JP2010197181A - ガスセンサ - Google Patents

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Abstract

【課題】極性分子を検出するガスセンサの簡易な製造方法を提供する。
【解決手段】ガスセンサ100は、透光性の誘電体から成る基板10の表面に、金属膜20を形成し、その上に正電荷を帯びた高分子A及び負電荷を帯びた高分子Bを交互に積層した感応膜30を形成している。適当な筐体40で感応膜30を覆い、気体導入部41から検査対象気体を導入すると、極性分子は感応膜30に吸着される。基板10の裏面に設けたプリズム50を介して、所定の波長の光を基板10裏面から入射角θで導入し、金属膜20で反射させ表面プラズモン共鳴の変化を測定して感応膜30に吸着された特定のガス分子の定量又は当該ガス分子の特定(同定)を行う。気体導入部41には検査対象気体の他、感応膜30の初期化のために例えば乾燥空気を導入可能としておくとガス分子の感応膜30からの離脱状態を測定できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、表面プラズモン共鳴を利用したガスセンサに関する。本発明のガスセンサは、高分子多層膜を用いるものである。
透光性の誘電体から成る基板の表面に金属薄膜を形成した構造に対し、基板裏面側から所定の条件で光を導入し、反射させた場合に、金属薄膜の表面プラズモン共鳴を観測可能である。この表面プラズモン共鳴は、金属薄膜の上に誘電体感応膜を形成すると、当該感応膜の誘電率変化に対し非常に敏感であることから、センサとして用いることが可能であることが知られている。
金属表面では表面電荷の集団振動である表面プラズモンが存在可能である(例えば非特許文献1)。この表面プラズモンは電磁波が境界面で全反射する際に生じるエバネッセント波により励起可能である。表面プラズモンが励起されると、入射波のエネルギーが表面プラズモンの励起によって奪われることから反射率が低下する。この表面プラズモンの共鳴的励起は、金属膜が薄膜の場合で、反射面とは逆側に存在する誘電体等の誘電率変化、および当該誘電体の膜厚変化に対し非常に敏感である。その為、金属膜の反射面とは逆側に感応膜を設置することで、様々なセンサとして機能させることが可能となる(例えば非特許文献2)。
なお、表面プラズモンの励起は入射波の波長及び入射角に依存することから、実際的な測定では波長毎、もしくは入射角毎の反射率を測定するのが一般的である。また測定系としては基板の裏に屈折率調整オイルを介してプリズムを配置し、光の入出射を行うKretchmann配置を用いることが一般的である。
高分子多層膜を用い、表面プラズモン共鳴測定を実施したものとして、例えば特許文献1では金薄膜表面にイソタクチックPMMAとシンジオタクチックPMMAを交互に積層したのち表面にアビジンを固定し、ビオチンを検出するセンサが記載されている。また、特許文献2では、中性高分子であるが電子を放出することにより安定なラジカルカチオンを形成する側鎖を有する電子供与性の高分子と、中性高分子であるが電子を得ることにより安定なラジカルアニオンを形成する側鎖を有する電子受容性の高分子とを交互に積層した多層膜を用い、表面プラズモン曲線を得て、多層膜が形成されていることを確認している。
また、特許文献3には、アミノ酸のプラズマ重合膜を感応膜として用い、表面プラズモン共鳴により香料であるカルボン分子を検出するガスセンサが記載されている。
表面プラズモン共鳴方式以外の方法で高分子累積膜を用いたセンサが報告されている(非特許文献3)。例えば水晶振動子式センサ、表面音響波式センサなどである。それらの方式において、高分子累積膜の主鎖もしくは側鎖の官能基の分子構造を工夫することで極性もしくは非極性分子が選択的に吸着・吸収されるようなセンサが報告されている。また、イオンを特異的に識別する官能基を導入することでイオンセンサとしても機能する。
特許文献4及び5、並びに非特許文献4及び5は本願発明で用いる個々の技術について記載されているものである。
特開2005−189222号公報 特開平10−244616号公報 特開2004−170095号公報 特開2000−334229号公報 特開2008−216055号公報
K. Nagashima, J. Plasma Fusion Res. 84 (2008) 10-18 軽部征夫著、テクノシステム刊「バイオセンサ・ケミカルセンサ事典」(2007年) J. Anzai, BUNSEKI KAGAKU 50 (2001) 585-594 J. Cho, K. Char, J. D. Hong, and K. B. Lee, Adv. Mater. 13 (2001) 1076-1078 大森英三著、テカル出版刊「新・機能性アクリル系樹脂」26頁(1993年)
特許文献1は、レセプターとしてのアビジンを固定するために高分子多層膜が用いられており、高分子多層膜自体が表面プラズモン共鳴に影響を与える感応膜自体であるとは言い難い。特許文献2では、多層膜が形成されていることを確認するためだけに表面プラズモン共鳴を測定しているが、多層膜が光機能材料としての使用の可能性を示しているのみで具体的な使用方法の記載が無い。また、特許文献3はアミノ酸のプラズマ重合膜を用いており、真空プロセスなど作製にコストのかかるプロセスを必要としている。
本発明は上記に鑑み、感応膜として機能する高分子多層膜を簡易な方法で形成したガスセンサを提供することを目的とする。
請求項1に係る発明は、表面プラズモン共鳴を利用したガスセンサにおいて、透光性の誘電体から成る基板と、基板の表面に形成された金属膜と、金属膜の上に形成された誘電体多層膜から成り、検査対象となる気体に曝される感応膜とを有し、感応膜は、高分子膜の積層構造から成ることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、感応膜は、積層された隣り合う膜の高分子が、正負イオン間の引力、水素結合、又はそれら高分子間の電荷移動による相互作用によるクーロン力で引き合っていることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、感応膜は、2種類の高分子膜を交互に積層した構造であることを特徴とする。
請求項4に係る発明は、感応膜表面に、検査対象となる気体を導入可能であるとともに、感応膜を初期状態に戻すための所定の気体を導入可能としたことを特徴とする。
請求項5に係る発明は、所定の気体は乾燥空気であることを特徴とする。
請求項6に係る発明は、アルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、又はアミンその他の極性を有する有機分子を検出することを特徴とする。
高分子多層膜は簡易な方法でその総膜厚をコントロール可能であること、また極性分子の吸着に優れることからガスセンサの感応膜として適している。
本発明は、表面プラズモン共鳴現象と高分子多層膜を組み合わせたことにある。表面プラズモンの共鳴的励起により金属膜近傍での誘電率変化に対して敏感になる距離(厚み)と高分子累積膜により制御可能な膜厚が適合していることで今回の発明が実現した。
高分子多層膜(累積膜)の作製は、主として高分子が適当な溶媒に溶解した溶液を逐次固体基板に塗布、または吹き付け、もしくはスピンコート等を施すことで作製される。一般的に溶媒に溶解した高分子を固体基板に累積していく際には、相溶性という問題に注意を要する。すなわち、第一に作製された高分子膜に対し、第二の高分子溶液を滴下することで、第一の高分子膜が侵され膜構造が壊れてしまうという問題である。これに対しては、第一の高分子膜に対し適当な処理を行い、分子内もしくは分子間で架橋構造を持たせることで溶媒に対し難溶性とする手法や、第一の高分子膜作製後、第二の積層にもちいる溶媒として第二の高分子にとっては良溶媒であるが第一の高分子には貧溶媒となる溶媒を選び、相溶を防ぐ方法などが用いらていれる。本発明においては、これらの手法を排除するものではないが、請求項2に係る発明においては、第一の膜と第二の膜を構成する高分子間に強いクーロン力を生じさせ、溶媒に侵されるのを防ぐものである。この手法によって作製された膜を一般的には、交互吸着膜または交互積層膜または高分子電解質累積膜もしくはPolyelectrolyte Multilayers等と呼ぶ(以下ではPEMと略す。例えば非特許文献3)。
クーロン力としては、カチオンとなる置換基等における正電荷と、アニオンとなる置換基等における負電荷の間に働くクーロン力の他、電気陰性度の大きな原子に水素原子が結合した分子と、孤立電子対を持つ原子を有する分子間に働く水素結合、電子供与性の置換基と電子受容性の置換基の間で電子が移動してカチオンラジカルとアニオンラジカルが生じた上でのクーロン力などが上げられる。たとえばカチオンとアニオンのクーロン力を駆動力とした多層膜(累積膜)の作製は次のように行われる。先ず、正又は負に荷電した固体基板を反対の電荷を持つ高分子溶液に浸し、最初の高分子層を静電的に吸着させる。この場合、固体基板表面と、高分子の例えば側鎖との間の化学反応による結合を駆動力としても良い。こののち溶媒で十分に洗浄することで静電的に吸着した、或いは化学的に結合した高分子以外を除去し、最初に吸着又は化学的に結合させた高分子と反対の電荷を持つ高分子溶液に基板を浸すことで2層目の高分子層が同様に吸着される。この操作を繰り返すことで任意の層数の多層膜(累積膜)が作製される。正負それぞれの電荷を持った置換基等を有する高分子間の静電的な相互作用は、溶媒と高分子間の相互作用に比較して遥かに大きいことからこのような累積が可能となる。一層あたりの膜厚は高分子溶液のpH、濃度を調整することで制御可能であることから一層あたりの膜厚が制御された累積が可能となる。大まかな値として乾燥状態で正電荷、負電荷それぞれの高分子層で〜10nm程の膜厚が得られる。手法としては上に説明した浸漬法の他に、作業性を向上させたSpin−Assembly法などがある(例えば非特許文献4)。多層膜(累積膜)の材料として特定の分子に対して親和性を持つ材料を適用することでセンサとして利用することが可能となり、膜厚が制御可能なことから、検出対象分子の吸着量も制御可能となり、膜厚を増加させることで吸着分子を増加させ、感度を向上させることが可能となる。
例えば特許文献4に次のような記載がある。「各帯電膜は、クーロン力やファン・デル・ワールス力のような分子間力によって互いに結び付いた多数のポリマからなる自己組織化膜(Self−Assembly Film)を構成しているため、本質的に内部に空洞構造を有している。別言すれば、各帯電膜は、多孔質膜あるいは繊維質膜を形成していることになり、その内部には、匂いの素となるような分子、イオン、煙の粒子など、検出対象となる粒子や分子が侵入可能な空洞構造が形成されている。」
また、高分子としてイオン解離性の高分子を利用する際には、溶液のpHをコントロールすることで、主鎖のコンフォメーションを糸まり状や棒状に変化させることが可能となり(例えば非特許文献5)、空洞の大きさ制御が可能となる。
こうして、内部にナノレベルの空洞構造を形成することができる。これにより吸着分子の拡散速度が促進されるとともに、高分子が吸着後に膨潤、収縮する為のスペースを提供する。
検出対象であるガス分子が吸着した感応膜に対し、乾燥空気を流通させることで感応膜中に吸着したガス分子を膜中から除くことが可能となる。これは乾燥空気を感応膜に吹き付けることにより膜が乾燥するためである。測定の際はガス分子が混入した気体を吹き付けることで、感応膜にガス分子を吸着させる。その為、この系では吸着と脱離が競合することとなり、センサの出力は流通させる気体の成分、流速に強く影響を受ける。実験結果より吸着の際よりも脱離の際に顕著に吸着分子の影響を受ける傾向が観察され、吸着の際の共鳴角の変化量のみならず脱離の際の変化の傾向から吸着分子種を特定することが可能となる。
本発明によれば、複数の分子種が混在する気体の中から、ある特定の分子に対して感度を持たせたセンサが実現可能となる。さらに吸着分子を脱離するためのヒーター、真空系を用いずとも吸着分子を脱離させることが可能となり簡便なセンサが構築可能となる。
本発明の具体的な一実施例に係るガスセンサ100の断面図(概念図)。 本発明に用いる金薄膜への光の入射角と反射率を、金薄膜の厚さを変えて計算したシミュレーション結果を示すグラフ図。 本発明の高分子多層膜(累積膜)を形成する方法を示す工程図。 第1の高分子多層膜の累積数と光吸収の測定結果を示すグラフ図。 第1の高分子多層膜の累積数と表面プラズモン共鳴角の測定結果を示すグラフ図。 第2の高分子多層膜を用いたガスセンサ100の、エタノール混入空気を導入して、表面プラズモン共鳴角の時間変化を測定したグラフ図。 図6における時刻20秒と60秒の、光の入射角と反射強度を示したグラフ図。 第2の高分子多層膜を用いたガスセンサ100の、エタノール混入空気を導入したのち、乾燥空気の導入に切り替えて、表面プラズモン共鳴角の時間変化を測定したグラフ図。 第2の高分子多層膜を用いたガスセンサ100の、飽和水蒸気とエタノール混入空気の導入と乾燥空気の導入による表面プラズモン共鳴角の時間変化を測定したグラフ図。 エタノール混入空気のエタノール濃度と、共鳴角の変化量を測定したグラフ図。
以下、本発明を実施する望ましい形態について説明する。
図1は、本発明の具体的な一実施例に係るガスセンサ100の主要部の構成を示した断面図である。図1においては、高分子の様子を概念的に紐状に示している。
図1のガスセンサ100は、透光性の誘電体から成る基板10の表面に、金属膜20を形成し、その上に2種類の高分子A及びBを交互に積層した感応膜30を形成している。適当な筐体40で感応膜30を覆い、筐体40の気体導入部41から検査対象気体を導入する。検査対象気体中の例えば極性分子は、感応膜30に吸着される。検査対象気体を連続的に導入するため、筐体40には気体排出部42が設けられている。
こうして、例えば基板10の裏面に設けたプリズム50を介して、所定の波長の光を基板10裏面から入射角θで導入し、金属膜20で反射させる。こののち、反射光について、一定の反射角度における強度変化を測定するか、所定の反射角度で強度を測定しながら光強度の最も小さい入射角θを決定することで、感応膜30における変化を定量できる(表面プラズモン共鳴の変化の測定)。これにより、感応膜30に吸着された特定のガス分子の定量又は当該ガス分子の特定(同定)が可能となる。
尚、以下に示す通り、気体導入部41には検査対象気体の他、感応膜30の初期化のために例えば乾燥空気を導入可能としておくと良い。この際、検査対象気体の導入から乾燥空気の導入に切り替えたのちの、表面プラズモン共鳴の変化の測定を時間と共に追跡することで、検査対象気体中に存在したガス分子の感応膜30からの離脱状態を測定でき、当該ガス分子の特定(同定)を可能とする。
高分子材料としては、主鎖もしくは側鎖に極性基、及びそれらが変化したイオン性基を有することが好ましい。具体的には、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基、スルホニル基、アルデヒド基、ニトロ基、イミノ基、シアノ基などの官能基もしくはそれらが変化したイオン基を有するものが挙げられる。2つの高分子の一方が正に帯電し、或いは側鎖等がカチオンとなり、他方が負に帯電し、或いは側鎖等がアニオンとなることで、交互積層が容易となる。交互積層を容易とするために2つの高分子間の水素結合を利用しても良い。ヒドロキシル基、アミノ基その他の弱い正電荷を帯びた水素原子(プロトン)と、孤立電子対を持ち、弱い負電荷を帯びた窒素、酸素、硫黄、ハロゲン原子のうち少なくとも一つを有するものとが引き合う。或いは、ラジカルカチオンが安定となる電子供与性を有する高分子と、ラジカルアニオンが安定となる電子受容性を有する高分子も引き合うので、この組み合わせを用いても良い。
高分子多層膜(累積膜)の作製に用いる典型的な高分子材料としては、例えばPoly(diallyldimethylammonium chloride),Poly(acrylic acid),Poly(sodium 4−styrenesulfonate),Poly(allylamine hydrochloride),Poly[1−[4−(3−carboxy−4−hydroxyphenylazo)benzenesulfonamido]−1,2−ethanediyl, Poly(p−xylene tetrahydrothiophenium chloride),Chitosan,Poly(4−vinylpyridine),Poly(vinyl sulfate),Poly(4−vinylphenol),Polyethyleneimine,Hyaluronic acid,Dextranなどが挙げられる。
金薄膜の厚さについては、表面プラズモン共鳴が観察しやすい15nm〜100nm程度が望ましい。図2に金の膜厚を様々に変えたときの表面プラズモン共鳴のシミュレーション計算結果を示す。シミュレーション計算は波長780nmの条件で行い、チップの構成は基板側からガラス(BK−7、0.5mm)、Ti(2nm)、Au、誘電体感応膜(屈折率n=1.5、厚さ10nm)、外部雰囲気は空気とし、図2に示すように様々な金の膜厚に関し計算を行った。
なお、本発明は表面プラズモン共鳴と高分子累積膜を組み合わせたものであるが、より共鳴領域を限定した局在表面プラズモン素子への適用も可能である(例えば非特許文献2及び特許文献5)。
なお、本発明の実施例における表面プラズモン共鳴測定の結果は波長770nmによるものだが、この波長に限定するものではない。
なお、一般的には表面プラズモン共鳴測定の評価は共鳴角のシフトで評価することが多いが、特定の角度で受光器を固定し反射率の変化を計測する方法であっても良い。
なお、本発明は表面プラズモン共鳴と高分子多層膜(累積膜)を組み合わせたガスセンサに関するものであるが、本発明の構成を液体に適用することを制限するものではない。この場合、適用される液体は、検出対象分子等を含む混合物を指すものである。
なお、金属膜としては典型的には金もしくは銀が用いられることが多いが、自由電子をもつ金属であれば特に限定はせず、金属単体であっても合金であっても良い。
〔高分子多層膜(PEM)の例1〕
非特許文献4に記載されたSpin−Assembly法にしたがって、高分子多層膜の作製を行った。手順を以下に示す。
基板10としてカバーガラス(Matsunami製、18×18mm)を用いた。高分子Aとして主鎖である環構造又は側鎖にカチオンを有するpoly(diallyldimethylammonium chloride)(以下、PDDA)を、高分子Bとして側鎖にアニオン性基を有するPoly[1−[4−(3−carboxy−4−hydroxyphenylazo)benzenesulfonamido]−1,2−ethanediyl,sodium salt](以下、PAZO)を用いた。試薬はSigma−Aldrichより購入し、特に精製などは行わずそのまま用いた。両高分子電解質は純水製造装置Milli−RO60により製造した純水を用いて、各々イオン換算濃度で1mmol/Lの水溶液とした。
Spin−Assembly法による高分子多層膜(PEM)は、以下に示す前処理と累積プロセスを繰り返すことで作製した(図3)。スピンコートにはスピンコーター(1H−D3、ミカサ株式会社)を用いた。
前処理として、次の処理を行った。
UVオゾンクリーナ(日本レーザ電子製 NL−UV253)によりオゾン処理して基板10表面を親水化した。次に基板10上に水を滴下し、回転数5000rpmで20秒間、洗浄した。
高分子多層膜の累積プロセスは次の通り行った。
高分子A水溶液(ポリカチオン溶液)を基板10(の最上層の)上に滴下し、スピンコートする(5000rpm、20秒)。
水の滴下とスピンコート(5000rpm、20秒)を、3回繰り返す。
高分子B水溶液(ポリアニオン溶液)を基板10の最上層の上に滴下し、スピンコートする(5000rpm、20秒)。
水の滴下とスピンコート(5000rpm、20秒)を3回繰り返す。
以上の累積プロセスを繰り返すことで所望の層数を持つPEMを作製した。
作製した多層膜に対し紫外可視吸収スペクトル測定を実施し、積層数の増加にともなう吸光度の増加を確認した。ここで、積層数は高分子Aと高分子Bのペアを累積数としてカウントした。図4に波長370nm近傍における吸収極大の吸光度をプロットした結果を示す。図4より吸収極大における吸光度は、累積数に比例して増大したことから、1回に吸着する高分子電解質の量は一定であることが確かめられた。また、膜厚測定のために累積プロセスを100回繰り返したサンプルを作製し、膜厚を測定したところ600nmであった。これより高分子A、高分子Bをペアとした際の一組の膜厚は6nmほどであると考えられる。
同様の方法で金薄膜上への高分子多層膜の作製を試みた。基板としてガラス(BK−7、0.5mm厚)上に金を50nm蒸着したものを用いた。尚、金の密着性向上の為、金の蒸着前にガラス(BK−7)表面にチタン層2nmを設けた。その後に用いる高分子材料および累積プロセスは上記と同様である。作製したサンプルを表面プラズモン共鳴測定装置Handy−SPR PS−0109(NTT−AT社製、測定レンジ65°〜75°)により評価した。図5に累積数と表面プラズモンの共鳴角の測定結果を示す。なお測定は高分子累積膜上に水を滴下することで行った。高分子A、高分子Bをペアとした累積数の増加と共に共鳴角の増加が確認され、金薄膜上に高分子多層膜(累積膜)が作製されていることが確認された。
〔高分子多層膜(PEM)の例2〕
例1に示したのと同様の作製法により感応膜を作製し、気体に対する表面プラズモン共鳴測定を行った。高分子Aとしてpoly(4−vinylpyridine)(以下、P4VP)を、高分子Bとしてpoly(4−vinylphenol)(以下、PVPh)を用い、測定装置として表面プラズモン共鳴測定装置Handy−SPR PS−0109(NTT−AT社製、測定レンジ40°〜50°)を用いた。又、感応膜作製の際は溶媒としてエタノールを用い、積層を5ペア行った。
本例においては、高分子A(P4VP)の複素環を構成する窒素原子の孤立電子対と、高分子B(PVPh)のフェノール性水酸基の水素とによる水素結合が、高分子膜同士を引き合わせる主たる要因となっている。
図6に気体を流通させた際の共鳴角(入射角θ)の時間変化を示す。図6において約30秒までは乾燥空気(窒素:酸素=4:1)を500ml/min、グラフに変化が観察される30秒のあたりからは乾燥空気中にエタノールを1000ppm含有させた混合気体を500ml/min流通させた。混合気体流通後直ちに共鳴角に変化が生じ、エタノールに対するセンサ応答が観察された。
図7に共鳴角の変化前と変化後の、横軸に入射角度θを、縦軸に光量をとった共鳴曲線を示す。図7において乾燥空気流通時と記載の曲線(一点鎖線)は図6における20秒での共鳴曲線を、エタノール1000ppmm流通時と記載の曲線(実線)は図6における60秒での共鳴曲線である。
引き続き、乾燥空気による吸着分子であるエタノールの脱離を試みた。図8に測定結果を示す。図6の測定のために行った吸着測定のサンプルに対して乾燥空気500ml/minに切り替えて行った。図8中で100秒前後の共鳴角が急激に減少し始めたところで乾燥空気を流通させ始めている。図6の初期状態の共鳴角の値まで戻っていることから、乾燥空気により吸着分子であるエタノールの脱離が行われたと考えられる。
P4VPとPVPhの多層膜から成る感応膜30を同様の方法で形成した別のガスセンサ100を用意し、非検出分子である水とエタノールをそれぞれ含む気体を流通させ、感応膜30への吸着・脱離の特性を見た。図9に結果を示す。流量は全て500ml/minである。流通させた気体をグラフ枠上に示した。飽和水蒸気(約3%)を流通させた際とエタノール1000ppmの時では共鳴角の到達角度に差が見られると共に、その後の乾燥空気流通時の感応膜30からの脱離特性に顕著な差が観察された。以上より本方式により被検出分子の特定が可能であることが確かめられた。
P4VPとPVPhの多層膜から成る感応膜30を同様の方法で形成したガスセンサ100の、非検出分子であるエタノールの濃度を変化させた際の表面プラズモン共鳴の変化を測定した。乾燥空気中にエタノール分子を所定濃度含む気体を流通させた。流量は全て500ml/minとした。図10に結果を示す。横軸をエタノール濃度、縦軸は共鳴角の変化量(単位は度)を示す。ここで変化量とは、乾燥空気を500ml/min流通させたときの表面プラズモン共鳴角に対して、 エタノール混合乾燥空気を流通させた際の共鳴角がどれだけ変化したかを示す。低濃度時に大きな変化が観察されると共に、濃度が高くなるにつれ、飽和する傾向が観察された。
以上の通り、本発明に係るガスセンサは、高分子多層膜から成る感応膜に吸着される気体分子を同定可能であり、且つ濃度測定が可能である。
本発明に係るガスセンサは、高分子多層膜を構成する材料、各単層の膜厚、累積数と総膜厚を所望に設計でき、異なる複数の気体分子に対する感度を、独立に設計可能なものである。そこでそのような、異なる複数の気体分子に対する感度の異なる本発明に係るガスセンサ素子を複数個用意し、各々の表面プラズモン共鳴角の変化から、より精度良く気体分子を同定可能であり、且つ濃度測定が可能である。更に、複数の気体分子を同定可能となり、且つ濃度測定が可能となる。
本発明は気体中のアルコール濃度を検出するガスセンサとして有効である。
100:ガスセンサ
10:透光性の誘電体から成る基板
20:金属膜
30:高分子多層膜から成る感応膜
40:筐体
41:気体導入部
42:気体排出部
50:プリズム

Claims (6)

  1. 表面プラズモン共鳴を利用したガスセンサにおいて、
    透光性の誘電体から成る基板と、
    前記基板の表面に形成された金属膜と、
    前記金属膜の上に形成された誘電体多層膜から成り、検査対象となる気体に曝される感応膜とを有し、
    前記感応膜は、高分子膜の積層構造から成ることを特徴とするガスセンサ。
  2. 前記感応膜は、積層された隣り合う膜の高分子が、正負イオン間の引力、水素結合、又はそれら高分子間の電荷移動による相互作用によるクーロン力で引き合っていることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
  3. 前記感応膜は、2種類の高分子膜を交互に積層した構造であることを特徴とする請求項2に記載のガスセンサ。
  4. 前記感応膜表面に、検査対象となる気体を導入可能であるとともに、前記感応膜を初期状態に戻すための所定の気体を導入可能としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガスセンサ。
  5. 前記所定の気体は乾燥空気であることを特徴とする請求項4に記載のガスセンサ。
  6. アルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、又はアミンその他の極性を有する有機分子を検出することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のガスセンサ。
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