JP2010208154A - 金属製燃料容器の製造方法および金属製燃料容器 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明により、耐食性に優れ、且つ耐溶剤性にも優れる金属性燃料容器の製造方法を提供する。
【解決手段】金属製燃料容器の内面に相当するプレス後金属板の表面に、ガラス転移温度が25℃以上、数平均分子量が10000〜50000であるポリエステル樹脂(A)と、アミノ樹脂(B)と、酸性触媒と、揮発性塩基触媒とを含み、全ポリエステル樹脂(A)の固形分100質量部に対してアミノ樹脂(B)の固形分が10〜80質量部であり、かつ、表面張力が40mN/m以下である塗料組成物を塗布して焼付乾燥することにより塗膜を形成し、且つ、前記塗膜の膜厚を乾燥膜厚にして1〜100μmとする金属製燃料容器の製造方法および金属製燃料容器である。金属板を使用した燃料容器内で有機酸が生成したり、スラッジ等の異物が付着しても、塗膜により金属面を腐食環境から隔離することで、燃料容器内での腐食を長期間抑制することが可能となる。
【選択図】なし
【解決手段】金属製燃料容器の内面に相当するプレス後金属板の表面に、ガラス転移温度が25℃以上、数平均分子量が10000〜50000であるポリエステル樹脂(A)と、アミノ樹脂(B)と、酸性触媒と、揮発性塩基触媒とを含み、全ポリエステル樹脂(A)の固形分100質量部に対してアミノ樹脂(B)の固形分が10〜80質量部であり、かつ、表面張力が40mN/m以下である塗料組成物を塗布して焼付乾燥することにより塗膜を形成し、且つ、前記塗膜の膜厚を乾燥膜厚にして1〜100μmとする金属製燃料容器の製造方法および金属製燃料容器である。金属板を使用した燃料容器内で有機酸が生成したり、スラッジ等の異物が付着しても、塗膜により金属面を腐食環境から隔離することで、燃料容器内での腐食を長期間抑制することが可能となる。
【選択図】なし
Description
本発明は、プレス成形後の耐食性に優れた金属製燃料容器に関するものであり、特に、長期内面側耐食性を発揮することが可能な自動車用、自動二輪用、機械用、等における金属製燃料容器に関する。
自動車用、自動二輪用、機械用、等における金属製燃料容器には、燃料タンク材料としてこれまで内外面耐食性、加工性、はんだ性(溶接性)等の優れたPb−Sn合金めっき鋼板が主として用いられ、自動車用燃料タンクとして幅広く使用されて来た。
また、Sn−Zn合金めっき鋼板は、例えば特許文献1に開示されているように、ZnおよびSnイオンを含む水溶液中で電解する電気めっき法によって主として製造されてきた。Snを主体とするSn−Zn合金めっき鋼板は、耐食性やはんだ性に優れており電子部品などに多く使用されてきた。近年では、自動車燃料タンク用途でこのSn−Znめっき鋼板が優れた特性を有することが知見され、例えば特許文献2や特許文献3において、耐食性やはんだ性に優れた溶融Sn−Znめっき鋼板が開示されている。
自動車用燃料容器用金属素材として使用されてきたPb−Sn合金めっき鋼板は、各種の優れた特性(例えば、加工性・タンク内面耐食性、はんだ性、シーム溶接性等)が認められ愛用されてきたが、近年の地球環境認識の高まりにつれ、Pbフリー化の方向に移行しつつある。一方、Sn−Zn電気合金めっき鋼板は、主としてはんだ性等の要求される電子部品として腐食環境がさほど厳しくない用途で使用されてきた。前記した溶融Sn−Znめっき鋼板は、確かに優れた耐食性、加工性、はんだ性を有するものであり、燃料容器用金属素材としては主流となっている。
しかしながら、最近、更なる燃料タンク内面側の耐食性の向上が求められている。上述の溶融Sn−Znめっき鋼板でも、劣化しやすいバイオ燃料の適用により生成した有機酸環境中では赤錆発生に至るまでの期間が短く、穴あきやフィルター詰り等の市場不具合が発生する可能性が高く、金属製燃料容器材料の信頼性を損なっている。
これを解消するために、金属製燃料容器内面側に塗料等の樹脂層を設定して絶縁することが考えられ、特許文献4では導電性樹脂被覆層を、特許文献5では樹脂被覆層をめっき表面に設けたプレコート材が提案されている。
しかしながら、プレコート材では、必要部位以外にも塗布することになり経済性が悪くなるとともに、加工性を高めるために皮膜中にWAXを添加する必要があるし、樹脂も完全に架橋させることができないために、皮膜のバリアー性や素地との密着性は十分とはいえない。また、容器製造の溶接時には、塗膜が塗布されているところは通電させるために剥離させる必要があるため、燃料容器の生産性を阻害している。
そこで、本発明は、従来技術における上記問題点を解決し、耐食性及び耐溶剤性に優れた金属製燃料容器の製造方法を提供することをその課題とする。
本発明者らは、金属製燃料容器内面に相当するプレス後金属板表面に塗料を塗布して焼付乾燥することにより、耐食性や耐溶剤性に優れた金属製燃料容器が得られることを見出した。特に、塗料について、ガソリンや軽油等の溶剤に耐え、且つ、容器内面に均一に塗布できることが必要で、耐溶剤性および均一塗布性に優れる塗膜について鋭意検討した結果、耐溶剤性には塗膜のガラス転移温度(Tg)が大きく影響し、塗膜中に高いTgを有するポリエステル樹脂を含むと、耐溶剤性が向上することを知見した。これに、アミノ樹脂、酸性触媒、揮発性塩基性物質を添加成分として含む塗料を焼付硬化させることで、さらに耐溶剤性が向上し、耐食性や耐溶剤性に優れた金属製燃料容器が得られることを見出した。
本発明は、かかる知見を基に完成させたものであって、本発明がその要旨とするところは、以下の通りである。
(1)金属製燃料容器の内面に相当するプレス後金属板の表面に、ガラス転移温度が25℃以上、数平均分子量が10000〜50000であるポリエステル樹脂(A)と、アミノ樹脂(B)と、酸性触媒と、揮発性塩基触媒とを含み、全ポリエステル樹脂(A)の固形分100質量部に対してアミノ樹脂(B)の固形分が10〜80質量部であり、かつ、表面張力が40mN/m以下である塗料組成物を塗布して焼付乾燥することにより塗膜を形成し、且つ、前記塗膜の膜厚を乾燥膜厚にして1〜100μmとすることを特徴とする、金属製燃料容器の製造方法。
(2)前記ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度が45℃以上であることを特徴とする、(1)に記載の金属製燃料容器の製造方法。
(3)前記塗料組成物は、全ポリエステル樹脂(A)の固形分100質量部に対してアミノ樹脂(B)の固形分が10〜35質量部であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の金属製燃料容器の製造方法。
(4)前記塗料組成物がさらに顔料を含有し、当該顔料の含有量が、全樹脂固形分100質量部に対して、80質量部以下であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の金属製燃料容器の製造方法。
(5)前記焼付乾燥の際の温度は、100℃以上であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の金属製燃料容器の製造方法。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法により得られる金属製燃料容器。
(1)金属製燃料容器の内面に相当するプレス後金属板の表面に、ガラス転移温度が25℃以上、数平均分子量が10000〜50000であるポリエステル樹脂(A)と、アミノ樹脂(B)と、酸性触媒と、揮発性塩基触媒とを含み、全ポリエステル樹脂(A)の固形分100質量部に対してアミノ樹脂(B)の固形分が10〜80質量部であり、かつ、表面張力が40mN/m以下である塗料組成物を塗布して焼付乾燥することにより塗膜を形成し、且つ、前記塗膜の膜厚を乾燥膜厚にして1〜100μmとすることを特徴とする、金属製燃料容器の製造方法。
(2)前記ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度が45℃以上であることを特徴とする、(1)に記載の金属製燃料容器の製造方法。
(3)前記塗料組成物は、全ポリエステル樹脂(A)の固形分100質量部に対してアミノ樹脂(B)の固形分が10〜35質量部であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の金属製燃料容器の製造方法。
(4)前記塗料組成物がさらに顔料を含有し、当該顔料の含有量が、全樹脂固形分100質量部に対して、80質量部以下であることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の金属製燃料容器の製造方法。
(5)前記焼付乾燥の際の温度は、100℃以上であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の金属製燃料容器の製造方法。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法により得られる金属製燃料容器。
本発明により、耐食性に優れ、且つ耐溶剤性にも優れる金属性燃料容器の製造方法を提供することが可能となった。そのため、金属板を使用した燃料容器内で有機酸が生成したり、スラッジ等の異物が付着しても、塗膜により金属面を腐食環境から隔離することで、燃料容器内での腐食を長期間抑制することが可能となった。従って、本発明は産業上の極めて価値の高い発明であるといえる。
以下に、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、金属製燃料容器内面に相当するプレス後金属板表面に、ガラス転移温度が25℃以上、数平均分子量が10000〜50000であるポリエステル樹脂(A)と、アミノ樹脂(B)と、酸性触媒と、揮発性塩基触媒とを含み、且つ、全ポリエステル樹脂の固形分100質量部に対してアミノ樹脂(B)の固形分が10〜80質量部であり、かつ、表面張力が40mN/m以下である塗料組成物を塗布して100℃以上の温度で焼付乾燥することを特徴とする耐食性や耐溶剤性に優れた金属製燃料容器の製造方法である。
本発明に使用する金属板は、一般に公知の金属材料を用いることができる。金属材料が合金材料であってもよい。例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミ板、アルミ合金板、チタン板、銅板等が挙げられる。これらの材料の表面にはめっきが施されていてもよい。めっきの種類としては、亜鉛めっき、アルミめっき、銅めっき、ニッケルめっき、錫めっき等が挙げられる。これらの合金めっきであってもよい。鋼板の場合は、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板、溶融合金化亜鉛めっき鋼板、アルミめっき鋼板、アルミ−亜鉛合金化めっき鋼板、錫−亜鉛めっき等、一般に公知の鋼板及びめっき鋼板を適用できる。これらの中でも、燃料容器内での耐食性が最も優れる錫−亜鉛めっきとの組み合せが最も耐食性向上効果が顕著であり、望ましい。
本発明に用いる金属板の化成処理は、リン酸亜鉛系化成処理、塗布クロメート処理、電解クロム酸処理、反応クロメート処理、クロメートフリー系化成処理等を使用することができる。ノンクロメート系化成処理としては、3価クロム系、シランカップリング剤、ジルコニウム化合物、チタニウム化合物、タンニン又はタンニン酸、樹脂、シリカ等を含む水溶液で処理したもの等が知られており、特開昭53−9238号公報、特開平9−241576号公報、特開2001−89868号公報、特開2001−316845号公報、特開2002−60959号公報、特開2002−38280号公報、特開2002−266081号公報、特開2003−253464号公報等に記載されている公知の技術を使用しても良い。これらの化成処理は、市販の化成処理剤、例えば、日本パーカライジング社製のクロメート処理「ZM−1300AN」、日本パーカライジング社製のクロメートフリー化成処理「CT−E300N」、日本ペイント社製の3価クロム系化成処理「サーフコートTMNRC1000」等を使用することができる。
本発明の金属製燃料容器内面に相当するプレス後金属板表面に塗布する塗料の塗料組成物を構成する25℃以上のTgを有する数平均分子量が10000〜50000のポリエステル樹脂(A)とは、一般に公知のエステル基を有する樹脂のことであり、オイルフリーポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、線状高分子ポリエステル、分岐型ポリエステルを使用することができる。このようなポリエステル樹脂(A)としては、市販のもの、例えば、東洋紡績社製の「バイロンTM」(東洋防錆社の登録商標)や、住化バイエルウレタン社製「デスモフェンTM」(住化バイエルウレタン社の登録商標)等を使用することができる。これらを複数混合しても良い。
十分な耐溶剤性を得るためにはTgが25℃以上のポリエステル樹脂が必要である。なお、複数のポリエステル樹脂を混合した場合は、混合したポリエステル樹脂全体のTgが25℃以上であればよい。本発明においては、Tgは、例えば、熱機械分析(TMA)にて測定することができる。
本発明に用いるポリエステル樹脂の数平均分子量は、10000〜50000が必要である。数平均分子量が10000未満では塗膜の架橋率が低下するため、塗料密着性が低下し、50000超では粘度が高くなるため均一被覆性が悪くなり耐食性が劣ってくる。なお、複数のポリエステル樹脂を混合した場合は、混合したポリエステル樹脂全体の数平均分子量が10000〜50000であれば良い。本発明におけるポリエステル樹脂の数平均分子量及び分子量分布は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定することができる。具体的には、例えば、測定装置として、東ソー株式会社製「HPLC8010」を、カラムとして、Shodex KF802×2 + KF803 + KF804を用い、溶離液としてTHFを1.0ml/分で流すことにより、本発明におけるポリエステル樹脂の数平均分子量及び分子量分布を測定することができる。
また、住友3M社製のノベックFC−4430やFC−4432などのフッ素系界面活性剤やブチルセロソルブ等のノニオン性界面活性剤を0.01質量%以上添加することで本発明で規定する40mN/m以下の表面張力を得ることができる。燃料容器内の内面(特に底面)形状は凹凸や溶接部など複雑であり40mN/m以下にすることで、隙間や凸部で十分な塗膜厚みが確保出来、安定的な耐食性を得ることが出来る。本発明における塗料の表面張力は、例えば、ウィルヘルミ・プレート法等により測定することができる。
金属材との塗料密着性を確保するために、エポキシ樹脂やシランカップリング剤を添加しても良い。エポキシ樹脂としては、ジャパンポリエステルレジン社製の「jER(登録商標)樹脂」やDIC社製の「EPICLON」、ADEKA社製の「アデカレジン」等を使用することができる。シランカップリング剤としては、信越化学工業のKBM−403やKBE−903、KBM−603、KBP−90等を使用することができる。
本発明の金属製燃料容器内面に相当するプレス後金属板表面に塗装する塗料のその他塗料組成物として、「アミノ樹脂」、「酸性触媒」、「揮発性塩基性物質」、「シンナー」等が考えられる。
「アミノ樹脂」は、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、イミノ基型メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、グリコールウリル樹脂、尿素樹脂等、一般に公知のアミノ樹脂を使用することができる。市販されているものでは、例えば、三井サイテック社製「サイメルTM」、「マイコートTM」(何れも三井サイテック社の登録商標)、大日本インキ化学工業社製「ベッカミンTM」、「スーパーベッカミンTM」(何れも大日本インキ化学工業社の登録商標)等を使用することができる。また、複数の種類のアミノ樹脂を混合して使用しても良い。これらの中でも、特に、ヘキサメトキシメチル化メラミンを用いると、耐溶剤性と密着性とのバランスが良く、より好適である。また、これらアミノ樹脂の含有量は、燃料への塗膜の溶解を抑えるために、ポリエステル樹脂の固形分100質量部に対して、10質量部以上が望ましい。また、80質量部を超えると塗膜内部応力増による塗料密着性が低下するためにアミノ樹脂の固形分で80質量部以下であることが望ましい。より望ましくは、35質量部以下が望ましい。良好な耐溶剤性を得るためにはアミノ樹脂の3次元架橋反応が必要であり、その反応は100℃以上で起こるために100℃以上の焼付けが望ましい。
「酸性触媒」は、アミノ樹脂の硬化を促進させるために添加することが必要である。酸性触媒としては、アミノ樹脂硬化促進機能を有する酸性触媒であれば良く、一般に公知のもの、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸等を使用することができる。市販のものでは、例えば、三井サイテック社製の酸性触媒「キャタリストTM」等を使用することができる。酸性触媒の添加量は、特に規定するものではなく、必要に応じて適宜選定して使用することができる。酸性触媒の添加量を増やすと、アミノ樹脂の硬化がより促進されるため、塗膜の架橋密度が高くなり、耐食性は良くなるが、密着性が低下する傾向となるため、事前に添加量を必要に応じて選定する必要がある。酸性触媒の添加量は、塗料中の全樹脂固形分の0.3〜5.0質量%とすることが、耐食性と密着性とのバランスが優れ、より好適である。
「揮発性塩基性物質」は、酸性触媒を中和もしくは酸性触媒をブロックすることで、塗料中では酸性触媒の触媒機能を停止させ、これらを含む塗料を焼付乾燥する過程にて、塗膜の表層付近で酸性触媒の中和もしくはブロック機能であった揮発性塩基性物質のみを揮発・解離させることで、酸性触媒の触媒機能を発揮させ、塗膜の表層付近でのアミノ樹脂の硬化を促進させて、アミノ樹脂濃化層を形成させることを目的に添加するものである。従って、このような機能を発揮する揮発性塩基性物質であれば、一般に公知のもの、例えば、2−ジメチルアミノ−エタノール等を使用することができる。揮発性塩基性物質の添加量は、特に規定するものではなく、添加する薬剤の種類等、必要に応じて添加することができるが、酸性触媒の酸を中和するのに必要な当量数だけ添加すると好適である。市販のもので、既に酸触媒をアミンブロックしたタイプの酸触媒、例えば、三井サイテック社製の「キャタリストTM602」を用いることもできる。
本発明のプレコート金属板に塗装する塗料組成物は、前述の添加物質をシンナー等の有機溶剤に溶解して塗料化すると、塗布作業等が簡便となり、より好適である。
また、作製した塗料組成物には、各種顔料を添加しても良い。即ち、着色顔料を添加して着色したり、防錆顔料を添加して防錆機能を付与したり、体質顔料等を添加することができる。着色顔料は、一般に公知のもの、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、コバルトブルー等を使用することができる。防錆顔料も、一般に公知のもの、例えば、クロム酸ストロンチウム、リン酸亜鉛、トリポリリン酸2水素アルミニウム、シリカ、Caイオン交換シリカ、モリブデン酸亜鉛等を使用することができる。体質顔料も、一般に公知のもの、例えば、炭酸カルシウム、タルク等を使用することができる。これらの顔料は複数混ぜて使用しても良い。これらの顔料の添加量も特に規定するものではないが、塗料中の全樹脂固形分100質量部に対して80質量部以下であると、塗料密着性を劣化させることが無く、より好適である。顔料は添加しなくても良い。
また、これら塗料には、必要に応じて一般に公知の添加剤、例えば、艶消し剤、レベリング剤、ワックス、消泡剤等を添加することができる。
本発明の金属製燃料容器は、上述の塗料組成物を塗布して焼付乾燥させてなる塗膜を少なくとも有するものである。素地と塗料との密着性を良くするために、塗装前に溶剤およびアルカリ脱脂溶液にて金属表面を脱脂・水洗することが望ましい。膜厚は、特に規定するものではなく、必要に応じて適宜選定することができるが、乾燥膜厚にして1〜100μmが好適である。1μm未満では防食の点で塗装を施した効果が小さく、100μm超では塗装焼付け時に内部応力により塗膜にクラックが発生したり、塗料密着性を阻害する恐れがある。より好ましくは5〜50μmである。なお、本発明の金属製燃料容器は、耐食性と耐溶剤性の性能を発揮するためには、本塗膜が最表面に形成されることが望ましい。
本発明の金属製燃料容器は、上述の塗料組成物を金属板に、一般に公知の方法、例えば、はけ塗り、スプレー塗装、ロールコーター塗装、カーテンフローコーター塗装、ローラーカーテンコーター塗装、ダイコーター塗装等で塗装することで得られる。これらの塗装方法の中でも、スプレー塗装、カーテンフローコーター塗装、ローラーカーテンコーター塗装は、断続塗装が可能であるため、塗装作業効率が高く、より好適である。
また、塗装における乾燥焼付方法は、熱風オーブン、直火型オーブン、遠・近赤外線オーブン、誘導加熱型オーブン等の一般に公知の乾燥焼付方法を用いることができる。焼付乾燥させる条件は、100℃以上で10分以上が望ましい。より好ましくは、130℃以上で20分以上である。これは、アミノ樹脂(B)(例えば、メラミン樹脂)の反応が、100〜130℃より開始され、乾燥温度を上げると短時間乾燥でモノマーが重合するが、重合反応が開始される100〜130℃では、入熱量を確保するために所定以上の時間が必要であるためである。上限温度は特に設けないがめっきの融点以下が望ましい。
以下、実施例で用いた供試材について詳細を説明する。
以下に、用いた塗料について詳細を説明する。
東洋紡社製の非晶性ポリエステル樹脂である「バイロンTM103」(Tg:47℃、数平均分子量:23000[表1中にはB−103と記載])、東洋紡社製の非晶性ポリエステル樹脂である「バイロンTM63CS」(Tg:7℃、数平均分子量:20000[表1中にはB−63CSと記載])、東洋紡社製の非晶性ポリエステル樹脂である「バイロンTMGK220」(Tg:53℃、数平均分子量:3000[表1中にはB−GK220と記載])、及び、東洋紡社製の非晶性ポリエステル樹脂である「バイロンTMGK130」(Tg:19℃、数平均分子量:7000[表1中にはB−GK130と記載])を準備した。「バイロンTM103」、「バイロンTMGK220」、「バイロンTMGK130」は、ペレットもしくはシート状であるため、これらを有機溶剤(質量比でシクロヘキサノン:ソルベッソ150=1:1に混合したものを使用)に溶解して使用した。また、「バイロンTM63CS」は、ポリエステル樹脂を既に有機溶剤(質量比でシクロヘキサノン:ソルベッソ150=1:1に混合したもの)に溶解してあるため、これをそのまま使用した。また、「バイロンTM103」と「バイロンTM63CS」を固形分比率にて1:1の割合で混合した樹脂も作製し、実験に用いた(表1中にはB−130とB−63CSの混合と記載)。なお、この混合樹脂のTgは、熱機械分析(TMA)にて測定した。ブチルセロソルブを添加して塗料の表面張力を変化させた。塗料の表面張力はウィルヘルミ・プレート法により測定した。
次に、アミノ樹脂として、三井サイテック社製のヘキサメトキシメチル化メラミン樹脂である「サイメルTM303」を準備した。更に、酸性触媒として、ドデシルベンゼンスルホン酸を用い、これを揮発性塩基性物質である2−ジメチルアミノ−エタノールで中和したものを作製した。なお、2−ジメチルアミノ−エタノールは、ドデシルベンゼンスルホン酸に対し、これを中和するのに必要な当量数を添加して中和させた。更に、添加顔料として、石原産業社製の酸化チタン「タイペークTMCR95」を準備した。そして、これらの組成物を必要に応じて混合し、攪拌することで塗料組成物を作製した。作製した塗料の詳細を表1に示す。なお、揮発性塩基性触媒で中和させた酸性触媒は、塗料No.1〜19の塗料組成物について、塗料組成物中の樹脂固形分に対して0.5質量%添加した。また、塗料No.20〜22の塗料組成物については、それぞれ、酸性触媒および揮発性塩基性触媒のみを塗料組成物中の樹脂固形分に対して0.5質量%添加したもの、両成分共に添加しないものを準備した。
以下、実験に用いた燃料容器金属板について詳細を説明する。
新日本製鐵株式会社製の亜鉛−錫合金めっき鋼板「エココート−S(QMT)」(以下、ECと称す)と新日本製鐵株式会社製の亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板「ジンクライト(QM)」(以下、ZLと称す)と新日本製鐵株式会社製の電気亜鉛めっき鋼板「ジンコート21(QS1)」(以下、EGと称す)を原板として準備した。板厚は0.8mmのものを使用した。本実験で用いたECのめっき付着量は32g/m2、ZLのめっき付着量は片面20g/m2、めっき層中のニッケル量は12%であった。また、EGのめっき付着量は片面20g/m2のものを用いた。
上記鋼板に潤滑防錆油(Z3)を塗布後、ポンチ径φ75mm−R3のエリクセン加工により高さ43mmとし、内部に本体と同一材質の15×15の小片の中央部をスポット溶接にて取り付けて燃料容器を得た。次に、準備した原板を日本パーカライジング社製のアルカリ脱脂液「FC−4336」の2質量%濃度、50℃水溶液にてスプレー脱脂して水洗後乾燥した後、容器の内側底に、作製した塗料組成物をスプレーにて乾燥塗膜厚みで約6μmになるように塗装し、熱風を吹き込んだ誘導加熱炉にて各種条件で乾燥硬化させて目的の燃料容器を得た(温度は物温にて測定、時間は設定温度キープ時間)。
表2に、作製した燃料容器の詳細を記載する。
以下、作製した燃料容器の評価方法の詳細を記載する。
(1)塗料密着性
サンプルの底部を打ち抜いた小片を、40℃の蒸留水中に240時間浸漬したあと、1mm幅の碁盤目カット(100マス)し、テープ剥離試験を行った。塗膜が全く剥離しない場合を◎、カット入れた塗膜の縁が欠けているのみの場合を○、マスの残存塗膜面積が50%以上の場合を△、マスの残存塗膜面積が50%未満の場合を×と評価した。
(2)耐燃料溶解性
サンプル内に市販のレギュラーガソリン80mL入れO−リングを介してステンレス板で機械的にフタをして、これを45℃で1000時間放置した。放置後の塗膜膨潤状態を目視観察して評価した。塗膜表面が浸漬前と比較して変化がない場合を◎、塗膜表面にミミズ腫れの様な跡残りが僅かにある場合を○、塗膜の膨潤が僅かに認められる場合を△、塗膜表面にミミズ腫れの様な跡残りが激しくあり塗膜の膨潤が激しく認められる場合を×と評価した。
(3)内面耐食性試験
サンプル内に蟻酸100ppm、酢酸200ppmからなる有機酸水溶液8mLと市販のレギュラーガソリン72mLを入れ、ステンレス板で機械的にフタをして、これを45℃で1000時間放置した。放置後の塗膜膨潤状態を目視観察して評価した。塗膜表面が浸漬前と比較して変化がない場合を◎、塗膜表面の変色が僅かにある場合を○、塗膜の膨潤が僅かに認められる場合を△、塗膜が剥離してめっきが腐食している場合を×、地鉄が腐食している場合を××と評価した。
(1)塗料密着性
サンプルの底部を打ち抜いた小片を、40℃の蒸留水中に240時間浸漬したあと、1mm幅の碁盤目カット(100マス)し、テープ剥離試験を行った。塗膜が全く剥離しない場合を◎、カット入れた塗膜の縁が欠けているのみの場合を○、マスの残存塗膜面積が50%以上の場合を△、マスの残存塗膜面積が50%未満の場合を×と評価した。
(2)耐燃料溶解性
サンプル内に市販のレギュラーガソリン80mL入れO−リングを介してステンレス板で機械的にフタをして、これを45℃で1000時間放置した。放置後の塗膜膨潤状態を目視観察して評価した。塗膜表面が浸漬前と比較して変化がない場合を◎、塗膜表面にミミズ腫れの様な跡残りが僅かにある場合を○、塗膜の膨潤が僅かに認められる場合を△、塗膜表面にミミズ腫れの様な跡残りが激しくあり塗膜の膨潤が激しく認められる場合を×と評価した。
(3)内面耐食性試験
サンプル内に蟻酸100ppm、酢酸200ppmからなる有機酸水溶液8mLと市販のレギュラーガソリン72mLを入れ、ステンレス板で機械的にフタをして、これを45℃で1000時間放置した。放置後の塗膜膨潤状態を目視観察して評価した。塗膜表面が浸漬前と比較して変化がない場合を◎、塗膜表面の変色が僅かにある場合を○、塗膜の膨潤が僅かに認められる場合を△、塗膜が剥離してめっきが腐食している場合を×、地鉄が腐食している場合を××と評価した。
以下、評価結果について詳細を記載する。
表3に作製した燃料容器の評価結果を示す。
本発明の燃料容器(本発明例No.1〜21)は、塗料密着性と耐燃料溶解性に優れ、且つ、内面耐食性にも優れる。特に、めっきの耐食性が優れる溶融Sn−Znめっき鋼板との組み合わせ(No.1、4〜21)は耐食性が良好であった。樹脂中にエポキシ樹脂(No.18、19)やシランカップリング剤(No.20)の添加した燃料容器は塗料密着性と耐燃料溶解性に優れ、且つ、内面耐食性にも優れる。一方、膜厚が薄い容器(No.4、5)では内面耐食性の低下が認められ、膜厚が厚い容器(No.8)では内部応力増に伴う塗料密着性低下が認められる。焼付温度低下とともに全性能が低下し、100℃(No.9)以上焼付温度が望ましい。ポリエステル樹脂のTg低下とともに耐燃料溶解性の低下が認められた(No.22)。数平均分子量が10000未満(No.23、24)では内面耐食性での低下代が大きかった。アミノ樹脂の割合が10質量部未満では耐燃料溶解性が低下し、80質量部超では塗料密着性に悪影響する。低い高表面張力塗料(No.3)は、均一塗布性が悪いため耐食性の低下が認められた。酸性触媒や揮発性塩基性物質を添加しない場合(No.28、29、30)塗膜の架橋密度が低下するため耐燃料溶解性が劣化した。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
Claims (6)
- 金属製燃料容器の内面に相当するプレス後金属板の表面に、ガラス転移温度が25℃以上、数平均分子量が10000〜50000であるポリエステル樹脂(A)と、アミノ樹脂(B)と、酸性触媒と、揮発性塩基触媒とを含み、全ポリエステル樹脂(A)の固形分100質量部に対してアミノ樹脂(B)の固形分が10〜80質量部であり、かつ、表面張力が40mN/m以下である塗料組成物を塗布して焼付乾燥することにより塗膜を形成し、且つ、前記塗膜の膜厚を乾燥膜厚にして1〜100μmとすることを特徴とする、金属製燃料容器の製造方法。
- 前記ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度が45℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載の金属製燃料容器の製造方法。
- 前記塗料組成物は、全ポリエステル樹脂(A)の固形分100質量部に対してアミノ樹脂(B)の固形分が10〜35質量部であることを特徴とする、請求項1または2に記載の金属製燃料容器の製造方法。
- 前記塗料組成物がさらに顔料を含有し、当該顔料の含有量が、全樹脂固形分100質量部に対して、80質量部以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の金属製燃料容器の製造方法。
- 前記焼付乾燥の際の温度は、100℃以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の金属製燃料容器の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られる金属製燃料容器。
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