以下、図面を参照して本発明の一の実施の形態について説明する。図1乃至図8は、本実施の形態に係る紙幣繰出装置およびこの紙幣繰出装置を備えた紙幣処理機を示す図である。このうち、図1は、本発明の一の実施の形態による紙幣繰出装置を備えた紙幣処理機の外観を示す斜視図であり、図2は、本発明の一の実施の形態による紙幣繰出装置の構成を示す側面図である。また、図3は、図2に示す紙幣繰出装置におけるキッカローラ、フィードローラおよび駆動力伝達部等の構成を示す斜視図であり、図4は、図2に示す紙幣繰出装置おけるキッカローラおよび駆動力伝達部の構成を示す側面図であり、図5は、図4に示す駆動力伝達部のカムの構成の詳細を示す側面図である。
また、図6および図7は、図2に示す紙幣繰出装置において、紙幣の繰出を行う際の一連の動作を説明するための側面図である。また、図8は、図2に示す紙幣繰出装置において、紙幣の繰出動作が終了した後に次の紙幣の繰出動作に備えてキッカローラ等を逆方向に回転させる際の一連の動作を説明するための側面図である。なお、図2および図6乃至図8における参照符号Pは紙幣を示す。
図1に示すように、紙幣処理機10は略直方体形状の筐体12を備えており、この筐体12には、紙幣の入金を行うための入金口14が設けられている。入金口14には、当該入金口14の開閉を行うシャッター機構20が設けられている。シャッター機構20は、入金口14の前面を選択的に覆うよう設けられた第1の板状部材22および第2の板状部材24、ならびに入金口14の上面を選択的に覆うよう設けられた第3の板状部材26を有している。シャッター機構20が入金口14を開くときには、第1の板状部材22、第2の板状部材24および第3の板状部材26がそれぞれ入金口14の前面や上面から退避するようになっている。
図2に示すように、入金口14には、紙幣Pを積層状態で集積するための紙幣受入部60が設けられている。紙幣受入部60は、斜め上方方向に延びるよう設けられ積層状態の紙幣Pの側端部分を受ける側壁部材61と、側壁部材61の延びる方向(図2における矢印方向)に沿って往復移動を行い、積層状態の紙幣Pの底部分を受けるステージ62とを有している。より具体的には、ステージ62は、後述するキッカローラ30に向かう方向(図2における右上方向)およびこのキッカローラ30から退避する方向(図2における左下方向)にそれぞれ移動することができるようになっている。ステージ62上に紙幣Pが積層状態で集積されているときに、紙幣Pの繰出動作を行う際には、ステージ62がキッカローラ30に向かって移動することによりこのステージ62上にある複数の紙幣Pのうち最上位にある紙幣Pがキッカローラ30に押し当てられるようになっている。一方、紙幣Pの繰出動作が終了したら、ステージ62はキッカローラ30から退避する方向に移動し、このステージ62上に紙幣Pを新たに載置することができるようになる。
図2に示すように、紙幣受入部60の側壁部材61の上端には、フィードローラ40およびゲートローラ50がそれぞれ設けられている。ゲートローラ50は、フィードローラ40に当接するよう設けられ、このフィードローラ40との間でニップ部を形成している。また、フィードローラ40の近傍にはキッカローラ30が設けられている。キッカローラ30は、図2における反時計回りの方向に回転することにより、紙幣受入部60のステージ62上に積層状態で集積された複数の紙幣Pのうち最上位にある紙幣Pを、フィードローラ40とゲートローラ50との間に形成されたニップ部に1枚ずつ蹴り出すようになっている。フィードローラ40は、ニップ部に送られた紙幣Pを、筐体12の内部に設けられた搬送路16に1枚ずつ繰り出すようになっている。
キッカローラ30、フィードローラ40およびゲートローラ50の構成の詳細について図2および図3を用いて以下に説明する。
図3に示すように、キッカローラ30は、搬送されるべき紙幣Pの幅方向(図2の紙面に直交する方向)に沿って左右一対となるよう設けられている。各キッカローラ30は、略円盤状の本体部分31と、本体部分31の外周面の一部を覆うよう設けられた例えばゴム等の弾性部材からなる高摩擦部32と、軸33とを有している。高摩擦部32は、本体部分31の外周面の約4分の1の領域を覆うようになっている。本体部分31および高摩擦部32は、軸33を中心として図2における時計回りおよび反時計回りの両方向に回転することができるようになっている。キッカローラ30が図2における反時計回りの方向に回転する際に、紙幣受入部60のステージ62上にある複数の紙幣Pのうち最上位にある紙幣Pがキッカローラ30の高摩擦部32に当接したときにこの最上位にある紙幣Pが高摩擦部32によりニップ部に蹴り出される。
図3に示すように、フィードローラ40は、搬送されるべき紙幣Pの幅方向に沿って左右一対となるよう設けられている。各フィードローラ40は、略円盤状の本体部分41と、本体部分41の外周面の全部を覆うよう設けられた例えばゴム等の弾性部材からなる高摩擦部42と、軸43とを有している。本体部分41および高摩擦部42は、軸43を中心として図2における時計回りおよび反時計回りの両方向に回転するようになっている。また、図3に示すように、軸43の端部には、駆動部(図示せず)の回転駆動力入力部45が設けられており、駆動部の回転駆動力入力部45により、軸43に対して正逆両方向の回転駆動力が与えられるようになっている。また、図2に示すように、フィードローラ40には案内ローラ44が当接するよう設けられており、フィードローラ40とゲートローラ50との間にあるニップ部を通過した紙幣Pがフィードローラ40と案内ローラ44との間を通過することにより、この紙幣Pが搬送路16に案内されるようになっている。
ゲートローラ50は、左右一対に設けられたフィードローラ40に対応して、左右一対となるよう設けられている。各ゲートローラ50は、略円盤状の本体部分51と、本体部分51の外周面の全部を覆うよう設けられた例えばゴム等の弾性部材からなる高摩擦部52と、軸53とを有している。ここで、ゲートローラ50の高摩擦部52はフィードローラ40の高摩擦部42に押圧されるよう設けられており、フィードローラ40が軸43を中心として回転したときに、ゲートローラ50の高摩擦部52とフィードローラ40の高摩擦部42との間で働く摩擦力によって、ゲートローラ50も連動して軸53を中心として回転するようになっている。また、ゲートローラ50の高摩擦部52とフィードローラ40の高摩擦部42との間にニップ部が形成されており、キッカローラ30により蹴り出された紙幣Pはこのニップ部を通過して1枚ずつ繰出されるようになっている。
また、図3乃至図5に示すように、キッカローラ30およびフィードローラ40は駆動力伝達部70により接続されており、フィードローラ40からキッカローラ30に回転駆動力が伝達されるようになっている。この駆動力伝達部70は、紙幣Pの繰出方向にキッカローラ30が回転する際に、すなわちキッカローラ30が図2における反時計周りの方向に回転する際に、フィードローラ40からキッカローラ30に回転駆動力をそのまま伝達するようになっている。より詳細に説明すると、紙幣Pの繰出動作を行う際には、駆動部(図示せず)の回転駆動力入力部45によりフィードローラ40が軸43を中心として図2における反時計周りの方向に回転し、駆動力伝達部70によりフィードローラ40からキッカローラ30に回転駆動力が伝達されることにより、キッカローラ30もフィードローラ40と連動して軸33を中心として回転する。
一方、駆動力伝達部70は、紙幣Pの繰出方向とは逆の方向にキッカローラ30が回転する際に、すなわちキッカローラ30が図2における時計回りの方向に回転する際に、キッカローラ30の高摩擦部32が所定の位置に達したときに、フィードローラ40からキッカローラ30への回転駆動力の伝達を遮断するようになっている。このような駆動力伝達部70の構成および動作の詳細については後述する。
図3乃至図5に示すように、駆動力伝達部70は、キッカローラ30の軸33に設けられたタイミングプーリ71と、キッカローラ30の軸33に設けられたタイミングプーリ71およびフィードローラ40の軸43に設けられたタイミングプーリ(図示せず)の両方に掛けられた無端状のタイミングベルト72と、タイミングプーリ71とキッカローラ30の軸33との間に設けられたワンウェイクラッチ73とを有している。また、駆動力伝達部70は、キッカローラ30の軸33に固定的に取り付けられたカム74と、キッカローラ30の近傍に設けられたストッパ部材75と、カム74の外周面に接触するようストッパ部材75に設けられた被接触ローラ76とを有している。
駆動力伝達部70の構成の詳細について図3乃至図5を用いて以下に説明する。
タイミングプーリ71は、左右一対のキッカローラ30の中間の位置において軸33に設けられている。このタイミングプーリ71と軸33との間にはワンウェイクラッチ73が設けられている。また、左右一対のフィードローラ40の中間の位置において軸43にタイミングプーリ(図示せず)が設けられており、キッカローラ30の軸33に設けられたタイミングプーリ71およびフィードローラ40の軸43に設けられたタイミングプーリ(図示せず)の両方に、無端状の1本のタイミングベルト72が掛けられている。このようなタイミングベルト72が設けられていることにより、駆動部の回転駆動力入力部45によって軸43に対して回転駆動力が与えられたときに、この回転駆動力がタイミングプーリ71に伝達される。
ワンウェイクラッチ73は、紙幣Pの繰出方向にフィードローラ40の軸43が回転することによりタイミングプーリ71が回転した際に、タイミングプーリ71から軸33に回転駆動力をそのまま伝達するようになっている。また、ワンウェイクラッチ73は、紙幣Pの繰出方向とは逆の方向にフィードローラ40の軸43が回転することによりタイミングプーリ71が回転した際に、軸33に対して何ら力が作用していないときには、タイミングプーリ71から軸33に、ワンウェイクラッチ73に内蔵されるベアリング(図示せず)等の摩擦力によって、回転駆動力をそのまま伝達するようになっている。具体的には、軸33に対して何ら力が作用していないときには軸33はタイミングプーリ71と連れ回るようになる。一方、紙幣Pの繰出方向とは逆の方向にフィードローラ40の軸43が回転することによりタイミングプーリ71が回転した際に、軸33に対してその回転を抑制する力が加えられている場合には、ワンウェイクラッチ73は、タイミングプーリ71から軸33への回転駆動力の伝達を遮断するようになっている。具体的には、軸33に対してその回転を抑制する力が加えられている場合には、軸33はタイミングプーリ71と連れ回ることはない。この場合には、タイミングプーリ71は空回りをし、軸33は回転しない。ここで、軸33の回転を抑制する力の詳細については後述する。
図3に示すように、軸33において、左右一対のキッカローラ30よりも内側の位置には左右一対のカム74がそれぞれ設けられている(なお、図3においては、左右一対のカム74のうち右側のカム74はキッカローラ30に隠れている)。各カム74は軸33に固定的に取り付けられており、各カム74はキッカローラ30と同期して回転するようになっている。各カム74の構成の詳細について図5を用いて説明する。なお、図5において、参照のため、カム74の外周面に接触する被接触ローラ76(後述)も図示している。カム74の外周面は、第1の外周部分74aと、第2の外周部分74bとを有している。第1の外周部分74aは、その中心が軸33の中心と一致するような円周の一部となっており、図5に示すように、この円周の半径の大きさは「a」となっている。また、第2の外周部分74bは、その中心が軸33の中心と一致するような円周の一部となっており、図5に示すように、この円周の半径の大きさは前述の「a」よりも小さい「b」となっている。すなわち、第1の外周部分74aは、第2の外周部分74bよりも軸33の中心から遠い位置にある。また、カム74の外周面において、第1の外周部分74aと第2の外周部分74bとの間に、接続部分74c、74dがそれぞれ設けられている。図5において、実線は、カム74の第1の外周部分74aに被接触ローラ76が接触しているときのカム74および被接触ローラ76を示し、二点鎖線は、カム74の第2の外周部分74bに被接触ローラ76が接触しているときのカム74および被接触ローラ76を示している。
ワンウェイクラッチ73が、タイミングプーリ71から軸33への回転駆動力の伝達を遮断したときに、すなわち、軸33がタイミングプーリ71と連れ回らなくなったときに、キッカローラ30の高摩擦部32は、所定の位置に達するようになっている。ここで、高摩擦部32の所定の位置とは、具体的には、次の紙幣Pの繰出動作を行ったときに、ステージ62上に集積された積層状態の複数の紙幣Pのうち最上位の紙幣Pをすぐにフィードローラ40とゲートローラ50との間に形成されたニップ部に蹴り出すことができるような位置のことをいう。ワンウェイクラッチ73が回転駆動力の伝達を遮断したときにキッカローラ30の高摩擦部32が所定の位置に達することができるよう、カム74の形状、具体的には第1の外周部分74a、第2の外周部分74bおよび接続部分74c、74dの位置が設定されている。
図3に示すように、左右一対の各々のキッカローラ30を左右から挟むよう、左右一対のストッパ部材75が設けられている。図3および図4に示すように、各ストッパ部材75は、細長い部材から構成されている。ストッパ部材75の一方の端部には軸75aが設けられており、ストッパ部材75はこの軸75aを中心として揺動することができるようになっている。また、ストッパ部材75の他方の端部75bにはバネ77の一端が取り付けられており、このバネ77の他端は固定されている。このため、図4に示すように、ストッパ部材75には、その他方の端部75bに取り付けられたバネ77の収縮力により、図4の矢印方向に引っ張る力が常に作用している。
ストッパ部材75には、カム74の外周面に接触するよう被接触ローラ76が設けられている。ここで、被接触ローラ76は軸76aを中心として回転自在となるようストッパ部材75に取り付けられている。
以下、紙幣Pの繰出方向にフィードローラ40の軸43が回転する場合、および紙幣Pの繰出方向とは逆の方向にフィードローラ40の軸43が回転する場合についてそれぞれ説明する。
<紙幣Pの繰出方向にフィードローラ40の軸43が回転する場合>
カム74が軸33を中心として回転した際には、このカム74には軸33の中心からの距離が異なる第1の外周部分74aおよび第2の外周部分74bが設けられており、被接触ローラ76は第1の外周部分74aおよび第2の外周部分74bにそれぞれ接触するので、被接触ローラ76は図5に示す実線の位置と二点鎖線の位置との間で往復移動を行うようになる。このことにより、ストッパ部材75は、その一方の端部に設けられた軸75aを中心として図4の上下方向に揺動することとなる。より詳細には、被接触ローラ76がカム74の第2の外周部分74bに接触しているときに(すなわち、図5の二点鎖線に示すような状態のときに)、カム74が軸33を中心として回転し、被接触ローラ76がカム74の第1の外周部分74aに接触するようになると(すなわち、図5の実線に示すような状態になると)、被接触ローラ76はカム74により図4における下方に押圧され、ストッパ部材75はバネ77の収縮力に抗して軸75aを中心として下方に回動する。一方、被接触ローラ76がカム74の第1の外周部分74aに接触しているときに、カム74が軸33を中心として回転し、被接触ローラ76がカム74の第2の外周部分74bに接触するようになると、バネ77の収縮力によりストッパ部材75は軸75aを中心として上方に回動する。このように、カム74が軸33を中心として回転することにより、ストッパ部材75が軸75aを中心として同期して揺動することとなる。
<紙幣Pの繰出方向とは逆の方向にフィードローラ40の軸43が回転する場合>
被接触ローラ76がカム74の第2の外周部分74bに接触しているときに(すなわち、図5の二点鎖線に示すような状態のときに)、軸33がタイミングプーリ71と連れ回ることによってカム74が軸33を中心として回転し、被接触ローラ76がカム74の第1の外周部分74aに接触しようとすると、バネ77の収縮力に抗してカム74は被接触ローラ76を下方に押圧するために、カム74に取り付けられた軸33には、この軸33の回転を抑制する力がかかることとなる。すなわち、カム74およびストッパ部材75の位置が図5の二点鎖線に示すような状態となっているときに、軸33がタイミングプーリ71と連れ回ることによってカム74が軸33を中心として回転した場合には、バネ77の収縮力によってカム74は被接触ローラ76から力を受け、この力は軸33にもかかることとなる。そして、このような軸33の回転を抑制する力により、ワンウェイクラッチ73は、タイミングプーリ71から軸33への回転駆動力の伝達を遮断し、軸33はタイミングプーリ71と連れ回らなくなる。すなわち、紙幣Pの繰出方向とは逆の方向にフィードローラ40の軸43が回転する場合において、ワンウェイクラッチ73に内蔵されるベアリング等の摩擦力によって軸33がタイミングプーリ71と連れ回っている際に、被接触ローラ76がカム74の第2の外周部分74bから第1の外周部分74aに乗り上げようとしたときに、軸33の回転を抑制する力が働くので、タイミングプーリ71から軸33への回転駆動力の伝達が遮断されることとなる(すなわち、軸33はタイミングプーリ71と連れ回らなくなる)。この場合、軸33およびカム74は停止するので、被接触ローラ76は実際にはカム74の第2の外周部分74bから第1の外周部分74aに乗り上げることはない。
また、図4に示すように、左右一対の各々のキッカローラ30の両側において、各ストッパ部材75には例えばゴム等の弾性部材からなる紙幣搬送規制部材78がそれぞれ設けられている。ここで、各紙幣搬送規制部材78は、被接触ローラ76がカムの第2の外周部分74bに接触しているときにはキッカローラ30の外周面から内側に(軸33に近い側に)退避した位置にある。この場合、紙幣受入部60のステージ62上に積層状態で集積された複数の紙幣Pのうち最上位の紙幣Pに各紙幣搬送規制部材78が接触することはない。一方、各紙幣搬送規制部材78は、被接触ローラ76がカムの第1の外周部分74aに接触しているときにはキッカローラ30の外周面から外側に(軸33から離れた側に)進出した位置にある(図7参照)。この場合、紙幣受入部60のステージ62上に積層状態で集積された複数の紙幣Pのうち最上位の紙幣Pに各紙幣搬送規制部材78が接触し、この最上位の紙幣Pは各紙幣搬送規制部材78によってその位置がずれてしまうことが抑止される。
なお、本実施の形態の紙幣繰出装置においては、カム74、ストッパ部材75、被接触ローラ76、バネ77および紙幣搬送規制部材78によりローラ回転抑制機構79が構成されている。このローラ回転抑制機構79は、紙幣Pの繰出方向とは逆の方向にキッカローラ30が回転する際にこのキッカローラ30の高摩擦部32が所定の位置に達したときにキッカローラ30の軸33に対してその回転を抑制する力を加える機能を有することとなる。
次に、このような構成からなる紙幣繰出装置の動作について図6乃至図8を用いて説明する。
図2に示すような紙幣繰出装置により紙幣Pの繰出動作を行うにあたり、まず、紙幣受入部60のステージ62上に複数の紙幣Pを積層状態で集積する。その後、紙幣Pの繰出動作を開始すると、ステージ62がキッカローラ30に向かって上昇し、このステージ62上に積層状態に集積された複数の紙幣Pのうち最上位の紙幣Pがキッカローラ30に押し当てられる。
また、紙幣Pの繰出動作を開始すると、駆動部(図示せず)の回転駆動力入力部45により、フィードローラ40の軸43に対して紙幣Pの繰出方向(図2における反時計回りの方向)の回転駆動力が連続的に与えられる。このことにより、フィードローラ40は図6における反時計回りの方向に連続的に回転する。フィードローラ40の軸43に与えられた回転駆動力は、駆動力伝達部70のタイミングベルト72、タイミングプーリ71およびワンウェイクラッチ73を介してフィードローラ40の軸43からキッカローラ30の軸33に伝達される。このことにより、キッカローラ30がフィードローラ40と同期して図6における反時計回りの方向に連続的に回転する。また、ゲートローラ50の高摩擦部52がフィードローラ40の高摩擦部42に押圧されているので、フィードローラ40が図6における反時計回りの方向に回転すると、ゲートローラ50もフィードローラ40により連れ回って回転させられる。この際に、ゲートローラ50は図6における時計回りの方向に連続的に回転する。
ここで、図6に示すように、紙幣受入部60のステージ62上に積層状態に集積された複数の紙幣Pのうち最上位の紙幣Pがキッカローラ30の高摩擦部32に当接すると、この最上位の紙幣Pは高摩擦部32によってフィードローラ40とゲートローラ50との間に形成されたニップ部に蹴り出される。この際に、ストッパ部材75に設けられた被接触ローラ76はカム74の第2の外周部分74bに接触しており、このストッパ部材75は比較的上方の位置にある。このときに、ストッパ部材75に設けられた紙幣搬送規制部材78は、キッカローラ30の外周面から内側に(軸33に近い側に)退避しており、繰り出されるべき紙幣Pに接触していない。キッカローラ30によりニップ部に蹴り出された紙幣Pはフィードローラ40によりこのニップ部から繰出され、フィードローラ40と案内ローラ44との間を通って搬送路16に送られる。
キッカローラ30により紙幣Pがフィードローラ40とゲートローラ50との間に形成されたニップ部に蹴り出された後、キッカローラ30は引き続き回転を行い、図7に示すようにキッカローラ30の高摩擦部32はステージ62上の紙幣Pから離れた位置となる。この際に、ストッパ部材75に設けられた被接触ローラ76はカム74の第1の外周部分74aに接触しており、このストッパ部材75は比較的下方の位置にある。このときに、ストッパ部材75に設けられた紙幣搬送規制部材78は、キッカローラ30の外周面から外側に(軸33から離れた側に)進出しており、ステージ62上に積層状態に集積された複数の紙幣Pのうち最上位の紙幣Pに接触する(図7参照)。このことにより、最上位の紙幣Pが紙幣搬送規制部材78により押さえられ、この紙幣Pの位置がずれてしまうことを抑止することができる。
次に、紙幣受入部60のステージ62上の紙幣Pの繰出動作が終了した後に、フィードローラ40やキッカローラ30を逆方向に回転させる際の動作について説明する。
紙幣Pの繰出動作が終了した後にフィードローラ40とゲートローラ50との間に形成されたニップ部等に紙幣Pが残ってしまう場合があるので、1つの処理が終了した際に、紙幣Pの繰出動作が終了した後に、キッカローラ30やフィードローラ40を紙幣Pの繰出方向とは逆方向に回転させ、ニップ部等に残っている紙幣Pをステージ62上に戻すようになっている。具体的には、駆動部(図示せず)の回転駆動力入力部45により、フィードローラ40の軸43に対して紙幣Pの繰出方向とは逆の方向(図2における時計回りの方向)の回転駆動力が連続的に与えられる。このことにより、フィードローラ40は図8における時計回りの方向に連続的に回転する。フィードローラ40の軸43に与えられた回転駆動力は、駆動力伝達部70のタイミングベルト72、タイミングプーリ71およびワンウェイクラッチ73を介してフィードローラ40の軸43からキッカローラ30の軸33に弱い力で伝達される。言い換えると、ワンウェイクラッチ73に内蔵されるベアリング等の摩擦力によって軸33がタイミングプーリ71と連れ回ることとなる。このことにより、キッカローラ30がフィードローラ40と同期して図8における時計回りの方向に連続的に回転する。
ここで、被接触ローラ76がカム74の第2の外周部分74bに接触しているときに(すなわち、図5の二点鎖線に示すような状態のときに)、カム74が軸33を中心として図8の時計回りの方向に回転し、被接触ローラ76がカム74の第2の外周部分74bから第1の外周部分74aに乗り上げようとすると、バネ77の収縮力に抗してカム74は被接触ローラ76を下方に押圧するために、カム74に取り付けられた軸33には、この軸33の回転を抑制する力がかかることとなる。すなわち、カム74およびストッパ部材75の位置が図5の二点鎖線に示すような状態となっているときに、カム74が軸33を中心として回転した場合には、被接触ローラ76がカム74の第2の外周部分74bから第1の外周部分74aに乗り上げようとすると、カム74はバネ77の収縮力によって被接触ローラ76から力を受け、この力は軸33にもかかることとなる。そして、このような軸33の回転を抑制する力により、ワンウェイクラッチ73は、タイミングプーリ71から軸33への回転駆動力の伝達を遮断する。すなわち、軸33はタイミングプーリ71と連れ回らなくなる。このように、紙幣Pの繰出方向とは逆の方向にフィードローラ40の軸43が回転することによりタイミングプーリ71が回転した際に、軸33の回転を抑制する力によって、ワンウェイクラッチ73は、タイミングプーリ71から軸33への回転駆動力の伝達を遮断する。このことにより、タイミングプーリ71は空回りをし、軸33は回転しなくなる。
前述のように、ワンウェイクラッチ73が回転駆動力の伝達を遮断したときにキッカローラ30の高摩擦部32が所定の位置に達することができるよう、カム74の形状、具体的には第1の外周部分74a、第2の外周部分74bおよび接続部分74c、74dの位置が設定されている。高摩擦部32の所定の位置とは、前述のように、次の紙幣Pの繰出動作を行ったときに、ステージ62上に集積された積層状態の複数の紙幣Pのうち最上位の紙幣Pをすぐにフィードローラ40とゲートローラ50との間に形成されたニップ部に蹴り出すことができるような位置のことをいう。より具体的には、キッカローラ30の高摩擦部32が所定の位置に達したときに、被接触ローラ76が、第1の外周部分74aと第2の外周部分74bとの間に設けられた接続部分74dに接触するよう、カム74の形状が設定されている。このため、ワンウェイクラッチ73が、タイミングプーリ71から軸33への回転駆動力の伝達を遮断したときに、キッカローラ30の高摩擦部32は、所定の位置に達することとなる。
このようにして、ワンウェイクラッチ73が、タイミングプーリ71から軸33への回転駆動力の伝達を遮断すると、フィードローラ40およびゲートローラ50は紙幣Pの繰出方向とは逆の方向に回転し続けるが、キッカローラ30はその高摩擦部32が所定の位置にある状態で停止させられる。その後、フィードローラ40の軸43の回転を停止させることにより、フィードローラ40およびゲートローラ50が停止し、紙幣Pの次の繰出動作の準備が完了する。
以上のように本実施の形態の紙幣繰出装置によれば、駆動部の回転駆動力入力部45からの回転駆動力をキッカローラ30に選択的に伝達する駆動力伝達部70が設けられており、この駆動力伝達部70は、紙幣Pの繰出方向にキッカローラ30が回転する際に駆動部の回転駆動力入力部45からの回転駆動力をキッカローラ30に伝達し、紙幣Pの繰出方向とは逆の方向にキッカローラ30が回転する際にこのキッカローラ30の高摩擦部32が所定の位置に達したときに駆動部の回転駆動力入力部45からキッカローラ30への回転駆動力の伝達を遮断するようになっている。このような駆動力伝達部70が設けられていることにより、キッカローラ30の回転位置を検出する手段を設けなくとも、紙幣Pの繰出動作の開始時にキッカローラ30の高摩擦部32を所定の場所に位置させることができる。このため、シンプルな構成により、紙幣Pの繰出動作の開始時に紙幣Pの連鎖や斜行等のトラブルが発生してしまうことを防止することができる。
本実施の形態の紙幣繰出装置においては、駆動力伝達部70は、駆動部の回転駆動力入力部45とキッカローラ30との間に設けられた(より具体的には、タイミングプーリ71と軸33との間に設けられた)ワンウェイクラッチ73と、紙幣Pの繰出方向とは逆の方向にキッカローラ30が回転する際にキッカローラ30の高摩擦部32が所定の位置に達したときにキッカローラ30の軸33に対してその回転を抑制する力を加えるローラ回転抑制機構79とを有している。より詳細には、ローラ回転抑制機構79は、キッカローラ30と同期して回転するようキッカローラ30の軸33に取り付けられたカム74と、カム74の外周面に接触する被接触ローラ76とを有し、紙幣Pの繰出方向とは逆の方向にキッカローラ30が回転する際に、カム74の外周面における所定の位置(具体的には、例えば、第1の外周部分74aと第2の外周部分74bとの間に設けられた接続部分74d)に被接触ローラ76が接触したときにカム74に対してその回転を抑制する力が加えられるようになっている。
そして、ワンウェイクラッチ73は、紙幣Pの繰出方向にキッカローラ30が回転する際に駆動部の回転駆動力入力部45からの回転駆動力をキッカローラ30に伝達する。一方、ワンウェイクラッチ73は、紙幣Pの繰出方向とは逆の方向にキッカローラ30が回転する際において、ローラ回転抑制機構79がキッカローラ30の軸33に対してその回転を抑制する力を加えたときに、駆動部の回転駆動力入力部45からキッカローラ30への回転駆動力の伝達を遮断するようになっている。言い換えると、キッカローラ30の軸33はタイミングプーリ71と連れ回らなくなる。
また、本実施の形態の紙幣繰出装置においては、ローラ回転抑制機構79は紙幣搬送規制部材78を有している。この紙幣搬送規制部材78は、キッカローラ30の外周面よりも外側に進出してこのキッカローラ30により蹴り出されるべき紙幣Pに当接する進出位置(図7参照)と、キッカローラ30の外周面よりも内側に退避してキッカローラ30により蹴り出されるべき紙幣Pから離間する退避位置(図6参照)との間で往復移動を行うようになっている。そして、紙幣搬送規制部材78は、キッカローラ30の回転に同期して進出位置と退避位置との間で往復移動を行うようになっている。具体的には、キッカローラ30により蹴り出されるべき紙幣Pにキッカローラ30の高摩擦部32が接触する際に紙幣搬送規制部材78は退避位置に退避しており、キッカローラ30の高摩擦部32により紙幣Pが蹴り出された後に紙幣搬送規制部材78は進出位置に進出するようになっている。このような紙幣搬送規制部材78が設けられていることにより、キッカローラ30の高摩擦部32により紙幣Pが蹴り出された後にキッカローラ30の回転により高摩擦部32がステージ62上の紙幣Pから離間した場合であっても、ステージ62上の紙幣Pは紙幣搬送規制部材78により押さえられることとなるので、紙幣Pの位置がずれてしまうことを抑止することができる。
また、本実施の形態の紙幣繰出装置においては、キッカローラ30から蹴り出された紙幣Pの更なる搬送を行うフィードローラ40(追加のローラ)が設けられており、駆動部の回転駆動力入力部45はフィードローラ40の軸43に接続されているとともに、キッカローラ30およびフィードローラ40は駆動力伝達部70のタイミングプーリ71、タイミングベルト72およびワンウェイクラッチ73により接続されており、駆動部の回転駆動力入力部45によりキッカローラ30およびフィードローラ40が同期して回転駆動させられるようになっている。
なお、本実施の形態による紙幣集積装置は、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。
例えば、駆動力伝達部70のカムとしては、図4や図5に示すような構成のものに限定されることはなく、他の形状のカムを用いてもよい。図9は、駆動力伝達部70における他の形状のカム90の構成の詳細を示す側面図である。図9に示すように、カム90は略円形の円盤部材からなり、このカム90は軸33に固定的に取り付けられており、カム90はキッカローラ30と同期して回転するようになっている。なお、図9において、参照のため、被接触ローラ76を二点鎖線で示している。カム90は、当該カム90を側方から見て略円形となっている外周部分90aと、外周部分90aに設けられた凹部分90bとを有しており、被接触ローラ76が凹部分90bに嵌り込むようになっている。
以下、紙幣Pの繰出方向にフィードローラ40の軸43が回転する場合、および紙幣Pの繰出方向とは逆の方向にフィードローラ40の軸43が回転する場合についてそれぞれ説明する。
<紙幣Pの繰出方向にフィードローラ40の軸43が回転する場合>
被接触ローラ76がカム90の凹部分90bに嵌り込んでいるときに、カム90が軸33を中心として回転し、被接触ローラ76がカム90の外周部分90aに接触しようとすると、被接触ローラ76はカム90により図4における下方に押圧され、ストッパ部材75はバネ77の収縮力に抗して軸75aを中心として下方に回動する。一方、被接触ローラ76がカム90の外周部分90aに接触しているときに、カム90が軸33を中心として回転し、被接触ローラ76がカム90の凹部分90bに嵌り込むようになると、バネ77の収縮力によりストッパ部材75は軸75aを中心として上方に回動する。このように、カム90が軸33を中心として回転することにより、ストッパ部材75が軸75aを中心として同期して揺動することとなる。
<紙幣Pの繰出方向とは逆の方向にフィードローラ40の軸43が回転する場合>
被接触ローラ76がカム90の凹部分90bに嵌り込んでいるときに、カム90が軸33を中心として回転し、被接触ローラ76がカム90の外周部分90aに接触しようとすると、バネ77の収縮力に抗してカム90は被接触ローラ76を下方に押圧するために、カム90に取り付けられた軸33には、この軸33の回転を抑制する力がかかることとなる。すなわち、被接触ローラ76がカム90の凹部分90bに嵌り込んでいるような状態となっているときに、カム90が軸33を中心として回転した場合には、バネ77の収縮力によってカム90は被接触ローラ76から力を受け、この力は軸33にもかかることとなる。そして、このような軸33の回転を抑制する力により、ワンウェイクラッチ73は、タイミングプーリ71から軸33への回転駆動力の伝達を遮断する。すなわち、紙幣Pの繰出方向とは逆の方向にフィードローラ40の軸43が回転する場合において、ワンウェイクラッチ73に内蔵されるベアリング等の摩擦力によって軸33がタイミングプーリ71と連れ回っている際に、被接触ローラ76がカム90の凹部分90bに嵌り込んだ状態から外周部分90aに出ようとすると、軸33の回転を抑制する力が働くので、軸33はタイミングプーリ71と連れ回らなくなる。この場合には、タイミングプーリ71は空回りをし、軸33は回転しない。このため、被接触ローラ76はカム90の凹部分90bに嵌り込んだままの状態となる。
駆動力伝達部70におけるカムは、図10に示すような形状のものとなっていてもよい。図10は、駆動力伝達部70における更に他の形状のカム92の構成の詳細を示す側面図である。図10に示すように、カム92は略円形の円盤部材からなり、このカム92は軸33に固定的に取り付けられており、カム92はキッカローラ30と同期して回転するようになっている。なお、図10において、参照のため、被接触ローラ76を二点鎖線で示している。カム92は、周方向に沿って軸33の中心からの距離が徐々に大きくなるような外周部分92aと、外周部分92aに設けられた段差部分92bとを有している。そして、カム92が図10における反時計回りの方向に回転するときは、被接触ローラ76はカム92の外周部分92aに接触した状態で、カム92は自在に回転することができる。一方、カム92が図10における時計回りの方向に回転するときに、被接触ローラ76はカム92の段差部分92bを乗り上げることができないようになっている。このため、被接触ローラ76がカム92の段差部分92bに接触したときに、軸33には非常に大きな力がかかることとなる。
このように、キッカローラ30の軸33が紙幣Pの繰出方向に回転し、カム92が図10における反時計回りの方向に回転するときには、ストッパ部材75が軸75aを中心として同期して揺動することとなる。なぜならば、カム92の外周部分92aが、周方向に沿って軸33の中心からの距離が徐々に大きくなっているので、バネ77の収縮力に抗してストッパ部材75が軸75aを中心として徐々に下方に回動し、また、段差部分92bにおいてバネ77の収縮力によりストッパ部材75は軸75aを中心として上方に回動するからである。
一方、キッカローラ30の軸33が紙幣Pの繰出方向とは逆の方向に回転し、カム92が図10における時計回りの方向に回転するときには、被接触ローラ76がカム92の段差部分92bに接触すると、被接触ローラ76はカム92の段差部分92bを乗り上げることができないようになっているので、軸33には非常に大きな力がかかることとなる。そして、このような軸33の回転を抑制する力により、ワンウェイクラッチ73は、タイミングプーリ71から軸33への回転駆動力の伝達を遮断する。すなわち、紙幣Pの繰出方向とは逆の方向にフィードローラ40の軸43が回転することによりタイミングプーリ71が回転した際に、被接触ローラ76がカム92の段差部分92bに接触したときに、軸33の回転を抑制する力が働き、この力により、ワンウェイクラッチ73は、タイミングプーリ71から軸33への回転駆動力の伝達を遮断することとなる(言い換えると、軸33はタイミングプーリ71と連れ回らなくなる)。この場合には、タイミングプーリ71は空回りをし、軸33は回転しない。このため、被接触ローラ76はカム92の段差部分92bに引っ掛かったままの状態となる。
また、本実施の形態における紙幣繰出装置の他の変形例としては、キッカローラ30の軸33とタイミングプーリ71との間にワンウェイクラッチ73を設ける代わりにトルクリミッタを設けてもよい。ここで、トルクリミッタは、キッカローラ30が回転する際においてローラ回転抑制機構79がキッカローラ30に対してその回転を抑制する力を加えたときに、予め設定された所定の力よりも大きい力がトルクリミッタに加えられたときに駆動部の回転駆動力入力部45からキッカローラ30への回転駆動力の伝達を遮断するようになっている。このようなトルクリミッタをワンウェイクラッチ73の代わりに用いる場合には、駆動力伝達部70のカムとして、例えば図10に示すような形状のカムが用いられることが好ましい。なぜならば、キッカローラ30の軸33が紙幣Pの繰出方向に回転する場合には、この軸33にはトルクリミッタにおける予め設定された所定の力よりも小さい力がローラ回転抑制機構79により加えられるようにし、一方、キッカローラ30の軸33が紙幣Pの繰出方向とは逆の方向に回転する場合には、被接触ローラ76がカム92の段差部分92bに接触することにより、トルクリミッタにおける予め設定された所定の力よりも大きい力が軸33に対してローラ回転抑制機構79により加えられるようにするためである。このようなトルクリミッタをキッカローラ30の軸33とタイミングプーリ71との間に設けた場合でも、ワンウェイクラッチ73を用いた場合と同様に、キッカローラ30の回転位置を検出する手段を設けなくとも、紙幣Pの繰出動作の開始時にキッカローラ30の高摩擦部32を所定の場所に位置させることができるようになる。
また、キッカローラ30の軸33とタイミングプーリ71との間にワンウェイクラッチ73を設ける代わりに捩りバネを設けてもよい。キッカローラ30の軸33とタイミングプーリ71との間に捩りバネを設けた場合について図11を用いて説明する。図11(a)は、変形例に係る紙幣繰出装置において、キッカローラ30の軸33とタイミングプーリ71との間に捩りバネを設けたときの分解斜視図であり、図11(b)は、図11(a)の白抜きの矢印方向からタイミングプーリ71を見たときの図であり、図11(c)は、図11(a)の白抜きの矢印方向から捩りバネ固定部材および転がり抵抗ローラを見たときの図である。
図11(a)に示すように、変形例に係る紙幣繰出装置には、捩りバネ80および略円筒形形状の捩りバネ固定部材82が軸33に沿って設けられ、また、捩りバネ固定部材82の回転を抑制するための転がり抵抗ローラ84が設けられている。タイミングプーリ71の一方の側面には穴71aが設けられており、捩りバネ80の一端80aが穴71aに挿入されることによりこの捩りバネ80はタイミングプーリ71の一方の側面に固定的に取り付けられている。また、タイミングプーリ71の一方の側面には、このタイミングプーリ71の周方向に延びる溝部71bが設けられている。また、タイミングプーリ71の中央部分には円形の貫通開口部71cが設けられており、この円形の貫通開口部71cに軸33が着脱自在に挿入されている。
捩りバネ80は、タイミングプーリ71と捩りバネ固定部材82との間に位置されるよう配置されている。この捩りバネ80の中空部分に軸33が挿入されている。
捩りバネ固定部材82の底面(図11(a)における左側の面)には突出部分82aが設けられており、この突出部分82aはタイミングプーリ71の溝部71bに挿入されるようになっている。この突出部分82aは溝部71bに沿って自在に移動することができるようになっている。このため、捩りバネ固定部材82は、タイミングプーリ71に対して所定の角度の範囲内において軸33を中心として揺動することができるようになっている。また、突出部分82aは溝部71bから抜けないよう構成されている。
また、捩りバネ固定部材82には、その外周面から外方に延びる2つの突出部分82c、82dが間隔を空けて設けられている。これらの突出部分82c、82dは、捩りバネ固定部材82の外周面から平行に延びるようになっている。そして、捩りバネ80の他端80bは2つの突出部分82c、82dの間のスペースに配置されるようになっている。このため、タイミングプーリ71および捩りバネ固定部材82が回転している際に、捩りバネ80の他端80bは、2つの突出部分82c、82dのうちどちらかに接触することとなる。
次に、図11に示すような捩りバネ80および捩りバネ固定部材82が設けられた、変形例に係る紙幣繰出装置の動作について説明する。
紙幣Pの繰出動作を開始すると、駆動部(図示せず)の回転駆動力入力部45により、フィードローラ40の軸43に対して紙幣Pの繰出方向(図2における反時計回りの方向)の回転駆動力が連続的に与えられる。そして、フィードローラ40の軸43に与えられた回転駆動力は、駆動力伝達部70のタイミングベルト72を介してタイミングプーリ71に伝達され、タイミングプーリ71は、紙幣Pの繰出方向に回転する。なお、図11(a)において、軸33の周囲にある矢印は、紙幣Pの繰出方向を示している。この際に、捩りバネ固定部材82は、転がり抵抗ローラ84により負荷がかかるようになっているため、捩りバネ80の他端80bが捩りバネ固定部材82の突出部82dに接触し、図11(a)における軸33の周囲にある矢印方向に他端80bが突出部82dを更に押圧するため、捩りバネ80は締められながら捩りバネ固定部材82も回転する。より詳細には、捩りバネ固定部材82の突出部分82aは、タイミングプーリ71の溝部71b内に位置された状態で、捩りバネ固定部材82はタイミングプーリ71と連動して回転する。この場合、捩りバネ80は、その一端80aがタイミングプーリ71に固定されているとともにその他端80bは2つの突出部分82c、82dのうち突出部分82dに接触し、転がり抵抗ローラ84の負荷によりこの捩りバネ80に対して捩りバネ80が締まる方向に力が加えられる。このことにより、捩りバネ80が締められてこの捩りバネ80はその中空部分を貫通する軸33を把持するようになり、捩りバネ80と軸33とが連動するようになる。このようにして、タイミングプーリ71から軸33に回転駆動力が伝達される。
次に、紙幣受入部60のステージ62上の紙幣Pの繰出動作が終了した後に、フィードローラ40やキッカローラ30を逆方向に回転させる際の動作について説明する。この場合、駆動部(図示せず)の回転駆動力入力部45により、フィードローラ40の軸43に対して紙幣Pの繰出方向とは逆の方向(図2における時計回りの方向)の回転駆動力が連続的に与えられる。そして、フィードローラ40の軸43に与えられた回転駆動力は、駆動力伝達部70のタイミングベルト72を介してタイミングプーリ71に伝達され、タイミングプーリ71は、紙幣Pの繰出方向とは逆の方向に回転する。すなわち、図11(a)における軸33の周囲にある矢印の方向とは逆の方向にタイミングプーリ71が回転する。この際に、捩りバネ固定部材82は、転がり抵抗ローラ84により負荷がかかるようになっているため、捩りバネ80の他端80bが転がり抵抗ローラ84の突出部82cに接触し、図11(a)における軸33の周囲にある矢印方向とは逆方向に他端80bが突出部82cを更に押圧するため、捩りバネ80が緩められながら捩りバネ固定部材82も回転する。そして、突出部分82aが溝部71bの端部71dに位置したときが、捩りバネ80の緩む限度となる。このような状態で、捩りバネ固定部材82はタイミングプーリ71と連動して回転する。この場合、捩りバネ80は、その一端80aがタイミングプーリ71に固定されているとともにその他端80bは2つの突出部分82c、82dのうち突出部分82cに接触し、この捩りバネ80に対して捩りバネ80が緩む方向に力が加えられる。このことにより、捩りバネ80が緩められてこの捩りバネ80はその中空部分を貫通する軸33を把持しなくなるようになり、捩りバネ80と軸33とが連動しないようになる。このようにして、タイミングプーリ71から軸33への回転駆動力の伝達が遮断される。なお、タイミングプーリ71の回転が開始されてから、転がり抵抗ローラ84の抵抗に抗して捩りバネ固定部材82が動き出すまでは、捩りバネ80が締められた状態にあり、この捩りバネ80はその中空部分を貫通する軸33を把持している。このため、タイミングプーリ71の回転が開始されてからしばらくの間は、軸33はタイミングプーリ71と連動して回転するようになる。
このように、図11に示すような構成により、ワンウェイクラッチの代わりに捩りバネを使用することができる。
なお、本実施の形態の紙幣繰出装置は、図1に示すような紙幣処理機の入金口に設置されるものに限定されることはない。本実施の形態の紙幣繰出装置は、紙幣の繰出を行う必要がある箇所において、様々な用途で使用することができる。
なお、本発明による紙葉類繰出装置は、紙幣の繰出を行うための紙幣繰出装置に限定されることはない。本発明の紙葉類繰出装置は、紙幣以外の紙葉類、具体的には例えば小切手等の様々な種類の紙葉類の繰出を行うことができるようになっていてもよい。