JP2004090308A - 薄肉成形用金型および薄肉成形方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】金型への溶融樹脂の充填が極めて困難な超薄肉成形品の成形の際に、樹脂充填を容易にすると共に、樹脂の物性を低下させることなく、また、ばりの発生などの不具合を発生させることのない薄肉成形用金型と薄肉成形方法を提供すること。
【解決手段】薄肉成形用金型1の固定型2と可動型3の対向面の成形部6aにはそれぞれポーラスな部材による入れ子6、12を嵌入させ、この入れ子6、12に気体を供給する手段18、18aを接続して気体を供給する。
【選択図】 図1
【解決手段】薄肉成形用金型1の固定型2と可動型3の対向面の成形部6aにはそれぞれポーラスな部材による入れ子6、12を嵌入させ、この入れ子6、12に気体を供給する手段18、18aを接続して気体を供給する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超薄肉樹脂成形品を成形するための薄肉成形用金型と、それを用いた超薄肉樹脂成形品の薄肉成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在市場で販売されている超薄肉部分を含む樹脂成形品の一例として、記録媒体である「SDカード」(商品名)、通信機能を具備した「ブルートゥース」(商品名)や携帯電話用の電池パックケースが挙げられる。
【0003】
図5(a)は、「SDカード」41の平面図であり、図5(b)は、そのa−a断面図である。「SDカード」41は外形25mm×30mmで、図5(b)に示したように、外周のリブ部分42の肉厚が1.0mm、薄肉部分の肉厚が0.25mmである。
【0004】
図6は、携帯電話用の電池パックケースの斜視図で、電池パックケース43の外形は、30mm×50mm×5mmである。また、外周のリブ部分44の肉厚は0.6mmで、上面の薄肉部分の肉厚は0.3mmである。
【0005】
従来、これらのような超薄肉部分を含む成形品の成形においては、樹脂充填工程の際に溶融樹脂が金型内の製品全体に行きわたるように、(1)超高速度で樹脂を充填したり、(2)樹脂を流れやすくするために(樹脂の溶融粘度を低下させるために)、樹脂温度を成形時における樹脂メーカの推奨温度の上限を超えて成形している。また、(1)と(2)を組み合わせて行っている場合もある。
【0006】
このため、通常、射出成形メーカでは、樹脂を超高速で金型内に充填できるように、射出速度1,000mm/sや2,000mm/sの超高速成形機を常備して対処している。
【0007】
次に、これらの高速成形機で用いられている金型について、図7に示した構造図により、射出成形金型で代表的なサイドゲート方式の2プレート金型を例に説明する。なお、図7において、金型は左右対称に形成されているが、図面上は、煩雑な表現を避けるために左右に機能を分散して示している。従って、金型の左右部分はそれぞれが、図7で表現されている左右部分を併せて具えている。
【0008】
金型51は、固定型52と可動型53とで構成され、パーティングラインPLで接離する。可動型53のパーティングラインPLの面にはセンターラインCLを対称に凹部54が形成され、この凹部54に成形物に対応して製品部55aを形成した2個の入れ子A55が嵌入されており、凹部54の底部には成形物を背面から突いて排出するためのイジェクタピン56が出没する孔57が設けられている。また、入れ子A55には調温体58(調温用ヒータと冷却管)が内蔵して設けられている。一方、固定型52には可動型53の入れ子A55の位置に対応して2個の入れ子B59が設けられており、この入れ子B59には、入れ子A55と同様に調温体58が内蔵して設けられている。また、センターラインCLに沿って一端が製品部に連通したランナ61が設けられており、ランナ61の他端はスプル62の一端に連通している。なお、スプル62の他端は射出成形機(不図示)のノズルに連通している。
【0009】
また、入れ子A55の製品部55aのランナ61に接続している部位と反対側の部位、すなわち、樹脂の最終充填位置にはパーティングラインPLに沿ってガスベント63が形成されている。ガスベント63は、金型51の内部に樹脂を超高速で充填をおこなう際に、金型51の内部の樹脂と置換する空間部分の空気を素早く瞬時に排出する目的のために設けられているもので、金型51の内部の樹脂の最終充填位置に形成されている。ガスベント空気等の気体は通過するが樹脂自体は通過できずに、樹脂が金型の内部から外部に流れ出ない間隙に設定されている。
【0010】
これらの構成により、射出成形機で溶融された樹脂は、射出成形機のノズルから金型51のスプル62に供給され、ランナ61、ゲートを流動して入れ子A55の製品部55aに流される。このとき金型51の内部に存在していた空気は溶融樹脂に追われ、製品部55aの末端に具備されたガスベント63から金型51の外に排出される。続いて金型51の内部にある溶融樹脂は樹脂の固化温度まで冷却されて固まる。このとき金型51の温度を固化温度以下で安定させるために調温体58の温調用ヒータや水または油などを循環させる冷却管(不図示)が具備されている。その後、金型51が開機、成形品がエジェクタピン56によって金型51から押し出され、金型51の外に取り出され製品となる。
【0011】
なお、ガスベントについては、特開2000−61990号公報には、ガスベントの末端を真空引きが可能な装置と接続した成形方法が開示されている。
【0012】
また、特開平5−31563号公報には、樹脂充填時においては、超薄肉部分の肉厚は製品完成時の肉厚に比較して厚く設定し、樹脂を金型内に充填させ、次に、樹脂充填が完了した時点もしくは充填完了の直前で、超薄肉部分を形成する金型入れ子を油圧機構や成形機の押し出し機構などによって可動させて超薄肉成形品を得る射出圧縮成形法が開示されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の技術においては、以下に列挙するような問題点が存在する。
【0014】
(1)樹脂を超高速度で充填する場合、超高速射出が可能な成形機が必要である。現在このような成形機は数種類しかなく、市場では非常に特殊なものであり、高価である。
【0015】
超高速で金型に樹脂を充填した場合、金型の壁面と樹脂とのせん断速度が大きくなり、特にゲート部分ではせん断発熱による樹脂温度の上昇による樹脂物性の低下が懸念される。また、せん断速度が大きくなる結果、成形品の残留応力値が大きくなり、成形品のそりや変形につながる恐れがある。
【0016】
(2)樹脂温度において樹脂メーカ推奨温度上限を超えて成形する場合、高温によって樹脂の分解(分子中の結合が切れる)が始まり、その結果分子量の低下すなわち機械的特性などの樹脂物性の劣化が生じる。これは製品における品質の低下をもたらすものである。また、超薄肉成形品は樹脂使用量が少ない場合が多く、成形時において射出成形機の射出シリンダ内に溶融樹脂が滞留しやすく、樹脂温度を高温に設定したこととあわせて樹脂物性の劣化が著しくなる。
【0017】
(3)金型にガスベントを形成すること自体は、超薄肉成形金型に樹脂を充填することにおいては、理にかなっており必要なことである。しかし、ガスベントはその設置すべき位置の把握が難しく、また、ガスベントの間隙の設定においてもばりの発生との関係から一様にはいかず、試行錯誤を繰り返してノウハウを蓄積する必要がある。さらに、ガスベントには樹脂圧力が直接かかるため、ガスベントの間隙に樹脂が進入するのを完全に防止するのは困難である。その結果、ガスベントの間隙に樹脂が進入すると、ばりが発生し成形品の外観不良が発生する。また、ばりの発生に伴い徐々に間隙部分が大きなって、ばりが増大していく。その結果、金型自体も損傷してしまう恐れがある。
【0018】
(4)射出圧縮成形法の場合には、成形品における超薄肉部分の割合が少ない製品に効果が認められるが、「SDカード」や携帯電話用の電池パックケースのように超薄肉部分の割合が多い製品においては、全体を均一に加圧することが困難になる。また、成形品自体も全体的に薄肉であるため溶融樹脂を高速で充填する必要があり、その結果、樹脂充填と圧縮機構動作とのタイミングを取ることが非常に困難になる。
【0019】
(5)図7に示したような従来の金型では温度設定が40℃〜60℃であるため、充填過程において溶融樹脂がNo−Flow温度(後述する)以下に急速に冷却され、超薄肉製品部分を完全に流れ切ることはできないために、未充填(ショートショット不良)が発生する。超薄肉成形品の場合、一番困難な点は、非常に肉厚の薄い製品部分を未充填にすることなく均一に充填することであるが、この課題を十分に解決することが出来ない。
【0020】
本発明は上述の事情にもとづいてなされたもので、金型への溶融樹脂の充填が極めて困難な超薄肉成形品の成形の際に、樹脂充填を容易にすると共に、樹脂の物性を低下させることなく、また、ばりの発生などの不具合を発生させることのない薄肉成形用金型と薄肉成形方法を提供することを目的としている。
【0021】
【課題を解決するための手段】
請求項1による発明の手段によれば、射出成形機に接続された固定型と、この固定型に対向し接離自在に設けられた可動型とを具えた樹脂成形用の薄肉成形用金型であって、
前記固定型と前記可動型の対向面の成形部にはそれぞれポーラスな部材による入れ子が嵌入され、かつ、前記ポーラスな部材には気体を供給する手段が接続されていることを特徴とする薄肉成形用金型である。
【0022】
また請求項2による発明の手段によれば、前記前記ポーラスな部材は、このポーラスな部材の面に沿って設けられた気体供給空間を介して気体を供給する手段と接続されていることを特徴とする薄肉成形用金型である。
【0023】
また請求項3による発明の手段によれば、前記固定型のスプルおよびランナはポーラスな部材による入れ子が嵌入され、かつ、前記ポーラスな部材には気体を供給する手段が接続されていることを特徴とする薄肉成形用金型である。
【0024】
また請求項4による発明の手段によれば、前記気体を供給する手段からは、前記ポーラスな部材による入れ子に低温気体を供給することを特徴とする薄肉成形用金型である。
【0025】
また請求項5による発明の手段によれば、前記気体を供給する手段からは、前記ポーラスな部材による入れ子に温度の異なる気体を選択的に供給することを特徴とする薄肉成形用金型である。
【0026】
また請求項6による発明の手段によれば、前記成形部は、樹脂の流入する終端部に前記成形部内の気体を該成形部から外部に放出するための間隙が形成されていることを特徴とする薄肉成形用金型である。
【0027】
また請求項7による発明の手段によれば、射出成形機に接続された固定型と、この固定型に対向し接離自在に設けられた可動型で、かつ、前記固定型と前記可動型の対向面の成形部はそれぞれポーラスな部材による入れ子で形成された樹脂成形用の薄肉成形用金型を用いた薄肉成形方法であって、
前記成形部内に樹脂を充填させる樹脂充填工程と、この樹脂充填工程の後に前記ポーラスな部材による入れ子を介して冷却気体を噴出させて前記成形部内の樹脂を冷却する冷却工程とを有することを特徴とする薄肉成形方法である。
【0028】
また請求項8による発明の手段によれば、前記成形部内に樹脂を充填させる樹脂充填工程では、前記固定型と前記可動型との温度を前記樹脂のNo−Flow温度以上に設定していることを特徴とする薄肉成形方法である。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0030】
図1は、本発明の射出成形金型である薄肉成形金型の構成図である。なお、図1において、金型は左右対称に形成されているが、図面上は、煩雑な表現を避けるために左右に機能を分散して示している。従って、金型の左右部分はそれぞれが、図1で表現されている左右部分を併せて具えている。
【0031】
金型1は、固定型2と可動型3とで構成され、固定型2は射出成形機4に接続されており、可動型3はガイドピン(不図示)により案内されて駆動装置(不図示)により駆動される。それにより、固定型2と可動型3とははパーティングラインPLで接離する。
【0032】
可動型3のパーティングラインPLの面にはセンターラインCLを対称に凹部5が形成され、この凹部5には成形物(不図示)に対応した成形部である製品部6aが形成された2個の入れ子A6が嵌入されている。また、凹部5の底部には成形物を背面から突いて排出するためのイジェクタピン7が出没する孔8が設けられ、この孔8は2個の入れ子A6に設けらた孔8aと連通している。また、可動型3の入れ子A6を挟んだ位置には、調温体9(調温用ヒータと冷却管)が内蔵されて設けられている。
【0033】
一方、固定型2には可動型3の入れ子A6の位置に対応して凹部10が形成され、この凹部10には2個の入れ子B12が設けられている。また、固定型2の入れ子B12を挟んだ位置には、可動型3と同様に調温体9が内蔵されて設けられている。また、センターラインCLに沿って一端が製品部6aに連通したランナ13が設けられており、ランナ13の他端はスプル14の一端に連通している。なお、スプル14の他端は射出成形機4のノズル15に連通している。
【0034】
また、製品部6aのランナ13に接続している部位と反対側の部位、すなわち、は樹脂の最終充填位置にはパーティングラインPLに沿ってガスベント16が形成されている。ガスベント16は、金型1の内部に樹脂を超高速で充填をおこなう際に、金型1の内部の樹脂と置換する空間部分の空気を、素早く瞬時に排出する目的のために設けられているもので、金型1の内部の樹脂の最終充填位置に形成されている。
【0035】
ガスベント16は成形部品の形状によっては、金型1に10〜20μmの間隙を1ヵ所、または、図2に示すように割りコマにして複数設け、その間隔の設定により、間隔より気体は通過するが樹脂自体は通過できずに金型1の内部から流れ出ないように制御している。なお、可動型3のセンターラインCL部の周辺にもガスベント20が形成されているが、このガスベント20は後述する通気性型材で形成されている。
【0036】
また、この金型1に於ける大きな特徴として、入れ子A6、入れ子B12、スプル14およびランナ13がポーラスナ部材である通気性型材で形成されている。この通気性型材で形成されている入れ子A6および入れ子B12には、それぞれ、パーティングラインPLの反対側の面に冷却気体供給空間17が形成されており、この冷却気体供給空間17は溶融樹脂の冷却用の気体を供給する手段として設けた冷却気体用配管18に接続されている。また、スプル14およびランナ13にも冷却気体用配管18が接続されている。それにより、溶融樹脂の冷却用の気体を、冷却気体供給空間17を介して製品面に全面にわたり均一にしかも効率的に供給することが可能である。と共に、金型1を迅速に冷却することができる。
【0037】
通気性型材の一例は、「ポーセラックス」(商品名、新東工業製)である。「ポーセラックス」は通気性を有するセラミック製の型素材で、平均空孔の直径がφ7μm、空孔率25%の非常に微細で、かつ、連結した空孔が素材全体に均一に分布したポーラスな構造に形成されている。
【0038】
図3は、「ポーセラックス」の厚さと通気量との関係を示すグラフである。すなわち、平均空孔の直径がφ7μmで、厚さ30mmのサンプルで、0.5MPaの圧力で気体(この場合は窒素)を供給した場合、約200cc/sec・cm2の気体を噴出させることが可能である。この値は、前述の「SDカード」、通信機能を具備した「ブルートゥース」や携帯電話用の電池パックケース等の超薄型製品の射出成形の際に用いるのに充分な気体の噴出量である。
【0039】
供給する空冷用気体としては可燃性のガスでなければ、空気、窒素ガス、炭酸ガスなどのすべてのガスが使用可能である。また、冷却効率を高めるためには、例えば、窒素ガスにおいては、液体窒素を気化させた直後の気体温度が低いものを用いることが効果的である。
【0040】
なお、金型1の温度の設定には、図1で示したような調温体9の電気ヒータなどにより調整している。
【0041】
次に、上述の金型1を用いて超薄肉成形品を成形する薄肉成形方法について説明する。
【0042】
射出成形機4としては、射出速度150mm/s程度の通常の射出成形で使用されている射出成形機4を用いる。成形する樹脂の溶融温度は、樹脂メーカ推奨温度の範囲内で使用する。
【0043】
金型1の温度は成形する樹脂のNo−Flow温度より高めに設定する。なお、No−Flow温度とは、ある温度の樹脂に5MPaの圧力を加えたときに樹脂の流動が生じない最も高い温度と定義される。逆に言うと、No−Flow温度より高温では、樹脂は5MPa以上の圧力を加えると流動することになる。
【0044】
以上のように設定した条件で、次のように成形をおこなう。
【0045】
例えば、樹脂としてABS樹脂を用いた場合、樹脂温度は230℃、金型1の温度は180℃に設定する。ここでABS樹脂のNo−Flow温度は180℃である。そして、通常の成形機の射出速度範囲である100mm/s程度で樹脂を金型1内に充填する。
【0046】
なお、比較の意味で、従来の場合について説明すると、図7に示したような従来の金型51を用いた成形では、温度設定が40〜60℃であるため、充填過程において溶融樹脂がNo−Flow温度以下に急速に冷却され超薄肉製品部分を完全に流れ切ることはできない。その結果、未充填(ショーとショット不良)が発生する。
【0047】
それに対して、上述の図1に示した金型1を用いた成形では、金型1の内部での溶融樹脂の温度低下は緩やかで、流動可能な状態である。その結果、通常の射出成形機4の射出速度範囲で、しかも低い充填圧力で超薄肉製品部分に樹脂を完全に流すことが可能になる。
【0048】
次に、充填した樹脂を冷却する。充填が完了した時点で、図1に示した冷却気体用配管18を経由して、溶融樹脂冷却用の冷却気体を通気性型材を用いた入れ子A6と入れ子B12とから、成形品の表面に噴出させて冷却を開始する。噴出させる単位時間当たりの噴出量の調整については、冷却気体用配管18の金型1と冷却気体供給源(図示せず)の間に圧力と流量を調整可能なレギュレータ(不図示)を設置することによっておこなっている。金型1の内部に供給された冷却気体は、図1に示したガスベント16やエジェクタピン7と穴8との間隙および通気性型材を用いたガスベント部20から金型1の外部に排出される。
【0049】
その結果、溶融樹脂は固化温度まで冷却され、金型1から通常成形の場合と同様の操作で取り出されて製品となる。
【0050】
なお、上述の場合は、成形樹脂としてABS樹脂の場合について説明したが、その他にも、PC/ABS(ポリカーボネートABS)樹脂等を適宜用いることができる。
【0051】
次に、上述の実施の形態の変形例について説明する。
【0052】
上述の実施の形態では、通気性型材で形成されている入れ子A6および入れ子B12に、それぞれ、パーティングラインPLの反対側の面に冷却気体供給空間17が形成されており、この冷却気体供給空間17は溶融樹脂の冷却用の気体を供給するための冷却気体用配管18に接続されている。それにより、溶融樹脂の冷却用気体を、冷却気体供給空間17を介して製品面に全面にわたり均一にしかも効率的に供給して冷却のみをおこなっていたが、図4に示すように、気体用配管21にそれぞれにバルブ22、23が設けられている分岐管18aを用いている。分岐管18aの二又に分かれた一方を冷却気体供給用とし、他方を加熱気体供給用としている。金型1を冷却又は加熱するタイミングに合わせてバルブ22、23を操作することにより、冷却気体や、ホットエアを分岐管18aを介して金型1に供給し、金型1の温度制御を迅速におこなうことができる。それにより、射出成形のスループットを向上させることができる。
【0053】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、超薄肉成形品の成形の際に、金型1の樹脂流動部分の入れ子にポーラスな通気性型材を用い、その入れ子に空冷用の気体を供給できるようにした金型を用い、また、成形時において金型の温度をNo−Flow温度より高く設定することによって、従来の成形法では超高速射出成形機を用いても極めて困難であった超薄肉成形品を通常成形の射出速度および低い充填圧力で未充填(ショートショット不良)になること無く、樹脂充填を容易にし完全充填することができ、また、金型内に通常の射出速度で樹脂を充填するため、金型の内部の空気の断熱圧縮による、成形品表面の焼けの発生を防止することができる。
【0054】
また、金型の内部に低い充填圧力で樹脂を充填するため、ガスベント部分にばりが発生するなどの不具合を防止でき、ばりによる金型へのダメージを与えることなく超薄肉成形品を高品質で製造することができる。
【0055】
さらに、従来の成形方法では樹脂の流動性を向上させるために、樹脂温度を樹脂メーカの推奨温度の上限を超えて設定する場合が多く、樹脂物性の低下をきたしていた。それに対して、本実施の形態では、樹脂温度は樹脂メーカの推奨温度の範囲内で成形可能であり、樹脂の分解による物性の低下も発生しなくなる。
【0056】
さらに、成形品の残留応力を従来の成形方法よりも低くすることが可能であるので、成形品の反り、変形を最小限に抑えることができ、それらによって、成形品の品質向上と、金型寿命の向上に寄与することができる。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、超薄肉成形品を通常の射出成形機を用いても、高品質で高い生産性で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薄肉成形金型の構成図。
【図2】ガスベントの一例を示す説明図。
【図3】通気性型材の厚さと通気量との関係を示すグラフ。
【図4】気体用配管の変形例の説明図。
【図5】(a)は、「SDカード」の平面図、(b)は、そのb−b断面図。
【図6】携帯電話用の電池パックケースの斜視図。
【図7】従来の薄肉成形金型の構成図。
【符号の説明】
1…金型、2…固定型、3…可動型、6…入れ子A、9…調温体、12…入れ子B、16、20…ガスベント、17…冷却気体供給空間、18、21…冷却気体用配管
【発明の属する技術分野】
本発明は、超薄肉樹脂成形品を成形するための薄肉成形用金型と、それを用いた超薄肉樹脂成形品の薄肉成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在市場で販売されている超薄肉部分を含む樹脂成形品の一例として、記録媒体である「SDカード」(商品名)、通信機能を具備した「ブルートゥース」(商品名)や携帯電話用の電池パックケースが挙げられる。
【0003】
図5(a)は、「SDカード」41の平面図であり、図5(b)は、そのa−a断面図である。「SDカード」41は外形25mm×30mmで、図5(b)に示したように、外周のリブ部分42の肉厚が1.0mm、薄肉部分の肉厚が0.25mmである。
【0004】
図6は、携帯電話用の電池パックケースの斜視図で、電池パックケース43の外形は、30mm×50mm×5mmである。また、外周のリブ部分44の肉厚は0.6mmで、上面の薄肉部分の肉厚は0.3mmである。
【0005】
従来、これらのような超薄肉部分を含む成形品の成形においては、樹脂充填工程の際に溶融樹脂が金型内の製品全体に行きわたるように、(1)超高速度で樹脂を充填したり、(2)樹脂を流れやすくするために(樹脂の溶融粘度を低下させるために)、樹脂温度を成形時における樹脂メーカの推奨温度の上限を超えて成形している。また、(1)と(2)を組み合わせて行っている場合もある。
【0006】
このため、通常、射出成形メーカでは、樹脂を超高速で金型内に充填できるように、射出速度1,000mm/sや2,000mm/sの超高速成形機を常備して対処している。
【0007】
次に、これらの高速成形機で用いられている金型について、図7に示した構造図により、射出成形金型で代表的なサイドゲート方式の2プレート金型を例に説明する。なお、図7において、金型は左右対称に形成されているが、図面上は、煩雑な表現を避けるために左右に機能を分散して示している。従って、金型の左右部分はそれぞれが、図7で表現されている左右部分を併せて具えている。
【0008】
金型51は、固定型52と可動型53とで構成され、パーティングラインPLで接離する。可動型53のパーティングラインPLの面にはセンターラインCLを対称に凹部54が形成され、この凹部54に成形物に対応して製品部55aを形成した2個の入れ子A55が嵌入されており、凹部54の底部には成形物を背面から突いて排出するためのイジェクタピン56が出没する孔57が設けられている。また、入れ子A55には調温体58(調温用ヒータと冷却管)が内蔵して設けられている。一方、固定型52には可動型53の入れ子A55の位置に対応して2個の入れ子B59が設けられており、この入れ子B59には、入れ子A55と同様に調温体58が内蔵して設けられている。また、センターラインCLに沿って一端が製品部に連通したランナ61が設けられており、ランナ61の他端はスプル62の一端に連通している。なお、スプル62の他端は射出成形機(不図示)のノズルに連通している。
【0009】
また、入れ子A55の製品部55aのランナ61に接続している部位と反対側の部位、すなわち、樹脂の最終充填位置にはパーティングラインPLに沿ってガスベント63が形成されている。ガスベント63は、金型51の内部に樹脂を超高速で充填をおこなう際に、金型51の内部の樹脂と置換する空間部分の空気を素早く瞬時に排出する目的のために設けられているもので、金型51の内部の樹脂の最終充填位置に形成されている。ガスベント空気等の気体は通過するが樹脂自体は通過できずに、樹脂が金型の内部から外部に流れ出ない間隙に設定されている。
【0010】
これらの構成により、射出成形機で溶融された樹脂は、射出成形機のノズルから金型51のスプル62に供給され、ランナ61、ゲートを流動して入れ子A55の製品部55aに流される。このとき金型51の内部に存在していた空気は溶融樹脂に追われ、製品部55aの末端に具備されたガスベント63から金型51の外に排出される。続いて金型51の内部にある溶融樹脂は樹脂の固化温度まで冷却されて固まる。このとき金型51の温度を固化温度以下で安定させるために調温体58の温調用ヒータや水または油などを循環させる冷却管(不図示)が具備されている。その後、金型51が開機、成形品がエジェクタピン56によって金型51から押し出され、金型51の外に取り出され製品となる。
【0011】
なお、ガスベントについては、特開2000−61990号公報には、ガスベントの末端を真空引きが可能な装置と接続した成形方法が開示されている。
【0012】
また、特開平5−31563号公報には、樹脂充填時においては、超薄肉部分の肉厚は製品完成時の肉厚に比較して厚く設定し、樹脂を金型内に充填させ、次に、樹脂充填が完了した時点もしくは充填完了の直前で、超薄肉部分を形成する金型入れ子を油圧機構や成形機の押し出し機構などによって可動させて超薄肉成形品を得る射出圧縮成形法が開示されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の技術においては、以下に列挙するような問題点が存在する。
【0014】
(1)樹脂を超高速度で充填する場合、超高速射出が可能な成形機が必要である。現在このような成形機は数種類しかなく、市場では非常に特殊なものであり、高価である。
【0015】
超高速で金型に樹脂を充填した場合、金型の壁面と樹脂とのせん断速度が大きくなり、特にゲート部分ではせん断発熱による樹脂温度の上昇による樹脂物性の低下が懸念される。また、せん断速度が大きくなる結果、成形品の残留応力値が大きくなり、成形品のそりや変形につながる恐れがある。
【0016】
(2)樹脂温度において樹脂メーカ推奨温度上限を超えて成形する場合、高温によって樹脂の分解(分子中の結合が切れる)が始まり、その結果分子量の低下すなわち機械的特性などの樹脂物性の劣化が生じる。これは製品における品質の低下をもたらすものである。また、超薄肉成形品は樹脂使用量が少ない場合が多く、成形時において射出成形機の射出シリンダ内に溶融樹脂が滞留しやすく、樹脂温度を高温に設定したこととあわせて樹脂物性の劣化が著しくなる。
【0017】
(3)金型にガスベントを形成すること自体は、超薄肉成形金型に樹脂を充填することにおいては、理にかなっており必要なことである。しかし、ガスベントはその設置すべき位置の把握が難しく、また、ガスベントの間隙の設定においてもばりの発生との関係から一様にはいかず、試行錯誤を繰り返してノウハウを蓄積する必要がある。さらに、ガスベントには樹脂圧力が直接かかるため、ガスベントの間隙に樹脂が進入するのを完全に防止するのは困難である。その結果、ガスベントの間隙に樹脂が進入すると、ばりが発生し成形品の外観不良が発生する。また、ばりの発生に伴い徐々に間隙部分が大きなって、ばりが増大していく。その結果、金型自体も損傷してしまう恐れがある。
【0018】
(4)射出圧縮成形法の場合には、成形品における超薄肉部分の割合が少ない製品に効果が認められるが、「SDカード」や携帯電話用の電池パックケースのように超薄肉部分の割合が多い製品においては、全体を均一に加圧することが困難になる。また、成形品自体も全体的に薄肉であるため溶融樹脂を高速で充填する必要があり、その結果、樹脂充填と圧縮機構動作とのタイミングを取ることが非常に困難になる。
【0019】
(5)図7に示したような従来の金型では温度設定が40℃〜60℃であるため、充填過程において溶融樹脂がNo−Flow温度(後述する)以下に急速に冷却され、超薄肉製品部分を完全に流れ切ることはできないために、未充填(ショートショット不良)が発生する。超薄肉成形品の場合、一番困難な点は、非常に肉厚の薄い製品部分を未充填にすることなく均一に充填することであるが、この課題を十分に解決することが出来ない。
【0020】
本発明は上述の事情にもとづいてなされたもので、金型への溶融樹脂の充填が極めて困難な超薄肉成形品の成形の際に、樹脂充填を容易にすると共に、樹脂の物性を低下させることなく、また、ばりの発生などの不具合を発生させることのない薄肉成形用金型と薄肉成形方法を提供することを目的としている。
【0021】
【課題を解決するための手段】
請求項1による発明の手段によれば、射出成形機に接続された固定型と、この固定型に対向し接離自在に設けられた可動型とを具えた樹脂成形用の薄肉成形用金型であって、
前記固定型と前記可動型の対向面の成形部にはそれぞれポーラスな部材による入れ子が嵌入され、かつ、前記ポーラスな部材には気体を供給する手段が接続されていることを特徴とする薄肉成形用金型である。
【0022】
また請求項2による発明の手段によれば、前記前記ポーラスな部材は、このポーラスな部材の面に沿って設けられた気体供給空間を介して気体を供給する手段と接続されていることを特徴とする薄肉成形用金型である。
【0023】
また請求項3による発明の手段によれば、前記固定型のスプルおよびランナはポーラスな部材による入れ子が嵌入され、かつ、前記ポーラスな部材には気体を供給する手段が接続されていることを特徴とする薄肉成形用金型である。
【0024】
また請求項4による発明の手段によれば、前記気体を供給する手段からは、前記ポーラスな部材による入れ子に低温気体を供給することを特徴とする薄肉成形用金型である。
【0025】
また請求項5による発明の手段によれば、前記気体を供給する手段からは、前記ポーラスな部材による入れ子に温度の異なる気体を選択的に供給することを特徴とする薄肉成形用金型である。
【0026】
また請求項6による発明の手段によれば、前記成形部は、樹脂の流入する終端部に前記成形部内の気体を該成形部から外部に放出するための間隙が形成されていることを特徴とする薄肉成形用金型である。
【0027】
また請求項7による発明の手段によれば、射出成形機に接続された固定型と、この固定型に対向し接離自在に設けられた可動型で、かつ、前記固定型と前記可動型の対向面の成形部はそれぞれポーラスな部材による入れ子で形成された樹脂成形用の薄肉成形用金型を用いた薄肉成形方法であって、
前記成形部内に樹脂を充填させる樹脂充填工程と、この樹脂充填工程の後に前記ポーラスな部材による入れ子を介して冷却気体を噴出させて前記成形部内の樹脂を冷却する冷却工程とを有することを特徴とする薄肉成形方法である。
【0028】
また請求項8による発明の手段によれば、前記成形部内に樹脂を充填させる樹脂充填工程では、前記固定型と前記可動型との温度を前記樹脂のNo−Flow温度以上に設定していることを特徴とする薄肉成形方法である。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0030】
図1は、本発明の射出成形金型である薄肉成形金型の構成図である。なお、図1において、金型は左右対称に形成されているが、図面上は、煩雑な表現を避けるために左右に機能を分散して示している。従って、金型の左右部分はそれぞれが、図1で表現されている左右部分を併せて具えている。
【0031】
金型1は、固定型2と可動型3とで構成され、固定型2は射出成形機4に接続されており、可動型3はガイドピン(不図示)により案内されて駆動装置(不図示)により駆動される。それにより、固定型2と可動型3とははパーティングラインPLで接離する。
【0032】
可動型3のパーティングラインPLの面にはセンターラインCLを対称に凹部5が形成され、この凹部5には成形物(不図示)に対応した成形部である製品部6aが形成された2個の入れ子A6が嵌入されている。また、凹部5の底部には成形物を背面から突いて排出するためのイジェクタピン7が出没する孔8が設けられ、この孔8は2個の入れ子A6に設けらた孔8aと連通している。また、可動型3の入れ子A6を挟んだ位置には、調温体9(調温用ヒータと冷却管)が内蔵されて設けられている。
【0033】
一方、固定型2には可動型3の入れ子A6の位置に対応して凹部10が形成され、この凹部10には2個の入れ子B12が設けられている。また、固定型2の入れ子B12を挟んだ位置には、可動型3と同様に調温体9が内蔵されて設けられている。また、センターラインCLに沿って一端が製品部6aに連通したランナ13が設けられており、ランナ13の他端はスプル14の一端に連通している。なお、スプル14の他端は射出成形機4のノズル15に連通している。
【0034】
また、製品部6aのランナ13に接続している部位と反対側の部位、すなわち、は樹脂の最終充填位置にはパーティングラインPLに沿ってガスベント16が形成されている。ガスベント16は、金型1の内部に樹脂を超高速で充填をおこなう際に、金型1の内部の樹脂と置換する空間部分の空気を、素早く瞬時に排出する目的のために設けられているもので、金型1の内部の樹脂の最終充填位置に形成されている。
【0035】
ガスベント16は成形部品の形状によっては、金型1に10〜20μmの間隙を1ヵ所、または、図2に示すように割りコマにして複数設け、その間隔の設定により、間隔より気体は通過するが樹脂自体は通過できずに金型1の内部から流れ出ないように制御している。なお、可動型3のセンターラインCL部の周辺にもガスベント20が形成されているが、このガスベント20は後述する通気性型材で形成されている。
【0036】
また、この金型1に於ける大きな特徴として、入れ子A6、入れ子B12、スプル14およびランナ13がポーラスナ部材である通気性型材で形成されている。この通気性型材で形成されている入れ子A6および入れ子B12には、それぞれ、パーティングラインPLの反対側の面に冷却気体供給空間17が形成されており、この冷却気体供給空間17は溶融樹脂の冷却用の気体を供給する手段として設けた冷却気体用配管18に接続されている。また、スプル14およびランナ13にも冷却気体用配管18が接続されている。それにより、溶融樹脂の冷却用の気体を、冷却気体供給空間17を介して製品面に全面にわたり均一にしかも効率的に供給することが可能である。と共に、金型1を迅速に冷却することができる。
【0037】
通気性型材の一例は、「ポーセラックス」(商品名、新東工業製)である。「ポーセラックス」は通気性を有するセラミック製の型素材で、平均空孔の直径がφ7μm、空孔率25%の非常に微細で、かつ、連結した空孔が素材全体に均一に分布したポーラスな構造に形成されている。
【0038】
図3は、「ポーセラックス」の厚さと通気量との関係を示すグラフである。すなわち、平均空孔の直径がφ7μmで、厚さ30mmのサンプルで、0.5MPaの圧力で気体(この場合は窒素)を供給した場合、約200cc/sec・cm2の気体を噴出させることが可能である。この値は、前述の「SDカード」、通信機能を具備した「ブルートゥース」や携帯電話用の電池パックケース等の超薄型製品の射出成形の際に用いるのに充分な気体の噴出量である。
【0039】
供給する空冷用気体としては可燃性のガスでなければ、空気、窒素ガス、炭酸ガスなどのすべてのガスが使用可能である。また、冷却効率を高めるためには、例えば、窒素ガスにおいては、液体窒素を気化させた直後の気体温度が低いものを用いることが効果的である。
【0040】
なお、金型1の温度の設定には、図1で示したような調温体9の電気ヒータなどにより調整している。
【0041】
次に、上述の金型1を用いて超薄肉成形品を成形する薄肉成形方法について説明する。
【0042】
射出成形機4としては、射出速度150mm/s程度の通常の射出成形で使用されている射出成形機4を用いる。成形する樹脂の溶融温度は、樹脂メーカ推奨温度の範囲内で使用する。
【0043】
金型1の温度は成形する樹脂のNo−Flow温度より高めに設定する。なお、No−Flow温度とは、ある温度の樹脂に5MPaの圧力を加えたときに樹脂の流動が生じない最も高い温度と定義される。逆に言うと、No−Flow温度より高温では、樹脂は5MPa以上の圧力を加えると流動することになる。
【0044】
以上のように設定した条件で、次のように成形をおこなう。
【0045】
例えば、樹脂としてABS樹脂を用いた場合、樹脂温度は230℃、金型1の温度は180℃に設定する。ここでABS樹脂のNo−Flow温度は180℃である。そして、通常の成形機の射出速度範囲である100mm/s程度で樹脂を金型1内に充填する。
【0046】
なお、比較の意味で、従来の場合について説明すると、図7に示したような従来の金型51を用いた成形では、温度設定が40〜60℃であるため、充填過程において溶融樹脂がNo−Flow温度以下に急速に冷却され超薄肉製品部分を完全に流れ切ることはできない。その結果、未充填(ショーとショット不良)が発生する。
【0047】
それに対して、上述の図1に示した金型1を用いた成形では、金型1の内部での溶融樹脂の温度低下は緩やかで、流動可能な状態である。その結果、通常の射出成形機4の射出速度範囲で、しかも低い充填圧力で超薄肉製品部分に樹脂を完全に流すことが可能になる。
【0048】
次に、充填した樹脂を冷却する。充填が完了した時点で、図1に示した冷却気体用配管18を経由して、溶融樹脂冷却用の冷却気体を通気性型材を用いた入れ子A6と入れ子B12とから、成形品の表面に噴出させて冷却を開始する。噴出させる単位時間当たりの噴出量の調整については、冷却気体用配管18の金型1と冷却気体供給源(図示せず)の間に圧力と流量を調整可能なレギュレータ(不図示)を設置することによっておこなっている。金型1の内部に供給された冷却気体は、図1に示したガスベント16やエジェクタピン7と穴8との間隙および通気性型材を用いたガスベント部20から金型1の外部に排出される。
【0049】
その結果、溶融樹脂は固化温度まで冷却され、金型1から通常成形の場合と同様の操作で取り出されて製品となる。
【0050】
なお、上述の場合は、成形樹脂としてABS樹脂の場合について説明したが、その他にも、PC/ABS(ポリカーボネートABS)樹脂等を適宜用いることができる。
【0051】
次に、上述の実施の形態の変形例について説明する。
【0052】
上述の実施の形態では、通気性型材で形成されている入れ子A6および入れ子B12に、それぞれ、パーティングラインPLの反対側の面に冷却気体供給空間17が形成されており、この冷却気体供給空間17は溶融樹脂の冷却用の気体を供給するための冷却気体用配管18に接続されている。それにより、溶融樹脂の冷却用気体を、冷却気体供給空間17を介して製品面に全面にわたり均一にしかも効率的に供給して冷却のみをおこなっていたが、図4に示すように、気体用配管21にそれぞれにバルブ22、23が設けられている分岐管18aを用いている。分岐管18aの二又に分かれた一方を冷却気体供給用とし、他方を加熱気体供給用としている。金型1を冷却又は加熱するタイミングに合わせてバルブ22、23を操作することにより、冷却気体や、ホットエアを分岐管18aを介して金型1に供給し、金型1の温度制御を迅速におこなうことができる。それにより、射出成形のスループットを向上させることができる。
【0053】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、超薄肉成形品の成形の際に、金型1の樹脂流動部分の入れ子にポーラスな通気性型材を用い、その入れ子に空冷用の気体を供給できるようにした金型を用い、また、成形時において金型の温度をNo−Flow温度より高く設定することによって、従来の成形法では超高速射出成形機を用いても極めて困難であった超薄肉成形品を通常成形の射出速度および低い充填圧力で未充填(ショートショット不良)になること無く、樹脂充填を容易にし完全充填することができ、また、金型内に通常の射出速度で樹脂を充填するため、金型の内部の空気の断熱圧縮による、成形品表面の焼けの発生を防止することができる。
【0054】
また、金型の内部に低い充填圧力で樹脂を充填するため、ガスベント部分にばりが発生するなどの不具合を防止でき、ばりによる金型へのダメージを与えることなく超薄肉成形品を高品質で製造することができる。
【0055】
さらに、従来の成形方法では樹脂の流動性を向上させるために、樹脂温度を樹脂メーカの推奨温度の上限を超えて設定する場合が多く、樹脂物性の低下をきたしていた。それに対して、本実施の形態では、樹脂温度は樹脂メーカの推奨温度の範囲内で成形可能であり、樹脂の分解による物性の低下も発生しなくなる。
【0056】
さらに、成形品の残留応力を従来の成形方法よりも低くすることが可能であるので、成形品の反り、変形を最小限に抑えることができ、それらによって、成形品の品質向上と、金型寿命の向上に寄与することができる。
【0057】
【発明の効果】
本発明によれば、超薄肉成形品を通常の射出成形機を用いても、高品質で高い生産性で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薄肉成形金型の構成図。
【図2】ガスベントの一例を示す説明図。
【図3】通気性型材の厚さと通気量との関係を示すグラフ。
【図4】気体用配管の変形例の説明図。
【図5】(a)は、「SDカード」の平面図、(b)は、そのb−b断面図。
【図6】携帯電話用の電池パックケースの斜視図。
【図7】従来の薄肉成形金型の構成図。
【符号の説明】
1…金型、2…固定型、3…可動型、6…入れ子A、9…調温体、12…入れ子B、16、20…ガスベント、17…冷却気体供給空間、18、21…冷却気体用配管
Claims (8)
- 射出成形機に接続された固定型と、この固定型に対向し接離自在に設けられた可動型とを具えた樹脂成形用の薄肉成形用金型であって、
前記固定型と前記可動型の対向面の成形部にはそれぞれポーラスな部材による入れ子が嵌入され、かつ、前記ポーラスな部材には気体を供給する手段が接続されていることを特徴とする薄肉成形用金型。 - 前記前記ポーラスな部材は、このポーラスな部材の面に沿って設けられた気体供給空間を介して気体を供給する手段と接続されていることを特徴とする請求項1記載の薄肉成形用金型。
- 前記固定型のスプルおよびランナはポーラスな部材による入れ子が嵌入され、かつ、前記ポーラスな部材には気体を供給する手段が接続されていることを特徴とする請求項1記載の薄肉成形用金型。
- 前記気体を供給する手段からは、前記ポーラスな部材による入れ子に低温気体を供給することを特徴とする請求項1または請求項3のいずれかに記載の薄肉成形用金型。
- 前記気体を供給する手段からは、前記ポーラスな部材による入れ子に温度の異なる気体を選択的に供給することを特徴とする請求項1または請求項3のいずれかに記載の薄肉成形用金型。
- 前記成形部は、樹脂の流入する終端部に前記成形部内の気体を該成形部から外部に放出するための間隙が形成されていることを特徴とする請求項1記載の薄肉成形用金型。
- 射出成形機に接続された固定型と、この固定型に対向し接離自在に設けられた可動型で、かつ、前記固定型と前記可動型の対向面の成形部はそれぞれポーラスな部材による入れ子で形成された樹脂成形用の薄肉成形用金型を用いた薄肉成形方法であって、
前記成形部内に樹脂を充填させる樹脂充填工程と、この樹脂充填工程の後に前記ポーラスな部材による入れ子を介して冷却気体を噴出させて前記成形部内の樹脂を冷却する冷却工程とを有することを特徴とする薄肉成形方法。 - 前記成形部内に樹脂を充填させる樹脂充填工程では、前記固定型と前記可動型との温度を前記樹脂のNo−Flow温度以上に設定していることを特徴とする請求項7記載の薄肉成形方法。
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Cited By (2)
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JP2008153181A (ja) * | 2005-12-22 | 2008-07-03 | Matsushita Electric Ind Co Ltd | 二次電池用パックの収納ケースおよびその製造装置 |
JP6756958B1 (ja) * | 2020-01-17 | 2020-09-16 | 株式会社エイシン技研 | 射出成型装置及び方法 |
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