<本発明の磁性キャリア>
以下、本発明を詳細に説明する。
図5に、本発明の磁性キャリアについて、圧縮荷重と、圧縮抵抗値(R80及び、R360)の規定範囲と電子写真特性の模式図を示した。
前述の通り、本発明の磁性キャリアは、磁性体を含有する磁性キャリアコアと該磁性キャリアコアの表面に樹脂被覆層とを有する磁性キャリアであって、
i)80kPaの圧縮下、直流電圧10V印加時における体積抵抗(R80)と360kPaの圧縮下、直流電圧10V印加時における体積抵抗(R360)が、式(1)を満足し、
1.0×103≦R80/R360≦1.0×105 ・・・ 式(1)
ii)360kPaの圧縮下、直流電圧10V印加時における体積抵抗(R360)が、2.0×106Ω・cm以上5.0×109Ω・cm以下であることを特徴とする。
本発明は、磁性キャリアを上記の範囲に制御することで、トナーを現像する二成分現像方式において、トナーの帯電量が比較的高く、静電的な付着力の強い、NL環境で、優れた現像性(高い画像濃度と白抜けが無い)を発揮できる。と同時に、HH環境において、10万枚使用しても、画像劣化が無く、また、連続使用後に1週間長期放置されても、ウエイト時間を延ばすことなく高画質を維持したまま、クイックスタートが可能である。さらには、現像時の磁性キャリアへの電荷注入を防止でき、キャリア付着がなく、高画像濃度を得ることができる。
より好ましい範囲は、1.0×103≦R80/R360≦1.0×104且つ、2.0×106Ω・cm≦R360≦5.0×108Ω・cmである。
従来、NL環境下での高い現像性を達成するため、磁性キャリアの樹脂被覆層中に導電性物質を含有させ、その結果、磁性キャリアの体積抵抗を低く(1.0×107から1.0×109Ω・cm)していた。この場合、NL環境の現像性はあるレベルで維持できるが、HH環境下で高い画像比率(画像比率30%)で10万枚使用し、長期放置を行った場合、かぶりレベルが悪化することがあった。これは、以下のようなメカニズムによると考えられる。
従来から使用されている、磁性キャリアの体積抵抗が1.0×107から1.0×108Ω・cmである場合、磁性キャリア被覆層に導電性物質を含有することで、コアと被覆層表面とをつなぐ導通経路ができる。また、HH環境下では、トナー、磁性キャリアの表面に水分が十分に存在する。HH環境で、高い画像濃度で耐久された現像剤中のトナー表面に存在する電荷は、一週間HH環境に放置される間に、磁性キャリア表面から、現像剤担持体(以下スリーブと記す)を通じて、リークしてしまいトナーの帯電量は低下する。その結果、かぶりレベルが悪化すると考えられる。
これを回避するために、磁性キャリア被覆層に導電性物質を含有させず、高抵抗の被覆層を施すことで、コアと被覆層表面との導通経路をなくし、上記の電子のリークを防ぐ提案もなされているが、この磁性キャリアを使用した場合には、高抵抗の被覆層が厚いため、NL環境での現像性が十分でなく。10万枚長期耐久を行うと、画像濃度低下や、カブリなどの画像不良が発生することがあった。これは、以下のメカニズムによると考えられる。
トナーが磁性キャリア表面から飛翔し、消費されるときに、磁性キャリア表面にトナーとは反対の極性の電荷が発生する。これをカウンターチャージと呼ぶ。カウンターチャージが磁性キャリアに蓄積すると、トナーと磁性キャリアの静電的付着量が増加すると考えられる。トナーと磁性キャリアの付着量が増加した現像剤からは、トナーが飛翔(現像)しにくくなる。よって、現像性が低下し、結果、画像濃度低下や、白抜け画像レベルの悪化が発生する。さらには、トナーが磁性キャリア表面から離れにくくなるため、補給されたトナーへの帯電付与能力も低下し、トナーの帯電量分布がブロードになり、かぶりが発生する原因ともなる。
次に、圧縮時の磁性キャリアの特徴とその作用効果についての関係を説明する。
高圧縮時の磁性キャリアの体積抵抗値、即ち(R360)は、二成分系現像剤を感光体と接触させ、交番電界と直流電界を重畳させる、即ち現像バイアスが印加される際にトナーを飛翔させる、磁性キャリアの現像特性と高い相関を示すと考えられる。また、低圧縮時の磁性キャリア体積抵抗値、即ち(R80)は、HH環境で、10万枚使用後の現像剤が放置された際のトナー表面の電荷のリーク特性に高い相関を示すと考えられる。
圧縮荷重360kPaの環境は、現像器内で現像剤が機械的に圧縮され、さらに現像バイアスが印加される様な、現像剤に大きなシェアが掛けられる実際の状況により近い環境であると考えられる。即ち、圧縮荷重360kPaでの磁性キャリアの比抵抗値(R360)は、NL環境下の現像特性と高い相関を示すと考えられる。
これは、NL環境でのトナーの帯電量とも関係する。NL環境下では、常温低湿であるため、絶対水分量が低く、放電する電荷が少ないため、二成分現像剤中のトナーの帯電量は他の環境よりも、高い状態にある。その環境下で、充分な画像濃度が得るために、現像剤には、最も高い現像バイアスが印加されている。高い現像バイアスの印加によって、現像部の磁力密度が高くなり、現像部に存在する現像剤へのシェアは高くなっていると考えられる。
本検討の磁性キャリアは、2.0×106Ω・cm≦R360≦5.0×109Ω・cmと、実際の現像条件下での磁性キャリア体積抵抗値が低いため、カウンターチャージを好適に除去することができ、NL環境での現像特性に優れている。
また、(R360)の値が5.0×109Ω・cmを上まわる場合には、特にトナーの帯電量が高い現像剤の場合、カウンターチャージが磁性キャリアに蓄積しやすくなり、NL環境で耐久した場合に、現像性を良好に維持できなくなり、画像濃度の低下やカブリなどの画像不良が発生する場合がある。また、(R360)の値が2.0×106Ω・cmを下まわる場合には、磁性キャリアの抵抗値が低すぎて、感光体の潜像を乱してしまい、高画質を得られない場合がある。
次に、圧縮荷重80kPaの環境は、現像器内で現像剤がスリーブ上、現像器の容器内で、圧縮や現像バイアスが印加されていない、即ち現像剤にシェアが掛かっていない状態に近い環境であると考えられる。よって、圧縮荷重80kPaでの磁性キャリアの体積抵抗値(R80)は、HH環境下で10万枚使用後、一週間放置された後の現像特性と高い相関を示すと考えられる。
本検討の磁性キャリアは、(R80)の値が、(R360)に比べて高いため、HH環境において、磁性キャリア表面、さらにはスリーブを通じたトナーに帯電した電子のリークが発生しにくく、トナーの帯電量変化が少ない。そのため、長期にわたりHH環境に放置しても、帯電量が維持され、結果、ウエイト時間を延ばすことなく高画質を維持したまま、クイックスタートが可能となる。これは、HH環境に放置され、帯電量が低下する場合、カブリなどの画像不良が発生してしまう。これを回避するために、現像器内の二成分現像剤を保持しているスリーブを空回転させ、帯電量を元のレベルまで上昇させる時間必要となり、結果、クイックスタートが困難となってしまう。
また、R80/R360が1.0×103を下回る場合には、NL環境での現像特性とHH環境での10万枚使用後、一週間放置した際の画像レベル維持の両立を達成することが困難となる場合がある。例えば、(R80)が4.0×107Ω・cm、(R360)が2.0×107Ω・cmであると、NL環境での現像性は良好な結果を示すが、HH環境での耐久後、長期放置した際の画像レベルの維持が困難となる場合がある。
本発明の圧縮時の磁性キャリア体積抵抗率の測定方法を説明する。
本発明の磁性キャリアを、23℃、50%RH下で圧縮時の体積抵抗を測定した。測定には、高抵抗率測定器ハイレスタ(三菱油化製)と三菱化学(株)社製粉体抵抗測定冶具(MCP−PD41)を用いた。測定条件として、磁性キャリア5gを用い、80kPa及び360kPaの圧縮下、直流電圧を10V印加して測定し、磁性キャリアの体積抵抗(Ω・cm)を求めた。
二成分系現像剤から、本発明の磁性キャリアを取り出す方法としては、以下の方法が挙げられる。二成分系現像剤を10g準備し、ビーカーにイオン交換水100mlと、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.2ml加えた後、二成分系現像剤を加える。そして、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散機「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製)を用いて2分間分散処理を行う。ビーカーの外側に磁石をつけて、キャリアから洗い落とされたトナー成分を捨てる。さらに、イオン交換水100mlを加え超音波戦場器分散器に30秒分散処理を行う。このイオン交換水の処理をさらに4回行った後、50度に設定された高温槽に24時間放置し、乾燥させる。
なお、本発明における磁性キャリアの体積抵抗率1.0×103≦R80/R360≦1.0×105、2.0×106(Ω・cm)≦R360≦5.0×109Ω・cmを達成するために、磁性キャリアの製造工程において、より均一な膜を形成できるコーティング工程と、多段階のコーティング工程と、磁性キャリア同士の凝集や合一を防止するコーティング工程を用いることがより好ましい。
より均一なコーティングは、例えば、該磁性キャリアコア粒子および/または磁性キャリア粒子の凝集をスクリーンを通過する際に生じる機械的な解砕力により解砕し、分散する工程後に該スクリーンを通過した磁性キャリアコアに樹脂溶液をスプレーするコーティング工程を有することにより可能となる。
さらに、例えば、該コーティング工程において、コーティングする際の溶液の濃度を3質量%から10質量%程度に調整することにより均一なコーティングを達成することもできる。これにより、磁性キャリア表面に付着したコート溶液の液滴状態が制御され、均一な膜を形成するとともに磁性キャリア同士の凝集や合一も軽減できる。
さらに、コーティングを多段階で行う場合、コートの成分を変更する前に、溶剤を吹き付ける処理(トリートメント処理)を行うことで、さらに表面に凹凸の無い均一なコーティングを施すことが可能である。これは、層と層とがより均一に密着する(層と層との間に間隙がほとんど無い)ためであると推察される。
さらに、該コーティング工程において、スプレー圧(コートワニスを吹き付ける圧力)を0.33以上0.83Nl(ノルマルリットル)S-1以下にすることが、磁性キャリアコアを均一にコーティングするうえでより好ましい。より好ましくは、0.50以上0.83Nl(ノルマルリットル)S-1以下である。
さらに、スプレーノズルはシュリックタイプを用いることで、ノズルの圧を高めに(〜50Nl)設定することができ、スプレー液突出部分に、磁性キャリアが付着しにくいので、より安定したコーティングを施すことが可能になる。
均一なコーティング工程により、コーティングされた磁性キャリアの凝集物がほとんど存在しないことから、これまで以上に、キャリア付着が発生しなくなった。
本発明の圧縮抵抗の範囲を示す磁性キャリアは、より均一なコーティング層を多層に形成することにより得ることが可能である。コア表面に接する1層目には、導電性粒子を含有させない、または、少量含有させた、比較的体積抵抗の高い樹脂層を形成し、最表層には1層目よりも膜の抵抗の低い被覆層を形成させることで、所望の抵抗を示す磁性キャリアを得ることができる。
また、磁性キャリア最表面に形成されるコーティング層中に絶縁性の微粒子が含有されていることがより好ましい。これは、磁性キャリア粒子表面の絶縁性微粒子がトナーと点接触することでトナーと磁性キャリア間での高摩擦帯電量が得られ易くなるためである。
一方で、従来より提案されている、コーティング工程時にスクリーンがコート装置内部に配設されていない流動床型のコーティング装置を用いた場合、コート中に磁性キャリア同士の凝集が発生しやすくなり、好適な均一コーティングを達成しにくくなる場合がある。
好適な均一コーティングができないと、磁性キャリアコアが露出してしまうこと等により、本検討の圧縮抵抗の範囲を外れてしまう場合がある。
本発明で、好適に使用されるコーティング装置の例を図1に示した。該コーティング装置は、装置内部に図2に示した羽根3を有し、図3に示したスクリーン2が内部に配設された処理容器1を有する装置であって、該スクリーンの内部に沿って下降する該磁性キャリアコア粒子および/または磁性キャリア粒子の凝集を該スクリーンを通過する際に生じる機械的な解砕力により解砕し、分散するコーティング工程を有する。
図2に示した羽根3及び、図3に示したスクリーン2を有するコーティング装置を用いた方が、より均一なコーティングを行う上で、より好ましい。
<本発明で用いる磁性キャリアコア>
本発明に用いる磁性キャリアコアについて説明する。
本発明に用いられる磁性キャリアコアは、5000V/cm印加時の体積抵抗(RC)が、1.0×105Ω・cm以上1.0×108Ω・cm以下であることを特徴とする。
本発明では、該磁性キャリアコアを上記範囲にすることで、トナーを現像する二成分現像方式において、トナーの帯電量が比較的高く、静電的な付着力の強いNL環境で、現像条件を低く抑えた条件で、優れた現像性(高い画像濃度と耐久安定性)を発揮できる事を見いだした。具体的には、従来、NL環境にて所望の画像濃度を得るために、現像バイアス条件が交流1.8kVpp必要だったものが、1.5kVpp以下に軽減することが可能になった。これにより、現像剤への負担が減少することとなり、トナーの劣化や、感光体へのキャリア付着の軽減を達成できる。
該磁性キャリアコアのより好ましい体積抵抗の範囲は、1.0×106Ω・cm以上1.0×108Ω・cm以下である。これにより、NL環境で、長期耐久を行った際にも、安定した現像特性を示すことが分かった。
<磁性キャリアコアの体積抵抗の測定>
本発明に用いられる磁性キャリアコアの体積抵抗は、図4に概略される測定装置を用いて測定される。抵抗測定セルAに磁性キャリア23を充填し、充填された磁性キャリアに接するように下部電極21および上部電極22を配し、これらの電極間に電圧を印加し、そのときに流れる電流を測定することによって磁性キャリアの体積抵抗を求める。
体積抵抗の測定条件は、充填された磁性キャリアと電極との接触面積Sを約2.3cm2、充填された磁性キャリアの試料厚みdを約0.8mm、上部電極22の荷重を180gとする。
なお、非磁性無機化合物、磁性体および導電性粒子の体積抵抗の測定も同様に行うことができる。
該磁性キャリアコアの成分としては、磁性を有する粒子であれば、公知のマグネタイト粒子、フェライト粒子、磁性体分散型樹脂粒子のいずれでもよい。中でも磁性キャリアの真比重が低くなるフェライトや磁性体分散型樹脂粒子が磁性キャリアコアを使用すると、コートする際の流動層の形成には好適である。さらに、トナーに対するストレス軽減によりトナースペント防止の効果も発現できるためにより好ましい。
具体的には、磁性体分散型樹脂粒子の具体的な作製方法としては、以下の方法が挙げられる。例えば、鉄粉、マグネタイト粒子、フェライト粒子の如きサブミクロンの磁性体を熱可塑性樹脂中に分散させるように混練し、所望の磁性キャリア粒径まで粉砕し、必要に応じて熱的または機械的な球形化処理を施して得ることができる。
また、磁性体をモノマー中に分散させ、モノマーを重合して樹脂を形成することにより磁性キャリアコアを重合法により作製することも可能である。
また、重合法により作製する場合、磁性体の個数平均粒径は0.10乃至0.40μmであることが磁性キャリアコアを調整する際に、粒度分布をシャープにする上で好ましい。
0.10μm未満、または0.40μmより大きな粒子を用いた場合、粒度分布が広くなったり、磁性キャリアコアの形状が不均一になる場合がある。
樹脂としては、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂及びポリエーテル樹脂の如き樹脂が挙げられる。樹脂は、一種であっても、二種以上の混合樹脂であってもよい。特に、フェノール樹脂は、磁性キャリアコアの形状安定性及び強度の点で好ましい。磁性キャリアの真比重及び磁性キャリアコアの体積抵抗を制御するためには、磁性体の量を増減することで所望のものを得ることができる。具体的には、マグネタイト粒子の場合、磁性キャリアに対して70質量%以上95質量%以下添加することが好ましい。
なお、本発明の磁性キャリアコアの体積抵抗値については、含有させる磁性体の体積抵抗(製造時の焼成における雰囲気を酸素濃度を低めて還元雰囲気に制御すること、及び磁性体の疎水化処理量を増減することで体積抵抗を調整できる)、及び含有させる磁性体の量を増減させることによって調製することができる。また、フェライトコアの場合には、最終焼成時の雰囲気を酸素濃度を低めて還元雰囲気に制御することで体積抵抗を調整できる。
本発明の磁性キャリアの製造方法に用いる上記磁性キャリアコア粒子は、個数基準の円相当径50%値が15乃至70μmであることが好ましい。これにより、磁性キャリアの円相当径50%値を所望のものとすることができる。なお、上記個数基準の円相当径50%値については、磁性キャリアを特定する際に用いる定義と同義である。また、その測定方法についても磁性キャリアと同様である。磁性キャリアコア粒子の円相当径50%値の調整は、上述したように、その造粒条件を制御することで可能となる。
本発明の磁性キャリアは、真比重が2.5乃至4.2g/cm3であることが好ましく、3.0乃至3.8g/cm3であることがより好ましい。また、流動層を用いた装置を用いてコートする場合には、磁性キャリアコアは、見かけ密度が1.5g/cm3以上2.2g/cm3以下、より好ましくは1.7g/cm3以上2.0g/cm3以下となるものが、良好な流動層を形成し、磁性キャリアコアの分散を良好にするために好ましい。
また、この範囲の真比重を有する磁性キャリアを含む二成分系現像剤は、撹拌し混合されてもトナーへかかる負荷が少なく、磁性キャリアへのトナースペントが抑制される。
低電界強度における良好な現像性とキャリア付着の防止を両立させるためにもこの範囲の真比重が磁性キャリアにとって好ましい。なお、磁性キャリアコアの見かけ密度は、磁性キャリアコア製造時の造粒条件により、形状、粒度分布を制御することで、所望の見かけ密度の磁性キャリアコアを得ることができる。また、本願でいう見かけ密度とは、一定容積の容器に磁性キャリアコアを一定高さの漏斗から落下させて十分に充填し、その内容積を体積としたときの密度を意味する。磁性キャリアコアの見かけ密度は、「規定漏斗から注ぐことができる材料の見掛け密度の求め方」に準じた測定装置によって求めることができる。
<本発明磁性キャリアの中間樹脂被覆層>
本発明は、該樹脂被覆層は、該磁性キャリアコアと接する中間樹脂被覆層をさらに有し、該中間樹脂の体積抵抗(RM1)が1.0×1010Ω・cm以上1.0×1016Ω・cm以下である事が好ましい。
本発明では、該中間樹脂被覆層を上記範囲にすることで、NL環境での優れた現像性(充分な画像濃度)及び耐久安定性と、HH環境で10万枚使用後に一週間放置されても、ウエイト時間を延ばすことなく高画質を維持したまま、クイックスタートが可能になる。さらに、HH環境で耐久性が特に厳しかったBkトナーでも10万枚使用後に、一週間放置後されても、カブリのレベルが、これまで以上に良好であった。
より好ましい範囲は、該中間樹脂の体積抵抗(RM1)が1.0×1010Ω・cm以上1.0×1014Ω・cm以下である。
本発明は、上記抵抗の範囲を示す中間樹脂被覆層が、磁性キャリアコアと抵抗の低い最表面の被覆層との間に少なくとも存在することで、該圧縮時の体積抵抗(R80/R360)値をより好適に達成したと考えられる。さらに、該スクリーンがコート装置内部に配設されたコート装置を用いることで、磁性キャリアコアと中間樹脂被覆層、中間樹脂被覆層と最表面被覆層との密着状態が緻密に形成され、より好適に、上記圧縮抵抗の範囲を達成できるものである。
該中間樹脂被覆層の体積抵抗を測定する方法は以下の通りである。
磁性キャリアにコートする樹脂、導電性粒子、溶剤(本件では、トルエンを使用した)、を用いて20質量%のワニスを調製し、アルミ箔上にバーコーター(#60)を用いてコート膜を作製した。次いで100℃1時間乾燥処理を行った。23℃、50%RH下で5時間放置後、ローレスター4深針プローブを用いて膜(中間樹脂被覆層)の体積抵抗を測定した。該ワニスの調製には、粒径1mmのガラスビーズを分散助剤として用い、900mlのガラス瓶中に投入し、ペイントシェーカー(東洋精機製)を用いて、2時間振とうさせた後、フィルターを用いて、ガラスビーズを除去した。
本発明に用いる被覆用の樹脂組成物は、導電性微粒子を含んでいることが好ましい。磁性キャリアコアを被覆する樹脂に含まれる導電性微粒子は、体積抵抗が1.0×10-4Ω・cm以上1.0×102Ω・cm以下であることがより好ましい。
導電性微粒子は、カーボンブラック微粒子、グラファイト微粒子、酸化亜鉛微粒子、および酸化錫微粒子が挙げられる。特に導電性微粒子としてカーボンブラック微粒子が好ましい。カーボンブラック微粒子は、その粒径をより小さくすることができるので、微粒子による磁性キャリア粒子表面の微細突起の形成を阻害することがなく、磁性キャリアの体積抵抗を制御することができる。
該中間樹脂被覆層に用いられる導電性微粒子の量は、コートに用いられる樹脂100質量部に対して、1乃至20質量部であることが好ましい。より好ましくは1乃至10質量部である。
本発明に用いる該磁性キャリアの最表面にコートされる樹脂組成物は、用いられる樹脂100質量部に対して、2乃至80質量部の導電性微粒子を含有することが好ましい。これにより磁性キャリアの体積抵抗を本件の所望の範囲に制御することができる。
磁性キャリアコアの樹脂被覆層の形成に用いられる熱可塑性樹脂としては、以下のものが挙げられる。ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン樹脂、フルオロカーボン樹脂、パーフロロカーボン樹脂、溶剤可溶性パーフロロカーボン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、石油樹脂、セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ノボラック樹脂、低分子量ポリエチレン、飽和アルキルポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂。より好適に用いることの出来る樹脂としては、Tgが70℃以上のものが、トナースペントを良好に防止できるために好ましい。さらに、式(A1)で示される構造を有するモノマーを重合した樹脂であることが好ましい。
(式中、R
1は炭素数4以上25以下の炭化水素基を示す)
さらに式(A1)と式(A2)で示される構造を有するモノマーとを重合した共重合体であることが、スプレーコートしたときにより均一に磁性キャリアコアを被覆し得、磁性キャリアコアと樹脂層との密着性を高める上で好ましい。また、高湿下での摩擦帯電性を良好にするために、式(A1)で示されるモノマーと、式(A2)で示されるモノマーと、メタクリル酸メチルモノマーとを重合した共重合体であることが好ましい。それぞれの比率は、(A2)の繰り返し回数nが50である場合、モノマー質量比で(A1):(A2)は、95乃至60:5乃至40の範囲であることが好ましい。また、(A2)の繰り返し回数nが50である場合、(A1):(A2):メタクリル酸メチルは、95乃至30:3乃至30:2乃至40であることが好ましい。
樹脂被覆層を形成するための他の樹脂としては、以下のものが挙げられる。フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、無水マレイン酸とテレフタル酸と多価アルコールとの重縮合によって得られる不飽和ポリエステル、尿素樹脂、メラミン樹脂、尿素−メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−グアナミン樹脂、アセトグアナミン樹脂、グリプタール樹脂、フラン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂。中でもシリコーン樹脂が離型性を有しているので好ましい。また、シリコーン樹脂には、カップリング剤を含有しても良い。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤が挙げられる。本発明に好ましく用いられるシランカップリング剤としては、以下のものが挙げられる。γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、(以上トーレ・シリコーン社製)、アリルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、1,3−ジビニルテトラメチルジシラザン、メタクリルオキシエチルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド(以上チッソ社製)。
上述した樹脂は、単独でも使用できるが、それぞれを混合して使用してもよい。また、熱可塑性樹脂に硬化剤を混合し硬化させて使用することもできる。
また、熱可塑性樹脂と熱硬化系樹脂を交互にコーティングすることもできる。さらにはそのコーティングする順序も任意に選択できる。
また、樹脂被覆層を形成している樹脂の重量平均分子量Mw(THF可溶分)は、15,000乃至300,000であることが、磁性キャリアコアとの密着性、コートする際に均一にコア表面を被覆することができるため好ましい。
また、被覆用の樹脂組成物は微粒子を含有していることが好ましい。磁性キャリアコアを被覆する樹脂被覆層における該微粒子の含有量は、被覆樹脂100質量部に対して、微粒子2乃至80質量部の割合で含有されることが好ましい。
本発明に用いる樹脂組成物に含まれる微粒子としては、有機材料および無機材料のいずれの微粒子であってもよいが、被覆する際に、微粒子の形状を保持することができる強度を有している架橋樹脂微粒子及び無機微粒子が好ましい。架橋樹脂微粒子を形成する架橋樹脂としては、架橋ポリメチルメタクリレート樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂及びナイロン樹脂が挙げられる。また、無機微粒子としては、マグネタイト、ヘマタイト、シリカ、アルミナ、チタン含有金属酸化物が挙げられる。特に、上記の無機微粒子は、トナーへの帯電付与の促進、チャージアップの低減、及びトナーとの離型性の向上の点で好ましい。更に該微粒子は、メラミン樹脂であることが、トナーへの帯電付与性を高めるうえで、より好ましい。メラミン樹脂の平均粒径は、0.1以上0.5μmがコーティングを均一に行ううえで好ましい。
本発明の磁性キャリア粒子の樹脂被覆層は、用いられる樹脂100質量部に対して、2乃至80質量部の微粒子、および、2乃至50質量部の導電性微粒子を含有することが好ましい。これにより磁性キャリアの体積抵抗を下げすぎず、かつ磁性キャリア粒子表面の残留電荷を除去しやすくするためである。
<本発明磁性キャリアの磁性キャリアコアと中間樹脂被覆層の抵抗の関係>
本発明は、該磁性キャリアコアの体積抵抗(RC)(Ω・cm)と、該中間樹脂の抵抗RM1が以下の関係にある事をが好ましい。
1.0×102≦RM1/RC≦1.0×106
本発明では、該磁性キャリアを上記範囲にすることで、NL環境での優れた現像性を達成出来た。具体的には、充分な画像濃度に加え、10万枚の耐久後でも、白抜けが発生しなかった。さらに、HH環境で連続使用後に一週間放置されても、ウエイト時間を延ばすことなくカブリをさらに高いレベルで押さえることが出来た。さらには、10万枚使用後でも、NL環境、HH環境において、現像時の磁性キャリアへの電荷注入を防止することで、キャリア付着が発生しなかった。
より好ましい範囲は、1.0×103≦RM1/RC≦1.0×106である。
磁性キャリアコアと中間樹脂被覆層の抵抗の比が上記範囲であることで、NL環境で、トナー現像時に発生するカウンターチャージを瞬時に除去できると同時に、HH環境では、1週間現像剤が放置されても、トナー表面の電荷をリークさせることなく、現像剤中のトナーの帯電量を維持することができたと考えられる。
<中間樹脂被覆層の膜厚>
本発明は、該中間樹脂被覆層の膜厚が、0.2μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
本発明では、該磁性キャリアを上記範囲にすることで、NL環境、HH環境においても、耐久性がより優れた結果となった。具体的には、NL環境、HH環境において、10万枚の耐久後でも、充分な画像濃度に加え、カブリが発生しなかった。さらに、HH環境で使用後に一週間放置されても、ウエイト時間を延ばすことなく高画質を維持したまま、クイックスタートが可能になった。
より好ましい範囲は、0.2μm以上0.8μm以下である。
中間樹脂被覆層の膜厚を上記範囲に制御することで、磁性キャリアの表面を比較的薄く均一に被覆することができる。これにより磁性キャリア表面状態が、樹脂のコートムラによる凹凸が無く、より平滑であるため、トナー中の外添剤の蓄積や、2.0μm以下トナー微粒子の磁性キャリア表面への付着が抑えられたと考えられる。
該中間樹脂被覆層の膜厚の測定方法は、トナーの断面を観察するのと同様の方法で、磁性キャリアの断面を透過電子顕微鏡(TEM)(各50,000倍)で観察し、被覆層の厚みを計測した。本発明の磁性キャリアでは、中間樹脂被覆層と最表面樹脂被覆層に含有される導電性微粒子の量が異なるため、該測定方法でも容易に中間樹脂被覆層を断定することができる。
<本発明のコーティング装置>
本発明で好ましく用いられるコーティング装置は、処理容器と、該処理容器の内部に配設された導入管と、磁性キャリア粒子の凝集を機械的な解砕力によって分散するための解砕機構とを備える。また、該装置では、処理容器の底部から流動化気体を導入することにより、処理容器内の磁性キャリア粒子が、処理容器の内壁と導入管との間の空間部を上昇し、導入管の内部を下降する方向に循環する流動層が形成される。そして、導入管の内部に沿って下降する磁性キャリア粒子の凝集が該解砕機構によって分散される構成を有している。
本発明では、このような機械的な解砕力によって磁性キャリア粒子の凝集を分散するための解砕機構として、回転羽根の解砕羽根と所定の間隙を設けて配設されたスクリーンを備えたものを用いている。
また、本発明で用いる装置には、該解砕機構を通過した磁性キャリア粒子を遠心力によって、流動化気体の上昇気流に送る回転ロータが配設されている。また、処理容器の内部で流動循環する磁性キャリアコア/磁性キャリア粒子に向けてコート溶液を噴霧するスプレーノズルが配設され、その場合、スプレーノズルは、解砕機構を通過した磁性キャリア粒子にコート溶液を噴霧可能に配設することが重要である。
<本発明に用いられるトナー>
本発明の磁性キャリアを用いる二成分系現像剤に用いられるトナーの好ましい態様として、以下のトナーが挙げられる。
本発明に用いられるトナーは、ポリエステルユニットを主成分とする樹脂および着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーである。「ポリエステルユニット」とは、ポリエステルに由来する部分を示し、また「ポリエステルユニットを主成分とする樹脂」とは、樹脂を構成する繰り返し単位の多くが、エステル結合を有する繰り返し単位である樹脂を意味するが、これらは後に詳細に説明される。
ポリエステルユニットはエステル系モノマーを縮重合させることにより形成される。エステル系モノマーとしては、多価アルコール成分、および多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、又は2以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸エステルの如きカルボン酸成分が挙げられる。
多価アルコール成分のうち二価アルコール成分としては、以下のものが挙げられる。例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの如きビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が例示できる。
多価アルコール成分のうち三価以上のアルコール成分としては、以下のものが挙げられる。例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が例示できる。
ポリエステルユニットを構成するカルボン酸成分としては、以下のものが挙げられる。例えば、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6〜12のアルキル基で置換された琥珀酸又はその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物等が例示できる。
トナー粒子に含まれるポリエステルユニットを有する樹脂の好ましい例としては、以下のものが挙げられる。即ち、下記式(1)で表される構造に代表されるビスフェノール誘導体をアルコール成分とし、2価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、ドデセニルコハク酸、トリメリット酸、ピロメリット酸)をカルボン酸成分として、これらを縮重合させることにより得られるポリエステル樹脂である。このポリエステル樹脂は、良好な帯電特性を有する。このポリエステル樹脂の帯電特性は、二成分系現像剤に含まれるカラートナーに含まれる樹脂として用いられた場合に、より有効に働く。
〔式中、Rはエチレン基及びプロピレン基から選ばれる1種以上であり、x及びyはそれぞれ1以上の整数であり、且つx+yの平均値は2以上10以下である。〕
また、トナー粒子に含まれるポリエステルユニットを有する樹脂の好ましい例には、架橋部位を有するポリエステル樹脂が含まれる。架橋部位を有するポリエステル樹脂は、多価アルコールと、三価以上の多価カルボン酸を含むカルボン酸成分を縮重合反応させることにより得られる。この三価以上の多価カルボン酸成分の例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、およびこれらの酸無水物やエステル化合物が挙げられる。縮重合されるエステル系モノマーに含まれる三価以上の多価カルボン酸成分の含有量は、全モノマー基準で0.1mol%以上1.9mol%以下であることが好ましい。
さらに、トナー粒子に含まれるポリエステルユニットを有する樹脂の好ましい例としては、(a)ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂、(b)ハイブリッド樹脂とビニル系重合体との混合物、(c)ポリエステル樹脂とビニル系重合体との混合物、(d)ハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂との混合物、(e)ポリエステル樹脂とハイブリッド樹脂とビニル系重合体との混合物が挙げられる。
なお、ハイブリッド樹脂は、ポリエステルユニットと、アクリル酸エステルの如きカルボン酸エステル基を有するモノマー成分を重合して得られるビニル系重合体ユニットとが、エステル交換反応して結合することにより形成される。ハイブリッド樹脂としては、ビニル系重合体を幹重合体、ポリエステルユニットを枝重合体とするグラフト共重合体あるいはブロック共重合体が挙げられる。
ビニル系重合体ユニットとは、ビニル系重合体に由来する部分を示す。ビニル系重合体ユニットまたはビニル系重合体は、ビニル系モノマーを重合させることで得られる。
本発明のトナーを用いる画像形成方法は、いずれもオイルレス定着を採用する電子写真プロセスに用いられることが好ましい。そのため、本発明に用いられるトナーは離型剤を含有することが好ましい。
離型剤としては、以下のものが挙げられる。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、またはそれらのブロック共重合物;カルナバワックス、モンタン酸エステルワックス、ベヘン酸ベヘニルの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したものが挙げられる。
好適な離型剤としては、炭化水素系ワックス及びパラフィンワックスが挙げられる。トナーは示差走査熱量分析測定におけるトナーの吸熱曲線における温度30℃以上200℃以下の範囲に一又は二以上の吸熱ピークがあり、該吸熱ピーク中の最大吸熱ピークの温度が50℃以上110℃以下であると、低温定着性と耐久性が良好なトナーとなりうる。
本発明に用いられる有彩色のトナー、及び透明トナーにおける離型剤の含有量は、トナー粒子中の結着樹脂100質量部に対して1質量部以上15質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。離型剤の含有量が1質量部以上15質量部以下であると、良好な転写性がオイルレス定着時に離型性を発揮できる。
本発明に用いられるトナーは、荷電制御剤を含有していてもよい。荷電制御剤としては、有機金属錯体、金属塩、及びキレート化合物が挙げられる。有機金属錯体としては、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、ヒドロキシカルボン酸金属錯体、ポリカルボン酸金属錯体、ポリオール金属錯体が挙げられる。その他には、カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、エステル類の如きカルボン酸誘導体や芳香族系化合物の縮合体も挙げられる。また、ビスフェノール類、カリックスアレーンの如きフェノール誘導体も荷電制御剤として用いることができる。本発明におけるトナーに含まれる荷電制御剤は、トナーの帯電立ち上がりを良好にする点から、芳香族カルボン酸の金属化合物であることが好ましい。
トナーにおける荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。トナーが、トナー粒子中の結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下の荷電制御剤を有することで、高温高湿から低温低湿までの広範な環境においてトナーの帯電量の変化を小さくすることができる。
本発明に用いられるトナーは着色剤を有している。ここで着色剤は、顔料もしくは染料、またはそれらの組み合わせであってもよい。
染料としては、以下のものが挙げられる。例えば、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6が挙げられる。
顔料としては、以下のものが挙げられる。例えば、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、パーマネントレッド4R、ウォッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、クロムグリーン、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGが挙げられる。
また、本発明のトナーをフルカラー画像形成用現像剤として使用する場合は、マゼンタ用着色顔料を含むことができる。マゼンタ用着色顔料としては、以下のものを上げることができる。例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207、209、238、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35が挙げられる。
トナー粒子は、マゼンタ用着色顔料だけを含んでもよいが、染料と顔料とを組み合わせて含むと、現像剤の鮮明度を向上させ、フルカラー画像の画質を向上させることができる。マゼンタ用染料としては、以下のものが挙げられる。例えば、C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27、C.I.ディスパースバイオレット1の如き油溶染料;C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40、C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28の如き塩基性染料が挙げられる。
シアン用着色顔料としては、以下のものが挙げられる。例えば、C.I.ピグメントブルー2、3、15、15:1、15:2、15:3、16、17;C.I.アシッドブルー6;C.I.アシッドブルー45又はフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料が挙げられる。
イエロー用着色顔料としては、以下のものが挙げられる。例えば、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、74、83、93、97、155、180、C.I.バットイエロー1、3、20が挙げられる。
黒色の顔料としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックの如きカーボンブラックの他、マグネタイト、フェライトの如き磁性粉が挙げられる。
さらに、マゼンタ染料及び顔料、イエロー染料及び顔料、シアン染料及び顔料を組み合わせて調色を行い、上記カーボンブラックと併用して用いてもよい。
本発明に用いられるトナーは、微粒子である外添剤を外添されていてもよい。微粒子を外添されることにより、流動性や転写性が向上しうる。トナー粒子表面に外添される外添剤は、酸化チタン、アルミナ、およびシリカのいずれかの無機微粒子を含むことが好ましい。該外添剤に含まれる無機微粒子の表面は、疎水化処理をされていることが好ましい。疎水化処理は、各種チタンカップリング剤、シランカップリング剤の如きカップリング剤;脂肪酸及びその金属塩;シリコーンオイル;またはそれらの組み合わせによってなされることが好ましい。様々な組み合わせの中でも、無機微粒子の一つとして、個数平均粒子径が80nm以上300nm未満である無機微粒子を添加することが好ましい。理由としては磁性キャリアとの付着力を低減でき、トナーが高い帯電を持っていても、効率良く現像できるためである。材質としては例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン等が挙げられる。シリカの場合、例えば、気相分解法、燃焼法、爆燃法など従来公知の技術を用いて製造されたいかなるシリカをも使用することができる。
外添剤に含まれる無機微粒子の疎水化処理を行うためのチタンカップリング剤としては、以下のものが挙げられる。例えば、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネートが挙げられる。
また、シランカップリング剤としては、以下のものが挙げられる。例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシランが挙げられる。
無機微粒子の疎水化処理を行うための脂肪酸としては、以下のものが挙げられる。例えば、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸の如き長鎖脂肪酸が挙げられる。それらの脂肪酸金属塩の金属としては亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、リチウムが挙げられる。
疎水化処理を行うためのシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイルが挙げられる。
疎水化処理は、無機微粒子に対して1質量%以上30質量%以下(より好ましくは3質量%以上15質量%以下)の疎水化処理剤を無機微粒子に添加して、無機微粒子を被覆することにより行われることが好ましい。
該外添剤のトナー中における含有量は、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上4.0質量%以下であることがより好ましい。また外添剤は、複数種の微粒子の組み合わせでもよい。
本発明のトナーと磁性キャリアとを混合して二成分系現像剤を調製する場合、その混合比率は現像剤中のトナー濃度として、2質量%以上15質量%以下、好ましくは4質量%以上13質量%以下にすると通常良好な結果が得られる。トナー濃度が2質量%未満では画像濃度が低下しやすく、15質量%を超えるとカブリや機内飛散が発生しやすい。
以下に、本発明に関わる測定方法について述べる。
<磁性キャリアコアの体積抵抗>
本発明の磁性キャリア及び本発明の磁性キャリアに用いられる磁性キャリアコアの体積抵抗は、図4に概略される測定装置を用いて測定される。抵抗測定セルAは、断面積2.4cm2の穴の開いた円筒状のPTFE樹脂容器25、下部電極(ステンレス製)21、支持台座(PTFE樹脂製)24、上部電極(ステンレス製)22から構成される。支持台座24上に円筒状のPTFE樹脂容器25を載せ、試料(例えば、磁性キャリア)23を約1g充填し、充填された試料23に上部電極22を載せ、試料の厚みを測定する。予め試料のないときの厚みをd’(ブランク)、約1g充填したときの実際の試料の厚みd、試料を充填したときの厚みd’(試料)とすると、試料の厚みは下記式で表せる。
d=d’(試料)−d’(ブランク)
電極間に電圧を印加し、そのときに流れる電流を測定することによって磁性キャリア及び磁性キャリアコアの体積抵抗を求めることができる。測定には、エレクトロメーター26(ケスレー6517 ケスレー社製)及び制御用にコンピュータ27を用いる。
測定条件は、磁性成分と電極との接触面積S=2.4cm2、上部電極の荷重240gとする。
電圧の印加条件は、エレクトロメーターの内部プログラムを利用し、まず最大1000V印加可能かどうか(電流のリミッターを超えない範囲)をエレクトロメーター自身が判断し、印加電圧の最大値を自動的に決める。その最大電圧値を5分割した電圧をステップとして30秒間保持させた後の電流値を測定する。例えば、最大印加電圧が1000Vの場合には、1000V、800V、600V、400V、200Vを印加し、それぞれのステップで30秒保持後の電流値を測定する。それをコンピュータにより処理することで、電界強度、体積抵抗を算出して、グラフにプロットする。
体積抵抗、電界強度は、下記式にて求められる。
体積抵抗(Ω・cm)=(印加電圧(V)/測定電流(A))×S(cm2)/d(cm)
電界強度(V/cm)=印加電圧(V)/d(cm)
磁性キャリアから磁性キャリアコアを取り出す方法としては、以下の方法が挙げられる。磁性キャリアを10g準備し、ビーカーに50mlトルエンを入れる。そして、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散機「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製)を用いて2分間分散処理を行い、樹脂被覆層を含む上澄み液を取り除く。この時、磁性キャリアコアが流れないようにすすぐ時は磁石で固定して行った。この操作を5回以上繰り返し、上澄み液が無色透明になることを確認し、その後、50℃で窒素フローしている乾燥機に入れ、24時間乾燥させて磁性キャリアコアを得た。
<磁性キャリアの真比重の測定方法>
本発明の磁性キャリアの真比重は、乾式自動密度計オートピクノメータ(ユアサアイオニクス社製)を用いて測定する。
セル SMセル(10mL)
サンプル量 2.0g
この測定方法は、気相置換法に基づいて、固体・液体の真密度を測定するものである。液相置換法と同様、アルキメデスの原理に基づいているが、置換媒体としてHeガスを用いるため、微細孔を有する磁性キャリアコアに対して精度が高い。
<磁性キャリアコア、磁性キャリアの見かけ密度の測定方法>
パウダーテスターPT−R(ホソカワミクロン社製)で、見かけ密度を測定できる。測定方法においては、目開き500μmの篩を用いて、振幅を1mmで振動させながら、内容積200mlの容器からこぼれるまで磁性キャリアコア/磁性キャリアを補給し、そして、容器上面から山になった部分を棒によりすりきりにした後の磁性キャリアコア/磁性キャリア粒子質量から、見かけ密度(g/cm3)を計算する。
<磁性キャリアの50%円相当径の測定方法>
磁性キャリアの円相当径、円相当径50%値、平均円形度、円形度0.200乃至0.925の粒子の割合(限定粒子率)は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000型」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定・解析条件で測定できる。
フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000型」(シスメックス社製)の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は512×512の画像処理解像度(一画素あたり0.37×0.37μm)で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積や周囲長等が計測される。
次に、各粒子像の投影面積Sと周囲長Lを求める。上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円形当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度は、円形当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
C=2×√(π×S)/L
粒子像が円形の時に円形度は1になり、粒子像の外周の凹凸の程度が大きくなればなるほど円形度は小さい値になる。
各粒子の円形度を算出後、円形度0.200乃至1.000の範囲を800分割し、測定粒子数を用いて平均円形度の算出を行う。
具体的な測定方法としては、イオン交換水20mlに、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1ml加えた後、測定試料0.5gを加える。そして、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散機「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製)を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とした。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した該フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用する。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個の磁性キャリア粒子を計測する。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(Duke Scientific社製5200Aをイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。その際、解析粒子径を円相当径0.5μm以上、200.0μm以下に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行う。
<導電性微粒子の一次粒径>
測定範囲がサブミクロンから数百ミクロンの測定レンジを持つものであれば、乾式または湿式のレーザー回折式の粒度分布計を用いて測定され得る。レーザー回折式の粒度分布計の例には、レーザー回折式粒度分布測定器SALD−3000、SALD−2200、SALD−300V(島津製作所製)が含まれる。
<磁性キャリアコアに用いられる磁性体及び非磁性無機化合物の体積分布基準の50%粒径(D50)の測定方法>
樹脂含浸磁性キャリアの磁性キャリアコアに用いられる磁性体の体積分布基準の50%粒径(D50)は、磁性キャリア粒子の測定に準じて測定され得る。
一方、磁性体分散型樹脂磁性キャリアの磁性キャリアコアに含まれる磁性体の個数平均粒径は、以下の手順で測定される。
ミクロトームにより切断された磁性キャリアの断面を、走査電子顕微鏡(50,000倍)で観察し、粒径が5nm以上の粒子をランダムに300個以上抽出する。抽出された各粒子の長軸と短軸の長さをデジタイザにより測定する。測定された長軸と短軸の長さの平均値を粒径とし、300個以上の粒子の粒径分布(カラム幅を5−15,15−25,(単位:nm),・・・のように10nm毎に区切ったカラムのヒストグラムを用いる)のピークになるカラムの中心値の粒径を個数平均粒径とする。
磁性キャリアコアに用いられる非磁性無機化合物の個数平均粒径も上記と同様にして測定される。
また、磁性体または非磁性無機化合物の個数平均粒径は、原材料の(樹脂に含まれていない状態の)磁性体または非磁性無機化合物を、透過電子顕微鏡(TEM)(50,000倍)で観察し、上記の方法と同様にして求めることができる。
<トナーの重量平均粒径の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行なう。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行なった。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
<本発明の磁性キャリア粒子の樹脂被覆層に含まれてもよい微粒子の最大ピーク粒径(個数平均粒径)の測定方法>
微粒子の粒径は、磁性キャリアからコート材をトルエンなどコート材が可溶な溶媒に溶かし出した成分を走査電子顕微鏡(50,000倍)により、粒径が5nm以上の粒子をランダムに500個以上抽出し、長軸と短軸をデジタイザにより測定し、平均したものを粒径とし、500個以上の粒子の粒径分布(カラム幅を5−15,15−25,25−35,35−45,45−55,55−65,65−75,75−85,85−95、・・・のように10nm毎に区切ったカラムのヒストグラムから)のカラムの中心値のピークになる粒径をもって最大ピーク粒径を算出する。
<本発明のトナー中に含有するワックスの最大吸熱ピーク温度の測定方法>
ワックスおよびトナーの最大吸熱ピークのピーク温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、トナー約10mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。尚、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度30〜200℃の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピークを、本発明のトナーのDSC測定における吸熱曲線の最大吸熱ピークとする。
<本発明のトナー中に含有する樹脂の分子量の測定方法>
トナーのTHF可溶分の分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、トナーをテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
<本発明のトナーに含有する酸化チタンなどの微粉末のBET比表面積の測定方法>
トナーのBET比表面積の測定は、JIS Z8830(2001年)に準じて行なう。具体的な測定方法は、以下の通りである。
測定装置としては、定容法によるガス吸着法を測定方式として採用している「自動比表面積・細孔分布測定装置 TriStar3000(島津製作所社製)」を用いる。測定条件の設定および測定データの解析は、本装置に付属の専用ソフト「TriStar3000 Version4.00」を用いて行い、また装置には真空ポンプ、窒素ガス配管、ヘリウムガス配管が接続される。窒素ガスを吸着ガスとして用い、BET多点法により算出した値を本発明におけるBET比表面積とする。
以下、実施例を参照して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
[磁性キャリア1の製造]
マグネタイト微粒子(個数平均粒径240nm、磁化の強さ65Am2/kg、500V/cmにおける体積抵抗3.3×105Ω・cm)と、シラン系カップリング剤(3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン)(マグネタイト微粒子の質量に対して3.5質量%の量)とを、容器に導入した。そして、該容器内において100℃以上で高速混合撹拌して、マグネタイト微粒子を表面処理した。
次に下記材料
・フェノール 10質量部
・ホルムアルデヒド溶液(ホルムアルデヒド36質量%水溶液) 16質量部
・表面処理したマグネタイト微粒子 86質量部
をフラスコに導入し、40℃にしてよく混合した。その後、撹拌しながら平均昇温速度3℃/分で、温度85℃に加熱し、28質量%アンモニア水4質量部および水25質量部をフラスコに加えた。温度85℃にて保持し、3時間重合反応させて硬化させた。このときの撹拌翼の周速は1.8m/秒とした。
重合反応させた後、温度30℃まで冷却して水を添加した。上澄み液を除去して得られた沈殿物を水洗し、さらに風乾した。得られた風乾物を、減圧下(5hPa以下)にて、温度60℃で乾燥して、磁性体が分散された平均粒径36μm、5000V/cmにおける体積抵抗1.0×107Ω・cm、見かけ密度2.0g/cm3の磁性キャリアコア(a)を得た。
次に下記式(4)で示される構造を有する一方の末端にエチレン性不飽和基を有する重量平均分子量5,000のメタクリル酸メチルマクロマー(平均値n=50)35質量部と、下記式(5)で示される構造を有するシクロヘキシルをユニットとしてエステル部位を有するメタクリル酸シクロヘキシルモノマー65質量部を、還流冷却器、温度計、窒素吸い込み管、及びすり合わせ方式撹拌装置を有する四つ口フラスコに加えた。さらにトルエン90質量部、メチルエチルケトン110質量部、及びアゾビスイソバレロニトリル2.0質量部を加えた。得られた混合物を、窒素気流下70℃で10時間保持し、グラフト共重合体溶液(固形分33質量%)を得た。この溶液のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による重量平均分子量は、66,000であった。また、Tgは90℃であった。
1)一層目のワニス調製
得られたグラフト共重合体溶液300質量部に、カーボンブラック微粒子(個数分布基準の最大ピーク粒径が30nm、体積抵抗が1.0×10-4Ω・cm)5質量部、およびトルエン700質量部を加えた。そして、ホモジナイザーによりよく混合して、コート溶液(樹脂溶液)1−1を得た。主溶媒であるトルエンの沸点は、110℃である。
2)二層目のワニス調製
カーボンブラック微粒子(個数分布基準の最大ピーク粒径が30nm、体積抵抗が1.0×10-4Ω・cm)15質量部を用い、上記1)一層目のワニス調製と同様にして、コート溶液1−2を得た。
3)一層目のコート処理
次いで、磁性キャリアコア(a)2000gを、図1に示される流動層コーティング装置に入れ、スクリーンの口径直径1.0mm、給気風量0.0133m3S-1とした窒素を導入し、給気温度を温度70℃とした。回転ローター及び回転羽根の回転数を16.67S-1とした。品温が、温度45℃になった後、コート溶液1−1のスプレーを開始した。
スプレーノズルの口径は、直径1.2mmであり、スプレー速度0.0833gS-1、80分間スプレーをした。80分後の品温は、温度58℃であった。スプレーコート終了後、トルエンを同じスプレー速度で、3分間スプレー処理を行った。
4)二層目のコート処理
次いで、コート溶液1−2を用い、100分間スプレーコートを、上記3)一層目のコート処理と同様にして、行った。
その後、回転ローター及び回転羽根の回転数を1.0S-1にして、品温が温度50℃以下になるまで冷却し、(ヒーターを切ることで冷風が導入される)装置を止めて、樹脂被覆された磁性キャリアを取り出した。さらに目開き105μmのメッシュで振動ふるいを行い、磁性キャリアAを得た。メッシュ上の凝集物は、目視では確認できないくらいの程度であった。
得られた磁性キャリア1は、圧縮体積抵抗測定の結果、R80/R360が1.0×104Ω・cmであり、R360が5.0×107Ω・cmであった。磁性キャリア1は非常に均一なコートを有していた。磁性キャリア1の真比重は、3.6g/cm3であった。磁性キャリア1の体積基準の50%粒径(D50)は36.9μmであり、表2に示すような物性を持つ磁性キャリアであった。
なお、この磁性キャリア1の他、本発明の実施例、比較例に使用する磁性キャリアの構成・製法上の特徴の一覧を表1に記した。
[磁性キャリア2の製造]
磁性キャリア調製時に、上記3)の一層目コート処理時間を、50分にしたこと以外は、磁性キャリア1と同様の方法で磁性キャリア2を得た。
磁性キャリア2の体積基準の50%粒径(D50)は36.6μmであり、表2に示すような物性を持つ磁性キャリアであった。メッシュ上の凝集物は、目視では確認できないくらいの程度であった。
[磁性キャリア3の製造]
磁性キャリア調製時に、上記3)の一層目コート処理時間を、200分にしたこと以外は、磁性キャリア1と同様の方法で磁性キャリア3を得た。
磁性キャリア3の体積基準の50%粒径(D50)は37.5μmであり、表2に示すような物性を持つ磁性キャリアであった。メッシュ上の凝集物は、目視では確認できないくらいの程度であった。
[磁性キャリア4の製造]
磁性キャリア調製時に、上記1)の一層目のワニス調製のカーボンブラック微粒子を2質量部にしたこと以外は、磁性キャリア1と同様の方法で磁性キャリア4を得た。
磁性キャリア2の体積基準の50%粒径(D50)は36.8μmであり、表2に示すような物性を持つ磁性キャリアであった。メッシュ上の凝集物は、目視では確認できないくらいの程度であった。
[磁性キャリア5の製造]
磁性キャリアコア調製時に、マグネタイト微粒子(個数平均粒径260nm、磁化の強さ65Am2/kg、500V/cmにおける体積抵抗3.0×105Ω・cm)と、シラン系カップリング剤(3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン)(マグネタイト微粒子の質量に対して2.8質量%の量)に変更した以外は、磁性キャリアコア(a)と同様の方法で磁性キャリアコア(b)を得た。5000V/cmにおける体積抵抗は8.0×107Ω・cm、見かけ密度2.0g/cm3であった。
磁性キャリアコア(b)を用いて、磁性キャリア調製時に、上記1)の一層目のワニス調製のカーボンブラック微粒子を7質量部にしたこと以外は、磁性キャリア1と同様の方法で磁性キャリア5を得た。
磁性キャリア5の体積基準の50%粒径(D50)は37.0μmであり、表2に示すような物性を持つ磁性キャリアであった。メッシュ上の凝集物は、目視では確認できないくらいの程度であった。
[磁性キャリア6の製造]
磁性キャリア調製時に、上記1)の一層目のワニス調製のカーボンブラック微粒子を使用しないこと以外は、磁性キャリア1と同様の方法で磁性キャリア6を得た。
磁性キャリア6の体積基準の50%粒径(D50)は36.8μmであり、表2に示すような物性を持つ磁性キャリアであった。メッシュ上の凝集物は、目視では確認できないくらいの程度であった。
[磁性キャリア7の製造]
磁性キャリア調製時に、上記1)の一層目のワニス調製のカーボンブラック微粒子を7質量部にしたこと以外は、磁性キャリア1と同様の方法で磁性キャリア7を得た。
磁性キャリア7の体積基準の50%粒径(D50)は37.0μmであり、表2に示すような物性を持つ磁性キャリアであった。メッシュ上の凝集物は、目視では確認できないくらいの程度であった。
[磁性キャリア8の製造]
磁性キャリアコア調製時に、マグネタイト微粒子(個数平均粒径220nm、磁化の強さ65Am2/kg、500V/cmにおける体積抵抗1.0×105Ω・cm)と、シラン系カップリング剤(3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン)(マグネタイト微粒子の質量に対して1.2質量%の量)に変更した以外は、磁性キャリアコア(a)と同様の方法で磁性キャリアコア(c)を得た。5000V/cmにおける体積抵抗は1.0×105Ω・cm、見かけ密度2.0g/cm3であった。メッシュ上の凝集物は、目視では確認できないくらいの程度であった。
磁性キャリア調製時に、磁性キャリアコア(c)に変更したこと以外は、磁性キャリア1と同様の方法で磁性キャリア8を得た。
磁性キャリア8の体積基準の50%粒径(D50)は36.2μmであり、表2に示すような物性を持つ磁性キャリアであった。メッシュ上の凝集物は、目視では確認できないくらいの程度であった。
[磁性キャリア9の製造]
マグネタイト微粒子(個数平均粒径240nm、磁化の強さ65Am2/kg、500V/cmにおける体積抵抗8.2×105Ω・cm)と、シラン系カップリング剤(3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン)(マグネタイト微粒子の質量に対して2.0質量%の量)に変更した以外は、に変更した以外は、磁性キャリアコア(a)と同様の方法で磁性キャリアコア(d)を得た。5000V/cmにおける体積抵抗は1.0×108Ω・cm、見かけ密度2.0g/cm3であった。
磁性キャリアコア(d)を用いたこと以外は、磁性キャリア1と同様の方法で磁性キャリア9を得た。
磁性キャリア9の体積基準の50%粒径(D50)は37.2μmであり、表2に示すような物性を持つ磁性キャリアであった。メッシュ上の凝集物は、目視では確認できないくらいの程度であった。
[磁性キャリア10の製造]
磁性キャリア調製時に、上記3)の一層目コート処理後、トルエンのスプレー処理を行わないこと以外は、磁性キャリア1と同様の方法で磁性キャリア10を得た。
磁性キャリア10の体積基準の50%粒径(D50)は37.1μmであり、表2に示すような物性を持つ磁性キャリアであった。メッシュ上の凝集物は、目視では確認できないくらいの程度であった。
[磁性キャリア11の製造]
磁性キャリア調製時に、上記3)の一層目コート処理を該スプレーコート装置を用いないで、ナウターコート装置(ホソカワミクロン社製 NX−1)でコート(70℃、30分間、スクリューの自転90rpm、公転3rpmの回転条件にて処理)した後、上記4)の二層目のコート処理を同じく、上記一層目コート後の磁性キャリアに、ナウターコート装置でコート(70℃、30分間処理)した後、ロータリーキルンにて100℃、2時間の乾燥処理を行うこと以外は、磁性キャリア1と同様の方法で磁性キャリア11を得た。
磁性キャリア11の体積基準の50%粒径(D50)は37.5μmであり、表2に示すような物性を持つ磁性キャリアであった。メッシュ上の凝集物は、若干目視で確認できたが、それほど多くはない程度であった。
[磁性キャリア12の製造]
上記1)の一層目のワニス調製時に、トルエン1700質量部を加えて、ワニスを調製すること、そして、磁性キャリア調製時に、上記3)の一層目コート処理時間を120分にしたこと以外は、磁性キャリア1と同様の方法で磁性キャリア12を得た。
磁性キャリア12の体積基準の50%粒径(D50)は36.5μmであり、表2に示すような物性を持つ磁性キャリアであった。メッシュ上の凝集物は、目視では確認できないくらいの程度であった。
[磁性キャリア13の製造]
Fe2O3;80モル%、MnO;4.0モル%、MgO;16モル%の混合物を、ボールミルを用いて10時間混合した。得られた混合物を800℃で2時間仮焼し、仮焼された混合物をボールミルで粉砕した。得られた粉砕物の平均粒径は0.2μmであった。
得られた粉砕物に、水(粉砕物に対して300質量%)とポリビニルアルコール(粉砕物に対して2質量%)、CaCO3(粉砕物に対して3質量%)を加え、さらにスプレードライヤーにより造粒した。造粒物を980℃で10時間焼結した後に粉砕し、さらに分級することによりMn−Mgフェライト磁性キャリアコア(e)を得た。このMn−Mgフェライト磁性キャリアコアの平均粒径(D50)は50μmであった。
次いで、磁性キャリアコア(e)2000質量部に、アミノ変性シリコンカップリング材を含有したシリコーン樹脂60質量部を用い、ナウターコート装置でコート(100℃、30分間処理)した後、ロータリーキルンにて140℃、2時間の乾燥処理を行い、最後に風力分級により20μm以下をカットして、磁性キャリア13を得た。
磁性キャリア13の体積基準の50%粒径(D50)は50.5μmであり、表2に示すような物性を持つ磁性キャリアであった。また、キャリア表面には凹凸が観察され、メッシュ上の凝集物は、目視では確認できるくらいの程度であった。
[磁性キャリア14の製造]
マグネタイト微粒子(個数平均粒径240nm、磁化の強さ65Am2/kg、500V/cmにおける体積抵抗3.3×105Ω・cm)と、シラン系カップリング剤(3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン)(マグネタイト微粒子の質量に対して3.5質量%の量)とを、容器に導入した。そして、該容器内において100℃以上で高速混合撹拌して、マグネタイト微粒子を表面処理した。ついで、ヘマタイト微粒子(個数平均粒径500nm、磁化の強さ5Am2/kg、500V/cmにおける体積抵抗5.0×106Ω・cm)と、シラン系カップリング剤(3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン)(マグネタイト微粒子の質量に対して2.5質量%の量)とを、容器に導入した。そして、該容器内において100℃以上で高速混合撹拌して、ヘマタイト微粒子を表面処理した。
次に下記材料
・フェノール 10質量部
・ホルムアルデヒド溶液(ホルムアルデヒド36質量%水溶液) 16質量部
・表面処理したマグネタイト微粒子 70質量部
・表面処理したヘマタイト微粒子 16質量部
に変更した以外は、磁性キャリアコア(a)と同様の方法で磁性キャリアコア(f)を得た。5000V/cmにおける体積抵抗は1.0×1010Ω・cm、見かけ密度2.1g/cm3であった。
1)一層目のワニス調製
上記得られたグラフト共重合体溶液300質量部に、トルエン700質量部を加えた。そして、ホモジナイザーによりよく混合して、コート溶液(樹脂溶液)14を得た。
コート溶液14を用いて、磁性キャリア1と同様に磁性キャリアコア(f)に30分間コート処理を行った。一層コートが終了した時点でスプレーを止め、回転ローター及び回転羽根の回転数を1.0S-1にして、品温が温度50℃以下になるまで冷却し(ヒーターを切ることで冷風が導入される)、装置を止めて、樹脂被覆された磁性キャリアを取り出した。さらに目開き105μmのメッシュで振動ふるいを行い、磁性キャリア14を得た。メッシュ上の凝集物は、目視では確認できないくらいの程度であった。
磁性キャリア14の体積基準の50%粒径(D50)は35.2μmであり、表2に示すような物性を持つ磁性キャリアであった。
[磁性キャリア15の製造]
磁性キャリア調製時に、上記1)の一層目のワニス調製時に、カーボンブラック微粒子(個数分布基準の最大ピーク粒径が30nm、体積抵抗が1.0×10-4Ω・cm)20質量部を用いたこと、上記4)の二層目のコート処理を行わなずに、コート処理を終了したこと以外は、磁性キャリア1と同様の方法で磁性キャリア15を得た。
磁性キャリア15の体積基準の50%粒径(D50)は35.5μmであり、表2に示すような物性を持つ磁性キャリアであった。メッシュ上の凝集物は、目視では確認できないくらいの程度であった。
[磁性キャリア16の製造]
磁性キャリア調製時に、磁性キャリアコア(e)2000質量部に、アミノ変性シリコンカップリング材を含有したシリコーン樹脂60質量部を用い、ナウターコート装置でコート(100℃、30分間処理)した。その後、アミノ変性シリコンカップリング材を含有したシリコーン樹脂60質量部に磁性キャリア1に使用したカーボンブラック20質量部を加えホモジナイザーによりよく混合して、コート溶液(樹脂溶液)16を調製した。上記磁性キャリアにコート溶液16を加え、ナウターコート装置でコート(100℃、30分間処理)した。その後、ロータリーキルンにて140℃、2時間の乾燥処理を行い、最後に風力分級により20μm以下をカットして、磁性キャリア16を得た。
磁性キャリア16の体積基準の50%粒径(D50)は51.0μmであり、表2に示すような物性を持つ磁性キャリアであった。また、キャリア表面には凹凸が観察され、メッシュ上の凝集物は、目視では確認できるくらいの程度であった。
[トナー1の製造]
スチレン2.00mol、2−エチルヘキシルアクリレート0.20mol、フマル酸0.14mol、α−メチルスチレンの2量体0.03mol、およびジクミルパーオキサイド0.05molの混合物を滴下ロートに入れた。
一方、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン7.00mol、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3.00mol、テレフタル酸3.00mol、無水トリメリット酸1.7mol、フマル酸5.00mol及びテレフタル酸チタン0.2gの混合物を、ガラス製4リットルの四つ口フラスコに入れた。
この四つ口フラスコに、前述の滴下ロート、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取り付け、該四つ口フラスコをマントルヒーター内においた。次に、該四つ口フラスコ内に窒素ガスを流しつつ、フラスコの内容物を撹拌しながら徐々に昇温して145℃とした。145℃に達した後、前述の滴下ロートの内容物を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、200℃に昇温して、同温度で4時間反応させて、重量平均分子量78,000、数平均分子量3500の樹脂1を得た。
下記材料
・樹脂1 100質量部
・フィッシャートロプシュワックス(最大吸熱ピーク温度80℃) 5.5質量部
・3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.5質量部
・C.I.ピグメンブルー15:3 4.5質量部
をヘンシェルミキサ(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で混合した後、130℃に設定した二軸混練機(PCM−30型、池貝鉄工(株)製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕して粗砕物を得た。得られた粗砕物を、高圧気体を用いた衝突式気流粉砕機を用いて粉砕した。さらにコアンダ効果を利用した多分割分級機により、該粉砕物を分級して分級品を得た。
さらに、ハイブリダイザー(奈良機械製作所社製)を用いて、回転数6400rpm、処理時間3分、処理回数2回の条件で、該分級品の表面改質を行い、シアン粒子を得た。このシアン粒子の重量平均粒径は5.8μm、平均円形度は0.955であった。
得られたシアン粒子100質量部に対して、アナターゼ型酸化チタン微粉末(BET=100、イソブチルトリメトキシシラン12質量%処理)0.5質量部と、個数分布基準の最大ピーク粒径100nmの疎水化処理したシリカ1.5質量部をまずヘンシェルミキサーにより外添し、さらにオイル処理シリカ(BET比表面積200m2/g、シリコーンオイル18質量%処理)1.5質量部を追加投入して、ヘンシェルミキサーにより外添してトナー1とした。トナー1の重量平均径は5.8μmであった。
[トナー2の製造]
トナー製造時に、C.I.ピグメンブルー15:3を、カーボンブラック(東海カーボン社製:NIPEX35)に変更したこと以外は、トナー1の製造と同様の方法でトナー2を得た。トナー2の重量平均径は5.5μmであった。
〔実施例1乃至12、比較例1乃至4〕
評価項目と評価基準については、下記に示した。得られた評価結果を表2に示す。
これら現像剤を用い、図6に示した、キヤノン製フルカラー複写機CLC5000改造機を用いて、HH環境(Bkトナー(トナー2)を使用)、NL環境下(シアントナー(トナー1)を使用)で画出し評価を行った。HH環境については、耐久後、1週間放置を行い、改めて画像評価を実施した。HH環境で、Bkトナーを用いるのは、これまでの、フルカラートナー検討の中で、BkトナーがHH環境で最も耐久安定性が厳しかったためである。また、NL環境で、シアントナーを用いるのは、NL環境で、帯電量が高く、トナーをキャリアから飛翔させる、現像性が最も厳しかったためである。
この環境で画像面積が30%となるチャートを用いて、10万枚の連続画像出力を行った。なお、CLC5000改造機の改造した点は以下のとおりである。レーザースポット径を絞り、600dpiで出力できるようにした。定着ユニットの定着ローラの表層をPFAチューブに変え、オイル塗布機構を取り外した。
画像評価のときの現像条件は以下の通りである。現像スリーブと感光体を現像領域において順方向で回転させた。現像スリーブの回転速度は、感光体の回転速度に対して1.90倍とした。暗部電位Vd −600V、明部電位Vl −110V、直流/交流電界(直流電位Vdc −450V、交流矩形波電界Vpp1.5kV、周波数1.3kHz)とした。
初期と10万枚目に以下の項目に関して評価したところ、耐久後でもカブリのないオリジナルを忠実に再現するシアン画像を形成した。また画像濃度も初期から耐久後でも安定して高い濃度を出力できた。また、HT画像のガサツキに関しても耐久前後でそのレベルは良好であった。評価結果を表3に示す。
尚、画出し評価の項目と評価基準を以下に示す。
(1)画像濃度
CLC5000(キヤノン社製)改造機を用い、通常の複写機用普通紙(75g/m2)の転写材を用いて、画出し試験において耐久評価終了時にベタ画像を出力し、その濃度を測定することにより評価した。尚、画像濃度は「マクベス反射濃度計 RD918」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定した。
A:非常に良好 1.40以上
B:良好 1.35以上、1.40未満
C:実用上問題なし 1.00以上、1.35未満
D:やや難あり 1.00未満
(2)<白抜け評価>
転写紙の搬送方向に対して、ハーフトーン横帯(30H 幅10mm)とベタ黒横帯(FFH 幅10mm)を交互に並べたチャートを出力する。その画像をスキャナで読みとり、二値化処理を行う。二値化画像の搬送方向におけるあるラインの輝度分布(256階調)をとり、そのときのハーフトーンの輝度に接線を引き、ベタ部輝度と交わるまでのハーフトーン部後端の接線からずれた輝度の領域(面積:輝度数の和)をもって、白抜け度とする。評価基準は以下の通りである。
A:50以下、殆ど目立たず、非常に良好である。
B:51以上150以下、良好である。
C:151以上300以下、白抜けはあるが、実用上問題ないレベルである。
D:301以上600以下、白抜けが目立ち、問題である。
E:601以上、非常に目立つ。
(3)キャリア付着
普通紙上にベタ白画像を、Vbackが0V以上300V以下になるようVdを50V毎に変化させて画出した。各Vbackでベタ白画像を画出ししたのち、現像部とクリーナー部との間の感光体ドラム上の部分を透明な接着テープを密着させてサンプリングし、1cm×1cm中の感光ドラム上に付着していた磁性キャリア粒子の個数をカウントし、1cm2当たりの付着磁性キャリアの個数を算出した。下記の評価基準に従って、キャリア付着について評価した。
Vback=150Vのときの評価を表2に示した。
(評価基準)
A:1cm2あたり10個未満
B:1cm2あたり10個以上、20個未満
C:1cm2あたり20個以上、50個未満(ここまでが実用レベル)
D:1cm2あたり50個以上、100個未満
E:1cm2あたり100個以上
(4)カブリ測定
CLC5000(キヤノン社製複写機)を用い、単色モードで常温低湿環境下(23℃/5%)で画像面積比率5%のオリジナル原稿を用いて1000枚の耐刷試験の評価を行う。耐久試験において、カブリの測定方法は以下のとおりである。まず、シアン画像の場合、画出し前の普通紙の平均反射率Dr(%)を、アンバーフィルターを搭載したリフレクトメーター(東京電色株式会社製の「REFLECTOMETER MODEL TC−6DS」)によって測定する。一方、普通紙上にベタ白画像を画出し、次いでベタ白画像の反射率Ds(%)を測定する。これらの測定値を用いてカブリ(Fog[%])を下記式(2)により求める。
Fog[%]=Dr[%]−Ds[%] ・・・(2)
A:0.7%未満で優秀
B:0.7以上、1.2%未満で良好
C:1.2以上、1.5%未満で実用上問題なし
D:1.5以上、2.0%未満で実用上問題あり
E:2.0%以上で悪い
〔実施例2から12、及び、比較例1から4〕
表2に示したように、磁性キャリアの種類を代えたこと以外は、実施例1と同様の構成で、同様の評価を行った。評価結果を表2に示す。