JP2011106928A - 水素吸着検知センサ及び水素吸着検知装置 - Google Patents

水素吸着検知センサ及び水素吸着検知装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2011106928A
JP2011106928A JP2009261316A JP2009261316A JP2011106928A JP 2011106928 A JP2011106928 A JP 2011106928A JP 2009261316 A JP2009261316 A JP 2009261316A JP 2009261316 A JP2009261316 A JP 2009261316A JP 2011106928 A JP2011106928 A JP 2011106928A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
thin film
film layer
hydrogen
hydrogen adsorption
light
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2009261316A
Other languages
English (en)
Inventor
Akira Baba
暁 馬場
Yosuke Sano
洋介 佐野
Kazunari Shinpo
一成 新保
Keizo Kato
景三 加藤
Sodan Kaneko
双男 金子
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Niigata University NUC
Original Assignee
Niigata University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Niigata University NUC filed Critical Niigata University NUC
Priority to JP2009261316A priority Critical patent/JP2011106928A/ja
Publication of JP2011106928A publication Critical patent/JP2011106928A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

【課題】コンパクトで、かつ、設計・測定の自由度の高い水素吸着検知センサ及び水素吸着検知装置を提供する。
【解決手段】水素吸着検知センサ1は、光が入射及び反射する受光表面2aを有した基板2と、受光表面2a上に設けられたパラジウム薄膜層4と、を少なくとも備える。パラジウム薄膜層4又は基板2はグレーティングを構成し、パラジウム薄膜層4に水素分子が吸着する。また、グレーティングは平行に並んだ多数の矩形溝によって形成されることが好ましい。グレーティングのピッチは1μm〜2μmであることが好ましい。パラジウム薄膜層4の層厚さは1〜20nmであることが好ましい。パラジウム薄膜層4と基板2との間には少なくとも一つの内側薄膜層3をさらに備え、内側薄膜層3は金、銀、銅、又はアルミニウムを含むことが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、水素吸着を検知する水素吸着検知センサに関し、より具体的には、光の波長または光の入射角度を変化させることにより生じる表面プラズモン共鳴現象を利用した水素吸着検知センサに関するものである。
近年、生化学、分析化学等の分野において、極めて微量の物質の物性を測定し、物質を特定する技術開発がさかんに成されてきているが、その中でも表面プラズモン共鳴現象を利用して、屈折率あるいは誘電率等の物性を測定し、その結果、物質の濃度または物質を識別する表面プラズモン共鳴センサが注目されている。例えば、特許文献1に開示されるように、光導波路上に金属薄膜を堆積し、導波光により金属薄膜上に表面プラズモンを励起すると導波光が減衰することを用い、さらに被測定物質の吸着に伴い表面プラズモン励起条件が変化することを用い、出射した光を測定することで物質吸着を検知する方法が知られている。
特に、被測定物質が水素である従来の水素吸着検知センサとして、非特許文献1に開示されるように、銀Ag薄膜とパラジウムPd薄膜とを設けた面を有するプリズムに対して薄膜設置面に水素分子を導入し、プリズムに全反射角以上の入射角度で光を入射させ、全反射した光の反射率を検出して屈折率あるいは誘電率等を求めるセンサが知られている。そして、水素分子がパラジウム薄膜表面へ吸着すると水素化パラジウム(PdHx)に変化し、水素分子が該薄膜表面から離脱するとパラジウムに回復するため、プリズムから出射された光の反射率の値が変化し、ひいては水素分子吸着の判定、吸着量の特定が可能となるものである。
非特許文献1を含めた従来の水素吸着検知センサは、一般に全反射減衰(ATR)法を利用した検知センサに分類される。光を全反射させる表面にはエバネッセント波が発生している。これを利用した表面プラズモンの励起方法としては、クレッチマン(Kretschmann)配置とオットー(Otto)配置の2つが有名であり、非特許文献1ではクレッチマン配置のプリズム構成となっている。
しかしながら、従来の水素吸着検知センサは上述の通りATR法を利用しているため、表面プラズモンの特性、例えば局在したエネルギー増大、を光デバイスに利用する場合、全反射表面を有するプリズムの存在により、センサの小型化が困難となる問題があった。
また、全反射型に必須のプリズムの存在は、光学系の配置を制限すること多く、水素吸着検知センサの設計自由度を制限することにもなる。
加えて、水素自動車や水素ステーション等においては、水素の有無の判定のみならず、ガス中の水素量の定量的に検知することが望まれている。特に高濃度の水素を含んだガスの水素量を定量的に検知可能な水素吸着センサは未だに存在していない。
特開2001−108612号公報
B. Chadwick, M. Gal,Applied Surface Science 68 (1993) 135-138
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、コンパクトで、かつ、時間応答が良好な水素吸着検知センサ及び水素吸着検知装置を提供することを目的とする。
また、本発明は設計自由度が改善された水素吸着検知センサを提供することを目的とする。
本願発明者は、表面プラズモン励起手法の一つとしてグレーティング結合法(grating coupling method)が存在し、生化学分野等のバイオセンサ等に利用されていることに着目し、このグレーティング結合法を水素吸着検知センサに応用し、グレーティング構造を適切な構成・寸法に設定すれば、感度良く水素吸着の判定及び吸着量の検知ができるとともに、ATR法が有する上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
光が入射及び反射する受光表面を有した基板と、
前記受光表面上に設けられ、かつ、パラジウムを含んだ薄膜層と、
を備え、
前記基板は金、銀、銅、又はアルミニウムを含み、
前記パラジウム薄膜層又は/及び前記基板がグレーティングを構成し、かつ、
前記パラジウム薄膜層に水素分子が吸着することを特徴とする水素吸着検知センサに関するものである。
なお、基板を貴金属製にすることで、基板自体が光を適切に遮断・反射する役割を果たすため、主にパラジウム薄膜層と基板とだけで構成された非常に簡素な水素吸着検知センサを実現することができる。
また、本発明は、
光が入射及び反射する受光表面を有した基板と、
前記受光表面上に設けられ、かつ、パラジウムを含んだ薄膜層と、
前記パラジウム薄膜層と前記基板との間に設けられた少なくとも一つの内側薄膜層と、
を備え、
前記内側薄膜層は金、銀、銅、又はアルミニウムを含み、
前記パラジウム薄膜層又は/及び前記基板がグレーティングを構成し、かつ、
前記パラジウム薄膜層に水素分子が吸着することを特徴とする水素吸着検知センサに関するものである。
上記構成によれば、基板の上に少なくとも二層の薄膜層が設けられるが、これにより、基板の材質の制限は緩和されるとともに、内側薄膜層の材質・寸法等を自由に設定することでグレーティング性能を現実の製品の様々な仕様に容易に適合させることができる。
また、本発明の水素吸着検知センサにおいては、前記グレーティングが平行に並んだ多数の矩形溝によって形成されることが好ましい。
これにより、容易に高精度のグレーティング構造を得ることが可能となるとともに、表面プラズモンの励起が一層好適となるため、センシング感度が向上する。
また、本発明の水素吸着検知センサにおいては、前記グレーティングのピッチが1μm〜2μmであることが好ましい。
これにより、測定角度範囲にいくつかの表面プラズモンを励起することが可能となる。従って、センシングを行なうための角度が低角度から高角度に亘って選択をすることができ、様々な測定系に対応することが可能となる。
また、本発明の水素吸着検知センサにおいては、前記グレーティングの深さが10nm〜200nmであることが好ましい。
これにより、表面プラズモンの励起が一層好適となるため、センシング感度が向上する。
また、本発明の水素吸着検知センサにおいては、前記パラジウム薄膜層の層厚さが1〜20nmであることが好ましい。
これにより、パラジウム薄膜層/貴金属製内側薄膜層(又は基板)界面での表面プラズモンの励起強度と水素吸着時のパラジウム薄膜層の誘電率変化による表面プラズモン励起シフト量が最適となるため、センシング感度が向上する。
また、本発明の水素吸着検知センサにおいては、前記内側薄膜層の層厚さが100nm以上であることが好ましい。
これにより、光が好適に反射し、水素吸着検知にあたって所望の表面プラズモン励起を実現することができる。
また、本発明は、前記のような水素吸着検知センサと、
前記光を前記受光表面に向けて入射させる光照射器と、
前記受光表面から反射した前記光の反射率を検出する反射光検出器と、を備え、
前記受光表面への前記光の入射角度は複数の励起角度範囲から選択されることを特徴とする水素吸着検知装置に関するものである。
これにより、測定角度範囲に幾つかの表面プラズモンの励起が可能となる。従って、センシングを行なうための入射角度が低角度から高角度に亘って複数選択をすることができ、様々な測定系に対応することが可能な水素吸着検知装置が実現できる。
本発明の水素吸着検知センサによれば、従来の全反射減衰(ATR)法を利用したSPR水素吸着検知センサに比べて、プリズムが不要なことからセンサ部のコンパクト化が図れ、ひいてはセンサを含む装置全体の小型化も図ることができる。
加えて、本発明の水素吸着検知センサによれば、設計自由度も大幅に改善される。例えば、プラスチックなど柔軟な材料を基板として用いることも可能となる。
本発明の水素吸着検知センサによれば、センサ表面への水素吸着有無の判定が可能となるのみならず、水素吸着量や水素濃度を定量的かつ時間応答良く測定することが可能となる。また、低濃度から高濃度までの水素を含んだガスに対して適用可能である。
本発明の一形態の水素吸着検知センサ及びこれを含んだ装置によれば、測定角度範囲に幾つかの表面プラズモンの励起が可能となる。従って、センシングを行なうための入射角度が低角度から高角度に亘って選択をすることができ、様々な測定系に対応することが可能な水素吸着検知装置が実現できる。
本発明の水素吸着検知センサの概略を示した図である。 グレーティングピッチとSPR励起角度との関係を示した図である。 水素濃度に対応したSPR反射率の時間変化を示した図である。(実施例1) 水素濃度に対応したSPRの入射角依存特性を示した図である。(実施例1) 水素濃度に対応したSPR反射率の時間変化を示した図である。(実施例2) 水素濃度に対応したSPRの入射角依存特性を示した図である。(実施例2) 水素濃度に対応したSPR反射率の時間変化を示した図である。(比較例1) 水素濃度に対応したSPRの入射角依存特性を示した図である。(比較例1) 各実施例及び比較例における水素濃度と反射率変化量との関係を示した図である。
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づき説明するが、本発明は、下記の具体的な実施形態に何等限定されるものではない。
本発明では、上述の通り、従来の水素吸着検知センサで利用されていたATR法を採用せずグレーティング結合法(grating coupling method)を採用するため、センサ部の小型化の障害となるプリズムを必要としない。このグレーティング結合法は、金属薄膜で覆われたグレーティング基板上に入射した光の波数にグレーティングベクトルが足し合わさることにより表面プラズモンの波数と一致して表面プラズモンを共鳴励起する方法である。
本発明の水素吸着検知装置100の一実施形態について、図1を参照しながら説明する。図1(a)に示すように、水素吸着検知装置100は、以下詳述する水素吸着検知センサ1と、この水素吸着検知センサ1に光を照射する光照射器10と、この光が水素吸着検知センサ1に入射する前にp偏光させる偏光子11と、水素吸着検知センサ1から反射した光の反射率を検出する反射光検出器12と、を備える。
水素吸着検知センサ1は、光が入射及び反射する受光表面2aを有した基板2と、受光表面2a上に設けられ、かつ、パラジウムを含んだ薄膜層4と、を少なくとも備える。このパラジウム薄膜層4又は/及び基板2は、グレーティングを構成し、かつ、パラジウム薄膜層4に水素分子が吸着することになる。ここで、「グレーティング」とは光の回折格子を意味し、例えば、平行に並んだ多数の矩形溝(図1(b)を参照)や波形溝が挙げられる。
このパラジウム薄膜層4の表面には水素分子を含んだガスが導入され、水素分子Hはパラジウム薄膜層4の表面に吸着すると、水素化パラジウム(PdHx)に変化し、水素分子Hが該薄膜層4から離脱するとパラジウムに回復する。従って、基板2を通してパラジウム薄膜層4にから出射された光の反射率の値が変化する。
また、本発明の水素吸着検知センサ1の一形態においては、基板2は金、銀、銅、又はアルミニウムを含み、パラジウム薄膜層4及び基板2がグレーティングを構成することが考えられる。つまり、貴金属製の基板2にすることで、表面プラズモンを励起することが可能となり、また、基板2自体が光を適切に遮断・反射する役割を果たすため、主にパラジウム薄膜層4と基板2とだけで構成された非常に簡素な水素吸着検知センサを実現することができる。
また、本発明の水素吸着検知センサ1の別の形態においては、図1(a)及び(b)に示すように、パラジウム薄膜層4と基板2との間には少なくとも一つの内側薄膜層3をさらに備え、内側薄膜層3は金、銀、銅、又はアルミニウムを含むことが好ましい。これにより、基板2の上に少なくとも二層の薄膜層3,4が設けられるが、これにより、基板2の材質の制限は緩和されるとともに、内側薄膜層3の材質・寸法等を自由に設定することでグレーティング性能を現実の製品の様々な仕様に容易に適合させることができる。
なお、図1では基板2の受光表面2a上に二種類の金属薄膜層3,4が堆積された水素吸着検知センサ1を示しているが、必ずしもこれに限定されず、例えば、三種類の金属薄膜層を基板2の受光表面2aに堆積させてもよい。これにより、燃料電池や水素ステーション等を構成する部品がアルミ・銅などの金属材料を含んでいた場合に、この構成部品の一部を加工することにより、この部品中に本発明の水素吸着検知センサ1を組み込むことも可能となる。
なお、これらの金属薄膜層3,4の基板2への配設方法は、真空蒸着法、スパッタリング、電気化学堆積法が挙げられる。
また、本発明の水素吸着検知センサ1においては、グレーティングのピッチが1μm〜2μmであることが好ましく、1.4〜1.8μmであることがさらに好ましい。これにより、以下に詳細に説明するように測定角度範囲内で幾つかの表面プラズモンを励起することが可能となる。
なお、上記好適なピッチ範囲は、これまで一般的にグレーティング結合法に用いられてきた格子間隔(Λ=340〜800nm)の2〜4倍程度広くなっている。ピッチが1μm未満であると、測定角度範囲内で励起される表面プラズモンは1つのみである。また、ピッチが2μmより大きいと、励起された複数の表面プラズモンが干渉し合い、測定に適した共鳴条件を満たさないことになる。
また、グレーティング結合法における表面プラズモンの分散関係は次式で与えられる。
ここで、各記号の意味は以下の通りである。
Λ:グレーティングピッチ(格子間隔),λ:入射光の波長,m:回折次数,εm(ω):ドルーデの自由電子モデルにより与えられる金属薄膜の誘電分散,ksp:表面プラズモンの波数、kpx入射光のx方向の波数ベクトル、G:グレーティングベクトル、θ:入射光の入射角度(基板と垂直な方向を0°とする)
グレーティングピッチΛを1μm以上大きくとることで、隣り合う回折次数mの間のプラズモンの励起条件を密にすることが可能であることが分かる。つまり、測定角度範囲に幾つかの表面プラズモンを励起することが可能となる。このことから、センシングを行なうための角度が低角度から高角度に渡って選択をすることができ、様々な測定系に対応することが可能となる。
これに対し、グレーティングピッチΛを1μm未満の場合(例えば、従来のグレーティングピッチ範囲はΛ=340〜800nmの場合)、同様の条件で可視光をグレーティング表面に照射した場合、回折次数m=0〜1程度(つまり1〜2つ)のモードの表面プラズモンのみしか励起することができない。
上記説明の一例として、図2にグレーティングピッチとSPR励起との関係を示す。図2(a)は、グレーティングピッチΛを1.6μm(市販のCD−Rの溝間隔と同寸法)、グレーティング深さ120nmを有した銀製矩形構造に波長633nmの光を入射角度0〜90°の範囲で入射させた時の反射率を理論計算した結果である。この図2(a)に示すように、グレーティングピッチΛが1.6μmの場合は表面プラズモン共鳴によるディップが約8°、約40°、約76°の角度で3つも現れており、低角度から高角度まで入射角度を変えて測定することが可能となり、水素吸着検知センサの設計又は測定の自由度が向上可能となる。
一方、図2(b)は、グレーティングピッチΛを320nm(0.32μm、市販のBD−Rと同寸法)でグレーティング深さ32nmの銀製矩形構造に波長633nmの光を入射角度0〜90°の範囲で入射させた時の反射率を理論計算した結果である。グレーティングピッチΛが320nmの場合は、約80°に一つディップが現れているのみであり、SPR測定つまり水素吸着検知はこの入射角度近傍のみでしか実行出来ないことが分かる。
また、本発明の水素吸着検知センサ1においては、グレーティングの深さが10nm〜200nmであることが好ましい。これにより、表面プラズモンの励起が一層好適となるため、センシング感度が向上する。なお、深さが10nm未満または200nmより大きい場合、表面プラズモンの共鳴が不十分になるために反射率のディップが顕著にはみられなくなるため、水素吸着検知感度が減少する。
また、本発明の水素吸着検知センサ1においては、パラジウム薄膜層4の層厚さが1〜20nmであることが好ましく、特に5〜10nmであることがさらに好ましい。これにより、パラジウム薄膜層4/内側薄膜層3(又は基板2)界面での表面プラズモンの励起強度と水素吸着時のパラジウム薄膜層4の誘電率変化による表面プラズモン励起シフト量が最適となるため、センシング感度が向上する。パラジウム薄膜層4の厚さが1nm未満であると、吸着水素と反応するパラジウム量が足りず水素吸着に伴うパラジウムの誘電率変化が不十分となってしまい、一方、パラジウム薄膜層4の厚さが20nmより大きいと、パラジウム層4の光吸収により表面プラズモン励起が不十分となってしまう。
また、本発明の水素吸着検知センサ1においては、内側薄膜層3の層厚さが100nm以上であることが好ましい。これにより、光が好適に反射し、水素吸着検知にあたって所望の表面プラズモン励起を実現することができる。なお、内側薄膜層3の層厚さが100nm未満であると、入射光が基板2まで到達してしまうため、表面プラズモンの共鳴励起が不十分となってしまう。
以上説明した構成の水素吸着検知センサ1に、光の供給・測定手段(例えば、図1(a)に示す光照射器10,反射光検出器12等)を設けた水素吸着検知装置100を利用すれば、受光表面2aへの光の入射角度は複数の励起角度範囲から選択することが可能になる。従って、センシングを行なうための入射角度が低角度から高角度に亘って複数選択をすることができ、様々な測定系に対応することが可能な水素吸着検知装置100が実現できる。
以下、本発明の具体的な実施例について、実験結果に基づいて説明する。
(実施例1)
実施例1の基板2には、ポリカーボネートからなり、かつ、グレーティングのピッチ及び深さがそれぞれ1.6μm及び160nmであるCD−R(Mitsui Advanced Media Inc.製)を用いた。この基板2表面に予め付着した色素を硝酸により除去した後、洗浄を行い、この基板2の表面上に層厚さ150nmの銀Ag製の内側薄膜層3と層厚さ10nmのパラジウムPd薄膜層4とを真空蒸着法により堆積した。以上のような構成の水素吸着検知センサ1を、図1(a)に示すような水素吸着検知装置100に配置した。単色光(λ=632.8nm、ヘリウムネオンレーザ)を偏光子11によってp偏光にした後、図示しないθ−2θゴニオメータ上に設置・固定された試料(つまり、水素吸着検知センサ1)に照射し、反射光はフォトダイオード(つまり、反射光検出器12)で分光を行った。さらに、パラジウム薄膜層4の外側には、アルゴンArと水素Hの混合ガスを、水素濃度を変化させながら間欠的に導入してSPR(反射率)特性を評価した。
図3に、実施例1の水素吸着検知センサ1を用いて入射角度を42.5°に固定して単色光(λ=632.8nm、ヘリウムネオンレーザ)を照射しつつ水素濃度を変化させた場合の反射率特性を示す。ここで、図3(a)は、15分毎に水素濃度を0.1〜0.5%まで変化させたときの反射率の時間変化を示し、図3(b)は、15分毎に水素濃度を0.5〜2.0%まで変化させたときの反射率の時間変化を示す。なお、図示のように、アルゴンArと水素Hの混合ガスの圧力を0.1又は0.2MPaに設定した。
図3(a)より、実施例1(Ag 150nm/Pd 10nm、つまり、Ag製内側薄膜層3の層厚さ150nm/パラジウム層4の層厚さ10nm)の水素吸着検知センサ1では水素濃度0.1〜0.5%の変化に対し反射率が機敏に反応することがわかった。これは、水素吸着によってパラジウム層4のパラジウムの一部が急峻に水素化パラジウムに反応した結果、光と干渉するパラジウムの誘電率も急峻に変化したためであると考えられる。また、水素濃度0.4%を除けば、水素濃度が増加するとともに反射率もほぼ線形的に増加していることがわかった。
一方、図3(b)では、水素濃度を0.5%から0%に戻した際の反射率はほとんど変化が見られず、基準となる0%において反射率が安定しなかったが、図3(a)と同様に、水素濃度の変化に対し反射率が機敏に反応することがわかった。これにより、水素濃度が0.5〜2.0%の高濃度域においてもが水素濃度が増加する程、反射率の変化量も大きくなることがわかった。
図4(a)に、実施例1の水素吸着検知センサに対して、水素濃度を0%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、及び0.5%のいずれかに設定して混合(Ar/H)ガスを流しつつ、単色光(λ=632.8nm、ヘリウムネオンレーザ)を入射角度35〜55°まで変化させて照射したときの反射率測定結果を示す。なお、図4(b)は、図4(a)中の四角枠で囲んだ範囲を拡大して示した図である。この図4(a)及び(b)に示すように、45°付近にディップがあることがわかる。また、図3で示した反射率の時間応答に現われた傾向と同様に、水素濃度が増加するにつれて反射率の変化量が増大していることわかる。
(実施例2)
実施例2の水素吸着検知センサ1では、グレーティング基板2表面上に銀Agからなる薄膜層3とパラジウムPd薄膜層4とを堆積させたが、Pd薄膜層4の層厚さを5nmとした。この点以外は実施例1と同様であり、その他のセンサ構成の説明は省略する。
図5に、実施例2の水素吸着検知センサを用いて入射角度を42.5°に固定して単色光(λ=632.8nm、ヘリウムネオンレーザ)を照射しつつ水素濃度を0.1〜0.5%まで変化させてArとHの混合ガスを間欠的(15分毎)に流した場合の反射率の時間変化を示す。なお、図示のように、アルゴンArと水素Hの混合ガスの圧力を0.1MPaに設定した。図5に示すように、反射率は水素ガスの導入に伴って機敏に大きく変化するとともに、反射率の振幅も水素濃度が増加するにつれて大きく変化した。
図6に、実施例2の水素吸着検知センサ1に対して、水素濃度を0%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、及び0.5%のいずれかに設定して混合(Ar/H)ガスを流しつつ、単色光(λ=632.8nm、ヘリウムネオンレーザ)を入射角度35〜55°まで変化させて照射したときの反射率測定結果を示す。なお、図6(b)は、図6(a)中の四角枠で囲んだ範囲を拡大して示した図である。この図6(a)及び(b)から、44°付近にディップがあることがわかり、濃度の増加に伴ってディップが右上にシフトしていることがわかる。これは、水素吸着によるパラジウムの誘電率変化を意味する。また、測定角度範囲においては、水素濃度の増加に伴った反射率の増大が確認された。
(比較例1)
比較例1の水素吸着検知センサでは、グレーティング基板2表面上にパラジウムPd薄膜層4を堆積させなかった(つまり、層厚さ150nmの銀Ag製薄膜層3のみを堆積させた)こと以外は実施例1と同様であり、その他のセンサ構成の説明は省略する。
図7に、比較例1の水素吸着検知センサを用いて入射角度を44.5°に固定して単色光(λ=632.8nm、ヘリウムネオンレーザ)を照射しつつ水素濃度を0.1〜0.5%まで変化させてArとHの混合ガスを間欠的(15分毎)に流した場合の反射率の時間変化を示す。図7に示すように、水素濃度を変化させることで反射率が変化することが確認されたが、その変化量は実施例1に比べ僅か(10分の1程度)であった。
図8に、比較例1の水素吸着検知センサに対して、水素濃度を0%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、及び0.5%のいずれかに設定して混合(Ar/H)ガスを流しつつ、単色光(λ=632.8nm、ヘリウムネオンレーザ)を入射角度35〜55°まで変化させて照射したときの反射率測定結果を示す。なお、図8(b)は、図8(a)中の四角枠で囲んだ範囲を拡大して示した図である。この図8(a)及び(b)においても、図7の結果と同様に、水素濃度を増加させても反射率の顕著な変化は確認できなった。
図9は、実施例1,2及び比較例1における反射率の変化量を示した図である。図9(a)は、上述した図3(a)、図5(a)、及び図7の反射率の時間応答の各結果を比較するために、各場合において水素濃度が0%のときの反射率を基準に算出した反射率変化量の時間応答を示したグラフである。図9(b)も同様に、実施例1,2及び比較例1における反射率の変化量を示すものであるが、横軸に水素濃度をプロットし、縦軸に、各水素濃度に設定した時間応答において設定後900秒後(つまり丁度15分後)の反射率変化量をプロットしたグラフである。これらの図から、パラジウム薄膜層4を有した実施例1,2のセンサ1で検出される反射率変化量は、比較例1のセンサに比して飛躍的に増大していること(つまり、センシング感度が大変良好であること)、及び、水素濃度が増大するに伴って反射率変化量も線形的に増大していることが確認された。
以上のように、本発明の水素吸着検知センサ及び水素吸着検知装置を実施例に基づいて説明した。上記実施例では、水素濃度が0〜2.0%の濃度範囲の実験結果を用いて本発明を説明したが、この濃度範囲に限定されるものではなく、2.0%よりも高濃度の水素ガスの吸着判定及び吸着量の測定においても本発明の水素吸着検知センサ及び水素吸着検知装置を適用可能である。
本発明の水素吸着検知センサは、燃料電池や水素自動車等に適用可能である。また、現在構想中の水素ステーション(例えば、リーク測定センサ)にも応用が見込まれ、産業上の利用可能性が高い。
1 水素吸着検知センサ
2 基板
2a 基板の受光表面
3 内側薄膜層
4 パラジウム薄膜層
10 光照射器
11 偏光子
12 反射光検出器
100 水素吸着検知装置

Claims (8)

  1. 光が入射及び反射する受光表面を有した基板と、
    前記受光表面上に設けられ、かつ、パラジウムを含んだ薄膜層と、
    を備え、
    前記基板は金、銀、銅、又はアルミニウムを含み、
    前記パラジウム薄膜層又は/及び前記基板がグレーティングを構成し、かつ、
    前記パラジウム薄膜層に水素分子が吸着することを特徴とする水素吸着検知センサ。
  2. 光が入射及び反射する受光表面を有した基板と、
    前記受光表面上に設けられ、かつ、パラジウムを含んだ薄膜層と、
    前記パラジウム薄膜層と前記基板との間に設けられた少なくとも一つの内側薄膜層と、
    を備え、
    前記内側薄膜層は金、銀、銅、又はアルミニウムを含み、
    前記パラジウム薄膜層又は/及び前記基板がグレーティングを構成し、かつ、
    前記パラジウム薄膜層に水素分子が吸着することを特徴とする水素吸着検知センサ。
  3. 前記グレーティングが平行に並んだ多数の矩形溝によって形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の水素吸着検知センサ。
  4. 前記グレーティングのピッチが1μm〜2μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水素吸着検知センサ。
  5. 前記グレーティングの深さが10nm〜200nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水素吸着検知センサ。
  6. 前記パラジウム薄膜層の層厚さが1〜20nmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水素吸着検知センサ。
  7. 前記内側薄膜層の層厚さが100nm以上であることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の水素吸着検知センサ。
  8. 請求項4〜8のいずれかに記載の水素吸着検知センサと、
    前記光を前記受光表面に向けて入射させる光照射器と、
    前記受光表面から反射した前記光の反射率を検出する反射光検出器と、
    を備え、
    前記受光表面への前記光の入射角度は複数の励起角度範囲から選択されることを特徴とする水素吸着検知装置。
JP2009261316A 2009-11-16 2009-11-16 水素吸着検知センサ及び水素吸着検知装置 Pending JP2011106928A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009261316A JP2011106928A (ja) 2009-11-16 2009-11-16 水素吸着検知センサ及び水素吸着検知装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009261316A JP2011106928A (ja) 2009-11-16 2009-11-16 水素吸着検知センサ及び水素吸着検知装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2011106928A true JP2011106928A (ja) 2011-06-02

Family

ID=44230576

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009261316A Pending JP2011106928A (ja) 2009-11-16 2009-11-16 水素吸着検知センサ及び水素吸着検知装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2011106928A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015166861A (ja) * 2014-02-12 2015-09-24 国立大学法人三重大学 光学装置の製造方法及び光学装置
CN108169185A (zh) * 2017-12-20 2018-06-15 中国科学院微电子研究所 一种光学氢气传感器及其制备方法和应用系统

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06501546A (ja) * 1990-07-04 1994-02-17 バルション テクニリネン ツツキムスケスクス 表面プラズモン共鳴測定を行うための方法およびその測定において使用されるセンサ
JP2001516020A (ja) * 1997-08-20 2001-09-25 イメイション・コーポレイション 保護誘電層で被覆された格子を有する回折異常センサ
JP2002267669A (ja) * 2001-03-14 2002-09-18 Techno Network Shikoku Co Ltd 遺伝子解析方法とマイクロアレイ
JP2003121350A (ja) * 2001-08-07 2003-04-23 Mitsubishi Chemicals Corp 表面プラズモン共鳴センサチップ、並びにそれを用いた試料の分析方法及び分析装置
JP2005017155A (ja) * 2003-06-27 2005-01-20 Toyobo Co Ltd 金属基板上のアレイの作製方法
JP2006308511A (ja) * 2005-05-02 2006-11-09 Canon Inc 化学分析装置及びその分析方法

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06501546A (ja) * 1990-07-04 1994-02-17 バルション テクニリネン ツツキムスケスクス 表面プラズモン共鳴測定を行うための方法およびその測定において使用されるセンサ
JP2001516020A (ja) * 1997-08-20 2001-09-25 イメイション・コーポレイション 保護誘電層で被覆された格子を有する回折異常センサ
JP2002267669A (ja) * 2001-03-14 2002-09-18 Techno Network Shikoku Co Ltd 遺伝子解析方法とマイクロアレイ
JP2003121350A (ja) * 2001-08-07 2003-04-23 Mitsubishi Chemicals Corp 表面プラズモン共鳴センサチップ、並びにそれを用いた試料の分析方法及び分析装置
JP2005017155A (ja) * 2003-06-27 2005-01-20 Toyobo Co Ltd 金属基板上のアレイの作製方法
JP2006308511A (ja) * 2005-05-02 2006-11-09 Canon Inc 化学分析装置及びその分析方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015166861A (ja) * 2014-02-12 2015-09-24 国立大学法人三重大学 光学装置の製造方法及び光学装置
CN108169185A (zh) * 2017-12-20 2018-06-15 中国科学院微电子研究所 一种光学氢气传感器及其制备方法和应用系统

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Liu et al. A plasmonic sensor array with ultrahigh figures of merit and resonance linewidths down to 3 nm
Swiontek et al. Optical sensing of analytes in aqueous solutions with a multiple surface-plasmon-polariton-wave platform
JP4911606B2 (ja) 全反射減衰型光学プローブおよびそれを用いた水溶液分光測定装置
Szeghalmi et al. Theoretical and experimental analysis of the sensitivity of guided mode resonance sensors
JPWO2005078415A1 (ja) 表面プラズモン共鳴センサー
US8629983B2 (en) Assembly with absorbing sensor layer
Mitsushio et al. Sensor properties and surface characterization of aluminum-deposited SPR optical fibers
KR20050084016A (ko) 전자기장 분포 발생 방법
US20110205543A1 (en) Gas Sensor, Method for Optically Measuring the Presence of a Gas Using the Gas Sensor, and Gas Sensing System
Nyamekye et al. Directional Raman scattering spectra of metal–sulfur bonds at smooth gold and silver substrates
EP2372343A1 (en) Gas sensor, method for optically measuring the presence of a gas using the gas sensor and gas sensing system
Maurya et al. Sensitivity enhancement of SPR based refractive index sensor in VIS-NIR region by using ZnS and PVP
Zhang et al. Surface plasmon resonance gas sensor with a nanoporous gold film
US10190981B2 (en) Multimode spectroscopy apparatuses and methods
Nyamekye et al. Experimental analysis of waveguide-coupled surface-plasmon-polariton cone properties
JP2013096939A (ja) 光デバイス及び検出装置
Cennamo et al. Green LSPR sensors based on thin bacterial cellulose waveguides for disposable biosensor implementation
Canpean et al. Multifunctional plasmonic sensors on low-cost subwavelength metallic nanoholes arrays
US20110052447A1 (en) Detection System for Detecting and Measuring Metal Ions in an Aqueous Medium
JP2011106928A (ja) 水素吸着検知センサ及び水素吸着検知装置
Steiner et al. Surface plasmon resonance within ion implanted silver clusters
Perino et al. Development of a complete plasmonic grating-based sensor and its application for self-assembled monolayer detection
Verma et al. Surface plasmon resonance based multi-channel and multi-analyte fiber optic sensor
EP3051277A2 (en) Electric-field enhancement element, analysis device, and eletronic apparatus
JP4173746B2 (ja) 測定装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20121001

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20130531

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130612

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130806

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20140116