JP2006111604A - 経口投与用吸着剤、並びに腎疾患治療又は予防剤、及び肝疾患治療又は予防剤 - Google Patents

経口投与用吸着剤、並びに腎疾患治療又は予防剤、及び肝疾患治療又は予防剤 Download PDF

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Abstract

【課題】吸着能が高く、上部小腸管内滞留期間中の毒性物質吸着量が多い経口投与用吸着剤を提供する。
【解決手段】経口投与用吸着剤は、平均粒子径が0.01〜1mmであり、BET法により求められる比表面積が700m/g以上であり、細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が0.25mL/g〜1.0mL/gであり、全酸性基が0.30meq/g〜1.20meq/gであり、そして全塩基性基が0.20meq/g〜0.7meq/gである表面改質球状活性炭からなる。
【選択図】なし

Description

本発明は、特異な細孔構造を有する表面改質球状活性炭からなる経口投与用吸着剤に関する。また、本発明は、前記の経口投与用吸着剤を有効成分とする腎疾患治療又は予防剤、及び肝疾患治療又は予防剤に関する。
本発明による経口投与用吸着剤は、体内の有毒な毒性物質(Toxin)に対する吸着能が高く、従って、経口摂取から体外排出までの体内滞留期間内において、毒性物質を吸着すべき一定時間内に多くの毒性物質を吸着することができる。
腎機能や肝機能の欠損患者らは、それらの臓器機能障害に伴って、血液中等の体内に有害な毒性物質が蓄積したり生成したりするので、尿毒症や意識障害等の脳症をひきおこす。これらの患者数は年々増加する傾向を示しているため、これら欠損臓器に代わって毒性物質を体外へ除去する機能をもつ臓器代用機器あるいは治療薬の開発が重要な課題となっている。現在、人工腎臓としては、血液透析による有毒物質の除去方式が最も普及している。しかしながら、このような血液透析型人工腎臓では、特殊な装置を用いるために、安全管理上から専門技術者を必要とし、また血液の体外取出しによる患者の肉体的、精神的及び経済的負担が高いなどの欠点を有していて、必ずしも満足すべきものではない。
これらの欠点を解決する手段として、経口的な服用が可能で、腎臓や肝臓の機能障害を治療することができる経口吸着剤が開発され、利用されている(特許文献1)。その経口吸着剤は、特定の官能基を有する多孔性の球形炭素質物質(すなわち、表面改質球状活性炭)からなり、生体に対する安全性や安定性が高く、同時に腸内での胆汁酸の存在下でも有毒物質の吸着性に優れ、しかも、消化酵素等の腸内有益成分の吸着が少ないという有益な選択吸着性を有し、また、便秘等の副作用の少ない経口治療薬として、例えば、肝腎機能障害患者に対して広く臨床的に利用されている。なお、前記特許文献1に記載の吸着剤は、石油ピッチなどのピッチ類を炭素源とし、球状活性炭を調製した後、酸化処理、及び還元処理を行うことにより製造されていた。
前記の選択吸着性、すなわち、有毒物質に対しては優れた吸着性を示し、腸内有益成分の吸着が少ないという有益な選択吸着性を更に向上させた経口投与用吸着剤も知られている(特許文献2)。この特許文献2に記載の経口投与用吸着剤は、細孔直径20〜15000nmの細孔容積が0.04mL/g以上で0.10mL/g未満という特定範囲の細孔容積において、前記の選択吸着性が向上する現象を発見したことに基づくものであり、有毒物質を充分に吸着すると共に、特に、腸内有益成分の吸着を抑制することが望ましい疾患に対して極めて有効である。
特公昭62−11611号公報 特許第3522708号(特開2002−308785号公報)
表面改質球状活性炭からなる経口吸着剤においては、前記の選択吸着性は極めて重要な特性であるが、その一方で、生体内の毒性物質をできる限り大量にしかも迅速に吸着・除去することも重要である。すなわち、表面改質球状活性炭からなる経口吸着剤は、一般に上部小腸管内での滞留時間が3〜5時間程度である。従って、有害物質と接触してから約3時間までの期間内での吸着能力が高く、しかも初期吸着性能が優れた表面改質球状活性炭が望ましい。
ところが、後述する実施例に示すとおり、前記特許文献1や前記特許文献2に記載の経口吸着剤は、有害物質と接触してから約3時間までの期間では、吸着能力が必ずしも高くなく、しかも吸着能力を完全には使い尽くさず、依然として充分な吸着能力を有した状態で小腸下部や大腸へ送られ、更に体外に排出される。
本発明者は、吸着能力が高く、従って、比較的大量の有害物質の吸着・除去が可能で、しかも初期吸着速度の点で優れている経口吸着剤を鋭意開発していたところ、従来公知の経口吸着剤が有する細孔容積の範囲とは異なる細孔容積範囲において、優れた吸着能力及び初期吸着速度を示す経口吸着剤が得られることを見出した。また、意外にも、前記の吸着速度は、比表面積の増減とは必ずしも相関関係を示さず、比表面積が減少しても、吸着能力及び初期吸着速度の増加が観察されることも分かった。更に、約3時間の上部小腸管内滞留時間内に多量の有害物質を吸着することができるので、服用量を減少させることが可能になる。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、平均粒子径が0.01〜1mmであり、BET法により求められる比表面積が700m/g以上であり、細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が0.25mL/g〜1.0mL/gであり、全酸性基が0.30meq/g〜1.20meq/gであり、そして全塩基性基が0.20meq/g〜0.7meq/gである表面改質球状活性炭からなることを特徴とする、経口投与用吸着剤に関する。
更に、本発明は、前記の経口投与用吸着剤のいずれかを有効成分とする、腎疾患治療又は予防剤、あるいは肝疾患治療又は予防剤にも関する。
本発明による経口投与用吸着剤は、吸着能が高いので、初期吸着能の点でも優れており、一般的な上部小腸管内滞留時間内において、生体内の有毒な毒性物質を極めて迅速に吸着することができる。従って、腎疾患治療又は予防剤、あるいは肝疾患治療又は予防剤として有効である。更に、服用量を従来の経口投与用吸着剤よりも減少させることができる。
本発明による経口投与用吸着剤として用いる表面改質球状活性炭は、前記のとおり、特定範囲の細孔容積を有する。すなわち、細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が0.25mL/g〜1.0mL/gである。
一方、前記特許文献1(特公昭62−11611号公報)の実施例1〜3では、細孔半径37.5〜75000オングストロームの空隙容積が0.20〜0.23mL/gの吸着剤が実際に調製されており、β−アミノイソ酪酸、γ−アミノ−n−酪酸、ジメチルアミン、及びオクトパミンの吸着性に優れていることが実際に確認されている。なお、前記特許文献1には、細孔半径100〜75000オングストロームの空隙容積(すなわち、細孔直径20〜15000nmの細孔容積)が0.1〜1mL/gの多孔性球状炭素質物質からなる吸着剤が一般的に記載されている。しかしながら、その特許文献1の実施例1〜3で具体的に開示されている吸着剤は、前記の通り、細孔半径37.5〜75000オングストロームの空隙容積が0.20〜0.23mL/gである吸着剤のみであり、しかも、細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が0.25mL/g〜1.0mL/gの場合に、吸着量が増加し、初期吸着速度が向上することは全く記載されていない。なお、細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が0.25mL/g〜1.0mL/gである本発明の多孔性球状炭素質物質の構造が、細孔半径37.5〜75000オングストロームの空隙容積(すなわち、細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積)が0.20〜0.23mL/gを有する特許文献1記載の多孔性球状炭素質物質の構造と、細孔容積の点で異なることは言うまでもない。
前記特許文献1に記載の多孔質球状炭素質物質における細孔(細孔直径7.5〜15000nmの細孔)は、主にナフタレンの溶解及び抽出により形成されていた。この場合、ピッチへ添加するナフタレンの量及び析出速度などによりピッチ中に析出する結晶の形態が決まり、それを抽出することにより細孔構造を制御することができる。前記特許文献1の出願当時の技術で細孔容積を増加させるためには、ナフタレンの析出量を増加させる必要があり、そのためには添加するナフタレンの量を増やすことが考えられる。しかしながら、実際には、添加するナフタレン量を増やしすぎるとナフタレンの析出状況が変化し、大きな細孔が多く形成されやすくなることで多孔性球状ピッチや多孔性球状活性炭の強度低下を引き起こすという問題があった。更に、球状ピッチ成形体表面に析出するナフタレン量が増加し、球状ピッチの表面形状が悪化する等の問題を引き起こす。そのため、前記特許文献1の出願当時の技術では、ナフタレンの添加可能量には限界があった。
一方、その後の細孔構造制御技術の進歩により、従来よりはナフタレン添加量を増加させることが可能になっただけでなく、例えば、ナフタレンの添加量とは無関係に細孔構造を制御することが可能になり、細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が0.25mL/g〜1.0mL/gの本発明による表面改質球状活性炭を調製することが可能になっている。
また、前記特許文献2(特開2002−308785号公報)には、細孔直径20〜15000nmの細孔容積が0.04mL/g以上で0.10mL/g未満の吸着剤が優れた選択吸着性を示すことが記載されており、その実施例では、毒性物質であるβ−アミノイソ酪酸に対する高い吸着特性を維持しつつ、有益物質であるα−アミラーゼに対する吸着特性が低いという選択吸着性が具体的データに基づいて示されている。しかしながら、この特許文献2には、本発明で用いる表面改質球状活性炭のように、細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が0.25mL/g〜1.0mL/gである表面改質球状活性炭に関する記載はなく、しかも、細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が0.25mL/g〜1.0mL/gの場合に、吸着量が増加し、初期吸着速度が向上することは全く記載されていない。
ところで、経口吸着剤の吸着能は、吸着部位として作用する細孔の数及び/又は細孔の容量に依存するものと、従来から考えられていた。従って、経口吸着剤の比表面積を増加させると、経口吸着剤の吸着能が向上するものと考えられていた。しかしながら、後述する実施例に示すとおり、経口吸着剤の吸着能、すなわち、経口吸着剤が吸着する有害物質の量は、前記の細孔容積が0.25mL/g以上の領域で増加し、比表面積の増加とは相関関係を示さない。
本発明の経口投与用吸着剤として用いる表面改質球状活性炭は、炭素源として、任意の炭素含有材料を用いることができる。使用可能な炭素含有材料としては、例えば、合成樹脂又はピッチを用いることができる。合成樹脂としては、熱溶融性樹脂又は熱不融性樹脂を用いることができる。ここで、熱溶融性樹脂とは、不融化処理を行わずに賦活処理を行うと、温度上昇に伴って溶融してから分解してしまう樹脂であり、活性炭を得ることができない樹脂である。しかしながら、予め不融化処理を実施してから賦活処理を行うと、活性炭とすることができる。これに対して、熱不融性樹脂とは、不融化処理を行わずに賦活処理を行っても、温度上昇に伴って分解せずに、活性炭を得ることができる樹脂である。なお、不融化処理とは、後述するように、例えば、酸素を含有する雰囲気にて、150℃〜400℃で酸化処理を行うことである。
熱溶融性樹脂の代表例は、熱可塑性樹脂であり、例えば、架橋ビニル樹脂を挙げることができる。一方、熱不融性樹脂の代表例は、熱硬化性樹脂であり、フェノール樹脂又はフラン樹脂を挙げることができる。公知の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の中から、球状体を形成することのできる任意の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を使用することができる。なお、架橋ビニル樹脂から表面改質球状活性炭を得る場合には、前記の不融化処理が必要であるのに対し、架橋ビニル樹脂に官能基を付与することによって製造されるイオン交換樹脂から表面改質球状活性炭を得る場合には、前記の不融化処理が不要である。これは、官能基付与処理や導入された官能基によって架橋ビニル樹脂が熱溶融性樹脂から熱不融性樹脂に変性されるものと考えられる。すなわち、架橋ビニル樹脂は本明細書における熱溶融性樹脂に含まれるのに対し、イオン交換樹脂は、本明細書における熱不融性樹脂に含まれる。
本発明における炭素源としては、イオン交換樹脂、架橋ビニル樹脂又はピッチを用いることが好ましく、イオン交換樹脂又は架橋ビニル樹脂を用いることがより好ましい。
本発明の経口投与用吸着剤として用いる表面改質球状活性炭の調製に、炭素源として熱不融性樹脂(例えば、イオン交換樹脂)を用いる場合には、ピッチ類を用いる従来の製造方法と実質的に同様の操作を利用することができる。例えば、最初に、熱不融性樹脂からなる球状体を、炭素と反応性を有する気流(例えば、スチーム又は炭酸ガス)中で、700〜1000℃の温度で賦活処理して、球状活性炭を得ることができる。本明細書において、「活性炭」とは、球状の熱不融性樹脂などの炭素前駆体を熱処理した後に、賦活処理を行うことによって得られる多孔質体を意味し、「球状活性炭」とは、球状で比表面積が100m/g以上であるものを意味する。本発明においては、比表面積が700m/g以上である表面改質球状活性炭を使用する。出発材料として用いる熱不融性樹脂の前記球状体は、平均粒子径が約0.02〜1.5mmであることが好ましい。
一方、熱溶融性樹脂(例えば、架橋ビニル樹脂)を炭素源として用いる場合には、熱溶融性樹脂からなる前記球状体が、熱処理により軟化して形状が非球形に変形するか、あるいは球状体同士が融着するので、前記の賦活処理の前に、不融化処理として、酸素を含有する雰囲気にて、150℃〜400℃で酸化処理を行うことにより軟化を抑制することができる。
また、不融処理後の熱溶融性樹脂や熱不融性樹脂の球状体を熱処理すると、多くの熱分解ガスなどが発生する場合には、賦活操作を行う前に適宜予備焼成を行い、予め熱分解生成物を除去することができる。
本発明の経口投与用吸着剤として用いる表面改質球状活性炭の調製に炭素源としてピッチを用いる場合には、例えば、金属含有球状炭素を賦活することで、細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が0.25〜1.0mL/gである球状活性炭とした後、酸洗浄により金属を除去し、次いで表面改質のための酸化処理を施した後、還元処理を行うことによって、本発明の表面改質球状活性炭を得ることができる。
上記の細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が0.25〜1.0mL/gである球状活性炭を、例えば以下の方法で調製することができる。
石油ピッチ又は石炭ピッチ等のピッチに対し、添加剤として沸点200℃以上の2環又は3環の芳香族化合物又はその混合物を加えて加熱混合した後、成形し、ピッチ成形体を得る。次に、70〜180℃の熱水中で撹拌下に分散造粒して微小球体化し、更にピッチに対し低溶解度を有しかつ添加剤に対して高溶解度を有する溶剤で、ピッチ成形体から添加剤を抽出除去させ、球状多孔性ピッチを得ることができる。
上記した芳香族添加剤の目的は、成形後の球状ピッチ成形体から該添加剤を抽出除去させて成形体を多孔質となし、後工程の酸化による炭素質材料の構造制御並びに焼成を容易にすることにある。このような添加剤は、例えば、ナフタレン、メチルナフタレン、フェニルナフタレン、ベンジルナフタレン、メチルアントラセン、フェナンスレン、又はビフェニル等の1種又は2種以上の混合物から選択される。ピッチに対する添加量は、ピッチ100重量部に対し10〜50重量部の範囲が好ましい。
ピッチと添加剤の混合は、均一な混合を達成するため、加熱し溶融状態で行うことが好ましい。ピッチと添加剤との混合物は、添加剤を混合物から容易に抽出できるようにするため、粒径1mm以下の粒子に成形することが好ましい。成形は溶融状態で行ってもよく、また混合物を冷却後粉砕する等の方法によってもよい。
ピッチと添加剤との混合物から添加剤を抽出除去するための溶剤としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、又はヘプタン等の脂肪族炭化水素、ナフサ、又はケロシン等の脂肪族炭化水素主体の混合物、メタノール、エタノール、プロパノール、又はブタノール等の脂肪族アルコール類等が好適である。
このような溶剤でピッチと添加剤との混合物成形体から添加剤を抽出することによって、成形体の形状を維持したままで添加剤を成形体から除去することができる。この際に、成形体中に添加剤の抜け穴が形成され、均一な多孔性を有する球状多孔性ピッチが得られるものと推定される。
こうして得られた球状多孔性ピッチを、次いで不融化処理、すなわち酸化剤を用いて、好ましくは常温から300℃までの温度での酸化処理により、熱に対して不融の球状多孔性不融性ピッチを得ることができる。酸化剤としては酸素ガス(O)、あるいは酸素ガス(O)を空気や窒素等で希釈した混合ガスを挙げることができる。
金属含有球状炭素の調製方法としては、例えば、(1)ピッチへの添加、(2)多孔性ピッチへの添着、(3)多孔性不融ピッチへの添着、(4)多孔性不融ピッチを加熱処理した球状炭素への添着、又は(5)賦活処理を施した球状活性炭への添着等の方法を挙げることができる。金属化合物の添加及び添着は、金属化合物を溶剤により溶解して金属化合物溶液とした後、炭素前駆体へ添加及び添着した後に溶媒を加熱蒸発により除去し、金属含有ピッチ、金属含有球状多孔性ピッチ、金属含有球状多孔性不融化ピッチ、又は金属含有球状活性炭などを得ることができる。ピッチへの金属化合物の添加及び球状多孔性ピッチへの金属化合物の添着の場合、上記方法により金属含有球状多孔性不融化ピッチとした後、炭素と反応性を有する気流、例えばスチーム又は炭酸ガス、あるいはそれらのガスを主成分とする混合ガス中、800〜1000℃の温度で賦活処理することで、多孔性の金属含有球状活性炭とした後、これを酸洗浄により金属を除去することにより、前記の球状活性炭を得ることができる。また、金属化合物の添着を球状活性炭に対して行う場合、金属化合物を球状活性炭に添着した後、再度賦活操作を行い、更にこれを酸洗浄により金属を除去することにより、前記の球状活性炭を得ることができる。
前記金属含有球状炭素の調製に用いる金属としては、水蒸気賦活において触媒効果を示す金属であればいずれの金属も使用することができ、特に好ましくは、コバルト、鉄、又はニッケルなどの遷移金属、イットリウムなどの希土類金属、又はそれらの化合物、更にはそれらの化合物塩のいずれも使用することができる。金属化合物又は化合物塩としては、例えば、該金属元素を含む水酸化物、塩化物、硝酸塩、又は硫酸塩などの無機化合物、アセチルアセトン塩、又は酢酸塩などの有機塩、あるいは有機無機複合塩を使用することができる。炭素に導入する金属量は、賦活前の炭素質物質における金属原子濃度が、0.001〜10重量%の範囲となるよう導入することが好ましく、更に好ましくは0.001〜5重量%である。
前記洗浄処理は、経口投与用である表面改質球状活性炭の安全上十分な純度を確保するために行うものであり、洗浄方法は、例えば、水又は塩酸、硝酸、硫酸、又はフッ化水素酸などの酸性溶液による洗浄により、金属分を除去する必要がある。洗浄後の球状活性炭中の金属含有量は、好ましくは150ppm以下、より好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下である。
こうして得られた大きい細孔を有する球状活性炭を、酸素含量0.1〜50容量%、好ましくは1〜30容量%、特に好ましくは3〜20容量%の雰囲気の下、300〜800℃、好ましくは320〜600℃の温度で酸化処理し、更に、800〜1200℃、好ましくは800〜1000℃の温度下、非酸化性ガス雰囲気下で還元処理を行うことにより、本発明の表面改質球状活性炭を得ることができる。特定の酸素含有の雰囲気は純粋な酸素、酸化窒素又は空気等を酸素源として用いることができる。また、炭素に対して不活性な雰囲気とは、窒素、アルゴン、又はヘリウム等単独、又はそれらの混合系を意味する。ここで、表面改質球状活性炭とは、前記の球状活性炭を、前記の酸化処理及び還元処理して得られる多孔質体であり、球状活性炭の表面に酸性点と塩基性点とをバランスよく付加することにより上部小腸管内の有毒物質の吸着特性を向上させたものである。例えば、前記球状活性炭を、酸化処理及び還元処理することにより、吸着されるべき毒性物質に対する特異性を向上することができる。
出発材料として用いる前記の熱不融性樹脂は、球状体を成形することが可能な材料であり、500℃以下の熱処理においては溶融又は軟化せずに、形状変形も起こさないことが重要である。また、熱溶融性樹脂も、酸化処理などのいわゆる不融化処理により、溶融酸化を回避することのできる状態に変性してから好適に使用することができる。
出発材料として用いる前記の熱不融性樹脂としては、熱処理による炭素化収率が高いことが望ましい。炭素化収率が低いと、球状活性炭としての強度が弱くなる。また、不必要な細孔が形成されるため、球状活性炭の嵩密度が低下して、体積あたりの比表面積が低下するので、投与体積が増加し、経口投与が困難になるという問題を引き起こす。従って、熱不融性樹脂の炭素化収率は高いほど好ましく、非酸化性ガス雰囲気中800℃での熱処理による収率の好ましい値は30重量%以上であり、更に好ましくは35重量%以上である。
出発材料として用いる前記の熱不融性樹脂としては、除去すべき毒性物質に対する吸着能が高い経口投与用吸着剤を製造することができる点でイオン交換樹脂が好ましい。イオン交換樹脂は、一般的に、ジビニルベンゼンと、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、又はメタクリル酸との共重合体(すなわち、熱溶融性樹脂である架橋ビニル樹脂)からなり、基本的には三次元網目骨格をもつ共重合体母体に、イオン交換基が結合した構造を有する。イオン交換樹脂は、イオン交換基の種類により、スルホン酸基を有する強酸性イオン交換樹脂、カルボン酸基又はスルホン酸基を有する弱酸性イオン交換樹脂、第四級アンモニウム塩を有する強塩基性イオン交換樹脂、第一級又は第三級アミンを有する弱塩基性イオン交換樹脂に大別され、このほか特殊な樹脂として、酸及び塩基両方のイオン交換基を有するいわゆるハイブリッド型イオン交換樹脂があり、本発明においては、これらのすべてのイオン交換樹脂を原料として使用することができる。
炭素源として熱不融性樹脂(特には、イオン交換樹脂)を用いて、前記の方法によって賦活処理を実施すると、細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が0.25mL/g〜1.0mL/gである球状活性炭を得ることができる。
また、出発材料としては、ピッチを用いることもできる。出発材料として用いるピッチとしては、熱処理による炭素化収率が高いことが望ましい。炭素化収率が低いと、球状活性炭としての強度が弱くなる。また、不必要な細孔が形成されるため、球状活性炭の嵩密度が低下して、体積あたりの比表面積が低下するので、投与体積が増加し、経口投与が困難になるという問題を引き起こす。従って、ピッチの炭素化収率は高いほど好ましく、非酸化性ガス雰囲気中800℃での熱処理による収率の好ましい値は50重量%以上、更に好ましくは60重量%以上である。
熱溶融性樹脂である架橋ビニル樹脂は、それを非酸化性ガス雰囲気中で熱処理すると、軟化及び溶融して炭素化収率がせいぜい10%程度にしかならない。しかし、不融化処理として、酸素を含有する雰囲気にて、多孔質架橋ビニル樹脂を150℃〜400℃で酸化処理を行うことにより、軟化及び溶融することなく、30%以上の高い炭素化収率で球状の炭素質材料を得ることができ、これに対して、前記の熱不融性樹脂の場合と同様にして賦活処理を行うことにより球状活性炭を得ることができる。
出発原料として用いる前記の架橋ビニル樹脂は、例えば、乳化重合、塊状重合、若しくは溶液重合によって得られる多孔質の球状ポリマー、又は好ましくは懸濁重合によって得られる多孔質の球状ポリマーを用いることができる。
例えば、多孔質の架橋ビニル樹脂を懸濁重合によって調製する場合には、ビニル系モノマー、架橋剤、ポロゲン(porogen)及び重合開始剤を含む有機相を、分散安定剤を含有する水系分散媒体中に添加し、攪拌混合により水相中に懸濁された多数の有機液滴を形成した後、加熱して有機液滴中のモノマーを重合させることにより、多孔質の球状の架橋ビニル樹脂を調製することができる。
ビニル系モノマーとしては、球形に成型することができる任意のビニル系モノマーを用いることができ、例えば、芳香族ビニル系モノマー、例えば、スチレン、あるいはビニル基水素やフェニル基水素が置換されたスチレン誘導体、あるいはフェニル基のかわりに複素環式あるいは多環式化合物がビニル基に結合した化合物などを用いることができる。芳香族ビニル系モノマーとしては、より具体的には、α−あるいはβ−メチルスチレン、α−あるいはβ−エチルスチレン、メトキシスチレン、フェニルスチレン、あるいはクロロスチレンなど、あるいは、o−、m−、あるいはp−メチルスチレン、メトキシスチレン、メチルシリルスチレン、ヒドキロシスチレン、クロロスチレン、シアノスチレン、ニトロスチレン、アミノスチレン、カルボキシスチレン、あるいはスルホキシスチレン、スチレンスルホン酸ソーダなど、あるいは、ビニルピリジン、ビニルチオフェン、ビニルピロリドン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、又はビニルビフェニル等を挙げることができる。また、脂肪族ビニル系モノマーも使用することができ、具体的には、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ジイソブチレン、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニルなどのビニルエステル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトンなどのビニルケトン類、アクロレイン、メタアクロレインなどのビニルアルデヒド類、あるいは、ビニルメチルエーテル、又はビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル類を挙げることができる。
また、架橋剤としては、前記のビニル系モノマーの架橋化に用いることができる任意の架橋剤を用いることができ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルピリジン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、ジアリルフタレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルキシレン、ジビニルエチルベンゼン、ジビニルスルホン、グリコール又はグリセロールのポリビニル又はポリアリルエーテル類、ペンタエリトリトールのポリビニル又はポリアリルエーテル類、グリコールのモノ又はジチオ誘導体のポリビニル又はポリアリルエーテル類、あるいはレゾルシノールのポリビニル又はポリアリルエーテル類、ジビニルケトン、ジビニルスルフィド、アリルアクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルスクシネート、ジアリルカルボネート、ジアリルマロネート、ジアリルオキサレート、ジアリルアジペート、ジアリルセバセート、トリアリルトリカルバリレート、トリアリルアコニテート、トリアリルシトレート、トリアリルホスフェート、N,N’−メチレンジアクリルアミド、1,2−ジ(α−メチルメチレンスルホンアミド)エチレン、トリビニルベンゼン、トリビニルナフタレン、ポリビニルアントラセン、あるいはトリビニルシクロヘキサンを用いることができる。特に好ましい架橋剤の例に含まれるものは、ポリビニル芳香族炭化水素(例えば、ジビニルベンゼン)、グリコールジメタクリレート(例えば、エチレングリコールジメタクリレート)、又はポリビニル炭化水素(例えば、トリビニルシクロヘキサン)である。ジビニルベンゼンは、その熱分解特性が優れているので、最も好ましい。
適当なポロゲンとしては、炭素原子数4〜10のアルカノール(例えば、n−ブタノール、sec−ブタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、又は、4−メチル−2−ペンタノール)、炭素原子数が少なくとも7のアルキルエステル(例えば、n−ヘキシルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、メチルオレエート、ジブチルセバセート、ジブチルアジペート、又はジブチルカルボネート)、炭素原子数4〜10のアルキルケトン(例えば、ジブチルケトン又はメチルイソブチルケトン)、又はアルキルカルボン酸(例えば、ヘプタン酸)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレン、又はベンゼン)、高級飽和脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン、又はイソオクタン)、あるいは環式脂肪族炭化水素(例えば、シクロヘキサン)を挙げることができる。
重合開始剤としては、特に限定されず、この分野で一般に使用されているものを使用することができるが、重合性単量体に可溶性である油溶性重合開始剤が好ましい。重合開始剤としては、例えば、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、又はアゾ化合物を挙げることができる。より具体的には、例えば、メチルエチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどの過酸化ジアルキル;イソブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの過酸化ジアシル;t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、(α,α−ビス−ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンなどのパーオキシエステル;ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピル−オキシジカーボネート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルエチルパーオキシ)ジカーボネート、ジ−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)などのアゾ化合物;などを挙げることができる。
本発明による経口投与用吸着剤として用いる表面改質球状活性炭は、平均粒子径が0.01〜1mmである。表面改質球状活性炭の平均粒子径が0.01mm未満になると、表面改質球状活性炭の外表面積が増加し、消化酵素等の有益物質の吸着が起こり易くなるので好ましくない。また、平均粒子径が1mmを越えると、表面改質球状活性炭の内部への毒性物質の拡散距離が増加し、吸着速度が低下するので好ましくない。平均粒子径は、好ましくは0.02〜0.8mmである。
本発明による経口投与用吸着剤として用いる表面改質球状活性炭は、BET法により求められる比表面積(以下「SSA」と省略することがある)が700m/g以上である。SSAが700m/gより小さい表面改質球状活性炭では、毒性物質の吸着性能が低くなるので好ましくない。SSAは、好ましくは1000m/g以上である。SSAの上限は特に限定されるものではないが、嵩密度及び強度の観点から、SSAは、3000m/g以下であることが好ましい。
本発明による経口投与用吸着剤として用いる表面改質球状活性炭における細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積は、0.25mL/g〜1.0mL/g、好ましくは0.3mL/g〜0.8mL/gである。細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が0.25mL/g未満であると、有害物質の吸着能が低下し、細孔容積が1.0mL/gを越えると、消化酵素等の有用物質の吸着量が増加してしまうことがある。
本発明による経口投与用吸着剤として用いる表面改質球状活性炭では、官能基の構成において、全酸性基が0.30〜1.20meq/gであり、全塩基性基が0.20〜0.7meq/gである。官能基の構成において、全酸性基が0.30〜1.20meq/gであり、全塩基性基が0.20〜0.7meq/gの条件を満足しない表面改質球状活性炭では、前述した有毒物質の吸着能が低くなるので好ましくない。官能基の構成において、全酸性基は0.30〜1.00meq/gであることが好ましく、全塩基性基は0.30〜0.60meq/gであることが好ましい。
本発明による経口投与用吸着剤として用いる表面改質球状活性炭が有する各物性値、すなわち、平均粒子径、比表面積、細孔容積、全酸性基、及び全塩基性基は、以下の方法によって測定する。
(1)平均粒子径
レーザー回折式粒度分布測定装置〔(株)島津製作所:SALAD−3000S〕を用い、体積基準の粒度累積線図を作成し、粒度累積率50%における粒子径を平均粒子径とした。
(2)比表面積(BET法による比表面積の計算法)
連続流通式のガス吸着法による比表面積測定器(例えば、MICROMERITICS社製「Flow Sorb II 2300」)を用いて、表面改質球状活性炭試料のガス吸着量を測定し、BETの式により比表面積を計算することができる。具体的には、試料である表面改質球状活性炭を試料管に充填し、その試料管に窒素30容量%を含有するヘリウムガスを流しながら以下の操作を行い、表面改質球状活性炭試料への窒素吸着量を求める。すなわち、試料管を−196℃に冷却し、表面改質球状活性炭試料に窒素を吸着させる。次に、試料管を室温に戻す。このとき表面改質球状活性炭試料から脱離してくる窒素量を熱伝導度型検出器で測定し、吸着ガス量(v)とする。
BETの式から誘導された近似式:
=1/(v・(1−x))
を用いて液体窒素温度における、窒素吸着による1点法(相対圧力x=0.3)によりvを求め、次式:
比表面積=4.35×v(m/g)
により試料の比表面積を計算する。前記の各計算式で、vは実測される吸着量(cm/g)であり、xは相対圧力である。
(3)水銀圧入法による細孔容積
水銀ポロシメーター(例えば、MICROMERITICS社製「AUTOPORE 9200」)を用いて細孔容積を測定することができる。試料である表面改質球状活性炭を試料容器に入れ、2.67Pa以下の圧力で30分間脱気する。次いで、水銀を試料容器内に導入し、徐々に加圧して水銀を表面改質球状活性炭試料の細孔へ圧入する(最高圧力=414MPa)。このときの圧力と水銀の圧入量との関係から以下の各計算式を用いて表面改質球状活性炭試料の細孔容積分布を測定する。
具体的には、細孔直径15μmに相当する圧力(0.06MPa)から最高圧力(414MPa:細孔直径3nm相当)までに表面改質球状活性炭試料に圧入された水銀の体積を測定する。細孔直径の算出は、直径(D)の円筒形の細孔に水銀を圧力(P)で圧入する場合、水銀の表面張力を「γ」とし、水銀と細孔壁との接触角を「θ」とすると、表面張力と細孔断面に働く圧力の釣り合いから、次式:
−πDγcosθ=π(D/2)・P
が成り立つ。従って
D=(−4γcosθ)/P
となる。
本明細書においては、水銀の表面張力を484dyne/cmとし、水銀と炭素との接触角を130度とし、圧力PをMPaとし、そして細孔直径Dをμmで表示し、下記式:
D=1.27/P
により圧力Pと細孔直径Dの関係を求める。例えば、本発明における細孔直径7.5〜15000nmの範囲の細孔容積とは、水銀圧入圧0.085MPaから169MPaまでに圧入された水銀の体積に相当する。
(4)全酸性基
0.05規定のNaOH溶液50mL中に、200メッシュ以下に粉砕した表面改質球状活性炭試料1gを添加し、48時間振とうした後、表面改質球状活性炭試料をろ別し、中和滴定により求められるNaOHの消費量である。
(5)全塩基性基
0.05規定のHCl溶液50mL中に、200メッシュ以下に粉砕した表面改質球状活性炭試料1gを添加し、24時間振とうした後、表面改質球状活性炭試料をろ別し、中和滴定により求められるHClの消費量である。
本発明の経口投与用吸着剤として用いる表面改質球状活性炭は、後述する実施例において示すように、肝疾患憎悪因子や腎臓病での毒性物質の吸着性に優れているので、腎疾患の治療用又は予防用経口投与用吸着剤として用いるか、あるいは、肝疾患の治療用又は予防用経口投与用吸着剤として用いることができる。
腎疾患としては、例えば、慢性腎不全、急性腎不全、慢性腎盂腎炎、急性腎盂腎炎、慢性腎炎、急性腎炎症候群、急性進行型腎炎症候群、慢性腎炎症候群、ネフローゼ症候群、腎硬化症、間質性腎炎、細尿管症、リポイドネフローゼ、糖尿病性腎症、腎血管性高血圧、若しくは高血圧症候群、あるいは前記の原疾患に伴う続発性腎疾患、更に、透析前の軽度腎不全を挙げることができ、透析前の軽度腎不全の病態改善や透析中の病態改善にも用いることができる(「臨床腎臓学」朝倉書店、本田西男、小磯謙吉、黒川清、1990年版及び「腎臓病学」医学書院、尾前照雄、藤見惺編集、1981年版参照)。
また、肝疾患としては、例えば、劇症肝炎、慢性肝炎、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、肝線維症、肝硬変、肝癌、自己免疫性肝炎、薬剤アレルギー性肝障害、原発性胆汁性肝硬変、振せん、脳症、代謝異常、又は機能異常を挙げることができる。その他、体内に存在する有害物質による病気、すなわち、精神病等の治療にも用いることができる。
従って、本発明による経口投与用吸着剤は、腎臓疾患治療薬として用いる場合には、前記の表面改質球状活性炭を有効成分として含有する。本発明の経口投与用吸着剤を腎臓疾患治療薬又は肝臓疾患治療薬として用いる場合、その投与量は、投与対象がヒトであるかあるいはその他の動物であるかにより、また、年令、個人差、又は病状などに影響されるので、場合によっては下記範囲外の投与量が適当なこともあるが、一般にヒトを対象とする場合の経口投与量は1日当り1〜20gを3〜4回に分けて服用し、更に症状によって適宜増減することができる。投与形態は、散剤、顆粒、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、懸濁剤、スティック剤、分包包装体、又は乳剤等であることができる。カプセル剤として服用する場合は、通常のゼラチンの他に、必要に応じて腸溶性のカプセルを用いることもできる。錠剤として用いる場合は、体内でもとの微小粒体に解錠されることが必要である。更に他の薬剤であるアルミゲルやケイキサレートなどの電解質調節剤と配合した複合剤の形態で用いることもできる。
細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が0.25mL/g〜1.0mL/gの本発明による表面改質球状活性炭は、従来公知の球状活性炭(すなわち、細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が前記の範囲以外の球状活性炭又は表面改質球状活性炭)と混合した混合物の形で、腎疾患治療又は予防剤、あるいは肝疾患治療又は予防剤として使用することができる。あるいは、細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が0.25mL/g〜1.0mL/gの本発明による表面改質球状活性炭と、従来公知の球状活性炭(すなわち、細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が前記の範囲以外の球状活性炭又は表面改質球状活性炭)とを併用して、腎疾患治療又は予防剤、あるいは肝疾患治療又は予防剤として使用することができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
《実施例1》
空気中120℃にて3時間乾燥したイオン交換樹脂(スチレン系;有効径=0.50〜0.65mm:商品名「Amberlite15WET」;オルガノ株式会社製)を、目開き250μmの篩で篩分し、微粉末を除去した後、微粉除去した球状のイオン交換樹脂を流動床を用いた窒素ガス雰囲気中600℃で3時間熱処理し、球状炭素を得た。次に、得られた球状炭素100gを目皿付き石英製縦型反応管に入れ、流動床を用いた窒素ガス雰囲気中で820℃まで2時間昇温した後、64.5vol%の水蒸気を含む窒素ガス雰囲気中にて820℃で10時間の賦活処理を行い、球状活性炭32gを得た。
得られた球状活性炭を更に流動床にて、酸素濃度18.5vol%の窒素と酸素の混合ガス雰囲気下470℃で3時間15分間酸化処理し、次に流動床にて窒素ガス雰囲気下900℃で17分間還元処理を行い、表面改質球状活性炭を得た。平均粒子径は0.35mmであった。
得られた表面改質球状活性炭の特性を表1に示す。
《実施例2》
賦活処理において、賦活時間を14時間とし、球状活性炭17gを得たこと以外は、実施例1に記載の方法を繰り返して、表面改質球状活性炭を得た。平均粒子径は0.35mmであった。
得られた表面改質球状活性炭の特性を表1に示す。
《実施例3》
石油系ピッチ(軟化点=210℃;キノリン不溶分=1重量%以下;H/C原子比=0.63)68kgと、ナフタレン32kgとを、撹拌翼のついた内容積300Lの耐圧容器に仕込み、180℃で溶融混合を行った後、アセチルアセトンコバルト塩68gをピッチに加え、撹拌して溶解させた後、140〜160℃に冷却して押し出し、紐状成形体を得た。次いで、この紐状成形体を直径と長さの比が1〜2になるように破砕した。
0.23重量%のポリビニルアルコール(ケン化度=88%)を溶解して93℃に加熱した水溶液中に、前記の破砕物を投入し、撹拌分散により球状化した後、前記のポリビニルアルコール水溶液を水で置換することにより冷却し、20℃で3時間冷却し、ピッチの固化及びナフタレン結晶の析出を行い、球状ピッチ成形体スラリーを得た。
大部分の水をろ過により除いた後、球状ピッチ成形体の約6倍重量のn−ヘキサンでピッチ成形体中のナフタレンを抽出除去した。このようにして得た多孔性球状ピッチを、流動床を用いて、加熱空気を通じながら、235℃まで昇温した後、235℃にて1時間保持して酸化し、熱に対して不融性の多孔性球状酸化ピッチを得た。続いて、多孔性球状酸化ピッチを、流動床を用い64.5vol%の水蒸気を含む窒素ガス雰囲気中で、820℃で1時間賦活処理を行い、球状活性炭を得た。得られた金属含有球状活性炭を10%塩酸で洗浄した後、ろ過し、ろ液がpH7になるまでイオン交換水にて洗浄し、窒素ガス雰囲気中で乾燥した。
乾燥した球状活性炭を流動床にて、酸素濃度18.5vol%の窒素と酸素の混合ガス雰囲気下470℃で3時間15分間酸化処理し、次に流動床にて窒素ガス雰囲気下900℃で17分間還元処理を行い、表面改質球状活性炭を得た。平均粒子径は0.35mmであった。
得られた表面改質球状活性炭の特性を表1に示す。
《実施例4》
前記実施例3の溶融ピッチに加えるアセチルアセトンコバルト塩の量を6.8gとし、賦活処理における賦活時間を2時間としたこと以外は、実施例3に記載の方法を繰り返して、表面改質球状活性炭を得た。平均粒子径は0.35mmであった。
得られた表面改質球状活性炭の特性を表1に示す。
《実施例5》
石油系ピッチ(軟化点=210℃;キノリン不溶分=1重量%以下;H/C原子比=0.63)68kgと、ナフタレン32kgとを、撹拌翼のついた内容積300Lの耐圧容器に仕込み、180℃で溶融混合を行った後、140〜160℃に冷却して押し出し、紐状成形体を得た。次いで、この紐状成形体を直径と長さの比が1〜2になるように破砕した。
0.23重量%のポリビニルアルコール(ケン化度=88%)を溶解して93℃に加熱した水溶液中に、前記の破砕物を投入し、撹拌分散により球状化した後、前記のポリビニルアルコール水溶液を水で置換することにより冷却し、20℃で3時間冷却し、ピッチの固化及びナフタレン結晶の析出を行い、球状ピッチ成形体スラリーを得た。
大部分の水をろ過により除いた後、球状ピッチ成形体の約6倍重量のn−ヘキサンでピッチ成形体中のナフタレンを抽出除去した。このようにして得た多孔性球状ピッチを、流動床を用いて、加熱空気を通じながら、235℃まで昇温した後、235℃にて1時間保持して酸化し、熱に対して不融性の多孔性球状酸化ピッチを得た。続いて、多孔性球状酸化ピッチを、流動床を用い、64.5vol%の水蒸気を含む窒素ガス雰囲気中で、820℃で230分間賦活処理をして充填密度が0.6mL/gの多孔性球状炭素を得た。
次いで、アセチルアセトンコバルト塩0.3gをトルエン5gに溶解させ、前記多孔性球状炭素50gに添着した後、トルエンを減圧留去した。このようにして得たコバルト塩添着活性炭を、流動床を用い、64.5vol%の水蒸気を含む窒素ガス雰囲気中で、820℃で8分間賦活処理を行った。得られた金属含有球状活性炭を10%塩酸で洗浄した後、ろ過し、ろ液がpH7になるまでイオン交換水にて洗浄し、窒素ガス雰囲気中で乾燥した。
乾燥した球状活性炭を流動床にて、酸素濃度18.5vol%の窒素と酸素の混合ガス雰囲気下470℃で3時間15分間酸化処理し、次に流動床にて窒素ガス雰囲気下900℃で17分間還元処理を行い、表面改質球状活性炭を得た。平均粒子径は0.35mmであった。
得られた表面改質球状活性炭の特性を表1に示す。
《実施例6》
脱イオン交換水658g、及び1.44%メチルセルロース水溶液32gを1Lのセパラブルフラスコに入れ、これにスチレン109g、純度57%ジビニルベンゼン(57%のジビニルベンゼンと43%のエチルビニルベンゼン)120g、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.3g、及びポロゲンとしての1−ブタノールを適宜加えた後、窒素ガスで系内を置換し、この二相系を150rpmで攪拌し、55℃に加熱してからそのまま20時間保持した。得られた樹脂を濾過した後、減圧乾燥機にて90℃で12時間減圧乾燥することにより水分及びポロゲンを減圧留去し、平均粒子径600μmの球状の多孔性合成樹脂を得た。多孔性合成樹脂の比表面積は30m/gであった。
得られた球状の多孔性合成樹脂100gを目皿付き反応管に仕込み、縦型管状炉にて不融化処理を行った。不融化条件は、3L/minで乾燥空気を反応管下部より上部に向かって流し、5℃/hで260℃まで昇温した後、260℃で4時間保持することにより球状の多孔性酸化樹脂を得た。球状の多孔性酸化樹脂を窒素雰囲気中600℃で1時間熱処理した後、流動床を用い、64.5vol%の水蒸気を含む窒素ガス雰囲気中、820℃で10時間賦活処理を行い、球状活性炭を得た。
得られた球状活性炭を、更に流動床にて、酸素濃度18.5vol%の窒素と酸素の混合ガス雰囲気下470℃で3時間15分酸化処理し、次に流動床にて窒素ガス雰囲気下900℃で17分間熱処理を行い、表面改質球状活性炭を得た。平均粒子径は310μmであった。
得られた表面改質球状活性炭の特性を表1に示す。
《比較例1》
石油系ピッチ(軟化点=178℃;キノリン不溶分=1重量%以下;H/C原子比=0.67)68kgと、ナフタレン32kgと、撹拌翼のついた内容積300Lの耐圧容器に仕込み、200℃で溶融混合を行った後、140〜160℃に冷却して押し出し、紐状成形体を得た。次いで、この紐状成形体を直径と長さの比が1〜2になるように破砕した。
0.23重量%のポリビニルアルコール(ケン化度=88%)を溶解して93℃に加熱した水溶液中に、前記の破砕物を投入し、撹拌分散により球状化した後、前記のポリビニルアルコール水溶液を水で置換することにより冷却し、20℃で3時間冷却し、ピッチの固化及びナフタレン結晶の析出を行い、球状ピッチ成形体スラリーを得た。
大部分の水をろ過により除いた後、球状ピッチ成形体の約6倍重量のn−ヘキサンでピッチ成形体中のナフタレンを抽出除去した。このようにして得た多孔性球状ピッチを、流動床を用いて、加熱空気を通じながら、235℃まで昇温した後、235℃にて1時間保持して酸化し、熱に対して不融性の多孔性球状酸化ピッチを得た。続いて、多孔性球状酸化ピッチを、流動床を用い、64.5vol%の水蒸気を含む窒素ガス雰囲気中で、820℃で400分間賦活処理をして充填密度が0.5mL/gの球状活性炭を得た。
次いで、球状活性炭を流動床にて、酸素濃度18.5vol%の窒素と酸素の混合ガス雰囲気下470℃で3時間15分間酸化処理し、次に流動床にて窒素ガス雰囲気下900℃で17分間還元処理を行い、表面改質球状活性炭を得た。平均粒子径は0.35mmであった。
得られた表面改質球状活性炭の特性を表1に示す。
《比較例2》
空気中120℃にて3時間乾燥したイオン交換樹脂(スチレン系;有効径=0.50〜0.65mm:商品名「Amberlite15WET」;オルガノ株式会社製)を、目開き250μmの篩で篩分し、微粉末を除去した後、微粉除去した球状のイオン交換樹脂を流動床を用いた窒素ガス雰囲気中600℃で3時間熱処理し、球状炭素を得た。次に、得られた球状炭素100gを目皿付き石英製縦型反応管に入れ、流動床を用いた窒素ガス雰囲気中で820℃まで2時間で昇温した後、64.5vol%の水蒸気を含む窒素ガス雰囲気中にて820℃で10時間の賦活処理を行い、球状活性炭32gを得た。平均粒子径は0.35mmであった。
得られた球状活性炭の特性を表1に示す。
《比較例3》
球状のフェノール樹脂(粒子径=10〜700μm:商品名「高機能真球樹脂マリリンHF500タイプ」;群栄化学株式会社製)を、目開き250μmの篩で篩分し、微粉末を除去した後、微粉除去した球状のフェノール樹脂150gを目皿付き石英製縦型反応管に入れ、流動床を用いた窒素ガス雰囲気中900℃で1時間熱処理し、球状炭素68gを得た。次に、得られた球状炭素68gを目皿付き石英製縦型反応管に入れ、流動床を用いた窒素ガス雰囲気中で900℃まで2.5時間で昇温した後、64.5vol%の水蒸気を含む窒素ガス雰囲気中にて900℃で賦活処理を行い、充填密度が0.5g/mLの球状活性炭30gを得た。
得られた球状活性炭を更に流動床にて、酸素濃度18.5vol%の窒素と酸素の混合ガス雰囲気下470℃で3時間15分間酸化処理し、次に流動床にて窒素ガス雰囲気下900℃で17分間還元処理を行い、表面改質球状活性炭を得た。平均粒子径は0.28mmであった。
得られた表面改質球状活性炭の特性を表1に示す。
《比較例4》
前記比較例3で用いたフェノール樹脂(群栄化学株式会社製)に代えて、住友ベークライト株式会社製の球状のフェノール樹脂(平均粒子径=700μm:商品名「フェノール樹脂球状硬化物ACSシリーズPR−ACS−2−50C」)を使用したこと以外は、比較例3に記載の方法を繰り返して、表面改質球状活性炭を得た。平均粒子径は0.41mmであった。
得られた表面改質球状活性炭の特性を表1に示す。
〔経口吸着剤の評価方法〕
以下の表1に示す各種の特性は、以下の方法で測定した。
(1)細孔容積
前記実施例1〜5及び比較例1〜4で得られた各表面改質球状活性炭及び活性炭の細孔容積は、前記の水銀圧入法により求めた。表1に記載の数値は、細孔直径7.5〜15000nm及び細孔直径20〜15000nmの範囲の細孔容積に相当する。
(2)全酸性基及び全塩基性基
0.05規定のNaOH溶液50mL(全酸性基)又はHCl溶液50mL(全塩基性基)中に、200メッシュ以下に粉砕した表面改質球状活性炭試料1gを添加し、48時間振とうした後、表面改質球状活性炭試料をろ別し、中和滴定により、NaOHの消費量(全酸性基)又はHClの消費量(全塩基性基)を求めた。
(3)DL−β−アミノイソ酪酸残量試験
前記実施例1〜5及び比較例1〜4で得られた各表面改質球状活性炭及び活性炭に関して、DL−β−アミノイソ酪酸吸着試験を以下の方法で実施した。
球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料を乾燥した後、乾燥試料0.500gを正確に量って共栓付三角フラスコにとった。一方、DL−β−アミノイソ酪酸0.100gを正確に量り、pH7.4のリン酸塩緩衝液を加えて溶かし、正確に1000mLとした液(原液)50mLを、前記の共栓付三角フラスコに正確に加え、37±1℃で3時間振り混ぜた。フラスコの内容物を、ろ孔0.65μmのメンブランフィルターで吸引ろ過し、はじめのろ液約20mLを除き、次のろ液約10mLを取って試料溶液とした。
試料溶液0.1mLを試験管に正確に取り、pH8.0のリン酸塩緩衝液5mLを正確に加えて混合した後、フルオレスカミン0.100gを非水滴定用アセトン100mLに溶かした液1mLを正確に加えて混合した後で、15分間静置した。この液につき、蛍光光度法により試験を行い、励起波長390nm、及び蛍光波長475nmで蛍光強度を測定した。
DL−β−アミノイソ酪酸原液を0mL、15mL、50mL、75mL、及び100mLの量とpH7.4リン酸塩緩衝液とで100mLにして攪拌し、ろ過し、ろ液0.1mLを試験管に正確に取り、pH8.0のリン酸塩緩衝液5mLを正確に加えて混合した後、フルオレスカミン0.100gを非水滴定用アセトン100mLに溶かした液1mLを正確に加えて混合した後で、15分間静置した。これらの液につき、蛍光光度法により試験を行い、励起波長390nm、及び蛍光波長475nmで蛍光強度を測定し、検量線を作成した。最後にDL−β−アミノイソ酪酸の残存量(mg/dL)を、上記検量線を用いて計算した。
なお、表1に示す数値は、「10」(非吸着)〜「0」(完全吸着)の間の評価を示す。
(4)DL−β−アミノイソ酪酸残量変化の試験
前項(3)の「DL−β−アミノイソ酪酸残量試験」では、球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料とDL−β−アミノイソ酪酸とを接触させて振とうさせる時間を一定時間(3時間)として実験を行ったが、比較例1で得られた表面改質球状活性炭に関して接触振とう時間を変化させた場合の吸着速度の変化を調べた。
DL−β−アミノイソ酪酸の初期濃度は10mg/dLとし、接触振とう時間が、1時間、2時間、3時間、5時間、8時間、18時間、及び24時間におけるDL−β−アミノイソ酪酸残量を前項(3)の操作と同様にして調べた。結果を図1に示す。なお、図1は、実施例5で得られた表面改質球状活性炭の振とう時間が3時間におけるデータを比較のために記入した。
(5)比表面積
前記のBET法によって測定した。
Figure 2006111604
本発明の経口投与用吸着剤は、腎疾患の治療用又は予防用経口投与用吸着剤として用いるか、あるいは、肝疾患の治療用又は予防用吸着剤として用いることができる。
腎疾患としては、例えば、慢性腎不全、急性腎不全、慢性腎盂腎炎、急性腎盂腎炎、慢性腎炎、急性腎炎症候群、急性進行型腎炎症候群、慢性腎炎症候群、ネフローゼ症候群、腎硬化症、間質性腎炎、細尿管症、リポイドネフローゼ、糖尿病性腎症、腎血管性高血圧、若しくは高血圧症候群、あるいは前記の原疾患に伴う続発性腎疾患、更に、透析前の軽度腎不全を挙げることができ、透析前の軽度腎不全の病態改善や透析中の病態改善にも用いることができる(「臨床腎臓学」朝倉書店、本田西男、小磯謙吉、黒川清、1990年版及び「腎臓病学」医学書院、尾前照雄、藤見惺編集、1981年版参照)。
また、肝疾患としては、例えば、劇症肝炎、慢性肝炎、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、肝線維症、肝硬変、肝癌、自己免疫性肝炎、薬剤アレルギー性肝障害、原発性胆汁性肝硬変、振せん、脳症、代謝異常、又は機能異常を挙げることができる。その他、体内に存在する有害物質による病気、すなわち、精神病等の治療にも用いることができる。
DL−β−アミノイソ酪酸吸着速度を比較した結果を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 平均粒子径が0.01〜1mmであり、BET法により求められる比表面積が700m/g以上であり、細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が0.25mL/g〜1.0mL/gであり、全酸性基が0.30meq/g〜1.20meq/gであり、そして全塩基性基が0.20meq/g〜0.7meq/gである表面改質球状活性炭からなることを特徴とする、経口投与用吸着剤。
  2. 請求項1に記載の経口投与用吸着剤を有効成分とする、腎疾患治療又は予防剤。
  3. 請求項1に記載の経口投与用吸着剤を有効成分とする、肝疾患治療又は予防剤。
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