JP2010208969A - 寿命延長剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】個体における加齢による老化を防止し、生体の恒常性維持に有効であり、長期間継続的に摂取しても、安全に寿命を延長することのできる寿命延長剤を提供する。
【解決手段】本発明の課題は、活性炭を有効成分とする寿命延長剤、抗加齢剤、又はクロソタンパク質発現促進剤によって解決することができる。本発明によれば、実質的に副作用のない経口投与剤の服用によって、寿命を延長することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、寿命延長剤、抗加齢剤、及びクロソ(Klotho)タンパク質発現促進剤に関する。本発明によれば、実質的に副作用のない経口投与剤の服用によって、寿命を延長することができる。
ヒトを含む動物においては、加齢とともに個体の機能低下、例えば、視力又は聴力の低下、運動能力の低下、免疫機能の低下、記憶障害、及び生体内の各臓器の機能低下などが引き起こされる。このような個体の機能低下を老化と称するが、老化は個体の様々な組織や臓器で徐々に進行する多面的な現象であり、老化が進行すると個体の恒常性を維持することができなくなり、最終的には死に到るものである。
現在、先進諸国では、寿命の延長が顕著であるが、それに伴い老化による個体の機能低下が起こり、そして更には様々な疾患が発生し、その治療のための医療費の増加が問題となっている。このような中で、個体の恒常性を維持し、老化に伴う疾患を引き起こすことなく、寿命を延長させることが可能であれば、医療費の抑制にもつながり、更には個人のウエルネスの観点からも有用であると考えられる。
さて、このような寿命を延長する効果を有する薬剤について、いくつかの化合物が報告されている。例えば、ワインに含まれているポルフィリンであるレスベラトロルは、高カロリー食を摂取したマウスの寿命を延長させることができる(非特許文献1)。また、りんご由来ポリフェノールは、鬱血性心不全のモデルマウスの寿命を延長させることが報告されている(特許文献1)。更に、α−リノレン酸及びリノール酸を含む特定の物性の油脂組成物は、脳卒中易発生ラットの寿命を延長させることができる(特許文献2)。
また、老化抑制遺伝子としてクロソ(Klotho)遺伝子が発見されたが(非特許文献2)、このクロソ遺伝子が変異したマウスは、ヒトの老化症状に似た症状を示し、例えば、寿命の短縮、成長障害、不妊、活動量の低下、胸腺の萎縮、皮膚の萎縮、骨格筋の萎縮、皮下脂肪・内臓脂肪の減少、動脈硬化(中膜石灰化)、腎細動脈石灰化、軟部組織石灰化(胃、脈絡叢、精巣)、肺気腫、骨密度減少、亀背、脊髄前角細胞の変性、認知障害、聴力障害、低血糖、高リン血症、高カルシウム血症などの老化症状を示す。このクロソ遺伝子が欠損した、クロソ遺伝子欠損ホモマウスは、生後3週以降に顕著な老化症状を示し、早期に死に至るが、エバンスブルー又はトリパンブルーの投与により、寿命が延長することが報告されている(特許文献3)。
しかしながら、前記の化合物による寿命延長効果は、高カロリー食を摂取したマウス、特定の疾患のモデルマウス、又は遺伝子変異のある老化モデルマウスにおけるものである。すなわち、これらの化合物は特定の疾患又は病的な状態を予防又は治療することにより、寿命を延長させているものであると考えられ、正常な個体の恒常性を維持させ、寿命を延長させているものではない。
一方、正常な個体における寿命を延長させることができる化合物としては、キトサン(特許文献4)及びパーオキシダーゼ(特許文献5)が報告されている。しかしながら、これらの化合物の寿命延長効果は、顕著なものではなかった。
特開2007−197374号 特開2005−210978号 特開2008−174473号 特開2005−289839号 特開平5−124980号
「ネイチャー(Nature)」(米国)、2006年、第444巻、第7117号、p.337−342 「ネイチャー(Nature)」(米国)、1997年、第390巻、第6655号、p.45−51
本発明の目的は、個体における加齢による老化を防止し、生体の恒常性維持に有効であり、長期間継続的に摂取しても、安全に寿命を延長することのできる寿命延長剤を提供することである。
本発明者は、正常の個体において寿命を延長させることのできる寿命延長剤について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、活性炭の経口投与により、正常な個体において優れた寿命延長効果が現れることを見出した。活性炭製剤は、従来、腎臓疾患などに対する経口解毒剤として使われており、副作用や毒性が実質的にないことも知られているが、正常個体において寿命を延長する作用を有するとの知見は、従来は全く無い。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は活性炭を有効成分とする寿命延長剤に関する。
本発明の寿命延長剤の好ましい態様においては、前記活性炭が球状活性炭である。
また、本発明は活性炭を有効成分とする抗加齢剤に関する。
本発明の抗加齢剤の好ましい態様においては、前記活性炭が球状活性炭である。
更に、本発明は活性炭を有効成分とするクロソタンパク質発現促進剤に関する。
本発明のクロソタンパク質発現促進剤の好ましい態様においては、前記活性炭が球状活性炭である。
本発明の寿命延長剤によれば、正常な個体において、生体の恒常性を維持させ、寿命を延長させることができ、更に、疾患を有する個体においても寿命を延長させることができる。また、本発明の抗加齢剤によれば、正常な個体又は加齢に関連する疾患を有する個体において、老化を防止することができる。更に、本発明のクロソタンパク質発現促進剤によれば、正常な個体又はクロソタンパク質の発現の低下に関連する疾患を有する個体において、クロソタンパク質の発現を促進(又は、発現の低下を抑制)することができる。また、本発明の寿命延長剤、抗加齢剤、及びクロソタンパク質発現促進剤は、連続的に経口投与しても、生体内に吸収される化合物ではないため、毒性がなく、有害な副作用がない。
正常ラットにおける、球状活性炭投与群及び球状活性炭の非投与対照群の2年後の生存率を示したグラフである。 正常ラットにおける、球状活性炭投与群及び球状活性炭の非投与対照群の腎臓でのクロソタンパク質の発現を、免疫組織染色により比較した結果を示すグラフである。 正常ラットにおける、球状活性炭投与群及び球状活性炭の非投与対照群の血清クレアチニンの値を示したグラフである。 正常ラットにおける、球状活性炭投与群及び球状活性炭の非投与対照群の血中尿素窒素(BUN)の値を示したグラフである。 正常ラットにおける、球状活性炭投与群及び球状活性炭の非投与対照群のクレアチニン・クリアランスの値を示したグラフである。 慢性腎不全モデルラットにおける、球状活性炭投与群及び球状活性炭の非投与対照群の腎臓でのクロソ遺伝子のコードするタンパク質の発現を、免疫組織染色により比較した結果を示すグラフである。Normalは、擬似手術群を示し、球状活性炭の非投与の正常対照群である。
本発明の医薬製剤の有効成分である活性炭としては、医療用に使用することが可能な活性炭であれば特に限定されるものではないが、経口投与用活性炭、すなわち、医療用に内服使用することが可能な活性炭が好ましい。前記活性炭としては、例えば、粉末状活性炭又は球状活性炭を用いることができる。粉末状活性炭としては、従来から解毒剤として医療に用いられている公知の粉末状活性炭を用いることができるが、副作用として便秘を引き起こす場合があるので、球状活性炭を用いるのが好ましい。
前記球状活性炭の粒径は、0.01〜2mmであることが好ましく、0.05〜2mmであることがより好ましく、0.05〜1mmであることが更に好ましい。
前記球状活性炭としては、例えば、特開平11−292770号公報又は特開2002−308785号公報(特許第3522708号公報)に記載の球状活性炭を用いることができる。以下、特開平11−292770号公報に記載の球状活性炭について説明し、続いて、特開2002−308785号公報(特許第3522708号公報)に記載の球状活性炭について説明する。
特開平11−292770号公報に記載の球状活性炭は、好ましくは直径0.05〜2mm、より好ましくは0.1〜1mmの球状活性炭である。また、好ましくは比表面積が500〜2000m/g、より好ましくは700〜1500m/gの球状活性炭である。また、好ましくは細孔半径100〜75000オングストロームの空隙量が0.01〜1mL/g、より好ましくは0.05〜0.8mL/gの球状活性炭である。なお、上記の比表面積は、自動吸着量測定装置を用いたメタノール吸着法により測定した値である。空隙量は、水銀圧入ポロシメータにより測定した値である。前記の球状活性炭は、粉末活性炭に比べ、服用時に飛散せず、しかも、連続使用しても便秘を惹起しない点で有利である。
球状活性炭の形状は、重要な因子の1つであり、実質的に球状であることが重要である。球状活性炭の中では、後述の石油系ピッチ由来の球状活性炭が真球に近いため、特に好ましい。
特開平11−292770号公報に記載の球状活性炭の製造には、任意の活性炭原料、例えば、オガ屑、石炭、ヤシ殻、石油系若しくは石炭系の各種ピッチ類又は有機合成高分子を用いることができる。球状活性炭は、例えば、原料を炭化した後に活性化する方法によって製造することができる。活性化の方法としては、水蒸気賦活、薬品賦活、空気賦活又は炭酸ガス賦活などの種々の方法を用いることができるが、医療に許容される純度を維持することが必要である。
特開平11−292770号公報に記載の球状活性炭としては、炭素質粉末からの造粒活性炭、有機高分子焼成の球状活性炭及び石油系炭化水素(石油系ピッチ)由来の球状活性炭などがある。
炭素質粉末からの造粒活性炭は、例えば、タール、ピッチ等のバインダーで炭素質粉末原料を小粒球形に造粒した後、不活性雰囲気中で600〜1000℃の温度に加熱焼成して炭化し、次いで、賦活することにより得ることができる。賦活方法としては、水蒸気賦活、薬品賦活、空気賦活又は炭酸ガス賦活などの種々の方法を用いることができる。水蒸気賦活は、例えば、水蒸気雰囲気中、800〜1100℃の温度で行われる。
有機高分子焼成の球状活性炭は、例えば、特公昭61−1366号公報に開示されており、次のようにして製造することが可能である。縮合型又は重付加型の熱硬化性プレポリマーに、硬化剤、硬化触媒、乳化剤などを混合し、攪拌下で水中に乳化させ、室温又は加温下に攪拌を続けながら反応させる。反応系は、まず懸濁状態になり、更に攪拌することにより熱硬化性樹脂球状物が出現する。これを回収し、不活性雰囲気中で500℃以上の温度に加熱して炭化し、前記の方法により賦活して有機高分子焼成の球状活性炭を得ることができる。
石油系ピッチ由来の球状活性炭は、直径が好ましくは0.05〜2mm、より好ましくは0.1〜1mm、比表面積が好ましくは500〜2000m/g、より好ましくは700〜1500m/g、細孔半径100〜75000オングストロームの空隙量が好ましくは0.01〜1mL/gである。この石油系ピッチ由来の球状活性炭は、例えば、以下の2種の方法で製造することができる。
第1の方法は、例えば、特公昭51−76号公報(米国特許第3917806号明細書)及び特開昭54−89010号公報(米国特許第4761284号明細書)に記載されているように、まず、溶融状態で小粒球形状としたピッチ類を酸素により不融化した後、不活性雰囲気中で600〜1000℃の温度に加熱焼成して炭化し、次いで、水蒸気雰囲気中で850〜1000℃の温度で賦活する方法である。第2の方法は、例えば、特公昭59−10930号公報(米国特許第4420433号明細書)に記載されているように、まず、溶融状態で紐状としたピッチ類を破砕した後、熱水中に投入して球状化し、次いで、酸素により不融化した後、上記の第1の方法と同様の条件で炭化、賦活する方法である。
本発明において有効成分の球状活性炭としては、(1)アンモニア処理などを施した球状活性炭、(2)酸化及び/又は還元処理を施した球状活性炭なども使用することができる。これらの処理を施すことのできる球状活性炭は、前記の石油系ピッチ由来の球状活性炭、炭素質粉末の造粒活性炭、有機高分子焼成の球状活性炭の何れであってもよい。
前記のアンモニア処理とは、例えば、球状活性炭を、1〜1000ppmのアンモニアを含有するアンモニア水溶液で、アンモニア水溶液と球状活性炭の容量比を2〜10として、10〜50℃の温度で、0.5〜5時間処理することからなる。前述の石油系ピッチ由来の球状活性炭にアンモニア処理を施した活性炭としては、特開昭56−5313号公報(米国特許第4761284号明細書)に記載の球状活性炭を挙げることができる。例えば、アンモニア処理が施された球状活性炭としては直径が0.05〜2mm、好ましくは0.1〜1mm、比表面積が500〜2000m/g、好ましくは700〜1500m/g、細孔半径100〜75000オングストロームの空隙量が0.01〜1mL/g、pHが6〜8の球状活性炭を例示することができる。
前記の酸化処理とは、酸素を含む酸化雰囲気で高温熱処理を行うことを意味し、酸素源としては、純粋な酸素、酸化窒素又は空気などを用いることができる。また、還元処理とは、炭素に対して不活性な雰囲気で高温熱処理を行うことを意味し、炭素に対して不活性な雰囲気は、窒素、アルゴン若しくはヘリウム又はそれらの混合ガスを用いて形成することができる。
前記の酸化処理は、好ましくは酸素含有量0.5〜25容量%、より好ましくは酸素含有量3〜10容量%の雰囲気中、好ましくは300〜700℃、より好ましくは400〜600℃の温度で行われる。前記の還元処理は、好ましくは700〜1100℃、より好ましくは800〜1000℃の温度で不活性雰囲気中で行われる。
前述の石油系ピッチ由来の球状活性炭に酸化及び/又は還元処理を施した例としては、特公昭62−11611号公報(米国特許第4681764号明細書)に記載の球状活性炭を挙げることができる。
酸化及び/又は還元処理が施された球状活性炭としては、直径が0.05〜2mm、好ましくは0.1〜1mm、比表面積が500〜2000m/g、好ましくは700〜1500m/g、細孔半径100〜75000オングストロームの空隙量が0.01〜1mL/gである球状活性炭が好ましい。
特開2002−308785号公報に記載の球状活性炭は、直径が0.01〜1mmであり、BET法により求められる比表面積が700m/g以上であり、細孔直径20〜15000nmの細孔容積が0.04mL/g以上で0.10mL/g未満であり、全酸性基が0.30〜1.20meq/gであり、全塩基性基が0.20〜0.70meq/gである球状活性炭である。特開2002−308785号公報に記載の球状活性炭は、特定範囲の細孔容積を有する。すなわち、細孔直径20〜15000nmの細孔容積が0.04mL/g以上で0.10mL/g未満である。また、本発明においては、全塩基性基が0.20〜1.00meq/gである球状活性炭(特願2002−293906号又は特願2002−293907号参照)も使用することができる。
一方、前記特開平11−292770号公報に記載の球状活性炭は、細孔半径100〜75000オングストロームの空隙容積(すなわち、細孔直径20〜15000nmの細孔容積)が0.1〜1mL/gである。特開2002−308785号公報の記載によれば、細孔直径20〜15000nmの細孔容積を0.04mL/g以上で0.10mL/g未満に調整すると、毒性物質であるβ−アミノイソ酪酸に対する高い吸着特性を維持しつつ、有益物質であるα−アミラーゼに対する吸着特性が有意に低下する。球状活性炭の細孔直径20〜15000nmの細孔容積が大きくなればなるほど消化酵素等の有益物質の吸着が起こりやすくなるため、有益物質の吸着を少なくする観点からは、前記細孔容積は小さいほど好ましい。しかしながら、一方で、細孔容積が小さすぎると毒性物質の吸着量も低下する。従って、経口投与用吸着剤においては、毒性物質の吸着量(T)の有益物質の吸着量(U)に対する比(T/U)、すなわち、選択吸着率が重要である。例えば、球状活性炭の選択吸着率を、DL−β−アミノイソ酪酸(毒性物質)の吸着量(Tb)のα−アミラーゼ(有益物質)の吸着量(Ua)に対する比(Tb/Ua)として評価することができる。すなわち、選択吸着率は、例えば、以下の式:
A=Tb/Ua
(ここで、Aは選択吸着率であり、TbはDL−β−アミノイソ酪酸の吸着量であり、Uaはα−アミラーゼの吸着量である)
によって評価することができる。
特開2002−308785号公報に記載の球状活性炭は、細孔直径20〜15000nmの細孔容積が0.04mL/g以上で0.10mL/g未満の範囲内で優れた選択吸着率を示し、前記細孔容積が0.05mL/g以上で0.10mL/g未満の範囲内で一層優れた選択吸着率を示す。
特開2002−308785号公報に記載の球状活性炭は、直径が0.01〜1mmである。直径は、好ましくは0.02〜0.8mmである。なお、本明細書で「直径がDl〜Duである」という表現は、JIS K 1474に準じて作成した粒度累積線図(平均粒子径の測定方法に関連して後で説明する)において、ふるいの目開きDl〜Duの範囲に対応するふるい通過百分率(%)が90%以上であることを意味する。
特開2002−308785号公報に記載の球状活性炭は、BET法により求められる比表面積(以下「SSA」と省略することがある)が700m/g以上である。SSAが700m/gより小さい球状活性炭では、毒性物質の吸着性能が低くなるので好ましくない。SSAは、好ましくは800m/g以上である。SSAの上限は特に限定されるものではないが、嵩密度及び強度の観点から、SSAは、2500m/g以下であることが好ましい。
更に、特開2002−308785号公報に記載の球状活性炭では、官能基の構成において、全酸性基が0.30〜1.20meq/gであり、全塩基性基が0.20〜0.70meq/gである。官能基の構成において、全酸性基が0.30〜1.20meq/gであり、全塩基性基が0.20〜0.70meq/gの条件を満足しない球状活性炭では、上述した有毒物質の吸着能が低くなるので好ましくない。官能基の構成において、全酸性基は0.30〜1.00meq/gであることが好ましく、全塩基性基は0.30〜0.60meq/gであることが好ましい。その官能基の構成は、全酸性基が0.30〜1.20meq/g、全塩基性基が0.20〜0.70meq/g、フェノール性水酸基が0.20〜0.70meq/g、及びカルボキシ基が0.15meq/g以下の範囲にあり、且つ全酸性基(a)と全塩基性基(b)との比(a/b)が0.40〜2.5であり、全塩基性基(b)とフェノール性水酸基(c)とカルボキシ基(d)との関係〔(b+c)−d〕が0.60以上であることが好ましい。
特開2002−308785号公報に記載の球状活性炭は、例えば、以下の方法によって製造することができる。
最初に、石油ピッチ又は石炭ピッチ等のピッチに対し、添加剤として、沸点200℃以上の2環式又は3環式の芳香族化合物又はその混合物を加えて加熱混合した後、成形してピッチ成形体を得る。なお、前記の球状活性炭は経口投与用であるので、その原料も、安全上充分な純度を有し、且つ品質的に安定であることが必要である。
次に、70〜180℃の熱水中で、前記のピッチ成形体を撹拌下に分散造粒して微小球体化する。更に、ピッチに対して低溶解度を有し、かつ前記添加剤に対して高溶解度を有する溶剤で、ピッチ成形体から添加剤を抽出除去し、得られた多孔性ピッチを、酸化剤を用いて酸化すると、熱に対して不融性の多孔性ピッチが得られる。こうして得られた不融性多孔性ピッチを、更に炭素と反応性を有する気流(例えば、スチーム又は炭酸ガス)中で、800〜1000℃の温度で処理すると、多孔性炭素質物質を得ることができる。
こうして得られた多孔性炭素質物質を、続いて、酸素含有量0.1〜50vol%(好ましくは1〜30vol%、特に好ましくは3〜20vol%)の雰囲気下、300〜800℃(好ましくは320〜600℃)の温度で酸化処理し、更に800〜1200℃(好ましくは800〜1000℃)の温度下、非酸化性ガス雰囲気下で加熱反応による還元処理をすることにより、特開2002−308785号公報に記載の球状活性炭を得ることができる。
前記の製造方法において、特定量の酸素を含有する雰囲気としては、純粋な酸素、酸化窒素又は空気等を酸素源として用いることができる。また、炭素に対して不活性な雰囲気としては、例えば、窒素、アルゴン、又はヘリウム等を単独で用いるか、あるいはそれらの混合物を用いることができる。
前記の原料ピッチに対して、芳香族化合物を添加する目的は、原料ピッチの軟化点を降下させることにより流動性を向上させて微小球体化を容易にすること及び成形後のピッチ成形体からその添加剤を抽出除去させることにより成形体を多孔質とし、その後の工程の酸化による炭素質材料の構造制御並びに焼成を容易にすることにある。このような添加剤としては、例えば、ナフタレン、メチルナフタレン、フェニルナフタレン、ベンジルナフタレン、メチルアントラセン、フェナンスレン、又はビフェニル等を単独で、又はそれらの2種以上の混合物を用いることができる。ピッチに対する添加量は、ピッチ100重量部に対し芳香族化合物10〜50重量部の範囲が好ましい。
ピッチと添加剤との混合は、均一な混合を達成するために、加熱して溶融状態で行うのが好ましい。ピッチと添加剤との混合物は、得られる多孔性球状炭素質の粒径(直径)を制御するため、粒径約0.01〜1mmの粒子に成形することが好ましい。成形は溶融状態で行ってもよく、また混合物を冷却後に粉砕する等の方法によってもよい。
ピッチと添加剤との混合物から添加剤を抽出除去するための溶剤としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、又はヘプタン等の脂肪族炭化水素、ナフサ、又はケロシン等の脂肪族炭化水素を主成分とする混合物、あるいはメタノール、エタノール、プロパノール、又はブタノール等の脂肪族アルコール類等が好適である。
このような溶剤でピッチと添加剤との混合物成形体から添加剤を抽出することによって、成形体の形状を維持したまま、添加剤を成形体から除去することができる。この際に、成形体中に添加剤の抜け穴が形成され、均一な多孔性を有するピッチ成形体が得られるものと推定される。
なお、添加剤の抜け穴サイズ(すなわち、細孔容積)の制御は、常法、例えば、添加剤の量、ピッチ成形体の微小球体化工程における添加剤の析出温度(冷却温度)を制御することによって実施することができる。また、添加剤の抽出により生成した細孔容積は不融化条件によっても影響を受ける。例えば、不融化処理が強ければ熱処理による熱収縮が小さくなり、添加剤の抽出により得られた細孔が維持されやすい傾向にある。
こうして得られた多孔性ピッチ成形体を、次いで不融化処理、すなわち酸化剤を用いて、好ましくは常温から300℃までの温度で酸化処理することにより、熱に対して不融性の多孔性不融性ピッチ成形体を得ることができる。ここで用いる酸化剤としては、例えば、酸素ガス(O)、あるいは酸素ガス(O)を空気や窒素等で希釈した混合ガスを挙げることができる。
特開2002−308785号公報に記載の球状活性炭が有する各物性値、すなわち、平均粒子径、比表面積、細孔容積、全酸性基、及び全塩基性基は、以下の方法によって測定する。
(1)平均粒子径
球状活性炭についてJIS K 1474に準じて粒度累積線図を作成する。平均粒子径は、粒度累積線図において、横軸の50%の点の垂直線と粒度累積線との交点から、横軸に水平線を引いて交点の示すふるいの目開き(mm)を求めて、平均粒子径とする。
(2)比表面積
連続流通式のガス吸着法による比表面積測定器(例えば、MICROMERITICS社製「Flow Sorb II 2300」)を用いて、球状活性炭試料のガス吸着量を測定し、BETの式により比表面積を計算することができる。具体的には、試料である球状活性炭を試料管に充填し、その試料管に窒素30vol%を含有するヘリウムガスを流しながら以下の操作を行い、球状活性炭試料への窒素吸着量を求める。すなわち、試料管を−196℃に冷却し、球状活性炭試料に窒素を吸着させる。次に、試料管を室温に戻す。このとき球状活性炭試料から脱離してくる窒素量を熱伝導度型検出器で測定し、吸着ガス量(v)とする。
BETの式から誘導された近似式:
=1/(v・(1−x))
を用いて液体窒素温度における、窒素吸着による1点法(相対圧力x=0.3)によりvを求め、次式:
比表面積=4.35×v(m/g)
により試料の比表面積を計算する。前記の各計算式で、vは試料表面に単分子層を形成するのに必要な吸着量(cm/g)であり、vは実測される吸着量(cm/g)であり、xは相対圧力である。
(3)水銀圧入法による細孔容積
水銀ポロシメータ(例えば、MICROMERITICS社製「AUTOPORE 9200」)を用いて細孔容積を測定することができる。試料である球状活性炭を試料容器に入れ、2.67Pa以下の圧力で30分間脱気する。次いで、水銀を試料容器内に導入し、徐々に加圧して水銀を球状活性炭試料の細孔へ圧入する(最高圧力=414MPa)。このときの圧力と水銀の圧入量との関係から以下の各計算式を用いて球状活性炭試料の細孔容積分布を測定する。
具体的には、細孔直径15μmに相当する圧力(0.07MPa)から最高圧力(414MPa:細孔直径3nm相当)までに球状活性炭試料に圧入された水銀の体積を測定する。細孔直径の算出は、直径(D)の円筒形の細孔に水銀を圧力(P)で圧入する場合、水銀の表面張力を「γ」とし、水銀と細孔壁との接触角を「θ」とすると、表面張力と細孔断面に働く圧力の釣り合いから、次式:
−πDγcosθ=π(D/2)・P
が成り立つ。従って
D=(−4γcosθ)/P
となる。
本明細書においては、水銀の表面張力を484dyne/cmとし、水銀と炭素との接触角を130度とし、圧力PをMPaとし、そして細孔直径Dをμmで表示し、下記式:
D=1.27/P
により圧力Pと細孔直径Dの関係を求める。本発明における細孔直径20〜15000nmの範囲の細孔容積とは、水銀圧入圧0.07MPaから63.5MPaまでに圧入された水銀の体積に相当する。
(4)全酸性基
0.05規定のNaOH溶液50mL中に、200メッシュ以下に粉砕した球状活性炭試料1gを添加し、48時間振とうした後、球状活性炭試料をろ別し、中和滴定により求められるNaOHの消費量である。
(5)全塩基性基
0.05規定のHCl溶液50mL中に、200メッシュ以下に粉砕した球状活性炭試料1gを添加し、24時間振とうした後、球状活性炭試料をろ別し、中和滴定により求められるHClの消費量である。
なお、本発明の寿命延長剤の有効成分である球状活性炭としては、更に、特開2005−314415号公報に記載の平均粒子径が小さい球状活性炭、すなわち、平均粒子径が50〜200μmであり、BET法により求められる比表面積が700m/g以上である球状活性炭、あるいは特開2005−314416号公報に記載の平均粒子径が小さい表面改質球状活性炭、すなわち、平均粒子径が50〜200μmであり、BET法により求められる比表面積が700m/g以上であり、全酸性基が0.30meq/g〜1.20meq/gであり、そして全塩基性基が0.20meq/g〜0.9meq/gである表面改質球状活性炭を用いることもできる。
更に、本発明の寿命延長剤の有効成分である球状活性炭としては、WO2004/39381号公報に記載の球状活性炭あるいはその表面改質球状活性炭、すなわち、熱硬化性樹脂を炭素源として製造され、直径が0.01〜1mmであり、そしてラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000m/g以上である球状活性炭、あるいはその表面改質球状活性炭を用いることができる。
更に、本発明の寿命延長剤の有効成分である球状活性炭としては、WO2004/39380号公報に記載の球状活性炭あるいはその表面改質球状活性炭、すなわち、直径が0.01〜1mmであり、ラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000m/g以上であり、そして式(1):
R=(I15−I35)/(I24−I35) (1)
〔式中、I15は、X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折強度であり、I35は、X線回折法による回折角(2θ)が35°における回折強度であり、I24は、X線回折法による回折角(2θ)が24°における回折強度である〕
で求められる回折強度比(R値)が1.4以上である球状活性炭あるいはその表面改質球状活性炭を用いることができる。
本発明の寿命延長剤は、正常の個体(動物、特にはヒト)に投与することによって、個体の様々な組織や臓器における恒常性を正常な状態に維持し、その個体の寿命を延長させることができる。また、疾患を有する個体に対して投与することによって、個体の組織や臓器における機能を改善させ、その個体の疾患の進行を遅らせ、結果的に寿命を延長させることができる。
本発明の寿命延長剤は、成熟し老化の始まった正常の個体(動物、特にはヒト)に投与することによって、個体の様々な組織や臓器の恒常性を正常な状態に維持し、その個体の加齢を防止することができる。また、老化に関連する疾患、例えば脳卒中、動脈硬化を有する個体に対して投与することによって、個体の組織や臓器における機能を改善させ、その個体の加齢を防止し、結果的に前記疾患を予防又は治療することができる。
本発明のクロソタンパク質発現促進剤は、正常の個体(動物、特にはヒト)に投与することによって、脳又は腎臓におけるクロソタンパク質の発現を促進(又は、クロソタンパク質の発現の低下を抑制)することができる。また、クロソタンパク質の発現の低下に関連する疾患又は病的な状態、例えば寿命の短縮、成長障害、不妊、活動量の低下、胸腺の萎縮、皮膚の萎縮、骨格筋の萎縮、皮下脂肪・内臓脂肪の減少、動脈硬化(中膜石灰化)、腎細動脈石灰化、軟部組織石灰化(胃、脈絡叢、精巣)、肺気腫、骨密度減少、亀背、脊髄前角細胞の変性、認知障害、聴力障害、低血糖、高リン血症、高カルシウム血を示す個体に対して投与することによって、個体の組織や臓器におけるクロソタンパク質発現を促進し(又は、クロソタンパク質の発現の低下を抑制し)、結果的にそれらの疾患又は病的な状態を予防又は治療することができる。
本発明の寿命延長剤、抗加齢剤、又はクロソタンパク質発現促進剤における有効成分である、球状活性炭(好ましくは粒径0.01〜2mmの球状活性炭)は、それ単独で、あるいは、所望により薬剤学的又は獣医学的に許容することのできる通常の担体又は希釈剤と共に、対象[動物、好ましくは哺乳動物(特にはヒト)]に、有効量で投与することができる。本発明の寿命延長剤、抗加齢剤、又はクロソタンパク質発現促進剤は、好ましくは経口的に投与される。その投与量は、例えば、対象(哺乳動物、特にはヒト)、年齢、個人差、及び/又は病状などに依存する。例えば、ヒトの場合の1日当たりの投与量は、通常、球状活性炭量として2〜9gであるが、症状により、投与量を適宜増減してもよい。また、投与は1回又は数回に分けて行ってもよい。球状活性炭は、そのまま投与してもよいし、活性炭製剤として投与してもよい。球状活性炭をそのまま投与する場合、球状活性炭を飲料水などに懸濁したスラリーとして投与することもできる。
活性炭製剤における剤形としては、例えば、顆粒、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、スティック剤、分包包装体、又は懸濁剤などの任意の剤形を採用することができる。カプセル剤の場合、通常のゼラチンカプセルの他、必要に応じ、腸溶性のカプセルを用いることもできる。顆粒、錠剤、又は糖衣錠として用いる場合は、体内で元の微小粒子に解錠されることが必要である。活性炭製剤中の球状活性炭の含有量は、通常1〜100%である。本発明において、好ましい活性炭製剤は、カプセル剤、スティック剤、又は分包包装体である。これらの製剤の場合、球状活性炭は、そのまま容器に封入される。
本発明の寿命延長剤、抗加齢剤、又はクロソタンパク質発現促進剤は、例えば、連続的に経口投与しても、毒性がなく、便秘などの有害な副作用がなく、食品に混合して摂取することも可能であり、飲料に混合して摂取することも可能である。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
《製造例1:多孔性球状炭素質物質の製造》
特許第3522708号(特開2002−308785号公報)の実施例1に記載の方法と同様にして多孔性球状炭素質物質を得た。具体的な操作は、以下の通りである。
石油系ピッチ(軟化点=210℃;キノリン不溶分=1重量%以下;H/C原子比=0.63)68kgと、ナフタレン32kgとを、攪拌翼のついた内容積300Lの耐圧容器に仕込み、180℃で溶融混合を行った後、80〜90℃に冷却して押し出し、紐状成形体を得た。次いで、この紐状成形体を直径と長さの比が約1〜2になるように破砕した。
0.23重量%のポリビニルアルコール(ケン化度=88%)を溶解して93℃に加熱した水溶液中に、前記の破砕物を投入し、攪拌分散により球状化した後、前記のポリビニルアルコール水溶液を水で置換することにより冷却し、20℃で3時間冷却し、ピッチの固化及びナフタレン結晶の析出を行い、球状ピッチ成形体スラリーを得た。
大部分の水をろ過により除いた後、球状ピッチ成形体の約6倍重量のn−ヘキサンでピッチ成形体中のナフタレンを抽出除去した。このようにして得た多孔性球状ピッチを、流動床を用いて、加熱空気を通じながら、235℃まで昇温した後、235℃にて1時間保持して酸化し、熱に対して不融性の多孔性球状酸化ピッチを得た。
続いて、多孔性球状酸化ピッチを、流動床を用い、50vol%の水蒸気を含む窒素ガス雰囲気中で、900℃で170分間賦活処理して多孔性球状活性炭を得、更にこれを流動床にて、酸素濃度18.5vol%の窒素と酸素との混合ガス雰囲気下で470℃で3時間15分間、酸化処理し、次に流動床にて窒素ガス雰囲気下で900℃で17分間還元処理を行い、多孔性球状炭素質物質を得た。こうして得られた多孔性球状炭素質物質を、以下の薬理試験例において、球状活性炭として使用した。
得られた炭素質材料の主な特性は以下の通りである。
比表面積=1300m/g(BET法);
細孔容積=0.08mL/g
(水銀圧入法により求めた細孔直径20〜15000nmの範囲の細孔容積);
平均粒子径=350μm;
全酸性基=0.67meq/g;及び
全塩基性基=0.54meq/g。
《製造例2:多孔性球状炭素質物質の製造》
特開2005−314416号公報の実施例1に記載の方法と同様にして多孔性球状炭素質物質(表面改質球状活性炭)を得た。具体的な操作は、以下の通りである。
脱イオン交換水220g、及びメチルセルロース58gを1Lのセパラブルフラスコに入れ、これにスチレン105g、純度57%ジビニルベンゼン(57%のジビニルベンゼンと43%のエチルビニルベンゼン)184g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.68g、及びポロゲンとして1−ブタノール63gを適宜加えたのち、窒素ガスで系内を置換し、この二相系を200rpmで攪拌し、55℃に加熱してからそのまま20時間保持した。得られた樹脂を濾過し、ロータリーエバポレーターで乾燥させたのち、減圧乾燥機にて1−ブタノールを樹脂から蒸留により除去してから、90℃において12時間減圧乾燥させ、平均粒子径180μmの球状の多孔性合成樹脂を得た。多孔性合成樹脂の比表面積は約90m/gであった。
得られた球状の多孔性合成樹脂100gを目皿付き反応管に仕込み、縦型管状炉にて不融化処理を行った。不融化条件は、3L/minで乾燥空気を反応管下部より上部に向かって流し、5℃/hで260℃まで昇温したのち、260℃で4時間保持することにより球状の多孔性酸化樹脂を得た。球状の多孔性酸化樹脂を窒素雰囲気中600℃で1時間熱処理したのち、流動床を用い、64.5vol%の水蒸気を含む窒素ガス雰囲気中、820℃で10時間賦活処理を行い、球状活性炭を得た。得られた球状活性炭を、更に流動床にて、酸素濃度18.5vol%の窒素と酸素の混合ガス雰囲気下470℃で3時間15分間酸化処理し、次に流動床にて窒素ガス雰囲気下900℃で17分間還元処理を行い、表面改質球状活性炭を得た。
得られた表面改質球状活性炭の主な特性は以下の通りである。
比表面積=1763m/g(BET法);
細孔容積=0.05mL/g
(水銀圧入法により求めた細孔直径20〜15000nmの範囲の細孔容積);
平均粒子径=111μm(Dv50);
全酸性基=0.59meq/g;及び
全塩基性基=0.61meq/g。
《薬理試験例1》
オスのSprague−Dawley(SD)系ラット(日本クレア)を購入し、6週齢でランダムに経口投与用吸着剤投与群(5匹;以下、正常ラット投与群と称する)及び対照群(6匹)に分けた。対照群は、粉末飼料(CE−2;日本クレア)を与え、正常ラット投与群は、前記粉末飼料に製造例1で調製した球状活性炭を5%混餌して自由摂取させ、2年間ラット飼育ゲージで単飼した。正常ラット投与群及び対照群の生存率の変化を図1に示す。対照群の2年後の生存率は、50%であったのに対して、正常ラット投与群は2年間の飼育で100%生存した。
従って、経口投与用吸着剤は、正常ラットの寿命を延長する効果があることが明らかとなった。
また、2年間の投与試験期間終了後、対照群の生存した3匹のマウス及び正常ラット投与群の4匹のマウスを屠殺し、血清中のクレアチニン、血中尿素窒素、及びクレアチニン・クリアランスを測定した。
更に、老化抑制遺伝子と考えられているクロソ遺伝子のコードするタンパク質(以下、クロソタンパク質と称する)の発現を、それぞれのラットの腎臓において検討した。具体的には、腎臓から腎臓病理切片を作製し、腎臓病理組織中のクロソタンパク質の発現を抗クロソ抗体(EverestBiotech,UK)で免疫染色した。そして、顕微鏡下で、腎臓の断面上の染色部分を画像に取り込み、ニコンデジタルネットカメラDN100(ニコン社)を用いて、腎臓全体の面積に対する抗体で染色された面積を算出することによって、クロソタンパク質の発現を解析した。血清中のクレアチニン、血中尿素窒素、及びクレアチニン・クリアランスの結果を図2〜4に、クロソタンパク質の発現を図5に示す。
血清中のクレアチニン、血中尿素窒素、及びクレアチニン・クリアランスは、正常ラット投与群と対照群との間で有意差がなかったが、クロソタンパク質の発現は、対照群に比して、正常ラット投与群において、有意に上昇していた。
従って、経口投与用吸着剤は、正常ラットの腎機能には特に影響を与えないが、クロソタンパク質の発現の低下を抑制、又は発現を亢進する効果があることが明らかとなった。
《薬理試験例2》
オスのSprague−Dawley(SD)系ラット(日本クレア)を購入し、1週間の馴化期間後の7週齢にて、手術群(計18匹)と擬似手術群(計9匹)とに分け、手術群は、右腎の摘出及び左腎の2/3の切除を行い、1/6の腎実質を残存させた慢性腎不全モデルを作製した。擬似手術群は、7週齢に、開腹手術を行うのみで、右腎の摘出及び左腎の2/3の切除を行わずに、そのまま開腹部を縫合した。腎摘出術による影響が安定してくる4週目(11週齢)に体重、腎機能検査値(血清クレアチニン、血中尿素窒素、クレアチニン・クリアランス、尿蛋白排雅量)及び血清インドキシル硫酸濃度と尿中インドキシル硫酸濃度及び血圧の各パラメータを測定し、手術群は、群間に隔たりのないように、9匹ずつ腎不全対照群及び経口投与用吸着剤投与群(以下、腎不全投与群と称する)の2群に分け、擬似手術群を正常対照群とした。
各群は、粉末飼料(CE−2;日本クレア)を給餌され、腎不全投与群は、前記粉末飼料に製造例1で調製した球状活性炭を5%混餌投与された。なお、摂餌量は測定し、球状活性炭が、必要投与量(4g/kg/day)に満たない場合は、不足分を流動食混合により原則として土日を除く毎日追加投与した。
12週間の飼育後、ラットを屠殺し、正常対照群(n=6)、腎不全対照群(n=5)、腎不全投与群(n=6)について、実施例1と同様のプロトコールに従い、クロソタンパク質の発現を検討した。結果を図6に示す。
腎不全対照群においては、クロソタンパク質の発現が低下しているのに対して、腎不全投与群においては、クロソタンパク質の発現が改善されていた。
《製剤調製例1:カプセル剤の調製》
前記製造例1で得た球状活性炭200mgをゼラチンカプセルに封入してカプセル剤を調製した。
《製剤調製例2:スティック剤の調製》
前記製造例1で得た球状活性炭2gを積層フィルム製スティックに充填した後、ヒートシールしてスティック剤とした。
本発明の寿命延長剤は、正常な個体又は疾患を有する個体の恒常性を維持し、老化を防止することによって、寿命を延長することができる。また、本発明の抗加齢剤は、正常な個体又は加齢に関連する疾患を有する個体において、老化を防止することができる。更に、本発明のクロソタンパク質発現促進剤は、正常な個体又はクロソタンパク質の発現の低下に関連する疾患を有する個体において、クロソタンパク質の発現を促進(又は、発現の低下を抑制)することができる。本発明の寿命延長剤、抗加齢剤、及びクロソタンパク質発現促進剤は、毒性及び有害な副作用がないため、連続的に経口投与することができる。従って、本発明によれば、正常な個体の老化等に関連する疾患を予防し、個人の健康管理に寄与することができ、更に、医療費の抑制にもつながることができる。

Claims (6)

  1. 活性炭を有効成分とする寿命延長剤。
  2. 前記活性炭が球状活性炭である、請求項1に記載の寿命延長剤。
  3. 活性炭を有効成分とする抗加齢剤。
  4. 前記活性炭が球状活性炭である、請求項3に記載の抗加齢剤。
  5. 活性炭を有効成分とするクロソタンパク質発現促進剤。
  6. 前記活性炭が球状活性炭である、請求項5に記載のクロソタンパク質発現促進剤。
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