JP2010221654A - 粉末射出成形法及び該方法に用いる射出成形金型 - Google Patents

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Abstract

【課題】成形材料から発生するガスのガス抜きを有効に行うことが可能であり、充填不良、ガス焼け、シワなどの成形不良の発生を有効に防止可能で、外観の優れる成形体を得ることが可能な粉末射出成形法を提供する。
【解決手段】無機粉末が熱可塑性樹脂中に分散された射出成形材料を、該熱可塑性樹脂の溶融下で射出成形金型内に形成されたキャビティ5内に射出充填し、該金型内で冷却固化することにより射出成形を行う粉末射出成形法において、前記射出金型として、真空引き用流路11を介してキャビティ5と連なる材料溜め空間13が形成され且つ材料溜め空間13が真空引き孔19に連なっている構造を有するものを使用し、真空引き孔19からの真空引きにより、樹脂溜め空間13から真空引き用流路11を介してキャビティ5内を真空引きしながら、キャビティ5内に射出成形材料を射出充填することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、無機粉末が熱可塑性樹脂中に分散された射出成形材料を射出成形する粉末射出成形法及び該方法に好適に使用される射出成形金型に関するものである。
従来、複雑な形状を有する金属製品やセラミック製品を製造するための手段として、粉末射出成形法が知られている。この粉末射出成形法を利用した製造方法では、金属粉末やセラミック粉末などの無機粉末をバインダーとなる熱可塑性樹脂に必要により可塑剤などと共に混練して調製された成形材料を、射出成形により所望の形状に成形し、得られた成形体(グリーン体)を脱脂、焼結することにより目的とする形状の製品が得られる。
上記の製造方法で採用されている射出成形手段が粉末射出成形法と呼ばれているものであり、プラスチックの分野で一般的に行われている射出成形技術を無機粉末材料の成形に応用した方法である。この方法では、無機粉末材料のグリーン体の成形に利用されている一般的な圧縮成形法では困難な複雑な形状の製品を高い寸法精度で製造することができるという利点がある。
ところで、上記のような粉末射出成形法では、金型内に形成されているキャビティ内に無機粉末を高充填した成形材料を射出充填するわけであるが、高速でキャビィティ内に充填されるため、キャビィティ内のエアーが排出されずにキャビィティ内に閉じ込められやすく、充填不良、ガス焼け、シワなどの成形不良が発生しやすい。したがって、該キャビティ内のエアーを効果的に除去することが必要であり、さらに、樹脂成分から発生する揮発性ガスなどを型外に排出することも必要である。上記不良はそのまま、その後の工程を経て得られる焼結体の外観や強度を損なう原因となる。
このような不都合を防止するために、例えば、特許文献1には、予めキャビティ内を高真空状態に保持しておき、成形材料を射出充填しながらキャビティ内からのガス抜きを行う射出成形法が提案されている。
また、特許文献2には、キャビティ内を取り囲むようにしてシール用パッキンが設けられており、入子によるパッキンの押圧によってキャビティ内の密封性を確保し得る構造の射出金型を使用し、該キャビティを密封した状態で真空引きして高真空に保持して成形材料を射出充填し、射出充填の終了後に入子によるパッキンの押圧を解除してキャビティの密封を解除してガス抜きを行う射出成形法が提案されている。
特開昭58−194523号公報 特開平8−142133号公報
しかしながら、上記特許文献1及び2で提案されている何れの方法も、キャビティ内に射出充填された成形材料(樹脂分)から発生するガスは、射出金型のパーティングラインから排気されるものであるため、ガス抜きを効果的に行うことが困難であり、充填不良、ガス焼け、シワなどの成形不良の発生を有効に防止することができず、さらなる改善が必要である。
従って、本発明の目的は、成形材料から発生するガスのガス抜きを有効に行うことが可能であり、成形不良を有効に防止し、外観の優れる成形体を得ることが可能な粉末射出成形法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、上記の粉末射出成形法を実施するために好適に使用される射出金型を提供することにある。
本発明によれば、無機粉末が熱可塑性樹脂中に分散された射出成形材料を、該熱可塑性樹脂の溶融下で射出成形金型内に形成されたキャビティ内に射出充填し、該金型内で冷却固化することにより射出成形を行う粉末射出成形法において、
前記射出金型として、真空引き用流路を介して前記キャビティと連なる材料溜め空間が形成され且つ該材料溜め空間が真空引き孔に連なっている構造を有するものを使用し、
前記真空引き孔からの真空引きにより、前記樹脂溜め空間から前記真空引き用流路を介して前記キャビティ内を真空引きしながら、該キャビティ内に前記射出成形材料を射出充填することを特徴とする粉末射出成形法が提供される。
本発明によれば、また、相対的に移動し得る複数の金型部材からなり、該複数の金型部材を合体させることにより、成形用空間となるキャビティが内部に形成される射出成形用金型において、
前記複数の金型部材を合体させた状態において、前記キャビティと共に、成形材料を該キャビティ内に導入するためのゲートと、真空引き用流路を介して該キャビティに連通している材料溜め空間と、該材料溜め空間に連なる真空引き孔が形成されることを特徴とする射出成形用金型が提供される。
本発明の射出金型においては、
(1)前記材料溜め空間は、キャビティ内に射出充填される射出成形材料の流動方向終端部側に形成されていること、
(2)前記キャビティと材料溜め空間とを連通せしめている前記真空引き用流路は、垂直方向断面積が0.1乃至10mmの範囲にあること、
(3)前記材料溜め空間は、前記キャビティの容積の3%以上の容積を有していること、
(4)前記キャビティの周囲には、パーティング面にシールリングが設けられていること、
が好適である。
本発明においては、真空引きしながら成形材料の射出充填が行われ、キャビティ内に充填された成形材料の一部は、真空引き用流路を通って材料溜め空間にまで流れ込む。このため、この成形材料から発生したガスは、一部の成形材料と共に、真空引き用流路を通ってキャビティ内から排出されることとなる。即ち、成形材料から発生するガスの排気(ガス抜き)を射出金型のパーティング面から行うものではなく、成形材料も通過し得る大きな径の流路からガス抜きが行われるばかりか、真空引きという動的手段により積極的にガス抜きが行われるため、ガス抜きが効果的に行われ、充填不良を効果的に防止でき、ガス焼けやシワの無い射出成形体を得ることができる。従って、このような射出成形体を焼結することにより、外観が良好で変形などの不都合が無く、寸法精度の高い製品を、強度低下を生じることなく製造することが可能となる。
本発明で用いる射出金型のパーティング面での平面断面図である。 図1の射出金型のA−A断面での側断面図である。 図1の射出金型のB−B断面での側断面図である。 図1の射出金型のC−C断面での側断面図である。
<射出成形材料>
本発明の粉末射出成形に供する射出成形材料は、無機粉末がバインダーとして機能する熱可塑性樹脂に分散されたものであり、必要により、可塑剤や滑剤などを含んでいる。
無機粉末は、最終製品を形成する無機材料の粉末であり、この射出成形材料の主成分となるため、射出成型材料の40〜80体積%、好ましくは約50〜75体積%を無機粉末が占める。無機粉末の量が少ないと、最終製品を得る工程(特に脱脂)での熱分解等により除去される成分量が多くなり、生産コストが増大するばかりか、割れや膨れが発生する恐れがある。また、焼結過程での体積減少が大きくなりすぎ、目的とする形状を得ることが困難となるおそれもあるからである。また、無機粉末の使用量が多すぎると、射出成形が困難となったり、得られる成形体の形状保持が困難となるおそれがある。
このような無機粉末としては、金属粉末やセラミック粉末を挙げることができる。
金属粉末としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、アルミニウム、銅、チタン、モリブデン、クロム、タングステン等の金属粉末、これらの金属を2種以上含む合金粉末等が用いられる。また、セラミック粉末としては、アルミナ粉末、ジルコニア粉末、窒化ケイ素粉末、窒化アルミニウム粉末、炭化ケイ素粉末等が用いられる。必要に応じて、これら金属粉末及びセラミック粉末の2種以上を適宜混合して用いることもできる。
また、これら無機粉末の粒径は、凝集等を生ぜず、均一に熱可塑性樹脂に分散し得るように、0.5乃至20μm程度の範囲であるのがよい。
上記無機粉末と共に使用される熱可塑性樹脂は、無機粉末を含む射出成形体に保形性を付与するバインダーとしての機能を有すると同時に、この成形材料に良好な流動性を付与するためのものであり、基本的には、無機材料の粉末の残量を占めている。
このような熱可塑性樹脂としては、保形性と射出成形に適した溶融流動性とを示し、さらに脱脂性(熱分解性)が良好であれば、従来公知のものを使用することができる。
例えば、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ2−エチルヘキシルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリアクリレート、セルロースアセテートブチレート、ニトロセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリオキシエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド等の酸素含有熱可塑性樹脂;石油レジン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの炭化水素系熱可塑性樹脂などが使用される。
また、滑剤は、得られる射出成形体に離型性を付与するために、必要により使用されるものであり、例えば、石油ワックス、天然ワックス、合成ワックス等のワックス類;ステアリン酸、ベヘニン酸等の高級脂肪酸;ジステアリルアミン等の高級脂肪族アミン;ステアリン酸アミド等の高級脂肪族アミド;などが、単独或いは2種以上の混合物の形で滑剤として使用される。
さらに、可塑剤は、射出成形材料の流動性や賦形性を付与するために必要により使用されるものであり、ポリエチレングリコールおよびその誘導体;ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、ベンジルブチルフタレート、およびジオクチルフタレートなどのフタル酸エステル類;ブチルステアレートなどのステアリン酸エステル類;トリクレゾールフォスフェート、トリ−N−ブチルフォスフェートなどのフォスフェート類;及びグリセリン;などが、1種単独或いは2種以上を組み合わせて使用される。
上記のように必要に応じて成形材料中に配合される滑剤や可塑剤は、熱可塑性樹脂のバインダーとしての性能を損なわない程度の量で配合されるべきであり、一般に、それぞれ、無機粉末100重量部当り1乃至10重量部程度の量で配合される。
また、各成分の配合は、ニーダー、押出機等の混練機を用いての溶融混練により行われる。
<射出金型>
ところで、上記のような射出成形材料の射出成形、即ち粉末射出成形では、通常のプラスチックの射出成形に比して高速で射出金型内(キャビティ内)に射出充填されるため、断熱圧縮により成形材料の発熱が顕著となり、これに伴い、吸湿等により無機粉末中に含まれる水分や、熱可塑性樹脂の分解ガス、或いは可塑剤や滑剤などの低分子量成分の揮発ガスなどが生成する。従って、射出成形に際しては、キャビティ内のエアーを除去するとともに、成形材料から発生するこれらのガスも効果的に除去することが、充填不良、ガス焼け、シワなどの成形不良を防止するために必要となる。また、成形材料はキャビィティ内へ充填された直後は溶融している状態であるため、揮発性ガスを発生する。そのため、それが固化するまでガスを除去することが必要となる。本発明では、キャビティへの樹脂の充填が完了した後、これに引き続いて真空引きが行われるため、成形材料から発生するこれらのガスを効果的に除去することができるのである。
本発明では、このようなガスを効果的に除去するために、一例として図1乃至図4に示す構造の射出金型が使用される。
図1乃至図4を参照して、この射出金型は、全体として1で示す固定型(上型)と全体として3で示す可動型(下型)とからなっている。
即ち、この射出金型は、可動型3を移動させて固定型1と合体させることにより、成形体の形状に対応するキャビティ5が形成され、このキャビティ5内に上述した成形材料が射出充填され、冷却固化することにより、キャビティ5の空間形状に合致する形状を有する射出成形体(グリーン体)が得られるわけである。
尚、図示されていないが、一般に、可動型3には、位置決めピンがキャビティ5が形成される側の面に形成されており、固定型1には、この位置決めピンを受ける孔が形成されており、位置決めピンが孔内に収容されるようにして可動型3を移動させて固定型1と合体させることにより、位置決め精度が確保され、目的とする形状のキャビティ5が形成されるようになっている。
また、固定型1には、上記のような射出シリンダーの射出ノズル(図示せず)が挿入されるスプルー7が形成されており、キャビティ5が形成されている状態において、このスプルー7に連通するランナー(材料受け空間)9が形成されている。このランナー9は、キャビティ5と同程度の幅を有しており、その上端部分において、やはりキャビティ5と同程度の幅を有するゲート(成形材料の流路)10に連通しており、このゲート10がキャビティ5に連通している(図1及び図2参照)。
即ち、図示されていない射出ノズルから射出される成形材料は、スプルー7から材料受け空間であるランナー9に流入して溜められ、このランナー9からゲート10を介してキャビティ5内に充填されることとなる。このような充填方式とすることにより、キャビティ5内に均等に成形材料を流入することができ、キャビティ5内に充填された成形材料(成形体)に歪が発生する等の不都合を有効に回避することができる。また、かかる説明から理解されるように、ゲート10の径(垂直方向長さ)は、成形材料がスムーズに流れるような大きさに設定されている。
また、キャビティ5のスプルー7とは反対側の部分(即ち、成形材料の流動終点部側)には、真空引き用流路11,11に連なっており、この真空引き用流路11は、それぞれ、キャビティ5と同程度の幅を有している材料溜め空間13に連なっている。さらに、材料溜め空間13は、連通孔15を介して負圧拡張空間17に連なっており、この負圧拡張空間17は、真空ポンプなどの真空装置に接続される真空引き孔19が連なっていると同時に、図1から理解されるようにキャビティ5の三方を取り囲むように形成されている。
即ち、射出成形に際しては、真空引き孔19からの脱気により、負圧拡張空間17が真空引きされるとともに、連通孔15を介して材料溜め空間13が真空引きされ、さらに真空引き用流路11を介してキャビティ5内が真空引きされるような構造となっている。
また、上記のような真空引きに際しては、真空引き用流路11から成形材料が材料溜め空間13に流入するような構造となっており、このような構造により成形材料から発生するガス抜きを効果的に行うことが可能となる。従って、真空引き用流路11の垂直方向断面積は、少なくとも成形材料が流れるような大きさとすべきであり、一般に、0.1乃至10mmの範囲程度に設定される。また、真空引きの効果を低減させないように、この流路11の長さt(図1参照)を必要以上に長くすることは避けるべきであり、一般に、1乃至10mm程度に設定される。
さらに、材料溜め空間13には、真空引きによって真空引き用流路11からキャビティ5内に充填された成形材料の一部が流入するものであるため、このような量の成形材料を収容し得る程度の容積を有していることが必要であり、一般に、キャビティ5の容積に対して3%以上の容積を有していればよい。
材料溜め空間13に成形材料の一部を流入させることにより、キャビィティ内のガスの残留を大幅に低減できるために、流動方向終端部側に発生しやすい外観不良を防止することが可能となる。
上記のような真空引き用流路11及び材料溜め空間13の位置等は、特に制限されるものではないが、一般的には真空引き及びガス抜きを効果的に行う上で、図1に示されているように、キャビティ5のゲート10とは反対側の部分(成形材料の流動終点部側)に、これらの空間を位置せしめるのがよく、さらにキャビティ5内に射出充填された成形材料からのガス抜きを均等に行うために、成形材料の流動終点部側のキャビティ5の大きさに合わせて適宜の間隔で複数の真空引き用流路11を設けるのがよく(図の例では2本)、このような真空引き用流路11の本数に合わせて、それぞれの流路11から成形材料が流入し得るように、材料溜め空間13の面積を設定するのがよい。
また、材料溜め空間13と負圧拡張空間17とを繋ぐ連通孔15は、成形材料が流れない程度の径を有していればよい。また、負圧拡張空間17は、キャビティ5の周囲を負圧とすることにより、固定型1と可動型3とを密着させ、キャビティ5の密封状態を高めるために形成されるものである。従って、この負圧拡張空間17は、必ずしも必要ではなく、例えば材料溜め空間13が大面積に形成されている場合には、負圧拡張空間17を設けず、材料溜め空間13に直接真空引き孔19を設けることもできる。
さらに、図示されていないが、上記のような負圧拡張空間17とキャビティ5との間の部分には、ベント溝を形成することもでき、このようなベント溝により、射出成形に際して、キャビティ5内のエアーを効果的に除去することができる。
上記のように形成されている各空間は、図1に示されているように、これらの空間を取り囲むようにして可動型3に形成されている溝内にシールリング20が設けられており、これにより、キャビティ5の密封状態を確実に維持することができ、大気の流入を有効に防止し、真空引きを効果的に行い得るようになっている。
上記のような構造の射出金型においては、真空引き用流路11を介してのキャビティ5内の真空引き及び真空引きに際しての成形材料の材料溜め空間13内への流入が効果的に行われる限り、既に述べた以外にも種々の設計変更が可能であり、例えば上方に位置する上型を可動型とし、下型を固定型とすることも可能である。さらに、場合によっては、2つの型の何れも可動型とすることもできるし、さらにキャビティ5の真空引きのための密封性が確保し得る限り、3以上の型で、上述した射出金型を形成することもできる。また、そのゲート方式も何等制限されず、製品形状に応じて、ダイレクトゲート、サイドゲート、ピンゲート、フィルムゲート、タブゲート、リングゲート、ディスクゲートなどから適宜選択できる。
<粉末射出成形>
上述した射出成形用金型を用いての粉末射出成形は、以下のようにして行われる。
即ち、前述した射出成形用材料を射成形機内に投入し、射出成形機のシリンダー部で少なくとも熱可塑性樹脂の融点以上の温度に加熱して溶融流動状態とし、金型を型閉めした後に真空ポンプ等の真空装置を用いて、前述した真空引き孔19から脱気を行い、真空引き用流路11を介してキャビティ5内の真空引きを行う。次いで、射出金型(キャビティ5)内に成形材料を射出充填し後、キャビィティ内に充填ざれた材料が冷却・固化された後に型開きし、成形体が取り出される。ここで、真空引きは、型閉めからキャビィティ内の材料が固化するまで実施される。
射出成形条件は、射出成形物の形状や使用する射出成形機の能力に応じて異なるが、一般には射出圧力5〜300MPa、好ましくは10〜250MPa、射出速度10〜300mm/秒、好ましくは20〜200mm/秒、金型温度0〜150℃、シリンダー温度50〜300℃、好ましくは50〜200℃、冷却時間2〜30秒とすることができる。キャビティ内のエアー、また、樹脂成分から発生する揮発性ガスなどを確実に除去するために、少量の成形材料が材料溜め空間13に流入するように射出成形条件を設定するのが好ましい。
なお、真空引きのタイミングは、上述したように型閉めからキャビィティ内の材料が固化するまで行う必要があるが、型締めから型開きまで実施するのが好ましい。なお、材料溜め空間13に流入した成形材料は、容易に除去可能であり、その大部分が金型から取り出すと同時に除去される。
本発明においては、上記のようにして粉末射出成形を行うことにより、キャビティ5内のエアーや成形材料から発生するガスは、射出充填された成形材料と共にキャビティ5から有効に除去され、従って、充填不良、ガス焼け、シワなどの成形不良の発生を有効に防止することが可能となり、外観の優れる成形体が得ることができる。
尚、射出成形及び真空引きの停止のタイミングは、キャビティ5の容積(成形する成形体の大きさ)によっても異なるが、一般に、キャビティ5内に充填された射出成形材料の数%程度が材料溜め空間13内に流入した時点で停止することが好ましく、具体的には、予め、予備実験を行っておき、ガス抜きが効果的に行われるようなタイミングを計測しておけばよい。
上記のようにして得られた成形体は、必要によりバリトリ等の加工を行った後、脱脂(脱有機成分)され後、焼成される。その後、必要があれば加工され、最終製品とされる。
本発明によれば、粉末射出成形時の充填不良、ガス焼け、シワなどの成形不良の発生を有効に防止することが可能となり、外観の優れる射出成形体が得ることができ、高生産性で且つ寸法精度の高い金属製或いはセラミック製などの最終製品を製造することができる。
本発明の優れた効果を、次の実験例で説明する。
<実施例1>
図1に示す構造で且つ下記仕様の射出成形用金型を用意した。
キャビティ5(長方形板状):
面積;40cm
容積;3.2cm
真空引き用流路11(2本):
断面積;0.5mm
長さ;3mm
材料溜め空間:
面積;4.5cm
容積;0.225cm
また、射出成形材料としては、以下の組成のものを用意した。
無機粉末:窒化アルミニウム粉末
平均粒径;1.3μm
含有量;100重量部(71体積%)
熱可塑性樹脂:エチレン−酢酸ビニル共重合体
融点;73℃
含有量;8重量部
滑剤:パラフィンワックス
含有量;8重量部
可塑剤:フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)
含有量;3重量部
上記の射出成形材料をスクリュー径28mmの50トン射出成形機に投入し、射出シリンダー温度、150℃、射出圧力50MPa、射出速度100mm/秒で上記射出金型のゲート10から10Torrの真空度に真空引きされているキャビティ5内に射出充填を行った。金型温度は35℃、射出時間(保圧時間含む)は2秒、冷却時間は15秒とし、型閉めから型開きの間、真空引きを行った。冷却後に金型を開きキャビティ5内の成形体を取り出した。
上記の成形作業を繰り返して、100個の成形体を作成したが、充填不良、ガス焼け、シワなどの成形不良は見られず、外観の優れる成形体が得られた。
1:固定型
3:可動型
5:キャビティ
10:ゲート
11:真空引き用流路
13:材料溜め空間
19:真空引き孔

Claims (6)

  1. 無機粉末が熱可塑性樹脂中に分散された射出成形材料を、該熱可塑性樹脂の溶融下で射出成形金型内に形成されたキャビティ内に射出充填し、該金型内で冷却固化することにより射出成形を行う粉末射出成形法において、
    前記射出金型として、真空引き用流路を介して前記キャビティと連なる材料溜め空間が形成され且つ該材料溜め空間が真空引き孔に連なっている構造を有するものを使用し、
    前記真空引き孔からの真空引きにより、前記樹脂溜め空間から前記真空引き用流路を介して前記キャビティ内を真空引きしながら、該キャビティ内に前記射出成形材料を射出充填することを特徴とする粉末射出成形法。
  2. 相対的に移動し得る複数の金型部材からなり、該複数の金型部材を合体させることにより、成形用空間となるキャビティが内部に形成される射出成形用金型において、
    前記複数の金型部材を合体させた状態において、前記キャビティと共に、成形材料を該キャビティ内に導入するためのゲートと、真空引き用流路を介して該キャビティに連通している材料溜め空間と、該材料溜め空間に連なる真空引き孔が形成されることを特徴とする射出成形用金型。
  3. 前記材料溜め空間は、キャビティ内に射出充填される射出成形材料の流動方向終端部側に形成されている請求項2に記載の射出成形用金型。
  4. 前記キャビティと材料溜め空間とを連通せしめている前記真空引き用流路は、垂直方向断面積が0.1乃至10mmの範囲にある請求項2または3に記載の射出成形用金型。
  5. 前記材料溜め空間は、前記キャビティの容積の3%以上の容積を有している請求項2乃至4の何れかに記載の射出成形用金型。
  6. 前記キャビティの周囲には、パーティング面にシールリングが設けられている請求項3乃至6の何れかに記載の射出成形用金型。
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