JP2010236690A - 変速機の導風構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】変速機ケース内にスムーズに外気を流すことができる変速機の導風構造を提供する。
【解決手段】外気吸気口115は、駆動プーリ63の上方で変速機ケース61Aに設けられ、外気排気口116は、従動プーリ67の上方で変速機ケース61Aに設けられ、変速機ケース61Aの外気吸気口115と外気排気口116との間に、外気の流れ調整用のガイド部材122を設けた。
【選択図】図5

Description

本発明は、変速機の導風構造に関する。
車両に搭載されるエンジン(内燃機関とも言う)には、クランクケースに支持されるクランク軸と、クランク軸の一側に設けられる変速機と、クランク軸の他側に設けられる発電機と、変速機で変速された回転を出力軸に伝達する動力伝達機構とを備えるものがある。
この種のエンジンの変速機には、クランク軸の一側に設けられる駆動プーリと、内燃機関に支持される従動軸の一側に設けられる従動プーリと、駆動プーリと従動プーリ間に掛けられたベルトとを備えたベルト式の変速機がある(例えば、特許文献1参照)。
この変速機では、駆動プーリに一体に回転する送風ファンを設け、変速機ケース前上部に上方に指向する吸気口を設け、変速機ケースの後下部に下方に指向する排気口を設け、送風ファンにより吸気口から外気を取り入れて排気口から排気させるようにしている。
特開2007−203827号公報
しかしながら、従来の構成では、吸気口が変速機ケース前上部で上方に指向し、排気口が変速機ケースの後下部で下方に指向しているため、吸気口から下向きに入った外気がケース内壁に沿って流れたとしても、この外気の向きと排気口の向きとが異なっており、排気し難いことが考えられる。また、変速機ケース内の外気が、排気口手前で従動プーリの回転の影響を受けることが予想され、かかる場合にも、駆動プーリの回転に沿って流れる外気の向きと排気口の向きとが異なるため、スムーズに排気されないことが予想される。
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、変速機ケース内にスムーズに外気を流すことができる変速機の導風構造を提供することを目的としている。
上述した課題を解決するため、本発明は、内燃機関に支持されるクランク軸の一側に設けられる駆動プーリと、内燃機関に支持される従動軸の一側に設けられる従動プーリと、駆動プーリと従動プーリ間に掛けられたベルトとを備えるベルト式の変速機であって、駆動プーリに一体に回転する送風ファンを設けると共に変速機ケースに吸気口と排気口とを設け、送風ファンにより吸気口から外気を取り入れて排気口から排気させる変速機の導風構造において、前記吸気口は、前記駆動プーリの上方で前記変速機ケースに設けられ、前記排気口は、前記従動プーリの上方で前記変速機ケースに設けられ、前記変速機ケースの前記吸気口と前記排気口との間に、外気の流れ調整用のガイド部材を設けたことを特徴とする。
この発明によれば、吸気口は、駆動プーリの上方で変速機ケースに設けられ、排気口は、従動プーリの上方で変速機ケースに設けられ、変速機ケースの吸気口と排気口との間に、外気の流れ調整用のガイド部材を設けたので、変速機ケース内にスムーズに外気を流すことができる。
上記構成において、前記内燃機関は、クランクケースを備え、このクランクケースに前記クランク軸を支持し、前記変速機は、前記クランクケースの右側方に設けられ、前記駆動プーリは、右側面視で時計回りに回転するようにしてもよい。この構成によれば、吸気口からの外気を、変速機ケースの内壁に沿わせて送ることができ、排気口から排気し易くすることができ、さらに、駆動プーリと同方向に回転する従動プーリによって外気を排気口へより導風し易くできる。
また、上記構成において、前記変速機ケースの一側方には、カバー部材が設けられ、このカバー部材には、前記変速機ケースに設けられるガイド部材と対向するようにカバー側ガイド部材が設けられるようにしてもよい。この構成によれば、外気の流れ調整用のガイド部材の面積を広く確保でき、変速機ケース内の外気を流れをよりスムーズにできる。
また、上記構成において、前記ガイド部材と前記カバー側ガイド部材とは、前記変速機ケースと前記カバー部材の各々の上部より下方に延出するようにしてもよい。この構成によれば、駆動プーリの上部側から従動プーリ側への外気の流れを遮断でき、また、ガイド部材とカバー側ガイド部材とをシンプルな形状にでき、製作が容易である。
また、上記構成において、前記ガイド部材と前記カバー側ガイド部材との間には、前記ベルトが通るスペースを設けてもよい。この構成によれば、ベルトを避けつつガイド部材とカバー側ガイド部材とを配置できる。
また、上記構成において、前記ガイド部材と前記カバー側ガイド部材とは、前記クランク軸と前記従動軸との間であって、前記駆動プーリと前記従動プーリとの下部間をつなぐ接線よりも側面視で上方に位置するようにしてもよい。この構成によれば、少なくとも変速機ケースの内底近傍を流れる外気を排気側へ流すことができ、スムーズに排気させることができる。
また、上記構成において、前記ガイド部材と前記カバー側ガイド部材とは、後下方に指向するようにしてもよい。この構成によれば、同長さで前下方に指向する場合よりも、変速機ケースの内底に沿って流れる外気以外の外気を効率よく遮断することができる。
また、上記構成において、吸気口と前記排気口とは、平行に延出するようにしてもよい。この構成によれば、吸気経路と排気経路を直線的にして排気抵抗を減らすことができ、また、鋳造時にスライド型を同一方向に抜くことができ、吸気口と排気口が形成しやすい。
また、前記吸気口と前記排気口が車体斜め後方向きに延出するようにしてもよい。この構成によれば、省スペースでの配置を可能とし、導風方向が極端に曲がることなくスムーズな吸排気にすることができる。
また、前記吸気口と前記排気口の断面形状が楕円であり、少なくとも一方の長径方向が斜めであるようにしてもよい。この構成によれば、内側のスペースを確保でき、車体側の部品を避けることができる。
本発明では、吸気口は、駆動プーリの上方で変速機ケースに設けられ、排気口は、従動プーリの上方で変速機ケースに設けられ、変速機ケースの吸気口と排気口との間に、外気の流れ調整用のガイド部材を設けたので、変速機ケース内にスムーズに外気を流すことができる。
また、内燃機関は、クランクケースを備え、このクランクケースにクランク軸を支持し、変速機は、クランクケースの右側方に設けられ、駆動プーリは、右側面視で時計回りに回転するようにしたので、吸気口からの外気を、変速機ケースの内壁に沿わせて送ることができ、排気口から排気し易くすることができ、さらに従動プーリによって外気を排気口へより導風し易くできる。
また、変速機ケースの一側方には、カバー部材が設けられ、このカバー部材には、変速機ケースに設けられるガイド部材と対向するようにカバー側ガイド部材が設けられるので、外気の流れ調整用のガイド部材の面積を広く確保でき、変速機ケース内の外気を流れをよりスムーズにできる。
また、ガイド部材とカバー側ガイド部材とは、変速機ケースとカバー部材の各々の上部より下方に延出するので、駆動プーリの上部側から従動プーリ側への外気の流れを遮断できる。
また、ガイド部材とカバー側ガイド部材との間には、ベルトが通るスペースを設けるので、ベルトを避けつつガイド部材とカバー側ガイド部材とを配置できる。
また、ガイド部材とカバー側ガイド部材とは、クランク軸と従動軸との間であって、駆動プーリと従動プーリとの下部間をつなぐ接線よりも側面視で上方に位置するので、少なくとも変速機ケースの内底近傍を流れる外気を排気側へ流すことができ、スムーズに排気させることができる。
また、ガイド部材とカバー側ガイド部材とは、後下方に指向するので、同長さで前下方に指向する場合よりも、変速機ケースの内底に沿って流れる外気以外の外気を効率よく遮断することができる。
また、吸気口と排気口とは、平行に延出するので、吸気経路と排気経路を直線的にして排気抵抗を減らすことができ、また、吸気口と排気口が形成しやすい。
また、吸気口と排気口が車体斜め後方向きに延出するので、省スペースでの配置を可能とし、導風方向が極端に曲がることなくスムーズな吸排気にすることができる。
また、吸気口と排気口の断面形状が楕円であり、少なくとも一方の長径方向が斜めであるので、内側のスペースを確保でき、車体側の部品を避けることができる。
以下、本発明の一実施形態を添付した図面を参照して説明する。
なお、以下の説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車両における向きと同一とする。また、図中矢印Fは車体前方を、矢印Rは車体右方を、矢印Uは車体上方をそれぞれ示す。
図1は、本発明の実施形態を適用した自動二輪車1の側面図である。
この自動二輪車1の車体フレーム2は、車体前部のヘッドパイプ3と、同ヘッドパイプ3から後方へ斜め下向きに傾斜して延出する1本のメインフレーム4と、同メインフレーム4の後部に下方へ向けて延出固着される左右一対のピボットブラケット5と、メインフレーム4の後部でピボットブラケット5の固着位置の前付近から後方へ斜め上向きに延出して途中で屈曲して後端に至る左右一対のシートレール6と、ピボットブラケット5と上記シートレール6の中央部との間を補強する左右一対の補強フレーム7とを備えている。
車体フレーム2の左右一対のシートレール6上方には、乗車用シート8が設けられ、その下部には収納部(収納ボックス)9が設けられる。車体前部上方には、ヘッドパイプ3に軸支されたハンドル10が設けられ、その下方にフロントフォーク11、11が延びてその下端に前輪12が軸支される。車体中央のピボットブラケット5には、ピボット軸13によりリヤフォーク14が前端を揺動可能に軸支されて後方に延びており、リヤフォーク14の後端部には、後輪15が軸支される。リヤフォーク14の後部とシートレール6との間には左右一対のリヤクッション16が介挿される。
メインフレーム4の下方かつピボットブラケット5の前方には、内燃機関であるエンジン(パワーユニットとも言う)20が懸架される。エンジン20の上部は、メインフレーム4の中央部に垂設された支持ブラケット17に吊り下げられ、エンジン20の後部は、ピボットブラケット5に2箇所で固定される。すなわち、エンジン20は、メインフレーム4の後部下側に吊り下げる態様で支持されている。また、車体フレーム2は、各部に分割された合成樹脂製の車体カバー18で覆われている。
エンジン20は、単気筒の4サイクル空冷エンジンであり、シリンダ部22がクランクケース24の前面から略水平に近い状態まで大きく前傾した水平エンジンに構成されている。このため、車体を低重心化できるとともに、図示のようにメインフレーム4を低くして乗車時に運転者が跨ぐ跨ぎ部Mを低くでき、乗降性を向上できる。また、クランクケース24の左側面前部には、発電機カバー25が取り付けられている。車体カバー18は、図1に示すように、車体側面視でクランクケース24の外縁近傍まで車体を覆うカバー形状を有し、発電機カバーを含むクランクケース24側面を外部に露出させる。
このエンジン20のシリンダ部22上側には、吸気管26が接続され、この吸気管26は上方に延出してメインフレーム4に支持されたスロットルボディ27およびエアクリーナ28に接続される。シリンダ部22下側には、排気管29が接続され、この排気管29は下方に延出した後に屈曲して後方へ延び、後輪15右側に配置されたマフラー30に接続される。
また、クランクケース24の左側面後部には、エンジン20の出力軸31がその先端を露出させて軸支されている。この出力軸31の先端には、駆動スプロケット32が取り付けられ、この駆動スプロケット32と、後輪15に一体に設けられた従動スプロケット33との間に動力伝達チェーン34(図1参照)が巻回されてチェーン伝動機構が構成される。したがって、このエンジン20の出力軸31の回転は、チェーン伝動機構を介して後輪15へ伝達される。なお、このチェーン伝動機構は、各スプロケット32、33の歯数比によって出力軸31と後輪軸との間の減速比(二次減速比)を設定する二次減速機構としても機能する。また、図中、符号35はチェーン伝動機構を覆うカバーである。
クランクケース24下部には、車体左右方向に延出するステップバー36が取り付けられ、このステップバー36両端には運転者が足を載せる一対のステップ36A、36Aが取り付けられる。
また、この自動二輪車1には、エンジン20を始動するキック式始動装置140の一部を構成するキック部材(始動系部材)37がクランクケース24左側方に配設されている。すなわち、このキック部材37は、クランクケース24に先端を露出させて軸支されたキック軸38に取り付けられたキックアーム39と、このキックアーム39の先端部に回動自在に取り付けられたキックペダル40とを備え、運転者がキックペダル40を踏むことによってキック軸38を回転させてエンジン20を始動できる。
さらに、この自動二輪車1には、キック式始動装置140に加えて、エンジン始動用のスタータモータ41も配設されている。このスタータモータ41は、クランクケース24上面前部に取り付けられており、このスタータモータ41を作動させることでエンジン20を始動できる。すなわち、この自動二輪車1では、キック式およびスタータモータ式のいずれの方法でもエンジン20を始動することが可能に構成されている。
図2は、エンジン20の内部構造を車体右側から示す図であり、動力伝達系および始動系の主要な回転軸の位置を示している。また、シリンダ軸線L1も示している。また、図3は、図2のIII−III断面を示す図である。
図2および図3に示すように、エンジン20のシリンダ部22は、クランクケース24前面に連結されるシリンダブロック22Aと、シリンダブロック22A前面に連結されるシリンダヘッド22Bと、シリンダヘッド22Bの前面を覆うヘッドカバー22Cとを備える。シリンダヘッド22Bには、燃焼室22Dと、燃焼室22Dにつながる不図示の吸気ポートと排気ポートが形成され、燃焼室22Dに先端が臨むように点火プラグ23が配置され、吸気ポート入口に上記吸気管26が接続され、排気ポート出口に上記排気管29が接続されるようになっている。また、図2中、符号22Fは、シリンダ部22に設けられる放熱フィンであり、この放熱フィン22Fによりシリンダ部22が空冷される。
図3に示すように、エンジン20のクランクケース24は、左クランクケース24Aと右クランクケース24Bとからなる左右2分割構造で形成され、クランクケース24前部には、左右のクランクケース24A、24Bに支持された左右一対の軸受(転がり軸受)45、45を介してクランク軸51が軸心C1を車両進行方向と直交させて横向きに軸支される。
このクランク軸51は、回転中心となるクランクジャーナル51Aと、クランクジャーナル51Aよりも大径に形成されるクランクウェブ51Bと、このクランクウェブ51Bを介して支持されるクランクピン(偏心軸)51Cとを備え、クランクウェブ51Bおよびクランクピン51Cが、左右一対の軸受45、45間に位置する。また、クランクウェブ51Bには、回転バランスをとるためのバランスウエイト(以下、ウエイトという)51Dが設けられている。
クランク軸51のクランクピン51Cには、シリンダ部22内をシリンダ軸線L1に沿って摺動自在に配置されたピストン21Aがコンロッド21Bを介して連結される。また、図3中、符号55Aは、クランク軸51に設けられたスプロケットであり、符号55Bは、シリンダ部22のヘッドカバー22C内に設けられたカム軸55Cに設けられたスプロケットであり、スプロケット55A、55B間はカムチェーン55Dを介して連結される。これによって、クランク軸51の回転に応じてカム軸55Cが回転し、シリンダヘッド22Bに設けられた不図示の吸排気バルブを押動させる動弁機構が駆動される。
このクランク軸51の右側(一側)には、ベルト式無段変速機60が設けられ、このクランク軸51の左側(他側)には、発電機180が設けられる。
詳述すると、クランク軸51の左端は、左クランクケース24A内を左方に延出し、この左クランクケース24Aの左側開口(外側開口)を覆うように取り付けられた発電機カバー25近傍まで延出し、この発電機カバー25と左クランクケース24Aとによって囲まれる空間内に発電機180を収容する。この発電機180は、クランク軸51に固定されるロータ181と、ロータ181内に配置されるステータ182とを備え、ステータ182は発電機カバー25に固定される。
ベルト式無段変速機60は、エンジンオイルによる潤滑が行われない乾式の動力伝達機構であり、クランク軸51の右側(一側)に設けられた変速機収容部61に収容される。この変速機収容部61は、エンジンオイルによる潤滑が行われるクランクケース24とは別室を形成して油液のない室を形成し、変速機収容部61の本体部を構成する変速機ケース61Aと、この変速機ケース61Aの外側開口(右側開口)を覆う変速機カバー(カバー部材)61Bとの左右二分割構造で形成されている。
詳述すると、クランク軸51の右端は、右クランクケース24Bを貫通して更に右方へ延出し、この右クランクケース24Bの右側にボルト連結された変速機ケース61Aを貫通し、変速機ケース61Aに連設される変速機カバー61B近傍まで延出し、この右端部が、ベルト式無段変速機60の駆動プーリ軸(駆動軸)51Rとして使用され、この駆動プーリ軸51Rに駆動プーリ63が取り付けられる。
クランクケース24後部には、ベルト式無段変速機60の従動プーリ軸(従動軸)64が軸心C2を車両進行方向と直交させて横向きに軸支される。この従動プーリ軸64は、駆動プーリ軸51Rの後方に平行に位置し、右クランクケース24Bと変速機収容部61(変速機ケース61A)とに支持された左右一対の軸受(転がり軸受)65、65を介して軸支される。
この従動プーリ軸64には、従動プーリ67が取り付けられ、駆動プーリ63と従動プーリ67との間にVベルト68が掛け回され、駆動プーリ63の回転が従動プーリ67へと伝達される。なお、変速機収容部61と各プーリ軸51R、64との間には、クランクケース24側のエンジンオイルが変速機収容部61内に侵入するのを阻止するためのシール部材69A、69Bが介挿されており、変速機収容部61がクランクケース24との間でシールされる。
駆動プーリ63は、駆動プーリ軸51Rとともに回転する固定半体63Aと可動半体63Bとを有し、固定半体63Aは、駆動プーリ軸51Rに固定され、可動半体63Bは、固定半体63Aよりも左側で軸方向に移動自在に固定される。この可動半体63Bは、クランク軸51とともに回転し、遠心力により遠心方向に移動するウエイトローラ70の作用により軸方向に摺動して固定半体63Aに接近あるいは離反し、両プーリ半体63A、63B間に挟まれたVベルト68の巻き掛け径を変える。
ベルト式無段変速機60の従動プーリ67は、従動プーリ軸64とともに回転する固定半体67Aと可動半体67Bとを有し、固定半体67Aが可動半体67Bよりも左側に固定される。可動半体67Bは、従動プーリ軸64の右端部に環状スライダ71を介して軸方向に移動自在に配置され、コイルばねである付勢部材72により左方(固定半体67A側)に付勢されている。このため、駆動プーリ63の両半体63A、63B間に挟まれたVベルト68の巻き掛け径が大きくなると、反対に従動プーリ67の両半体67A、67Bの間隔がコイルばね72の付勢力に抗して拡がり、Vベルト68の巻き掛け径を小さくし、自動的に無段変速が行われる。
従動プーリ軸64は、右クランクケース24Bと変速機ケース61Aとの間に形成された空間(後述するクラッチ室R1)に配設された遠心クラッチ80を介してクランクケース24内に配設された動力伝達機構81に動力を伝達する。
遠心クラッチ80は、エンジンオイルにより各部の潤滑および冷却が行われる湿式のクラッチであり、従動プーリ軸64にスプライン嵌合されるクラッチインナ83と、従動プーリ軸64の左端部に相対回転自在に設けられたクラッチ出力ギア84に連結されたクラッチアウタ85とを備えており、クラッチインナ83の外周端側に突設された複数の支軸86にクラッチウエイト87が設けられている。このため、従動プーリ軸64の回転速度が所定速度を超えた場合に、遠心力により遠心方向に移動するクラッチウエイト87がクラッチアウタ85に係合し、従動プーリ軸64と一体にクラッチアウタ85を回転させてクラッチ出力ギア84を回転させる。
なお、図中、符号88は、クラッチアウタ85が遠心方向へ拡がるのを抑えるためのクラッチ補強用プレートであり、符号90は、クラッチ出力ギア84と従動プーリ軸64との間に配置されるリテーナである。このリテーナ90は、周方向に間隔を空けて配置される軸受用ローラのローラ列を、軸方向に2列有しており、この2列のローラ列によってクラッチ出力ギア84を従動プーリ軸64に対して相対回転させる。
動力伝達機構81は、ベルト式無段変速機60とエンジン20の出力軸31との間の動力伝達を行うものであって、かつ、一次減速機構として機能する機構である。この動力伝達機構81は、従動プーリ軸64と出力軸31との間に設けられ、従動プーリ軸64に設けられた上記クラッチ出力ギア84の回転を所定の減速比に減速して出力軸31に伝達する中間歯車軸(減速ギア軸)91を備えている。なお、図2中、中間歯車軸91の軸心を符号C3で示し、出力軸31の軸心を符号C4で示している。
中間歯車軸91は、左右のクランクケース24A、24Bに支持された左右一対の軸受(転がり軸受)92、92に回転自在に軸支され、右クランクケース24Bの壁部を貫通する貫通軸部91Aを有している。この貫通軸部91Aには、従動プーリ軸64に設けられたクラッチ出力ギア84に噛み合う大径の中間軸従動ギア(減速ギア)93が固定され、左右のクランクケース24A、24Bの間のスペースに、出力軸31に固定されたファイナルギア95に噛み合う小径の中間軸駆動ギア94が固定される。これにより、クランクケース24外側に位置するクラッチ出力ギア84の回転が、中間歯車軸91を介してクランクケース24内に位置する出力軸31のファイナルギア95へと所定の減速比で伝達される。
出力軸31は、左右のクランクケース24A、24Bに支持された左右一対の軸受(転がり軸受)96、96に支持される。この出力軸31には、ファイナルギア95が回転自在に設けられ、このファイナルギア95の回転がギアダンパ97を介して当該出力軸31に伝達されるようになっている。
すなわち、このエンジン20では、左右のクランクケース24A、24Bで囲まれる空間(以下、クランク室R0という)の右隣に、右クランクケース24Bと変速機ケース61Aとで囲まれる空間(以下、クラッチ室R1)が形成される。つまり、変速機ケース61Aは、右クランクケース24Bに連結されることでクラッチケースを構成するクラッチケース部材を兼ねている。
そして、このクランク室R0とクラッチ室R1とが、エンジンオイルによる潤滑や冷却が行われる室とされており、クランクケース24下部と変速機ケース61A下部とにオイル溜まり部が形成される。
また、このクラッチ室R1の右隣には、変速機ケース61Aと変速機カバー61Bとで囲まれる空間(以下、変速機室R2という)が形成され、この変速機室R2は、エンジンオイルによる潤滑や冷却が行われない室とされる。つまり、このエンジン20では、エンジンオイルが介在する室と介在しない室とが車幅方向で明確に区画されている。
図2に示すように、このエンジン20のクランクケース24内には、クランクケース24のオイル溜まり部に貯留されたエンジンオイルをエンジン20の各部に供給するオイルポンプ100が設けられている。このオイルポンプ100は、クランク軸51の前方斜め下方に設けられており、カムチェーン駆動によりクランク軸51の回転力で駆動されてエンジンオイルを吐出し、このエンジンオイルを、クランク軸51を支持する軸受45、45などの各軸受、シリンダ部22の動弁機構(不図示)、遠心クラッチ80および動力伝達機構81などに供給する。
また、このエンジン20には、エンジン20から延出する延出部106が設けられ、この延出部106に放熱フィンを形成すると共に、オイル通路(油路)108を形成することによってオイルの冷却を行っている。
詳述すると、延出部106は、変速機収容部61の本体部を構成する変速機ケース61Aからシリンダ軸線L1に略沿って車体前側に延出し、この延出部106には、油路カバー107がボルト連結される。この延出部106と油路カバー107との間には略環状のオイル通路108が形成されると共に、放熱フィンが設けられ、この放熱フィンによりオイル通路108を流れるオイルが走行風で効率よく冷却され、また、延出部106および油路カバー107の断面係数が高くなり、剛性が十分に確保される。つまり、延出部106および油路カバー107は、エンジン一体型の小型のオイルクーラ105(図2、図3参照)として機能する。
本構成では、オイルポンプ100から圧送されたオイルを分岐し、そのうちの一系統のオイルがシリンダ部22へとつながるオイル通路(不図示)を通ってシリンダ部22の各部を潤滑した後に、自然落下によりクランクケース24下部のオイル溜まり部へと戻り、他の一系統が、オイルクーラ105を通った後に、図3に符号110で示すオイル通路を通ってクランク軸51の各部を潤滑した後に自然落下してオイル溜まり部へ戻るようになっている。なお、オイルポンプ100から圧送されたオイルをオイルクーラ105を通した後に分岐させるようにしてもよいことは勿論である。
次にキック式始動装置140について説明する。
図4は、図2のIV−IV断面を示す図であり、キック式始動装置140の機構部分を周辺構成とともに示している。このキック式始動装置140は、エンジン20下方(主にクランクケース24下方)に収容されている。
キック軸38は、従動プーリ軸64の前下方であって、大径に形成される従動プーリ67と側面視で重ならない位置に配置されており(図2参照)、左右のクランクケース24A、24Bに形成された軸受部(本例では貫通孔で形成されたすべり軸受)141、142に回転自在に軸支されている。このキック軸38の左端部は左クランクケース24Aの壁部に形成された軸受部141を貫通して左方に突出し、この貫通軸部38Aに、キックペダル40を先端に取り付けたキックアーム39の基端部が固定される。また、左クランクケース24Aには、キック軸38との間の隙間を塞ぐシール部材143が設けられる。このクランクケース24内において、キック軸38の右側部分には、キック軸38をキック方向とは逆方向に付勢するリターンスプリング145と、このリターンスプリング145の付勢力で回転するキック軸38をキック操作開始位置で停止させるストッパ146とが配設されており、キック軸38の左側部分には、軸受部141に隣接する大径のキックドライブギア147が設けられている。
このキック軸38とクランク軸51との間には、キック軸38の回転をクランク軸51に伝達するキック中間軸150が配置される。本構成のキック中間軸150は2軸構成とされ、キック軸38により回転駆動される第1キック中間軸151と、第1キック中間軸151の回転をクランク軸51に伝達する第2キック中間軸155とを備えている。ここで、図2には、キック軸38の軸心を符号K1で示し、第1キック中間軸151の軸心を符号K2で示し、第2キック中間軸155の軸心を符号K3で示している。
第1キック中間軸151は、図2に示すように、従動プーリ軸64とクランク軸51との中間位置下方であって、大径に形成される従動プーリ67と側面視で重なる位置に横置き配置され、図4に示すように、左右のクランクケース24A、24Bに設けられた左右一対の軸受部(本例では非貫通孔で形成されたすべり軸受)161、162に回転自在に軸支される。この第1キック中間軸151は、クランクケース24内に完全に収容され、キックドライブギア147に噛み合う小径の第1キック中間軸従動ギア(キックドリブンギア)163が一体に形成されると共に、このギア163の右方に第1キック中間軸従動ギア163よりも大径の第1キック中間軸駆動ギア(第1アイドルギア)164が隣接して固定される。
第2キック中間軸155は、図2に示すように、クランク軸51の後下方であって、大径に形成される従動プーリ67と側面視で重ならない位置に横置き配置され、図4に示すように、左クランクケース24Aと変速機ケース61Aとに設けられた左右一対の軸受部(本例では非貫通孔で形成されたすべり軸受)166、167に回転自在に軸支される。すなわち、この第2キック中間軸155は、第1キック中間軸151よりも長い軸に形成されることによって、左端部が左クランクケース24Aに支持された状態で、右クランクケース24Bの壁部に形成された開口部24B1を貫通して延出し、この延出軸部155Aが、クランクケース24と変速機ケース61Aとの間の空間(クラッチ室R1)を跨いで変速機ケース61Aに軸支される。この第2キック中間軸155のクランクケース24内の軸部には、第1キック中間軸151の第1キック中間軸駆動ギア164に噛み合う小径の第2中間軸従動ギア(第2アイドルギア)168が一体に形成され、このキック中間軸155のクランクケース24外の延出軸部155Aには、飛び込みギア機構170が配設される。
この飛び込みギア機構170は、右クランクケース24Bと変速機ケース61Aとの間に位置しており、第2キック中間軸155に対して軸方向に移動自在に設けられる飛び込みギア171と、飛び込みギア171をクランク軸51に設けられたキック始動用従動ギア172と噛み合わない待避位置に付勢する付勢部材173と、飛び込みギア171に巻き付いて変速機ケース61Aに支持されるフリクションスプリング174とを備え、キック時の第2キック中間軸155の回転により飛び込みギア171が左側にスライドしてキック始動用従動ギア172と噛み合う機構に構成されている。なお、図示の例では、付勢部材173にコイルスプリングを使用した場合を示したが、板ばねや皿ばねなどのコイルスプリング以外のものを用いてもよい。
したがって、キックペダル40が踏み込まれ、キック軸38がリターンスプリング145の付勢力に抗して回転すると、キック軸38の回転が第1キック中間軸151および第2キック中間軸155のギア列を介して伝達され、飛び込みギア171をキック始動用従動ギア172に噛み合う方向へと移動してクランク軸51を強制的に回転し、エンジン20を始動させることができる。
図5に示すように、本構成では、オイルポンプ100からのオイルが圧送されるオイル通路110が、クランク軸51を支持する左右一対の軸受45のうちの右側の軸受45と、クランク軸51と右クランクケース24Bとの間をシールするシール部材69Cとの間にオイルを供給するように構成されている。
そして、このオイル通路110から流出したオイルは、右側の軸受45とクランク軸51との間に形成されたオイル通過用溝51Mを通ってクランクケース24内に入り、クランクピン51Cに形成された不図示のオイル通路を通ってコンロッド21Bの大端部へと供給される。
すなわち、本構成では、クランク軸51の外周面に、右側の軸受45との間に隙間を形成してクランクピン51C側へオイルを通過させるオイル通過用溝51Mを形成することによって、クランク軸51内にオイル通路を形成することなく、コンロッド21Bの摺動面などへオイルを供給することが可能に構成されている。なお、オイル通過用溝51Mは、クランク軸51の周方向に間隔を空けて複数本形成してもよいし、十分に潤滑可能なときは一本でもよい。
また、図5に示すように、本構成では、キック始動用従動ギア172の内周には、Oリング175が配置されず、クランク軸51にキック始動用従動ギア172を挿入した後に、このギア172の端面に当接するまで挿入されるカラー172Aの内周に、Oリング175を配置している。仮に、キック始動用従動ギア172と上記カラー172Aとを一体の部品で製作した場合には、その内周にOリング175を配置するため、Oリング組付時にOリングの位置がずれないように注意する必要がある。
これに対し、本構成では、キック始動用従動ギア172と上記カラー172Aとが別体であり、これら部品間にOリング175を配置するため、Oリング175をクランク軸51の組み付け位置に組み付けた後、カラー172Aをクランク軸51に挿入すればよい。従って、Oリング175を位置ずれなく容易に組み付けることができ、Oリング175の組付性が向上する。
この場合、同図に示すように、カラー172Aの内周側の隙間(クランク軸51との間の隙間)がOリング175でシールされ、カラー172Aの外周側の隙間(変速機ケース61Aとの間の隙間)がシール部材69Aでシールされるので、変速機収容部61とクランクケース24との間のシール性を十分に確保できる。
次にベルト式無段変速機60の導風構造について説明する。
変速機室R2、つまり、変速機収容部61内には、外気が導入され、この導入した外気でベルト式無段変速機60を冷却するように構成されている。
図6は変速機ケース61Aを右側から見た側面図であり、図7は変速機ケース61Aの一部上面図であり、図8は、図6のVIII−VIII断面を示す図であり、図9は図6のIX−IX断面を示す図である。
図6に示すように、駆動プーリ63の上方に相当する変速機ケース61Aの前上部には、外気吸気口(図2および図3参照)が設けられ、従動プーリ67の上方に相当する変速機ケース61Aの後上部には、外気排気口116が設けられる。これら外気吸気口115および外気排気口116は、前後に間隔を空けて設けられ、車体斜め後方向きに上方へ平行に延出するダクト部115A、116Aを有しており、変速機ケース61Aに一体に形成されている。そして、これら外気吸気口115および外気排気口116の上端部には、図示せぬダクトが接続され、このダクトを介して外気が流通自在に構成される。なお、図6中、符号62は、変速機ケース61A内(変速機室R2内)の水を排出するための水抜き部である。
外気吸気口115および外気排気口116の開口形状は、図7に示すように、開口面積が等しい同一楕円形状とされる。但し、本構成では、前側の外気吸気口115が車体前後方向が最も長く、車幅方向が最も幅狭となる楕円開口に形成されるのに対し、外気排気口116が、車体前後方向に対して斜めに延びる楕円開口となるように配置されている。このように外気吸気口115および外気排気口116の開口形状を楕円形状にして前後方向に長くなるように配置したので、開口面積を十分確保しつつ、外気吸気口115および外気排気口116の車幅方向に沿う幅寸法を小さくしている。また、外気排気口116の長径方向が車体前後方向に対して斜めであるため、内側のスペースを確保でき、車体側の部品を避けることができる。
また、外気吸気口115は、図8に示すように、変速機ケース61Aの変速機室R2に直接連通するのではなく、この変速機室R2の上部に形成された上部空間R2Aに直通し、この上部空間R2Aを介して変速機室R2に連通するようになっている。
ここで、図10は、外気吸気口115から駆動プーリ63に至る連通路を周辺構成と共に示している。この図に示すように、変速機室R2には、上部空間R2A内の空気を、駆動プーリ63の固定半体63A内周側に案内する導風板117が設けられている。この導風板117は、変速機カバー61Bに取り付けられており、駆動プーリ63に設けられた送風用フィン63C中心と対向する位置に開口を有している。このため、外気吸気口115より取り入れた外気は、この導風板117に沿って変速機カバー61Bと導風板117の間を通り、この導風板117に設けられた開口より変速機ケース61A内に案内される。
また、図11は、従動プーリ67から外気排気口116に至る連通路を周辺構成と共に示している。図9および図11に示すように、外気排気口116は、変速機ケース61Aの変速機室R2に直接連通する。直接連通すれば、その分、変速機室R2と外気排気口116との間の空気の流れをスムーズにできる。なお、図10および図11には、空気(外気)の流れを矢印で示している。
また、変速機収容部61内に配置される駆動プーリ63の固定半体63Aには、この駆動プーリ63を送風ファンとして機能させるための送風用フィン63Cが設けられる。これによって、駆動プーリ63の回転によって送風用フィン63Cが回転すると、外気吸気口115から導風板117に沿って変速機室R2内に外気が取り込まれる。
さらに、変速機収容部61内の従動プーリ67の固定半体67Aにも、従動プーリ67を送風ファンとして機能させるための送風用フィン67Cが設けられており、送風用フィン67Cの回転により、外気吸気口115から取り込まれた外気を変速機室R2内で従動プーリ67側へと引き込むことができ、外気排気口116から排気させることができる。これによって、変速機室R2内に駆動プーリ63側から従動プーリ67側へと向かう外気の流れが生じ、ベルト式無段変速機60が強制空冷されるようになっている。
ところで、本構成では、図6に実線矢印で示すように、駆動プーリ63が右側面視で時計回りに回転するので、外気吸気口115から吸気された外気は、送風用フィン63Cによって駆動プーリ63の軸心C3に対して右回りに送られる。
この場合、外気は、軸心C3より前側では、外気が通過可能な空間が比較的狭いので、変速機ケース61Aの内側前壁61A1に沿って略一様に流れるものの、軸心C3より後方では、変速機室R2の内部空間が拡がるなどの理由により、そのままでは様々な向きの流れが生じてしまい、例えば、図6に示すように、変速機ケース61Aの内底61A2に沿って流れる後方略水平向きの流れ(符号αで示す)の他に、後斜め上方向きの流れ(符号βで示す)が生じたり、上方向きの流れ(符号γで示す)が生じたりする。
このような様々な方向の流れが生じると、外気排気口116から直ぐに排気されない外気が生じ、従動プーリ67の回転の影響(従動プーリ67と一体に回転する送風用フィン67Cの影響も含む)を受けて乱流が発生するなどして排気効率の低下を招くと考えられる。例えば、符号βで示す外気の流れは、外気排気口116手前で従動プーリ67と一体に回転する送風用フィン67Cによって外気排気口116へ流れることができなくなる。
そこで、本構成では、変速機ケースの61Aの外気吸気口115と外気排気口116との間に、外気の流れ調整用のガイド部材121を設け、このガイド部材121によって、駆動プーリ63側から流れる外気のうち、外気排気口116に向かい易い外気をだけを排気側(従動プーリ67側)へと流すようにしている。
より具体的には、図12に示すように、このガイド部材121は、変速機ケース61Aに設けられるガイド部材(ケース側ガイド部材)122と、変速機カバー61Bに設けられるガイド部材(カバー側ガイド部材)123の左右一対で構成される。なお、図12では、変速機カバー61Bを、ガイド部材123周辺部分だけを示している。
ここで、変速機カバー61Bのガイド部材123は、変速機ケース61Aのガイド部材122に対向する側面視同形状かつ同一に設けられる板部材であるため、以下、変速機ケース61Aのガイド部材122を説明する。
ガイド部材122は、変速機ケース61Aに一体に形成されており、図6および図12に示すように、変速機室R2内で上板から下方に延在して車幅方向に突出する板状部材であり、より具体的には、外気吸気口115と外気排気口116との間を変速機室R2の上板から後下方に指向するように側面視で直線状に延び、その下端が、駆動プーリ軸51Rの軸心C1と従動プーリ軸64の軸心C2とを結ぶ直線LAよりも上方に位置する。
このため、このガイド部材122は、図6に示すように、駆動プーリ63の送風用フィン63Cによって送られた外気のうち、変速機ケース61Aの内底61A近傍を流れる外気を排気側(従動プーリ67側)へ流し、変速機ケース61Aの内底61Aから上方へ離れた外気については、排気側(従動プーリ67側)への流れを遮断する。
この場合、変速機ケース61Aの内底61A2近傍を流れる外気は、内底61Aに沿って後方に流れる外気(符号αで示す)が主流と考えられるため、この外気を排気側(従動プーリ67側)へ流すことによって、変速機ケース61Aの内側後壁61A3に沿って外気を流し、この内側後壁61A3の形状に沿ってその流れの向きを上方向きへと変え、上方に設けられた外気排気口116からスムーズに排気させることができる。しかも、この外気は、従動プーリ67の送風用フィン67Cで引き込まれるので、より効率的に排気できる。
これによって、本構成では、図6に示すように、外気吸気口115から変速機ケース61Aの内壁(内側前壁61A1、内底61A2、内側後壁61A3)に沿って外気排気口116に向かう流れを形成することができ、変速機ケース61A内にスムーズに外気を流すことができ、ベルト式無段変速機60の冷却効率を向上することができる。
しかも、ガイド部材122によって排気側(従動プーリ67側)への流れが遮断された外気(符号γで示す流れの外気など)は、駆動プーリ63側に流れるので、駆動プーリ63の送風用フィン63Cによって再び変速機ケース61Aの内側前壁61A1に沿って流される。このため、変速機ケース61Aの内底61A2近傍を流れる外気となった時点でガイド部材122の下方の空間を通り、外気排気口116から排気される。つまり、変速機ケース61A内に滞留する外気を減らすことができ、これによっても、ベルト式無段変速機60の冷却効率を向上することができる。
また、ガイド部材122、123の車幅方向の突出量は、図3および図12に示すように、従動プーリ67およびVベルト68に接触しない位置までとされる。つまり、変速機ケース61Aのガイド部材122と、変速機カバー61Bのガイド部材123とは、その間に、従動プーリ67およびVベルト68が通るスペースを空けて配設され、これによって、従動プーリ67およびVベルト68が通るスペースを確保している。この場合、ガイド部材122、123が、従動プーリ67およびVベルト68が通るスペースを確保しつつ変速機室R2の幅方向に渡って延在するので、変速機ケース61Aの内底61Aから上方へ離れた外気が排気側(従動プーリ67側)へ流れるのを幅方向全体に亘って十分に遮断できる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、外気吸気口115を、駆動プーリ63の上方で変速機ケース61Aに設け、外気排気口116を、駆動プーリ63の後方に配置された従動プーリ67の上方で変速機ケース61Aに設け、この変速機ケース61Aの外気吸気口115と外気排気口116との間に、外気の流れ調整用のガイド部材122を設けたので、変速機ケース61A内にスムーズに外気を流すことができ、ベルト式無段変速機60の冷却効率を向上することができる。
また、ベルト式無段変速機60を、クランクケース24の右側方に設け、駆動プーリ63は右側面視で時計回りに回転するようにしたので、外気吸気口115からの外気を、変速機ケース61Aの内壁(内側前壁61A1、内底61A2、内側後壁61A3)に沿わせて送ることができ、外気排気口116から排気し易くすることができる。この場合、駆動プーリ63と同方向に回転する従動プーリ67の回転によって、上記外気を外気排気口116へより導風し易くでき、排気効率をより向上することができる。
また、変速機ケース61Aの一側方には、変速機カバー61Bを設け、この変速機カバー61Bには、変速機ケース61Aのガイド部材122と対向するようにガイド部材123を設けたので、外気の流れ調整用のガイド部材の面積を広く確保でき、変速機ケース61A内の外気を流れをよりスムーズにできる。
また、ガイド部材122、123は、変速機ケース61Aと変速機カバー61Bの各々の上部より下方に延出するので、駆動プーリ63の上部側から従動プーリ67側への外気の流れを遮断できる。また、ガイド部材122が上部より下方に延出するシンプルな板形状なので、製作が容易であり、変速機ケース61Aや変速機カバー61Bに一体に形成する構成だけでなく、別体に形成して後付けしたり、仕様に応じて長さを変更したり、といった各種設計変更が容易である。
また、本構成では、ガイド部材122、123の間には、Vベルト68が通るスペースが設けられるので、Vベルト68を避けつつガイド部材122、123を配置できる。
また、本構成では、ガイド部材122、123の下端を、駆動プーリ軸51Rの軸心C1と従動プーリ軸64の軸心C2とを結ぶ直線LAよりも上方に位置するので、駆動プーリ軸51R側から従動プーリ軸64の軸心C2より上方へ向かって流れる外気(例えば、符号βで示す外気)が排気側へ流れるのを遮断し、この流れが外気排気口116へ向かう流れに影響を及ぼす事態を回避できる。
また、本構成では、ガイド部材122、123が後下方に指向するので、同長さで前下方に指向する場合よりも、変速機ケース61Aの内底61A2に沿って流れる外気以外の外気を効率よく遮断することができ、例えば、駆動プーリ軸51R側から従動プーリ軸64の軸心C2より上側に向かう流れを効率よく遮断することができると共に、従動プーリ軸64の軸心C2より後方で略上方向きの流れ(符号γで示す)の外気を、駆動プーリ63側に効率よく戻すことができ、内部に滞留する外気を減らすことができる。
また、外気吸気口115と外気排気口116とが平行に延出するので、吸気経路と排気経路を直線的にして排気抵抗を減らすことができると共に、鋳造時にスライド型を同一方向に抜くことができ、吸気口と排気口が形成しやすいなどの効果を奏する。
また、外気吸気口115と外気排気口116が車体斜め後方向きに延出するので、省スペースでの配置を可能とし、導風方向が極端に曲がることなくスムーズな吸排気にすることができる。
また、外気吸気口115と外気排気口116の断面形状が楕円であり、少なくとも一方(本例では外気排気口116)の長径方向が車体前後方向に対して斜めであるため(図7参照)、内側のスペースを確保でき、車体側の部品を避けることができる。
次に変速機関連の構成について説明する。
図3に示すように、駆動プーリ軸51Rの右端部には、このプーリ軸51Rに挿入される各部品を軸方向左側に押さえるナット124が締結されており、変速機カバー61Bには、このナット124の中心軸(=駆動プーリ軸51Rの軸心C1)に略沿って駆動プーリ軸51Rの右端面近傍まで延出するスタッド125が形成されている。このスタッド125は、駆動プーリ軸51Rよりも小径であり、変速機カバー61Bに一体に設けられている。
また、従動プーリ軸64の右端部にも、このプーリ軸64に挿入される各部品を軸方向左側に押さえるナット126が締結されている。本構成では、このナット126の左側に隣接して該ナット126で従動プーリ軸64に固定される被固定部材127が、ナット126の外周を囲って変速機カバー61Bの内側面近傍まで延出する筒部127Aを有している。
この被固定部材127の筒部127Aの外周部には、従動プーリ67を左方向に付勢する付勢部材72の右端を押さえる環状の押さえ板128が周方向の相対回転可能に配設され、この押さえ板128の右側に隣接して筒部127A外周にサークリップ129を嵌め込むことで押さえ板128が筒部127Aに固定される。ここで、図13は、サークリップ129を周辺構成と共に示す図である。この図に示すように、押さえ板128のサークリップ129側の面には、サークリップ129の両端部129A、129Bの外側に位置する2つの突起128A、128Bを有しており、この2つの突起128A、128Bにより、押さえ板128に対するサークリップ129の取付位置を位置決めすることができ、また、サークリップ129の両端部129A、129Bの拡がりを回避することができる。
以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものでない。例えば、上述の実施形態では、ガイド部材122、123の下端を、駆動プーリ軸51Rの軸心C1と従動プーリ軸64の軸心C2とを結ぶ直線LAよりも上方にする場合を説明したが、これに限らない。少なくともガイド部材122、123の下端を、駆動プーリ63と従動プーリ37との下部間をつなぐ接線(図6に符号LBで示す線)よりも側面視で上方に位置させれば、変速機ケース61Aの内底61A2近傍を流れる外気を排気側(従動プーリ67側)へ流すことができ、スムーズに排気させることができ、この範囲でガイド部材122、123の下端位置を調整すればよい。
また、上述の実施形態では、外気吸気口115と外気排気口116とを平行に延出する場合を説明したが、これに限らず、図14に示すように、後側の外気排気口116を前上がりに延ばすようにしてもよい。この場合、外気排気口116の向きを、変速機ケース61Aの内側後壁61A3に沿って上向きに流れる外気の向きと略揃えることができるので、外気排気口116からスムーズに外気を排気することができる。
また、上記実施形態では、自動二輪車のエンジン20に適用される変速機の導風構造に本発明を適用する場合を説明したが、これに限らず、自動二輪車以外の他の車両のエンジンなどに使用される変速機の導風構造に本発明を適用することも可能である。
本発明の実施形態を適用した自動二輪車の側面図である。 自動二輪車のエンジンの内部構造を車体右側から示す図である。 図2のIII−III断面を示す図である。 図2のIV−IV断面を示す図である。 エンジンのクランク軸を周辺構成と共に示す図である。 エンジンの変速機ケースを右側から見た側面図である。 変速機ケースの一部上面図である。 図6のVIII−VIII断面を示す図である。 図6のIX−IX断面を示す図である。 外気吸気口から駆動プーリに至る連通路を周辺構成と共に示す図である。 従動プーリから外気排気口に至る連通路を周辺構成と共に示す図である。 ガイド部材を周辺構成と共に示す斜視図である。 サークリップを周辺構成と共に示す図である。 変形例に係る変速機ケースを右側から見た側面図である。
1 自動二輪車
20 エンジン(内燃機関)
22 シリンダ部
24 クランクケース
24A 左クランクケース
24B 右クランクケース
31 出力軸
51 クランク軸
51R 駆動プーリ軸(駆動軸)
60 ベルト式無段変速機
61 変速機収容部
61A 変速機ケース(クラッチケースを兼ねる)
61B 変速機カバー(カバー部材)
63 駆動プーリ
63C 送風用フィン
64 従動プーリ軸(従動軸)
67 従動プーリ
67C 送風用フィン
68 Vベルト
81 動力伝達機構
115 外気吸気口
116 外気排気口
122 ガイド部材(ケース側ガイド部材)
123 ガイド部材(カバー側ガイド部材)
140 キック式始動装置

Claims (10)

  1. 内燃機関に支持されるクランク軸の一側に設けられる駆動プーリと、内燃機関に支持される従動軸の一側に設けられる従動プーリと、駆動プーリと従動プーリ間に掛けられたベルトとを備えるベルト式の変速機であって、駆動プーリに一体に回転する送風ファンを設けると共に変速機ケースに吸気口と排気口とを設け、送風ファンにより吸気口から外気を取り入れて排気口から排気させる変速機の導風構造において、
    前記吸気口は、前記駆動プーリの上方で前記変速機ケースに設けられ、前記排気口は、前記従動プーリの上方で前記変速機ケースに設けられ、前記変速機ケースの前記吸気口と前記排気口との間に、外気の流れ調整用のガイド部材を設けたことを特徴とする変速機の導風構造。
  2. 前記内燃機関は、クランクケースを備え、このクランクケースに前記クランク軸を支持し、
    前記変速機は、前記クランクケースの右側方に設けられ、前記駆動プーリは、右側面視で時計回りに回転することを特徴とする請求項1に記載の変速機の導風構造。
  3. 前記変速機ケースの一側方には、カバー部材が設けられ、このカバー部材には、前記変速機ケースに設けられるガイド部材と対向するようにカバー側ガイド部材が設けられることを特徴とする請求項1に記載の変速機の導風構造。
  4. 前記ガイド部材と前記カバー側ガイド部材とは、前記変速機ケースと前記カバー部材の各々の上部より下方に延出することを特徴とする請求項3に記載の変速機の導風構造。
  5. 前記ガイド部材と前記カバー側ガイド部材との間には、前記ベルトが通るスペースが設けられることを特徴とする請求項4に記載の変速機の導風構造。
  6. 前記ガイド部材と前記カバー側ガイド部材とは、前記クランク軸と前記従動軸との間であって、前記駆動プーリと前記従動プーリとの下部間をつなぐ接線よりも側面視で上方に位置することを特徴とする請求項4又は5に記載の変速機の導風構造。
  7. 前記ガイド部材と前記カバー側ガイド部材とは、後下方に指向していることを特徴とする請求項4に記載の変速機の導風構造。
  8. 前記吸気口と前記排気口とは、平行に延出することを特徴とする請求項1に記載の変速機の導風構造。
  9. 前記吸気口と前記排気口が車体斜め後方向きに延出することを特徴とする請求項8に記載の変速機の導風構造。
  10. 前記吸気口と前記排気口の断面形状が楕円であり、少なくとも一方の長径方向が斜めであることを特徴とする請求項8又は9に記載の変速機の導風構造。
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