以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
ここでは、インクジェット記録装置によるインクドットの着弾位置(すなわち、ドット位置)の測定への適用例について説明する。まず、インクジェット記録装置の全体構成について説明する。
〔インクジェット記録装置の説明〕
図1は、インクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すように、このインクジェット記録装置10は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のインクジェット記録ヘッド(「液体吐出ヘッド」に相当、以下、「ヘッド」という。)12K,12C,12M,12Yを有する印字部12と、各ヘッド12K,12C,12M,12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録媒体たる記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送するベルト搬送部22と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排出する排紙部26とを備えている。
インク貯蔵/装填部14は、各ヘッド12K,12C,12M,12Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所要の管路を介してヘッド12K,12C,12M,12Yと連通されている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録媒体(メディア)を利用可能な構成にした場合、使用される記録媒体の種類(メディア種)を特定する手段を設け、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
デカール処理後、裁断用のカッター(第1のカッター)28で所望のサイズにカットされた記録紙16は、ベルト搬送部22へと送られる。ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによって記録紙16がベルト33上に吸着保持される。なお、吸引吸着方式に代えて、静電吸着方式を採用してもよい。
ローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図6中符号88)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図1の左から右へと搬送される。
ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)には、ベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の詳細構成は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組合せなどがある。
ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12の各ヘッド12K,12C,12M,12Yは、当該インクジェット記録装置10が対象とする記録紙16の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。
ヘッド12K,12C,12M,12Yは、記録紙16の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド12K,12C,12M,12Yが記録紙16の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように設置される。
ベルト搬送部22により記録紙16を搬送しつつ各ヘッド12K,12C,12M,12Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド12K,12C,12M,12Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。かかるフルライン型(ページワイド)ヘッドによるシングルパス方式の画像形成は、記録媒体の搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシリアル(シャトル)型ヘッドによるマルチパス方式を適用する場合に比べて高速印字が可能であり、プリント生産性を向上させることができる。
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
印字部12の後段には後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
こうして生成されたプリント物は排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。
また、図1には示さないが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。その他、本例のインクジェット記録装置10には、各ヘッド12K,12C,12M,12Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引等)を行うヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録紙16の位置等を検出するセンサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
〔ヘッドの構造〕
次に、ヘッドの構造について説明する。色別の各ヘッド12K,12C,12M,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示すものとする。
図2(a) はヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図2(b) はその一部の拡大図である。また、図3はヘッド50の他の構造例を示す平面透視図、図4は記録素子単位となる1つの液滴吐出素子(1つのノズル51に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図2(a) 中の4−4線に沿う断面図)である。
本例のヘッド50は、図2(a),(b) に示したように、インク吐出口であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影(正射影)される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
記録紙16の送り方向(矢印S方向;副走査方向)と略直交する方向(矢印M方向;主走査方向)に記録紙16の全幅Wmに対応する長さ以上のノズル列を構成する形態は本例
に限定されない。例えば、図2(a) の構成に代えて、図3に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙16の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており(図2(a),(b) 参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル51への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)54が設けられている。なお、圧力室52の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
図4に示したように、各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。共通流路55はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
圧力室52の一部の面(図4において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)56には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されている。個別電極57と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形して圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル51からインクが吐出される。なお、アクチュエータ58には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ58の変位が元に戻る際に、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に再充填される。
入力画像から生成されるドット配置データに応じて各ノズル51に対応したアクチュエータ58の駆動を制御することにより、ノズル51からインク滴を吐出させることができる。記録紙16を一定の速度で副走査方向に搬送しながら、その搬送速度に合わせて各ノズル51のインク吐出タイミングを制御することによって、記録紙16上に所望の画像を記録することができる。
上述した構造を有するインク室ユニット53を図5に示す如く主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度ψを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで斜めの格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。即ち、主走査方向に対してある角度ψの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向については、実質的に各ノズル51が一定のピッチPN=d× cosψで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。
図5に示すようなマトリクス状に配置されたノズル51を駆動する場合は、ノズル51-11 、51-12 、51-13 、51-14 、51-15 、51-16 を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 、…、51-26 を1つのブロック、ノズル51-31 、…、51-36 を1つのブロック、…として)、記録紙16の搬送速度に応じて、ブロック毎に片方の端から他方の端に向かって順次駆動(ノズル51-11 、51-12 、…、51-16を順次駆動)することで記録紙16の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字する。
かかるノズル駆動(主走査)によって記録される1ライン(或いは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、この主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を、ヘッドと記録紙16との相対移動によって当該相対移動方向に繰り返し行うことを副走査という。即ち、本実施形態では、記録紙16の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
なお、本例では、ヘッド50に設けられたノズル51から吐出させるインクの吐出力発生手段として圧電素子を適用したが、吐出用の圧力(吐出エネルギー)を発生させる手段は、圧電素子に限らず、サーマル方式におけるヒータ(加熱素子)や他の方式による各種アクチュエータなど様々な手段、方式を適用し得る。
また、本発明の実施に際してヘッド50におけるノズル51の配列形態は図示の例に限定されず、様々なノズル配置構造を適用できる。例えば、図2で説明したマトリクス配列に代えて、一列の直線配列、V字状のノズル配列、V字状配列を繰り返し単位とするジグザク状(W字状など)のような折れ線状のノズル配列なども可能である。
〔制御系の説明〕
図6は、インクジェット記録装置10のシステム構成を示すブロック図である。同図に示したように、インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、ROM75、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部(画像入力部)である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構
成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御し、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74及びROM75の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
ROM75には、システムコントローラ72のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。ROM75は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。画像メモリ74は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示に従って搬送系のモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示に従って後乾燥部42等のヒータ89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データ(元画像のデータ) から印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図6において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース70を介して外部から入力され、画像メモリ74に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの画像データが画像メモリ74に記憶される。
インクジェット記録装置10では、インク(色材) による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリ74に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ72を介してプリント制御部80に送られ、該プリント制御部80において閾値マトリクスや誤差拡散などを用いたハーフトーン化処理によってインク色ごとのドットデータに変換される。
即ち、プリント制御部80は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部80で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ82に蓄えられる。
ヘッドドライバ84は、プリント制御部80から与えられる印字データ(即ち、画像バッファメモリ82に記憶されたドットデータ)に基づき、ヘッド50の各ノズル51に対応するアクチュエータ58を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
ヘッドドライバ84から出力された駆動信号がヘッド50に加えられることによって、該当するノズル51からインクが吐出される。記録紙16の搬送速度に同期してヘッド50からのインク吐出を制御することにより、記録紙16上に画像が形成される。
上記のように、プリント制御部80における所要の信号処理を経て生成されたドットデータに基づき、ヘッドドライバ84を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
また、プリント制御部80は、後述するドット位置測定方法によって取得されるドット位置の情報等に基づいてヘッド50に対する各種補正を行うとともに、必要に応じて予備吐出やノズル吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
<ドット位置測定方法の説明>
次に、本実施形態に係るドット位置測定方法について詳細に説明する。
図7はフルラインヘッドの模式図である。同図では、図示の簡略化のために、複数のノズル51が1列に並んだヘッド50を示すが、図2乃至図5で説明したように、複数のノズルが2次元配列されてなるマトリクスヘッドについて当然に適用できる。即ち、2次元配列のノズル群は主走査方向に沿う直線上に正射影される実質的なノズル列を考慮することにより、1列のノズル列と実質的に同等のものとして取り扱うことができる。
図8(a)はラインヘッドのノズルから打滴されたインク滴が吐出方向のバラツキによって、着弾位置が理想的な位置に対してバラツク様子を示している。図8(b)は(a)に示した特性を持つヘッド50を使用して記録紙16上に副走査方向のラインを描画したときの例である。ヘッド50のノズル51から記録紙16に向けて液滴を吐出しつつ、記録紙16を搬送することにより、記録紙16上にインク滴が着弾し、図8(b)のように、各ノズル51からの着弾インクによるドット90がライン状に並んだドット列(ライン92)が形成される。図8(c)は(b)のライン92を簡略化して示したものである。以下、図示の便宜上、連続打滴の着弾ドット列によるライン92は、図8(c)のような記載を用いる。
図8(b)(c)に示したように、各ライン92はそれぞれ1つのノズル51から連続的な打滴で形成される。高記録密度のラインヘッドの場合、全ノズルから同時に打滴すると隣接ノズルによるドット同士が部分的に重なり合うため、1ドット列のラインにはならない。それぞれのライン92が互いに重なり合わないようにするため、同時吐出するノズル間は少なくとも1ノズル、好ましくは3ノズル以上、間隔をあけることが望ましい。なお、図8では、図示の都合上、同時吐出するノズル間に2ノズルの間隔をあけた様子を図示した。
図8から明らかなように、ヘッドの特性によるドット着弾位置に応じてライン位置が変わっている。つまり、各ノズルの着弾位置を測定することは、ラインの位置を測定することに等しいことが分かる。
<ドット位置測定用ラインパターンの例>
図9は本発明の実施形態で使用するドット位置測定用のラインパターンの全体図である。ヘッド50における全ノズル51についてラインを得るためには、例えば、図9のようなラインパターンのサンプルチャート(測定用チャート)を形成する。
図示のチャートは、複数のラインブロック(ここでは、5段のラインブロック0〜4を図示)を含む。ラインブロックは、一定間隔のノズルを用いてラインを描画した複数のライン(ライン群)からなるブロックである。
図8のラインヘッドで左端から順にノズル番号を0,1,2,3…とする。図9に示したラインブロック0は、ノズル番号0、4、8のように「4N+0」のノズル番号からなるラインブロック(4の倍数に対応するノズル番号を持つノズルによって形成されるライン群のブロック)である(ただし、Nは0以上の整数)。ラインブロック1はノズル番号1、5、9…のように「4N+1」のノズル番号からなるラインブロックである。ラインブロック2は「4N+2」、ラインブロック3は「4N+3」のノズル番号からなるラインブロックである。ラインブロック4は基準ラインブロックであり、ラインブロック0からラインブロック3と同じノズル番号を略均等に含む。
本例のラインブロック4は「5N+0の」ノズル番号からなる(ノズル番号0、5、10、15、20、‥)。ラインブロック0とラインブロック4では、ノズル番号0、20、40、60、‥が同じノズル番号である。ラインブロック1とラインブロック4では、ノズル番号5、25、45、65、‥が同じノズル番号である。ラインブロック2とラインブロック4では、ノズル番号10、30、50、70、‥が同じノズル番号である。ラインブロック3とラインブロック4では、ノズル番号15、35、55、75、‥が同じノズル番号である。このように同じノズルから打滴され離れた位置にラインを形成している。このラインブロック0とラインブロック4の共通するノズル番号のライン位置を利用して、ラインパターンを読み取ったときの回転角を補正する。
ラインブロック0とラインブロック4(基準ラインブロック)と同じノズル番号のライン測定位置(ノズル番号0、5、10、15、20、‥)を用いて、ラインブロック0の測定位置を補正する補正関数を決定し、ラインブロック0の測定位置を前記決定したラインブロック0の測定位置を補正する補正関数で変換する。ラインブロック1とラインブロック4(基準ラインブロック)と同じノズル番号のライン測定位置(ノズル番号5、25、45、65、‥)を用いて、ラインブロック1の測定位置を補正する補正関数を決定し、ラインブロック1の測定位置を前記決定したラインブロック1の測定位置を補正する補正関数で変換する。ラインブロック2、ラインブロック3についても同様の補正(変換)を行う(説明は省略する)。
本実施形態では4N+M(M=0、1、2、3)の例を説明するが4倍数に限定されない。AN+B(B=0、1、…A−1)、Aは2以上の整数について適応可能である。
ラインブロック4に相当する基準ラインブロックはCN+D(C≠A、CとAは公約数を1以外に持たない。D=0、1、C−1のどれでもよい)の形式で、A×Cの値が共通するノズル番号の周期になる。
図9の例では、ラインブロック0から3までで、1ヘッドの全てのノズルに対応したラインが形成される。
即ち、ラインヘッドにおいて、実質的に主走査方向に沿って1列に並ぶノズル列(正射影によって得られる実質的なノズル列)を構成するノズルに、その主走査方向の端から順番にノズル番号を付与したとき、例えば、4N+0、4N+1、4N+2、4N+3のノズル番号のグループ(ブロック)ごとに打滴タイミングを変えて、それぞれライン群(いわゆる「1オンnオフ」タイプのラインパターン)を形成する。
これにより、図9に示すように、各ブロック内で隣接ライン同士が重なり合わず、全ノズルについて独立したラインを形成できる(いわゆる「1オンnオフ」タイプのラインパターン)。CMYKの各インク色に対応するヘッドについて図9のようなラインブロック群が形成される。
<本実施形態における測定用ラインパターンの読み取り>
図10はドット位置測定用ラインパターンをスキャナで読み取るときのスキャナ主走査方向と副走査方向の関係を説明する図である。図10のようにラインブロック内におけるライン92の並び方向をスキャナ主走査方向に、ライン92の長さ方向(長手方向)をスキャナ副走査方向に合わせてドット位置測定用ラインパターンを読み取る。
図11はスキャナ座標系(読み取り座標系)とドット位置測定用ラインパターンの関係を説明する図である。スキャナは主走査方向を高解像度(高精度)に設定、スキャナ副走査方向は低解像度に設定して読み取る。例えば、画像形成装置の記録解像度が1200DPIのとき、スキャナの主走査解像度はサンプリング定理から2400DPI以上が好ましく、副走査解像度はこれよりも大幅に低解像度の200DPI以下が好ましい。副走査解像度の下限はラインの長さと上記AN+BのAの設定に基づいて変わるが、スキャナ装置の動作する範囲であれば、100DPIもしくは50DPIでも構わない。
スキャナによる読取解像度の好ましい条件の目安として、副走査方向の読取解像度は、主走査方向の読取解像度の1/10以下、かつ1/60以上の範囲とする。
プリンタ装置が1200DPIである場合、読取解像度は主走査方向2400DPI、副走査解像度50〜200DPIが好ましい。
主走査解像度は必要な測定精度によって異なる。例として誤差σ<0.4(μm)以下の場合、主走査2400DPI、副走査200DPI以下が望ましい。解像度の下限はサンプルチャートの1オンNオフの段数(N+1段)と1段当たりのライン長LをNL画素で読み取る、という条件から決まる。
なお、サンプルチャートの(N+1段)は1枚の記録用紙に収まり、且つ1回の読み取り動作で読み取り可能であることも制約条件となる。
すなわち、以下の関係(式1,式2)を満たすことが条件となる。
[式1](N+1)×L>(N+1)×NL/副走査解像度
且つ
[式2]A3ないしA4サイズ用紙の縦方向の長さ>(N+1)×L
ここで、NLは後述する画像平均化領域ROIのY方向の画素数とROIの数と各ROIのY方向のズレ量で決まるため、NLは次式[式3]となる。
[式3]
NL=(ROIのY方向の画素数)+(ROIの数−1)×(ROIのズレ量)
仮に、(ROIのY方向の画素数)=10画素、(ROIの数)=4、(ROIのズレ量)=2画素とすると、[式3]より、
NL=10+(4−1)×2=16(画素)
N=4、L=2(インチ)とすると、[式1]より
副走査解像度>{(N+1)×NL}/{(N+1)×L}なので、
副走査解像度>(NL/L)=16/2=8(DPI)
となる。
別の例として、Nを16とすると、Lは0.6(インチ)
副走査解像度>16/0.6=26(DPI)
となる。
図11に示したスキャナ座標格子の各セル(符号96)は、スキャナ装置における1つの読取画素が捉える領域(1画素のアパーチャ)を示している。同図では、図示の便宜上、スキャナ主走査画素サイズ(PX)に対して、スキャナ副走査画素サイズ(PY)が約2倍程度の比率の長方形で描かれているが、実際の画素の縦横比率は、スキャナの主走査解像度と副走査解像度の関係を反映したものとなる。
なお、読み取り対象となるドット位置測定用ラインパターンのプリント物をスキャナ装置(フラットベッド)に置くとき、注意深く置いても、ドット位置測定用ラインパターンとスキャナ読み取り座標系の間に回転角(θ)ができてしまう。
この回転角を補正しない場合、ラインパターンの高さに応じてラインブロック間に一定の誤差が生じる。このため、本実施形態ではこの回転角の補正を行う処理を実施する。回転角補正の詳細は後述する(図13のステップS108)。
図12はスキャナ装置で読み取った画像上(スキャナ画素を正方として表現している)のドット位置測定用ラインパターンを示す。画像データ上のX座標をスキャナ主走査方向、画像データ上のY座標をスキャナ副走査方向とする。
<読み取り画像データの解析>
図13は、ドット位置測定の流れを示すフローチャートである。同図の測定フローの開始に先立ち、図9で説明したとおり、インクジェットヘッドの各ノズルから記録紙16上に測定対象のインクを打滴しつつ、ヘッド50と記録紙16を相対的に移動させ、各ノズル51から打滴されるインクにより、各ノズルに対応するドット列によるラインパターンを記録紙16上に形成する。つまり、測定対象のインクを用いてラインパターンを形成したサンプルチャート(測定用チャート)を形成する。
そして、上記得られたラインパターンを画像読取装置(スキャナ)で読み取る(図13のステップS102)。このとき、図10で説明したように、ライン長さ方向をスキャナの副走査方向に、ライン並び方向をスキャナの主走査方向に置き、主走査方向を高解像度、副走査方向を低解像度でラインパターンを撮像する。なお、スキャナ(不図示)は、R(赤),G(緑),B(青)の各色のカラーフィルタを備えたRGB毎の受光素子列を有する3ラインセンサ(いわゆるRGBラインセンサ)を備え、サンプルチャートの全面(すべてのラインブロック)を電子画像データとして取り込む。
次いで、測定対象インクに合わせて読み取り画像のカラーと判定用カラーを選択する(図13のステップS104)。即ち、ラインパターン上のインクに応じて撮像画像のカラーチャンネルと色判定のためのカラーチャンネルを設定する。
インクカラーがシアン(C)インクのときは読み取り対象画像のカラーとしてRチャンネル(レッドチャンネル)、判定用カラーとしてGチャンネル(グリーンチャンネル)が用いられる。
Rチャンネルはシアンとブラックの識別ができないため、Gチャンネルによって、シアンかブラックかを判別する。ブラックはRチャンネル、Gチャンネルともに濃度が検知されるが、シアンはRチャンネルのみに検出され、Gチャンネルには出力がでない。このようにインク色によって、両チャンネルの出力特性の傾向が違うため、その違いを利用してインク色を識別する。
マゼンタ(M)インクのときは読み取り対象画像のカラーとしてGチャンネル、判定用カラーとしてRチャンネルが用いられる。マゼンタはRチャンネルに出力がでないため、両チャンネルの出力に相関がない(読み取り対象が画像のカラーと判定用カラーは相関がない)ことによりマゼンタを識別できる。
イエロー(Y)インクのときは読み取り対象画像のカラーとしてBチャンネル(ブルーチャンネル)、判定用カラーとしてRチャンネルが用いられる。両チャンネルの出力に相関がない(読み取り対象が画像のカラーと判定用カラーは相関がない)ことによりイエローを識別できる。
ブラックインクのときはGチャンネルが望ましいが、Rチャンネルでも良い。他の二次色インクや特色インクの場合、記録紙16上に記録されたインクの分光反射率とスキャナのカラーチャンネルの分光感度の関係とに基づいて、測定対象インクを撮像したときに、スキャナのカラーチャンネルのなかで最も高コントラストに読み取れるチャンネルを選択する。一方、判定用カラーは、読み取り対象画像のカラーとは異なるチャンネルで、他のインクとは異なるロジック(相関の有無)で判別できることが望ましい。
次いで、図13のステップS105に進み、画像処理位置を自動的に設定する処理を行う。この処理は読取画像を解析して、各ラインブロックの演算対象領域(ROI;Region Of Interest)を最適な位置に決定するものである。また、このときに読取画像の傾きを判定し、傾きが所定値(予め定められた許容値)より大きい場合は、スキャナ上のサンプルチャートを正しい位置、姿勢に置き直して、再読み取りを行う。
このステップS105における自動位置設定処理フローを図14に示す。
〔画像処理位置の自動設定処理〕
図14の自動位置設定処理フローが開始すると、各ラインブロックに対して、自動的に平行移動量を決定する対象のROIを設定する(ステップS121)。ROIは、演算対象とするラインブロックの一部分を切り出す所定形状(図15では矩形)の領域を特定するものである。ここでは、複数のラインブロックに関して複数のROIが設定される。このとき設定されるROIの位置は、ラインパターンの形態から予め適当な位置が定められているものとし、そのデフォルト設定にしたがって決定される。ROIは、読み取られた画像座標に対して直交する矩形領域であるため、サンプルチャートの読み取り時の角度(傾き)が大きいと、ラインブロックがROI内にうまく入らないことも想定される。本処理フローでは、その角度を判定して、再読み取りの必要性を判断することが可能である。
次いで、図14のステップS122に進み、上記設定された各ROI位置に基づいて、全ROIを含む最小の矩形Zを求める(図15参照)。
次に、読み取り画像カラー、判定用カラーについてX方向(スキャナー主走査方向)インターバルを計算する(図14のステップS124)。例えば、シアンインクの場合、読み取り画像カラーはRチャンネル、判定用カラーはGチャンネルであり、これら2つのカラー画像に関して以下に述べるX方向のインターバルを計算する。
このステップS124におけるX方向インターバル計算フローを図16に示し、図17に処理内容の概念図を示す。
図16のX方向インターバル計算フローが開始すると、まず、読み取った画像に対してY方向(副走査方向)について所定の間隔で間引き走査を行い(図17のX方向矢印参照)、各位置においてラインと垂直な区間で特徴量画像Xを作成する(図16のステップS142)。
このときの間引き走査においては、ラインブロックを少なくとも1つの走査が掛かることが望ましい。一つの走査の中で、図17の上部に図示したように、画像処理位置に対してX方向に所定幅Wxでウインドウ101を設定し、ウインドウ101内の特徴量を求める。ウインドウ101は、X方向ついて一部をオーバーラップさせながら、互いの位置をずらして設定される。各ウインドウ101内の特徴量を画像処理位置の値として出力する。
読み取り画像の画像データ(画像信号)は、インクのある部分(インクで描画されたランの部分)の値が低く、インクが存在しない部分(記録紙の白地部分)の値は高いものであるとする。
求めるインクの画像信号が紙白の画像信号より小であるときは、画像特徴量としてウインドウ101内の最小値を使用し、求めるインクの画像信号が紙白の画像信号より大であるときは、画像特徴量としてウインドウ内の最大値を使用する。
図17の(b)は、一つの走査の結果を示している。このように、ラインブロックのライン群が存在する領域部分の画像特徴量は小さい値となり、ライン群の外側(ライン群が存在しない余白領域)の画像特徴量は大きい値となる。全ての走査について、同様の画像特徴量を取得し、これら全ての走査の結果、特徴量画像Xが生成される。
次に、この特徴量画像Xを用いて、求めるインク像が存在するか否かを判定するために、特徴量画像Xの画像ヒストグラムを計算し、この画像ヒストグラムに基づいて画像コントラストを計算する(図16のステップS144)。
そして、求めた画像コントラストと所定の判定基準値とを比較し(ステップS146)、その大小に基づいて、求めるインク像の有無を決定する。すなわち、画像コントラストが所定値より小さいときは(ステップS146でYES)、インク像無しとしてインターバルなしを出力する(ステップS148)。
その一方、ステップS146において、画像コントラストが所定値より大きいときは(NO判定時)、インク像の位置を特定するために、画像ヒストグラムに基づいて特徴量画像Xを2値化するための2値化閾値を決定する(ステップS150)。この2値化閾値を決める方法としては、例えば、判別分析法、ヒストグラム最小値と最大値の中間値、50パーセント点などを用いることができる。
次に、求めた2値化閾値に基づいて特徴量画像Xを2値化し、当該2値化が像の各X方向の走査毎にインターバル(図17の(c)参照)を求める(図16のステップS152)。
全ての走査についてインターバルを求めると、図18の左側(a)に示したように、各走査に対応したX方向インターバルを示す線分のパターンが得られる。
図16のX方向インターバル計算フローが終了すると、同図のサブルーチンを抜けて、図14の自動位置設定処理フローに復帰し、図14のステップS126に進む。
ステップS126では、読み取り画像カラーの画像データから求めたX方向インターバルと、判別用カラーの画像データから求めたX方向インターバルとを用いて、両者の相関の有無を利用して、読み取り対象カラーのX方向インターバルを各インターバルについて削除する。
インターバルの相関とは、読み取り対象画像のインターバル上の画素において、判定用カラーのインターバルが同じくインターバルの一部である比率と定義する。読み取り対象画像のカラーのインターバルを一つずつ取り出し、インターバルの座標において、判定用インターバルの同じ座標がインターバルに含まれるか否かをカウントし、読み取り対象画像のカラーにおける一つのインターバルの画素数(X方向の長さ)で除算して比率を求める。この比率(相関)が予め定めた判定基準値(所定値)より高い場合は相関が高いと判断し、所定値より低い場合は相関が低いと判断する。
例えば、シアンインクの場合、相関がない場合に採用(相関がある場合は削除)となるので、相関が所定値より高い場合は、読み取り対象画像カラーの一つのインターバルは削除となる。このようにして読み取り対象画像カラーのインターバルを判定用カラーのインターバルとの相関に基づいて削除していく。
次に、先に計算したROIを含む矩形ZのX方向の大きさに基づいて、読み取り対象カラーのインターバルを削除する(図14のステップS128)。矩形ZのX方向の大きさに対して所定の範囲にある(サイズが近い)インターバルを採用し、所定の範囲外(サイズが小さい、または大きい)インターバルを削除する。
つまり、インターバルの大きさでフィルタをかけることに相当しており、ある大きさ範囲のインターバルだけが残り、規定外のものは不採用となって削除される。
同様にしてY方向のインターバルを計算する(図14のステップS130〜S134)。
ステップS130におけるY方向インターバル計算フローを図19に示し、図20に処理内容の概念図を示す。
X方向インターバルとの違いは、図20に示すように、走査方向とウインドウ102の位置関係である。特徴量を計算するウインドウは画像内のライン像に対しておよそ垂直な方向に設定する必要があるので、図17で説明したX方向インターバルの計算においてはX方向のウインドウ101が用いられ(図17ではライン像はY方向に伸びている)、Y方向インターバルの計算においては、図20のようにY方向のウインドウ102が用いられる。
その他の演算手法はX方向インターバルの場合と同様であるため、図14のステップS130〜S134の説明は省略する。
図20(b)に示すように、1走査の結果を単純に2値化すると、ライン群の有無によって短い区間ΔWの不連続部分が発生する。このようなある一定値よりも短い区間ΔWの不連続については、無視するようなフィルタをかけてこれを連続であるとみなす処理を行い、図20(c)のように、一本に繋げた線分(インターバル)とする。
なお、図19のステップS162によって得られる各走査に対応したY方向インターバルを示す線分のパターンを図21に示す。
このようにして、X方向インターバル(図18参照)とY方向インターバル(図21参照)とが得られる。
求めたい矩形領域は、必ずこれらインターバルの線分を一部に含む。したがって、X方向インターバル(横方向の線分)とY方向インターバル(縦方向の線分)とを組み合せ、これら全体を包含する大きさの矩形領域を計算すべく、図14のステップS134からステップS136に進む。
ステップS136では、X方向、Y方向とも所定のサイズに相当する矩形Wを決定するために、図22のようにX方向インターバルとY方向インターバルとを組み合わせて、X方向インターバルとY方向インターバルの交差を判定し、交差した場合、矩形Wの一部と判断して採用する(図14のステップS136)。
ステップS136で交差するものとして選択された交差インターバルの座標に基づいて、これら交差インターバルを全て含むような矩形Wを求める(ステップS138、図22(a)参照)。
次に、矩形Z(図15で説明したROIの集合体の矩形、図22(b)参照)と矩形Wの位置を一致させるために、矩形Zの中心位置と矩形Wの中心位置を求め、矩形Zの中心位置が矩形Wの中心位置に一致するような、平行移動量を求める。(図14のステップS139)
また、上記の平行移動量の計算とは別に、各インターバル(X方向インターバル、Y方向インターバル)の開始点について、開始点の傾きを計算する。画像全体がスキャナの画素格子に対して傾いていると、インターバル間の開始点の位置が傾く。X方向インターバル、又はY方向インターバルについて、各インターバル間の開始点の傾きを計算し、平均的な傾き角が所定の基準(許容範囲)を満たさない場合は、画像が著しく傾いていると判断する。この場合は、読み取りエラーである旨の警告を出力するなどして、オペレータに対し、サンプルチャートの置き直しと、再読み取りを促す。
上述した図14の自動位置設定処理フローが終了したら、図14のサブルーチンを抜けて、図13の全体フローに復帰し、図13のステップS106に進む。
ステップS106では、ステップS105の自動位置設定処理(図14)で求めた平行移動量にしたがい、各ROIを最適な位置に平行移動し、各ラインブロックにおいて、読取画像上にROIを設定し、各ラインブロック毎に、それぞれのライン位置を測定する(ステップS106)。このステップS106におけるラインブロック内位置測定フローを図23に示す。
〔ラインブロック内位置測定〕
図23のラインブロック内位置測定フローが開始すると、各ラインブロックに対して画像平均化領域ROI(Region Of Interest)を所定数設定する(ステップS202)。即ち、図24に示すように1つのラインブロックに対して複数のROIを設定する。図24では、4つのROI1、ROI2、ROI3、ROI4を設定した例を示した。このとき各ROIはY方向に一定間隔ズラして設定する。例えば、一定間隔の2画素ずらす場合、ROI2はROI1に対してY方向に2画素ずらし、ROI3はROI1に対して4画素ずらし、ROI4はROI1に対して6画素ずらす。X方向に関してはラインをROIから外さなければ、各ROIをずらす必要はない。ただし、図24では、図示の便宜上、X方向に関しても一定間隔でずらし、ROI1〜ROI4の記載の重なりを回避している。
なお、図14で説明したROIは、図24に示したROI1〜4に他ならず、図14のフローは図24のROI1〜4で解析する位置を画像解析によって決定するものである。よって、図14で述べた矩形ZはROI1〜4を包含する(内接する)最小の矩形になる。
こうして、設定した各ROI毎にライン位置を測定する(図23のステップS204)。即ち、図25及び図26に示すフローチャートにしたがいX座標を決定する。Y座標は各ROI1〜4のY方向の中心位置を使用する。このようにして決定したROI1からROI4までのライン位置を平均してラインブロックのライン位置(座標)を決定する。
図25はROI内のライン位置測定フローである。図25のラインブロック内位置測定フローが開始すると、まず、ROI内を所定方向、ここでは、スキャナ副走査方向(Y座標方向)に画像信号を平均化して平均プロファイル画像を作成する(ステップS302)。
図27(a)は演算対象とする1つのROIの例であり、同(b)は(a)に示すROIをライン長さ方向(図中の下向き矢印方向)に画像信号を平均化して得た平均プロファイル画像である。なお、図27(b)において、横軸は画像データのX方向位置(画素位置)を表し、縦軸は読み取った画像データの階調値を表す。ここでは、インクによるドットの濃度が高いほど階調値が小さい値となっており、ドットが存在しない部分(記録紙16の白地部分)は階調値が大きい値となっている。
図27(a)のようにドット位置測定用ラインパターンにゴミ94の付着があったり、ライン92にサテライト95(インク吐出時に主液滴から分離したサテライト滴と呼ばれる副液滴が発生し、このサテライト滴が記録紙16上の主液滴と異なる位置に付着したもの)が発生していても、ライン長さ方向(図中下向き矢印方向)に平均化することでゴミ94のコントラストは低下し、サテライト95によるプロファイル画像の歪みは低減する(図27(b)参照)。
続いて、この作成した平均プロファイル画像を所定のフィルタで平滑化し、フィルタ処理したプロファイル画像(X座標方向)を作成する(図25のステップS304)。図28は平均化したプロファイル画像に対してフィルタ処理を行い、更にゴミのコントラストを低下し、サテライトによる歪みを低減した結果である。フィルタとしては対称形の5から9タップ程度のリニアフィルタが処理速度や効果の観点で好ましい。
フィルタ処理した結果、短周期の歪みは補正されるが、図29のようにスキャナ読み取り時のシェーディング(照明の明暗変動等)に起因する長周期の階調値の変動は依然として残る。このようなシェーディングは階調値に基づいてライン位置を決定するアルゴリズムでは、位置誤差の重大な原因となる。このため上記フィルタ処理(図25のステップS304)に続いて、フィルタ処理後の平均プロファイル画像に対してW(ホワイト、白地)/B(ブラック、インク)補正を行う(図25のステップS306)。
図26にW/B補正処理フローを示す。図26のW/B補正処理フローが開始すると、フィルタ処理後のプロファイル画像において各ラインにW(ホワイト、白地)区間とB(ブラック、インク)区間を設定し(ステップS402)、各W区間とB区間毎にそれぞれ代表値を決定する(ステップS404)。
図30はフィルタ処理したプロファイル画像に対してW(ホワイト、白地)区間とB(ブラック、インク)区間を設定した様子を示している。このようなW区間B区間はプロファイルグラフを判別分析法などを使用して2値化処理し、2値化処理した結果を更にモフォロジー処理(太らせ処理を所定回数、細らせ処理を同所定回数)した結果に対して、黒画素をB区間、白画素をW区間とすることで設定できる。各B区間はプロファイル画像の谷(極小値)部分を含み、各W区間はプロファイル画像の山(極大値)部分を含むものとして設定される。黒画素に対して所定画素数分前後に増加してB区間、白画素に対して前後に所定画素増加してW区間としても良い。
このようにして決定したW区間において、フィルタ処理したプロファイル画像に対して、W区間を代表する階調値と位置を決定する。代表値は、例えば、W区間内の最大値を用いる。W区間の位置はW区間の中心位置を用いる。各W区間Wi(i=0,1,2…)に対して、代表する階調値WLiと位置WXiを決定する。
同様に、B区間において、フィルタ処理したプロファイル画像に対して、B区間を代表する階調値と位置を決定する。代表値は、例えば、B区間内の最小値を用いる。B区間の位置はB区間の中心位置を用いる。各B区間Bi(i=0,1,2…)に対して、代表する階調値BLiと位置BXiを決定する。
こうして求めたW区間毎の代表値とB区間毎の代表値に基づいて、フィルタ処理後のプロファイル画像の階調値を補正する(図26のステップS406)。なお、W区間は「非記録領域」、B区間は「記録領域」に対応している。
<W/B補正処理>
フィルタ処理したプロファイル画像に対して、各位置Xと階調値Lを以下のように補正する。即ち、決定したW区間の代表値WLiとWXiを線形補間して任意のXに対して推定値WLを求める。また、決定したB区間の代表値BLiとBXiを線形補間して任意のXに対して推定値BLを求める。
W/B補正後の白階調値をW0、黒階調値をB0とすると、
L´=補正係数K(L−BL)+B0
補正係数K=(W0−B0)/(WL−BL)
つまり、入力値がWLのとき出力値がW0に、入力値がBLのときに出力値がB0になるように線形変換する。
こうしてW/Bのレベルを補正する処理(ステップS406)を終えたら、図26のサブルーチンを抜けて、図25のROI内ライン位置測定フローに復帰し、図25のステップS308に進む。ステップS308では、W/B補正したプロファイル画像において、所定の階調値(エッジ閾値階調値)に一致するエッジ位置(X座標)を各ラインにつき2箇所(左右)決定する。
図31はW/B補正した結果のプロファイル画像において、エッジを規定する閾値ETHとなる位置をラインに対して前後2箇所(図31における左側のエッジ位置EGL、右側のエッジ位置EGR)決定する様子を示している。
W/B補正した結果のプロファイル画像と閾値ETHは正確に一致しない場合、公知の補間アルゴリズムを使用してエッジ位置を決定する。公知の補間アルゴリズムとしては線形補間やスプライン補間、キュービック補間が適用できる。
次いで、各ラインにおいて2箇所決定したエッジ位置をライン毎に平均化してその平均値をライン位置(X座標)として決定する(図25のステップS310)。また、ROIのY座標方向の中心座標をライン位置のY座標として決定する。即ち、Y座標は各ROIのY方向の中心位置を使用する。
このようにして、ROIに対応するライン位置を決定した後、図25のサブルーチンを抜けて、図23のラインブロック内位置測定フローに復帰し、図23のステップS206に進む。ステップS206では、複数のROI(ROI1〜ROI4)について、各ROIで測定したライン位置を平均化した位置をラインブロックに対応するライン位置(X座標、Y座標)として決定する。こうして、各ラインブロックについて、同様の処理を行い、各ラインブロック毎にライン位置を測定する。
なお、各ライン位置の特定方法については、上述した両端エッジ位置から求める手法に限らず、例えば、プロファイル画像の極値から求めるなど、他の演算方法を適用してもよい。
(複数のROIから測定したライン位置を平均化する意義について)
図32は100μm間隔に正確に製作された校正用ラインブロックを読み取り、ROI1とROI2で決定したライン位置(X座標)をライン間隔に変換した結果である。なお、中心値が100μmから若干ずれているのはラインブロックの回転角を補正していないためである。
図33は図32と同じ100μm間隔に正確に製作された校正用ラインブロックを読み取り、ROI1からROI4を平均したライン位置(X座標)をライン間隔に変換した結果である。図33と図32を比較すると明らかなように、図33ではライン間隔のバラツキが低減して間隔が一定値に近づいていることが分かる。つまり、規則的に一定間隔でずらした複数のROIで決定したライン位置を平均化することの優れた効果が分かる。
したがって、本例では、図24で説明したように、各ラインブロックについて、複数のROIで測定したライン位置を平均してラインブロックのライン位置を求めている。
上記のように、各ラインブロックについて、複数のROIで測定したライン位置を平均してラインブロックのライン位置を決定し、図23のステップS206の処理を終えると、図23のサブルーチンを抜けて、図13の全体フローに復帰し、図13のステップS107に進む。
〔仮ノズル位置推定処理フロー〕
図13のステップS107の仮ノズル位置推定処理のフローチャートを図34に示す。図34の仮ノズル位置推定処理フローが開始すると、ラインパターンに含まれるラインブロックから測定された各ライン位置について、端から仮ノズル番号を付与し、測定されたライン位置と対応する仮ノズル番号の関係を表す関係式を決定する(ステップS422)。
不吐ノズルが無い場合は上記のようにライン群の端から順にノズル番号を割り当てることで問題ないが、仮に、不吐ノズルが左端にある場合、先頭となるノズル番号にズレが生じるため、その後の処理に不都合が生じる。
このような左端の不吐を検出するために、本例では、ラインブロック0からラインブロック4において、仮ノズル番号を導入し、この仮ノズル番号と、測定したライン位置との関係を所定の近似式で決定する(図34)。ここでいう仮ノズル番号の「仮」とは、左端の位置を規定のノズル番号とみなしている意味である。
なお、本例では、ラインブロックの左端を基準にして、左側から仮ノズル番号を付与しているが、右端を基準にしてもよい。
また、このような左端の不吐の検出処理を行う前に、左端以外の不吐ノズルについては、ラインブロック内におけるライン間隔の異常から、その位置を特定し、かかる不吐出位置に対応する仮ノズル番号とライン位置を適切に求めることが必要である。このような左端以外の不吐については次のように対処する。
不吐なく正常に打滴されたライブロックに含まれるラインの間隔が略一定値であることに基づいて、読み取り画像から測定されたライン間隔が(平均ラインピッチ)以上の場合、当該2つのライン間には不吐ノズルが存在すると判断して、ライン間隔/(平均ラインピッチ)に基づいて、不吐ノズルを挿入する。
つまり、仮ノズル番号を必要なノズル数分ずらして、これらノズルに不吐の属性を与え、ノズル位置として、前記2つのライン間の間隔を等分割した位置を与える。そして、これ以降の仮ノズル番号とライン位置の関係を、挿入したノズル数分ずらす。
その一方、読み取り画像から測定されたライン間隔が(平均ラインピッチ)×(重複ライン検出係数)以下の場合、サテライトによるライン等である可能性があるため、かかる近接ラインを重複として削除するなどの処理を行って、仮ノズル番号とライン位置の関係を求めておく。
なお、上記の不吐ノズルの存在判定と、重複ラインの判定に際して、判断の基準値として、平均ラインピッチに重複ライン検出係数をかけた値を用いる理由は、ノズル毎の打滴位置のばらつきなどを考慮して、厳密な平均ラインピッチからある程度の範囲の誤差を許容するためである。
<仮ノズル番号とライン位置(ノズル位置)の関係を表す関係式の算出例>
次に、図34の仮ノズル位置推定処理フローにおける仮ノズル番号とライン位置(ノズル位置)の関係を表す関係式の算出例を説明する。
ラインブロック0に含まれる仮ノズル番号をNi@LB0、ノズル位置を(Xi@LB0,Yi@LB0)とする。同様に、ラインブロック1に含まれる仮ノズル番号をNi@LB1、ノズル位置を(Xi@LB1,Yi@LB1)、ラインブロック2に含まれる仮ノズル番号をNi@LB2、 ノズル位置を(Xi@LB2, Yi@LB2)、ラインブロック3に含まれる仮ノズル番号をNi@LB3, ノズル位置を(Xi@LB3, Yi@LB3)、ラインブロック4に含まれる仮ノズル番号をNi@LB4、 ノズル位置を(Xi@LB4, Yi@LB4)とする。
ラインブロック0は、4N+0で表されるノズル番号のノズルで打滴されるライン群であることから(Nは0以上の整数)、読取画像内のラインブロック0に属するライン群の各ライン位置に対して、左端から仮ノズル番号Ni@LB0を{0,4,8,12,16…}のように割り当てる。
他も同様に、ラインブロック1は、4N+1で表されるノズル番号のノズルで打滴されるライン群であることから(Nは0以上の整数)、仮ノズル番号Ni@LB1は{1,5,9,13,17…}のように割り当てられる。ラインブロック2の仮ノズル番号Ni@LB2は{2,6,10,14,18…}、ラインブロック3の仮ノズル番号Ni@LB3は{3,7,11,15,19…}、ラインブロック4の仮ノズル番号Ni@LB4は{0,5,10,15,20…}のように割り当てられる。
次に、ラインブロック0に含まれる仮ノズル番号とノズル位置の関係を所定の近似式(多項式、或いは、区分的な多項式)で求める。
X = GLB0( N ), N:仮ノズル番号、X: ノズル位置
同様にライブロック1についても近似式X = GLB1( N )を求め、ラインブロック2についてX = GLB2( N )、ラインブロック3についてX = GLB3( N)、ラインブロック4についてX = GLB4( N )を求める。
こうして、各ラインブロックについて、仮ノズル番号とノズル位置の関係を表す近似関数GLB0(N), GLB1(N), GLB2(N), GLB3(N), GLB4(N) をそれぞれ求める。
各ラインブロック0〜3から測定される位置データは、それぞれ4ノズル間隔のまばらなデータであり、ラインブロック4は5ノズル間隔のまばらなデータであり、これらまばらなデータから、仮ノズル番号とライン位置の大まかな特性(近似関数)を求める。この近似関数を用いることにより、実際のラインブロックには存在しないノズル番号の位置を推定することができる。
こうして、図34のステップS422の処理を終えると、図34のサブルーチンを抜けて、図13の全体フローに復帰し、図13のステップS108に進む。
〔回転角・ノズル番号推定処理フロー〕
図13のステップS108における回転角・ノズル番号推定処理のフローチャートを図35に示す回転角・ノズル番号推定処理フローが開始すると、各ラインブロックの仮ノズル番号と位置の関係を表す関係式に所定のノズル番号を入力し、各関係式に対応した推定位置を求める(ステップS432)。
次いで、各ラインブロックに対応して決定した推定位置に基づいて各ラインブロック間の回転角を計算する(ステップS434)。
上記近似関数GLB0(N), GLB1(N), GLB2(N), GLB3(N), GLB4(N)について例示すると、これら近似関数に対して、同じノズル番号の集合M={ N0, N1,N2, N3, N4, ... }を代入して、各近似関数から同じノズル番号に対応する推定位置を求める。
そして、これら各ラインブロックの近似関数から決定した同じノズル番号に対応する推定位置の集合から各ラインブロック間の回転角を計算するにあたり、各ラインブロックの推定位置の代表値として、推定位置の各近似関数毎の出力値の平均を計算する。
すなわち、各近似関数GLB0(N), GLB1(N), GLB2(N), GLB3(N), GLB4(N)に対して、同じノズル番号の集合M={ N0, N1,N2, N3, N4, ... }を代入して、各近似関数の出力値の平均を計算する。
こうして得られた各近似関数の出力値の平均をそれぞれX@LB0, X@LB1, X@LB2, X@LB3,X@LB4とする。
一方、各ラインブロックのY方向の位置は同じラインブロックに属する場合、同じ座標値になるため、各ラインブロックのY方向の位置をY@LB0, Y@LB1, Y@LB2,Y@LB3, Y@LB4 とする。
これら各ラインブロックに対応した代表点の位置を示す座標(X@LB0, Y@LB0)、(X@LB1, Y@LB1)、(X@LB2, Y@LB2)、(X@LB3,Y@LB3)、(X@LB4, Y@LB4)から2点を選んで2点間を結ぶ直線の傾きを計算することによって各ラインブロック間の傾きを求める。
図36はラインブロック間の傾き角の計算マトリクスである。ラインブロック0〜4(LB0〜LB4)について、異なる2つのラインブロック間の傾き角θjk(ただし、j,kは0≦j<k≦4を満たす整数の組合せ)をそれぞれ計算する(10通り)。
仮に全てのライブロックにおいて、仮ノズル番号とノズル位置の関係が正しいのであれば、異なるラインブロック間の位置の傾き角は、ラインブロックに依らず一定である。
もしあるブロックにおいて仮ノズル番号とライン位置の関係に誤りがあるとき、そのラインブロックと対にして計算した傾き角は変化する。このような傾き角が変化するラインブロックを特定し(図35のステップS436〜S438)、当該特定したラインブロックを除いたラインブロック間の傾き角に基づいて、当該特定したラインブロックの仮ノズル番号を修正する(図35のステップS440)。
図37は、図36で計算した傾き角とラインブロックの関係を例示した図である。
図37(a)では、各ラインブロックの左端に不吐ノズルが無いため、ラインブロック間の傾き角はライブロックの組み合わせに依らず一定である。なお、それぞれのラインブロックにおいて、個別のライン像は位置誤差を持っているが、同じ番号のノズル集合に対して平均した結果を座標値としているため、ノズル像の個別の位置誤差は無視できる。
図37(b)は、ラインブロック2(LB2)の左端に不吐ノズルがあるために仮ノズル番号にずれが生じている場合を示している。この場合、仮ノズル番号がずれているためにラインブロック2(LB2)と組み合わせたライブロック間の傾き角(θ02、θ12、θ23、θ24)は、他のラインブロック間の傾き角(θ01など)と比較して変動している。このような傾向を持つ変動を検出判定し、他の一定の傾き角に基づいて当該変動傾向を持つライブロック(図示の例ではLB2)の仮ノズル番号を修正する。
このようなラインブロック間の傾き角の傾向は、読取画像が全体的に傾いている場合でも同様である(図38参照)。図38に示すように、画像が全体的に傾いているとしても、同図(a)では、各ラインブロックの左端に不吐ノズルが無いため、ラインブロック間の傾き角はライブロックの組み合わせに依らず一定である。一方、図38(b)のように、ラインブロック2(LB2)の左端に不吐ノズルがある場合は、仮ノズル番号にずれが生じているため、当該ラインブロック2の近似関数だけ他のラインブロックの近似関数とは異なる特性を示すものとなり、ラインブロック2(LB2)と組み合わせて計算されたライブロック間の傾き角は、他のラインブロック間の傾き角と比較して傾きが大きく異なる。
図38(b)と図37(b)を比較すると明らかなように、読取画像が全体的に傾いている(回転している)場合は、一定の回転角で全ラインが回転しているため、図37(b)から計算される各ラインブロック間の傾き角と、図38(b)から計算される各ラインブロック間の傾き角とは線形の関係になっている。したがって、読取画像の全体が回転している場合についても適用可能である。
上述のように各ラインブロック間の傾き角の違いから仮ノズル番号の誤り(左端の不吐)を検出することができる。仮ノズル番号に誤りがあることが検出されたラインブロックについては、左端に不ノズルが存在するため、その不吐ノズルに対して、ノズル番号を付与するように、全体としてノズル番号をシフトし、修正する。
なお、各ラインブロック間で計算された傾き角(図36)から特異な傾向を持つ傾き角を検出する方法としては、注目するラインブロックを含む傾き角の部分集合(図37(b)、図38(b)に図示の例ではLB2を一方に含む組合せ)の偏差を利用できる。
また、仮ノズル番号の修正方法は、他の一定の傾き角(本例では、偏差が大きいラインブロックを除いた回転角の平均値)と、修正対象のラインブロックの座標(図示の例では, Y@LB2) の値に基づいて、他の一定の傾き角に基づいてX‘@LB(図示の例ではX‘@LB2)の値を求めて、X@LBとX‘@LBの差分に相当するX方向の移動量をノズル番号に換算して修正する。
図35のフローチャートでは、各ラインブロック間の傾き角を計算した後(ステップS434)、全てのラインブロックに関して、ある注目するラインブロックと、それ以外のラインブロック間の回転角(傾き角)の偏差を計算する(ステップS436)。そして、この計算された各回転角の偏差が所定値(所定の判定基準値)より小さいか否かを判定し(ステップS438)、所定値を超えるものがある場合(NO判定時)には、ステップS440に進む。
ステップS440では、回転角の偏差が所定値よりも大きいラインブロックを除いた回転角の平均値を計算し、当該回転角の平均値に基づいて、回転角の偏差が所定値よりも大きいラインブロック(修正対象のラインブロック)の仮ノズル番号を変更する。こうして、仮ノズル番号を修正したら、ステップS434へ戻る。
すなわち、修正した仮ノズル番号に基づいて再度、近似式を求め(図示の例では近似関数GLB2(N))、各ラインブロック間の傾き角を再計算し(ステップS434)、回転角の偏差が所定値より小さいか判定する(ステップS436〜S438)。
ステップS438において回転角の偏差が所定値より小さい場合(YES判定時)は、
図35のフローを抜けて、図13の全体フローに復帰する。
図35で説明した手順により、ラインブロックにおけるノズル番号とライン位置の関係が正しい関係に訂正される。
なお、図37,38で例示したように、複数のラインブロック(LB0〜LB4)のうち、1つのラインブロック(LB2)のみについて左端が不吐である場合には、傾き角の傾向の違いを容易判別することができる。複数のラインブロック(LB0〜LB4)のうち、2以上のラインブロックについて同時に左端が不吐となる確率は低いものと思われるが、仮に、2つのラインブロックについて左端が不吐となっている場合には、残りの3つの正常なラインブロック間の傾き角の傾向は同等であるため、数の多い同傾向のものを基準(正常なもの)として、特異傾向のラインブロックの仮ノズル番号を整合させるように修正する。
なお、全てのラインブロックについて左端が不吐となると、傾き角の傾向の違いを判別できないことになるが、3以上のラインブロックについて同時に左端が不吐となる確率は極めて低いものであり、また、そのような多くの不吐ノズルが存在する状況は、画像形成上も好ましくないため、別途の不吐検出技術、ノズル回復技術(クリーニング技術)、不吐防止技術、又はこれらの適宜の組合せによって対処、防止される。
<好ましいテストチャートの形態について>
ところで、上述したライブロック相互間の傾き角を利用した訂正アルゴリズムでは、複数のラインブロックが一つ系列(1オンNオフ)の場合、最大で(N+1)ノズルの左端不吐までしか検出できない。
つまり、図37,38の例でラインブロック4(LB4)を除いた場合では、4ノズル以上の不吐は4の剰余分しか特定できない。
しかし、図37,38のように複数の系列(1オンNオフ、1オンMオフ)を持つ場合、以下のようにアルゴリズムを修正することで補正範囲が広がる。
初めに、LB0からLB3までのライブロック内でライブロック間の傾き角を求めて、補正する処理を実行する。LB0からLB3までのラインブロック間の傾き角θ1の偏差が所定値より小さくなっている。
次にLB4(異なる系列のラインブロック)を加えて、LB0からLB3までのラインブロックのうち1つを代表させて(仮にLB2とする)、LB2とLB4の2つのラインブロック間の傾き角θ2を計算する。θ1とθ2の差が所定値より小さければ、これ以上不吐無しで処理は終了する。
その一方、θ1とθ2の差が所定値より大きい場合、不吐ノズルを推定する必要がある。このとき、LB0からLB3までに不吐が存在する場合、不吐ノズルの数は4の倍数になる。一方LB4に不吐が存在する場合、不吐ノズルは5の倍数になる。傾き角はθ1が正しい、という条件を利用して、θ2がθ1に等しくなるようなLB4の不吐ノズルの推定を行う。
このとき実際はLB0からLB4の方に不吐ノズルが存在する場合には、LB4のノズル番号が本来のノズル番号の範囲をはみ出してしまう。このようにLB4のノズル番号が本来のノズル番号の範囲からはみ出す場合には、LB4のノズル番号が本来のノズル番号に揃うようにLB0からLB4の全部のラインブロックのノズル番号を訂正する。
上述のとおり、複数の系列(1オンNオフ、1オンMオフ)のラインブロックを含むテストチャートを用いることにより、(N+1)×(M+1)ノズル分まで訂正範囲が広がる。図37,38に示した例ではN=3とM=4であるから、20ノズルまで訂正可能である。
つまり、仮ノズル番号の数列の差分(等差数列の公差)が異なる系列が含まれていると、これら差分の異なる系列の公倍数に対応する範囲でノズル番号を訂正可能である。図37,図38以外の例を説明すると、例えば、いわゆる1オン15オフ型のラインブロック0〜15は、それぞれ16N+A(但しA=0、・・・15)のノズル番号で打滴され、これら各ラインブロックにおける仮ノズル番号の数列の差分は16である。これらラインブロック0〜15に加えて、ラインブロック16として17Nのノズル番号で打滴されたラインブロックが組み合わされている場合、当該ラインブロック16について仮ノズル番号の数列の差分は17である。このように、差分(公差)の異なる系列のラインブロックが組み合わされている場合、その公倍数である16×17=272の範囲でノズル番号を訂正できる。
このようにしてノズル番号とライン位置の関係を訂正した後に、ラインパターン読取時の回転角(スキャナ読取座標に対するラインパターンの回転角)を求め、その回転角に基づいて回転補正を行う(図13のステップS109)。
<物理値変換>
図13のステップS106の工程で求めたライン位置の情報は、スキャナ座標系の画素位置に対応するものなので、この画素位置を物理的な単位(例えば、μm単位)に変換する。即ち、ライン位置を主走査解像度、副走査解像度に応じた係数を乗じて物理値に変換する。
例えば、主走査読取解像度が2400DPIの場合、係数は25400/2400(μm/Dot)である。副走査読取解像度が200DPIの場合、係数は25400/200(μm/Dot)である。かかる係数を用いて、画素位置をμm単位の物理値に変換する演算を行う。
この物理値変換は、図13のステップS109による回転補正を行う前に、主副解像度の違いを補正する目的で実施する。
なお、画像データ上における画素の座標系から実際の記録媒体上の座標系への変換は上記のような係数による換算式によって定義されるため、どちらの座標系で演算を進めるか、また、どの演算段階で座標変換を行うか、については任意性がある。
<回転角の補正について>
ステップS109の回転角補正処理のフローチャートを図39に示す。図39の回転角補正処理フローが開始すると、回転補正用ラインブロックに基づいて回転角を決定する(ステップS502)。即ち、測定用チャートに含まれるラインブロックのライン位置のうち、異なるラインブロックに属するが、同じノズルから形成されたラインの位置座標(ステップS106の工程で決定したライン位置(X座標、Y座標))に基づいてラインパターンとスキャナ読み取り座標との回転角(図11のθ参照)を求める。そして、この求めた回転角(θ)に基づいて各ラインブロックの位置(即ち、各ライン位置)を回転補正する(ステップS504)。
<回転角の算出及び回転角補正>
本例の場合、回転補正用のラインブロックとして、図9におけるラインブロック0とラインブロック4を用いる。図23のステップS206で説明したように、ラインブロック0からラインブロック4までのライン位置を決定した後で、ラインブロック0とラインブロック4において同じノズルから作成したライン位置の座標をピックアップする。
この例ではラインブロック0とラインブロック4は、ノズル番号0、20、40、60、…が同じノズルでラインを作成しているので、これら共通のノズル番号に対応するライン位置が利用できる。
ラインブロック0に属するノズル番号0のライン位置をP0@LB0=(x0_LB0, y0_LB0) とし、ラインブロック4に属するノズル番号0のライン位置をP0@LB4=(x0_LB4, y0_LB4)とする。
これら2つの位置の成す角度θ0は、ΔY0=y0_LB4 − y0_LB0、ΔX0=x0_LB4 − x0_LB0として、tanθ0=ΔY/ΔXの関係から求められる。
他のノズル番号、ノズル20、ノズル40、ノズル60、等についても同様にθ20、θ40、θ60、等を求め、その平均値を回転角θとして決定する。このようにして決定したθを用いて回転補正を行う。
ラインブロック0からラインブロック3までの各ライン位置(x、y)を回転マトリクスR(−θ)で変換して回転角をキャンセルしたライン位置(x´、y´)を求める。
このようにして、回転角の補正処理を行った後、図39のサブルーチンを抜けて、図13の全体フローに復帰し、図13のステップS110に進む。
回転角補正処理後の測定値であっても、スキャナ要因等によるオフセット的な誤差が残っている(図53参照)。そのため、図13のステップS110ではラインブロック間の位置補正処理を行う。このラインブロック位置補正処理(ステップS110)のフローチャートを図40に示す。
図40のラインブロック位置補正処理フローが開始すると、まず、各ラインブロックに対してそれぞれ基準ラインブロックと共通するノズルにより形成されたラインを抽出し、この抽出したラインについて、基準ラインブロックの測定位置(X座標)を出力値、各ラインブロック測定位置(X座標)を入力値とする補正関数を各ラインブロック毎に求める(ステップS602)。補正関数は、図42で後述するとおり、区分的な多項式を最小自乗法により決定する。こうして、各ラインブロックについて補正関数を得る。
次いで、各ラインブロックの全ての測定位置(X座標)を、求めた対応する補正関数(区分的な多項式)を用いて変換する(ステップS604)。
<ラインブロック位置補正>
ここで、ラインブロック間の位置補正について具体例で説明する。ラインブロック0からラインブロック3をそれぞれ位置補正するが、ここでは、ラインブロック0について説明する。
ラインブロック0とラインブロック4(基準ラインブロック)と同じノズル番号のライン測定位置(ノズル番号0、20、40、60、80、‥)を抽出する。
ラインブロック0の測定位置(X座標)を、lb0_x0, lb0_x4, lb0_ x8,....とする。
ラインブロック4の測定位置(X座標)を、lb4_x0, lb4_x5, lb4_ x10, lb4_ x15, lb4_ x20, ....とする。
両ブロックに共通するノズル番号の測定位置は、以下の通りである。
X= {lb0_x0, lb0_x20, lb0_x40, lb0_x60,...}
Y= {lb4_x0, lb4_x20, lb4_x40, lb4_x60,...}
これら共通するノズル番号の位置を用いて、y = f0(x) となる補正関数f0を決定する。
補正関数は、スキャナの変動要因がオフセット的な要因だけであれば、Y= X +a0(0次関数)について、a0を最小自乗法で決定すればよく、キャリッジの微小な回転が問題になる場合は、
Y= a1×X +a0 (1次関数)について、a0,a1を最小自乗法で決定する。用紙変形については変形に即した補正関数を用いてればよい。用紙変形とスキャナ要因が複合している場合は、用紙変形モデル×スキャナ変形モデルを補正関数に選べばよい。
一般的にはY= Σai×X^i ( i= 0,..n) の多項式を用いることができる。なお、式中の「^」の記号は累乗(巾)の演算を表す。
<高次多項式を用いる場合の課題>
図41は、ラインブロック間の位置補正(補正関数)に高次多項式関数を適用して、同じテストパターンを繰り返し測定したときの補正処理の結果を示すものである。横軸は主走査方向位置、縦軸はライン間隔誤差を示す。
図41のように同じテストパターンを測定しても、測定値が安定しない現象が発生する。図中の「繰返し1」ではテストパターンを高精度に測定できているが、「繰返し2」では測定値が周期的に正負の誤差を持ってしまっている。この現象は高次多項式を選択したときに特有の発振現象である。
このような発振現象は、図54のように各副走査位置間の主走査方向の位置歪み特性差が周期的な成分を若干含んでいる場合に発生する可能性が高くなると推測される。
このようなスキャナ特性に対しては、高次多項式関数の適用に代えて、区分的に低次多項式を補正関数として選択することが好ましい。
<区分多項式による補正関数の説明>
図42は区分的な多項式による補正関数の説明図である。
図42の左側に示したデータ列(xi,yi)(ただし、i=0,1,2…n-1)について、所定の範囲(区分)のデータ群を一つのまとまりとして扱い(ここでは、6個の連続するデータ群を区分の単位として例示)、各区分のデータ集合S0,S1…Sm-1についてそれぞれ多項式funcj(x)(ただし、j=0,1,2…m-1)を対応付ける(n及びmは自然数)。
各区分のデータ集合S0,S1…Sm-1は隣接する区分間で互いに一部をオーバーラップさせている。各区分のデータ集合S0,S1…Sm-1について、それぞれのデータ集合の中心値C0,C1…Cm-2を求め、これらC0,C1…Cm-2の値を境界とする各区分範囲に対して、それぞれ対応する多項式を定義する。対応する多項式は、注目する区分範囲を担う2つの多項式funcj(x)、funcj+1(x)について比率tを用いた重み付け平均とする。
図9で説明したテストパターンの測定データに適用した例で具体的に説明すると次のとおりである。
あるラインブロックに属する各ラインの位置データは、X座標方向に関して、ほぼ等間隔のデータとなっている。このようなほぼ等間隔のデータである場合、データ列の端から所定個数(例えば、6個)の連続するデータを最初のデータ集合S0として抽出する。
ラインブロック0とラインブロック4とで同じノズル(共通ノズル)で描画されたラインの位置データ(X座標)について、以下のように抽出する。
X0= {lb0_x0, lb0_x20, lb0_x40, lb0_x60,lb0_x80, lb0_x100}
Y0= {lb4_x0, lb4_x20, lb4_x40, lb4_x60,lb4_x80, lb4_x100}
集合X0の要素は、ラインブロック0に属し、ノズル番号0,20,40,60,80,100に対応する位置のデータである。
集合Y0の要素は、ラインブロック4に属し、同じノズル番号0,20,40,60,80,100に対応する位置のデータである。集合X0の要素は、補正関数の入力値となるものであり、集合Y0の要素は補正関数の出力値となるものである。つまり、集合X0を集合Y0に一致させるように補正することになる。
このデータ集合S0と一部をオーバーラップさせて、次のデータ集合S1を次のようにする。
X1= { lb0_x60, lb0_x80, lb0_x120, lb0_x140,lb0_x160, lb0_x180}
Y1= { lb4_x60, lb4_x80, lb4_x120, lb4_x140,lb4_x160, lb4_x180}
以下同様に、一部をオーバーラップさせながら順次データ集合S2、S3、…を抽出する。
つまり、補正したいデータ列の全体に対して、所定範囲(ここでは、6データとするが、データ個数は任意に設定可能である。)の部分集合S0,S1,S2、…に分けていく。
次に各データ集合S0、S1、S2、‥‥について、それぞれ対応する近似多項式func0(x)、func1(x)、func2(x)、…を最小自乗法で求める。
さらに、各部分集合について、およそ真ん中あたりの位置(中心値)を求める。すなわち、データ集合S0の中心値C0を決定する。C0はX0の平均値とする。同様に、データ集合S1の中心値C1を決定する。C1はX1の平均値とする。以下、同じように、全てのデータ集合Siについて、それぞれ中心値Ci(CiはX1の平均値)を決定する。
なお、各データ集合S0、S1、S2、‥‥に対応する近似多項式を最小自乗法で求める際の最小自乗法の重み付けを、データ集合Siに対応する中心値Ciからの距離rijに応じて決定しても良い。
例えば、データ集合Siの要素xjについてCiからの距離rijを次式で定義し、
rij= |xj − Ci| , xj ∈ Si
このrijの最大値をrmaxjとして、qj= rmaxj×2に対するrijの比(rij/ qj)を用いて重みWjを次式で定義する。
wj=(1 − (rij / qj) )/( 1 + ( rij/ qj) )
このような重みWjを付加した最小自乗法によって各データ集合S0、S1、S2、‥‥に対応する近似関数を求めることができる。
データ集合S0に対応する近似関数をfunc0(x), データ集合S1に対応する近似関数をfunc1(x)、以下同様に、Siに対応する近似関数をfunci(x)とする。
このようにして決定した補正関数の集合f0(x)={func0(x), func1(x), func2(x),...}を用いて、ライブロック0の測定位置(X座標){ lb0_x0, lb0_x4, lb0_ x8, ....}を変換する。
次に、区分的な多項式を用いた変換(補正処理)の手順を説明する。
入力値をxkとする。この入力値に対して、まずxkと各c0, c1,c2, ....の大小関係から、次のような場合に分ける。
[1] xk ≦ c0 の場合
[2] cl ≦ xk ≦cl+1の場合(lは0からm-1のいずれかの自然数)
[3] cm-1≦ xkの場合
なお、[1]又は[3]で等号が成立する場合は[2]に含めることも可能である。
[1]の場合には、対応する近似多項式func0(x)に対して、xkを入力したyk=func0(xk)が変換結果ykである。
[2]の場合、cl と cl+1にそれぞれ対応する近似多項式funcl(x), funcl+1(x) と、cl 及びcl+1 とxkの位置関係から求めた比率tを用いて、
t = (cl+1 −xk) / ( cl+1− cl)
yk= t×funcl(xk) + (1−t)×funcl+1(xk)
が変換結果ykである。
オーバーラップ領域について二つの多項式を適切な比率で組み合わせることにより、区分的な関数をなめらかに連続させることができる。
[3]の場合、対応する近似多項式funcm-1(x)に対して、xkを入力したyk=funcm-1(xk)が変換結果ykである。
こうして、ラインブロック0の測定位置(X座標){ lb0_x0, lb0_x4, lb0_ x8, ....}を変換する。
図9で説明したラインブロック1とラインブロック4についても同様に補正関数f1(x)を決定し、決定した補正関数f1(x)を用いて、ライブロック1の測定位置(X座標){ lb1_x1, lb1_x5, lb1_ x9,....}を変換する。
ラインブロック2、3についても同様に、それぞれ補正関数f2(x)、f3(x)を決定し、決定した補正関数f2(x)、f3(x)を用いて、それぞれのラインブロック2,3の測定位置(X座標)を変換する。
このようにして、同一の基準ラインブロックの位置を基準にして、各ラインブロックの位置を補正するので、ラインブロック相互の位置誤差を低減することが可能になる。また、用紙変形についても変形の度合いがラインブロック0からラインブロック3で異なっていても、基準ラインブロックを基準に補正されるので用紙変形による測定誤差を低減することが可能になる。
特に、上述した区分的な多項式は次数を3〜5に抑えても良好な近似が可能であるので、図41のような高次多項式を用いたときに懸念される発振現象を防止することができる。
例えば、A3幅1200dpiのページワイド(フルライン)ヘッドについて、1つの高次多項式で近似しようとすると、次数は18次〜20次となり発振現象を起こし得るが、本実施形態によれば、2次〜5次の低次多項式となるため、発振現象を抑えつつ、歪み(変動)に追従する補正が可能である。
なお、本例(図42)では、各区分について3データずつオーバーラップさせているが、オーバーラップの量は特に限定されない。オーバーラップさせるデータ量が多いほど、補正関数の滑らかさが向上し、オーバーラップさせるデータ量を少なくすれば、各区分に対応した個々の多項式の影響をより強く反映させた補正関数となる。
ラインブロック位置補正の処理(図40)が終了して、図13の全体フローに復帰したら、続いて、図13のステップS112に進み、基準ラインブロック固定歪み補正の処理を行う。
この処理は、基準ラインブロックに対応する固定的な位置補正テーブル(「固定位置歪み補正テーブル」という。)を用いて、上記補正関数(区分的な多項式)で変換した位置(X座標)を補正するものである。
<基準ライブロック固定歪み補正>
次に、図13のステップS112に示した基準ラインブロック固定歪み補正の処理内容について説明する。
基準ラインブロック固定歪み補正の実施に先立ち、予め固定位置歪み補正テーブルを作成しておく必要がある。すなわち、測定に用いるスキャナについて、テストパターン読み取るときに基準ラインブロックに相当する位置の主走査方向の位置歪みを予め測定しておき、これを固定位置歪み補正テーブルとして記憶しておく。
この固定位置歪み補正テーブルは、次のようにして取得する。
予め等間隔のラインが並んだ1次元スケールを用意し、この1次元スケールをテストパターンの基準ラインブロックに相当する位置(副走査方向位置)に置き、補正対象のスキャナで当該1次元スケールを読み取る。そして、1次元スケール読み込み各位置をスキャナ座標に基づいて求めた結果を入力値とし、等間隔ラインの実際の値を出力値として、この入力値−出力値の関係を、測定ノイズを除去する処理をして求めることができる。
一例として、前記入力値−出力値から近似多項式を求めてこの近似多項式を固定位置歪み補正テーブルとすることができる。
図43、図44はカラースキャナの各RGBチャンネルの固定位置歪み補正テーブルを説明する図である。1次元スケールのラインを分光反射率がほぼ一定の色材で形成し、カラースキャナのGチャンネルの入力値と出力値を6次多項式で近似したものが図43である。また、図44は、Gチャンネルの位置データとのRチャンネルとBチャンネルでそれぞれ差分を求めて、その差分値を多項式で近似した固定位置歪み補正テーブルである。
Gチャネルで読み取った位置はGチャンネル用の固定位置歪み補正テーブル(図43)をそのまま使用する。一方、Rチャンネルで読み取った位置は、Gチャンネル用固定位置歪み補正テーブル(図43)と差分(R−G)用固定位置歪み補正テーブル(図44)を足し合わせたテーブルを使用する。Bチャンネルで読み取った位置は、Gチャンネル用固定位置歪み補正テーブル(図43)と差分(B−G)用固定位置歪み補正テーブル(図30)を足し合わせたテーブルを使用する。なお、図43,図44中の近似式の表記において「E−α」は、10の(−α)乗を表す。
図43,図44に示したような固定位置歪みテーブルを予めメモリ等の記憶手段に記憶しておき、基準ラインブロック固定歪み補正処理(図13のステップS112)の際に当該テーブルを読み出して補正を行う。
図45は、基準ラインブロック固定歪み補正処理のフローチャートである。図45の基準ラインブロック固定歪み補正フローが開始すると、まず、基準ラインブロック位置に対応する固定歪み補正テーブルを記憶手段から取り出す(ステップS702)。
次いで、この取り出した固定歪み補正テーブルを用いて、ラインブロック位置補正処理(図13のステップS110,図40)で補正した位置をさらに補正する(図45のステップS704)。求めるドット位置は、基準ラインブロックに対応する固定的な位置補正テーブルを用いて補正した後のX座標である。
図45のステップS704の処理を終えると、図45のサブルーチンを抜けて、図13の全体フローに復帰し、図13のステップS114に進む。
<各ラインブロックの統合>
次に、図13のステップS114に示した各ラインブロックのライン位置補正関数で補正した位置を統合する処理について説明する。
この統合処理では、上記固定位置歪み補正テーブルによって補正した各ラインブロックの位置のX座標を、ノズル番号順に並べる処理を行う。こうして、ノズル番号順に並べた結果が各ノズルのドット着弾位置である。
本例のドット位置測定方法によれば、基準ラインブロックを読み取った副走査位置におけるスキャナ主走査方向の位置歪みを、予め求めた固定的な主走査方向の位置歪み補正テーブルで補正することで、高精度な位置を測定することが可能である。このような一次元的な位置歪みを補正する固定的な補正パラメータを作成する目的に使用する1次元スケールは、比較的入手が容易であり、2次元スケールに比べて安価である。
<他のドット位置測定フロー>
上記の1次元スケールを利用した固定的な位置歪み補正テーブルを予め取得しておく方法に代えて、記録ノズルの位置誤差が確率分布として正規分布になることを前提として、位置測定値に基づいて主走査方向の位置歪み補正関数を決定し、求めた位置歪み補正関数により位置測定値を補正することも可能である。
図46は、他の実施形態に係るドット位置測定の流れを示すフローチャートである。図46において、図13で示したフローチャートと同一又は類似の工程には同一のステップ番号を付し、その説明は省略する。
図46に示す測定フローは、図13で説明した「固定位置歪み補正データ」を使用しない方式である。図46に示すとおり、各ラインブロックについて、ラインブロック間の位置補正処理を実施した後(ステップS110)、ステップS114に進む。このステップS114では、ステップS110の区分的な多項式で補正した各ラインブロックの位置のX座標を、ノズル番号順に並べる統合処理を行う。
次いで、ステップS116の位置歪み補正処理に移行する。この位置歪み補正処理は、上記統合された位置データから、図13で説明した「固定位置歪み補正データ」に代わる補正データを算出して、スキャナの光学歪み等を補正するものである。以下、その内容を説明する。
図47は、位置歪み補正処理のフローチャートである。図47の位置歪み補正フローが開始すると、まず、図46のステップS114で統合した位置データに基づいて、位置歪みを補正する関数を決定する(ステップS802)。そして、この決定した位置歪み補正関数を用いて、前記統合した位置データを補正する(ステップS804)。
図47のステップS804の処理を終えると、図47のサブルーチンを抜けて、図46の全体フローに復帰し、処理を終了する。
ここで、ステップS802、S804の具体的な計算方法を例示する。
<位置歪み補正処理の第1例>
まず、ステップS114で得られた統合した位置データ列R1={ xx0, xx1, xx2, xx3,... xxm-1}を間隔値のデータ列R2に変換する。すなわち、隣接する2つのデータxx i+1 、 xx iの差を間隔値ssiとして計算し、そのデータ集合R2を得る。図34に間隔値(ノズル間隔)のデータ集合R2の例を示す。
R2= { ss0, ss1, ss2, ... , ssm-2 } , ssi = xx i+1 − xx i
こうして得られた間隔値ssiのデータ列R2について、移動平均やローパスフィルタ処理によって高周波成分を除いたデータ集合LR2を作成する。図48には27個のデータ区間の移動平均の結果も併記した。
例えば、「2×nn+1」個の点の移動平均を取る場合(ただし、「nn」は自然数とする。)、データ集合LR2は、次式で表される。
LR2= { lss0, lss1, lss2, ..., lssm-2 }
lssi= Σ(si+k) /(2*nn+1) , k= −nn, ....,nn
或いはまた、ローパスフィルタ処理を適用する場合は、次式で表される。
LR2= { lss0, lss1, lss2, ..., lssm-2 }
lssi = Σlpfk×si+k ,k= −nn, ...., nn
ただし、lpfkはローパスフィルタの係数である。
こうして、高周波成分を除いたデータ列LR2は間隔値のデータ列であるため、これを位置のデータ列へと変換するために、LR2の累積和を順番に取ったデータ列R2Xを計算する。
R2X= { r2x0, r2x1, r2x3, .... , r2xm-1 }
r2xi = Σ(lssk) , k=0,.. i-1
ただし、r2x0 = 0とする
このR2Xを求める計算は、統合した位置データ列R1を間隔値のデータ列R2に変換する工程の逆の演算に相当している。こうして求めたデータ列R2Xをスキャナ主走査方向の歪み特性とする。
その一方、理想的な位置のデータ列R2Y(ノズル番号×の理想的なノズル間隔のデータ列)はノズル間隔から求める。
ノズル間隔(ドット着弾位置)が理想的には等間隔の場合、ノズル間距離をLLとする。
この場合、理想的な位置のデータ列R2Yは、次式で計算される。
R2Y = { r2y0, r2y1, r2y2, ...., r2ym-1 }
r2yi = LL × i, ただし、i=0,1,2…m-1
データ列R2Xを入力データ列、R2Yを出力データ列とした補正関数を用いて、元の統合した位置データ列R1を補正する。
なお、補正関数としては、線形補間やキュービック補間、スプライン補間を使用する。
<位置歪み補正処理の第2例>
また別の方法として、次のような方法を適用することが可能である。
図46のステップS114で得られた統合した位置データ列R1は、理想的な位置に対して、各ノズルの着弾位置誤差が確率的に正規分布を取ると仮定すると、位置データ列R1に対して、スキャナの主走査方向の位置歪みに相当する補正関数(多項式)を最小自乗法で近似式として求めることができる。
すなわち、ノズルの理想的な位置を入力値X、データ列R1を出力値Yとして関数を求める。
ノズルの理想的な位置のデータ列(入力値X)は、次のとおりである。
X = { xx0, xx1, xx2, ...., xxm-1 }
xxi = LL × i, ただし、i=0,1,2…m-1
統合した位置データ列R1={ yy0, yy1, yy2,yy3, ... yym-1} に対し、近似多項式func(x)を公知の方法で求める。図49に測定位置のデータと近似多項式の例を示す。
なお、この近似多項式について、図42と同様に、区分的な多項式を適用することも可能である。
次いで、位置データ列R1と対応する近似式との差分を求め、求めた差分をノズルの理想的な位置に加えた結果が、補正後の位置である。
補正後の位置= yyi− func(xxi) +xxi
この第2例に係る方法は、ノズル間隔が一定でなくても適用可能である。xxi をノズル理想位置のデータ列に置き換えればよい。
<ドット位置の決定>
上記補正したライン位置のX座標がノズル番号に対応するドット位置である。このようにして各ノズルからのドットの着弾位置のばらつき情報を得て、ムラ補正などの演算処理に利用することができる。
<更なる測定精度向上の工夫>
基準となるラインブロック4については特に精度を向上させる目的で、ROIの多重度を増大したり、ライン長さを長くして平均範囲を広げたりすることは好適である。また、ラインブロック4(基準ラインブロック)を測定用チャート内に複数配置して、複数の測定結果を統計処理した位置を基準ラインブロックの位置として使用することは、スキャナのローカリティの影響を低減する効果がある。
<本実施形態の作用効果について>
本実施形態によれば、テストパターンの読取画像から各ラインブロックについてライン位置と仮ノズル番号の関係(特性を示す近似関数)を求め、この関係に基づいてラインブロック間相互の仮ノズル番号の整合性を判断し、仮ノズル番号の誤りを訂正するため、粗調パターン(特許文献2)など付加的なパターンを使用することなく、ノズル番号とライン位置の関係を特定できる。これにより、テストパターンのパターン面積の削減が可能である。
また、測定用のテストパターンにおいて、いわゆる1オンNオフ型のラインブロック(ラインを描画するノズル番号の数列の差分がN+1であるもの)に加えて、これとは異なるライン間隔のラインブロック(ラインを描画するノズル番号の数列の差分がN+1と等しくないもの)を少なくとも1つ含むことにより、(N+1)よりも更に広い範囲のノズル番号を訂正できる。
その他、本実施形態では、測定対象のテストパターン上のドット着弾位置方向と、スキャナ装置の主走査方向を同じ方向にして(図10)、スキャナの読み取り解像度を主走査方向に対して副走査方向を粗くして読み取る(図11)。これによって市販スキャナでもA3全面を一度に高速に読み取りが可能になり、測定時間が短縮される効果がある。
また、読み取った画像データ量が約257MB程度(主走査2400DPI、副走査200DPIの場合)と小さくなるので、データ処理時間が大幅に短縮され、処理に必要なコンピュータの性能を抑えられるという効果がある。したがって、目標とする高精度なドット位置測定を比較的低コストで実現することができる。
更に、本実施形態では、読み取った画像内のライン位置を決定するに際し、ラインの長手方向(スキャナ装置の副走査方向)を部分的に平均処理した平均プロファイル画像を作成し、平均プロファイル画像をフィルタリング処理する。既述した副走査方向の低解像度読み取りと、この平均化、フィルタリング処理によってインクの飛び散り(サテライト)やゴミのコントラストが相対的に低くなり、特別なゴミ除去の工夫が必要なくなる効果がある。
また、平均化処理は同時に、平均化方向の不規則なノイズの影響を低減して階調値の信頼性を増大させ、階調値に基づいて位置を決定するアルゴリズムの精度を向上させる効果がある。フィルタリング処理は同時に、不規則なノイズ成分やサンプリング歪みを低減して、プロファイル画像を滑らかにしてライン位置に関する信頼性を向上させる効果がある。
更に、平均化したプロファイル画像において、各ライン近傍の白地濃度とインク濃度に基づいて階調値を補正する処理(W/B補正処理)により、スキャナ装置のフレアや記録紙の散乱の影響によるプロファイル画像の歪みを補正し、同時にスキャナ装置の主走査方向のシェーディングを低減する効果がある。このように階調値を補正することで階調値に基づく位置精度を向上させることができる。
また、本実施形態では、上記平均化プロファイルを計算する領域(ROI)をライン長手方向に一定量ずつズラして複数の平均化プロファイル画像を用いてライン位置を計算し、得られた複数のライン位置を平均化する。この処理により、読み取りラインとスキャナ装置の読取素子との相対的な位置関係(所謂サンプリング位相)を変化させて更にライン位置精度を向上させることができる。
また、本実施形態では、測定対象のラインパターン上の各ラインブロックに対して、略均等に同じノズルから形成されたラインを含む基準ラインブロックを配置する(図9)。この基準ラインブロックを基準位置として、各ラインブロックの測定位置を補正し、スキャナのキャリッジ位置変動に起因する読み取り画像格子の乱れの影響を低減することができる。更に、この補正の仕組みによって、用紙変形の影響を低減した測定も可能である。
<ドット位置測定装置の構成例>
次に、上述したドット位置測定方法の実施に用いるドット位置測定装置の構成例について説明する。本例のドット位置測定に用いる画像解析の処理アルゴリズムをコンピュータに実行させるプログラム(ドット位置測定処理プログラム)を作成し、このプログラムによってコンピュータを動作させることにより、当該コンピュータをドット計測装置の演算装置として機能させることができる。
図50は、ドット位置測定装置の構成例を示すブロック図である。図示のドット位置測定装置200は、画像読取装置202としてのフラットベットスキャナーと、画像解析の演算等を行うコンピュータ210とから構成される。
画像読取装置202は、測定用ラインパターンを撮像するRGBラインセンサを備えるとともに、該ラインセンサを読み取り走査方向(図10のスキャナ副走査方向)に移動させる走査機構及びラインセンサの駆動回路、センサの出力信号(撮像信号)をA/D変換して、所定フォーマットのデジタル画像データに変換する信号処理回路等を備えている。
コンピュータ210は、本体212と、ディスプレイ(表示手段)214及びキーボードやマウスなど入力装置(各種の指示を入力するための入力手段)216から構成される。本体212内には中央演算処理装置(CPU)220、RAM222、ROM224、入力装置216からの信号入力を制御する入力制御部226、ディスプレイ214に対して表示用の信号を出力する表示制御部228、ハードディスク装置230、通信インターフェース232、及びメディアインターフェース234などを有し、これら各回路はバス236を介して相互に接続されている。
CPU220は、全体の制御装置及び演算装置(演算手段)として機能する。RAM222は、データの一時記憶領域やCPU220によるプログラム実行時の作業用領域として利用される。ROM224は、CPU220を動作させるブートプログラムや各種設定値・ネットワーク接続情報などを記憶する書き換え可能な不揮発性の記憶手段である。ハードディスク装置230には、オペレーティングシステム(OS)や各種のアプリケーションソフト(プログラム)やデータ等が格納される。
通信インターフェース232は、USB(Universal SerialBus)やLAN、Bluetooth(登録商標)など所定の通信方式に従って外部機器や通信ネットワークに接続するための手段である。メディアインターフェース234は、メモリカードや磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスクに代表される外部記憶装置238の読み書き制御を行う手段である。
本例では、通信インターフェース232を介して画像読取装置202とコンピュータ210とが接続され、画像読取装置202で読み取った撮像画像のデータがコンピュータ210に取り込まれる。なお、画像読取装置202によって取得された撮像画像のデータを外部記憶装置238に一旦記憶し、外部記憶装置238を通じて撮像画像データをコンピュータ210に取り込む構成も可能である。
本発明の実施形態に係るドット位置測定方法における画像解析の処理プログラムは、ハードディスク装置230、或いは外部記憶装置238に格納されており、必要に応じて当該プログラムが読み出され、RAM222に展開されて実行される。或いは、通信インターフェース232を介して接続される不図示のネットワーク上に設置されたサーバによってプログラムが提供される態様も可能であるし、インターネット上のサーバによって本プログラムによる演算処理サービスを提供するという態様も考えられる。
オペレータは、ディスプレイ214上に表示されるアプリケーションウインドウ(不図示)を見ながら入力装置216を操作して各種初期値の設定を入力することができるとともに、演算結果をディスプレイ214上で確認することができる。
また、演算結果のデータ(計測結果)は、外部記憶装置238に記憶したり、通信インターフェース232を介して外部に出力したりすることができる。計測結果の情報は、通信インターフェース232又は外部記憶装置238を介してインクジェット記録装置に入力される。
(変形例1)
図50で説明したドット位置測定装置200の機能をインクジェット記録装置に組み込む構成も可能であり、測定用ラインパターンの印字からその読み取り、並びにその後の画像解析によるドット位置計測という一連の動作をインクジェット記録装置の制御プログラムによって連続的に実施する態様も可能である。
例えば、図1で説明したインクジェット記録装置10における印字部12の後段に、印字結果を読み取るラインセンサ(印字検出部)を設け、このラインセンサによって測定用ラインパターンを読み取る態様が可能である。
(変形例2)
上記実施形態では、記録媒体の全幅に対応する長さのノズル列を有するページワイドのフルライン型ヘッドを用いたインクジェット記録装置を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、シリアル型(シャトルスキャン型)ヘッドなど、短尺の記録ヘッドを移動させながら、複数回のヘッド走査により画像記録を行うインクジェット記録装置についても本発明を適用可能である。
(変形例3)
図1では、記録媒体(記録紙16)の搬送手段として、ベルト搬送方式を用いているが、本発明の実施に際して、記録媒体の搬送手段はベルト搬送方式に限らず、ドラム搬送方式、ニップ搬送方式など、各種形態を採用し得る。
(変形例4)
上述の説明では、記録ヘッドを用いる画像形成装置の一例としてインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されない。インクジェット方式以外では、サーマル素子を記録素子とする記録ヘッドを備えた熱転写記録装置、LED素子を記録素子とする記録ヘッドを備えたLED電子写真プリンタ、LEDライン露光ヘッドを有する銀塩写真方式プリンタなど、ドット記録を行う各種方式の画像形成装置についても本発明を適用することが可能である。
また、画像形成装置という用語の解釈においては、写真プリントやポスター印刷などのいわゆるグラフィック印刷の用途に限定されず、インクジェット技術を利用したレジスト印刷装置、電子回路基板の配線描画装置、微細構造物形成装置など、画像として把握できるパターンを形成し得る工業用途の装置も包含する。
即ち、本発明は、記録ヘッドとして機能する液体吐出ヘッドを用いて機能液その他各種の液体を被吐出媒体(記録媒体)に向けて噴射する各種の装置(塗装装置、塗布装置、配線描画装置、微細構造物形成装置など)におけるドット着弾位置の測定技術として広く適用可能である。
<付記>
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(発明1):複数の記録素子を有する記録ヘッドと記録媒体を相対移動させながら、前記記録素子によってドットを連続して記録することにより、前記記録媒体上に各記録素子に対応したドット列による複数のラインを含んだ測定用ラインパターンを形成するラインパターン形成工程であって、前記記録ヘッドの前記相対移動の方向に直交する実質的な記録素子の並び方向に所定間隔離れた記録素子を用いて記録されるライン群で構成されるラインブロックを、前記記録媒体上において前記ラインの長手方向の異なる位置に複数形成してなる複数のラインブロックを有する前記測定用ラインパターンを形成する前記ラインパターン形成工程と、前記ラインパターン形成工程により前記記録媒体に形成された前記測定用ラインパターンを画像読取装置によって読み取り、前記測定用ラインパターンの読取画像を表す電子画像データを取得する読取工程と、前記読取工程で取得した読取画像から前記複数のラインブロックの各ラインブロック内におけるライン位置を特定するラインブロック内位置特定工程と、前記各ラインブロック内のライン位置に対応させて仮記録素子番号を付与し、各ラインブロック毎に前記仮記録素子番号とライン位置の関係を示す関数を求める関数決定工程と、前記各ラインブロックに対応して求めた前記関数に基づき、前記ラインブロック相互間で各ラインブロックにおける前記仮記録素子番号の誤りの有無を判定する判定工程と、前記判定工程にて仮記録素子番号に誤りがあると判定されたラインブロックについての仮記録素子番号を変更し、前記各ラインブロック内のライン位置と前記記録素子との対応関係を特定する記録素子位置特定工程と、を有することを特徴とするドット位置測定方法。
本発明によれば、記録不能な記録素子が存在した場合にも、正確に記録素子番号とライン位置の対応関係を定めることができ、精度の高い位置測定が可能である。また、本発明によれば、記録素子の位置を把握するための専用パターンが不要であり、測定用ラインパターンに要する面積の増大という問題も解消される。
(発明2):発明1に記載のドット位置測定方法において、前記判定工程は、前記各ラインブロックに対応して求めた前記関数から、前記ラインブロック相互間の相対位置を求める相対位置計算工程を有し、前記相対位置の計算結果に基づき、他と傾向が異なるラインブロックについての仮記録素子番号を変更することにより、各ラインブロック間の仮記録素子番号とライン位置の関係を整合させることを特徴とするドット位置測定方法。
各ラインブロックについて求めた関数から、ラインブロック相互間でライン位置と仮記録素子番号の対応の推定が可能であり、ラインブロック間の相対位置から仮記録素子番号の妥当性を判別できる。
(発明3):発明2に記載のドット位置測定方法において、前記相対位置計算工程では、前記相対位置を表す前記各ラインブロック間の傾き角を計算することを特徴とするドット位置測定方法。
ラインブロック間の相対位置を表す指標としてラインブロック間の傾き角を計算する態様がある。ラインブロック間で対応する2点(代表点)を結ぶ線の傾きを計算し、傾き角の傾向の違いから、仮記録素子番号が誤っているラインブロックを判別することができる。
また、この傾き角から読取画像の傾き(回転角)を補正することもできる。ドット位置を高精度に測定することが可能である。
(発明4):発明1乃至3のいずれか1項に記載のドット位置測定方法において、前記測定用ラインパターンは、前記ライン群のライン間隔が異なる複数の系列のラインブロックを含んでいることを特徴とするドット位置測定方法。
かかる態様によれば、系列の異なるライン間隔の公倍数の範囲で仮記録素子番号を訂正することができ、1系統のラインブロックのみを用いる場合と比較して、より広い範囲で仮記録素子番号を訂正できる。
(発明5):発明1乃至4のいずれか1項に記載のドット位置測定方法において、前記測定用ラインパターンは、前記複数のラインブロックの各ラインブロックに対して、それぞれ同じ記録素子で記録されるラインを含んだ基準ラインブロックを含み、前記ラインブロック内位置特定工程は、前記読取工程で取得した読取画像から前記複数のラインブロック及び前記基準ラインブロックの各ラインブロック内のライン位置を特定する工程であり、前記ラインブロック内位置特定工程で求めた前記複数のラインブロックについてのライン位置を、前記基準ラインブロックに基づいて補正する位置補正工程を有することを特徴とするドット位置測定方法。
かかる態様によれば、各ラインブロックから測定されるラインの位置を基準ラインブロックに基づいて、良好に補正することができ、測定に使用する画像読取装置にガタや変動、読取位置での位置歪みが変化する現象などがあっても、これらに起因する読取画像格子の乱れの影響を低減することができ、高精度な測定が可能である。また、本発明によれば、用紙変形の影響を低減した測定が可能である。
また、基準ラインブロックを設けることにより、発明4でいう「複数の系列のラインブロック」を含む構成とすることができる。
(発明6):発明5に記載のドット位置測定方法において、前記基準ラインブロックには、前記複数のラインブロックに対して略均等に同じ記録素子により記録されたラインが含まれていることを特徴とするドット位置測定方法。
各ラインブロックに対して、略均等に、同じ記録素子から形成されたラインを含む基準ラインブロックを配置する構成により、この基準ラインブロックを基準位置として、各ラインブロックの測定位置を精度よく補正することができる。
(発明7):発明5又は6のいずれか1項に記載のドット位置測定方法において、前記記録ヘッドの前記相対移動の方向に直交する幅方向に並ぶ実質的な記録素子列の端から記録素子番号i(i=0,1,2,3…)を付し、Aを2以上の整数、Bを0以上A−1以下の整数、Cを2以上の整数(ただし、C≠A、かつCとAは公約数を1以外に持たない)、Dを0以上C−1以下の整数、Nを0以上の整数とするとき、AN+Bの記録素子番号のグループごとに記録タイミングを異ならせて前記記録媒体上に形成された前記複数のラインブロックと、CN+Dの記録素子番号で形成された前記基準ブロックと、を含む前記測定用ラインパターンを形成することを特徴とするドット位置測定方法。
かかる態様により、全ノズルに対応するラインを含んだ複数のラインパターンを形成できるとともに、各ラインブロックに対して、均等に同じ記録素子から形成されたラインを含む基準ラインブロックを形成することができる。
(発明8):発明5乃至7のいずれか1項に記載のドット位置測定方法において、前記位置補正工程は、前記ラインブロック内位置特定工程で求めた前記複数のラインブロックについてのライン位置を、前記基準ラインブロックに基づいて区分的な多項式による補正関数を用いて補正することを特徴とするドット位置測定方法。
本態様によれば、基準ラインブロックを基準位置として、各ラインブロックの測定位置を補正するにあたり、区分的な多項式による補正関数を採用したことにより、比較的低次の多項式で良好な近似が可能であり、全データ範囲に対して単一の高次多項式による補正関数を適用する場合と比較して、より精度の高い補正が可能である。
また、測定に使用する画像読取装置にガタや変動、読取位置での位置歪みが変化する現象などがあっても、これらに起因する読取画像格子の乱れの影響を低減することができ、高精度な測定が可能である。更に、本態様によれば、用紙変形の影響を低減した測定が可能である。
発明8に記載のドット位置測定方法において、前記多項式は、次数が5以下の低次多項式であることが好ましい。
補正関数に区分的な多項式を採用したことにより、各区分に対応した比較的低次の多項式で良好な近似が可能であり、高次多項式による補正関数を適用した場合に問題となる発振現象を抑えることができ、高精度の測定が可能である。
発明5乃至8のいずれか1項に記載のドット位置測定方法において、前記位置補正工程は、前記複数のラインブロックの各ラインブロックと、前記基準ラインブロックとの間で、同じ記録素子によって記録されたラインの位置を一致させる補正関数を求めて補正を行うことを特徴とするドット位置測定方法を提供する。
この補正関数として発明8の区分的な多項式を用いる態様が好ましい。
また、この場合、前記各ラインブロックについて、前記基準ラインブロックと同じ記録素子により形成されたラインを抽出し、この抽出したラインに関して、前記各ラインブロックから測定されたライン位置を入力値とし、前記基準ラインブロックから測定されたライン位置を出力値とする前記補正関数を前記各ラインブロック毎に求めることを特徴とする態様が好ましい。
かかる態様により、各ラインブロックから測定されるラインの位置を、基準ラインブロックの位置に重ねて統合することができる。
更に、発明8に記載のドット位置測定方法において、前記ラインの位置を表す測定値のデータ列を所定範囲のデータ領域に分け、隣り合う区分同士は互いに一部のデータをオーバーラップさせ、各区分にそれぞれ対応する前記多項式を定めるものとし、前記オーバーラップさせたデータに対する前記補正関数は、対応する2つの多項式を組み合わせた関数であることを特徴とするドット位置測定方法を提供する。
かかる態様によれば、二つの区分にまたがるデータ領域をなめらかな補正関数で補正することができる。
(発明9):発明5乃至8のいずれか1項に記載のドット位置測定方法において、前記画像読取装置の位置歪み特性を補正するための固定位置歪み補正テーブルを予め作成しておき、前記位置補正工程で補正された結果をさらに前記固定歪み補正テーブルを用いて補正し、又は、前記位置補正工程で補正する前の前記ライン位置のデータを前記固定歪み補正テーブルを用いて補正する固定位置歪み補正工程を有することを特徴とするドット位置測定方法。
画像読取装置の歪み特性を予め調べておき、その歪み特性を補正するため固定的な補正テーブル(固定位置歪み補正テーブル)を予め用意しておく。そして、位置補正工程で補正された補正後の測定位置のデータをさらに、当該固定位置歪みテーブルを用いて補正することで、画像読取装置の光学歪みなどによる変動を補正することができる。
(発明10):発明5乃至8のいずれか1項に記載のドット位置測定方法において、前記位置補正工程で補正した結果に基づいて、前記画像読取装置の位置歪み補正関数を決定する位置歪み補正関数決定工程と、前記決定した前記位置歪み補正関数を用いて、前記位置補正工程で補正された結果をさらに補正する位置歪み補正工程と、を有することを特徴とするドット位置測定方法。
発明9のような固定的な位置歪み補正テーブルを用意する態様に代えて、テストパターンの読み取りから得られた測定位置のデータを基に計算によって位置歪み補正関数を求める態様も可能である。
発明10の一態様として、発明10に記載のドット位置測定方法において、前記位置歪み補正関数決定工程は、前記位置補正工程で補正した結果から間隔値のデータを生成する間隔値データ生成工程と、前記間隔値のデータに対し、移動平均処理又はローパスフィルタ処理を施す高周波成分除去演算工程と、前記高周波成分除去演算工程で得られたデータ列の累積和を順番に取り、位置を表すデータ列に変換する位置データ列生成工程と、を有し、前記位置データ列生成工程で生成されたデータ列を理想的な位置のデータ列に変換する前記位置歪み補正関数を決定することを特徴とするドット位置測定方法を提供する。
計算により位置歪み補正関数を求める手法の一態様として、間隔値のデータ列に対して移動平均処理又はローパスフィルタ処理を行い、得られたデータ列を位置のデータ列に変換する。これにより、画像読取装置の歪みの特性を示す位置データ列を得ることができるため、この位置データ列を理想的な位置のデータ列に変換する補正関数を用いて、測定位置のデータを補正することで、高精度の測定が可能である。
また、発明10の他の態様として、発明10に記載のドット位置測定方法において、前記位置歪み補正関数決定工程は、前記位置補正工程で補正して得られた位置を表すデータ列から、最小自乗法で近似多項式を求める近似多項式演算工程を有し、前記近似多項式演算工程で求めた前記近似多項式と前記位置を表すデータ列との差分を求め、当該求めた差分を理想的な位置の値に加えて補正後の位置を求めることを特徴とするドット位置測定方法を提供する。
計算により位置歪み補正関数を求める手法の他の態様として、位置補正工程で補正して得られた位置を表すデータ列について近似多項式を求める。この近似多項式は、画像読取装置の歪みの特性を反映する。位置補正工程で補正して得られた位置を表すデータ列と当該近似多項式との差分を求め、この差分を理想的な位置の値に加えることにより、補正後の位置を得る。これにより、画像読取装置の歪み特性の影響を低減した高精度の測定が可能である。
(発明11):発明1乃至10のいずれか1項に記載のドット位置測定方法において、前記読取工程で前記測定用ラインパターンを前記画像読取装置によって読み取る際に、当該測定用ラインパターン上の前記ラインの長手方向を前記画像読取装置の副走査方向に向けて読み取りを行うことを特徴とするドット位置測定方法。
(発明12):発明1乃至11のいずれか1項に記載のドット位置測定方法において、前記読取工程は、前記画像読取装置の副走査方向の読取解像度を主走査方向の読取解像度に比べて低解像度として読み取りを行い、前記測定用ラインパターンの読取画像を表す電子画像データを取得することを特徴とするドット位置測定方法。
本態様によれば、測定用ラインパターンについて、副走査方向を低解像度で読み取るため、読取画像のデータ容量が小さく、読み取り時間が速い。また、読取画像のデータ量が小さいことから、データ処理時間が短縮され、処理負荷も抑えられるという利点がある。
(発明13):発明1乃至12のいずれか1項に記載のドット位置測定方法において、前記主走査方向に並ぶ複数の前記ラインで構成される前記ラインブロックについて、前記読取画像上で前記副走査方向に画像信号を平均化する平均化領域を、同ラインブロック内の前記副走査方向の異なる位置に複数設定する領域設定工程と、前記異なる位置に設定された複数の前記平均化領域について、各平均化領域内で前記副走査方向に画像信号を平均化し、前記主走査方向の位置に応じた平均プロファイル画像を作成する平均プロファイル画像作成工程と、前記平均プロファイル画像から前記平均化領域内のライン位置を特定する平均化領域内位置特定工程と、を備え、前記ラインブロック内位置特定工程は、前記複数の平均化領域にそれぞれ対応した前記平均プロファイル画像から特定された前記平均化領域内のライン位置に基づいて、前記ラインブロック内の各ラインの位置を特定することを特徴とするドット位置測定方法。
本態様によれば、副走査方向に位置の異なる複数の平均化領域から得た複数の平均プロファイル画像を用いてライン位置(即ち記録素子によって記録されるドットの位置)を決定するため、読み取り解像度に対して、非常に高精度なドット位置測定が可能である。
(発明14):発明13に記載のドット位置測定方法において、前記平均プロファイル画像から前記ラインの両端エッジ位置をライン毎に特定するエッジ位置特定工程を備え、前記平均化領域内位置特定工程は、前記エッジ位置特定工程で特定した両端エッジ位置に基づいて、前記平均化領域内のライン位置を特定することを特徴とするドット位置測定方法。
本態様により、ライン位置を高精度に特定することができる。
また、発明13又は14の一態様として、発明13又は14に記載のドット位置測定方法において、前記平均プロファイル画像に対してフィルタ処理を行うフィルタ処理工程を備えることを特徴とするドット位置測定方法を提供する。
副走査方向に画像信号を平均化する平均プロファイル画像を作成することによってもゴミやサテライト等の不規則なノイズ成分の影響を低減する効果があるが、この平均プロファイル画像に対して、更にフィルタ処理を施すことにより、不規則なノイズ成分やサンプリング歪みの影響を一層低減でき、ライン位置の測定に関する信頼性を向上させることができる。
(発明15):発明1乃至14のいずれか1項に記載のドット位置測定方法において、前記記録媒体上において前記ドットが記録されていない非記録領域と、前記ドットが記録されている記録領域の濃度値に基づいて、前記読取画像の階調値の補正を行う階調値補正工程を備えることを特徴とするドット位置測定方法。
かかる態様によれば、記録媒体の散乱等の影響によるプロファイル画像の歪みを補正し、同時に、画像読取装置のシェーディングを低減でき、ライン位置の測定精度を向上させることができる。
(発明16):発明1乃至15のいずれか1項に記載のドット位置測定方法において、前記ラインパターン形成工程により、同一記録素子を使用して前記記録媒体上の異なる位置に記録された複数のラインのライン位置に基づいて、前記測定用ラインパターンと前記画像読取装置との間の相対的な回転角を特定する回転角特定工程と、前記回転角特定工程により特定された回転角に基づき、位置情報に対する回転補正の演算を行う回転補正工程と、を備えることを特徴とするドット位置測定方法。
同一の記録素子を使用して、記録媒体上で所定距離だけ離れて形成されたラインのライン位置に基づいて、相対的な回転角を決定することができる。
(発明17):複数の記録素子を有する記録ヘッドと記録媒体を相対移動させながら、前記記録素子によってドットを連続して記録することにより、前記記録媒体上に各記録素子に対応したドット列による複数のラインを形成してなる測定用ラインパターンを読み取る画像読取手段であって、前記記録ヘッドの前記相対移動の方向に直交する実質的な記録素子の並び方向に所定間隔離れた記録素子を用いて記録されるライン群で構成されるラインブロックを、前記記録媒体上において前記ラインの長手方向の異なる位置に複数形成してなる複数のラインブロックを有する前記測定用ラインパターンを読み取り、前記測定用ラインパターンの読取画像を表す電子画像データを取得する画像読取手段と、前記画像読取手段で取得した読取画像から前記複数のラインブロックの各ラインブロック内におけるライン位置を特定するラインブロック内位置特定手段と、前記各ラインブロック内のライン位置に対応させて仮記録素子番号を付与し、各ラインブロック毎に前記仮記録素子番号とライン位置の関係を示す関数を求める関数決定手段と、前記各ラインブロックに対応して求めた前記関数に基づき、前記ラインブロック相互間で各ラインブロックにおける前記仮記録素子番号の誤りの有無を判定する判定手段と、前記判定手段にて仮記録素子番号に誤りがあると判定されたラインブロックについての仮記録素子番号を変更し、前記各ラインブロック内のライン位置と前記記録素子との対応関係を特定する記録素子位置特定手段と、を備えることを特徴とするドット位置測定装置。
(発明18):発明17に記載のドット位置測定装置において、前記判定手段は、前記各ラインブロックに対応して求めた前記関数から、前記ラインブロック相互間の相対位置を求める相対位置計算手段を有し、前記相対位置の計算結果に基づき、他と傾向が異なるラインブロックについての仮記録素子番号を変更することにより、各ラインブロック間の仮記録素子番号とライン位置の関係を整合させることを特徴とするドット位置測定装置。
(発明19):発明17又は18に記載のドット位置測定装置において、前記測定用ラインパターンは、前記複数のラインブロックの各ラインブロックに対して、それぞれ同じ記録素子で記録されるラインを含んだ基準ラインブロックを含み、前記ラインブロック内位置特定手段は、前記画像読取手段で取得した読取画像から前記複数のラインブロック及び前記基準ラインブロックの各ラインブロック内のライン位置を特定する手段であり、前記ラインブロック内位置特定手段で求めた前記複数のラインブロックについてのライン位置を、前記基準ラインブロックに基づいて補正する位置補正手段を備えることを特徴とするドット位置測定装置。
(発明20):発明19に記載のドット位置測定装置において、前記画像読取装置の位置歪み特性を補正するための固定位置歪み補正テーブルを予め記憶しておく記憶手段と、
前記位置補正手段で補正された結果をさらに前記固定歪み補正テーブルを用いて補正し、又は、前記位置補正工程で補正する前の前記ライン位置のデータを前記固定歪み補正テーブルを用いて補正する固定位置歪み補正手段を有することを特徴とするドット位置測定装置。
(発明21):発明19に記載のドット位置測定装置において、前記位置補正手段で補正した結果に基づいて、前記画像読取装置の位置歪み補正関数を決定する位置歪み補正関数決定手段と、前記決定した前記位置歪み補正関数を用いて、前記位置補正手段で補正された結果をさらに補正する位置歪み補正手段と、を有することを特徴とするドット位置測定装置。
また、発明21の一態様として、発明21に記載のドット位置測定装置において、前記位置歪み補正関数決定手段は、前記位置補正手段で補正した結果から間隔値のデータを生成する間隔値データ生成手段と、前記間隔値のデータに対し、移動平均処理又はローパスフィルタ処理を施す高周波成分除去演算手段と、前記高周波成分除去演算手段で得られたデータ列の累積和を順番に取り、位置を表すデータ列に変換する位置データ列生成手段と、を有し、前記位置データ列生成手段で生成されたデータ列を理想的な位置のデータ列に変換する前記位置歪み補正関数を決定することを特徴とするドット位置測定装置を提供する。
発明21の他の態様として、発明21に記載のドット位置測定装置において、前記位置歪み補正関数決定手段は、前記位置補正手段で補正して得られた位置を表すデータ列から、最小自乗法で近似多項式を求める近似多項式演算手段を有し、前記近似多項式演算手段で求めた前記近似多項式と前記位置を表すデータ列との差分を求め、当該求めた差分を理想的な位置の値に加えて補正後の位置を求めることを特徴とするドット位置測定装置を提供する。
(発明22):発明17乃至21のいずれか1項に記載のドット位置測定装置において、前記主走査方向に並ぶ複数の前記ラインで構成される前記ラインブロックについて、前記読取画像上で前記副走査方向に画像信号を平均化する平均化領域を、同ラインブロック内の前記副走査方向の異なる位置に複数設定する領域設定手段と、前記異なる位置に設定された複数の前記平均化領域について、各平均化領域内で前記副走査方向に画像信号を平均化し、前記主走査方向の位置に応じた平均プロファイル画像を作成する平均プロファイル画像作成手段と、前記平均プロファイル画像から前記平均化領域内のライン位置を特定する平均化領域内位置特定手段と、を備え、前記ラインブロック内位置特定手段は、前記複数の平均化領域にそれぞれ対応した前記平均プロファイル画像から特定された前記平均化領域内のライン位置に基づいて、前記ラインブロック内の各ラインの位置を特定することを特徴とするドット位置測定装置。
(発明23):発明22に記載のドット位置測定装置において、前記平均プロファイル画像から前記ラインの両端エッジ位置をライン毎に特定するエッジ位置特定手段を備え、前記平均化領域内位置特定手段は、前記エッジ位置特定手段で特定した両端エッジ位置に基づいて、前記平均化領域内のライン位置を特定することを特徴とするドット位置測定装置。
また、発明22又は23の一態様として、発明22又は23に記載に記載のドット位置測定装置において、前記平均プロファイル画像に対してフィルタ処理を行うフィルタ処理手段を備えることを特徴とするドット位置測定装置を提供する。
(発明24):発明17乃至23のいずれか1項に記載のドット位置測定装置において、前記記録媒体上において前記ドットが記録されていない非記録領域と、前記ドットが記録されている記録領域の濃度値に基づいて、前記読取画像の階調値の補正を行う階調値補正手段を備えることを特徴とするドット位置測定装置。
(発明25):発明17乃至24のいずれか1項に記載のドット位置測定装置において、同一記録素子を使用して前記記録媒体上の異なる位置に記録された複数のラインのライン位置に基づいて、前記測定用ラインパターンと前記画像読取装置との間の相対的な回転角を特定する回転角特定手段と、前記回転角特定手段により特定された回転角に基づき、位置情報に対する回転補正の演算を行う回転補正手段と、を備えることを特徴とするドット位置測定装置。
(発明26):発明17乃至25のいずれか1項に記載のドット位置測定装置における前記ラインブロック内位置特定手段、前記関数決定手段、前記判定手段、前記記録素子位置特定手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
なお、発明26に記載のプログラムにおいて、更に、発明18に記載の相対位置計算手段、発明19に記載の位置補正手段、発明20に記載の記憶手段、固定位置歪み補正手段、発明21に記載の位置歪み補正関数決定手段、位置歪み補正手段、発明21の態様として記載した間隔値データ生成手段、高周波成分除去演算手段、位置データ列生成手段、近似多項式演算手段、発明22に記載の領域設定手段、平均プロファイル画像作成手段、平均化領域内位置特定手段、発明23に記載のエッジ位置特定手段、発明22又は23の態様として記載したフィルタ処理手段、発明24に記載の階調値補正手段、発明25に記載の回転角特定手段、回転補正手段としてコンピュータを機能させるプログラムを提供する態様も可能である。
本発明によるプログラムは、プリンタなどに組み込まれる中央処理装置(CPU)の動作プログラムとして適用できるとともに、パソコンなどのコンピュータシステムに適用することも可能である。
或いはまた、当該プログラムは、単独のアプリケーションソフトウエアとして構成されてもよいし、画像編集ソフトウエアなど、他のアプリケーションの一部として組み込まれてもよい。このようなプログラムをCD−ROMや磁気ディスクその他の情報記憶媒体(外部記憶装置)に記録し、該情報記憶媒体を通じて当該プログラムを第三者に提供したり、インターネットなどの通信回線を通じて当該プログラムのダウンロードサービスを提供したりすることも可能である。
また、本発明における記録ヘッドを用いて記録媒体上に画像を形成する画像形成装置の一態様としてのインクジェット記録装置は、ドットを形成するためのインク液滴を吐出するノズル及び吐出圧を発生させる圧力発生手段(圧電素子や加熱素子など)を含む液滴吐出素子(「記録素子」に相当)を複数配列させた液滴吐出素子列を有する液体吐出ヘッド(「記録ヘッド」に相当)と、画像データから生成されたインク吐出データに基づいて記録ヘッドからの液滴の吐出を制御する吐出制御手段とを備え、前記ノズルから吐出した液滴によって記録媒体上に画像を形成する。
記録ヘッドの構成例として、記録媒体の全幅に対応する長さにわたって複数の記録素子を配列させた記録素子列を有するフルライン型のヘッドを用いることができる。この場合、記録媒体の全幅に対応する長さに満たない記録素子列を有する比較的短尺の記録ヘッドモジュールを複数個組み合わせ、これらを繋ぎ合わせることで全体として記録媒体の全幅に対応する長さの記録素子列を構成する態様がある。
フルライン型のヘッドは、通常、記録媒体の相対的な送り方向(相対的搬送方向)と直交する方向に沿って配置されるが、搬送方向と直交する方向に対して、ある所定の角度を持たせた斜め方向に沿って記録ヘッドを配置する態様もあり得る。
「記録媒体」は、記録ヘッドの作用によって画像の記録を受ける媒体(被画像形成媒体、被印字媒体、被記録媒体、受像媒体、被吐出媒体など呼ばれ得るもの)であり、連続用紙、カット紙、シール用紙、OHPシート等の樹脂シート、フイルム、布、中間転写媒体、インクジェット記録装置によって配線パターンが印刷されるプリント基板、その他材質や形状を問わず、様々な媒体を含む。
「搬送手段」は、停止した(固定された)記録ヘッドに対して記録媒体を搬送する態様、停止した記録媒体に対して記録ヘッドを移動させる態様、或いは、記録ヘッドと記録媒体の両方を移動させる態様のいずれをも含む。
インクジェットヘッドによって、カラー画像を形成する場合は、複数色のインク(記録液)の色別に記録ヘッドを配置してもよいし、1つの記録ヘッドから複数色のインクを吐
出可能な構成としてもよい。