第1の発明は、断熱箱体に備えられた複数の貯蔵室と、圧縮機と凝縮器と減圧器と蒸発器とを順に備えて一連の冷媒流路を形成した冷凍サイクルと、前記冷凍サイクルの運転を制御する制御手段とを有し、前記圧縮機は商用電源の回転数より低い回転数を含めた複数の回転数で運転されるインバーターの電動機とし、前記制御手段によって、外気温が25℃前後で扉開閉がない場合の通常冷却時においても電動要素を商用電源の回転数より低い回転数で運転するように制御される冷蔵庫である。
これにより、圧縮機は節電運転である省エネモードに加えて、通常運転時においても商用電源の回転数より低い回転数で運転することでさらに節電を実現するように制御することで、冷蔵庫の年間使用時において80%以上となる通常冷却時と省エネモードに焦点を絞って低回転で圧縮機を回転させることで冷蔵庫実機においてに大幅な節電を図ることができ、より省エネルギーを実現した冷蔵庫を提供することができる。
第2の発明は、断熱箱体に備えられた複数の貯蔵室と、圧縮機と凝縮器と減圧器と蒸発器とを順に備えて一連の冷媒流路を形成した冷凍サイクルと、前記冷凍サイクルの運転を制御する制御手段とを有し、前記圧縮機は密閉容器内に、固定子と回転子からなる電動要素と前記電動要素によって駆動される圧縮要素とを収納し、前記圧縮要素は圧縮室と前記圧縮室内で往復動するピストンを備えた往復動型であるとともに商用電源の回転数より低い回転数を含めた複数の回転数で運転されるインバーターの電動機とし、前記制御手段は、外気温が25℃前後で扉開閉がない場合の通常冷却時においても電動要素を商用電源の回転数より低い回転数で運転するように制御することが可能となる程度まで前記圧縮室内でピストンが往復動することによって圧縮動作が行われる空間である気筒容積を大きくした圧縮機を搭載する冷蔵庫である。
これにより、本発明では圧縮機の気筒容積に着眼点を置いたものであり、圧縮機はインバーター圧縮機での省エネを図った上で、節電運転である省エネモードでの運転を行うことに加え、大きな気筒容積の圧縮機を用いることで、省エネモードでの節電運転と高負荷冷却モードでの高能力の冷却とを両立することができるものである。
よって、圧縮機は節電運転である省エネモードに加えて、通常運転時においても商用電源の回転数より低い回転数となるような気筒容積にすることでさらに節電を実現するとともに、高負荷がかかった場合には比較的大きな気筒容積でかつ電動要素を商用電源の回転数以上の回転数で運転する高負荷冷却モードとなるように制御することで高負荷冷却を強力行うことができるため、迅速に高負荷冷却モードから通常冷却モードへ復帰させることができるので、冷蔵庫の年間使用時において80%以上となる通常冷却時と省エネモードに焦点を絞って低回転で圧縮機を回転させることで冷蔵庫実機においてに大幅な節電を図ることができ、より省エネルギーを実現した冷蔵庫を提供することができる。
第3の発明は、冷蔵庫周囲の光の照度を検知する照度センサを備え、圧縮機の回転数は、商用電源の回転数よりも低い回転数Aを含んであらかじめ設定された3種類以上の回転数で運転するとともに、前記回転数Aの省エネモードで運転されている状態において前記照度センサによって規定値以上を検知した場合には、前記回転数Aよりも高回転の回転数でかつ前記回転数Aとの回転数の差が最も小さい回転数で運転する請求項1または2に記載の冷蔵庫である。
これによって、照度センサによって高い照度を検知し、すなわち冷蔵庫の使用者の活動時間であることを検知した場合には、実際に冷蔵庫の開閉によって負荷がかかる場合を想定した上で、その高負荷に対応する準備段階として、ひとまずは緩やかに回転数を上昇させることで必要以上の負荷を掛けることを防止し省エネルギーを実現するとともに、実際に扉開閉等の高負荷がかかった場合でも速やかに高い回転数で運転する高負荷モードに移行することができるので、省エネルギーを実現した上で、冷蔵庫の高負荷モードに圧縮機の信頼性を向上させた状態で対応することができ、省エネモードでの節電運転と高負荷冷却モードでの高能力の冷却とを両立することができるものである。
第4の発明は、複数の貯蔵室の合計である冷蔵庫の貯蔵室容積が550〜600Lであるとともに、圧縮機の気筒容積が11.5〜12.5ccである冷蔵庫である。
これによって、家庭用冷蔵庫の実機使用においてもより最適な気筒容積を備えた圧縮機を実現することができ、冷蔵庫の年間使用時において80%以上となる通常冷却時と省エネモードに焦点を絞って低回転で圧縮機を回転させることで冷蔵庫実機においてに大幅な節電を図ることができ、より省エネルギーを実現した冷蔵庫を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1Aは本発明の実施の形態1における冷蔵庫の正面図、図1Bは、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の断面図、図2Aは本発明の実施の形態1における冷蔵庫の操作基板の構成図、図2Bは本発明の実施の形態1における冷蔵庫の別形態の操作基板の構成図である。図3は図2AのAA´部の断面図、図4は制御ブロック図、図5Aは本発明の実施の形態1に搭載する圧縮機の断面図、図6は本発明の実施の形態1における任意の1日に対する過去参照データを示す図、図7から図9は本発明の実施の形態1における制御フローチャート、図10は本発明の実施の形態1における効果イメージ図である。
図1Aにおいて、冷蔵庫本体21である断熱箱体は、上から順に冷蔵室22、製氷室23、切換室24、冷凍室25、野菜室26がレイアウトされている。冷蔵室22の冷蔵室ドア22aの中央部付近には操作部27が配置され、操作部27の内部には操作基板27aが構成されており、操作基板27aの垂直軸延長線上でかつ上方に照度検知手段である照度センサ36が設けられている。照度センサ36は、フォトダイオードやフォトトランジスタをベース素子とした光センサを用いることで具体的に構成することができる。
また、操作基板27aには、各室の庫内温度設定や製氷や急速冷却など設定を行うための操作スイッチ37、前記操作スイッチにより設定した状態を表示する表示灯38、そして照度センサ36の検出により冷蔵庫の運転状態可変を報知するLED等を用いた報知手段39が構成させている。
そして照度センサ36の前方には冷蔵庫設置環境における光を照度検出手段で検出する
ために操作部カバーの一部を略透明化した照度センサカバー41が構成され、また、報知手段39であるLEDの前面には発光を透過するためのLEDカバー42が構成され、これらカバーは操作基板カバー43に構成されている。
さらに、ドアのレイアウトは代表的なものであって、このレイアウトに限定されるものではない。
図において、冷蔵庫21の冷蔵庫本体である断熱箱体は、主に鋼板を用いた外箱と、ABSなどの樹脂で成型された内箱と、外箱と内箱との間の空間に発泡充填される硬質発泡ウレタンなどの発泡断熱材とで構成され、周囲と断熱され、仕切り壁によって複数の貯蔵室に断熱区画されている。最上部に冷蔵室22、その冷蔵室の下部に切換室24もしくは製氷室23が横並びに設けられ、その切換室24と製氷室23の下部に冷凍室25、そして最下部に野菜室26が配置され、各貯蔵室の前面には外気と区画するためそれぞれドアが冷蔵庫本体の前面開口部に構成されている。
冷蔵室22は冷蔵保存のために凍らない温度を下限に通常1℃〜5℃とし、最下部の野菜室26は冷蔵室22と同等もしくは若干高い温度設定の2℃〜7℃としている。また、冷凍室25は冷凍温度帯に設定されており、冷凍保存のために通常−22℃〜−15℃で設定されているが、冷凍保存状態の向上のために、例えば−30℃や−25℃の低温で設定されることもある。
切換室24は、1℃〜5℃で設定される冷蔵、2℃〜7℃で設定される野菜、通常−22℃〜−15℃で設定される冷凍の温度帯以外に、冷蔵温度帯から冷凍温度帯の間で予め設定された温度帯に切り換えることができる。切換室24は製氷室23に並設された独立扉を備えた貯蔵室であり、引き出し式の扉を備えることが多い。
なお、本実施の形態では、切換室24を、冷蔵と冷凍の温度帯までを含めた貯蔵室としているが、冷蔵は冷蔵室22と野菜室26、冷凍は冷凍室25に委ねて、冷蔵と冷凍の中間の上記温度帯のみの切り換えに特化した貯蔵室としても構わない。また、特定の温度帯、例えば近年冷凍食品の需要が多くなってきたことに伴い、冷凍に固定された貯蔵室でも構わない。
製氷室23は、冷蔵室内の貯水タンク(図示せず)から送られた水で室内上部に設けられた自動製氷機(図示せず)で氷を作り、室内下部に配置した貯氷容器(図示せず)に貯蔵する。
断熱箱体の天面部は冷蔵庫の背面方向に向かって階段状に凹みを設けた形状であり、この階段状の凹部に機械室を形成して、機械室に、圧縮機28、水分除去を行うドライヤ(図示せず)等の冷凍サイクルの高圧側構成部品が収容されている。すなわち、圧縮機28を配設する機械室は、冷蔵室22内の最上部の後方領域に食い込んで形成されることになる。
なお、本実施の形態における、以下に述べる発明の要部に関する事項は、従来一般的であった断熱箱体の最下部の貯蔵室後方領域に機械室を設けて圧縮機28を配置するタイプの冷蔵庫21に適用しても構わない。
冷凍室25の背面には冷気を生成する冷却室29が設けられ、風路と区画されており、その間には、断熱性を有する各室への冷気の搬送風路と、各貯蔵室と断熱区画するために構成された奥面仕切り壁が構成されている。また、冷凍室吐出風路と冷却室29とを隔離するための仕切り板を備えている。冷却室内には、冷却器30が配設されており、冷却器
30の上部空間には強制対流方式により冷却器で冷却した冷気を冷蔵室、切換室、製氷室、野菜室、冷凍室に送風する冷却ファン31が配置される。
また、冷却器30の下部空間には冷却時に冷却器30やその周辺に付着する霜や氷を除霜するためのガラス管製のラジアントヒータ32が設けられ、さらにその下部には除霜時に生じる除霜水を受けるためのドレンパン、その最深部から庫外に貫通したドレンチューブが構成され、その下流側の庫外に蒸発皿が構成されている。
圧縮機28は、密閉容器103内に、回転子111と、固定子112とからなる電動要素110と電動要素110によって駆動される圧縮要素113とを収納し、圧縮要素113は圧縮室134と圧縮室134内で往復動するピストン136を備えた往復動型であるとともに商用電源の回転数より低い回転数を含めた複数の回転数で運転されるインバーターの電動機である。
図において、厚さ2から4mmの圧延鋼板を深絞り成形により形成してなるすり鉢状の下容器101と逆すり鉢状の上容器102を係合し、係合部分を全周溶接接合して密閉容器103が形成され、密閉容器103の内部には、炭化水素のR600aからなる冷媒104と底部にR600aと相溶性の大きい鉱油からなる冷凍機油105が貯留されている。密閉容器103の下側には、脚106が固着されて弾性部材を介して、冷蔵庫に備えられている。
下容器101の一部を構成するターミナル115は、密閉容器103の内外で電気(図示せず)を連絡するもので、リード線を通して電動要素110に電気を供給する。
次に、圧縮要素113の詳細を以下に説明する。
シャフト130は、回転子111を圧入や焼嵌めにより固定した主軸部131と、主軸部131に対して偏芯して形成された偏芯部132を有する。シリンダブロック133は、略円筒形の圧縮室134を有するとともに、シャフト130の主軸部131を軸支する為の軸受部135を有し、電動要素110の上方に形成されている。
ピストン136は、圧縮室134に遊嵌され、連結手段137でシャフト130の偏芯部132に連結され、シャフト130の回転運動をピストン136の往復運動に変換し、ピストン136が圧縮室134の空間を拡大、縮小することで密閉容器103内の冷媒104を圧縮し、冷凍サイクルへと吐出する。
次に電動要素110の詳細を以下に説明する。
回転子111は、0.2mmから0.5mmの珪素鋼板を積み重ねた本体部と本体部に設けた永久磁石が一体に固着されている。
そして、固定子112は、0.2mmから0.5mmの珪素鋼板を積み重ねた固定子鉄心161と0.3mmから1mmの絶縁被覆を施した銅線である巻線162からなる。固定子鉄心161は、所定間隔において突極部が円環状に形成されており、突極部に巻線162が巻かれている突極集中巻型である。各巻線間は、連絡線で一本に接続されている。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
従来の冷蔵庫においては、昼夜を問わず決められた温度設定を満たす温度制御を行っていたが、夜間、冷蔵庫周囲環境の温度が低下し、熱負荷が低下、また、食品を取り出した
り、入れ替えたりするとき生じる熱負荷が極めて少なくなるので冷蔵庫の庫内温度はやや過冷気味の温度設定になる。また、従来あった光センサを使った省エネ手段も、『節電モード』などの記載のある専用ボタンにより機能を働かせなければ、省エネ効果は得られなかった。
本発明は、専用ボタンを押すことなく、つまりオート機能で省エネを図る。すなわち、冷蔵庫本体21の前面に取り付けられた照度センサ36によって、日射や室内照明機器の照射による冷蔵庫周辺の照度レベルを検知すると同時に、各貯蔵室の温度を検知し、規定温度以下に冷却されているか、又、過去の扉開閉状況を制御手段に入力し、予め決定された規定値よりも小さければ、夜間あるいは人の活動がないと判断し、自動的に冷蔵庫の冷却性能を少し落とした節電モードに切換える。そして、照度レベルが規定値よりも大きくなった場合には、通常モードに運転を戻す。ただし、屋外から瞬発的な発光、例えば、自動車などの照明による検知などは除外するためある程度継続した照度レベルが維持しないと節電モードは解除しない。
さらに、過去の照度、扉開閉、庫内温度をある時間単位に区切り記憶手段に記憶し、それをパターン判別することにより冷蔵庫の運転を制御する。
さらに節電運転に入った場合、報知手段、例えばLEDの点灯を行うことにより、その状況を使用者にアピールする。
このとき照度センサ36の受光面、すなわち照度センサカバー41が何かで遮られると、正確な照度検知が不可能になり、節電モードへの切換え、通常モードへの復帰ができなくなる。一般に遮光される要因としては、冷蔵室ドア22a面に紙面等を貼り付けることが考えられる。しかしながら、本実施の形態においては貼り付ける可能性の非常に低い、操作基板7の垂直軸上の上方に照度検知手段8が設置されているので、誤った照度検知を行なうことがなくなる。また、図示はしないが照度センサ近傍にその存在を記載することにより使用者に注意を促すことにより、さらにその障害を防ぐことができる。
次に図4の制御ブロック図を用いて説明する。
冷蔵庫の設置環境やその使用により、冷蔵庫設置環境周辺環境を検知する検知手段としては照度を検知する照度検知手段、人感センサ40、冷蔵庫の使用状況を検知する状態検知手段としてドアSW51、外気温度センサ52、庫内温度センサ53といった複数の検知手段であるセンサを搭載している。
本発明の冷蔵庫は照度センサ36により、冷蔵庫前面周囲の明暗を検出し、制御手段54に出力し、さらに記憶手段55にそのデータを記憶させる。同様に冷蔵室ドア22aやその他の扉の開閉状態を検知するドアSW51の出力信号により扉開閉数や扉開閉時間、冷蔵庫の外郭に備えられている外気温度センサ、各庫内温度を検知する庫内センサで検知した温度データなども記憶手段に入力する。
このデータを一定時間ごとに取り出し制御手段54で運転パターンを設定し、圧縮機28、冷却ファン31、温度補償用ヒータ56、各貯蔵室の温度設定を自動的に可変する。ここで、照度センサ36により、5Lx以下であると検出し、その状態が一定時間経過し、更に所定の温度以下に冷却していれば、圧縮機の回転数抑制や過冷防止運転などの節電運転に自動的に入り、報知手段であるLEDを一定時間点灯もしくは点滅させる。
これらの動作の詳細について図7の制御フロー図で説明する。
冷蔵庫においてステップ1101で電源を投入するとステップ1102で一定間隔Aを計測するためのタイマーTをスタートさせ、ステップ1103で通常の冷蔵庫の動作を行うためのメインフローで制御を開始する。このとき、ステップ1104で扉開閉があればステップ1105で扉開閉数Mをカウントする。
次にステップ1106で照度センサの検知が例えば5Lx以上なら通常の運転を継続するが、5Lx以下を検知し、ステップ1107、ステップ1108、ステップ1109に示すとおり、照度センサの検知照度が5分以上連続で5Lx以下を検知し、貯蔵室温度が規定の温度以下に冷却され、さらに過去10分間扉開閉がないと判定したとき、図6に示す省エネモードであるおやすみ制御フローに移行する。
そして、ステップ1111でタイマーTが一定間隔Aに達すれば、そのときまでの扉開閉数もしくは扉開閉時間と平均照度を算出し、ステップ1112で記憶手段に記憶する。
そして、扉開閉数や照度データなどを初期化して、次の例えば1時間の再び扉開閉数や照度を測定する。
次に図8のおやすみ制御について説明する。
省エネモードであるおやすみ制御に入ると、就寝と予測し、扉開閉による冷蔵庫負荷が通常より極めて少ないと予測でき、また、長時間、例えば6時間以降はその状態が継続されると予測され、これにより省エネ運転が実施できる。
具体的には、ステップ1121に記載のとおり食品の投入負荷や扉開閉負荷が少ないので冷蔵庫の庫内温度設定を1K〜2K程度高い設定が可能なり、また、庫内の温度挙動を緩慢にすることにより省エネ効果を生み出す。また、このとき、圧縮機、冷却ファンを低速運転することにより省エネ効果とともに静音化を図る。さらに、庫内温調設定を上昇させることにより温度補償用ヒータの入力を低減することもできる。
この後、ステップ1122で扉開閉検知およびステップ1124の照度検知、さらにステップ1126の庫内温度検知で変動がなければ、そのモードを維持する。
もし、上記のうち1つでも変動があれば、モード維持判別を行う。
具体的には、もし、ステップ1122で扉開閉を検知した場合、ステップ1123に移行し、扉開閉数が事前に設定していたN1回以上と判定すれば、ステップ1127のようにおやすみ制御を解除し、通常冷却モードである通常制御に移行する。同様にステップ1124で照度センサが10Lx以上を検知するとステップ1125へ移行し、さらに照度センサが5分間以上連続で10Lx以上を検知したなら、ステップ1127に移行し、おやすみ制御を解除する。
次に図9を用いて省エネモードの一例であるお出かけ制御について説明する。
ステップ1103を実行中の一定間隔例えば、24時間おきにステップ140にてお出かけ制御判定を行う。
まず、ステップ1141の記憶手段に記憶されている過去3週間分の扉開閉数や照度、庫内温度データを用いて、ステップ1142移行で判定していく。
たとえば、ステップ1143にて過去3週間同一時間帯で連続3時間以上扉開閉がない
状態が続いていれば、この家庭の生活パターンは、例えば共働きなどにより日中は不在の状態であり、このとき、ステップ1144で各貯蔵室の冷却が十分か、また、ステップ1145で過去10分間扉開閉がなければ、ステップ1146のとおり、おでかけ制御に入り、ステップ1147に記載のとおり、省エネモードと判定して省エネ運転を実施する。ただし、図6で説明したおやすみ制御とは異なり、昼間の場合も想定されるのでおやすみ制御よりは温度上昇幅を抑制し、0.5K〜1Kに抑える。その他のものについては、おやすみ制御とほぼ同等の制御を行う。
よって、図のフローチャートに示すような省エネ制御を実施すると、図10のような温度挙動となり、省エネ運転が図られる。
次に圧縮機28の動作について説明する。
圧縮機28に通電がなされると、電動要素110の固定子112に電気が供給され、固定子112が発生する回転磁界により回転子111が回転する。回転子111の回転により、回転子に連結されたシャフト130の偏芯部132がシャフト130の軸心より偏芯した回転運動を行う。シャフト130の偏芯運動は、偏芯部132に連結された連結手段137によって往復運動に変換され、連結手段137の他端に連結されたピストン136の往復運動となり、ピストン136は、圧縮室134内の容積を変化させながら冷媒104の吸入圧縮を行う。ピストン136が、圧縮室134内で一往復中に吸入、吐出する容積を気筒容積と云い、気筒容積の大小で冷却する能力が変化する。
具体的には、回転数を20rps、28rps、35rps、48rps、58rps、67rpsといった6段階といった複数のあらかじめ設定された回転数で運転している。また、この複数段階の回転数の中で商用電源の回転数より大きいものは最大でも2つであり、半分以上が商用電源の回転数より小さい回転数である。
このインバーター圧縮機を搭載した冷蔵庫において、節電運転では低回転運転を行い回転数を20回転/sといった一般的な商用電源の周波数である60Hzの1/3の低回転での運転も可能とし、商用電源の1/2の回転数よりも低い回転数である28回転/sとした。
おやすみモードでは回転数を30回転/sとし、同様に省エネモードであるがおやすみ制御の場合と比較して高い照度が検知されているために、使用者の活動時間内と判断されたおでかけモードの場合には35回転/sとした。
また、通常冷却モードである通常冷却時には35回転/sを中心とし、最大でも48rpsであって、日本における商用電源の回転数よりも低い回転数とした。
また、日本における商用電源の回転数は50回転/sもしくは60回転/sであるが、本実施の形態ではより高い商用電源の回転数である60回転/sを一般的な商用電源の回転数とした。
そして、扉開閉等による急激な温度上昇によって高負荷がかかった場合にのみ60回転/s以上の回転数を用いるものとした。
本実施の形態では、このインバーター圧縮機を搭載した冷蔵庫において、上記のような省エネモードであるおやすみモードでは主な回転数を30回転/sとし、同様に省エネモードであるがおやすみ制御の場合と比較して高い照度が検知されているために、使用者の活動時間内と判断されたおでかけモードの場合には主な回転数を35回転/sとした。
上記のように、圧縮機は節電運転である省エネモードに加えて、通常運転時の通常冷却モードにおいても商用電源の回転数より低い回転数で運転することでさらに節電を実現するとともに、高負荷がかかった場合にのみ電動要素を商用電源の回転数以上の回転数で運転する高負荷冷却モードとなるように制御することで、冷蔵庫の年間使用時において80%以上となる通常冷却時と省エネモードに焦点を絞って低回転で圧縮機を回転させることで冷蔵庫実機においてに大幅な節電を図ることができ、より省エネルギーを実現した冷蔵庫を提供することができる。
また、これらの使用者の冷蔵庫の使用頻度が低下すると予想される省エネモードで運転している場合において、圧縮機の回転数は、商用電源の回転数よりも低い回転数Aを含んであらかじめ設定された3種類以上の回転数で運転するとともに、前記回転数Aの省エネモードで運転されている状態において照度センサによって規定値以上を検知した場合には、そのときに運転している回転数Aよりも高回転の回転数でかつ回転数Aとの回転数の差が最も小さい回転数Bで運転するものとする。
これは例えばおやすみモードとして30回転/s(回転数A)で圧縮機運転している場合に、仮に周囲の照度が上がって照度センサにおいて規定以上の高い照度を検知した場合であっても、急に回転数をあげるのではなく、30回転/s(回転数A)よりも高回転の回転数でかつ30回転/s(回転数A)との回転数の差が最も小さい35回転(回転数B)で運転するといった制御である。
これによって、照度センサによって高い照度を検知し、すなわち冷蔵庫の使用者の活動時間であることを検知した場合には、実際に冷蔵庫の開閉によって負荷がかかる場合を想定した上で、その高負荷に対応する準備段階として、ひとまずは緩やかに回転数を上昇させることで必要以上の負荷を掛けることを防止し省エネルギーを実現するとともに、実際に扉開閉等の高負荷がかかった場合でも速やかに高い回転数で運転する高負荷モードに移行することができるので、省エネルギーを実現した上で、冷蔵庫の高負荷モードに圧縮機の信頼性を向上させた状態で対応することができ、省エネモードでの節電運転と高負荷冷却モードでの高能力の冷却とを両立することができるものである。
制御手段は、前記照度センサによって検知された照度が予め設定された規定値以下であった場合には電動要素を商用電源の回転数より低い回転数で運転する省エネ運転である省エネモードとするとともに外気温が25℃前後で扉開閉がない場合の通常冷却時においても電動要素を商用電源の回転数より低い回転数で運転することが可能となる程度まで前記圧縮室内でピストンが往復動することによって圧縮動作が行われる空間である気筒容積を大きくした。このように、省エネモードと高負荷モードとの両立を図るために本発明者らが重要な着眼点と考えた気筒容積は、冷蔵庫としての最適な気筒容積となるように詳細に設計する必要がある。
この外気温が25℃前後で扉開閉がない場合の通常冷却時とは、冷蔵庫の測定条件としては例えば恒温室といった一定の温度を保つ密閉空間で測定する場合に、25℃±2℃の範囲で冷蔵庫の周囲温度である外気温を保持したような状態を指す。
この冷蔵庫に搭載する圧縮機の気筒容積に対する考え方について次に説明を行う。
結論から記載すると、インバーター冷蔵庫に搭載される圧縮機の気筒容積がR600aでは11.5〜12.5ccであり、且つR134a冷媒であれば7〜7.9ccであるインバーター駆動式密閉型圧縮機が最適な気筒容積となる。
これは、圧縮機の損失が主にモータ効率,摺動損失に代表される機械効率,圧縮効率で
決定され、気筒容積と運転条件によって大きく変化するからである。例えば図5Bに示したように気筒容積を大きくすると同一冷凍能力下で運転する場合には、例えば10ccから12cc,15ccといった高気筒容積化に伴いAからBそしてCへ移行することによって回転数の大幅な低下が図れる。これによって、図5Cに示したように摺動損失もAからBそしてCへと移行するが、この際、回転数の低減に伴って一端AからBへは摺動損失が低下するがBからC移行する際は逆に気筒容積の増大によって大きくなることから摺動面積が増大し摺動損失が増大する傾向となる。従って、摺動損失だけを一例にとっても気筒容積を上げ過ぎると摺動ロスの影響が勝るため一概に高気筒容積化すれば良いわけで無いことが判る。
これは、圧縮機は主にモータ効率と摺動部等に影響されるメカロスと圧縮・吸入特性の体積効率とに支配されており、それぞれのロス特性は、図11Bに示したような特性で表すことができる。また、回転数と冷凍能力を各気筒容積毎でまとめた結果を図11Cに示す。図11Dは、各気筒容積毎にまとめた冷凍能力とCOPとの関係である。
本、図11Cで示したように気筒容積を上昇すれば回転数を大幅に低減することができるので図11Bで示したモータ効率や摺動ロスは図11BのA及びBとの比較となり、実質高気筒容積化によるロスが減る。但し、気筒容積を上げ過ぎると摺動ロスの影響が勝るため一概に高気筒容積すれば良いわけで無いことが判る。
一方、冷蔵庫実機運転状態下では、貯蔵室が550L〜600Lの冷蔵庫において消費電力に最も影響を及ぼすことが近年明確となっており、図5Dに示すようなBの領域の効率向上を行うことによって消費電力の低減効果を最大化することが判る。
以上のことから、我々の発明は本使用領域に着目して各損失と効率との関係をまとめると、R600aでは11.5〜12.5cc、R134aでは7〜7.9cc程度に良いところがあることを見出した。
また、このような冷蔵庫の貯蔵室の大容量化を行う場合に、最も重要な事項の一つに圧縮機の小型化がある。すなわち外殻が小型であり、かつ気筒容積が大容量であることが望ましい。
例えばR600a冷媒を用いる冷却システムにおいて、大きな12cc程度の高気筒容積の圧縮機では、ピストンの径と行程(ストローク)が大きい為に圧縮機自体の大きさが大きくなる結果、場所を取らないスリムな冷蔵庫への搭載を行うと冷蔵庫の容積効率が悪くなるために搭載が困難であったが、冷蔵庫に搭載された圧縮機の外殻寸法で、幅W(mm),奥域D(mm),高さH(mm)の積を外殻容積V(mm^3)とし、圧縮機の圧縮要素のピストン断面積と行程との積で決定する気筒容積をK(mm^3)としたとき、V/Kが380以下、或いはH/Kが0.012以下にある超小型圧縮機では、例えば従来困難であった550L以上のクラスにも関わらず冷蔵庫の外殻寸法が幅900mm、奥行730mm、高さ1800mm等のスリムな冷蔵庫への搭載を可能とし容積効率(実内容量L/外殻寸法容積)の良い冷蔵庫の実現が図れる。
また、別の観点としては気筒容積に対する圧縮機の重量も重要である。これは、例えば本実施の形態のように冷蔵庫本体の上部側に圧縮機を備えたようなトップユニット形の圧縮機においては、圧縮機の重量が重いと、転倒の可能性が生じることや、冷蔵庫本体の強度をより強くするための補強設計が必要となり、安全性や省資源の観点で考えるとより重量の軽い圧縮機を搭載ことが望ましい。例えば、本実施の形態の冷蔵庫に搭載された圧縮機の重量をGとし、圧縮機の圧縮要素のピストン断面積と行程との積で決定する気筒容積をKとしたとき、G/Kが0.0006以下にある超軽量密閉型圧縮機では、550Lク
ラスの冷蔵庫においても劇的に軽量化を図れることが出来、材料費や運搬コストを低減する効果が得られる。
また、このように高気筒容積もしくは重量低減を図った圧縮機においては、温度対策すなわち圧縮機の温度上昇を抑えることが必須課題となってくる。
特に高気筒容積になるほど吐出ガス温度が高温となりオイル劣化或いはバルブ着座部のオイル皮膜がなくなって欠けを生じたりする可能性がある。
本実施の形態では、この温度対策として電動要素のモータの固定子の巻数比を工夫することでモータ温度の上昇を抑えることで圧縮機の温度上昇を抑制した。
10cc以上のレシプロ圧縮機において、パワー素子部を有し商用電源周波数未満の回転数を含む運転周波数で前記電動要素を駆動するインバーター駆動回路とを備え、電動要素は永久磁石を埋め込んだ回転子と、コアに設けたティース部に巻き線を集中巻きした集中巻き型固定子のティース部に巻回した巻線のU相とV相とW相との各相それぞれの長さをL(m)とし、線径をD(mm)としたとき、L/Dが250以下にあるものとした。
このように、線径と長さの関係比L/Dが250以下にすることによりジュール熱損の低減によって10cc以上での吐出ガス温度の増大によるオイル劣化によるスラッジの生成やバルブ着座部の皮膜不良による欠けと言った不良の可能性を抑制することができ、信頼性の高い圧縮機を提供することが可能となる。
また、本実施の形態の圧縮機は気筒容積を大きくするものとして、節電運転である省エネモードと省エネモードを解除して迅速な冷却を行う高負荷モードとを両立させるものであるが、特に高負荷モードに入った際には騒音の増大が懸念される。
そういった騒音対策の一つとして圧縮機にピエゾ素子等の圧電素子を備えるのも有効な騒音低減手段である。これは圧縮要素の密閉容器に固定されたピエゾ素子に電圧を印加させて振動させる制御機構を備えることで、ピエゾ素子の電圧を印加すると伸縮する特性を生かして、微振動を密閉容器に発生させることによって、消したい周波数の音の周波数の逆位相の振動を発生させることができるので、密閉容器からの振動を制振することが可能となる。
これにより、密閉容器から発生した放射音や振動を抑制することができるので低騒音、低振動化することができる。
さらに、圧縮要素の密閉ケーシングに固定されたピエゾ素子等の圧電素子のひずみを電力に変換する変換機構を備えると、ピエゾ素子等の圧電素子は振動やひずみを受けると帯電したりするので、その特性を用い、密閉ケーシングに取り付けられたピエゾ素子が圧縮機の運転中の振動を受けると電力に変換することが可能となる。つまり振動エネルギーを他のエネルギーへと変換することができるので、密閉ケーシングからの振動を抑制することができるので音・振動を低減することができる。
また、ピエゾ素子等の圧電素子のひずみ変換の別の形態として、圧縮要素の密閉ケーシングに固定されたピエゾ素子等の圧電素子のひずみを電力に変換する変換機構を備えるものであってもよい。これによると、変換された電力を冷蔵庫の表示パネルや制御の電力に活用することによって、更なる省エネを図ることが可能となりさらなる節電を実現することができる。
このように、ピエゾ素子等の圧電素子を密閉容器に取り付ける場合には、振動エネルギーの最も大きいシェル部、特に上容器の上端部は変異量も大きくピエゾ素子を積極的に振動せしめるのでより電気エネルギーを保有することが可能となり、より省エネが図れることが可能となる。
さらに、ピエゾ素子は繊維状で形成されている場合には、繊維状に形成したペルチェソシを密閉ケーシングに貼り付けるだけではなく鋼板に含有させる或いはプロテクターカバー等のコンプレッサーの樹脂材料や冷蔵庫の樹脂材料等に含有させることによって、振動を吸収し電気エネルギーに変換し、そのエネルギーを他の電力供給へと供給する供給手段を用いることにより省エネを図ることができる。
また、本実施の形態においては、家庭の使用パターンを判別することにより、扉開閉が少ない、食品投入が少ない、不在、外出、就寝などを予測し、そのときには、自動的に少なくとも前記電気負荷部品の動作を抑制または停止し、使用者に手間をかけず省エネを実現でき、また、LEDなどの報知手段によりお客様に視認さえることができるので省エネ性をアピールすることができる。
また、本実施の形態では、検知手段を照度センサとすることにより生活者の生活パターンを検知する照度変化で予測し、照度検出値が極めて小さい値、例えば5Lx以下が一定時間以上継続するなら就寝したと仮定し、この後、冷蔵庫の使用する頻度が極めて少ないと予測されるので、圧縮機の回転数UP抑制や、庫内温度設定の変更により照度が低い状態が続き、また次の扉開閉が行われるまで節電運転を行うことにより省エネが図れる。
また、本実施の形態で、検知手段を人感センサとすることにより人間から発する赤外線のエネルギー量の変化を検知することにより冷蔵庫の周辺の人の動くのがわかり、不在や就寝など、人間が一定時間、冷蔵庫の近傍にいないと判定できれば、深夜日中問わず圧縮機の回転数UP抑制や、庫内温度設定の変更により照度が低い状態が続き、また次の扉開閉が行われるまで節電運転を行うことにより省エネが図れる。
なお、本実施の形態では、検知手段は、照度センサとしたが時刻を正確に刻む標準電波の受信装置でもかまわない。この場合、日時が自動的に正確に把握できるので季節ごとに合わせた温調設定ができ、また冬等の低湿時には、温度補償用ヒータなどの入力を低減できるので、更に省エネができる。
なお、本実施の形態では冷蔵庫の周辺環境を検知するセンサとして例えば照度センサで検知した照度によって節電運転への切替えるものとしたが、例えば照度センサに代表されるような冷蔵庫の周辺環境を検知するセンサは節電運転開始の際の絶対条件としてではなく、節電運転開始の条件を決定する節電運転開始の条件設定手段として機能するものとしても良い。
この場合には、例えば、メイン制御フローでの運転状態で、照度センサで冷蔵庫設置環境周辺の照度が検知され、その照度が深夜判定値以下である5ルクス以下であれば深夜と判定して、ドア開閉回数が規定時間5分間の間に1回でもない場合には速やかに現状よりも一段低回転の回転数の低回転運転へと移行し、一方で冷蔵庫設置環境周辺の照度が深夜判定値以上であった場合には、より慎重に判断するために3時間のドア開閉を判定してから次のステップへと進むような厳しい条件設定にするといったことで冷蔵庫周囲の状態検知によって、節電運転を行う条件の重み付けを変化させるといったように機能させる。
これによると、冷蔵庫周辺環境で、人が活動していないと検知した場合には、より速やかに省エネモードによる節電運転へと移行できるように省エネモード開始の条件設定を緩
くし、逆に人が活動中であると検知した場合には、慎重に判断するように省エネモード開始の条件設定を厳しくするものである。
これにより、使用者が活動していないと検知手段で判断した場合は、節電運転に入りやすくなり、速やかに節電運転に入る一方で、使用者が活動している状態であると検知手段で判断した場合は、慎重に使用者の活動有無を見極めるために使用状況を見極めるドアSWや庫内温度センサ等で使用者の活動している状態と検知した場合と比較して長い時間に渡って監視することで、より使用者の活動に的確に対応しながら、省エネ効果の高い制御を高い信頼性で行なうことができる。
(実施の形態2)
図11は本発明の実施の形態2における冷蔵庫の正面図であり、図12は本発明の実施の形態1における圧縮機の断面図であり、図13Aは本実施の形態の圧縮機のクランクウエイトの斜視図であり、図13Bは本実施の形態の圧縮機のクランクウエイト周辺の拡大図であり、図14Aは本実施の形態の圧縮機の弾性部材周辺の組み立て図であり、図14Bは本実施の形態の圧縮機の弾性部材周辺の断面図であり、図15Aは本実施の形態の圧縮機のシリンダブロックの上面からみた斜視図であり、図15Bは本実施の形態の圧縮機のシリンダブロックの下方側からみた斜視図であり、図16Aは本実施の形態の圧縮機のサクションチューブ周辺の平面断面図であり、図16Bは本実施の形態の圧縮機のサクションチューブ周辺の縦断面図である。
なお、本実施の形態において実施の形態1と同一の構成に関しては同一の番号を付し、説明を省略するが、実施の形態1で説明した技術思想については不都合がない限り本実施の形態に適用することができるものであり、実施の形態1と本実施の形態の構成とは組合せて構成することができるものとする。
冷蔵庫本体21に備えられた圧縮機28は、密閉容器103内に、回転子111と、固定子112とからなる電動要素110と電動要素110によって駆動される圧縮要素113とを収納し、圧縮要素113は圧縮室134と圧縮室134内で往復動するピストン136を備えた往復動型であるとともに商用電源の回転数より低い回転数を含めた複数の回転数で運転されるインバーターの電動機である。
図において、厚さ2から4mmの圧延鋼板を深絞り成形により形成してなるすり鉢状の下容器101と逆すり鉢状の上容器102を係合し、係合部分を全周溶接接合して密閉容器103が形成され、密閉容器103の内部には、炭化水素のR600aからなる冷媒104と底部にR600aと相溶性の大きい鉱油からなる冷凍機油105が貯留されている。密閉容器103の下側には、脚106が固着されてマウント(図示せず)を介して、冷蔵庫に備えられている。
上記のように密閉容器103には弾性部材であるスプリング171を介して圧縮要素113と電動要素110とからなる機械部116が備えられており、下容器101の底部と固定子112の下端に機械部116を支持する支持部材である支持部172とスプリング171とを介して弾性支持されている。
この固定子112の下端に備えられた支持部172とスプリング171とが機械部116を弾性支持する支持部材である。
弾性部材であるスプリング171は、密閉容器103側の保持部173と機械部116側の支持部172の間に備えられており、密閉容器103側の保持部173に対しては一部が圧入固定されており、機械部116側の支持部172に対しては、半径方向に一定の
隙間を備え遊嵌されている。
本実施の形態においては、大きい半径のピストン132を用いることにより、スプリング171と機械部側の支持部172と密閉容器103側の保持部173とを下記のような構成とした。
まず、大きい半径のピストン132を用いることによりアンバランス量が増大するため、定常的な運転状態において機械部116の振動が密閉容器103側に伝播しにくいように、鉛直方向である縦方向のスプリング171の嵌め合いについては、機械部側の支持部172側の方が保持部173側よりも圧入時の嵌め合いしろが小さくなるいわゆるルーズな嵌め合いとなるように構成した。これは例えば縦方向に引っ張り力を加えた時には上側の支持部172側の方が小さい荷重で抜けるといった構成である。
一方で、ピストン132の直径が大きいことで、定常時ではなく、起動停止時にピストン132の反発力によって主にピストン136の振動方向である横方向を中心に機械部116が大きく揺れ動くことでシリンダブロック133が密閉容器103に衝突する現象である釜あたり現象が発生しやすくなるため、この釜あたり現象を低減するための構成として、水平方向である横方向のスプリング171との隙間については、機械部側の支持部172の方が保持部173よりも小さく、横方向に対する動きを抑制するように支持部172の側面がスプリング171に当たりやすい構成となっている。これは、例えば横方向に加重を加えた場合に、最初からスプリング171と接触していない部分において保持部173側よりも支持部172側の方がよりスプリング171と衝突しやすいといった構成である。本実施の形態では、支持部172の下端部172aとスプリング171の隙間の方が保持部173の上端部173aとスプリング171の隙間よりも小さくなるように構成している。
このように、機械部116側である支持部172とスプリング171との関係は保持部173とスプリング171との関係と比較して、縦方向においては嵌め合いが小さくルーズで、横方向においては、より動きにくい構成としている。
下容器101の一部を構成するターミナル115は、密閉容器103の内外で電気(図示せず)を連絡するもので、リード線を通して電動要素110に電気を供給する。
次に、圧縮要素113の詳細を以下に説明する。
シャフト130は、回転子111を圧入や焼嵌めにより固定した主軸部131と、主軸部131に対して偏芯して形成された偏芯部132を有する。シリンダブロック133は、略円筒形の圧縮室134を有するとともに、シャフト130の主軸部131を軸支する為の軸受部135を有し、電動要素110の上方に形成されている。
ピストン136は、圧縮室134に遊嵌され、連結手段137でシャフト130の偏芯部132に連結され、シャフト130の回転運動をピストン136の往復運動に変換し、ピストン136が圧縮室134の空間を拡大、縮小することで密閉容器103内の冷媒104を圧縮し、冷凍サイクルへと吐出する。
また、圧縮機内にはサクションチューブ178から冷媒を吸入し、サクションマフラー179の吸入口179cから吸入されて圧縮室134へと流入する。
このとき、図16Aに示すように、サクションチューブ178の中心線178aは、サクションマフラー179の受け部179aのコーナー部179bよりもサクションマフラ
ー179の吸入口179c側に位置している。
また、図16Bに示すように、サクションチューブ178の中心線178aは、サクションマフラー179の吸入口179cのほぼ中心に位置している。
また、本実施の形態では圧縮動作の際にピストン136が往復動する距離であるストロークAと、ピストン136の長さBと、ピストン136の直径Cとの関係がA≦B≦Cとなるようにピストンの直径を大きくするようにした。
具体的にはピストン136の直径Cは27.8mmとして、ピストン136が往復動する距離であるストロークAは20mmとすることで、気筒容積として12ccの圧縮室134の空間を形成している。
さらに、ピストン136の長さBは21.5mmとして、ピストン136の直径Cの方が大きくなるように形成している。
またストロークAは、シャフト130の主軸部131に対して偏芯して形成された偏芯部132の偏芯量の2倍の長さとなっており、すなわち本実施の形態での偏芯量は10mmである。
また、シリンダブロック133は、ピストン136を遊嵌することによって圧縮室134を形成するボア孔175を備えており、本実施の形態のようにピストン136を大きく形成した場合にシリンダブロック133を大型化しなくとも剛性を向上させて十分な強度を得るために、シリンダブロック133のボア孔175近傍に曲面からなる凸部である肉盛部176aを備えている。
また、ピストン136の往復動に伴う偏荷重をバランスさせるために備えられたクランクウエイト170は、ピストン136と同様にシャフト130の偏芯部132に備えられており、圧縮要素113の上下方向においてピストンの上端を通る水平線136a上およびピストンの上端を通る水平線136aよりも下方側にクランクウエイト170の少なくとも一部が位置している。
本実施の形態では、クランクウエイト170の下方側に備えられたクランクウエイト170の延出部170aの水平線上にピストン136の上端が位置しているものである。
また、電動要素110については、実施の形態1と同様の構成を適用するので詳細な説明を省略する。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
制御手段は電動要素110を商用電源の回転数より低い回転数で運転する節電運転と、電動要素110を商用電源の回転数以上の回転数で運転する高負荷冷却運転と両方を実現するように制御を行うことで、貯蔵室を設定温度に冷却する。
この冷却の際には、圧縮機28に通電がなされると、電動要素110の固定子112に電気が供給され、固定子112が発生する回転磁界により回転子111が回転する。回転子111の回転により、回転子に連結されたシャフト130の偏芯部132がシャフト130の軸心より偏芯した回転運動を行う。シャフト130の偏芯運動は、偏芯部132に連結された連結手段137によって往復運動に変換され、連結手段137の他端に連結されたピストン136の往復運動となり、ピストン136は、圧縮室134内の容積を変化
させながら冷媒104の吸入圧縮を行う。ピストン136が、圧縮室134内で一往復中に吸入、吐出する容積を気筒容積と云い、気筒容積の大小で冷却する能力が変化する。
また、この圧縮機は複数のあらかじめ設定された回転数で運転可能な能力可変圧縮機であるインバーター圧縮機とした。
具体的には、回転数を20rps、28rps、35rps、48rps、58rps、67rpsといった6段階で設定している。また、この複数段階の中で商用電源の回転数より大きいものは最大でも2つであり、半分以上が商用電源の回転数より小さい回転数である。
このインバーター圧縮機を搭載した冷蔵庫において、上記のような節電運転では回転数を20回転/sといった一般的な商用電源の周波数である60Hzの1/3の低回転での運転も可能とし、商用電源の1/2の回転数よりも低い回転数である28回転/sとした。
また、通常冷却モードである通常冷却時には35回転/sを中心とし、最大でも48rpsであって、日本における商用電源の回転数よりも低い回転数とした。
また、日本における商用電源の回転数は50回転/sもしくは60回転/sであるが、本実施の形態ではより高い商用電源の回転数である60回転/sを一般的な商用電源の回転数とした。
そして、扉開閉等による急激な温度上昇によって高負荷がかかった場合にのみ60回転/s以上の回転数を用いるものとした。
このように、本発明は省エネルギーを実現するために、インバーター圧縮機での省エネを図った上で、節電運転である省エネモードでの運転の場合には、大きな気筒容積を備えた圧縮機を用いて低回転で運転させることで節電を行うとともに、扉開閉や庫内温度の上昇に伴う高負荷が生じた場合には大きな気筒容積を備えた圧縮機を用いることで高回転での運転を短時間で行うことで高負荷に対応することが可能となり、冷蔵庫実機において大幅な節電を図る圧縮機を実現することができる。
さらに本発明は、上記のように大きな気筒容積を備えた圧縮機を用いる際に、圧縮機の気筒容積を形成するピストンの直径とストロークとの相互関係に着眼点を置いたものであり、ストロークを長くすることで大きな気筒容積を形成するのではなく、ピストンの直径を大きくすることで大きな気筒容積を形成することで、幅広い回転数で運転した場合でも高い信頼性を備えた圧縮機を実現することができ、省エネモードでの節電運転と高負荷冷却モードでの高能力の冷却とを両立することができるものである。
また、密閉容器103には弾性部材であるスプリング171を介して圧縮要素113と電動要素110とからなる機械部116が備えられており、下容器101の底部に備えられた保持部173と固定子112の下端に備えられた支持部172との間をスプリング171によって弾性支持している。
この固定子112の下端に備えられた支持部172とスプリング171とが機械部116を弾性支持する支持部材である。
弾性部材であるスプリング171は、支持部172の側面下端部172aとスプリング171の隙間の方が保持部173の側面上端部173aとスプリング171の隙間よりも
小さくなるように構成していることで、縦方向においては圧入時の嵌め合いしろが小さいのでよりルーズは嵌め合いとなり、横方向においては、隙間が小さくより動きにくい構成としており、この半径方向(すなわち水平方向)の隙間が釜あたり抑制する緩衝手段として機能しているものである。なお、本実施の形態ではスプリング171と支持部172および保持部173は共に圧入での嵌め合いとしたが、少なくとも保持部173側を圧入とし、支持部側は隙間を備えたゆるい嵌め合せでもよい。この場合においても、スプリング171と保持部173よりもスプリング171と支持部172の方が上下方向に抜けやすいすなわち小さい荷重で抜けるような構成にすると同様の効果を奏することができる。
これによって、大きい半径のピストン136を用いることによりアンバランス量が増大するため、定常的な運転状態において機械部116の振動が密閉容器103側に伝播しにくいように、鉛直方向である縦方向のスプリング171の嵌め合いについては、機械部側の支持部172側の方が保持部173側よりも嵌め合いしろが小さくなるいわゆるルーズな嵌め合いとなるように構成することで、径の大きいピストン136を用いた場合でも、密閉容器103を介して圧縮機外部へと伝達する振動を抑制することができる。
さらに、ピストン132の直径が大きいことで、定常時ではなく、起動停止時にピストン132の反発力によって主にピストン136の振動方向である横方向を中心に機械部116が大きく揺れ動くことでシリンダブロック133が密閉容器103に衝突する現象である釜あたり現象が発生しやすくなるが、横方向に加重を加えた場合に、最初からスプリング171と接触していない部分において保持部173側よりも支持部172側の方がよりスプリング171と衝突しやすい構成となるようにスプリング171は支持部172に対して半径方向に保持部173よりも小さな隙間を備えているため、機械部116の起動停止に伴う釜あたり現象を抑制することができる。
また、本発明ではピストン136の往復動に伴う偏荷重をバランスさせるために備えられたクランクウエイト170は、ピストン136と同様にシャフト130の偏芯部132に備えられており、圧縮要素113の上下方向においてピストンの上端を通る水平線136a上およびピストン136の上端を通る水平線136aよりも下方側にクランクウエイト170の少なくとも一部が位置している。
本実施の形態ではクランクウエイト170の下方側に備えられたクランクウエイト170の延出部170aの水平線上にピストン136が位置しているものである。
すなわち、大きなピストン136の往復動に伴う偏荷重をバランスさせるためには、クランクウエイト170の形状を大きくして重量を増大させる必要があるが、運転中にピストン136が下死点に位置したとき、クランクウエイト170の延出部170aの水平線上にピストン136が位置し、延出部170aが主軸部131側に配置しているため、圧縮機の全高を低くするようクランクウエイト170を配置しつつ、延出部170aとピストン136の干渉を回避することができる。
また、ピストン136の上端を通る水平線136aよりも下方側に延出部170aが位置しても、同様に圧縮機の全高を低くするようクランクウエイト170を配置しつつ、延出部170aとピストン136の干渉を回避することができる。
したがって、クランクウエイト170の形状を大きくして重量を増大させるものの、圧縮機の全高を低くするように、クランクウエイト170を配置することができる。
これによって、庫内容量を大きくするような大容量の冷蔵庫に搭載する場合に、通常であればストロークを長くする方がピストンの大きさおよび重量を低減することでアンバラ
ンス量を低減することが可能であることにもかかわらず、あえてピストンの直径を大きくすることに焦点を絞ったものであってもピストンのアンバランス量を低減するために、圧縮要素の全高を抑えた上で、できるだけピストンに近い部分にクランクウエイトを備えるように工夫するものであって、より振動を低減するとともに、ピストンの往復動に伴うアンバランス量を低減することで摺動部のこじり等を抑制し信頼性の高い大気筒容積の圧縮機を備えることが可能となる。
また、圧縮機内にはサクションチューブ178から冷媒を吸入し、サクションマフラー179の吸入口179cから吸入されて圧縮室134へと流入するとき、サクションチューブ178の中心線178aは、サクションマフラー179の受け部179aのコーナー部179bよりもサクションマフラー179の吸入口179c側に位置し、さらに、サクションチューブ178の中心線178aは、サクションマフラー179の吸入口179cのほぼ中心に位置している。
これによって、大きな気筒容積を備えた圧縮機を用いることで、低回転の回転数を中心に圧縮動作が行われるものであるために、吸入マフラーに吸入される冷媒の流速が低下するために、吸い込み力が小さくなり、サクションチューブ178から流入した冷媒が高温のシェル内に開放されることで熱交換をしてしまい、比較的温度の高い状態で圧縮室へ吸い込まれる傾向があるが、サクションチューブ178の中心線178aは、水平方向においてサクションマフラー179の受け部179aのコーナー部179bよりもサクションマフラー179の吸入口179c側に位置し、上下方向においてサクションマフラー179の吸入口179cのほぼ中心に位置させることで、よりサクションマフラー179の吸入管179cにサクションチューブ178から流入した比較的低温の冷媒を吸い込ませることができ、圧縮機の吸入効率を向上させることがで、圧縮機の効率を向上させることができるので、より省エネルギーの冷蔵庫用圧縮機を備えることが可能となる。
また、シリンダブロック133は、ピストン136を遊嵌することによって圧縮室134を形成するボア孔175を備えており、本実施の形態のようにピストン136を大きく形成した場合にシリンダブロック133を大型化しなくとも剛性を向上させて十分な強度を得るために、シリンダブロック133のボア孔175近傍に曲面からなる凸部である肉盛部176aを備えている。
また、この肉盛部176aとシャフト130の主軸部が遊嵌される軸受け177の軸受け孔177aを挟んで逆側においても肉盛部176bを備えていることで、軸受け177にかかる荷重に耐えられるようシリンダブロック133全体の強度を向上させているものである。
このように、シリンダブロック133全体の強度を向上させる際の最も簡単な手段としてはシリンダブロック133全体の体積および重量を大きくするといったことが考えられるが、本発明では環境への配慮から省資源で効率よくシリンダブロック133の強度を向上させるために、圧縮室134の強度を向上させる肉盛部176aと、この肉盛部176aと軸受け177を挟んで逆側に肉盛部176bを備えることで、軸受けの荷重をバランスよく受けることができる最小限の凸形状で剛性を向上させているものであり、より省資源で剛性の高いシリンダブロック133を形成している。
(実施の形態3)
図17は本発明の実施の形態3における密閉型圧縮機の縦断面図であり、図18は同実施の形態における圧縮部の要部縦断面図であり、図19(a),(b),(c),(d)は圧縮行程におけるピストンの挙動を順に示しており、図19(a),(b),(c)は圧縮行程の初期の状態、図19(d)は圧縮行程の後期の状態をそれぞれ示している。
シリンダブロック133は、互いに一定の位置に固定されるように配置された略円筒形のボア孔175と、軸受け177とを有しており、ボア孔175にはピストン323が往復動可能に挿設され、圧縮室134を形成している。
なお、本実施の形態において実施の形態1および2と同一の構成に関しては同一の番号を付し、説明を省略するが、実施の形態1および2で説明した技術思想については不都合がない限り本実施の形態に適用することができるものであり、実施の形態1および2と本実施の形態の構成とは組合せて構成することができるものとする。
連結手段であるコンロッド137の一端は偏芯部132に連結され、その他端はピストンピン136aを介して、ピストン136に連結されている。
ここで、ピストン136及びバルブプレート139とともに圧縮室134を形成するようにシリンダブロック133に設けられたボア孔175は、図3に示すように、ピストン136が上死点に位置する側から下死点に位置する側に向かって、内径寸法がD1からD3(>D1)に増加するテーパ部134bと、上死点に達したピストン136の圧縮室134側の端部に対応する位置に、軸方向長さL1の区間だけ内径寸法が軸方向に一定であるストレート部134aとを持つように形成され、ピストン136は全長にわたって同一の外径寸法D2に形成されている。
シリンダブロック133のボア孔175は、図3に示すように、ピストン136が下死点に位置する状態で、このピストン136の反圧縮室134側が密閉容器103内に露出するように形成されている。
さらに、ピストン136の外周面136aの圧縮室134側には、略環状の給油溝136bが凹設されており、ピストン136が下死点に位置する状態で、この給油溝136bの少なくとも一部がボア孔175から露出して密閉容器103に連通するように、ボア孔175の周壁の一部が切り欠かれた切り欠き部120を形成している。
電動要素110の回転子111はシャフト130を回転させ、偏芯部132の回転運動が、コンロッド137を介してピストン136に伝えられ、これによって、ピストン136は圧縮室134内を往復運動する。ピストン136の往復運動により、図示省略の冷却システムから冷媒ガスが圧縮室134内へ吸入され、圧縮された後、再び冷却システムに吐き出される。
ピストン136が図3に示す下死点位置から、冷媒ガスを圧縮する圧縮行程で上死点側に移動する途中の状態までは、圧縮室134内の圧力はそれほど上昇しないのでピストン136の外周面136aとテーパ部134bとの隙間が比較的大きくても冷凍機油105によるシール効果で冷媒ガスの漏れはほとんど発生せず、ピストン136の摺動抵抗も小さい。
さらに圧縮行程が進み、圧縮室134内の冷媒ガスの圧力が次第に上昇してピストン136が上死点の近傍位置に達する直前では、圧縮室134内の圧力は急激に上昇するが、上死点側ではピストン136の外周面136aとテーパ部134bとの隙間が小さくなることから冷媒ガスの漏れの発生を低減することができる。このとき、ストレート部134aは、所定の吐出圧力まで増大した冷媒ガスの漏れを、このストレート部134aをテーパ状にした場合よりも低減するように作用する。
また、ピストン136が下死点に位置する状態で、このピストン136のコンロッド1
37側がシリンダブロック133から露出するように形成されているので、シャフト130の上端から飛散された冷凍機油105がピストン136の外周面136aに潤沢に供給されるとともに、保持される。
さらに、ピストン136が下死点に位置する状態で、ピストン136の外周面136aの圧縮室134側に凹設された略環状の給油溝136bの少なくとも一部が、切り欠き部120を介してボア孔175から露出するように形成されているので、シャフト130の上端から飛散された冷凍機油105が給油溝136bに潤沢に供給されるとともに、保持される。
これによって、圧縮行程でシリンダブロック133のボア孔175からなる圧縮室134の内周面とピストン136の外周面136aとの隙間に供給される冷凍機油105も多くなる。
また、略環状の給油溝136bはボア孔175のストレート部134aと対向する位置まで可動するため、摺動抵抗が最も大きくなるストレート部134aに対して冷凍機油105が運ばれやすくなっている。
以上の結果、シリンダブロック133とピストン136との摺動部により多くの冷凍機油105が供給されるとともに、その冷凍機油105が良好に保持され、さらに、ピストン136が上死点位置に近接した状態での摺動抵抗を軽減することができ、これによって高効率化を達成することができる。
密閉型圧縮機は、軸受け177がシャフト130の主軸部131における偏芯部132側の端部を軸支する片持ち軸受を形成しており、シャフト130は主軸部131と軸受け177のクリアランス内で傾き、しかもその方向や傾斜角度は運転条件などによっても変わる複雑な挙動であることが知られている。
特に、圧縮室134内の圧力荷重やピストン136とコンロッド137の慣性力などの複雑な力の影響を受けるためである。
従って、図19に示すシャフト130の傾斜を示した模式図は、推定したものである。
まず、圧縮行程の初期について説明する。
圧縮行程の初期においても、シャフト130がどのように傾斜しているかは明確ではないが、上述した通り、シャフト130の傾斜挙動は複雑であり、それに伴ってピストン136も複雑に挙動すると考えられる。
しかし、圧縮行程の初期においては、ピストン136は円筒形孔部からなる圧縮室134内のテーパ部134bの範囲内に位置しているため、僅かな力で簡単に傾斜することができるため、通常はテーパ部134bのいずれかの内壁面に沿って摺動していると考えられる。
ここでは、ピストン136がほぼシャフト130と同様に傾斜し、円筒形孔部からなる圧縮室134内の上方のテーパ部134bに沿って摺動した場合について説明する。
ピストン136の上方側外周面136dが円筒形孔部からなる圧縮室134内の上方のテーパ部134bと摺動しながら圧縮室134側に移動すると、図5(b)に示すように、テーパ部134bと摺動していないピストン136の下方側外周面136eの先端エッ
ジ部136cが、上方側外周面136dと対向しているテーパ部134bに接触する。
このとき、発明者らの実験では、図19(c)に示すように、ピストン136の傾斜方向が円筒形孔部からなる圧縮室134の軸心に対して反転し、それまでテーパ部134bと摺動していなかった方の外周面(上記では下方側外周面136e)側がテーパ部134bと摺動するように挙動すると推察している。
テーパ部134bと摺動していないピストン136の下方側外周面136e側の先端エッジ部136cがテーパ部134bに接触したことを起点に、シャフト130が大きくは反圧縮室側に傾斜し、ピストン136の傾斜方向が円筒形孔部からなる圧縮室134の軸心に対して反転すると考えている。
いずれにしても、さらに圧縮行程が進み、圧縮行程の中期以降では、圧縮室134内の冷媒ガスの圧力が大きくなると、冷媒ガスの圧縮荷重をシャフト130の偏芯部132に対して片側の主軸部131のみで軸支するため、シャフト130は主軸部131と軸受け177のクリアランス内で傾き、方向を変えながらも大きくは反圧縮室134側に傾斜している。
このとき、ピストン136は、図19(d)に示すように、その軸心が円筒形孔部からなる圧縮室134内のストレート部134aの軸心とほぼ一致するように傾斜が修正されてさらに圧縮室134側に移動し、所定の吐出圧力まで増大した冷媒ガスの漏れを、ストレート部134aをテーパ状にした場合よりも低減した圧縮を行う。
以上は、圧縮行程の初期において、ピストン136がほぼシャフト130と同様に傾斜し、円筒形孔部からなる圧縮室134内の上方のテーパ部134bに沿って摺動した場合について説明したが、ピストン136とシャフト130の傾斜が異なった場合でも、少なくともピストン136はテーパ部134bのいずれかの部位に沿って傾斜すると考えられ、同様にピストン136の傾斜方向が反転してそれまでテーパ部134bと摺動していなかった外周面136a側がテーパ部134bと摺動するように挙動すると推察する。
以上が、推測を交えたピストン136の挙動の説明であるが、上記ピストン136の挙動に係わる本発明の技術思想を説明する。
図19で説明したピストン136の挙動に注目しつつテーパ部134bの設計諸元を変えて実験を行い、ピストン136の先端エッジ部136cがテーパ部134bに接触したことを連想させるタイミングが圧縮行程の初期となるテーパ設計の方が、圧縮行程の中期以降となるテーパ設計よりも、騒音が小さいとの結果を得ている。
その原因として、圧縮室134内の圧力が高く圧縮荷重が大きい圧縮行程の中期以降の場合、シャフト130の傾斜方向が反転する速度またはピストン136の傾斜方向が反転する速度が大きいために、ピストン136の外周面136aがテーパ部134bに接触する際の接触、衝突が厳しくなるのではないかと推察する。
以上の結果および推察から、圧縮行程の初期に、ピストン136の傾斜方向が円筒形孔部からなる圧縮室134の軸心に対して動きしろがあるように形成している。これは圧縮行程の中期以降にピストン136の傾斜方向が反転するよりも、圧縮行程の初期にピストンが動きしろを有し反転等を行うことができる場合には、反転時におけるピストン136と円筒形孔部からなる圧縮室134との接触を緩和することができ、低騒音化につながると結論付けられる。
具体的には、圧縮行程の初期に、ピストン136の傾斜方向が円筒形孔部からなる圧縮室134の軸心に対して動きしろを有するように形成するためには、ピストン136の外周面136aがテーパ部134bに沿って圧縮室134側に移動した際に、外周面136aが摺動していないテーパ部134bに接触するタイミング(図5(b)参照)が圧縮行程の初期となるように、圧縮行程における上流側の位置にテーパ部134bを形成し、圧縮行程の下流側にストレート部134aを備えるように圧縮要素113を備える。
なお、ピストン136の先端エッジ部136cがテーパ部134bに接触することなくピストン136の傾斜方向が反転する可能性も有り、その場合でも、動きしろは圧縮行程の初期であれば同様に効果が得られると考えられる。
そこで、圧縮行程の初期にピストン136の先端エッジ部136cがテーパ部134bに接触する設計の一つとして、本実施の形態においては、テーパ部134bに隣接してピストン136の圧縮室134側の上端部に対応する円筒形孔部からなる圧縮室134の部位に、内径寸法方向に一定であるストレート部134aを備えている。
このストレート部134aを備える効果の一つとして、所定の吐出圧力まで増大した冷媒ガスの漏れを、ストレート部134aをテーパ状にした場合よりも低減することができることは上述した通りであるが、ストレート部134aを備えることで、ピストン136の外周面136aの先端エッジ部136cが、外周面136aが摺動していないテーパ部134bに接触するタイミングを圧縮行程の初期とすることができる。
上記のように、ピストン136が下死点に位置する時、すなわち吸入工程の終点(=圧縮行程の始点)に位置する時には、少なくともピストン136のピストンピン136aよりも圧縮室134側の外周面136aの一部は、圧縮室134の中でもテーパ部134bに位置するように構成するのが好ましく、より望ましくは、ピストン136が下死点に位置する時、すなわち吸入工程の終点(=圧縮行程の始点)に位置する時に、ピストン136の先端面136fが圧縮室134の中でもテーパ部134bに位置するように構成するものである。
これによって、圧縮行程の初期には必ずピストンは動きしろを有することができ、よりスムーズに圧縮動作を行うことができるので、本願発明の実施の形態1および2で詳細に説明したように大きな気筒容積を形成する際に、通常であればストロークを長くする方がピストンの大きさおよび重量を低減することでアンバランス量を低減することが可能であることにもかかわらず、あえてピストンの直径を大きくすることに焦点を絞ったものであっても、圧縮行程の初期には必ずピストンは鉛直方向の上下方向における動きしろを有することで、ピストンの直径が大きく、ピストンの長さが短いために不利となる摺動部のこじり等を抑制し信頼性の高い大気筒容積の圧縮機を備えることが可能となる。
さらに、実施の形態1および2で詳細に説明したような圧縮動作の際にピストン136が往復動する距離であるストロークAと、ピストン136の長さBと、ピストン136の直径Cとの関係がA≦B≦Cとなるようにピストンの直径を大きくするようにしたこういった摺動部のこじり等については、ピストンが動きやすいために、より顕著となるが、本発明のテーパ部134bを備えて、あえて動きしろを設けることで、ピストンのこじりを低減し、信頼性が高くかつ騒音の少ない圧縮機を備えることができる。
よって、ピストンの直径を大きくすることで大きな気筒容積を形成し、かつピストンの長さをより低減することで往復動に伴う荷重をより低減することができるので、幅広い回転数で運転した場合でも高い信頼性を備えた圧縮機を実現することができ、省エネモードでの節電運転と高負荷冷却モードでの高能力の冷却とを両立することができるものである
。
また、テーパ部134bの軸方向長さについては、ストレート部134aで圧縮室134内の冷媒ガスの漏れを低減しつつ、ピストン136の先端面136fがテーパ部134bに接触するタイミングを圧縮行程の初期とする必要がある。
ここで、圧縮行程の初期とは、下死点から上死点までの全行程(圧縮室134の往復動方向の長さ)の中で、中心よりもシャフト130側である圧縮動作による初期行程を圧縮行程の初期と本発明では定義する。
この場合に、圧縮行程の初期の段階(圧縮室134内の往復動方向の中点まで)でピストンピン136aよりも圧縮室134側の外周面136aの一部がテーパ部134bに対向する位置するように構成するのが好ましく、さらに望ましくは、この初期の段階でピストン136の先端面136fが圧縮室134の中でもテーパ部134bに位置するように構成するのが望ましい。
具体的に、本実施の形態ではテーパ部134bの軸方向長さは圧縮室134の往復動方向の長さの1/3以上であることが望ましく、さらに望ましくは1/2以上とする。また、上限については、ストレート部134aでストレート部134aで圧縮室134内の冷媒ガスの漏れを低減するために圧縮行程の後期の圧力が高い行程(最後の1/4)では少なくとも先端面136fがストレート部に位置することが望ましいので、テーパー部長さは全工程の3/4以下であるものとする。
さらに、ピストン136の傾斜方向が円筒形孔部からなる圧縮室134の軸心に対して反転して、それまでテーパ部134bと摺動していなかった外周面136a側がテーパ部134bと摺動するように挙動しても、テーパ部134bに接触するピストン136の外周面136aの軸方向長さが短くても、シャフト130の上端より密閉容器103内の全周方向へ水平に飛散された冷凍機油105が十分に供給されている。
そのため、ピストン136の外周面136aに十分に供給された冷凍機油105がピストン136の外周面136aとテーパ部134bとの接触を緩和することができ、高効率化と低騒音化を実現することができる。
さらに、ピストン136の外周に給油溝136bを凹設し、給油溝136bはピストン136の下死点近傍で密閉容器103内と連通するように、円筒形孔部からなる圧縮室134の周壁の一部が切り欠かれた切り欠き部120を形成している。
そのため、シャフト130の上端より密閉容器103内の全周方向へ水平に飛散された冷凍機油105が給油溝136bに保持されて円筒形孔部からなる圧縮室134内のテーパ部134bやストレート部134aまで十分に供給することができるので、冷凍機油105によるシール効果が得られ、冷媒ガスの漏れを低減することができるとともに、ピストン136の外周面136aに十分に供給された冷凍機油105がピストン136の外周面136aとテーパ部134bとの接触を緩和することができ、高効率化と低騒音化を実現することができる。
なお、本実施形態において、連結機構をコンロッド137としたが、ボールジョイント等の可動部を有する連結機構を用いることで本実施例と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態4)
図20は、本実施の形態4における特性図であり、横軸は密閉型圧縮機を運転する回転
数とほぼ同じ電源周波数を示し、縦軸は効率を示す成績係数C.O.P(COEFFICIENT OF PERFORMANCE)を示したものであり、図21は、本実施の形態4密閉型圧縮機に用いるピストン周りの要素拡大図、図22は本実施の形態4における密閉型圧縮機に用いるピストンの上面図、図23は図22のB方向からみた正面図、図24は本実施の形態4における密閉型圧縮機に用いるピストンの上面図、図25は図24のC方向からみた正面図、図26は本実施の形態4における密閉型圧縮機に用いるピストンの上面図である。
本実施の形態では実施の形態1から3で説明した内容の圧縮機におけるピストンを別の形態(ピストン136の鉛直方向上側と下側との重量が異なる形態)としたものであり、上記実施の形態と組合せて実施するものであり、ピストン以外の構成については具体的な説明を省略する。
ピストン136の外周面150には、ピストンピン136aが挿入されるピン穴142の周囲にピストン136径方向内側に落ち込む凹陥部163を形成し、凹陥部163は鉛直方向上側の第1凹陥部154と鉛直方向下側の第2凹陥部155を備え、第1凹陥部154と第2凹陥部155の容積が同じに形成されている。
この凹陥部163は、ピストン136の先端面136fとスカート端面152のどちらにも連通しないように形成され、凹陥部163を平面展開したときの形状を表す輪郭線は、ピストン136の軸芯と一切平行線を形成しない形状となっている。
ピストン136が下死点に位置する状態を示す図21からわかるように、ピストン136が下死点付近に位置するときに、ピストン136のスカート端面152側の一部がシリンダブロック133のボア孔175から密閉容器103内の空間に露出する構成となっている。
さらに同様に、ピストン136が下死点に位置する状態からわかるように、ピストン136が下死点付近に位置するときに、凹陥部163の第1凹陥部154と第2凹陥部155はともに一部がシリンダブロック133のボア孔175から密閉容器103内の空間に露出する構成となっている。
さらに、凹陥部163の第1凹陥部154と第2凹陥部155の形状については、ピストン136のスカート端面152側に張り出す部分157の曲率は、ピストン136の先端面136f側の略直線の縁部158とのつなぎR形状156の曲率より小さく形成されている。
ピストン136は、その軸心Xを通りシャフト130に対して垂直な平面195を基準にして、鉛直方向上側192と鉛直方向下側193に分けられる。
この鉛直方向上側192において、スカート端面152から先端面136fに向かって陥没した抜き部194が左右対称に形成されている。
この抜き部194を鉛直方向上側192に設けることにより、ピストン136の鉛直方向上側192の重量は、鉛直方向下側193の重量よりも軽くなり、ピストン136は、その軸心に対して鉛直方向下側193内に重心が位置している。
このような、鉛直方向の上側と下側で重量が異なるピストン136、言い換えるとピストン136の重心が鉛直方向において中心以外にある場合のピストンについて実験した結果を図20に示す。
図20に示す通り、上記構成における密閉型圧縮機の効率を測定した結果、本実施の形態における密閉型圧縮機の効率は、従来のピストンの重心が鉛直方向において中心になるような密閉型圧縮機の効率よりも、運転される回転数に係わらず向上するとの結果が得られた。
この効率向上は圧縮機の摺動部のこじり等を抑制することと直結し、摺動部のこじり等を抑制によって騒音低減にも寄与するものである。この効率向上の理由について、以下に推察する。
ピストン136が圧縮室134内を往復運動する際に、重心位置が鉛直方向下方にずれることによって、ピストン136の鉛直方向上側192と鉛直方向下側193のそれぞれに作用する慣性力が異なりアンバランスとなるため、ピストン136のスカート端面152側がボア孔175内で鉛直方向下方に位置し先端面136f側が鉛直方向上方に位置するとか、逆に、ピストン136のスカート端面152側がボア孔175内で鉛直方向上方に位置し先端面136f側が鉛直方向下方に位置するといったように、鉛直方向上下方向に傾いて反転しながら摺動している、言い換えるとピストンが上下方向において動きしろを有することで摺動しやすくなっていると推測する。
この、ピストン136が傾いて摺動することによって、冷凍機油105による潤滑が促進され、ピストン136とボア孔175の圧縮室134を形成する内壁面との摺動において、油膜圧力が上昇し、ピストン136の往復運動する際に安定した潤滑状態を形成できるために、摺動損失を低減することができたのではないかと推察する。
次に、抜き部194の重量について説明する。
上記ピストン194の構成おいて説明した通り、ピストン136の鉛直方向上側192の重量は、鉛直方向下側193の重量よりも軽くなるように形成され、効率向上効果があることを確認している。
このように、抜き部194によってピストンの鉛直方向上側と下側の重量を異なるものとし、アンバランス量を調整することが可能となる。
一方、給油手段120は、シャフト130の回転に伴って発生する遠心力によって、冷凍機油105を上昇させ、シャフト130の給油溝(図示せず)を通って偏芯部132まで到達した冷凍機油105を密閉容器103内に散布する。
散布された冷凍機油105は当り部134に当り、切り欠き部135を介して、上方からピストン136の外周面150に滴下し付着する。
このとき、ピストン136が下死点に位置する状態で、このピストン136の凹陥部163を含む一部がシリンダブロック133から露出するように形成されているので、散布された冷凍機油105は切り欠き部135を介して、上方から直接ピストン136の凹陥部163に多めに供給されて保持される。
また、ピストン136の外周面150に滴下し付着した冷凍機油105はピストン136の往復動に伴って、凹陥部163以外のピストン136の外周面150、給油溝136bなどに供給され、ピストン136の外周面150とボア孔175との間を潤滑する。
特に、ピストン136が下死点から上死点に向かうときに、ピストン136の動きに伴
いボア孔175とピストン136の外周面150との間に冷凍機油105が効果的に引き込まれる。
ここで、凹陥部163を平面展開したときの形状がピストン136の軸芯との平行線を一切形成しないように、ピストン136のスカート方向に摺動幅が増大するような曲線形状を成すので、凹陥部163に入り込んだ冷凍機油105は、凹陥部163の先端面136f側の略直線の縁部158付近に容易に運ばれて貯溜され、さらに給油溝136bにも凹陥部163からオイルが供給されて貯溜される。
そのため、ボア孔175とピストン136の摺動部に多くの冷凍機油105が供給されるとともに、その潤滑油106が良好な状態で保持される。
この作用によって、ボア孔175とピストン136の外周面150との間には十分な油膜が維持されるため、極めて高いシール性を得ることができ、体積効率の向上による冷凍能力の向上が得られる。
さらに、凹陥部163を平面展開したときの形状がピストン136の軸芯との平行線を一切形成しない、言い換えると、凹陥部163を平面展開したときの形状がピストン136の軸芯との平行線以外の形状で構成されることによって、ピストン136の軸芯との平行線を形成したときに生ずる、往復動方向の摩耗といった局所的な摩耗を防ぐことができ、潤滑性が高まることと相まって極めて高い信頼性を得ることができる。
上記のピストン136の潤滑性の向上技術と、ピストン136の重心を軸心に対して鉛直方向の上側または下側に位置させる効率向上技術とは、それぞれが効率向上に寄与するものであるが、ピストン136の潤滑性の向上技術により、ピストン136重心による効率向上技術がさらに高められ、従来技術を基本とする標準的な密閉型圧縮機と比較して、効率向上の割合が顕著であると結論付けられる。
さらに、23rps以下の回転数で運転する際には、密閉型圧縮機164の全損失に対する固定損失の比率が大きいものの、そういった消費電力の低減効果が高い低回転数の運転において、摺動損失の低減や低振動化を実現することができ、その効果は低回転数運転で特に顕著なものとなる。
また、冷媒R600aの密度は、従来から冷蔵庫などに用いられている冷媒R134aと比較して小さいため、冷媒R134aの密閉型圧縮機164と同じ冷凍能力を得るためには、冷媒R600aを用いる場合、気筒容積が大きくなり、ピストン136の外径が大きくなる。
さらに、実施の形態1から3で説明したように、ピストンの直径を大きくすることで大きな気筒容積を形成することで幅広い回転数で運転した場合でも高い信頼性を備えた圧縮機を実現し、省エネモードでの節電運転と高負荷冷却モードでの高能力の冷却とを両立を目指す圧縮機である場合には、ピストンの外径である直径が大きくなるように構成している。
そのため、ボア孔175とピストン136との隙間を介して密閉容器103内に冷媒が漏れる流路断面積が大きくなり、冷媒が漏れやすくなる。しかしながら本実施の形態におけるピストン136は鉛直方向の上下方向のアンバランスによって上下方向に動きしろを有するといった潤滑性の向上技術により、ピストン136とボア孔175との摺動部の潤滑性を向上させることができ、ボア孔175とピストン136との隙間のシールが向上する。
従って、本発明のようにピストン136の直径が大きくなっても、効果的に冷媒160の漏れを低減することができ、高効率の圧縮機を提供することが可能となる。
また、以上のような効率の高い密閉型圧縮機164を搭載した冷凍装置を搭載した冷蔵庫においては、より消費電力を低減した冷蔵庫を提供することができる。
なお、本実施の形態においては、ピストン136の鉛直方向上側192において、スカート端面152から先端面136fに向かって陥没した抜き部194が左右対称に形成されているが、このピストン136を逆に組立てて、抜き部194が鉛直方向の下方に位置するようにしても、同様に効率が向上することを実験で確認している。
また、ピストン136の鉛直方向上側192において、スカート端面152から先端面136fに向かって陥没した抜き部194を設け、ピストン136の重心を、その軸心に対して鉛直方向下側193内に位置するようにしているが、抜き部194を設けず、第1凹陥部154を第2凹陥部155よりも大きい容積とすることで、ピストン136の重心を、その軸心に対して鉛直方向下側193内に位置するようにしても、同様に実施可能である。
また、抜き部194、第1凹陥部154、第2凹陥部155をいずれも設けず、ピストン136の鉛直方向上側192と鉛直方向下側193とで、他の構成により両者の体積が異なるように形成しても、同様に実施可能である。例えば、運転中に、ピストン136とボア孔175の圧縮室134を形成する内壁面とのクリアランス変化に殆ど影響しない程度に部分的に異なる金属を使用するといった構成などが考えられる。
以上のように、いずれにしても、ピストン136は、その軸心に対して鉛直方向上側192または鉛直方向下側193に重心が位置するように形成されていれば、運転時の効率が向上することを確認しており、その構成を実現するための詳細な構成は多数存在するものである。
例えば、抜き部194として、図22および図23に示した以外の構成を図24および図25に示す。
図24および図25において、抜き部194は、ピストン136のスカート端面152から先端面136fに向かって設けられた穴であり、鉛直方向上側192でかつ軸心を通る垂直な平面199に対して対称位置に設けられている。もちろん、抜き部194が鉛直方向の下方に位置するようにしても、同様に実施可能である。
また、本実施の形態においては、圧縮要素161を電動要素104の上方に配置しているが、圧縮要素161を電動要素104の下方に配置しても同様に実施可能であるが、振動の観点からは、圧縮要素161を電動要素104の上方に配置し、加振源である圧縮要素161からスプリング196を介して密閉容器103への振動伝達を抑制することが好ましい。
また、鉛直方向の上下方向のアンバランスによって上下方向に動きしろを有するためには、ピストン136の鉛直方向の上側と下側との重量を異なるものにする別形態として、図26に示すようにピストン136の先端面136fに凸状の突起部136gを備えてもよい。
なお、これらの鉛直方向の上下方向のアンバランスによって上下方向に動きしろを有す
るピストン形状は実施の形態3で説明したボア孔175にテーパ部134bを備えた構造と組合わせるとさらに鉛直方向の上下方向に動きしろを用いた相乗効果を得ることができるのは言うまでもない。
実施の形態3で説明したボア孔175にテーパ部134bを備えた構造によって、圧縮行程の初期には必ずピストンは動きしろを有することができ、よりスムーズに圧縮動作を行うことができるので、大きな気筒容積を形成する際に、通常であればストロークを長くする方がピストンの大きさおよび重量を低減することでアンバランス量を低減することが可能であることにもかかわらず、あえてピストンの直径を大きくすることに焦点を絞ったものであっても、圧縮行程の初期には必ずピストンは鉛直方向の上下方向における動きしろを有することで、ピストンの直径が大きく、ピストンの長さが短いために不利となる摺動部のこじり等を抑制し、振動が低く信頼性の高い大気筒容積の圧縮機を備えることが可能となる。
また、上記密閉型圧縮機164を搭載した家庭用電気冷蔵庫のような冷凍冷蔵装置(図示せず)とすることで、消費電力を低減することができる。