以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、各図は、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係について、この発明が理解できる程度に概略的に示してある。また、以下、この発明の好適な構成例について説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は、以下の実施の形態に何ら限定されない。また、各図において、共通する構成要素には同符号を付し、その説明を省略することもある。
(実施の形態1)
(1)構造
まず、図1を参照して、この実施の形態の光波長フィルタの構造について説明する。図1は、光波長フィルタ10の構造を概略的に示す斜視図である。なお、図1において、光波長フィルタ10は、後述するクラッド中に埋め込まれており、直接目視することはできないが、光波長フィルタ10を強調するために、実線で示してある。
図1を参照すると、光波長フィルタ10は、基板12の第1主面12a側に形成されたクラッド14の中に埋め込まれた構造体として形成されている。ここで、基板12は矩形状の平行平板である。基板12は、好ましくは、例えばSi基板とするのがよい。また、クラッド14は、平面形状が基板と等しい矩形状の平行平板である。クラッド14は、好ましくは、例えばSiO2を材料として形成するのがよい。
光波長フィルタ10は、底面が基板12の第1主面12aと平行になるように、クラッド14中に埋め込まれている。光波長フィルタ10を構成する材料は、場所によらず同一であり、好ましくは、例えばSiとするのがよい。
光波長フィルタ10の底面と、基板12の第1主面12aとの間の距離D1は、光波長フィルタ10中を伝播する光の、基板12への結合を防ぐために、好ましくは、例えば、約1μm以上の大きさとするのがよい。また、光波長フィルタ10の第1主面12aに垂直に測った厚みD2は、場所によらず等しく、好ましくは、例えば約0.3μmとするのがよい。
光波長フィルタ10は、クラッド14の側面14a及び14bに合計3つの光入出力ポートである第1〜第3ポートP1〜P3を備えている。より詳細には、側面14aに入出力用光導波路24に接続する第1ポートP1と、入力用光導波路26に接続する第2ポートP2とを備えている。そして、側面14bに出力用光導波路28に接続する第3ポートP3を備えている。
第1ポートP1は、光波長フィルタ10の外部に設けられた一本の光ファイバFに接続されている。そして、光ファイバFは、例えば光加入者系の局側終端装置(不図示)と接続されている。従って、光波長フィルタ10から局側終端装置に向けて送信される上り光信号、及び局側終端装置から光波長フィルタ10に向けて送信される下り光信号の両光信号は、光ファイバF及び入出力用光導波路24を伝播することとなる。
第2ポートP2は、光波長フィルタ10の外部に設けられた発光素子LDに接続されている。この発光素子LDからは、上述した上り光信号が入力用光導波路26に向けて入力される。詳しくは後述するが、光波長フィルタ10は、発光素子LDから入力された上り光信号を合分波して、入出力用光導波路24から局側終端装置に向けて出力する。
第3ポートP3は、光波長フィルタ10の外部に設けられた受光素子PDに接続されている。この受光素子PDには、光波長フィルタ10で合分波されて出力用光導波路28を伝播してきた下り光信号が第3ポートP3を介して出力される。
なお、この実施の形態においては、上り光信号の波長は、光通信の分野で一般的に用いられている1.31μmの第1波長とする。同様に、下り光信号の波長は、1.49μmの第2波長とする。
光波長フィルタ10は、非対称幅分岐導波路16と第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bと、テーパ状光導波路22と、入出力用光導波路24と、入力用光導波路26と、出力用光導波路28とを備えている。以下、光波長フィルタ10を構成するこれらの構成要素ごとにより詳細に説明する。
非対称幅分岐導波路16は、言わば「ハ」字状に配置された第1光導波路16a及び第2光導波路16bを備えている。第1及び第2光導波路16a及び16bは、光伝播方向に直交する横断面形状がそれぞれ矩形状に形成されている。
第1光導波路16aは、その第1中心軸16aCに沿って延在し、第1端部16a1から第2端部16a2にかけて幅が直線的に減少するシングルモードの光導波路である。ここで、「幅」とは、光伝播方向に直交しかつ基板12の第1主面12aに平行な方向の第1光導波路16aの両辺間の距離のことをいう。
より詳細には、第1光導波路16aは、第1中心軸16aCを対称軸とした長尺な等脚台形状に形成されている。そして、入出力用光導波路24に接続された第1端部16a1における幅w+Δw/2(ここで、w及びΔwは正数)から、第1チャネル型光導波路18と接続された第2端部16a2における幅wまで、導波路幅が減少している。
第2光導波路16bは、第2中心軸16bCに沿って延在し、第3端部16b3から第4端部16b4にかけて幅が直線的に増加するシングルモード光導波路である。ここで、「幅」とは、光伝播方向に直交しかつ基板12の第1主面12aに平行な方向の第2光導波路16bの両辺間の距離のことをいう。
より詳細には、第2光導波路16bは、第2中心軸16bCを対称軸とした長尺な等脚台形状に形成されている。そして、入力用光導波路26に接続された第3端部16b3における幅w−Δw/2から、第2チャネル型光導波路18bと接続された第4端部16b4における幅wまで、導波路幅が増加している。なお、第2光導波路16bの第4端部16b4における幅は、第1光導波路16aの第2端部16a2における幅と等しい寸法である。
第1及び第2光導波路16a及び16bは、基板12の第1主面12aに平行な対称軸10Cを中心として、第1中心軸16aCと第2中心軸16bCとが線対称な位置関係となるように第1主面12a上に配置されている。より詳細には、第1及び第2光導波路16a及び16bにおいて、側面14a側に存在する第1及び第3端部16a1及び16b3がそれぞれ隣接し合っており、側面14b側に存在する第2及び第4端部16a2及び16b4がそれぞれ隣接し合っている。
ここで、第1及び第3端部16a1及び16b3の間の間隔、すなわち、第1及び第3端部16a1及び16b3における第1及び第2光導波路16a及び16bの互いに向かい合う側面間の距離は、G+ΔGとする。また、第2及び第4端部16a2及び16b4の間の間隔、すなわち、第2及び第4端部16a2及び16b4における第1及び第2光導波路16a及び16bの互いに向かい合う側面間の距離はGとする。なお、以降、第1及び第3端部16a1及び16b3の間の間隔G+ΔGを単に「第1間隔G+ΔG」と称することもある。また、第2及び第4端部16a2及び16b4の間の間隔Gを単に「第2間隔G」と称することもある。
これらの結果として、第1及び第2光導波路16a及び16bは、第1及び第3端部16a1及び16b3側から第2及び第4端部16a2及び16b4側にかけて、両光導波路の間隔が第1間隔G+ΔGから第2間隔Gまで減少するように配置されて、非対称幅分岐導波路16を構成している。ここで、第1又は第2光導波路16a又は16bの対称軸10Cに対する正射影の長さL1を「非対称幅分岐導波路16の長さ」と称する。
ここで、非対称幅分岐導波路16の具体的な寸法の一例を挙げておく。
第1及び第2光導波路16a及び16bにおいて、幅wは、例えば約300nmとする。また、幅の変化分Δwは、例えば約20nmとする。従って、第1及び第2光導波路16a及び16bの第2及び第4端部16a2及び16b4における幅wは、例えば約300nmとなる。同様に、第1光導波路16aの第1端部16a1における幅w+Δw/2は、310nm(=300+20/2)となる。また、第2光導波路16bの第3端部16b3における幅w−Δw/2は、290nm(=300−20/2)となる。
また、第1及び第2光導波路16a及び16bの第2間隔Gは、例えば約0.3μmとする。また、間隔の変化分ΔGは、例えば約0.2μmとする。従って、第1及び第2光導波路16a及び16bは、第1間隔G+ΔGが0.5μm(=0.3+0.2)となり、第2間隔Gが0.3μmとなる。
第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bは、それぞれ第1及び第2光導波路16a及び16bに接続されたシングルモードのチャネル型光導波路である。第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bは、光伝播方向に直交する横断面形状がそれぞれ矩形状に形成されている。第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bは、対称軸10Cを中心として、線対称な位置に配置されている。また、第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bの第1主面12a内において対称軸10Cに垂直な方向の間隔L3は、両チャネル型光導波路18a及び18bを伝播する光が相互作用しないような大きさとされている。より具体的には、上り光信号の波長すなわち第1波長が1.31μm、及び下り光信号の波長すなわち第2波長が1.49μmの場合には、間隔L3は、好ましくは、例えば約1μm以上とするのがよい。
ここで、第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bの第1主面12aに垂直に測った高さは、例えば約0.3μmとする。また、第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bの光伝播方向に垂直でかつ第1主面12aに平行に測った幅は、例えば約0.3μmとする。
第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bは、後述する第1グレーティングG1及び第2グレーティングG2の格子溝の配置を除き、同様に構成されている。
第1チャネル型光導波路18aは、一端部18aT1が第1光導波路16aの第2端部16a2に接続され、他端部18aT2がテーパ状光導波路22に接続された、第1グレーティングG1を備えた光導波路である。より詳細には、第1チャネル型光導波路18aは、第1湾曲部18a1と、第1グレーティングG1を備えた第1直線部18aGと、第2湾曲部18a2とを備えている。
第1湾曲部18a1は、第1光導波路16aの第2端部16a2に接続された一端部18aT1から第1直線部18aGまでを接続する光導波路である。第1湾曲部18a1は、一端部18aT1から、第1直線部18aGに向かうにつれて、対称軸10Cから離間するように基板12の外側に向かって滑らかに湾曲して形成されている。
第1直線部18aGは、回折格子としての第1グレーティングG1が光伝播方向に沿って所定の周期Λで形成されていて、対称軸10Cと平行に延在する光導波路である。第1直線部18aGの光伝播方向に沿った長さはL2とする。
ここで、第1グレーティングG1は、第1直線部18aGの両側面、すなわち第1直線部18aGにおいて、基板12の第1主面12aに垂直に延在する光伝播方向に沿った二つの面に形成されている。より詳細には、両側面に周期Λで格子溝としての凹凸を形成することにより形成されている。詳しくは後述するが、第1グレーティングG1の周期Λは、上り光信号の波長である第1波長の光を反射する大きさに形成されている。
第1グレーティングG1の格子溝の周期Λは、第1波長1.31μmの上り光信号を反射するものとして、例えば約266nmとする。また、第1グレーティングG1の格子溝の深さは、例えば約15nmとする。また、第1グレーティングG1において、格子溝の繰り返し個数は、充分な反射光強度が確保できるだけの個数とする。この実施の形態で説明したように15nmの深さの格子溝を用い、第1波長1.31μmの上り光信号を反射するものとした場合、格子溝を200個周期的に繰り返して作成すれば、後述するように反射光の帯域幅10nmで95%以上の反射光強度が得られる。
第2湾曲部18a2は、第1直線部18aGから、他端部18aT2に接続されたテーパ状光導波路22までを接続する光導波路である。第2湾曲部18a2は、第1直線部18aGから他端部18aT2に向かうにつれて、対称軸10Cに接近するように基板12の内側に向かって滑らかに湾曲して形成されている。
第2チャネル型光導波路18bは、一端部18bT1が第2光導波路16bの第4端部16b4に接続され、他端部18bT2がテーパ状光導波路22に接続された、第2グレーティングG2を備えた光導波路である。
第3湾曲部18b3は、第2光導波路16bの第4端部16b4に接続された一端部18bT1から第2直線部18bGまでを接続する光導波路である。第3湾曲部18b3は、一端部18bT1から、第2直線部18bGに向かうにつれて、対称軸10Cから離間するように基板12の外側に向かって滑らかに湾曲して形成されている。
第2直線部18bGは、回折格子としての第2グレーティングG2が光伝播方向に沿って第1グレーティングG1と同じ周期Λで形成されていて、対称軸10Cと平行に延在する光導波路である。第2直線部18bGの光伝播方向に沿った長さは、第1直線部18aLと同様にL2とする。
ここで、第2グレーティングG2は、第2直線部18bGの両側面、すなわち第2直線部18bGにおいて、基板12の第1主面12aに垂直に延在する光伝播方向に沿った二つの面に形成されている。より詳細には、両側面に周期Λで格子溝としての凹凸を形成することにより形成されている。
第2グレーティングG2の第1グレーティングG1との違いは、回折格子の位相関係である。第2グレーティングG2における格子溝は、第1グレーティングG1の格子溝と半周期(Λ/2)だけずれて形成されている。
第4湾曲部18b4は、第2直線部18bGから、他端部18bT2に接続されたテーパ状光導波路22までを接続する光導波路である。第4湾曲部18b4は、第2直線部18bGから他端部18bT2に向かうにつれて、対称軸10Cに接近するように基板12の内側に向かって滑らかに湾曲して形成されている。
テーパ状光導波路22は、第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bの双方の他端部18aT2及び18bT2に接続されていて、他端部18aT2及び18bT2から離間するにつれて光伝播方向に直交しかつ基板12の第1主面12aに平行な幅が狭くなる平面型光導波路である。
より詳細には、テーパ状光導波路22は、対称軸10Cを中心として線対称な等脚台形状に形成されている。その下底側(長さが長い方の底辺側)に、対称軸10Cに対称に第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bが接続されている。そして、上底側(長さが短い方の底辺側)に出力用光導波路28が接続されている。
ここで、テーパ状光導波路22の具体的な寸法を例示する。テーパ状光導波路22の対称軸10Cに沿った方向の長さは、例えば、約16μmとする。また、テーパ状光導波路22の等脚台形の下底の幅は、例えば、約0.8μmとする。
入出力用光導波路24は、第1光導波路16aの第1端部16a1に接続されたシングルモードの光導波路である。入出力用光導波路24は、上り光信号を光波長フィルタ10の外部に向けて伝播し、下り光信号を光波長フィルタ10の外部から第1光導波路16aに向けて伝播する機能を有する。
入力用光導波路26は、第2光導波路16bの第3端部16b3に接続されたシングルモードの光導波路である。入力用光導波路26は、上り光信号を第2光導波路16bに向けて伝播する機能を有する。
出力用光導波路28は、テーパ状光導波路22の先端部に接続されたシングルモードの光導波路である。出力用光導波路28は、下り信号を光波長フィルタ10の外部に向けて伝播する機能を有する。
(2)動作
次に、図2〜3を参照して、光波長フィルタ10の動作について説明する。図2(A)及び(B)は、上り光信号の伝播の様子の説明に供する模式図である。図3は、下り光信号の伝播の様子の説明に供する模式図である。
(2−1)上り光信号
まず、図2(A)及び(B)を参照して波長1.31μmの上り光信号の伝播の様子について説明する。
なお、以下の説明においては、非対称幅分岐導波路16における光の伝播の様子を求めるために、固有モード計算を行っている。この固有モード計算は、文献(Okayama et al.,Electron. Lett. Vol.27,p.1847(1991))に開示されている公知の計算方法に従って行った。
図2(A)に示すように、発光素子LDから出力された光信号B1は、入力用光導波路26を伝播して、非対称幅分岐導波路16の第2光導波路16bに入力される(図1参照)。非対称幅分岐導波路16に入力された光信号B1は、非対称幅分岐導波路16における固有モード計算によると、第1及び第2光導波路16a及び16bを伝播する反対称の固有モードとなっている。
その結果、非対称幅分岐導波路16において、光信号B1から、第1光導波路16aを伝播する第1成分B1aとともに、第1成分B1aとは位相が反転した第2成分B1bが第2光導波路16bに励起されていく。そして、非対称幅分岐導波路16を第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18b方向に伝播するにつれて、第1成分B1aの強度は減少し、第2成分B1bの強度は増加していき、第2及び第4端部16a2及び16b4の位置において、第1及び第2成分B2a及びB2bの強度が等しく位相が逆転した固有モード光B2となる。
固有モード光B2が反対称の強度分布を持っている結果、第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bのそれぞれには、位相が反転しかつ強度が等しい第1基本モード光B3aと第2基本モード光B3bとが、第2及び第4端部16a2及び16b4から入力される。
続いて、図2(B)を参照して、さらに上り光信号の伝播の様子について説明する。
上述したように、第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bに形成されている第1及び第2グレーティングG1及びG2の周期Λは、上り光信号の波長の光を反射する大きさとされている。その結果、第1及び第2基本モード光B3a及びB3bは第1及び第2グレーティングG1及びG2でそれぞれ反射されて、それぞれ第1及び第2反射光B4a及びB4bとして、第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bを非対称幅分岐導波路16に向けて伝播する。
ところで、第1及び第2グレーティングG1及びG2の格子溝は、半周期(Λ/2)だけ位相がずれている。その結果、反射前の第1及び第2基本モード光B3a及びB3bでは反転していた光の位相が、反射後の第1及び第2反射光B4a及びB4bでは同一となる。
この第1及び第2反射光B4a及びB4bは、第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bを、第1及び第2基本モード光B3a及びB3bとは逆の経路で伝播し、非対称幅分岐導波路16の第2及び第4端部16a2及び16b4に至る。
第2及び第4端部16a2及び16b4に至った第1及び第2反射光B4a及びB4bは、非対称幅分岐導波路16に強度と符号が等しい対称形状の第3及び第4成分B5a及びB5bを含む固有モード光B5を励起する。ところで、固有モード計算によると、対称形状の固有モード光B5は、非対称幅分岐導波路16を第1及び第3端部16a1及び16b3に向けて伝播していく過程で、第1及び第2光導波路16a及び16bの内、幅が大きな第1光導波路16aに光電界を集中させていく。
その結果、固有モード光B5は、第1及び第2光導波路16a及び16bを第1及び第3端部16a1及び16b3に向けて伝播するにつれて、第2光導波路16bに分布する第4成分B5bの強度が減少し、第1光導波路16aに分布する第3成分B5aの強度が増していく。
結果として、第1及び第3端部16a1及び16b3の位置において、固有モード光B5の光界分布は、第1光導波路16aの第1端部16a1に集中する。そして、固有モード光B5は、第1端部16a1に接続された入出力用光導波路24から光波長フィルタ10の外部に設けられた局側終端装置に向けて上り光信号として出力される。
(2−2)上り光信号の迷光
次に、図3と図4(A)及び(B)とを参照して、光波長フィルタ10における上り光信号の迷光の挙動について説明する。ここで、「迷光」とは、何らかの原因で、上述した伝播経路以外の経路を伝播する上り光信号に由来する光のことを示す。
上り光信号の迷光は、以下に列記するように大きく2種類に分類される。以下、それぞれについて説明する。
(第1迷光)第1及び第2グレーティングG1及びG2で反射されなかった光
(第2迷光)非対称幅分岐導波路16で励起された対称モード光
<第1迷光>
以下、図3を参照して、第1迷光について説明する。
第1及び第2基本モード光B3a及びB3bが第1及び第2グレーティングG1及びG2で反射されなかった場合、第1及び第2基本モード光B3a及びB3bは、第1及び第2グレーティングG1及びG2に入力されたときの対称性を維持したまま第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bを伝播して、テーパ状光導波路22に至る。
テーパ状光導波路22に至った第1及び第2基本モード光B3a及びB3bは、図3に示したように、反対称性の高次モード光B6を励起する。ところで、テーパ状光導波路22に接続されている出力用光導波路28は、シングルモードの光導波路であるため、反対称性の高次モード光B6は伝播することができない。その結果、高次モード光B6は、基板12への放射光Sとなり取り除かれる。
このように、この実施の形態の光波長フィルタ10では、上り光信号が第1及び第2グレーティングG1及びG2で反射されなかったことに由来する第1迷光をテーパ状光導波路22において効果的に除去することができる。より具体的には、受光素子PDに入力される第1迷光の強度を、受光素子PDで受信される下り光信号の強度の−30dB以下にすることができる。その結果、受光素子PDで受信される第1迷光由来のノイズを小さくすることができる。
<第2迷光>
図4(A)に示したように、非対称幅分岐導波路16の作用が充分でない場合、第2及び第4端部16a2及び16b4の位置において、強度と位相とが等しい第1及び第2成分B7a及びB7bを含む固有モード光B7が励起される。
この固有モード光B7が対称な強度分布を持っている結果、第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bのそれぞれを、位相と強度が等しい第1基本モード光B8aと第2基本モード光B8bとが伝播することになる。
第1及び第2基本モード光B8a及びB8bは、図4(B)に示すように、それぞれ第1及び第2グレーティングG1及びG2で反射されて、第1及び第2反射光B9a及びB9bとなり、第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bを非対称幅分岐導波路16に向けて伝播する。ところで、第1及び第2グレーティングG1及びG2の格子溝は、位相が半周期ずれているので、反射後の第1及び第2反射光B9a及びB9bは、強度が等しく位相が反転することとなる。
第2及び第4端部16a2及び16b4に至った第1及び第2反射光B9a及びB9bは、非対称幅分岐導波路16に強度が等しく符号が逆転した反対称形状の第3及び第4成分B10a及びB10bを含む固有モード光B10を励起する。ところで、固有モード計算によると、反対称形状の固有モード光B10は、非対称幅分岐導波路16を第1及び第3端部16a1及び16b3に向けて伝播していく過程で、第1及び第2光導波路16a及び16bの内、幅が小さい第2光導波路16bに光電界を集中させていく。
その結果、固有モード光B10は、第1及び第2光導波路16a及び16bを第1及び第3端部16a1及び16b3に向けて伝播するにつれて、第1光導波路16aに分布する第3成分B10aの強度は減少し、第2光導波路16bに分布する第4成分B10bの強度は増していく。
結果として、第1及び第3端部16a1及び16b3の位置において、固有モード光B10の光界分布は、第2光導波路16bの第3端部16b3に集中する。そして、固有モード光B10は、第3端部16b3に接続された入力用光導波路26から発光素子LDに向けて出力される。
このように、非対称幅分岐導波路16の作用が充分でないことに由来して発生する第2迷光は、発光素子LDへと入力されるフィードバック光となる。このフィードバック光は、発光素子LDの発光を不安定にすることが知られているので、発光素子としては、フィードバック光の影響を受けにくい、ゲインカップリング型かアイソレータを備えたものを使用することが好ましい。
(2−3)下り光信号
次に、図5を参照して下り光信号の伝播の様子について説明する。
図5に示すように、光ファイバから入出力用光導波路24に入力された下り光信号C1は、入力用光導波路26を伝播して、非対称幅分岐導波路16の第1光導波路16aに入力される。非対称幅分岐導波路16に入力された下り光信号C1は、非対称幅分岐導波路16における固有モード計算によると、第1及び第2光導波路16a及び16bを伝播する対称な固有モードとなっている。
その結果、非対称幅分岐導波路16において、下り光信号C1から、第1光導波路16aを伝播する第1成分C1aとともに、第1成分C1aとは同位相の第2成分C1bが第2光導波路16bに励起されていく。そして、非対称幅分岐導波路16を第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18b方向に伝播するにつれて、第1成分C1aの強度は減少し、第2成分C1bの強度は増加していき、第2及び第4端部16a2及び16b4の位置において、第1及び第2成分C1a及びC1bの強度及び位相が等しい固有モード光C2となる。
固有モード光C2が対称の強度分布を持っている結果、第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bのそれぞれには、位相が及び強度が等しい第1基本モード光C3aと第2基本モード光C3bとが、第2及び第4端部16a2及び16b4から入力される。
上述のように、第1及び第2グレーティングG1及びG2の周期Λは、上り光信号の波長としての第1波長の光を反射するが、下り光信号の波長としての第2波長の光を反射しないような大きさとされているので、第1及び第2基本モード光C3a及びC3bは、第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bを伝播して、テーパ状光導波路22に至る。
ところで、第1及び第2基本モード光C3a及びC3bは、位相が等しいので、テーパ状光導波路22において足し合わされて固有モード光C4となり、出力用光導波路28から、受光素子に向けて出力される。
(2−4)下り光信号の迷光
次に、図6(A)及び(B)と図7を参照して、光波長フィルタ10における下り光信号の迷光の挙動について説明する。
ここで、「迷光」とは、何らかの原因で、上述した伝播経路以外の経路を伝播する下り光信号に由来する光のことを示す。
下り光信号の迷光は、以下に列記するように大きく2種類に分類される。
(第3迷光)第1及び第2グレーティングG1及びG2で反射された光
(第4迷光)非対称幅分岐導波路16で励起された反対称モード光
<第3迷光>
第3迷光は、第1及び第2グレーティングG1及びG2で反射されないはずの第1及びと第2基本モード光C3a及びC3bが反射されてしまった場合に発生する。
この場合、図6(A)に示すように、第1及び第2基本モード光C3a及びC3bは、それぞれ第1及び第2グレーティングG1及びG2で反射されて、第1及び第2反射光C4a及びC4bとなり、第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bを非対称幅分岐導波路16に向けて伝播する。ところで、第1及び第2グレーティングG1及びG2の格子溝は、位相が半周期Λ/2だけずれているので、反射後の第1及び第2反射光C4a及びC4bは、強度が等しく位相が反転することとなる。
図6(B)に示すように、第2及び第4端部16a2及び16b4に至った第1及び第2反射光C4a及びC4bは、非対称幅分岐導波路16に強度が等しく符号が逆転した反対称形状の第3及び第4成分C5a及びC5bを含む固有モード光C5を励起する。ところで、固有モード計算によると、反対称形状の固有モード光C5は、非対称幅分岐導波路16を第1及び第3端部16a1及び16b3に向けて伝播していく過程で、第1及び第2光導波路16a及び16bの内、幅が小さい第2光導波路16bに光電界を集中させていく。
その結果、固有モード光C5は、第1及び第2光導波路16a及び16bを第1及び第3端部16a1及び16b3に向けて伝播するにつれて、第1光導波路16aに分布する第3成分C5aの強度は減少し、第2光導波路16bに分布する第4成分C5bの強度は増していく。
結果として、第1及び第3端部16a1及び16b3の位置において、固有モード光C5の光界分布は、第2光導波路16bの第3端部16b3に集中する。そして、固有モード光C5は、第3端部16b3に接続された入力用光導波路26から発光素子LDに向けて出力される。
このように、第1及び第2グレーティングG1及びG2で下り光信号が反射されることに由来して発生する第3迷光は、発光素子LDへと入力されるフィードバック光となる。ただし、下り光信号の第2波長(1.49μm)は、上り光信号由来の第2迷光(第1波長1.31μm)よりも強度が小さく長波長であるため、発光素子LDの発光に与える影響は小さい。
<第4迷光>
図7に示したように、非対称幅分岐導波路16の作用が充分でない場合、第2及び第4端部16a2及び16b4の位置において、強度が等しく位相が反転した第1及び第2成分C7a及びC7bを含む固有モード光C7が励起される。
この固有モード光C7が反対称な強度分布を持っている結果、第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bのそれぞれには、位相が反転し、強度が等しい第1基本モード光C8aと第2基本モード光C8bとが伝播する。
ところで、第1及び第2グレーティングG1及びG2は、下り光信号の波長の光を反射しないので、第1及び第2基本モード光C8a及びC8bは、第1及び第2グレーティングG1及びG2に入力されたときの対称性を維持したまま第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bを伝播して、テーパ状光導波路22に至る。
テーパ状光導波路22に至った第1及び第2基本モード光C8a及びC8bは、図7に示したように、反対称性の高次モード光C9を励起する。ところで、テーパ状光導波路22に接続されている出力用光導波路28は、シングルモードの光導波路であるため、反対称性の高次モード光C9は伝播することができず、基板12に放射光Sとして放射され、取り除かれる。
(3)シミュレーション
(3−1)光波長フィルタのシミュレーション
続いて、図8及び図9(A)及び(B)を参照して、光波長フィルタ10のシミュレーションについて説明する。
まず、シミュレーションの条件について説明する。シミュレーションは周知の2次元セミベクトルBPM(Beam Propagation Method)法を用いて行っている。ところで、2次元セミベクトルBPM法では、第1及び第2グレーティングG1及びG2で反射されることで伝播方向が反転する光を取扱うことができない。従って、このシミュレーションでは、図8に示すように、第1及び第2グレーティングG1及びG2を備えない構造体30について計算を行っている。より詳細には、第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bから第1及び第2グレーティングG1及びG2を取り除いた構造体30についてシミュレーションを行っている。
なお、図8に示した構造体30は、第1及び第2グレーティングG1及びG2を備えていない点を除き、図1に示した光波長フィルタ10と同様に構成されている。従って、図8についての説明は省略する。
シミュレーション結果の説明に先立ち、まずシミュレーションの実施条件を挙げておく。
構造体30は、屈折率3.5のシリコンで形成されているものとする。また、構造体30は、屈折率が1.46のSiO2製のクラッド14に埋め込まれているものとする。
また、非対称幅分岐導波路16の長さL1は、300μmとする。第1及び第2光導波路16a及び16bの幅wは300nmとし、幅の変化分Δwは30nmとする。さらに、第1及び第2光導波路16a及び16bの第1間隔Gは0.3μとし、間隔の変化分ΔGは0.2μmとする。さらに、テーパ状光導波路22の光伝播方向に沿った長さを16μmとし、幅を0.8μmとする。
このような条件でシミュレーションを行い、図9(A)及び(B)に示す結果を得た。
図9(A)は、第2波長1.49μmの下り光信号が第1光導波路16aに入力された場合の光の強度分布を示す模式図である。
図9(A)によると、第1光導波路16aを伝播する下り光信号は、非対称幅分岐導波路16を第2及び第4端部16a2及び16b4に向かって伝播するにつれて、第2光導波路16bに光強度を移行していく。そして、第2及び第4端部16a2及び16b4に至ると、上述したように対称な固有モード光を励起する。
この固有モード光は、上述したように、第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bに分かれて伝播し、テーパ状光導波路22において合体し、再び対称な固有モード光となる。この対称な固有モード光は、出力用光導波路28から外部に出力される。
図9(B)は、第1波長1.31μmの上り光信号が第2光導波路16bに入力された場合の光の強度分布を示す模式図である。
図9(B)によると、第2光導波路16bを伝播する上り光信号は、非対称幅分岐導波路16を第2及び第4端部16a2及び16b4に向かって伝播するにつれて、第1光導波路16aに光強度を移行していく。そして、第2及び第4端部16a2及び16b4に至ると、上述したように反対称な固有モード光を励起する。
この固有モード光は、上述したように、第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bに分かれて伝播し、テーパ状光導波路22において合体し、反対称な固有モード光となる。この反対称な固有モード光は、高次モード光であるので、基板12に放射される。
(3−2)グレーティングのシミュレーション
前項では、第1及び第2グレーティングG1及びG2を備えない構造体30についてシミュレーションを行った。そこで、この項では、第1及び第2グレーティングG1及びG2に関するシミュレーションを行う。
図10を参照して、第1及び第2グレーティングG1及びG2のシミュレーションについて説明する。図10は、グレーティングのシミュレーション結果を示す反射特性図であり、縦軸が反射光及び透過光の光強度(任意単位)であり、横軸が波長(μm)である。
このシミュレーションは、周知のFDTD(Finite Difference Time Domain)法を用いて行ったものである。
シミュレーションに用いたグレーティングは、既に説明した第1及び第2グレーティングG1及びG2と同様の構造のものを用いた。すなわち、幅0.3μm及び高さ0.3μmの横断面矩形状の光導波路を仮定し、この光導波路の両側面に周期的に格子溝を形成してシミュレーション用のグレーティングとした。なお、格子溝の周期Λは、上り光信号の第1波長(1.31μm)の光を反射できるように、2662nmとした。また、格子溝の深さを15nmとし、格子溝の繰り返し回数を200回とした。
図10には、2本の曲線が描かれており、曲線1が反射光強度の波長依存性を表わしており、曲線2が透過光強度の波長依存性を表わしている。図10によれば、第1波長1.31μmにおいて、波長幅10nmで曲線1(反射光強度)が鋭いピークをもつことが分かる。発明者らの検討の結果、第1波長1.31μmにおける光の反射率は95%以上であった。
(4)非対称幅分岐導波路の設計条件
(4−1)非対称幅分岐導波路の寸法
次に図11〜図14を参照して、非対称幅分岐導波路16の設計条件について説明する。
図11(A)〜図14(B)は、非対称幅分岐導波路16の寸法を変化させたときの迷光の強度をシミュレーションにより求めた特性図である。
まず始めに、シミュレーションの条件について説明する。
シミュレーションは、等価屈折率法を併用した2次元BPM法で行った。そして、シミュレーションでは、テーパ状光導波路22と第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bとの接続部の位置において、迷光の強度を計算した。
具体的には、第2波長1.49μmの下り光信号については、上述した反対称モードの第4迷光の強度を求めた。また、第1波長1.31μmの上り上り光信号については、上述した対称モードの第2迷光の強度を求めた。
非対称幅分岐導波路16はSi製とし、周囲のクラッド14はSiO2とした。また、非対称幅分岐導波路16を構成する第1及び第2光導波路16a及び16bの、基板12の第1主面12aに垂直に測った厚みは0.3μmとした。また、第1及び第2光導波路16a及び16bの幅wは0.3μmとした。
そして、(1)第1及び第2光導波路16a及び16bの幅の変化分Δw、(2)第2間隔G、(3)第2間隔Gの変化分ΔG、及び(4)非対称幅分岐導波路16の長さL1をシミュレーションのパラメータとして変更した。
次に、図面ごとにシミュレーションの条件を説明する。
なお、図11(A)〜図14(B)に共通して、縦軸は迷光の強度(任意単位)を示し、及び横軸は、第2間隔Gの変化分ΔG(μm)を示す。
図11(A)及び(B)においては、第1及び第2光導波路16a及び16bの幅の変化分Δwを10nmとした。また、第2間隔Gを300nmとした。
図11(A)は、上り光信号に対する迷光(第2迷光)の強度を計算したものであり、非対称幅分岐導波路16の長さL1の長さを変更して、5本の曲線が描かれている。曲線1は、L1が100μmの長さに対応する。曲線2は、L1が200μmの長さに対応する。曲線3は、L1が300μmの長さに対応する。曲線4は、L1が400μmの長さに対応する。曲線5は、L1が500μmの長さに対応する。
図11(B)は、下り光信号に対する迷光(第4迷光)の強度を計算したものであり、非対称幅分岐導波路16の長さL1の長さを変更して、3本の曲線が描かれている。曲線1は、L1が100μmの長さに対応する。曲線2は、L1が200μmの長さに対応する。曲線3は、L1が300μmの長さに対応する。
図12(A)及び(B)においては、第1及び第2光導波路16a及び16bの幅の変化分Δwを10nmとした。また、第2間隔Gを200nmとした。
図12(A)は、上り光信号に対する迷光(第2迷光)の強度を計算したものであり、非対称幅分岐導波路16の長さL1の長さを変更して、5本の曲線が描かれている。曲線1は、L1が100μmの長さに対応する。曲線2は、L1が200μmの長さに対応する。曲線3は、L1が300μmの長さに対応する。曲線4は、L1が400μmの長さに対応する。曲線5は、L1が500μmの長さに対応する。
図12(B)は、下り光信号に対する迷光(第4迷光)の強度を計算したものであり、非対称幅分岐導波路16の長さL1の長さを変更して、3本の曲線が描かれている。曲線1は、L1が100μmの長さに対応する。曲線2は、L1が200μmの長さに対応する。曲線3は、L1が300μmの長さに対応する。
図13(A)及び(B)においては、第1及び第2光導波路16a及び16bの幅の変化分Δwを20nmとした。また、第2間隔Gを300nmとした。
図13(A)は、上り光信号に対する迷光(第2迷光)の強度を計算したものであり、非対称幅分岐導波路16の長さL1の長さを変更して、5本の曲線が描かれている。曲線1は、L1が100μmの長さに対応する。曲線2は、L1が200μmの長さに対応する。曲線3は、L1が300μmの長さに対応する。曲線4は、L1が400μmの長さに対応する。曲線5は、L1が500μmの長さに対応する。
図13(B)は、下り光信号に対する迷光(第4迷光)の強度を計算したものであり、非対称幅分岐導波路16の長さL1の長さを変更して、3本の曲線が描かれている。曲線1は、L1が100μmの長さに対応する。曲線2は、L1が200μmの長さに対応する。曲線3は、L1が300μmの長さに対応する。
図14(A)及び(B)においては、第1及び第2光導波路16a及び16bの幅の変化分Δwを30nmとした。また、第2間隔Gを300nmとした。
図14(A)は、上り光信号に対する迷光(第2迷光)の強度を計算したものであり、非対称幅分岐導波路16の長さL1の長さを変更して、5本の曲線が描かれている。曲線1は、L1が100μmの長さに対応する。曲線2は、L1が200μmの長さに対応する。曲線3は、L1が300μmの長さに対応する。曲線4は、L1が400μmの長さに対応する。曲線5は、L1が500μmの長さに対応する。
図14(B)は、下り光信号に対する迷光(第4迷光)の強度を計算したものであり、非対称幅分岐導波路16の長さL1の長さを変更して、3本の曲線が描かれている。曲線1は、L1が100μmの長さに対応する。曲線2は、L1が200μmの長さに対応する。曲線3は、L1が300μmの長さに対応する。
図11(A)〜図14(B)を参照すると、上り光信号及び下り光信号の両者において、非対称幅分岐導波路16の長さL1が大きくなるほど迷光の強度が減少する傾向を示すことが分かる。図11(A)〜図14(B)のシミュレーション結果を勘案すると、非対称幅分岐導波路16の長さL1は、200μm以上であることが好ましい。長さL1を200μm以上とすることにより、迷光の強度を−15dB以下にまで低減させることができる。
また、図11(A)〜図14(B)を参照すると、第2波長が1.49μmの下り光信号の方が、第1波長が1.31μmの上り光信号よりも全体的に迷光の強度が低いことが分かる。これは、波長の長い下り光信号の方が、第1及び第2光導波路16a及び16b間での結合係数が大きいことに由来していると思われる。
図11(A)〜図14(B)を参照すると、第2間隔Gの変化分ΔGの最適値は、上り光信号と下り光信号とで異なっていることが分かる。具体的には、上り光信号においては、ΔGは、100〜200nmであることが好ましく、下り光信号においては、ΔGは、200〜300nmであることが好ましい。これらの結果から、上り光信号及び下り光信号の両光信号について迷光を少なくするためには、ΔGは200nmとすることが好ましい。ΔGの値を200nmとすることにより、迷光の強度を−15dB以下にまで低減することができる。
なお、図12(A)及び(B)に示したように、第1及び第2光導波路16a及び16bの幅の変化分Δwが10nmと小さい場合であっても、非対称幅分岐導波路16の第1間隔G+ΔGを0.2μm以上とすることにより、迷光の強度を下げることが可能であることが分かる。
以下、この点について詳述する。幅の変化分Δwが小さい場合には、第1及び第2光導波路16a及び16bの第2間隔Gを狭くすることにより、第2及び第4端部16a2及び16b4の位置において、両光導波路16a及び16b間の結合係数を大きくすることが必要となる。
ところで、非対称幅分岐導波路16においては、迷光の強度は、第1及び第3端部16a1及び16b3の位置におけるΔβ/Kに反比例していることが知られている。ここで、Δβは、第1及び第3端部16a1及び16b3の位置における第1及び第2光導波路16a及び16bの間の伝播定数差である。また、Kは、第1及び第3端部16a1及び16b3の位置における結合係数である。
ところで、従来周知のようにΔβは、第1及び第2光導波路16a及び16bの幅の変化分Δwに比例している。よって、図12(A)及び(B)のように第1及び第2光導波路16a及び16bの幅の変化分Δwが小さいときに、迷光の強度の指標となるΔβ/Kを小さい値にするためには、第1及び第3端部16a1及び16b3の位置における結合係数Kを小さい値にする必要がある。つまり、第1及び第3端部16a1及び16b3間の距離を大きくする、つまり第2間隔Gの変化分ΔGを大きくする必要がある。
また、これらのシミュレーション結果から、以下の二つの式を得ることができる。
K0L1>5・・・(1)
9>Δβ/K>3・・・(2)
ここで、K0は、第2及び第4端部16a2及び16b4の位置における第1及び第2光導波路16a及び16bの間の結合係数を表わす。また、Δβは、第1及び第3端部16a1及び16b3の位置における、第1及び第2光導波路16a及び16bの間の伝播定数差を表わす。また、Kは、第1及び第3端部16a1及び16b3の位置における、第1及び第2光導波路16a及び16bの間の結合係数を表わす。
なお、(1)式及び(2)式を得るに当たっては、第1及び第2光導波路16a及び16bの幅の変化分Δwに対する、同光導波路の等価屈折率の変化率を2×10−4nm−1と仮定した。また、結合係数K0の値は、第2間隔Gを300nmとしたとき、波長1.49μmの下り光信号に対してK0=0.1μm−1を用い、波長1.31μmの上り光信号に対してK0=0.01μm−1を用いた。
(1)式及び(2)式を満たすように、非対称幅分岐導波路16を設計することにより、迷光の強度を−15dB以下に抑えることができる。
(4−2)非対称幅分岐導波路の寸法誤差の影響
次に図15(A)及び(B)を参照して、非対称幅分岐導波路16の幅wに対する寸法誤差の影響について説明する。
図15(A)は、第1波長1.31μmの上り光信号について、非対称幅分岐導波路16の幅誤差の説明に供する特性図であり、縦軸は光強度(任意単位)を示し、横軸は幅誤差(μm)を示す。図15(B)は、第2波長1.49μmの下り光信号について、非対称幅分岐導波路16の幅誤差の説明に供する特性図であり、縦軸は光強度(任意単位)を示し、横軸は幅誤差(μm)を示す。
初めに、シミュレーションの条件について説明する。
シミュレーションは、等価屈折率法を併用した2次元BPM法で行った。
また、第2及び第4迷光の強度は、テーパ状光導波路22と第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bとの接続部の位置において計算した。上り光信号の強度は、第1光導波路16aの第1端部16a1の位置で計算した。下り光信号の強度は、出力用光導波路28の位置で計算した。
また、非対称幅分岐導波路16としては、長さL1を300μmとし、第1及び第2光導波路の幅wを0.3μmとし、第1及び第2光導波路の幅の変化分Δwを20nmとし、第2間隔Gを0.2μmとし、及び第2間隔の変化分ΔGを0.2μmとしたものを用いた。なお、非対称幅分岐導波路16以外の構成要素の寸法は、(構造)の項で説明したものを用いた。
そして、第1及び第2光導波路16a及び16bの幅誤差の大きさを僅かずつ変化させながら、上り光信号と第2迷光の強度、及び、下り光信号と第4迷光の強度を求めた。
図15(A)には、2本の曲線が描かれており、曲線1が上り光信号の強度を示し、曲線2が第2迷光の強度を示す。また、図15(B)には、2本の曲線が描かれており、曲線1が下り光信号の強度を示し、曲線2が第4迷光の強度を示す。
図15(A)及び(B)を参照すると、上り光信号及び下り光信号の両信号において、幅誤差が−0.03μm〜0.03μmの範囲内で、第2及び第4迷光の強度は、それぞれ上り光信号及び下り光信号の1/100以下の低い強度を保っている。
このことから、非対称幅分岐導波路16は、幅誤差に対して方向性結合器よりも良好な耐性を有していることが分かる。
(5)効果
この実施の形態の光波長フィルタ10は、非対称幅分岐導波路16を用いることにより、方向性結合器を不要とすることができる。
また、この実施の形態の光波長フィルタ10に用いられる非対称幅分岐導波路16は、方向性結合器よりも寸法誤差に対する耐性が高い。よって、光波長フィルタ10の製造時に高い寸法精度が要求されず、方向性結合器を用いた従来の光波長フィルタに比較して容易に作成することができる。
(実施の形態2)
図16を参照して、実施の形態2の光波長フィルタの構造について説明する。図16は、光波長フィルタ40の平面図である。
光波長フィルタ40は、第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bが、平面型多モード光導波路42に変更された以外は、実施の形態1で説明した光波長フィルタ10と同様に構成されている。従って、図16において、図1と同様の構成要素には同符号を付してその説明を省略することもある。また、図16においては、基板12及びクラッド14の図示を省略している。
光波長フィルタ40には、実施の形態1の第1及び第2チャネル型光導波路18a及び18bと同様の作用をする平面型多モード光導波路42を備えている。以下、この平面型多モード光導波路42について説明する。
平面型多モード光導波路42は、第1及び第2光導波路16a及び16bの第2及び第4端部16a2及び16b4に接続された平面型光導波路である。
平面型多モード光導波路42は、波長フィルタ40の対称軸40Cを長手方向の中心軸として線対称な矩形状に形成されている。そして、この対称軸40Cを挟んで、一方側と他方側とで半周期ずれた第1及び第2グレーティングg1及びg2を備えている。
ここで、第1及び第2グレーティングg1及びg2の周期Λは、実施の形態1の場合と同様に、上り光信号の波長の光を反射する大きさとする。また、第1及び第2グレーティングg1及びg2の格子溝は、平面型多モード光導波路42の第1主面12aに平行な上面に形成されている。
平面型多モード光導波路42の第1及び第2光導波路16a及び16bと接続されていない端部には、実施の形態1と同様のテーパ状光導波路22が接続されている。
次に、光波長フィルタ40の動作について簡単に説明する。
この光波長フィルタ40では、第1及び第2グレーティングg1及びg2が半周期ずれて形成されている。その結果、第1及び第2光導波路16a及び16bから入力された上り光信号由来の反対称モード光を対称モード光として反射することができる。その結果、光波長フィルタ40は、実施の形態1の光波長フィルタ10と同様に動作する。