JP2005162683A - 高尿酸血症の治療又は予防剤 - Google Patents

高尿酸血症の治療又は予防剤 Download PDF

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Abstract

【課題】高尿酸血症や痛風の治療又は予防剤を提供する。
【解決手段】高尿酸血症の治療又は予防剤は、球形活性炭を有効成分とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、球形活性炭を有効成分とする、高尿酸血症の治療又は予防剤に関する。本発明による高尿酸血症の治療又は予防剤を経口投与すると、副作用を伴わずに、血中尿酸レベルを降下させることができ、高尿酸血症や痛風の治療又は予防に有用である。
高尿酸血症とは、血液中の尿酸レベルが正常範囲を超えて高くなる状態であり、高尿酸血症そのものには、自覚症状がない。しかし、高尿酸血症を治療しないで放置すると、体内で多くなった尿酸が溶解せずに関節などで結晶化し、痛風やさまざまな病気の原因になることがある。ときには、腎臓で結晶化して尿路結石や腎障害を引き起こす。また、心筋梗塞などの虚血性心疾患のリスクファクターでもある。そのほかにも高尿酸血症の患者は高血圧症や高脂血症などの生活習慣病(成人病)を合併することが多く、動脈硬化が起こりやすくなるといわれている。
痛風は、我が国では稀な疾患と考えられていたが、1960〜70年代の高度成長期に患者数が急増し、現在では極めてありふれた疾患となっている。痛風の基礎疾患である高尿酸血症についても、成人男性における頻度は1960年代に約5%、70年代から80年代前半に約15%、80年代後半から90年代にかけて約20%となり、経年的な増加がみられる(非特許文献1)。
高尿酸血症に対しては、その持続によってもたらされる体組織への尿酸(塩)沈着を解消し、痛風関節炎や腎障害などを回避することが治療目標となる。高尿酸血症の原因としては、一般的に、過食、高プリン・高脂肪・高蛋白食嗜好、常習飲酒、又は運動不足などの生活習慣が考えられており、食事療法などの生活指導が実施されている。また、薬物治療としては、尿酸降下薬が使用されており、尿酸降下薬は、作用機序の違いによって、尿酸排泄促進薬と尿酸生成抑制薬に分類される。
前記の尿酸排泄促進薬は、尿細管における尿酸の生理的再吸収を抑制することによって腎からの尿酸排泄能力を高め、血清尿酸値を低下させる。しかしながら、その使用中は常に尿路結石の発現に注意する必要があり、副作用として、胃腸障害と頭痛、ふらつきなどがある。更に、特異体質の患者に投与された場合に重篤な肝障害が起こることがある(前記非特許文献1)。
一方、尿酸生成抑制薬としては、アロプリノールが痛風治療に導入され、広く使用されている。このアロプリノールは、プリン代謝経路の最終段階に作用するキサンチンオキシダーゼを阻害し、血清尿酸値の低下とともに、尿中の尿酸排泄量も減少させる。しかしながら、腎不全の患者に過剰投与すると、オキシプリノールが大量に血中に蓄積して致死的な中毒症候群を起こすことがある(前記非特許文献1)。
「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン ダイジェスト版」日本痛風・核酸代謝学会発行(2002年9月1日)
前記のとおり、高尿酸血症患者や痛風患者が急激に増加しているにもかかわらず、従来の尿酸降下薬、すなわち、尿酸排泄促進薬及び尿酸生成抑制薬は、いずれも種々の副作用を示すため、副作用を示さない尿酸降下剤の開発が求められていた。
本発明者は、高尿酸血症モデルラットに、球形活性炭を経口投与したところ、驚くべきことに、血液中の尿酸レベルが高値から有意に降下することを見出した。本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、球形活性炭を有効成分とする、高尿酸血症の治療又は予防剤に関する。
本発明の好ましい態様の高尿酸血症剤は、経口投与用である。
更に本発明の好ましい態様において、球形活性炭の平均粒子径は0.01〜2mmである。
本発明による高尿酸血症の治療又は予防剤(以下、本発明の「医薬製剤」と称する)を、例えば、経口薬として服用することにより、血中の尿酸レベルを正常レベルに降下させることができるので、高尿酸血症や痛風の治療又は予防に有効である。
本発明の医薬製剤の有効成分である、球形活性炭としては、医療用に使用することが可能な球形活性炭である限り、特に限定されるものではないが、経口投与用球形活性炭、すなわち、医療用に内服使用することが可能な球形活性炭が好ましい。前記球形活性炭の平均粒子径は、0.01〜2mmであることが好ましく、0.05〜2mmであることがより好ましく、0.05〜1mmであることがより一層好ましい。
前記球形活性炭としては、例えば、特開平11−292770号公報又は特開2002−308785号公報に記載の球形活性炭を用いることができる。以下、特開平11−292770号公報に記載の球形活性炭について説明し、続いて、特開2002−308785号公報に記載の球形活性炭について説明する。
特開平11−292770号公報に記載の球形活性炭は、直径が好ましくは0.05〜2mm、より好ましくは0.1〜1mmの球形活性炭である。また、比表面積が好ましくは500〜2000m/g、より好ましくは700〜1500m/gの球形活性炭である。また、細孔半径100〜75000オングストロームの空隙量が好ましくは0.01〜1mL/g、より好ましくは0.05〜0.8mL/gの球形活性炭である。なお、上記の比表面積は、自動吸着量測定装置を用いたメタノール吸着法により測定した値である。空隙量は、水銀圧入ポロシメータにより測定した値である。前記の球形活性炭は、粉末活性炭に比べ、服用時に飛散せず、しかも、連続使用しても便秘を惹起しない点で有利である。
球形活性炭の形状は、重要な因子の1つであり、実質的に球状であることが重要である。球形活性炭の中では、後述の石油系ピッチ由来の球形活性炭が真球に近いため特に好ましい。
特開平11−292770号公報に記載の球形活性炭の製造には、任意の活性炭原料、例えば、オガ屑、石炭、ヤシ殻、石油系若しくは石炭系の各種ピッチ類又は有機合成高分子を用いることができる。球形活性炭は、例えば、原料を炭化した後に活性化する方法によって製造することができる。活性化の方法としては、水蒸気賦活、薬品賦活、空気賦活又は炭酸ガス賦活などの種々の方法を用いることができるが、医療に許容される純度を維持することが必要である。
特開平11−292770号公報に記載の球形活性炭としては、炭素質粉末からの造粒活性炭、有機高分子焼成の球形活性炭及び石油系炭化水素(石油系ピッチ)由来の球形活性炭などがある。
炭素質粉末からの造粒活性炭は、例えば、タール、ピッチ等のバインダーで炭素質粉末原料を小粒球形に造粒した後、不活性雰囲気中で600〜1000℃の温度に加熱焼成して炭化し、次いで、賦活することにより得ることができる。賦活方法としては、水蒸気賦活、薬品賦活、空気賦活又は炭酸ガス賦活などの種々の方法を用いることができる。水蒸気賦活は、例えば、水蒸気雰囲気中、800〜1100℃の温度で行われる。
有機高分子焼成の球形活性炭は、例えば、特公昭61−1366号公報に開示されており、次のようにして製造することが可能である。縮合型又は重付加型の熱硬化性プレポリマーに、硬化剤、硬化触媒、乳化剤などを混合し、攪拌下で水中に乳化させ、室温又は加温下に攪拌を続けながら反応させる。反応系は、まず懸濁状態になり、更に攪拌することにより熱硬化性樹脂球状物が出現する。これを回収し、不活性雰囲気中で500℃以上の温度に加熱して炭化し、前記の方法により賦活して有機高分子焼成の球形活性炭を得ることができる。
石油系ピッチ由来の球形活性炭は、直径が好ましくは0.05〜2mm、より好ましくは0.1〜1mm、比表面積が好ましくは500〜2000m/g、より好ましくは700〜1500m/g、細孔半径100〜75000オングストロームの空隙量が好ましくは0.01〜1mL/gである。この石油系ピッチ由来の球形活性炭は、例えば、以下の2種の方法で製造することができる。
第1の方法は、例えば、特公昭51−76号公報(米国特許第3917806号明細書)及び特開昭54−89010号公報(米国特許第4761284号明細書)に記載されているように、まず、溶融状態で小粒球形状としたピッチ類を酸素により不融化した後、不活性雰囲気中で600〜1000℃の温度に加熱焼成して炭化し、次いで、水蒸気雰囲気中で850〜1000℃の温度で賦活する方法である。第2の方法は、例えば、特公昭59−10930号公報(米国特許第4420433号明細書)に記載されているように、まず、溶融状態で紐状としたピッチ類を破砕した後、熱水中に投入して球状化し、次いで、酸素により不融化した後、上記の第1の方法と同様の条件で炭化、賦活する方法である。
本発明において有効成分の球形活性炭としては、(1)アンモニア処理などを施した球形活性炭、(2)酸化及び/又は還元処理を施した球形活性炭なども使用することができる。これらの処理を施すことのできる球形活性炭は、前記の石油系ピッチ由来の球形活性炭、炭素質粉末の造粒活性炭、有機高分子焼成の球形活性炭の何れであってもよい。
前記のアンモニア処理とは、例えば、球形活性炭を、1〜1000ppmのアンモニアを含有するアンモニア水溶液で、アンモニア水溶液と球形活性炭の容量比を2〜10として、10〜50℃の温度で、0.5〜5時間処理することからなる。前述の石油系ピッチ由来の球形活性炭にアンモニア処理を施した活性炭としては、特開昭56−5313号公報(米国特許第4761284号明細書)に記載の球形活性炭を挙げることができる。例えば、アンモニア処理が施された球形活性炭としては直径が0.05〜2mm、好ましくは0.1〜1mm、比表面積が500〜2000m/g、好ましくは700〜1500m/g、細孔半径100〜75000オングストロームの空隙量が0.01〜1mL/g、pHが6〜8の球形活性炭を例示することができる。
前記の酸化処理とは、酸素を含む酸化雰囲気で高温熱処理を行なうことを意味し、酸素源としては、純粋な酸素、酸化窒素又は空気などを用いることができる。また、還元処理とは、炭素に対して不活性な雰囲気で高温熱処理を行なうことを意味し、炭素に対して不活性な雰囲気は、窒素、アルゴン若しくはヘリウム又はそれらの混合ガスを用いて形成することができる。
前記の酸化処理は、好ましくは酸素含有量0.5〜25容量%、より好ましくは酸素含有量3〜10容量%の雰囲気中、好ましくは300〜700℃、より好ましくは400〜600℃の温度で行われる。前記の還元処理は、好ましくは700〜1100℃、より好ましくは800〜1000℃の温度で不活性雰囲気中で行われる。
前述の石油系ピッチ由来の球形活性炭に酸化及び/又は還元処理を施した例としては、特公昭62−11611号公報(米国特許第4681764号明細書)に記載の球形活性炭を挙げることができる。
酸化及び/又は還元処理が施された球形活性炭としては、直径が0.05〜2mm、好ましくは0.1〜1mm、比表面積が500〜2000m/g、好ましくは700〜1500m/g、細孔半径100〜75000オングストロームの空隙量が0.01〜1mL/gである球形活性炭が好ましい。
特開2002−308785号公報に記載の球形活性炭は、直径が0.01〜1mmであり、BET法により求められる比表面積が700m/g以上であり、細孔直径20〜15000nmの細孔容積が0.04mL/g以上で0.10mL/g未満であり、全酸性基が0.30〜1.20meq/gであり、全塩基性基が0.20〜0.70meq/gである球形活性炭である。特開2002−308785号公報に記載の球形活性炭は、特定範囲の細孔容積を有する。すなわち、細孔直径20〜15000nmの細孔容積が0.04mL/g以上で0.10mL/g未満である。また、本発明においては、全塩基性基が0.20〜1.00meq/gである球形活性炭(特願2002−293906号又は特願2002−293907号参照)も使用することができる。
一方、前記特開平11−292770号公報に記載の球形活性炭は、細孔半径100〜75000オングストロームの空隙容積(すなわち、細孔直径20〜15000nmの細孔容積)が0.1〜1mL/gである。特開2002−308785号公報の記載によれば、細孔直径20〜15000nmの細孔容積を0.04mL/g以上で0.10mL/g未満に調整すると、毒性物質であるβ−アミノイソ酪酸に対する高い吸着特性を維持しつつ、有益物質であるα−アミラーゼに対する吸着特性が有意に低下する。球形活性炭の細孔直径20〜15000nmの細孔容積が大きくなればなるほど消化酵素等の有益物質の吸着が起こりやすくなるため、有益物質の吸着を少なくする観点からは、前記細孔容積は小さいほど好ましい。しかしながら、一方で、細孔容積が小さすぎると毒性物質の吸着量も低下する。従って、経口投与用吸着剤においては、毒性物質の吸着量(T)の有益物質の吸着量(U)に対する比(T/U)、すなわち、選択吸着率が重要である。例えば、球形活性炭の選択吸着率を、DL−β−アミノイソ酪酸(毒性物質)の吸着量(Tb)のα−アミラーゼ(有益物質)の吸着量(Ua)に対する比(Tb/Ua)として評価することができる。すなわち、選択吸着率は、例えば、以下の式:
A=Tb/Ua
(ここで、Aは選択吸着率であり、TbはDL−β−アミノイソ酪酸の吸着量であり、Uaはα−アミラーゼの吸着量である)
によって評価することができる。
特開2002−308785号公報に記載の球形活性炭は、細孔直径20〜15000nmの細孔容積が0.04mL/g以上で0.10mL/g未満の範囲内で優れた選択吸着率を示し、前記細孔容積が0.05mL/g以上で0.10mL/g未満の範囲内で一層優れた選択吸着率を示す。
特開2002−308785号公報に記載の球形活性炭は、直径が0.01〜1mmである。直径は、好ましくは0.02〜0.8mmである。なお、本明細書で「直径がDl〜Duである」という表現は、JIS K 1474に準じて作成した粒度累積線図(平均粒子径の測定方法に関連して後で説明する)において、ふるいの目開きDl〜Duの範囲に対応するふるい通過百分率(%)が90%以上であることを意味する。
特開2002−308785号公報に記載の球形活性炭は、BET法により求められる比表面積(以下「SSA」と省略することがある)が700m/g以上である。SSAが700m/gより小さい球形活性炭では、毒性物質の吸着性能が低くなるので好ましくない。SSAは、好ましくは800m/g以上である。SSAの上限は特に限定されるものではないが、嵩密度及び強度の観点から、SSAは、2500m/g以下であることが好ましい。
更に、特開2002−308785号公報に記載の球形活性炭では、官能基の構成において、全酸性基が0.30〜1.20meq/gであり、全塩基性基が0.20〜0.70meq/gである。官能基の構成において、全酸性基が0.30〜1.20meq/gであり、全塩基性基が0.20〜0.70meq/gの条件を満足しない球形活性炭では、上述した有毒物質の吸着能が低くなるので好ましくない。官能基の構成において、全酸性基は0.30〜1.00meq/gであることが好ましく、全塩基性基は0.30〜0.60meq/gであることが好ましい。その官能基の構成は、全酸性基が0.30〜1.20meq/g、全塩基性基が0.20〜0.70meq/g、フェノール性水酸基が0.20〜0.70meq/g、及びカルボキシル基が0.15meq/g以下の範囲にあり、且つ全酸性基(a)と全塩基性基(b)との比(a/b)が0.40〜2.5であり、全塩基性基(b)とフェノール性水酸基(c)とカルボキシル基(d)との関係〔(b+c)−d〕が0.60以上であることが好ましい。
特開2002−308785号公報に記載の球形活性炭は、例えば、以下の方法によって製造することができる。
最初に、石油ピッチ又は石炭ピッチ等のピッチに対し、添加剤として、沸点200℃以上の2環式又は3環式の芳香族化合物又はその混合物を加えて加熱混合した後、成形してピッチ成形体を得る。なお、前記の球形活性炭は経口投与用であるので、その原料も、安全上充分な純度を有し、且つ品質的に安定であることが必要である。
次に、70〜180℃の熱水中で、前記のピッチ成形体を撹拌下に分散造粒して微小球体化する。更に、ピッチに対して低溶解度を有し、かつ前記添加剤に対して高溶解度を有する溶剤で、ピッチ成形体から添加剤を抽出除去し、得られた多孔性ピッチを、酸化剤を用いて酸化すると、熱に対して不融性の多孔性ピッチが得られる。こうして得られた不融性多孔性ピッチを、更に炭素と反応性を有する気流(例えば、スチーム又は炭酸ガス)中で、800〜1000℃の温度で処理すると、多孔性炭素質物質を得ることができる。
こうして得られた多孔性炭素質物質を、続いて、酸素含有量0.1〜50vol%(好ましくは1〜30vol%、特に好ましくは3〜20vol%)の雰囲気下、300〜800℃(好ましくは320〜600℃)の温度で酸化処理し、更に800〜1200℃(好ましくは800〜1000℃)の温度下、非酸化性ガス雰囲気下で加熱反応による還元処理をすることにより、特開2002−308785号公報に記載の球形活性炭を得ることができる。
前記の製造方法において、特定量の酸素を含有する雰囲気としては、純粋な酸素、酸化窒素又は空気等を酸素源として用いることができる。また、炭素に対して不活性な雰囲気としては、例えば、窒素、アルゴン、又はへリウム等を単独で用いるか、あるいはそれらの混合物を用いることができる。
前記の原料ピッチに対して、芳香族化合物を添加する目的は、原料ピッチの軟化点を降下させることにより流動性を向上させて微小球体化を容易にすること及び成形後のピッチ成形体からその添加剤を抽出除去させることにより成形体を多孔質とし、その後の工程の酸化による炭素質材料の構造制御並びに焼成を容易にすることにある。このような添加剤としては、例えば、ナフタレン、メチルナフタレン、フェニルナフタレン、ベンジルナフタレン、メチルアントラセン、フェナンスレン、又はビフェニル等を単独で、又はそれらの2種以上の混合物を用いることができる。ピッチに対する添加量は、ピッチ100重量部に対し芳香族化合物10〜50重量部の範囲が好ましい。
ピッチと添加剤との混合は、均一な混合を達成するために、加熱して溶融状態で行うのが好ましい。ピッチと添加剤との混合物は、得られる多孔性球状炭素質の粒径(直径)を制御するため、粒径約0.01〜1mmの粒子に成形することが好ましい。成形は溶融状態で行ってもよく、また混合物を冷却後に粉砕する等の方法によってもよい。
ピッチと添加剤との混合物から添加剤を抽出除去するための溶剤としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、又はヘプタン等の脂肪族炭化水素、ナフサ、又はケロシン等の脂肪族炭化水素を主成分とする混合物、あるいはメタノール、エタノール、プロパノール、又はブタノール等の脂肪族アルコール類等が好適である。
このような溶剤でピッチと添加剤との混合物成形体から添加剤を抽出することによって、成形体の形状を維持したまま、添加剤を成形体から除去することができる。この際に、成形体中に添加剤の抜け穴が形成され、均一な多孔性を有するピッチ成形体が得られるものと推定される。
なお、添加剤の抜け穴サイズ(すなわち、細孔容積)の制御は、常法、例えば、添加剤の量、ピッチ成形体の微小球体化工程における添加剤の析出温度(冷却温度)を制御することによって実施することができる。また、添加剤の抽出により生成した細孔容積は不融化条件によっても影響を受ける。例えば、不融化処理が強ければ熱処理による熱収縮が小さくなり、添加剤の抽出により得られた細孔が維持されやすい傾向にある。
こうして得られた多孔性ピッチ成形体を、次いで不融化処理、すなわち酸化剤を用いて、好ましくは常温から300℃までの温度で酸化処理することにより、熱に対して不融性の多孔性不融性ピッチ成形体を得ることができる。ここで用いる酸化剤としては、例えば、酸素ガス(O)、あるいは酸素ガス(O)を空気や窒素等で希釈した混合ガスを挙げることができる。
特開2002−308785号公報に記載の球形活性炭が有する各物性値、すなわち、平均粒子径、比表面積、細孔容積、全酸性基、及び全塩基性基は、以下の方法によって測定する。
(1)平均粒子径
球形活性炭についてJIS K 1474に準じて粒度累積線図を作成する。平均粒子径は、粒度累積線図において、横軸の50%の点の垂直線と粒度累積線との交点から、横軸に水平線を引いて交点の示すふるいの目開き(mm)を求めて、平均粒子径とする。
(2)比表面積
連続流通式のガス吸着法による比表面積測定器(例えば、MICROMERITICS社製「Flow Sorb II 2300」)を用いて、球形活性炭試料のガス吸着量を測定し、BETの式により比表面積を計算することができる。具体的には、試料である球形活性炭を試料管に充填し、その試料管に窒素30vol%を含有するヘリウムガスを流しながら以下の操作を行い、球形活性炭試料への窒素吸着量を求める。すなわち、試料管を−196℃に冷却し、球形活性炭試料に窒素を吸着させる。次に、試料管を室温に戻す。このとき球形活性炭試料から脱離してくる窒素量を熱伝導度型検出器で測定し、吸着ガス量(v)とする。
BETの式から誘導された近似式:
=1/(v・(1−x))
を用いて液体窒素温度における、窒素吸着による1点法(相対圧力x=0.3)によりvを求め、次式:
比表面積=4.35×v(m/g)
により試料の比表面積を計算する。前記の各計算式で、vは試料表面に単分子層を形成するのに必要な吸着量(cm/g)であり、vは実測される吸着量(cm/g)であり、xは相対圧力である。
(3)水銀圧入法による細孔容積
水銀ポロシメータ(例えば、MICROMERITICS社製「AUTOPORE 9200」)を用いて細孔容積を測定することができる。試料である球形活性炭を試料容器に入れ、2.67Pa以下の圧力で30分間脱気する。次いで、水銀を試料容器内に導入し、徐々に加圧して水銀を球形活性炭試料の細孔へ圧入する(最高圧力=414MPa)。このときの圧力と水銀の圧入量との関係から以下の各計算式を用いて球形活性炭試料の細孔容積分布を測定する。
具体的には、細孔直径15μmに相当する圧力(0.07MPa)から最高圧力(414MPa:細孔直径3nm相当)までに球形活性炭試料に圧入された水銀の体積を測定する。細孔直径の算出は、直径(D)の円筒形の細孔に水銀を圧力(P)で圧入する場合、水銀の表面張力を「γ」とし、水銀と細孔壁との接触角を「θ」とすると、表面張力と細孔断面に働く圧力の釣り合いから、次式:
−πDγcosθ=π(D/2)・P
が成り立つ。従って
D=(−4γcosθ)/P
となる。
本明細書においては、水銀の表面張力を484dyne/cmとし、水銀と炭素との接触角を130度とし、圧力PをMPaとし、そして細孔直径Dをμmで表示し、下記式:
D=1.27/P
により圧力Pと細孔直径Dの関係を求める。本発明における細孔直径20〜15000nmの範囲の細孔容積とは、水銀圧入圧0.08MPaから63.5MPaまでに圧入された水銀の体積に相当する。
(4)全酸性基
0.05規定のNaOH溶液50mL中に、200メッシュ以下に粉砕した球形活性炭試料1gを添加し、48時間振とうした後、球形活性炭試料をろ別し、中和滴定により求められるNaOHの消費量である。
(5)全塩基性基
0.05規定のHCl溶液50mL中に、200メッシュ以下に粉砕した球形活性炭試料1gを添加し、24時間振とうした後、球形活性炭試料をろ別し、中和滴定により求められるHClの消費量である。
前記の方法で得られた球形活性炭を、高尿酸血症モデルラットに経口投与したところ、驚くべきことに、血液中の尿酸レベルが有意に降下した。しかも、前記の球形活性炭投与については、有害な副作用も見られなかった。これらの事実により、球形活性炭を有効成分として含有する製剤は、抗高尿酸血症剤として有用であることが判明した。
本発明の医薬製剤は、高尿酸血症の治療又は予防に有用であり、特には、高尿酸血症の患者、すなわち、血液中の尿酸レベルが正常範囲を超えて高い状態の患者(ヒトをはじめとする哺乳動物)に有用である。本発明の医薬製剤は、好ましくは経口的に投与される。その投与量は、対象(哺乳動物特にはヒト)、年齢、個人差、及び/又は病状などに依存する。例えば、ヒトの場合の1日当たりの投与量は、通常、球形活性炭量として0.2〜20gであるが、症状により、投与量を適宜増減してもよい。また、投与は1回又は数回に分けて行なってもよい。球形活性炭は、そのまま投与してもよいし、球形活性炭製剤として投与してもよい。球形活性炭をそのまま投与する場合、球形活性炭を飲料水などに懸濁したスラリーとして投与することもできる。
球形活性炭製剤における剤形としては、顆粒、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、スティック剤、分包包装体又は懸濁剤などの任意の剤形を採用することができる。カプセル剤の場合、通常のゼラチンカプセルの他、必要に応じ、腸溶性のカプセルを用いることもできる。顆粒、錠剤又は糖衣錠として用いる場合は、体内で元の微小粒子に解錠されることが必要である。多孔質球形活性炭製剤中の多孔質球形活性炭の含有量は、通常1〜100%である。本発明において、好ましい球形活性炭製剤は、カプセル剤、スティック剤又は分包包装体である。これらの製剤の場合、球形活性炭は、そのまま容器に封入される。
なお、本発明者は、本発明の効果を確認するため新規な手法を開発したので、その手法を以下に説明する。
ヒトや類人猿には、尿酸をアラントインに変換する酵素(ウリカーゼ)が存在しないので、血液中に尿酸が存在する。一方、ヒトや類人猿以外の哺乳動物(例えば、ラット)では、肝臓にウリカーゼが存在し、ウリカーゼは尿酸をアラントインに変換するので、ラットなどの血液中には、尿酸が存在しない。
そこで、ラットなどの血液中で尿酸濃度を高い状態に維持し、高尿酸血症状態のモデルラットを作製するためには、ウリカーゼ活性を阻害し、尿酸からアラントインへの代謝を妨害する必要がある。1974年に、Wismanらは、ウリカーゼ阻害剤(オキソン酸)と尿酸とをモデル動物に経口投与し、持続的な高尿酸血症状態を維持する高尿酸血症モデルを作製した。その後、この実験モデル動物が痛風の腎障害実験モデルとして使用されてきている。
しかしながら、この実験モデルは、ウリカーゼ阻害剤(オキソン酸)と尿酸とを飼料と共に与えている。従って、本発明の有効成分のように、吸着能を有する球形活性炭を経口投与すると、ウリカーゼ阻害剤(オキソン酸)が球形活性炭と接触して吸着されてしまうために、高尿酸血症モデルを作製することは困難である。
従って、本発明のように吸着能を有する球形活性炭の効果を確認するためには、ウリカーゼ阻害剤(オキソン酸)と吸着剤(球形活性炭)とを直接には接着させず、しかも、血中尿酸濃度を高レベルで安定に維持させる手法が要求される。そこで、本発明者は、高尿酸血症モデルラットを作製するにあたり、ウリカーゼ阻害剤(オキソン酸)をラットの背部皮下に投与した。また、プリン体であるイノシンを経口投与し、その代謝産物としての尿酸を血液中に存在させるようにした。具体的には、後述する実施例に示すとおり、ラットにイノシンを4日間連続して経口投与し、続いて、そのラットの背部皮下にオキソン酸を投与すると共にイノシンの経口投与を継続することにより、高尿酸血症動物モデルを作製することができた。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
〔製造実施例:球形活性炭の調製〕
石油系ピッチ(軟化点=210℃;キノリン不溶分=1重量%以下;H/C原子比=0.63)68kgと、ナフタレン32kgとを、攪拌翼のついた内容積300Lの耐圧容器に仕込み、180℃で溶融混合を行った後、80〜90℃に冷却して押し出し、紐状成形体を得た。次いで、この紐状成形体を直径と長さの比が約1〜2になるように破砕した。
0.23重量%のポリビニルアルコール(ケン化度=88%)を溶解して93℃に加熱した水溶液中に、前記の破砕物を投入し、攪拌分散により球状化した後、前記のポリビニルアルコール水溶液を水で置換することにより冷却し、20℃で3時間冷却し、ピッチの固化及びナフタレン結晶の析出を行い、球状ピッチ成形体スラリーを得た。
大部分の水をろ過により除いた後、球状ピッチ成形体の約6倍重量のn−ヘキサンでピッチ成形体中のナフタレンを抽出除去した。このようにして得た多孔性球状ピッチを、流動床を用いて、加熱空気を通じながら、235℃まで昇温した後、235℃にて1時間保持して酸化し、熱に対して不融性の多孔性球状酸化ピッチを得た。
続いて、多孔性球状酸化ピッチを、流動床を用い、50vol%の水蒸気を含む窒素ガス雰囲気中で900℃で170分間賦活処理して多孔性球形活性炭を得、更にこれを流動床にて、酸素濃度18.5vol%の窒素と酸素との混合ガス雰囲気下で470℃で3時間15分間、酸化処理し、次に流動床にて窒素ガス雰囲気下で900℃で17分間還元処理を行い、球形活性炭を得た。
得られた球形活性炭の特性は、SSAが1300m/gであり、細孔容積が0.08mL/gであり、平均粒子径が350μmであり、全酸性基が0.67meq/gであり、全塩基性基が0.54meq/gであった。なお、前記細孔容積は、水銀圧入法により求めた細孔直径20〜15000nmの範囲の細孔容積に相当する。
なお、得られた球形活性炭に関して、ラット(Cpb:WU:ウイスターランダム)への経口投与による急性毒性試験を実施したところ、毒性試験法ガイドライン(薬審第118号)による最大投与量(雌雄ラット5000mg/kg)においても異常は観察されなかった。
〔薬理効果確認試験例〕
(1)イノシンの前投与
体重約350gの9週齢の雄のJcl-Sprague-Dawley系ラット(12匹;日本クレア)に、イノシン〔和光純薬工業(株)〕を一日60mg/kgの量で、それぞれ、4日間連続で経口投与した。イノシンは、一日投与量を朝と夕方の2回に分けて与えた。
(2)球形活性炭の効果確認
イノシンの前投与開始から5日目に、生理食塩水に懸濁したウリカーゼ阻害剤(オキソン酸)を前記ラットの背部皮下に、3時間に一回の割合で、それぞれ250mg/kgの量を投与した。オキソン酸の初回投与から2時間後に、イノシンの追加投与前の検体採取のために、頚静脈から採血した。その採血直後に、イノシンの経口投与及び製造実施例で調製した球形活性炭の経口投与を行い、その時刻を基準時(0分)とした。製造実施例で調製した球形活性炭の投与は、一日4g/kgの量で市販の流動食〔大塚製薬(株)〕に練り混ぜて行い、イノシンの経口投与とは時期をずらせて実施した。前記の基準時から30分、60分、120分、及び240分の経過後に検体採取のため頚静脈から採血した。これらのタイムスケジュールを図1に示す。なお、図1において、○はウリカーゼ阻害剤投与を示し、◎はイノシンの追加投与を示し、●は球形活性炭投与を示し、▼は採血を示す。
(3)結果
結果を表1に示す。表1において、対照群とは、イノシンの追加投与は行ったが、球形活性炭の投与を行わなかった群であり、本発明群とは、イノシンの追加投与と共に、球形活性炭の投与を行なった群である。また、表1に示す数値は血液中の尿酸濃度(mg/dL)である。
Figure 2005162683
表1から明らかなように、対照群では、イノシンの前投与によって血液中の尿酸濃度が有意(t−検定;p<0.05)に上昇し、その後も血液中の尿酸濃度は同じレベルで推移した。一方、本発明群では、血中尿酸値が有意な低値を示した。
以上の結果から、球形活性炭は、プリン体(イノシン)摂取による血中尿酸値の上昇を抑制したことが分かる。
〔製剤調製例1:カプセル剤の調製〕
前記製造実施例で得た球形活性炭200mgをゼラチンカプセルに封入してカプセル剤を調製した。
〔製剤調製例2:スティック剤の調製〕
前記製造実施例で得た球形活性炭2gを積層フィルム製スティックに充填した後、ヒートシールしてスティック剤とした。
本発明は、副作用のない抗高尿酸血症剤を提供し、痛風の予防剤及び治療剤としても利用することができる。
実施例の薬理効果確認試験例におけるウリカーゼ阻害剤、イノシン、及び球形活性炭の投与時、並びに採血時のタイムスケジュールを模式的に示す説明図である。
符号の説明
○・・・ウリカーゼ阻害剤投与時;◎・・・イノシンの追加投与時;
●・・・球形活性炭投与時;▼・・・採血時。

Claims (3)

  1. 球形活性炭を有効成分とする、高尿酸血症の治療又は予防剤。
  2. 経口投与用である請求項1に記載の高尿酸血症の治療又は予防剤。
  3. 球形活性炭の平均粒子径が0.01〜2mmである請求項1又は2に記載の高尿酸血症の治療又は予防剤。
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