JP2015124282A - 脂環構造含有重合体組成物及びその利用 - Google Patents

脂環構造含有重合体組成物及びその利用 Download PDF

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健作 藤井
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Abstract

【課題】 光学成形体に好適な、アッベ数を下げずに屈折率を向上させることのできる脂環構造含有重合体組成物を提供する。【解決手段】 [A]脂環構造含有重合体50〜95重量部に対して、[B]ジシクロペンタジエンを熱架橋させた後、水素添加して得られるジシクロペンタジエン系水素添加石油樹脂が5〜50重量部配合された脂環構造含有重合体組成物。特に、前記脂環構造含有重合体はノルボルネン系開環重合体水素化物であるのが好ましい。また、前記ノルボルネン系開環重合体水素化物は、テトラシクロドデセン系単量体由来の構造単位を15〜50重量%、メタノテトラヒドロフルオレン系単量体由来の構造単位を50〜90重量%、及びノルボルネン系単量体由来の構造単位を1〜15重量%であるのが好ましい。【選択図】 なし

Description

本発明は、光学成形体に好適な、高屈折率でアッベ数が高く、複屈折の小さい脂環構造含有重合体組成物を提供する。
脂環構造含有重合体は、透明性、低吸湿性、耐薬品性、耐熱性に優れており、レンズや光ディスク基板などの光学部材に用いられている。近年、光学部材の小型化薄型化が求められ、光学部材の屈折率をより高くする必要が生じている。そこで、脂環構造含有重合体に配合剤を添加することにより高屈折率化を実現する試みがなされている。例えば、特許文献1には、環状オレフィン系樹脂に、ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂を配合することで屈折率の向上を実現している。
また、ジシクロペンタジエン系石油樹脂を脂環構造含有重合体に配合した樹脂組成物は、溶融成形体の表面の荒れを抑制すること(特許文献2)や、二次成形加工性に優れること(特許文献3)が知られている。
特開2009−256504号公報 国際公開WO2010/032560号 特開2005−008750号公報
係る従来技術の下、本発明者らは、特許文献1の記載に従って、脂環構造含有重合体に、ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂を配合したところ、屈折率の向上は認められたものの、アッベ数が下がることを確認した。
そして更なる検討の結果、シクロペンタジエンを熱架橋して得られる非芳香族系のジシクロペンタジエン系石油樹脂を用いると、アッベ数を下げることなく屈折率を向上させることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、[A]脂環構造含有重合体50〜95重量部に対して、[B]ジシクロペンタジエンと共役ジエンとを熱架橋させた後、水素添加して得られるジシクロペンタジエン系水素添加石油樹脂が5〜50重量部配合された脂環構造含有重合体組成物が提供される。
前記脂環構造含有重合体はノルボルネン系開環重合体水素化物であるのが好ましい。
前記ノルボルネン系開環重合体水素化物は、テトラシクロドデセン系単量体由来の構造単位を15〜50重量%、メタノテトラヒドロフルオレン系単量体由来の構造単位を50〜90重量%、及びノルボルネン系単量体由来の構造単位を1〜15重量%(但し、各単量体由来の構造単位の合計は100重量%以下である)であるのが好ましい。
また、本発明によれば、上記の脂環構造含有重合体組成物からなる光学成形体が提供される。
<脂環構造含有重合体>
本発明で使用される脂環構造含有重合体は、主鎖及び/又は側鎖に脂環構造を有する、非晶性樹脂(融点を有しない樹脂)であり、機械的強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環構造を含有するものが好ましい。
重合体の脂環構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械的強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造を有するものが最も好ましい。
脂環構造を構成する炭素原子数は、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械的強度、耐熱性、及び成形性の特性が高度にバランスされ、好適である。
本発明に使用される脂環構造含有重合体中の脂環構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%である。脂環構造含有重合体中の脂環構造を有する繰り返し単位の割合が過度に少ないと耐熱性に劣り好ましくない。脂環構造含有重合体中の脂環構造を有する繰り返し単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択される。
この脂環構造含有重合体の具体例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系重合体及びその水素化物が好ましい。
(1)ノルボルネン系重合体
ノルボルネン系重合体は、ノルボルネン骨格を有する単量体であるノルボルネン系単量体を重合してなるものであり、開環重合によって得られるものと、付加重合によって得られるものに大別される。
開環重合によって得られるものとして、ノルボルネン系単量体の開環重合体及びノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体、ならびにこれらの水素化物などが挙げられる。付加重合によって得られるものとしてノルボルネン系単量体の付加重合体及びノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体などが挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物が、耐熱性、機械的強度等の観点から好ましく、特に、テトラシクロドデセン系単量体、メタノテトラヒドロフルオレン系単量体、及びノルボルネン系単量体を開環重合して得られるノルボルネン系開環重合体の炭素―炭素不飽和結合を水素添加して得られるものであり、テトラシクロドデセン系単量体由来の構造単位を15〜50重量%、メタノテトラヒドロフルオレン系単量体由来の構造単位を50〜90重量%、及びノルボルネン系単量体由来の構造単位を1〜15重量%(但し、各単量体由来の構造単位の合計は100重量%以下である)からなるノルボルネン系開環重合体水素化物が好ましい。
テトラシクロドデセン系単量体の具体例としては、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(テトラシクロドデセン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチル−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチリデン−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンなどが例示される。テトラシクロドデセン系単量体とメタノテトラヒドロフルオレン系単量体とノルボルネン系単量体の合計量は100重量%とした場合の、テトラシクロドデセン系単量体の使用量としては、15〜50重量%、好ましくは20〜40重量%である。テトラシクロドデセン系単量体の使用量が多すぎると、ノルボルネン系重合体水素化物の溶解性が低下してノルボルネン系重合体水素化物の生産性が悪化する恐れがある。
メタノテトラヒドロフルオレン系単量体としては、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、1,4−メタノ−8−メチル−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−8−クロロ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−8−ブロモ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンなどが例示される。テトラシクロドデセン系単量体とメタノテトラヒドロフルオレン系単量体とノルボルネン系単量体の合計量は100重量%とした場合の、メタノテトラヒドロフルオレン系単量体の使用量としては、50〜90重量%、好ましくは60〜80重量%である。メタノテトラヒドロフルオレン系単量体が少なすぎると光学レンズの複屈折が悪化する恐れがあり、多すぎるとノルボルネン系開環重合体の溶解性が低下しノルボルネン系開環重合体水素化物の生産性が悪化する恐れがある。
ノルボルネン系単量体の具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロペニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メトキシルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチル5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンなどが例示される。ノルボルネン系単量体は、ガラス転移温度を調整する目的で用いられる。ノルボルネン系重合体の量は、通常1〜15重量%、好ましくは2〜10重量%、より好ましくは3〜8重量%である。ノルボルネン系単量体が多すぎると、ノルボルネン系開環重合体水素化物の耐熱性(ガラス転移温度)が低下しすぎる恐れがある。
本発明のノルボルネン系開環重合体水素化物は、テトラシクロドデセン系単量体由来の構造単位、メタノテトラヒドロフルオレン系単量体由来の構造単位及びノルボルネン系単量体由来の構造単位の合計は100重量%以下である。合計が100重量%未満である場合、本発明ノルボルネン系開環重合体水素化物には、テトラシクロドデセン系単量体由来の構造単位、メタノテトラヒドロフルオレン系単量体由来の構造単位及びノルボルネン系単量体由来の構造単位以外の構造単位(以下、「その他の構造単位」という)を含有させて、全単量体由来の構造単位を100重量%とすることができる。その他の構造単位としては、ジシクロペンタジエン系単量体由来の構造単位と単環式非共役ポリエン由来の構造単位が挙げられる。
ジシクロペンタジエン系単量体由来の構造単位は、ジシクロペンタジエン系単量体を開環共重合することで導入することができる。ジシクロペンタジエン系単量体としては、トリシクロ[4.3.01,6.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)、2−メチルジシクロペンタジエン、2,3−ジメチルジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロキシジシクロペンタジエンなどが例示される。ジシクロペンタジエン系重合体の量は、テトラシクロドデセン系単量体由来の構造単位、メタノテトラヒドロフルオレン系単量体由来の構造単位及びノルボルネン系単量体由来の構造単位の合計量100重量部に対して、通常0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%である。ジシクロペンタジエン系重合体が多すぎると、光学レンズの複屈折が悪化する恐れがある。
単環式非共役ポリエン由来の構造単位は、単環式非共役ポリエンを開環共重合することで導入することができる。1,4−シクロヘキサジエン及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、1,5−シクロオクタジエン及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、1,5−シクロデカジエン、1,5,9−シクロドデカトリエン及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、1,5,9,13−シクロヘキサデカテトラエン及びその誘導体(環に置換基を有するもの)などが挙げられる。
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、アリール基、シリル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基などが例示でき、上記単環式非共役ポリエン単量体は、これらを2種以上有していてもよい。具体的には、3−メチル−シクロオクタ−1,5−ジエン、9−フェニル−1,5−シクロドデカジエンなどが挙げられる。単環式非共役ポリエン単量体の量は、テトラシクロドデセン系単量体由来の構造単位、メタノテトラヒドロフルオレン系単量体由来の構造単位及びノルボルネン系単量体由来の構造単位の合計量100重量部に対して、通常0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%である。単環式非共役ポリエン単量体が多すぎると、ノルボルネン系開環重合体水素化物の耐熱性(ガラス転移温度)が低下しすぎる恐れがある。
ノルボルネン系単量体の開環重合体、又はノルボルネン系単量体とこれと開環共重合可能なその他の単量体との開環重合体は、単量体成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体などを挙げることができる。
ノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
ノルボルネン系単量体の付加重合体、又はノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体は、これらの単量体を、公知の付加重合触媒、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて重合させて得ることができる。
ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンとも言う)などのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
これらの、ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ノルボルネン系単量体とこれと付加共重合可能なその他の単量体とを付加共重合する場合は、付加重合体中のノルボルネン系単量体由来の構造単位と付加共重合可能なその他の単量体由来の構造単位との割合が、重量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
(2)単環の環状オレフィン系重合体
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの、単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体を用いることができる。
(3)環状共役ジエン系重合体
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系単量体を1,2−又は1,4−付加重合した重合体及びその水素化物などを用いることができる。
(4)ビニル脂環式炭化水素重合体
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素化物;スチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環部分の水素化物;などが挙げられ、ビニル脂環式炭化水素重合体やビニル芳香族系単量体と、これらの単量体と共重合可能な他の単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体などの共重合体及びその水素化物など、いずれでもよい。ブロック共重合体としては、ジブロック、トリブロック、又はそれ以上のマルチブロックや傾斜ブロック共重合体などが挙げられ、特に制限はない。
本発明で使用される脂環構造含有重合体の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常5,000以上であり、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは8,000〜200,000、特に好ましくは10,000〜100,000の範囲であるときに、機械的強度と成形加工性とが高度にバランスし、好適である。
本発明で使用される脂環構造含有重合体のガラス転移温度は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50〜300℃、好ましくは100〜280℃、特に好ましくは115〜250℃、更に好ましくは130〜200℃の範囲であるときに、耐熱性と成形加工性とが高度にバランスし、好適である。
本発明においてガラス転移温度は、JIS K 7121に基づいて測定されたものである。
ちなみに、これらの脂環構造含有重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
<ジシクロペンタジエン系石油樹脂開環重合体水素添加物>
ジシクロペンタジエン系石油樹脂開環重合体水素添加物は、ジシクロペンタジエンを熱架橋させた後又はジシクロペンタジエンと共役ジエンとを熱架橋させて得られるジシクロペンタジエン系石油樹脂を、分子量調整剤(連鎖移動剤とも言う)存在下、開環重合して得られる開環重合体を水素添加して得られるものである。
ジシクロペンタジエンと共役ジエンとの重合は、ジシクロペンタジエン50〜100重量%、と共役ジエン0〜50重量%と有機溶媒を混合し、熱重合により重合する。反応条件に特に制限はないが、反応温度は、通常150〜350℃である。
ジシクロペンタジエンと共に架橋反応に供される共役ジエンとしては、、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンおよびこれらの誘導体などが挙げられ、1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
また、用いる有機溶媒としては、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、トリメチルベンゼン、クメン、ブチルベンゼン、ジブチルベンゼン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、フルフラール、ブチルグリシジルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブおよびケロシン;混合溶媒である石油系の各種炭化水素溶剤;あるいは各種潤滑油などが挙げられる。これら有機溶媒は単独で用いてもよく、また2種以上の混合物として用いてもよい。
こうして得られたジシクロペンタジエン系石油樹脂を、分子量調整剤存在下、開環メタセシス重合用触媒を用いて開環重合し、得られた共重合体をシクロヘキサンなどの溶媒に溶解して、ニッケル、パラジウム、コバルト、ロジウム、ルテニウム系触媒の存在下で120〜300℃の温度、1〜6MPaの圧力で水素添加反応を行うことにより、本発明に用いるジシクロペンタジエン系石油樹脂開環重合体水素添加物が得られる。
本発明で用いる分子量調整剤は、連鎖移動剤しても機能するものであり、具体的には、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン;スチレン、ビニルトルエン等のスチレン類;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエーテル類;アリルクロライド等のハロゲン含有ビニル化合物;酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレート等酸素含有ビニル化合物;アクリロニトリル、アクリルアミド等の窒素含有ビニル化合物等を挙げることができる。これらの中で、分子量調節剤としては特に1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン;スチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族系化合物が好ましい。
分子量調節剤の添加量は、所望の分子量を持つ重合体を得るに足る量であればよく、ジシクロペンタジエン系石油樹脂に対して0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜50重量部、より好ましくは1〜10重量部である。
開環メタセシス重合触媒としては、例えば、特公昭41−20111号公報、特開昭46−14910号公報、特公昭57−17883号公報、特公昭57−61044号公報、特開昭54−86600号公報、特開昭58−127728号公報、特開平1−240517号公報等に記載された、本質的に(a)遷移金属化合物触媒成分と(b)金属化合物助触媒成分からなる一般のメタセシス重合触媒;シュロック型重合触媒(特開平7−179575号公報、Schrock et al.,J.Am.Chem.Soc.,1990年,第112巻,3875頁〜等)や、グラブス型重合触媒(Fu et al.,J.Am.Chem.Soc.,1993年,第115巻,9856頁〜;Nguyen et al.,J.Am.Chem.Soc.,1992年,第114巻,3974頁〜;Grubbs et al.,WO98/21214号パンフレット等)等のリビング開環メタセシス触媒;等が挙げられる。
これらの中でも、得られる重合体の分子量分布を好適な範囲に調節するには、(a)遷移金属化合物触媒成分と(b)金属化合物助触媒成分とからなるメタセシス重合触媒が好ましい。
前記(a)遷移金属化合物触媒成分は、周期律表第3〜11族の遷移金属の化合物である。例えば、これらの遷移金属のハロゲン化物、オキシハロゲン化物、アルコキシハロゲン化物、アルコキシド、カルボン酸塩、(オキシ)アセチルアセトネート、カルボニル錯体、アセトニトリル錯体、ヒドリド錯体、これらの誘導体、これら又はこれらの誘導体のP(C等の錯化剤による錯化物が挙げられる。
具体例としては、TiCl、TiBr、VOCl、WBr、WCl、WOCl、MoCl、MoOCl、WO、HWO等が挙げられる。なかでも、重合活性等の点から、W、Mo、Ti、又はVの化合物が好ましく、特にWが好ましい。また、これらの金属のハロゲン化物、オキシハロゲン化物、又はアルコキシハロゲン化物が好ましい。特にWのハロゲン化物は、反応効率が優れ、使用した脂環構造含有モノマーがほぼ完全に重合反応に供されるため、設計通りの樹脂を得ることが容易な点で好ましい。
前記(b)金属化合物助触媒成分は、周期律表第1〜2族、及び第12〜14族の金属の化合物で少なくとも一つの金属元素−炭素結合、又は金属元素−水素結合を有するものである。例えば、Al、Sn、Li、Na、Mg、Zn、Cd、B等を含有する有機化合物等が挙げられる。
具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等の有機アルミニウム化合物;テトラメチルスズ、ジエチルジメチルスズ、テトラブチルスズ、テトラフェニルスズ等の有機スズ化合物;n−ブチルリチウム等の有機リチウム化合物;n−ペンチルナトリウム等の有機ナトリウム化合物;メチルマグネシウムイオジド等の有機マグネシウム化合物;ジエチル亜鉛等の有機亜鉛化合物;ジエチルカドミウム等の有機カドミウム化合物;トリメチルホウ素等の有機ホウ素化合物;等が挙げられる。これらの中で、第13族の金属の化合物が好ましく、特にAlの有機化合物が好ましい。
また、前記(a)成分、(b)成分の他に第三成分を加えて、メタセシス重合活性を高めることができる。用いる第三成分としては、脂肪族第三級アミン、芳香族第三級アミン、分子状酸素、アルコール、エーテル、過酸化物、カルボン酸、酸無水物、酸クロリド、エステル、ケトン、含窒素化合物、含ハロゲン化合物、その他のルイス酸等が挙げられる。
これらの成分の配合比は、(a)成分:(b)成分が金属元素のモル比で、通常1:1〜1:100、好ましくは1:2〜1:10の範囲である。また、(a)成分:第三成分がモル比で、通常1:0.005〜1:50、好ましくは1:1〜1:10の範囲である。
また、重合触媒の使用割合は、ジシクロペンタジエン系石油樹脂に対して、通常0.000001〜10重量部、好ましくは0.00001〜1重量部、より好ましくは0.001〜0.1重量部である。触媒量が多すぎると重合反応後の触媒除去が困難になったり、また、分子量分布が広がるおそれがあり、一方、少なすぎると十分な重合活性が得られない。
開環重合は適当な溶媒中で行うことが好ましい。用いる有機溶媒としては、重合体及び重合体水素化物が所定の条件で溶解もしくは分散し、かつ、重合及び水素化反応に影響しないものであれば特に限定されないが、工業的に汎用されている溶媒が好ましい。
このような有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類等の溶媒を使用することができる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、工業的に汎用されている芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素及びエーテル類が好ましい。
重合を有機溶媒中で行う場合には、重合終了時の開環重合体濃度は、1〜50重量%が好ましく、10〜45重量%がより好ましく、20〜40重量%が特に好ましい。開環重合体の濃度が低すぎると生産性が低下するおそれがあり、一方、濃度が高すぎると重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の水素化反応が困難となるおそれがある。
重合は、触媒または/及びモノマーの全量、もしくは一部を逐次添加することが好ましい。
逐次添加する触媒は、触媒に対し不活性で、かつ触媒が溶解する溶媒で予め溶解させておくことが好ましい。その濃度は通常10〜0.01重量%、好ましくは3〜0.05重量%、より好ましくは1〜0.1重量%である。
逐次添加するモノマーは、予め溶媒で希釈して用いることが好ましい。その濃度は、通常80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。
このように重合することで、得られる重合体の分子量分布を好適な範囲に調整することができる。
開環重合は、単量体と重合触媒とを混合することにより開始される。
開環重合を行う温度は、特に限定されないが、通常−20〜+100℃、好ましくは30〜70℃で重合を行う。温度が低すぎると反応速度が低下し、高すぎると副反応により、分子量分布が広がるおそれがある。
重合時間は、通常1分間〜100時間で、特に制限はない。
重合時の圧力条件は特に限定されないが、加圧条件下で重合する場合、加える圧力は通常1MPa以下である。
反応終了後においては、通常の後処理操作により目的とする開環重合体を単離することができる。
得られた開環重合体は、次の水素化反応工程へ供される。
また開環重合を行った反応溶液に水素化触媒を添加して、開環重合体を単離することなく、連続的に水素化反応を行うこともできる。
開環重合体の水素化反応は、開環重合体の主鎖又は/及び側鎖に存在する炭素−炭素二重結合に水素化する反応である。この水素化反応は、開環重合体の不活性溶媒溶液に水素化触媒を添加し、反応系内に水素を供給して行う。
水素化触媒としては、オレフィン化合物の水素化に際して一般に使用されているものであれば、均一系触媒、不均一系触媒のいずれも使用することができる。得られる重合体中の残留金属の除去等を考慮すると、不均一系触媒が好ましい。
均一系触媒としては、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の組み合わせ等の遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなる触媒系;ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリド等の貴金属錯体触媒;等が挙げられる。
不均一触媒としては、例えば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナ等の、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、又はこれらの金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタン等の担体に担持させた固体触媒系が挙げられる。
触媒の使用量は、開環重合体100重量部に対し、通常0.05〜10重量部である。
水素化反応に用いる不活性有機溶媒としては、前述した脂環構造含有モノマーの開環重合において用いることができる有機溶媒として例示したものと同様の、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン系芳香族炭化水素、含窒素炭化水素、エーテル類等が挙げられる。
水素化反応の温度は、使用する水素化触媒によって適する条件範囲が異なるが、水素化温度は、通常−20℃〜+300℃、好ましくは100℃〜+250℃である。水素化温度が低すぎると反応速度が遅くなるおそれがあり、高すぎると副反応が起こる可能性がある。
水素圧力は、通常0.01〜20MPa、好ましくは0.1〜10MPa、より好ましくは1〜5MPaである。水素圧力が低すぎると水素化速度が遅くなり、高すぎると高耐圧反応装置が必要となるので好ましくない。
開環重合体の水素添加物は、開環重合体中の炭素−炭素二重結合の水素化率が好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上である。上記の範囲にあると、成形体の樹脂焼けに起因する着色が抑えられ好ましい。
開環重合体水素添加物の水素化率は、溶媒に重クロロホルムを用い、H−NMRスペクトルにより測定して求めることができる。
水素化反応終了後は、反応溶液から水素化触媒等を濾別し、濾別後の重合体溶液から溶媒等の揮発成分を除去することにより、目的とする開環重合体水素添加物を得ることができる。
溶媒等の揮発成分を除去する方法としては、凝固法や直接乾燥法等公知の方法を採用することができる。
凝固法は、重合体溶液を重合体の貧溶媒と混合することにより、重合体を析出させる方法である。用いる貧溶媒としては、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;等の極性溶媒が挙げられる。
凝固して得られた粒子状の成分は、例えば、真空中又は窒素中若しくは空気中で加熱して乾燥させて粒子状にするか、さらに必要に応じて溶融押出機から押し出してペレット状にすることができる。
直接乾燥法は、重合体溶液を減圧下、例えば、温度100〜300℃で加熱して溶媒を除去する方法である。この方法には、遠心薄膜連続蒸発乾燥機、掻面熱交換型連続反応器型乾燥機、高粘度リアクタ装置等の公知の装置を用いて行うことができる。真空度や温度はその装置によって適宜選択され、限定されない。
このようなジシクロペンタジエン系石油樹脂開環重合体水素添加物の量は、脂環構造含有重合体50〜95重量部、[B]ジシクロペンタジエン系石油樹脂開環重合体水素添加物5〜50重量部であり、好ましくは、脂環構造含有重合体60〜95重量部、[B]ジシクロペンタジエン系石油樹脂開環重合体水素添加物5〜40重量部、より好ましくは脂環構造含有重合体70〜90重量部、[B]ジシクロペンタジエン系石油樹脂開環重合体水素添加物10〜30重量部である。ジシクロペンタジエン系石油樹脂開環重合体水素添加物の量は、多すぎると射出成型体が脆くなり、成型体が得られなくなり、逆に少なすぎると屈折率が低くなり、複屈折が大きくなるため、いずれも好ましくない。
本発明において、脂環構造含有重合体組成物には、上述した以外の配合剤を、必要に応じて混合して用いることができる。
その他の配合剤としては、熱可塑性樹脂材料で通常用いられているものであれば格別な制限はなく、例えば、軟質重合体、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、離型剤、染料や顔料などの着色剤、可塑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤などの配合剤が挙げられる。
脂環構造含有重合体と、ジシクロペンタジエン系石油樹脂開環重合体水素添加物やその他必要に応じて用いられる配合剤との混合方法は、重合体中に配合剤が十分に分散する方法であれば、特に限定されない。また、配合の順番に格別な制限はない。配合方法としては、例えば、ミキサー、一軸混練機、二軸混練機、ロール、ブラベンダー、押出機などで樹脂を溶融状態で混練する方法、適当な溶剤に溶解して分散させて凝固法、キャスト法、又は直接乾燥法により溶剤を除去する方法などがある。
二軸混練機を用いる場合、混練後は、通常は溶融状態で棒状に押出し、ストランドカッターで適当な長さに切り、ペレット化して用いられることが多い。
<光学成形体>
本発明の脂環構造含有重合体組成物は、周知の熱可塑性樹脂の成形法、例えば、射出成形法、押出成形法、キャスト成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法、真空成形法、プレス成形法、圧縮成形法、回転成形法、カレンダー成形法、圧延成形法、切削成形法等によって成形加工し、成形体とすることができる。
中でも、寸法精度に優れ、非球面形状などが成形可能な射出成形法又はプレス成形法が好ましく、特に射出成形法が好適である。
このようにして成形される光学成形体の具体的としては、カメラの撮像系レンズ、ビデオカメラの撮像系レンズ、顕微鏡レンズ、内視鏡レンズ、望遠鏡レンズ、双眼鏡レンズ、眼鏡レンズ、拡大レンズなどの全光線透過型レンズ、光ディスク用のピックアップレンズ、レーザービームプリンターのfθレンズ、センサー用レンズなどのレーザー走査系レンズ、カメラのファインダー系のプリズムレンズ、赤外線センサーレンズ、オートフォーカスレンズ、バンドパスフィルターレンズなど光学レンズ;DVD(デジタルビデオディスク)などの光ディスク基板;光学ミラー;プリズム;液晶ディスプレイなどの導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルムなどの光学フィルムなどが挙げられる。
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明する。ただし本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、部又は%は、特に断りがない限り、重量基準である。
(1)分子量
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(MWD)はシクロヘキサンを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による、標準ポリイソプレン換算値として測定した。標準ポリイソプレンとしては、東ソー社製標準ポリイソプレン、Mw=602、1,390、3,920、8,050、13,800、22,700、58,800、71,300、109,000、280,000の計10点を用いた。
測定には、東ソー社製HLC8120GPCを用い、カラムとして東ソー社製TSKgel G5000HXL、TSKgel G4000HXL及びTSKgel G2000HXLを3本直列に繋いで用い、流速1.0ml/分、サンプル注入量100μl、カラム温度40℃の条件で行った。
(2)水素添加率は、H−NMRにより測定した。
(3)ガラス転移温度は、JIS K 7121に基づき、示差走査熱量分析計(製品名「DSC6220S11」、ナノテクロノジー社製)を用い、ガラス転移温度より30℃以上に加熱した後、冷却速度−10℃/分で室温まで冷却し、その後、昇温速度10℃/分で昇温する過程で測定した。
(4)屈折率、アッベ数
JIS K 0062 5に従い25℃において測定した。装置はカルニュー屈折計(島津製作所社製、製品名「KPR−200」)を用い小数点以下4桁目まで求めた。
ノルボルネン系重合体の屈折率は、厚み5mmの成形品をTg−15℃で24時間アニール処理し、25±0.1℃に設定したVブロックプリズムに設置して測定した。
(5)複屈折
複屈折は、280℃で射出成形した厚み3mm×縦70mm×横30mmの樹脂成形板を試料として用いて測定した。樹脂成形板のゲート付近における最大位相差を、複屈折/位相差測定機(フォトニックラティス社製、WPA−100)を用いて測定した。位相差がゼロに近いほど、低複屈折であることを示す。
[製造例1]
脂環式構造含有重合体の合成
乾燥し、窒素置換した重合反応器に、メタノテトラヒドロフルオレン(MTF)75重量部、テトラシクロドデセン(TCD)20重量部、ノルボルネン(NB)5重量部、脱水したシクロヘキサン1,600部、1−ヘキセン、ジイソプロピルエ−テル1.3部、イソブチルアルコール0.33部、トリイソブチルアルミニウム0.84部並びに六塩化タングステン0.66%シクロヘキサン溶液30部を入れ、55℃で10分間攪拌した。
次いで、反応系を55℃に保持し、攪拌しながら、前記重合反応器中に前記単量体混合物693部と六塩化タングステン0.77%シクロヘキサン溶液72部を各々150分かけて連続的に滴下し、さらに滴下終了後30分間攪拌した後にイソプロピルアルコール1.0部を添加して重合反応を停止させた。ガスクロマトグラフィーによって重合反応溶液を測定したしたところ、モノマーの重合体への転化率は100%であった。
次いで、上記重合体を含有する重合反応溶液300部を攪拌器付きオートクレーブに移し、シクロヘキサン100部および珪藻土担持ニッケル触媒(日揮化学社製、製品名「T8400RL」、ニッケル担持率58%)2.0部を加えた。オートクレーブ内を水素で置換した後、180℃、4.5MPaの水素圧力下で6時間反応させた。
水素化反応終了後、珪藻土(昭和化学工業社製、製品名「ラヂオライト(登録商標)♯500」)を濾過床として、加圧濾過器(石川島播磨重工社製、製品名「フンダフィルタ−」)を使用し、圧力0.25MPaで加圧濾過して、無色透明な溶液を得た。
次いで、得られた溶液に、前記水素添加物100部当り、酸化防止剤として、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF社製、製品名「イルガノックス(登録商標)1010」)0.5部を加えて溶解させた。
この溶液をフィルター(キュノーフィルター社製、製品名「ゼータプラス(登録商標)30H」、孔径0.5〜1μm)で濾過した後、濾液を金属ファイバー製フィルター(ニチダイ社製、孔径0.4μm)にて濾過して異物を除去した。
次いで、上記で得られた濾液を、円筒型濃縮乾燥機(日立製作所製)を用いて、温度260℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、濃縮機に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、水冷後、ペレタイザー(長田製作所製、製品名「OSP−2」)でカッティングしてノルボルネン系重合体のペレットを得た。
開環重合体水素添加物(A)の重量平均分子量(Mw)は32,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であり、ガラス転移温度は143℃、また、主鎖の水素添加率は、99%以上、芳香環の水素添加率は、99%以上であった。
用いたノルボルネン系単量体の略号は以下の通りである。
MTF:メタノテトラヒドロフルオレン
TCD:テトラシクロドデセン
DCP:ジシクロペンタジエン
NB:ノルボルネン
[製造例2]
・高分子量化ジシクロペンタジエン系水素添加石油樹脂の合成
窒素で置換した攪拌機付きの1L重合反応器にジシクロペンタジエン150gとピペリレン50g、トルエン200gを仕込み、260℃まで加熱し、攪拌しながら5時間反応を行った。
反応終了後、反応生成液を取り出し、真空乾燥機で、温度200℃、圧力10mmHg以下で12時間処理し、未反応モノマーとトルエンを除去して190gのジシクロペンタジエン系石油樹脂を得た。得られた重合体の数平均分子量(Mn)は401、分子量分布(Mw/Mn)は4.7であった。
窒素で置換した攪拌機付きの1リットルの水素化反応器にシクロヘキサン(溶媒)210gと得られたジシクロペンタジエン重合体90g、1−ヘキセン2.7gを仕込んで80℃に加温し、そこにシクロヘキサン18gに溶解させたメタセシス重合用Ru触媒0.02gを添加し、80℃で3時間重合反応を行った。
得られた溶液に水素化用のニッケル触媒5gを添加し、水素圧力4Mpa、温度210℃で5時間水素添加反応を行った。
反応終了後、反応生成液を取り出し、酸化防止剤を5000ppm添加した後、真空乾燥機で、温度200℃、圧力15mmHg以下で12時間処理し、揮発成分を除去して55gの(ジ)シクロペンタジエン重合体水素添加物を得た。この水素添加石油樹脂の数平均分子量(Mn)は910、分子量分布(Mw/Mn)は7.5であり、水素添加率は、99%以上であった。。
<実施例1>
脂環式構造含有重合体90部と高分子量化ジシクロペンタジエン系水素添加石油樹脂10部とを280℃で小型混練・射出成型機(DSM X−plore社製)を用いて280℃で混練し、そのまま射出成型機で厚み3mm×縦70mm×横30mmの樹脂成形板を成型した。金型温度はTg−15℃に設定した。
得られた成型版を用いて屈折率、アッベ数、複屈折の測定を行った。結果を表1に示す。
<実施例2>
配合を脂環式構造含有重合体70部と高分子量化ジシクロペンタジエン系水素添加石油樹脂30部に変更した以外は実施例1と同様に射出成形体の形成及び評価を行った。結果を表1に示す。
<実施例3>
配合を脂環式構造含有重合体50部と高分子量化ジシクロペンタジエン系水素添加石油樹脂50部に変更した以外は実施例1と同様に射出成形体の形成及び評価を行った。結果を表1に示す。
<比較例1>
配合を脂環式構造含有重合体100部に変更した以外は実施例1と同様に射出成形体の形成及び評価を行った。結果を表1に示す。
<比較例2>
配合を脂環式構造含有重合体60部とジシクロペンタジエン系水素化石油樹脂(日本ゼオン社製、製品名「クイントン(登録商標)1345」の水素添加物;水素添加率99%)40部に変更した以外は実施例1と同様に射出成形体の形成を行った。しかしながら、成形体が脆く評価に耐えるサンプルを得ることができなかった。
<比較例3>
配合を脂環式構造含有重合体70部とジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂30部に変更した以外は実施例1と同様に射出成形体の形成及び評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2015124282
この結果から高分子量化ジシクロペンタジエン系水素添加石油樹脂を脂環式構造含有重合体に配合したものは、脂環式構造含有重合体に比べアッベ数を維持したまま、屈折率が高くなり、複屈折も低くなることがわかる(実施例1〜3と比較例1)。
また高分子量化しなかった水素化石油樹脂は射出成形体が脆くなり、石油樹脂量が30%以上では射出成形体が得られず、評価できなかったが、高分子量化ジシクロペンタジエン系水素添加石油樹脂は50%添加しても強度のある射出成形体が得られた。(実施例3と比較例2)
また、ジシクロペンタジエン―ビニル芳香族系水素添加石油樹脂を配合したものは、屈折率は高くなるが、アッベ数が低下することがわかった(実施例2と比較例3)

Claims (4)

  1. [A]脂環構造含有重合体50〜95重量部に対して、[B]ジシクロペンタジエンと鎖状共役ジエン炭化水素とを熱架橋させて得られるジシクロペンタジエン系石油樹脂を開環重合して得られる開環重合体を水素添加してなるジシクロペンタジエン系石油樹脂開環重合体水素添加物が5〜50重量部配合された脂環構造含有重合体組成物。
  2. 前記脂環構造含有重合体がノルボルネン系開環重合体水素化物である請求項1記載の脂環構造含有重合体組成物。
  3. 前記ノルボルネン系開環重合体水素化物が、テトラシクロドデセン系単量体由来の構造単位を15〜50重量%、メタノテトラヒドロフルオレン系単量体由来の構造単位を50〜90重量%、及びノルボルネン系単量体由来の構造単位を1〜15重量%(但し、各単量体由来の構造単位の合計は100重量%以下である)である請求項2記載の脂環構造含有重合体組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の脂環構造含有重合体組成物からなる光学成形体。
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