以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係るプリント基板設計支援プログラム等の実施の形態の好適な一例を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明を実施するために好適に使用可能なプリント基板設計支援プログラムを含むコンピュータ装置(以下、単に装置ともいう)の概略的構成を説明するための装置構成図である。
図1において、10は装置全体を制御する中央処理装置(CPU)である。11は主記憶装置であり、読み出し専用記憶装置(ROM)やCPU10が計算処理時に一時的な読み書きを行う記憶装置(RAM)を含む。
12はブラウン管(CRT)ディスプレイや液晶ディスプレイに代表される表示装置である。13はマウスやキーボード等に代表される入力装置である。14は外部記憶装置であり、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、CD、DVD、MD等の不図示の記録媒体へのデータの読み書きに利用される。15は表示装置12に出力された計算結果等を印刷するための出力装置(プリンタ)である。16はアドレスバス、データバス、制御バス等の情報を伝達するためのバスである。
また外部記憶装置14において、14aは装置内にインストールされた処理プログラムであり、本発明に係るプリント基板設計支援プログラムを含む。14bはプリント基板に係るレイアウト情報である。処理プログラム14a及びレイアウト情報14bは、外部記憶装置14に予め記憶されている。ここで、レイアウト情報とは、プリント基板の層構成に関する情報、プリント基板に実装される部品の位置座標や端子が接続される導電体部分の形状及び大きさ等の部品情報、部品間配線の配線名及び配線図形を構成する各点の位置座標に係る配線情報等を含む。
上記、CPU10、主記憶装置11、表示装置12、入力装置13、外部記憶装置14及び出力装置15は、それぞれバス16を介して互いに接続されている。そして、CPU10の制御によりバス16を介して各装置間で制御情報やデータ情報等、必要な情報の授受ができるように構成されている。
図2は、本実施の形態に係るプリント基板設計支援プログラムの機能の関係の好適な一例を概略的に説明するための機能構成図である。以下で説明する機能は、CPU10が外部記憶装置14に格納された処理プログラム14aを実行することで実現されることになる。
図2において、20は入力部、21は外部記憶情報抽出部、22は集積回路−バイパスコンデンサ接続関係チェック部、23はチェック結果出力部である。
入力部20は、ユーザが入力装置13を用いて入力したレイアウト情報14bの読み出しや、処理プログラム14aの実行等の指示情報、処理プログラム14a等の実行に使用される条件(チェック条件)に関する情報等を装置内に入力する。また、入力部20は、入力された情報を、CPU10の制御により、必要に応じて処理あるいは制御して主記憶装置11に記憶する。
外部記憶情報抽出部21は、入力部20から処理プログラム14aの実行指示が入力されると、その入力に従ってCPU10からの制御命令により、外部記憶装置14中に記憶された処理プログラム14aを抽出し、主記憶装置11内に格納する。また、外部記憶情報抽出部21は、入力部20からレイアウト情報14bの読み出しの指示が出されると、その入力に従ってCPU10からの制御命令により、外部記憶装置14中に記憶されたレイアウト情報14bを抽出し、主記憶装置11内に格納する。
集積回路−バイパスコンデンサ接続関係チェック部22は、各種機能部分を含む。すなわち、各機能部分として、22aは電源配線経路探索部、22bは配線経路インダクタンス算出部、22cはIC・電源端子−パスコンペア設定部、22dは負荷IC・電源端子数算出部、22eは負荷IC・電源端子数判定部である。
電源配線経路探索部22aは、外部記憶情報抽出部21で抽出したレイアウト情報14bからCPU10の制御によりIC・電源端子を特定し、特定した各IC・電源端子に接続される配線経路を探索して、各配線経路を主記憶装置11に記憶する。ここで、ICは、半導体集積回路のうち、集積回路(IC)及び大規模集積回路(LSI)、更には特定用途向け集積回路(ASIC)等を含むものとする。
配線経路インダクタンス算出部22bは、CPU10の制御により、電源配線経路探索部22aで探索した配線経路情報を主記憶装置11から読み出す。さらに、CPU10の制御により、各配線経路上のIC・電源端子と各バイパスコンデンサ(以下、パスコン)端子間の配線インダクタンスを、レイアウト情報14bを用いて算出する。そして、各IC・電源端子とパスコン端子のペアの端子間の配線のインダクタンスを主記憶装置11に記憶する。
IC・電源端子−パスコンペア設定部22cは、CPU10の制御により、主記憶装置11に記憶された各IC・電源端子とパスコンのペアの配線インダクタンスを読み出して比較する。そして、IC・電源端子−パスコンペア設定部22cは、最も小さい配線インダクタンスを持つIC・電源端子とパスコン端子のペアを最小インダクタンスペアとして主記憶装置11に記憶する。
負荷IC・電源端子数算出部22dは、CPU10の制御により、主記憶装置11に記憶された最小インダクタンスペアを読み出し、各パスコンに対して最小インダクタンスペアとして記憶されているIC・電源端子の数を算出する。
負荷IC・電源端子数判定部22eは、負荷IC・電源端子数算出部22dで算出したIC・電源端子の数と、入力部20で設定又は外部記憶情報抽出部21から算出したレイアウト情報をもとに算出したIC・電源端子数の最大閾値(所定値N1)とを比較する。また、負荷IC・電源端子数判定部22eは、IC・電源端子の数が所定値N1よりも大きい場合を警告必要と判定する。
チェック結果出力部23は、負荷IC・電源端子数判定部22eの判定情報をもとに、CPU10の制御により、表示装置12に警告を表示、又は出力装置15を用いて警告を出力する等してユーザにチェック結果を報知する。さらに、チェック結果出力部23は、判定情報を記述したファイルを外部記憶装置14に記憶する等もできる。
図3及び図4は、本実施の形態に係るプリント基板設計支援プログラムにおける処理手順の好適な一例を示すためのフローチャートである。以下、本実施の形態に係るプリント基板設計支援プログラムの処理手順を、図3及び図4のフローチャートと、図5〜図10までの図面を用いて詳細に説明する。尚、本実施の形態の説明では、図を見易くするために異なる図面で同じものに対しては、同じ引出し番号を用いている。
まず、図3及び図4のフローチャートについて詳細に説明する。
ステップS300においてCPU10が入力部20で処理プログラム14aの実行指示を受け付けると、CPU10は、外部記憶情報抽出部21により主記憶装置11に転送された処理プログラム14aを読み出し、処理プログラム14aを開始する。
ステップS301においてCPU10は、外部記憶情報抽出部21を制御して、レイアウト情報14bを主記憶装置11へ転送し、チェックに必要な情報を抽出する。なお、ここでの処理は、本発明でいうレイアウト情報取得ステップの一処理例に対応する。
ここで、チェックに必要な情報とは、プリント基板に係る、層構成情報、部品情報、配線情報、及びビア情報である。層構成情報とは、プリント基板の層構成に係る情報であり、層数、層属性、絶縁層の厚み等の情報である。部品情報とは、ピン等の部品に係る情報であり、部品名、端子名、パッド中心位置、パッド形状、端子属性等の情報である。配線情報とは、配線に係る情報であり、配線名、配線属性、各線分の形状(長さ・幅・高さ)、各面図形の構成点等の情報である。ビア情報とは、ビアに係る情報であり、配線名、位置、形状(パッド径・ドリル径)、各層への接続状況等の情報である。
次にステップS302においてCPU10は、入力部20でチェック条件を受け付ける。ここで、チェック条件とは、各パスコンまでの配線のインダクタンスが最小インダクタンスとして計算されるIC・電源端子の数の最大閾値(所定値N1)である。この設定方法としては、例えば、ユーザが表示装置12により表示された設定画面にて直接入力し、CPU10が入力された所定値N1を読み出す方法が考えられる。
この場合、例えば表示装置12に図5(a)のような設定画面を表示して、プリント基板上のすべてのパスコンに対して一律な所定値N1をユーザが入力すればよい。一方で、レイアウト情報14bに部品情報としてICの駆動電流を含め、表示装置12に表示された図5(b)のような設定画面でユーザがICの駆動電流を参照しながら、ICごとに接続されているパスコンに対する所定値N1を入力することも可能である。
さらに、この方法において、ユーザがチェック対象のICを選択できるようにすることで、チェックが必要なICのみをユーザが指定することも可能である。また、別の設定方法としては、例えば、ユーザが予め所定値N1を記述した設定ファイルを外部記憶装置14に記憶させておき、CPU10が外部記憶装置14に記憶された設定ファイルを読み出す方法等も考えられる。
次に、ステップS303〜ステップS320までは、CPU10が必要に応じて主記憶装置11に格納されたレイアウト情報14bを参照しながら実行する処理である。ここで、これらのステップは、すべてCPU10が必要に応じて主記憶装置11に格納されたレイアウト情報14bを参照しながら実行する処理であるため、これらの間での処理については、説明を省略するものとする。
ステップS302で所定値N1が設定されるとステップS303の処理を行う。ステップS303においてCPU10は、レイアウト情報14bに基づいて、ICの端子のうち、電源の端子属性を持つ端子、又は部品情報として持っている配線名が電源の配線属性を持つ配線の配線名と一致する端子を特定する。なお、ここでの処理は、本発明でいう電源端子特定ステップの一処理例に対応する。
次にステップS304においてCPU10は、ステップS303で特定したICの電源端子(以下、IC・電源端子)のうち、一つ(以下、IC・電源端子A)を選択する。なお、ここでの選択は、CPU10が所定の基準に基づき、任意に行うものであっても構わない。この選択方法としては、例えば、電源端子名の先頭から末尾までの各文字を数字またはアルファベットの小さい順に選択する方法や、プリント基板上のある方向から走査していき最初に検出したIC・電源端子から順に選択する方法等が考えられる。また、レイアウト情報に登録されている順に選択する方法でもよい。
次にステップS305においてCPU10は、IC・電源端子Aから接続されている配線の各線分及びビアの接続状況を順次探索し、IC・電源端子Aから別のIC・電源端子、パスコン又は電源供給部までのすべての配線経路の情報を取得する。ここで、配線経路の情報とは、配線経路内の各線分、ビア、部品の接続順、及びそれぞれの配線情報、ビア情報、部品情報(以下、経路情報)である。なお、ここでの処理は、本発明でいう電源配線経路取得ステップの一処理例に対応する。
次にステップS306においてCPU10は、配線の最小インダクタンスLminの初期値を十分に大きな値に設定する。ここで、最小インダクタンスLminの初期値は、十分に大きな値であればよく、特にユーザが入力する必要はない。一般的に配線のインダクタンスは100[nH]以下となるので、例えば、Lmin=1000[nH]と設定すればよい。ただし、Lminには1000[nH]以外の値を設定してもよいことは言うまでもない。
次にステップS307においてCPU10は、ステップS305で取得した配線経路から一つ(以下、配線経路B)を選択する。なお、ここでの選択は、CPU10が所定の基準に基づき、任意に行うものであっても構わない。例えば、ステップS305で配線経路を取得した順番に選択する等が考えられる。
次にステップS308においてCPU10は、配線経路Bの経路情報にパスコン端子が含まれているかどうかを判定する。ここで、配線経路Bの経路情報にパスコン端子が含まれている場合はステップS309へ進み、含まれていない場合はステップS313へ進む。
ステップS308で配線経路Bの経路情報にパスコン端子(以下、パスコン端子C)が含まれている場合のステップS309においては、CPU10は、IC・電源端子Aからパスコン端子Bまでの配線経路のインダクタンスLを算出する。なお、ここでの処理は、本発明でいう配線評価値算出ステップの一処理例に対応する。
次にステップS310(図4)においてCPU10は、インダクタンスLと最小インダクタンスLminを比較し、L<Lminの場合、ステップS311へ進み、L≧Lminの場合、ステップS312へ進む。
ステップS310でL<Lminの場合のステップS311においては、CPU10は、LminにLの値を代入し、IC・電源端子Aに対するペア情報が最小インダクタンスペアリストに既に登録されている場合は、その情報を更新する。まだ登録されていない場合は追加登録する。なお、ここでの処理は、本発明でいうペア設定ステップの一処理例に対応する。また、本実施の形態では、IC・電源端子ごとに接続されたパスコンの配線インダクタンスを順次求め、最小のインダクタンスと判定された場合に順次更新するようにしている。これに代えて、まず各配線インダクタンスを算出して、これらを保持しておき、その後、最小のものを選択するようにしても構わない。
そしてステップS312においてCPU10は、IC・電源端子Aに対して算出したすべての配線経路に対してステップS308以降の処理を実行したかどうかを判定する。ここで、ステップS305で取得したすべての配線経路に対してステップS308以降の処理を行った場合は、ステップS313へ進み、ステップS308以降の処理を行っていない配線経路が存在する場合は、ステップS307へ戻る。
ステップS312ですべての配線経路に対してステップS308以降の処理を行った場合のステップS313においては、CPU10は、ステップS303で特定したすべてのIC・電源端子に対してステップS304以降の処理を実行したかどうかを判定する。ここで、ステップS303で特定したすべてのIC・電源端子に対してステップS305以降の処理を実行した場合、ステップS314へ進む。また、ステップS304以降の処理を実行していないIC・電源端子が存在する場合、ステップS304へ戻る。
ステップS313ですべてのIC・電源端子に対してステップS304以降の処理を実行した場合のステップS314においては、CPU10は、最小インダクタンスペアリストに登録されているパスコン端子を特定する。
次にステップS315においてCPU10は、ステップS314で特定したパスコン端子のうち、一つ(以下、パスコンD)を選択する。なお、ここでの選択は、CPU10が所定の基準に基づき、任意に行うものであっても構わない。例えば、パスコン端子に識別番号を付しておき、小さい番号順に選択していく等が考えられる。
次にステップS316においてCPU10は、最小インダクタンスペアリストからパスコンDとペア登録されているIC・電源端子の数(以下、IC・電源端子数N2)を算出する。なお、ここでの処理は、本発明でいう電源端子数算出ステップの一処理例に対応する。
そしてステップS317においてCPU10は、所定値N1とIC・電源端子数N2を比較し、N2>N1の場合、ステップS318へ進み、N2≦N1の場合、ステップS319へ進む。なお、ここでの処理は、本発明でいう電源端子数比較ステップの一処理例に対応する。
ステップS317でN2>N1の場合はステップS318においてCPU10は、チェック結果出力部23を制御して、警告を出力する。ここで、警告の出力方法は、表示装置12にプリント基板のレイアウト情報14bを表示し、ステップS315で特定したパスコンをユーザに分かるように表示等すればよい。また、N2個のIC・電源端子とパスコン端子のペアをユーザにわかるように表示してもよい。なお、ここでの処理は、本発明でいう電源端子数警告報知ステップの一処理例に対応する。
ステップS318で警告を出力するか、又はステップS317でN2≦N1と判定されるとステップS319においてCPU10は、ステップS314で特定したパスコン端子のすべてに対してステップS316以降の処理を実行したかどうかを判定する。
ステップS319で、まだステップS316以降の処理を実行していないパスコン端子が残っている場合には、ステップS315へ戻る。また、すべてのパスコン端子に対してステップS316以降の処理を実行した場合は、処理プログラム14aを終了する(ステップS320)。
以上が、本実施の形態に係るプリント基板設計支援プログラムのフローチャートの一例の詳細な説明である。
ここで、ステップS309で算出するインダクタンスの算出方法の一例を示す。ここでは、プリント基板において、表層の配線をマイクロストリップ線路構造(図18(a))、内層の配線をストリップ線路構造(図18(b))を持つ配線と仮定する。図18ではプリンタ基板の側断面を模式的に示しており、1801が信号又は電源配線を示し、1802がグランド配線(GND配線)を示す。この場合、その配線の単位長さ当たりの配線インダクタンスは、以下の式(1)〜(6)を用いて算出することができる。
まずマイクロストリップ線路構造の配線及びストリップ線路構造の配線のインダクタンスL[H/m]は、配線の単位長さ当たりの容量をC[F/m]、特性インピーダンスをZ0[Ω]として、次の式(1)で表される。
また、単位長さ当たりの配線の容量C[F/m]は、絶縁層の材料の実行比誘電率εreff[−]、光速をc[m/s](≒2.998×108)として、次の式(2)で表される。
また、マイクロストリップ線路の特性インピーダンスZ0[Ω]は、絶縁層の材料の実行比誘電率εreff[−]、絶縁層の厚みをh[m]、導体(電源配線)の幅をw[m]、高さをt[m]として、次の式(3)で表される。
また、ストリップ線路の特性インピーダンスZ0[Ω]は、円周率をπとして、次の式(4)で表される。
また、マイクロストリップ線路の場合の絶縁層の材料の実効比誘電率εreff[-]は、絶縁層の材料の誘電率をεr[-]として、次の式(5)で表される。
また、ストリップ線路の場合の絶縁層の材料の実効比誘電率εreff[-]は、次の式(6)で表される。
したがって、誘電体の比誘電率εreff[−]、誘電体の厚みh[m]、導体の幅w[m]、導体(電源配線)の高さt[m]をレイアウト情報として取得しておけば、式(1)〜(6)を用いて、表層及び内層における配線の単位長さ当たりのインダクタンスを算出できる。
なお、プリント基板上の配線のインダクタンスを算出する数式は、上記以外にも複数の数式が知られている。本実施の形態では、上記一例のみを示したが、その他の数式を用いてもよいことは言うまでもない。また、配線のインダクタンスは距離に比例することが知られている。したがって、同じ配線の幅・高さ、絶縁層の材料・厚みの場合には、インダクタンスを算出する必要はなく、配線距離のみを算出すれば十分である。この場合、最小インダクタンスペアの代わりに、最短の配線距離のものを抽出して最短配線距離のペアをとして設定しておけばよい。したがって、ステップS309では、IC・電源端子及びパスコン端子間の配線距離のみを算出してもよい。
次に、上記で説明したプリント基板設計支援プログラムの動作を、図6〜図10を用いて、より具体的に、また図3、図4で説明した動作の流れに沿って詳細に説明する。
まず、図6及び図7に示すプリント基板の一部の模式的図面について説明する。一般に、プリント基板は、複数の導電層を、絶縁層を介して積層した多層構造となっており、積層したうちの最も外側の二つの層(以下、表層)に集積回路や受動部品等の部品が実装される。図6及び図7は、いずれも表層におけるボール・グリッド・アレイ型(以下、BGA型)のICの周辺の一部の電源及びグラウンドの配線状況を示す。
図6(a)は、ICが実装されるE(図6(b))で示す表層(以下、表層E)をプリント基板の積層方向から見た場合の配線状況を示し、図6(b)は、積層方向に垂直な方向から見た断面的な配線状況を示す。
図7(a)は、積層方向から見て図6(a)とまったく同じ位置における、図6(a)とは異なる側のF(図6(b))で示す表層(以下、表層F)を積層方向から見た場合の配線状況を示し、図7(b)は図6(b)と同様の図である。
図6(a)に示す斜線の丸で示した点60a、60b、60c、60d、60e、60fは、ICの電源端子が接触する銅箔部分を示している。その他の黒丸は、電源端子以外のICの端子が接触する銅箔部分である。また、61a、61b、61c、61d、61e、61fは電源ビアであり、表層Eと表層Fの電源配線を電気的に接続している。62a、62b、62c、62d、62e、62fはIC・電源端子のパッドと電源ビアとを接続する電源配線を構成する線分である。63は、グラウンド配線を示す。
図7(a)に示す70a、70b、70c、70d、70e、70fは、電源配線に接続されたパスコンの端子を示す。また、71a、71b、71c、71d、71e、71fは電源ビアであり、それぞれ電源ビア61a、61b、61c、61d、61e、61fの接続先である。72a、72b、72c、72d、72e、72f、72g、72h、72i、72j、72k、72m、72n、72p、72q、72r、72s、72t、72u、72vは、表層Fにおける電源配線の一部を構成する線分である。
また、73は、表層Fにおけるグラウンド配線を示す。74は、電源供給部の配線を示し、ここからパスコンへ電源が供給される。ここで、配線74では、電源供給部を配線に比べて十分に広い面積を有する銅箔で表現しているが、電源供給部には各層の電源配線に電源ビアで接続された電源ベタ層と呼ばれる層全体又は層の大部分を電源配線で構成するような層も含まれる。
以下、本実施の形態にかかるプリント基板設計支援プログラムの動作を、図6〜図10を用いつつ、図3、図4の動作の流れに沿って具体的に説明する。
まずステップS300でプログラムが開始されると、ステップS301で部品、配線、ビア等の情報を取得し、ステップS302でチェック条件(ここでは、N1=2)が設定される。
次に、ステップS303で、図6におけるプリント基板上のICの電源端子60a、60b、60c、60d、60e、60fを特定する。次に、ステップS304で図6におけるICの電源端子60a、60b、60c、60d、60e、60fのうち、一つを選択する。ここでは例えば、IC・電源端子60aを選択したとする。
ステップS305では、電源配線を構成する線分の形状及びビアの各層への接続情報をもとに線分及びビアを探索しながら、IC・電源端子60aに接続されている別の電源端子、パスコン又は電源供給部までのすべての経路を取得する。取得した電源端子60aからの配線経路は、図8に示す4つの経路1〜4となる。
ステップS306でLmin=1000[nH]に設定すると、ステップS307で図8の配線経路から一つを選択する。例えば、図8に示す経路1を選択したとする。この場合、ステップS308では、経路1内にパスコン端子70aが含まれていると判定し、ステップS309へ進む。
ステップS309では、IC・電源端子60aとパスコン端子70aとの間の配線インダクタンスLを算出する。ここで、線分62aの長さが1[mm]、幅が300[μm]、線分72a、線分72b、線分72c及び線分72dの長さの和が5[mm]、それぞれの幅が1000[μm]であるとする。このとき、上記式(1)〜(6)までを用いてIC・電源端子60aとパスコン端子70aとの間の配線における配線インダクタンスLを算出すると、L=1.86[nH]となる。
ステップS310では、L<Lminと判定されるので、ステップS311へ進む。ステップS311では、Lmin=1.86[nH]とし、IC・電源端子60aとパスコン端子70aを最小インダクタンスペアリストに追加する。ステップS312では、まだ経路2〜4に対してステップS308以降の処理を実行していないと判定されるので、ステップS307へ戻る。
ステップS307では、残りの経路のうち一つを選択する。例えば、経路2を選択する。ステップS308では、経路2内にパスコンが含まれていないと判定されるので、ステップS312へ進む。ステップS312では、まだ経路3、4に対しステップS308以降の処理を実行していないと判定されるので、ステップS307へ戻る。
ステップS307では、残りの配線経路のうちの一つを選択する。例えば、経路3を選択する。ステップS308では、経路3内にパスコン端子70bが含まれていると判定し、ステップS309へ進む。ステップS309では、IC・電源端子60aとパスコン端子70bとの間の配線のインダクタンスLを算出する。ここで、線分72a、線分72b、線分72g、線分72hの長さの和が8[mm]、幅が1000[μm]の場合、IC・電源端子60aとパスコン端子70bの間の配線のインダクタンスLは、L=2.94[nH]となる。
ステップS310では、L>Lmin(=1.86[nH])と判定されるので、ステップS312へ進む。ステップS312では、まだ経路4に対してステップS308以降の処理を実行していないと判定されるので、ステップS307へ戻る。
ステップS307では、経路4を選択する。ステップS308で経路4にはパスコンが含まれていないと判定されるので、ステップS312へ進む。ステップS312では、ステップS305で取得したすべての配線経路に対して、ステップS308以降の処理を実行したと判定されるので、ステップS313へ進む。
ステップS313では、IC・電源端子60b、60c、60d、60e、60fに対してステップS305以降の処理を実行していないと判定されるので、ステップS304へ戻る。以下、同様にしてIC・電源端子60b、60c、60d、60e、60f、その他の対象となるICの電源端子に対してステップS305〜ステップS312までの一連の処理を実行する。そして、ステップS313で、ステップS303で特定したすべてのIC・電源端子に対してステップS305以降の処理を実行したと判定されると、ステップS314へ進む。
ここで、ステップS313までの処理を実行して作成された最小インダクタンスペアリストの一部を図9に示す。
次にステップS314では、最小インダクタンスペアリストに格納されているパスコン端子を特定する。ここでは、パスコン端子70a、70b、70c、70fが特定される。
ステップS315では、ステップS314で特定したパスコン端子のうちの一つを選択する。例えば、パスコン端子70aを選択したとする。
ステップS316では、最小インダクタンスペアリストからパスコン端子70aとペアで登録されているIC・電源端子数N2を算出する。すなわち、図9に示した例では、ペア番号1、2、3のIC・電源端子60a、60b、60cの数であるN2=3が算出される。そしてステップS317では、N2>N1と判定され、ステップS318へ進む。
ステップS318では、N2>N1と判定されたパスコン端子70aに対し、警告をユーザに分かるように出力する。この出力方法には、例えばパスコン端子70aを他の部品端子と異なる色や模様で表示させる、またはパスコン端子70aを持つパスコンを他の部品と異なる色や模様で表示させる方法が考えられる。また、図10に示すようにパスコン端子70aと最小インダクタンスペアリストでペアとして登録されているIC電源端子60a、60b、60cの端子をペアであることがユーザに分かるように表示させる方法が考えられる。
図10の例では、IC電源端子60a、60b、60c及びパスコン端子70aを覆うように他の部品端子と異なる色または模様で表示している。すなわち、それぞれ強調表示部100a、100b、100c、101aを表示することで、それぞれの端子をユーザに分かるように表示する。さらにペアとなる端子間をそれぞれライン102a、102b、102cで結んで表示することにより、最小インダクタンスとなったペアの端子の位置関係をユーザに分かるように表示する。その他にも各端子及びその端子間をその他の端子及び配線と異なる色や模様で表示する方法も考えられる。
ステップS319では、パスコン端子70b、70c、70dに対してステップS316以降の処理を実行していないと判定されるため、ステップS315へ戻る。ステップS315では、再びパスコンが一つ選択される。例えば、パスコン端子70bが選択される。ステップS316では、最小インダクタンスペアリストでパスコン端子70bとペアで登録されているIC・電源端子60dの数であるN2=1が算出される。ステップS317では、N2≦N1と判定され、ステップS319へ進む。ステップS319では、パスコン端子70c、70dに対してステップS316以降の処理を実行していないと判定される。以下、パスコン端子70c、70dに対してもパスコン端子70bの場合と同様にステップS316〜ステップS318までの処理が実行される。そして、ステップS319で、ステップS314で特定したすべてのパスコンに対してステップS316以降の処理を実行したと判定されると、ステップS320へ進み、CPU10の制御により、処理プログラム14aを終了する。
以上が、本実施の形態に係るプリント基板設計支援プログラムの動作である。このような動作により、本実施の形態では、ユーザは、上記図10に示した警告表示をもとに3個以上のIC・電源端子が各パスコンの負荷にならないようにパスコン配置又は電源配線を変更することができる。そして、図11のようにパスコン端子70aを持つパスコンをパスコン端子の位置が110aの位置となるように変更し、その周囲の電源配線を変更することができる。
これにより、パスコン端子110aの負荷となるIC・電源端子は、IC・電源端子60a、60bとなり、IC・電源端子60cが負荷となっているパスコン端子はパスコン端子70cとなり、パスコンの負荷を軽減する設計を行うことができる。
以上、本発明の第1の実施の形態について説明した。本実施の形態に係るプリント基板設計支援プログラムでは、プリント基板の設計システム上で、どのパスコンがどのIC・電源端子に電流を供給するかを明確にし、各パスコンが「電流供給」の役割を果たすことができるかどうかを判定することができる。
具体的には、各IC・電源端子に接続される配線経路を取得し、その配線経路内に接続されるIC・電源端子と各パスコンの端子間の配線インダクタンスを算出する。そして、算出された配線インダクタンスに基づいて、IC・電源端子に電流を供給するパスコンを特定することができる。そのため、電源配線の接続形態によらずIC・電源端子とパスコンの電流供給の関係を明確にすることを可能としている。
さらに、本実施の形態では、電流供給の関係にあるIC・電源端子とパスコンのうち、IC・電源端子ごとに最小の配線インダクタンスとなるパスコンとペアを設定し、各パスコンから見てペアに設定されているIC・電源端子の数を算出するようにしている。このようにすることで、パスコンが過度に電流を供給するような状況をチェックすることを可能としている。
また、上記のIC・電源端子とパスコンの端子間の配線インダクタンスの算出の代わりに配線距離を算出するようにしてもよく、この場合、プログラムの処理速度を向上させることができる。
また、本実施の形態では、上記のようにしてペアを設定し、各パスコンから見てペアに設定されているIC・電源端子数を、所定の値と比較するようにすることで、所定の判定基準を用いたチェックを行うことを可能としている。また、ここでの比較において、IC・電源端子数が所定の値よりも大きい場合に警告を報知するようにすることで、過度に電流を供給する危険度の高いパスコンをユーザが即座に認識することを可能としている。
尚、本実施の形態では、警告の出力方法として、表示装置12を用いたプリント基板のレイアウト情報を表示している画面上での表示方法のみを記載したが、その他の出力方法も本実施の形態に含まれることを記載しておく。例えば、警告を表示するパスコン及びIC・電源端子数又は部品情報をテキストや表形式で記載したファイルに出力する方法がある。この場合、ステップS319とステップS320の間に図12に示すような表形式で記載したファイルを外部記憶装置14に出力するステップを挿入することで、ユーザは処理プログラム14aの終了後にも警告の内容を一覧で確認することができるようになる。ここでは、警告を表示する必要のないパスコン端子に関する情報も出力しているが、警告の必要のないパスコン端子に関しては、省略してもよい。また、本実施の形態ではステップS318で各パスコンに対して警告を出力するようにしたが、警告を出力する時期はこれに限定されない。例えば、ステップS318では各パスコンに対する警告に必要な情報のみを主記憶装置11に記憶しておき、ステップS319とステップS320との間に、すべての警告を表示すべきパスコンに対して一括で警告を表示する方法も考えられる。
(第2の実施の形態)
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態では、各IC・電源端子に対してパスコン1個をペアとする場合の好適な一例について説明した。これにより、各IC・電源端子が最も大きな電流を要求するパスコンを特定し、その供給する電流負荷が過度に大きくなる可能性の高いパスコンをユーザに報知することが可能となった。
一方で、実際には必ずしもIC・電源端子が1個のパスコンのみから電流を供給されるとは限らない。各IC・電源端子は、該端子に接続されている複数のパスコンから電流を供給されており、すなわち、複数のパスコンがIC・電源端子に対して電流を分担して供給している。実際には、ICの駆動周波数におけるIC・電源端子とパスコン端子間の配線のインダクタンスにより、各パスコンが各IC・電源端子に供給する電流の大きさが決まる。
そこで本実施の形態では、パスコンの電流供給度合いをより考慮するため、各IC・電源端子に対して複数のパスコン端子をペアに設定し、各ペアに端子間配線のインダクタンスに基づいた係数を設定するプリント基板設計支援プログラムの好適な一例を説明する。以下で説明する例では、説明を簡略化するために各IC・電源端子に対して2個のパスコン端子をペアに設定する場合について説明する。また、プリント基板設計支援プログラムを実施するための装置の構成等は、第1の実施の形態と同様であるため説明は省略する。
図13、図14及び図15は、本実施の形態に係るプリント基板設計支援プログラムの処理手順の好適な一例を示すためのフローチャートである。以下、本実施の形態に係るプリント基板設計支援プログラムの動作を、図13、図14及び図15のフローチャートと、図6、図7のプリント基板の模式的図面及び図16、図17の図面を用いて詳細に説明する。尚、本実施の形態の説明では、図を見易くするために異なる図面で同じものに対しては、同じ引出し番号を用いている。
まず、図13、図14及び図15のフローチャートについて詳細に説明する。なお、図13〜図15までの処理において、図3及び図4と同じ引出し番号のステップはすべて第1の実施の形態で説明した同じ引出し番号の処理と同一の処理を行うものであるため、説明は簡易なものとする。すわなち、ここではステップS1300、S1301、S1302、S1303、S1304、S1305、S1306、S1307、S1308、S1309、S1310における処理について詳細に説明する。なお、ここで、これらのステップは、すべてCPU10が必要に応じて主記憶装置11に格納されたレイアウト情報14bを参照しながら実行する処理であるため、これらの間での処理については、説明を割愛するものとする。
ステップS304でIC・電源端子Aを選択すると、ステップS1300においてCPU10は、そのIC・電源端子Aから別のIC・電源端子又は電源供給部までの経路をすべて取得する。なお、ステップS1300の処理は、本発明でいう電源配線経路取得ステップの一処理例に対応する。また、ここでは説明を省略したが、ステップS301が本発明でいうレイアウト情報取得ステップに、ステップS303が本発明でいう電源端子特定ステップに対応するのは、第1の実施の形態と同様である。
次にステップS1301においてCPU10は、Lmin1、Lmin2を設定する。ここで、Lmin1及びLmin2とは、各IC・電源端子に対する各パスコンまでの配線インダクタンスのうちの最小値及び2番目に小さい配線インダクタンスである。Lmin1及びLmin2は、Lmin1<Lmin2を満たす範囲で、第1の実施の形態のステップS306と同様に十分に大きい値であればよく、例えばLmin1=1000[nH]、Lmin2=2000[nH]で設定すれば十分である。
そして、ステップS307で配線経路から一つ(以下、配線経路B)を選択し、ステップS308で配線経路B内にパスコン端子が含まれているかどうかを判定する。ステップS308で配線経路B内にパスコン端子が含まれていると判定するとステップS1302においてCPU10は、そのパスコン端子のうちの一つ(以下、パスコン端子C)を選択する。一方、ステップS308で配線経路B内にパスコン端子が含まれていないと判定すると、ステップS312へ進む。
ステップS1302でパスコン端子Cが選択されるとステップS309でIC・電源端子Aとパスコン端子Cとの間の配線の配線インダクタンスLを算出し、続いてステップS1303(図14)でCPU10は、配線インダクタンスLとLmin1を比較する。ここで、L<Lmin1の場合、ステップS1304へ進み、L≧Lmin1の場合、ステップS1305へ進む。なお、ステップS309が本発明でいう配線評価値算出ステップの一処理例に対応するのは、第1の実施の形態と同様である。
ステップS1303でL<Lmin1の場合、ステップS1304においてCPU10は、Lmin1に対応する最小インダクタンスペアリストのペアにIC・電源端子A、パスコン端子C及びLmin1にLの値を代入する。具体的には、既にIC・電源端子Aを片方に持つペア情報が最小インダクタンスペアリストのLmin1に対応するペアに登録されている場合、まずLmin2にLmin1の値を代入し、既に登録されているペア情報をLmin2に対応するペア情報に置き換える。そして、Lmin1にLの値を代入し、IC・電源端子Aとパスコン端子Cのペア情報をLmin1に対応するペアとして登録する。また、まだIC・電源端子Aを片方に持つペア情報が最小インダクタンスペアリストのLmin1に対応するペアに登録されていない場合、Lmin1にLの値を代入し、IC・電源端子Aとパスコン端子Cのペア情報をLmin1に対応するペアとして登録する。そして、ステップS1307へ進む。
一方、ステップS1303でL≧Lmin1と判定された場合ステップS1305においては、CPU10は、配線インダクタンスLとLmin2を比較する。L<Lmin2の場合、ステップS1306へ進み、L≧Lmin2の場合、ステップS1307へ進む。
ステップS1305でL<Lmin2の場合のステップS1306においては、CPU10は、Lmin2にLの値を代入する。さらに、IC・電源端子Aを片方に持つペア情報が最小インダクタンスペアリストのLmin2に対応するペアに既に登録されている場合はその情報を更新し、まだ登録されていない場合はLmin2に対応するペアとして登録する。
ステップS1307においては、CPU10は、ペアリストにIC・電源端子AとパスコンCを追加し、同ペアに対して配線インダクタンスLを付与する。なお、ステップS1303〜S1307までの処理は、本発明でいうペア設定ステップの一処理例に対応するものである。
そしてステップS1308においてCPU10は、配線経路B内のすべてのパスコンに対し、ステップS309以降の処理を実行したかどうかを判定する。ここで、ステップS312で配線経路B内のすべてのパスコンに対し、ステップS309以降の処理を実行したと判定した場合、ステップS312へ進む。また、配線経路B内のすべてのパスコンに対し、ステップS309以降の処理を実行していないと判定した場合、ステップS1302へ戻る。
ステップS1308で配線経路B内のすべてのパスコンに対し、ステップS309以降の処理を実行したと判定した場合はステップS312で、ステップS1300で取得したすべての配線経路に対してステップS308以降の処理を実行したかどうかを判定する。
ステップS312で、ステップS1300で取得したすべての配線経路に対してステップS308以降の処理を実行したと判定した場合、ステップS1309へ進む。また、すべての配線経路に対してステップS308以降の処理を実行していないと判定した場合、ステップS307へ戻る。
ステップS1309においてCPU10は、IC・電源端子Aをペアの片方とする最小インダクタンスペアリストの各ペアに対し、Lmin1、Lmin2に対応するペアの係数K1、K2を算出する。なお、ステップS1309の処理は、本発明でいうペア係数付与ステップの一処理例に対応する。
係数K1、K2は、それぞれの配線インダクタンスLmin1、Lmin2及びペアリストの中でIC・電源端子Aをペアの片方にもつすべてのペアの配線インダクタンスより算出される。そして、K1及びK2の値は、それぞれのLmin1、Lmin2に対応するペアに付与される。
ここで、係数K1及びK2の算出方法の一例を説明する。例えば、ペアリストにn個のIC・電源端子Aをペアに持つペアが登録されており、それぞれの配線インダクタンスがL1、L2、・・・、Lnであったとする。このとき、最小インダクタンスペアリストに登録されている最小の配線インダクタンスLmin1に対応するペアに流れる電流を、IC・電源端子Aに流れる総電流量Jとすると、係数K1、K2は、下記の式(7)、(8)により算出できる。
K1=J×(1/Lmin1)/(1/L1+1/L2+・・・+1/Ln)・・・(7)
K2=J×(1/Lmin2)/(1/L1+1/L2+・・・+1/Ln)・・・(8)
このように、係数K1、K2は、配線インダクタンスの逆数の割合に応じて(配線インダクタンスが小さいほど)、大きな値をとるように算出され、各IC・電源端子に流れる電流値を算出又は取得できている場合、係数K1及びK2を算出することが可能となる。また、パスコンの電流供給の比率のみから簡易的にチェックするという目的であれば、仮想的にJ=1として、配線状況のみからK1及びK2を算出してもよい。また、配線インダクタンスの比率によらず、K1=0.7及びK2=0.3のように、K1>K2を満たしている範囲で、一律に任意の値を定めてもよい。ここでは、説明を容易にするため各IC・電源端子から配線インダクタンスの小さい2つのパスコンのみに着目しているが、実際には各IC・電源端子に接続されているパスコンの個数の範囲で任意に設定することができる。着目するパスコンの個数がn個の場合、算出される配線インダクタンスの個数もn個となり、それらに対する係数K1、K2、・・・、Knは上記の2個の場合と同様にして算出することができる。なお、同じ配線の幅・高さ、絶縁層の材料・厚みの場合には、配線インダクタンスを算出する必要はなく、配線距離のみを算出して、その値に基づき上記と同様の計算方法で係数を求めてもよい。
ステップS1309でIC・電源端子Aを片方に持つすべてのペアに対して係数K1、K2を算出すると、次にステップS313ですべてのIC・電源端子に対してステップS1300以降の処理を実行したかどうかを判定する。ステップS313ですべてのIC・電源端子に対してステップS1300以降の処理を実行したと判定した場合、ステップS314(図15)へ進む。また、すべてのIC・電源端子に対してステップS1300以降の処理を実行していないと判定した場合、ステップS304へ戻る。
ステップS313ですべてのIC・電源端子に対してステップS1300以降の処理を実行したと判定した場合、ステップS314で最小インダクタンスペアリストに格納されているすべてのパスコンを特定する。
次にステップS315で、ステップS314で特定したパスコンから1つ(以下、パスコンD)を選択する。なお、ここでの選択は、CPU10が所定の基準に基づき、任意に行うものであっても構わない。例えば、パスコン端子に識別番号を付しておき、小さい番号順に選択していく等が考えられる。
そしてステップS1310においては、CPU10は、最小インダクタンスペアリストからパスコンDを片方に持つペアの係数K1、K2のすべての値の総和(以下、係数和N3)を算出する。なお、ステップS1310の処理は、本発明でいうペア係数和算出ステップの一処理例に対応する。
そしてステップS1311においてCPU10は、所定値N1’と係数和N3とを比較し、N3>N1’の場合、ステップS318へ進み、N3≦N1’の場合、ステップS319へ進む。なお、ステップS1311の処理は、本発明でいうペア係数和比較ステップの一処理例に対応する。
ステップS1311でN3>N1’と判定された場合はステップS318で、警告を出力する。ここで、警告の出力方法としては、第1の実施の形態の同一引出し番号のステップS318と同様の方法を用いればよい。なお、ステップS1311の処理は、本発明でいうペア係数和警告報知ステップの一処理例に対応する。
そしてステップS319で、ステップS314で特定したすべてのパスコンに対してステップS1310以降の処理を実行したかどうかを判定する。ステップS319で、ステップS314で特定したすべてのパスコンに対してステップS1310以降の処理を実行したと判定した場合、ステップS320へ進む。また、すべてのパスコンに対してステップS1310の処理を実行していないと判定した場合、ステップS315へ戻る。ステップS319で、すべてのパスコンに対してステップS1310の処理を実行したと判定した場合はステップS320で、処理プログラム14aを終了する。
以上が、本実施の形態に係るプリント基板設計支援プログラムのフローチャートの一例の詳細な説明である。
次に、プリント基板設計支援プログラムの動作を図6、図7、図16及び図17を用いつつ、図13〜図15の動作の流れに沿って、より具体的に説明する。
ステップS300〜S304までは第1の実施の形態と同様の動作であるため、説明を省略する。尚、本説明では、チェック条件を所定値N1’=1.5に設定した場合について説明する。チェック条件は、任意に設定できるものとする。
ステップS304でIC・電源端子を一つ選択する。例えば、図6におけるIC・電源端子60aを選択する。ステップS1300では、IC・電源端子60aから別のIC・電源端子又は電源供給部までの経路をすべて取得する。したがって、図16に示す6つの配線経路5〜10が取得されることになる。ステップS1301では、Lmin1=1000及びLmin2=2000を設定する。
ステップS307では、ステップS1300で取得した経路のうち、一つを選択する。例えば、経路5を選択する。ステップS308では、経路5内にパスコンが含まれているかどうかを判定する。ここでは、パスコン端子70a、70c、70d、70e、70fが含まれていると判定し、ステップS1302へ進む。
ステップS1302では、パスコン端子70a、70c、70d、70e、70fから一つを選択する。例えば、パスコン端子70aを選択する。ステップS309では、IC・電源端子60aとパスコン端子70aとの間の配線インダクタンスLを、第1の実施の形態で示した式(1)〜(6)を用いて算出する。ここで、L=3.00[nH]を算出したとする。
ステップS1303では、L<Lmin1と判定する。したがって、ステップS1304へ進み、Lmin1=3.00[nH]が代入され、IC・電源端子60aとパスコン端子70aを最小インダクタンスペアリストのLmin1に対応するペアとして追加する。さらに、IC・電源端子60aとパスコン端子70aをペアリストに追加し、そのペアに3.00[nH]の値を付与する。
ステップS1308では、まだパスコン端子70c、70d、70e、70fに対してステップS309以降の処理を実行されていないと判定するので、ステップS1302へ進む。そして、例えばパスコン端子70cを選択する。ステップS309で例えばL=5.00[nH]を算出したとし、ステップS1303ではL≧Lmin1、ステップS1305ではL<Lmin2と判定する。そして、ステップS1306で、Lmin2=Lとし、IC・電源端子60aとパスコン端子70cを最小インダクタンスペアリストのLmin2に対応するペアとして追加する。さらに、ステップS1307では、IC・電源端子60aとパスコン端子70cをペアリストに追加し、そのペアに5.00[nH]の値を付与する。
以下、同様にして、パスコン端子70d、70e、70fに対してもそれぞれ配線インダクタンスLを算出し、ステップS1303でL≧Lmin1およびステップS1304でL≧Lmin2と判定し、ステップS1307でペアリストに追加していく。そして、ステップS1308で経路5内のすべてのパスコンに対し、ステップS309以降の処理を実行したと判定し、ステップS312で経路6〜10までに対してステップS308以降の処理を実行していないと判定し、ステップS307へ戻る。
ステップS307では、例えば経路6を選択する。経路6内にはパスコン端子が含まれないので、ステップS312へ進み、再びステップS307へ戻る。ステップS307では、例えば経路7を選択する。経路7内にはパスコン端子70bが含まれるので、ステップS1302でパスコン端子70bを選択し、ステップS309でIC・電源端子60aとパスコン端子70b間の配線インダクタンスを算出する。
ここで、L=7.50[nH]が算出されたとする。この場合、ステップS1303でL≧Lmin1、ステップS1305でL≧Lmin2と判定し、ステップS1307でIC・電源端子60aとパスコン端子70bをペアリストに追加し、そのペアに7.50[nH]の値を付与する。以下、同様に経路7〜10までのすべての経路に対してステップS308〜ステップS1308までの処理を実行する。
そして、ステップS312ですべての経路に対してステップS308以降の処理を実行したと判定すると、ステップS1309でIC・電源端子60aをペアの片方とする最小インダクタンスペアリストのペアに対し、係数K1を算出する。具体的には、式(7)を用いて、Lmin1=3.0[nH]及びペアリストに付与されているIC・電源端子60aからパスコン端子70b及び70cまでのそれぞれの配線インダクタンス7.50[nH]及び5.00[nH]からK1=0.5を算出する。ここで、K1に関しては、簡単のため、フローチャートの説明時に記述した手法のうち、J=1を採用した場合で算出した。また、簡単のため、IC・電源端子60aとパスコン端子70d、70e、70f間のそれぞれの配線インダクタンスは十分大きいものと仮定して算出した。同様にして、式(8)を用いて、K2=0.3が算出される。これらK1及びK2の値をそれぞれ最小インダクタンスペアリストのIC・電源端子60aとパスコン端子70a及び70cのペアに付与する。ステップS313では、IC・電源端子60b、60c、60d、60e、60fに対してステップS1300以降の処理を実行していないと判定され、ステップS304へ戻る。以下、IC・電源端子60aの場合と同様にIC・電源端子60b、60c、60d、60e、60fに対してもステップS1300〜ステップS1309までの一連の処理を実行する。
そして、ここまでの処理が終了すると、図17に示すような最小インダクタンスペアリストが作成される。ここでは、説明を簡単にするため、最小インダクタンスペアリストの一部のみを示している。ステップS314では、最小インダクタンスペアリストに登録されているパスコンを特定する。すなわち、パスコン端子70a、70b、70c、70dを特定する。ステップS315では、特定したパスコン端子から一つを選択する。例えば、パスコン端子70aを選択する。
ステップS1310では、図17に示す最小インダクタンスペアリストからパスコン端子70aをペアの片方に持つペア、すなわちペア番号1、3、5、8のKの値の総和N3=1.70を算出する。ステップS1311では、N3>N1’(=1.50)と判定し、ステップS318で警告を出力する。ここで、警告の出力方法は、第1の実施の形態の同一の引き出し番号で示されるステップS318と同様に行えばよい。
そして、ステップS319では、パスコン端子70b、70c、70dに対し、ステップS1310以降の処理を実行していないと判定され、ステップS315へ戻る。ステップS315では、例えばパスコン端子70bが選択され、ステップS1310でN3=0.8が算出される。したがって、ステップS1311でN3≦N1と判定され、ステップS319へ進む。そして、ステップS315へ戻る。
以下、同様にしてその他のパスコン端子に対してもステップS1310からステップS318までの処理を実行する。そして、ステップS319で最小インダクタンスペアリスト内のすべてのパスコンに対してステップS1310以降の処理を実行したと判定した場合に、ステップS320で処理プログラム14aを終了する。
以上が、本実施の形態に係るプリント基板設計支援プログラムの動作である。このような動作により、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様、ユーザは警告の出力されたパスコン周囲の配線を変更することで、過度に電流負荷がかかる危険度の高いパスコンをプリント基板のレイアウト設計段階で対策しておくことが可能となる。また、第1の実施の形態と同様に、警告を出力するすべてのIC・電源端子とパスコン端子のペアを計算した上で、ステップS319の後に警告を一括で出力することも可能である。
以上、本発明の第2の実施の形態について説明した。本実施の形態に係るプリント基板設計支援プログラムでは、各IC・電源端子に接続される配線経路を取得し、その配線経路内に接続されるIC・電源端子と各パスコンの端子間の配線インダクタンスを算出する。そして、算出された配線インダクタンスを比較して、より小さいIC・電源端子と複数のパスコンをペアとして設定する。さらに、そのペアに配線インダクタンスの小さい順に大きい所定の係数を付与し、各パスコンを片方に持つペアに付与された所定の係数の和を算出する。これにより、係数の和を判断の基準として、各IC・電源端子が複数のパスコンから電流を供給されている場合にもパスコンが過度に電流を供給するような状況をチェックすることが可能となる。
また、IC・電源端子とパスコンの端子間の配線インダクタンスの代わりに配線距離を算出してもよく、この場合、プログラムの処理速度を向上することができる。
また、本実施の形態では、上記のように算出する所定の係数を、同じIC・電源端子に接続されるパスコンに対して算出されたIC・電源端子と各パスコンの端子間の配線インダクタンスの逆数の割合に基づいた値としている。これにより、IC・電源端子に接続される複数のパスコンそれぞれが供給する電流量に基づいたチェックを、より適切に行うことを可能としている。
また、本実施の形態では、上記のように算出した所定の係数の和を所定の値と比較することで、所定の判定基準を用いたチェックを行うことを可能としている。また、所定の係数の和が所定の値よりも大きい場合に警告を報知することで、過度に電流を供給する危険度の高いパスコンをユーザが即座に認識することを可能としている。
なお、本実施の形態では、説明を簡潔にするため、IC・電源端子から配線インダクタンスの小さい2個のパスコンのみに着目して最小インダクタンスペアリストを作成した。一方で、すべてのIC・電源端子とパスコンの組み合わせを考慮する場合は、すべての組み合わせの配線インダクタンスからそれぞれの係数Kの値を算出し、チェックすることも可能である。さらに、2つのパスコンに留まらず、それ以上の数のパスコンに着目しても本実施の形態に述べた方法を変形することで、チェックが可能となることを述べておく。
また、上述した第1の実施の形態、第2の実施の形態ともにパスコンを区別なくチェックを行ったが、例えば2種類の容量のパスコンが存在する場合は、それらをグループ分けしてチェックを行うことも可能である。この場合、容量の異なるパスコンごとに最小インダクタンスペアリスト及びペアリストを作成し、パスコン端子とペアとなっているIC・電源端子の個数又は係数の和を算出すれば、同様のチェックを行うことが可能となる。すなわち、第1の実施の形態、第2の実施の形態に示した方法を変形すれば、パスコンの種類の数によらず同様のチェックが可能になる。
最後に、上述した第1の実施の形態、第2の実施の形態においては、IC・グラウンド端子とパスコンのグラウンド側の端子間の配線インダクタンスは十分に小さいとして、IC・電源端子とパスコン端子の配線インダクタンスのみに着目した。一方で、IC・電源端子からパスコンを経由してIC・グラウンド端子に至るまでの経路の配線インダクタンスを算出する場合は、そのループ経路全体の配線インダクタンスを適用することも可能である。
尚、本発明は、以上の説明及び実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨の範囲において適宜変形、組み合わせが可能であることは言うまでもない。