JP2006098263A - バイオセンサー - Google Patents
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Abstract
【課題】 非特異吸着を抑制し、生理活性物質を固定化できるバイオセンサーを提供すること。
【解決手段】 親水性高分子化合物が基板表面に非共有結合により吸着することにより親水性高分子化合物層が形成され、該親水性高分子化合物層の最表面に生理活性物質を固定化できる官能基を有する基板から成るバイオセンサー。
【選択図】 なし
【解決手段】 親水性高分子化合物が基板表面に非共有結合により吸着することにより親水性高分子化合物層が形成され、該親水性高分子化合物層の最表面に生理活性物質を固定化できる官能基を有する基板から成るバイオセンサー。
【選択図】 なし
Description
本発明は、バイオセンサー及びそれを用いた生体分子間の相互作用を分析する方法に関する。特に本発明は、表面プラズモン共鳴バイオセンサーに用いるためのバイオセンサー及びそれを用いた生体分子間の相互作用を分析する方法に関する。
現在、臨床検査等で免疫反応など分子間相互作用を利用した測定が数多く行われているが、従来法では煩雑な操作や標識物質を必要とするため、標識物質を必要とすることなく、測定物質の結合量変化を高感度に検出することのできるいくつかの技術が使用されている。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)測定技術、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定技術、金のコロイド粒子から超微粒子までの機能化表面を使用した測定技術である。SPR測定技術はチップの金属膜に接する有機機能膜近傍の屈折率変化を反射光波長のピークシフト又は一定波長における反射光量の変化を測定して求めることにより、表面近傍に起こる吸着及び脱着を検知する方法である。QCM測定技術は水晶発振子の金電極(デバイス)上の物質の吸脱着による発振子の振動数変化から、ngレベルで吸脱着質量を検出できる技術である。また、金の超微粒子(nmレベル)表面を機能化させて、その上に生理活性物質を固定して、生理活性物質間の特異認識反応を行わせることによって、金微粒子の沈降、配列から生体関連物質の検出ができる。
上記した技術においては、いずれの場合も、生理活性物質を固定化する表面が重要である。以下、当技術分野で最も使われている表面プラズモン共鳴(SPR)を例として、説明する。
一般に使用される測定チップは、透明基板(例えば、ガラス)、蒸着された金属膜、及びその上に生理活性物質を固定化できる官能基を有する薄膜からなり、その官能基を介し、金属表面に生理活性物質を固定化する。該生理活性物質と検体物質間の特異的な結合反応を測定することによって、生体分子間の相互作用を分析する。
生理活性物質を固定化できる官能基を有する薄膜としては、金属と結合する官能基、鎖長の原子数が10以上のリンカー、及び生理活性物質と結合できる官能基を有する化合物を用いて、生理活性物質を固定化した測定チップが報告されている(特許文献1を参照)。また、金属膜と、該金属膜の上に形成されたプラズマ重合膜からなる測定チップが報告されている(特許文献2を参照)。
一方、生理活性物質と検体物質間の特異的な結合反応を測定する場合、検体物質は必ずしも単一成分ではなく、例えば細胞抽出液中などのような不均一系で検体物質を測定することも要求される。その場合、種々の蛋白質、脂質などの夾雑物が検出表面に非特異的な吸着を起こすと、測定検出感度が著しく低下する。上記の検出表面では、非特異吸着が極めて起こりやすく問題があった。
この問題を解決するためにいくつかの方法が検討されている。例えば、金属表面にリンカーを介し、親水性のハイドロゲルを固定化することで、物理吸着を抑制する方法も使用されてきた(特許文献1、特許文献3及び特許文献4を参照)。しかしながら、この方法でも非特異吸着の抑制性は十分なレベルではなかった。
本発明は上記した従来技術の問題を解消することを解決すべき課題とした。即ち、本発明は、非特異吸着を抑制し、生理活性物質を固定化できるバイオセンサーを提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、基板表面に親水性高分子化合物を非共有結合により吸着させることによって親水性高分子化合物層を形成し、該親水性高分子化合物層の最表面に生理活性物質を固定化できる官能基を有するバイオセンサーによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、親水性高分子化合物が基板表面に非共有結合により吸着することにより親水性高分子化合物層が形成され、該親水性高分子化合物層の最表面に生理活性物質を固定化できる官能基を有する基板から成るバイオセンサーが提供される。
好ましくは、親水性高分子化合物層が、2種以上の親水性高分子化合物を積層して成るものである。さらに好ましくは、親水性高分子化合物層は、互いに高分子コンプレックスを形成する2種以上の親水性高分子化合物を交互に積層して成るものである。好ましくは、高分子コンプレックスはポリイオンコンプレックスである。
好ましくは、基板表面は金属あるいは金属膜から成る。さらに好ましくは、金属表面あるいは金属膜は、金、銀、銅、白金又はアルミニウムからなる群より選ばれる自由電子金属からなるものである。
好ましくは、生理活性物質を固定化することができる官能基は、−OH、−SH、−COOH、−NR1R2(式中、R1及びR2は互いに独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)、−CHO、−NR3NR1R2(式中、R1、R2及びR3は互いに独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)、−NCO、−NCS、エポキシ基、またはビニル基である。
好ましくは、本発明のバイオセンサーは非電気化学的検出に使用することができ、さらに好ましくは表面プラズモン共鳴分析に使用することができる。
本発明の別の側面によれば、基板表面に親水性高分子化合物を非共有結合により吸着させる工程を含む、本発明のバイオセンサーの製造方法が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、生理活性物質が共有結合により表面に結合している、上記バイオセンサーが提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記バイオセンサーと生理活性物質とを接触させて、該バイオセンサーの表面に該生理活性物質を共有結合により結合させる工程を含む、バイオセンサーに生理活性物質を固定化する方法が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記バイオセンサーと生理活性物質とを接触させて、該バイオセンサーの表面に該生理活性物質を共有結合により結合させる工程を含む、バイオセンサーに生理活性物質を固定化する方法が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、生理活性物質が共有結合により表面に結合している上記バイオセンサーと被験物質とを接触させる工程を含む、該生理活性物質と相互作用する物質を検出または測定する方法が提供される。
好ましくは、生理活性物質と相互作用する物質は、非電気化学的方法により検出または測定することができ、さらに好ましくは、生理活性物質と相互作用する物質を表面プラズモン共鳴分析により検出または測定することができる。
好ましくは、生理活性物質と相互作用する物質は、非電気化学的方法により検出または測定することができ、さらに好ましくは、生理活性物質と相互作用する物質を表面プラズモン共鳴分析により検出または測定することができる。
本発明により、非特異吸着を抑制したバイオセンサー用検出表面を提供することが可能になった。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明のバイオセンサーは、親水性高分子化合物が基板表面に非共有結合により吸着することにより親水性高分子化合物層が形成され、該親水性高分子化合物層の最表面に生理活性物質を固定化できる官能基を有する基板から成ることを特徴とする。
本発明のバイオセンサーは、親水性高分子化合物が基板表面に非共有結合により吸着することにより親水性高分子化合物層が形成され、該親水性高分子化合物層の最表面に生理活性物質を固定化できる官能基を有する基板から成ることを特徴とする。
本発明で言うバイオセンサーとは最も広義に解釈され、生体分子間の相互作用を電気的信号等の信号に変換して、対象となる物質を測定・検出するセンサーを意味する。通常のバイオセンサーは、検出対象とする化学物質を認識するレセプター部位と、そこに発生する物理的変化又は化学的変化を電気信号に変換するトランスデューサー部位とから構成される。生体内には、互いに親和性のある物質として、酵素/基質、酵素/補酵素、抗原/抗体、ホルモン/レセプターなどがある。バイオセンサーでは、これら互いに親和性のある物質の一方を基板に固定化して分子認識物質として用いることによって、対応させるもう一方の物質を選択的に計測するという原理を利用している。
本発明で用い親水性高分子化合物は、水溶液中に溶解または膨潤する高分子化合物である。
本発明で好ましく用いられる親水性高分子化合物としては、アルブミン、カゼインなどの蛋白質、寒天、アルギン酸ナトリウム、デンプン誘導体などの糖誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのセルロース化合物、キチン、キトサンなどの多糖類、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸などの合成親水性高分子などが挙げられる。
上記した親水性高分子化合物は、単独で用いて単一の親水性高分子化合物を形成してもよいし、2種以上の親水性高分子化合物を順番に積層して、複数の親水性高分子化合物層を形成してもよい。2種以上の親水性高分子化合物を積層する場合には、互いに高分子コンプレックスを形成する2種以上の親水性高分子化合物を交互に積層することが好ましい。また、ここで言う高分子コンプレックスとしては、例えば、ポリイオンコンプレックスが挙げられる。親水性高分子化合物は、例えば、水溶液として基板に滴下して静置することによって、基板表面に非共有結合により吸着させることができる。ここで言う非共有結合による吸着とは、共有結合によらない結合を意味し、例えば、親和力などの物理的結合を意味する。
親水性高分子化合物の基板へのコーティングは常法によって行うことができ、例えば、スピン塗布、エアナイフ塗布、バー塗布、ブレード塗布、スライド塗布、カーテン塗布、さらにはスプレー法、蒸着法、キャスト法、浸漬法等によって行うことができる。
浸漬法は、基板を親水性高分子化合物溶液に接触させた後に、前記親水性高分子化合物溶液を含まない液に接触させる方法でコーティングを行う。好ましくは、親水性高分子化合物溶液の溶媒と親水性高分子化合物を含まない液の溶媒とは、同一の溶媒である。
本発明のバイオセンサーは、金属表面又は金属膜を親水性高分子化合物でコーティングしたものであることが好ましい。金属表面あるいは金属膜を構成する金属としては、例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、表面プラズモン共鳴が生じ得るようなものであれば特に限定されない。好ましくは金、銀、銅、アルミニウム、白金等の自由電子金属が挙げられ、特に金が好ましい。それらの金属は単独又は組み合わせて使用することができる。また、上記基板への付着性を考慮して、基板と金属からなる層との間にクロム等からなる介在層を設けてもよい。
金属膜の膜厚は任意であるが、例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、1オングストローム以上5000オングストローム以下であるのが好ましく、特に10オングストローム以上2000オングストローム以下であるのが好ましい。5000オングストロームを超えると、媒質の表面プラズモン現象を十分検出することができない。また、クロム等からなる介在層を設ける場合、その介在層の厚さは、1オングストローム以上、100オングストローム以下であるのが好ましい。
金属膜の形成は常法によって行えばよく、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、電気めっき法、無電解めっき法等によって行うことができる。
金属膜は好ましくは基板上に配置されている。ここで、「基板上に配置される」とは、金属膜が基板上に直接接触するように配置されている場合のほか、金属膜が基板に直接接触することなく、他の層を介して配置されている場合をも含む意味である。本発明で使用することができる基板としては例えば、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用を考えた場合、一般的にはBK7等の光学ガラス、あるいは合成樹脂、具体的にはポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマーなどのレーザー光に対して透明な材料からなるものが使用できる。このような基板は、好ましくは、偏光に対して異方性を示さずかつ加工性の優れた材料が望ましい。
本発明の親水性高分子化合物でコーティングした基板から成るバイオセンサにおける最表面の生理活性物質を固定化することができる官能基は親水性高分子が元々含有していても良いし、成膜後導入しても良い。ここで言う「基板の最表面」とは、「基板から最も遠い側」という意味であり、さらに具体的には、「基板上にコーティングした親水性高分子化合物中の基板から最も遠い側」という意味である。
好ましい官能基としては−OH、−SH、−COOH、−NR1R2(式中、R1及びR2は互いに独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)、−CHO、−NR3NR1R2(式中、R1、R2及びR3は互いに独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)、−NCO、−NCS、エポキシ基、またはビニル基などが挙げられる。ここで、低級アルキル基における炭素数は特に限定されないが、一般的にはC1〜C10程度であり、好ましくはC1〜C6である。
上記のようにして得られたバイオセンサー用表面において、上記の官能基を介して生理活性物質を共有結合させることによって、金属表面又は金属膜に生理活性物質を固定化することができる。
本発明のバイオセンサー用表面上に固定される生理活性物質としては、測定対象物と相互作用するものであれば特に限定されず、例えば免疫蛋白質、酵素、微生物、核酸、低分子有機化合物、非免疫蛋白質、免疫グロブリン結合性蛋白質、糖結合性蛋白質、糖を認識する糖鎖、脂肪酸もしくは脂肪酸エステル、あるいはリガンド結合能を有するポリペプチドもしくはオリゴペプチドなどが挙げられる。
免疫蛋白質としては、測定対象物を抗原とする抗体やハプテンなどを例示することができる。抗体としては、種々の免疫グロブリン、即ちIgG、IgM、IgA、IgE、IgDを使用することができる。具体的には、測定対象物がヒト血清アルブミンであれば、抗体として抗ヒト血清アルブミン抗体を使用することができる。また、農薬、殺虫剤、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、抗生物質、麻薬、コカイン、ヘロイン、クラック等を抗原とする場合には、例えば抗アトラジン抗体、抗カナマイシン抗体、抗メタンフェタミン抗体、あるいは病原性大腸菌の中でO抗原26、86、55、111 、157 などに対する抗体等を使用することができる。
酵素としては、測定対象物又は測定対象物から代謝される物質に対して活性を示すものであれば、特に限定されることなく、種々の酵素、例えば酸化還元酵素、加水分解酵素、異性化酵素、脱離酵素、合成酵素等を使用することができる。具体的には、測定対象物がグルコースであれば、グルコースオキシダーゼを、測定対象物がコレステロールであれば、コレステロールオキシダーゼを使用することができる。また、農薬、殺虫剤、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、抗生物質、麻薬、コカイン、ヘロイン、クラック等を測定対象物とする場合には、それらから代謝される物質と特異的反応を示す、例えばアセチルコリンエステラーゼ、カテコールアミンエステラーゼ、ノルアドレナリンエステラーゼ、ドーパミンエステラーゼ等の酵素を使用することができる。
微生物としては、特に限定されることなく、大腸菌をはじめとする種々の微生物を使用することができる。
核酸としては、測定の対象とする核酸と相補的にハイブリダイズするものを使用することができる。核酸は、DNA(cDNAを含む)、RNAのいずれも使用できる。DNAの種類は特に限定されず、天然由来のDNA、遺伝子組換え技術により調製した組換えDNA、又は化学合成DNAの何れでもよい。
低分子有機化合物としては通常の有機化学合成の方法で合成することができる任意の化合物が挙げられる。
核酸としては、測定の対象とする核酸と相補的にハイブリダイズするものを使用することができる。核酸は、DNA(cDNAを含む)、RNAのいずれも使用できる。DNAの種類は特に限定されず、天然由来のDNA、遺伝子組換え技術により調製した組換えDNA、又は化学合成DNAの何れでもよい。
低分子有機化合物としては通常の有機化学合成の方法で合成することができる任意の化合物が挙げられる。
非免疫蛋白質としては、特に限定されることなく、例えばアビジン(ストレプトアビジン)、ビオチン又はレセプターなどを使用できる。
免疫グロブリン結合性蛋白質としては、例えばプロテインAあるいはプロテインG、リウマチ因子(RF)等を使用することができる。
糖結合性蛋白質としては、レクチン等が挙げられる。
脂肪酸あるいは脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ステアリン酸エチル、アラキジン酸エチル、ベヘン酸エチル等が挙げられる。
免疫グロブリン結合性蛋白質としては、例えばプロテインAあるいはプロテインG、リウマチ因子(RF)等を使用することができる。
糖結合性蛋白質としては、レクチン等が挙げられる。
脂肪酸あるいは脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ステアリン酸エチル、アラキジン酸エチル、ベヘン酸エチル等が挙げられる。
生理活性物質が抗体や酵素などの蛋白質又は核酸である場合、その固定化は、生理活性物質のアミノ基、チオール基等を利用し、金属表面の官能基に共有結合させることで行うことができる。
上記のようにして生理活性物質を固定化したバイオセンサーは、当該生理活性物質と相互作用する物質の検出及び/又は測定のために使用することができる。
即ち、本発明によれば、生理活性物質が固定化された本発明のバイオセンサーを用いて、これに被験物質を接触させることにより、該バイオセンサーに固定化されている生理活性物質と相互作用する物質を検出及び/又は測定する方法が提供される。
被験物質としては例えば、上記した生理活性物質と相互作用する物質を含む試料などを使用することができる。
被験物質としては例えば、上記した生理活性物質と相互作用する物質を含む試料などを使用することができる。
本発明では、バイオセンサー用表面に固定化されている生理活性物質と被験物質との相互作用を非電気化学的方法により検出及び/又は測定することが好ましい。非電気化学的方法としては、表面プラズモン共鳴(SPR)測定技術、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定技術、金のコロイド粒子から超微粒子までの機能化表面を使用した測定技術などが挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、本発明のバイオセンサーは、例えば、透明基板上に配置される金属膜を備えていることを特徴とする表面プラズモン共鳴用バイオセンサーとして用いることができる。
表面プラズモン共鳴用バイオセンサーとは、表面プラズモン共鳴バイオセンサーに使用されるバイオセンサーであって、該センサーより照射された光を透過及び反射する部分、並びに生理活性物質を固定する部分とを含む部材を言い、該センサーの本体に固着されるものであってもよく、また脱着可能なものであってもよい。
表面プラズモン共鳴の現象は、ガラス等の光学的に透明な物質と金属薄膜層との境界から反射された単色光の強度が、金属の出射側にある試料の屈折率に依存することによるものであり、従って、反射された単色光の強度を測定することにより、試料を分析することができる。
表面プラズモンが光波によって励起される現象を利用して、被測定物質の特性を分析する表面プラズモン測定装置としては、Kretschmann配置と称される系を用いるものが挙げられる(例えば特開平6−167443号公報参照)。上記の系を用いる表面プラズモン測定装置は基本的に、例えばプリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されて試料液などの被測定物質に接触させられる金属膜と、光ビームを発生させる光源と、上記光ビームを誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を測定して表面プラズモン共鳴の状態、つまり全反射減衰の状態を検出する光検出手段とを備えてなるものである。
なお上述のように種々の入射角を得るためには、比較的細い光ビームを入射角を変化させて上記界面に入射させてもよいし、あるいは光ビームに種々の角度で入射する成分が含まれるように、比較的太い光ビームを上記界面に収束光状態であるいは発散光状態で入射させてもよい。前者の場合は、入射した光ビームの入射角の変化に従って、反射角が変化する光ビームを、上記反射角の変化に同期して移動する小さな光検出器によって検出したり、反射角の変化方向に沿って延びるエリアセンサによって検出することができる。一方後者の場合は、種々の反射角で反射した各光ビームを全て受光できる方向に延びるエリアセンサによって検出することができる。
上記構成の表面プラズモン測定装置において、光ビームを金属膜に対して全反射角以上の特定入射角で入射させると、該金属膜に接している被測定物質中に電界分布をもつエバネッセント波が生じ、このエバネッセント波によって金属膜と被測定物質との界面に表面プラズモンが励起される。エバネッセント光の波数ベクトルが表面プラズモンの波数と等しくて波数整合が成立しているとき、両者は共鳴状態となり、光のエネルギーが表面プラズモンに移行するので、誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射した光の強度が鋭く低下する。この光強度の低下は、一般に上記光検出手段により暗線として検出される。なお上記の共鳴は、入射ビームがp偏光のときにだけ生じる。したがって、光ビームがp偏光で入射するように予め設定しておく必要がある。
この全反射減衰(ATR)が生じる入射角、すなわち全反射減衰角(θSP)より表面プラズモンの波数が分かると、被測定物質の誘電率が求められる。この種の表面プラズモン測定装置においては、全反射減衰角(θSP)を精度良く、しかも大きなダイナミックレンジで測定することを目的として、特開平11−326194号公報に示されるように、アレイ状の光検出手段を用いることが考えられている。この光検出手段は、複数の受光素子が所定方向に配設されてなり、前記界面において種々の反射角で全反射した光ビームの成分をそれぞれ異なる受光素子が受光する向きにして配設されたものである。
そしてその場合は、上記アレイ状の光検出手段の各受光素子が出力する光検出信号を、該受光素子の配設方向に関して微分する微分手段が設けられ、この微分手段が出力する微分値に基づいて全反射減衰角(θSP)を特定し、被測定物質の屈折率に関連する特性を求めることが多い。
また、全反射減衰(ATR)を利用する類似の測定装置として、例えば「分光研究」第47巻 第1号(1998)の第21〜23頁および第26〜27頁に記載がある漏洩モード測定装置も知られている。この漏洩モード測定装置は基本的に、例えばプリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されたクラッド層と、このクラッド層の上に形成されて、試料液に接触させられる光導波層と、光ビームを発生させる光源と、上記光ビームを上記誘電体ブロックに対して、該誘電体ブロックとクラッド層との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を測定して導波モードの励起状態、つまり全反射減衰状態を検出する光検出手段とを備えてなるものである。
上記構成の漏洩モード測定装置において、光ビームを誘電体ブロックを通してクラッド層に対して全反射角以上の入射角で入射させると、このクラッド層を透過した後に光導波層においては、ある特定の波数を有する特定入射角の光のみが導波モードで伝搬するようになる。こうして導波モードが励起されると、入射光のほとんどが光導波層に取り込まれるので、上記界面で全反射する光の強度が鋭く低下する全反射減衰が生じる。そして導波光の波数は光導波層の上の被測定物質の屈折率に依存するので、全反射減衰が生じる上記特定入射角を知ることによって、被測定物質の屈折率や、それに関連する被測定物質の特性を分析することができる。
なおこの漏洩モード測定装置においても、全反射減衰によって反射光に生じる暗線の位置を検出するために、前述したアレイ状の光検出手段を用いることができ、またそれと併せて前述の微分手段が適用されることも多い。
また、上述した表面プラズモン測定装置や漏洩モード測定装置は、創薬研究分野等において、所望のセンシング物質に結合する特定物質を見いだすランダムスクリーニングへ使用されることがあり、この場合には前記薄膜層(表面プラズモン測定装置の場合は金属膜であり、漏洩モード測定装置の場合はクラッド層および光導波層)上に上記被測定物質としてセンシング物質を固定し、該センシング物質上に種々の被検体が溶媒に溶かされた試料液を添加し、所定時間が経過する毎に前述の全反射減衰角(θSP)の角度を測定している。
試料液中の被検体が、センシング物質と結合するものであれば、この結合によりセンシング物質の屈折率が時間経過に伴って変化する。したがって、所定時間経過毎に上記全反射減衰角(θSP)を測定し、該全反射減衰角(θSP)の角度に変化が生じているか否か測定することにより、被検体とセンシング物質の結合状態を測定し、その結果に基づいて被検体がセンシング物質と結合する特定物質であるか否かを判定することができる。このような特定物質とセンシング物質との組み合わせとしては、例えば抗原と抗体、あるいは抗体と抗体が挙げられる。具体的には、ウサギ抗ヒトIgG抗体をセンシング物質として薄膜層の表面に固定し、ヒトIgG抗体を特定物質として用いることができる。
なお、被検体とセンシング物質の結合状態を測定するためには、全反射減衰(θSP)の角度そのものを必ずしも検出する必要はない。例えばセンシング物質に試料液を添加し、その後の全反射減衰角(θSP)の角度変化量を測定して、その角度変化量の大小に基づいて結合状態を測定することもできる。前述したアレイ状の光検出手段と微分手段を全反射減衰を利用した測定装置に適用する場合であれば、微分値の変化量は、全反射減衰角(θSP)の角度変化量を反映しているため、微分値の変化量に基づいて、センシング物質と被検体との結合状態を測定することができる(本出願人による特願2000−398309号参照)。このような全反射減衰を利用した測定方法および装置においては、底面に予め成された薄膜層上にセンシング物質が固定されたカップ状あるいはシャーレ状の測定チップに、溶媒と被検体からなる試料液を滴下供給して、上述した全反射減衰角(θSP)の角度変化量の測定を行っている。
さらに、ターンテーブル等に搭載された複数個の測定チップの測定を順次行うことにより、多数の試料についての測定を短時間で行うことができる全反射減衰を利用した測定装置が、特開2001−330560号公報に記載されている。
本発明のバイオセンサーを表面プラズモン共鳴分析に使用する場合、上記したような各種の表面プラズモン測定装置の一部として適用することができる。
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:親水性高分子キトサン吸着バイオセンサー用ブロックの作製
特開2001−330560号公報の図23に記載の誘電体ブロックに金膜の厚さが500オングストロームになるよう金を蒸着し、金ブロックを得た。この金ブロックをModel-208UV−オゾンクリーニングシステム(TECHNOVISION INC.)で30分処理した後、金蒸着表面上に0.1重量%キトサンと0.05重量%酢酸を溶解した水溶液を滴下し、室温で30分静置した。続いて、前記ブロックを50mLの0.05%酢酸水溶液で1分間ずつ5回浸漬することにより、ブロック表面を洗浄し、キトサン吸着ブロックを得た。
特開2001−330560号公報の図23に記載の誘電体ブロックに金膜の厚さが500オングストロームになるよう金を蒸着し、金ブロックを得た。この金ブロックをModel-208UV−オゾンクリーニングシステム(TECHNOVISION INC.)で30分処理した後、金蒸着表面上に0.1重量%キトサンと0.05重量%酢酸を溶解した水溶液を滴下し、室温で30分静置した。続いて、前記ブロックを50mLの0.05%酢酸水溶液で1分間ずつ5回浸漬することにより、ブロック表面を洗浄し、キトサン吸着ブロックを得た。
実施例2:親水性高分子積層パイオセンサー用ブロックの作製
実施例1で作製したキトサン吸着ブロックの表面上に、0.2%カルボキシメチルセルロース・ナトリウム塩(10−20cP、和光純薬製)水溶液を滴下し、室温で1時間静置した。続いて、前記ブロックを50mLの純水で1分間ずつ5回浸漬することにより、ブロック表面を洗浄し、キトサン/CMC積層ブロックを得た。
実施例1で作製したキトサン吸着ブロックの表面上に、0.2%カルボキシメチルセルロース・ナトリウム塩(10−20cP、和光純薬製)水溶液を滴下し、室温で1時間静置した。続いて、前記ブロックを50mLの純水で1分間ずつ5回浸漬することにより、ブロック表面を洗浄し、キトサン/CMC積層ブロックを得た。
比較例1:デキストラン固定化膜バイオセンサー用ブロックの作製
特開2001−330560号公報の図23に記載の誘電体ブロックに金膜の厚さが500オングストロームになるよう金を蒸着し、金ブロックを得た。この金ブロックをModel-208UV−オゾンクリーニングシステム(TECHNOVISION INC.)で30分処理した後、エタノール/水(80/20)中11-ヒドロキシ-1-ウンデカンチオールの5.0mM溶液を金属膜に接触するように添加し、25℃で18時間表面処理を行った。その後、エタノールで5回、エタノール/水混合溶媒で1回、水で5回洗浄を行った。
特開2001−330560号公報の図23に記載の誘電体ブロックに金膜の厚さが500オングストロームになるよう金を蒸着し、金ブロックを得た。この金ブロックをModel-208UV−オゾンクリーニングシステム(TECHNOVISION INC.)で30分処理した後、エタノール/水(80/20)中11-ヒドロキシ-1-ウンデカンチオールの5.0mM溶液を金属膜に接触するように添加し、25℃で18時間表面処理を行った。その後、エタノールで5回、エタノール/水混合溶媒で1回、水で5回洗浄を行った。
次に、11-ヒドロキシ-1-ウンデカンチオールで被覆した表面を10重量%のエピクロロヒドリン溶液(溶媒:0.4M水酸化ナトリウム及びジエチレングリコールジメチルエーテルの1:1混合溶液)に接触させ、25℃の振盪インキュベーター中で4時間反応を進行させた。表面をエタノールで2回、水で5回洗浄した。
次に、25重量%のデキストラン(T500,Pharmacia)水溶液40.5mlに4.5mlの1M水酸化ナトリウムを添加し、その溶液をエピクロロヒドリン処理表面上に接触させた。次に振盪インキュベーター中で25℃で20時間インキュベートした。表面を50℃の水で10回洗浄した。続いて、ブロモ酢酸3.5gを27gの2M水酸化ナトリウム溶液に溶解した混合物を上記デキストラン処理表面に接触させて、28℃の振盪インキュベーターで16時間インキュベートした。表面を水で洗浄し、その後上述の手順を1回繰り返した。このサンプルをデキストラン固定化ブロックと呼ぶ。
比較例2:SAM表面バイオセンサー用ブロックの作製
金ブロックをModel-208UV−オゾンクリーニングシステム(TECHNOVISION INC.)で30分処理した後、1mMの7−カルボキシ−1−ヘプタンチオール(同仁化学)のエタノール溶液に浸して、25℃で18時間表面処理を行った。その後、40℃でエタノール5回、エタノール/水混合溶媒で1回、水で5回洗浄した。このサンプルをSAM表面ブロックと呼ぶ。
金ブロックをModel-208UV−オゾンクリーニングシステム(TECHNOVISION INC.)で30分処理した後、1mMの7−カルボキシ−1−ヘプタンチオール(同仁化学)のエタノール溶液に浸して、25℃で18時間表面処理を行った。その後、40℃でエタノール5回、エタノール/水混合溶媒で1回、水で5回洗浄した。このサンプルをSAM表面ブロックと呼ぶ。
試験例1:非特異吸着防止性能の評価
バイオセンサー表面に対する非特異的な蛋白質の吸着はノイズの原因となるため、極力少ないほうが好ましい。実施例1及び2、比較例1及び2で作製した各ブロックを用いて、IL8の非特異吸着性を測定した。
バイオセンサー表面に対する非特異的な蛋白質の吸着はノイズの原因となるため、極力少ないほうが好ましい。実施例1及び2、比較例1及び2で作製した各ブロックを用いて、IL8の非特異吸着性を測定した。
実施例1及び2、比較例1及び2で作製した各々のブロックを特開2001−330560号公報の図22に記載の装置(以下、本発明の表面プラズモン共鳴装置と呼ぶ)に設置した。HBS−Nバッファー(ビアコア社製)をブロックに添加し20分間静置後、IL8溶液(1mg/ml、HBS−Nバッファー)をブロックに添加し10分間静置した。なお、HBS-Nバッファーの組成は、HEPES(N-2-Hydroxyethylpiperazine-N'-2-ethanesulfonicAcid)0.01mol/l(pH7.4)、NaCl0.15mol/lである。その後、HBS−Nバッファーで洗浄し、3分後の共鳴シグナル(RU値)変化量をIL8の非特異吸着量とした。測定結果を表1に示した。
表1の結果から、本発明のブロックを用いたバイオセンサーは、蛋白質の非特異吸着が非常に少ないことが表面プラズモン共鳴で確認できた。本発明のバイオセンサーは、非特異吸着の極めて少ない表面を提供することができることが実証された。
Claims (15)
- 親水性高分子化合物が基板表面に非共有結合により吸着することにより親水性高分子化合物層が形成され、該親水性高分子化合物層の最表面に生理活性物質を固定化できる官能基を有する基板から成るバイオセンサー。
- 親水性高分子化合物層が、2種以上の親水性高分子化合物を積層して成るものである、請求項1に記載のバイオセンサー。
- 親水性高分子化合物層が、互いに高分子コンプレックスを形成する2種以上の親水性高分子化合物を交互に積層して成るものである、請求項2に記載のバイオセンサー。
- 高分子コンプレックスがポリイオンコンプレックスである、請求項3に記載のバイセンサー。
- 基板表面が金属あるいは金属膜から成る、請求項1から請求項4の何れかに記載のバイオセンサー。
- 金属表面あるいは金属膜が、金、銀、銅、白金又はアルミニウムからなる群より選ばれる自由電子金属からなるものである、請求項5に記載のバイオセンサー。
- 生理活性物質を固定化することができる官能基が、−OH、−SH、−COOH、−NR1R2(式中、R1及びR2は互いに独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)、−CHO、−NR3NR1R2(式中、R1、R2及びR3は互いに独立に水素原子又は低級アルキル基を示す)、−NCO、−NCS、エポキシ基、またはビニル基である、請求項1から6の何れかに記載のバイオセンサー。
- 非電気化学的検出に使用される、請求項1から7の何れかに記載のバイオセンサー。
- 表面プラズモン共鳴分析に使用される、請求項1から8の何れかに記載のバイオセンサー。
- 基板表面に親水性高分子化合物を非共有結合により吸着させる工程を含む、請求項1から9の何れかに記載のバイオセンサーの製造方法。
- 生理活性物質が共有結合により表面に結合している、請求項1から9の何れかに記載のバイオセンサー。
- 請求項1から9の何れかに記載のバイオセンサーと生理活性物質とを接触させて、該バイオセンサーの表面に該生理活性物質を共有結合により結合させる工程を含む、バイオセンサーに生理活性物質を固定化する方法。
- 生理活性物質が共有結合により表面に結合している請求項1から9の何れかに記載のバイオセンサーと被験物質とを接触させる工程を含む、該生理活性物質と相互作用する物質を検出または測定する方法。
- 生理活性物質と相互作用する物質を非電気化学的方法により検出または測定する、請求項13に記載の方法。
- 生理活性物質と相互作用する物質を表面プラズモン共鳴分析により検出または測定する、請求項13又は14に記載の方法。
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WO2008023490A1 (fr) * | 2006-08-21 | 2008-02-28 | National Institute Of Advanced Industrial Science And Technology | Détecteur de mode de guide d'ondes optiques doté de pores |
JP2010197181A (ja) * | 2009-02-25 | 2010-09-09 | Toyota Central R&D Labs Inc | ガスセンサ |
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2004
- 2004-09-30 JP JP2004285860A patent/JP2006098263A/ja active Pending
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