JP2006187221A - 全血試料の前処理方法及び核酸増幅方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】全血試料中の核酸を増幅するにあたって夾雑物を簡単に除去できる、核酸増幅のための全血試料の前処理方法、及び、全血試料中の核酸を効率良く増幅させることができる核酸増幅方法を提供する。
【解決手段】全血試料中の核酸を増幅するための前処理方法であって、(i)全血試料を希釈する工程と、(ii)希釈された全血試料を熱処理する工程と、(iii)熱処理後の試料を遠心分離する工程とを含む前処理方法。
この前処理により得られた遠心上清をそのまま用いて核酸増幅反応を行う核酸増幅反応。
【選択図】なし
【解決手段】全血試料中の核酸を増幅するための前処理方法であって、(i)全血試料を希釈する工程と、(ii)希釈された全血試料を熱処理する工程と、(iii)熱処理後の試料を遠心分離する工程とを含む前処理方法。
この前処理により得られた遠心上清をそのまま用いて核酸増幅反応を行う核酸増幅反応。
【選択図】なし
Description
本発明は、全血試料中の核酸増幅方法及びそのための全血試料の前処理方法に関する。
PCR法は、核酸の変性工程、プライマーのアニーリング工程及びDNAポリメラーゼによるプライマーの伸長反応工程を含む一連の操作を繰り返すことにより、特定の核酸配列を増幅する方法である。これらの工程を含む操作を多数回繰り返すことにより、特定配列のコピー数を著しく増大させることができる。PCR法により、従来非常に困難であった生物試料中の極微量な核酸の検出が可能となって、遺伝子解析が飛躍的に容易になった。またPCR法は、感染症や遺伝子疾患などのDNAまたはRNAレベルでの診断に利用されている。
しかし、通常の生物試料中にはタンパク質、脂質、糖質などの夾雑物質が大量に含まれており、これらが核酸の増幅や検出を妨げる恐れがある。従って、生物試料中の核酸を増幅するに当たっては、予め生物試料中のこれらの夾雑物質を除去する操作、又は生物試料から核酸を抽出し、精製する操作が必要となる。
核酸の抽出方法としては、フェノールや水酸化ナトリウムを用いる方法が知られているが、これらの物質は取り扱いに注意を要し、また廃棄方法が煩雑である。さらに、これらの方法は、操作に技術的な熟練を要し、試料中の核酸の回収量が一定しない場合も多く、再現性よく実施するのは困難な方法である。
核酸の抽出方法としては、フェノールや水酸化ナトリウムを用いる方法が知られているが、これらの物質は取り扱いに注意を要し、また廃棄方法が煩雑である。さらに、これらの方法は、操作に技術的な熟練を要し、試料中の核酸の回収量が一定しない場合も多く、再現性よく実施するのは困難な方法である。
核酸の抽出方法としては、生物試料中の核酸を磁性シリカ粒子に結合させた後、磁気を利用して、核酸が結合した粒子を分離及び洗浄し、核酸を回収する方法も知られている(特開平9-19292号公報)。この方法は有機溶媒や水酸化ナトリウムのような取り扱いに注意を要する物質を使用しないが、抽出効率は検体の種類の影響を受け易く、血液検体、特に全血検体のように夾雑物質を多く含む検体からの核酸の回収は困難である。
生物試料中の核酸の増幅方法であって有機溶媒などを使用しない簡単な方法としては、血清を熱処理した後、核酸増幅反応を行う方法が知られている(特許文献1)。この方法は、肝炎、エイズなどの原因ウィルス、細菌、細胞などを含む可能性のある血清試料を熱処理することにより、血液成分を凝固させた後、遠心上清を直接核酸増幅反応に供する方法である。
しかし、特許文献1に記載の方法は夾雑物質の少ない血清試料を対象としており、全血からの簡便な核酸増幅方法は知られていない。
特開平8−173198号公報
本発明は、全血試料中の核酸を増幅するにあたって夾雑物を簡単に除去できる、核酸増幅のための全血試料の前処理方法、及び、全血試料中の核酸を効率良く増幅させることができる核酸増幅方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために本発明者は研究を重ね、全血試料を水又は水溶液等で希釈した後、熱処理し、凝固した夾雑物を遠心分離により除去するという簡便な方法により核酸増幅を阻害する物質を検体から除去でき、効率的に核酸を増幅させ得ることを見出した。
本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、以下の方法を提供する。
項1. 全血試料中の核酸を増幅するための前処理方法であって、
(i) 全血試料を希釈する工程と、
(ii) 希釈された全血試料を熱処理する工程と、
(iii) 熱処理後の試料を遠心分離する工程と
を含む全血試料の前処理方法。
(i) 全血試料を希釈する工程と、
(ii) 希釈された全血試料を熱処理する工程と、
(iii) 熱処理後の試料を遠心分離する工程と
を含む全血試料の前処理方法。
項2. 工程(i)における全血試料の希釈溶媒が、水または水溶液である項1に記載の方法。
項3. 工程(i)において希釈溶媒として使用する水溶液が、塩化カリウム、塩化ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、及び塩化アンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む項1又は2に記載の方法。
項4. 工程(ii)における熱処理温度が65〜100℃である項1〜3のいずれかに記載の方法。
項5. 工程(iii)において、500〜20000gで遠心分離を行う項1〜4のいずれかに記載の方法。
項6. 項1〜5のいずれかに記載の前処理方法において遠心分離により得られる上清を用いて核酸増幅反応を行う核酸増幅方法。
項7. 核酸増幅方法がPCR法である項6に記載の方法。
本発明によれば、全血試料について非常に簡単な前処理を行うだけで、効率的にその中に含まれる核酸を増幅させることができる。本発明の方法は、取り扱いに注意を要する試薬を用いることなく、また試料に依存せず安定的に夾雑物質を除去して効率良く核酸を増幅させることができる。また、本発明によれば、操作手順が少ないため環境中の細菌、取扱者のDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼなどのコンタミネーションが生じにくい。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の全血試料中の核酸増幅のための前処理方法は、
(i) 全血試料を希釈する工程と、
(ii) 希釈された全血試料を熱処理する工程と、
(iii) 熱処理後の試料を遠心分離する工程と
を含む方法である。
(i) 全血試料を希釈する工程と、
(ii) 希釈された全血試料を熱処理する工程と、
(iii) 熱処理後の試料を遠心分離する工程と
を含む方法である。
また本発明の核酸増幅方法は、上記前処理方法において遠心分離により得られた上清を用いて核酸増幅反応を行う方法である。即ち、本発明の全血試料の核酸増幅方法は、
(i) 全血試料を希釈する工程と、
(ii) 希釈された全血試料を熱処理する工程と、
(iii) 熱処理後の試料を遠心分離する工程と、
(iv) 遠心処理後の上清を用いて核酸増幅反応を行う工程と
を含む方法である。
全血試料
本発明における全血試料の由来は特に限定されない。本発明方法は、生物種及び固体差を問わず、効率的にその中に含まれる核酸を効率的かつ再現性よく増幅できる点に特長がある。
工程(i)
工程(i)では全血試料を希釈する。前述した特許文献1は、血清試料を加熱処理する方法を開示している。しかし、全血試料を熱処理すると多量に含まれる血液成分が凝固してしまい、試料の吸引が困難になり以後の各工程を円滑に進行させ難くなる。このため、本発明方法では、熱処理の前に、全血試料を希釈する。
(i) 全血試料を希釈する工程と、
(ii) 希釈された全血試料を熱処理する工程と、
(iii) 熱処理後の試料を遠心分離する工程と、
(iv) 遠心処理後の上清を用いて核酸増幅反応を行う工程と
を含む方法である。
全血試料
本発明における全血試料の由来は特に限定されない。本発明方法は、生物種及び固体差を問わず、効率的にその中に含まれる核酸を効率的かつ再現性よく増幅できる点に特長がある。
工程(i)
工程(i)では全血試料を希釈する。前述した特許文献1は、血清試料を加熱処理する方法を開示している。しかし、全血試料を熱処理すると多量に含まれる血液成分が凝固してしまい、試料の吸引が困難になり以後の各工程を円滑に進行させ難くなる。このため、本発明方法では、熱処理の前に、全血試料を希釈する。
希釈倍率は、7倍程度までが好ましく、1.5〜3倍程度がより好ましい。上記希釈倍率の範囲であれば、その後の熱処理によっても吸引が困難にならず、しかも実用的な時間内の核酸増幅反応により電気泳動などの汎用の方法で核酸を検出できる程度に試料中の核酸を増幅させることができる。ヒト全血試料を上記範囲の倍率で希釈することにより、ゲノムDNAのコピー数を1μl当たり1000〜5000コピー程度に調整することができる。
全血試料の希釈は、通常水又は水溶液を用いて行えばよい。水溶液は核酸増幅反応を阻害しないものであれば特に限定されない。また、核酸増幅を阻害しない限度で有機溶媒や界面活性剤が含まれていてもよく、懸濁液であってもよい。
水溶液の一例として緩衝液を挙げることができる。緩衝液は、核酸を用いた実験に一般に使用されているものであればよく、特に限定されない。また、pHは6〜9程度であればよい。このような緩衝液として、例えば、TE緩衝液(トリス塩酸−EDTA)、TNE緩衝液(トリス−塩化ナトリウム−EDTA)、SSC緩衝液(クエン酸ナトリウム−塩化ナトリウム)、PBS緩衝液(塩化ナトリウム−塩化カリウム−リン酸水素二ナトリウム−リン酸二水素カリウム)、STE緩衝液(塩化ナトリウム−トリス−EDTA)、TNM緩衝液(トリス−塩化ナトリウム−塩化マグネシウム)などを例示できる。
希釈に用いる水溶液で好ましいのは、塩化カリウム、塩化ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、塩化アンモニウムのいずれか一つまたは二つ以上を含むものである。さらに好ましくは、塩化カリウム、塩化ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンのいずれか一つまたは二つ以上を含むものである。
上記の水溶液濃度は、全血試料を希釈したときに、溶質分子が10〜1000mM程度含まれるような濃度であることが好ましく、溶質分子が100〜500mM程度含まれるような濃度であることがより好ましい。
本発明方法における全血試料の希釈液として最も好ましいのは、全血試料を希釈したときに、塩化カリウム、塩化ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンのいずれか一つまたは二つ以上が、各々100〜500mM程度含まれるような濃度の水溶液である。
工程(ii)
希釈後の全血試料を熱処理する。熱処理温度は、65〜100℃程度が好ましく、75〜100℃程度がより好ましく、90〜100℃程度がさらにより好ましい。熱処理により、タンパク質等の夾雑物質を凝固させるとともに、核酸を含む細胞の膜を破壊し核酸を溶出させることができる。上記温度範囲であれば、夾雑物質の凝固及び細胞の膜の破壊を十分に行うことができる。
本発明方法における全血試料の希釈液として最も好ましいのは、全血試料を希釈したときに、塩化カリウム、塩化ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンのいずれか一つまたは二つ以上が、各々100〜500mM程度含まれるような濃度の水溶液である。
工程(ii)
希釈後の全血試料を熱処理する。熱処理温度は、65〜100℃程度が好ましく、75〜100℃程度がより好ましく、90〜100℃程度がさらにより好ましい。熱処理により、タンパク質等の夾雑物質を凝固させるとともに、核酸を含む細胞の膜を破壊し核酸を溶出させることができる。上記温度範囲であれば、夾雑物質の凝固及び細胞の膜の破壊を十分に行うことができる。
熱処理時間は、1秒間〜60分間程度が好ましく、5分間〜10分間程度がより好ましい。
工程(iii)
次いで、試料を遠心分離する。遠心分離時の加速度は、例えば500〜20000g程度とすればよく、特に7000〜20000g程度が好ましい。上記範囲であれば、タンパク質、脂質、糖質などの夾雑物を十分に沈殿させることができるとともに、核酸を上清に残し、その結果核酸と夾雑物とを十分に分離することができる。
工程(iii)
次いで、試料を遠心分離する。遠心分離時の加速度は、例えば500〜20000g程度とすればよく、特に7000〜20000g程度が好ましい。上記範囲であれば、タンパク質、脂質、糖質などの夾雑物を十分に沈殿させることができるとともに、核酸を上清に残し、その結果核酸と夾雑物とを十分に分離することができる。
また遠心時間は、1〜20分間程度とすればよく、5〜10分間が好ましい。
工程(iv)
本発明の核酸増幅方法においては、遠心上清をそのまま用いて核酸増幅反応を行う。全血試料中には、通常DNA及びRNAの双方が含まれる。全血中にはウィルスや細菌などが存在する場合もあるため、DNAとしては、2本鎖DNAの他に1本鎖DNAが含まれる場合もあり、ゲノムDNAの他にcDNAなどが含まれる場合もある。またRNAとしては、通常t−RNA、m−RNA、r−RNAなどが含まれる。
工程(iv)
本発明の核酸増幅方法においては、遠心上清をそのまま用いて核酸増幅反応を行う。全血試料中には、通常DNA及びRNAの双方が含まれる。全血中にはウィルスや細菌などが存在する場合もあるため、DNAとしては、2本鎖DNAの他に1本鎖DNAが含まれる場合もあり、ゲノムDNAの他にcDNAなどが含まれる場合もある。またRNAとしては、通常t−RNA、m−RNA、r−RNAなどが含まれる。
本発明方法に従い前処理した全血試料はどのような反応によっても核酸を増幅させることができる。公知の核酸増幅反応としては、PCR法(polymerase chain reaction;米国特許4,683,195号)、LCR法(ligase chain reaction;欧州特許出願320,308号)、SDA法(strand displacement amplification;特公平7-114718号)、LAMP法(Loop-Mediated Isothermal Amplification;)、ICAN法(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids;)などを挙げることができる。
本発明において、核酸増幅反応の代表例であるPCRにより核酸増幅を行う場合について説明する。プライマーセット、DNAポリメラーゼ及び4種のデオキシリボヌクレオシド三リン酸および反応緩衝液を含む増幅反応液に対して、遠心上清を通常2〜10容量%程度添加する。
プライマー、DNAポリメラーゼ、緩衝液、熱サイクル条件などは通常のPCRの条件とすればよい。例えばプライマーは、通常10〜50bp程度、好ましくは15〜30bp程度の長さのものを使用すればよい。増幅反応液に含まれるプライマー量は0.1〜100pmol程度、好ましくは1〜40pmol程度とすればよい。DNAポリメラーゼとしては、KOD DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ、Tth DNAポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼ、Vent DNAポリメラーゼなどを使用できる。
緩衝液としては、例えばトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(pH7.5〜9程度)を使用することができ、これにMgCl2 、KClなどの無機塩や、トリトンX−100などの界面活性剤、BSAなどのタンパク質を含んでいてもよい。
実施例
以下、本発明を実施例を示してより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
ヒト全血を水を用いて2倍に希釈した。この希釈液を100℃で10分間加熱処理した後、10000rpmで10分間遠心分離を行った。
実施例
以下、本発明を実施例を示してより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
ヒト全血を水を用いて2倍に希釈した。この希釈液を100℃で10分間加熱処理した後、10000rpmで10分間遠心分離を行った。
遠心上清1μlを下記のPCR増幅液25μlに添加し、PCRを行った。
PCRプライマーとしては、ヒトのβ-globin領域内を増幅させることができるオリゴヌクレオチドF及びオリゴヌクレオチドRを用いた。これらのプライマーの塩基配列は次の通りである。この2種類のプライマーを用いたPCRにより、プライマー対応部分を含めて408bpの増幅産物を得ることができる。
・オリゴヌクレオチド F:
5'-GAA GAG CCA AGG ACA GGT AC-3'(配列番号1)
・オリゴヌクレオチドR:
5'-GGA AAA TAG ACC AAT AGG CAG-3'(配列番号2)
増幅反応液
以下の試薬を混合し水でメスアップして25μlの反応液を調製した。
・オリゴヌクレオチド F:
5'-GAA GAG CCA AGG ACA GGT AC-3'(配列番号1)
・オリゴヌクレオチドR:
5'-GGA AAA TAG ACC AAT AGG CAG-3'(配列番号2)
増幅反応液
以下の試薬を混合し水でメスアップして25μlの反応液を調製した。
オリゴヌクレオチド F 12.5pmol
オリゴヌクレオチド R 12.5pmol
×10 rTaq緩衝液 2.5μl
2mM dNTP 2.5μl
25mM MgCl2 1.5μl
rTaq DNAポリメラーゼ(東洋紡績社製) 0.75U
反応条件-1
94℃で1分15秒間
94℃で45秒間、55℃で45秒間、72℃で 1分間のサイクルを30サイクル
72℃で5分間
反応条件-2
94℃で1分15秒間
94℃で45秒間、55℃で45秒間、72℃で 1分間のサイクルを35サイクル
72℃で5分間
上記条件でのPCR終了後、反応液10μlを用い、2%アガロース及び0.05μl/ml臭化エチジウムを含むゲルで電気泳動を行い、紫外線照射によりDNAバンドを検出した。
比較例1
実施例1において、前処理後の試料1μlに代えて、ヒト全血0.5μlをそのままPCR反応に供した他は、実施例1と同様の操作を行った。即ち、希釈、熱処理及び遠心分離のいずれも行わなかった。
比較例2
実施例1において、ヒト全血を3000rpmで10分間遠心分離し、その上清0.5μlをPCR反応に供した他は、実施例1と同様の操作を行った。即ち、希釈及び熱処理は行わなかった。
比較例3
実施例1において、ヒト全血を100℃で10分間加熱し、10000rpmで10分間遠心分離し、その上清0.5μlをPCR反応に供した他は、実施例と同様の操作を行った。即ち、希釈は行わなかった。
比較例4
実施例1において、ヒト全血を水で2倍に希釈し、10000rpmで10分間遠心分離し、上清1μlをPCR反応に供した他は、実施例1と同様の操作を行った。即ち、熱処理は行わなかった。
比較例5
実施例1において、ヒト全血を水で2倍に希釈し、100℃で10分間加熱した液1μlをPCR反応に供した他は、実施例1と同様の操作を行った。即ち、遠心分離は行わなかった。
オリゴヌクレオチド R 12.5pmol
×10 rTaq緩衝液 2.5μl
2mM dNTP 2.5μl
25mM MgCl2 1.5μl
rTaq DNAポリメラーゼ(東洋紡績社製) 0.75U
反応条件-1
94℃で1分15秒間
94℃で45秒間、55℃で45秒間、72℃で 1分間のサイクルを30サイクル
72℃で5分間
反応条件-2
94℃で1分15秒間
94℃で45秒間、55℃で45秒間、72℃で 1分間のサイクルを35サイクル
72℃で5分間
上記条件でのPCR終了後、反応液10μlを用い、2%アガロース及び0.05μl/ml臭化エチジウムを含むゲルで電気泳動を行い、紫外線照射によりDNAバンドを検出した。
比較例1
実施例1において、前処理後の試料1μlに代えて、ヒト全血0.5μlをそのままPCR反応に供した他は、実施例1と同様の操作を行った。即ち、希釈、熱処理及び遠心分離のいずれも行わなかった。
比較例2
実施例1において、ヒト全血を3000rpmで10分間遠心分離し、その上清0.5μlをPCR反応に供した他は、実施例1と同様の操作を行った。即ち、希釈及び熱処理は行わなかった。
比較例3
実施例1において、ヒト全血を100℃で10分間加熱し、10000rpmで10分間遠心分離し、その上清0.5μlをPCR反応に供した他は、実施例と同様の操作を行った。即ち、希釈は行わなかった。
比較例4
実施例1において、ヒト全血を水で2倍に希釈し、10000rpmで10分間遠心分離し、上清1μlをPCR反応に供した他は、実施例1と同様の操作を行った。即ち、熱処理は行わなかった。
比較例5
実施例1において、ヒト全血を水で2倍に希釈し、100℃で10分間加熱した液1μlをPCR反応に供した他は、実施例1と同様の操作を行った。即ち、遠心分離は行わなかった。
実施例1及び比較例1〜5の結果を図1に示す。
レーン1〜7はPCRを30サイクル行った結果であり、レーン8〜14は35サイクル行った結果である。
レーン1:精製されたヒトDNA のβ-globin領域内の配列をオリゴヌ
クレオチドF及びRで増幅させたコントロールDNA の結果
レーン2:比較例1(希釈、熱処理、遠心分離を行わない)
レーン3:比較例2(希釈、熱処理を行わない)
レーン4:比較例3(希釈を行わない)
レーン5:比較例4(熱処理を行わない)
レーン6:比較例5(遠心分離を行わない)
レーン7:実施例1
レーン8:精製されたヒトDNA のβ-globin領域内の配列をオリゴヌ
クレオチドF及びRで増幅させたコントロールDNA の結果
レーン9:比較例1(希釈、熱処理、遠心分離を行わない)
レーン10:比較例2(希釈、熱処理を行わない)
レーン11:比較例3(希釈を行わない)
レーン12:比較例4(熱処理を行わない)
レーン13:比較例5(遠心分離を行わない)
レーン14:実施例1
上記PCR条件では、全血サンプルに熱処理を全く行わずにPCRに供したものについては増幅バンドを確認することはできなかった。また、熱処理を行っても遠心分離を行わずにPCRに供したものについても低濃度の増幅バンドしか確認できなかった。希釈、熱処理、遠心分離を行ってPCRに供したものについては増幅バンドを確認することができた。このことから、全血サンプルを熱処理し、遠心処理することが増幅バンドの検出に必要であることが分かる。
レーン1:精製されたヒトDNA のβ-globin領域内の配列をオリゴヌ
クレオチドF及びRで増幅させたコントロールDNA の結果
レーン2:比較例1(希釈、熱処理、遠心分離を行わない)
レーン3:比較例2(希釈、熱処理を行わない)
レーン4:比較例3(希釈を行わない)
レーン5:比較例4(熱処理を行わない)
レーン6:比較例5(遠心分離を行わない)
レーン7:実施例1
レーン8:精製されたヒトDNA のβ-globin領域内の配列をオリゴヌ
クレオチドF及びRで増幅させたコントロールDNA の結果
レーン9:比較例1(希釈、熱処理、遠心分離を行わない)
レーン10:比較例2(希釈、熱処理を行わない)
レーン11:比較例3(希釈を行わない)
レーン12:比較例4(熱処理を行わない)
レーン13:比較例5(遠心分離を行わない)
レーン14:実施例1
上記PCR条件では、全血サンプルに熱処理を全く行わずにPCRに供したものについては増幅バンドを確認することはできなかった。また、熱処理を行っても遠心分離を行わずにPCRに供したものについても低濃度の増幅バンドしか確認できなかった。希釈、熱処理、遠心分離を行ってPCRに供したものについては増幅バンドを確認することができた。このことから、全血サンプルを熱処理し、遠心処理することが増幅バンドの検出に必要であることが分かる。
また全血サンプルを希釈せずに熱処理と遠心分離のみを行ったものについても、増幅バンドを確認できるが、遠心上清の量が非常に少なく、作業効率が急激に低下する。また、同一検体を複数回PCRに使用したい場合、使用回数が著しく制限されてしまう。よって、作業の利便性を損なわないために、また核酸を含有する上清の量を確保するためには、全血サンプルの希釈が必要である。
実施例2〜14
実施例1において、全血サンプルの希釈倍率を、それぞれ1.1, 1.3, 1.5, 2, 2.5, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10倍とした他は、実施例1と同様の操作を行った。
実施例2〜14
実施例1において、全血サンプルの希釈倍率を、それぞれ1.1, 1.3, 1.5, 2, 2.5, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10倍とした他は、実施例1と同様の操作を行った。
図2および3は、実施例2〜14の結果を示している。レーン15は、精製されたヒトDNAのβ-globin領域内の配列をオリゴヌクレオチドF及びRで増幅させたコントロールDNAの結果を示す(30サイクル)。レーン16は希釈を行わなかった他は実施例1と同様の操作を行った結果を示す(30サイクル)。レーン17〜29は、全血サンプルの希釈倍率を、それぞれ1.1, 1.3, 1.5, 2, 2.5, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10倍とした他は、実施例1と同様の操作を行った結果を示す(30サイクル)。
レーン30は、精製されたヒトDNAのβ-globin領域内の配列をオリゴヌクレオチドF及びRで増幅させたコントロールDNAの結果を示す(35サイクル)。レーン31は希釈を行わなかった他は実施例1と同様の操作を行った結果を示す(35サイクル)。レーン32〜44は、全血サンプルの希釈倍率を、それぞれ1.1, 1.3, 1.5, 2, 2.5, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10倍とした他は、実施例1と同様の操作を行った結果を示す(35サイクル)。
全血サンプルの希釈に水を用いた場合は、反応条件-1(30サイクル)では1.3倍程度、反応条件-2(35サイクル)では4倍程度まで良好な増幅バンドが確認できた(図2、図3)。
実施例15〜22
実施例1において、塩化カリウム水溶液を用いて全血サンプルを希釈した。そのとき、全血サンプルと混和された状態での塩化カリウム濃度は250mMで、全血サンプルの希釈倍率を、それぞれ1.5, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8倍とした他は、実施例1と同様の操作を行った(PCR反応条件-2を除く)。
全血サンプルの希釈に水を用いた場合は、反応条件-1(30サイクル)では1.3倍程度、反応条件-2(35サイクル)では4倍程度まで良好な増幅バンドが確認できた(図2、図3)。
実施例15〜22
実施例1において、塩化カリウム水溶液を用いて全血サンプルを希釈した。そのとき、全血サンプルと混和された状態での塩化カリウム濃度は250mMで、全血サンプルの希釈倍率を、それぞれ1.5, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8倍とした他は、実施例1と同様の操作を行った(PCR反応条件-2を除く)。
図4は実施例15〜22の結果を示している。レーン45〜52は、全血サンプルと混和された状態での塩化カリウム濃度は250mMで、全血サンプルの希釈倍率を、それぞれ1.5, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8倍とした他は、実施例1と同様の操作を行った結果を示す(30サイクルのみ)
全血サンプルの希釈に塩化カリウム水溶液を用いた場合は、全血サンプルと混和した塩化カリウム水溶液の濃度が250mMであるとき、反応条件-1(30サイクル)でも7倍まで良好な増幅バンドを確認することができた(図4)。
実施例23〜30
実施例1において、ヒト全血を塩化カリウム水溶液で2倍に希釈した他は、実施例1と同様の操作を行った。使用した塩化カリウム水溶液の濃度は、0(水),20, 100, 200, 500, 750, 1000, 2000mMの8種類であった。
全血サンプルの希釈に塩化カリウム水溶液を用いた場合は、全血サンプルと混和した塩化カリウム水溶液の濃度が250mMであるとき、反応条件-1(30サイクル)でも7倍まで良好な増幅バンドを確認することができた(図4)。
実施例23〜30
実施例1において、ヒト全血を塩化カリウム水溶液で2倍に希釈した他は、実施例1と同様の操作を行った。使用した塩化カリウム水溶液の濃度は、0(水),20, 100, 200, 500, 750, 1000, 2000mMの8種類であった。
図5は実施例23〜30の結果を示している。レーン53〜60は、0(水),20, 100, 200, 500, 750, 1000, 2000mMの濃度の塩化カリウム水溶液でヒト全血を2倍に希釈した他は、実施例1と同様の操作を行った結果を示す(30サイクル)。レーン61〜68は、0(水),20, 100, 200, 500, 750, 1000, 2000mMの濃度の塩化カリウム水溶液でヒト全血を2倍に希釈した他は、実施例1と同様の操作を行った結果を示す(35サイクル)。
20〜2000mMの塩化カリウム水溶液で2倍に希釈してPCRに供した場合、全血サンプルと混和したときに100〜1000mMの塩化カリウムが含まれていると特に良好な増幅バンドを確認できた。この結果は、実施例15〜22(図4)の結果と一致する。
実施例31〜38
実施例1において、ヒト全血を塩化ナトリウム水溶液で2倍に希釈した他は、実施例1と同様の操作を行った(PCR反応条件-2を除く)。使用した塩化ナトリウム水溶液の濃度は、0(水),20, 100, 200, 500, 750, 1000, 2000mMの8種類であった。
実施例39〜46
実施例1において、ヒト全血をトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン水溶液で2倍に希釈した他は、実施例1と同様の操作を行った(PCR反応条件-2を除く)。使用したトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン水溶液の濃度は、0(水),20, 100, 200, 500, 750, 1000, 2000mMの8種類であった。
20〜2000mMの塩化カリウム水溶液で2倍に希釈してPCRに供した場合、全血サンプルと混和したときに100〜1000mMの塩化カリウムが含まれていると特に良好な増幅バンドを確認できた。この結果は、実施例15〜22(図4)の結果と一致する。
実施例31〜38
実施例1において、ヒト全血を塩化ナトリウム水溶液で2倍に希釈した他は、実施例1と同様の操作を行った(PCR反応条件-2を除く)。使用した塩化ナトリウム水溶液の濃度は、0(水),20, 100, 200, 500, 750, 1000, 2000mMの8種類であった。
実施例39〜46
実施例1において、ヒト全血をトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン水溶液で2倍に希釈した他は、実施例1と同様の操作を行った(PCR反応条件-2を除く)。使用したトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン水溶液の濃度は、0(水),20, 100, 200, 500, 750, 1000, 2000mMの8種類であった。
実施例31〜38及び実施例39〜46の結果を図6に示す。レーン69〜76は、0(水),20, 100, 200, 500, 750, 1000, 2000mMの濃度の塩化ナトリウム水溶液でヒト全血を2倍に希釈した他は、実施例1と同様の操作を行った結果を示す(30サイクルのみ)。レーン77〜84は、0(水),20, 100, 200, 500, 750, 1000, 2000mMの濃度のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン水溶液でヒト全血を2倍に希釈した他は、実施例1と同様の操作を行った結果を示す(30サイクルのみ)。
塩化ナトリウム水溶液、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン水溶液を希釈に用いた場合も、塩化カリウム水溶液を用いた場合と同様であった。
実施例47〜50
実施例1において、ヒト全血を500mMのグアニジン塩酸塩、ホウ酸、塩化アンモニウム、スクロース水溶液で2倍に希釈した他は、実施例1と同様の操作を行った(PCR反応条件-2を除く)。
実施例47〜50
実施例1において、ヒト全血を500mMのグアニジン塩酸塩、ホウ酸、塩化アンモニウム、スクロース水溶液で2倍に希釈した他は、実施例1と同様の操作を行った(PCR反応条件-2を除く)。
実施例47〜50の結果を図7に示す。レーン85〜88は、ヒト全血を500mMのグアニジン塩酸塩、ホウ酸、塩化アンモニウム、スクロース水溶液で2倍に希釈した他は、実施例1と同様の操作を行った結果を示す(30サイクルのみ)。
ヒト全血を500mMの塩化アンモニウムで2倍に希釈してPCRに供したものについては良好なバンドを確認することができたが、グアニジン塩酸塩、ホウ酸、スクロース水溶液で希釈したものについては増幅バンドをほとんど確認することができなかった(図7)。
一般に、作業効率を低下させないように希釈倍率を大きくすれば、それにともなって増幅量が少なくなってしまう。しかし、塩化カリウムや塩化ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、塩化アンモニウムなどが一つまたは二つ以上含まれる水溶液を用いて希釈を行うことによって、作業効率を低下させることなく、目的配列を検出可能な増幅量を得ることができるようになった。
一般に、作業効率を低下させないように希釈倍率を大きくすれば、それにともなって増幅量が少なくなってしまう。しかし、塩化カリウムや塩化ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、塩化アンモニウムなどが一つまたは二つ以上含まれる水溶液を用いて希釈を行うことによって、作業効率を低下させることなく、目的配列を検出可能な増幅量を得ることができるようになった。
また、希釈に用いられた水溶液の一部が増幅反応液に持ち込まれることにより増幅反応を阻害することも考えられるが、塩化カリウムや塩化ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、塩化アンモニウムを含む水溶液であれば増幅反応にほとんど影響を与えない。
上記実施例の条件で増幅バンドを検出できなかった場合も、PCR反応条件のサイクル数を多くする、マグネシウム濃度やプライマー量、酵素量、アニール温度を変更する、使用するプライマーを変更して増幅領域長を短くする、増幅領域を変更する、Nested-PCRを行うなどの手段を講じることにより電気泳動で増幅バンドを検出できる。
Claims (7)
- 全血試料中の核酸を増幅するための前処理方法であって、
(i) 全血試料を希釈する工程と、
(ii) 希釈された全血試料を熱処理する工程と、
(iii) 熱処理後の試料を遠心分離する工程と
を含む全血試料の前処理方法。 - 工程(i)における全血試料の希釈溶媒が、水または水溶液である請求項1に記載の方法。
- 工程(i)において希釈溶媒として使用する水溶液が、塩化カリウム、塩化ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、及び塩化アンモニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものである請求項1又は2に記載の方法。
- 工程(ii)における熱処理温度が65〜100℃である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 工程(iii)において、500〜20000gで遠心分離を行う請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の前処理方法において遠心分離により得られる上清を用いて核酸増幅反応を行う核酸増幅方法。
- 核酸増幅方法がPCR法である請求項6に記載の方法。
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---|---|---|---|
JP2005000199A JP2006187221A (ja) | 2005-01-04 | 2005-01-04 | 全血試料の前処理方法及び核酸増幅方法 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008278774A (ja) * | 2007-05-09 | 2008-11-20 | Toppan Printing Co Ltd | 未精製血液をサンプルとする核酸増幅法 |
WO2012144485A1 (ja) | 2011-04-20 | 2012-10-26 | オリンパス株式会社 | 生体試料中の核酸分子の検出方法 |
CN110295237A (zh) * | 2019-06-27 | 2019-10-01 | 河北农业大学 | 一种改进的鸡隐性白羽基因型的分子鉴定方法 |
-
2005
- 2005-01-04 JP JP2005000199A patent/JP2006187221A/ja not_active Withdrawn
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