している。さらに、図6中の1、
2の数字は、各々,PCRを行っただ液量を示してい
る。すなわち、1は2μl、2は1μlのだ液がPCR
反応液中に含まれていることを示している。文字Mは制
限酵素HincIIで切断した250ngのφX174
RFDNAであり、分子量マーカーとして用いている。
図中Tは増幅目的としたDNA鎖バンドの泳動位置を示
している。
は検出されていない。すなわち、通常のPCRで用いら
れているpH8.3 の緩衝液を用いて作成したPCR反応
液を使用し、だ液を反応液中に直接添加した場合には、
だ液中の細胞のDNA増幅が生じなかった。
pH10.0の緩衝液を用いて作成したPCR反応液を使用
したB、C、Dの1及び2のレーンでは増幅されたβ−
グロビン特異的DNA断片のバンドが検出された。つま
り、PCRに使用する反応液のpHを従来法のPCRで
用いられているpH以上に設定することにより初めて、
だ液中のDNAが何ら前処理をすることなしに直接増幅
されることが示された。
を適切に実施するためには、PCR反応液自体のpHを
一定値以上に保つことが必要である。反応液自体のpH
は、反応液の構成成分及び反応液に加えるpH緩衝液の
種類、濃度、pH等に左右されることは周知の事実であ
り、以上の実験例に使用したpH緩衝液の種類、濃度、
pH等は本発明を適切に実施するために使用可能なpH
緩衝液の例示にすぎない。
緩衝液を含む試薬類を一組として提供することができ
る。すなわち、PCR反応液のpHが25℃の温度条件
下で 8.9以上、PCRのアニーリング温度である55℃
で 8.1以上、PCRのプライマー伸長反応温度である7
0℃で 7.8以上となるように設計されたpH緩衝液を含
み、それ以外の構成成分として適切な量、濃度のMgC
l2 、KCl等の塩類、デオキシリボヌクレオチド類、
プライマー、熱安定性ポリメラーゼ、その他の添加剤の
全て、あるいは任意の組み合せを含むPCRキットの提
供である。
分離した遺伝子包含体を核酸合成用反応液系に直接添加
しても、効率良く、目的の遺伝子を合成することが可能
となる。従って、核酸合成の際の核酸を含む試料の前処
理が簡便、迅速におこなえるようになる。特に血液試料
の前処理が簡便、迅速におこなえるようになる。
する試料を直接核酸合成用反応液系に添加して、目的の
遺伝子を効率良く合成することが可能となる。
発明にかかる改良PCR法が容易に実施される結果、本
発明の効果である前処理の簡略化とあいまって、PCR
法が簡便に行なえるようになる。
るために用いたゲル電気泳動の泳動図である。図中Tは
増幅目的としたDNA鎖の泳動バンドを示している。
るために用いたゲル電気泳動の泳動図である。図中Tは
増幅目的としたDNA鎖の泳動バンドを示している。
るために用いたゲル電気泳動の泳動図である。図中Tは
増幅目的としたDNA鎖の泳動バンドを示している。
るために用いたゲル電気泳動の泳動図である。図中Tは
増幅目的としたDNA鎖の泳動バンドを示している。
制限酵素による切断により生じたDNA断片を検出する
ために用いたゲル電気泳動の泳動図である。図5の中
で、Xは制限酵素HinfI、Yは制限酵素HaeII
Iを用いて切断したPCR増幅産物の泳動レーンを示し
ている。また、TxはPCR増幅産物がHinfIで切
断された場合の、TyはPCR増幅産物がHaeIII
で切断された場合の予想されるDNAバンドの泳動位置
を示している。
るために用いたゲル電気泳動の泳動図である。図中Tは
増幅目的としたDNA鎖の泳動バンドを示している。
Claims (3)
- 【請求項1】 試料中の目的とする遺伝子を増幅する核
酸合成法において、試料中の遺伝子包含体もしくは試料
そのものと遺伝子増幅反応液を混合し反応させることを
特徴とする核酸合成法。 - 【請求項2】 試料中の目的とする遺伝子を増幅する核
酸合成法において、反応液のpH値を 8.9以上(25℃
での値)にしたことを特徴とする核酸合成法。 - 【請求項3】 pH緩衝液並びにプライマー、デオキシ
リボヌクレオチド類及び熱安定性ポリメラーゼを含み試
料中の目的とする遺伝子を増幅する核酸合成法に用いる
試薬キットにおいて、当該pH緩衝液が、当該キットを
使用する遺伝子増幅反応液のpHが25℃の温度条件下
で 8.9以上となるpH緩衝能力を有するpH緩衝液とし
たことを特徴とする核酸合成法に用いる試薬キット。
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1996
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- 1996-05-31 DE DE69637516T patent/DE69637516D1/de not_active Expired - Lifetime
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