JP2010229469A - 冷間加工特性に優れる高強度線材及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】異形線加工を行う線材において、高強度、且つ高延性を付与することができる高強度異形鋼線用線材と、その製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.80超〜1.1%、Si:0.7〜1.3%、Mn:0.2〜0.8%、N:0.001〜0.006%、B:0.0004〜0.0025%を含有し、更に、Al:0.005〜0.05%、Ti:0.005〜0.02%の何れか1種又は2種を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、線材の直径が5.0〜15.0mmであり、表層からの深さが100μm以内において、非パーライト組織の分率が10%未満、且つ、平均パーライトブロック粒径R[μm]がR≦0.625×d+8.6の関係を満足し、引張強さTS[MPa]がTS≧350+1000×[C]+150×[Si]+75×[Mn]−9×dの関係を満足する、冷間加工特性に優れる高強度線材。
【選択図】なし

Description

本発明は、冷間加工特性に優れる高強度線材及びその製造方法に関し、例えばワイヤーロープやフレキシブルパイプ用として、線材を伸線加工や冷間圧延などの冷間加工を施して製造される平鋼線やZ線などの高強度異形線用線材に関する。
パーライト鋼の異形ワイヤーの高強度化には、通常熱間圧延後の直接パテンティング、又はステルモア冷却により製造した線材に対しパテンティングを行う、あるいはC量の増加、Si、Cr等の合金元素の添加で、セメンタイト分率の増加、フェライト相の固溶強化や、パーライトのラメラー間隔を微細化させることにより、冷間加工前の線材強度を向上させることが有効である。
例えば、下記特許文献1には、Si、Crを添加した鋼種に熱間圧延後に溶融塩中でパテンティングを行った後、異形加工を行うことで、200kgf/mm以上の高強度異形鋼線が製造できることが記載されている。
ところで、Siの添加は、上述したようにフェライトの固溶強化や、0.8%程度のSi含有量であると熱処理時の強度低下抑制に有効である。しかしながら、Siはフェライト生成元素であるため、このSiの添加により鋼片加熱時に脱炭し易くなる。さらに、恒温変態のノーズ温度が上昇するため、パテンティング後の組織では表層や内部の粒界部分に上部ベイナイトやフェライトといった非パーライト組織が生成しやすく、この部分は冷間加工後の破壊の起点となり易い。
このため、同じ冷間加工度では通常のSiの含有量が0.2%程度の炭素鋼よりも延性が低くなる傾向があり、その結果、冷間加工率を増やした場合に伸線加工中のワレや、ワイヤーの曲げ試験時の折損の確率が増大し、生産性や歩留の低下を招くことになる。
一方、これら非パーライト組織の低減のためには、Bの添加が有効であり、本発明者らが下記特許文献2で提案しているように、パテンティング前に0.0002%以上の固溶Bを含有させることで、非パーライト組織を低減させ、伸線加工性を向上させる方法がある。しかしながら、歪みが不均一となる異形加工においては、高強度化を狙い、且つ曲げ加工を行う際にワレの発生しない限界の加工度をさらに向上させるには不十分であった。
特許第3298688号公報 特開2007−39800号公報
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、異形線加工を行う線材において、高強度、且つ高延性を付与することができる、冷間加工特性に優れる高強度線材及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決することを目的とした本発明の要旨は、以下のとおりである。
〔1〕 質量%で、
C:0.80超〜1.1%、
Si:0.7〜1.3%、
Mn:0.2〜0.8%、
N:0.001〜0.006%、
B:0.0004〜0.0025%
を含有し、更に、
Al:0.005〜0.05%、
Ti:0.005〜0.02%の何れか1種又は2種を含有し、
残部がFe及び不可避不純物からなり、
線材の直径が5.0〜15.0mmであり、
表層からの深さが100μm以内において、非パーライト組織の分率が10%未満、且つ、平均パーライトブロック粒径R[μm]が下記式(1)の関係を満足し、
引張強さTS[MPa]が下記式(2)の関係を満足することを特徴とする、冷間加工特性に優れる高強度線材。
R≦0.625×d+8.6 …(1)
〔式(1)中において、dは、線材の直径[mm]を表す。以下同様。〕
TS≧350+1000×[C]+150×[Si]+75×[Mn]−9×d …(2)
〔式(2)中において、[C],[Si],[Mn]は、[ ]内の各元素の鋼中での質量%濃度を示す。以下同様。〕
〔2〕 更に、質量%で、
Cr:0.5%以下、
Ni:0.5%以下、
Co:0.5%以下、
V:0.2%以下、
Mo:0.2%以下、
W:0.2%以下、
Nb:0.1%以下
の何れか1種又は2種以上を含有することを特徴とする、前記〔1〕に記載の冷間加工特性に優れる高強度線材。
〔3〕 前記〔1〕又は〔2〕に記載の化学組成からなる鋼片を、1000〜1150℃の炉内にて加熱し、圧延することにより、直径5.0〜15.0mmの線材とし、最終圧延スタンドにて圧延した後に冷却を行い、800〜900℃の線材温度で巻取を行い、次いで、溶媒温度Tp[℃]が下記式(3)の関係を満足する溶融塩、溶融鉛又は流動床中に浸漬してパテンティング処理を施すことを特徴とする、冷間加工特性に優れる高強度線材の製造方法。
540+[Si]×70−d×2≧Tp≧510+[Si]×70−d×2 …(3)
以上のように、本発明によれば、鋼材の成分組成を特定し、加熱条件と巻取条件を制御し、Siに応じた溶媒温度を選択することで、線材の直径が5.0〜15.0mmであり、表層からの深さが100μm以内において、非パーライト組織分率が10%未満、且つ、平均パーライトブロック粒径(R)がR≦0.625×d+8.6の関係を満足し、引張強さ(TS)がTS≧350+1000×[C]+150×[Si]+75×[Mn]−9×dの関係を満足する範囲に組織が制御される。これにより、不均一な変形が起こる平鋼線やZ線、扇形線などの異形加工においても、またその後の曲げ加工においても、ワレが発生することなく、高強度で、且つ延性を保つことが可能な高強度異形鋼線用線材を得ることが可能である。
実施例で用いた線材の表層部分の非パーライト組織率と平均パーライトブロック粒径との関係を示す特性図である。 実施例で作製した平鋼線のC含有量とTSとの関係を示す特性図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明は、質量%で、C:0.80超〜1.1%、Si:0.7〜1.3%、Mn:0.2〜0.8%、N:0.001〜0.006%、B:0.0004〜0.0025%を含有し、更に、Al:0.005〜0.05%、Ti:0.005〜0.02%の何れか1種又は2種を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、線材の直径が5.0〜15.0mmであり、表層からの深さが100μm以内において、非パーライト組織の分率が10%未満、且つ、平均パーライトブロック粒径R[μm]が下記式(1)の関係を満足し、引張強さTS[MPa]が下記式(2)の関係を満足する、冷間加工特性に優れる高強度線材である。
R≦0.625×d+8.6 …(1)
〔式(1)中において、dは、線材の直径[mm]を表す。以下同様。〕
TS≧350+1000×[C]+150×[Si]+75×[Mn]−9×d …(2)
〔式(2)中において、[C],[Si],[Mn]は、[ ]内の各元素の鋼中での質量%濃度を示す。以下同様。〕
先ず、本発明の鋼材成分を限定した理由について説明する。なお、%の表記は特に断りがない場合は質量%を意味する。
(C:0.80超〜1.1%)
Cは、ラメラー間隔の微細化とθ厚みの増加により強度を増す効果がある。しかしながら、Cが0.80%以下では、線材強度が低くなると共に、亜供析となるため、非パーライト組織が上昇する。一方、Cが1.1%を超えると、中心偏析部で初析セメンタイトが析出し、伸線加工性を悪化させる。このため、Cの含有量を0.80超〜1.1%とした。
(Si:0.7〜1.3%)
Siは、脱酸元素、フェライトの固溶強化元素であるとともに、熱処理時のラメラーセメンタイト分解を抑制する。しかしながら、Siが0.7%未満では、セメンタイト分解を抑制する効果が低くなる。一方、Siが1.3%を超えると、圧延時の脱炭、恒温変態ノーズの上昇により、非パーライト組織率が上昇する。このため、Siの含有量を0.7〜1.3%とした。
(Mn:0.2〜0.8%)
Mnは、固溶強化元素であり、線材の強度上昇のためには0.2%以上とし、一方、Mnが0.8%を超えると、変態が遅延し、中心偏析部では未変態組織が生成する可能性がある。このため、Mnの含有量を0.2〜0.8%とした。
(N:0.001〜0.006%)
Nは、Al、Tiと窒化物を形成し、オーステナイト粒径の粗大化を抑制する。上記効果を得るために、Nは0.001%以上必要であるが、添加量が多すぎると余剰のNがBNとなることでBの効果を低下させる上、冷間加工後にひずみ時効を起こし延性を低下させるため、その含有量を0.006%以下とした。
(B:0.0004〜0.0025%)
Bは、固溶Bとしてオーステナイト中に存在する場合、粒界に偏析して初析フェライトや上部ベイナイトの析出を抑制する。しかしながら、0.0004%未満であると、固溶Bが得られず、一方、Bの添加量が0.0025%を超えると、粒界にFe23(C,B)の炭化物が析出し、延性を低下させるため、Bの含有量の上限を0.0025%に限定した。
(Al:0.005〜0.05%)
Alは、脱酸元素として有効である。また、窒化物を形成し、オーステナイト粒の粗大化を抑制する。その効果を得るためには、0.005%以上の添加が必要である。しかしながら、Alの含有量が0.05%を超えると、Al介在物による冷間加工性が低下するため、0.05%以下が望ましい。なお、Tiを添加している場合には、Alの添加量は0%でも構わない。
(Ti:0.005〜0.02%)
Tiは、脱酸元素として有効である。また、Alと同様に、窒化物を形成して、オーステナイト粒の粗大化を抑制する。その効果を得るためには、0.005%以上の添加が必要である。しかしながら、Tiの含有量が0.02%を超えると、粗大な炭窒化物を形成して冷間加工性を低下させるため、0.02%以下であることが望ましい。なお、Alを添加している場合には、Tiの添加量は0%でも構わない。
なお、不純物であるPとSは、特に限定しないが、各々0.02%以下とすることが望ましい。
また、本発明の冷間加工特性に優れる高強度線材は、上記成分を基本組成とするものであるが、更に、強度・靭性・延性等の機械的性質の向上を目的として、Cr:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Co:0.5%以下、V:0.2%以下、Mo:0.2%以下、W:0.2%以下、Nb:0.1%以下の何れか1種又は2種以上を含有してもよい。
すなわち、本実施形態で説明する冷間加工特性に優れる高強度線材は、以下に説明する選択的許容添加元素を1種又は2種以上、積極的に含有した成分組成としてもよい。
(Cr:0.5%以下)
Crは、パーライトのラメラー間隔を微細化させるとともに、伸線時の加工硬化率を向上させる。上記作用を活用するためには、Crを0.05%以上添加することが好ましい。一方、Crの過剰な添加はパーライト変態終了時間が長くなるほか、メカニカルデスケーリング性が悪化するため、その上限値を0.5%とした。
(Ni:0.5%以下)
Niは、線材の伸線加工性と靭性を高める効果がある。上記作用を有効に発揮させるためには、Niを0.1%以上添加することが好ましい。一方、Niを過剰に添加すると、変態終了時間が長くなるので、その上限値を0.5%とした。
(Co:0.5%以下)
Coは、パテンティング処理時の初析セメンタイトの析出を抑制するのに有効な元素である。上記作用を有効に発揮させるには、Coを0.1%以上添加することが好ましい。一方、Coを過剰に添加しても上記作用は飽和し製造コストに見合わなくなるため、その上限値を0.5%とした。
(V:0.5%以下)
Vは、微細な炭化物をフェライト中に形成し、強度上昇に寄与する。上記効果を得るためには、Vを0.02%以上添加することが好ましい。一方、Vの過剰な添加は粗大なVCを形成し、冷間加工性を低下させるとともに、パーライト変態時間が長くなるため、その上限値を0.5%とした。
(Mo:0.2%以下)
Moは、鋼線の耐食性を高める効果がある。上記作用を有効に発揮させるには、Moを0.03%以上添加することが好ましい。一方、Moを過剰に添加すると、変態終了時間が長くなるので、その上限値を0.2%とした。
(W:0.2%以下)
Wは、鋼線の耐食性を高める効果がある。上記作用を有効に発揮させるには、Wを0.03%以上添加することが好ましい。一方、Wを過剰に添加すると、変態終了時間が長くなるので、その上限値を0.2%とした。
(Nb:0.1%以下)
Nbは、Tiと同様に炭窒化物を生成することで、加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する効果がある。上記作用を有効に発揮させるには、Nbを0.03%以上添加することが好ましい。一方、Nbを過剰に添加すると、変態終了時間が長くなるので、その上限値を0.1%とした。
次に、本発明の目的とする冷間加工特性に優れる高強度線材において、冷間加工中のワレ発生防止、及び、曲げ加工中のワレ発生防止に重要である線材の組織について説明する。
(非パーライト組織の分率:10%以下)
線材表層部分からの深さが100μm以内の範囲において、旧オーステナイト粒界に沿って生成したフェライトや上部ベイナイトといった非パーライト組織の分率を10%以下とすることにより、冷間加工時のワレが抑制される。したがって、線材表層部分からの深さが100μm以内の範囲において、非パーライト組織の分率を10%以下とした。
(平均パーライトブロック粒径R)
線材表層部分からの深さが100μm以内の範囲において、線材の直径d[mm]に合わせてパーライトブロック粒径Rが上記式(1)の関係を満足することで、冷間加工時の不均一な変形に対するワレ発生の抵抗力が向上する。したがって、平均パーライトブロック粒径R[μm]を0.625×d+8.6以下とした。
(線材の直径が5.0〜15.0mm)
線材の直径(線径)は、5.0mm以上で異形線として十分な加工減面率が確保可能で、高強度化が可能となる。一方、線径が15.0mmを超えると、熱間圧延後の溶媒浸漬時に表層部と中心部との間で硬さの勾配が大きくなり、その後の伸線加工特性を低下させるため、線材の直径の上限値を15.0mmとした。
(引張強さTS)
線材の引張強さTSは、高強度であるほど冷間加工による加工強化代を低減可能であるため、異形線とする際に、ワイヤーの加工中のワレ、曲げ加工時のワレ発生を抑制しながら、高強度化することが可能である。このような観点から、本発明における高強度線材では、線材の引張強さTSを上記式(2)の関係を満足する範囲とした。
本発明の冷間加工特性に優れる高強度線材の製造方法は、上記化学組成からなる鋼片を、1000〜1150℃の炉内にて加熱し、圧延することにより、直径5.0〜15.0mmの線材とし、最終圧延スタンドにて圧延した後に冷却を行い、800〜900℃の線材温度で巻取を行い、次いで、溶媒温度Tp[℃]が下記式(3)の関係を満足する溶融塩、溶融鉛又は流動床中に浸漬してパテンティング処理を施すことを特徴とする。
540+[Si]×70−d×2≧Tp≧510+[Si]×70−d×2 …(3)
(鋼片の加熱温度)
鋼片の加熱温度は、炭化物や窒化物を溶解させ、パテンティング処理時に各元素の効果を得るために、1000℃以上とすることが好ましい。一方、鋼片の加熱温度が高くなると、粒界ピニング粒子のオストワルド成長によるγ粒径の粗大化や、鋼片表層の脱炭が顕著となるため、1150℃以下、好ましくは1100℃以下、更に好ましくは1050℃以下の範囲とする。
(熱間圧延後の巻取温度)
線材熱間圧延後の巻取温度は、900℃を超えると、γ粒径が粗大化し、パーライト変態後のブロック粒径が粗大化する。一方、巻取温度が800℃未満であると、巻き取り後に、溶媒に浸漬するまでの間に線材温度が低下し、パーライト変態が開始してパテンティング処理後に不均一なラメラー組織となるため、その温度範囲を800〜900℃とした。
(溶媒温度)
パテンティング処理時の溶媒温度Tpは、上記式(3)の関係を満足する範囲以下であると、表層の非パーライト組織の分率が上昇し、ワレ発生の起点となるため、冷間加工特性が低下する。一方、溶媒温度Tpが上記式(3)の関係を満足する範囲を超えると、上記式(2)の関係を満足することが困難となり、且つ、パーライトブロック粒径が粗大化するため、上記式(3)の関係を満足する範囲に限定した。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
先ず、本発明鋼(A〜J)及び比較鋼(K〜S)の化学成分、加熱条件、パテンティング条件を表1に示し、これら本発明鋼及び比較鋼からなる線材の引張り強さTSと表層組織の特徴を表2に示す。また、表2に示す13.5mmの線材については、厚み3mm、幅10mmの平鋼線を作製し、その機械的性質と曲げ加工性を合わせて示す。
Figure 2010229469
Figure 2010229469
表層組織と曲げ加工性の評価については、以下の試験にて行った。
非パーライト組織の分率については、パテンティング線材をその長さ方向と垂直な断面(C断面)で切断し、樹脂に埋め込み、研磨を行った後、ピクリン酸を用いた化学腐食を実施し、光学顕微鏡による組織観察から非パーライト組織率を決定した。組織は線材表層部分から100μmの深さまでの領域の組織写真を500倍にて4視野ずつ撮影し、画像解析によりその面積率の平均値を測定した。
平均パーライトブロック粒径については、非パーライト組織率同様、パテンティング線材のC断面を樹脂に埋め込み、研磨を行った後、EBSD装置にて線材表層から100μm深さの領域を4箇所測定し、パーライトブロック粒径の平均値を測定した。なお、パーライトブロック粒径を定義する際に、パーライト中のフェライト同士の方位差が9°となる部分をブロックの粒界と定義した。
曲げ試験については、平鋼線の厚み方向を30mm径の円筒に垂直にあて、180°巻きつけ、割れ発生の有無を確認し、割れの発生が無いものについては加工性に優れると判断した。
また、比較のため、非パーライト組織率と平均パーライトブロック粒径のグラフを図1に示す。但し、図1に示すグラフの縦軸には、本発明の上限値を各サンプルの数値で除した値を用いた。平鋼線については、本発明鋼は、引張強さ(TS)≧1000×[C]+1100 …(4)を満足する結果が得られた。 また、実施例で作製した平鋼線のCの含有量とTSとの関係を図2に示す。なお、図2では、上記式(4)を基準に平鋼線のTSを評価した。
表1及び表2に示すように、サンプルA〜Jは、本発明鋼であり、サンプルK〜Sは、比較鋼である。このうち、
サンプルA〜J(本発明鋼)は、本発明の条件を満たすものであり、冷間加工特性に優れた高強度線材が得られた。
サンプルK(比較鋼)は、加熱温度、サンプルN(比較鋼)は、巻取温度がそれぞれ高かったため、ブロック粒径を微細化できなかった。さらに、平鋼線段階では曲げ加工時にワレが発生した。
サンプルL(比較鋼)は、パテンティング時のTpが低かったため、非パーライト組織を抑制できなかった。
サンプルM(比較鋼)は、Tpが高かったため、線材の引張強さが不足し、さらにブロック粒径も粗大化した。さらに、平鋼線段階では本発明鋼よりも100MPa以上強度が低くなった。
サンプルO(比較鋼)は、Bを含有しておらず、非パーライト組織を抑制できなかった。サンプルP(比較鋼)は、Bを多量に含有していたため、旧オーステナイト粒界にFe23(C,B)等の炭化物が多量に析出し、平鋼線段階では曲げ加工時にワレが発生した。
サンプルQ(比較鋼)は、Siの上限を超えているため、非パーライト組織を抑制できなかった。
サンプルR(比較鋼)は、Cの上限を超えているため、中心偏析部に粗大な初析セメンタイトが析出した。
サンプルS(比較鋼)は、パテンティング時の冷却速度が遅いため、TSが低く、且つ中心偏析部に初析セメンタイトが析出し、非パーライト組織を抑制できずブロック粒径も粗大化した。サンプルQ〜Sは平鋼線加工中に割れが発生したため、作製を中止した。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.80超〜1.1%、
    Si:0.7〜1.3%、
    Mn:0.2〜0.8%、
    N:0.001〜0.006%、
    B:0.0004〜0.0025%
    を含有し、更に、
    Al:0.005〜0.05%、
    Ti:0.005〜0.02%の何れか1種又は2種を含有し、
    残部がFe及び不可避不純物からなり、
    線材の直径が5.0〜15.0mmであり、
    表層からの深さが100μm以内において、非パーライト組織の分率が10%未満、且つ、平均パーライトブロック粒径R[μm]が下記式(1)の関係を満足し、
    引張強さTS[MPa]が下記式(2)の関係を満足することを特徴とする、冷間加工特性に優れる高強度線材。
    R≦0.625×d+8.6 …(1)
    〔式(1)中において、dは、線材の直径[mm]を表す。以下同様。〕
    TS≧350+1000×[C]+150×[Si]+75×[Mn]−9×d …(2)
    〔式(2)中において、[C],[Si],[Mn]は、[ ]内の各元素の鋼中での質量%濃度を示す。以下同様。〕
  2. 更に、質量%で、
    Cr:0.5%以下、
    Ni:0.5%以下、
    Co:0.5%以下、
    V:0.2%以下、
    Mo:0.2%以下、
    W:0.2%以下、
    Nb:0.1%以下
    の何れか1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の冷間加工特性に優れる高強度線材。
  3. 請求項1又は2に記載の化学組成からなる鋼片を、1000〜1150℃の炉内にて加熱し、圧延することにより、直径5.0〜15.0mmの線材とし、最終圧延スタンドにて圧延した後に冷却を行い、800〜900℃の線材温度で巻取を行い、次いで、溶媒温度Tp[℃]が下記式(3)の関係を満足する溶融塩、溶融鉛又は流動床中に浸漬してパテンティング処理を施すことを特徴とする、冷間加工特性に優れる高強度線材の製造方法。
    540+[Si]×70−d×2≧Tp≧510+[Si]×70−d×2 …(3)
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