JP2010241902A - ボールペン用水性インキ組成物及びそれを内蔵したボールペン - Google Patents
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Abstract
【解決手段】着色剤と水と3−(ジイソブトキシ−チオホスホリルスルファニル)−2−メチルプロピオン酸又はその塩を含有するボールペン用水性インキ組成物。3−(ジイソブトキシ−チオホスホリルスルファニル)−2−メチルプロピオン酸又はその塩がインキ組成物全量中0.05〜5.0重量%の範囲で添加される。前記ボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペン。
【選択図】なし
Description
前記ボールには結合材として主にコバルト、クロム、チタン、ニッケル等の金属が使用されていることから、水性ボールペンに用いた場合、インキ中の溶存酸素等の腐食成分により前記結合材が経時的にインキ中に溶出し、ボールから結合材が失われることで、主成分である炭化珪素、ジルコニア、タングステンカーバイド等の結晶粒子が脱落したり、溶出した結合材が金属酸化物となり不溶化し、再びボール表面に付着する等、所謂腐食状態になることがある。前記腐食によりボールの表面の凹凸が大きくなるため、ボールの回転が阻害され書き味が重くなったり、インキのスムーズな流出が阻害されて筆跡がかすれる等の不具合を生じることがあった。
特に、タングステンカーバイドを主成分とする超硬合金ボールは、コバルトやニッケル等の金属結合材の含有量が多く、経時的に腐食し易いという欠点を有している。
そこで前述の経時的な腐食を防止する方法として、インキ中にスルフィド化合物を添加する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
更に、3−(ジイソブトキシ−チオホスホリルスルファニル)−2−メチルプロピオン酸又はその塩がインキ組成物全量中0.05〜5.0重量%の範囲で添加されること、前記水性インキ組成物のpHが7〜12であることを要件とする。
更には、前記いずれかのボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペンを要件とし、前記ボールペンがタングステンカーバイドを主成分とする超硬合金ボールを筆記先端部に用いてなること、前記ボールペンが水性インキ組成物をレフィル内に内蔵したボールペンレフィルを1本又は複数本収容し、出没機構の作動によって前記ボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する出没式形態であることを要件とする。
前記塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アルカノールアミンやアンモニア等のアミン塩等が例示できる。
前記プロピオン酸やその塩は、インキ組成物全量中0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜4重量%添加することができる。
0.05重量%未満では所期の効果を得ることは困難であり、又、5重量%を越えて添加しても腐食抑制効果の向上は認められないので、これ以上の添加を要しない。
前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料等を使用することができる。
酸性染料としては、ニューコクシン(C.I.16255)、タートラジン(C.I.19140)、アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、ギニアグリーン(C.I.42085)、ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、アシッドバイオレット6B(C.I.42640)、ソルブルブルー(C.I.42755)、ナフタレングリーン(C.I.44025)、エオシン(C.I.45380)、フロキシン(C.I.45410)、エリスロシン(C.I.45430)、ニグロシン(C.I.50420)、アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
蛍光顔料としては、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。
その他、パール顔料、金色、銀色のメタリック顔料、蓄光性顔料、修正ペン等に用いられる二酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉、更には熱変色性組成物、光変色性組成物、香料等を直接又はマイクロカプセル化したカプセル顔料等を例示できる。
前記可逆熱変色性組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料が適用できる。
尚、前記色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度を冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−50〜0℃、好ましくは−40〜−5℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度を摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち50〜95℃、好ましくは50〜90℃、より好ましくは60〜80℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
尚、前記水溶性有機溶剤は一種又は二種以上を併用して用いることができ、2〜60重量%、好ましくは5〜35重量%の範囲で用いられる。
尚、前記インキ中には、金属石鹸、リン酸エステル系界面活性剤、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩、N−アシルアミノ酸、N−アシルメチルタウリン等の潤滑剤を添加することが好ましい。
また、N−ビニル−2−ピロリドンのオリゴマー、N−ビニル−2−ピペリドンのオリゴマー、N−ビニル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、N−ビニル−ε−カプロラクタムのオリゴマー等の増粘抑制剤を添加することで、出没式形態での機能を高めることもできる。
前記剪断減粘性付与剤としては、水に可溶乃至分散性の物質が効果的であり、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する炭水化物、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、HLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸の金属塩やアミン塩等を例示でき、更には、インキ組成物中にN−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤を併用して添加しても安定した剪断減粘性を付与できる。
前記pHに調整することで、前述のプロピオン酸類がインキ中でより安定して存在できるため、より効率的にボール腐食を抑制できる。
前記インキ逆流防止体としては、液状または固体のいずれを用いることもでき、前記液状のインキ逆流防止体としては、ポリブテン、α−オレフィンコオリゴマー、シリコーン油、精製鉱油等の不揮発性媒体が挙げられ、所望により前記媒体中にシリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、脂肪酸アマイド等を添加することもできる。また、固体のインキ逆流防止体としては樹脂成形物が挙げられる。前記液状及び固体のインキ逆流防止体は併用することも可能である。
前記4a、5a、6a族の金属又はそれらの炭化物のうち、化学的に安定でしかも硬度の高いタングステンカーバイド(炭化タングステン)を主成分として用いた超硬合金製ボールが特に好適に用いられる。尚、4a、5a、6a族の金属としてチタン、バナジウム、クロム、タンタルやそれらの炭化物を含んでいてもよい。
一般に、前記結合材としてコバルトやニッケルを用いたものは、これらの金属が水性インキ中に溶出し易いため、ボール表面が粗くなったり、更に前記結合材の溶出によりタングステンカーバイドが脱落していっそうボール表面が粗くなる。その結果、ボール受け座に接触した状態でボールが回転すると受け座の磨耗が激しくなるので、筆記感が損なわれたり、軸方向のボールとボール抱持部の間隙(クリアランス)が大きくなりインキ流出量が増大して筆跡が太くなったり、線飛びが発生する等の不具合が生じ易くなる。しかしながら、本発明の水性インキを適用した場合、インキ中への金属材料の溶出が抑制され、前記不具合が生じ難くなる。
尚、前記ボールは、直径0.1mm〜2.0mmの範囲のものが好適に用いられる。
前記軸筒内に収容されるインキ組成物は、インキ組成物が低粘度である場合は軸筒前部にインキ保留部材を装着し、軸筒内に直接インキ組成物を収容する方法と、多孔質体或いは繊維加工体に前記インキ組成物を含浸させて収容する方法が挙げられる。
尚、前記軸筒は、ボールペン用レフィルの形態として、該レフィルを外軸内に収容するものでもよい。
出没機構の操作方法としては、例えば、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
前記ノック式は、外軸後端部や外軸側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、ボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成、或いは、外軸に設けたクリップ部を押圧することにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記回転式は、外軸後部に回転部を有し、該回転部を回すことによりボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記スライド式は、軸筒側面にスライド部を有し、該スライド部を操作することによりボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成、或いは、外軸に設けたクリップ部をスライドさせることにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記出没式ボールペンは外軸内に複数のボールペンレフィルを収容してなる複合タイプの出没式ボールペン(レフィル交換式)であってもよい。
以下の表に実施例及び比較例のボールペン用水性インキの組成を示す。尚、表中の組成の数値は重量部を示す。
(1)オリエント化学工業(株)製、商品名:ウォーターピンク#2
(2)住友化学工業(株)製、商品名:アシッドブルーPG
(3)三晶(株)製、商品名:レオザン
(4)第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフAL
(5)3−(ジイソブトキシ−チオホスホリルスルファニル)−2−メチルプロピオン酸
(6)3−(ジイソブトキシ−チオホスホリルスルファニル)−2−メチルプロピオン酸ナトリウム
(7)チアゾリジン
水に剪断減粘性付与剤以外の成分を添加し、混合攪拌した後、剪断減粘性付与剤を添加して、20℃でディスパーにて400rpm、1時間攪拌し、濾過することで各インキを調製した。
基油としてポリブテン98.5部中に、増粘剤として脂肪酸アマイド1.5部を添加した後、3本ロールにて混練してインキ逆流防止体を得た。
前記実施例及び比較例のインキ組成物を直径0.3mmのタングステンカーバイドを主成分とするボールA(WC−Co系超硬合金ボール)を抱持するステンレススチール製チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたボールペンレフィルに充填し、その後端に前記インキ逆流防止体を配設した後、前記ボールペンレフィルを外軸(キャップ式)に組み込み、試料ボールペンAを作製した。
前記実施例及び比較例のインキ組成物を直径0.4mmのタングステンカーバイドを主成分とするボールB(WC−Ni系超硬合金ボール)を抱持するステンレススチール製チップ(ボール押しバネを収容する)がポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたボールペンレフィルに充填し、その後端に前記インキ逆流防止体を配設した後、前記ボールペンレフィルを外軸(出没式)に組み込み、試料ボールペンBを作製した。
ボール腐食試験
調製した各インキ5gをサンプル瓶に移し取り、A、B二種類の組成からなるタングステンカーバイドを主成分とするボール(A:WC−Co系、B:WC−Ni系)を浸漬させて蓋をした後、70℃の環境下に30日間放置した。その後、室温にて光学顕微鏡(倍率1000倍)で各ボール表面の状態を確認した。
筆記可能であることを確認した各試料ボールペンを、横置き状態で50℃の環境下に60日間放置した後、旧JIS P3201筆記用紙Aに手書きで螺旋状の丸を連続筆記した際の筆記感と筆跡の状態を目視により確認した。
前記試験の結果を以下の表に示す。
ボール腐食試験
○:初期と変化なし。
△:初期と比較して光沢が失われた。
×:初期と比較して表面が粗い、又は、析出や付着物あり。
筆記試験
○:滑らかに筆記でき、良好な筆跡を示した。
△:筆記時にひっかかり感があり、筆跡に若干のかすれや線飛びが見られる。
×:筆記感が悪く、筆跡にかすれや線飛びが多数見られる、座磨耗が大きく筆記できない。
Claims (6)
- 着色剤と水と3−(ジイソブトキシ−チオホスホリルスルファニル)−2−メチルプロピオン酸又はその塩を含有するボールペン用水性インキ組成物。
- 3−(ジイソブトキシ−チオホスホリルスルファニル)−2−メチルプロピオン酸又はその塩がインキ組成物全量中0.05〜5.0重量%の範囲で添加される請求項1記載のボールペン用水性インキ組成物。
- 前記水性インキ組成物のpHが7〜12である請求項1又は2に記載のボールペン用水性インキ組成物。
- 前記請求項1乃至3のいずれかに記載のボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペン。
- 前記ボールペンがタングステンカーバイドを主成分とする超硬合金ボールを筆記先端部に用いてなる請求項4記載のボールペン。
- 前記ボールペンが水性インキ組成物をレフィル内に内蔵したボールペンレフィルを1本又は複数本収容し、出没機構の作動によって前記ボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する出没式形態である請求項4又は5に記載のボールペン。
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