JP2010241075A - 生分解性樹脂成形体の製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】成形体の使用後に微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解される生分解性ポリエステルの中でも特に結晶化の遅いP3HAの欠点である結晶化の遅さを改善し、成形加工性、加工速度を向上させること。
【解決手段】微生物により生産される、式(1):[−CHR−CH2−CO−O−](式中、RはCn2n+1で表されるアルキル基で、nは1〜15の整数である。)で示される繰り返し単位からなる脂肪族ポリエステル系重合体(ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート))を含む生分解性樹脂組成物を加熱溶融混練して成形体に成形する際に、加熱溶融混練した後の成形機出口での残存結晶量を近赤外分光法によるスペクトルにより確認し、前記成形体の近赤外分光法による結晶化ピークが成形直後から200秒以内に観察されるように前記成形機出口での残存結晶量を調整する生分解性樹脂成形体の製造法により上記課題が解決される。
【選択図】 なし

Description

本発明は、生分解性ポリエステル系樹脂成形体の製造法に関する。
近年、廃棄プラスチックが引き起こす環境問題がクローズアップされ、地球規模での循環型社会の実現が切望される中で、使用後、微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解される生分解性プラスチックが注目を集めている。
これらの生分解性プラスチックの大部分は、脂肪族ポリエステルである。ポリエステルは、一般に結晶化速度が遅いが、なかでも脂肪族ポリエステルは結晶化が遅く、ポリヒドロキシアルカノエート(以下、PHAと略称する。)はさらに結晶化が遅い(非特許文献1。)。
PHAの代表例として、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)(以下、P3HBと略称する。)が挙げられる。P3HBは、PHAのなかでは、比較的結晶化は速いが、融点と加工温度が近く成形加工温度幅が小さいため、成形加工が難しく、成形加工条件の精密な制御が求められている。また、硬くてもろい性質を有するため、ヒドロキシバリレートやヒドロキシヘキサノエートと共重合させ、柔軟性を持たせることが試みられている。特に、ヒドロキシヘキサノエートとの共重合体は、柔軟性が高く、耐加水分解性、ガスバリヤー性等に優れるため実用面での期待が大きいが、成形加工時に溶融状態からの固化が遅くて加工が困難になり、加工できたとしても、ラインスピードなどが遅くなり、成形加工の生産性が悪いという欠点がある。
そこで、ポリエステルの結晶化速度を改善するために、種々の結晶核剤の添加が検討されている。従来知られている結晶核剤としては、例えば、特定のポリエステルに対し、Zn粉末、Al粉末、グラファイト、カーボンブラックなどの無機単体;ZnO、MgO、A123、TiO2、MnO2、SiO2、Fe34などの金属酸化物;窒化アルミ、窒化珪素、窒化チタン、窒化ホウ素などの窒化物;Na2CO3、CaCO3、MgCo3、CaSO4、CaSiO3、BaSO4、Ca3(PO43などの無機塩;タルク、カオリン、クレー、白土などの粘土類;シュウ酸カルシウム、シュウ酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、フタル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ポリアクリル酸塩などの有機塩類;ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの高分子化合物などを添加することが開示されている(特許文献1)。
また、PHAの結晶核剤として、タルク、微粒化雲母、窒化ホウ素、炭酸カルシウムが挙げられ、より効果的なものとして、有機ホスホン酸もしくは有機ホスフィン酸またはそれらのエステル、或いはそれらの酸もしくはエステルの誘導体、及び周期律表の第I−V族の金属の酸化物、水酸化物及び飽和または不飽和カルボン酸塩などの金属化合物が開示されている(特許文献2)。
また、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)(略称:P3HA)類であるポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)(略称:PHBH)を用いた例としては、ポリヒドロキシブチレートなどの、より高い融解温度を有するPHAを添加することで、結晶化速度が速くなることが開示されている(例えば、特許文献3、4)。
さらに、PHA等の結晶状態について、赤外分光法、近赤外分光法により、結晶構造に由来するピークを解析することで、結晶状態を分析することが可能であることが報告されている(非特許文献2、3)。また、それぞれの結晶化ピークがPHA等のどの構造に由来するものであるかについても報告されている。しかし、これらの報告は、静止状態での加熱、冷却にともなう結晶溶融化、及び結晶化状態に関する報告であり、実際の樹脂加工における溶融混練状態での残存結晶量、結晶化速度、さらにはそれらを利用した加工について報告された例はなく、実質的に効果の高い手段は未だ見出されていないのが現状である。
特開平7−126496号公報 特開平3−24151号公報 国際公開第02/50156号パンフレット 米国特許第5693389号明細書
"Biopolymers"volume 4, Polyesters III Applications and Commercial Products, WILEY-VCE, p67 Harumi Satoら,Macromolecules, 37, 7203-7213(2004) Yun Huら, Macromolecules, 39, 3841-3847(2006)
本発明は、成形体の使用後に微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解される生分解性ポリエステルの中でも特に結晶化の遅いP3HAの欠点である結晶化の遅さを改善し、成形加工性、加工速度を向上させることを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、P3HA等の結晶性の生分解性樹脂を含む樹脂組成物が溶融混練状態から成形加工される際に、加熱溶融混練時の残存結晶量を確認し、その後成形された成形体の結晶化速度と関連付け、成形条件を調整することにより、成形体の加工性が改良できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
(i)微生物により生産される、下記式(1)
[−CHR−CH2−CO−O−] (1)
(式中、RはCn2n+1で表されるアルキル基で、nは1〜15の整数である。)
で示される繰り返し単位からなる脂肪族ポリエステル系重合体(以下、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート):略称 P3HA)を含む生分解性樹脂組成物を加熱溶融混練して成形体に成形する際に、加熱溶融混練した後の成形機出口での残存結晶量を近赤外分光法によるスペクトルにより確認し、前記成形体の近赤外分光法による結晶化ピークが成形直後から200秒以内に観察されるように前記成形機出口での残存結晶量を調整することを特徴とする生分解性樹脂成形体の製造法、
(ii)前記P3HAが、前記式(1)中のnが1である繰り返し単位と、nが3である繰り返し単位とからなるポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)(略称:PHBH)である(i)に記載の生分解性樹脂成形体の製造法、
(iii)前記PHBHの繰り返し単位の組成比〔ポリ(3−ヒドロキシブチレート)/ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)〕が、80/20〜99/1(mol/mol)である(ii)に記載の生分解性樹脂成形体の製造法、
(iv)近赤外分光法によるスペクトルが、前記生分解性樹脂組成物を溶融混練後、成形機出口に設置されたセルで測定されたスペクトルである(i)〜(iii)のいずれかに記載の生分解性樹脂成形体の製造法、
(v)近赤外分光法によるスペクトルが、前記生分解性樹脂組成物を加熱溶融混練後、成形機出口に設置されたセルで測定されたスペクトルと、残存結晶微小状態でのスペクトルとの差スペクトルである(i)〜(iii)のいずれかに記載の生分解性樹脂成形体の製造法、
に関する。
本発明によれば、結晶核剤等を添加する必要がないことから、生分解性を損なうことなくP3HAの結晶化の速度が著しく改善され、成形加工性、加工速度を向上することができる。また、成形加工条件の精密な制御が可能となり、P3HB等の成形加工温度幅の小さな樹脂についても、成形加工性、加工速度を向上することが可能となる。
(a)は本発明の残存結晶量のオンライン近赤外分析を行う装置の概略を示す模式図であり、(b)は本発明のサンプリングしたストランドの近赤外オンライン分析を行う装置の概略を示す模式図である。 各実施例及び各比較例において、波長がおよそ4600cm-1〜4800cm-1における残存結晶量のオンライン近赤外分析結果を示した図である。 比較例1のスペクトルを基準として算出した実施例1〜3および比較例2の差スペクトルのうち、波長がおよそ4600cm-1〜4800cm-1の部分を示した図である。 各実施例及び各比較例において、波長がおよそ5050cm-1〜5200cm-1における残存結晶量のオンライン近赤外分析結果を示した図である。 比較例1のスペクトルを基準として算出した実施例1〜3および比較例2の差スペクトルのうち、波長がおよそ5050cm-1〜5200cm-1の部分を示した図である。 実施例1において押出されたストランドの近赤外オンラインモニタリングにより得られたスペクトルの二次微分曲線の経時変化を示した図である。 実施例2において押出されたストランドの近赤外オンラインモニタリングにより得られたスペクトルの二次微分曲線の経時変化を示した図である。 実施例3において押出されたストランドの近赤外オンラインモニタリングにより得られたスペクトルの二次微分曲線の経時変化を示した図である。 比較例1において押出されたストランドの近赤外オンラインモニタリングにより得られたスペクトルの二次微分曲線の経時変化を示した図である。
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の生分解性樹脂成形体の製造法は、微生物により生産される、式(1):[−CHR−CH2−CO−O−](式中、RはCn2n+1で表されるアルキル基で、nは1〜15の整数である。)、で示される繰り返し単位からなる脂肪族ポリエステル系重合体(以下、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート):略称P3HA)を含む生分解性樹脂組成物を加熱溶融混練して成形体にする際に、加熱溶融混練した後の成形機出口での残存結晶量を近赤外分光法によるスペクトルにより確認し、前記成形体の近赤外分光法による結晶化ピークが成形直後から200秒以内に観察されるように前記成形機出口での残存結晶量を調整することを特徴とする。
本発明に用いられるポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)(略称:P3HA)は、微生物から生産されるものであり、式(1):[−CHR−CH2−CO−O−](式中、RはCn2n+1で表されるアルキル基で、nは1以上15以下の整数である。)で示される繰り返し単位を有する脂肪族ポリエステル系重合体である。
P3HAを生産する微生物としては、P3HA類生産能を有する微生物であれば特に限定されない。例えば、ヒドロキシブチレートとその他のヒドロキシアルカノエートとの共重合体生産菌としては、3−ヒドロキシブチレートと3−ヒドロキシバリレートをモノマーユニットとする共重合体(以下、「PHBV」と略称する。)およびポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート(以下、「PHBH」と略称する。)生産菌であるアエロモナス・キヤビエ(Aeromonas caviae)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)生産菌であるアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutropbus)などが知られている。特に、PHBHに関し、PHBHの生産性を上げるために、PHA合成酵素群の遺伝子を導入したアルカリゲネス・ユートロファス AC32株(Alcaligenes eutrophus AC32, FERM BP−6038)(J.Bateriol.,179,p4821−4830(1997))などがより好ましく、これらの微生物を適切な条件で培養して菌体内にPHBHを蓄積させた微生物菌体が用いられる。
本発明で使用するP3HAの重量平均分子量としては、成形性と物性のバランス観点から50,000〜3000,000が好ましく、100,000〜1500,000がより好ましい。なお、ここでの重量平均分子量は、クロロホルム溶離液を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレン換算分子量分布より測定されたものをいう。
本発明で使用するP3HAとしては、前記式(1)において、アルキル基(R)のnが1で示される繰り返し単位からなるもの、またはnが1で示される繰り返し単位とnが2、3、5および7の少なくとも1種で示される繰り返し単位からなるものが好ましく、nが1で示される繰り返し単位およびnが3で示される繰り返し単位からなるものがより好ましい。P3HAの具体例としては、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)(略称:P3HB)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)(略称:PHBH)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシバリレート)(略称:PHBV)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−4−ヒドロキシブチレート)(略称:P3HB4HB)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシオクタデカノエート)などが挙げられる。これらなかでも、工業的に生産が容易であるものとして、P3HB、PHBH、PHBV、P3HB4HBが挙げられる。
このうち、繰り返し単位の組成比を変えることで、融点、結晶化度を変化させ、ヤング率、耐熱性などの物性を変化させることができ、ポリプロピレンとポリエチレンとの間の物性を付与することが可能であること、また上記したように工業的に生産が容易であり、物性的に有用なプラスチックであるという観点から、前記式(1)において、アルキル基(R)のnが1である繰り返し単位とnが3である繰り返し単位とからなる、PHBHが好ましい。
また、PHBHの繰り返し単位の組成比は、柔軟性と強度のバランスの観点から、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)/ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)の組成比が80/20以上99/1以下(mol/mol)であることが好ましく、75/15以上97/3以下(mo1/mo1)であることがより好ましい。その理由は、柔軟性の点から99/1以下が好ましく、また樹脂が適度な硬度を有する点で80/20以上が好ましいからである。
また、PHBVは、3−ヒドロキシブチレート(3HB)成分と3−ヒドロキシバレレート(3HV)成分の比率によって融点、ヤング率などが変化するが、3HB成分と3HV成分が共結晶化するため結晶化度は50%以上と高く、ポリ3−ヒドロキシブチレート(P3HB)に比べれば柔軟ではあるが、破壊伸びは50%以下と低い傾向にある。
微生物が産生するP3HAは、脂肪族ポリエステルの中でも特に結晶化速度が遅いため、本発明のような加工法を用いることがとりわけ有効である。また、P3HAは、好気性、嫌気性何れの環境下での生分解性にも優れ、燃焼時には有毒ガスを発生しない。とりわけ、PHBHは、原料として石油由来のものを使用せず、植物原料を使用しており、地球上の二酸化炭素を増大させない、つまりカーボンニュートラルであるという優れた特徴を有している点でも好ましい。また、本発明は、非生分解性の結晶核剤を添加することがなく、P3HAの優れた生分解性を損ねないという利点がある。
なお、本発明における生分解性樹脂組成物は、上記P3HA成分の他に、酸化防止剤;紫外線吸収剤;染料、顔料などの着色剤;可塑剤;滑剤;無機充填剤;または帯電防止剤などの他の成分を含有してもよい。これらの他の成分の添加量としては、前記P3HAにおける残存結晶成分による作用及びスペクトル測定を損なわない程度であればよく、特に限定はない。
本発明の生分解性樹脂成形体の製造法について、以下に例示する。
本発明の生分解性樹脂成形体の製造法における加工法としては、例えば、公知のものでよく、押出成形、射出成形、フイルム成形、ブロー成形、繊維の紡糸、押出発泡成形、ビーズ発泡成形などが挙げられる。
本発明では、例えば押出成形の場合、溶融混練後その押出成形機の出口において、押し出される直前の溶融状態の樹脂組成物の近赤外スペクトルをオンラインでモニタリングし(第1のオンライン近赤外スペクトル)、そのスペクトルそのもの、及び/又は、そのスペクトルと残存結晶量が微小状態であると考えられるスペクトルとの差スペクトルをとり、そのスペクトルの結晶構造に由来するピーク(第1の結晶化ピーク)の状態を観察することで、残存結晶の有無や、残存結晶量の大小を確認する。続いて、室温条件下、押出成形された成形体をガラス板等に挟み、その冷却、結晶化過程を第2の近赤外スペクトルで追跡して成形体の結晶化状態をオンラインでモニタリングする(第2のオンライン近赤外スペクトル)。そして、成形体の近赤外分光法による結晶化ピーク(第2の結晶化ピーク)が成形直後から200秒以内に観察されるように押出成形機の出口における残存結晶量を調整する。ここで、第2の結晶化ピークとは、第2のオンライン近赤外スペクトルの二次微分曲線においてそのスペクトルの結晶構造に由来するピークを意味する。
尚、本発明で「残存結晶量が微小状態である」または「残存結晶微小状態」とは、溶融混練後、成形された成形体が、成形直後を基準として60分以上結晶化、固化しない状態をいい、近赤外スペクトルでは、例えば後述の比較例1の図9に示すように観察される場合をいう。また、結晶化しない状態とは結晶化ピーク(第2の結晶化ピーク)が観察されない状態をいい、固化しない状態とは成形体の表面同士が融着しない状態をいう。
このように、P3HAを含む樹脂組成物の結晶化状態をオンラインでモニタリングして、その残存結晶量をコントロールし、前記樹脂組成物を加熱溶融混練後、押出成形される状態で樹脂組成物中にその結晶を残存させることにより、得られる成形体中のP3HAの結晶化速度を高めることができる。特に、PHBHは柔軟性、保存安定性、その他の特性において優れ、実用的な使用が期待される一方で、その結晶化速度が遅いという欠点を有するが、本発明に係る製造法を採用することで、前記欠点が改善され、PHBHを含む樹脂組成物の成形加工性、加工速度を向上することができる。
また、加熱溶融混練後の近赤外分光法によるスペクトル、及び/または、差スペクトルにより残存結晶量を確認し、P3HAを含む樹脂組成物の成形体の近赤外分光法による結晶化ピークが成形直後から200秒以内、好ましくは60秒以内、さらに好ましくは30秒以内に観察される場合に、P3HAを含む樹脂組成物の成形体の結晶化速度を著しく向上できる。結晶化ピークが200秒以内に観察されない場合は、P3HAの結晶化速度が低下し、成形加工性を損なう傾向にある。
尚、差スペクトルは、残存結晶量の変化が小さい場合に用いると有効である。
押出成形以外の成形方法の場合においても、溶融混練状態を実現する装置の出口(例えば、射出成形の場合はノズルの出口)において、残存結晶量を確認し、その後の各成形体において、同様に結晶化ピークが成形直後から200秒以内、好ましくは60秒以内、さらに好ましくは30秒以内に観察される場合に、P3HAを含む樹脂組成物の成形体の結晶化速度を著しく向上できる。
ストランドの押出成形の場合を具体的に説明すると、押出成形機出口に設置されたセルで近赤外分光法によるスペクトルをオンラインでモニタリングし(第1のオンライン近赤外スペクトル)、該スペクトルにより樹脂組成物中の残存結晶量を解析し、押出温度、フィード量、ラインスピード、スクリュー回転数などの成形条件を変えることで、成形体中のP3HAの結晶化ピーク(第2の結晶化ピーク)が成形直後から200秒以内に観察されるように押出成形機出口における前記樹脂組成物中の残存結晶量を調整する。例えば、後述のように押出温度を低く設定すると、所定の結晶化ピーク高さが大きくなる、即ち、押出成形機出口での樹脂組成物中の残存結晶量を多くすることができ、結晶化速度を改善することができる。また、一概には言えないが、フィード量を小さくしたり、またスクリュー回転数を低くすると、低剪断となるため樹脂温度が低くなり、押出成形機出口での樹脂組成物中の残存結晶量を大きくすることができ、その結果、得られる成形体の結晶化速度を改善することができる。
特にPHBHを含む樹脂組成物の押出成形の場合であれば、押出成形機出口で得られた近赤外スペクトル(第1のオンライン近赤外スペクトル)、または、そのスペクトルと結晶微小状態との差スペクトルにおける4670cm-1と、5170cm-1(いずれも第1の結晶化ピーク)に注目して残存結晶量を確認するとともに、得られた成形体(例えば、押出成形されたストランド)の近赤外分光法による結晶化ピーク、特に二次微分した曲線より結晶化ピークとして5120cm-1(第2の結晶化ピーク)に注目し、その結晶化ピークが成形直後から200秒以内に観察されるように、前述の押出機出口での残存結晶量を調整することで、得られる成形体の結晶化速度を改善することができる。
尚、4670cm-1、5170cm-1に注目するのは、これらがPHBH中に存在する結晶に特有のピークを示す波長であるからである(非特許文献2、3参照)。また、二次微分した曲線より結晶化ピークとして5120cm-1に注目するのは同様にPHBHの結晶に特有のピークを示す波長だからである。また非結晶化状態の指標として5150cm-1に着目してもよい。
上記のように、ストランドの押出成形の場合を例に説明したが、成形体の形状に合わせてセルの形状を調製することができ、例えばチューブの押出成形の場合であれば中空状のセルを用いることで同様に行うことができる。
本発明に従って得られた成形体は、例えば、異形品、チューブ、食器類、各種ボード、シート、フイルム類、各種ボトル、不織布、織物、各種発泡成形体などとして好適に使用される。
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
(製造例) 3−ヒドロキシヘキサノエート(3HH)含有率12mol%のポリ−3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート(PHBH)の作製
<遺伝子挿入用プラスミドベクターの作製>
挿入用DNAとしてA.caviaeのphaCのプロモーターおよびリボソーム結合部位を含む塩基配列からなるDNAを次のように作製した。A.caviaeのゲノムDNAをテンプレートとして配列番号1および配列番号2で示されるプライマーを用いて、PCRを行った。PCRは(1)98℃で2分、(2)98℃で15秒、60℃で30秒、68℃で20秒を25サイクル繰り返し、ポリメラーゼはKOD−plus−(TOYOBO製)を用いた。PCRで得たDNA断片を末端リン酸化およびEcoRI消化した。このDNA断片をPAc−5P+Ecoとした。
次に、特開2008−029218号公報の段落[0038]に記載のKNK−005AS株の染色体DNAのbktB遺伝子の開始コドン直前をDNA挿入部位と設定し、以下の手順で該遺伝子の開始コドンより上流側の塩基配列からなるDNAを作製した。
特開2008−029218号公報の段落[0036]に記載のKNK−005株のゲノムDNAを鋳型DNAの供給源として、配列番号3および配列番号4で示されるプライマーを用いてPCRを行い、bktB遺伝子の開始コドンより上流の塩基配列からなるDNAを得た。PCRは(1)98℃で2分、(2)98℃で15秒、64℃で30秒、68℃で30秒を25サイクル繰り返し、ポリメラーゼはKOD−plus−を用いた。PCRで得たDNA断片を制限酵素BamHIおよびEcoRIで2酵素同時消化した。このDNA断片をPbktB−Bam+Ecoとした。
PAc−5P+EcoおよびPbktB−Bam+Ecoをライゲーションし、ライゲート液中に生成したDNAを鋳型DNAとして配列番号3および配列番号2で示されるプライマーを用いてPCRを行った。PCRは(1)98℃で2分、98℃で15秒、60℃で30秒、68℃で50秒を25サイクル繰り返し、ポリメラーゼはKOD−plus−を用いた。PCRで得たDNA断片を末端リン酸化およびBamHI消化した。このDNA断片をbPac−5P+Bamとした。
次に、該遺伝子の開始コドンより下流側の塩基配列からなるDNAを作製した。KNK−005株のゲノムDNAを鋳型DNAの供給源として、配列番号5および配列番号6で示されるプライマーを用いてPCRを行い、bktB遺伝子の開始コドンより下流側の塩基配列からなるDNAを得た。PCRは(1)98℃で2分、(2)98℃で15秒、64℃で30秒、68℃で30秒を25サイクル繰り返し、ポリメラーゼはKOD−plus−を用いた。PCRで得たDNA断片を末端リン酸化およびClaI消化した。このDNA断片をORF−5P+Claとした。
bPac−5P+BamとORF−5P+Claをライゲーションし、ライゲート液中に生成したDNAを鋳型DNAとして配列番号3および配列番号6で示されるプライマーを用いてPCRを行った。PCRは(1)98℃で2分、(2)98℃で15秒、60℃で30秒、68℃で1分30秒、を25サイクル繰り返し、ポリメラーゼはKOD−plus−を用いた。PCRで得たDNA断片をBamHIおよびClaIで2酵素同時消化した。このDNA断片を、ベクターpBluescript II KS(−)(TOYOBO製)の同制限酵素で消化した部位にサブクローニングした。得られたベクターをbAO/pBluとした。APPLIED BIOSYSTEMS社製のDNAシークエンサー3130xl Genetic Analyzerを用いて塩基配列を決定し、鋳型としたDNAの塩基配列と同一であることを確認した。
続いて、特開2008−029218号公報[0037]に記載のpSACKmを制限酵素NotIで処理することによってカナマイシン耐性遺伝子およびsacB遺伝子を含む約5.7kbのDNA断片を切り出した。これを、bAO/pBluの同酵素で切断した部位に挿入して遺伝子破壊・挿入用プラスミドbAO/pBlu/SacB−Kmを作製した。
<遺伝子挿入株Pac−bktB/AS株の作製>
次に、KNK−005AS株を親株としてbAO/pBlu/SacB−Kmを用いてbktB遺伝子の開始コドン直前にphaCのプロモーターおよびリボソーム結合部位を含む塩基配列からなるDNAが挿入された菌株を作製した。遺伝子挿入用プラスミドbAO/pBlu/SacB−Kmで大腸菌S17−1株(ATCC47005)を形質転換した。得られた形質転換体をKNK−005AS株とNutrient Agar培地(Difco社製)上で混合培養して接合伝達を行った。250mg/Lのカナマイシンを含むシモンズ寒天培地(クエン酸ナトリウム2g/L、塩化ナトリウム5g/L、硫酸マグネシウム・7水和物0.2g/L、リン酸二水素アンモニウム1g/L、リン酸水素二カリウム1g/L、寒天15g/L、pH6.8)上で生育してきた菌株を選択して、プラスミドがKNK−005AS株の染色体上に組み込まれた株を取得した。この株をNutrient Broth培地(Difco社製)で2世代培養した後、15%のシュークロースを含むNutrient Agar培地上に希釈して塗布し、生育してきた菌株を選択して2回目の組換えが生じた株を取得した。さらにPCRによる解析により所望の遺伝子挿入株を単離した。
この遺伝子挿入株をPac−bktB/AS株と命名し、DNAシークエンサー3130xl Genetic Analyzerを用いて塩基配列を決定し、bktB遺伝子の開始コドン直前にphaCのプロモーターおよびリボソーム結合部位を含む塩基配列からなるDNAが挿入された株であることを確認した。
<ccr遺伝子のクローニング及び発現ユニット構築>
クロトニル−CoAを、3HHモノマーの前駆体であるブチリル−CoAに変換する酵素をコードするccr遺伝子を、ストレプトマイセス・シンナモネンシス(Streptomyces cinnamonensis)Okami株(DSM 1042)の染色体DNAからクローニングした。配列番号7及び配列番号8記載のDNAをプライマーとしPCRを行った。その条件は(1)98℃で2分、(2)94℃で10秒、55℃で20秒、68℃で90秒を25サイクル繰り返し、ポリメラーゼはKOD−plus−を用いた。PCRで増幅した断片を精製後、制限酵素BamHI及びAflIIで切断した。EE32d13断片(J.Bacteriol.、179、4821(1997))を、pUC19ベクターのEcoRI部位にサブクローニングし、このプラスミドをBglIIとAflIIで切断し、BamHI及びAflII断片としたccr遺伝子と断片を置換することによってccr発現ユニットを構築した。
<phaC遺伝子のクローニング及び発現ユニット調製>
配列番号11を含むphaC発現ユニットをSpeI断片として調製した。特開2007−228894号公報の段落[0031]に記載のHG::PRe−N149S/D171G−T/pBluを鋳型とし、配列番号9と配列番号10に示すDNAをプライマーとしてPCRを行った。その条件は(1)98℃で2分、(2)94℃で10秒、55℃で30秒、68℃で2分を25サイクル繰り返し、ポリメラーゼはKOD−plus−を用いた。PCRで増幅した断片を精製後、制限酵素SpeIで切断して発現ユニットを調製した。
発現ベクターpCUP2−631は以下のようにして構築した。C.necatorにおける発現ベクター構築用のプラスミドベクターとしては、国際公開第07/049716号パンフレットの段落[0041]に記載のpCUP2を用いた。まず同パンフレット記載の実施例7で構築したccr遺伝子発現ユニットをEcoRI処理により切り出し、この断片をMunIで切断したpCUP2と連結した。次に同パンフレット記載の実施例8で作製したphaC発現ユニットをSpeI断片として調製し、ccr遺伝子発現ユニットを含むpCUP2のSpeI部位に挿入してpCUP2−631ベクターを構築した。
<形質転換体の作製>
pCUP2−631ベクターの種々の細胞への導入は以下のように電気導入によって行った。遺伝子導入装置はBiorad社製のジーンパルサーを用い、キュベットは同じくBiorad社製のgap0.2cmを用いた。キュベットに、コンピテント細胞400μlと発現ベクター20μlを注入してパルス装置にセットし、静電容量25μF、電圧1.5kV、抵抗値800Ωの条件で電気パルスをかけた。パルス後、キュベット内の菌液をNutrientBroth培地(DIFCO社製)で30℃、3時間振とう培養し、選択プレート(NutrientAgar培地(DIFCO社製)、カナマイシン100mg/L)で、30℃にて2日間培養して、生育してきた形質転換体を取得した。
<形質転換体の培養>
上記で作製した形質転換体の培養を行った。前培地の組成は1%(w/v)Meat−extract、1%(w/v)Bacto−Trypton、0.2%(w/v)Yeast−extract、0.9%(w/v)Na2HPO4・12H2O、および、0.15%(w/v)KH2PO4で、pH6.7に調整した。
ポリエステル生産培地の組成は1.1%(w/v)Na2HPO4・12H2O、0.19%(w/v)KH2PO4、0.6%(w/v)(NH42SO4、0.1%(w/v)MgSO4・7H2O、0.5%(v/v)微量金属塩溶液(0.1N塩酸に1.6%(w/v)FeCl3・6H2O、1%(w/v)CaCl2・2H2O、0.02%(w/v)CoCl2・6H2O、0.016%(w/v)CuSO4・5H2O、0.012%(w/v)NiCl2・6H2O、0.01%(w/v)CrCl3・6H2Oを溶かしたもの。)とした。炭素源としてPKOO(Palm kernel olein、パーム核油オレイン画分)を流加する流加培養にて行った。
それぞれの形質転換体のグリセロールストックを前培地に接種して20時間培養し、2.5Lのポリエステル生産培地を入れた5Lジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ製、MD−500型)に10%(v/v)接種した。運転条件は、培養温度28℃、攪拌速度420rpm、通気量0.6vvmとし、pHは6.6から6.8の間でコントロールした。コントロールには14%のアンモニア水を使用した。培養は65時間まで行った。培養後遠心分離によって菌体を回収し、メタノールで洗浄後、凍結乾燥し、PHBHを得た。
生産されたポリエステルの3HH組成分析は以下のようにガスクロマトグラフィーによって測定した。乾燥PHBHの約20mgに2mlの硫酸−メタノール混液(15:85)と2mlのクロロホルムを添加して密栓し、100℃で140分間加熱して、PHBH分解物のメチルエステルを得た。冷却後、これに1.5gの炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えて中和し、炭酸ガスの発生が止まるまで放置した。4mlのジイソプロピルエーテルを添加してよく混合した後、遠心して、上清中のPHBH分解物のモノマーユニット組成をキャピラリーガスクロマトグラフィーにより分析した。ガスクロマトグラフは島津製作所社製のGC−17A、キャピラリーカラムはGLサイエンス社製のNEUTRA BOND−1(カラム長25m、カラム内径0.25mm、液膜厚0.4μm)を用いた。キャリアガスとしてHeを用い、カラム入口圧100kPaとし、サンプルは1μlを注入した。温度条件は、初発温度100から200℃まで8℃/分の速度で昇温、さらに200から290℃まで30℃/分の速度で昇温した。上記条件にて分析した結果、3HH比率が12%のPHBHであった。また分子量は、GPCの測定より約70万であった。
以上のようにして得られたPHBHを下記の要領で押出成形機によりストランドを成形した。まず、その概略を説明する。尚、装置の概略図を図1(a)に示す。
(混練機出口での残存結晶量の近赤外オンラインモニタリング)
混練機として単軸押出機1(RX−20、Rikua Yokohama Japan、L/D=25、モーター設定回転数:20rpm)を使用した。ただし、通常のダイに換えて、近赤外分光セル2を設けた内径φ8mmのノズル3を用いた。また、近赤外分光セル2として、サファイヤー製の近赤外分光セルを用い、光ファイバー4で近赤外分析装置5に接続し、近赤外スペクトルを取得、解析した。近赤外分析装置5は、FT−NIRスペクトロメーター(Analect FIR1000、Yokogawa)を使用した。また、当該押出機1はバレルの中ほど2ヵ所(モーター11側8:C1、ノズル側9:C2)、フランジ10、ノズル3、近赤外分光セル2において温度の設定が可能であり、樹脂温度は、セル近傍の樹脂温度計6で測定した。これら近赤外分析装置関連の詳細については、公知文献(Masahiro Watariら、Applied Spectroscopy、58(2)、248(2004))に示されているものを応用した。
単軸押出機出口、即ち押出機先端のノズル部分に設置された近赤外分光セル2により、押出機スクリューにより溶融混練された後にノズル部よりストランド状に押し出しされる直前の溶融樹脂を直接オンラインで近赤外スペクトル分析により樹脂中の残存結晶量を解析した(第1のオンラインスペクトル)。得られた近赤外スペクトルにおいて、結晶を示す特性ピークは、4670cm-1と、5170cm-1に注目して、押出機の出口における樹脂組成物中の残存結晶量を確認した。即ち、残存結晶量は近赤外スペクトル吸収強度が高い場合に多いと判断した。
(残存結晶微小状態、近赤外の差スペクトル)
溶融混練後、上記のようにして押出成形された外径φ8mmのストランド7が60分以上、結晶化、固化しない条件を残存結晶微小状態とした。前述の近赤外オンラインモニタリングで得られたスペクトルについて、残存結晶微小状態と考えられるスペクトルとの差スペクトルをとり、残存結晶量を確認した。具体的には、残存結晶量は、差スペクトルにおいて吸収強度が高い場合は残存結晶量が多く、差スペクトルにおいて吸収強度が低い場合は少ないと判断した。
(押出ストランドの近赤外オンラインモニタリング)
単軸押出機1より押し出しされたストランド7をダイス出口直近でサンプリングした後、サンプリングしたストランド7’をガラスプレート20で2mm厚みに挟み込み、図示しない透過型近赤外分光プローブを取付けたガラスプレート20を光ファイバー4’で近赤外分析装置5’に接続し、オンラインで近赤外スペクトル(第2のオンライン近赤外スペクトル)を分析することで、結晶化挙動を追跡し、解析した。近赤外分析装置5’として、押出機出口での残存結晶量の近赤外オンラインモニタリングと同型の装置を使用して別途測定した。当該装置の概略を図1(b)に示す。得られた近赤外スペクトルを二次微分した曲線より、非特許文献2、3の知見を応用し、非結晶化(アモルファス)ピークとして5150cm-1、結晶化ピークとして5120cm-1(第2の結晶化ピーク)を用いて解析した。具体的には、成形直後から測定を開始して、その後近赤外スペクトルを経時的に測定し、得られた近赤外スペクトルの二次微分曲線を求め、5150cm-1、5120cm-1におけるピークの有無を確認し、成形直後から200秒以内にアモルファスピークが消失し、結晶化ピークが生じるか否かを確認した。
(押出ストランドの目視観察)
結晶化・固化時間の確認のため、単軸押出機1より押し出され、サンプリングされたストランド7’をお互いに接触させ、表面が融着するかどうかで結晶状態を目視で観察した。ストランド内部は表面よりも早期に固化するため、表面同士が融着しないものを結晶化したものとみなし、ストランドに成形した直後からその表面同士が融着しなくなるまでの時間を結晶化時間とした。
(連続押出成形)
このようにして、成形体が所定期間内に結晶化・固化することを確認し、このときの第1の結晶化ピークの示す残存結晶量になるように第1のオンライン近赤外スペクトルをモニタリングしながら成形条件を制御することにより、所望のストランドを連続生産することができる。
(実施例1〜3、比較例1、2)
具体例を以下に示す。
製造例で得られた3HH組成比率が12mol%であるPHBHを使用し、上述の単軸押出機1を用いて表1に示す各種条件で外径φ8mmのストランド7を成形するとともに、単軸押出機1のノズル3に設けたセル2で、近赤外スペクトルを近赤外分析装置5によりオンラインで取得した(第1のオンライン近赤外スペクトル)。また、同時にセル近傍に設けた樹脂温度計6で溶融樹脂の温度を測定した。また、得られたストランド7’の近赤外スペクトルを近赤外分析装置5’によりオンラインで取得するとともに(第2のオンライン近赤外スペクトル)、目視によりストランドの結晶化挙動を観察した。近赤外スペクトルの分析結果および観察結果の概略を表2に示す。
Figure 2010241075
Figure 2010241075
また、図2は、各実施例及び各比較例において、波長が4600cm-1〜4800cm-1における残存結晶量のオンライン近赤外分析結果を示した図であり、図4は、各実施例及び各比較例において、波長が5050cm-1〜5200cm-1における残存結晶量のオンライン近赤外分析結果を示した図である。また、残存結晶微小状態である比較例1(ノズル設定160℃、樹脂温度172℃)のスペクトルを基準として算出した実施例1〜3および比較例2の差スペクトルを図3、5に示す。さらに、押出されたストランド7’の結晶化挙動について、実施例1〜3および比較例1の近赤外オンラインモニタリングにより得られたスペクトルの二次微分曲線をそれぞれ図6〜9に示す。尚、比較例2は比較例1と同様な曲線が得られたため図は省略した。
図2、4から、各実施例および比較例における成形機出口での樹脂温度が高くなると残存結晶量を示す4670cm-1および5170cm-1の近辺のピーク強度が低下する傾向にある。また、図3、5から比較例1を基準とした差スペクトルにおいては、実施例1及び2では、実施例3並びに比較例2に比べ、押出機出口における差スペクトルでの4670cm-1、5170cm-1のピーク強度が高いことから、押出機出口での残存結晶量が大きいことがわかる。また実施例1および2においてそれぞれ図6、7に示すように、得られたストランドの近赤外スペクトルを二次微分した曲線より、5120cm-1の結晶化ピークを用いて解析すると、該結晶化ピークが成形直後から30秒以内に観察され、押出ストランド結晶化の目視観察においてもストランドに成形した直後から75秒で表面が融着しなくなり、結晶化がはやく進行することが確認された。これにより結晶核剤を用いなくとも、結晶核剤を用いた場合と同等の結晶化速度を実現できることが分かる。
また図2〜5に示すように、実施例3では、オンライン近赤外スペクトル(図2、4)及び差スペクトル(図3、5)での4670cm-1、5170cm-1のピーク強度が実施例1及び2よりも低いが、差スペクトルにおいて、基準とした比較例1(残存結晶微小状態)よりも大きいことから、押出機出口で残存結晶は存在することが分かる。また実施例3の場合、表1に示すようにその結晶化時間が実施例1及び2より長くなるが、得られたストランドの近赤外スペクトルを二次微分した5120cm-1の結晶化ピークは成形直後から60秒以内に観察され(図8)、また、押出ストランド結晶化の目視観察においても、ストランドに成形した直後から約15分で表面が融着しなくなり、結晶化が進行することが確認された。従って本発明によりP3HAを含む樹脂組成物の加工速度が向上することが分かる。
一方図2、4に示すように、比較例1、2においては、成形機出口におけるオンライン近赤外スペクトルでの4670cm-1、5170cm-1のピーク強度が実施例3よりさらに低くなり、また図3、5に示すように、比較例2の差スペクトルでの4670cm-1、5170cm-1のピーク強度が基準となる比較例1より低くなった。さらに、比較例1においては、得られたストランドの近赤外スペクトルを二次微分した5120cm-1の結晶化ピークが成形直後から60分以上経過後も観察されず(図9)、また、押出ストランドの結晶化の目視観察においても、ストランドに成形した直後から75分以上経過しても結晶化が進行しなかった(表2)。このことから、押出機出口での残存結晶がほとんど存在しないことが想定され、比較例1を残存結晶微小状態として、差スペクトルの基準とした。またこのように、成形機出口で樹脂組成物が残存結晶微小状態にあると、得られるストランドの結晶化(固化)が殆ど進行しないことから、樹脂の成形加工性、加工速度が著しく低下することがわかる。
1 単軸押出機
2 近赤外分光セル
3 ノズル
4、4’ 光ファイバー
5、5’ 近赤外分析装置
6 樹脂温度計
7、7’ ストランド
8 C1
9 C2
10 フランジ
11 モーター
20 ガラスプレート

Claims (5)

  1. 微生物により生産される、下記式(1)
    [−CHR−CH2−CO−O−] (1)
    (式中、RはCn2n+1で表されるアルキル基で、nは1〜15の整数である。)
    で示される繰り返し単位からなる脂肪族ポリエステル系重合体(以下、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート):略称 P3HA)を含む生分解性樹脂組成物を加熱溶融混練して成形体に成形する際に、加熱溶融混練した後の成形機出口での残存結晶量を近赤外分光法によるスペクトルにより確認し、前記成形体の近赤外分光法による結晶化ピークが成形直後から200秒以内に観察されるように前記成形機出口での残存結晶量を調整することを特徴とする生分解性樹脂成形体の製造法。
  2. 前記P3HAが、前記式(1)中のnが1である繰り返し単位と、nが3である繰り返し単位とからなるポリ(3−ヒドロキシブチレート−コ−3−ヒドロキシヘキサノエート)(略称:PHBH)である請求項1に記載の生分解性樹脂成形体の製造法。
  3. 前記PHBHの繰り返し単位の組成比〔ポリ(3−ヒドロキシブチレート)/ポリ(3−ヒドロキシヘキサノエート)〕が、80/20〜99/1(mol/mol)である請求項2に記載の生分解性樹脂成形体の製造法。
  4. 近赤外分光法によるスペクトルが、前記生分解性樹脂組成物を溶融混練後、成形機出口に設置されたセルで測定されたスペクトルである請求項1〜3のいずれかに記載の生分解性樹脂成形体の製造法。
  5. 近赤外分光法によるスペクトルが、前記生分解性樹脂組成物を加熱溶融混練後、成形機出口に設置されたセルで測定されたスペクトルと、残存結晶微小状態でのスペクトルとの差スペクトルである請求項1〜3のいずれかに記載の生分解性樹脂成形体の製造法。

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