JP2010255843A - 電磁摩擦クラッチ、及び電磁摩擦ブレーキ - Google Patents
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Abstract
【課題】大幅なコストアップを招来することなく、優れた摩擦・摩耗特性を有する電磁摩擦クラッチを提供する。
【解決手段】励磁コイル12を有する磁極体1と、磁極体1と対向する位置に配置されたロータ2と、回転軸Aの軸方向に沿ってロータ2に接離する方向に移動可能であって且つ磁極体1及びロータ2と共に磁気回路を形成し得るアーマチュア4とを備え、励磁コイル12が励磁状態である場合に相互に押圧するアーマチュア4の摩擦面及びロータ2に設けた摩擦板3の摩擦面をそれぞれ硬化処理した。
【選択図】図3
【解決手段】励磁コイル12を有する磁極体1と、磁極体1と対向する位置に配置されたロータ2と、回転軸Aの軸方向に沿ってロータ2に接離する方向に移動可能であって且つ磁極体1及びロータ2と共に磁気回路を形成し得るアーマチュア4とを備え、励磁コイル12が励磁状態である場合に相互に押圧するアーマチュア4の摩擦面及びロータ2に設けた摩擦板3の摩擦面をそれぞれ硬化処理した。
【選択図】図3
Description
本発明は、電磁摩擦クラッチ、及び電磁摩擦ブレーキに関するものである。
従来より、励磁コイルを有する磁極体と、磁極体に対向する位置に配置されるロータと、回転軸の軸方向に摺動可能なアーマチュアとを備え、励磁コイルが励磁状態である場合に、磁気吸引力によりアーマチュアがロータに押圧することにより回転トルクをロータに伝達するように構成した電磁摩擦クラッチが知られている(特許文献1参照)。
また、ほぼ同様の構成を採用したものとして、励磁コイルが励磁状態である場合に、磁気吸引力によりアーマチュアがロータに押圧することによりアーマチュアの回転動作に制動力が働くように構成した電磁摩擦ブレーキが知られている。
このような電磁摩擦クラッチや電磁摩擦ブレーキでは、アーマチュアとして例えば低炭素鋼等の軟鋼製のものが適用される一方、ロータとして、アーマチュアと接触する部分にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂と添加剤とを混合して圧縮成形されたものや、このような熱硬化性樹脂と添加剤とを混合して圧縮成形された摩擦材(いわゆるフェーシングやパッドと称されるもの)を設けたものが適用され、励磁コイルが励磁状態である場合にアーマチュアと摩擦材とを相互に押圧させるようにしていた。
また、ロータに摩擦材を設けない態様も知られており、アーマチュア及びロータ共に硬化処理を施さない態様、或いは相互に押圧し合うアーマチュアの摩擦面とロータの摩擦面のうち一方の摩擦面のみに硬化処理を施した態様が挙げられる。
しかしながら、ロータに上述したフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂と添加剤からなる摩擦材を設けた態様は、製作工程が複雑になり、ロータに摩擦材を設けない態様と比較して大幅な製作コストアップを招くという問題があった。
また、アーマチュアの摩擦面又はロータの摩擦面のうち一方の摩擦面のみに硬化処理を施した構成であれば、硬化処理を施していない他方の摩擦面は硬化処理を施した側の摩擦面よりも相対的に柔らかいために、これら摩擦面同士を相互に押圧させた場合に、相対的に柔らかい側の摩擦面が相対的に硬い側の摩擦面に凝着する、いわゆる凝着摩耗が生じたり、相対的に柔らかい側の摩擦面の局部的な塊状破壊物(摩耗粉)が硬い側の摩擦面に移着するという現象が生じることがあった。そして、凝着摩耗や摩耗粉の移着が発生することによって、アーマチュアの摩擦面或いはロータの摩擦面が局部的又は全体的に凹凸の激しい荒れた形状となり、摩擦力にバラツキが生じ得る可能性があった。
このような課題に着目してなされた本発明の主たる目的は、大幅なコストアップを招来することなく、優れた摩擦・摩耗特性を有する電磁摩擦クラッチ及び電磁摩擦ブレーキを提供することにある。
すなわち本発明は、励磁コイルを有する磁極体と、回転軸の軸方向に沿って磁極体と対向する位置に配置されたロータと、回転軸の軸方向に沿ってロータに接離する方向に移動可能であって且つ磁極体及びロータと共に磁気回路を形成し得るアーマチュアとを備え、励磁コイルが励磁状態である場合にアーマチュアが電磁吸引力によりロータに押圧する乾式の電磁摩擦クラッチに関するものであって、アーマチュアのうちロータに押圧し得るアーマチュア摩擦面を硬化処理された面とするとともに、ロータのうちアーマチュア摩擦面に押圧し得るロータ摩擦面を硬化処理された面としていることを特徴とする。ここで、「押圧」とは、接触した状態で押し付けて圧することを意味する。
本発明の電磁摩擦クラッチは、湿式ではなく乾式に関するものである。これは、乾式と湿式とでは摩擦力の発生原理が異なることに基づく。すなわち、湿式は油等の液体の粘性で摩擦力を発生させるものであるのに対して、乾式は液体を用いずに部品等の固体同士が直接擦れ合うことで摩擦力を発生させるものである。そして、本発明に係る乾式の電磁摩擦クラッチは、相互に押圧するアーマチュア摩擦面及びロータ摩擦面を共に硬化処理された面として形成することにより、硬化処理した面同士を押圧させた場合、従来のフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂と添加剤からなるいわゆる摩擦材の摩擦面と硬化処理されていない軟鋼等の鉄そのもの或いはメッキ処理された面とを相互に押圧させた場合と比較して、高摩擦(摩擦係数が高い)であり、しかも摩擦係数の変動幅も小さく、且つ摩耗も小さめか同等であることを本発明者らは見出した。
また、金属製の面同士を押圧させて各面に摩擦力が作用する場合(なじみ処理等)、各面において塑性変形が生じ得るが、本発明の電磁摩擦クラッチは、押圧し合う面の両方が硬化処理したものであるため、塑性変形が生じ難く、また塑性変形が生じた場合であってもその変形規模(変形量)を可及的に小さくすることができ、凝着摩耗や摩耗粉の移着を防止または抑制することができる。
このように、本発明者らは、励磁状態において相互に押圧し得る面同士を何れも硬化処理することによって、相互に押圧する面同士が互いに凹凸形状に大きく荒れることを防止するという斬新な技術的思想に基づいて、本発明の電磁摩擦クラッチを案出するに至ったものである。
好適な実施態様としては、ロータのうちアーマチュア摩擦面に押圧し得る部分に、表面に硬化処理を施した金属製の非磁性体である摩擦板を設け、摩擦板の表面をロータ摩擦面としている態様が挙げられる。このような態様であれば、上述した効果を得ることができるとともに、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂と添加剤からなるいわゆる摩擦材をロータに設ける態様と比較して、製作工程の簡素化及び製作コストの低廉化を図ることができる。
また、本発明の電磁摩擦クラッチは、ロータのうちアーマチュア摩擦面に押圧し得る表面に硬化処理を施し、この硬化処理を施したロータの表面自体をロータ摩擦面とする態様も包含するものである。このような態様の電磁摩擦クラッチであれば、ロータに摩擦板を設ける必要がないため、構造の簡素化及びコストの削減を図ることができるとともに、アーマチュア摩擦面及びロータ摩擦面の双方を硬化処理することにより、塑性変形が生じ難く、また塑性変形が生じた場合であってもその変形規模(変形量)を可及的に小さくすることができ、凝着摩耗や摩耗粉の移着を防止または抑制することができる。
また、本発明の電磁摩擦クラッチにおける適切なアーマチュア摩擦面及びロータ摩擦面の硬度としては、ビッカース硬度(HV)350以上1200以下が挙げられる。
このような電磁摩擦クラッチにおいて適用可能な硬化処理としては、窒化処理、浸炭処理、無電解ニッケルメッキ処理、硬質クロムメッキ処理、タフトライド処理(イソナイト処理)、或いは焼入れ焼戻し処理等が挙げられるが、特に窒化処理であれば、作業効率の向上や製作工程の簡素化、製作コストの低廉化を有効に図ることができる。
また、本発明の電磁摩擦ブレーキは、励磁コイルを有する磁極体と、回転軸の軸方向に沿って磁極体と対向する位置に配置されたロータと、回転軸の軸方向に沿ってロータに接離する方向に移動可能であって且つ磁極体及びロータと共に磁気回路を形成し得るアーマチュアとを備え、励磁コイルが励磁状態である場合にアーマチュアが電磁吸引力によりロータに押圧する乾式のものであって、アーマチュアのうちロータに押圧し得るアーマチュア摩擦面を硬化処理された面とするとともに、ロータのうちアーマチュア摩擦面に押圧し得るロータ摩擦面を硬化処理された面としていることを特徴とする。ここで、「押圧」とは、接触した状態で押し付けて圧することを意味する。
このような乾式の電磁摩擦ブレーキであれば、上述した電磁摩擦クラッチによって奏する効果と同様の効果を得ることができる。つまり、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂と添加剤からなるいわゆる摩擦材をロータに設ける態様と比較して、製作工程の簡素化及び製作コストの低廉化を図ることができるとともに、硬化処理した面同士を押圧させた場合、従来のフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂と添加剤からなる摩擦材の摩擦面と硬化処理されていない軟鋼等の鉄そのもの或いはメッキ処理された面とを相互に押圧させた場合と比較して、摩擦・摩耗特性に優れ、適切な制動力を発揮するものとなる。
好適な実施態様としては、ロータのうちアーマチュア摩擦面に押圧し得る部分に、表面に硬化処理を施した金属製の非磁性体である摩擦板を設け、摩擦板の表面をロータ摩擦面としている態様が挙げられる。
また、本発明の電磁摩擦ブレーキは、ロータのうちアーマチュア摩擦面に押圧し得る表面に硬化処理を施し、この硬化処理を施したロータの表面自体をロータ摩擦面とする態様も包含するものである。このような態様の電磁摩擦ブレーキであれば、ロータに摩擦板を設ける必要がないため、構造の簡素化及びコストの削減を図ることができるとともに、アーマチュア摩擦面及びロータ摩擦面の双方を硬化処理することにより、塑性変形が生じ難く、また塑性変形が生じた場合であってもその変形規模(変形量)を可及的に小さくすることができ、凝着摩耗や摩耗粉の移着を防止または抑制することができる。
また、本発明の電磁摩擦ブレーキにおける適切なアーマチュア摩擦面及びロータ摩擦面の硬度としては、ビッカース硬度(HV)350以上1200以下が挙げられる。
このような電磁摩擦ブレーキにおいて適用可能な硬化処理としては、窒化処理、浸炭処理、無電解ニッケルメッキ処理、硬質クロムメッキ処理、タフトライド処理(イソナイト処理)、或いは焼入れ焼戻し処理等が挙げられるが、特に窒化処理であれば、作業効率の向上や製作工程の簡素化、製作コストの低廉化を有効に図ることができる。
本発明によれば、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂と添加剤からなるいわゆる摩擦材を適用する態様と比較して、製作コストの低廉化を図ることができるとともに、摩擦特性は有機系の摩擦材と同等以上の性能を発揮する結果、安価かつ高性能な摩擦面が得られる。また、摩擦材を使用しない鉄同士の摩擦面に対して硬化処理を行うことによって、ばらつきの少ない安定した摩擦状態を実現できる。
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
〈第1実施形態〉
第1実施形態に係る電磁摩擦クラッチXは、図1に示すように、回転軸Aに固定されたロータ2と、このロータ2に対向配置されたアーマチュア4と、磁束を発生させる励磁コイル12を有する磁極体1とを備え、励磁コイル12に通電し、その励磁コイル12から発生した磁束によってロータ2にアーマチュア4を吸着させたり、励磁コイル12への通電を解除して、ロータ2とアーマチュア4とを離隔させることにより、トルクの伝達及び遮断を行う乾式の電磁摩擦クラッチXである。
第1実施形態に係る電磁摩擦クラッチXは、図1に示すように、回転軸Aに固定されたロータ2と、このロータ2に対向配置されたアーマチュア4と、磁束を発生させる励磁コイル12を有する磁極体1とを備え、励磁コイル12に通電し、その励磁コイル12から発生した磁束によってロータ2にアーマチュア4を吸着させたり、励磁コイル12への通電を解除して、ロータ2とアーマチュア4とを離隔させることにより、トルクの伝達及び遮断を行う乾式の電磁摩擦クラッチXである。
この電磁摩擦クラッチXは、図1及び図2(図2は電磁摩擦クラッチXの作用原理を模式的に示す図である)に示すように、励磁コイル12を有する磁極体1と、回転軸Aと、磁極体1と対向する位置に配置され回転軸Aに固定されたロータ2と、回転軸Aの軸方向に沿ってロータ2に接離する方向に移動可能であって且つ磁極体1及びロータ2と共に磁気回路を形成し得るアーマチュア4と、アーマチュア4をロータ2から離間する方向に付勢し得る付勢部材5(この付勢部材5は、アーマチュア4をロータ2から離間させた位置に保持し、且つトルク伝達可能な部材である)とを備えたものである。
磁極体1は、ロータ2側に開口する断面視コ字状の凹部11aが形成されたリング状のヨーク11と、凹部11a内に収容される励磁コイル12とを備えたものであり、フィールドコアとも称される。本実施形態では、連結板13を介してヨーク11を固定部F(図2参照)に固定することにより、磁極体1全体を移動不能に固定している。
ロータ2は、磁極体1を収容する磁極体収容凹部2aを有し、さらに磁極体1と背向する側に摩擦板3を収容する摩擦板収容凹部2bを形成したものである。このロータ2は、基部(回転軸A側の端部)を回転軸Aに固定している。摩擦板3は、励磁状態においてアーマチュア4に密着し得るものであり、本実施形態に係る電磁摩擦クラッチXは、この摩擦板3の構造に特徴を有する。
摩擦板3は、図3(同図は図2のz領域拡大図であって励磁コイル12が励磁状態である場合の作用説明図)に示すように、例えばステンレス鋼、具体的には非磁性の鋼材であるオーステナイト系ステンレス鋼(好ましくはSUS304或いはSUS303)からなる摩擦板芯材31と、摩擦板芯材31の表面を硬化処理することによって形成した摩擦板表面硬化層32とを備え、ロータ2の摩擦板収容凹部2bに収容可能なリング状をなすものである。この摩擦板3は、オーステナイト系ステンレス鋼等の非磁性の鋼材をプレス加工又は切削加工することによって金属製の摩擦板芯材31を形成し、次いで、摩擦板芯材31の表面に硬化処理、具体的には塩浴窒化処理又はガス軟窒化処理等の窒化処理を施して摩擦板表面硬化層32を形成することによって製作されるものである。以下の説明では、摩擦板表面硬化層32のうち、後述するアーマチュア4の摩擦面(アーマチュア摩擦面4S)と押圧する面を「摩擦板摩擦面3S」と称する。この摩擦板摩擦面3Sが本発明における「ロータ摩擦面」に相当する。
アーマチュア4は、図3に示すように、例えば低炭素鋼等の軟鋼からなるアーマチュア芯材41と、アーマチュア芯材41の表面を硬化処理することによって形成したアーマチュア表面硬化層42とを備えたリング状をなすものである。本実施形態では、アーマチュア芯材41の表面に窒化処理(例えば塩浴窒化処理やガス軟窒化処理)を施すことによってアーマチュア表面硬化層42を形成している。このアーマチュア4は、回転軸Aのラジアル方向には移動不能である一方、回転軸Aの軸方向(スラスト方向)にスライド移動可能なものである。以下の説明では、アーマチュア4のうち、ロータ2(具体的には摩擦板摩擦面3S)と押圧する面を「アーマチュア摩擦面4S」と称する。
ここで、塩浴窒化処理を施した鋼の表面層硬さを表1に示す。なお、摩擦板3、アーマチュア4はそれぞれ鋼(ステンレス鋼、軟鋼)を主材料(母材の材料)とするものである点は上述した通りである。
付勢部材5は、例えば板バネから構成され、励磁コイル12への通電状態が切断された場合にロータ2(具体的には摩擦板3)に押圧しているアーマチュア4をロータ2から離間させてハブ6側へ復帰させる復帰バネとして機能し、またトルク伝達部材としても機能するものである。本実施形態では、図2に示すように、この付勢部材5を予圧付与用の連結板7を介してハブ6に固着し、このハブ6に固定した入力側となるプーリ8を回転軸A回りに軸受9を介して回動可能に設定している。
次に、このような構成をなす電磁摩擦クラッチXの動作について説明する。
励磁コイル12が励磁されていない無励磁状態である場合、図2に示すように、アーマチュア4はロータ2から離間した位置に付勢部材5によって保持され、ハブ6に押圧している。したがって、アーマチュア4はプーリ8と共に駆動されているが、ロータ2とは間隙を隔てているのでロータ2には駆動トルクは伝達されず、回転軸Aは停止している。
一方、励磁コイル12が励磁状態である場合、アーマチュア4は、磁極体1及びロータ2と共に磁気回路を形成し、この磁気回路を通る磁束によって発生する吸引力により付勢部材5の付勢力に抗してロータ2に接触する位置まで回転軸Aの軸方向に沿ってロータ2側に吸引される。したがって、プーリ8からの駆動トルクがロータ2に伝達され、回転軸Aは駆動(回動)する。
すなわち、本実施形態に係る電磁摩擦クラッチXは、励磁状態では、アーマチュア4がロータ2に磁気吸着されて、入力側(プーリ8)の回転が回転軸Aに伝達される一方、励磁コイル12に対する通電を切断して励磁状態から無励磁状態へ切り替えると、磁気吸着力が消滅し、アーマチュア4は付勢部材5の弾性復帰力によりロータ2から離れた位置に復帰し、入力側(プーリ8)から回転軸Aへの駆動力の伝達が切断される。
そして、本実施形態に係る電磁摩擦クラッチXは、励磁状態において相互に押圧する摩擦面同士、具体的にはアーマチュア摩擦面4Sと摩擦板摩擦面3Sとを硬化処理した表面硬化層(アーマチュア表面硬化層42、摩擦板表面硬化層32)によって形成しているため、従来の態様、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂と添加剤とからなる摩擦材(フェーシングやパッドと称されるもの)をロータに設ける態様と比較して、製作コストの低廉化を図ることができるとともに、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂と添加剤とからなる摩擦材をロータに設け、この摩擦材に、軟鋼等の鉄や亜鉛めっき鉄自体によって形成したアーマチュアの摩擦面を押圧させる態様として比較して、摩擦係数が高く、しかも摩擦係数の変動幅も小さく、さらに摩耗深さも小さい(浅い)かほぼ同等であることが本発明者の行った試験によって判明した。
図4乃至図6は、相互に押圧し得る摩擦面における静摩擦係数、静摩擦係数の変動幅、及び摩耗深さをそれぞれ実施例及び従来例について同じ条件下で試験して得られたデータを示すものであり、以下に詳述する。
実施例1…図4乃至図6における(1)であり、相互に押圧する摩擦面のうち、一方の摩擦面がステンレス鋼の表面を窒化処理(具体的には塩浴窒化処理)することによって形成した面であり、他方の摩擦面が、軟鋼の表面を窒化処理することによって形成した面である。
実施例2…図4乃至図6における(2)であり、相互に押圧する摩擦面のうち、一方の摩擦面がステンレス鋼の表面を窒化処理した後にさらにペーパー掛け処理を施したものであり、他方の摩擦面が軟鋼の表面を窒化処理した後にさらにペーパー掛け処理を施したものである。
従来例1…図4乃至図6における(3)であり、相互に押圧する摩擦面のうち、一方の摩擦面が従来実用してきた摩擦材のうちで静摩擦係数最高クラスの摩擦材からなるものであり、他方の摩擦面が軟鋼からなるものである。
従来例2…図4乃至図6における(4)であり、相互に押圧する摩擦面のうち、一方の摩擦面が、従来実用してきている各種摩擦材から選択した一の摩擦材からなるものであり、他方の摩擦面が軟鋼の表面に亜鉛メッキ処理を施したものである。
従来例3…図4乃至図6における(5)であり、相互に押圧する摩擦面のうち、一方の摩擦面が、従来実用してきている各種摩擦材から選択した一の摩擦材であって且つ従来例2とは異なる摩擦材からなるものであり、他方の摩擦面が軟鋼の表面に亜鉛メッキ処理を施したものである。
実施例1…図4乃至図6における(1)であり、相互に押圧する摩擦面のうち、一方の摩擦面がステンレス鋼の表面を窒化処理(具体的には塩浴窒化処理)することによって形成した面であり、他方の摩擦面が、軟鋼の表面を窒化処理することによって形成した面である。
実施例2…図4乃至図6における(2)であり、相互に押圧する摩擦面のうち、一方の摩擦面がステンレス鋼の表面を窒化処理した後にさらにペーパー掛け処理を施したものであり、他方の摩擦面が軟鋼の表面を窒化処理した後にさらにペーパー掛け処理を施したものである。
従来例1…図4乃至図6における(3)であり、相互に押圧する摩擦面のうち、一方の摩擦面が従来実用してきた摩擦材のうちで静摩擦係数最高クラスの摩擦材からなるものであり、他方の摩擦面が軟鋼からなるものである。
従来例2…図4乃至図6における(4)であり、相互に押圧する摩擦面のうち、一方の摩擦面が、従来実用してきている各種摩擦材から選択した一の摩擦材からなるものであり、他方の摩擦面が軟鋼の表面に亜鉛メッキ処理を施したものである。
従来例3…図4乃至図6における(5)であり、相互に押圧する摩擦面のうち、一方の摩擦面が、従来実用してきている各種摩擦材から選択した一の摩擦材であって且つ従来例2とは異なる摩擦材からなるものであり、他方の摩擦面が軟鋼の表面に亜鉛メッキ処理を施したものである。
各実施例、従来例について2サンプルずつ試験を実施し、全て共通の試験条件及び評価方法によって相対比較した結果、実施例1及び実施例2は、従来例1乃至3と比較して、摩擦係数が高い一方で、摩擦係数の変動幅は小さく、しかも摩耗量も少ない又はほぼ同等程度であることが確認された。すなわち、本実施形態に係る電磁摩擦クラッチXのように、相互に接触する摩擦板摩擦面3S及びアーマチュア摩擦面4Sの両面を硬化処理した面とすることによって、従来のフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂と添加剤とからなる摩擦材(フェーシング等と称されるもの)を使う場合(従来例1乃至3)と比較して、優れた摩擦・摩耗特性を有し、適切なトルク伝達力を発揮するものとなる。加えて、摩擦板3の摩擦面(摩擦板摩擦面3S)及びアーマチュア4の摩擦面(アーマチュア摩擦面4S)が、硬化処理した後にペーパー掛け処理を施した面であればさらに優れた摩擦・摩耗特性を有することも確認され、このような摩擦面を電磁摩擦クラッチXに適用することによって、より適切なトルク伝達力を発揮するものとなる。
また、本実施形態に係る電磁摩擦クラッチXは、摩擦板3、アーマチュア4の表面を窒化処理する、或いは窒化処理した後にペーパー掛け処理を行うだけで上述した優れた摩擦・摩耗特性を有するものとなり、製作工程の複雑化を招来することなく、製作コストの大幅な増加も回避することができる。
〈第1実施形態の変形例〉
また、上述した第1実施形態では、ロータ2に摩擦板3を設け、この摩擦板3の表面(摩擦板摩擦面3S)にアーマチュア4の摩擦面(アーマチュア摩擦面4S)を押圧させる態様を例示したが、図7及び図8に示すように、ロータ2’に摩擦板3を設けることなく、ロータ2’のうちアーマチュア4に対向する面自体を、アーマチュア摩擦面4Sと押圧させるロータ摩擦面2S’としての機能を担わせた電磁摩擦クラッチX’を採用してもよい。この場合、ロータ2’は、磁極体1及びアーマチュア4と共に磁気回路を形成するものであるため、ロータ2’自体を磁性材料で形成する必要がある。
また、上述した第1実施形態では、ロータ2に摩擦板3を設け、この摩擦板3の表面(摩擦板摩擦面3S)にアーマチュア4の摩擦面(アーマチュア摩擦面4S)を押圧させる態様を例示したが、図7及び図8に示すように、ロータ2’に摩擦板3を設けることなく、ロータ2’のうちアーマチュア4に対向する面自体を、アーマチュア摩擦面4Sと押圧させるロータ摩擦面2S’としての機能を担わせた電磁摩擦クラッチX’を採用してもよい。この場合、ロータ2’は、磁極体1及びアーマチュア4と共に磁気回路を形成するものであるため、ロータ2’自体を磁性材料で形成する必要がある。
当該変形例に係る電磁摩擦クラッチX’は、ロータ2’として、例えば低炭素鋼等の軟鋼からなるロータ芯材21’と、ロータ芯材21’の表面を硬化処理することによって形成したロータ表面硬化層22’とを備えたものを適用している。本変形例では、ロータ芯材21’の表面に窒化処理(例えば塩浴窒化処理やガス軟窒化処理)を施すことによってロータ表面硬化層22’を形成している。以下の説明では、ロータ2’のうち、アーマチュア4(具体的にはアーマチュア摩擦面4S)と押圧する面を「ロータ摩擦面2S’」と称する。なお、図7及び図8において、前記第1実施形態に係る電磁摩擦クラッチXの各部と対応する部分には同じ符号を付している。
そして、本変形例に係る電磁摩擦クラッチX’は、励磁コイル12が励磁されている励磁状態において相互に押圧する摩擦面同士、具体的にはアーマチュア摩擦面4Sとロータ摩擦面2S’とを硬化処理した表面硬化層(アーマチュア表面硬化層42、ロータ表面硬化層22’)によって形成しているため、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂と添加剤とからなるいわゆる摩擦材をロータに設ける態様と比較して、製作コストの低廉化を図ることができるとともに、相互に押圧し得る摩擦面のうち一方の摩擦面を軟鋼等の鉄や亜鉛めっき鉄自体によって形成している態様と比較して、摩擦係数が高く、しかも摩擦係数の変動幅はほぼ同等であり、さらに摩耗深さも小さい(浅い)又はほぼ同等であることが発明者の行った試験によって判明した。なお、ロータ2’及びアーマチュア4はそれぞれ鋼(軟鋼)を主材料(母材の材料)とするものであり、塩浴窒化処理を施した鋼の表面層硬さは表1に示す通りである。
図9乃至図11は、相互に押圧し得る摩擦面における静摩擦係数、静摩擦係数の変動幅、及び摩耗深さをそれぞれ実施例及び従来例について同じ条件下で試験して得られたデータを示すものであり、以下に詳述する。
実施例3…図9乃至図11における(6)であり、相互に押圧する摩擦面の両方が、軟鋼の表面を窒化処理することによって形成した面である。
実施例4…図9乃至図11における(7)であり、相互に押圧する摩擦面の両方が、軟鋼の表面を窒化処理した後にさらにペーパー掛け処理を施したものである。
従来例4…図9乃至図11における(8)であり、相互に押圧する摩擦面のうち、一方の摩擦面が軟鋼の表面そのものであり、他方の摩擦面が軟鋼の表面を窒化処理した後にさらにペーパー掛け処理を施したものである。
実施例3…図9乃至図11における(6)であり、相互に押圧する摩擦面の両方が、軟鋼の表面を窒化処理することによって形成した面である。
実施例4…図9乃至図11における(7)であり、相互に押圧する摩擦面の両方が、軟鋼の表面を窒化処理した後にさらにペーパー掛け処理を施したものである。
従来例4…図9乃至図11における(8)であり、相互に押圧する摩擦面のうち、一方の摩擦面が軟鋼の表面そのものであり、他方の摩擦面が軟鋼の表面を窒化処理した後にさらにペーパー掛け処理を施したものである。
各実施例、従来例について2サンプルずつ試験を実施し、全て共通の試験条件及び評価方法によって相対比較した結果、実施例3及び実施例4は、従来例4と比較して、摩擦係数が高い一方で、摩擦係数の変動幅はほぼ同等であり、しかも摩耗量も少ない又はほぼ同等程度であることが確認された。すなわち、本実施形態に係る電磁摩擦クラッチX’のように、相互に接触するロータ2’の摩擦面(ロータ摩擦面2S’)及びアーマチュア4の摩擦面(アーマチュア摩擦面4S)の両面を硬化処理した面とすることによって、一方の摩擦面のみが硬化処理を施した態様(従来例4)と比較して、摩擦係数の変動幅と摩耗を犠牲にすることなく、優れた摩擦特性を有し、適切なトルク伝達力を発揮するものとなる。加えて、ロータ2’の摩擦面(ロータ摩擦面2S’)及びアーマチュア4の摩擦面(アーマチュア摩擦面4S)が、硬化処理した後にペーパー掛け処理を施した面であればさらに優れた摩擦・摩耗特性を有することも確認され、このような摩擦面を電磁摩擦クラッチX’に適用することによって、より適切なトルク伝達力を発揮するものとなる。また、硬化処理したロータ2’の摩擦面(ロータ摩擦面2S’)及びアーマチュア摩擦面4Sを相互に押圧させた場合におけるロータ摩擦面2S’及びアーマチュア摩擦面4Sの塑性変形を抑制することができる。その結果、従来の態様であれば生じ得た凝着摩耗や摩耗粉の移着を防止することができ、各摩擦面(ロータ摩擦面2S’、アーマチュア摩擦面4S)が比較的大きく塑性変形した場合に生じ得る不具合、すなわち、塑性変形により各摩擦面が凹凸状に大きく荒れて(面荒れ)、摩擦力のバラツキが生じ得るという不具合を有効に防止することができる。
〈第2実施形態〉
また、本発明の第2実施形態に係る電磁摩擦ブレーキYは、図12に示すように、前記第1実施形態で励磁した電磁摩擦クラッチXと略同様の構造を用いて、回転軸YAを回転不能に固定することにより、励磁コイルY12に通電し、その励磁コイルY12から発生した磁束によってロータY2にアーマチュアY4を吸着させた場合に、アーマチュアY4に制動力が働くように構成した乾式の電磁摩擦ブレーキである。
また、本発明の第2実施形態に係る電磁摩擦ブレーキYは、図12に示すように、前記第1実施形態で励磁した電磁摩擦クラッチXと略同様の構造を用いて、回転軸YAを回転不能に固定することにより、励磁コイルY12に通電し、その励磁コイルY12から発生した磁束によってロータY2にアーマチュアY4を吸着させた場合に、アーマチュアY4に制動力が働くように構成した乾式の電磁摩擦ブレーキである。
この第2実施形態に係る電磁摩擦ブレーキYは、励磁コイルY12が励磁されていない無励磁状態である場合、図12に示すように、アーマチュアY4はロータY2から離間した位置に付勢部材Y5によって保持され、ハブY6に押圧している。したがって、アーマチュアY4はプーリY8と共に駆動されている。
一方、励磁コイルY12が励磁状態である場合、図13に示すように、アーマチュアY4は、磁極体Y1及びロータY2と共に磁気回路を形成し、この磁気回路を通る磁束によって発生する吸引力により付勢部材Y5の付勢力に抗してロータY2に接触する位置まで回転軸YAの軸方向に沿ってロータY2側に吸引される。ロータY2は回転していない回転軸YAに固定されたものであり、このロータY2にアーマチュアY4が押圧することにより、アーマチュアY4に対して制動力が働く。なお、図12及び図13では、前記第1実施形態に係る電磁摩擦クラッチXの各部と対応する部分には先頭に「Y」を付している。
そして、本実施形態に係る電磁摩擦クラッチYは、励磁状態において相互に押圧する摩擦面同士、具体的にはアーマチュア摩擦面Y4Sと摩擦板摩擦面Y3S(この摩擦板摩擦面Y3Sが本発明における「ロータ摩擦面」に相当する面である)とを硬化処理した表面硬化層(アーマチュア表面硬化層Y42、摩擦板表面硬化層Y32)によって形成しているため、従来の態様、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂と添加剤とからなる摩擦材(フェーシングやパッドと称されるもの)をロータに設ける態様と比較して、製作コストの低廉化を図ることができるとともに、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂と添加剤とからなる摩擦材をロータに設け、この摩擦材に、軟鋼等の鉄や亜鉛めっき鉄自体によって形成したアーマチュアの摩擦面を押圧させる態様として比較して、摩擦係数が高く、しかも摩擦係数の変動幅も小さく、さらに摩耗深さも浅いかほぼ同等であることが本発明者の行った試験によって判明した。なお、摩擦板Y3、アーマチュアY4はそれぞれ鋼(ステンレス鋼、軟鋼)を主材料(母材の材料)とするものであり、塩浴窒化処理を施した鋼の表面層硬さは表1に示す数値に準じる。
相互に押圧し得る摩擦面における静摩擦係数、静摩擦係数の変動幅、及び摩耗深さをそれぞれ実施例及び従来例について同じ条件下で試験して得られたデータは前述した図4乃至図6と同様のデータである。
これらのデータから明らかなように、本実施形態に係る電磁摩擦ブレーキYのように、相互に接触する摩擦板摩擦面Y3S及びアーマチュア摩擦面Y4Sの両面を硬化処理した面とすることによって、従来のフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂と添加剤とからなる摩擦材(フェーシング等と称されるもの)を使う場合(従来例1乃至3)と比較して、優れた摩擦・摩耗特性を有し、適切な制動力を発揮するものとなる。また、摩擦板Y3の摩擦面(摩擦板摩擦面Y3S)及びアーマチュアY4の摩擦面(アーマチュア摩擦面Y4S)が、硬化処理した後にペーパー掛け処理を施した面であればさらに優れた摩擦・摩耗特性を有することも確認され、製作工程の複雑化を招来することなく、製作コストの大幅な増加も回避することができ、このような摩擦面を電磁摩擦ブレーキYに適用することによって、より適切な制動力を発揮するものとなる。
〈第2実施形態の変形例〉
また、上述した第2実施形態では、ロータY2に摩擦板Y3を設け、この摩擦板Y3の表面(摩擦板摩擦面Y3S)にアーマチュアY4の摩擦面(アーマチュア摩擦面Y4S)を押圧させる態様を例示したが、図14及び図15に示すように、ロータY2’に摩擦板Y3を設けることなく、ロータY2’のうちアーマチュアY4に対向する面自体を、アーマチュア摩擦面Y4Sと押圧させるロータ摩擦面Y2S’としての機能を担わせた電磁摩擦ブレーキY’を採用してもよい。この場合、ロータY2’は、磁極体Y1及びアーマチュアY4と共に磁気回路を形成するものであるため、ロータY2’自体を磁性材料で形成する必要がある。
また、上述した第2実施形態では、ロータY2に摩擦板Y3を設け、この摩擦板Y3の表面(摩擦板摩擦面Y3S)にアーマチュアY4の摩擦面(アーマチュア摩擦面Y4S)を押圧させる態様を例示したが、図14及び図15に示すように、ロータY2’に摩擦板Y3を設けることなく、ロータY2’のうちアーマチュアY4に対向する面自体を、アーマチュア摩擦面Y4Sと押圧させるロータ摩擦面Y2S’としての機能を担わせた電磁摩擦ブレーキY’を採用してもよい。この場合、ロータY2’は、磁極体Y1及びアーマチュアY4と共に磁気回路を形成するものであるため、ロータY2’自体を磁性材料で形成する必要がある。
当該変形例に係る電磁摩擦ブレーキY’は、ロータY2’として、例えば低炭素鋼等の軟鋼からなるロータ芯材Y21’と、ロータ芯材Y21’の表面を硬化処理することによって形成したロータ表面硬化層Y22’とを備えたものを適用している。本変形例では、ロータ芯材Y21’の表面に窒化処理(例えば塩浴窒化処理やガス軟窒化処理)を施すことによってロータ表面硬化層Y22’を形成している。以下の説明では、ロータY2’のうち、アーマチュアY4(具体的にはアーマチュア摩擦面Y4S)と押圧する面を「ロータ摩擦面Y2S’」と称する。なお、図14及び図15において、前記第2実施形態に係る電磁摩擦ブレーキYの各部と対応する部分には同じ符号を付している。なお、図14及び図15では、前記第2実施形態に係る電磁摩擦ブレーキYの各部と対応する部分には同じ符号を付している。
そして、本変形例に係る電磁摩擦ブレーキY’は、励磁コイルY12が励磁されている励磁状態において相互に押圧する摩擦面同士、具体的にはアーマチュア摩擦面Y4Sとロータ摩擦面Y2S’とを硬化処理した表面硬化層(アーマチュア表面硬化層Y42、ロータ表面硬化層Y22’)によって形成しているため、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂と添加剤とからなるいわゆる摩擦材をロータに設ける態様と比較して、製作コストの低廉化を図ることができるとともに、相互に押圧し得る摩擦面のうち一方の摩擦面を軟鋼等の鉄や亜鉛めっき鉄自体によって形成している態様と比較して、摩擦係数が高く、しかも摩擦係数の変動幅はほぼ同等であり、さらに摩耗深さも浅いかほぼ同等であることが発明者の行った試験によって判明した。なお、ロータY2’及びアーマチュアY4はそれぞれ鋼(軟鋼)を主材料(母材の材料)とするものであり、塩浴窒化処理を施した鋼の表面層硬さは表1に示す数値に準じる。
相互に押圧し得る摩擦面における静摩擦係数、静摩擦係数の変動幅、及び摩耗深さをそれぞれ実施例及び従来例について同じ条件下で試験して得られたデータは前述した図9乃至図11である。
これらの試験結果から明らかなように、本変形例に係る電磁摩擦ブレーキY’のように、相互に接触するロータY2’の摩擦面(ロータ摩擦面Y2S’)及びアーマチュアY4の摩擦面(アーマチュア摩擦面Y4S)の両面を硬化処理した面とすることによって、従来の一方の摩擦面のみが硬化処理を施した態様と比較して、摩擦係数の変動幅と摩耗を犠牲にすることなく、優れた摩擦特性を有し、適切な制動力を発揮するものとなる。加えて、ロータY2’の摩擦面(ロータ摩擦面Y2S’)及びアーマチュアY4の摩擦面(アーマチュア摩擦面Y4S)が、硬化処理した後にペーパー掛け処理を施した面であればさらに優れた摩擦・摩耗特性を有することも確認され、このような摩擦面を電磁摩擦ブレーキY’に適用することによって、より適切な制動力を発揮するものとなる。また、硬化処理したYロータ2’の摩擦面(ロータ摩擦面Y2S’)及びアーマチュア摩擦面Y4Sを相互に押圧させた場合におけるロータ摩擦面Y2S’及びアーマチュア摩擦面Y4Sの塑性変形を抑制することができる。その結果、従来の態様であれば生じ得た凝着摩耗や摩耗粉の移着を防止することができ、各摩擦面(ロータ摩擦面Y2S’、アーマチュア摩擦面Y4S)が比較的大きく塑性変形した場合に生じ得る不具合、すなわち、塑性変形により各摩擦面が凹凸状に大きく荒れて(面荒れ)、摩擦力のバラツキが生じ得るという不具合を有効に防止することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、硬化処理として、塩浴窒化処理やガス軟窒化処理等の窒化処理に代えて、浸炭処理、無電解ニッケルメッキ処理、硬質クロムメッキ処理、タフトライド処理(イソナイト処理)、或いは焼入れ焼戻し処理等の硬化処理を採用してもよい。
また、上述した実施形態では、アーマチュアやロータの主材料(芯材、母材)として軟鋼の一種である低炭素鋼を採用した例を示したが、軟鋼以外の鋼を主材料として採用することもでき、或いは主材料として軟鋼に代えて、純鉄や電磁軟鉄を採用してであっても構わない。また、摩擦板の主材料(芯材、母材)として、も非磁性体であればよく、ステンレス鋼以外の鋼を適用してもよく、或いは鋼以外の金属材料を採用することもできる。摩擦板が、金属材料(鋼であるか否かを問わず)を主材料とし、摩擦面を樹脂コーティングではなく窒化処理等の硬化処理により形成したものであれば、環境負荷ガス(CO2)の排出を伴わずに焼却廃棄処理することができ、対環境性にも優れる。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
1、Y1…磁極体
12、Y12…励磁コイル
2、2’、2Y、Y2’…ロータ
2S’、Y2S’…ロータ摩擦面
3、Y3…摩擦板
3S、Y3S…ロータ摩擦面(摩擦板摩擦面)
4、Y4…アーマチュア
4S、Y4S…アーマチュア摩擦面
A、YA…回転軸
X、X’…電磁摩擦クラッチ
Y、Y’…電磁摩擦ブレーキ
12、Y12…励磁コイル
2、2’、2Y、Y2’…ロータ
2S’、Y2S’…ロータ摩擦面
3、Y3…摩擦板
3S、Y3S…ロータ摩擦面(摩擦板摩擦面)
4、Y4…アーマチュア
4S、Y4S…アーマチュア摩擦面
A、YA…回転軸
X、X’…電磁摩擦クラッチ
Y、Y’…電磁摩擦ブレーキ
Claims (8)
- 励磁コイルを有する磁極体と、
回転軸の軸方向に沿って前記磁極体と対向する位置に配置されたロータと、
前記回転軸の軸方向に沿って前記ロータに接離する方向に移動可能であって且つ前記磁極体及び前記ロータと共に磁気回路を形成し得るアーマチュアとを備え、
前記励磁コイルが励磁状態である場合に前記アーマチュアが電磁吸引力により前記ロータに押圧する乾式の電磁摩擦クラッチであって、
前記アーマチュアのうち前記ロータに押圧し得るアーマチュア摩擦面を硬化処理された面とし、
前記ロータのうち前記アーマチュア摩擦面に押圧し得るロータ摩擦面を硬化処理された面としていることを特徴とする電磁摩擦クラッチ。 - 前記ロータのうち前記アーマチュア摩擦面に押圧し得る部分に、表面に硬化処理を施した金属製の非磁性体である摩擦板を設け、当該摩擦板の表面を前記ロータ摩擦面としている請求項1に記載の電磁摩擦クラッチ。
- 前記ロータのうち前記アーマチュア摩擦面に押圧し得る表面に硬化処理を施し、当該硬化処理を施したロータの表面を前記ロータ摩擦面としている請求項1に記載の電磁摩擦クラッチ。
- 前記アーマチュア摩擦面及び前記ロータ摩擦面のビッカース硬度がHV350乃至1200である請求項1乃至3の何れかに記載の電磁摩擦クラッチ。
- 励磁コイルを有する磁極体と、
回転軸の軸方向に沿って前記磁極体と対向する位置に配置されたロータと、
前記回転軸の軸方向に沿って前記ロータに接離する方向に移動可能であって且つ前記磁極体及び前記ロータと共に磁気回路を形成し得るアーマチュアとを備え、
前記励磁コイルが励磁状態である場合に前記アーマチュアが電磁吸引力により前記ロータに押圧する電磁摩擦ブレーキであって、
前記アーマチュアのうち前記ロータに押圧し得るアーマチュア摩擦面を硬化処理された面とし、
前記ロータのうち前記アーマチュア摩擦面に押圧し得るロータ摩擦面を硬化処理された面としていることを特徴とする電磁摩擦ブレーキ。 - 前記ロータのうち前記アーマチュア摩擦面に押圧し得る部分に、表面に硬化処理を施した金属製の非磁性体である摩擦板を設け、当該摩擦板の表面を前記ロータ摩擦面としている請求項5に記載の電磁摩擦ブレーキ。
- 前記ロータのうち前記アーマチュア摩擦面に押圧し得る表面に硬化処理を施し、当該硬化処理を施したロータの表面を前記ロータ摩擦面としている請求項5に記載の電磁摩擦ブレーキ。
- 前記アーマチュア摩擦面及び前記ロータ摩擦面のビッカース硬度がHV350乃至1200である請求項5乃至7の何れかに記載の電磁摩擦ブレーキ。
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