JP2010209221A - 吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プロピレン系樹脂100質量部に対して、ポリスチレン系樹脂を100質量部以上400質量部未満含有する改質ポリスチレン系樹脂粒子に、炭化水素系発泡剤を含浸させた上で予備発泡させ、該予備発泡粒子に残存する発泡剤を強制的に減少させて、残存発泡剤量が0.0〜3.0質量%である発泡剤除去発泡粒子とし、次いで該発泡剤除去発泡粒子を型内発泡成形を行って、(a)密度が0.0166〜0.20g/cm3の範囲、(b)空隙率が10〜30%の範囲、(c)曲げの破断点変位量が10mm以上、(d)吸音率が0.5以上、の各条件を満たす吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を得る製造方法。
【選択図】なし
Description
しかしながら、発泡成形体に空隙率を10〜40%形成させるためには、成形時の予備発泡粒子の二次発泡を抑える必要があり、成形時の蒸気温度を下げるか、もしくは、加熱時間を短くする必要がある。その結果、発泡体小片の発泡圧が低下し、発泡体小片同士の熱融着が低下し、得られる発泡成形体の機械的強度が低くなりやすいといった問題点を有していた。
しかしながら、この発泡体も特許文献1の発泡成形体と同様に、予備発泡粒同士の熱融着性が低く、得られる発泡成形体は機械的強度が低くなり易いといった問題点を有していた。
(a)密度が0.0166〜0.20g/cm3の範囲、
(b)空隙率が10〜30%の範囲、
(c)JIS K7221−2:1999記載の方法に準じて測定した曲げの破断点変位量が10mm以上、
(d)ASTM E1050に準拠し、厚み30mmで垂直入射吸音率を測定したときに500Hz以上6000Hz以下の範囲における吸音率が0.5以上の部分が存在すること、
の各条件を満たす吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることを特徴とする吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法を提供する。
(A)分散剤を含む水性懸濁液中に、ポリプロピレン系樹脂粒子100質量部と、スチレン系単量体100質量部以上400質量部未満と、重合開始剤とを分散させる工程、
(B)得られた分散液を前記スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して前記スチレン系単量体を前記ポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させる工程、
(C)前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融点をT℃としたとき、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度で、前記スチレン系単量体の第1の重合を行う工程、
(D)前記第1の重合工程に続いて、スチレン系単量体と、重合開始剤とを加え、かつ、前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融点をT℃としたとき、(T−25)℃〜(T+10)℃の温度とすることにより、前記ポリプロピレン系樹脂粒子への前記スチレン系単量体の含浸および第2の重合を行う工程、を経て製造されることが好ましい。
(i)予備発泡粒子を通気性容器に入れ、50〜80℃の熱風通風乾燥を数時間〜数日間行う処理方法、
(ii)予備発泡粒子を通気性容器に入れ、常温下、残存する発泡剤量が0.0〜3.0質量%となるまで静置する処理方法、のうちの一方であることが好ましい。
さらに、得られた発泡成形体は、残存する発泡剤ガス量が少ないため、燃焼性が低く、3次発泡しにくい発泡成形体であり、また高温で長時間加熱して成形することから、ポリプロピレン核の結晶性が高くなりやすく、耐熱収縮性に優れた吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を提供できる。
(a)密度が0.0166〜0.20g/cm3の範囲、
(b)空隙率が10〜30%の範囲、
(c)JIS K7221−2:1999記載の方法に準じて測定した曲げの破断点変位量が10mm以上、
(d)ASTM E1050に準拠し、厚み30mmで垂直入射吸音率を測定したときに500Hz以上6000Hz以下の範囲における吸音率が0.5以上の部分が存在すること、
の各条件を満たす吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることを特徴とする。
さらに、予備発泡粒子の残ガス量を少なくすることにより、型内発泡成形して得られた発泡成形体の残ガス量も少なくなるため、燃焼性が低く、3次発泡しにくい成形体になることもわかった。また、予備発泡粒子の残ガス量を少なくすることにより、型内発泡成形時の二次発泡性を抑えることができ、より高温で長時間加熱することから、ポリプロピレン核の結晶性が高くなって、得られた成形体の熱収縮が小さくなることもわかった。
着色剤は、無機系の顔料であっても、有機系の顔料であってもよい。
無機系の顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄などのクロム酸塩、紺青などのフェロシアン化物、カドミウムイエロー、カドミウムレッドなどの硫化物、鉄黒、紅殻などの酸化物、群青などのケイ酸塩、酸化チタンなどが挙げられる。
また、有機系の顔料としては、例えば、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アゾレーキ、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの多環式顔料などが挙げられる。
この吸光度比が2.5より高いと、樹脂粒子の表面におけるポリプロピレン系樹脂の比率が低下し、その結果、予備発泡し、成形して得られた発泡成形体の耐薬品性、及び耐衝撃性が低下するので好ましくない。また、吸光度比が0.1より低いと、予備発泡粒子の表面からの発泡剤の逸散が顕著になることにより、型内発泡成形において収縮等による発泡成形体の外観の仕上がり状態が悪くなるので、好ましくない。
なお、前記検量線の作成に関しては、特許文献2(特開2008−239793号公報)の段落[0040]〜[0043]及び図1にも記載されている通り、従来周知である。
ここで、「粒子中心部」とは、粒子の中心を通る断面において、粒子の中心から、その粒子の直径(粒径)の1/4までの範囲の部分のことであり、例えば、粒径が1mmの球状の粒子における粒子中心部とは、この粒子の中心から、半径125μmの範囲の部分のことである。
(A)分散剤を含む水性懸濁液中に、ポリプロピレン系樹脂粒子100質量部と、スチレン系単量体100質量部以上400質量部未満と、重合開始剤とを分散させる工程、
(B)得られた分散液を前記スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して前記スチレン系単量体を前記ポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させる工程、
(C)前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融点をT℃としたとき、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度で、前記スチレン系単量体の第1の重合を行う工程、
(D)前記第1の重合工程に続いて、スチレン系単量体と、重合開始剤とを加え、かつ、前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融点をT℃としたとき、(T−25)℃〜(T+10)℃の温度とすることにより、前記ポリプロピレン系樹脂粒子への前記スチレン系単量体の含浸および第2の重合を行う工程。
なお、この(A)〜(D)の各工程は、スチレン系単量体を原料としてビーズ状のポリスチレン系樹脂粒子を製造するポリスチレン系樹脂の懸濁重合法またはシード重合法などの周知の重合方法を実施する際に用いられるオートクレーブ重合装置などを用いて実施できるが、使用する製造装置はこれに限定されない。
また、前記(A)工程において、ポリプロピレン系樹脂としては、融点が120℃〜145℃であるものが好適である。
この含浸温度が前記範囲未満であると、スチレン系単量体の含浸が不十分となってポリスチレンの重合粉末が生成されるので、好ましくない。一方、含浸温度が前記範囲を超えると、スチレン系単量体がポリプロピレン系樹脂粒子に十分含浸される前に重合してしまうので、好ましくない。
重合温度が前記温度範囲より低くなると、得られる樹脂粒子中心部にポリスチレン系樹脂の存在量が少なく、良好な物性を示す樹脂粒子や発泡成形体が得られない。また、重合温度が前記温度範囲より高くなると、スチレン系単量体がポリプロピレン系樹脂粒子に十分含浸される前に重合が開始してしまうので、良好な物性を示す樹脂粒子や発泡成形体が得られない。また、耐熱性に優れた高価格の重合設備が必要になる。
改質ポリスチレン系樹脂粒子に含浸させる炭化水素系発泡剤としては、沸点が重合体の軟化温度以下であり易揮発性を有するもの、例えば、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、シクロペンタンが挙げられ、これらの発泡剤は、単独もしくは2種以上を併用して用いることができる。炭化水素系発泡剤の使用量は、改質ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して5〜25質量部の範囲とすることが好ましい。
帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ステアリン酸モノグリセリド等が挙げられる。展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコーンオイルなどが挙げられる。なお、前記表面処理剤の総添加量は、改質ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して0.01〜2.0質量部が好ましい。
この予備発泡の加熱条件や予備発泡に用いる装置は、従来のポリスチレン系樹脂予備発泡粒子の製造の場合と同等とすることができる。例えば、予備発泡装置内で、水蒸気圧0.5〜4.0kg/cm2G程度(約0.05〜0.4MPa)の雰囲気下で発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を加熱することによって得ることができる。加熱時間は一般に20〜120秒程度である。
また、この嵩密度を嵩発泡倍数で表すと、嵩発泡倍数(倍)=1/嵩密度(g/cm3)であることから、この予備発泡粒子は5〜60(倍)の嵩発泡倍数を有し、好ましい嵩発泡倍数は10〜50(倍)であり、より好ましい嵩発泡倍数は20〜45(倍)である。
また、予備発泡粒子をタフクロス等に移した後、23±2℃の恒温室に静置しておいても、予備発泡粒子内の残存ガス量を0.0〜3.0質量%にまで減らすことができる。
該発泡成形体の密度が0.0166g/cm3より小さいと、予備発泡粒子の独立気泡率が低下するので、成型時に収縮が発生し、良好な発泡成形体が得られない。一方、発泡成形体の密度が0.20g/cm3より大きいと、予備発泡粒子を発泡させて得られる発泡成形体の質量が増加するので好ましくない。
また、この密度を発泡倍数で表すと、発泡倍数(倍)=1/密度(g/cm3)であることから、この予備発泡粒子は5〜60(倍)の発泡倍数を有し、好ましい発泡倍数は10〜50(倍)であり、より好ましい発泡倍数は20〜45(倍)である。
なお、収縮率は小さい程望ましいので、その下限値を特に設ける必要はない。例えば、収縮率の下限値は0であることが望ましい。
吸光度比(D698/D1376)は下記の要領で測定した。
すなわち、無作為に選択した10個の各予備発泡粒子の粒子中心部または表面を、ATR法赤外分光分析を行なって赤外線吸収スペクトルを得た。
粒子表層の測定では、各予備発泡粒子の表面にATRプリズムを密着させて測定する。
各赤外線吸収スペクトルから吸光度比(D698/D1376)をそれぞれ算出し、最小の吸光度比と最大の吸光度比を除外した。そして、残余の8個の吸光度比の相加平均を吸光度比(D698/D1376)とした。なお、吸光度比(D698/D1376)は、例えば、Nicolet社(現在の社名:Thermofisher社)から商品名「フーリエ変換赤外分光光度計 MAGMA560」で販売されている測定装置を用いて測定した。
粒子表層のPS比率(質量%)は、標準品を用いて予め作成しておいた検量線に基づいて、吸光度比(D698/D1376)から算出した。
予備発泡粒子の嵩密度は下記の要領で測定した。
まず、予備発泡粒子を500cm3、メスシリンダ内に500cm3の目盛りまで充填した。なお、メスシリンダを水平方向から目視し、予備発泡粒子が一粒でも500cm3の目盛りに達しているものがあれば、その時点で予備発泡粒子のメスシリンダ内への充填を終了した。
次に、メスシリンダ内に充填した予備発泡粒子の質量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をW(g)とした。
そして、下記の式により予備発泡粒子の嵩密度を算出した。
嵩密度(g/cm3)=W/500
予備発泡粒子の残ガス量は、予備発泡して得られた予備発泡粒子を20mg程度の量を精秤し、島津製作所社製熱分解炉PYR−1Aの分解炉入り口にセットし、15秒間ほどヘリウムでパージしてサンプルセット時の混入ガスを排出する。密閉後試料を200℃の炉心に挿入し、120秒間加熱してガスを放出させ、この放出ガスを島津製作所社製ガスクロマトグラフ GC−14B(検出器:TCD)を用いて定量した。その測定条件はカラムがジーエルサイエンス社製ポラパックQ(80/100)3mmφ×1.5mを用いカラム温度(100℃)、キャリアーガス(ヘリウム) キャリヤーガス流量(1ml/min)、注入口温度(120℃)、検出器温度(120℃)とした。
発泡成形体の密度は下記の要領で測定した。
JIS K7122:1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」記載の方法で測定した。
50cm3以上(半硬質および軟質材料の場合は100cm3以上)の試験片を材料の元のセル構造を変えない様に切断し、その質量を測定し、次式により算出した。
密度(g/cm3)=試験片質量(g)/試験片体積(cm3)
試験片状態調節、測定用試験片は、成形後72時間以上経過した試料から切り取り、23℃±2℃×50%±5%または27℃±2℃×65%±5%の雰囲気条件に16時間以上放置したものである。
発泡成形体の発泡倍数は、次式により算出した。
発泡倍数(倍)=1/密度(g/cm3)
曲げ強さは、JIS K7221−2:1999「硬質発泡プラスチック−曲げ試験−第2部:曲げ特性の測定」記載の方法に準じて測定する。すなわち、テンシロン万能試験機UCT―10T(オリエンテック社製)を用いて、試験体サイズは75×300×25mmとし、圧縮速度を10mm/分、先端冶具は加圧くさび10R、支持台10Rで、支点間距離は200mmとして測定した。
曲げの破断点変位量は、曲げ試験において以下の現象が発生した点を、破断点変位量とした。破断検出感度を0.5%に設定し、直前荷重サンプリング点と比較して、その減少が設定値0.5%を越えた時、直前のサンプリング点。
発泡成形体の空隙率は、ASTM D2856−87に記載の測定方法に準拠して測定した。具体的には、六面との成形面などの表皮を有しない切断面で構成された試験片(一辺25mmの立方体)を発泡成形体より5個切出し、ノギスを用いて、試験片の見掛け体積W4を測定する。次に空気比較式比重計を用いて、1−1/2−1気圧法により試験片の体積W5を測定し、下記式に基づいて発泡成形体の空隙率を算出することができる。なお、空気比較式比重計は、東京サイエンス社から商品名「1000型」にて市販されているものを使用することができる。
発泡成形体の空隙率(%)=100×(W4−W5)/W4
吸音率はISO 10534−2(Determination of sound Absorption coefficient and Impedance in impedance tubes Part2:Transfer−function method)およびASTM E 1050に準拠して測定した。
すなわち、垂直入射吸音率測定システム4206型音響インピーダンス管(ブリューエル&ケアー社製)および計測ソフトウェアMS1021型(松下テクノトレーディング社製)を使い、測定条件は温度20℃、試料厚み30mm、試料の背面空気層なしで周波数領域500Hz以上6000Hz以下の範囲を測定した。
加熱寸法変化率はJIS K 6767:1999K「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」記載のB法にて測定した。
試験片は150×150×原厚み(mm)として、その中央部に縦および横方向にそれぞれ互いに平行に3本の直線を50mm間隔になるよう記入し、80℃の熱風循環式乾燥機の中に22時間置いた後に取出し、標準状態の場所に1時間放置後、縦および横線の寸法を下記式によって測定した。
S=(L1−L0)/L0×100
式中、Sは加熱寸法変化率(%)、L1は加熱後の平均寸法(mm)、L0は初めの平均寸法(mm)をそれぞれ表す。
加熱寸法変化率Sは、以下の基準で評価した。
○:0≦S<1.5;寸法変化率が低く、寸法の安定性が良好であった。
△:1.5≦S<5;寸法の変化がみられるものの、実用上使用可能であった。
×:S≧5;寸法の変化が著しくみられ、実用上使用不可能であった。
テストピースは、縦方向が150mm、横方向が100mm、原厚みである。
実験は、JIS Z0235の「包装用緩衝材料の動的圧縮試験方法」に準拠して行った。先ず、上記テストピースの上方に落下用の踵治具を配備する。次に、踵治具に加速度計を取り付け、テストピースに踵治具の落下による変位量を測定する変位計を取り付ける。次に、テストピースに踵治具を自由落下試験機にて落下させ、踵治具落下後の時間経過に伴うテストピースに加わる荷重(単位:N)とテストピースの変位(単位:mm)を求めた。
踵治具は、重量8.4kg、幅Wが80mm、長さLが91mmで一端部が半径40mmの円弧形を呈しており、テストピースの表面から高さH(0.625m)の位置から落下させる。
試験後のサンプルを目視観察して、衝撃吸収特性を以下の基準で評価した。
○: 試験片が分離せずに残り、試験片の衝撃吸収性が良好であった。
△: 試験片の一部が分離してはいるものの、実用上使用可能であった。
×: 試験片が完全に分離してしまい、実用上使用不可であった。
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、商品名「F−744NP」、融点:140℃、融解開始温度60〜100℃)100質量部を押出機に供給して溶融混練してストランドカットにより造粒ペレット化することにより、球状(卵状)のポリプロピレン系樹脂粒子を得た。
このときのポリプロピレン系樹脂粒子を100粒あたり56mg、平均粒子径約1mmに調整した。
次に、攪拌機付5Lオートクレーブに、前記ポリプロピレン系樹脂粒子800gを入れ、水性媒体として純水2kg、ピロリン酸マグネシウム20g、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.5gを加え、攪拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温して水系懸濁液とした。
次に、この懸濁液中にジクミルパーオキサイド0.8gを溶解させたスチレン単量体400gを30分で滴下した。滴下後30分保持し、ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。
次に、反応系の温度をポリプロピレン系樹脂粒子の融点と同じ140℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をポリプロピレン系樹脂粒子中で重合(第1の重合)させた。
次に、第1の重合の反応液をポリプロピレン系樹脂粒子の融点より20℃低い120℃にして、この懸濁液中に、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.5gを加えた後、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド3.6gを溶解したスチレン単量体800gを4時間かけて滴下し、ポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合(第2の重合)を行った(PP樹脂/PS比率=40/60)。
この滴下終了後、120℃で1時間保持した後に140℃に昇温し3時間保持して重合を完結し、改質ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
次に、常温まで冷却し、該樹脂粒子を5Lオートクレーブから取り出した。取り出し後の改質ポリスチレン系樹脂粒子2kgと水2Lを再び攪拌機付5Lオートクレーブに投入し、発泡剤としてブタン300gを攪拌機付5Lオートクレーブに注入した。注入後、70℃に昇温し、4時間攪拌を続けた。
その後、常温まで冷却して5Lオートクレーブから取り出し、脱水乾燥した後に発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
次に、得られた発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を嵩発泡倍数40倍に予備発泡させ、予備発泡粒子を得た。そして、得られた予備発泡粒子を用いて、吸光度の測定を行い、ポリスチレン系樹脂比率を算出した。
そして、予備発泡後の予備発泡粒子は、常温にて12時間程度静置して熟成させた後、穴あきビニール袋に移し、オーブン(熱風乾燥機)で60℃(50〜80℃)で数日アニールする発泡剤除去を行った。この発泡剤除去後の予備発泡粒子の残ガス量を測定した。本実施例では、予備発泡粒子の残ガス量を0.0質量%にまで減らした。
次に、発泡剤除去後の予備発泡粒子を、400mm×300mm×30mmの大きさのキャビティを有する成形型の該キャビティ内に充填し、成形型に0.11MPaの水蒸気を60秒間導入し、その後、発泡成形体の最高面圧が0.001MPaに低下するまで冷却して、発泡成形体を得た。この成形条件により外観、融着とも良好な空隙を有する発泡成形体を得た。
なお、発泡成形には、発泡成形機(積水工機社製、商品名「ACE−3SP」)を使用した。
得られた発泡成形体を用いて、発泡成形体の密度、曲げの破断点変位量、空隙率、吸音率及び加熱寸法変化率の測定を行った。
なお、本実施例では、発泡倍数40倍の発泡成形体も得ることができた。
予備発泡粒子の製造において、残ガス量を0.9質量%としたこと、発泡体成形時の加熱時間を45秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
予備発泡粒子の製造において、残ガス量を2.9質量%としたこと、発泡体成形時の加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
PP樹脂/PS比率を30/70としたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
PP樹脂/PS比率を30/70としたこと、残ガス量を2.7質量%としたこと、発泡体成形時の加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
PP樹脂/PS比率を20/80としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.10MPaとしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
PP樹脂/PS比率を20/80としたこと、残ガス量を3.0質量%としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.10MPaとしたこと、発泡体成形時の加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
PP樹脂/PS比率を50/50としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.12MPaとしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
PP樹脂/PS比率を50/50としたこと、残ガス量を3.0質量%としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.12MPaとしたこと、発泡体成形時の加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
残ガス量を0.9質量%としたこと、予備発泡粒子の嵩発泡倍数を5倍としたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
残ガス量を1.0質量%としたこと、予備発泡粒子の嵩発泡倍数を60倍としたこと、発泡体成形時の加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
残ガス量を0.9質量%としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.12MPaとしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
発泡体成形時の蒸気圧を0.10MPaとしたこと、発泡体成形時の加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
PP樹脂/PS比率を55/45としたこと、残ガス量を3.2質量%としたこと、予備発泡粒子の嵩発泡倍数を4.5倍としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.08MPaとしたこと、発泡体成形時の加熱時間を45秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
PP樹脂/PS比率を60/40としたこと、残ガス量を3.3質量%としたこと、予備発泡粒子の嵩発泡倍数を4.5倍としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.08MPaとしたこと、発泡体成形時の加熱時間を45秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
PP樹脂/PS比率を10/90としたこと、残ガス量を3.8質量%としたこと、予備発泡粒子の嵩発泡倍数を65倍としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.08MPaとしたこと、発泡体成形時の加熱時間を45秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
PP樹脂/PS比率を15/85としたこと、残ガス量を3.8質量%としたこと、予備発泡粒子の嵩発泡倍数を65倍としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.08MPaとしたこと、発泡体成形時の加熱時間を45秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
PP樹脂/PS比率を40/60としたこと、残ガス量を3.5質量%としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.08MPaとしたこと、発泡体成形時の加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
残ガス量を3.5質量%としたこと、発泡体成形時の加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
残ガス量を3.9質量%としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.08MPaとしたこと、発泡体成形時の加熱時間を45秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
残ガス量を1.2質量%としたこと、発泡体成形時の蒸気圧を0.08MPaとしたこと、発泡体成形時の加熱時間を45秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
PP樹脂/PS比率を30/70としたこと、残ガス量を3.5質量%としたこと、発泡体成形時の加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
PP樹脂/PS比率を20/80としたこと、残ガス量を4.0質量%としたこと、発泡体成形時の加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
PP樹脂/PS比率を50/50としたこと、残ガス量を3.8質量%としたこと、発泡体成形時の加熱時間を30秒にしたこと以外は、実施例1と同様にして、改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造した。
また、比較例1〜11の結果を表2にまとめて記す。
(a)密度が0.0166〜0.20g/cm3の範囲、
(b)空隙率が10〜30%の範囲、
(c)JIS K7221−2:1999記載の方法に準じて測定した曲げの破断点変位量が10mm以上、
(d)ASTM E1050に準拠し、厚み30mmで垂直入射吸音率を測定したときに500Hz以上6000Hz以下の範囲における吸音率が0.5以上の部分が存在すること、
の各条件を全て満たす吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができた。
Claims (7)
- プロピレン−エチレン共重合体を含み融解開始温度が60〜100℃の範囲内であるプロピレン系樹脂100質量部に対して、ポリスチレン系樹脂を100質量部以上400質量部未満含有し、かつ、ATR法赤外分光分析により測定された粒子表面の赤外吸収スペクトルから得られる698cm−1における吸光度D698と1376cm−1における吸光度D1376との比(D698/D1376)が0.1〜2.5の範囲である改質ポリスチレン系樹脂粒子に、炭化水素系発泡剤を含浸させた上で予備発泡させて嵩密度が0.0166〜0.20g/cm3の範囲である予備発泡粒子とし、該予備発泡粒子に残存する発泡剤を強制的に減少させて、残存発泡剤量が0.0〜3.0質量%である発泡剤除去発泡粒子とし、次いで該発泡剤除去発泡粒子を型内発泡成形を行って、
(a)密度が0.0166〜0.20g/cm3の範囲、
(b)空隙率が10〜30%の範囲、
(c)JIS K7221−2:1999記載の方法に準じて測定した曲げの破断点変位量が10mm以上、
(d)ASTM E1050に準拠し、厚み30mmで垂直入射吸音率を測定したときに500Hz以上6000Hz以下の範囲における吸音率が0.5以上の部分が存在すること、
の各条件を満たす吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることを特徴とする吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法。 - 前記改質ポリスチレン系樹脂粒子は、
(A)分散剤を含む水性懸濁液中に、ポリプロピレン系樹脂粒子100質量部と、スチレン系単量体100質量部以上400質量部未満と、重合開始剤とを分散させる工程、
(B)得られた分散液を前記スチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して前記スチレン系単量体を前記ポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させる工程、
(C)前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融点をT℃としたとき、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度で、前記スチレン系単量体の第1の重合を行う工程、
(D)前記第1の重合工程に続いて、スチレン系単量体と、重合開始剤とを加え、かつ、前記ポリプロピレン系樹脂粒子の融点をT℃としたとき、(T−25)℃〜(T+10)℃の温度とすることにより、前記ポリプロピレン系樹脂粒子への前記スチレン系単量体の含浸および第2の重合を行う工程、を経て製造されることを特徴とする請求項1に記載の吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法。 - 炭化水素系発泡剤がプロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、シクロペンタンから成る群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法。
- 予備発泡粒子に残存する発泡剤を強制的に減少させる工程が、
(i)予備発泡粒子を通気性容器に入れ、50〜80℃の熱風通風乾燥を数時間〜数日間行う処理方法、
(ii)予備発泡粒子を通気性容器に入れ、常温下、残存する発泡剤量が0.0〜3.0質量%となるまで静置する処理方法、のうちの一方であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法。 - 発泡剤除去発泡粒子の残存発泡剤量を0.0〜3.0質量%の範囲とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体の製造方法により得られた吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体。
- JIS K6767:1999KのB法により測定された80℃での加熱寸法変化率が1.5%未満であることを特徴とする請求項6に記載の吸音性改質ポリスチレン系樹脂発泡成形体。
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