JP2004252743A - 多層配線基板の設計装置、その設計方法及び記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【課題】多層配線基板を設計する場合に、信号層の直下または直上に電流帰還経路を設定できるようにすると共に、電磁放射ノイズを大幅に低減可能なプリント配線基板等を設計できるようにする。
【解決手段】4層配線基板を設計する表示画面を有して送信用ICと受信用ICとを描画するモニタ21と、このモニタ21に描画された信号層上の送信用ICと受信用との間を接続する信号配線を指定する入力ツール22と、この入力ツール22により指定された信号層をモニタ21に描画された4層配線基板の電源層及び接地層に投影処理し、電源層及び接地層に投影された特定領域を受信用ICから送信用ICへのリターン電流パスとする設定処理をし、このリターン電流パスを配線禁止領域とする処理をする制御手段23とを備えるものである。信号層とリターン電流パスとを最短層間距離を維持して配線することができる。
【選択図】 図3
【解決手段】4層配線基板を設計する表示画面を有して送信用ICと受信用ICとを描画するモニタ21と、このモニタ21に描画された信号層上の送信用ICと受信用との間を接続する信号配線を指定する入力ツール22と、この入力ツール22により指定された信号層をモニタ21に描画された4層配線基板の電源層及び接地層に投影処理し、電源層及び接地層に投影された特定領域を受信用ICから送信用ICへのリターン電流パスとする設定処理をし、このリターン電流パスを配線禁止領域とする処理をする制御手段23とを備えるものである。信号層とリターン電流パスとを最短層間距離を維持して配線することができる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁放射ノイズを大幅に低減可能な多層配線構造のプリント配線基板を設計するCAD設計装置等に適用して好適な多層配線基板の設計装置、その設計方法及び記録媒体に関する。
【0002】
詳しくは、中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計する場合に、信号層で指定された信号配線を表示画面に描画された多層配線基板の電源層又は/及び接地層に投影し、この電源層又は/及び接地層に投影された特定領域を負荷回路から信号源への電流帰還経路と設定し、この電流帰還経路を配線禁止領域に指定して、配線の直下または直上に電流帰還経路を設定できるようにすると共に、電磁放射ノイズを大幅に低減可能な多層配線基板を設計できるようにしたものである。
【0003】
【従来の技術】
近年、携帯電話機や、ノート型のパーソナルコンピュータ(以下パソコンという)、各種ゲーム機、携帯端末装置等あるいは、デスクトップ型のパソコンが使用される場合が多くなってきた。これらの情報処理装置によれば、多機能ICを実装するために、高密度配線が可能な多層配線基板を使用する場合が多い。例えば4層構造のプリント配線基板は上部の信号層、中間部の電源層、接地層及び下部の信号層から構成される。
【0004】
この信号層にはICチップ間を接続する信号配線が指定され、電源層には異種電圧を供給する場合にスリットが指定され、接地層にはリターン電流パスが指定される。リターン電流パスとは信号源から負荷回路に至る往路に対して、負荷回路から信号源に戻る復路をいう。リターン電流パスが指定された接地層は、リターン電流層とも呼ばれ、リターン電流層には信号層に流れる電流のリターン電流を流すようになされる。このような多層配線基板はCAD設計装置により設計される。
【0005】
図9はA及びBは従来例に係るCAD設計装置10の構成例及びその処理例を示す図である。
図9Aに示す従来方式のCAD設計装置10では外部のデータベース4に接続され、レイアウトCADシステムが構成される。CAD設計装置10ではCADプログラムに基づいて多層配線基板が設計され、一般に、CAD設計により得られたデータは実際に多層配線基板を製造する場合の製造データとして使用される。
【0006】
このCAD設計装置10はモニタ1、入力ツール2及び制御手段3を有している。モニタ1には多層配線基板を設計する際に、ICチップや、入力・出力端子等を表示画面に描画するようになされる。制御手段3では、図9Bに示すフローチャートのステップB1でプレーン処理がなされる。プレーン処理とは多層配線基板において電源層又は接地層の平面形状(プレーン)を設計することをいい、例えば、電源層にスリットを指定して電源プレーンを描くようになされる。
【0007】
そして、ステップB2では信号層に信号配線が描画される。その後、ステップB3でリターン電流パスが短くなるように信号配線を配線変更し、信号配線の位置を修正するようになされる。必要に応じてスリット位置もずらせるようになされている。
【0008】
図10A及びBは4多層配線基板50’の設計例を示す工程図である。この種の4多層配線基板50’の設計例は特許文献1に開示されている。この特許文献1によれば、まず、モニタ1には、図10Aに示すような2つに分割された電源プレーン52A、52Bが描画される。電源プレーン52A、52Bは電源層にスリット58’を指定して描画したものである。
【0009】
また、図10Aに示す電源プレーン52A、52Bには例えば、送信用IC11、その出力端子13、入力端子14及びコンタクトホール17、18がレイアウトされる。受信用IC12や、その入力端子15及び出力端子16は電源プレーン52A、52Bの外側にレイアウトされる。各々のコンタクトホール17、18は、リターン電流パス形成用の接地層に接続するために配置される。
【0010】
そして、図10Bに示す電源プレーン52A、52Bにレイアウトされた送信用IC11と受信用IC12との間の接続を指定すると、これらの端子間が自動配線される。この例では他の電子部品を迂回するために、送信用IC11の出力端子13と受信用IC12の入力端子15の配置位置が垂直方向を基準にして水平方向にずれた位置にレイアウトされる。
【0011】
この位置ずれを伴ったレイアウトの影響を受けて、図10Bの実線に示すように「く」の字状に折れ曲がった状態で出力端子13と入力端子15との間が信号配線55により接続される。このとき、受信用IC12から送信用IC11へのリターン電流パス59’が設定される。リターン電流パス59’は本来、信号配線55の直下に設定するのが信号ループを最小とすることができるが、この場合、スリット58’に沿って設定される。ここで設定されたリターン電流パス59’は配線禁止領域に指定される。
【0012】
図11はCAD設計方法の問題点を説明するスリット修正例を示す図である。図11に示す信号配線55はスリット58’を跨いでレイアウトされたため、スリット位置を左側へずらすように修正される。このスリット位置のシフトに伴うリターン電流パス59’の設定位置も修正するようになされる。
【0013】
【特許文献1】
特開平11−316774号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来例に係るCAD設計装置10によれば、以下のような問題がある。
▲1▼ 特許文献1に見られるように、電源層にスリットを先に指定して電源プレーン52A,52Bの平面形状を決めた後に、信号層上に配線を描く工程を採っている。従って、リターン電流パス59’が電源プレーン52A,52Bの平面形状に依存することになり、信号配線55の配線自由度が低くなっている。
【0015】
▲2▼ また、多層配線基板で電磁放射ノイズを低減させるために、特許文献1によれば、信号電流について、そのリターン電流パス59’のループの長さや面積を計算し、それが初期条件より長いまたは大きい場合は、信号配線55を修正する方法を取っている。
【0016】
従って、図11に示したように、信号配線55がスリット58’を跨いでレイアウトされた場合、せっかくループの長さや面積を計算して設定したリターン電流パス59’が、スリット位置を左側へずらすという修正に伴い、もう一度、そのループの長さや面積を計算し直して設定しなくてはならなくなる。しかも、再設定された信号ループは最小になるとは限らない。
【0017】
そこで、この発明はこのような従来の課題を解決したものであって、中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計する場合に、信号配線の直下または直上に電流帰還経路を設定できるようにすると共に、電磁放射ノイズを大幅に低減可能なプリント配線基板等を設計できるようにした多層配線基板の設計装置、その設計方法及び記録媒体を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上述した課題は、中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計する装置であって、多層配線基板を設計する表示画面を有して信号源と負荷回路とを描画する表示手段と、この表示手段に描画された信号源と負荷回路との間を接続する配線を指定する入力手段と、この入力手段により指定された配線を表示手段に描画された多層配線基板の電源層又は/及び接地層に投影処理し、電源層又は/及び接地層に投影された特定領域を負荷回路から信号源への電流帰還経路とする設定処理をし、電流帰還経路を配線禁止領域とする処理をする制御手段とを備えることを特徴とする多層配線基板の設計装置によって解決される。
【0019】
本発明に係る多層配線基板の設計装置によれば、中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計する場合に、表示手段の表示画面には信号源と負荷回路とが描画される。この表示手段に描画された信号源と負荷回路との間を接続するために入力手段を使用して配線を指定するようになされる。制御手段では、この入力手段により指定された配線が、表示手段に描画された多層配線基板の電源層又は/及び接地層に投影処理される。そして、制御手段では、この電源層又は/及び接地層に投影された特定領域が、負荷回路から信号源への電流帰還経路とするように設定され、この電流帰還経路を配線禁止領域とする処理がなされる。
【0020】
従って、信号配線の直下または直上に電流帰還経路を設定すること、及び、信号配線と電流帰還経路とを最短層間距離を維持して配線することができる。しかも、信号源から負荷回路に至る往路及び、負荷回路から信号源に戻る復路である信号ループを最小とすることができ、電磁放射を最小にすることができる。これにより、電磁放射ノイズを大幅に低減可能な多層配線基板を設計することができる。また、当該電流帰還経路が設定された配線禁止領域では、以後の信号層の設計等において、他の信号層の配置を排他処理できるので、他の負荷回路と信号源とを接続する信号層に対応した電流帰還経路の横切り等を防止できるようになる。
【0021】
本発明に係る多層配線基板の設計方法は、中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計する方法であって、多層配線基板を設計する表示画面に信号源と負荷回路とを描画し、表示画面に描画された信号源と負荷回路との間を接続する配線を指定し、ここで指定された配線を表示画面に描画される多層配線基板の電源層又は/及び接地層に投影し、ここで投影された電源層又は/及び接地層の特定領域を負荷回路から信号源への電流帰還経路に設定し、ここで設定された電流帰還経路を配線禁止領域に指定することを特徴とするものである。
【0022】
本発明に係る多層配線基板の設計方法によれば、中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計する際に、信号配線の直下または直上に電流帰還経路を設定すること、及び、信号配線と電流帰還経路とを最短層間距離を維持して配線することができる。
【0023】
しかも、信号ループを最小とすることができ、電磁放射を最小にすることができる。これにより、電磁放射ノイズを大幅に低減可能な多層配線基板を設計することができる。また、実際に試作用の多層配線基板を作製しなくても、EMC(Electro−Magnetic Compatibility;電磁気的両立性)品質の高いプリント配線基板等の設計を行うことができるので、作製時間や作製費用等を削減することができる。
【0024】
本発明に係る記録媒体は、中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計するプログラムを記憶した媒体であって、多層配線基板を設計する表示画面に信号源と負荷回路とを描画し、表示画面に描画された信号源と負荷回路との間を接続する配線を指定し、ここで指定された配線を表示画面に描画される多層配線基板の電源層又は/及び接地層に投影し、ここに投影された電源層又は/及び接地層の特定領域を負荷回路から信号源への電流帰還経路に設定し、ここで設定された電流帰還経路を配線禁止領域に指定するためのプログラムを記憶して成ることを特徴とするものである。
【0025】
本発明に係る記録媒体によれば、中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計する場合に、当該記録媒体を使用することで、熟練していない設計者でも、EMC品質の高いプリント配線基板等の設計を行うことができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
続いて、この発明に係る多層配線基板の設計装置、その設計方法及び記録媒体の一実施の形態について、図面を参照しながら説明をする。
この実施形態では、中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計する場合に、信号層で指定された配線を表示画面に描画された多層配線基板の電源層又は/及び接地層に投影し、この電源層又は/及び接地層に投影された特定領域を負荷回路から信号源への電流帰還経路と設定し、この電流帰還経路を配線禁止領域に指定して、信号層の配線の直下または直上に電流帰還経路を設定できるようにすると共に、電磁放射ノイズを大幅に低減可能な多層配線基板を設計できるようにしたものである。
【0027】
図1は本発明に係る実施形態としてのCAD設計装置によって設計される4層配線基板50の構造例を示す斜視図である。図1に示す4層配線基板50は多層配線基板の一例であり、携帯電話機や、ノート型のパーソナルコンピュータ(以下パソコンという)、各種ゲーム機、携帯端末装置等あるいは、デスクトップ型のパソコンに適用して極めて好適である。多層配線基板は高密度配線が可能で電子機器の小型化が図れる。
【0028】
この例では4層配線基板50は信号層51、電源層52、接地層53及び信号層54を有している。4層配線基板50上には信号源の一例となる送信用IC11が実装され、同基板面上に負荷回路の一例となる受信用IC12が実装される。送信用IC11は出力端子13及び入力端子14に接続され、受信用IC12は入力端子15及び出力端子16に接続される。
【0029】
この出力端子13、16及び入力端子14、15は共に信号層51に形成される。この例では出力端子13、16及び入力端子14、15のいずれも送信用IC11や受信用IC12に対して、説明を簡略化するために1つを実装する場合を示している。もちろん、出力端子13、16及び入力端子14,15は1つに限られることはなく、2以上複数の入力・出力端子や電源供給部品が設けられる。これらの端子や部品をレイアウトして多層配線基板が設計される。この例で入力端子14は接地層53に接続され、出力端子16は接地層53に各々の接続される。
【0030】
この出力端子13と入力端子15との間は信号層51を成す信号配線(プリント配線パターン)55により接続され、動作周波数の高い、例えば、数MHz〜数十GHz単位の動作信号を伝送するようになされる。この例では信号層51の直下または直上に電流帰還経路(以下リターン電流パス59という)が設定され、電磁放射ノイズを大幅に低減可能とする4層配線基板50が設計される(図2参照)。なお、4層配線基板50の設計例に関しては、図1中で一点鎖線で囲んだ領域(以下CAD設計領域Iという)について、以下に説明をする。
【0031】
図2は4層配線基板50の内部構造例を示す斜視図である。図2に示す4層配線基板50は上部に信号層51、中間層に電源層52、接地層53及び、下部に信号層54を有しており、4層を成している。各々層間は図示しないプリプレグ樹脂等の絶縁物(誘電体)により絶縁されている。4層配線基板50の上部の信号層51には図中四角印に示す出力端子13及び入力端子14を成すパッド電極が設けられる。
【0032】
この4層配線基板50の信号層51、電源層52及び接地層53には丸印で示すコンタクトホール(開口部)17及び18が設けられ、電源層52、接地層53との絶縁を保持して貫通し、上部及び下部間の信号層51及び54を接続する際に使用される。もちろん、コンタクトホール17、18を使用して電源層52に電源線を接続し、接地層53に接地線を接続するようにしてもよい。送信用IC11や受信用IC12へ電源を供給するためである。
【0033】
この例で信号層51の下部には電源層52が設けられ、この電源層52にはスリット58が設けられる。これは、1つの電源層52に複数種類の電源を適用する場合に、各電源のパターン領域間を電気的に絶縁するためである。このパターン境界位置にスリット58が形成される。この実施形態ではこのスリット58を電源間スリットとも呼ぶ。広くは異なる種類の電源領域が隣接する場合の境界線を指すものである。多層配線基板設計時には自由に変更可能なものである。
【0034】
電源層52の下部には接地層53が設けられ、この接地層53には図中波線に示すリターン電流パス59が設定される。リターン電流パス59は送信用IC11の出力端子13と受信用IC12の入力端子15との間の信号層51を成す信号配線55の直下の位置に設定される。送信用IC11から受信用IC12に至る往路及び、受信用IC12から送信用IC11に戻る復路である信号(電流)ループを最小とするためである。接地層53の下部には信号層54が設けられる。この信号層54には、図示せずも、上部の信号層51と同様な出力端子13及び入力端子14を成すパッド電極や、コンタクトホール(開口部)17、18が設けられる。これらにより、多層配線基板の一例となる4層配線基板50を構成する。
【0035】
図3はCAD設計装置100の内部構成例を示すブロック図である。図3に示すCAD設計装置100は多層配線基板を設計する装置の一例であり、中間層に電源層52及び接地層53を有する2層以上のプリント配線基板等を設計する装置である。CAD設計装置100には汎用のコンピュータが使用され、従来方式のレイアウトCADシステムに本発明方式に係る付属モジュールを組み込んだものである。CAD設計装置100ではCADプログラムに基づいて多層配線基板が設計され、この設計により得られたデータは実際に多層配線基板を製造する際の製造データとして使用される。
【0036】
このCAD設計装置100はモニタ21、入力ツール22及び制御手段23を有している。モニタ21は表示手段の一例であり、このモニタ21には液晶表示ディスプレイや、CRT、PDP表示装置が使用される。モニタ21は4層配線基板50等を設計する際に、送信用IC11や、受信用IC12、入力・出力端子等を表示画面に描画するようになされる。
【0037】
制御手段23はシステムバス31を有しており、このシステムバス31には、例えば、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)33、HDD(Hard Disc Driver)34、I/O(Input/Output)インタフェース35、CPU(Central Processing Unit;中央処理ユニット)36及び、自動配線エディタ37が接続されている。システムバス31に接続された入力ツール(入力手段)22は、モニタ21に描画された信号層51で送信用IC11と受信用IC12との間を接続する信号配線55を指定するように操作される。入力ツール22にはキーボード24やマウス25等が使用される。
【0038】
このシステムバス31には記録媒体の一例となるROM32が接続され、4層配線基板50を設計する際のプログラムが記憶される。ROM32には、例えば、4層配線基板50を設計する表示画面に送信用IC11と受信用IC12とを描画し、表示画面に描画された信号層51で送信用IC11と受信用IC12との間を接続する信号配線55を指定し、この表示画面に描画される4層配線基板50の電源層52及び接地層53に、信号層51で指定された信号配線55を投影し、ここに投影された電源層52及び接地層53の特定領域を受信用IC12から送信用IC11へのリターン電流パス59に設定し、ここで設定されたリターン電流パス59を配線禁止領域に指定するためのCAD設計プログラムが格納される。この記録媒体は制御手段23と共に付属モジュールを構成する。
【0039】
もちろん、ROM32には当該CAD設計装置全体を制御するためのシステムプログラムが格納される。記録媒体にはROMやEEPROM等の半導体メモリの他に、CD−ROM、磁気ディスク等が使用される。このCAD設計装置100によれば、4層配線基板50を設計する場合に、当該ROM32に基づくCAD設計プログラムを使用することで、熟練していない設計者でも、EMC品質の高い4層構造のプリント配線基板等の設計を行うことができる。
【0040】
RAM33はワークメモリとして使用され、例えば、制御コマンド等を一時記憶するようになされる。CPU36は電源がオンされると、ROM32からシステムプログラムを読み出してシステムを起動し、入力ツール22からの操作データに基づいて当該CAD設計装置全体を制御するようになされる。
【0041】
I/Oインタフェース35には外部のデータベースが接続され、4層配線基板50の設計に必要なデータ(以下CADデータという)が格納される。I/Oインタフェース35にはシステムバス31を通じてHDD(ハードディスク装置)34が接続され、データベースから読み出したCADデータ等が格納され、このCAD設計時において必要なデータをCADデータから抽出するようになされる。HDD34にはスリット58や、IC、端子等を配置するためのレイアウトエディタや、各々の端子間を自動配線する自動配線エディタ37、設計ルールを表示するルールエディタを構成する機能プログラムも格納されている。
【0042】
CPU36では入力ツール22により信号層51で指定された信号配線55をモニタ21に描画された4層配線基板50の電源層52又は/及び接地層53に投影処理し、電源層52又は/及び接地層53に投影された特定領域を受信用IC12から送信用IC11へのリターン電流パス59とする設定処理をし、このリターン電流パス59を配線禁止領域とする処理をする。例えば、信号層51に流れる電流のリターン電流を流す接地層53をリターン電流層としたとき、CPU36は信号層51で信号配線55が指定されると同時に、リターン電流層にリターン電流パス59を描画するようにモニタ21を表示制御する。
【0043】
この例で4層配線基板50の中間層に1種類以上の電源層52を設ける場合であって、この電源層52の平面形状を設計するプレーン処理をする際に、CPU36はリターン電流パス59を含むように当該電源層52の平面形状を指定するようにモニタ21を制御する。例えば、4層配線基板50の中間層に2種類の電源層52を設ける場合であって、この電源層52を2つに分割してスリット58を設けるプレーン処理をする際に、CPU36はリターン電流パス59を除く領域にスリット58を指定するように制御する。このようにすると、リターン電流パス59を分断しないようにプレーン処理することができる。電源層52にスリット58を設けることで、基板実装後の実動作時には、スリット58により画定された電源層52に、3.3V電圧や、5V電圧といった異種電源を供給するようになされる。
【0044】
自動配線エディタ37は、配線経路の位置及び電源間のスリット位置を検出したり、その検出結果に基づいて配線経路とスリット58との重なりを判断したり、この判断結果により配線経路とスリット58の重なりを避けるように配線経路、信号配線55、電源間のスリット58等の設計データを変更して自動配線するように機能するものである。
【0045】
図4はモニタ21における実装設計表示画面P1の表示例を示すイメージ図である。図4に示すモニタ21の表示例によれば、実装設計表示画面P1が表示される。実装設計表示画面P1には、4層配線基板50の信号層51(半田付け面)のレイアウトパターンが表示される。この実装設計表示画面P1はレイアウトエディタを選択することにより表示される。実装設計表示画面P1には「配置配線ルール登録ツールを開始します」のメッセージや、レイアウトパターンの他に、「ファイル」、「編集」、「表示」、「作図」、「設定」、「ツール」、「配線」、「修正」、「部品移動」、「自動配線」及び「ヘルプ」の機能選択スイッチタグが設けられる。
【0046】
例えば、「ファイル」を選択して「ルールエディタ」をマウス25でクリックすると、表示画面中の一部領域に重ねて「ルールエディタ」を表示するようになされる。「ルールエディタ」には、「部品実装面制限」、「部品配置角度制限」、「部品クリアランス制限」、「ネット毎クリアランス定義」、「配線長制限」、「平行配線長制限」、「等長ペア配線制限」、「同層分岐制限」、「スタブ長制限」、「使用パターン幅制限」、「パッドスタック制限」、「ネット毎層定義」・・・が表示される。
【0047】
この例で「ルールエディタ」の表示画面中で「使用パターン幅制限」をマウス25でクリックすると、表示画面中の一部領域に重ねて「使用パターン幅制限」を表示するようになされる。「使用パターン幅制限」にはネット名と共に、層名及び配線幅の値が表示される。この例ではCPU36によって、送信用IC11、受信用IC12及び信号層51を指定するレイアウト設計を行うと同時にルールチェック及びシミュレーションが行われる。このルールチェックやシミュレーションを行うことで、従来方式に比べて修正に時間がかからなくなる。
【0048】
図5はモニタ21における自動配線表示画面P2の表示例を示すイメージ図である。図5に示すモニタ21の表示例によれば、図4に示した機能選択スイッチタグで「自動配線」をマウス25でクリックすると、自動配線エディタ37が起動され、図5に示す自動配線表示画面P2が表示される。この例では送信用IC11と受信用IC12との間を自動配線機能により接続するようになされる。
【0049】
自動配線表示画面P2は例えば、上下2つの表示領域に分割される。上部の表示領域には送信用IC11や受信用IC12が表示され、これらのICの複数の入力端子及び出力端子が表示され、これらの入力端子及び出力端子の間が自動配線される。下部の表示領域にはネットリストが表示される。自動配線エディタ37ではネットリストに基づいて各々の端子間を自動配線するようになされる。信号層51で端子間を接続する信号配線55は、予め定められた設計ルール(配線規則)に従って配線設計がなされる。例えば、信号層51上で水平方向に延在する信号配線と垂直方向に延在する信号配線とを組合せて形成される。
【0050】
続いて、本発明に係る4層配線基板50の設計方法について説明をする。図6及び図7は4層配線基板50の設計例(その1及び2)を示す工程図である。
この実施形態では中間層に電源層52及び接地層53を有する4層配線基板50を設計する場合を前提とする。この例では、4層配線基板50の設計例に関しては、図1中で一点鎖線で囲んだCAD設計領域Iを抽出して説明をする。
【0051】
図6Aにおいて、まず、CAD設計しようとする4層配線基板50のCAD設計領域Iをモニタ21に描画する。CAD設計領域Iにはこの時点で従来方式のように電源間を分割するスリットが指定されていない。先にスリット58を指定してしまうと、送信用IC11や受信用IC12の配線後に、スリット位置を修正する場合が発生するからである。
【0052】
また、図6Bに示すCAD設計領域Iに送信用IC11や受信用IC12等をレイアウトすると共に、出力端子13、16及び入力端子14、15、コンタクトホール17、18を配置する。この例では送信用IC11がCAD設計領域Iの上部にかかるように配置され、出力端子13及び入力端子14は当該領域内に配置される。受信用IC12、入力端子15及び出力端子16はCAD設計領域Iの下部外に各々配置される。コンタクトホール17は入力端子14の下部に配置される。コンタクトホール18はCAD設計領域内の所定の位置に配置される。各々のコンタクトホール17、18は、リターン電流パス形成用の接地層53に接続するために配置される。
【0053】
送信用IC11の出力端子13は信号電流の送信点であり、入力端子14は信号電流の帰路入力点である。受信用IC12の入力端子15は信号電流の受信点であり、出力端子16は信号電流の帰路出力点である。これらの電子部品はレイアウトエディタにより配置される。
【0054】
そして、図7Aに示すCAD設計領域Iにレイアウトされた送信用IC11と受信用IC12との間の接続を指定すると、これらの端子間が自動配線される。この例では送信用IC11の出力端子13と受信用IC12の入力端子15の配置位置が垂直方向を基準にして水平方向にずれた位置にレイアウトされている。これは他の電子部品を迂回する場合において、配線間隔を保持する必要性から生ずる。
【0055】
従って、出力端子13と入力端子15との間を接続する信号配線55は、図7Aの実線に示すように「く」の字状に折れ曲がった状態で信号層51に配線される。このとき、信号層51上でコンタクトホール17と入力端子14との間が信号配線56により接続され、出力端子16とコンタクトホール18とが信号配線57により配線される。
【0056】
この例では、表示画面に描画される4層配線基板50の接地層53に、信号層51上で指定された信号配線55が投影される。ここで投影された接地層53の特定領域は、受信用IC12から送信用IC11へのリターン電流パス59に設定される。つまり、接地層53には図中波線に示すリターン電流パス59が設定される。
【0057】
この信号層51上の信号配線55を接地層53に投影するようにしたのは、信号層51上の出力端子13と入力端子15との間の信号配線55の直下の位置にリターン電流パス59を設定できるからであり、送信用IC11から受信用IC12に至る往路及び、受信用IC12から送信用IC11に戻る復路である信号ループを最小とするためである。信号ループを最小とすることで電磁放射ノイズを大幅に低減できるようになる。
【0058】
ここで設定されたリターン電流パス59は配線禁止領域に指定される。これは、リターン電流パス59が設定された配線禁止領域では、以後の信号層51の設計等において、他の信号層51上での信号配線の配置を排他処理することができ、他の受信用ICと送信用ICとを接続する信号配線55に対応したリターン電流パス59の横切り等を防止できるようにしたためである。
【0059】
図8はCAD設計装置100における4層配線基板設計時の処理例を示すフローチャートである。この実施形態では中間層に電源層52及び接地層53を有する4層配線基板50を設計する場合を前提とする。この例では、4層配線基板50の中間層に二種類の電源層52を設ける場合であって、電源層52の平面形状を設計するプレーン処理を含めてCAD設計する場合を想定する。この4層配線基板50の設計例に関しては、図6及び図7を参照しながら説明をする。
【0060】
これらをCAD設計条件にして、図8に示すフローチャートのステップA1で初期設定処理をする。この初期設定処理では、図3に示したHDD34から、信号配線名、IC名、電源供給部品名、電源種類等の4層配線基板50の設計に用いられる各種データが読み出され、CAD設計条件が設定される。信号配線名は例えば、送信用IC11の出力端子13と受信用IC12の入力端子15の間を結ぶ、信号線の名前等をいい、信号配線55等がプリント配線基板の設計に応じて複数ある場合には複数の信号配線名が予め準備される。
【0061】
IC名は図1に示した送信用IC11や受信用IC12に付した名称等であり、4層配線基板50の設計回路に応じて名称の数は複数個存在する。電源供給部品名は電源端子電極などであり、必要に応じて何個有っても良い。電源種類は電源層52を分割する電源プレーンの種類を示すもので、例えば、5Vプレーン、3.3Vプレーンなどが対象となり、CAD設計上の必要に応じて何種類有っても良い。CAD設計時に必要なデータは、HDD34からCADデータとして読み出される。このCADデータから4層配線基板50の設計に関連する必要なデータが抽出される。
【0062】
そして、ステップA2に移行して4層配線基板50を設計する表示画面に送信用IC11や受信用IC12等のレイアウト部品を描画する。このとき、モニタ21の表示画面には図6Bに示したように送信用IC11、受信用IC12、出力端子13、16入力端子14、15及びコンタクトホール17、18がCADデータに基づいて描画される。また、このとき、設計者は入力ツール22を使用して図6Aに示したようなCAD設計領域Iをモニタ21に表示し、このCAD設計毎に信号層51とリターン電流層とを指定しCAD設計準備をする。ここにリターン電流層とは、信号層51上の信号配線55に流れる電流に対してその帰路におけるリターン電流を流す層をいう。
【0063】
このリターン電流層は層間絶縁物等の誘電体を挟んで上層または下層となる位置に指定されることが望ましい。信号層51が誘電体の上層に位置する場合は、リターン電流層が下層に位置し、反対に信号層51が誘電体の下層に位置する場合は、リターン電流層が上層に位置するように指定するとよい。この例で、リターン電流層は、接地(グランド)層53又は電源層52であることが望ましい。ここで図示せずも、信号配線55が形成される信号層51とリターン電流層との間の距離を層間距離という。この例では、最短層間距離を維持して、信号層51条の信号配線55の直下の接地層53にリターン電流パスが設定される。
【0064】
この例では、ある信号層51上の信号配線55にとってリターン電流層として指定した中間層が、この信号層51上の別の信号配線であると指定することもできる。この場合、その信号配線に対するリターン電流層を更に多の中間層に指定するようになされる。
【0065】
そして、ステップA3で表示画面に描画された信号層51上で送信用IC11と受信用IC12との間を接続する信号配線を指定して配線する。このとき、設計者はモニタ21に描画された送信用IC11と受信用IC12との間を接続するために入力ツール22を使用して信号層51に配線を引く(指定する)ようになされる。もちろん、自動配線エディタ37を使用してこの間を自動配線してもよい。これにより、モニタ21には図7Aの実線で示したような信号配線55が信号層51上に描画される。
【0066】
その後、ステップA4に移行して表示画面に描画される4層配線基板50の電源層52及び接地層53に、ステップA3で信号層51に指定された信号配線55を投影する。この信号配線55は4層配線基板50の厚み方向へ投影される。このとき、CPU36では、入力ツール22により信号層51に指定された信号配線55が、モニタ21に描画された4層配線基板50の電源層52及び接地層53に投影処理される。
【0067】
次のステップでリターン電流パス59を設定するためである。このリターン電流パス59は、投影幅をもつ太線であってもよいし、投影幅を持たない細線であってもよい。投影幅を持つ場合には、CAD設計条件として固定値を与えるか、または最小値を与えることができる。固定値の場合は、例えば、信号配線55の特性インピーダンスをある値に特定するような投影幅をCAD設計条件として与えることができ、信号配線55のインピーダンスを一定に保つことができるようになる。この信号配線55に関して配線幅よりも投影幅を大きくなるように投影した場合には、配線禁止領域を広く確保できるようになる。
【0068】
従って、ステップA4で投影された電源層52及び接地層53の特定領域をステップA5で受信用IC12から送信用IC11へのリターン電流パス59として設定する。このとき、CPU36では、電源層52及び接地層53に投影された特定領域が、図7Aに示した受信用IC12から送信用IC11へのリターン電流パス59とするように設定される。例えば、信号層51に流れる電流のリターン電流を流す接地層53をリターン電流層としたとき、信号層51で信号配線55を指定すると同時に、リターン電流層にリターン電流パス59が描画される。これと共に、リターン電流パス59を含むように当該電源層52の平面形状が指定される。
【0069】
ここで設定されたリターン電流パス59をステップA6で配線禁止領域とする処理がなされる。このリターン電流パス59を配線禁止領域に指定することで、以後の信号層51の設計等において、他の信号層51の配置を排他処理することができ、他の送信用ICと受信用IC等とを接続する信号層51に対応したリターン電流パス59の横切り等を防止できるようになる。
【0070】
そして、ステップA7で当該送信用IC11と受信用IC12との他の端子間を配線するか否かをチェックする。当該他の端子間を配線する場合はステップA3に戻って表示画面に描画された信号層51上で送信用IC11と受信用IC12との間を接続する信号配線を指定して配線する。このとき、配線描画(リターン電流層)及び、配線禁止領域を避けて配線を描画するようになされる。
【0071】
上述のステップA7で他の送受信用IC12等の端子間を全て配線した場合は、ステップA8に移行してプレーン処理を実行する。このプレーン処理では、リターン電流パス59を含むように電源層52の平面形状(プレーン)が描かれる。この信号層51の直下には必ずリターン電流層を成す接地層53のプレーンが存在する。この例では、図7Bに示すように電源層52の分割に関して、リターン電流パス59を除く領域にスリット58が指定される。このようにすると、リターン電流パス59を分断しないようにプレーン処理することができる。従って、配線の最適なリターン電流パス59が必ず確保されることになる。また、信号層51の配線自由度を高くすることができる。この例では、送信用IC11、受信用IC12及び信号層51を指定するレイアウト設計を行うと同時にルールチェック及びシミュレーションが行われる。このことで、従来例に比べて修正に時間がかからなくなる。
【0072】
そして、ステップA9に移行して当該4層配線基板50に関して全ての設計を済んだか否かをチェックする。4層配線基板50の設計が済んでいない場合は、ステップA2に戻って上述した処理を繰り返すようになされる。4層配線基板50の設計が全て済んだ場合は、CAD設計により得られたデータをHDD34や、外部のデータベースに格納してCAD設計処理を終了する。
【0073】
このように、本発明に係る実施形態としてのCAD設計装置及び多層配線基板の設計方法によれば、中間層に電源層52及び接地層53を有する4層配線基板50を設計する制御手段23を備え、この制御手段23は、信号層51上で指定された信号配線55を表示画面に描画された4層配線基板50の電源層52及び接地層53に投影処理し、この接地層53に投影された特定領域を受信用IC12から送信用IC11へのリターン電流パス59とする設定処理をすると共に、このリターン電流パス59を配線禁止領域とする処理をし、更に、電源層52に投影された領域にはスリット58が指定されないように処理するものである。
【0074】
従って、信号層51上の信号配線55の直下または直上にリターン電流パス59を設定すること、及び、信号層51上の信号配線55とリターン電流パス59とを最短層間距離を維持して配線することができる。しかも、送信用IC11から受信用IC12に至る往路及び、受信用IC12から送信用IC11に戻る復路である信号ループを最小とすることができ、電磁放射を最小にすることができる。これにより、電磁放射ノイズを大幅に低減可能な4層配線基板50を設計することができる。
【0075】
また、当該リターン電流パス59が設定された配線禁止領域では、以後の信号層51上の信号配線の設計等において、信号層51上の他の信号配線の配置を排他処理できるので、他の受信用ICと送信用ICとを接続する信号配線に対応したリターン電流パスの横切り等を防止できるようになる。更にまた、実際に試作用の4層配線基板50を作製しなくても、誰でも簡単に、EMC品質の高いプリント配線基板等の設計を行うことができるので、作製時間や作製費用等を削減することができる。
【0076】
この実施形態では送信用IC11と受信用IC12とを接続する信号配線55に関してリターン電流パス59を必要とする場合について説明したが、これに限られることはなく、信号層51毎にリターン電流パス59を必要とするか否かを選択してもよい。例えば、動作周波数が低い信号配線55を取り扱う場合は、リターン電流パス59を設定する必要性が低いので、ステップA4における信号層51の投影処理を省略するようにしてもよい。これにより、リターン電流層の配線自由度が高くなって、誰でも簡単に、EMC品質の高いプリント配線基板等を設計できるようになる。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るプリント配線基板の設計装置によれば、中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計制御する制御手段を備え、この制御手段は、指定された信号層を表示画面に描画された多層配線基板の電源層及び接地層に投影処理し、この電源層及び接地層に投影された特定領域を負荷回路から信号源への電流帰還経路とする設定処理をし、この電流帰還経路を配線禁止領域とする処理をするものである。
【0078】
この構成によって、信号層の直下または直上に電流帰還経路を設定すること、及び、信号層と電流帰還経路とを最短層間距離を維持して配線することができる。従って、信号ループを最小とすることができ、電磁放射を最小にすることができる。これにより、電磁放射ノイズを大幅に低減可能な多層配線基板を設計することができる。しかも、当該電流帰還経路が設定された配線禁止領域では、以後の信号層の設計等において、他の信号層の配置を排他処理できるので、他の負荷回路と信号源とを接続する信号層に対応した電流帰還経路の横切り等を防止できるようになる。実際に試作用の多層配線基板を作製しなくても、EMC品質の高いプリント配線基板等の設計を行うことができるので、作製時間や作製費用等を削減することができる。
【0079】
本発明に係る記録媒体によれば、多層配線基板を設計する表示画面に信号源と負荷回路とを描画し、この表示画面に描画された信号源と負荷回路との間を接続する信号層を指定し、ここで指定される信号層を表示画面に描画される多層配線基板の電源層及び接地層に投影し、ここで投影された電源層及び接地層の特定領域を負荷回路から信号源への電流帰還経路に設定し、ここで設定された電流帰還経路を配線禁止領域に指定するためのプログラムを記憶して成るものである。
【0080】
この構成によって、中間層に電源層及び接地層を有する多層配線構造の多層配線基板を設計する場合に、当該記録媒体を使用することで、熟練していない設計者でも、EMC品質の高いプリント配線基板等の設計を行うことができる。
【0081】
この発明は電磁放射ノイズを大幅に低減可能な多層配線構造のプリント配線基板を設計するCAD設計装置等に適用して極めて好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る実施形態としてのCAD設計装置によって設計される多層配線基板の構造例を示す斜視図である。
【図2】4層配線基板50の内部構造例を示す斜視図である。
【図3】CAD設計装置100の内部構成例を示すブロック図である。
【図4】モニタ21における実装設計表示画面P1の表示例を示すイメージ図である。
【図5】モニタ21における自動配線表示画面P2の表示例を示すイメージ図である。
【図6】A及びBは4層配線基板50の設計例(その1)を示す工程図である。
【図7】A及びBは4層配線基板50の設計例(その2)を示す工程図である。
【図8】CAD設計装置100における4層配線基板設計時の処理例を示すフローチャートである。
【図9】A及びBは従来例に係るCAD設計装置10の構成例及びその処理例を示す図である。
【図10】A及びBはその4層配線基板50’の設計例を示す工程図である。
【図11】その問題点を説明する修正例を示す図である。
【符号の説明】
11・・・送信用IC(信号源)、12・・・受信用IC(負荷回路)、21・・・モニタ、22・・・入力ツール(入力手段)、23・・・制御手段、32・・・ROM(記録媒体)、50,50’・・・4層配線基板(多層配線基板)、51,54・・・信号層、52・・・電源層、53・・・接地層、55・・・信号配線、58・・・スリット、59・・・リターン電流パス(電流帰還経路)、100・・・CAD設計装置(多層配線基板の設計装置)
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁放射ノイズを大幅に低減可能な多層配線構造のプリント配線基板を設計するCAD設計装置等に適用して好適な多層配線基板の設計装置、その設計方法及び記録媒体に関する。
【0002】
詳しくは、中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計する場合に、信号層で指定された信号配線を表示画面に描画された多層配線基板の電源層又は/及び接地層に投影し、この電源層又は/及び接地層に投影された特定領域を負荷回路から信号源への電流帰還経路と設定し、この電流帰還経路を配線禁止領域に指定して、配線の直下または直上に電流帰還経路を設定できるようにすると共に、電磁放射ノイズを大幅に低減可能な多層配線基板を設計できるようにしたものである。
【0003】
【従来の技術】
近年、携帯電話機や、ノート型のパーソナルコンピュータ(以下パソコンという)、各種ゲーム機、携帯端末装置等あるいは、デスクトップ型のパソコンが使用される場合が多くなってきた。これらの情報処理装置によれば、多機能ICを実装するために、高密度配線が可能な多層配線基板を使用する場合が多い。例えば4層構造のプリント配線基板は上部の信号層、中間部の電源層、接地層及び下部の信号層から構成される。
【0004】
この信号層にはICチップ間を接続する信号配線が指定され、電源層には異種電圧を供給する場合にスリットが指定され、接地層にはリターン電流パスが指定される。リターン電流パスとは信号源から負荷回路に至る往路に対して、負荷回路から信号源に戻る復路をいう。リターン電流パスが指定された接地層は、リターン電流層とも呼ばれ、リターン電流層には信号層に流れる電流のリターン電流を流すようになされる。このような多層配線基板はCAD設計装置により設計される。
【0005】
図9はA及びBは従来例に係るCAD設計装置10の構成例及びその処理例を示す図である。
図9Aに示す従来方式のCAD設計装置10では外部のデータベース4に接続され、レイアウトCADシステムが構成される。CAD設計装置10ではCADプログラムに基づいて多層配線基板が設計され、一般に、CAD設計により得られたデータは実際に多層配線基板を製造する場合の製造データとして使用される。
【0006】
このCAD設計装置10はモニタ1、入力ツール2及び制御手段3を有している。モニタ1には多層配線基板を設計する際に、ICチップや、入力・出力端子等を表示画面に描画するようになされる。制御手段3では、図9Bに示すフローチャートのステップB1でプレーン処理がなされる。プレーン処理とは多層配線基板において電源層又は接地層の平面形状(プレーン)を設計することをいい、例えば、電源層にスリットを指定して電源プレーンを描くようになされる。
【0007】
そして、ステップB2では信号層に信号配線が描画される。その後、ステップB3でリターン電流パスが短くなるように信号配線を配線変更し、信号配線の位置を修正するようになされる。必要に応じてスリット位置もずらせるようになされている。
【0008】
図10A及びBは4多層配線基板50’の設計例を示す工程図である。この種の4多層配線基板50’の設計例は特許文献1に開示されている。この特許文献1によれば、まず、モニタ1には、図10Aに示すような2つに分割された電源プレーン52A、52Bが描画される。電源プレーン52A、52Bは電源層にスリット58’を指定して描画したものである。
【0009】
また、図10Aに示す電源プレーン52A、52Bには例えば、送信用IC11、その出力端子13、入力端子14及びコンタクトホール17、18がレイアウトされる。受信用IC12や、その入力端子15及び出力端子16は電源プレーン52A、52Bの外側にレイアウトされる。各々のコンタクトホール17、18は、リターン電流パス形成用の接地層に接続するために配置される。
【0010】
そして、図10Bに示す電源プレーン52A、52Bにレイアウトされた送信用IC11と受信用IC12との間の接続を指定すると、これらの端子間が自動配線される。この例では他の電子部品を迂回するために、送信用IC11の出力端子13と受信用IC12の入力端子15の配置位置が垂直方向を基準にして水平方向にずれた位置にレイアウトされる。
【0011】
この位置ずれを伴ったレイアウトの影響を受けて、図10Bの実線に示すように「く」の字状に折れ曲がった状態で出力端子13と入力端子15との間が信号配線55により接続される。このとき、受信用IC12から送信用IC11へのリターン電流パス59’が設定される。リターン電流パス59’は本来、信号配線55の直下に設定するのが信号ループを最小とすることができるが、この場合、スリット58’に沿って設定される。ここで設定されたリターン電流パス59’は配線禁止領域に指定される。
【0012】
図11はCAD設計方法の問題点を説明するスリット修正例を示す図である。図11に示す信号配線55はスリット58’を跨いでレイアウトされたため、スリット位置を左側へずらすように修正される。このスリット位置のシフトに伴うリターン電流パス59’の設定位置も修正するようになされる。
【0013】
【特許文献1】
特開平11−316774号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来例に係るCAD設計装置10によれば、以下のような問題がある。
▲1▼ 特許文献1に見られるように、電源層にスリットを先に指定して電源プレーン52A,52Bの平面形状を決めた後に、信号層上に配線を描く工程を採っている。従って、リターン電流パス59’が電源プレーン52A,52Bの平面形状に依存することになり、信号配線55の配線自由度が低くなっている。
【0015】
▲2▼ また、多層配線基板で電磁放射ノイズを低減させるために、特許文献1によれば、信号電流について、そのリターン電流パス59’のループの長さや面積を計算し、それが初期条件より長いまたは大きい場合は、信号配線55を修正する方法を取っている。
【0016】
従って、図11に示したように、信号配線55がスリット58’を跨いでレイアウトされた場合、せっかくループの長さや面積を計算して設定したリターン電流パス59’が、スリット位置を左側へずらすという修正に伴い、もう一度、そのループの長さや面積を計算し直して設定しなくてはならなくなる。しかも、再設定された信号ループは最小になるとは限らない。
【0017】
そこで、この発明はこのような従来の課題を解決したものであって、中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計する場合に、信号配線の直下または直上に電流帰還経路を設定できるようにすると共に、電磁放射ノイズを大幅に低減可能なプリント配線基板等を設計できるようにした多層配線基板の設計装置、その設計方法及び記録媒体を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上述した課題は、中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計する装置であって、多層配線基板を設計する表示画面を有して信号源と負荷回路とを描画する表示手段と、この表示手段に描画された信号源と負荷回路との間を接続する配線を指定する入力手段と、この入力手段により指定された配線を表示手段に描画された多層配線基板の電源層又は/及び接地層に投影処理し、電源層又は/及び接地層に投影された特定領域を負荷回路から信号源への電流帰還経路とする設定処理をし、電流帰還経路を配線禁止領域とする処理をする制御手段とを備えることを特徴とする多層配線基板の設計装置によって解決される。
【0019】
本発明に係る多層配線基板の設計装置によれば、中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計する場合に、表示手段の表示画面には信号源と負荷回路とが描画される。この表示手段に描画された信号源と負荷回路との間を接続するために入力手段を使用して配線を指定するようになされる。制御手段では、この入力手段により指定された配線が、表示手段に描画された多層配線基板の電源層又は/及び接地層に投影処理される。そして、制御手段では、この電源層又は/及び接地層に投影された特定領域が、負荷回路から信号源への電流帰還経路とするように設定され、この電流帰還経路を配線禁止領域とする処理がなされる。
【0020】
従って、信号配線の直下または直上に電流帰還経路を設定すること、及び、信号配線と電流帰還経路とを最短層間距離を維持して配線することができる。しかも、信号源から負荷回路に至る往路及び、負荷回路から信号源に戻る復路である信号ループを最小とすることができ、電磁放射を最小にすることができる。これにより、電磁放射ノイズを大幅に低減可能な多層配線基板を設計することができる。また、当該電流帰還経路が設定された配線禁止領域では、以後の信号層の設計等において、他の信号層の配置を排他処理できるので、他の負荷回路と信号源とを接続する信号層に対応した電流帰還経路の横切り等を防止できるようになる。
【0021】
本発明に係る多層配線基板の設計方法は、中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計する方法であって、多層配線基板を設計する表示画面に信号源と負荷回路とを描画し、表示画面に描画された信号源と負荷回路との間を接続する配線を指定し、ここで指定された配線を表示画面に描画される多層配線基板の電源層又は/及び接地層に投影し、ここで投影された電源層又は/及び接地層の特定領域を負荷回路から信号源への電流帰還経路に設定し、ここで設定された電流帰還経路を配線禁止領域に指定することを特徴とするものである。
【0022】
本発明に係る多層配線基板の設計方法によれば、中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計する際に、信号配線の直下または直上に電流帰還経路を設定すること、及び、信号配線と電流帰還経路とを最短層間距離を維持して配線することができる。
【0023】
しかも、信号ループを最小とすることができ、電磁放射を最小にすることができる。これにより、電磁放射ノイズを大幅に低減可能な多層配線基板を設計することができる。また、実際に試作用の多層配線基板を作製しなくても、EMC(Electro−Magnetic Compatibility;電磁気的両立性)品質の高いプリント配線基板等の設計を行うことができるので、作製時間や作製費用等を削減することができる。
【0024】
本発明に係る記録媒体は、中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計するプログラムを記憶した媒体であって、多層配線基板を設計する表示画面に信号源と負荷回路とを描画し、表示画面に描画された信号源と負荷回路との間を接続する配線を指定し、ここで指定された配線を表示画面に描画される多層配線基板の電源層又は/及び接地層に投影し、ここに投影された電源層又は/及び接地層の特定領域を負荷回路から信号源への電流帰還経路に設定し、ここで設定された電流帰還経路を配線禁止領域に指定するためのプログラムを記憶して成ることを特徴とするものである。
【0025】
本発明に係る記録媒体によれば、中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計する場合に、当該記録媒体を使用することで、熟練していない設計者でも、EMC品質の高いプリント配線基板等の設計を行うことができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
続いて、この発明に係る多層配線基板の設計装置、その設計方法及び記録媒体の一実施の形態について、図面を参照しながら説明をする。
この実施形態では、中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計する場合に、信号層で指定された配線を表示画面に描画された多層配線基板の電源層又は/及び接地層に投影し、この電源層又は/及び接地層に投影された特定領域を負荷回路から信号源への電流帰還経路と設定し、この電流帰還経路を配線禁止領域に指定して、信号層の配線の直下または直上に電流帰還経路を設定できるようにすると共に、電磁放射ノイズを大幅に低減可能な多層配線基板を設計できるようにしたものである。
【0027】
図1は本発明に係る実施形態としてのCAD設計装置によって設計される4層配線基板50の構造例を示す斜視図である。図1に示す4層配線基板50は多層配線基板の一例であり、携帯電話機や、ノート型のパーソナルコンピュータ(以下パソコンという)、各種ゲーム機、携帯端末装置等あるいは、デスクトップ型のパソコンに適用して極めて好適である。多層配線基板は高密度配線が可能で電子機器の小型化が図れる。
【0028】
この例では4層配線基板50は信号層51、電源層52、接地層53及び信号層54を有している。4層配線基板50上には信号源の一例となる送信用IC11が実装され、同基板面上に負荷回路の一例となる受信用IC12が実装される。送信用IC11は出力端子13及び入力端子14に接続され、受信用IC12は入力端子15及び出力端子16に接続される。
【0029】
この出力端子13、16及び入力端子14、15は共に信号層51に形成される。この例では出力端子13、16及び入力端子14、15のいずれも送信用IC11や受信用IC12に対して、説明を簡略化するために1つを実装する場合を示している。もちろん、出力端子13、16及び入力端子14,15は1つに限られることはなく、2以上複数の入力・出力端子や電源供給部品が設けられる。これらの端子や部品をレイアウトして多層配線基板が設計される。この例で入力端子14は接地層53に接続され、出力端子16は接地層53に各々の接続される。
【0030】
この出力端子13と入力端子15との間は信号層51を成す信号配線(プリント配線パターン)55により接続され、動作周波数の高い、例えば、数MHz〜数十GHz単位の動作信号を伝送するようになされる。この例では信号層51の直下または直上に電流帰還経路(以下リターン電流パス59という)が設定され、電磁放射ノイズを大幅に低減可能とする4層配線基板50が設計される(図2参照)。なお、4層配線基板50の設計例に関しては、図1中で一点鎖線で囲んだ領域(以下CAD設計領域Iという)について、以下に説明をする。
【0031】
図2は4層配線基板50の内部構造例を示す斜視図である。図2に示す4層配線基板50は上部に信号層51、中間層に電源層52、接地層53及び、下部に信号層54を有しており、4層を成している。各々層間は図示しないプリプレグ樹脂等の絶縁物(誘電体)により絶縁されている。4層配線基板50の上部の信号層51には図中四角印に示す出力端子13及び入力端子14を成すパッド電極が設けられる。
【0032】
この4層配線基板50の信号層51、電源層52及び接地層53には丸印で示すコンタクトホール(開口部)17及び18が設けられ、電源層52、接地層53との絶縁を保持して貫通し、上部及び下部間の信号層51及び54を接続する際に使用される。もちろん、コンタクトホール17、18を使用して電源層52に電源線を接続し、接地層53に接地線を接続するようにしてもよい。送信用IC11や受信用IC12へ電源を供給するためである。
【0033】
この例で信号層51の下部には電源層52が設けられ、この電源層52にはスリット58が設けられる。これは、1つの電源層52に複数種類の電源を適用する場合に、各電源のパターン領域間を電気的に絶縁するためである。このパターン境界位置にスリット58が形成される。この実施形態ではこのスリット58を電源間スリットとも呼ぶ。広くは異なる種類の電源領域が隣接する場合の境界線を指すものである。多層配線基板設計時には自由に変更可能なものである。
【0034】
電源層52の下部には接地層53が設けられ、この接地層53には図中波線に示すリターン電流パス59が設定される。リターン電流パス59は送信用IC11の出力端子13と受信用IC12の入力端子15との間の信号層51を成す信号配線55の直下の位置に設定される。送信用IC11から受信用IC12に至る往路及び、受信用IC12から送信用IC11に戻る復路である信号(電流)ループを最小とするためである。接地層53の下部には信号層54が設けられる。この信号層54には、図示せずも、上部の信号層51と同様な出力端子13及び入力端子14を成すパッド電極や、コンタクトホール(開口部)17、18が設けられる。これらにより、多層配線基板の一例となる4層配線基板50を構成する。
【0035】
図3はCAD設計装置100の内部構成例を示すブロック図である。図3に示すCAD設計装置100は多層配線基板を設計する装置の一例であり、中間層に電源層52及び接地層53を有する2層以上のプリント配線基板等を設計する装置である。CAD設計装置100には汎用のコンピュータが使用され、従来方式のレイアウトCADシステムに本発明方式に係る付属モジュールを組み込んだものである。CAD設計装置100ではCADプログラムに基づいて多層配線基板が設計され、この設計により得られたデータは実際に多層配線基板を製造する際の製造データとして使用される。
【0036】
このCAD設計装置100はモニタ21、入力ツール22及び制御手段23を有している。モニタ21は表示手段の一例であり、このモニタ21には液晶表示ディスプレイや、CRT、PDP表示装置が使用される。モニタ21は4層配線基板50等を設計する際に、送信用IC11や、受信用IC12、入力・出力端子等を表示画面に描画するようになされる。
【0037】
制御手段23はシステムバス31を有しており、このシステムバス31には、例えば、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)33、HDD(Hard Disc Driver)34、I/O(Input/Output)インタフェース35、CPU(Central Processing Unit;中央処理ユニット)36及び、自動配線エディタ37が接続されている。システムバス31に接続された入力ツール(入力手段)22は、モニタ21に描画された信号層51で送信用IC11と受信用IC12との間を接続する信号配線55を指定するように操作される。入力ツール22にはキーボード24やマウス25等が使用される。
【0038】
このシステムバス31には記録媒体の一例となるROM32が接続され、4層配線基板50を設計する際のプログラムが記憶される。ROM32には、例えば、4層配線基板50を設計する表示画面に送信用IC11と受信用IC12とを描画し、表示画面に描画された信号層51で送信用IC11と受信用IC12との間を接続する信号配線55を指定し、この表示画面に描画される4層配線基板50の電源層52及び接地層53に、信号層51で指定された信号配線55を投影し、ここに投影された電源層52及び接地層53の特定領域を受信用IC12から送信用IC11へのリターン電流パス59に設定し、ここで設定されたリターン電流パス59を配線禁止領域に指定するためのCAD設計プログラムが格納される。この記録媒体は制御手段23と共に付属モジュールを構成する。
【0039】
もちろん、ROM32には当該CAD設計装置全体を制御するためのシステムプログラムが格納される。記録媒体にはROMやEEPROM等の半導体メモリの他に、CD−ROM、磁気ディスク等が使用される。このCAD設計装置100によれば、4層配線基板50を設計する場合に、当該ROM32に基づくCAD設計プログラムを使用することで、熟練していない設計者でも、EMC品質の高い4層構造のプリント配線基板等の設計を行うことができる。
【0040】
RAM33はワークメモリとして使用され、例えば、制御コマンド等を一時記憶するようになされる。CPU36は電源がオンされると、ROM32からシステムプログラムを読み出してシステムを起動し、入力ツール22からの操作データに基づいて当該CAD設計装置全体を制御するようになされる。
【0041】
I/Oインタフェース35には外部のデータベースが接続され、4層配線基板50の設計に必要なデータ(以下CADデータという)が格納される。I/Oインタフェース35にはシステムバス31を通じてHDD(ハードディスク装置)34が接続され、データベースから読み出したCADデータ等が格納され、このCAD設計時において必要なデータをCADデータから抽出するようになされる。HDD34にはスリット58や、IC、端子等を配置するためのレイアウトエディタや、各々の端子間を自動配線する自動配線エディタ37、設計ルールを表示するルールエディタを構成する機能プログラムも格納されている。
【0042】
CPU36では入力ツール22により信号層51で指定された信号配線55をモニタ21に描画された4層配線基板50の電源層52又は/及び接地層53に投影処理し、電源層52又は/及び接地層53に投影された特定領域を受信用IC12から送信用IC11へのリターン電流パス59とする設定処理をし、このリターン電流パス59を配線禁止領域とする処理をする。例えば、信号層51に流れる電流のリターン電流を流す接地層53をリターン電流層としたとき、CPU36は信号層51で信号配線55が指定されると同時に、リターン電流層にリターン電流パス59を描画するようにモニタ21を表示制御する。
【0043】
この例で4層配線基板50の中間層に1種類以上の電源層52を設ける場合であって、この電源層52の平面形状を設計するプレーン処理をする際に、CPU36はリターン電流パス59を含むように当該電源層52の平面形状を指定するようにモニタ21を制御する。例えば、4層配線基板50の中間層に2種類の電源層52を設ける場合であって、この電源層52を2つに分割してスリット58を設けるプレーン処理をする際に、CPU36はリターン電流パス59を除く領域にスリット58を指定するように制御する。このようにすると、リターン電流パス59を分断しないようにプレーン処理することができる。電源層52にスリット58を設けることで、基板実装後の実動作時には、スリット58により画定された電源層52に、3.3V電圧や、5V電圧といった異種電源を供給するようになされる。
【0044】
自動配線エディタ37は、配線経路の位置及び電源間のスリット位置を検出したり、その検出結果に基づいて配線経路とスリット58との重なりを判断したり、この判断結果により配線経路とスリット58の重なりを避けるように配線経路、信号配線55、電源間のスリット58等の設計データを変更して自動配線するように機能するものである。
【0045】
図4はモニタ21における実装設計表示画面P1の表示例を示すイメージ図である。図4に示すモニタ21の表示例によれば、実装設計表示画面P1が表示される。実装設計表示画面P1には、4層配線基板50の信号層51(半田付け面)のレイアウトパターンが表示される。この実装設計表示画面P1はレイアウトエディタを選択することにより表示される。実装設計表示画面P1には「配置配線ルール登録ツールを開始します」のメッセージや、レイアウトパターンの他に、「ファイル」、「編集」、「表示」、「作図」、「設定」、「ツール」、「配線」、「修正」、「部品移動」、「自動配線」及び「ヘルプ」の機能選択スイッチタグが設けられる。
【0046】
例えば、「ファイル」を選択して「ルールエディタ」をマウス25でクリックすると、表示画面中の一部領域に重ねて「ルールエディタ」を表示するようになされる。「ルールエディタ」には、「部品実装面制限」、「部品配置角度制限」、「部品クリアランス制限」、「ネット毎クリアランス定義」、「配線長制限」、「平行配線長制限」、「等長ペア配線制限」、「同層分岐制限」、「スタブ長制限」、「使用パターン幅制限」、「パッドスタック制限」、「ネット毎層定義」・・・が表示される。
【0047】
この例で「ルールエディタ」の表示画面中で「使用パターン幅制限」をマウス25でクリックすると、表示画面中の一部領域に重ねて「使用パターン幅制限」を表示するようになされる。「使用パターン幅制限」にはネット名と共に、層名及び配線幅の値が表示される。この例ではCPU36によって、送信用IC11、受信用IC12及び信号層51を指定するレイアウト設計を行うと同時にルールチェック及びシミュレーションが行われる。このルールチェックやシミュレーションを行うことで、従来方式に比べて修正に時間がかからなくなる。
【0048】
図5はモニタ21における自動配線表示画面P2の表示例を示すイメージ図である。図5に示すモニタ21の表示例によれば、図4に示した機能選択スイッチタグで「自動配線」をマウス25でクリックすると、自動配線エディタ37が起動され、図5に示す自動配線表示画面P2が表示される。この例では送信用IC11と受信用IC12との間を自動配線機能により接続するようになされる。
【0049】
自動配線表示画面P2は例えば、上下2つの表示領域に分割される。上部の表示領域には送信用IC11や受信用IC12が表示され、これらのICの複数の入力端子及び出力端子が表示され、これらの入力端子及び出力端子の間が自動配線される。下部の表示領域にはネットリストが表示される。自動配線エディタ37ではネットリストに基づいて各々の端子間を自動配線するようになされる。信号層51で端子間を接続する信号配線55は、予め定められた設計ルール(配線規則)に従って配線設計がなされる。例えば、信号層51上で水平方向に延在する信号配線と垂直方向に延在する信号配線とを組合せて形成される。
【0050】
続いて、本発明に係る4層配線基板50の設計方法について説明をする。図6及び図7は4層配線基板50の設計例(その1及び2)を示す工程図である。
この実施形態では中間層に電源層52及び接地層53を有する4層配線基板50を設計する場合を前提とする。この例では、4層配線基板50の設計例に関しては、図1中で一点鎖線で囲んだCAD設計領域Iを抽出して説明をする。
【0051】
図6Aにおいて、まず、CAD設計しようとする4層配線基板50のCAD設計領域Iをモニタ21に描画する。CAD設計領域Iにはこの時点で従来方式のように電源間を分割するスリットが指定されていない。先にスリット58を指定してしまうと、送信用IC11や受信用IC12の配線後に、スリット位置を修正する場合が発生するからである。
【0052】
また、図6Bに示すCAD設計領域Iに送信用IC11や受信用IC12等をレイアウトすると共に、出力端子13、16及び入力端子14、15、コンタクトホール17、18を配置する。この例では送信用IC11がCAD設計領域Iの上部にかかるように配置され、出力端子13及び入力端子14は当該領域内に配置される。受信用IC12、入力端子15及び出力端子16はCAD設計領域Iの下部外に各々配置される。コンタクトホール17は入力端子14の下部に配置される。コンタクトホール18はCAD設計領域内の所定の位置に配置される。各々のコンタクトホール17、18は、リターン電流パス形成用の接地層53に接続するために配置される。
【0053】
送信用IC11の出力端子13は信号電流の送信点であり、入力端子14は信号電流の帰路入力点である。受信用IC12の入力端子15は信号電流の受信点であり、出力端子16は信号電流の帰路出力点である。これらの電子部品はレイアウトエディタにより配置される。
【0054】
そして、図7Aに示すCAD設計領域Iにレイアウトされた送信用IC11と受信用IC12との間の接続を指定すると、これらの端子間が自動配線される。この例では送信用IC11の出力端子13と受信用IC12の入力端子15の配置位置が垂直方向を基準にして水平方向にずれた位置にレイアウトされている。これは他の電子部品を迂回する場合において、配線間隔を保持する必要性から生ずる。
【0055】
従って、出力端子13と入力端子15との間を接続する信号配線55は、図7Aの実線に示すように「く」の字状に折れ曲がった状態で信号層51に配線される。このとき、信号層51上でコンタクトホール17と入力端子14との間が信号配線56により接続され、出力端子16とコンタクトホール18とが信号配線57により配線される。
【0056】
この例では、表示画面に描画される4層配線基板50の接地層53に、信号層51上で指定された信号配線55が投影される。ここで投影された接地層53の特定領域は、受信用IC12から送信用IC11へのリターン電流パス59に設定される。つまり、接地層53には図中波線に示すリターン電流パス59が設定される。
【0057】
この信号層51上の信号配線55を接地層53に投影するようにしたのは、信号層51上の出力端子13と入力端子15との間の信号配線55の直下の位置にリターン電流パス59を設定できるからであり、送信用IC11から受信用IC12に至る往路及び、受信用IC12から送信用IC11に戻る復路である信号ループを最小とするためである。信号ループを最小とすることで電磁放射ノイズを大幅に低減できるようになる。
【0058】
ここで設定されたリターン電流パス59は配線禁止領域に指定される。これは、リターン電流パス59が設定された配線禁止領域では、以後の信号層51の設計等において、他の信号層51上での信号配線の配置を排他処理することができ、他の受信用ICと送信用ICとを接続する信号配線55に対応したリターン電流パス59の横切り等を防止できるようにしたためである。
【0059】
図8はCAD設計装置100における4層配線基板設計時の処理例を示すフローチャートである。この実施形態では中間層に電源層52及び接地層53を有する4層配線基板50を設計する場合を前提とする。この例では、4層配線基板50の中間層に二種類の電源層52を設ける場合であって、電源層52の平面形状を設計するプレーン処理を含めてCAD設計する場合を想定する。この4層配線基板50の設計例に関しては、図6及び図7を参照しながら説明をする。
【0060】
これらをCAD設計条件にして、図8に示すフローチャートのステップA1で初期設定処理をする。この初期設定処理では、図3に示したHDD34から、信号配線名、IC名、電源供給部品名、電源種類等の4層配線基板50の設計に用いられる各種データが読み出され、CAD設計条件が設定される。信号配線名は例えば、送信用IC11の出力端子13と受信用IC12の入力端子15の間を結ぶ、信号線の名前等をいい、信号配線55等がプリント配線基板の設計に応じて複数ある場合には複数の信号配線名が予め準備される。
【0061】
IC名は図1に示した送信用IC11や受信用IC12に付した名称等であり、4層配線基板50の設計回路に応じて名称の数は複数個存在する。電源供給部品名は電源端子電極などであり、必要に応じて何個有っても良い。電源種類は電源層52を分割する電源プレーンの種類を示すもので、例えば、5Vプレーン、3.3Vプレーンなどが対象となり、CAD設計上の必要に応じて何種類有っても良い。CAD設計時に必要なデータは、HDD34からCADデータとして読み出される。このCADデータから4層配線基板50の設計に関連する必要なデータが抽出される。
【0062】
そして、ステップA2に移行して4層配線基板50を設計する表示画面に送信用IC11や受信用IC12等のレイアウト部品を描画する。このとき、モニタ21の表示画面には図6Bに示したように送信用IC11、受信用IC12、出力端子13、16入力端子14、15及びコンタクトホール17、18がCADデータに基づいて描画される。また、このとき、設計者は入力ツール22を使用して図6Aに示したようなCAD設計領域Iをモニタ21に表示し、このCAD設計毎に信号層51とリターン電流層とを指定しCAD設計準備をする。ここにリターン電流層とは、信号層51上の信号配線55に流れる電流に対してその帰路におけるリターン電流を流す層をいう。
【0063】
このリターン電流層は層間絶縁物等の誘電体を挟んで上層または下層となる位置に指定されることが望ましい。信号層51が誘電体の上層に位置する場合は、リターン電流層が下層に位置し、反対に信号層51が誘電体の下層に位置する場合は、リターン電流層が上層に位置するように指定するとよい。この例で、リターン電流層は、接地(グランド)層53又は電源層52であることが望ましい。ここで図示せずも、信号配線55が形成される信号層51とリターン電流層との間の距離を層間距離という。この例では、最短層間距離を維持して、信号層51条の信号配線55の直下の接地層53にリターン電流パスが設定される。
【0064】
この例では、ある信号層51上の信号配線55にとってリターン電流層として指定した中間層が、この信号層51上の別の信号配線であると指定することもできる。この場合、その信号配線に対するリターン電流層を更に多の中間層に指定するようになされる。
【0065】
そして、ステップA3で表示画面に描画された信号層51上で送信用IC11と受信用IC12との間を接続する信号配線を指定して配線する。このとき、設計者はモニタ21に描画された送信用IC11と受信用IC12との間を接続するために入力ツール22を使用して信号層51に配線を引く(指定する)ようになされる。もちろん、自動配線エディタ37を使用してこの間を自動配線してもよい。これにより、モニタ21には図7Aの実線で示したような信号配線55が信号層51上に描画される。
【0066】
その後、ステップA4に移行して表示画面に描画される4層配線基板50の電源層52及び接地層53に、ステップA3で信号層51に指定された信号配線55を投影する。この信号配線55は4層配線基板50の厚み方向へ投影される。このとき、CPU36では、入力ツール22により信号層51に指定された信号配線55が、モニタ21に描画された4層配線基板50の電源層52及び接地層53に投影処理される。
【0067】
次のステップでリターン電流パス59を設定するためである。このリターン電流パス59は、投影幅をもつ太線であってもよいし、投影幅を持たない細線であってもよい。投影幅を持つ場合には、CAD設計条件として固定値を与えるか、または最小値を与えることができる。固定値の場合は、例えば、信号配線55の特性インピーダンスをある値に特定するような投影幅をCAD設計条件として与えることができ、信号配線55のインピーダンスを一定に保つことができるようになる。この信号配線55に関して配線幅よりも投影幅を大きくなるように投影した場合には、配線禁止領域を広く確保できるようになる。
【0068】
従って、ステップA4で投影された電源層52及び接地層53の特定領域をステップA5で受信用IC12から送信用IC11へのリターン電流パス59として設定する。このとき、CPU36では、電源層52及び接地層53に投影された特定領域が、図7Aに示した受信用IC12から送信用IC11へのリターン電流パス59とするように設定される。例えば、信号層51に流れる電流のリターン電流を流す接地層53をリターン電流層としたとき、信号層51で信号配線55を指定すると同時に、リターン電流層にリターン電流パス59が描画される。これと共に、リターン電流パス59を含むように当該電源層52の平面形状が指定される。
【0069】
ここで設定されたリターン電流パス59をステップA6で配線禁止領域とする処理がなされる。このリターン電流パス59を配線禁止領域に指定することで、以後の信号層51の設計等において、他の信号層51の配置を排他処理することができ、他の送信用ICと受信用IC等とを接続する信号層51に対応したリターン電流パス59の横切り等を防止できるようになる。
【0070】
そして、ステップA7で当該送信用IC11と受信用IC12との他の端子間を配線するか否かをチェックする。当該他の端子間を配線する場合はステップA3に戻って表示画面に描画された信号層51上で送信用IC11と受信用IC12との間を接続する信号配線を指定して配線する。このとき、配線描画(リターン電流層)及び、配線禁止領域を避けて配線を描画するようになされる。
【0071】
上述のステップA7で他の送受信用IC12等の端子間を全て配線した場合は、ステップA8に移行してプレーン処理を実行する。このプレーン処理では、リターン電流パス59を含むように電源層52の平面形状(プレーン)が描かれる。この信号層51の直下には必ずリターン電流層を成す接地層53のプレーンが存在する。この例では、図7Bに示すように電源層52の分割に関して、リターン電流パス59を除く領域にスリット58が指定される。このようにすると、リターン電流パス59を分断しないようにプレーン処理することができる。従って、配線の最適なリターン電流パス59が必ず確保されることになる。また、信号層51の配線自由度を高くすることができる。この例では、送信用IC11、受信用IC12及び信号層51を指定するレイアウト設計を行うと同時にルールチェック及びシミュレーションが行われる。このことで、従来例に比べて修正に時間がかからなくなる。
【0072】
そして、ステップA9に移行して当該4層配線基板50に関して全ての設計を済んだか否かをチェックする。4層配線基板50の設計が済んでいない場合は、ステップA2に戻って上述した処理を繰り返すようになされる。4層配線基板50の設計が全て済んだ場合は、CAD設計により得られたデータをHDD34や、外部のデータベースに格納してCAD設計処理を終了する。
【0073】
このように、本発明に係る実施形態としてのCAD設計装置及び多層配線基板の設計方法によれば、中間層に電源層52及び接地層53を有する4層配線基板50を設計する制御手段23を備え、この制御手段23は、信号層51上で指定された信号配線55を表示画面に描画された4層配線基板50の電源層52及び接地層53に投影処理し、この接地層53に投影された特定領域を受信用IC12から送信用IC11へのリターン電流パス59とする設定処理をすると共に、このリターン電流パス59を配線禁止領域とする処理をし、更に、電源層52に投影された領域にはスリット58が指定されないように処理するものである。
【0074】
従って、信号層51上の信号配線55の直下または直上にリターン電流パス59を設定すること、及び、信号層51上の信号配線55とリターン電流パス59とを最短層間距離を維持して配線することができる。しかも、送信用IC11から受信用IC12に至る往路及び、受信用IC12から送信用IC11に戻る復路である信号ループを最小とすることができ、電磁放射を最小にすることができる。これにより、電磁放射ノイズを大幅に低減可能な4層配線基板50を設計することができる。
【0075】
また、当該リターン電流パス59が設定された配線禁止領域では、以後の信号層51上の信号配線の設計等において、信号層51上の他の信号配線の配置を排他処理できるので、他の受信用ICと送信用ICとを接続する信号配線に対応したリターン電流パスの横切り等を防止できるようになる。更にまた、実際に試作用の4層配線基板50を作製しなくても、誰でも簡単に、EMC品質の高いプリント配線基板等の設計を行うことができるので、作製時間や作製費用等を削減することができる。
【0076】
この実施形態では送信用IC11と受信用IC12とを接続する信号配線55に関してリターン電流パス59を必要とする場合について説明したが、これに限られることはなく、信号層51毎にリターン電流パス59を必要とするか否かを選択してもよい。例えば、動作周波数が低い信号配線55を取り扱う場合は、リターン電流パス59を設定する必要性が低いので、ステップA4における信号層51の投影処理を省略するようにしてもよい。これにより、リターン電流層の配線自由度が高くなって、誰でも簡単に、EMC品質の高いプリント配線基板等を設計できるようになる。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るプリント配線基板の設計装置によれば、中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計制御する制御手段を備え、この制御手段は、指定された信号層を表示画面に描画された多層配線基板の電源層及び接地層に投影処理し、この電源層及び接地層に投影された特定領域を負荷回路から信号源への電流帰還経路とする設定処理をし、この電流帰還経路を配線禁止領域とする処理をするものである。
【0078】
この構成によって、信号層の直下または直上に電流帰還経路を設定すること、及び、信号層と電流帰還経路とを最短層間距離を維持して配線することができる。従って、信号ループを最小とすることができ、電磁放射を最小にすることができる。これにより、電磁放射ノイズを大幅に低減可能な多層配線基板を設計することができる。しかも、当該電流帰還経路が設定された配線禁止領域では、以後の信号層の設計等において、他の信号層の配置を排他処理できるので、他の負荷回路と信号源とを接続する信号層に対応した電流帰還経路の横切り等を防止できるようになる。実際に試作用の多層配線基板を作製しなくても、EMC品質の高いプリント配線基板等の設計を行うことができるので、作製時間や作製費用等を削減することができる。
【0079】
本発明に係る記録媒体によれば、多層配線基板を設計する表示画面に信号源と負荷回路とを描画し、この表示画面に描画された信号源と負荷回路との間を接続する信号層を指定し、ここで指定される信号層を表示画面に描画される多層配線基板の電源層及び接地層に投影し、ここで投影された電源層及び接地層の特定領域を負荷回路から信号源への電流帰還経路に設定し、ここで設定された電流帰還経路を配線禁止領域に指定するためのプログラムを記憶して成るものである。
【0080】
この構成によって、中間層に電源層及び接地層を有する多層配線構造の多層配線基板を設計する場合に、当該記録媒体を使用することで、熟練していない設計者でも、EMC品質の高いプリント配線基板等の設計を行うことができる。
【0081】
この発明は電磁放射ノイズを大幅に低減可能な多層配線構造のプリント配線基板を設計するCAD設計装置等に適用して極めて好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る実施形態としてのCAD設計装置によって設計される多層配線基板の構造例を示す斜視図である。
【図2】4層配線基板50の内部構造例を示す斜視図である。
【図3】CAD設計装置100の内部構成例を示すブロック図である。
【図4】モニタ21における実装設計表示画面P1の表示例を示すイメージ図である。
【図5】モニタ21における自動配線表示画面P2の表示例を示すイメージ図である。
【図6】A及びBは4層配線基板50の設計例(その1)を示す工程図である。
【図7】A及びBは4層配線基板50の設計例(その2)を示す工程図である。
【図8】CAD設計装置100における4層配線基板設計時の処理例を示すフローチャートである。
【図9】A及びBは従来例に係るCAD設計装置10の構成例及びその処理例を示す図である。
【図10】A及びBはその4層配線基板50’の設計例を示す工程図である。
【図11】その問題点を説明する修正例を示す図である。
【符号の説明】
11・・・送信用IC(信号源)、12・・・受信用IC(負荷回路)、21・・・モニタ、22・・・入力ツール(入力手段)、23・・・制御手段、32・・・ROM(記録媒体)、50,50’・・・4層配線基板(多層配線基板)、51,54・・・信号層、52・・・電源層、53・・・接地層、55・・・信号配線、58・・・スリット、59・・・リターン電流パス(電流帰還経路)、100・・・CAD設計装置(多層配線基板の設計装置)
Claims (12)
- 中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計する装置であって、
前記多層配線基板を設計する表示画面を有して信号源と負荷回路とを描画する表示手段と、
前記表示手段に描画された信号源と負荷回路との間を接続する配線を指定する入力手段と、
前記入力手段により指定された前記配線を前記表示手段に描画された多層配線基板の電源層又は/及び接地層に投影処理し、前記電源層又は/及び接地層に投影された特定領域を前記負荷回路から信号源への電流帰還経路とする設定処理をし、前記電流帰還経路を配線禁止領域とする処理をする制御手段とを備えることを特徴とする多層配線基板の設計装置。 - 前記配線に流れる電流のリターン電流を流す電源層又は接地層をリターン電流層としたとき、
前記制御手段は、
前記配線が指定されると同時に、前記リターン電流層に電流帰還経路を描画するように制御することを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板の設計装置。 - 前記多層配線基板の中間層に一種類の電源層を設ける場合であって、
前記電源層の平面形状を設計するプレーン処理をする際に、
前記制御手段は、
前記電流帰還経路を含むように当該電源層の平面形状を指定するように制御することを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板の設計装置。 - 前記多層配線基板の中間層に複数種類の電源層を設ける場合であって、
前記電源層を分割してスリットを設けるプレーン処理をする際に、
前記制御手段は、
前記電流帰還経路を除く領域に前記スリットを指定するように制御することを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板の設計装置。 - 前記制御手段は、
前記信号源、負荷回路及び配線を指定するレイアウト設計を行うと同時にルールチェック及びシミュレーションを行うことを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板の設計装置。 - 前記信号源と負荷回路との間を接続する自動配線機能を備えることを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板の設計装置。
- 中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計する方法であって、
前記多層配線基板を設計する表示画面に信号源と負荷回路とを描画し、
前記表示画面に描画された信号源と負荷回路との間を接続する配線を指定し、
指定された前記配線を前記表示画面に描画される多層配線基板の電源層又は/及び接地層に投影し、
投影された前記電源層又は/及び接地層の特定領域を前記負荷回路から信号源への電流帰還経路に設定し、
設定された前記電流帰還経路を配線禁止領域に指定することを特徴とする多層配線基板の設計方法。 - 前記信号源、負荷回路及び配線を指定するレイアウト設計を行うと同時にルールチェック及びシミュレーションを行うことを特徴とする請求項7に記載の多層配線基板の設計方法。
- 前記配線に流れる電流のリターン電流を流す電源層又は接地層をリターン電流層としたとき、
前記配線を指定すると同時に、前記リターン電流層に電流帰還経路を描画することを特徴とする請求項7に記載の多層配線基板の設計方法。 - 前記多層配線基板の中間層に一種類の電源層を設ける場合であって、
前記電源層の平面形状を設計するプレーン処理をする際に、
前記電流帰還経路を含むように当該電源層の平面形状を指定することを特徴とする請求項7に記載の多層配線基板の設計方法。 - 前記多層配線基板の中間層に複数種類の電源層を設ける場合であって、
前記電源層を分割してスリットを設けるプレーン処理をする際に、
前記電流帰還経路を除く領域に前記スリットを指定することを特徴とする請求項7に記載の多層配線基板の設計方法。 - 中間層に電源層及び接地層を有する多層配線基板を設計するプログラムを記憶した媒体であって、
前記多層配線基板を設計する表示画面に信号源と負荷回路とを描画し、
前記表示画面に描画された信号源と負荷回路との間を接続する配線を指定し、
指定された前記配線を前記表示画面に描画される多層配線基板の電源層又は/及び接地層に投影し、
投影された前記電源層又は/及び接地層の特定領域を前記負荷回路から信号源への電流帰還経路に設定し、
設定された前記電流帰還経路を配線禁止領域に指定するためのプログラムを記憶して成ることを特徴とする記録媒体。
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