JP2010241053A - 印刷装置および印刷方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ドット重なりを正確に予測し、ドット重なりによる印刷結果への悪影響を抑制する印刷装置を提供する。
【解決手段】画像データを構成する各画素のドット発生率に基づいて、各画素についてドットの形成可否を判定するハーフトーン処理を実行するハーフトーン手段と、ドットの形成可否に基づいて記録媒体上にドットを形成する印刷手段とを具備する。ハーフトーン手段は、印刷媒体上において複数のドットが重なるドット重なりの発生をドット形状に基づいて予測し、ドット重なりに応じた評価指数に基づいてハーフトーン処理を実行するようにして、印刷装置を構成する。
【選択図】図4

Description

この発明は、印刷装置および印刷方法に関する。
ディザマスクを構成するマスク画素をドット形成タイミングに応じた複数のグループに分け、全グループおよび各グループ個別について粒状性が抑制されるようにディザマスクを最適化する技術が提案されている(特許文献1、参照)。
特開2007−49443号公報
実際の印刷においては、ドットが高密度で形成されるため、複数のドットによるドット重なりが生じる場合がある。ドット重なっていない部分と、ドット重なっている部分とでは、濃度や色等に差が生じるため、ドット重なりの発生頻度や分布態様によっては全体の印刷結果に悪影響を与えることとなる。ドットの形成可否は印刷解像度に対応する大きさの画素ごとに制御されるが、特にドットが高密度で配置される場合には、単一のドットが複数の画素に広がって形成され、それによりドット重なりが生じることとなる。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ドット重なりを正確に予測し、ドット重なりによる印刷結果への悪影響を抑制することを目的とする。
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の印刷装置では、画像データを構成する各画素のドット発生率に基づいて、各画素についてドットの形成可否を判定するハーフトーン処理を実行するハーフトーン手段と、前記ドットの形成可否に基づいて記録媒体上にドットを形成する印刷手段とを具備する。そして、前記ハーフトーン手段は、前記印刷媒体上において複数のドットが重なるドット重なりの発生を予測し、該ドット重なりに応じた評価指数に基づいて前記ハーフトーン処理を実行する。このようにすることにより、ドット重なりの発生を抑制したり、ドット重なりが発生した場合でもドット重なりによる印刷結果への影響を抑制する印刷を実現することができる。従って、濃度むらや色むらや光沢むらを抑制することができる。
特に、前記評価指数として、前記記録媒体上における前記ドット重なりの分散性に基づくものを採用することにより、ドット重なりが発生した場合でもドット重なりによる印刷結果への影響を抑制する印刷を実現することができる。すなわち、前記ドット重なりが局所的に集中して発生した場合には画質の劣化として感じられることとなるが、前記ドット重なりを分散させた場合には前記ドット重なりに起因する画質への悪影響を感じられにくくすることができる。また、インク滴の集中も抑制できるため、インクにじみ等のドット形成過程における不具合も抑制することができる。
さらに、ドットの位置ずれが生じた場合における前記ドット重なりの発生の有無を予測するようにしてもよい。このようにすることにより、ドットが正常な位置に形成される場合のみならず、ドットの位置ずれが生じた場合でも濃度むらや色むらや光沢むらを抑制することができる。例えば、複数回主走査を行う際にインク滴を吐出する印刷ヘッドが備えられる場合、各主走査において形成されるドット間で位置ずれが生じることが予測される。
さらに、本発明の印刷装置が往方向および復方向に主走査する際にインク滴を吐出する印刷ヘッドを具備する場合、以下のようなドットの位置ずれが発生することが予測される。すなわち、往方向に主走査する際に吐出されるインク滴によって形成されるドットの位置と、復方向に主走査する際に吐出されるインク滴によって形成されるドットの位置とが相対的にずれること(走査方向間位置ずれ)が想定される。このような走査方向間位置ずれによって生じるドット重なりを予測して前記評価指数を得るようにしておけば、往方向および復方向に主走査する際にインク滴を吐出する印刷装置でも良好な画質を実現することができる。
さらに、前記走査方向間位置ずれを想定した場合に、以下のような前記評価指数を採用することができる。すなわち、前記走査方向間位置ずれが生じた場合に、前記走査方向間位置ずれが生じない場合よりも互いに接近して前記ドット重なりを発生させるドット対の個数と、前記走査方向間位置ずれが生じない場合よりも互いに離反するドット対の個数に基づく前記評価指数を採用することができる。前記走査方向間位置ずれが生じない場合よりも互いに接近して前記ドット重なりを発生させる場合、本来よりもドットによる被覆面積が減少することとなるが、このようなドット重なりの発生の原因となるドット対の数を評価することにより、被覆面積の変動を抑制することができる。
また、ドットの位置ずれに起因した前記ドット重なりのみならず、複数インク間のドット重なり(インク間ドット重なり)に基づいて前記評価指数を得るようにしてもよい。これにより、インク間ドット重なりの発生を抑制したり、インク間ドット重なりの発生を空間的に分散させ、良好な印刷結果を得ることができる。各インクのドットは独立して形成されることが望ましく、異なるインクが混合することにより、意図しない印刷結果(発色等)となるからである。また、インク間ドット重なりを空間的に分散することにより、複数インク間のインクにじみ等も抑制ことができる。
さらに、ドット形状に起因した前記ドット重なりも考慮して前記評価指数を得るようにしてもよい。実際の印刷においては、印刷解像度における1画素の大きさよりも大きいドットが形成されることも考えられる。すなわち、ある画素にドットを形成するとした場合に、当該ドットが周辺の画素まで広がることが考えられる。このようにドットが広がる場合、広がらない場合よりも前記ドット重なりが生じやすい。従って、ドット形状を考慮して前記ドット重なりの発生を予測するのが望ましい。
なお、本発明は、誤差拡散法とディザ法のいずれのハーフトーン手法によっても実現することができる。すなわち、ディザ法においては、予め前記評価指数に基づいてディザマスクを作成し、該ディザマスクをハーフトーン処理に使用することにより、前記評価指数に基づくハーフトーン処理を実現することができる。一方、誤差拡散法においては、ドットの形成可否を決定する閾値を前記評価指数に応じて変動させることにより、前記評価指数に基づくハーフトーン処理を実現することができる。
誤差拡散法においては、注目画素について前記インク間ドット重なりや前記ドット形状に起因したドット重なりを発生させるとした場合には、該注目画素の周辺の画素については前記インク間ドット重なりや前記ドット形状に起因したドット重なりを発生させにくいようにすればよい。具体的には、該注目画素の周辺の画素についての前記閾値を、前記インク間ドット重なりや前記ドット形状に起因したドット重なりを発生させにくいように調整すればよい。
なお、本発明は、印刷装置のみならず、印刷装置を構成する各手段が実行する工程を備えた印刷方法においても実現することができる。さらに、前記手段に相当する機能をコンピューターに実行させる印刷プログラムにおいても本発明が実現できる。また、印刷装置を構成する各手段が複数の装置(例えば、印刷制御装置としてのコンピューターと、プリンター)において分散して存在し、該複数の装置が協働することによっても本発明の印刷方法を実現することができる。
コンピューターのハードウェア構成図である。 コンピューターのソフトウェア構成図である。 ハーフトーン処理〜パス分解処理および印刷方式を説明する図である。 ディザマスク作成処理を示すフローチャートである。 ディザマスク作成処理を説明する模式図である。 グループを説明する模式図である。 ドット形状を付加する様子を説明する図である。 変形例にかかるコンピューターのソフトウェア構成図である。 変形例にかかるハーフトーン処理の流れを説明するフローチャートである。 変形例にかかるハーフトーン処理の流れを説明する模式図である。 走査方向間位置ずれを説明する模式図である。 変形例にかかるディザマスク作成処理を示すフローチャートである。 変形例のグループ別ドットマップが作成される様子を説明する図である。 変形例にかかるハーフトーン処理の流れを説明するフローチャートである。 変形例にかかるハーフトーン処理の流れを説明する模式図である。 変形例にかかるディザマスクの使用態様を説明する図である。 変形例にかかるディザマスク作成処理を示すフローチャートである。 変形例のグループ別ドットマップが作成される様子を説明する図である。 変形例にかかるハーフトーン処理の流れを説明するフローチャートである。 変形例にかかるハーフトーン処理の流れを説明する模式図である。 ポテンシャル値PIを算出する様子を説明する模式図である。
以下では、本発明の作用・効果をより明確に説明するために、本発明の実施の形態を、次のような順序に従って説明する。
A.装置構成および印刷方式:
B.ディザマスクの作成:
C.変形例:
C−1.変形例1:
C−2.変形例2:
C−3.変形例3:
C−4.変形例4:
C−5.変形例5:
C−6.変形例6:
C−7.変形例7:
C−8.変形例8:
C−9.変形例9:
C−10.変形例10:
C−11.変形例11:
C−12.変形例12:
A.装置構成および印刷方式
図1は、本発明の画像処理装置を具体的に実現するコンピューターの一例の構成を示している。同図において、コンピューター10はCPU11とRAM12とROM13とハードディスクドライブ(HDD)14と汎用インターフェイス(GIF)15とビデオインターフェイス(VIF)16と入力インターフェイス(IIF)17とバス18とから構成されている。バス18は、コンピューター10を構成する各要素11〜17の間でのデータ通信を実現するものであり、図示しないチップセット等によって通信が制御されている。HDD14には、オペレーティングシステム(OS)を含む各種プログラムを実行するためのプログラムデータ14aが記憶されており、当該プログラムデータ14aをRAM12に展開しながらCPU11が当該プログラムデータ14aに準じた演算を実行する。
GIF15は、例えばUSB規格に準じたインターフェイスを提供するものであり、外部のプリンター20をコンピューター10に接続させている。VIF16はコンピューター10を外部のディスプレイ40に接続し、ディスプレイ40に画像を表示するためのインターフェイスを提供する。IIF17はコンピューター10を外部のキーボード50aとマウス50bに接続し、キーボード50aとマウス50bからの入力信号をコンピューター10が取得するためのインターフェイスを提供する。
図2は、コンピューター10において実行されるプログラムのソフトウェア構成を示している。同図において、オペレーティングシステム(OS)上においてディザマスク作成プログラムP1とプリンタードライバーP2が実行されている。OSは各プログラム間のインターフェイスを提供する。ディザマスク作成プログラムP1は、グループ分類部P1aと着目閾値選択部P1bと評価指数算出部P1cと閾値格納部P1dとから構成されている。さらに、評価指数算出部P1cは、ドットマップ作成部P1c1とドット形状付加部P1c2と分散性指数算出部P1c3とから構成されている。ディザマスク作成プログラムP1を構成する各モジュールP1a〜P1dが実行する処理の詳細については処理の流れとともに説明する。プリンタードライバーP2は、画像データ生成部P2aと色変換処理部P2bとハーフトーン処理部P2cとパス分解処理部P2dとから構成されている。
画像データ生成部P2aは、印刷ジョブに含まれるコマンドに基づいてビットマップデータを描画し、該ビットマップデータの画像サイズ(画素数)を印刷解像度に適合するように変換する。色変換処理部P2bは、前記ビットマップデータを、各画素がプリンター20が吐出可能なインクのインク量(ドット発生率)の階調値を有する画像データ(入力画像データ)に変換する処理を行う。ハーフトーン処理部P2cは、各インク別の入力画像データに対してディザ法によるハーフトーン処理を実行する。このハーフトーン処理においては、予めディザマスク作成プログラムP1が作成したディザマスクMが使用される。
図3は、ハーフトーン処理〜パス分解処理およびプリンター20における印刷の様子を概念的に示している。ハーフトーン処理においては、ディザマスクMを参照しながら、入力画像データの各画素についてのドット形成の可否を判断する。各画素の大きさは、印刷用紙上の印刷解像度に対応する。例えば、印刷解像度が横1440×縦720dpiであるとき、各画素の横と縦の大きさはそれぞれ横1/1440インチ、縦1/720インチに相当する。ドット形成の可否を判断するに際しては、まず、判断しようとする画素を選択し、この画素についての入力画像データのインク量の階調値と、ディザマスクMにおいて該画素に対応する位置に存在するマスク画素に格納されている閾値と比較する。なお、本実施例では、マスク画素が16行16列で配列するディザマスクMを使用・作成するが、図の簡略化のため一部を図示する。図3に示した細い破線の矢印は、入力画像データのインク量の階調値と、ディザマスクMのマスク画素に格納されている閾値とを、画素毎に比較していることを模式的に表したものである。例えば、入力画像データの左上隅の画素については、入力画像データのインク量の階調値は72であり、ディザマスクMの閾値は0であるから、この画素にはドットを形成すると判断する。
図3に実線で示した矢印は、この画素にはドットを形成すると判断して、判断結果をハーフトーンデータに反映させている様子を模式的に表したものである。一方、この画素の右隣の画素については、入力画像データの階調値は160、ディザマスクの閾値は200であり、閾値の方が大きいので、この画素についてはドットを形成しないと判断する。ハーフトーンデータは、各画素がドットを形成するか否かの2値の情報を有する画像データであり、図3ではドットを形成する画素をハッチングで示している。ディザ法では、こうしてディザマスクMを参照しながら、画素毎にドットを形成するか否かを判断することで、入力画像データを画素毎にドット形成の可否を表すハーフトーンデータに変換する。このように、ディザ法を用いれば、入力画像データの階調値とディザマスクMに設定されている閾値とを比較するという単純な処理で、画素毎のドットの形成可否を判断することができる。
以上のようにしてハーフトーンデータが生成できると、パス分解処理部P2dがハーフトーンデータの各画素をプリンター20における各主走査パスに分解する。図3においては、パス分解処理における分解規則を規定したパス分解マトリックスをハーフトーンデータおよびディザマスクMと対比して示している。パス分解マトリックスの各画素には、1〜4の主走査パス番号が対応付けられている。本実施例では、1〜4の主走査パス番号に対応する4回の主走査パスによって1サイクルが構成される。むろん、本発明は4パス印刷に限定されるものではなく、他のパス数を想定した場合でも適用することができる。各サイクルにおいて、パス番号の小さい順に各主走査パスが行われる。図3に図示するように、パス番号1,3に対応する画素については、印刷ヘッド21が往方向(図において右方向)に主走査する主走査パスにおいてドットが形成される。パス番号2,4に対応する画素については、印刷ヘッド21が復方向(図において左方向)に主走査する主走査パスにおいてドットが形成される。
パス番号1,3の主走査パスで形成されるドットは、パス番号2,4の主走査パスで形成されるドットに対して、1/1440インチだけ主走査方向にずれた位置となる。なお、各主走査パスにおけるインク吐出タイミングを調整することにより、ドット形成位置が主走査方向にずらされる。図示しないが、パス番号1,2の主走査パスの間、および、パス番号3,4の主走査パスの間に印刷用紙が副走査方向に送られる量は、1/720インチの偶数倍(印刷ヘッド21におけるノズルピッチの整数倍)である。一方、パス番号2,3の主走査パスの間、および、パス番号4,1の主走査パスの間に印刷用紙が副走査方向に送られる量は、1/720インチの奇数倍である。これにより、パス番号1,2の主走査パスで形成されるドットは、パス番号3,4の主走査パスで形成されるドットに対して、1/720インチだけ副走査方向にずれた位置となる。ハーフトーンデータの各画素を各主走査パスに分解すると、さらに各画素を主走査パスの順に並び替え、各種制御データを添付してプリンター20に出力する。これにより、プリンター20は、上述した主走査パスを順次行い、印刷用紙上に印刷画像を形成する。
ところで、図3に示すように、ディザマスクMの各マスク画素とパス分解マトリックスの各画素との関係は予め特定可能である。すなわち、ディザマスクMの各マスク画素の閾値が、どの主走査パスにおけるドットの形成可否を決定するものであるかを特定することができる。以上説明した印刷方式を前提とし、本実施例では以下のようにしてディザマスクMを作成する。
B.ディザマスクの作成
図4は本実施例のディザマスク作成処理の流れを示し、図5はディザマスク作成処理によってディザマスクMが作成されていく様子を概念的に示している。ディザマスク作成処理は、複数のループ処理によって構成されており、まず各ループ処理の概要について説明する。最初の段階ではディザマスクMを構成する各マスク画素には何も格納されていない。なお、本実施例では、16行16列のディザマスクMを作成することとする。なお、図5では、図の簡略化のため、ディザマスクMの左上隅4行8列のみを抽出して図示するものとする(図6,7,13についても同じ。)。色変換処理後の入力画像データの各画素のインク量の階調値も、0〜255(8ビット)の範囲であるものとする。むろん、ディザマスクMの大きさは16行16列には限られず、例えば10ビット程度の閾値を格納可能な大きさのディザマスクMを作成してもよい。
各マスク画素には、0〜255の閾値を重複させることなく小さい値から順に格納していくこととする。ステップS100では小さい値から順に閾値を選択する処理を行っており(以下、選択された閾値を着目閾値Sと表記する。)、ステップS100〜S250のループ処理によって該着目閾値Sを格納するマスク画素を決定する処理が繰り返して実行される。図5Aに図示するように、ある着目閾値Sが選択された段階で、それよりも小さい閾値(以下、格納済み閾値と表記する。)は、すでにいずれかのマスク画素(以下、格納済みマスク画素(●で図示。)と表記する。)に格納されていることとなる。ディザマスクMのマスク画素のうち、格納済みマスク画素以外の画素を未格納マスク画素と表記する。
ステップS110では未格納マスク画素を選択する処理を行っており(以下、選択された未格納画素を着目未格納マスク画素(▲で図示。)と表記する。)。ステップS110〜S220のループ処理によって着目未格納マスク画素に着目閾値S(図はS=75。)を格納した場合のドット分散性を評価する評価指数を算出する処理を繰り返して実行する。ここでは、格納済みマスク画素(●で図示。)、および、着目未格納マスク画素(▲で図示。)にドットが形成されるとしたドットマップDを得る。図5Bに示すようにドットマップDが生成できると、図5Cに示すように該ドットマップDの各マスク画素を複数のグループに分類することにより、各グループに対応するグループ別ドットマップGDを作成する。ステップS160ではグループを選択する処理を行っており(以下、選択されたグループを着目グループと表記する。)。ステップS160〜S190のループ処理によって着目グループに対応するグループ別ドットマップGDの粒状性指数GI(本発明のグループ別指数に相当する。)を算出する処理を繰り返して実行する。全グループについて粒状性指数GIが算出できると、各グループの粒状性指数GIを線形結合することにより評価指数EIを算出する。
図5Dに示すように、評価指数EIを算出の算出は、未格納マスク画素をすべて着目未格納マスク画素として選択するまで繰り返されるため、すべての未格納マスク画素について評価指数EIが算出されることとなる。そして、最も評価指数EIが小さい未格納マスク画素を検出し、該未格納マスク画素に着目閾値Sを格納する。着目閾値Sを新たに格納したディザマスクMに更新し、次の着目閾値Sについて同様の処理を繰り返す。以上のループ処理によって、着目閾値Sを小さい順に順次格納していくことができる。以下、各ステップの詳細な処理について順に説明していく。
ステップS100においては、着目閾値選択部P1bが着目閾値選択処理を行う。着目閾値決定処理とは、いずれかのマスク画素に格納しようとする閾値を選択する処理である。本実施例では、比較的に小さな値の閾値、すなわちドットの形成されやすい値の閾値から順に選択することによって閾値が決定される。本実施例では、ディザマスクMが16行16列であり、16×16=256個の各マスク画素に対して互いに重複しない閾値が格納でき、0〜255の範囲で着目閾値Sが1ずつインクリメントされていく。
ステップS110において、評価指数算出部P1cが現在のディザマスクMの未格納マスク画素のなかから着目未格納マスク画素を選択する。例えば、図5Aにおいて矢印で示すように、ディザマスクMの左上に位置する未格納マスク画素から順に選択するようにしてもよい。ステップS120において、ドットマップ作成部P1c1が格納済みマスク画素(●で図示。)、および、着目未格納マスク画素(▲で図示。)にドットが形成されるとしたドットマップDを得る。図5A,5Bに示すように、概念的にドットマップDは、着目未格納マスク画素に着目閾値Sを配置したと仮定したディザマスクMを使用して、全画素が着目閾値Sに1を加えたインク量の階調値を有するベタ入力画像データをハーフトーン処理することにより得られるハーフトーンデータに相当する。ドットマップDは、ディザマスクMと同じ大きさであり、ディザマスクMと同数のマスク画素によって構成され、ドットが形成された位置に階調値“1”が付与される。次のステップS130〜S150において、グループ分類部P1aはステップS120によって得られたドットマップDに基づいて複数のグループに対応するグループ別ドットマップGDを作成する。
図6は、ステップS130において、ドットマップDに基づいてグループ別ドットマップGDが作成される様子を示している。本実施例では、上述したパス分解マトリックスで定義された主走査パスのパス番号に基づいて、ドットマップDの各マスク画素を分類することにより、7個のグループG1〜G7についてのグループ別ドットマップGD1〜GD7を作成する。グループG1については、実質的には変化しておらず、ドットマップDのすべてのマスク画素を有効なものとして扱う。グループG1は本発明の全マスク画素グループに相当する。グループG2のグループ別ドットマップGD2は、ドットマップDのマスク画素のうち、パス番号1およびパス番号3に対応するマスク画素に対するドットのみを有効とする。すなわち、パス番号1およびパス番号3に対応するマスク画素以外のマスク画素の階調値を一様に“0”とする。他のグループG3〜G7についても、有効とするマスク画素以外のマスク画素の階調値を一様に“0”とする。図6においては、パス分解マトリックスを図示しており、各画素に記されたパス番号の下に主走査方向を表す矢印が示されている。さらに、図6では、各グループG1〜G7に対応してパス分解マトリックスを示しており、グループ別ドットマップGD1〜GD7を作成する際に無効とされる領域を網掛によって表示している。
グループG3のグループ別ドットマップGD3は、ドットマップDのマスク画素のうち、パス番号2およびパス番号4に対応するマスク画素に対するドットのみを有効とする。グループG2は対応する主走査パスの走査方向が往方向のマスク画素によって構成されるグループであり、グループG3は対応する主走査パスの走査方向が復方向のマスク画素に対するドットを有効とするグループである。グループG2,G3は、それぞれ本発明の同一走査方向グループに相当する。
グループG4のグループ別ドットマップGD4はパス番号1に対応するマスク画素に対するドットのみを有効とし、グループG5のグループ別ドットマップGD5はパス番号2に対応するマスク画素に対するドットのみを有効とし、グループG6のグループ別ドットマップGD6はパス番号3に対応するマスク画素に対するドットのみを有効とし、グループG7のグループ別ドットマップGD7はパス番号4に対応するマスク画素に対するドットのみを有効とする。グループG4〜G7は、それぞれ本発明の同一走査グループに相当する。
ステップS140〜S150では、グループG8についてのグループ別ドットマップGD8を作成する処理を実行する。まず、ステップS140において、ドット形状付加部P1c2は、すべての主走査パスの成分を含むグループ別ドットマップGD1に対して、ドットの形状を付加する処理を行う。
図7は、グループ別ドットマップGD1に対して、ドットの形状を付加する様子を示している。本実施例では、グループ別ドットマップGD1において階調値“1”が付与されたマスク画素を中心として上下左右に1マスク画素ずつ広がるドット形状(図7Aにおいて破線で囲んだ形状)を付加する。ここでは、ドット形状によって広がるマスク画素について階調値“1”を加算することとする。本変形例では、実線で示す縦長の円形のドット形状を想定している。グループ別ドットマップGD1において階調値“1”が付与された複数のマスク画素が、上下左右に隣接している場合、および、上下左右に1画素間をおいて存在している場合には、ドット重なりが生じることとなる。ドットが重なったマスク画素については、もとの階調値“1”に対して、さらに階調値“1”が付与されることとなる。従って、図7Bに示すように、ドットが重なるマスク画素の階調値は“2”以上となる。
ステップS150においては、図7Cに示すように階調値が“2”以上のマスク画素を抽出(階調値が“2”以上のマスク画素のみに階調値“1”を付与し、それ以外のマスク画素の階調値を“0”とする。)することにより、図7Cに示すようなグループ別ドットマップGD8を作成する。グループ別ドットマップGD8は、ドット重なりの発生、および、その空間分布を予測したものであということができる。以上のようにして、グループ別ドットマップGD1〜GD8が作成できると、次のステップS160においてグループ分類部P1aが着目グループを選択する。ステップS170において、分散性指数算出部P1c3は、着目グループのグループ別ドットマップGD1〜GD8についての粒状性指数GIを下記の(1)式によって算出する。粒状性指数GIは本発明のドット分散性に相当する。

粒状性指数GIについては、例えば、Makoto Fujino, Image Quality Evaluation of Inkjet Prints, Japan Hardcopy '99, p.291-294を参照。なお、前記(1)式のkは補正係数、WS(u)は画像のウイナースペクトラム、VTFは視覚の空間周波数特性、uは空間周波数である。各マスク画素の空間的な大きさは、印刷解像度に準じて、横1/1440インチ、縦1/720インチとされる。
前記の(1)式において、粒状性指数GIはグループ別ドットマップGD1〜GD8が示す画像平面に関してフーリエ変換することにより、グループ別ドットマップGD1〜GD8に存在するマスク画素の階調値の空間波のパワースペクトルを得るとともに、当該パワースペクトルに対して視覚の空間周波数特性VTFを畳み込むことにより算出される。なお、VTFにおいては、印刷物を観察するときの視野角度や観察距離の一般的な値が設定される。粒状性指数GIは、グループ別ドットマップGD1〜GD8に存在する階調値の空間波の大きさを空間周波数特性VTFによる重み付けを考慮して全空間周波数に関して累積した値であるといえる。また、粒状性指数GIは、正値をとり、その値が大きいほど粒状感が強く感じられ、印刷結果として好ましくないことを示す。
ステップS180においては、算出した粒状性指数GIをRAM12に記憶する。ステップS190においては、グループ分類部P1aがすべてのグループG1〜G8を着目グループとして選択した否かを判定し、すべて選択していない場合にはステップS160に戻り、次の着目グループを選択する。以上説明した処理を繰り返して実行することにより、現在の着目未格納マスク画素に関して、グループG1〜G8についての粒状性指数GIを得ることができる。ステップS200において、評価指数算出部P1cは、下記の(2)式によって評価指数EIを算出する。

前記の(2)式に示すように、評価指数EIはグループG1〜G8についての粒状性指数GI(下付文字g(g=1〜8)はグループの識別番号を示す。)の線形結合によって得られる。結合する際に、各グループG1〜G8について個別に設定された非負の重み係数αによって、粒状性指数GIが重み付けされる。すなわち、評価指数EIを得る際における各グループG1〜G8の重視度合いが重み係数αによって調整される。各グループG1〜G8の重視度合いは、プリンター20のハードウェア特性やインクの特性や印刷モード(印刷速度・印刷解像度)に応じて設定される。例えば、印刷用紙上における定着性に優れたインクを想定する場合には、ドット形成過程を評価するグループG2〜G8よりも印刷結果の粒状性を評価するグループG1の重みを大きくする等が考えられる。以上のようにして、現在の着目未格納マスク画素についての評価指数EIが得られると、ステップS210において、得られた評価指数EIをRAM12に記憶する。ステップS220では、すべての未格納マスク画素を着目未格納マスク画素として選択したか否かを判定し、すべて選択していない場合にはステップS110において次の未格納マスク画素を選択する。これにより、着目未格納マスク画素を順次シフトさせながら、各未格納マスク画素について評価指数EIを算出していくことができる。
図5Dは、RAM12において評価指数EIが順次記憶される様子を模式的に示している。図示するように、現在のディザマスクMにおいて、格納済みマスク画素(●で図示。)以外の未格納マスク画素について順次評価指数EIが記憶されていき、最終的にすべての未格納マスク画素が評価指数EIによって充填されることとなる。ステップS230では、閾値格納部P1dが最も小さい評価指数EIとなる未格納マスク画素を検出する。そして、閾値格納部P1dは、該検出した未格納マスク画素に対し現在の着目閾値Sを格納する(ステップS240)。ステップS250においては、着目閾値選択部P1bがすべての閾値を着目閾値Sとして選択したか否か(現在の着目閾値Sが255であるか否か)を判定し、すべて選択していない場合にはステップS100に戻る。これにより、ディザマスクMにおいて、着目閾値Sを小さい順に順次格納していくことができる。一方、最後の着目閾値S(255)についての処理が完了すると、ディザマスクMの作成処理が終了する。
以上のようにして作成されたディザマスクMによれば画質の良好な印刷結果を得ることができる。以下、その理由について説明する。まず、最も評価指数EIが小さくなる未格納マスク画素に着目閾値Sを格納するため、粒状性の感じられにくい印刷結果を得ることができる。また、格納する閾値が小さいマスク画素ほど、対応する位置にドットが形成される確率が高くなるということができる。本実施例では、閾値を小さい順に格納していくことにより、ドットが形成される確率が高いマスク画素を優先的に分散させることができる。従って、不特定の入力画像データを印刷した場合のドットの分散性を確保することができる。
さらに、同一走査グループ(グループG4〜G7)についても粒状性指数GIを算出し、評価指数EIに加味しているため、各主走査パスにおいて形成されるドットの分散性を確保することができる。すなわち、ほぼ同時に形成されるドットが空間的に分散されるため、インク凝集や光沢ムラやブロンズ現象等の画質劣化要因を抑えることができる。また、同一走査方向グループ(グループG2,G3)、についても粒状性指数GIを算出し、評価指数EIに加味しているため、各主走査方向ごとに形成されるドットの分散性を確保することができる。これにより、各主走査方向ごとに形成されるドットの分布に局所的な偏りが生じることが防止でき、主走査方向間でインク滴の着弾位置ずれ等が生じたときの色ムラ等を抑制することができる。
ドット形状を考慮した場合にドットが重なるマスク画素を抽出したグループ別ドットマップGD8についての粒状性指数GIも評価指数EIに加味されるため、ドットが重なるマスク画素を分散させることができる。印刷画像においてドット重なりが局所的に集中することが防止でき、インクにじみや濃度むらや色むらや光沢むらを防止することができる。このように、本実施例では、各グループG1〜G8のそれぞれについての粒状性指数GIが考慮されるため、高画質な印刷が可能なディザマスクMを作成することができる。なお、本実施例のステップS150においては、階調値が“2”以上のマスク画素に対して一様に階調値“1”を付与することにより、グループ別ドットマップGD8を作成したが、ドットが重なるマスク画素における“2”以上の階調値をそのまま使用するようにしてもよい。このようにすることにより、ドット重なり回数が大きいほど空間波の振幅を大きくすることができ、ドット重なり回数を低減させることができる。
C.変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、本発明は、以下のような変形例についてのハーフトーン処理が可能である。前記実施例では、ディザ法によってドット重なりを分散させるようにしたが、誤差拡散法によってもドット重なりを分散させることができる。
C−1.変形例1
図8は本変形例のハーフトーン処理のためにコンピューター10が実行するソフトウェア構成を示し、図9,10は、本変形例のハーフトーン処理の流れを示すフローチャートおよび模式図を示している。図8に示すように本変形例では、前実施例と同様にコンピューター10においてプリンタードライバーP2が実行されているが、プリンタードライバーP2におけるハーフトーン処理部P2cの構成が異なっている。すなわち、本変形例のハーフトーン処理部P2cは、ドット重なり判定部P2c1と閾値取得部P2c2と閾値判定部P2c3と階調誤差発生部P2c4と調整値発生部P2c5とから構成されている。本変形例においてプリンター20がC(シアン)M(マゼンタ)Y(イエロー)K(ブラック)インクが吐出可能であり、図9,10では、そのうちCインクについてハーフトーン処理部が誤差拡散法によりハーフトーン処理を行う様子が示されている。入力画像データの各画素は、Cインクのインク量(以下、dcと表記する。)を有している。図示しないが、他のMYKインクについてもインク量の階調値が色変換処理によって得られており、これらについても同様にハーフトーン処理が実行される。
図10Aは、誤差拡散処理の基本的な流れを示している。まず、ステップS300において注目画素(網掛で図示。)を選択する。本変形例では、主走査の往方向(紙面右方向)に注目画素がシフトするように注目画素を選択していき、端に到達したら1行下の画素を順に選択していくこととする。ステップS330において、閾値判定部P2c3は、注目画素のインク量の階調値dcと該注目画素についての累積階調誤差(以下、teと表記する。)との合計が、閾値thよりも大きいか否かを判定する。そして、階調値dcと累積階調誤差teとの合計が閾値thよりも大きければ該注目画素においてドットを形成し(ステップS340)、閾値th以下であれば該注目画素においてドットを形成しないこととする(ステップS345)。注目画素においてドットを形成するとした場合には、階調誤差発生部P2c4は、注目画素のインク量の階調値dcと累積階調誤差teの合計から255を減算することにより得られた階調誤差Tを4等分した拡散値を左下と直下と右下と右に隣接する周辺画素に拡散させる(ステップS350)。注目画素においてドットを形成しないとした場合には、階調誤差発生部P2c4は、注目画素のインク量の階調値dcと累積階調誤差teの合計から0を減算することにより得られた階調誤差Tを4等分した拡散値を左下と直下と右下と右に隣接する周辺画素に拡散させる(ステップS355)。累積階調誤差teは、注目画素の左上と直上と右上と左の画素に注目したときに生じた階調誤差Tの拡散値が注目画素において累積されたものである。以上の処理を最終の注目画素まで繰り返して実行することにより、誤差拡散法によるハーフトーン処理が完了する。次に、本変形例の特徴的な処理について説明する。
ステップS310において、ドット重なり判定部P2c1が図10C〜10Dのように注目画素がドットの重なり得る位置にあると判定した場合には、閾値取得部P2c2は、127にオフセット量osを加算した値(127+os)に閾値thが調整された閾値を取得する(ステップS320)。一方、図10Bのように注目画素がドットの重なる位置にない場合には、閾値取得部P2c2は、原則通り閾値thとして127を取得する(ステップS325)。ステップS310において、注目画素がドットの重なる得る位置にあるか否かをドット重なり判定部P2c1が判定するにあたり、本実施形態では、図10C〜10Dにおいて破線で示すようなドット形状を想定する。すなわち、中心の画素の右および下に1画素だけ広がるドット形状を想定する。従って、図10Cに示すように注目画素の上または左のいずれかに隣接する周辺画素にドットが形成される場合には、注目画素にドットを形成することによりドットが2重に重なることとなる。また、図10Dに示すように注目画素の上と左に隣接する周辺画素の双方にドットが形成される場合には、注目画素にドットを形成することによりドットが3重に重なることとなる。オフセット量osは、下記の(3)式によって定義される。

前記の(3)式において、Pは注目画素においてドット重なりの発生しやすさを設定するための設定値を示す、Xeは注目画素についての累積調整値を示し、Kは重み係数を示している。設定値Pは、例えば下記の(4)式によって与えられる。

前記の(4)において、dcは注目画素のインク量の階調値を示し、dcUは注目画素の直上の画素のインク量の階調値を示し、dcLは注目画素の左の画素のインク量の階調値を示している。前記の(4)式において、PWは、インク量の階調値dcを有する注目画素について、完全にランダムにハーフトーン処理が行われるとした場合にドットが3重に重なる確率(注目画素と、該注目画素の上と左に隣接する周辺画素のすべてについてドットが形成される確率)を示している。PU,PLは、注目画素について、完全にランダムにハーフトーン処理が行われるとした場合にドットが2重に重なる確率(注目画素と、該注目画素の上または左に隣接する周辺画素のいずれかについてドットが形成される確率)を示している。前記の(4)式に示すように設定値Pは、注目画素のインク量の階調値dcが大きいほど大きい値となる。さらに、前記の(3)式によれば、注目画素のインク量の階調値dcが大きいほど、オフセット量osは小さい値となり、閾値thは小さい値にオフセットされることとなる。すなわち、オフセット量osは、注目画素のインク量の階調値dcが大きいほど、ドット重なりを発生させやすくするように作用する。
図10B〜10Dに示すように、累積調整値Xeは、注目画素の左上と直上と右上と左に隣接する周辺画素に注目したときに生じた調整値Wを4等分した拡散値を累積したものである。調整値発生部P2c5は、下記の(5)式に基づいて調整値Wを算出する。

前記の(5)式において、Xrは発生値を示している。発生値Xrは、ドット重なりの発生態様に応じて異なる値に設定される。注目画素においてドットを形成するとしたことにより、ドット重なりがどのような態様となるかをドット重なり判定部P2c1が判定する(ステップS360)。ここで、図10Cに示すように注目画素においてドットを2重に重ねて形成するとした場合には発生値Xrが195とされ、図10Dに示すように3重に重ねて形成するとした場合に発生値Xrが255とされ、それ以外の場合(ドットを形成しないとした場合と、ドットを重なることなく形成する場合)には0とされる。
従って、注目画素において新たにドットを重ねて形成するとした場合には調整値Wは小さい値となり、それ以外の場合には調整値Wは比較的大きい値となる傾向を有する。この調整値Wを4等分した値が注目画素の左下と直下と右下と右に隣接する周辺画素に拡散し、これらの画素についての累積調整値Xeに反映されることとなる。前記の(3)式によれば、累積調整値Xeが小さいほど、閾値thは大きい値にオフセットされ、ドット重なりを発生させにくいように作用する。すなわち、注目画素においてドットを重ねて形成するとした場合には、注目画素の左下と直下と右下と右に隣接する周辺画素においてドットが重ねて形成されることを抑制することができる。
さらに、前記の(5)式が示すように、累積調整値Xeは寄与率を減少させながら、順次隣接する画素の調整値Wにも寄与していくため、ドット重なりが生じた画素に直接隣接する画素のみならず、ドット重なりが生じた画素から数画素離れた画素においてもドット重なりを生じさせにくくすることができる。従って、ドット重なりが生じる画素が局所的に集中することが防止でき、ドット重なりが生じる画素を全体的に分散させることができる。特に、ドットが3重に重なった場合と、ドットが2重に重なった場合とで、前者の方が発生値Xrを大きくしているため、前者の方が次にドットが重なる画素が生じることを強く抑制することができる。ただし、ドットが3重に重なった場合と、ドットが2重に重なった場合とで、必ずしも発生値Xrを異ならせる必要はなく、両者の場合の発生値Xrを同じとしてもよい。また、調整値Wを4個の周辺画素に拡散させることとしたが、より多く・遠くの画素に拡散させてもよい。なお、重み係数Kは、オフセット量osの変動幅を調整する係数であり、例えばオフセット量osを全体の数%〜数十%に調整するように設定される。入力画像データに対する印刷画像の非忠実性が顕在化しない程度に重み係数Kを大きくするのが望ましい。以上説明したように、本変形例によれば、誤差拡散処理によっても、ドット形状を予測し、ドットが重なりを空間的に分散させることができる。なお、オフセット量osが本発明の評価指数に相当する。
C−2.変形例2
以上においては、インク滴が理想的な位置に着弾してドットが形成された場合のドット重なりを予測する実施例・変形例を示したが、インク滴が理想的な位置に着弾しない場合に生じるドット重なりを分散させるようにしてもよい。
図11において、インク滴の着弾位置ずれ(本発明の走査方向間位置ずれに相当。)を模試的に説明している。図11Aでは印刷用紙の正常な状態を示し、図11B,11Cでは印刷用紙の異常な状態が示されている。図11Bの例では、印刷用紙が正常位置よりも印刷ヘッド21に近い状態で印刷が行われている。このような状態で、印刷ヘッド21が往方向に主走査しながらインク滴を吐出すると、本来の着弾位置よりも復方向にずれた位置にドット(黒色で図示。)が形成されることとなる。また、印刷ヘッド21が復方向に主走査しながらインク滴を吐出すると、本来の着弾位置よりも往方向にずれた位置にドット(白色で図示。)が形成されることとなる。従って、往方向の主走査パスで形成されるドットと、復方向の主走査パスで形成されるドットの位置関係が変動し、意図した印刷画像が形成できなくなる。例えば、往方向の主走査パスで形成されるドットに対して、復方向の主走査パスで形成されるドットが往方向側(紙面左側)から隣接するドット対(以下、復−往ドット対と表記する。)では、ドットが本来よりも接近することとなる。復−往ドット対のドットが接近し、重なった場合にはドットによる被覆面積が減少することとなる。反対に、往方向の主走査パスで形成されるドットに対して、復方向の主走査パスで形成されるドットが復方向側(紙面右側)から隣接する隣接するドット対(以下、往−復ドット対と表記する。)では、ドットが本来よりも離反することとなる。
一方、図11Cの例では、印刷用紙が正常位置よりも印刷ヘッド21に遠い状態で印刷が行われている。この場合、図11Bの例とは反対に、復−往ドット対ではドットが本来よりも離反し、往−復ドット対ではドットが本来よりも接近することとなる。往−復ドット対のドットが接近し、重なった場合にはドットによる被覆面積が減少することとなる。ドットによる被覆面積の変動を抑えるには、図11Bの場合には復−往ドット対の数を減少させ、図11Cの場合には往−復ドット対の数を減少させるのが望ましい。しかしながら、図11Bの状態のみを考慮して復−往ドット対の数を減少させたとすると、減少した復−往ドット対を補完して往−復ドット対が増加することとなり、図11Cの状態において著しい被覆面積の変動が生じてしまう。同様に、図11Cの状態のみを考慮して往−復ドット対の数を減少させたとすると、図11Bの状態において著しい被覆面積の変動が生じてしまう。従って、実際の印刷において、図11B,11Cの状態が双方とも生じ得ることを考慮すると、復−往ドット対と往−復ドット対の数を同程度としておくことが望ましい。
また、復−往ドット対が局所的に集中して存在すると、図11Bの状態における被覆面積の変動が濃度むらや色むらや光沢むらとして顕在化してしまう。同様に、往−復ドット対が局所的に集中して存在すると、図11Cの状態における被覆面積の変動が濃度むらや色むらや光沢むらとして顕在化してしまう。従って、復−往ドット対と往−復ドット対はできるだけ分散させるようにするのが望ましい。本変形例では、復−往ドット対と往−復ドット対の数を同等とし、かつ、復−往ドット対と往−復ドット対を空間的に分散させるようなハーフトーン処理が実現可能なディザマスクを作成する。以下、本変形例におけるディザマスク作成処理について説明する。
図12は、本変形例におけるディザマスク作成処理の流れを示している。本変形例では、前実施例とほぼ同様の処理を行うが、前実施例のステップS140〜S200については異なる処理を行うようにしている。まず、前実施例と同様のステップS130が完了すると、ステップS140Aにおいてドットマップ作成部P1c1がグループG9,G10のグループ別ドットマップGD9,GD10を作成する。グループ別ドットマップGD9,GD10は、主走査パスの走査方向が往方向のマスク画素によって構成されるグループ別ドットマップGD2と、主走査パスの走査方向が復方向のマスク画素によって構成されるグループ別ドットマップGD3とに基づいて作成される。
図13は、グループ別ドットマップGD9,GD10が作成される様子を示している。まず、グループ別ドットマップGD2,GD3を取得し、グループ別ドットマップGD3を1マスク画素分だけ往方向および復方向にずらしたドットマップを生成する。そして、グループ別ドットマップGD2に対して、グループ別ドットマップGD3を往方向および復方向にずらしたドットマップを重ね合わせる(各マスク画素の階調値を重畳する)。さらに、ステップS150Aにおいて、重ね合わせたドットマップから階調値が“2”以上のマスク画素を抽出(階調値が“2”以上のマスク画素のみに階調値“1”を付与し、それ以外のマスク画素の階調値を“0”とする。)することにより、グループ別ドットマップGD9,GD10を作成する。図11B,11Cにおいてインク滴の着弾位置が1マスク画素分だけずれることを想定すると、グループ別ドットマップGD9において階調値“1”を有するマスク画素は、図11Cの状態において重なる往−復ドット対を意味するということができる。同様に、グループ別ドットマップGD10において階調値“1”を有するマスク画素は、図11Bの状態において重なる復−往ドット対を意味するということができる。
以上のようにしてグループ別ドットマップGD9,GD10が作成できると、ステップS170Aにおいて分散性指数算出部P1c3が各グループ別ドットマップGD1〜G7,GD9〜GD10についての粒状性指数GIを前記の(1)式によって算出する。ステップS180Aにおいては、算出した粒状性指数GIをRAM12に記憶する。ステップS190Aにおいては、グループ分類部P1aがすべてのグループG1〜G7,G9〜G10を着目グループとして選択した否かを判定し、すべて選択していない場合にはステップS160Aに戻り、次の着目グループを選択する。
ステップS200Aにおいて、評価指数算出部P1cは、個数評価指数NIを算出する。個数評価指数NIは、グループ別ドットマップGD9において階調値が“1”となっているマスク画素の個数から、グループ別ドットマップGD10において階調値が“1”となっているマスク画素の個数を引いた値の絶対値によって定義される。次のステップS200Bにおいては、下記の(6)式によって評価指数EIを算出する。

前記の(6)式に示すように、評価指数EIは、グループG1〜G7,G9〜G10についての粒状性指数GIの線形結合によって得られる第1項と、個数評価指数NIを重み係数αEIによって重み付けた第2項との合計によって算出される。なお、本変形例では、g=1〜7,9〜10となる。以降の処理は、前実施例と同様である。
前記の(6)式の評価指数EIによれば、グループ別ドットマップGD9,GD10における粒状性指数GIも良好なディザマスクMを作成することができる。上述したように、グループ別ドットマップGD9,GD10は、それぞれ往−復ドット対と復−往ドット対の空間分布を表しているため、これらについての粒状性指数GIを評価指数EIに加味することにより、往−復ドット対と復−往ドット対を分散させることができる。さらに、個数評価指数NIは往−復ドット対と復−往ドット対の個数が同等になるほど小さくなる性質を有しているため、個数評価指数NIを評価指数EIに加味することにより、往−復ドット対と復−往ドット対の個数を同等とすることができる。従って、本変形例によって作成されたディザマスクによれば、濃度むらや色むらや光沢むらを抑えた印刷を実現することができる。なお、本変形例では主走査方向の着弾位置ずれのみに注目することとしたが、副走査方向の着弾位置ずれ(紙送り誤差)を想定してもよい。すなわち、副走査方向にグループ別ドットマップGD4〜G7をずらして重ね合わせることにより、新たなグループ別ドットマップを作成するようにしてもよい。また、ずれ量も1マスク画素分としたが、より大きなずれ量を想定してもよい。次の変形例3では、本変形例と同様な効果を得ることができる誤差拡散法を説明する。
C−3.変形例3
図14,15は本変形例のハーフトーン処理の流れを示すフローチャートおよび模式図を示している。本変形例を実現するハードウェア・ソフトウェア構成は前変形例1とほぼ同様である。図15Aに示すように誤差拡散法の基本的手順は、前記変形例1と同様である。本変形例では、127にオフセット量osを加算した値(127+os)が閾値thとして取得される(ステップS420)。オフセット量osは、下記の(7)式によって定義される。

前記の(7)式において、Ceは注目画素において復−往ドット対と往−復ドット対の発生しやすさを設定するための累積調整値を示す。累積調整値Ceは、各画素において発生した調整値Cの拡散値を累積した値であり、調整値Cは下記の(8)式によって与えられる。

前記の(8)式において、Crは発生値を示している。本変形例においては、発生値Crは、ドット対の発生態様に応じて異なる値に設定される。注目画素においてドットを形成するとしたことにより、どのようなドット対が発生するかをドット重なり判定部P2c1が判定する(ステップS460)。図15Cに示すように、注目画素において復−往ドット対を生じさせる場合には発生値Crは255とされる(ステップS473)。図15Dに示すように、注目画素において往−復ドット対を生じさせる場合には発生値Crは−255とされる(ステップS470)。それ以外の場合(ドットを形成しないとした場合と、図15Bに示すように左側にドットが隣接しないドットを形成する場合)には0とされる(ステップS476)。ここで、注目画素において復−往ドット対を発生させるとは、注目画素の左側の画素についてドットが形成され、かつ、該左側の画素のドットが復方向の主走査パスによって形成されるものであり、かつ、注目画素においてドットを形成する場合である。なお、左側の画素のドットが復方向の主走査パスによって形成されるか否かは、パス分解マトリックスに基づいて特定することができる。前実施例と同様のパス分解マトリックスを使用する場合、復方向は偶数列に対応する。注目画素において往−復ドット対を発生させるとは、注目画素の左側の画素についてドットが形成され、かつ、該左側の画素のドットが往方向の主走査パスによって形成されるものであり、かつ、注目画素においてドットを形成する場合である。
注目画素において、復−往ドット対を発生させると、発生値Crとして255が調整値Cに加算される。そのため、注目画素の左下と直下と右下と右に隣接する周辺画素には調整値Cを4等分した拡散値が拡散し、該周辺画素についての累積調整値Ceに加味されることとなる。累積調整値Ceに比例するオフセット量osが閾値thに加算されるため、復−往ドット対の周辺にはドットが発生することが抑制される。一方、注目画素において、往−復ドット対を発生させると、発生値Crとして−255が調整値Cに加算されるため、往−復ドット対の周辺にはドットが発生することが促進される。従って、往−復ドット対を発生させた注目画素の次に処理する右側に隣接する画素においてはドットが発生しやすくなる。すなわち、次の注目画素となる右側の隣接画素において復−往ドット対が発生しやすくなる。上述したとおり、復−往ドット対が発生すると、復−往ドット対の周辺にはドットが発生することが抑制されるため、次に発生する復−往ドット対や往−復ドット対を離れた位置とすることができる。これにより、復−往ドット対と往−復ドット対を一対一で発生させ、かつ、復−往ドット対と往−復ドット対が局所的に集中しないようにすることができる。従って、本変形例の誤差拡散法によれば、濃度むらや色むらや光沢むらを抑えた印刷を実現することができる。なお、オフセット量osおよび累積調整値Xeが本発明の評価指数に相当する。
C−4.変形例4
図16は、本変形例におけるハーフトーン処理において使用されるディザマスクM(16行16列)を示している。本変形例においてもプリンター20がCMYKインクを吐出可能であり、図16では、そのうちCインクとMインクについてのディザマスクMを模式的に示している。本変形例でも、ディザマスクMを参照しながら、入力画像データの各画素についてのドット形成の可否を判断する。CインクとMインクは、共通のディザマスクMを参照してハーフトーン処理を行うが、ディザマスクMにおいて参照するマスク画素がCインクとMインクとで異なっている。本変形例では、Mインクについて縦方向および横方向にディザマスクMの縦幅および横幅の半分だけずれた位置のマスク画素を参照することとする。
図16AではディザマスクMを縦方向および横方向の2等分線によって4等分することにより、ディザマスクMを領域1〜4に分割して示している。ある注目画素に関して、Cインクについて領域1における座標(x,y)のマスク画素を参照する場合、Mインクについては座標(x+8,y+8)のマスク画素が参照される。従って、Mインクについては領域4のマスク画素が参照されることとなる。ある注目画素に関して、Cインクについて領域2における座標(x,y)のマスク画素を参照する場合、Mインクについては座標(x−8,y+8)のマスク画素が参照される。従って、Mインクについては領域3のマスク画素が参照されることとなる。ある注目画素に関して、Cインクについて領域3における座標(x,y)のマスク画素を参照する場合、Mインクについては座標(x+8,y−8)のマスク画素が参照される。従って、Mインクについては領域2のマスク画素が参照されることとなる。ある注目画素に関して、Cインクについて領域4における座標(x,y)のマスク画素を参照する場合、Mインクについては座標(x−8,y−8)のマスク画素が参照される。従って、Mインクについては領域1のマスク画素が参照されることとなる。以上のことから、概念的にMインクについては図16Bのように領域1〜4が配列したディザマスクMを使用することとなる。実体的には、参照する座標(x,y)をオフセットさせればよいため、ディザマスクMをCインクとMインクのために記憶・作成しなくても済む。
図17は、本変形例におけるディザマスク作成処理の流れを示している。本変形例では、前実施例とほぼ同様の処理を行うが、前実施例のステップS140〜S190については異なる処理を行うようにしている。まず、前実施例と同様にステップS130が完了すると、ステップS140Bにおいてドットマップ作成部P1c1がグループG11のグループ別ドットマップGD11を作成する。グループ別ドットマップGD11は、全マスク画素によって構成されるグループ別ドットマップGD1に基づいて作成される。
図18は、グループ別ドットマップGD11が作成される様子を示している。まず、グループ別ドットマップGD1を取得し、グループ別ドットマップGD1と、該グループ別ドットマップGD1を縦方向と横方向にそれぞれディザマスクMの縦幅と横幅の半分だけずらしたMインクについてのドットマップを作成する。グループ別ドットマップGD1においても図16Aと同様に領域1〜4を形成し、領域1〜4を図16Bに示すMインクのディザマスクMの配列に合わせて移動させればよい。Mインクについてのドットマップが作成できると、グループ別ドットマップGD1とMインクについてのドットマップとを重ね合わせる(各マスク画素の階調値を重畳する)。さらに、ステップS150Bにおいて、重ね合わせたドットマップから階調値が“2”以上のマスク画素を抽出(階調値が“2”以上のマスク画素のみに階調値“1”を付与し、それ以外のマスク画素の階調値を“0”とする。)することにより、グループ別ドットマップGD11を作成する。グループ別ドットマップGD11は、着目閾値Sに1を加えたインク量の階調値を有するベタ入力画像データをハーフトーン処理した場合に、CインクのドットとMインクのドットが重なる位置を示すものである。
以上のようにしてグループ別ドットマップGD11が作成できると、ステップS170Bにおいて分散性指数算出部P1c3が各グループ別ドットマップGD1〜G7,GD11についての粒状性指数GIを前記の(1)式によって算出する。ステップS180Bにおいては、算出した粒状性指数GIをRAM12に記憶する。ステップS190Bにおいては、グループ分類部P1aがすべてのグループG1〜G7,G11を着目グループとして選択した否かを判定し、すべて選択していない場合にはステップS160Bに戻り、次の着目グループを選択する。以降の処理は、前実施例と同様である。
本変形例では、グループ別ドットマップGD11に基づく粒状性指数GIを評価指数EIに加味するため、CインクのドットとMインクのドット重なりの発生を抑制し、分散させるような印刷が可能なディザマスクMを作成することができる。各インクのドットは独立して形成されることが望ましく、異なるインクが混合することにより、意図しない印刷結果(発色等)となる。本変形例では、CインクのドットとMインクのドット重なりの発生を抑制されるため、意図通りの印刷結果を得ることができる。また、CインクのドットとMインクのドット重なりが分散されるため、CインクとMインクの混合を目立ちにくくすることができきる。また、複数インク間のインクにじみ等も抑制ことができる。本変形例では、CインクとMインクの関係を説明したが、ディザマスクMを共用する限り他のインクについても同様の処理を行うことができる。また、ディザマスクMを縦方向と横方向に半分ずつずらすものを例示したが、一方向のみにずらす場合でも本変形例の手法を適用することができる。さらに、ディザマスクMを反転させたり回転させた上で共用する場合でも本変形例の手法を適用することができる。
C−5.変形例5
図19,20は本変形例のハーフトーン処理の流れを示すフローチャートおよび模式図を示している。本変形例を実現するハードウェア・ソフトウェア構成は前変形例1とほぼ同様である。本変形例においてもプリンター20がC(シアン)M(マゼンタ)Y(イエロー)K(ブラック)インクが吐出可能であり、図19,20では、そのうちMインクについてハーフトーン処理部が誤差拡散法によりハーフトーン処理を行う様子が示されている。Mインクのハーフトーン処理を行う段階で、Cインクについてのハーフトーン処理は完了しており、Cインクについてのハーフトーンデータは例えばRAM12に記憶さている。なお、Cインクについてのハーフトーン処理は、ディザ法、誤差拡散法のいずれであってもよい。誤差拡散法の基本的手順は、図20Aに示すように前記変形例1と同様である。
閾値thは原則的に127と設定されるが、図20Cに示すように注目画素についてCインクのドットが形成される場合には、127にオフセット量osを加算した値(127+os)に調整された閾値thが取得される(ステップS520)。一方、図20Bに示すように注目画素についてCインクのドットが形成されない場合には、閾値thは原則通り127とされる(ステップS525)。オフセット量osは、下記の(9)式によって定義される。

前記の(3)式において、Qは注目画素においてCインクとMインクのドット重なりの発生しやすさを設定するための設定値を示す、Xeは注目画素についての累積調整値を示し、Kは重み係数を示している。設定値Qは、下記の(10)式または(11)式によって与えられる。


前記の(10),(11)式に示すように設定値Qは、完全にランダムにドットの形成可否が決定されるとした場合に、CインクとMインクのドットが重なる確率に対応する値であり、注目画素のインク量の階調値dc,dmが大きいほど大きい値となる。さらに、前記の(9)式によれば、注目画素のインク量の階調値dmが大きいほど、オフセット量osは小さい値となり、閾値thは小さい値にオフセットされることとなる。すなわち、オフセット量osは、注目画素のインク量の階調値dmが大きいほど、ドット重なりを発生させやすくするように作用する。
図20Cに示すように、累積調整値Xeは、注目画素の左上と直上と右上と左に隣接する周辺画素に注目したときに生じた調整値Wを4等分した拡散値を累積したものである。この調整値Wは、下記の(12)式によって与えられる。

前記の(12)式において、Xrは発生値を示している。発生値Xrは、注目画素におけるCインクとMインクのインク間ドット重なりの発生有無に応じて異なる値に設定される。注目画素においてドットを形成するとしたことにより、インク間ドット重なりが発生するか否かドット重なり判定部P2c1が判定する(ステップS560)。ここで、図20Cに示すように、注目画素においてMインクのドットをCインクのドットに重ねて形成するとした場合には発生値Xrは255とされ(ステップS570)、それ以外の場合(ドットを形成しないとした場合と、ドットを重なることなく形成する場合)には発生値Xrは0とされる(ステップS575)。
従って、注目画素においてMインクのドットをCインクのドットに重ねて形成するとし調整値Wは小さい値となり、それ以外の場合には調整値Wは比較的大きい値となる傾向を有する。この調整値Wを4等分した値が注目画素の左下と直下と右下と右に隣接する周辺画素に拡散し、これらの画素についての累積調整値Xeに反映されることとなる。前記の(9)式によれば、累積調整値Xeが小さいほど、閾値thは大きい値にオフセットされ、CインクとMインクのドット重なり(インク間ドット重なり)を発生させにくいように作用する。すなわち、注目画素においてMインクのドットをCインクのドットに重ねて形成するとした場合には、注目画素の左下と直下と右下と右に隣接する周辺画素においてCインクとMインクのドット重なりの発生を抑制することができる。
さらに、累積調整値Xeは寄与率を減少させながら、順次隣接する画素の調整値Wにも寄与していくため、CインクとMインクのドット重なりが生じた画素に直接隣接する画素のみならず、CインクとMインクのドット重なりが生じた画素から数画素離れた画素においてもCインクとMインクのドット重なりを生じさせにくくすることができる。従って、CインクとMインクのドット重なりが生じる画素が局所的に集中することが防止でき、ドット重なりが生じる画素を全体的に分散させることができる。なお、重み係数Kは、オフセット量osの変動幅を調整する係数であり、例えばオフセット量osを全体の数%〜数十%に調整するように設定される。入力画像データに対する印刷画像の忠実性が顕在化しない程度に重み係数Kを大きくするのが望ましい。以上説明したように、本変形例によれば、誤差拡散処理によっても、CインクとMインクのドット重なりを予測し、CインクとMインクのドットが重なりを空間的に分散させることができる。なお、オフセット量osおよび累積調整値Xeが本発明の評価指数に相当する。
C−6.変形例6
さらに、上述した実施例のステップS170の代わりにステップS170Cを実行し、該ステップS170Cにおいて粒状性指数GIの代わりにポテンシャル値PIを算出するようにしてもよい。
図21は、ポテンシャル値PIを算出する様子を模式的に示している。グループ別ドットマップGD1〜GD8においてドットが形成されたマスク画素を中心にポテンシャルを生成する。図21の例では、ガウス関数状のポテンシャルを生成している。ステップS170Cでは、ドットが形成された各マスク画素を中心についてポテンシャルを順次生成していくことにより、各未格納マスク画素のポテンシャル値PIを算出する。ポテンシャル値PIを粒状性指数GIと同様に線形結合することにより、評価指数EIを得ることができる。ポテンシャル値PIによれば、ドット同士が接近することが抑制され、結果的にドットを空間的に分散させることができる。また、ポテンシャル値PIによればフーリエ変換を要しないため、高速にディザマスクMを作成することができる。
C−7.変形例7
上述した実施例のステップS170では、分散性指数算出部P1c3がドットの分散性を評価する指数として粒状性指数GIを算出するようにしたが、他の指数を算出するようにしてもよい。本変形例では、図4に示した前実施例のステップS170の代わりにステップS170Dを実行する。本変形例のステップS170Dにおいては、粒状性指数GIの代わりにRMS(root mean square)粒状度RIを算出する。RMS粒状度RIは、各グループG1〜G8のグループ別ドットマップGD1〜GD8の各マスク画素の階調値に関する二乗平均平方根である。RMS粒状度RIによればフーリエ変換を要しないため、高速にディザマスクMを作成することができる。RMS粒状度RIを粒状性指数GIと同様に線形結合することにより、評価指数EIを得ることができる。なお、RMS粒状度RIを算出する際に、グループ別ドットマップGD1〜GD8の各マスク画素の階調値に対して、空間的な重み付けを行うようにしてもよい。例えば、上述したVTFのように空間周波数の視覚感度特性に応じた重み付けを行った上で、RMS粒状度RIを算出するようにしてもよい。
C−8.変形例8
前実施例では、グループG1〜G8について評価するようにしたが、これらの一部を考慮しないようにしてもよい。例えば、グループG2,G3についての評価を省略することにより、高速にディザマスクMを作成するようにしてもよい。また、前実施例では、各ドットが一様なドット形状となることを前提としてグループ別ドットマップGD8を生成するようにしたが、例えば複数サイズのドットが形成可能なプリンターを想定した場合には、複数サイズのドット形状を付加してもよい。また、インク滴の着弾方向を考慮して、主走査方向に長径を有する楕円状のドット形状をグループ別ドットマップGD8において付加させてもよい。
C−9.変形例9
また、実施例および各変形例を独立したものとして例示したが、これらの技術的思想を組み合わせて実施することも可能である。例えば、上述した実施例および各変形例のグループG1〜G11についてのグループ別ドットマップGD1〜GD11に基づいて算出した粒状性指数GIやポテンシャル値PIをすべて線形結合した評価指数EIを使用してディザマスクMを作成するようにしてもよい。このようにすることにより、ドット形状に起因するドット重なり、インク滴の着弾位置ずれに起因するドット重なり、インク間のドット重なりのすべてを考慮したディザマスクMを作成することができる。また、いずれの要因を考慮すべきかは、プリンター20の性能やインクや印刷用紙の特性に応じて異なるため、プリンター20の性能やインクや印刷用紙の特性に応じてグループ別ドットマップGD8〜GD11のうちいずれを評価指数EIに組み入れるかを切り換えるようにしてもよい。また、ドット形状に起因するドット重なり、インク滴の着弾位置ずれに起因するドット重なり、インク間のドット重なりを個別に評価するためのグループ別ドットマップGDを作成する態様に限らず、これらを総合的に評価可能なグループ別ドットマップGDを作成することとしてもよい。例えば、変形例2のステップS140Aにおいてドットマップ作成部P1c1がグループ別ドットマップGD9,GD10を作成する際に、ドット形状を付加した上でドットマップをずらすようにすれば、ドット形状とインク滴の着弾位置ずれの双方に起因するドット重なりを評価可能なグループ別ドットマップGD9,GD10を作成することができる。
C−10.変形例10
以上の実施例および変形例においては単一の印刷ヘッド21が複数回主走査することにより印刷画像を形成するものを例示したが複数の印刷ヘッドを用いたい印刷に対しても本発明の手法を適用することができる。ここでは、図3に示したパス分解マトリックスをヘッド分解マトリックスであると考え、主走査パス(1,3)が第1の印刷ヘッドに割り振られ、主走査パス(2,4)が第2の印刷ヘッドに割り振られる印刷を想定する。この場合、前実施例の主走査パス(1,3)に対応するグループ別ドットマップGD2は第1の印刷ヘッドによって形成されるドットの分布を示し、主走査パス(2,4)に対応するグループ別ドットマップGD3は第2の印刷ヘッドによって形成されるドットの分布を示すこととなる。従って、図13に示すようにグループ別ドットマップGD2,G3をずらして重ね合わせることにより作成されるグループ別ドットマップGD9,G10は、第1の印刷ヘッドと第2の印刷ヘッドの位置ずれによって生じるドット重なりを表すこととなる。従って、グループ別ドットマップGD9,G10の粒状性指数GIを評価指数EIに加味することにより、第1の印刷ヘッドと第2の印刷ヘッドの位置ずれが生じた場合でも色むら等を防止することができる。
C−11.変形例11
変形例4では、CMインク間でディザマスクMを共用し、ディザマスクMの参照位置をインク間でずらすようにしたが、各インクについてディザマスクを個別に用意するようにしてもよい。例えば、すでにCインクについてのディザマスクMが用意されている場合に、MインクについてのディザマスクMを作成する際に本発明の手法を適用することができる。本変形例では、図18に示すグループ別ドットマップGD1を、作成中のMインクのディザマスクMを使用して着目閾値Sに1を加えたMインクのインク量のベタ画像データをハーフトーン処理することにより得られたものであると考える。そして、図18に示すMインクのドットマップを、作成済みのCインクのディザマスクMを使用して着目閾値Sに1を加えたCインクのインク量のベタ画像データをハーフトーン処理することにより得られたものであると考える。これらのドットマップを重畳することにより、CMインクのドット重なりを評価することができる。このようにすることにより、CMインク間で異なるディザマスクMを使用する場合でも、複数インク間のドット分散性に優れる印刷を実現することができる。
C−12.変形例12
前実施例では、コンピューター10においてハーフトーン処理を行うこととしたが、本発明の手法によって作成されたディザマスクMをプリンターに組み込み、該プリンターにおいてハーフトーン処理を行うようにしてもよい。この場合も、良好な画質を実現することができる。
10…コンピューター、11…CPU、12…RAM、13…ROM、14…HDD、15…GIF、16…VIF、17…IIF、18…バス、M…ディザマスク、G1〜G8…グループ、P1…ディザマスク作成プログラム、P1a…グループ分類部、P1b…着目閾値選択部、P1c…評価指数算出部、P1c1…ドットマップ作成部、P1c2…ドット形状付加部、P1c3…分散性指数算出部、P1d…閾値格納部、P2…プリンタードライバー、P2a…画像データ生成部、P2b…色変換処理部、P2c…ハーフトーン処理部、P2d…パス分解処理部。

Claims (7)

  1. 画像データを構成する各画素のドット発生率に基づいて、各画素についてドットの形成可否を判定するハーフトーン処理を実行するハーフトーン手段と、前記ドットの形成可否に基づいて記録媒体上にドットを形成する印刷手段とを具備する印刷装置であって、
    前記ハーフトーン手段は、
    前記印刷媒体上において複数のドットが重なるドット重なりの発生をドット形状に基づいて予測し、該ドット重なりに応じた評価指数に基づいて前記ハーフトーン処理を実行することを特徴とする印刷装置。
  2. 前記評価指数は、前記記録媒体上における前記ドット重なりの分散性に基づくことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
  3. 前記評価指数は、前記ドット重なりにおけるドット重なり回数に基づくことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の印刷装置。
  4. 前記ハーフトーン処理は、ディザ法によるものであり、該ディザ法において使用するディザマスクが前記評価指数に基づいて作成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置。
  5. 前記ハーフトーン処理は、誤差拡散法によるものであり、該誤差拡散法においてドットの形成可否を決定する閾値が前記評価指数に応じて変動することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置。
  6. 該誤差拡散法において、注目画素について前記ドット重なりを発生させるとしたとき、該注目画素の周辺の画素についての前記閾値をドットが発生しにくいように調整することを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
  7. 画像データを構成する各画素のドット発生率に基づいて、各画素についてドットの形成可否を判定するハーフトーン処理を実行するハーフトーン工程と、前記ドットの形成可否に基づいて記録媒体上にドットを形成する印刷工程とを行う印刷方法であって、
    前記ハーフトーン工程では、
    前記印刷媒体上において複数のドットが重なるドット重なりの発生をドット形状に基づいて予測し、該ドット重なりに応じた評価指数に基づいて前記ハーフトーン処理を実行することを特徴とする印刷方法。
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