JP2010215807A - 脂肪酸アルキルエステルの製造方法及び脂肪酸アルキルエステルの製造装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】油脂とアルコールとのエステル交換反応を固体触媒の存在下で行わせる脂肪酸アルキルエステルの製造方法であって、工程A:油脂と気体のアルコールとを、固体触媒が充填された固定床反応塔の上部から供給する工程;工程B:供給された油脂と気体のアルコールとを、固定床反応塔内に下向並流で流通させてエステル交換反応を行わせる工程;並びに工程C:固定床反応塔から反応後の気体のアルコール及び液体成分を排出する工程;を含む、脂肪酸アルキルエステルの製造方法。
【選択図】なし
Description
また、脂肪酸アルキルエステルは、バイオマス由来のディーゼル燃料として使用可能なことから、石油代替の新エネルギーとして注目されてから久しい。
とくに、植物油から得られる脂肪酸メチルエステルは、粘度、比重等の物性や燃焼性が軽油に類似しており、エンジンの改造をしなくても使用できるバイオディーゼル燃料として使用されつつあり、近い将来、その利用が大いに期待されている。
また、酸化カルシウムはアルコール不溶性とは言いながら反応途中でアルコールまたは副生グリセリンにわずかに溶解する。この溶解分を除かなければならなく、単に固体触媒を用いるのみでは、工程の簡略化を図ることができない。
〔1〕 油脂とアルコールとのエステル交換反応を固体触媒の存在下で行わせる脂肪酸アルキルエステルの製造方法であって、
工程A:油脂と気体のアルコールとを、固体触媒が充填された固定床反応塔の上部から供給する工程、工程B:供給された油脂と気体のアルコールとを、固定床反応塔内に下向並流で流通させてエステル交換反応を行わせる工程、並びに工程C:固定床反応塔から反応後の気体のアルコール及び液体成分を排出する工程、を含む、脂肪酸アルキルエステルの製造方法;並びに
〔2〕 固体触媒が充填された固定床反応塔、油脂と気体のアルコールとを当該固定床反応塔の上部に供給する手段、当該固定床反応塔から排出される気体のアルコールを回収して当該固定床反応塔の上部に供給する手段、及び当該固定床反応塔から排出される液体成分を脂肪酸アルキルエステル含有層及びグリセリン含有層に分離するための分離手段を少なくとも備えた、脂肪酸アルキルエステルの製造装置、に関するものである。
反応の進行はワンパスで行ってもよいが、気体のアルコールの循環はもちろん、ポンプを用いてグリセリン層除去後の脂肪酸アルキルエステル層を循環させることが望ましい。
また、本発明の製造方法は回分式に適用することもでき、あるいは一部原料を補給しつつ、一部反応生成物を抜き出す連続式に適用することもできる。
反応塔内の固体触媒に対する油脂の供給量としては、例えば、液空間速度(LHSV)で、好ましくは2〜60/hrである。また、気体のアルコールの供給量としては、例えば、液体換算で示すとLHSVで0.2〜40/hrに相当する供給量が好ましい。
気体のアルコールは固定床反応塔の上部から供給されてもよく、下部から供給されてもよいが、フラッディング現象を避ける観点及び比重の大きなグリセリンを反応塔から迅速に除去する観点から、反応塔の上部から供給されることが好ましい。
固定床反応塔は、原料の供給側が上部に、生成物等の排出側が下部となるように傾斜をつけて設置することが好ましい。グリセリンを反応塔から迅速に除去する観点から、固定床反応塔はほぼ鉛直となるように設置することがより好ましい。
油脂と気体のアルコールとを下向並流で流通させるためには、固定床反応塔を傾斜を付けて設置し、上部からこれらの成分を供給し、下部から生成物等を排出することにより達成できる。
固定床反応塔内でエステル交換反応を行わせるためには、所定の触媒を用いて、反応塔内の温度を好ましくは60〜200℃とすればよい。例えば、常圧のときは、アルコールとしてメチルアルコールを用いる場合、反応塔内の温度としては、65〜95℃が好ましく、エチルアルコールを用いる場合、反応塔内の温度としては、80〜150℃が好ましく、プロピルアルコールを用いる場合、反応塔内の温度としては、100〜200℃が好ましい。反応塔内の温度の設定方法としては、供給される原料の温度を所定の温度に加熱する方法や、反応塔を外部から加熱する方法等が挙げられる。
アルコール循環工程は、例えば、(1)排出される気体のアルコールを凝縮させて液体のアルコールを回収し、次いで該液体のアルコールを気化させて固定床反応塔の上部に供給すること、又は(2)排出される気体のアルコールを、その気体の状態を維持させたまま回収して反応塔上部に供給することにより、実施することができる。熱量の損失はあるが、設備保全の容易さの観点から、(1)の態様は小規模設備で推奨される。(2)の態様においては、アルコールを気体状態のまま維持させるために、固定床反応塔下部から上部の間に、例えば加熱器及び/又は送風機を設けて供給する。
さらに、液体成分中には脂肪酸アルキルエステル、グリセリン、原料油脂、反応中間体等が含まれ、しかもアルコールが存在しないことから、液体成分は、グリセリン含有層と、脂肪酸アルキルエステル、原料油脂及び反応中間体等が含まれる脂肪酸アルキルエステル含有層とに容易に分離することができる。かかる分離操作は、反応塔下部から排出される液体成分を、重力式、遠心式を問わず非常に短時間かつ容易に実施することができる。
このような操作を行うことにより、反応系からグリセリンを常時除去することができるため、反応の平衡が目的生成物の脂肪酸アルキルエステル側に傾くこととなり、結果的に反応効率が著しく向上する。しかも、反応系からグリセリンを常時除去することにより、脂肪酸アルキルエステル含有層の親水性はほとんどなくなるため、溶解する固体触媒の量も大幅に減少させることができる。本発明の製造方法においては、液体成分を、グリセリン含有層と、脂肪酸アルキルエステル含有層とに分離する工程を含むことは、上記のような優れた利点が発揮されることから非常に好ましい。
図1は、本発明の製造装置の一例を示す模式図である。
本発明の製造装置は、固体触媒が充填された固定床反応塔1、油脂と気体のアルコールとを当該固定床反応塔1の上部に供給する手段、当該固定床反応塔1から排出される気体のアルコールを回収して当該固定床反応塔1の上部に供給する手段、及び当該固定床反応塔1から排出される液体成分を脂肪酸アルキルエステル含有層及びグリセリン含有層に分離するための分離手段3を少なくとも備えてなる。
各要素を図2に示すように組み立てて脂肪酸アルキルエステルの製造装置とし、この製造装置で本発明の実証を行った。
固定床反応塔21は、直径30mm、高さ300mmの円筒ガラス管とした。固体触媒として、粒径3〜10mm程度の工業用酸化カルシウム(近藤石灰工業株式会社製)を採用し、その80mLを円筒ガラス管中央部に充填した。円筒ガラス管の下部には予めメラミン樹脂発砲体を充填し、固体触媒を支持した。
反応液受器22中では、上層として脂肪酸アルキルエステル層(油層)、下層としてグリセリン層が形成されることが予想されたので、上層の脂肪酸アルキルエステル層のみが毎分30mLの速度で循環すべく、液循環ポンプ25を調節し、エステル交換反応を開始し、直ちに反応液が90℃になるように温水浴31を微調整した。反応液受器22の上層から取り出された原料の油脂又は脂肪酸アルキルエステル層は、途中で温度が低下しないように保温材27で保温された配管を経て固定床反応塔21の上部に供給され、固定床反応塔21の下部から排出された液体成分として、反応液受器22に回収された。
図2に示される装置において、バルブ29及びバルブ30を閉とし、固定床反応塔及び液体成分の循環系のみでエステル交換反応を行った。
実施例1に用いた油脂135g及びメタノール62.5g(油脂に対して50部)の混合液を反応液受器22に投入した。メタノールの沸点以下の60℃となるように、温水浴31を設定し、液循環ポンプ25による液体の循環量を毎分30mLとして反応を実施した。反応開始時から8時間後にかけて、反応液受器22内の液体成分は2層に分離することはなかった。
2 反応液受器
3 分離手段
4 加熱器
5 加熱器
6 送風機
7 ポンプ
8 バルブ
9 バルブ
10 ポンプ
11 バルブ
12 ポンプ
13 バルブ
14 ポンプ
15 ポンプ
21 固定床反応塔
22 反応液受器
23 メタノール受器
24 冷却器
25 液循環ポンプ
26 温度計
27 保温材
28 加熱器
29 バルブ
30 バルブ
31 温水浴
32 温水浴
Claims (9)
- 油脂とアルコールとのエステル交換反応を固体触媒の存在下で行わせる脂肪酸アルキルエステルの製造方法であって、
工程A:油脂と気体のアルコールとを、固体触媒が充填された固定床反応塔の上部から供給する工程、
工程B:供給された油脂と気体のアルコールとを、固定床反応塔内に下向並流で流通させてエステル交換反応を行わせる工程、並びに
工程C:固定床反応塔から反応後の気体のアルコール及び液体成分を排出する工程、
を含む、脂肪酸アルキルエステルの製造方法。 - 固定床反応塔から排出される気体のアルコールを回収して固定床反応塔の上部に供給するアルコール循環工程をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
- 固定床反応塔から排出される液体成分を脂肪酸アルキルエステル含有層とグリセリン含有層とに分離する工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 脂肪酸アルキルエステル含有層を固定床反応塔の上部に供給する工程をさらに含む、請求項3に記載の製造方法。
- 固体触媒が、アルカリ土類金属酸化物の成型品、アルカリ土類金属酸化物を含有するペロブスカイト型構造の複合酸化物の成型品、及びアルカリ金属を含むペロブスカイト型構造の複合酸化物の成型品からなる群より選択される1種以上の成型品である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 油脂が、菜種油、ごま油、大豆油、トウモロコシ油、ひまわり油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、紅花油、ジャトロファ油、パパイア種子油及び廃食用油からなる群より選択される1種以上の油脂である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
- アルコールが、メチルアルコール、エチルアルコール及びプロピルアルコールからなる群より選択される1種以上のアルコールである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
- 固体触媒が充填された固定床反応塔、油脂と気体のアルコールとを該固定床反応塔の上部に供給する手段、該固定床反応塔から排出される気体のアルコールを回収して該固定床反応塔の上部に供給する手段、及び該固定床反応塔から排出される液体成分を脂肪酸アルキルエステル含有層及びグリセリン含有層に分離するための分離手段を少なくとも備えた、脂肪酸アルキルエステルの製造装置。
- 分離された脂肪酸アルキルエステル含有層を固定床反応塔の上部に供給する手段をさらに備えた、請求項8に記載の製造装置。
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