JP2010195977A - 水性ポリウレタン分散体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを特定以上の比率で含有するジフェニルメタンジイソシアネートと脂肪族系ジイソシアネートを特定の比率の範囲内で用いることにより、上記の課題を解決する。
【選択図】 なし
Description
(2) 脂肪族系ジイソシアネート(A2)が、ヘキサメチレンジイソシアネートであることを特徴とする、(1)に記載の水性ポリウレタン分散体。
(3) 有機ジイソシアネート(A)、高分子ポリオール(B)、カルボキシル基を含有する低分子グリコール(C)を反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーを、中和剤(D)にて中和してから水中に分散させた後、鎖延長剤(E)にて鎖延長反応を行うことを特徴とする、(1)または(2)のいずれかに記載の水性ポリウレタン分散体の製造方法。
本発明の水性ポリウレタン分散体に用いられる有機ジイソシアネート(A)としては、前記のとおり、2,4′−MDIを75質量%以上含有するMDI(A1)と、脂肪族系ジイソシアネート(A2)とを、質量比で(A1)/(A2)=60/40〜90/10(好ましくは質量比で(A1)/(A2)=65/35〜85/15、中でも、得られる樹脂において極めて優れた強靭さと柔軟性の両方の性能として併せ有する樹脂が得られるとの観点から、とりわけ好ましくは、質量比で(A1)/(A2)=70/30〜80/20)の比率で併せ用いる。この比率を外れる場合、具体的には(A1)/(A2)=0/100〜59/41の場合、水性ポリウレタン分散体の製造時において水分散時に粘度が上昇して固化するといった不具合が生じる。また(A1)/(A2)=91/9〜100/0の場合も、優れた強靭さと柔軟性のいずれかまたは両方の性能を有さない樹脂が得られる(換言すれば、本発明の所望する性能を有する樹脂を得ることができない)といった不具合が生じる。
MDIは、前記のとおり、4,4′−MDI、2,4′−MDI、並びに2,2′−MDIの3種類の異性体から構成される。本発明におけるこれらのMDIの異性体構成比は、得られる水性ポリウレタン分散体における優れた分散性を確保でき、また、生産性(具
体的には、反応制御が容易であり、得られるポリウレタン分散体も安定した品質で市場への供給が可能であること)にも優れるとの観点から、MDIを100質量%とした場合、2,4′−MDIの含有量が75質量%以上(好ましくは80質量%以上、とりわけ好ましくは、より安定した水性ポリウレタン分散体の分散性、並びに生産性を確実に併せ得られるとの観点から95.0質量%以上)である必要がある。なお、MDIの異性体構成比は、GPCやガスクロマトグラフィー(以下「GC」と略記。)によって得られる各ピークの面積百分率を基に検量線から求めることができる。
本発明に用いられる脂肪族系ジイソシアネート(A2)としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。また、これらのポリメリック体、活性水素基含有化合物と反応させて得られるウレタン化物、ウレア化物、アロファネート化物、ビウレット化物、カルボジイミド化物、ウレトンイミン化物、ウレトジオン化物、イソシアヌレート化物等も挙げられる。さらに、これら一連の脂環族系ジイソシアネートの2種以上からなる混合物も挙げられる。
本発明において使用される高分子ポリオールとしては、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオール或いはポリカーボネートポリオールなどが使用され、それらにはポリウレタン樹脂の原材料としての通常のものが用いられて、特に規定はされない。
本発明において用いられるカルボキシル基含有低分子グリコール(C)としては、末端水酸基を二個有す脂肪酸が好適に使用される。当脂肪酸は末端水酸基を活性水素基として二個有し、例えば両末端の活性水素基がイソシアネート基と反応してプレポリマーの主鎖に組み込まれ、遊離のカルボキシル基が親水性なのでプレポリマーの水分散性を高める作用をなす。活性水素基を有す脂肪酸化合物としては、例えば、末端水酸基を二個有すジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等が挙げられる。
本発明において用いられる中和剤(D)は、ウレタンプレポリマー主鎖に組み込まれたカルボキシル基含有低分子グリコールのカルボキシル基を中和して、ポリウレタン樹脂の水分散性をより高める効果を付与する。この中和剤(D)としては、例えば、第三級アミン(トリエチルアミン等)が挙げられる。
本発明において用いられる鎖延長剤(D)は、活性水素を3以上有する化合物が使用される。活性水素を3以上有する化合物としては、例えば、エチレンジアミン(EDA)、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエタノールアミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等が挙げられる。
本発明における水性ポリウレタン分散体は、前記の特定の有機ジイソシアネート(A)、高分子ポリオール(B)、カルボキシル基含有低分子グリコール(C)、中和剤(D)、並びに鎖延長剤(E)を必須とするが、必要に応じて、水への分散を促す効果を有する粘度低下剤(水への溶解度が0.1〜40質量%で引火点が50℃以上)を添加することができる。該粘度低下剤の具体例としては、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(商品名:ジメチルプロピレンジグリコール(略称:DMM、水への溶解度:37.0質量%、引火点:65℃)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(商品名:ジブチルジグリコール、略称:DBDG、水への溶解度:0.3質量%、引火点:122℃)、N−メチルピロリドン(略称:NMP、水への溶解度:(任意)質量%、引火点:91℃)等が挙げられる。
次に、本発明の水性ポリウレタン分散体の製造方法について述べる。前記一連の特定の有機ジイソシアネート(A)、高分子ポリオール(B)、カルボキシル基含有低分子グリコール(C)を反応させる。この際、前記の任意成分として挙げた水への分散を促す効果を有する粘度低下剤、並びに、ウレタン化触媒を反応系内に介在させてもよい。次いで、第三級アミン(D)にてカルボキシル基を中和して、カルボン酸アミン塩を含有して水分散性の高められたイソシアネート基末端プレポリマーを得る。このイソシアネート基末端プレポリマーを水に分散させて乳化させた後に、鎖延長剤(E)にて鎖延長反応を行うこととにより、本発明の水性ポリウレタン分散体が得られる。
撹拌機、温度計、窒素シール管、及び冷却器を装着した容量2,000mlの反応器に、ポリオールAを228.9g、ジメチロールプロピオン酸(DMPA)を24.2g、並びに低粘度化するための任意成分としてジメチルプロピレンジグリコール(DMM)を70.0g各々仕込み、90℃にて攪拌を行い、均一に混合した。次いで、60℃まで冷却した後2,4′−MDIを140.0g、HDIを15.2g各々仕込み80℃で2時間、攪拌を行いながら反応させた。次いで、低粘度化するための任意成分としてN−メチルピロリドン(NMP)を70.0g仕込み、さらに1時間攪拌を行った。攪拌後、中和前のイソシアネート基含有量が3.7質量%であることを確認した後、トリエチルアミン(TEA)を18.3g仕込んでカルボキシル基を中和して、末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを得た。
次に、撹拌機(特殊機化工業(株)製ホモミクサー)を用いて、撹拌しながら水を755.4g仕込んで転相させた。転相したらすぐに、あらかじめ水が66.3g、エチレンジアミン(EDA)が11.7gからなるアミン水(15%水溶液)を仕込み、乳化・水とアミンによる鎖延長反応を行った。
FT−IRによりイソシアネート基の存在が確認されなくなったところで反応を終了して、水性ポリウレタン分散体(樹脂エマルジョン)である「PH−A1」を得た。分散体「PH−A1」の固形分は30%、pHは9.5、25℃の粘度は140mPa・s、平均粒径(測定装置:大塚電子(株)製:電気泳動光散乱系「ELS−800」を用いて測定)は180nmであった。
一連の結果等について、表1に示す。なお、前記の表1における「中和前のイソシアネート基含有量(※1)」は、中和剤(D)、鎖延長剤(E)、並びに水を導入する前のイソシアネート基含有量を示している(以下同じ)。
表1に示す組成(配合比)に従って、前記の実施例1と同じ方法に基づいて、水性ポリウレタン分散体(樹脂エマルジョン)である「PH−A2」〜「PH−A5」並びに「PH−B1」〜「PH−B5」を得た。
なお、これらのうち「PH−B3」(比較例3)については、水分散時において高粘度化して最終的に固化したため、水性ポリウレタン分散体(樹脂エマルジョン)としての状態の諸確認を中止した(表1における分散状態の欄に「×(※2)」と記載)。
また、「PH−B4」(比較例4)と「PH−B5」(比較例5)については、水を仕込み始めた時点で、イソシアネート基と水との過度な反応性の高さに起因すると思われる発泡が起きたため、水性ポリウレタン分散体の製造を中止した(表1における分散状態の欄に各々「×(※3)」と記載)。
一連の結果等について、表1に示す。
(i) GPCによるMDIのピーク面積比=100%
(ii) MDI中の4,4′−MDIの割合=1%(GCによる測定)
(iii)MDI中の2,4′−MDIの割合=98%(GCによる測定)
(iv) MDI中の2,2′−MDIの割合=1%(GCによる測定)
(v) イソシアネート基含有量=33.6%
<4,4′−MDI>
(i) GPCによるMDIのピーク面積比=100%
(ii) MDI中の4,4′−MDIの割合=98%(GCによる測定)
(iii)MDI中の2,4′−MDIの割合=1%(GCによる測定)
(iv) MDI中の2,2′−MDIの割合=1%(GCによる測定)
(v) イソシアネート基含有量=33.6%
<HDI(本発明の有機ジイソシアネート(A2)に相当)>
ヘキサメチレンジイソシアネート
<ポリオールA(本発明の高分子ポリオール(B)に相当)>
ポリテトラメチレンエーテルグリコール
公称数平均分子量=1,000
公称官能基数=2
公称水酸基価=112(mgKOH/g)
商品名「PTG−1000SN」(保土谷化学工業(株)製)
<DMPA(本発明のカルボキシル基含有低分子グリコール(C)に相当)>
ジメチロールプロピオン酸
商品名「DMPA」(GEOスペシャリティケミカルズ社製)
<DMM(任意成分)>
ジメチルプロピレンジグリコール(略称:DMM)
水への溶解度:37.0質量%
引火点:65℃
商品名「ジメチルプロピレンジグリコール」(日本乳化剤(株)製)
<NMP(任意成分)>
N−メチル−2−ピロリドン
水への溶解度:(任意)質量%
引火点:91℃
商品名「N−メチル−2−ピロリドン」(三菱化学(株)製)
<TEA(本発明の中和剤(D)に相当)>
トリエチルアミン
商品名「トリエチルアミン」(キシダ化学(株)製)
<EDA(本発明の鎖延長剤(E)に相当)>
エチレンジアミン
商品名「エチレンジアミン」(東ソー(株)製)
<水>
精製水
各実施例並びに比較例(一部を除く)において得られた各々の水性ポリウレタン分散体について、各々200gをガラス製サンプル瓶に仕込み、25℃雰囲気下で24時間静置した。静置後、目視による分散状態の確認・評価を行った。結果を表1並びに表2に示す。
「○」:均一な分散状態が保持されている。
「△」:若干ながら液の相分離の兆候が見られる。
「×」:高粘度となり固化、または、評価不可能(前記参照)。
各実施例において得られた各々の水性ポリウレタン分散体について、板ガラスに水性ポリウレタン分散体をキャストして25℃で5日間乾燥させて、所定の膜厚を有する乾式フィルムを作成し、以下に記載する物性測定を行った。一連の結果を表2に示す。
<引張物性>
引張試験(25℃:100%モジュラス、破断時強度、伸び):
引張速度=200mm/分
JIS K6301(1995)の4号ダンベルにて打ち抜いてサンプルを作成した。
引張物性測定装置:オリエンテック(株)製 テンシロン UTA−500
<引き裂き物性>
引き裂き試験(25℃:引き裂き強度):
JIS K7312に従って測定した。
Claims (3)
- 有機ジイソシアネート(A)、高分子ポリオール(B)、カルボキシル基含有低分子グリコール(C)、中和剤(D)、鎖延長剤(E)を反応させて得られるポリウレタン樹脂を水中に乳化させてなる水性ポリウレタン分散体において、有機ジイソシアネート(A)が、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートを75質量%以上含有するジフェニルメタンジイソシアネート(A1)と、脂肪族系ジイソシアネート(A2)からなり、かつ、(A1)と(A2)の質量比が(A1)/(A2)=60/40〜90/10であることを特徴とする、水性ポリウレタン分散体。
- 脂肪族系ジイソシアネート(A2)が、ヘキサメチレンジイソシアネートであることを特徴とする、請求項1に記載の水性ポリウレタン分散体。
- 有機ジイソシアネート(A)、高分子ポリオール(B)、カルボキシル基を含有する低分子グリコール(C)を反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーを、中和剤(D)にて中和してから水中に分散させた後、鎖延長剤(E)にて鎖延長反応を行うことを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれかに記載の水性ポリウレタン分散体の製造方法。
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