JP2010202025A - 鉄道車両 - Google Patents

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Abstract

【課題】戸袋の内部空間と客室とを仕切る内装パネルの表面からもたらされる輻射熱を抑制して、乗客の快適性の向上を図ることができる鉄道車両を提供すること。
【解決手段】戸袋内部空間Tと鉄道車両100の外部とは、貫通孔として構成される流通路31にて接続されており、戸袋内部空間Tと客室空間Sとはファン33にて接続されている。そのため、ファン33から戸袋内部空間Tへ送り込まれた温調空気が戸袋内部空間Tの空気を流通路31から排出させて、戸袋内部空間Tを客室空間Sの温調空気で満たすことができる。よって、客室空間Sに面している内装パネル21及び戸尻壁17の表面温度を客室空間Sと同等の温度に近づけることができるので、内装パネル21及び戸尻壁17の輻射熱による熱の移動を低減して乗客の快適性を保つことができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、鉄道車両に関し、特に、戸袋と客室とを仕切る内装パネルの表面からもたらされる輻射熱を抑制して、乗客の快適性の向上を図ることができる鉄道車両に関するものである。
鉄道車両の戸袋には、側出入口を開閉する際の引戸の進退に伴って水が侵入する。そのため、その侵入した水を抜くために、戸袋の底部には、水抜管が設けられており、戸袋の内部空間に侵入して溜まった水を水抜管によって外部へ排出するように構成されている(特許文献1)。
特開2000−203422号公報(例えば、段落[0013]及び第1図から第3図など)
しかしながら、上述した従来の鉄道車両では、戸袋の内部空間が水抜管を介して外部と連通されているため、例えば、夏には熱い空気が戸袋の内部空間に滞留する。同時に、引戸を開閉するための駆動装置からの発熱もこれに加わる。これにより、戸袋の内部空間と客室とを仕切る内装パネルの表面温度が上昇するため、この内装パネルの表面からもたらされる輻射熱が客室内の冷房の効果を損なわせる。同様に、冬には冷たい空気が戸袋の内部空間に滞留するため、戸袋の内部空間と客室とを仕切る内装パネルの表面温度が低下して、内装パネルの表面からもたらされる輻射熱が客室内の暖房の効果を損なわせる。その結果、冷房時または暖房時の乗客の快適性が損なわれるという問題点があった。
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、戸袋の内部空間と客室とを仕切る内装パネルの表面からもたらされる輻射熱を抑制して、乗客の快適性の向上を図ることができる鉄道車両を提供することを目的としている。
この目的を達成するために、請求項1記載の鉄道車両は、調和空気を客室に供給する空調装置と、側構体に開口される側出入口と、その側出入口を開閉する引戸と、その引戸が格納される内部空間およびその内部空間に溜まった水を外部へ排出するための水抜管を有する戸袋と、を備えるものであり、前記客室の空気を車外へ排気する排気手段を備えると共に、その排気手段は、前記戸袋の内部空間を経由して、前記客室の空気を車外へ排出するように構成されている。
請求項2記載の鉄道車両は、請求項1記載の鉄道車両において、前記排気手段は、前記客室の空気を前記戸袋の内部空間へ導入する導入装置を備えると共に、前記導入装置が少なくとも前記引戸よりも天井側に位置し、前記導入装置により前記戸袋の内部空間に導入された空気が、前記戸袋の内部空間を流通し、前記水抜管から外部へ排出される。
請求項3記載の鉄道車両は、請求項1記載の鉄道車両において、前記排気手段は、前記客室を前記戸袋の内部空間へ連通させる連通路と、前記戸袋の内部空間の空気を外部へ送出する送出装置と、を備えると共に、前記連通路が少なくとも前記引戸よりも天井側に位置し、かつ、前記送出装置を前記水抜管の経路中に配置し、前記送出装置により前記戸袋の内部空間の空気を外部へ送出することで、前記客室の空気が前記連通路を介して前記戸袋の内部空間へ取り込まれると共に、前記戸袋の内部空間を流通し、前記水抜管から外部へ排出される。
請求項4記載の鉄道車両は、請求項2又は3に記載の鉄道車両において、前記引戸が前記戸袋に格納され前記側出入口が開放された場合に、前記導入装置または前記送出装置による前記空気の導入または送出を停止する停止手段を備えている。
請求項1記載の鉄道車両によれば、戸袋内から引戸が側出入口へ向けて進出されると、その進出された引戸により側出入口が閉鎖されると共に、引戸が戸袋へ向けて後退されると、その後退された引戸が戸袋に格納され、側出入口が開放される。また、雨天の走行時、引戸の進退に伴って戸袋に侵入した水が内部空間に溜まると、その戸袋の内部空間に溜まった水は、水抜管を介して戸袋の内部空間から外部へ排出される。
ここで、本発明の鉄道車両によれば、前記客室の空気を車外へ排気する排気手段を備えると共に、その排気手段は、戸袋の内部空間を経由して、客室の空気を車外へ排出する構成であるので、戸袋の内部空間に客室の空気を導入して、戸袋の内部空間に滞留する空気、例えば、夏の熱い空気や冬の冷たい空気を置換することができる。これにより、戸袋の内部空間と客室とを仕切る内装パネルの表面温度を客室の空気の温度、即ち、室温に近づけることができるので、かかる内装パネルの表面からもたらされる輻射熱により客室内の空調が損なわれることを抑制して、乗客の快適性の向上を図ることができるという効果がある。
ここで、従来の鉄道車両では、戸袋の内部空間に夏の熱い空気や冬の冷たい空気が滞留した場合に、内装パネルの表面からもたらされる輻射熱により客室内の空調が損なわれることを抑制するために、かかる内装パネルの裏面に断熱材を設ける必要があり、材料コストが嵩む。これに対し、本発明の鉄道車両によれば、上述のように、客室の空気の導入により、戸袋の内部空間に滞留する空気を置換して、戸袋の内部空間と客室とを仕切る内装パネルの表面温度を客室の室温に近づける構成であるので、かかる内装パネルの裏面に断熱材を設けることを省略することができ、その結果、材料コストの削減を図ることができるという効果がある。
また、客室の空気を外部へ排出する換気扇と、客室の空気を取り込むと共にその取り込んだ空気を温調して客室へ送風する空調機とを屋根裏に設ける従来の鉄道車両では、客室が細長い空間であるのに対し、1乃至2の換気扇および空調機を設ける構成であるので、客室の長手方向に対して客室の空気を排気する排気能力が偏在して位置することとなり、空調機から遠い位置では空調能力が過剰となる一方、空調機の近くでは空調能力が不足する。これに対し、本発明の鉄道車両によれば、上述したように、客室の空気を排気するための排気通風路として、戸袋の内部空間を利用する構成であるところ、かかる戸袋は細長い客室の長手方向の両端および中間に位置するため、長手方向に偏在していた排気能力を分散させることができ、その結果、細長い客室空間において、空調の効果を長手方向に均一化することができるという効果がある。
請求項2記載の鉄道車両によれば、請求項1記載の鉄道車両の奏する効果に加え、客室の空気を戸袋の内部空間へ導入する導入装置を排気手段が備える構成であるので、かかる導入装置により戸袋の内部空間に導入された空気を、戸袋の内部空間を流通させた後、水抜管から外部へ排出させることができる。よって、戸袋の内部空間に滞留する空気、例えば、夏の熱い空気や冬の冷たい空気を客室から導入した空気に置換することができるので、戸袋の内部空間と客室とを仕切る内装パネルの表面温度を客室の空気の温度、即ち、室温に近づけることができる。その結果、かかる内装パネルの表面からもたらされる輻射熱により客室内の空調が損なわれることを抑制して、乗客の快適性の向上を図ることができるという効果がある。
また、本発明の鉄道車両によれば、戸袋の内部空間に導入した空気を、水抜管を介して、外部へ排出する、即ち、水抜管が、戸袋に侵入した水を抜くための水抜き口としての機能だけでなく、戸袋に導入した空気を排気するための排気口としての機能も兼用する構成であるので、排気のための手段を戸袋に別途設けることを不要として、その分、戸袋の構造を簡素化することができる。その結果、材料コスト及び製造コストを抑制することができるので、その分、鉄道車両全体としての製品コストの削減を図ることができるという効果がある。
更に、本発明の鉄道車両によれば、上述したように、水抜管に排気口としての機能を兼用させつつ、導入装置を少なくとも引戸よりも天井側の位置に配置する構成であるので、戸袋の上部から空気を導入して底部から排出することができる、即ち、戸袋に導入された空気の流通経路の長さを十分に確保することができる。これにより、戸袋の内部空間と客室とを仕切る内装パネルの裏面に、戸袋に導入された客室の空気を十分に接触させることができるので、かかる内装パネルの表面温度を客室の空気の温度、即ち、室温に確実に近づけることができるという効果がある。その結果、かかる内装パネルの表面からもたらされる輻射熱により客室内の空調が損なわれることを抑制して、乗客の快適性の向上を図ることができる。
請求項3記載の鉄道車両によれば、請求項1記載の鉄道車両の奏する効果に加え、客室を戸袋の内部空間へ連通させる連通路と、戸袋の内部空間の空気を外部へ送出する送出装置とを備える構成であるので、かかる送出装置により戸袋の内部空間の空気を外部へ送出することで、客室の空気を、連通路を介して戸袋の内部空間に取り込み、戸袋の内部空間を流通させた後、水抜管から外部へ排出させることができる。よって、戸袋の内部空間に滞留する空気、例えば、夏の熱い空気や冬の冷たい空気を客室から導入した空気に置換することができるので、戸袋の内部空間と客室とを仕切る内装パネルの表面温度を客室の空気の温度、即ち、室温に近づけることができる。その結果、かかる内装パネルの表面からもたらされる輻射熱により客室内の空調が損なわれることを抑制して、乗客の快適性の向上を図ることができるという効果がある。
また、本発明の鉄道車両によれば、戸袋の内部空間に取り込んだ空気を、水抜管を介して、外部へ排出する、即ち、水抜管が、戸袋に侵入した水を抜くための水抜き口としての機能だけでなく、戸袋に導入した空気を排気するための排気口としての機能も兼用する構成であるので、排気のための手段を戸袋に別途設けることを不要として、その分、戸袋の構造を簡素化することができる。その結果、材料コスト及び製造コストを抑制することができるので、その分、鉄道車両全体としての製品コストの削減を図ることができるという効果がある。
更に、本発明の鉄道車両によれば、上述したように、水抜管に排気口としての機能を兼用させつつ、連通路を少なくとも引戸よりも天井側の位置に配置する構成であるので、戸袋の上部から空気を取り込み底部から排出することができる、即ち、戸袋に導入された空気の流通経路の長さを十分に確保することができる。これにより、戸袋の内部空間と客室とを仕切る内装パネルの裏面に、戸袋に導入された客室の空気を十分に接触させることができるので、かかる内装パネルの表面温度を客室の空気の温度、即ち、室温に確実に近づけることができるという効果がある。その結果、かかる内装パネルの表面からもたらされる輻射熱により客室内の空調が損なわれることを抑制して、乗客の快適性の向上を図ることができる。
また、本発明の鉄道車両によれば、送出装置を水抜管の経路中に配置する構成であるので、かかる送出装置により、戸袋の内部空間の空気を外部に送出して、連通路から客室の空気を取り込む(吸い込み)ことで、戸袋の内部空間の圧力を客室の圧力よりも負圧とすることができる。これにより、側出入口が引戸により閉鎖された状態において、かかる引戸と内装パネル(戸袋の開口)との間の隙間から戸袋の内部空間の空気が客室へ隙間風として侵入することを抑制することができるという効果がある。
その結果、客室の空気を車外へ排気する場合に、戸袋の内部空間が正圧となる構成では、隙間風の問題より、戸袋を経由して排気する風量を大きくすることができないが、上述したように、戸袋の内部空間が負圧となる本発明の構成によれば、隙間風の問題を回避することができるので、戸袋を経由して排気する風量を大きくすることができる。これにより、客室の空気の車外への排気を、戸袋を経由しての排気のみでまかなう、又は、十分に分担することができるので、客室の空気を車外へ排気するために屋根裏に設けていた換気扇を廃止または減縮することができ、その分、部品コストの削減を図ることができるという効果がある。
請求項4記載の鉄道車両によれば、請求項2又は3に記載の鉄道車両の奏する効果に加え、引戸が戸袋に格納され側出入口が開放された場合に、導入装置または送出装置による空気の導入または送出を停止する停止手段を備えているので、引戸の開放時には、客室の空気が導入装置または送出装置より戸袋へ導入され、戸袋を経由して車外へ排気されることを回避することができる。これにより、客室の空気は、空調機から温調された空気が送風された分だけが、開放された側出入口から車外へ流出されることとなり、外気と混合した側出入口付近にある空気のみを車外へ排気できるので、戸袋を経由しての排気を中止せず、客室内の温調された空気が戸袋を経由して排気される場合よりも損失を小さくすることができるという効果がある。
また、このように、側出入口の開放時に、かかる側出入口から客室の空気を排気することができれば、例えば、夏の熱い空気や冬の冷たい空気が側出入口から客室へ入り込むことを抑制することができるので、これによっても、客室内の空調が損なわれることを抑制して、乗客の快適性の向上を図ることができるという効果がある。
本発明の第1実施の形態における鉄道車両の断面図である。 (a)は、図2(b)のIIa−IIa線における側構体の断面図であり、(b)は、図2(a)のIIb−IIb線における側構体の断面図であり、(c)は、図2(a)のIIc−IIc線における側構体の断面図である。 (a)は、第2実施の形態における側構体の断面図であり、図2(a)に対応し、(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線における第2実施の形態の側構体の断面図である。 (a)は、第3実施の形態における側構体の断面図であり、(b)は、図4(a)のIVb−IVb線における第3実施の形態の側構体の断面図であり、(c)は、図4(a)のIVc−IVc線における第3実施の形態の側構体の断面図である。 (a)は、第4実施の形態における側構体の断面図であり、(b)は、図5(a)のVb−Vb線における第4実施の形態の側構体の断面図であり、(c)は、図5(a)のVc−Vc線における第4実施の形態の側構体の断面図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、鉄道車両100の構成について説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における鉄道車両100の断面図である。
鉄道車両100は、主に、乗客(通勤する客)数が多い路線で運行される鉄道車両であり、図1に示すように、床構体3と、側構体5と、屋根構体7と、妻構体9とを備えている。
床構体3は、図1に示すように、乗客が乗車する領域を形成する部材であり、椅子などが配置されると共にレールR上を転動する台車1上(図1上側)に配設されている。
側構体5は、その床構体3の両側(図1紙面垂直方向両側)にそれぞれ1個ずつ立設され鉄道車両100の壁を構成する部材であり、複数(本実施の形態では3個)の窓5aと、複数(本実施の形態では3個)の開口部5bとを備えている。その開口部5bは、一対の引戸6にて開閉自在とされている。
それら一対の引戸6は、互いに反対方向へ移動可能に構成されており、それら一対の引戸6が互いに当接状態とされることで、開口部5bが閉じられ(図2参照)、その開口部5bを介しての鉄道車両100への乗客の乗降が不能となる。一方、一対の引戸6が互いに離間して後述する戸袋内部空間T(図2(b)参照)へ移動されることで、開口部5bが開口され、その開口部5bを介しての鉄道車両100への乗客の乗降が可能となる。
屋根構体7は、それら一対の側構体5の上側(図1上側)を接続すると共に鉄道車両100の屋根を構成する部材である。また、屋根構体7の上側には、送出する空気の温度および湿度を制御する空調装置2が配設されている。
妻構体9は、その屋根構体7、側構体5及び床構体3の前後方向両側(図1左右方向)の端部にそれぞれ接続され鉄道車両100の壁を構成する部材である。
また、それら一対の妻構体9、屋根構体7、一対の側構体5及び床構体3で囲まれた空間である客室空間Sは、乗客の居住空間として利用され、上述した空調装置2から送出される温調空気(温度および湿度が制御された空気)で満たされている。
なお、鉄道車両100は、最高速が時速120km程度の速度で走行する車両であるので、客室空間Sと、その客室空間Sの外側の空間との間に大きな圧力差が生じにくい。そのため、客室空間Sと、その客室空間Sの外側の空間との間の気密性を高く保つ必要がなく、気密性が低い構造となっている。
次いで、図2を参照して、側構体5の構成について説明する。図2(a)は、図2(b)のIIa−IIa線における側構体5の断面図であり、図2(b)は、図2(a)のIIb−IIb線における側構体5の断面図であり、図2(c)は、図2(a)のIIc−IIc線における側構体5の断面図である。なお、図2(a)及び図2(b)は、一対の引戸6が当接されて開口部5bが閉じた状態を示しており、引戸6が戸袋内部空間Tへ移動された状態を2点鎖線にて示している。
側構体5は、上述したように、鉄道車両100の壁を構成する部材であり、図2(a)、図2(b)及び図2(c)に示すように、外壁11と、戸先柱13と、戸尻柱15と、戸尻壁17と、内装戸先柱23と、内装戸尻柱25と、内装パネル21と、内装部材27と、断熱材29と、引戸6と、開閉装置40とを備えている。
外壁11は、金属板にて構成され鉄道車両100の外壁を成す部材であり、戸先柱13は、その外壁11の客室空間S側(図2(a)紙面垂直方向手前側および図2(b)下側)で且つ開口部5bの縁部に沿って取り付けられ床構体3から屋根構体7まで延設される柱状に構成された部材である。なお、外壁11には、開口部5bが開口されている。
戸尻柱15は、その戸先柱13から引戸6の幅寸法(図2(a)及び図2(b)左右方向寸法値)よりも窓5a側に離間した位置で外壁11の客室空間S側に取り付けられ床構体3から屋根構体7まで延設される柱状に構成された部材である。
内装戸先柱23は、戸先柱13に対して、客室空間S側(図2(a)紙面垂直方向手前側および図2(b)下側)に離間した位置に配設される柱状に構成された部材であり、床構体3から屋根構体7まで延設されている。
また、同様に、内装戸尻柱25は、戸尻柱15に対して、客室空間S側(図2(a)紙面垂直方向手前側および図2(b)下側)に離間した位置に配設される柱状に構成された部材であり、床構体3から屋根構体7まで延設されている。
内装パネル21は、それら内装戸先柱23及び内装戸尻柱25の客室空間S側の部位に取り付けられる板状に構成された部材であり、戸尻壁17は、板状に構成され床構体3から屋根構体7まで延設される部材であり、内装戸尻柱25と戸尻柱15とを床構体3から屋根構体7までの間で接続している。
このように、外壁11、内装パネル21及び戸尻壁17にて囲まれた空間が戸袋内部空間Tを構成しており、図2(b)に示すように、戸先柱13と内装戸先柱23との間に引戸6が配設されている。また、図2(b)に示すように、引戸6が後述する開閉装置40にて、戸袋内部空間Tへ移動される。
なお、戸袋内部空間Tは、開口部5bの両側(図2(a)左右方向両側)にそれぞれ形成されており、開口部5bの上側に形成される引戸上部空間Uを介して接続されている。また、引戸上部空間Uは、図2(c)に示すように、外壁11と内装パネル21との間に形成される空間である。
引戸6は、図2(a)、図2(b)及び図2(c)に示すように、板状に構成された部材であり、鉄道車両100の前後方向(図1左右方向)へ移動されることにより開口部5bを開閉させる部材である。開閉装置40は、引戸6を鉄道車両100の前後方向へ移動させる装置であり、図2(a)に示すように、引戸駆動装置41と、引戸案内装置45とを備えている。
引戸駆動装置41は、引戸6へ駆動力を付与する装置であり、図2(a)及び図2(c)に示すように、回転駆動力を発生するモータ42と、そのモータ42の回転駆動力によって回転されると共に後述するローラ部47に螺合されるボールねじ43とを備えている。
引戸案内装置45は、引戸6を鉄道車両100の前後方向(図2左右方向)へ案内する装置であり、図2(a)及び図2(c)に示すように、柱状に構成され戸先柱13に水平に取着される引戸レール46と、その引戸レール46を上下から挟む一対の車輪48を有し引戸6の上部(図2(a)上部)に取り付けられる一対のローラ部47とを備えている。それらローラ部47の一方のローラ部47には、上述したように、ボールねじ43が螺合されている。
よって、モータ42の回転駆動力によりボールねじ43が回転され、ボールねじ43に螺合されたローラ部47が鉄道車両100の前後方向(図2(a)左右方向)へ移動される。その結果、引戸6が鉄道車両100の前後方向へ移動されて、開口部5bが開閉自在とされる。
また、戸先柱13及び内装戸先柱23の戸袋内部空間T側(図2(b)上側)には、図2(a)及び図2(b)に示すように、床構体3から屋根構体7へ向かって開口部5bの上端の高さまで縦ゴム板G1が延設されており、引戸6の戸尻側(図2(b)左側)の戸先柱13側(図2(b)上側)の側面および、引戸6の戸尻側(図2(b)左側)の内装戸先柱23側(図2(b)下側)の側面には引戸6の下端(図2(a)下端)から上端(図2(a)上端)まで縦ゴム板G1が延設されている。
また、引戸6に取り付けられた縦ゴム板G1は、図2(b)に示すように、一対の引戸6が互いに当接され、開口部5bが閉じられた状態において、戸先柱13に取り付けられた縦ゴム板G1と、内装戸先柱23に取り付けられた縦ゴム板G1とに当接されている。よって、戸袋内部空間Tの気密性を向上させることができる。
また、外壁11の引戸上部空間U側(図2(c)左側)には、図2(a)及び図2(c)に示すように、開口部5bの両側(図2(a)左右方向両側)に配設される一対の戸先柱13の間に横ゴム板G2が延設されており、内装パネル21の引戸上部空間U側(図2(c)右側)には、図2(a)及び図2(c)に示すように、開口部5bの両側に配設される一対の内装戸先柱23の間に横ゴム板G2が延設されている。
これら一対の横ゴム板G2は、外壁11及び内装パネル21に密着されており、一対の引戸6が互いに当接され開口部5bが閉じている状態の場合には、横ゴム板G2を弾性変形させることで、引戸6の裏表から当接される。そのため、ローラ部47が鉄道車両100の前後方向へ移動した場合でも一対の横ゴム板G2の間の隙間を小さく保って引戸上部空間Uの気密性を向上させることができる。
上述したように、戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの気密性を向上させることができるので、戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uを介して客室空間Sへ外気が吹き込むことを防止することができる。その結果、開口部5b近傍の客室空間Sの温調空気の温度および湿度を安定させて、乗客の快適性の向上を図ることができる。また、戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの気密性を向上させることで、戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの内部に伝達された騒音が客室空間Sに漏れ出すことを防止することができるので、乗客の快適性の向上を図ることができる。
また、図2(a)及び図2(b)に示すように、床構体3の部位で外壁11と内装パネル21との間の部位には、流通路31が貫通形成されており、内装パネル21の引戸上部空間Uに近接する部位には、客室空間Sの温調空気を戸袋内部空間Tへ送出するファンとして構成される電動式のファン33が取り付けられている。そのため、ファン33から引戸上部空間Uを介して戸袋内部空間Tへ送り込まれた温調空気が戸袋内部空間Tの空気を流通路31から排出させて、戸袋内部空間Tを客室空間Sからの温調空気で満たすことができる。なお、ファン33は、開口部5bの上側(図2(a)上側)に配設されている。
よって、客室空間Sに面している内装パネル21及び戸尻壁17の表面温度を客室空間Sと同等の温度に近づけることができるので、内装パネル21及び戸尻壁17の輻射熱による熱の移動を低減することができる。その結果、内装パネル21及び戸尻壁17の近くであっても乗客の体感温度が変化することを防止して快適性を保つことができる。
ここで、戸袋内部空間Tに客室空間S内の温調空気を送り込む効果を具体的な数値で例示する。晴れた夏の日の午後で、車外気温が31℃の条件で客室空間Sの温度が空調によって24℃に維持されている場合、内装パネル21の客室空間S側に面した表面温度は、流通路31からの外気の流入、車外からの熱伝導、および開閉装置40の熱の伝達により29℃となっており、そのため、内装パネル21からの輻射熱によって客室空間S内の戸袋の近傍にいる乗客の体感温度が0.6℃分上昇していた。これに対して、客室空間S内部の24℃に調整された温調空気が戸袋内部空間Tへ送り込まれることで、内装パネル21の温度は29℃から24℃に低減され、客室空間S内にいる乗客の体感温度の上昇を防止することができる。
また、客室空間Sに面している内装パネル21及び戸尻壁17の表面温度を客室空間Sと同等の温度に近づけることができるので、内装パネル21及び戸尻壁17から接触している温調空気に対する熱の移動を低減することができる。その結果、内装パネル21及び戸尻壁17の近くであっても客室空間Sの温調空気の温度の変化を低減させることができるので、乗客の体感温度が変化することを防止して快適性を保つことができる。
また、開口部5bの上部客室内に、駅名や、次の駅で扉の開く側を表示する電光掲示板などのインフォメーション装置を取り付けた場合は、ファン33の開口部(温調空気の吸い込み口)が背面(内装パネル21側の面)に位置するようにインフォメーション装置を内装パネル21へ取り付け、インフォメーション装置の背面を温調空気が通ってファン33に吸い込まれるように構成することで、 インフォメーション装置からの熱が戸袋内部空間Tを介して鉄道車両100の外に排出されるので、客室空間Sの温度を安定させることができる。なお、インフォメーション装置は、発熱するので、気温が高い環境における効果は大である。
また、外壁11の客室空間S側の側面には、断熱材29が張り付けられている。よって、車外からの熱伝達係数を小さくし、戸袋内部空間Tへ送り込まれた温調空気の、夏の場合の温度上昇、冬の場合の温度低下をそれぞれ抑制することで、内装パネル21及び戸尻壁17の表面温度が客室空間Sの温調空気の温度に対して低下することを抑えることができる。そのため、客室空間Sに面している内装パネル21及び戸尻壁17の表面温度を客室空間Sと同等の温度に近づけて、内装パネル21及び戸尻壁17の輻射熱による熱の移動を低減することができる。その結果、内装パネル21及び戸尻壁17の近くであっても乗客の体感温度が変化することを防止して快適性を保つことができる。
また、引戸6の縦ゴム板G1が戸先柱13の縦ゴム板G1及び内装戸先柱23の縦ゴム板G1に当接されることで、引戸6が閉じた状態における戸袋内部空間Tの気密が保たれている。そのため、客室空間Sから送り込まれた温調空気を効率よく利用することができる。その結果、内装パネル21及び戸尻壁17の表面温度を客室空間Sと同等の温度に効率よく近づけることができるので、空調に必要なエネルギーコストを削減することができる。
また、戸袋内部空間Tと連通している引戸上部空間Uは、ゴム状弾性体として構成される一対の横ゴム板G2を互いに当接させることで、引戸6の位置に関わらず、開口部5bが開いている時も閉じている時も、気密性が保持されている。
引戸上部空間Uおよび連通している戸袋内部空間Tに客室空間Sの温調空気を送り込む手段を持たない場合には、縦ゴム板G1及び横ゴム板G2のいずれか一方または両方が劣化して隙間が生じると、その隙間から客室空間Sの温調空気と異なる温度の空気が客室空間Sに入り込み、乗客の快適性が損なわれるという不具合がある。
これに対し本実施の形態では、戸袋内部空間Tに客室空間S内の温調空気を送り込んでいるので、戸袋内部空間Tから客室空間S内に空気が漏れても、その空気は、客室空間S内の温調空気と温度がほぼ同一であり、戸袋内部空間Tから漏れた空気が乗客に当たった場合であっても乗客の快適性を損なうことを防止することができる。
また、鉄道車両100によれば、鉄道車両100の前後方向へ向かってファン33がほぼ等間隔に配置されている。即ち、鉄道車両100には、鉄道車両100の前後方向(図1左右方向)に複数の開口部5bがほぼ等間隔に形成されており(図1参照)、その開口部5bの上側(図2(a)上側)には、ファン33が配設されている。
例えば、鉄道車両は、鉄道車両の前後方向の寸法が長いために、1箇所のみに換気ファンを取り付けただけでは、客室空間Sを均一に換気することができなかった。
これに対し、第1実施の鉄道車両100によれば、鉄道車両100の前後方向へ向かってファン33がほぼ等間隔に配置されているので、客室空間Sを均一に換気することができる。その結果、客室空間Sを均一に換気して客室空間S内部の温度・湿度・二酸化炭素濃度・汚れ濃度の均一化を図ることができる。
また、第1実施の形態では、引戸6が開いた状態を検知する扉開放検知センサと、その扉開放検知手段が引戸6の開放状態を検知した場合にファン33の運転(温調空気の戸袋内部空間Tへの吸い込み)を停止する停止スイッチ装置(請求項4記載の「停止手段」に対応する。)と、引戸6が閉じた状態を検知する扉閉鎖検知センサと、その扉閉鎖検知手段が引戸6の閉鎖状態を検知した場合にファン33を運転(温調空気の戸袋内部空間Tへの吸い込み)する運転スイッチ装置と、CPUと、RAMと、ROMとを備えている。
CPUは、バスラインにより接続されたファン33をROMに格納されたファン制御プログラムに基づいて制御する演算装置である。ROMは、CPUにより実行されるファン制御プログラムを格納した書き換え不能な不揮発性のメモリであり、RAMは、ファン制御プログラムの実行時に扉開放検知センサ及び扉閉鎖検知センサからの信号を書き換え可能に記憶するためのメモリである。
なお、ファン制御プログラムは、引戸6が開放状態であることを示す信号が扉開放検知センサから出力されRAMに格納された場合に、ファン33の運転を停止し、引戸6が閉鎖状態であることを示す信号が扉閉鎖検知センサから出力されRAMに格納された場合に、ファン33の運転を停止するプログラムとして構成されている。
よって、引戸6が戸袋内部空間Tへ移動された扉開放状態において、CPUが電動式のファン33のへの電力の供給を停止して客室空間Sから戸袋内部空間Tへの温調空気の送り込みを停止させることができる。また、引戸6が戸袋内部空間Tへ移動された状態とは、開口部5bが開いている状態であり、客室空間Sの温調空気が外部と換気される。この場合は、換気量が大きくなると空調効率が悪化するので、ファン33を停止させることで、空調効率の悪化を最小限に抑えることができる。
次いで、図3を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態における鉄道車両100によれば、開閉装置40が客室空間Sからの温調空気が流通される空間に配設する場合を説明したが、第2実施の形態における鉄道車両200によれば、開閉装置40が温調空気から隔離されるように構成されている。なお、上記した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図3(a)は、第2実施の形態における側構体205の断面図であり、図2(a)に対応し、図3(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線における第2実施の形態の側構体205の断面図であり、図2(c)に対応する。
図3に示すように、鉄道車両100は、開閉装置40を温調空気に対して気密状態に囲う区画部50を備えており、その区画部50は、平板を組み合わせて断面コの字形状に構成され外壁11と内装パネル21との間を接続する区画壁51と、その区画壁51のコの字形状の開口を塞ぐように外壁11及び内装パネル21の引戸上部空間U側にそれぞれ取り付けられる一対の区画ゴム板G3とを備えている。
また、外壁11と区画壁51との間および内装パネル21と区画壁51との間は、連続して接続されており、外壁11と区画壁51との間および内装パネル21と区画壁51との間からは、客室空間Sからの温調空気の侵入を遮断することができる。
また、区画壁51の開口側には、一対の区画ゴム板G3が配設されており、これら一対の区画ゴム板G3は、外壁11及び内装パネル21に密着されており、弾性変形されることで、ローラ部47を挟んだ状態であってもローラ部47を挟んだ部位以外の部位は互いに当接される。そのため、ローラ部47が鉄道車両100の前後方向へ移動した場合でも一対の区画ゴム板G3の間の隙間を小さく保って開閉装置40を客室空間Sからの温調空気から遮断することができる。
例えば、開閉装置40に客室空間Sからの温調空気が当たる場合には、使用時間が長くなるにつれて温調空気に含まれる塵や砂などが開閉装置40上に堆積される。ここで、開閉装置40の引戸駆動装置41は、ねじの螺合にて引戸6に駆動力を伝達しているので、ボールねじ43に塵や砂などが堆積すると、ボールねじ43とローラ部47との螺合部分に塵や砂などが噛みこむことで、引戸6を駆動する時に震動が生じたり、ボールねじ43とローラ部47との螺合部分が塵や砂などの噛みこみにより摩耗することで、引戸6の動作にガタつきが生じたりする。そのため、頻繁にメンテナンスする必要があり、メンテナンスコストが嵩むという不具合が生じる。
これに対して、第2実施の形態における鉄道車両200によれば、開閉装置40を温調空気に対して気密状態に囲う区画部50を備えているので、ボールねじ43とローラ部47との螺合部分に塵や砂などが堆積することを防止することができる。よって、メンテナンスの頻度を低減して、メンテナンスコストの削減を図ることができる。
次いで、図4を参照して、第3実施の形態について説明する。第1実施の形態における鉄道車両100によれば、流通路31が床構体3に貫通形成され、ファン33が内装パネル21に取り付けられる場合を説明したが、第3実施の形態における鉄道車両300によれば、内装パネル21に流通路331が形成され、流通路31の内部に戸袋内部空間Tの温調空気を鉄道車両100の外部へ送出するファン333が取り付けられている。なお、上記した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図4(a)は、第3実施の形態における側構体305の断面図であり、図4(b)は、図4(a)のIVb−IVb線における第3実施の形態の側構体305の断面図であり、図4(c)は、図4(a)のIVc−IVc線における第3実施の形態の側構体305の断面図である。これら図4(a)、図4(b)及び図4(c)は、それぞれ図2(a)、図2(b)及び図2(c)に対応する。
図4に示すように、第3実施の形態における鉄道車両300によれば、内装パネル21に流通路331が形成され、流通路31の内部に戸袋内部空間Tの温調空気を鉄道車両100の外部へ送出するファン333が取り付けられている。
この場合、ファン333が戸袋内部空間Tの温調空気を鉄道車両300の外部へ送出することで、客室空間Sの温調空気が戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの内部へ吸入される。よって、内装パネル21及び戸尻壁17の表面温度を客室空間Sの温度とほぼ同等の温度に近づけることができるので、第1実施の形態と同様の効果を奏する。
また、例えば、ファン33の送風によって、客室空間Sの温調空気を戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの内部へ送り込むと、戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの内部圧力が客室空間Sの内部圧力より高くなるため、縦ゴム板G1及び横ゴム板G2のいずれか一方または両方が劣化して隙間が生じると、開口部5bと引戸6との間から温調空気が吹き出し、乗客に風があたることで、快適性が損なわれる場合がある。
これに対して、ファン333の送風によって、客室空間Sの温調空気を戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの内部へ吸い込ませるので、戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの内部圧力を客室空間Sの内部圧力よりも低く保つことができる。よって、開口部5bと引戸6との間から温調空気が吹き出すことを防止して、乗客の快適性を確保することができる。
加えて、開口部5bと引戸6との間から温調空気が吹き出すことを防止することができるので、ファン333の送風量を大きく設定することができる。よって、戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの内部の温調空気の換気をすばやく行い、客室空間Sの温調空気の温度変化に対する応答性を確保することができる。
また、鉄道車両300の上部側(屋根構体7側)の空間には、電光掲示板などのインフォメーション装置を取り付けるので、ファン33が床構体3側に設置されることで、鉄道車両300の上部側(屋根構体7側)の空間を効率良く利用することができる。
また、例えば、内装パネル21の上側に電光掲示板などのインフォメーション装置を取り付けた場合には、内装パネル21とインフォメーション装置との隙間を流通路とすることで、インフォメーション装置からの熱が戸袋内部空間Tを介して鉄道車両300の外に排出されるので、客室空間Sの温度を安定させることができる。なお、インフォメーション装置は、発熱するので、気温が高い環境における効果は大である。
また、第2実施の形態と同様に開閉装置40を区画部50にて囲っても良い。この場合、第2実施の形態と同様の効果を奏する。
また、床構体3に設置されたファン333は、防水性を有するものを使用することで、送風のための通路を水抜きの流路として使用することができる。よって、別途、水抜き孔を形成することを省くことができる。
次いで、図5を参照して、第4実施の形態について説明する。第1実施の形態における鉄道車両100によれば、流通路31が床構体3に貫通形成され、ファン33が内装パネル21に取り付けられる場合を説明したが、第4実施の形態における鉄道車両400によれば、流通路31の内部に戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの内部の温調空気を鉄道車両400の外部に送出するファン333が取り付けられている。なお、上記した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図5(a)は、第4実施の形態における側構体405の断面図であり、図5(b)は、図5(a)のVb−Vb線における第4実施の形態の側構体405の断面図であり、図5(c)は、図5(a)のVc−Vc線における第4実施の形態の側構体405の断面図である。これら図5(a)、図5(b)及び図5(c)は、それぞれ図2(a)、図2(b)及び図2(c)に対応する。
第4実施の形態では、図5に示すように、流通路31の内部に戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの内部の温調空気を鉄道車両400の外部に送出するファン333が取り付けられている。
この場合、ファン33及びファン333によって、客室空間Sの温調空気が戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの内部に吸入される。よって、内装パネル21及び戸尻壁17の表面温度を客室空間Sの温度とほぼ同等の温度に近づけることができるので、第1実施の形態と同様の効果を奏する。
また、内装パネル21に取り付けられるファン33及びファン333の送風量の割合を調整することで、戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの客室空間Sに対する圧力差を調整することができる。例えば、ファン33の送風のみによって、客室空間Sの温調空気を戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの内部に大量に送り込むと、戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの内部圧力が客室空間Sの内部圧力より高くなるため、縦ゴム板G1及び横ゴム板G2のいずれか一方または両方が劣化して隙間が生じると、開口部5bと引戸6との間から温調空気が勢いよく吹きこみ、乗客に風があたることで、快適性が損なわれるという不具合や、気流音が発生するという不具合がある。
これに対して、客室空間Sの温調空気を大量に戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの内部に送り込む場合に、ファン33の送風量に合わせてファン333の送風量を調整することで、戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの内部圧力を客室空間Sの内部圧力と同等か少し低く保つことができる。よって、開口部5bと引戸6との間から温調空気が吹きこむことと、気流音の発生とを防止して、乗客の快適性を確保することができる。
また、例えば、ファン333の送風のみによって、客室空間Sの温調空気を戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの内部に大量に送り込むと、戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの内部圧力が客室空間Sの内部圧力より低くなり、開口部5bと引戸6との間から温調空気が勢いよく吸い込まれ、乗客の衣服などが吸い込まれるという不具合や、気流音が発生するという不具合がある。
これに対して、客室空間Sの温調空気を大量に戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの内部に送り込む場合に、ファン333の送風量に合わせてファン33の送風量を調整することで、戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの内部圧力を客室空間Sの内部圧力と同等か少し低く保つことができる。よって、開口部5bと引戸6との間から温調空気が吹きこむことと、気流音の発生とを防止して、乗客の快適性を確保することができる。
また、ファン33及びファン333を別々に備えるので、同量の風量を確保する場合に、1個のファンに対してファン33及びファン333を小さくすることができる。よって、レイアウトの自由度を向上させることができる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
例えば、上記各実施の形態で挙げた数値(例えば、各構成の数量や寸法など)は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
また、第1実施の形態では、内装パネル21の戸袋内部空間T側の面は、戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uに面した状態(むき出し状態)として構成とされる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、内装パネル21の戸袋内部空間T側の面に、断熱材を張り付ける構成としても良い。
この場合、外壁11に張り付けられる断熱材29を薄いものに変更することで断熱性能が低下し、戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの内部に送り込まれた温調空気の温度変化が大きい場合でも、内装パネル21の温度変化を防止することができる。即ち、第1実施の形態と同様の効果を奏する。
特に、戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uの内部に送り込まれた温調空気の温度が最も変化する流通路31側の内装パネル21に断熱材を張り付けることで、内装パネル21の温度変化を防止すると共に内装パネル21全体の温度を均一化することができる。
また、第1実施の形態では、内装パネル21の戸袋内部空間T側の面は、戸袋内部空間T及び引戸上部空間Uに面した状態(むき出し状態)として構成とされる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、内装パネル21の戸袋内部空間T側の面に、制振材を張り付ける構成としても良い。
この場合、ファン33の振動が内装パネル21に伝わった場合でも、内装パネル21の振動を防止することで、その振動による音の発生を抑制して、乗客の快適性を確保することができる。また、同様に、制振材に替えて吸音材を貼っても良い。この場合、音を吸収して、乗客の快適性を確保することができる。
なお、戸袋内部空間Tには、流通路31から車外の音が入ってきやすいため、戸袋内部空間Tと客室空間Sを仕切る内装パネル21に制振材または吸音材を貼ることは、内装部材27に制振材または吸音材を貼ることに比べて、客室空間Sの騒音環境の向上を図る上で非常に効果的である。
また、第1実施の形態では、流通路31が床構体3に貫通形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、中空の筒を床構体3に貫通させ両開口の内の鉄道車両100の外側に位置する開口を鉄道車両100の幅方向内側に向けて開口する構成としても良い。
この場合、中空の筒の鉄道車両100の外側の開口が線路側または鉄道車両100の幅方向外側へ開口する場合に比べて、走行風の影響を受け難くすることができる。よって、床構体3に貫通された中空の筒の開口部分の圧力の変化を抑えることで、客室空間Sとの差圧の変動を小さくして、客室空間Sからの温調空気の送出量を安定させることができる。
また、第1実施の形態では、流通路31が床構体3に貫通形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、中空の一対の筒をL字形状に連結させ、一方の中空の筒を床構体3に垂直に貫通させ、他方の中空の筒を鉄道車両100の外に水平に位置させると共に、その他方の中空の筒の鉛直方向下側の側面に貫通孔を貫通形成する構成としても良い。
この場合、水分は温調空気より重いために、主に、貫通孔を通って排出され、温調空気は、貫通孔と、他方の中空の筒の開口から排出される。例えば、貫通孔を備えていない場合には、他方の中空の筒の開口を鉄道車両100の幅方向内側に向けると開口部分の圧力を安定させることはできるが、水分が、鉄道車両100に掛り鉄道車両100の劣化が促進されるという不具合がある。
これに対して、貫通孔を備えることで、鉄道車両100の劣化(錆などによる劣化)の促進を抑制すると共に客室空間Sからの温調空気の送出量を安定させることができる。即ち、鉛直方向下側の側面に貫通孔を備えることで、水分を鉛直方向へ排出することができるので、鉄道車両100に水分が付着することを低減して、鉄道車両100の劣化(錆などによる劣化)の促進を抑制することができるのに加え、他方向の中空の筒の開口を鉄道車両100の幅方向内側に向けることで、中空の筒の開口部分の圧力の変化を抑え、客室空間Sからの温調空気の送出量を安定させることができる。
また、中空の一対の筒をL字形状に連結させ、一方の中空の筒を床構体3に垂直に貫通させ、他方の中空の筒を鉄道車両100の外に水平に位置させると共に、その他方の中空の筒の鉛直方向下側の側面に貫通孔を貫通形成する構成に加えて、他方の中空の筒の端部にファンを取り付けても良い。
この場合、戸袋内部空間Tからの水分は、ほとんどが貫通孔から排出され、他方の中空の孔へ搬送される水分の量が低減されるので、ファンの防水性を低くして、ファンの製品コストを低く抑え、鉄道車両のコスト削減を図ることができる。
100 鉄道車両
2 空調装置
5 側構体(側構体)
5b 開口部(側出入口)
6 引戸
31 流通路(水抜管、排気手段、戸袋の一部)
33 ファン(導入装置、排気手段)
331 流通路(客室を戸袋の内部空間へ連通させる連通路)
333 ファン(戸袋の内部空間の空気を外部へ送出する送出装置)
S 客室空間(客室)
T 戸袋内部空間(内部空間の一部、戸袋の一部)
U 引戸上部空間(内部空間の一部、戸袋の一部)

Claims (4)

  1. 調和空気を客室に供給する空調装置と、側構体に開口される側出入口と、その側出入口を開閉する引戸と、その引戸が格納される内部空間およびその内部空間に溜まった水を外部へ排出するための水抜管を有する戸袋と、を備えた鉄道車両において、
    前記客室の空気を車外へ排気する排気手段を備えると共に、その排気手段は、前記戸袋の内部空間を経由して、前記客室の空気を車外へ排出するように構成されていることを特徴とする鉄道車両。
  2. 前記排気手段は、前記客室の空気を前記戸袋の内部空間へ導入する導入装置を備えると共に、前記導入装置が少なくとも前記引戸よりも天井側に位置し、
    前記導入装置により前記戸袋の内部空間に導入された空気が、前記戸袋の内部空間を流通し、前記水抜管から外部へ排出されることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
  3. 前記排気手段は、前記客室を前記戸袋の内部空間へ連通させる連通路と、前記戸袋の内部空間の空気を外部へ送出する送出装置と、を備えると共に、前記連通路が少なくとも前記引戸よりも天井側に位置し、かつ、前記送出装置を前記水抜管の経路中に配置し、
    前記送出装置により前記戸袋の内部空間の空気を外部へ送出することで、前記客室の空気が前記連通路を介して前記戸袋の内部空間へ取り込まれると共に、前記戸袋の内部空間を流通し、前記水抜管から外部へ排出されることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
  4. 前記引戸が前記戸袋に格納され前記側出入口が開放された場合に、前記導入装置または前記送出装置による前記空気の導入または送出を停止する停止手段を備えていることを特徴とする請求項2又は3に記載の鉄道車両。
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