JP2010203752A - 円板成形体及びそれを用いた加湿器 - Google Patents

円板成形体及びそれを用いた加湿器 Download PDF

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Abstract

【課題】 ディスク型加湿器のディスクに好適な、吸湿による反りのない薄肉の円板成形体を提供する。
【解決手段】 トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エンと、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンとを開環重合し、次いで水素添加して得られた開環重合体を、凹凸パターンのある金型を用いて射出成形して、パターン付き成形体を得、表面を親水処理することにより円板成形体を得る。
【選択図】 なし

Description

本発明は気化式加湿器に搭載される円板成形体に関し、より詳しくは、気化式加湿器の内、ディスク型加湿器のディスクに好適な、吸湿による反りのない薄肉の円板成形体に関する。
気化式の加湿器は、一般には、スポンジフィルタを用いたものが知られている。しかしスポンジフィルタは、カビや細菌の繁殖の問題がある。スポンジフィルタを用いない気化式加湿器として、ディスク型加湿器が知られている。
ディスク型加湿器は、複数枚の円板状の板材が芯棒に支持された、加湿エレメントを備えている。ディスク型加湿器においては、この加湿エレメントを構成する円板状の板材に乗った水が、送風機などの気化機能を有する装置により気化されることにより、湿気が形成され、加湿器出口より、吹き出される(特開平3−140730号公報、特開2009−014323号公報)。
このような加湿器において、加湿効率を上げる方法として、板材の枚数を増やす方法がある。板材の枚数を増やすと、板材の厚みは小さく抑える必要が生じる。円板の材質として金属を用いると加湿器自体の重量が増えるため、円板は樹脂製を採用せざるを得ない。しかし、樹脂製の円板は、その厚みに応じて吸湿度が上がる傾向にある。円板を構成する樹脂として、円板と円板の間は非常に狭く、円板が吸湿により変形すると円板同士が重なるなどして、加湿効率を低下させる問題があった。
ところで、多層記録ディスク用スタンパに好適な、反りのない樹脂製板状成形体として、ノルボルネン系重合体などの脂環構造含有重合体からなる成形体が知られている。脂環構造含有重合体は低吸水性の樹脂として知られてはいるが、その優れた透明性から光学材料や光硬化性樹脂成形体のスタンパ等の用途に専ら用いられていた(特開2007−253379号公報)。
特開平3−140730号公報 特開2009−014323号公報 特開2007−253379号公報
かかる従来技術の下、吸湿による変形の少ない円板成形体を得るべく鋭意検討した結果、円板状の板材として、脂環構造含有重合体を用い、その表面に親水化処理され、かつ同心円状の凹凸パターンが形成され円板状成形体を採用すると、成形体の吸湿がなく、しかも成形体に乗る水の量が増える(即ち、水の汲み上げ効率も高くなる)ことを見いだし、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、脂環構造含有重合体からなり、同心円状の凹凸パターンを有し、かつ親水化処理された面を有する、厚さ0.2〜2mmの円板成形体が提供される。また、当該円板状成形体を有する加湿器が提供される。
脂環構造含有重合体は、脂環式構造を含有してなる繰り返し単位を有する重合体である。脂環構造含有重合体中の脂環式構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が最も好ましい。脂環式構造は主鎖にあっても良いし、側鎖にあっても良いが、機械強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械強度、耐熱性、及びフィルムの成形性の特性が高度にバランスされる。
本発明に使用される脂環構造含有重合体中の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環構造含有重合体中の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位の割合がこの範囲にあるとフィルムの透明性及び耐熱性の観点から好ましい。
この脂環構造含有重合体の具体例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系重合体水素化物、ビニル脂環式炭化水素重合体及びその水素化物が好ましい。また、吸湿性の低さから、脂環構造含有重合体は極性基を有しないものが好ましい。
(1)ノルボルネン系重合体
ノルボルネン系重合体は、ノルボルネン骨格を有する単量体であるノルボルネン系単量体を重合してなるものであり、開環重合によって得られるものと、付加重合によって得られるものに大別される。
開環重合によって得られるものとして、ノルボルネン系単量体の開環重合体及びノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体、ならびにこれらの水素化物などが挙げられる。付加重合によって得られるものとしてノルボルネン系単量体の付加重合体及びノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物が、耐熱性、機械的強度等の観点から好ましい。
ノルボルネン系単量体としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ[4.3.01,6.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体、などが挙げられる。
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基などが例示でき、上記ノルボルネン系単量体は、これらを2種以上有していてもよい。具体的には、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
これらのノルボルネン系単量体は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
ノルボルネン系単量体の開環重合体、又はノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体は、単量体成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体などを挙げることができる。
ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
ノルボルネン系単量体の付加重合体、又はノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体は、これらの単量体を、公知の付加重合触媒、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて重合させて得ることができる。
ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
これらの、ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ノルボルネン系単量体とこれと付加共重合可能なその他の単量体とを付加共重合する場合は、付加重合体中のノルボルネン系単量体由来の構造単位と付加共重合可能なその他の単量体由来の構造単位との割合が、重量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
(2)単環の環状オレフィン系重合体
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの、単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体を用いることができる。
(3)環状共役ジエン系重合体
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系単量体を1,2−又は1,4−付加重合した重合体及びその水素化物などを用いることができる。
(4)ビニル脂環式炭化水素重合体
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素化物;スチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環部分の水素化物;などが挙げられ、ビニル脂環式炭化水素重合体やビニル芳香族系単量体と、これらの単量体と共重合可能な他の単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体などの共重合体及びその水素化物など、いずれでもよい。ブロック共重合体としては、ジブロック、トリブロック、又はそれ以上のマルチブロックや傾斜ブロック共重合体などが挙げられ、特に制限はない。
本発明に用いられる脂環構造含有重合体の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体が溶解しない場合はトルエン又はテトラヒドロフラン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法で測定したポリイソプレン又はポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常10,000〜300,000、好ましくは15,000〜250,000、より好ましくは20,000〜200,000の範囲にある。重量平均分子量がこの範囲にあると、成形体の機械的強度及び成形加工性とが高度にバランスされるので好ましい。
本発明に用いられる脂環構造含有重合体のガラス転移温度(Tg)は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、80℃以上であると好ましく、100〜250℃の範囲であるとより好ましく、120〜200℃の範囲であると特に好ましく、130〜140℃の範囲であると最も好ましい。Tgがこの範囲であると、耐熱性と成形加工性とが高度にバランスされ好ましい。
本発明においては、脂環構造含有重合体に、酸化防止剤、熱安定剤、軟質重合体、帯電防止剤、滑剤、抗菌剤などの添加剤を適宜配合することができる。
脂環構造含有重合体に添加剤を配合する方法に格別な制限はなく、例えば、ロール、ニーダー、押出混練機、バンバリーミキサー、フィーダールーダー等の混練器で練りながら、脂環構造含有重合体と添加剤とを混合する方法;脂環構造含有重合体を適当な溶剤に溶解し、これに添加剤を配合して混合し、次いで溶媒を除去する方法;などが挙げられる。
必要に応じて添加剤が配合された脂環構造含有重合体は、通常、ペレット化された後、成形される。ペレットの製造方法に格別な制限はないが、脂環構造含有重合体と必要に応じて配合された添加剤とを二軸混練機などの混合機を用いて混合した後、ストランド状に押出、それをペレタイザーなどで細かく切断することでペレットを得ることができる。
このペレットを用いて射出成形し、厚みが0.2〜2mmの成形体を得る方法に格別な制限はない。こうしたペレットをホッパーに入れ、ホッパーからシリンダへ移送され、ここで溶融される。通常、シリンダ内は、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気となっている。溶融樹脂は、シリンダからノズルを通して金型へ供給される。この金型は、上述したとおり2つの部材からなる。金型は常温で使用しても良いが、生産性向上などの目的で予熱して使用することもできる。
成形時、金型に加える圧力は、成形体の大きさや形状などにより任意に設定すればよいが、通常、キャビティ内圧で10〜120MPaである。また、保持時間に格別な制限はないが、生産性の観点から、通常1秒〜5分間である。
成形後、金型を冷却した後、金型を開いて成形体を取り出す。
円板成形体の大きさは、ディスク式加湿器に合わせ、適当な大きさを任意に選択すればよい。また、同様に円板成形体の円形度も任意に選択すれば良く、必ずしも真円でなくともよい。更に円形成形体の厚みは、0.2〜2mm、好ましくは0.3〜1mm。ここで厚みは、凹凸パターンの凸部で測定される最大厚みである。
本発明において、円板成形体表面の凹凸形状は、親水化処理面の円周方向の濡れ性を向上させる目的で形成されるものであり、同心円状の凹凸パターンである。凹凸パターンは、片面にのみ形成されていても両面に形成されていても良い。平滑な成形体表面に、表面を親水化処理する前、又は処理した後に、凹凸形状を形成させても良いが、生産性の観点から、成形体を射出成形し、その際に用いる射出成形用金型から凹凸形状を転写して、成形体表面に凹凸形状を形成させるのが好ましい。
凹凸パターンの溝の深さや溝の間隔(トラックピッチ)に格別な制限はないが、水の引き上げ効率を考えると、通常、溝深さは0.02μm〜1mm、溝幅は0.02μm〜1mm、トラックピッチは0.05μm〜500μmであり、好ましくは、溝深さは0.1μm〜300μm、溝幅は0.1μm〜300μm、トラックピッチは0.1μm〜100μmである。
本発明において、少なくとも円板成形体の凹凸パターンのある面は、親水化処理されている必要がある。
親水化処理は、通常の樹脂成形体表面の親水化処理方法を採用できる。例えばコロナ放電処理;低圧UV照射処理;プラズマ処理;UVオゾン水洗浄処理;シリカ、アルミナ、ジルコニアなどの金属酸化物を必要に応じて不活性ガスと共にスパッタリングするスパッタ処理;などが挙げられる(参考:特開2001−329008号公報、段落0014〜0018)。親水化処理されることにより、水との接触角が小さくなり、その表面が水に濡れやすくなる。水との接触角は、通常0.0〜0.7rad、好ましくは0.0〜0.4radである。
このようにして得られる円板成形体を、例えば金属製の軸に所定の間隔を開けて、複数枚配置した積層体は、加湿エレメントとして用いられる。即ち、この積層体を、貯水容器内の水に一部浸漬した状態で配置し、これが前記軸を中心に回転することで当該水に出入り可能となるように、加湿器に配置される。具体的には、例えば特開2009−014323号公報の図2などに開示されているような加湿器の加湿エレメントとして用いることが出来る。
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明する。本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。以下、部及び%は、特に断りがない限り、重量基準である。
実施例及び比較例において、各種物性の測定法は、次のとおりである。
(1)水素添加反応前の重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算値として測定した。
測定装置としては、東ソー社製GPC−8120シリーズを用いた。
標準ポリスチレンとしては、東ソー社製の標準ポリスチレン、Mw=500、1050、2630、5970、10200、18100、37900、96400、190000、42700、706000の計11点を用いた。
サンプルは、サンプル濃度4mg/mlになるように、測定試料をテトラヒドロフランに溶解後、カートリッジフィルター(孔径0.2μmの多孔質ポリテトラフルオロエチレン製フィルター)でろ過して調製した。
測定は、カラムとして東ソー社製TSKgel GMHHR・Hを2本直列に繋いで用い、流速1.0ml/分、サンプル注入量100μml、カラム温度40℃の条件で行った。
(2)水素添加反応後の重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、シクロヘキサンを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリイソプレン換算値として40℃において測定した。
測定装置としては、東ソー社製HLC8120GPCを用いた。
標準ポリイソプレンとしては、東ソー社製標準ポリイソプレン、Mw=602、1390、3920、8050、13800、22700、58800、71300、109000、280000の計10点を用いた。
サンプルは、サンプル濃度4mg/mlになるように、40℃にて測定試料をシクロヘキサンに加熱溶解させて調製した。
測定は、カラムとして東ソー社製TSKgel G5000HXL、TSKgel G4000HXL、TSKgel G2000HXL計3本直列に繋いで用い、流速1.0ml/分、サンプル注入量100μml、カラム温度40℃の条件で行った。
(3)水素添加率は、溶媒として重クロロホルムを用いて、H−NMRにより測定した。
(4)ガラス転移温度Tgは、示差走査熱量分析計(ナノテクノロジー社製、製品名「DSC6220SII」)を用いて、JIS K 6911に基づいて測定した。
(5)メルトマスフローレート(MFR)は、JIS K 7210に準拠して、230℃、2.16kg荷重で測定した。
(6)転写率は、走査型原子間力顕微鏡(ビーコンインスツルメンツ社製、製品名「NanoScope(登録商標)IIIa」にて測定したNiスタンパのランド部の高さ
(Hs)と、円板成形体の溝深さ(Hd)の値を次式にあてはめて算出した。
転写率(%)=(Hd−Hs)/Hs×100
ここで、凹凸パターンの転写率が−5.0%<転写率<10.0%であると良好な転写率であると判断できる。
(7)接触角は、温度25℃、湿度50%の条件で、接触角計(協和界面科学社製;DropMaster300)を用いて、円板成形体表面の水との接触角θをθ/2法で測定した。測定点は、円板成形体の任意の5点を測定し、その平均値を接触角θとした。接触角が小さいと親水化していることを意味する。
(8)吸湿変形量は、円板成形体を温度60℃、相対湿度90%の恒温恒湿室に120時間放置したのち、光学式ディスク測定器(ドクターシェンク社製、製品名「MT−146」)により、半径58mmにおける反り量(Vertical Deviation)の最大値を測定し、その絶対値を吸湿変形量とした。この値が1mm未満であると、吸湿変形が実質的にないと判断できる。
[製造例1]
(樹脂の製造方法)
室温、窒素雰囲気の反応器に、脱水したシクロヘキサン250部を入れ、更に1−ヘキセン0.84部、ジブチルエーテル0.06部及びトリイソブチルアルミニウム0.11部を入れて混合した後、45℃に保ちながら、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(以下「DCP」と略すことがある)85部、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(以下「ETD」と略すことがある)15部、及び六塩化タングステンの0.7%トルエン溶液15部を2時間かけて連続的に添加して重合した。重合転化率は100%であった。
得られた重合反応液を耐圧性の水素化反応機に移送し、ケイソウ土担持ニッケル触媒(日産ガードラー社製、製品名「G−96D」、ニッケル担持率58%)5部及びシクロヘキサン100部を加え、150℃、水素圧4.4MPaで8時間反応させた。この反応溶液を、ラジオライト#500を濾過床として、圧力0.25MPaで加圧濾過(石川島播磨重工社製、フンダフィルタ)して水素添加触媒を除去し、無色透明な溶液を得た。次いで前記水素添加物100部あたり0.5部の酸化防止剤:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカル社製、製品名「イルガノックス(登録商標) 1010」)(以下、「酸化防止剤(A)」と略すことがある)を、得られた溶液に添加して溶解させた。次いで、ゼータープラスフィルタ30H(孔径0.5〜1μm、キュノーフィルタ社製)にて順次濾過しさらに別の金属ファイバー製フィルタ(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にて濾過して微小な固形分を除去した。
次いで、上記溶液を、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所社製)を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、濃縮機に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、冷却後ペレット化して開環共重合体水素添加物のペレット(A)を得た。
このペレット化された開環共重合体水素添加物の、重量平均分子量(Mw)は30,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.7、水素添加率は99.5%、ガラス転移点は105℃、MFRは、13.8g/10分であった。
[製造例2]
(樹脂の製造方法)
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500部に、1−ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部、トリイソブチルアルミニウム0.30部を室温で反応器に入れ混合した後、45℃に保ちながら、DCP 76部、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(以下、「MTF」という。)54部、及びテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(以下、「TCD」という)70部からなるノルボルネン系モノマー混合物と、六塩化タングステン(0.7%トルエン溶液)40部とを、2時間かけて連続的に添加し重合した。重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部とイソプロピルアルコール0.52部を加えて重合触媒を不活性化し重合反応を停止させた。得られた開環重合体(B)の重量平均分子量は32,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であった。重合添加率は、ほぼ100%であった。その後、得られた開環重合体を含有する反応溶液100部に対して、シクロヘキサン270部を加え、さらに水素添加触媒としてニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5部を加え、水素により5MPaに加圧して撹拌しながら温度200℃まで加温して4時間反応させ、DCP/MTF/TCD開環重合体水素添加物を20%含有する反応溶液を得た。得られた反応溶液から濾過により水素添加触媒を除去した。
次いで前記水素添加物100部あたり0.5部の酸化防止剤(A)を、得られた溶液に添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所社製)を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、濃縮機に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、冷却後ペレット化して開環共重合体水素添加物のペレット(B)を得た。
得られた開環共重合体水素添加物の水素添加率は99.8%、重量平均分子量は33,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.5、水素添加率は99.5%、ガラス転移温度は134℃であり、MFRは2.1g/10分であった。
[円板成形体の作製]
上記製造例で得られたペレットを用いた射出成形においては、溝深さ180nm、溝幅0.35μm、トラックピッチ0.74μmの同心円状凹凸パターンを有するNiスタンパを取り付けた金型を装着した射出成形機(住友重機械工業社製、製品名「SD40ER」)を用いた。
但し、比較例2の円板成形体製造に当たっては、凹凸パターンのないNiスタンパを用いた。
[実施例1]
製造例1で得られたペレット(A)と上記射出成形機を用い、内径15mm、外径120mm、板厚0.6mmの円板成形体(a)を射出成形した。このときの成形条件としては、樹脂温度は380℃、金型温度は90℃、金型の最大圧縮力は40トン、金型のキャビティ寸法を0.58mmとした。
得られた円板成形体(a)の転写率を測定した。
次いで、親水化処理として、円板成形体の表面にスパッタリング装置(装置:芝浦メカトロニクス製、製品名「CFS−8EP」)を使用して、ターゲットをSiO、雰囲気ガスをArガスとして、厚さ3nmの表面層を形成し得られた円板成形体(A)の接触角および吸湿変形量を測定した。
転写率、接触角、吸湿変形量の測定結果を表1に示した。
[実施例2]
製造例2で得られたペレット(B)を用い、成形条件を、金型温度124℃としたこと以外は実施例1と同様にして、得られた円板成形体(b)の転写率を測定した。
次いで、実施例1と同様にして親水化処理を行い、得られた円板成形体(B)の接触角および吸湿変形量を測定した。
転写率、接触角、吸湿変形量の測定結果を表1に示した。
[実施例3]
実施例1で得られた円板成形体(a)に、親水化処理として、空気中にて高周波発振機(春日電機社製、製品名「CT−0212型」)を用いて、出力電圧100%、出力250Wで10秒間コロナ放電処理を実施して得られた円板成形体(C)の接触角および吸湿変形量を測定した。
転写率、接触角、吸湿変形量の測定結果を表1に示した。
[実施例4]
ARTON(JSR社製、製品名「ARTON(登録商標) FX4727」;極性基を有するノルボルネン系開環重合体水素添加物)を用い、成形条件を、金型温度110℃としたこと以外は実施例1と同様にして、得られた円板成形体(d)の転写率を測定した。
次いで、実施例1と同様にして親水化処理を行い、得られた円板成形体(D)の接触角および吸湿変形量を測定した。
転写率、接触角、吸湿変形量の測定結果を表1に示した。
[実施例5]
成形条件を、キャビティ寸法0.28mmとした以外は実施例1と同様にして、内径15mm、外径120mm、板厚0.3mmの円板成形体(e)を得、この転写率を測定した。
次いで、実施例1と同様にして親水化処理を行い、得られた円板成形体(E)の接触角および吸湿変形量を測定した。
転写率、接触角、吸湿変形量の測定結果を表1に示した。
[比較例1]
実施例1と同様にして得られた円板成形体(a)を、このまま親水化処理せずに、評価用サンプルである円板成形体(F)とした。この円板成形体(F)の接触角および吸湿変形量を測定した。結果を表1に示した。
[比較例2]
凹凸パターンが付与されていないNiスタンパを使用した以外は、実施例1と同様にして円板成形体(g)を得た。この成形体には凹凸パターンがないため転写率の測定は行わなかった。
次いで、実施例1と同様にして親水化処理を行い得られた円板成形体(G)の接触角および吸湿変形量を測定した。結果を表1に示した。
[比較例3]
AS樹脂(テクノポリマー社製、商品名「サンレックス(登録商標) SAN−T」)を用い、成形条件を、樹脂温度380℃、金型温度110℃、金型の最大圧縮力40トンとした以外は実施例1と同様にして、得られた円板成形体(h)の転写率を測定した。 次いで、実施例1と同様にして親水化処理を行い、得られた円板成形体(H)の接触角および吸湿変形量を評価した。
転写率、接触角、吸湿変形量の測定結果を表1に示した。
[比較例4]
ポリカーボネート樹脂(帝人化成社製、製品名「パンライト(登録商標) AD−5503」)を用い、成形条件を、樹脂温度380℃、金型温度125℃、金型の最大圧縮力40トンとした以外は実施例1と同様にして、得られた円板成形体(i)の転写率を測定した。
次いで、実施例1と同様にして親水化処理を行い、得られた円板成形体(I)の接触角および吸湿変形量を評価した。結果を表1に示した。
Figure 2010203752
<考察>
本発明の円板成形体は、転写性、接触角が良好で、かつ吸湿変形量も小さい(実施例1〜5)。
円板成形体の表面に凹凸形状を有しない場合、および親水化処理がされていない場合、接触角が大きくなった。(比較例1、2)。
AS樹脂およびポリカーボネート樹脂を使用した円板成形体の場合、表面の凹凸形状の転写率が低く、また吸湿が多いため変形量が大きくなった。(比較例3、4)。

Claims (2)

  1. 脂環構造含有重合体からなり、同心円状の凹凸パターンを有し、かつ親水化処理された面を有する、厚さ0.2〜2mmの円板成形体。
  2. 請求項1記載の円板状成形体を有する加湿器。
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