JP2010209221A - 吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体とその製造方法 - Google Patents

吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】型内発泡成形において優れた熱融着性を発揮し、かつ空隙部分を多数有して吸音性に優れた吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の提供。
【解決手段】プロピレン系樹脂100質量部に対して、ポリスチレン系樹脂を100質量部以上400質量部未満含有する改質ポリスチレン系樹脂粒子に、炭化水素系発泡剤を含浸させた上で予備発泡させ、該予備発泡粒子に残存する発泡剤を強制的に減少させて、残存発泡剤量が0.0〜3.0質量%である発泡剤除去発泡粒子とし、次いで該発泡剤除去発泡粒子を型内発泡成形を行って、(a)密度が0.0166〜0.20g/cmの範囲、(b)空隙率が10〜30%の範囲、(c)曲げの破断点変位量が10mm以上、(d)吸音率が0.5以上、の各条件を満たす吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を得る製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、吸音の性能を有する改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体に関する。本発明の吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体は、自動車部材、建築材料等に利用される。
従来から発泡体は、該発泡体に空隙部を形成して吸音材として用いられる。このような空隙を有する改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体としては、特許文献1に、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂発泡体小片同士を加熱発泡させて熱融着させてなり、小片間に10〜40%の空隙を有するスチレン改質ポリオレフィン系樹脂発泡成形体が開示されている。
しかしながら、発泡成形体に空隙率を10〜40%形成させるためには、成形時の予備発泡粒子の二次発泡を抑える必要があり、成形時の蒸気温度を下げるか、もしくは、加熱時間を短くする必要がある。その結果、発泡体小片の発泡圧が低下し、発泡体小片同士の熱融着が低下し、得られる発泡成形体の機械的強度が低くなりやすいといった問題点を有していた。
また、特許文献2には、ATR法赤外分光分析により測定された粒子表面の赤外線吸収スペクトルから得られる698cm−1及び1376cm−1での吸光度比が0.1〜2.5の範囲であり、ポリオレフィン樹脂成分100質量部に対して、スチレン系樹脂成分を100〜400質量部含有するスチレン改質ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を発泡成形することにより得られ、5〜50%の空隙率を有する発泡成形体が提案されている。
しかしながら、この発泡体も特許文献1の発泡成形体と同様に、予備発泡粒同士の熱融着性が低く、得られる発泡成形体は機械的強度が低くなり易いといった問題点を有していた。
特開平7−80873号公報 特開2008−239793号公報
特許文献1,2に開示された従来方法で得られた吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体は、成形時に予備発泡粒子の二次発泡を抑制しつつ、発泡体小片同士の熱融着性を挙げることが難しく、十分な空隙部を有するものの、発泡成形体の機械的強度が低くなり易かった。
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、型内発泡成形において優れた熱融着性を発揮し、優れた機械的強度、特に、耐割れ性や耐衝撃性を有し、かつ空隙部分を多数有して吸音性に優れた吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の提供を目的とする。
前記目的を達成するため、本発明は、プロピレン−エチレン共重合体を含み融解開始温度が60〜100℃の範囲内であるプロピレン系樹脂100質量部に対して、ポリスチレン系樹脂を100質量部以上400質量部未満含有し、かつ、ATR法赤外分光分析により測定された粒子表面の赤外吸収スペクトルから得られる698cm−1における吸光度D698と1376cm−1における吸光度D1376との比(D698/D1376)が0.1〜2.5の範囲である改質ポリスチレン系樹脂粒子に、炭化水素系発泡剤を含浸させた上で予備発泡させて嵩密度が0.0166〜0.20g/cmの範囲である予備発泡粒子とし、該予備発泡粒子に残存する発泡剤を強制的に減少させて、残存発泡剤量が0.0〜3.0質量%である発泡剤除去発泡粒子とし、次いで該発泡剤除去発泡粒子を型内発泡成形を行って、
(a)密度が0.0166〜0.20g/cmの範囲、
(b)空隙率が10〜30%の範囲、
(c)JIS K7221−2:1999記載の方法に準じて測定した曲げの破断点変位量が10mm以上、
(d)ASTM E1050に準拠し、厚み30mmで垂直入射吸音率を測定したときに500Hz以上6000Hz以下の範囲における吸音率が0.5以上の部分が存在すること、
の各条件を満たす吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることを特徴とする吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法を提供する。
本発明の製造方法において、前記改質ポリスチレン系樹脂粒子は、
(A)分散剤を含む水性懸濁液中に、ポリプロピレン系樹脂粒子100質量部と、スチレン系単量体100質量部以上400質量部未満と、重合開始剤とを分散させる工程、
(B)得られた分散液を前記スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して前記スチレン系単量体を前記ポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させる工程、
(C)前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融点をT℃としたとき、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度で、前記スチレン系単量体の第1の重合を行う工程、
(D)前記第1の重合工程に続いて、スチレン系単量体と、重合開始剤とを加え、かつ、前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融点をT℃としたとき、(T−25)℃〜(T+10)℃の温度とすることにより、前記ポリプロピレン系樹脂粒子への前記スチレン系単量体の含浸および第2の重合を行う工程、を経て製造されることが好ましい。
本発明の製造方法において、炭化水素系発泡剤がプロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、シクロペンタンから成る群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
本発明の製造方法において、予備発泡粒子に残存する発泡剤を強制的に減少させる工程が、
(i)予備発泡粒子を通気性容器に入れ、50〜80℃の熱風通風乾燥を数時間〜数日間行う処理方法、
(ii)予備発泡粒子を通気性容器に入れ、常温下、残存する発泡剤量が0.0〜3.0質量%となるまで静置する処理方法、のうちの一方であることが好ましい。
本発明の製造方法において、発泡剤除去発泡粒子の残存発泡剤量を0.0〜3.0質量%の範囲とすることが好ましい。
また本発明は、前述した本発明に係る吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法により得られた吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を提供する。
本発明の吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体は、JIS K6767:1999KのB法により測定された80℃での加熱寸法変化率が1.5%未満であることが好ましい。
本発明によれば、型内発泡成形において優れた熱融着性を発揮し、優れた機械的強度、特に、耐割れ性や耐衝撃性を有し、かつ空隙部分を多数有する発泡成形体を得ることができる吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を提供できる。
さらに、得られた発泡成形体は、残存する発泡剤ガス量が少ないため、燃焼性が低く、3次発泡しにくい発泡成形体であり、また高温で長時間加熱して成形することから、ポリプロピレン核の結晶性が高くなりやすく、耐熱収縮性に優れた吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を提供できる。
本発明の吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法は、プロピレン−エチレン共重合体を含み融解開始温度が60〜100℃の範囲内であるプロピレン系樹脂100質量部に対して、ポリスチレン系樹脂を100質量部以上400質量部未満含有し、かつ、ATR法赤外分光分析により測定された粒子表面の赤外吸収スペクトルから得られる698cm−1における吸光度D698と1376cm−1における吸光度D1376との比(D698/D1376)が0.1〜2.5の範囲である改質ポリスチレン系樹脂粒子に、炭化水素系発泡剤を含浸させた上で予備発泡させて嵩密度が0.0166〜0.20g/cmの範囲である予備発泡粒子とし、該予備発泡粒子に残存する発泡剤を強制的に減少させて、残存発泡剤量(以下、残ガス量と記す)が0.0〜3.0質量%である発泡剤除去発泡粒子とし、次いで該発泡剤除去発泡粒子を型内発泡成形を行って、
(a)密度が0.0166〜0.20g/cmの範囲、
(b)空隙率が10〜30%の範囲、
(c)JIS K7221−2:1999記載の方法に準じて測定した曲げの破断点変位量が10mm以上、
(d)ASTM E1050に準拠し、厚み30mmで垂直入射吸音率を測定したときに500Hz以上6000Hz以下の範囲における吸音率が0.5以上の部分が存在すること、
の各条件を満たす吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることを特徴とする。
本発明の製造方法において、特に注目すべき点は、予備発泡粒子の残ガス量を強制的に減じて、残ガス量が0.0〜3.0質量%の範囲の発泡剤除去発泡粒子を作製し、この発泡剤除去発泡粒子を型内発泡成形することで、JIS K7221−2:1999記載の方法に準じて測定した曲げの破断点変位量10mm以上を維持しつつ、10〜30%の空隙率を持った改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体が得られることである。
さらに、予備発泡粒子の残ガス量を少なくすることにより、型内発泡成形して得られた発泡成形体の残ガス量も少なくなるため、燃焼性が低く、3次発泡しにくい成形体になることもわかった。また、予備発泡粒子の残ガス量を少なくすることにより、型内発泡成形時の二次発泡性を抑えることができ、より高温で長時間加熱することから、ポリプロピレン核の結晶性が高くなって、得られた成形体の熱収縮が小さくなることもわかった。
本発明の吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の樹脂材料の1つであるポリプロピレン系樹脂は、プロピレン−エチレン共重合体を含み、DSC曲線において2つの吸熱ピークを持っており、融点のピーク以外に、融解開始温度が60〜100℃の範囲に吸熱ピークを持つことが好ましい。60〜100℃の範囲に吸熱ピークがあることにより、得られた発泡成形体の機械的強度(特に、曲げ強度及び曲げ破断点変位)が高くなり易い。一方60〜100℃の範囲に吸熱ピークがない場合には、得られた発泡成形体の機械的強度(特に、曲げ強度及び曲げ破断点変位)が低下してしまう。このプロピレン−エチレン共重合体は、エチレンとプロピレンの共重合体を主成分とするものであるが、エチレンまたはプロピレンと共重合し得る他の単量体を分子内に含有するものであってもよい。そのような単量体としては、α−オレフィン、環状オレフィン、ジエン系単量体から選択された一種または二種以上のものが挙げられる。
前記ポリプロピレン系樹脂には、必要に応じて、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤などの添加物が含まれていてもよい。
着色剤は、無機系の顔料であっても、有機系の顔料であってもよい。
無機系の顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄などのクロム酸塩、紺青などのフェロシアン化物、カドミウムイエロー、カドミウムレッドなどの硫化物、鉄黒、紅殻などの酸化物、群青などのケイ酸塩、酸化チタンなどが挙げられる。
また、有機系の顔料としては、例えば、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アゾレーキ、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの多環式顔料などが挙げられる。
本発明の吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体のもう1つの樹脂材料である、ポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレンなどのスチレン系単量体を重合させて得られる樹脂が挙げられる。さらに、ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体と、該スチレン系単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。他の単量体としては、ジビニルベンゼンのような多官能性単量体や、(メタ)アクリル酸ブチルのような構造中にベンゼン環を含まない(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが例示される。これら他の単量体は、実質的にポリスチレン系樹脂に対して5質量%を超えない範囲で使用してもよい。なお、本明細書では、スチレンおよびスチレンと共重合可能な単量体もスチレン系単量体と称している。
本発明の吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の樹脂組成は、前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、ポリスチレン系樹脂を100質量部以上400質量部未満の範囲である。ポリスチレン系樹脂成分が100質量部未満であるとポリプロピレン系樹脂成分が多くなり、かつ所定のゲル分率になると、請求項記載の発泡成形体が得られない。ポリスチレン系樹脂成分が400質量部を超えると、ポリスチレン系樹脂成分が多くなり、型内発泡成形時に二次発泡が生じ易くなり、空隙率が低く吸音性の低い発泡成形体しか得られなくなる。
本発明の製造方法において、改質ポリスチレン系樹脂粒子は、ATR法赤外分光分析により測定された粒子表面の赤外吸収スペクトルから得られる698cm−1における吸光度D698と1376cm−1における吸光度D1376との比(D698/D1376)が0.1〜2.5の範囲であり、0.2〜2.0の範囲がより好ましい。なお、粒子表面は、表面からの深さ数μm迄の領域を含む。
この吸光度比が2.5より高いと、樹脂粒子の表面におけるポリプロピレン系樹脂の比率が低下し、その結果、予備発泡し、成形して得られた発泡成形体の耐薬品性、及び耐衝撃性が低下するので好ましくない。また、吸光度比が0.1より低いと、予備発泡粒子の表面からの発泡剤の逸散が顕著になることにより、型内発泡成形において収縮等による発泡成形体の外観の仕上がり状態が悪くなるので、好ましくない。
ここで、本発明におけるATR(Attenuated Total Reflectance)法赤外分光分析とは、全反射吸収(Attenuated Total Reflectance)を利用する一回反射型ATR法により赤外吸収スペクトルを測定する分析方法である。この分析方法は、高い屈折率を持つATRプリズムを試料に密着させ、ATRプリズムを通して赤外線を試料に照射し、ATRプリズムからの反射光を分光分析する方法である。
ATR法赤外分光分析は、試料とATRプリズムとを密着させるだけでスペクトルを測定できるという簡便さ、深さ数μmまでの表面分析が可能であるなどの理由で高分子材料などの有機物をはじめ、種々の物質の表面分析に広く利用されている。
なお、赤外吸収スペクトルから得られる698cm−1における吸光度D698は、ポリスチレン系樹脂に主に含まれるベンゼン環の面外変角振動に由来する698cm−1付近に現われるピークの高さをいう。
また、赤外吸収スペクトルから得られる1376cm−1における吸光度D1376は、ポリプロピレン系樹脂に含まれる−C−CH炭化水素のCHの対称変角振動に由来する1376cm−1付近に現われるピークの高さをいう。
吸光度比からポリスチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂の組成割合を求める方法としては、ポリスチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂とを所定の組成割合に均一に混合してなる複数種類の標準試料を作製し、各標準試料についてATR法赤外分光分析により粒子表面分析を行なって赤外線吸収スペクトルを得る。得られた赤外吸収スペクトルのそれぞれから吸光度比を算出する。そして、縦軸に組成割合(標準試料中のポリスチレン系樹脂比率(質量%))を、横軸に吸光度比(D698/D1376)をとることで、検量線を描く。この検量線に基づいて、改質ポリスチレン系樹脂粒子の吸光度比から、改質ポリスチレン系樹脂粒子におけるポリスチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂の組成割合を求めることができる。
なお、前記検量線の作成に関しては、特許文献2(特開2008−239793号公報)の段落[0040]〜[0043]及び図1にも記載されている通り、従来周知である。
また、前記改質ポリスチレン系樹脂粒子は、ATR法赤外分光分析により測定された粒子中心部の赤外線吸収スペクトルから得られる698cm−1および1376cm−1における吸光度比(D698/D1376)より算出される粒子中心部のポリスチレン系樹脂比率が、粒子全体のポリスチレン系樹脂比率に対して1.2倍以上であることが好ましく、1.35倍以上がより好ましく、1.4倍以上がさらに好ましい。
ここで、「粒子中心部」とは、粒子の中心を通る断面において、粒子の中心から、その粒子の直径(粒径)の1/4までの範囲の部分のことであり、例えば、粒径が1mmの球状の粒子における粒子中心部とは、この粒子の中心から、半径125μmの範囲の部分のことである。
算出された粒子中心部のポリスチレン系樹脂比率が、粒子全体のポリスチレン系樹脂比率に対して1.2倍以下の場合、表層から内部にかけてポリスチレン系樹脂比率の傾斜の勾配が小さくなる。その結果、予備発泡粒子を発泡成形して得られる発泡成形体の発泡倍数および耐熱性が低下するので好ましくない。
本発明の製造方法において用いる改質ポリスチレン系樹脂粒子は、次の(A)〜(D)の各工程を備えた製造方法により、効率よく、また歩留まりよく製造することができる。
(A)分散剤を含む水性懸濁液中に、ポリプロピレン系樹脂粒子100質量部と、スチレン系単量体100質量部以上400質量部未満と、重合開始剤とを分散させる工程、
(B)得られた分散液を前記スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して前記スチレン系単量体を前記ポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させる工程、
(C)前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融点をT℃としたとき、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度で、前記スチレン系単量体の第1の重合を行う工程、
(D)前記第1の重合工程に続いて、スチレン系単量体と、重合開始剤とを加え、かつ、前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融点をT℃としたとき、(T−25)℃〜(T+10)℃の温度とすることにより、前記ポリプロピレン系樹脂粒子への前記スチレン系単量体の含浸および第2の重合を行う工程。
なお、この(A)〜(D)の各工程は、スチレン系単量体を原料としてビーズ状のポリスチレン系樹脂粒子を製造するポリスチレン系樹脂の懸濁重合法またはシード重合法などの周知の重合方法を実施する際に用いられるオートクレーブ重合装置などを用いて実施できるが、使用する製造装置はこれに限定されない。
前記(A)工程において、ポリプロピレン系樹脂粒子は、例えば、前記のポリプロピレン系樹脂を押出機で溶融し、ストランドカット、水中カット、ホットカットなどにより造粒ペレット化したり、また粉砕機にて直接樹脂粒子を粉砕しペレット化することにより得られる。また、その形状は、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状などが挙げられる。このポリプロピレン系樹脂粒子の好ましい樹脂粒径は、0.5mm〜1.5mmの範囲であり、より好ましくは、0.6mm〜1.0mmの範囲である。
また、前記(A)工程において、ポリプロピレン系樹脂としては、融点が120℃〜145℃であるものが好適である。
前記(A)工程で用いられる分散剤としては、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの有機系分散剤、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウムなどの無機系分散剤が挙げられる。この内、無機系分散剤が好ましい。無機系分散剤を用いる場合、界面活性剤を併用することが好ましい。このような界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、α−オレフィンスルホン酸ソーダなどが挙げられる。
また、重合開始剤としては、スチレン系単量体の重合に汎用されている従来周知の重合開始剤を使用できる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−アミルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物が挙げられる。なお、重合開始剤は、単独で用いられても併用されてもよい。
また、架橋剤を添加する場合、その添加方法としては、例えば、架橋剤をポリプロピレン系樹脂に直接添加する方法、溶剤、可塑剤またはスチレン系単量体に架橋剤を溶解させた上で添加する方法、架橋剤を水に分散させた上で添加する方法などが挙げられる。この内、スチレン系単量体に架橋剤を溶解させた上で添加する方法が好ましい。
スチレン系単量体は、ポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させるために、水性媒体に、連続的にあるいは断続的に添加できる。スチレン系単量体は、水性媒体中に徐々に添加していくのが好ましい。水性媒体としては、水、水と水溶性媒体(例えば、アルコール)との混合媒体が挙げられる。
前記(B)工程において、(A)工程で得られた分散液を、スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱し、スチレン系単量体をポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させる際の温度は、45℃〜70℃の範囲、好ましくは50℃〜65℃の範囲とする。
この含浸温度が前記範囲未満であると、スチレン系単量体の含浸が不十分となってポリスチレンの重合粉末が生成されるので、好ましくない。一方、含浸温度が前記範囲を超えると、スチレン系単量体がポリプロピレン系樹脂粒子に十分含浸される前に重合してしまうので、好ましくない。
前記(C)工程、および(D)工程において、重合温度は重要な要因であり、ポリプロピレン系樹脂の融点をT℃としたとき、(C)工程(第1の重合)では、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度範囲とし、(D)工程(第2の重合)では、(T−25)℃〜(T+10)℃の温度範囲とする。前記温度範囲で重合を行うことにより、樹脂粒子中心部は、ポリスチレン系樹脂の存在量が多く(つまり、表層にポリプロピレン系樹脂の存在量が多い)、その結果として、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂のそれぞれの長所が生かされ、剛性、発泡成形性、耐薬品性および耐熱性に優れた改質ポリスチレン系樹脂粒子を提供することができる。
重合温度が前記温度範囲より低くなると、得られる樹脂粒子中心部にポリスチレン系樹脂の存在量が少なく、良好な物性を示す樹脂粒子や発泡成形体が得られない。また、重合温度が前記温度範囲より高くなると、スチレン系単量体がポリプロピレン系樹脂粒子に十分含浸される前に重合が開始してしまうので、良好な物性を示す樹脂粒子や発泡成形体が得られない。また、耐熱性に優れた高価格の重合設備が必要になる。
また、ポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させたスチレン系単量体の重合する工程を、(C)工程(第1の重合)と、(D)工程(第2の重合)との二段階に分ける理由は、一度に多くのスチレン系単量体をポリプロピレン系樹脂に含浸させようとすると、スチレン系単量体がポリプロピレン系樹脂に十分に含浸されず、ポリプロピレン系樹脂の表面に残るからである。そこで、本発明に係る改質ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法のように、(C)工程と、(D)工程との二段階に分けることにより、(C)工程においてスチレン系単量体が確実にポリプロピレン系樹脂の中心部に含浸され、(D)工程においてもスチレン系単量体がポリプロピレン系樹脂の中心部に向かって含浸される。
前記(D)工程の重合を行った後、反応槽を冷却し、形成された改質ポリスチレン系樹脂粒子を水性媒体と分離することで、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、ポリスチレン系樹脂を100質量部以上400質量部未満含有し、かつATR法赤外分光分析により測定された粒子表面の赤外吸収スペクトルから得られる698cm−1における吸光度D698と1376cm−1における吸光度D1376との比(D698/D1376)が0.1〜2.5の範囲である改質ポリスチレン系樹脂粒子が得られる。
このように、分散剤を含む水性懸濁液中に、ポリプロピレン系樹脂粒子と、スチレン系単量体と重合開始剤とを分散させ、スチレン系単量体をポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させた後、ポリプロピレン系樹脂粒子の融点をT℃としたとき、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度で第1段階の重合行い、次に(T−25)℃〜(T+10)℃の温度で第2段階の重合を行うことによって、ATR法赤外分光分析により測定された粒子表面の赤外吸収スペクトルから得られる698cm−1における吸光度D698と1376cm−1における吸光度D1376との比(D698/D1376)が0.1〜2.5の範囲である改質ポリスチレン系樹脂粒子を効率よく、高い歩留まりで作製することができる。得られた改質ポリスチレン系樹脂粒子は、発泡剤を含浸させて得られた発泡性樹脂粒子を予備発泡後、この発泡粒子を成形型に充填して型内発泡成形した場合、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂のそれぞれの長所が生かされ、剛性、発泡成形性、耐薬品性および耐熱性に優れた成形体の製造に適したものとなる。
前述した改質ポリスチレン系樹脂粒子は、次に、炭化水素系発泡剤を含浸させて、発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子とする。
改質ポリスチレン系樹脂粒子に含浸させる炭化水素系発泡剤としては、沸点が重合体の軟化温度以下であり易揮発性を有するもの、例えば、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、シクロペンタンが挙げられ、これらの発泡剤は、単独もしくは2種以上を併用して用いることができる。炭化水素系発泡剤の使用量は、改質ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して5〜25質量部の範囲とすることが好ましい。
さらに、発泡助剤を発泡剤と共に用いてもよい。このような発泡助剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、D−リモネンなどの溶剤、ジイソブチルアジペート、ジアセチル化モノラウレート、やし油などの可塑剤(高沸点溶剤)が挙げられる。なお、発泡助剤の添加量としては、改質ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して0.1〜2.5質量部が好ましい。
また、発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子には、結合防止剤、融着促進剤、帯電防止剤、展着剤などの表面処理剤を添加してもよい。
結合防止剤は、発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させる際の予備発泡粒子同士の合着を防止する役割を果たす。ここで、合着とは、予備発泡粒子の複数個が合一して一体化することをいう。具体例としては、タルク、炭酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、水酸化アルミニウム、エチレンビスステアリン酸アミド、第三リン酸カルシウム、ジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。
融着促進剤は、予備発泡粒子を二次発泡成形する際の予備発泡粒子同士の融着を促進させる役割を果たす。具体例としては、ステアリン酸、ステアリン酸トリグリセリド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸ソルビタンエステルなどが挙げられる。
帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド等が挙げられる。展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコーンオイルなどが挙げられる。なお、前記表面処理剤の総添加量は、改質ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して0.01〜2.0質量部が好ましい。
改質ポリスチレン系樹脂粒子中に発泡剤を含浸させる方法は、発泡剤の種類に応じて適宜変更可能である。例えば、改質ポリスチレン系樹脂粒子が分散している水性媒体中に発泡剤を圧入して、該樹脂中に発泡剤を含浸させる方法、改質ポリスチレン系樹脂粒子を回転混合機に供給し、この回転混合機内に発泡剤を圧入して該樹脂粒子に発泡剤を含浸させる方法などが挙げられる。なお、改質ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる温度は、通常、50℃〜140℃とすることが好ましい。
前記発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子は、次に、水蒸気などの加熱媒体と接触させて加熱、発泡させて予備発泡粒子とする。
この予備発泡の加熱条件や予備発泡に用いる装置は、従来のポリスチレン系樹脂予備発泡粒子の製造の場合と同等とすることができる。例えば、予備発泡装置内で、水蒸気圧0.5〜4.0kg/cmG程度(約0.05〜0.4MPa)の雰囲気下で発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を加熱することによって得ることができる。加熱時間は一般に20〜120秒程度である。
本発明の製造方法において、予備発泡粒子は、0.0166〜0.20g/cmの嵩密度を有する。好ましい嵩密度は0.02〜0.10g/cmの範囲であり、より好ましくは嵩密度が0.022〜0.05g/cmの範囲である。嵩密度が0.0166g/cm未満であると、発泡粒子の独立気泡率が低下するので、成形時に収縮が発生し、良好な発泡成形体が得られない。一方、嵩密度が0.20g/cmよりも大きいと、予備発泡粒子を型内発泡成形して得られる発泡成形体の密度が大きくなるので、好ましくない。
また、この嵩密度を嵩発泡倍数で表すと、嵩発泡倍数(倍)=1/嵩密度(g/cm)であることから、この予備発泡粒子は5〜60(倍)の嵩発泡倍数を有し、好ましい嵩発泡倍数は10〜50(倍)であり、より好ましい嵩発泡倍数は20〜45(倍)である。
予備発泡粒子の形態は、その後の型内発泡成形に影響を与えないものであれば、特に限定されない。例えば、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状などが挙げられる。この内、成形型のキャビティ内への充填が容易である真球状、楕円球状が好ましい。
この予備発泡粒子は、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、タルク、珪酸カルシウム、エチレンビスステアリン酸アミド、メタクリル酸エステル系共重合体などの発泡核剤、合成あるいは天然に産出される二酸化ケイ素などの充填剤、ヘキサブロモシクロドデカン、トリアリルイソシアヌレート6臭素化合物などの難燃剤、ジイソブチルアジペート、流動パラフィン、グリセリンジアセトモノラウレート、やし油などの可塑剤、カーボンブラック、グラファイトなどの着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などが挙げられる。
次に、予備発泡粒子に残存する発泡剤を強制的に減少させて、残ガス量が0.0〜3.0質量%である発泡剤除去発泡粒子とする。
本発明の製造方法において、密度が0.0166〜0.20g/cmの発泡成形体で、空隙率が10〜30%、曲げの破断点変位量10mm以上を有する吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を得るためには、予備発泡粒子の残ガス量を0.0〜3.0質量%となるまで減じ、その発泡剤除去発泡粒子を型内発泡成形することが必須条件となる。発泡剤除去発泡粒子の残ガス量は、0.0〜2.0質量%の範囲とすることが好ましく、0.0〜1.0質量%の範囲とすることがより好ましい。残ガス量が3.0質量%より大きいと、その予備発泡粒子を型内発泡成形する時の二次発泡性が大きくなり、十分な割合の空隙を有する発泡成形体が得られない。
本発明の製造方法において、予備発泡粒子内の残存ガス量を減らすには、通常、予備発泡後の予備発泡粒子を、常温にて12時間程度静置して熟成させた後、タフクロス等(穴あきビニール袋等)に移し、オーブン等(熱風乾燥機等)で60℃(50〜80℃)で数時間〜数日アニールすることにより、予備発泡粒子内の残存ガス量を0.0〜3.0質量%にまで減らすことができる。
また、予備発泡粒子をタフクロス等に移した後、23±2℃の恒温室に静置しておいても、予備発泡粒子内の残存ガス量を0.0〜3.0質量%にまで減らすことができる。
前述したように、予備発泡粒子内の残存ガス量を0.0〜3.0質量%にまで減らした発泡剤除去発泡粒子を成形型のキャビティ内に充填し、加熱して型内発泡成形させ、予備発泡粒子同士を融着一体化させることによって、所望形状を有する本発明の吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができる。この型内発泡成形は、例えば、蒸気圧0.5〜4.5kg/cmG程度(約0.05〜0.45MPa)の水蒸気を成形型内に導入することによって行うことができる。
本発明の吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体(以下、発泡成形体と略記する)は、以下の(a)〜(d)の条件を満たしていることを特徴とする。
(a) 本発明の発泡成形体は、0.0166〜0.20g/cmの密度を有する。好ましくは、密度が0.02〜0.10g/cmの範囲であり、より好ましくは、密度が0.022〜0.05g/cmの範囲である。
該発泡成形体の密度が0.0166g/cmより小さいと、予備発泡粒子の独立気泡率が低下するので、成型時に収縮が発生し、良好な発泡成形体が得られない。一方、発泡成形体の密度が0.20g/cmより大きいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の質量が増加するので好ましくない。
また、この密度を発泡倍数で表すと、発泡倍数(倍)=1/密度(g/cm)であることから、この予備発泡粒子は5〜60(倍)の発泡倍数を有し、好ましい発泡倍数は10〜50(倍)であり、より好ましい発泡倍数は20〜45(倍)である。
(b) 本発明の発泡成形体において、空隙率は10〜30%の範囲であり、12〜25%の範囲がより好ましい。空隙率が10%未満であると、良好な吸音率が得られない。また、空隙率が30%を超えると、成形体内の空隙が多くなりすぎて、所定の強度が得られない。
(c) 本発明の発泡成形体は、JIS K7221−2:1999記載の方法に準じて測定した曲げの破断点変位量が10mm以上である。より好ましくは15mm以上である。曲げの破断点変位量が10mm未満であると、発泡成形体の機械的強度(融着性)が低くなり、発泡成形体の衝撃試験を行った際に、試験片が分離してしまう。曲げの破断点変位量は、発泡成形体における発泡粒子同士の融着性を測る指標として見なすことができ、曲げ破断点変位量は大きい方が融着性が良くてより好ましい。曲げの破断点変位量が55mmを越える場合、所定の測定方法では試験片が脱落し、正しい値を測定することができない。
(d) 本発明の発泡成形体は、ASTM E1050に準拠し、厚み30mmで垂直入射吸音率を測定したときに500Hz以上、6000Hz以下の範囲における吸音率が0.5以上の部分が存在することが好ましい。吸音率が0.5以上の部分が存在しない場合には、吸音材、特に、自動車用吸音材としての要求性能を満たすことができない。
また、本発明の発泡成形体は、JIS K6767に準拠した80℃の条件下にて寸法変化測定における発泡成形体の収縮率が1.5%以下であることが望ましい。この収縮率が1.5%を超えると、寸法の安定性に欠け好ましくない。
なお、収縮率は小さい程望ましいので、その下限値を特に設ける必要はない。例えば、収縮率の下限値は0であることが望ましい。
本発明の発泡成形体は、優れた機械的強度、特に、耐割れ性や耐衝撃性を有し、かつ空隙部分を多数有しており、優れた吸音性を発揮する。本発明の発泡成形体は、車輛用バンパーの芯材、ドア内装緩衝材などの車輛用緩衝材、電子部品、各種工業資材、食品などの搬送容器などの各種用途に用いることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例における融点、融解開始温度、粒子表層の吸光度比とポリスチレン系樹脂比率(以下、PS比率と記す)、予備発泡粒子の嵩密度、予備発泡粒子の残ガス量、発泡成形体の密度、曲げの破断点変位量、空隙率、吸音率及び加熱寸法変化率、の測定法を下記する。
<粒子表層の吸光度比とPS比率>
吸光度比(D698/D1376)は下記の要領で測定した。
すなわち、無作為に選択した10個の各予備発泡粒子の粒子中心部または表面を、ATR法赤外分光分析を行なって赤外線吸収スペクトルを得た。
粒子表層の測定では、各予備発泡粒子の表面にATRプリズムを密着させて測定する。
各赤外線吸収スペクトルから吸光度比(D698/D1376)をそれぞれ算出し、最小の吸光度比と最大の吸光度比を除外した。そして、残余の8個の吸光度比の相加平均を吸光度比(D698/D1376)とした。なお、吸光度比(D698/D1376)は、例えば、Nicolet社(現在の社名:Thermofisher社)から商品名「フーリエ変換赤外分光光度計 MAGMA560」で販売されている測定装置を用いて測定した。
粒子表層のPS比率(質量%)は、標準品を用いて予め作成しておいた検量線に基づいて、吸光度比(D698/D1376)から算出した。
<予備発泡粒子の嵩密度>
予備発泡粒子の嵩密度は下記の要領で測定した。
まず、予備発泡粒子を500cm、メスシリンダ内に500cmの目盛りまで充填した。なお、メスシリンダを水平方向から目視し、予備発泡粒子が一粒でも500cmの目盛りに達しているものがあれば、その時点で予備発泡粒子のメスシリンダ内への充填を終了した。
次に、メスシリンダ内に充填した予備発泡粒子の質量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をW(g)とした。
そして、下記の式により予備発泡粒子の嵩密度を算出した。
嵩密度(g/cm)=W/500
<予備発泡粒子の残ガス量>
予備発泡粒子の残ガス量は、予備発泡して得られた予備発泡粒子を20mg程度の量を精秤し、島津製作所社製熱分解炉PYR−1Aの分解炉入り口にセットし、15秒間ほどヘリウムでパージしてサンプルセット時の混入ガスを排出する。密閉後試料を200℃の炉心に挿入し、120秒間加熱してガスを放出させ、この放出ガスを島津製作所社製ガスクロマトグラフ GC−14B(検出器:TCD)を用いて定量した。その測定条件はカラムがジーエルサイエンス社製ポラパックQ(80/100)3mmφ×1.5mを用いカラム温度(100℃)、キャリアーガス(ヘリウム) キャリヤーガス流量(1ml/min)、注入口温度(120℃)、検出器温度(120℃)とした。
<発泡成形体の密度>
発泡成形体の密度は下記の要領で測定した。
JIS K7122:1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」記載の方法で測定した。
50cm以上(半硬質および軟質材料の場合は100cm以上)の試験片を材料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量を測定し、次式により算出した。
密度(g/cm)=試験片質量(g)/試験片体積(cm
試験片状態調節、測定用試験片は、成形後72時間以上経過した試料から切り取り、23℃±2℃×50%±5%または27℃±2℃×65%±5%の雰囲気条件に16時間以上放置したものである。
<発泡倍数>
発泡成形体の発泡倍数は、次式により算出した。
発泡倍数(倍)=1/密度(g/cm
<曲げの破断点変位量>
曲げ強さは、JIS K7221−2:1999「硬質発泡プラスチック−曲げ試験−第2部:曲げ特性の測定」記載の方法に準じて測定する。すなわち、テンシロン万能試験機UCT―10T(オリエンテック社製)を用いて、試験体サイズは75×300×25mmとし、圧縮速度を10mm/分、先端冶具は加圧くさび10R、支持台10Rで、支点間距離は200mmとして測定した。
曲げの破断点変位量は、曲げ試験において以下の現象が発生した点を、破断点変位量とした。破断検出感度を0.5%に設定し、直前荷重サンプリング点と比較して、その減少が設定値0.5%を越えた時、直前のサンプリング点。
<空隙率>
発泡成形体の空隙率は、ASTM D2856−87に記載の測定方法に準拠して測定した。具体的には、六面との成形面などの表皮を有しない切断面で構成された試験片(一辺25mmの立方体)を発泡成形体より5個切出し、ノギスを用いて、試験片の見掛け体積Wを測定する。次に空気比較式比重計を用いて、1−1/2−1気圧法により試験片の体積Wを測定し、下記式に基づいて発泡成形体の空隙率を算出することができる。なお、空気比較式比重計は、東京サイエンス社から商品名「1000型」にて市販されているものを使用することができる。
発泡成形体の空隙率(%)=100×(W−W)/W
<吸音率>
吸音率はISO 10534−2(Determination of sound Absorption coefficient and Impedance in impedance tubes Part2:Transfer−function method)およびASTM E 1050に準拠して測定した。
すなわち、垂直入射吸音率測定システム4206型音響インピーダンス管(ブリューエル&ケアー社製)および計測ソフトウェアMS1021型(松下テクノトレーディング社製)を使い、測定条件は温度20℃、試料厚み30mm、試料の背面空気層なしで周波数領域500Hz以上6000Hz以下の範囲を測定した。
<加熱寸法変化率>
加熱寸法変化率はJIS K 6767:1999K「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」記載のB法にて測定した。
試験片は150×150×原厚み(mm)として、その中央部に縦および横方向にそれぞれ互いに平行に3本の直線を50mm間隔になるよう記入し、80℃の熱風循環式乾燥機の中に22時間置いた後に取出し、標準状態の場所に1時間放置後、縦および横線の寸法を下記式によって測定した。
S=(L1−L0)/L0×100
式中、Sは加熱寸法変化率(%)、L1は加熱後の平均寸法(mm)、L0は初めの平均寸法(mm)をそれぞれ表す。
加熱寸法変化率Sは、以下の基準で評価した。
○:0≦S<1.5;寸法変化率が低く、寸法の安定性が良好であった。
△:1.5≦S<5;寸法の変化がみられるものの、実用上使用可能であった。
×:S≧5;寸法の変化が著しくみられ、実用上使用不可能であった。
<衝撃試験>
テストピースは、縦方向が150mm、横方向が100mm、原厚みである。
実験は、JIS Z0235の「包装用緩衝材料の動的圧縮試験方法」に準拠して行った。先ず、上記テストピースの上方に落下用の踵治具を配備する。次に、踵治具に加速度計を取り付け、テストピースに踵治具の落下による変位量を測定する変位計を取り付ける。次に、テストピースに踵治具を自由落下試験機にて落下させ、踵治具落下後の時間経過に伴うテストピースに加わる荷重(単位:N)とテストピースの変位(単位:mm)を求めた。
踵治具は、重量8.4kg、幅Wが80mm、長さLが91mmで一端部が半径40mmの円弧形を呈しており、テストピースの表面から高さH(0.625m)の位置から落下させる。
試験後のサンプルを目視観察して、衝撃吸収特性を以下の基準で評価した。
○: 試験片が分離せずに残り、試験片の衝撃吸収性が良好であった。
△: 試験片の一部が分離してはいるものの、実用上使用可能であった。
×: 試験片が完全に分離してしまい、実用上使用不可であった。
[実施例1]
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、商品名「F−744NP」、融点:140℃、融解開始温度60〜100℃)100質量部を押出機に供給して溶融混練してストランドカットにより造粒ペレット化することにより、球状(卵状)のポリプロピレン系樹脂粒子を得た。
このときのポリプロピレン系樹脂粒子を100粒あたり56mg、平均粒子径約1mmに調整した。
次に、攪拌機付5Lオートクレーブに、前記ポリプロピレン系樹脂粒子800gを入れ、水性媒体として純水2kg、ピロリン酸マグネシウム20g、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5gを加え、攪拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温して水系懸濁液とした。
次に、この懸濁液中にジクミルパーオキサイド0.8gを溶解させたスチレン単量体400gを30分で滴下した。滴下後30分保持し、ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。
次に、反応系の温度をポリプロピレン系樹脂粒子の融点と同じ140℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をポリプロピレン系樹脂粒子中で重合(第1の重合)させた。
次に、第1の重合の反応液をポリプロピレン系樹脂粒子の融点より20℃低い120℃にして、この懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.5gを加えた後、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド3.6gを溶解したスチレン単量体800gを4時間かけて滴下し、ポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合(第2の重合)を行った(PP樹脂/PS比率=40/60)。
この滴下終了後、120℃で1時間保持した後に140℃に昇温し3時間保持して重合を完結し、改質ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
次に、常温まで冷却し、該樹脂粒子を5Lオートクレーブから取り出した。取り出し後の改質ポリスチレン系樹脂粒子2kgと水2Lを再び攪拌機付5Lオートクレーブに投入し、発泡剤としてブタン300gを攪拌機付5Lオートクレーブに注入した。注入後、70℃に昇温し、4時間攪拌を続けた。
その後、常温まで冷却して5Lオートクレーブから取り出し、脱水乾燥した後に発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
次に、得られた発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を嵩発泡倍数40倍に予備発泡させ、予備発泡粒子を得た。そして、得られた予備発泡粒子を用いて、吸光度の測定を行い、ポリスチレン系樹脂比率を算出した。
そして、予備発泡後の予備発泡粒子は、常温にて12時間程度静置して熟成させた後、穴あきビニール袋に移し、オーブン(熱風乾燥機)で60℃(50〜80℃)で数日アニールする発泡剤除去を行った。この発泡剤除去後の予備発泡粒子の残ガス量を測定した。本実施例では、予備発泡粒子の残ガス量を0.0質量%にまで減らした。
次に、発泡剤除去後の予備発泡粒子を、400mm×300mm×30mmの大きさのキャビティを有する成形型の該キャビティ内に充填し、成形型に0.11MPaの水蒸気を60秒間導入し、その後、発泡成形体の最高面圧が0.001MPaに低下するまで冷却して、発泡成形体を得た。この成形条件により外観、融着とも良好な空隙を有する発泡成形体を得た。
なお、発泡成形には、発泡成形機(積水工機社製、商品名「ACE−3SP」)を使用した。
得られた発泡成形体を用いて、発泡成形体の密度、曲げの破断点変位量、空隙率、吸音率及び加熱寸法変化率の測定を行った。
なお、本実施例では、発泡倍数40倍の発泡成形体も得ることができた。
[実施例2]
予備発泡粒子の製造において、残ガス量を0.9質量%としたこと、発泡体成形時の加熱時間を45秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
[実施例3]
予備発泡粒子の製造において、残ガス量を2.9質量%としたこと、発泡体成形時の加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
[実施例4]
PP樹脂/PS比率を30/70としたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
[実施例5]
PP樹脂/PS比率を30/70としたこと、残ガス量を2.7質量%としたこと、発泡体成形時の加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
[実施例6]
PP樹脂/PS比率を20/80としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.10MPaとしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
[実施例7]
PP樹脂/PS比率を20/80としたこと、残ガス量を3.0質量%としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.10MPaとしたこと、発泡体成形時の加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
[実施例8]
PP樹脂/PS比率を50/50としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.12MPaとしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
[実施例9]
PP樹脂/PS比率を50/50としたこと、残ガス量を3.0質量%としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.12MPaとしたこと、発泡体成形時の加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
[実施例10]
残ガス量を0.9質量%としたこと、予備発泡粒子の嵩発泡倍数を5倍としたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
[実施例11]
残ガス量を1.0質量%としたこと、予備発泡粒子の嵩発泡倍数を60倍としたこと、発泡体成形時の加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
[実施例12]
残ガス量を0.9質量%としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.12MPaとしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
[実施例13]
発泡体成形時の蒸気圧を0.10MPaとしたこと、発泡体成形時の加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
[比較例1]
PP樹脂/PS比率を55/45としたこと、残ガス量を3.2質量%としたこと、予備発泡粒子の嵩発泡倍数を4.5倍としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.08MPaとしたこと、発泡体成形時の加熱時間を45秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
[比較例2]
PP樹脂/PS比率を60/40としたこと、残ガス量を3.3質量%としたこと、予備発泡粒子の嵩発泡倍数を4.5倍としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.08MPaとしたこと、発泡体成形時の加熱時間を45秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
[比較例3]
PP樹脂/PS比率を10/90としたこと、残ガス量を3.8質量%としたこと、予備発泡粒子の嵩発泡倍数を65倍としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.08MPaとしたこと、発泡体成形時の加熱時間を45秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
[比較例4]
PP樹脂/PS比率を15/85としたこと、残ガス量を3.8質量%としたこと、予備発泡粒子の嵩発泡倍数を65倍としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.08MPaとしたこと、発泡体成形時の加熱時間を45秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
[比較例5]
PP樹脂/PS比率を40/60としたこと、残ガス量を3.5質量%としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.08MPaとしたこと、発泡体成形時の加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
[比較例6]
残ガス量を3.5質量%としたこと、発泡体成形時の加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
[比較例7]
残ガス量を3.9質量%としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.08MPaとしたこと、発泡体成形時の加熱時間を45秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
[比較例8]
残ガス量を1.2質量%としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.08MPaとしたこと、発泡体成形時の加熱時間を45秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
[比較例9]
PP樹脂/PS比率を30/70としたこと、残ガス量を3.5質量%としたこと、発泡体成形時の加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
[比較例10]
PP樹脂/PS比率を20/80としたこと、残ガス量を4.0質量%としたこと、発泡体成形時の加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
[比較例11]
PP樹脂/PS比率を50/50としたこと、残ガス量を3.8質量%としたこと、発泡体成形時の加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
実施例1〜13の結果を表1にまとめて記す。
また、比較例1〜11の結果を表2にまとめて記す。
Figure 2010209221
Figure 2010209221
表1、表2の結果から、本発明に係る実施例1〜13では、予備発泡粒子の残存発泡剤量を0.0〜3.0質量%とし、該発泡剤除去発泡粒子で型内発泡成形を行って発泡成形体を作製したことによって、
(a)密度が0.0166〜0.20g/cmの範囲、
(b)空隙率が10〜30%の範囲、
(c)JIS K7221−2:1999記載の方法に準じて測定した曲げの破断点変位量が10mm以上、
(d)ASTM E1050に準拠し、厚み30mmで垂直入射吸音率を測定したときに500Hz以上6000Hz以下の範囲における吸音率が0.5以上の部分が存在すること、
の各条件を全て満たす吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができた。
一方、残存発泡剤量が3.0質量%を越える予備発泡粒子を用いた比較例1〜11では、型内発泡成形の条件を変更しても、前記(a)〜(d)の各条件を全て満たす吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体は得られなかった。
本発明の吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体は、車輛用バンパーの芯材、ドア内装緩衝材などの車輛用緩衝材、電子部品、各種工業資材、食品などの搬送容器などの各種用途に用いることができる。

Claims (7)

  1. プロピレン−エチレン共重合体を含み融解開始温度が60〜100℃の範囲内であるプロピレン系樹脂100質量部に対して、ポリスチレン系樹脂を100質量部以上400質量部未満含有し、かつ、ATR法赤外分光分析により測定された粒子表面の赤外吸収スペクトルから得られる698cm−1における吸光度D698と1376cm−1における吸光度D1376との比(D698/D1376)が0.1〜2.5の範囲である改質ポリスチレン系樹脂粒子に、炭化水素系発泡剤を含浸させた上で予備発泡させて嵩密度が0.0166〜0.20g/cmの範囲である予備発泡粒子とし、該予備発泡粒子に残存する発泡剤を強制的に減少させて、残存発泡剤量が0.0〜3.0質量%である発泡剤除去発泡粒子とし、次いで該発泡剤除去発泡粒子を型内発泡成形を行って、
    (a)密度が0.0166〜0.20g/cmの範囲、
    (b)空隙率が10〜30%の範囲、
    (c)JIS K7221−2:1999記載の方法に準じて測定した曲げの破断点変位量が10mm以上、
    (d)ASTM E1050に準拠し、厚み30mmで垂直入射吸音率を測定したときに500Hz以上6000Hz以下の範囲における吸音率が0.5以上の部分が存在すること、
    の各条件を満たす吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることを特徴とする吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法。
  2. 前記改質ポリスチレン系樹脂粒子は、
    (A)分散剤を含む水性懸濁液中に、ポリプロピレン系樹脂粒子100質量部と、スチレン系単量体100質量部以上400質量部未満と、重合開始剤とを分散させる工程、
    (B)得られた分散液を前記スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して前記スチレン系単量体を前記ポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させる工程、
    (C)前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融点をT℃としたとき、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度で、前記スチレン系単量体の第1の重合を行う工程、
    (D)前記第1の重合工程に続いて、スチレン系単量体と、重合開始剤とを加え、かつ、前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融点をT℃としたとき、(T−25)℃〜(T+10)℃の温度とすることにより、前記ポリプロピレン系樹脂粒子への前記スチレン系単量体の含浸および第2の重合を行う工程、を経て製造されることを特徴とする請求項1に記載の吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法。
  3. 炭化水素系発泡剤がプロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、シクロペンタンから成る群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法。
  4. 予備発泡粒子に残存する発泡剤を強制的に減少させる工程が、
    (i)予備発泡粒子を通気性容器に入れ、50〜80℃の熱風通風乾燥を数時間〜数日間行う処理方法、
    (ii)予備発泡粒子を通気性容器に入れ、常温下、残存する発泡剤量が0.0〜3.0質量%となるまで静置する処理方法、のうちの一方であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法。
  5. 発泡剤除去発泡粒子の残存発泡剤量を0.0〜3.0質量%の範囲とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法により得られた吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体。
  7. JIS K6767:1999KのB法により測定された80℃での加熱寸法変化率が1.5%未満であることを特徴とする請求項6に記載の吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体。
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